◆−小さな国の物語:序文(スレイヤーズではないです)−オロシ・ハイドラント (2004/3/28 18:42:49) No.16208
 ┣「あ」:赤い鳥がもたらしたもの−オロシ・ハイドラント (2004/3/28 18:44:12) No.16209
 ┣「い」:命懸けの移動−オロシ・ハイドラント (2004/3/28 18:46:22) No.16210
 ┣「う」:牛とカエルと食物連鎖−オロシ・ハイドラント (2004/3/28 18:47:10) No.16211
 ┣「え」:絵本の国に必要なもの−オロシ・ハイドラント (2004/3/28 18:48:40) No.16212
 ┣「お」:大きな国が小さな国に−オロシ・ハイドラント (2004/3/28 18:50:59) No.16213
 ┣小さな国の物語:あとがき−オロシ・ハイドラント (2004/3/28 18:54:40) No.16214
 ┃┣Re:小さな国の物語:あとがき−エモーション (2004/3/28 21:36:23) No.16215
 ┃┃┗キノの旅……実は未読だったり−オロシ・ハイドラント (2004/3/29 13:05:40) No.16216
 ┃┗Re:小さな国の物語:あとがき−パッチー (2004/3/30 10:23:00) No.16221
 ┃ ┗Re:ありがとうございます!−オロシ・ハイドラント (2004/3/30 18:13:54) No.16224
 ┣「か」:神様は大切に−オロシ・ハイドラント (2004/4/1 17:53:29) No.16233
 ┣「き」:気になることは−オロシ・ハイドラント (2004/4/1 17:56:12) No.16234
 ┣「く」:クッキーの王者−オロシ・ハイドラント (2004/4/1 18:13:32) No.16235
 ┣「け」:賢者たる由縁−オロシ・ハイドラント (2004/4/1 18:25:53) No.16236
 ┣「こ」:この貧しき地上に−オロシ・ハイドラント (2004/4/1 18:56:11) No.16237
 ┣小さな国の物語:作者の一言(あとがきに代えて)−オロシ・ハイドラント (2004/4/1 18:58:59) No.16238
 ┃┗ちなみに−ハイドラント (2004/4/1 19:09:46) No.16239
 ┃ ┣カ行変格活用(タイトルに意味なし)−エモーション (2004/4/1 22:31:07) No.16240
 ┃ ┃┗Re:……懐かしい言葉(意味は忘れました)−ハイドラント (2004/4/1 23:11:07) No.16241
 ┃ ┗Re:ちなみに−パッチー (2004/4/2 12:40:47) No.16242
 ┃  ┗Re:でも続くかも。−ハイドラント (2004/4/3 14:56:50) No.16251
 ┣「さ」:桜の季節と殺人鬼−ハイドラント (2004/4/12 17:55:30) No.16270
 ┣「し」:小説の国対絵本の国−ハイドラント (2004/4/12 20:11:57) No.16272
 ┃┗サ行変格活用・連用形(やっぱりタイトルに意味なし)−エモーション (2004/4/14 21:10:25) No.16274
 ┃ ┗Re:「さ」と「し」は「さ」行では、比較的シンプルかも?−ハイドラント (2004/4/15 21:26:24) No.16275
 ┣「す」:推理の女神と探偵小説家と探偵小説家の生きる道−ハイドラント (2004/4/24 18:00:47) No.16301
 ┣「せ」:世界のある場所でそう叫んだ彼は……−ハイドラント (2004/4/24 19:15:26) No.16303
 ┣「そ」:荘厳な死体−ハイドラント (2004/4/24 19:23:45) No.16304
 ┣おまけ:ウロボロス――存在の耐えられない愚かしさ−ハイドラント (2004/4/24 20:49:15) No.16305
 ┃┣推理の女神様は世界の中心で荘厳にウロボロスの基礎理論−エモーション (2004/4/25 22:10:53) No.16316
 ┃┃┗Re:探偵小説家は愛を叫んだけものの死体に耐えられない愚かしさを(対抗)−ハイドラント (2004/4/27 22:30:04) No.16329
 ┃┗お疲れさま〜!−じょぜ (2004/4/26 02:26:04) No.16318
 ┃ ┗ありがとうございました!−ハイドラント (2004/4/27 23:46:47) No.16331
 ┣「た」:高い空へ−ハイドラント (2004/5/5 12:03:39) No.16350
 ┗おまけ2:細長い物語−ハイドラント (2004/5/5 12:19:25) No.16351


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16208小さな国の物語:序文(スレイヤーズではないです)オロシ・ハイドラント URL2004/3/28 18:42:49



 ――小さな国の物語――


 序文


 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。だが、あまりにも小さな国だったのはともかくとして、地図に載ったことがなかったのは、その国が我々の住む星とは別の星の存在していたからであり、その星の地図には当たり前のように載っていた。
 その国は経済大国と呼ばれていたが、ひどい不況に見舞われていた。それでも呼称と実像を足して割って、普通と国と呼ばれることはあまりなかった。
 その国が栄えていた時期が不明なため、詳しい年代も同時に不明なのだが、私の先祖がその国にいき、若者を一人攫って来た。その若者は何の役にも立たない若者だったが、我々の言葉を文字を覚えることが出来る若者であり、それを使って物語を紡ぐことが出来る若者であった。
 若者の書いたいくつかの物語は、けして我々の好むような物語ではなかったが、それでも一般に供給されている物語の絶対量があまりに少なかったため、私の先祖は若者の書いた物語を、本に纏めて出版した。
 だが、三日も経たぬ内に本は絶版となった。なぜなら、その本を偶然手に取った時の王が、あまりにくだらないと言って憤慨し、その本を絶版にするよう出版社に怒鳴りつけたからだ。
 すでに出回っていた本はすべて回収され、処分されたし、若者もくだらない物語を書いた罪で処刑された。こうして若者の物語に関するもので残されているものは、災いの元凶であり若者の手書きの原稿のみとなり、それは私の代まで封印されて来た。
 私は今、若者の物語を世に公表したいと思う。先祖の時代には認められなかった物語も、今の時代なら認められるかも知れない。
 だが実を言うと、この私も物語の内容を知らない。なぜならば物語を読んしまうと、その物語をくだらないと思うかも知れず、万が一にもそう思ってしまうと、公表する意欲をなくしてしまうからである。ゆえに私は物語を読まないのだが、果たしてそれで良いのだろうか?
 
 
 

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16209「あ」:赤い鳥がもたらしたものオロシ・ハイドラント URL2004/3/28 18:44:12
記事番号16208へのコメント

 「あ」:赤い鳥がもたらしたもの


 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。。しかし、近隣諸国にも似たような国があったので、住む人々は自分達だけで劣等感を抱え込むようなことはなく、意外と普通に暮らすことが出来たのだから、その点に関しては特に何の問題もなかった。それでも、歴代の王が常に暴君で、毎年課される重税に、人々は困り果てていた。
 そんな国にある日、赤い鳥が飛んで来た。鳥はこの小さな国を当然のように黙殺して、彼方の空に飛び立っていった。
 畑を耕していた男が偶然にもそれを見て、歓声を上げた。すぐにでも皆に教えにいきたい気分になったが、その男は真面目な気質の男だったので、畑仕事を終えてからにしようと思い、その欲求を抑え込んだ。だが日が暮れて男が畑仕事を終えた頃には、赤い鳥のことは彼の妻と娘を含めた国中の人々に伝わっていた。その夜には祭り騒ぎがおこなわれ、五人の死者と二十人の負傷者が出た。
 その日の翌日、旅人がこの国を訪れた。普段はよそ者を邪険に扱っていた人々も、今日ばかりは特別であった。
 いかにしてそれを可としたのかは定かではないが、地図にも載っていないこの国に関して多少の予備知識を持っていた旅人は、自分が邪険に扱われないことを不思議に思い、そして想像を膨らませ、この国に何か良いことが起こったのだ、との考えにいきつくと、何が起こったのかを近くにいた男に、さりげなく尋ねてみた。
 すると返って来たのは赤い鳥が飛来した話である。旅人はさすがに赤い鳥が何を意味するのかについての知識は持ち合わせていなかったが、その男が懇切丁寧に教えてくれた。
 その国にとって赤い鳥の飛来は、落雷と解放の前兆を意味する。なぜならば過去に赤い鳥が飛来したある年には、暴君続きのこの国の中でも最も暴君という名が相応しかった王が、落雷によって死亡し、それよりは少しはまともな王に代替わりしたからである。さらにそれだけではなく、別の年には、国中を荒らし回っていた傭兵崩れのごろつき達が、同じように雷を浴びて全滅した。だから今年も落雷が起こり、この国に害なす者がそれを浴びて死亡するに違いない。そして今回落雷を浴びるのは、以前に落雷によって死亡した王にも引けを取らぬ暴君である現在の王であろう。
 これを聞いた旅人は、まず仰天し、そして憤慨した。憤慨したのはあまりにも愚かだと思ったからだ。赤い鳥が落雷をもたらすなど、あまりにも迷信的で無知蒙昧で愚劣極まりない。実はこの旅人、何よりも愚かを嫌う男だったのである。
 旅人は立ち上がった。愚かな国に革命をもたらすために。旅人がどのような理想を持ち、具体的に何を成そうとしていたのかは、記録には残されていないため不明だが、旅人は確かな理想と目的を持って、国民に呼び掛けた。
 愚かな国民の半数は無理解ゆえに彼の元に集い、残りの半数は無理解ゆえに彼の排除を望んだ。そして事態を傍観していた王はここに来て危機感を覚えた。
 目に見えないことを信じられず、力押し以外の作戦を考えつくことが出来なかった王は、旅人を排除するために軍を派遣した。
 理想に支配され、現実の見えない旅人は、集まった半数の国民を革命軍と名付け、王の軍を迎え撃たせた。
 愚かだが、何が得を生むのかは知っていたつもりの残り半数の国民は、二つの勢力が共倒れすることを望んで、何もしなかった。
 王の軍と旅人の革命軍の戦いは、なかなか決着が着かなかった。なぜなら王の軍は弱小国ゆえに戦を知らず、旅人の革命軍は即席ゆえに軍としてうまく機能をしなかったからだ。
 やがて軍勢を用いての戦いは効率が悪いとされ、王と旅人の一騎打ちがおこなわれることとなった。だが今一騎打ちがおこなわれようとしたその瞬間に、王に知らせがもたらされた。
 この国以上に弱小国である隣国の軍が、内乱の隙を狙って攻め込んで来たのだ。王は動揺してすぐさま軍を派遣しようとしたが、動揺した隙に旅人に首を斬り落とされてしまい、結果としてこの国は隣国に敗北し、占領され、旅人も危険思想を持つとされて処刑された。
 こうしてこの国は隣国に支配されたが、それによって領土が広まり、国が地図に掲載されるかも知れないと国民は喜んだし、何より新たな王は暴君ではなかった。
 だがここに落雷が落ちて、新たな王が死に、後継ぎ騒動が勃発して、やがて国が分裂し、対立し合って、共倒れをし、最終的には国が滅びた。

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16210「い」:命懸けの移動オロシ・ハイドラント URL2004/3/28 18:46:22
記事番号16208へのコメント

 「い」:命懸けの移動


 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。だが住む者の中でそれを知る者はいても、気にするものはいなかった。適度に愚劣だったのである。
 さて、その国に住んでいるのはうさぎと亀と人間だった。うさぎと亀と人間は、その国の中で、同一の場所には居住せず、境界を定めてそれぞれ別々に暮らしていたが、時々その境界線が変動することがあった。
 その変動は突発的に起こり、その原因は全く不明であって、うさぎの責任でも、亀の責任でも、人間の責任でも多分ない。では誰の責任なのかというと、境界線の責任と言うのが最も相応しいかと思われる。
 ある古い書物にこの国についての記録が残っており、そこには、「その国をうさぎと亀と人間の三つの国に分かつ境界線は、いつしか自ら意志を持つようになり、境界線はその意志よって自ら変動する。その変動はうさぎにも、亀にも、人間にも瞬時に察知出来た。なぜ境界線自身が意志を持つようになり、なぜその意志によって境界線が変動し、なぜその変動がうさぎや、亀や、人間に瞬時に察知出来るかは定かではないが、事実としてそうなっているからには、議論をおこなうのは無意味である」との記述が残されている。
 ゆえに議論をおこない、境界線の変動に関して懐疑的な態度を示すような無意味な行為は、ここではおこなわない。それよりもこの国の話の中では、一番興味を惹くと考えられる、この国が滅亡する話をする。
 それは以下だ。
 境界線が変動すると、うさぎや、亀や、人間は、移動を余儀なくされる場合があった。なぜなら境界線が変動した瞬間に、自らの踏んでいる土地が自らの領域でなくなる場合もあるからだ。そうなると自らの領域でない場所にいる者は、自らの領域に当たる場所まですぐさま移動した。すぐさま移動しなければ、他の種族がそこにやって来て、種族の領域を侵した罪で処罰を受けるからだ。この処罰は処刑と言い替えても良かった。つまり他種族の領域を侵した者は、いかなる理由があろうとも、その罪によって処刑された。
 これによってまず亀が滅んだ。なぜならば亀の歩みはひどく遅く、境界線が変動して、自らの踏んでいる土地が自らの領域でなくなっても、すぐさま自らの領域に当たる場所まですぐさま移動することが出来なかったからだ。亀は大量に処刑され、数が減って絶滅した。
 そして亀が滅んだことにより、亀の領域であった場所は冥界の領域となった。この冥界の領域に足を踏み入れたものは、即座に命を奪われる。
 こうして残りの二種族も滅びた。残りの二種族は、境界線の変動により自らの踏んでいる土地が自らの領域ではなく冥界の領域になると、即座に命を奪われたからだ。
 滅びる直前の二種族は、とにかく走り回っていた。境界線の変動に備えていたのだろうが、自ら冥界の領域に踏み入ってしまい、自滅する者も多数いた。
 現在、この国は冥界の領域が全土を覆っており、誰にも近付くことが出来ない状態になっている。

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16211「う」:牛とカエルと食物連鎖オロシ・ハイドラント URL2004/3/28 18:47:10
記事番号16208へのコメント

 「う」:牛とカエルと食物連鎖


 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。
 そこには牛とカエルが住んでいたが、けして漫才コンビではなかったし、牛もカエルも後ろに族をつけられるほど大量にいたので、もしも漫才コンビだったら凄まじいことになっていた。
 牛族とカエル族は同じ国に共存し、敵対し合ったり、迫害し合ったり、差別し合ったりもせず、いわば仲良く手を取り合って生きていたのだが、食料と呼べるものが非常に少なかったので、大変困っていた。
 そこである日、カエル族のある男が提案を出した。隣国に住む人間を狩って、食料にするのはどうだろうか。これには皆が賛成した。
 こうして牛族とカエル族の人間狩りが始まった。牛族とカエル族は数だけは多いため、それは容易ではなかったが成すことが出来たし、成し続けることが出来た。
 しかし問題は別にあった。人間狩りを始めてみて分かったのだが、カエル族は人間の肉を食べることが出来なかった。食べようとすると吐き出してしまい、それでも無理矢理飲み込むと、身体に異常を来たして死んでしまった。
 カエル族の者達は困ったし、牛の者達はカエル族の者達を心配した。どうすれば良いのだろうかと悩み、悩んだ。そして思いついたのが、人間狩りで得た人間の肉はすべて牛族に譲る代わりに、牛族は人間狩りで最も活躍出来なかった牛を、肉にしてカエル族に捧げるという案であった。
 これには一応全員が賛成したが、当然のように牛族とカエル族の仲は少しずつ険悪になっていった。牛族は食料を得るたびに仲間を失わなければならないのだし、カエル族は同族同然に暮らしていた牛を食べなければ生きてゆけない。
 そして具体的な内容は不明だが、ある揉めごとが発展して、牛族とカエル族の間で激しい戦争がおこなわれた。そして戦争をしている隙に今まで狩られる一方だった人間が軍を率いて現われ、牛族とカエル族を虐殺し、その肉を自国に持ち帰って食料にした。
 全世界で、肉牛や食用ガエルが初めて食べられたのは、この時だという説もある。

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16212「え」:絵本の国に必要なものオロシ・ハイドラント 2004/3/28 18:48:40
記事番号16208へのコメント

 「え」:絵本の国に必要なもの


 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。だが、その国では、国が生まれてから滅びるまでずっと絵本が流行し続けていたせいか、絵本の中の世界も国の一部だと見なすべきだ、との発言があり、その発言があった事実を踏まえて国の大きさを考えてみると、途轍もなく大きな国であるとも言えるため、その国が、地図に載ったことがないのは事実だが、あまりに小さな国だったのは必ずしも事実ではないと言える。
 すでに前述したが、その国では、国が生まれてから滅びるまでずっと絵本が流行し続けていた。人々は素晴らしい絵本を読むためだけに生き、素晴らしい絵本を書き描く絵本作家は、神にも等しいとされた。
 ある年、国王主催の絵本大会という大会が開催された。絵本大会とは絵本を書き描く大会であり、それ以外の何者でもなかった。開催期間は一年で、参加者はこの一年以内に絵本を書き描いて、国に提出する。提出された絵本はさらに一年掛けて、選考委員にすべて読まれ、選考委員はその中から最も素晴らしいとされる絵本を選び、その選ばれた絵本を書き描いた絵本作家が優勝者となる。
 優勝者に賞金や賞品はなかったが、この絵本大会には国民のほとんどが参加した。なぜなら優勝すれば、絵本作家としての評判が大きく上がるからである。王も参加したし、王妃も、王子も、貴族も、農民も、男も、女も、その中間の者も、子供も、大人も、大人びた子供も、子供じみた大人も、牛も、カエルも、皆揃って参加した。
 この国では、素晴らしい絵本を書き描く人間は、絵が上手で、文章が巧みで、ストーリーを練るのが得意な人間だとされていたが、その内のどれかが欠けていても、他のどれかが特別秀でていれば、当てはまる場合もあるとされた。
 優勝候補は当初、裏路地外の覆面天才絵本作家のトーマスだと誰もが思っていたが、この裏路地外の覆面天才絵本作家のトーマスは実はこの世には存在せず、裏路地外の覆面天才絵本作家のトーマスの絵本はすべて数人の絵本作家の合作作品であることが判明し、勝負の行方は誰にも分からなくなった。
 だが、優勝者が誰であるかはどうでも良い話だ。この大会が開催されたせいで、食糧の生産がおこなわれなくなり、そのまま冬を迎えてしまって、国民の多くが飢え死に、国自体が滅んだのだから。

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16213「お」:大きな国が小さな国にオロシ・ハイドラント 2004/3/28 18:50:59
記事番号16208へのコメント

 「お」:大きな国が小さな国に

 
 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。
だが住んでいたのは蟻なので、その国は蟻にとってはけしてあまりにも小さな国ではなく、むしろあまりにも大きな国であった。そして蟻達は殺虫剤を撒かれたので、あっさりと絶滅して、その国の土地は他の国に支配された。
 これは今の今まで定説とされて来たが、今の今になってそれを覆す新説が唱えられた。
 確かにその国に住んでいたのは確かに蟻だが、その蟻は巨大だった、という説である。
 そんな馬鹿な、と大勢の学者が口を揃えて叫んだが、その説を唱えた者が証拠を提示すると、誰もがそれを認めざるをえなくなった。
 だがその証拠が何なのかは実は公には明かされていない。それでもその証拠によって大きな国は小さな国とされたのは事実であると考えられるため、それを疑うことはしない。
 ただ筆者は巨大な蟻に殺虫剤を撒いた者の勇姿を讃えたい。

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16214小さな国の物語:あとがきオロシ・ハイドラント 2004/3/28 18:54:40
記事番号16208へのコメント



 あとがき


 これは日本ファンタジーノベル大賞作家、佐藤哲也氏の掌編小説集「異国伝」に収められている作品を意識して、書いたオリジナルの小説集だと思われます。ただし特に意識したのは「あ」のみであって、他は自由に書いています。
 佐藤氏の「異国伝」には「あ」から「ん」までの四十五の物語が収められていますが、一度にそれだけ考え、書くのは大変なので、とりあえず五つを公開します。
 どれもワンアイデアで書かれたものに過ぎませんが、私としてはなぜか妙に気に入っています。
 ところで「異国伝」を始めとする佐藤氏の作品ですが、私の話を読んで少しでも面白いと思った方は、手に取られた方が良いかも知れません。好みは分かれるかも知れませんが、もっともっと面白いはずですよ。手に入れ難いかも知れませんが、図書館にいけばあるかも知れませんし、ネット注文でなら手に入るかも知れません。
 佐藤氏のいくつかある作品の中で、私が好きなのはやはり「妻の帝国」。あのリアルで濃密で悪夢的で悲劇的なストーリーと、独特な文体は(忘れたくても)忘れられません。「直感による民衆独裁」理念とした国家が築かれるという、何となく分かるような全く分からないような話です。
 それでは、今日はこれで失礼致します。
 ちなみに本当に続くかどうかは分かりません。続くとしたら、「か」は神に関する話になるんだろうなあ……


 参考文献
 「イラハイ」:佐藤哲也(新潮社)
 「異国伝」 :佐藤哲也(河出書房新社)


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16215Re:小さな国の物語:あとがきエモーション E-mail 2004/3/28 21:36:23
記事番号16214へのコメント

こんばんは。
今回もまた……凄いといいますか、最近このような感じの話を書かれていますね。
各「国」の話。全体に、どことなく漂うけだるさのようなものが、不思議な雰囲気を
持っている話でした。

「赤い鳥の言い伝え」が、結果的に成就しているような「あ」の話。
実は冥界側の密かな侵略作戦だったのでは? な、理不尽でブラックな「い」の話。
些細な変化がもたらした悲劇、のような「う」の話。
本好きにとってはブラックだけれど、ある意味本望(笑)ともいえる「え」の話。
「大きさ」基準が、奇妙な固定概念に囚われているような「お」の話。

どれも淡々と起きた出来事が書かれていて、国の興亡を端で眺めている気分になりました。

> これは日本ファンタジーノベル大賞作家、佐藤哲也氏の掌編小説集「異国伝」に収められている作品を意識して、書いたオリジナルの小説集だと思われます。ただし特に意識したのは「あ」のみであって、他は自由に書いています。

そうでしたか。私は読んでいて何となく、「キノの旅」を連想していました。
あれも淡々と、いろいろな国の話や、旅で出会った人や出来事の話が、書かれていますから。
(あれの「本の国」の話も、本好きには身につまされる……(笑))
もしかしたら、キノの作者さんは、佐藤哲也氏の「異国伝」の影響を受けているのかも
しれないと、今回思いました。(拾い読みしかしていないので、断定は出来ないですが)

このところの作品のレベルの高さに、ひとしきり感心するばかりです。
次作品はどうなるのか、本当に楽しみです。
それでは、今日はこの辺で失礼いたします。

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16216キノの旅……実は未読だったりオロシ・ハイドラント 2004/3/29 13:05:40
記事番号16215へのコメント


>こんばんは。
どうもこんばんは。
>今回もまた……凄いといいますか、最近このような感じの話を書かれていますね。
なぜなんでしょうか。妙に変わった話を書きたくなります。
TRYノベルが結構真面目なので、ふざけてしまいたくなるのかも知れません。
>各「国」の話。全体に、どことなく漂うけだるさのようなものが、不思議な雰囲気を
>持っている話でした。
ありがとうございます。「国」の話を書く力はまだまだな気もしますが、少しずつうまくなっていこうと思います。

>
>「赤い鳥の言い伝え」が、結果的に成就しているような「あ」の話。
>実は冥界側の密かな侵略作戦だったのでは? な、理不尽でブラックな「い」の話。
>些細な変化がもたらした悲劇、のような「う」の話。
>本好きにとってはブラックだけれど、ある意味本望(笑)ともいえる「え」の話。
>「大きさ」基準が、奇妙な固定概念に囚われているような「お」の話。
書いた本人としては「う」と「え」が好きです。「う」はあんまり光景を想像したくないですが(苦笑)。
 
>
>どれも淡々と起きた出来事が書かれていて、国の興亡を端で眺めている気分になりました。
そうなんですよね。
あまり綿密に書かないことによって、完全に傍観者になりきる。
心理描写などを詳しく書いたりすると、感情移入してしまい、人事として見れなくなる可能性がありますからね(私にそれが出来る技術があるかどうかは別として)。

>
>> これは日本ファンタジーノベル大賞作家、佐藤哲也氏の掌編小説集「異国伝」に収められている作品を意識して、書いたオリジナルの小説集だと思われます。ただし特に意識したのは「あ」のみであって、他は自由に書いています。
>
>そうでしたか。私は読んでいて何となく、「キノの旅」を連想していました。
>あれも淡々と、いろいろな国の話や、旅で出会った人や出来事の話が、書かれていますから。
>(あれの「本の国」の話も、本好きには身につまされる……(笑))
実は「キノの旅」未読なんですよね。最近は読もうかなという気持ちもあるんですが、それでも迷っていたところです。
このレスを見て、興味が沸いて来ましたので、今度見かけたら買って読むかも知れません。
>もしかしたら、キノの作者さんは、佐藤哲也氏の「異国伝」の影響を受けているのかも
>しれないと、今回思いました。(拾い読みしかしていないので、断定は出来ないですが)
いえ、それはないはずです。
(初めて知った時は古い作品だと思っていたので)本の奥付を見て知った時は結構意外に思ったんですが、「異国伝」は去年の九月頃に出たかなり新しい本で(それに書き下ろしだったはずですから)、「キノの旅」よりも新しいですから。
でも「イラハイ」を始めとする佐藤哲也作品には影響を受けているかも知れませんね。まあ「キノの旅」自体をまだ読んでないので、分かりませんけれど。
>
>このところの作品のレベルの高さに、ひとしきり感心するばかりです。
レベル……高いですか?
昔と違って納得のいくレベル(そんなに高くないですが)に達していないものは出していないつもりなので、そのためかも知れません。
とにかくありがとうございます。
これからも出来る限り私の能力の範囲内で良いと思えるものを出していきたいです。
>次作品はどうなるのか、本当に楽しみです。
>それでは、今日はこの辺で失礼いたします。
それでは、ご感想どうもありがとうございました。

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16221Re:小さな国の物語:あとがきパッチー 2004/3/30 10:23:00
記事番号16214へのコメント

こんにちわ!!
・・・・凄いですねぇ・・・・
ブラックユーモアって言うんですかね?キノの旅しか知りませんが、凄く面白いです。
一番印象的だったのは絵本の国です。
これは「ああ、やっぱそうなるか・・・」って納得してしまったし・・・今まで良く滅びなかったなぁ・・って思わず感心してました。
でも、良く考えたら少し背筋が寒くなりますね・・・特に赤い鳥なんか。
王様に死をもたらす鳥の到来が、吉兆なんですからね・・・まあ、そこまで酷い王様なんでしょうが・・・
それに牛とカエル。これを見たとき、ハイドラントさんが頭巾被って漫才でもするのかな、と思って読んでたら、仲間の牛をカエルに差し出す・・・・・
怖いって思いました。自分がもしその牛だったら、昨日まで仲間って親しんでいた連中に料理されて食われるんですからね・・・・

ワンアイデアでこういう事ができるって、実は凄くないですか?w
自分は悩みに悩んでからやっと一行・・とかいうタイプなんで、すごいなぁ、てひたすら感心してます。

とんでもなく短い駄レスですみません。
次のか行、楽しみに待ってます(笑)
それでは!!

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16224Re:ありがとうございます!オロシ・ハイドラント 2004/3/30 18:13:54
記事番号16221へのコメント


>こんにちわ!!
こんばんは。

>・・・・凄いですねぇ・・・・
>ブラックユーモアって言うんですかね?キノの旅しか知りませんが、凄く面白いです。
ブラックユーモアをメインにしているのは間違いないでしょう。寓話的とも言えるかも知れません(参考にした「異国伝」は寓話性を殺したような作品だと言われますが)。


>一番印象的だったのは絵本の国です。
>これは「ああ、やっぱそうなるか・・・」って納得してしまったし・・・今まで良く滅びなかったなぁ・・って思わず感心してました。
書いた私もこれは好きですね。組み立て途中の建物がいきなり壊れるみたいな感じで(笑)。

>でも、良く考えたら少し背筋が寒くなりますね・・・特に赤い鳥なんか。
>王様に死をもたらす鳥の到来が、吉兆なんですからね・・・まあ、そこまで酷い王様なんでしょうが・・・
確かに考えると恐いかも。
でもブラックユーモアの世界だし……?

>それに牛とカエル。これを見たとき、ハイドラントさんが頭巾被って漫才でもするのかな、と思って読んでたら、仲間の牛をカエルに差し出す・・・・・
>怖いって思いました。自分がもしその牛だったら、昨日まで仲間って親しんでいた連中に料理されて食われるんですからね・・・・
これはパ●ット●ペットしか頭にない状況で造りました。書いてくと意外と道は開かれるもんらしいです。
ちなみに一番いきあたりばったりですが、一番好きです。

>
>ワンアイデアでこういう事ができるって、実は凄くないですか?w
>自分は悩みに悩んでからやっと一行・・とかいうタイプなんで、すごいなぁ、てひたすら感心してます。
多分、凄くないと思います。
走り出した物語にアイデアをぶつけて収まる形に無理矢理収めているだけで、思い通りに書けるなんてことは一度もありえていませんから。
単に書き方の問題でしょう。
>
>とんでもなく短い駄レスですみません。
>次のか行、楽しみに待ってます(笑)
>それでは!!
いえ、かなり嬉しかったです。
ちなみにか行は「く」以外全部文章になっていますから、一応投稿しようと思えば数日中には可能でしょう。
それでは、本当にご感想どうもありがとうございました。

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16233「か」:神様は大切にオロシ・ハイドラント 2004/4/1 17:53:29
記事番号16208へのコメント

 「か」:神様は大切に








 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。
その国には王がいなかった代わりに神が住んでいたが、この神は信仰の対象ではなく、非常に幸の薄い神であった。
 そんな神の仕事は、人々の運命を定めることであり、当然のことながらその神は人々の運命を定める力を持っていた。それなのになぜ信仰の対象にならなかったのかというと、実はその神は、気が弱く、人に暴力を振るわれるのが恐くてたまらない、情けない神だったからである。
 もしある人を不幸な出来ごとに遭遇させれば、その人は怒って神である自分に文句を言い、暴力を振るうだろう。そのある人が別のある人だとしても十中八九結局は同じだ。
 また神である自分に文句を言い、暴力を振るうことの出来ない、神以上に気の弱い人間や、子供や、老人や、怪我人や、病人や、牛や、カエルを不幸な出来ごとに遭遇させた場合でも、その代理人がやって来て、神である自分に文句を言い、暴力を振るうだろう。
 そのため神は、暴力を振るわれないためにも、すべての人々を幸福にするよう必至で努力した。端的に言えば、人々に媚びた。だがそれはあまりにも困難なことであったため、神はいつしか精神病を患い、狂い、人々の運命を滅茶苦茶にして、国自体を滅ぼして自らも死んだ。

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16234「き」:気になることはオロシ・ハイドラント 2004/4/1 17:56:12
記事番号16208へのコメント

 「き」:気になることは








 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。だが、この国は、元々、百花繚乱の花が咲き、様々な作物が大量に実る大変豊かな国だった上に、大変な武勇を誇り、牛とカエルの国を滅ぼした罪を持つ人間の国を断罪の名目で攻め落とし、赤い鳥を落雷と解放の前兆と考える国を攻め滅ぼした人間の国に侵攻された時も、逆侵攻を仕掛け、勝利し、領土を大きく増やしたので、それはもう楽園のような国だったとされる。
 それにも関わらず、地図に載らなかったのは、実は牛とカエルの国を滅ぼした国と、赤い鳥を落雷と解放の前兆と考える国を攻め滅ぼした人間の国が同一国で、本当はそれほど領土は広くなかったからだという説と、牛とカエルの国を滅ぼした国と、赤い鳥を落雷と解放の前兆と考える国を攻め滅ぼした人間の国を滅ぼし、領土を増やしてから、この国自体が滅びるまでの間に、地図は世界のどの場所でも生産されなかったからだという説があるが、真実は闇の中である。
 それはともかくとして、ある日、その国の王には何かをひどく気にしていた。そして気になっているそのことがなんであるのかを忘れていたため、たいそう悩んでいた。
 そこへ一人の大臣が現われ、王が気になっていることが何であるのか言おうとしたが、王はあくまでも自身の力で気になっていることが何であるのかを思い出そうとしていたので、余計なことをする大臣の首を刎ねた。
 それから一週間が経ち、王は気になっているのことが何であるのかを思い出した。思い出したのは、ちょうど空腹を感じ、食事を取ろうとした時にである、城内に食糧がないのに気付き、そして慌てて、窓から外を見ると、そこには無数の兵隊の姿があった。
 実は王は篭城していたのであった。当然、外に見える兵隊の群れはこの国に悪意を持った他国のものである。
 王は慌てて対策を練った。このままでは兵糧攻めにされてしまう。ならばどうすれば良いのか。
 そうやって考えている内に、妙案が浮かんだ。王は一週間前に斬り落とした大臣の首に王冠を載せ、自分は騎士の格好をして、外に出た。
 そして声高々にこう言った。
「王はこの私が討ち取った。私はこの王に仕えていた騎士だが、ずっと気になっていることがあった。なぜ自分の王がこのような王なのかと。ゆえに私が王を討ち取ったのは、貴公らの国に寝返り、命を長らえたいという意志ゆえではなく、私の騎士としての心が貴公らの国の王に傾いていたからだ。ゆえに私は貴公らの国の王に仕えることを望む」
 すると敵軍の総大将は答えた。
「貴公の志は実に見事なるものである。だが我々の国にはあいにくと王はおらん。恐らく貴公は我々の国を、どこか別の国と取り違えておるのだろう。我々としては、我々の国をどこか別の国と取り違えられるのは非常に心外なことだ。ゆえに貴公の志は認めるが、貴公の発言は死罪に値するため、それらを相殺し、貴公を我が国に寝返ることを認めん代わりに、罪は不問としよう。従って貴公は貴公が討ち取った王に今も仕えておることとなる。そうなれば貴公は敵だ。覚悟せい」
 篭城をしていたことの気付いてから命を断たれる瞬間まで、王はずっと気になっていた。相手国がいかなる国であるのかということについて。

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16235「く」:クッキーの王者オロシ・ハイドラント 2004/4/1 18:13:32
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 「く」:クッキーの王者








 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。
だが地図に載らなかったのは、単に版図が狭かっただけでなく、その国が正義や道徳や知性などとは全くの無縁で、欲望や愚劣と仲の良い国だったからである。
 その国の国王には二人の息子がいた。この二人の王子は一卵性の双子で、顔立ちはよく似ていたし、性格にしても大差はなかったが、好きな食べものだけは見事に異なっていた。
 兄はケーキが大好物で崇拝さえしており、逆にクッキーを嫌悪し、ドブネズミの食べるものと蔑んでいた。
 弟はクッキーが大好物で崇拝さえしており、逆にケーキを嫌悪し、デブガエルの食べるものと蔑んでいた。
 そしてそのせいで、双子の王子はよくケンカをした。掴み合い、殴り合いだけではなく、より陰湿なこともし、また相手に暗殺者を仕向けるなどということもあったらしいが、それでも二人は命を落とすことなどなく、健やかに成長していった。
 双子の王子がようやく成人した年、王が亡くなった。
 これにより王位継承権を巡っての騒動が勃発するだろうと、誰もが思ったが、実はその前日の夜に王は、双子の王子の兄の方を呼び出して、彼に王位を継ぐようにと言っており、その事実を証明出来る第三者がいたため、王位は即座に兄のものとなった。こうして兄は思いのままに国を動かし、国民から多くの税を徴収し、気に入らぬ者を片っ端から処刑する権利を得た。
 だが納得のいかない弟王子は、一度は引き下がった振りをし、国内の最も豊かの領地を与えられたのみで満足した様子を見せたが、王である兄についての醜聞を流し、確実に手勢を集め、王位簒奪のために、王城へと攻め込んだ。
 この勝負は結果として弟の軍が勝利したのだが、いかなる方法を用いたのか、戦乱が終息した時には、兄と弟はすり替わっていた。
 つまり殺害された兄であると思われている人物こそが弟で、勝利者である弟であると思われている人物こそが兄となっていたのだ。
 こうして兄は弟と化して変わらぬ地位を維持し続けることに成功した。未だに王である彼は、国を思いのままに動かし、国民から多くの税を徴収し、気に入らぬ者を片っ端から処刑して回った。弟の振りをし続けるのは大変だとよく思われるが、少年時代に弟の振りをして悪事を働くということは何度もしていたし、第一王であるため名前で呼ばれることはなかったので、それはむしろ容易いことであった。
 だが、ある日を境に兄は、夢を見るようになった。その夢とは、弟の霊が恨めしげな声を上げて襲い掛かって来る夢であり、それは暴君と呼ばれる兄にも良心がある証拠でもあったが、大切なのは、兄がそれによって苦しめられたことである。
 兄は弟の霊を慰めるために慰霊碑を建てることにした。もちろんこれは良心によってではなく、こうすれば夢に出て来る弟の霊を追い払えるという冷静な計算に基いておこなわれたのだが、もちろん公式の記録には「良心によって」と記された。
 だが公式には死んだとされているのは兄の方であり、慰霊碑に刻まれた名は当然兄のものであったため、弟の霊は依然夢に現われ続けた。
 兄は思い切って、今の自分の名である弟の名を刻んだ慰霊碑をこっそり建てた。
 これにより弟の霊は夢に現われなくなったが、その慰霊碑が見つかると、今度は双子のすり変わりに関する噂が流れ始めた。
 そして兄は追い詰められ、噂が真実であることを否定するために、あることをさせられた。それはクッキーを食べることである。
 もう一度言うが、彼はクッキーを嫌悪し、ドブネズミの食べるものと蔑んでいた。いや今となってはクッキーこそは魔王サタンが地上を侵略するために用いた脅威の兵器であり、それを食す者は悪魔の毒によって命を落とすと本気で信じており、同時にクッキーを食べるドズネズミを、サタンの化身であるとしてこの世から消し去ることを企んでいた。このことから、このような国にも基督の教えは伝わっていたということが推測されるが、彼のような狡猾な男が心から聖書の神を信じていたとは思えない。
 とにかく兄はクッキーを食べることが出来なかった。食べれば死ぬと思っていたのである。
 だが、今はそうも言ってはいられない。
 彼は長く悩んだ末に、勇気を振り絞ってクッキーを口に入れた。
 その時である。口の中に甘味が広がった。
 そのクッキーは砂糖加減が実に良く、また焼き加減も最高で、味も触感も超一流の出来だった。それはこのクッキーがこの国に偶然訪れていた世界一のクッキー職人が焼いたものであったからである。
 兄はそのクッキーを、美味であると評した。これは半分は偽りであったが、半分は正直な意見であった。
 こうして兄は自分が弟であることを証明出来たのだが、調子に乗って毎日、三食とティータイムの時間にクッキーを出すよう城の料理人に言ったのだが、これにより悲劇が起こった。
 城の料理人の作ったクッキーはまさしくドブネズミの食べるものでしかなく、ドブネズミの食べるものを口に含んだ兄は、あまりの不味さにショックで死んだ。
 こうして悪しき王家は絶え、悪政から解放された国民は手を取り合って喜んだ。

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16236「け」:賢者たる由縁オロシ・ハイドラント 2004/4/1 18:25:53
記事番号16208へのコメント


 「け」:賢者たる由縁

 





 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。だが、王はそれで充足していた。
 その国には三人の賢者がいたが、この賢者達はただの賢者ではなく、時間よりも急速に回転する頭脳を持ち、近い未来を予測、つまり予言をすることが出来た。言い換えれば、それが可能な者だけが賢者と呼ばれ、それ以外の者は、始めに「き」のつく言葉(ただしこれは我々の言語に直せばの話である)で呼ばれ、火焙りにされた。
 三人の賢者はそれぞれ一年に十二回、予言をおこない、王は三人合わせて合計三十六回の予言を聞いたが、いつしかそれが面倒になり、数分の一かに減らせないかと考えた。そして三人の賢者の内、最も賢者に相応しくない者を、始めに「き」のつく言葉が相応しい者だとして火焙りにしてしまおうとの考えにいきついた。賢者に相応しくない者とはつまり、予言の能力において劣っている者である。
 だが三人の賢者の予言の能力にはそれぞれ個性があり、特徴があって、優劣を判断するのは困難であった。
 例えば、最初の賢者は十二回の予言の内、十一回は的中するが、悪い予言しかもたらさず、評判が悪かった。
 二番目の賢者は、十二回の予言の内、六回しか的中しないが、良い予言しかもたらさず、評判が良かった。
 最後の賢者は、十二回の予言の内、一回も的中しないが、その予言の中には常に一片の真理が含まれており、一部の好事家に定評があった。
 王は悩みに悩んだ末、結局三人の賢者を、三人とも火焙りにし、新たな賢者を募集することにした。新たな賢者の登場までには三年の月日を要したが、この賢者は王にいたく気に入られた。
 新たな賢者は、既製の概念を打ち破り、一年に二十四回の予言をおこない、その内の十二回は的中する。この賢者には問題となる点があったが、王はそれを気にしなかった。
 だがそれを気にしなかったことによって国は滅んだ。その理由は賢者の予言の内容を聞けば容易く分かる。

 一回目の予言:「この国は今年、どこかの国に攻め滅ぼされることでしょう」
 二回目の予言:「この国は今年、どこかの国に攻め滅ぼされることはないでしょう」
 三回目の予言:「この国は今年、大飢饉に見舞われることでしょう」
 四回目の予言:「この国は今年、大飢饉に見舞われることはないでしょう」

 と、ここまではありがちな話である。
 だがこの賢者は国が滅びても、別の国へと旅立ち、そこで予言者として活躍し、その国を滅ぼし、また別の国にいっては、その国を滅ぼした。
 きっとこの賢者は他のどんな賢者よりも完璧に未来を知ることが出来ていたのだ。つまり全く役に立たない予言によって国が混乱し滅びることを、あらかじめ予言によって知っていた。そうに違いない。
 最終的にこの賢者は老衰で死んだとされているが、未だに目撃証言が寄せられることもあり、世界の七不思議に加えても良いのではないかとの声も上がっている。

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16237「こ」:この貧しき地上にオロシ・ハイドラント 2004/4/1 18:56:11
記事番号16208へのコメント

 「こ」:この貧しき地上に








 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。だがそんなことを考える余裕がないくらい、その家の人間は貧しかった。
 「夫婦」と彼らの子である「兄」と「妹」の「兄弟」で構成される四人家族で、ある日を境に「兄弟」は近親相姦を始めた。その国では、近親相姦は倫理的に問題があるとして法律で禁じられていたが、その家の人間は、国が地図載っていないことすら気にする余裕がなかったので、近親相姦など全く気にしなかったし、それ「兄弟」の両親である「夫婦」も兄弟で、そのまた両親も兄弟だったのだから、「兄弟」の両親である「夫婦」には咎める権利など全くなかった。
 だが問題は倫理観や法律とは別にあった。もしも「兄」と「妹」の兄弟がこのまま近親相姦を続ければ、「兄弟」のどちらかが商売などで成功しない限り、家は貧しいままである。だが、もしも「兄弟」のどちらかが商売などで成功し巨額の財産を築いた者の直系の親類と契りを結ぶことが出来れば、家は貧しさの呪縛から解放されるかも知れない。
 ゆえに「夫婦」は暴力を用いて、「兄弟」の近親相姦を止めさせた。「兄」は顔の形が変形するほど激しい殴打を連続して受け、「妹」は自我が崩壊するほど無意味な説教を連続的に受けた。これによって「妹」は「兄」の子を孕む危機を脱したのだが、二人はこれを喜びはしなかった。
 「兄弟」の近親相姦を止めさせた「夫婦」は、まずなけなしを金を叩いて、「妹」の方に整形手術を受けさせ、元々男性的な顔立ちを持っていた彼女に、女性的な美貌を授けた。これによって「妹」は国中の男性と女性の同性愛者の評判となったが、男性的な顔立ちを好んでいた「兄」には嫌われた。
 「妹」はある「大富豪」の元に嫁がされた。「大富豪」は「妹」の美貌に打ちのめされたのだ。「大富豪」は「妹」を妻(後妻とされている)に娶る見返りとして、四日ごとに「夫婦」に大金を払うと約束したが、美人は三日で飽きるということわざが示す通り、「妹」は三日で飽きられ、「大富豪」と「妹」の間には子供が生まれていなかったために、「妹」は追い払われ、「夫婦」は一銭の金も手に入れることが出来なかった。 
 だが「夫婦」は諦めず、「妹」が泣いて帰って来るなり、彼女を「大富豪」には劣るが若く可能性も充分にある「富豪」の元に嫁がせた。「富豪」は「妹」の美しさに感性を刺激されたのだ。「富豪」の男は「妹」を妻に娶る見返りとして、二日ごとに「夫婦」に大金を払うと約束したが、この男は女性を女性としては扱わず、単なる観賞物として扱う男で、「妹」は美人だったが貧しい家庭に育ったために品がなく、観賞物としては三流との烙印を押され、当然子供など生まれていなかったために、「妹」は追い払われ、「夫婦」は一銭の金も手に入れることが出来なかった。
 だが「夫婦」は諦めず、「妹」が泣いて帰って来るなり、今度は「妹」を失って放心状態になっていた「兄」に、三十二回払いのローンを組んで整形手術を受けさせ、元々女性的な顔立ちを持っていた彼に、男性的な美貌を授けた。これによって「兄」は国中の女性と男性の同性愛者の評判となったが、女性的な顔立ちに憧れていた「妹」には嫌われた。
 「兄」はある「大富豪の娘」を娶らされた。「大富豪の娘」は「兄」の美しさに虜となったのだ。その「大富豪の娘」の父である大富豪は妹が嫁いだ「大富豪」その人だったが、「夫婦」も「兄」も、金持ちなど皆同じに見えるものだと判断していたし、「大富豪」も、貧乏人の顔など皆同じに見えるものだと判断したため、誰も全く気が付かなかった。「大富豪」は娘を嫁に娶らす見返りとして、一年ごとに「夫婦」に大金を払うと約束したが、一年の間に「大富豪」の家は財産を一気に失い、「夫婦」と「兄弟」の家をも凌ぐくらいの貧しい家になってしまったので、「夫婦」は一銭の金も手に入れることが出来なかった。
 そして「兄」の妻である「大富豪の娘」は、その時から、かつては義母であり今は義妹に当たる「妹」に暴力を振るうようになった。実は動機は特にこれといってなかったのだが、「大富豪の娘」は、自分がかつては自分の伯父であった「兄」と結婚したことによって、自分の父である「大富豪」がかつての妻であった「妹」の姿を再び見てしまい、その美貌に改めて打ちのめされ、失ったものの大きさに気付いて後悔し、後悔によって日々苦しみ続け、苦しみよって失脚してしまった、というシナリオを勝手に作り上げ、それが真実であり事実であると信じ込んでいたという噂もある。とにかく「大富豪の娘」は暴力によって「妹」を最終的には死に至らせた。
 「兄」は死にゆく美貌の「妹」に、昔の男性的な顔立ちの断片を見て、思わず接吻をしようとしたが、「妹」は健康そのものの美貌の「兄」に、昔の女性的な顔立ちの断片を見ることが出来なかったので、「変態野郎、死ね」と言って息絶えた。
 「兄」は泣き、絶望に打ちひしがれた。「妹」はもうおらず、残っているのは「妹」を殺した妻である「大富豪の娘」のみ。ちなみに「夫婦」は「大富豪」の家が失脚した時点で、全く財産をもたらさない「兄弟」に見切りをつけ、行方をくらましていた。
 「兄」は迷い迷った挙句、「大富豪の娘」を殺し、そして家を焼いた。幸をもたらすことのない、この貧しき国に呪詛を浴びせ、隣国に移り住んで戦略戦術を学び、その国の将となってこの国を攻め滅ぼし、不浄の民を一人残らず焼き殺した。
 以上の話は、国が滅びる直前に動物的直感を働かせ、国外退去していた「富豪」によって語られたが、彼も間もなく火刑に処されることとなった。ちなみになぜ「富豪」がこれだけの事実を知っていたかは、本人がすでに鬼籍にあるため、恐らく永久に不明である。

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16238小さな国の物語:作者の一言(あとがきに代えて)オロシ・ハイドラント 2004/4/1 18:58:59
記事番号16208へのコメント

 「あ」:「天災は忘れた頃にやって来る」な話(違)。ストーリー性と「異国伝」を意識。
 「い」:ヒントは「鏡の国のアリス」。同じ場所にいたいなら走り続けるしかない。
 「う」:パ●ット●ペットしか頭にない状態で書いたが、なかなかお気に入り。食物連鎖の話……とは言い難い。
 「え」:これは単純な寓話。でも好き。食べ物は大切です。
 「お」:これはおまけでしかないです。そこそこ面白いとは思いますが。
 「か」:神が人の上に属するものであるという考えを覆してみたもの。こんなもの書いて、天罰を受けなきゃ良いが(笑)。
 「き」:二段オチはあんまりうまく決まってないので、最後の台詞に笑って頂けるかどうか心配です。
 「く」:意味があるのかないのか微妙な話。一応ストーリーになってます。
 「け」:このシリーズでは、王も民も賢者も国を滅ぼしたがっているように思えて仕方がない。つまりは皆、愚かなのだ。
 「こ」:ストーリー重視の話。何か教育に悪そうな気がするけど、一応投稿規制の対象には当てはまらないと判断したため、投稿しました。それにしても長い。

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16239ちなみにハイドラント 2004/4/1 19:09:46
記事番号16238へのコメント

 「小さな国の物語」は「さ」行で完結する予定です。
 さすがに四十五個も書くと同じような話ばかりで飽きられそうですから。
 とはいってもこのタイプの短編は書き続ける予定です。
 それでは……

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16240カ行変格活用(タイトルに意味なし)エモーション E-mail 2004/4/1 22:31:07
記事番号16239へのコメント

こんばんは。

小さな国の話シリーズ「か」行編。
今回もまたシュールな国々の興亡ですね。
神様は別に体の良い下僕や雑用係としているんじゃねーだろ、という感じの「か」の話。
ある意味、現状を直視するのが嫌で、逃避していた結果の末路のような「き」の話。
最後のオチが気に入りました。王位より何より、ケーキとクッキーが
すべての元凶のような「く」の話。
「小人閑居して不善を為す」という言葉が浮かんだ「け」の話。
でも最後の賢者は、意図的な行動のような気がしますね(笑)
壊れるべくして壊れたのではなく、無理やり「今までの形(?)」を壊したために、
結局すべてが崩壊したとも言える「こ」の話。
……何故か、実は国の存続のために、「血族婚の連鎖」を続けるような呪いでも
かけられていた一族だったのではないか、という変な想像をしてしまいました。
オカルト系のマンガや小説の悪影響ですね(^_^;)

アイディアがパッと出るのが、凄いなあと思いつつ、楽しんで読ませていただきました。
次の「さ」行編で終了ですか。残念な気もしますし、アイディアを45本と考えると、
ショートショートだけでのみ、使うのも勿体ないと思いますし。うーん(^_^;)
それでは、短いですがこの辺で失礼します。

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16241Re:……懐かしい言葉(意味は忘れました)ハイドラント 2004/4/1 23:11:07
記事番号16240へのコメント


>こんばんは。
こんばんは。
>
>小さな国の話シリーズ「か」行編。
>今回もまたシュールな国々の興亡ですね。
気付けば全部国が滅びる話になってました。「異国伝」は滅びる話ばっかりじゃないのに……。
>神様は別に体の良い下僕や雑用係としているんじゃねーだろ、という感じの「か」の話。
神様が独裁者なのも困りますけど、こういうのもアレですね。
>ある意味、現状を直視するのが嫌で、逃避していた結果の末路のような「き」の話。
確かに言えてますね。
篭城しているのを忘れていたって話は結構あるような気がします(現実にはまずないでしょうけど)。
>最後のオチが気に入りました。王位より何より、ケーキとクッキーが
>すべての元凶のような「く」の話。
この好き嫌いがなければ、仲良く暮らせたかも知れませんしね。
本当に悪魔が地上を侵略する兵器だったりして……
>「小人閑居して不善を為す」という言葉が浮かんだ「け」の話。
>でも最後の賢者は、意図的な行動のような気がしますね(笑)
そうでしょうね。
ちなみにさ行にも賢者が出て来ますが、こちらも……
>壊れるべくして壊れたのではなく、無理やり「今までの形(?)」を壊したために、
>結局すべてが崩壊したとも言える「こ」の話。
なるほど、そういう見方が出来ますか。全然気付きませんでした。
>……何故か、実は国の存続のために、「血族婚の連鎖」を続けるような呪いでも
>かけられていた一族だったのではないか、という変な想像をしてしまいました。
>オカルト系のマンガや小説の悪影響ですね(^_^;)
あっ、それは思いつきませんでした。思いついてたら話、全然違う方向に進んでたんだろうなあ。長編になってたりして。
>
>アイディアがパッと出るのが、凄いなあと思いつつ、楽しんで読ませていただきました。
なぜか出て来るんですよね。もちろん全くヒントなしに出せるわけじゃないんですが。
でも端正でクオリティの高い作品を書けるエモーションさんも凄いと思いますよ。あれはなかなか真似出来ない域にありますし。

>次の「さ」行編で終了ですか。残念な気もしますし、アイディアを45本と考えると、
>ショートショートだけでのみ、使うのも勿体ないと思いますし。うーん(^_^;)
まあでも、書きたくなったらまた書くと思います。「新・小さな国の物語」になるとかして……
>それでは、短いですがこの辺で失礼します。
それでは……
ご感想どうもありがとうございました。


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16242Re:ちなみにパッチー 2004/4/2 12:40:47
記事番号16239へのコメント

すごいなぁ(いきなり)
これだけ早くカ行が出来るとは・・・・(汗)
遅筆な自分は物凄く羨ましいです。
しかし、この手の作品って、アイデアが出てくるまで大変じゃないですか?
最初の「か」の話は、良く思いつけるなぁ・・・って思います。
信仰の対象=神って概念があるから、人より下の神様ってのが面白かったです。
でも最後は狂っちゃったなぁ(笑)
そういえばオロシさんってパ○ットマ○ットがお好きなんですか?
牛とカエルが良く出ていたのでそう思ったんですが(笑)
そういえば、その牛とカエルの国を滅ぼした人間の国を滅ぼした国(ややこしいなw)が出てきましたね。
武勇を誇ってたのに、あっさりと負けちゃったんだなぁ(笑)

次のサ行で小さな国シリーズも終わりですか・・・・
次回も楽しみに待ってます!!!
それでは、短いレスでしたが・・・さようなら

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16251Re:でも続くかも。ハイドラント 2004/4/3 14:56:50
記事番号16242へのコメント


>すごいなぁ(いきなり)
>これだけ早くカ行が出来るとは・・・・(汗)
>遅筆な自分は物凄く羨ましいです。
楽しいのでどんどん書けました。
でも速筆は必ずしも良いことではないと思います。
寡作な方の方がよく悩んでいる分良いものが書けると思いますし。
>しかし、この手の作品って、アイデアが出てくるまで大変じゃないですか?
アイデアはすぐに出るんですよね。なぜかは分かりませんが。
そのアイデアをストーリーに変換するのに時間が掛かりますが。
>最初の「か」の話は、良く思いつけるなぁ・・・って思います。
>信仰の対象=神って概念があるから、人より下の神様ってのが面白かったです。
それは私の神に対する認識が、ただ「完全なもの」であって、「人を支配するもの」ではないからでしょう。
宗教などに関しても、崇められることが必要な神なんて神じゃないと思っていますし。
>でも最後は狂っちゃったなぁ(笑)
まあストーリー上の宿命でしょう(笑)
>そういえばオロシさんってパ○ットマ○ットがお好きなんですか?
>牛とカエルが良く出ていたのでそう思ったんですが(笑)
あれは反復による笑いを狙ったものです。成功はしてなかったかも知れませんが。
でもパ○ットマ○ットは結構好きです。
>そういえば、その牛とカエルの国を滅ぼした人間の国を滅ぼした国(ややこしいなw)が出てきましたね。
>武勇を誇ってたのに、あっさりと負けちゃったんだなぁ(笑)
武勇を誇っていたといっても所詮は地図に乗らないような小国ですから、大国の相手は不可能でしょう。攻め滅ぼされたのは、調子に乗って分不相応な行動をしたからだと考えています。
>
>次のサ行で小さな国シリーズも終わりですか・・・・
もしかしたら続くかも知れませんがね。その時の気分次第で。
>次回も楽しみに待ってます!!!
>それでは、短いレスでしたが・・・さようなら
それでは、ご感想どうもありがとうございました。

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16270「さ」:桜の季節と殺人鬼ハイドラント 2004/4/12 17:55:30
記事番号16208へのコメント


 「さ」:桜の季節と殺人鬼
























 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。その国に存在する娯楽は唯一花見のみだったが、ある年を境に環境の悪化の影響によって桜が咲かなくなり、事実上その国の娯楽は完全に失われた。
 それにより農民は納税を拒否し、兵士はサボタージュを起こし、厭世家は相次いで自殺し、楽天家は一斉に厭世家に鞍替えし、国王は現実逃避に走り、牛とカエルは互いを食い合って、賢者は殺人鬼と化した。その中で国に最も大きな影響をもたらせたのが最後のものである。
 人々(と牛とカエル)は殺人鬼に殺され、桜の木の下に埋められた。桜はその養分を吸って、復活し、ある日満開となった。
 その頃には国の人口は殺人鬼一人となっていたが、それでも殺人鬼は悲しみも悔やみもせず、むしろ喜んだ。なぜならこれで娯楽が花見一つしかないつまらない国が滅びたのだから。
  

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 あとがき
「さ」といえば、やはり桜でしょう。実はそんなに好きな花でもないんですが。
「桜の樹の下には死体が埋まっている」という言葉から、「桜を咲かすためにせっせとがんばる期間限定のアルバイト殺人鬼君」の姿を思い浮かべるのは、私だけではないでしょう(多分)。
オチは単純ですが、まあ結末の意外性だけ狙っても仕方ないと思うので、これはこれで良いと思うんですけど。
「け:賢者たる由縁」との構成の類似の方は問題かも知れませんが(実はこっちの方が先に書いたんだが)。


 次回は「し」です。
 これはもう一応出来上がっている状態ですので、すぐ投稿出来るかと。
 問題は「す」なんですよね。

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16272「し」:小説の国対絵本の国ハイドラント 2004/4/12 20:11:57
記事番号16208へのコメント

 「し」:小説の国対絵本の国

 

















 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。
その国は生まれてから滅びるまで小説が大流行し、「ペンは剣よりも強し」という妄言を唱えるものまでいたという。
 そんな国にある日、前に紹介した絵本の国からの旅人がやって来た。旅人は、その国をゆっくりと見て回った後に、自国の悪質な模倣国であると説いたが、それによって国王と民衆の反感を買い、捕えられた。
 捕えられた旅人は、裁判の途中、王に向けて「小説と絵本どちらが優れているか、創作によって決着を着けようではないか」と発言したが、その発言が王に対するものとしては甚だしく無礼な口調によっておこなわれたため、怒りを買って処刑された。
 だがこの処刑の件が絵本の国に伝わった。実は旅人は絵本の国では極めて重要な立場にある人物であった。そのため、絵本の国は当然のように憤慨した。そしてその国へ討伐隊を派遣した。
 その国の王は仰天した。
 緊急で対策会議が開かれた。その場では無条件降伏すべきだとの意見が強かったが、最終的にそれをおこなおうと結論した者はいなかった。しかし同時にこちらも軍を編成し、国が滅びるまで抵抗しようとの考えを抱く者もいなかったのもまた事実である。
 その国が最終的に出した結論をまとめた文書が現在でも残っている。その国が攻め込んで来る軍隊に対して、おこなった発言をそのまま記述したものらしい。
 それは以下である。
「我らは武力による闘争を好まない。なぜなら我らが国には「ペンは剣よりも強し」との言葉があるからである。つまり我らの武器はペンであって、それ以外の何ものでもない。だがペンの力は軍隊の力を遥かに凌ぐため、軍隊相手に使用するのは道徳的な問題上、甚だ相応しくない。従って、貴公らもペンによって戦いを挑むべきだ。この前にどこよりか訪れた旅人も命が懸かった場で、それに類似する発言をおこなった。その者は無礼者ゆえに処刑したが、貴公らの無礼は許容の範囲内だ。罪を不問とするため、正々堂々とペンによって戦おうではないか」
 この後どうなったのかは記録されていないが、国が滅びたことだけは間違いない。


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 あとがき

 「き」と類似していますが、オチの決まり具合はこちらの方が良いかと。
 ただし、そろそろこの手の話は飽きられているかと思われますが、多分残りの三作はまた違ったものになると思いますので、ご安心を。
 それではこれで失礼致します。

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16274サ行変格活用・連用形(やっぱりタイトルに意味なし)エモーション E-mail 2004/4/14 21:10:25
記事番号16272へのコメント

こんばんは。

「小さな国の物語」サ行の「さ」と「し」ですね。
「桜の季節と殺人鬼」……娯楽が一つしかない国って、どういう国というより、
そこの国民の感覚が不思議な国ですね。
娯楽って、別に「これが娯楽です。それ以外は違います」なんて代物じゃないですから、
小規模な娯楽なら、結構ありそうなものなのに。単に賢者が勝手にそう思って
いただけなのかもしれませんが。
それにしても、桜が咲かないだけですべてがおかしくなる辺りは、少しホラーチックに思えました。
桜に死体を埋める期間限定アルバイター(笑)は、さすがに想像しませんでしたが、
桜は人を惑わす魔性の面を持っている、という説を思い出しました。
賢者は「桜」の「魔」に捕まったのですね。

「小説の国対絵本の国」……本関係の国第二弾。
旅人の「自国の模倣」疑惑は、端で見ているとただの言いがかりですが、
彼にとっては正当な主張だったのでしょうね(^_^;) 
「異教徒より異端者の方が憎い」というノリに、近いのかもしれないと思いました。
結局戦争になる訳ですが、こだわりもここまで来ると凄いものがありますね。
ふと、昔読んだホラー小説(短編でしたが)のラストを彷彿しました。
「ああ、恐ろしい。とうとうこちらへやって来る。奴が部屋のドアを蹴破って……」
というオチで終了する、「詳しく書いている暇があったら、さっさと逃げろよ」と、
俗に言われる系統の作品を(笑)

小さな国のシリーズは、どこか度が過ぎた結果滅ぶ国などが多いですね。
何事も加減が大切、ということでしょうか。
また、牛とカエルが、動物ではなく、一種の知的生命体のような感じで出てきますね。
黒子さんがいたらどうしよう……(笑)

それでは、残りの三部作を楽しみにお待ちしています。(……とか、書いている間に、
投稿されていたりして(笑))

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16275Re:「さ」と「し」は「さ」行では、比較的シンプルかも?ハイドラント 2004/4/15 21:26:24
記事番号16274へのコメント


>こんばんは。
どうも、こんばんは〜。
>
>「小さな国の物語」サ行の「さ」と「し」ですね。
「す」で詰まっているので(ネタは大体浮かんでいるんですが)とりあえず二つだけ投稿してみました。
>「桜の季節と殺人鬼」……娯楽が一つしかない国って、どういう国というより、
>そこの国民の感覚が不思議な国ですね。
>娯楽って、別に「これが娯楽です。それ以外は違います」なんて代物じゃないですから、
>小規模な娯楽なら、結構ありそうなものなのに。単に賢者が勝手にそう思って
>いただけなのかもしれませんが。
確かにその通りかも。
まあ「花見だけが娯楽です。それ以外は違います」っていう立て札が立っていたのかも知れませんが(笑)。
>それにしても、桜が咲かないだけですべてがおかしくなる辺りは、少しホラーチックに思えました。
ギャグとホラーは兄弟だという言葉をどこかで目か耳にしましたけど、笑い話として書いたつもりのものがホラーに転化されてしまったのかも知れません(よく考えてみるとちっとも笑えないし)。
>桜に死体を埋める期間限定アルバイター(笑)は、さすがに想像しませんでしたが、
>桜は人を惑わす魔性の面を持っている、という説を思い出しました。
>賢者は「桜」の「魔」に捕まったのですね。
そうかも知れませんね。
そして桜を狂おしいほど求めるようになり、今回の凶行に走った、と。


>
>「小説の国対絵本の国」……本関係の国第二弾。
>旅人の「自国の模倣」疑惑は、端で見ているとただの言いがかりですが、
>彼にとっては正当な主張だったのでしょうね(^_^;) 
>「異教徒より異端者の方が憎い」というノリに、近いのかもしれないと思いました。
>結局戦争になる訳ですが、こだわりもここまで来ると凄いものがありますね。
そうですね。こういった感じの争いは聞いたことがありません(笑)。
>ふと、昔読んだホラー小説(短編でしたが)のラストを彷彿しました。
>「ああ、恐ろしい。とうとうこちらへやって来る。奴が部屋のドアを蹴破って……」
>というオチで終了する、「詳しく書いている暇があったら、さっさと逃げろよ」と、
>俗に言われる系統の作品を(笑)
言えてますね。
どうやら小説の世界には命を大切にしない輩が多いみたいです(笑)。

>
>小さな国のシリーズは、どこか度が過ぎた結果滅ぶ国などが多いですね。
>何事も加減が大切、ということでしょうか。
一応、そういう話はすべて、佐藤哲也氏の「イラハイ」と同じく「愚かしさ」をテーマにした話のつもりですので、そういうことになります。
>また、牛とカエルが、動物ではなく、一種の知的生命体のような感じで出てきますね。
実は人間と同じような知的レヴェルの動物を出したのは、単に「異国伝」との差別化のためにしたことだったり(笑)。
>黒子さんがいたらどうしよう……(笑)
そうだとしたら、牛もカエルも何匹もいるから、黒子さんも何人もいるということになるでしょうね。想像するとちょっと気味悪いかも……
>
>それでは、残りの三部作を楽しみにお待ちしています。
今回もご感想ありがとうございました。
>(……とか、書いている間に、
>投稿されていたりして(笑))
充分にありえることですね。
今回はそうならなくて良かったですが……

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16301「す」:推理の女神と探偵小説家と探偵小説家の生きる道ハイドラント 2004/4/24 18:00:47
記事番号16208へのコメント

 「す」:推理の女神と探偵小説家と探偵小説家の生きる道


 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。だが国民は自分達の国が世界で最も大きく強い国であると、国が滅び去るまで信じて疑わなかった。
 ところで、その国には自らの才能を確信する探偵小説家が住んでいた。探偵小説家は日々、究極のトリックを編み出すことに精を出すという、一見無駄と思える努力を続けていた。
 だがある日、探偵小説家は夢を見た。その夢は彼の人生を大きく変えることとなった。夢の内容は以下である。
 冬のある日、三人の好奇心ある少年によって、誰も住んでいない高い塔の最上階にある内側から閉ざされた部屋の中で、内側から鍵の掛かった透明な箱(誰かが特注したものだろう。普通、内側に鍵のある箱などない)に入れられた男の刺殺体(凶器は箱の中にあった)が発見された。部屋の中には犯人らしき人物は隠れておらず、窓の鍵も閉められていたので、完璧な密室状態と言えた。しかも部屋と箱の二重の密室である。いや、塔の周りには雪が降り積もっていたにも関わらず、発見者以外の足跡がなく、検死医が割り出した死亡推定時刻(死体が発見された時刻とは遥かに掛け離れていた)には、雪は積もっていたが、一切降っていなかったという状態だったので、いわゆる雪密室を含めた三重の密室だ。
 この密室殺人事件が誰に、なぜ、いかにしておこなわれたのかは常人には全くもって不明な状態が続いたが、いきなり現われた名探偵を名乗る男が、そのすべてを解き明かした。その結果、犯人は意外な人物で、動機にも筋が通っており、密室を作った方法には前代未聞の、究極的と言って良いほどの素晴らしいトリックが三つも使われていたことが判明した。
 夢から覚めたが、探偵小説家はその夢の内容をすべて記憶していた。夢の中でおこなわれた殺人事件は、過去に世に出たどんな探偵小説以上に素晴らしい造りをしていた。だからそれを小説に纏めようとした。
 だがその時、天から声が響いて来た。
「愚かなる者よ。わらわがせっかくそなたに特別に三つの究極のトリックを授けてやったというのに、そなたはそのトリックをあっさりと世の中の者に明かすつもりか?」
 それは推理の女神の声であった。何とあの夢は推理の女神が、究極のトリックを探し求める探偵小説家のために見せたものだったのだ。そのことに気付いた探偵小説家は歓喜したが、すぐに冷静になって推理の女神の言葉の意味するものを理解することに成功した。
「紙の上でトリックを使う場合は、そのトリックを最後に明かさなねばならぬ。なぜならば、明かさなければそのトリックが使われていることを証明することが出来ぬからだ。女神様はそう言っておられるのだな。よし分かった。小説にするのは止めよう。実際にあの夢に出て来たような塔を建て、そこで実際にあれと同じ事件を引き起こすのだ。そうすればあの三つの究極のトリックを使うことが出来る上に、トリックの種を明かす必要もない。まさか現実には夢に出て来たような名探偵などはおらぬだろうから、トリックを見破られる恐れもない」
 長く一人暮らしを続けていた探偵小説家は、独り言を言う癖があったので、独り言を言って、奮起した。
 こうして探偵小説家はまず実際に夢に出て来たような塔を建てることにした。それには莫大な費用が必要であったが、貯蓄があったため何とかなった。
 建設は無事開始された。出だしは順調であった。探偵小説家は毎日、建設作業員達が汗水垂らして働く様を見つめながら、自分自身が三つの究極のトリックを使用して完全犯罪をおこなう様を夢想し、一人悦に入っていた。
 やがて塔が完成した。探偵小説家は喜びのあまり、興奮して奇妙な踊りを踊り、多数の見物人を呼び寄せた。
 だが、いざ三つの究極のトリックを使用しようとした時、探偵小説家は初めて重大な問題を認識した。
 探偵小説家が塔を建てた土地は、一年中雪の降らない土地だったのである。三つの究極のトリックの内の一つは、雪が降っていないと意味のないものであるため、究極のトリックは二つしか使用出来なくなる。
 仕方なく、建てた塔は誰かに安値で売ることにし、別の場所に塔を立て直すことにした。再び莫大な費用が必要となったが、塔を売って得た金額と残りの貯蓄を足せば何とかなった。
 だが今度は完成するより前に問題が発生した。塔建設に携わっていた作業員達が突如、会話に理解不能な言語を用いるようになり、探偵小説家とコミュニケーションを取ることが不可能となった。作業員同士のコミュニケーションはどうやら取れているようだったが、彼らは仕事を続ける気をなくしてしまったようで、一致団結して探偵小説家を袋叩きにすると、遥か彼方へ消えていった。
 結局、二度目の建設は失敗に終わり、三度目の建設が始まった。またもや莫大な費用が必要となったが、消費者金融からの借りつけによって何とかなった。
 三度目の建設は成功した。塔を建てた土地が、雪の降らない土地であるということもなかった。だが、今度は完成した塔の付近で凶悪な殺人事件が起こり、それが塔のすぐ隣に住む男によって解決されるという事態が発生した。その男に名探偵の資質があると見た探偵小説家は、この土地で三つの究極のトリックを使用することは危険だと判断し、塔を売り払って退散することにした。
 こうして三度も失敗を重ねてしまって探偵小説家は、もはや新たに塔を建設することが経済的理由で不可能であることに気付き、仕方なく三つの究極のトリックは紙の上で使用することに決めた。
 だが小説が完成する前に、その国では戦争が勃発し、探偵小説はすべて発禁処分となった。
 この戦争は長く続き、終いに国は滅びてしまった。そして他国に侵略されて始めて、その国の国民は自らの国が地図にも載っていないほどの弱小国であることに気付いたのだが、それは別の話である。
 結局、探偵小説家が三つの究極のトリックを世間に披露する機会があったのかどうかは定かではないし、三つの究極のトリックがどのようなものであったかも明らかではない。
 

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 この話は「小さな国の物語」全十五話の中で最も最後に完成したものです。
 ストーリーは単純ですが、お遊びや突っ込みどころを結構作ってあります。じっくりと味わうに足るものかどうかは分かりませんが、とりあえずご賞味いただければ、幸いというものです。
 さて次回は今日になるか明日になるか遠い日となるか分かりませんが、出来る限り早く投稿したいと思います。後は見直すだけですから。
 
 

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16303「せ」:世界のある場所でそう叫んだ彼は……ハイドラント 2004/4/24 19:15:26
記事番号16208へのコメント

 「せ」:世界のある場所でそう叫んだ彼は……


















「それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明ではないが敢えて言わない。とにかく事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。そして軍事力が極めて貧弱で、腕の立つ剣士一人にも劣ると言われていた。
 ある日、その国に立派な剣を携えた一人の剣士が訪れた。その剣士は腕の立つ剣士だったので、立ち寄った村の、眼力のある村人達に厚遇を受けた。
 村人達は王の悪政に困っていたのである。だから剣士に王を殺してくれと懇願した。
 すると剣士は、その見返りとしてその国の新たな王となる権利を要求した。村人達は皆揃って首を縦に振り、契約はここに成立した。
 こうして剣士は王城に向かって旅立つことになった。
 剣士はその国の軍事力が極めて貧弱で、腕の立つ剣士一人にも劣るという噂を知っていたため、正面から正々堂々と宣戦布告をした。
 だが、出て来たのは屈強そうな兵士の大軍。瞬く間に剣士は彼らに捕えられ、王の元に連れていかれた。
 実は軍事力が極めて貧弱で、腕の立つ剣士一人にも劣るというのは全くの虚偽の情報であり、単にそう言われていただけであったのだ。当然、この情報はその国が地図に載っていないことを利用して意図的に流したものである。
 王の元に連れていかれた剣士がどうなったのかについては、一説によると、その国の王は男色の吸血鬼であり、屈強な剣士の血を求めていたので、王の餌食となったのだそうだが、私は、その説を愚かだと評したい。剣士は洗脳され、その国の兵士となったというのが事実なのである。
 さらに同じ説では、村人達も共謀者であり、国の軍事力が少なくとも一人の剣士には勝ることを知っていたと言われているが、それも違う。村人達は知らなかった。そして心から暴君よりの解放を望んでいた。
 なぜこのようなことを私が知っているかというと、それは私が神だからである。私は神であり、神以外の何者でもない。
 証明して見せよう。この国はその実体が知られるよりも早く、神の落とした雷によって滅び、民は一人残らず死んだため、この国の実体を知るのは国を滅ぼした神だけである。それなのに私はこの国の実体について知っている。従って私は神だということだ!」


 世界のある場所でそう叫んだ彼は、間違いなく宗教妄想の類に陥っている。だがこのように自分を神だと思い込む人間は、やはり偉大なのではないだろうか。
 ここに私は提案したい。彼を我が国の救世主としてみてはいかがだろう。この地図にも載っていないほど小さな国は今、地図にも載っていないほど小さな国であるがために、重大な危機に見舞われている。その危機から逃れるためにも。
 
 
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 今回、ちなみに初めて書き出しを変えるというルール違反をしました。
 でも小さな国を舞台にしていないというルール違反はしていません。
 でもこんな話で本当に良いのかなあ。
 まあとにかく、これで失礼致します。

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16304「そ」:荘厳な死体ハイドラント 2004/4/24 19:23:45
記事番号16208へのコメント


 「そ」:荘厳な死体





















 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。その国にはただ、荘厳な死体だけがあった。
 荘厳な死体は死体ゆえにすでに死んでいるため、その国はその時点で滅びていたと言って良い。


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 「小さな国の物語」は今回が最終回でございます。
 前二つが長いのと奇抜なのだったので、最後は思い切りシンプルなものにしました。「さ」と「し」が比較的シンプルだと言っていたのに……
 でもシリーズの締め括りには、こういうのがやはり相応しいと思います。
 それではこれで失礼致します。今までどうもありがとうございました。
 

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16305おまけ:ウロボロス――存在の耐えられない愚かしさハイドラント 2004/4/24 20:49:15
記事番号16208へのコメント

 とりあえず、おまけをつけてみました。
 しょうもない話ですが、面白味を見出すことも不可能ではないかも知れません。
 ちなみにこの話に出てる人の考えは、私自身の考えとは必ずしも一致しておりませんので……

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 ウロボロス――存在の耐えられない愚かしさ


 そうだな、例えば、こんな話はどうだ。
 無人島に住む殺人鬼が、島に流れ着いた人間達を虐殺する話。
 突飛で無茶苦茶でぐちゃぐちゃな話よりも、こういうシンプルで分かり易い話の方がやっぱり良いぞ。
 いやいや、そんなんじゃあ三流サスペンスか三流ホラーにしかならない。
 じゃあ、殺人鬼の視点で書くというのはどうだろう。
 確かに斬新かも知れない。
 だが、余計につまらなくなる可能性も非常に高い。
 そうだ、殺人鬼に過去を持たせば良い。
 人を一人殺す度に、一つ過去を思い出していく。
 いやいやいや、そんな話はどっかにあるような気がするぞ。
 気もせいかも知れないけど、そんなに珍しくはないと思う。
 じゃあじゃあ、視点は流れ着いた人間達の方に明け渡すことにして、島をファンタスティックにしてみてはどうだろう?
 水晶が地面から映えていたり、奇妙な樹や花が笑っていたり、妖精が飛んでいたりする世界観の中で、登場する殺人鬼。
 このアンバランスさは書きようによっては、良い味を持って来るかも知れない。
 ただし問題は、私の筆力が貧弱だということだ。
 こんなアンバランスな物語を魅力的に書く自信はない。
 そうなると、やはりこのアイデアはゴミ箱いきだろうか。
 そうだ、この際殺人鬼君には消えてもらおう。
 ファンタスティックな世界をさまよう人間達の物語。
 退屈にならないようにドラマを盛り込めば、なかなか良いものになるぞ。
 そうだ、流れ着いた者同士で殺し合いをさせるのも良いかも知れない。
 この際、サバイバル小説にしてしまおうか。
 それもファンタスティックな世界を舞台にしたサバイバル小説。
 良いぞ、良いぞ、後は書けるかどうかが問題だ。
 それに、書くとなったら書き出しを決めなければならない。
 どこから書き始めようか。
 そうだな、殺人鬼の独白からなんてどうだ?
 いやいやいやいや、殺人鬼は出ないんだった。
 流れ着いた者同士の殺し合いの話だったんだ。
 でも、殺人鬼なしはやっぱり寂しいぞ。
 じゃあじゃあじゃあ、ファンタスティックな世界観を捨てるか。
 いやいやいやいやいや、それもいかん。
 ただの島じゃやっぱり面白くないぞ。
 少なくとも水晶は生えてないと。
 それならこの際、島というのを止めてしまおう。
 SFだ。
 売れないけどSFだ。
 主人公を宇宙に飛ばそう。
 ロケットの仕組みとかはよく分からないからごまかすか、あるいは、「西暦2XXX年、人類は魔法を発見した」とかいう風にするか。
 おおっ、魔法か、SFじゃなくなるがそれも良い。
 あんまりガキ臭くならないように慎重に書かないといけないが、うまく書ければ魔法というのは大きな魅力になる。
 とはいえ、うまく書けそうにないのでやっぱり止めよう。
 まずは主人公を考えるべきだ。
 そうだな、渋い男が良い。
 だがだが、敢えて若い美男子にしたり、女性にしてみるという手もあるぞ。
 それにそれに、動物というのも良いかも知れない。
 犬か猫か、それともゾウガメか。
 ゾウガメなんて良いかも知れない。
 いやいやいやいやいやいや、それはどんな人種が喜ぶ本なんだ。
 ゾウガメは却下だ。
 じゃあじゃあじゃあじゃあ、ドラゴンを出してしまおうか。
 ドラゴンには登場した物語をダメにしてしまう効果があるらしいが、それは古い感性が生んだ誤りでしかないだろう。
 ドラゴンは魅力的だ。
 強く、格好良く、そしてトカゲ的だ。
 まさしく動物の王様である。
 唯一の欠点は実在しないことだけで。
 いやいやいやいやいやいやいや、ドラゴンよりももっと良いのがあるぞ。
 トカゲだ。
 トカゲは弱い。
 その弱さを上手く書ければ、賞だって余裕で取れるはず。
 それにそれにそれに、尻尾切りという技もあるぞ。
 これを上手く用いれば、世界的に有名になることだって不可能ではないはず。
 ってさすがにそれは夢見過ぎか。
 ならば、トカゲにプラスして魚を出そう。
 トカゲと魚の恋。
 一見気持ち悪いけど、書き方次第では美しい恋愛小説に化けるはず。
 そうだ、トカゲと魚の恋を引き裂く凶悪殺人鬼。
 これは良いかも知れない。
 話の組み立て方次第では、今までで最高のものになりそうだ。
 だが考えてみれば、殺人鬼は殺すだけの存在なのだから、中途半端ないたぶりなんかは出来ないはず。
 そうなると、殺人鬼がトカゲと魚の恋を引き裂くには、どちらかを殺さなければならない。
 つまりバッドエンドは確実、ということになる。
 それにそれにそれにそれに、殺人鬼はあくまでも殺「人」鬼であって、殺「トカゲ」鬼でも、殺「魚」鬼でもない。
 それはおかしい。
 だからといって、殺「トカゲ」鬼や殺「魚」鬼なんていう変なものを出したくはない。
 ならば地面から生える水晶に足をやられてしまったトカゲが、医者に余命半年と宣告されるというのはどうだ。
 いやいやいやいやいやいやいやいや、水晶に足をやられると、余命半年になってしまうのはなぜなのだ。
 一体、どんな水晶なんだ。
 無茶苦茶だぞ。
 もっとリアリズムを大切にしないと。
 それなら舞台を現代東京にして、そこに水晶を生やせば。
 いやいやいやいやいやいやいやいやいや、それこそ非リアリズムの極みではないか。
 そうだ、この際リアリズムなんて無視しよう。
 そんな言葉は石器時代の穴倉に捨ててしまえば良い。
 よし、とにかく現実味など欠片さえ感じられない、突飛で無茶苦茶でぐちゃぐちゃな話を作ってやろうではないか。
 考えろ。
 考えるんだ。
 
 
(考え中)


 そうだな、例えば、こんな話はどうだ。

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16316推理の女神様は世界の中心で荘厳にウロボロスの基礎理論エモーション E-mail 2004/4/25 22:10:53
記事番号16305へのコメント

こんばんは。

「小さな国の物語」……ひとまず終了、おめでとうございます&お疲れさまです。
おまけ込みで、16話分のネタ……。やはり考えつくだけ凄いと思います。
どれもきちんとショートショートになっていますし。

「す」の話……もしかしたら、これは小説の国の探偵小説家でしょうか。
推理作家は小説を書くためにトリックを考えるのであって、トリックを実行するために、
トリックを考えているわけじゃないんですが(笑)、作家さんは推理の女神様のお告げ(?)で、
綺麗にその辺りを忘れてしまったようですね。
それでも三つも塔を建てるのは根性です。一つ目……建てる前に気づけ(笑)
二つ目はバベルの塔(笑)三つ目……ある意味不運です(笑)の三コンボで、
全部台無しになりましたが。……でも成功していても、何故かシルクハットに
タキシード、スッテキ持参の銘(笑)探偵がどこからともなく現れて、きっちり
解いてしまいそうな気がヒシヒシとします。お告げが正夢になるという感じで。
「せ」の話……宗教妄想の真性電波さんも、時代や状況、場合によっては人々の、
精神的な面での救世主になる……というところでしょうか。
まあ、こういうのは自分でいくら主張しても、周りが認めてくれなくては
まるで意味がない代物ですし。
「そ」の話……ラストにしてすっきり短いお話。荘厳な死体は生きているとき、
荘厳な生者だったのは、確実……かな? 荘厳な死体しかない国って、小さな国としても、
一体何があったんだと言う感じです。
おまけのウロボロス……話を考えては、すぐに自分で打ち消してのループしまくり……。
か、乾いた笑いが……(滝汗)何だかこの心情、もの凄くよく分かるんですが(笑)
突飛な話を目指さなくてもそうですからねぇ……(口から魂抜けてます……)
まあ、「良くあるパターンの話」を「どれだけ読ませる(見せる)話にできるか?」に、
作り手の力量が試されるものですが。(小説、マンガ、ドラマ、映画等)
何にせよ、思わず「あるあるあるある!」と言ってしまう一作でした。

「小さな国の物語」、不可思議さとどこかしらの不条理さ、そして淡々とした
味わいのある作品でした。
1の方で「TRY」が連載中ですが、その他の次作品がどんなものになるのか楽しみです。
それでは、今日はこの辺で失礼します。

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16329Re:探偵小説家は愛を叫んだけものの死体に耐えられない愚かしさを(対抗)ハイドラント 2004/4/27 22:30:04
記事番号16316へのコメント

>こんばんは。
こんばんは。
>
>「小さな国の物語」……ひとまず終了、おめでとうございます&お疲れさまです。
どうもありがとうございました。ようやくここまで辿り着けました。
>おまけ込みで、16話分のネタ……。やはり考えつくだけ凄いと思います。
>どれもきちんとショートショートになっていますし。
話を考えるのもそうですが、簡潔な文章を書くのが辛かったです。正確さを要求されますから。
>
>「す」の話……もしかしたら、これは小説の国の探偵小説家でしょうか。
あっ! もしかしてそうかも。……考えもしませんでした。ありえるかも……
>推理作家は小説を書くためにトリックを考えるのであって、トリックを実行するために、
>トリックを考えているわけじゃないんですが(笑)、作家さんは推理の女神様のお告げ(?)で、
>綺麗にその辺りを忘れてしまったようですね。
まさに大いなる勘違いですね。でもその勘違いが物語を生んだ(って待て)。
>それでも三つも塔を建てるのは根性です。一つ目……建てる前に気づけ(笑)
>二つ目はバベルの塔(笑)三つ目……ある意味不運です(笑)の三コンボで、
一つ目……バカの王道ですね。一生恥ずかしい思い出として残りそう。
二つ目……バベルの塔の話との違いは、言語がバラバラになってないところ。
三つ目……確かに不運。でも嘆く権利はないですね(笑)。
>全部台無しになりましたが。……でも成功していても、何故かシルクハットに
>タキシード、スッテキ持参の銘(笑)探偵がどこからともなく現れて、きっちり
>解いてしまいそうな気がヒシヒシとします。お告げが正夢になるという感じで。
た、確かに。ある意味、神を超越した人ですからね。メ●は。
>「せ」の話……宗教妄想の真性電波さんも、時代や状況、場合によっては人々の、
>精神的な面での救世主になる……というところでしょうか。
>まあ、こういうのは自分でいくら主張しても、周りが認めてくれなくては
>まるで意味がない代物ですし。
そうですね。結局本当に役に立ったかは分かりませんが(笑)
>「そ」の話……ラストにしてすっきり短いお話。荘厳な死体は生きているとき、
>荘厳な生者だったのは、確実……かな? 荘厳な死体しかない国って、小さな国としても、
>一体何があったんだと言う感じです。
誰もいない土地を勝手に自分の国にした男が、病気か寿命で死んだというところですかねえ。そうなるとなぜ国と認められたかが謎になりますが(笑)。
>おまけのウロボロス……話を考えては、すぐに自分で打ち消してのループしまくり……。
>か、乾いた笑いが……(滝汗)何だかこの心情、もの凄くよく分かるんですが(笑)
アイデアが形にならない時はこんなものでしょうね。私はこの話に出て来る人ほど回転速くないですが。
>突飛な話を目指さなくてもそうですからねぇ……(口から魂抜けてます……)
多分、やけになっているんでしょうね。なかなか良いアイデアが浮かばないせいで……
>まあ、「良くあるパターンの話」を「どれだけ読ませる(見せる)話にできるか?」に、
>作り手の力量が試されるものですが。(小説、マンガ、ドラマ、映画等)
そうですね。それに、短編だとそういう技術を必然的に要求されますね(この話のようにさらに短いものだと、また必要なものは変わって来ますが)。
>何にせよ、思わず「あるあるあるある!」と言ってしまう一作でした。
どうやら共感を得られたようで(本当か?)良かったです。
>
>「小さな国の物語」、不可思議さとどこかしらの不条理さ、そして淡々とした
>味わいのある作品でした。
どうもありがとうございます。本当に書いた甲斐があったと思いました。
>1の方で「TRY」が連載中ですが、その他の次作品がどんなものになるのか楽しみです。
次回はちょっと不思議な感じのファンタジーの短編を投稿する予定です。「TRY」の見直し作業にかなり手間取っているので、なかなか先に進めないのですが……。
>それでは、今日はこの辺で失礼します。
それでは、ご感想どうもありがとうございました。

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16318お疲れさま〜!じょぜ 2004/4/26 02:26:04
記事番号16305へのコメント

 どうも、こんばんは、ラントさん。
 「小さな国の物語」読ませてもらいました。

 うーん、これだけの話を連載と平行させて書けるというのは、やっぱりすごい!
 「異国伝」は未読なので、今度機会があったらぜひ読んでみたいですね。
 あのう……私ずうっとラントさんのこと女性だと思ってたんですが、実は男の方……なんですよね?(汗)
 すいません、なぜかずーっと女性だとばかり思ってて、女なのに、すごく骨のある文章書く人だなあと思ってたんですよ。で、男性だと知って「なるほど!」と納得しました(笑)。
 私は自分の書く話なり文章なりが、もうメロドラマ的で女々しいと思ってるんで、こういう地に足のついた、というか武骨というか、固めな文章を、同じ女の人が書いてんだすげーな、と思ってたんです。
 ミステリーやSFがお好きなようですが、私駄目なんですよ。クリスティなんかも、昔頑張って読んでみたんですが、どうものめりこめなくて……。伏線の張り方とか勉強になるはずなんですが、なんかどーも「トリックの妙」とか謎解きの面白さ、みたいのが楽しめないというか、貧弱な頭で理解できないくて……うう、好きな人はいいなあ。
 ショートショートは、中高生の頃、星新一にはまりましたね。今でもわりと好きです。

 「この貧しき地上に」のどろどろぐちゃぐちゃ加減がいいです(笑)。
 やってる本人たちは真剣なんでしょうけど、遠目で見ると実に愚かというか、同じことの繰り返しというか、狭いところをぐるぐる回ってるだけ。でも、ふとタイトルを振り返ると、そこに愚かな人間の哀愁が滲み出ていて、寂しい笑いで終わる話だと思いました。
 「この変態野郎」には、すいません、爆笑しましたが(笑)。

 個人的に実は一番面白いと思ったのが、ウロボロスのお話でした。
 ひとりノリツッコミかよ! と笑っちゃいました。いやいやいや、とかじゃあじゃあじゃあ、とかの部分が楽しいというか、くくく、と声を殺した笑いが出てくるというか……

>ならば地面から生える水晶に足をやられてしまったトカゲが、医者に余命半年と宣告されるというのはどうだ。
> いやいやいやいやいやいやいやいや、水晶に足をやられると、余命半年になってしまうのはなぜなのだ。
> 一体、どんな水晶なんだ。
> 無茶苦茶だぞ。
> もっとリアリズムを大切にしないと。
 こ、ここ、すっげー笑えました。マジで。
 あと「ウロボロス」って何なんだ? とネットで調べてみてようやくわかりました。なるほどなるほど、無限ループするということなんですね。
 なんかこの語り手が、私の頭の中では、ロダンの考える人のポーズで、指をちっちっとか振りながら喋ってる図が浮かんできました。

 ではではではでは、なんか滅茶苦茶な感想ですが、このへんで。面白かったです。

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16331ありがとうございました!ハイドラント 2004/4/27 23:46:47
記事番号16318へのコメント


> どうも、こんばんは、ラントさん。
> 「小さな国の物語」読ませてもらいました。
こんばんは。どうもありがとうございます。
>
> うーん、これだけの話を連載と平行させて書けるというのは、やっぱりすごい!
連載と言っても一応書き終わってはいますからね。平行させること自体は実はそれほどでもなかったりします(私が暇人であるせいもありますが)。
私的に見直し作業は書くのの数倍はストレスが溜まるので、気晴らしに書いているという状態でしたね。
といってもそういう気持でいられたのは中盤辺りまでで、後半は結構苦労しました。単なるお遊びから本格的な連作になっていったからかも知れませんが……
> 「異国伝」は未読なので、今度機会があったらぜひ読んでみたいですね。
手に入り難いかも知れませんが、是非お奨めですよ。あの作品に比べたら、このシリーズなんて平凡極まりないものですから。
> あのう……私ずうっとラントさんのこと女性だと思ってたんですが、実は男の方……なんですよね?(汗)
> すいません、なぜかずーっと女性だとばかり思ってて、女なのに、すごく骨のある文章書く人だなあと思ってたんですよ。で、男性だと知って「なるほど!」と納得しました(笑)。
> 私は自分の書く話なり文章なりが、もうメロドラマ的で女々しいと思ってるんで、こういう地に足のついた、というか武骨というか、固めな文章を、同じ女の人が書いてんだすげーな、と思ってたんです。
ううむ、意外とあるみたいですね、女性に間違われること。やっぱり一人称に問題があるんでしょうかねえ。「私」は別に女性の一人称じゃないけど、一般的にはそう思われることが多いみたいですし。でも文章にする時、「私」というのが個人的には一番しっくり来るんですよね。日常会話では普通に「俺」ですが、小説の作者の言葉というのは喋り言葉とは違うものですから。
まあ間違えられること自体は、そんなに気にならないんですが……
> ミステリーやSFがお好きなようですが、私駄目なんですよ。クリスティなんかも、昔頑張って読んでみたんですが、どうものめりこめなくて……。伏線の張り方とか勉強になるはずなんですが、なんかどーも「トリックの妙」とか謎解きの面白さ、みたいのが楽しめないというか、貧弱な頭で理解できないくて……うう、好きな人はいいなあ。


ミステリーの方、実は私もそれほど謎解きやトリックを楽しめる人間ではないみたいです。
なら何を楽しんでいるのかというと、伝奇的怪奇的な道具立てや雰囲気、それに名探偵の活躍と推理そのものの鮮やかさなどなんですね。
まあ最近は、ロジック(論理)にも興味を覚えて来ましたが……


SFの方は、実は最近読み始めたばっかりなんです。
それもファンタジーの延長ということで手を伸ばした感じです。
それでも読んだ作品の中には結構気に入っているのも多いので、これからはまっていくのではないかと……


> ショートショートは、中高生の頃、星新一にはまりましたね。今でもわりと好きです。
実はショートショートはほとんど読んでなかったりします。
短編より長編が好きな人間ですから。
>
> 「この貧しき地上に」のどろどろぐちゃぐちゃ加減がいいです(笑)。
どうもありがとうございます。
実は書いた私本人もシリーズ中では結構気に入っているんですよね「この貧しき地上に」は。単に今思うと出来の気に入らない話が多いせいかも知れませんが。
> やってる本人たちは真剣なんでしょうけど、遠目で見ると実に愚かというか、同じことの繰り返しというか、狭いところをぐるぐる回ってるだけ。でも、ふとタイトルを振り返ると、そこに愚かな人間の哀愁が滲み出ていて、寂しい笑いで終わる話だと思いました。
> 「この変態野郎」には、すいません、爆笑しましたが(笑)。
この話に限ってはかなり暗い面もありますが、基本的には笑い話のつもりですので、笑えるところでは笑うことをお奨めいたします(笑)。
>
> 個人的に実は一番面白いと思ったのが、ウロボロスのお話でした。
> ひとりノリツッコミかよ! と笑っちゃいました。いやいやいや、とかじゃあじゃあじゃあ、とかの部分が楽しいというか、くくく、と声を殺した笑いが出てくるというか……
ううむ、ウロボロスは救い難い駄作だと思っていたので、意外です。
もちろん嬉しく思いますが……
>
>>ならば地面から生える水晶に足をやられてしまったトカゲが、医者に余命半年と宣告されるというのはどうだ。
>> いやいやいやいやいやいやいやいや、水晶に足をやられると、余命半年になってしまうのはなぜなのだ。
>> 一体、どんな水晶なんだ。
>> 無茶苦茶だぞ。
>> もっとリアリズムを大切にしないと。
> こ、ここ、すっげー笑えました。マジで。
> あと「ウロボロス」って何なんだ? とネットで調べてみてようやくわかりました。なるほどなるほど、無限ループするということなんですね。
ええ。そうです。無限というものは考えれば考えるほど分からなくなるものですが、そういうことは別として無限ループする話を無性に作りたくなったので、この話を書きました。
> なんかこの語り手が、私の頭の中では、ロダンの考える人のポーズで、指をちっちっとか振りながら喋ってる図が浮かんできました。
私としては頭を抱えて本気で悩み嘆いている様が浮かびます。この人は、早く書き出さないと締め切りに間に合わない状態にある作家なんだろうなあと思いながら。
>
> ではではではでは、なんか滅茶苦茶な感想ですが、このへんで。面白かったです。
いえ、とても嬉しく、またとても元気づけられました。
本当にご感想どうもありがとうございました。

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16350「た」:高い空へハイドラント 2004/5/5 12:03:39
記事番号16208へのコメント

 「た」:高い空へ



















 それが最近のことなのか、それとも人間の感覚では想像出来ないくらい昔のことなのかは不明だが、事実としてその国は過去に存在した。その国はあまりに小さな国で、地図にも載ったことがなかった。だが自分達の国はある意味では世界で一番大きな国だと、その国の人々は思っていた。なぜなら彼らは自分達の国にある空が、他のどの国にある空よりも遥かに高いと信じていたからだ。
 だがある年を境に、そのことに疑問を持つ者が現われ始めた。ちなみにその理由には様々な説が存在するが、どれも根拠が薄く今一つはっきりしない。
 とにかく彼らの出現はその国にとって大きな脅威となった。実はその国は空が高いことを売り物にし、地図に載っていない国を旅することを好む道楽者の富者を集め、彼らから多額の税を徴収することによってどうにか成立していた国なのだから、空が高くないと分かれば、道楽者の富者達はその国から足を遠ざけてしまい、多額の税を徴収することは不可能となってしまうに違いない。
こうして空の高さを疑問視する者達は次々に処刑されることになったのだが、いくら処刑しても次々に現われ、処刑による殲滅はついに叶わなかった。
 こうなれば実際に空の高さを計測するしかないと、誰かが何かの会議で発言した。その者は、余計なことを言った罪によって処刑されたが、その案は熟考の末採用されることとなった。
 だが空の高さを計測するには、いかなる方法を用いるのが良いのだろうか。幾度となく国王は会議を開かせたが、誰にも妙案はないようだと分かり、山奥に隠遁する賢者に相談することにした。
 さて賢者へ相談をしにゆく者であるが、国で最も愚かな者が選ばれた。なぜならば賢者は、自らが賢者であるがゆえに、自らと同じ賢者を嫌い、愚者を好むからである。もしもその賢者に及ばぬとしても、人並み以上の知識と知恵を持つ者を送れば、その者は間違いなく首を刎ねられるか、毒を飲まされて、埋葬すべき死者となって帰って来る。
 こうして国一番の愚者が、賢者の元を訪れることとなり、国一番の愚者は賢者から知恵を拝借して戻って来た。だが国一番の愚者は愚者であるがゆえに、人里に戻って来た頃には賢者の元を訪れたこと自体を忘却してしまっていた。そのため拝借した知恵は誰の耳にも渡ることなく、国一番の愚者の処刑とともに永久に失われてしまった。
 この後も、国二番、国三番と次々に愚者が、賢者の元を訪れていったが、どの愚者も、戻って来た時には拝借した知恵の内容を忘却していたか、愚者であると思われたのが実は愚者でなかったために埋葬すべき死体となって帰って来たかのどちらかで、結局王には賢者の知恵を手に入れることは出来なかった。
 だがここでようやく妙案を持つ者が現われた。国王が性的不能者で子を持たぬため、第一位の王位継承権を持つ国王の異母弟である。国王と国王の異母弟の対話の記録が幸いにも残っているため、それを引用したい。
「兄上、私は昨夜神とまみえました。それで、神は仰いました。細長い穴を掘り、そこに国中の火薬を入れた後、一人の高貴なる男を乗せた鉄の船を落とし、火薬を爆発させることによって鉄の船を空へと飛ばせ、と。そして鉄の船が細長い穴より空へと旅立ってから、再び大地に落ちて来るまでの時間によって、空の高さを導き出すが良い、と。これを実行してはいかがでございましょう」
「だが弟よ、細長い穴を掘り、そこに国中の火薬を入れるのも、鉄の船を浮かべ、火薬を爆発させることによって鉄の船を空へと飛ばすのも、鉄の船が細長い穴より空へと旅立ってから、再び大地に落ちて来るまでの時間によって、空の高さを導き出すのも、分かる。だがなぜ一人の高貴なる男を乗せねばならぬのだ」
「神のご意志は我々には理解し難いものであります」
「なるほどな。だが、船に乗る高貴なる男は誰が良いと思う。ぬしか?」
「いえ、私は卑しき妾腹の生まれ、高貴なる者ではありますまい」
「では、主は余の座を継ぐ権利を拒否するか。自らを卑しきとする者は、王となる資格などないが」
「私が王位を継がないとすれば、何人がそれを継ぎましょうか」
「余の従兄弟に当たる者がそれを継ぐことであろう」
「ですが亡くなられた叔父上も妾腹の身でございます。さらに叔父上のご細君も身元の不確かな者でしたから、その間に生まれたことなると、私以上の卑しき者でありましょう。それに性的不能者とも聞きます」
「だがぬしと違って、自らを卑しきとは言わん」
「ですが、私の言葉は謙遜でございます」
「自らの言葉を謙遜だと述べる者に、王となる資格などない! ぬしの言葉が謙遜であることなど、とうに分かっておったわ」
「それは失礼致しました」
「ああ、失礼だ。不敬罪に処してくれるぞ」
 記録は以上である。
 こうして国王の異母弟は、不敬の罪によって処刑された。異母弟の命が断たれる瞬間に国王は大声で笑ったとされているが、これは不確かな根拠に基いて立てられた説のため、真実とは言い難い。
処刑後、国王は国王の異母弟が神から聞いたという言葉を、臣下に伝えた。ただし、最も高貴なる男、という部分を、最も愚劣なる男、に代えて。
 筆者はここで読者が、なぜ船には誰も乗せないことにしなかったのか、との疑問を持つことを推測する。だが、真に残念なことにこの疑問を払拭する術は筆者にはないのだ。是非、それを理解して頂きたい。話を続ける。
 国王は早速、都から出来るだけ離れた場所に細長い穴を掘らせた。さらに集められる限りの火薬を集めさせ、細長い穴の周より若干縦横幅が小さい程度の鉄の船を造らせ、国で最も愚劣と思われる男を探させた。そして穴の中に火薬を入れ、国で最も愚劣と思われる男を乗せた鉄の船を自らの見ている前で、穴の中へ落とさせた。
 鉄の船が落下した衝撃によって爆発した火薬は、船を穴の外へ吹き飛ばした。だが、それだけでは済まなかった。穴の中で爆発した火薬は、穴そのものを破壊し、そして辺りの地面を吹き飛ばして、当然の如く見物者の命を奪った。
 見物者は王だけではなく、第二位の王位継承権を持つ国王の従兄弟もいて、王家の血を継ぐ者は彼の他にはもういなかったために、国は瓦解し、数ヵ月後も経たぬ間に他国の支配下におかれてしまった。
 新たにその国を支配することになった国もまた、その国の空の高さをその国と同じく利用することを考えたのだが、いかなる理由があってかこの国が支配するようになってから、空の高さを疑問視する者は嘘のように現われなくなったため、難なく道楽者の富者達から多額の税を徴収し、国を潤わすことが出来た。
 だが話はこれでは終わってはいない。
 火薬の爆発によって吹き飛ばされた国で最も愚劣とされる男は、再び生きて地上に戻ることが出来た。火薬が爆発した時の力は凄まじく、本当はどこまでも高く飛んでいくはずだったようなのだが、ある高度に達した時、突然落下し始めたらしい。そして落下の時も、肥え太った道楽者の富者の上に落ちたため、その富者の脂肪によって衝撃をやわらげられて、無事着地することが出来たのだという。ちなみに落下の時点で、国で最も愚劣とされる男が、未だ鉄の船に乗っていたか否かは明白とされていないが、筆者は、否と考える。
 さて地上に戻って来た国に最も愚劣とされる男は、他国に支配されてすっかり変わってしまった国に見切りをつけ、山奥に隠遁する賢者の元に向かっていった。
 賢者を嫌い、愚者を好む賢者は、喜んで国で最も愚劣とされる男を向かえ、二人は末永く幸せに暮らしたという。
 ところで、この辺りのことはすべて国で最も愚劣とされる男自身の手記が記しているのだが、国で最も愚劣とされる男に文字が書けたというのは何を意味するのであろうか。
 恐らく文字は賢者が教えたのだろうが、国で最も愚劣な男に文字を教えられるほど賢者が優れた人物であったということなのか、国で最も愚劣とされる男は、国で最も愚劣とされているだけで、本当は国で最も愚劣な男ではなかったということなのか、あるいはこの国の知性の水準レヴェルは、筆者の考えているほどには低くはなかったということなのか、どうにも筆者には判断が着かないが、二番目の説が真実である可能性は低いと考える。なぜなら賢者は賢者を嫌い、愚者を好むのだから。
 

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 一度終わった物語の続きですので、余裕を持って書くことが出来たと思われます。
 そのためか精一杯力を注ぐことが出来たかと思われます。
 また多分、「小さな国の物語」史上、最長ではないかとも思われます。
 掌編小説が長大化するのは必ずしも良いことではありませんが、本作はその長さに見合った出来にはなっているかと思われます。
 思われます、が四連続で続きましたが、まあその辺は気にせずにおくのが良いかと思われます。
 それでは、読んでくださった方、どうもありがとうございました、と思われます。
 これで本当にお終いです、と思われます。

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16351おまけ2:細長い物語ハイドラント 2004/5/5 12:19:25
記事番号16208へのコメント


 おまけの第二弾です。
 かなり悪ノリしてます、というか悪ノリだけで出来ています。
 けして読みやすくはないのでご注意を。
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 むかしむかし、かなりむかし、死ぬほどむかし、あるところに男が二人いたが、二人は兄弟の関係ではなく、親子の関係でもなく、従兄弟とか叔父と甥だとかそういう頭の混乱しそうな間柄でもなく、先輩後輩、上司部下の関係でさえもなく、いわゆる愛人関係でもなかった、と言えば、親友、あるいはそこまでいかなくても友人という関係で結ばれていたのかと思われるかも知れないが、実は仲が悪くケンカばかりしており、しかもそのケンカの内容は、ケンカするほど仲が良いと言われるような人間同士の間でおこなわれるような生易しいものではなく、鈍器や刃物を持ち出したり、死ぬほど深かったりあるいは先の尖ったものなどが仕掛けてあったりする落とし穴を掘ったり、午後の紅茶に毒物を入れたりと、下手をすると命に関わり兼ねないものばかりだったので、二人の内の一人はある日死んでしまい、生き残ったもう一人も憎い相手がいなくなったせいで、生きる目的を失ってしまって、その日の夜に自殺して、そして誰もいなくなった、という話がある小さな国のある村に代々伝わっているのだが、この話には面白みなどどこにもなく、読点を一つしか必要としないことくらいしか優れた点はないし、それについても実は優れているとは言い難く、逆に欠点となっている可能性も非常に高い上、思えばちゃんと話になっているかどうかも微妙であるから、こんな話はどうでも思ってくれても構わないし、しっかりと読まなくとも結構、というかしっかりと読む価値などない、と私は昨日書いたのだけど、寝ながらこの文章のことを考えている内に、二人の男の内、一人か二人かを、超自然現象の力を借りて蘇らせ、勝手に話を続けてはどうだろうか、と思うようになり、実行してみようかとも思ったが、それをやるべき人間は多分私ではないから、私はそんなことなどせず、朝食を取って朝風呂に入って朝酒を飲み、気持ちの良い布団で朝寝をしようと思うのだが、しかし……