◆−『脱力!シンデレラ』−山塚ユリ (2004/3/6 00:46:03) No.16091
 ┗だ、脱力しました……−じょぜ (2004/3/6 16:00:02) No.16095
  ┗ありがとうございます−山塚ユリ (2004/3/9 00:16:39) No.16108


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16091『脱力!シンデレラ』山塚ユリ 2004/3/6 00:46:03


「投稿小説」に数あるシンデレラパロディ小説の中で、最もアレなシンデレラだったり。

CAST
シンデレラ フィリア
王子 ヴァル
継母 ナーガ
義姉 ルナ
〃 リナ
魔法使い ガーヴ
ねずみ ラルターク
〃 ラーシャート
〃 ゼロス

昔々あるところに、シンデレラという娘がおりました。
彼女は毎日、継母や2人の義姉にいじめられぎゅぐわあああ
「ちょっと、誰がいじめたっていうのよ」
「ふっ、人聞きの悪いことを」
「夜は満月ばかりとは限らないわねえ」
…延々高笑いを聞かせられたり、修行と称して滝壷に放り込まれたり、食事を奪われたり、作った料理にねちねち文句をつけられたりしておりました。
ある時、お城で王子様の花嫁を選ぶダンスパーティーがあり、継母と義姉達は出かけて行きましたが、シンデレラは「食い扶持が増える」との理由で留守番をさせられていました。
「あーあ、わたしもお城に行きたいわ」
シンデレラがそう言った時、いきなりコートを着た赤毛の男が現れました。
「えーめんどくせえ。なんかあんたを幸せにするってのが俺の役割なんだ。さっさと城に行くぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください。わたしは掃除を言いつけられていて、…」
「なんだ、そんなのねずみにやらせとけや」
魔法使いがちょっと手を振ると、おかっぱ頭の青年が現れました。
「誰がねずみですか誰が」
「ゴキブリよりゃましだろうが。この家の掃除やっとけ」
「なんであなたの言うことを聞かないといけないんです」
「うるせえな。ゼラスの奴にゃ国士無双の貸しがあるんだ」
「うう、なんで私が獣王様の麻雀の肩代わりを…」
『さめざめ』と書かれたノボリを背に、青年は掃除を始めました。
「さて、行くぞ」
「でもわたし、こんな服ではお城に行かれません」
「そんなんじゃなきゃいいのか」
魔法使いが手を軽く振るとあら不思議、シンデレラの服は…レースクイーンの超ハイレグレオタードになったのです。
「きゃああああっな、なに、このはしたない格好はぁぁぁ」
慌てふためくシンデレラを見て魔法使いは不思議そうに言いました。
「…おい、その太腿のモーニングスターはなんだ」
「女性のたしなみですっいいからちゃんとした長い服をっ」
「やれやれ」
魔法使いが再び手を振ると…
「なんですかこれは」
「メイド服だが。猫耳付きの方がいいか?」
「こんな格好でお城に行かれますかっ。もっとちゃんとしたドレスですっシャネルかアルマーニのっ。
バッグはグッチでアクセサリーはブルガリで…」
「…なにげに贅沢言ってないかあんた…」
とにかく魔法でシンデレラの服は豪華なドレスに、そしてかぼちゃが馬車に、ねずみが馬に変わりました。
「…まったく、なんでこんなことを…」
「年寄りはもっと大事に…」
なにやら馬がぶちぶち言ってましたがシンデレラは気にせず、魔法使いが手綱を取る馬車に乗ってお城に向かいました。

お城の中庭で、魔法使いは馬車を停めました。
「さ、行ってこい。ただし十二時の鐘が鳴り止むまでに帰ってこないと魔法が解けるぞ」
「…てことはわたし、元のぼろ服になっちゃうんですか?」
「いや、レースクイーンに」
「ぜっっったい、帰ってきますっ」

美しく着飾ったシンデレラは、注目の的になりました。
彼女の美しさに惹かれたのか、王子が近づいて来て、シンデレラにダンスを申し込みました。
「なあお嬢さん、名前は?住所はどこだよ。家族はいるんだろ?」
エメラルド色の髪をした王子は、シンデレラのことをいろいろ知りたがるのですが、シンデレラは広間の向こうで料理をむさぼっている継母や義姉に見つかるのを怖れて名前を教えませんでした。
やがて十二時の鐘が鳴り始めると、シンデレラは王子を振り切って外に続く階段を駆け下りました。
「おい、待てよ」
王子は追いかけましたがそこには誰もいませんでした。よほど慌てたのでしょう。階段にはシンデレラの落としていったモーニングスターが突き刺さっているのでした。

「王子はモーニングスターを手がかりにあんたを探している。まあ、あんなモン身につけて軽々動ける女はあんたくらいだろうし、これで晴れて王子と結婚、妃殿下様。めでたしめでたしってわけだ」
数日後、また現れた魔法使いはシンデレラに言いました。
「うーん、なんだか実感わきません。それにおかしくないですか?妃殿下っていったら普通隣国の王女とか、大臣の娘とかじゃないですか。貴族の娘さんだってたくさんいるのに、なぜ平民から花嫁を選ぶんでしょう」
「おとぎばなしにリアリティ求めるなよ…あ、ひょっとしてハーレム作る気かもしれんな。正妻は大臣の娘でおまえは第二十妃殿下」
「そんなのいやですわたし」
そうこうしているうちに、王子の命を受けた役人がシンデレラの家にもやってきて…シンデレラこそ王子の探している姫と決定しました。

お城の謁見の間。シンデレラはこの部屋で王子が現れるのを待っていました。王家の親戚となる継母たちも呼ばれていました。
「で、なんで俺までここにいるんだ」
役人に連れてこられた魔法使いがぶすっとして言いました。
「家族だと思われたんじゃないですか?」
と、言うシンデレラはさすがにいつものぼろ服ではなく、義姉のドレスを借りて着ていました。
「殿下のおな〜り〜」
供の声がして、玉座に王子が姿を見せました。一段低い謁見の間にいるシンデレラたちを見て、
「あんたこそ、オレが探し求めていた理想の人だ!」
王子は玉座の間から飛び降りると、真っ直ぐに駆け出し…魔法使いの胸に飛び込みました。
「お、おい、」
「この厚い胸板、たくましい腕。あのパーティーの夜、中庭を見下ろすバルコニーであんたを見つけてオレは…」
「離せ、このっ、こーゆーシュミかてめえっ」
「おやじたちはオレを結婚させようとしてパーティー開いたりしてるけど、オレは女なんかに興味はないんだ。
あの女を見つければあんたに巡り合えると思ったから」
王子はうるうると魔法使いを見つめました。
「ふーん」
「なるほどね〜」
二人の後ろでシンデレラたちは思いっきり納得していました。
「離せこの馬鹿王子!」
「もう離さない!」
細腰でスマートなくせにすごい力でしがみつく王子から、必死に逃れようとする魔法使いを尻目に、
「さて、帰りましょうか」
「そうね」
「帰るわよシンデレラ」
「はあ〜い」
ぞろぞろと女たちは謁見の間を出て行きました。
「こら〜助けてけ〜」
魔法使いは王子をやっとふりほどくと、シンデレラを幸せにすることなんか忘れて、一目散にアストラル・サイドに逃げていきました。
その後、シンデレラがどうなったか、誰も知りません。めでたしめでたし。

―― 幕 ――

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16095だ、脱力しました……じょぜ 2004/3/6 16:00:02
記事番号16091へのコメント

 初めまして、じょぜと申します。

 キャストを読んで、ヴァルフィリ派の私は「おおっ」と喜んだのですが、ラストで「そ、そんなあ〜〜」と叫んでしまいました。
 魔法使いガーヴとフィリアのやりとりが楽しかったです。
 レースクイーンと第二十妃殿下がツボにはまりました(笑)。

>その後、シンデレラがどうなったか、誰も知りません。めでたしめでたし。
 そうですか……きっと「王子でも男なんかあてにならないわ」とたくましく義姉たちと渡りあっていることでしょう。
 そして、王子はどうなったのでしょうか?(笑)

 とても楽しませていだたきました。では。m(__)m

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16108ありがとうございます山塚ユリ 2004/3/9 00:16:39
記事番号16095へのコメント

はじめまして。忘れたころに出没する、山塚と申すイキモノです。
> そうですか……きっと「王子でも男なんかあてにならないわ」とたくましく義姉たちと渡りあっていることでしょう。
そうですね、きっと強く生きていますって。
> そして、王子はどうなったのでしょうか?(笑)
「オレの理想の人は…」と毎日ため息なんかついてたり。
国王は泣いているぞ。

感想、ありがとうございました。