◆−GURE−TO MASA 様へ−無限流人 改め 流空澄 (2004/3/19 13:03:44) No.16157
 ┣ありがとうございます−GURE−TO MASA (2004/3/20 18:08:59) No.16176
 ┗GURE−TO MASA 様へ そのに−無限流人 改め 流空澄 (2004/3/23 22:00:50) No.16191


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16157GURE−TO MASA 様へ無限流人 改め 流空澄 2004/3/19 13:03:44


リクありがとうございます。これからも流をよろしくお願いいたします。

夜桜花見はちょっと早い風物詩ですなあ。
 ギャグとか、シリアスとかの設定がございませんでしたので、こちらで勝手に決めさせていただきました。
 ではでは。どうぞー。

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『夜桜は危険なかほり』

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 どたばたどたばた。
「ゼロス? ……か?」
 獣王ゼラス=メタリオムは眉をひそめた。
 いつもの部下、ゼロスならもっと静かに出てくるはずだが、と。
 どたどたどたどた……
「???」
 さらに混乱するゼラス。足音は二つだった。
 しかもかなり早くこちらに向かってくるのが聞き取れる。
「だ、誰だ?」

 どばだんっ! 呟くと同時に、けたたましく扉が開く。
 そこには、ぼろべろになった自分の部下ゼロス。ゼラスは目を剥いた。
「ど、どうした!?」
 思わず声を荒げる。
「お、お逃げくださ……い゛っ」
 ぎゅむ。ゼロスは何者かに足蹴にされた。
 哀れ中間管理職。 
「ぜ、ゼロス!」
「よぉ。久しぶりだな」
 ・・・・・・。
 ゼラスは顔をしかめた。
「お前は……誰だ?」
 沈黙が落ちる。
「……相変わらずキツイねえ」
 さらに顔をしかめるゼラス。
 やれやれとため息をつく大柄な男。人間を器として甦った魔竜王ガーヴである。
「…………誰だ?」
「ま、まさか本当に忘れちまったのかよ!」
 こっくりとうなずくゼラス。ふわふわした金髪が揺れる。
「――ふ。お前は昔っからこうだったっけか……?」
 落胆するガーヴ。
 どこからともなく、先をピカピカに磨き上げられたスコップを取り出すゼラス。
「馴れ馴れしい」
「ちょっと待て! オレだ! オレ!」
 ぶぎゅぶぎゅとゼロスの上を後退するガーヴ。
ゼロスは未だ沈黙を守り続けている。否。沈黙せざるえないのだろう。
「最近はオレオレ詐欺というのがはやっていると聞く」
 意外と俗なことを知っている。さすがゼロスのオヤ、とでも言おうか。
「マジで!?」
 ガーヴは命の危機だというのにツッコミを入れた。
「ああ」

 残酷シーンカット

「おお。思い出したぞ!」
 そうゼラスが言ったのは、無抵抗のガーヴをぼろんべろんのぼっこぼこにした後だった。
 ガーヴの背中に乗せた足をどける。
「や……やっとかよ……」
 重そうに体を引きずり、ガーヴは立ち上がる。ダメージは決して浅くない。
「ああ。元気だったか? 三丁目のおばばに飼われている化け猫、三郎次」
 少なくとも。今あなたが元気でなくしたようだが。
「オレは猫か!? さぶろうぢだあっ!? お前は同僚の顔も忘れたのか!」
・・・・・・・・・・・・。
今度の沈黙は長かった。
やおらぽんっと手を打って。
「あ、ああ! 定職屋の……」
 それが同僚なのか、とはツッコミがこなかった。
「ゼラス様! ガウリイさんみたいなボケをしないでください!
 お忘れですか!? 魔竜王ですよ! 寝返った! ま・りゅ・う・お・うっ!」
「……ああ。ごつくなくなったな」
『そーゆー問題かっ!』
 どづごす。
 思わず突っ込んだ二匹の顔面に、スコップがめり込んだのはいうまでもない。


「で。なにをしにきた。ガーちゃん」
「ガーヴだ! ガーヴ!」
 不機嫌そうに言いながら、水音のするビンを掲げて。
「一緒に桜を見に行こうと思ってよ。だがお前がオレを思い出さねえおかげで夜になっちまった。
 まあ。夜桜ってぇのも風流だがな」
「……ふむ」
「ゼラス様。罠かも知れません」
 ガーヴの前にも関わらず、ゼロスはいたって平静に言った。
「ゼロス」
「あ。はい。なんでしょうか」
「お前に後は任せた」
「ええっ!?」
『うし』
 ガーヴは内心でほくそえんだ。
「行こうか。ガーヴ」

                 次回。ゼラスとガーヴが花見します。

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16176ありがとうございますGURE−TO MASA 2004/3/20 18:08:59
記事番号16157へのコメント

無茶なリクではないかと心配してました。
次待ってます。

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16191GURE−TO MASA 様へ そのに無限流人 改め 流空澄 2004/3/23 22:00:50
記事番号16157へのコメント


ああ。月が綺麗だ。

地がつめたい。

空は暗く、吸い込まれそうなほど。還りたくなる。

薄く黄色の球にはかげりなどなく、輝きににぶさなどなく、煌々と天に在る。

地に這う者どもを見下すように。

淡く、冷ややかに、脆弱な光を、地に放つ。

「ふむ。なるほど……
 お前の言うとおり。これほど風流なものはないな」
「だろう?」
 ゼラスは真紅の杯に注がれた酒を飲む。
 満足そうにうなずくガーヴ。
「――ガーヴ。なぜ、私を誘った?
 他にも腹心は居るだろう」
 酔いはしていない。皮肉でもなんでもない。
 ただの問い。
「……あいつ等とは、話しづらいもんでな」
 がりがりと頭をかいて照れくさそうに、苦く、笑いを浮かべる。
「まあ飲めや」
 ガーヴは無言のゼラスの杯に酒を注ぐ。
 溢れた酒は、ゼラスの褐色の肌、腕を伝って地に染み入る。
「ガーヴ。何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
「ねえよ! オレはお前と飲みたかったんだ。最後にな」
 ゼラスの顔が、わずかに凍ったのは、ゼラスしか知らない。
「覚悟、しているのか?」
「ああ……。こうしてお前と飲める時間はもうねえよ。
 フィブリゾが動き出したからな」
「そうか」
「――なあ。ゼラス」
「ん?」
 ごくり、とのどを鳴らしてガーヴは酒を飲み干す。
「綺麗だなあ」
「お前は下品だ」
「ちげえねえ」

 桜が散る。
 
 風に吹かれて。

 脆弱な、淡く、どこか悲しい月明かりに照らされて。

「ゼラス。オレは半端な者として、生をまっとうするつもりだ」
「……どこまでも変なヤツだ」
 ごろりと横になるガーヴ。
「お前の望みを、ここで絶つこともできるのだぞ?
 無用心だ。ガーヴ」
 ふっ、とガーヴは笑う。
「ゼラス。おめえはんなことしねえよ」
「わからんぞ? 私は魔族だ」

 すこしの沈黙。

「――なあ。綺麗だなあ」
「答えになっとらん」
 目をつぶる。
 どちらともなく。
「――オレは生きる。生きてえよ」
「なら生きろ」
 自分でも変なことを言った、とゼラスは笑う。
「――なあ。お前、ちょっとみねえうちに

『綺麗になったなあ』」


ゼラスは静かに立ち上がる。

何も言わずに。

何も言わずに。

ただ、桜の木を、睨むように、目に焼き付けて。

『生きろ』

それは、どちらが言ったのか。あるいは――