◆−屋根裏部屋の砂漠−ハイドラント (2004/5/12 15:53:40) No.16377 ┣1章−ハイドラント (2004/5/12 15:54:25) No.16378 ┣2章−ハイドラント (2004/5/12 15:57:59) No.16379 ┣3章−ハイドラント (2004/5/12 16:04:15) No.16380 ┃┗いろいろ想像してしまいました。−エモーション (2004/5/14 22:38:33) No.16385 ┃ ┗Re:ごめんなさい、いったんはこれでお終いなんです−ハイドラント (2004/5/15 18:52:35) No.16386 ┗あとがき−ハイドラント (2004/5/15 20:03:19) No.16387
16377 | 屋根裏部屋の砂漠 | ハイドラント | 2004/5/12 15:53:40 |
こんばんは、ハイドラントです。 今回は少々不思議な物語をお届け致します。 オリジナルのお話で、原稿用紙換算で60枚か70枚くらいの、長めの短編か短めの中編といったところです。 では、どうぞ。 <@><@><@><@><@><@><@><@><@><@> ――屋根裏部屋の砂漠―― ぼくはそのとき、青春の戸口に立っていたのだが、まだ森の大きな木の根もとにかくれて、ひとりで自分に物語を聞かせていた。針のような一本の松葉があれば、ぼくはそれをひとりの騎士とも、貴婦人とも思うことができたし、またそれをひとりの道化師にしたてることもできた。それを目の前にかざしながら、物語をつぎつぎにつくり出して、他愛もなく喜んでいた。 ――イタロ・カルヴィーノ「まっぷたつの子爵」 |
16378 | 1章 | ハイドラント | 2004/5/12 15:54:25 |
記事番号16377へのコメント ▽アンナ・ニーナ・カーナ 湿った土を踏み、長い草を掻き分けて、歩いていく。頭の上に鬱蒼と茂る木々の枝葉の隙間から微かに見える空には、小さな三日月が寝そべっている。聴こえるのはただ、草や木の葉を揺らす風の音と、囁くような虫の音、それに遠くで鳴くフクロウの声のみ。なぜここに自分がいるのかは分からないが、妙に懐かしく、そしてどこか暖かい。……それが昨夜見た夢の情景だった。 蛍光灯の白い光に照らされた自分の部屋にいるアンナ・ニーナ・カーナは、さっきまで読んでいた文庫本(新人作家の本で、あんまり面白くない)を手に持ったまま、無数の星と一つの月が輝く夜空を見上げ、その夢について思いを巡らせていたが、心の胃袋は満たされるどころか減っていくばかりだった。 古い天井を見上げながら、溜息を吐く。最近、物語がつまらなくなった。何年か前、いや何ヶ月か前までは、紙の上に描かれた世界は文字通り、自分だけの楽園であり、魅惑的で蠱惑的な果実であったが、今となっては無味乾燥な文字と記号の集合体としか思えない。 確かに面白い物語は存在する。だがそれも面白いだけだ。それ以上のものではない。結局は別世界の物語として完結してしまい、自分自身と溶け合い混じり合うことはありえない。 昔に還りたい。至福の時を取り戻したい。昨日見た夢のような世界を。 だがそう考えるたびに、機械的な時間の流れに抗うことが不可能であることを思い知らされ、心の飢えと渇きは増していく。手が届きそうで届かない。もどかしい。 月の光が橋を掛けてくれないだろうか。この小さな部屋と、大きな月を結ぶ長い橋を。それを渡って月の世界にいきたい。 闇が人の姿を持ち、命を持ち、意思を持って、囁き掛けて来てくれないだろうか。こんな味気ない世界とは違う、不思議で魅力的なもう一つの世界の存在を教えてもらいたい。 風が空を飛ぶ船となって遠い世界まで運んでくれないだろうか。高い空から見下ろす大地と、大いなる海の美しさをこの目、この心で感じたい。 そうやって生み落とされていくつまらない空想は、すべて無意味であるどころか病毒でさえある。 存在しないものを狂おしいまでに追い求め、苦しんだ果てに死んでしまう自分を、同じ頭の中の世界に見出してしまう。 空想の世界から帰って来て、ふと時計を見るとすでに午前二時。アンナ・ニーナ・カーナは眠ることにした。 持っていた本は適当な場所におき、柔らかなベッドに入る。すぐに眠りに就くことが出来た。 ▽雨の降る森 電車でもバスでも車でもいくことの出来ない人里から遠く離れた場所に、夏の家という家がある。そこにはアンナ・ニーナ・カーナの叔母が一人で住んでいる。 叔母は本嫌いなのでアンナ・ニーナ・カーナとは話が合わないが、それでも優しい人だ。こんな山の中に場所に一人にしておくには惜しいほどに。 だが彼女は人と同じ場所に住もうとはしない。それは人の密集している土地が嫌なのではなく、秘境のようなこの土地が好きだからだという。 夏の家付近はよく雨が降る。特に誰かが訪れた時は必ずと言って良いほど、どしゃぶりになる。そして雨の匂いが満ちる。 夏の家にはそこへいくまでの道はない。辺り一帯を深い森に囲まれているからだ。だが道がなくても辿り着くことは出来る。森を歩けば良い。歩けば自然に辿り着く。ちょっと不思議だが。そんな家である。 夏の家は小さい。二階建てで、開かずの地下室と開かずの屋根裏部屋がある他には、特にこれといった特徴はない。変わり者の中年女性が住んでいることは家自身の特徴には入らないだろうから。 さて、ある年の秋の終わり頃という寒い季節、雨に打たれ、ずぶ濡れになったアンナ・ニーナ・カーナがこの夏の家を訪れた。 その時のアンナ・ニーナ・カーナには、森を歩いた時の記憶は残っていなかった。単調な黒っぽい緑と茶の世界が広がっていただけかも知れないし、幻想的な雰囲気に包まれていたのかも知れない。もしかしたら妖精や不思議な動物が住んでいたのかも知れない。 だが雨のことばかりが気になって、何も見えなかった。惜しいことをした。雨具を忘れなければ良かった。雨具を持ってさえいれば、森という一つの異世界を堪能出来たのに。 思えば、前の時も、その前の時もそうだった。いつでもこの森のことは分からない。まるで森が自分の素顔を見られることを拒んでいるかのように(単に自分が忘れっぽいだけのことかも知れないが)。 だが今は森のことであれこれ考えている暇などない。とにかく早く家に入らないと風邪をひきかねない。 アンナ・ニーナ・カーナは古い木の扉を叩いた。扉はすぐに開いた。 懐かしい匂いがした。その時、アンナ・ニーナ・カーナは、奇妙な雰囲気と無数の予感に突き刺され、全身を震わせ、動けなくなった。恍惚の匂い、そして…… 「いらっしゃい」 アンナ・ニーナ・カーナを魅力的な空想世界から、より魅力的かも知れない現実世界へ。呼び戻したのは、扉を開いた叔母の声であった。 叔母は優しい顔をしていた。宝石の輝きのような笑みを浮かべていた。 「久しぶりだねえ、アンナ」 アンナ・ニーナ・カーナにとっては懐かしい声だった。 ▽夏の家 叔母とアンナ・ニーナ・カーナは木の廊下を歩き、ダイニングルームに入った。屋根を打つ雨が微かに匂う。 アンナ・ニーナ・カーナを木のテーブルに座らせた叔母は、台所に消えた。 アンナ・ニーナ・カーナはタオルで頭を拭きながら、溜息を吐いた。それから天井を見上げた。黄色いランプが灯っている。天井は古めかしく、それゆえに少女時代に還ったような気分になる。まあ今も少女といえば少女とも言えなくないのだが。 暇潰し用の本を持って来なかったいせいで退屈していると、次第に時計の音が気になって来た。嫌らしい針の音は、ファンタジー物語に出て来るとしたら悪役になっているだろう。残酷だがどこか滑稽な愛すべき悪役に。 叔母がタオルと着替えを持って来た。少し遅い気もするが、気にしない。 アンナ・ニーナ・カーナがタオルで頭を拭きながら、廊下を歩いて洗面所へいき、着替えをして戻って来ると、木のテーブルには熱い紅茶がおかれていた。 「ほら、お飲み」 ティーカップからは湯気が溢れて来る。湯気は現実の映像を歪め、不可思議な世界を映し出す。そこはもはや一つの異世界だ。 アンナ・ニーナ・カーナは、近付いてティーカップを見つめる。そして奇妙な既視感に襲われる。 そこには砂漠があった。夜の砂漠。青い月に照らされた。 叔母の視線が痛いので、見つめるのは止め、飲むことにする。美味しくはない。だがけして不味くもなかった。 「美味しい」 だからそう言うことにした。いつの間にか雨が止んでいたが、席を立ち、窓を開けて外を見てみると、空はまだ暗かった。虹の気配はどこにもない。 ▽鍵 空が晴れる前に日が暮れ、暖炉に火が入った。世界はどんどん暗くなる。 暖炉の火も世界を歪ます。だが今は異世界よりも目の前にある食事の方がよほど魅力的だ。 夕食は豪勢である。赤と黄と緑の織り成すタペストリー。幻想的で、だが現実にあって現実的な異世界。まさしく自分の求める世界の縮図のようだと思った。 豪華料理を堪能した後、アンナ・ニーナ・カーナは二階の寝室に案内される。 「お休みなさい」 まだ寝るには早過ぎる時間なのに、叔母はそう言った。 アンナ・ニーナ・カーナ用の寝室は狭い。柔らかそうなベッドの他には、椅子が一脚あるだけだ。ここの灯りもランプであり、暗くはないが、明るいとはお世辞にも言えない。 だが、白いレースのカーテンの向こうには森を映す窓がある。それだけで充分なのだ。パジャマに着替え、靴と靴下を脱ぎ、ベッドに入ってごろごろした。 窓と窓を閉ざすカーテンの間に、一冊の本が隠されていることに気付いたのは、いざ窓を開けてみようとした時のことである。ベッドに座って、思いを巡らせていた時には気付かなかった。 「鍵」という題名の黒い表紙のハードカバー本であった。本にはあらすじどころか、著者の名前すら書かれていない。ぱらぱらとページをめくってみる。字がぎっしりと詰まっているのが分かった。 アンナ・ニーナ・カーナは一時間ほどその本に惹きつけられた。といっても読み出したわけではない。最初の数行くらいはチェックしてみたりしたが、それ以上奥へは踏み込んでいない。 読むのが勿体なかったのか、あるいは読んでしまうのが恐かったのか、そのどちらかであり、自分でも分からない。とにかく言えることは、この本がただの本ではないということだ。 それにしても、なぜこんなところに本があるのだろう。叔母は極度の本嫌いで、この家には本などおかれていないはずなのに。 とにかく本の呪縛は一時間で終わり、アンナ・ニーナ・カーナは夜空を見上げた。月も星も出ていなかった。世界が闇に飲まれてしまったかのように暗く深い夜。風は吹かず、フクロウは鳴かなかった。 世界にたった一人。そんな思いが波のように押し寄せて来た。 ベッドに入った。眠れなかった。起き上がる。本を手に取る。題名の「鍵」という文字を見つめた。その時、屋根裏部屋のことを思い出す。 ▽屋根裏部屋へ 夜中になり、アンナ・ニーナ・カーナはパジャマのまま、靴を履いて部屋を抜け出した。闇が覆う暗い廊下を、忍び足で進む。 手には「鍵」という題名の本。自分の意志で持ち出したのではなく、気付いたら右手の指に握られていた。 アンナ・ニーナ・カーナの向かったのは屋根裏部屋への階段である。屋根裏部屋にはこれまで三度入ろうとした。だが一度も入れなかった。 鍵が掛かっていたのである。叔母が掛けたのだ。叔母は屋根裏部屋にアンナ・ニーナ・カーナを入れたくないようなのである。一度見つかって異常なほどこっ酷く叱られた経験もある。 階段にいき、階段を昇る。夜は静かだ。自分が息を吸って吐く、その音さえうるさく感じられるくらいに。 もしかしたら亡霊の入った甲冑でも降りて来るのではないか。あるいは昇って来るのではないか。それとも現われるのは小鬼の類かも知れないし、もっと別の魔物かも知れない。 より現実的な恐怖もある。それは叔母に見つかって叱られるのではないかという恐怖だ。もしかしたら最大の恐怖かも知れない。 それでもアンナ・ニーナ・カーナは進んだ。不安や恐怖よりも期待の方が大きかった。 今日こそ、屋根裏部屋への入り口を開く。壊してでも開いてやる。 階段の最上部付近で、前屈みになって立ち止まった。最上段のすぐ上の高さにある天井には、屋根裏部屋に通じる木の上げ蓋がついている。その蓋を試しに押し上げてみようとした時、アンナ・ニーナ・カーナは足元がザラザラしていることに気付いた。 多分、砂のようなものが落ちている。暗くてよく分からないが、どうやら踏むだけなら害にはならないものらしいので、安心しても良いと思う。 アンナ・ニーナ・カーナは、天井に目を向け、本を持っていない方の手、つまり左手を伸ばした。五本の指と手の平が、スベスベした蓋の表面に触れた。力を込めて、押し上げる。 どうやら鍵は掛かっていなかったようだ。アンナ・ニーナ・カーナは不思議に思ったが、まず純粋に喜んだ。 階段を最上段まで昇り、屋根裏部屋に出る。屋根裏部屋は月の光に照らされていた。空には月などなかったはずなのに、青い光が注がれていた。 |
16379 | 2章 | ハイドラント | 2004/5/12 15:57:59 |
記事番号16377へのコメント ▽砂の海 入って来た階段が消えたことと、持っていた本がなくなっていたことには気付かなかった。より大きなことに気を取られていたから。 屋根裏部屋は砂漠だった。どこまでも続く白い砂の海であった。水の海に波があるように、砂の海にも波がある。とはいえ水の海の波と違って動かないただの起伏である。 風が吹き、砂が流れる。砂が押し寄せ、風が逃げ惑う。それでも世界は静かだ。 もう一度空を見上げるとやはり、月があった。それも大きな満月である。砂漠の満月は何となく母を思わせる。母らしいところなど何一つもないアンナ・ニーナ・カーナの実母ではなく、世間のイメージとしての母を。 アンナ・ニーナ・カーナは呆然としていた。これは何なのだろう。 感覚がおかしくなって来る。変な気分だ。 その時、どこからともなく歌が聴こえて来た。アンナ・ニーナ・カーナは咄嗟に耳を澄ませる。 月の船は今日も進むよ 雲と空のあいだの海を 砂の一粒その光浴びて 船乗りの夢見る 空に憧れる 強い風が吹いて来たよ 砂の一粒空に舞い上がる 小さな夢が今叶ったね 声は綺麗だが、歌は下手だ。だが、そんなことはどうでも良い。 何者かがこちらへ向かって来る。暗くてその正体は分からない。それでもアンナ・ニーナ・カーナに恐怖はなかった。近付く者を受け入れる。 相手との距離が縮まった。アンナ・ニーナ・カーナが想像を膨らますよりも早く、その正体が判明する。トコトコ歩く黒い馬に跨った男だった。若い格好良いというよりは綺麗な男で、黒い皮の鎧と青いマントを身に着けている。黒いズボンのベルトには、短くも長くもない鞘つきの剣が掛けられていた。 「こ、……こんばんは」 勇気をアンナ・ニーナ・カーナは言った。少しどもったが気にしない。 「こんばんは」 男は滑らかな口調で返事をした。やっぱり綺麗な声をしている。宝石のような声、とアンナ・ニーナ・カーナは頭の中のリストに刻みつけた。 アンナ・ニーナ・カーナが何も言わないでいると、男はもう一度口を開いた。 「失礼かも知れないけど、君はどこから来たんだい?」 奇妙な言葉だと思った。だがそれが気のせいであることにはすぐに気付いた。こんな砂の海にパジャマを着た少女に毛の生えたような人間が住んでいるはずなどない。もし住んでいたとしたらとっくの昔に物語にされているに違いない。あまり面白い物語にはなりそうもないが。 「…………」 アンナ・ニーナ・カーナは何も答えなかった。 「分からないのかい?」 男がそう訊いて来ると、ためらいがちに首を縦に振った。 「そうか。なら乗っていかないか?」 「え?」 「近くの町まで運んであげるよ。まさかこんなところにずっといるわけじゃないだろ」 「……あ、ありがとうございます」 ▽ルイス・ルイス・ルイス 砂の海を馬という船が小走りで進む。しかもその船には自分も乗っている。現実にありえないことではないが、それでも不思議な状況だった。 実を言えばアンナ・ニーナ・カーナは、自分がここに存在していることを信じ切ることが出来ないでいる。これは夢ではないのか思いに囚われている。 「あのう……」 前に座る男に話し掛けた。 「何だい」 男は気安く返事をする。この馴れ馴れしさもどこか非現実的な気がする。まるで物語の登場人物のようだ。 「ええと、あなた……」 「ルイス。ルイス・ルイス・ルイス。面白いことにファーストネームもミドルネームもファミリーネームも全部ルイス。それが僕の名前なんだ」 「ルイス……さん?」 「さんは止めて欲しいな。せっかく親から短い名前をもらったのに、さんづけされたら長くなってしまう」 キャラクターも現実的ではない。やはりこれは夢だろう。 試しに頬をつねってみた。痛い。だが夢に痛覚があってもおかしくはないはずだ。間違いない、これは夢だと、アンナ・ニーナ・カーナは頭の書類にハンコを押した。 しかし本当にこれが夢だとしても名前を名乗らないのはやはりまずい。アンナ・ニーナ・カーナも名前を名乗った。それから改めて、質問をおこなう。 「ルイスはこんなところへ何をしに……」 「ああ僕かい。僕は砂食いの保護をしているんだ」 「……砂食い?」 「知らないのかい? そうか、君もか……」 「君も、って……?」 自分と同じ人間。ドッペルゲンガーという言葉を思い出してしまい、背筋を冷たくした。 「ああ、君と同じような娘がいたんだよ。彼女も砂漠にいた。まるで別の世界から来たみたいに、何も知らなかったから驚いたね」 何も知らなかった、という言葉は馬鹿にしているみたいだったが、今回は気にしないことにする。 「で、砂食いだけどね。この大陸が今、危機に瀕していることは知っているかい」 「危機って、どんな?」 「まあ危機といっても、僕の生きている間にそれが起こるとは思えないけどね」 勿体ぶっている。まあこういう性格なのは予想がついたが。 「この大陸はすり鉢みたいな形になっている。つまり外側を高い山に取り囲まれていて、真ん中が窪みになっているわけさ」 言われてアンナ・ニーナ・カーナは辺りを見回した。だが山らしきものは見えない。 「ちなみにここは大陸の一番真ん中だよ」 ルイスにそう言われ、アンナ・ニーナ・カーナは、若干の気恥ずかしさを感じるとともに、世界の広さを知って、色々と空想を始めた。ルイスは話を続ける。 「すり鉢状だからね、砂がたくさん溜まると大変なことになる。僕達のいるこの場所は埋まっちゃうんだ」 「でも、そうなったら船で……」 自分の世界に浸りつつも、ちゃんと話を聞いていたアンナ・ニーナ・カーナが言う。 「船? 船で海を渡るの? 無理だよ、そんなの」 驚いたようなルイスの反応に、アンナ・ニーナ・カーナは戸惑ったが、すぐに合点がいった。 山に囲まれたこの大陸に住む人々は、海とは全くの無縁だから、河や湖などを渡るため船しか必要ない。そのため長期航海に耐えうる船を造る技術は持っていないのだ。それに外側を山に囲まれているとしたら、船を造っても海まで運ぶことが出来ない。 だがアンナ・ニーナ・カーナにはどうにかすれば何とかなるような気がした。 だが、それも甘い考えであることが分かる。 「それに、海を渡れる船があったからといって他の陸地に辿り着けるとは限らないよ。僕達の祖先は竜に乗って、遥か遠い場所から、この大陸にやって来たって言われてる。伝承によれば鳥の数十倍、いや数百倍は速い竜でさえも一年以上掛かったらしいんだ。しかもその大陸はどの方角にあるかさえ分からない。陸地は他にもあるかも知れないけど、ないかも知れない。かなり分の悪い賭けだね」 「…………」 アンナ・ニーナ・カーナはすっかり納得させられてしまった。 「じゃあ、爆弾で山を壊すとか……」 自分でも面白味のない方法だと思った。爆弾なんて無粋だ。 「それも無理だね。そんなものじゃ人間の造った建物は壊せても、自然の造った大いなる壁を壊すことは出来ないよ」 もしかしてあんまり高性能な爆弾は開発されていないのかも知れない。まあこんな竜までいる(さっきルイスが名前を出した)世界に原子爆弾とか核兵器があったら興醒めだが。 「まあ、というわけで僕達は大陸が砂で埋まってしまうと困るわけだ。つまり砂が増えたら減ってくれなければならない」 「増えるの?」 不思議そうに訊ねたアンナ・ニーナ・カーナだが、実は別に増えても良いのではないかと思っていた。それくらい不思議な方が夢としては面白い。 ルイスは軽く頷いた。 「そうだよ。砂は毎日沸いて来る。どこから沸いて来るのかは分からないけど、とにかく増え続けてるんだ。もの凄いペースみたいだよ。そうじゃなきゃ砂食いがとっくの昔に全部の砂を食べ尽くしているからね」 あっ、とアンナ・ニーナ・カーナは声を上げそうになった。そういえば夏の家の屋根裏部屋への階段、あそこには砂が落ちていた。あの砂はもしかして、この砂漠に運び入れる途中でこぼれた砂では……。 そうなると、この大陸の砂の量を増やしているのはもしかして、アンナ・ニーナ・カーナの叔母? いや、それは違う、と打ち消した。叔母にそんなことをする意味があるとは思えない。 それにもの凄いペースで増え続けているとしたら、大変だ。どのくらいかは分からないが、多分一日にバケツ一杯分くらいでは済まないと思う。それを毎日続けるとしたら大変だ。それに夏の家付近には砂漠に適した砂などどこにも見当らない。やはり違うみたいだ。やはりあれは砂漠の方からこぼれて来た砂なのだろう。 「さてさて、やっと砂食いの説明に入れるね。砂食いっていうのは文字通り、砂を食べて生きる動物のことさ」 アンナ・ニーナ・カーナが最初に想像したのは、像のように大きなアリクイの姿だった。大きいのは、食い、という言葉がついていて強そうに感じたからだろう。それにしても、陳腐な想像だとアンナ・ニーナ・カーナは心の中で自分を笑った。そして次に想像したのは、ステゴサウルスにサイの角をつけたような生き物。だがこちらもイメージとしては今一つだ。 「この砂食いがいなくなったら、この大陸は大変なことになる。毎日砂が増え続けているんだからね。砂食いが砂を食べてくれないと困る。まさに大きな危機と言って良いだろ」 「……あっ、う、うん」 砂食いの姿を想像していたせいで、反応に遅れてしまった。だが気を取り直して、もう一度想像し始める。これは夢なのだから、砂食いの姿は自分のイメージした通りになってしまう可能性も絶対にないとは言えない。そうなった時、後悔しないためにも、ここでがんばらなければいけない。 「実際にいなくなろうとしているんだよ」 アンナ・ニーナ・カーナはびっくりした。だがそれは言葉の内容が驚愕に値するものだったというわけではなく、ルイスの声に異常なほど迫力が込められていたからだ。まるで恐い話をして子供を恐がらせる大人のような口調だった。昔が懐かしくなったが、それ以上に驚いた。 だからアンナ・ニーナ・カーナは絶句した。 「砂食い狩りというやつらがいるんだよね。文字通り砂食いを狩る連中さ。そいつらが砂食いを狩るせいで、砂食いの数は少しずつ減っていっている」 アンナ・ニーナ・カーナは間をおいて、尋ねた。 「でも、何で狩るの? そんなことしたら自分達も……」 「さあ分からないね。何せ相手は人間じゃないんだからさ」 では何なのだろうか。世界征服を目論む魔王の手下とか、そういうものなんだろうか。それとも、蛮族とか邪教の狂信者とか麻薬中毒患者なんかを揶揄して人間じゃないと言っているだけなのか。 「とにかくその砂食い狩りを倒して砂食いを守るために僕達はいるんだ」 ルイスは自慢するでなく、淡々と言った。 「と言っても、単に食べるためにやってるだけなんだけどね。それほどこの仕事が重要だとも思ってなかったりする。だって大陸が砂で埋まるなんて実感がないからね」 確かに、世界が滅びる情景を想像したとしても、それにリアリティはあまり感じない。思い浮かべた時点で、違う世界の話になってしまう。 「あっ、もうあんなに月が暮れてる。このままじゃ夜に間に合わないかも知れないな」 不思議な発言を聞いた、と思った。今は夜なのに。そう思いながら空を見上げたアンナ・ニーナ・カーナは月が少し欠けているのを見た。さっきまでは満月だったのに。 一瞬悩んで、そして理解した。多分、この世界は月が太陽の代わりなのだろう。満月の状態が昼で、新月の状態が夜。 そうなると、夜にはまだ遠いようだが、それはつまりここから近くの町までの距離も遠いというわけだ。今からだと夜になるかどうかギリギリの状態なのだろう。 だが、なぜルイスはこんな何もない砂漠で、近くの町への正確な距離を測ることが出来るのだろう。この世界の人々には距離とかそういうものに関する特殊な能力があるのかも知れない。 ▽砂食い 月はかなり欠けて来た。アンナ・ニーナ・カーナは眠気を感じていた。 思えばこの大陸に来た(夢に入った?)のは、この大陸の時刻では正午頃だったが、夏の家の時刻では真夜中だった。つまり真夜中からさらに何時間も経っていることになる。いくら夜更かし好きなアンナ・ニーナ・カーナでも、眠くなって当たり前だ。 だがその眠気さえも、アンナ・ニーナ・カーナには心地良かった。ルイスの背中にもたれ掛かり、眠りに入るギリギリの、最も心地の良い境地を保つことだけを思う。 その場所は温かい海のようだ。温水プールに似ているのかも知れない。 たまに目を開くと、砂漠の情景が真新しく映る。 これが夢でなければ良いのに、とアンナ・ニーナ・カーナは思った。こんな場所を求めていたのだ。ここにいつまでもいたい。朝の光なんかに掻き消されることなく、永遠に。 「ねえ、アンナ」 不意に声が掛かった。当たり前だが、ルイスの声は眠たさを感じさせない。 アンナ・ニーナ・カーナはその声を聞いて、眠気を失い、至福の境地を失った。だが不快ではなかった。清々しくてこれはこれで良い気分だ。目覚めの清涼感というやつだろうか。 目を覚ましたアンナ・ニーナ・カーナはまずルイスにもたれ掛かっている身体を、元に戻した。 「あれが砂食いだよ」 ルイスは声とともに、自分の右斜め前を指差した。アンナ・ニーナ・カーナがそちらを見ると、少し向こうに何かの姿がうっすらと見えた。 ルイスが何かを呟いた。その瞬間、辺りがライトアップされた。まるでここだけ昼になったみたいだ。もしかして魔法か何かだろうか。ルイスは魔法使い? とにかく砂食いの正体が暴かれる。形はアリクイに似ていた。だが、ふさふさな毛などどこにもなく、太い胴体も、四本の足も、細長い顔も全部石みたいに固そうだ。サイズは結構大きい。今乗っている馬と同じくらいあるかも知れない。 顔を地面に向けている。砂を食べているのだと分かった。 馬が歩みを止めた。ルイスが手綱を取ったまま降りる。アンナ・ニーナ・カーナもそれに続いた。 間近で見る砂食いには迫力があった。地面を見つめる表情には、砂を食べる態度には、鬼気迫るものがある。はっきり言って恐い。 「大丈夫、こっちから何もしない限りおとなしいよ」 ルイスが心を読んだように言った。もしかしてルイスは心を読む魔法でも使ったのではないだろうか。 「この砂食いは大きいね」 ルイスが砂食いに近寄っていく。砂食いはそんな彼など無視して、砂を食べ続ける。 強い風が吹いた。砂塵が一瞬、ルイスの姿を隠す。 「砂食いはね、食べたものは外には出さないんだよ。ほらその――排泄行為というやつをしない。だからどんどん大きくなるんだ。砂のエネルギーを吸収してね」 アンナ・ニーナ・カーナは、山のように大きくなった砂食いを想像した。そしてちょっと恐くなる。だが、動物なんだから寿命はあるだろうし、際限なく大きくなることはない、と判断して安心した。 「砂にエネルギーってあるの?」 しばらく間をおいてそう問い掛けた。我ながら間抜けな質問だ。ルイスがあると言ったんだから、あるに決まっている。 「当たり前だろ。そうじゃなければ魔法が使えない」 だが返って来た答えはある意味有益なものと言えた。 「魔法って……さっきの?」 辺りを明るくしたのと、心を読んだのを思い出しながら再び問い掛け。心を読んだ方は違うかも知れないが。 「そうだよ。あれ? もしかして君は魔法も知らないのかい」 馬鹿にするというよりは、呆れたような表情。アンナ・ニーナ・カーナはむっとなって、頭の中でルイスを三回ほどボコボコにした。いくら宝石の声を持っているからといっても、これは許せない。 「前の娘も知ってたのに。って、まあ良いや。魔法ってのはね、砂からエネルギーを引き出して、色々と不思議なことを起こす技みたいなものさ。実は詳しい仕組みは僕も知らないんだけどね。魔法というもの自体は誰にでも使えるんだけど、簡単な魔法と難しい魔法があって、難しい魔法はもの凄い努力をしないと使えない。まあ大体こんなところだね。使ったことないんだったら、今度君にも教えてあげるよ。ちなみにエネルギーを引き出された砂は、当然エネルギーを失ってしまう。エネルギーを失った砂は、またエネルギーを蓄えるんだけど、それまでには長い時間が掛かる。さらに余談になるんだけど、エネルギーの蓄えられていない砂は、砂食いには食べられなかったりする。砂食いは栄養のあるものしか食べないんだ」 早口で饒舌に語ったルイスは、砂食いの背中に手を乗せる。砂食いは何の反応も見せない。何回か背中を撫でたルイスは、砂食いから手を離した。踵を返してこちらへ戻って来る。 「触りたくないんなら、もういくけど」 アンナ・ニーナ・カーナは頷いた。触りたくない、という意思表示だ。 ルイスとアンナ・ニーナ・カーナが馬に乗ると、魔法の明かりが消えて、また暗くなった。 ▽死 「もうすぐだよ」 ルイスが言った。 「何が?」 アンナ・ニーナ・カーナが言う。 「町に決まってるだろ」 ちょっと怒ったような口調でルイス。 「ああ、そういえばそうだったね」 この魅力的な世界を媒体にした楽しい空想に耽っていたアンナ・ニーナ・カーナがわざとらしく言う。 それにしてもこの人って恐くない。今まで会った人の中で一番奇妙な性格でしかも魔法使いなのに、不思議だ。 これが夢だからかも知れない。もしかして理想の相手というやつだろうか。でも結婚したい相手ではない。 結婚するなら、白馬に乗った王子様の護衛を務める無口な暗い過去を背負った騎士だと、ある少女向けのファンタジー本を読んだ時から決めている。ルイスだと、その騎士に斬られそうになる生意気な吟遊詩人か何かというところになってしまうだろう。暗い過去とは無縁だろうから、長い時間を掛けて心の傷を癒してあげる、なんてことは出来ない。いや、意外と暗い過去を背負いながら、明るく振る舞っているタイプかも知れない。いやいや、さすがにそれはなさそうだ。 「ところで……魔法って私にも使えるかな」 教えてくれると言ったが、本当に教えてもらって使えるようになるのだろうか。 「簡単だよ」 ルイスはそう言うが、彼にとっては簡単なことでも、アンナ・ニーナ・カーナにとってはもの凄く難しいことかも知れない。それに、アンナ・ニーナ・カーナはこの大陸の住人ではない。 でもそれ以上は何も言わなかった。 月はほとんど消え掛けている。この大陸ではこれから夜が始まるのだ。 一度起こされたせいか、あるいは馬を降りたせいか、さっきと比べると眠気は引いているが、それでもふかふかのベッドでも与えられたら、三十秒以内に眠れる自信がある。 イメージしたら出て来ないだろうか。いや、簡単に出て来るのはやっぱり面白くないから、町に着くまで我慢しよう。 「あっ、町が見えて来たよ」 いつしか目を閉じていたアンナ・ニーナ・カーナはルイスの声に反応し、開いた目で真っ直ぐ前を見つめた。 そこに光がある。炎の色に似たオレンジの淡い光だ。何かに宗教に入っている人にとって、聖地というものはこんな風に見えるのかも知れない、と何となく思った。 心なしか馬の進む速度が上がったような気がした。その時である。 「今の何?」 最初に感知したのは、アンナ・ニーナ・カーナであった。 「どうしたの?」 ルイスが驚いて、馬を止める。 「……後ろから鳴き声が」 それも怪物的なほど恐ろしげな。 「聞き間違いじゃないの?」 アンナ・ニーナ・カーナは首を左右に振った。ルイスが顎に手を当てて、上の方を向く。その時、さっきより大きな鳴き声が響いた。 「本当みたいだね」 ルイスがそう呟いたかと思えば、馬はいきなり向きを変え、さっきまで背を向けていた方へと猛スピードで走り出した。 いきなりのことに思い切り驚いて、アンナ・ニーナ・カーナは夢から目が覚めるのではないかと思った。だが夢は終わらない。もしかしてこれは夢ではないのではないかと、アンナ・ニーナ・カーナは初めて思った。 今まではそれほど気にしていなかったが、砂漠の風は実に強い。アンナ・ニーナ・カーナは初めてその風を冷たいと思った。そして少し寒いと思った。だが本当に寒くて冷たい世界なら、夢だと思っていた時にも冷たさや寒さ感じるのが普通である。やはりこれは夢だ。 それにしても馬のスピードは速い。鳥のようだ。風のようだ。音のようだ。光のようだ。アンナ・ニーナ・カーナが空想や妄想をする時の頭の回転速度より速いかも知れない。 ルイスが何かを呟いた。その瞬間、一帯が無明の夜から、夕方くらいまでは明るくなった。さっきの明かりの魔法の拡散型だろうか。 正面に何かと何かが争っている姿が見えた。すぐに片方が砂食いであることに気付いた。 もう片方はアンナ・ニーナ・カーナの半分くらいの背丈の痩せた人間型の怪物で、自分と同じくらいのサイズの槍を手に持っている。骸骨にも見えたが、肉は辛うじて残っていた。だが真っ黒な肉で白い骨より多分無気味だ。ちなみに頭髪はない。ガリガリに痩せ細ったチビでハゲの人を黒いペンキの溜まったプールに突き落としたら、大体あんな感じになると思う。多分、砂食い狩りとかいうやつなのだろうが、確証がないので、とりあえず黒ハゲと呼ぶことにした。 戦況は黒ハゲの方が優位なように見える。砂食いは叫び声を上げつつ、気が狂ったように何度も突進をするが、黒ハゲは空に舞い上がってかわしている。そして黒ハゲが自分の背丈くらいある槍を器用に使って、砂食いの固そうな身体を突き刺すと、砂食いは刺された場所から血を流し、悲鳴を上げる。すでにかなり傷だらけだ。 「アンナ、あれが砂食い狩りだよ」 ルイスがアンナ・ニーナ・カーナの方に振り向いて、言った。馬のスピードに拍車が掛かる。 ルイスはまた何かを呟いた。その瞬間、アンナ・ニーナ・カーナの視界を白い光が襲った。目が眩む。 もの凄い悲鳴が耳を震わせる。断末魔の声だと直感した。 世界が元通りになると、そこに黒ハゲこと砂食い狩りの姿はなかった。持っていた槍だけが薄い光に輝いている。 「倒したの?」 「ああ、ちょっと難しい魔法を使ったからね。……疲れたよ」 「魔法って疲れるの?」 「簡単なやつはそれほどでもないけどね、今みたいなのは一日に二、三回が限度だね」 それにしても、腰の剣はお飾りなのだろうか。それとも使うこともたまにはあるのか。アンナ・ニーナ・カーナはそんな疑問を持ったが、あまり面白い疑問ではなかったため、すぐに忘れた。 馬のスピードが緩む。ゆっくりと砂食いに向かっていく。 砂食いはぐったりしていた。傷がひどかったのだろう。 ルイスとアンナ・ニーナ・カーナは馬を降りて、砂食いの方へと歩いていく。途中でルイスが、砂食い狩りの持っていた槍を拾った。剣を提げているベルトにそれも掛ける。 「だめだね。これじゃあ助からない」 手が砂食いに触れられるような距離まで近付くと、ルイスが俯いて言った。そしてさらに小声で何かを呟く。 その瞬間、砂食いの身体が白い光に包まれた。光が充満して、やがて消える。黄昏時のようなほの暗い空の下、砂食いは消えた。アンナ・ニーナ・カーナは何とも言えない不思議な気分になった。 「今の、ルイスの魔法?」 俯いた状態のルイスは首を振る。 「違うよ。砂食いは死ねば皆ああなる」 その時の声のトーンが妙に低かったのは、強く印象に残った。ルイスは砂食いの死を悲しんでいるのかも知れない。砂食いの保護の仕事はお金儲けのためにやっているというようなことを言ったが、実はそうではないのかも知れない。 もしかして、ルイスは小さい頃砂食いに育てられたとか。いや、さすがにそれはないか。 「とにかく、いくよ。急がなきゃ」 |
16380 | 3章 | ハイドラント | 2004/5/12 16:04:15 |
記事番号16377へのコメント ▽レンガの町 町は日干しレンガで造られていた。建物は高いものから低いものまで、すべてレンガ積みで建てられており、古代遺跡でも見ているかのような、どこか不思議な味わいを感じさせる。地面もレンガで舗装されていた。 ルイスとアンナ・ニーナ・カーナが町に着いた頃には、とっくに夜になっていた。月は欠片さえ見えない。 だが町には炎の灯りを灯した台がたくさんあって、けして暗くはなかった。アンナ・ニーナ・カーナには馬に乗ったままその台を間近で見る機会があったのだが、どうやら灯りとなっている炎は木材ではなく、砂によって燃えているようだ。オイルに濡れているようではなかったから、燃える砂なのかも知れない。 寒い風が吹く。馬に乗って町を進んでいくと、たくさんの人とすれ違う。だがこのムードの中では、他人はすべて美しい人形か何かに見える。 もしかして本当にこの町にいる人全員操り人形だったりして。そうだとしたらルイスが彼ら彼女らを操る人形師? だがそれだとあまりにも哀し過ぎる。町がどんなに賑わっていても、結局ルイスは独りということになってしまうのだから。せめて彼以外に一人は生身の人間がいて欲しい。薄幸の美少年というのはどうだろう。彼の両親は悪いやつに人形にされて、一人逃げてこの町にやって来たとか。砂を食べる生き物や、それを殺そうとするやつまでいるのだから、人を人形にするやつがいたとしてもおかしくはないと思う。 それで、この町にいるたった二人の人間であるルイスと美少年は徐々に恋仲になっていく。男性同士だが、もしも片方が女性だったら、徐々にとはいかず、一足飛びに恋仲になってしまいそうだから、これで良いのだと思う。 だが人を人形にするやつは、美少年を追い掛けてこの町にやって来る。そして美少年は、ルイスが側にいない時に襲われて、人形にされてしまう。ルイスが駆けつけたが、時すでに遅く、美少年の姿はどこにもなく、美少年の姿を象った人形のみ。ルイスは号泣する。涙が枯れるほど泣いても、泣き足らない。美少年の人形化を認められないルイスは、美少年の人形を自分で操って、まだ生きているのだ、と自分に思い込ませる。そして…… 空想とも妄想ともつかぬ思考の暴走の末、アンナ・ニーナ・カーナは恐くなった。本当に町の人々が人形ではないかと思えて来たのだ。 そしてある事実を思い出した。これは夢なのだ。だから思ったことは現実になる可能性があるかも知れない。 アンナ・ニーナ・カーナは身体が凍えたように震えるのを感じた。風邪ではない。着ているものはパジャマだし、空気もかなり冷え込んでいるはずだが、ここが夢の世界であるせいか、それほど寒いとは感じない。だからこれは恐怖だ。 思えば、炎の灯り。妙に魔術的で呪術的な感じがする。もしかしたらルイスとは別に、人形師がいるのかも知れない。そしてそいつがこの町の人々を操っている。もしかして、ルイスだって…… 「もうすぐ、僕の泊まってるとこに着くよ」 いきなりルイスが振り向いて言った。その顔が人形のものに変わっているのではないかと心配したが、灯りが薄くてはっきりとは分からなかったため、ひとまずは安心出来た。 とりあえず頷いておく。ルイスが再び前を向いた。その時、笛の音が響いて来た。 もしかして人形を操る笛? そう思ってドキッとするアンナ・ニーナ・カーナ。 「やってるね」 前でルイスが笑う。 「えっ?」 「笛吹き幽霊だよ。夕方から夜に掛けて、町の真ん中くらいにある恵みの泉っていう湖から聴こえるんだ。何でも大昔に不幸なことがあって身投げした男の幽霊らしいよ。ちょうど君くらいの若い女性を湖に引きずり込むって言われてる」 もはや声は出なくなった。身体も動かない。笛の音が続く。 「冗談だよ。あれを吹いてるのは芸人か何かさ。まさかそんな幽霊なんてものが本当にいるわけないだろ。あはは、びっくりしたかい」 そう言われても、アンナ・ニーナ・カーナには安心することが出来なかった。まあ時間とともに忘れていったが。 ▽大きな家 入り口付近の場所はそれなりに賑わった場所だったのだろう。うらぶれた通りに入ると、急に暗くなった。 立ち並ぶ家々の窓の中には、光を放っているものもあったが、それでも道に充満する闇を掻き消すには不充分過ぎる。 裏道を進んでいる馬が、急に止まった。 「ようやく到着だよ。さあ降りて」 アンナ・ニーナ・カーナは言われるがままにした。靴で地面を踏み締める。懐かしい感触だ。 アンナ・ニーナ・カーナは大きく伸びをした。 道の左の方には明かりの灯った前庭つきで横長の大きな家がある。右側は闇に包まれていて、よく見えないが、多分民家があるのだろう。ちなみに馬は左寄りに止まっている。それでも右側にいくんだろうな、とアンナ・ニーナ・カーナは判断していたのだが、予想に反して、馬を降りたルイスは、馬を伴って左の家の敷地に入っていった。 アンナ・ニーナ・カーナは、遠慮がちながらも、それに続く。 「僕はこいつを小屋に入れて来るから、しばらく待ってて」 前庭を半分くらいまで進んだ時、ルイスはそう言って、左の方に進んでいった。 取り残されたアンナ・ニーナ・カーナは、これから自分がどうなるのか考えてみた。ルイスは馬を小屋に入れにいくと言ったが、実は彼は人攫いで、彼が馬を連れて向かった場所には、彼の仲間が待機しているのではないだろうか。そしていきなり大勢で現われて…… アンナ・ニーナ・カーナは大きく首を二度振った。そんなはずはない。だが身体は震えている。 何となく空を見た。月も星もなく、暗くて底知れぬ深さを感じさせる。 もしかして本当に妄想が現実になってしまうのではないか。ルイスは人攫いで、そして自分は…… だが、そんなことがあるはずもなく、ルイスはごく普通に一人で帰って来た。 「じゃあいくよ」 そして呆然とするアンナ・ニーナ・カーナに、そう声を掛けた。 ▽小さな部屋 大きな家の入り口には、大きな扉があった。扉は黄色っぽい色の木を使って出来ている。 ルイスはそれを遠慮なく開けた。中は明るく、暖房器具は使ってないようだったが、外よりはよっぽど明るかった。左右の手前と奥にある柱によって支えられた四角いホールになっている。 赤い絨毯が敷かれており、正面には大きな階段があった。階段の上には入り口のものと同じくらいの扉がある。吹き抜けというわけではなく、階段の上には扉の他何もない。 左右の壁には小さな扉が一つずつあり、それら扉のすぐ左右には三人くらい座れそうな黒い皮張りのソファが一つずつおかれていた。まさか砂食い狩りの皮ではないだろうな、とアンナ・ニーナ・カーナは一瞬思ったが、さすがにそれはないだろう。 上を見れば、高いところにある天井からはシャンデリアが吊ってある。これがこの部屋の光源なのだろう。落ちて来たら人が数人は死にそうなくらい大きい。かなり高級そうだ。それに比べ、天井自体には細工も飾りも何もなく、かなり地味である。 これがルイスの家なのだろうか。だとしたら、ルイスはかなりのお金持ちということになるが。 「ここが玄関ホールさ。上が管理人さんの部屋、右と左は下宿人の部屋になっている。僕の部屋は右側の二階の階段から左にいったところの三番目。僕は管理人さんのとこにいって来るから、アンナは先にいってて。これが鍵だから」 ルイスはそう言って、どこからともなく真っ黒な鍵を出して、アンナ・ニーナ・カーナに手渡し、自分は正面の階段を、ゆっくりと昇っていった。なるほど、ルイスは下宿人か。つまりこの大きな家は下宿宿なのだ。 またしてもおいてきぼりになったアンナ・ニーナ・カーナは少しためらったが、恐る恐る右側の扉の方にいって扉を開け、赤い絨毯の続く廊下を歩き出した。 廊下には部屋がたくさん並んでいる。ホールに比べると大分低めの天井から下がる廊下の灯りはランプの形をしていたが、燃えているのは油でなく砂らしかった。もしかしたらシャンデリアの上で燃えているのも砂なのかも知れない。 階段は廊下を半ばほど進んだ場所にあった。廊下と同じ絨毯の敷かれている階段は、少々急だが、アンナ・ニーナ・カーナが恐いと思うほどではなかった。まあ別の意味で恐さを感じたのだが。 階段を昇ると、道が左右に分かれていたが、ルイスに左と教えられていたので、迷うことはなかった。 か弱い女性であるアンナ・ニーナ・カーナ自身にも簡単に壊せそうな木の扉に掛かっている錠を、ルイスから借りた鍵で開けると、中には一人でもかなり狭く、安そうな木の机と椅子、それに一人用の狭いベッドしかおかれていない飾り気のない部屋があった。 アンナ・ニーナ・カーナが椅子にもベッドにも座らずに、立って待っていると、ルイスが現われて、ベッドに座るよう勧めて来た。 「どうだい。良い部屋だろ」 アンナ・ニーナ・カーナが腰を降ろす(ベッドは意外に柔らかかった)と、ルイスが言った。 「どこが?」 「この狭さと安っぽさだよ」 ルイスは笑いながら言う。 「…………」 アンナ・ニーナ・カーナは冷たい視線で返事をした。 「そうだ、そういえばご飯まだだったね。作って来るよ」 立ち上がったルイスは、再び部屋を出た。その時、ルイスの腰からあの砂食い狩りが持っていた槍が消えていることに初めて気付いた。馬小屋において来たのだろうか。それとも管理人さんとかいう人に預けにいったのだろうか。 「槍、どうしたの?」 自然に疑問が口に出ていた。相手に慣れた証拠かも知れない。 「ああ、管理人さんに預けたんだよ。槍をお金に換えるのも、管理人さんの仕事なのさ」 「お金に換える?」 「そうだよ。砂食い狩りの持ってた槍を役所に持っていくと、お金に換えてもらえるのさ。砂食い狩りを倒した報酬としてね」 アンナ・ニーナ・カーナは、少し疑問に思った。 砂食い狩りを倒したことによって報酬がもらえるのだったら、砂食いを守ったことによっての報酬はもらえないのではないだろうか。そうなると、砂食い狩りに砂食いを殺されたとしても、その砂食い狩りを殺せば、報酬がもらえることになり、逆に砂食い狩りから砂食いを守ったとしても、砂食い狩りを取り逃がしてしまったら、報酬はもらえないということになるはず。砂食い狩りから砂食いを守れたかどうかは、砂食い狩りと戦った本人以外には出来ない(誰かが監視するというわけにはいかないのだろう)のに対し、砂食い狩りを倒したかどうかは、砂食い狩りが持っていた槍を持っているかどうかで分かる(生かしたまま槍だけ奪うことも出来なくもないだろうけど、何か考えてあるのだろう)ので、合理的なシステムではあると思うが、やっぱり何か何か違うような気がする。まあ世の中なんて大なり小なりおかしなものだが。 だがアンナ・ニーナ・カーナが口に出したのは、それとは違う疑問であった。 「もしかして、ここにいる人って全部ルイスの同業者?」 「そうだよ。ここは砂食い保護専門の下宿だよ。その中でも一番安いところだけどね。じゃあ、そろそろいくね」 こうしてまた一人になったアンナ・ニーナ・カーナは、適当なことを考えて暇潰しをすることにした。 しばらくして小さいながらも窓があることに気付き、そこから外を眺めた。夜景はそこそこ綺麗だったが、ガラス越しだったせいか、感動的というほどでもなかった。 ▽夕食 何十分か経つと、ルイスは大きな金属の盆を持って戻って来た。その盆には、正体不明な様々な色の野菜とこれまた何の動物のものか分からない肉を煮込んでぐちゃぐちゃにして金属の皿に盛ったものと、大きなパン状のもの、それに水らしき透明な飲みものの入ったガラスコップと金属性のフォークのようなものが、すべて二組ずつ乗っていた。これが今夜の二人の食事なのだろう。 「アンナは、そっちの机を使って。僕はベッドで食べるから」 そう言って盆の中身の半分を机の上に並べたルイスは、ベッドからアンナ・ニーナ・カーナを追い払い、フォークらしきもので、野菜と肉のごった煮を真剣な表情で食べ始めた。 アンナ・ニーナ・カーナは最初にパン状のものを口に含んだ。ごった煮はすぐに食べる勇気が湧かなかったのだ。食べたら死ぬのではないかと思ったくらいだ。 夕食が終わると、アンナ・ニーナ・カーナはずっと眠たかったのを思い出した。不思議なほど、急に睡魔が襲って来る。 アンナ・ニーナ・カーナは、異性であるルイスが同室にいることさえ忘れ、椅子に座ったまま寝てしまった。 ▽夢 アンナ・ニーナ・カーナは夢を見た。 その夢の中でアンナ・ニーナ・カーナは空に浮かんでいた。 遥か下にある大地は、すり鉢のような形をしている。ルイスがいた大陸なのかも知れない。 遥か上には梯子があった。金色に光る長い木の梯子。 アンナ・ニーナ・カーナは上昇していた。背中に翼がある気配もないのに、どんどん空を昇っていく。 梯子に手が届いた。ぎゅっと強く掴む。感触は普通の木の梯子と変わらない。 アンナ・ニーナ・カーナは梯子を昇り始めた。少しずつ、ゆっくりと。 上から何かが降って来た。頭に当たる。これは砂だ。砂が降って来る。大空から大地へと。 砂が降って来ない僅かな隙を狙って上を見上げれば、誰かがいた。アンナ・ニーナ・カーナには、その姿が不思議なくらいはっきりと見えた。 中年の女性だ。間違いなく知っている人である。だが具体的に誰なのかは思い出せない。 とにかくその人が砂を撒いている。どうやって撒いているのかまでは分からないが。 アンナ・ニーナ・カーナは、さらに梯子を昇った。梯子の上と下にいる二人の距離はどんどん縮まっていく。 だがアンナ・ニーナ・カーナが砂を撒いている人の場所に辿り着いたと思った時、そこには誰もいなくなっていた。 すぐ上には木で出来た天井があり、その上にいくための上げ蓋があった。アンナ・ニーナ・カーナはその蓋に手を当て、押した。蓋は簡単に開いた。 梯子を最上段まで昇り切り、上げ蓋のさらに上にある世界へと侵入する。そこはよく知っている場所だった。 夏の家の一階だ。じゃあさっき砂を撒いていたのは叔母さん? ▽目覚め 夢が終わり、現実に帰って来た。まだ目を閉じたままのアンナ・ニーナ・カーナは、自分が柔らかいベッドで眠っていることに気付いた。 ルイスが椅子に座ったまま眠った自分をベッドに移してくれたのだろうか。いや、あの世界は夢の世界だから、自分がいるのは夏の家の方のベッドかも知れない。いやいや、夏の家にいったことも実は夢で、ここは自宅のベッドなのかも知れない。 何にせよ、目を開けばすべてが分かる。だが、まだそれをしたくはなかった。 答えを知ってしまうのはもったいない。ここがどこなのか分からない状態でもうしばらく過ごしたい。どうせ後少しで、誰かが起こしに来るだろうから。 ――FADE OUT―― |
16385 | いろいろ想像してしまいました。 | エモーション E-mail | 2004/5/14 22:38:33 |
記事番号16380へのコメント こんばんは。 オリジナルのファンタジーですね♪ アンナ・ニーナ・カーナとルイス・ルイス・ルイス……メインキャラ二人とも、 名前が韻を踏んでますね。個人的にこういうのは面白くて好きです。 現在の所、夢なのか現実なのか、不思議な感覚で進んでいるこのお話。 いわゆる「ナルニア物語」などを代表とする「異世界入り込み型」系統なのか、 「不思議の国のアリス」系統のものになるのか、どちらになるのかと思っています。 まあ、アンナが比較的冷静に振る舞っているのは、とりあえず「夢だ」と 思っているからでしょうけれど。 ……「異世界入り込み型」で「現実」だったら、さすがに焦るでしょうね(^_^;) 某「十二○記」アニメ版オリキャラみたいに、「私はこの世界を救うために呼ばれた、 選ばれた戦士!(デンパ妄想型)」とか、「だって、ここはゲームの世界だろ?(徹底拒否型)」には ならないと思いますが……。 何にせよ、目の前で起きている状況を冷静に観察しつつ、「ルイスと美少年の悲恋」という 妄想までしてしまうアンナが楽しかったです。 ルイスもさすがに、自分の後にいる娘が、自分を主人公にした「ソフトなボーイズラブ」妄想を しているとは思いませんよね(笑) そして砂喰いと砂喰い狩り……。この世界の構成で、もっとも重要な存在のようですね。 倒した証拠を示すのは当然のことですが、槍を証拠にするのは、砂喰い同様に、 砂喰い狩りも死ぬと身体が消えてしまうのかも、と勝手に想像しました。 生きているのから奪っても、勝手に持ち主の所に戻ってしまうとか、実は槍が本体(笑)で、 アンナ命名「黒ハゲ」は槍が物質化させているだけの存在で、本体が死ぬと消える、とか。 同様に、アンナの叔母さんにもいろいろと勝手な想像を働かせています。 ルイスの言っていた「以前来た少女」は叔母さんで、ここで本が嫌いになるような経験をし、 また、異世界と繋がっている屋根裏の番人兼砂喰いの世話係をしているとか、 (砂を撒くのは砂喰いに餌を与えるため)。 その他にもいろいろと……(^_^;) さて、いつの間にやらベットで眠っていたアンナ。 目が覚めたら、どちらの世界が待っているのでしょうか。 それでは、続きを楽しみにしつつ、今日はこの辺で失礼します。 |
16386 | Re:ごめんなさい、いったんはこれでお終いなんです | ハイドラント | 2004/5/15 18:52:35 |
記事番号16385へのコメント >こんばんは。 こんばんは。 > >オリジナルのファンタジーですね♪ ファンタジーの関連本や、いくつかの小説に触発されて書いてみました。ちなみに、そのいくつかの小説には山口雅也氏の「日本殺人事件」のようなミステリーも含まれてたり。 >アンナ・ニーナ・カーナとルイス・ルイス・ルイス……メインキャラ二人とも、 >名前が韻を踏んでますね。個人的にこういうのは面白くて好きです。 こういう変な名前なら覚え易そうなので、こうしました。 ルイス・ルイス・ルイスには他にも意味があったりするのですが。 > >現在の所、夢なのか現実なのか、不思議な感覚で進んでいるこのお話。 >いわゆる「ナルニア物語」などを代表とする「異世界入り込み型」系統なのか、 >「不思議の国のアリス」系統のものになるのか、どちらになるのかと思っています。 そうですね。どちらにも属さないようにすることは出来そうにないですし。 >まあ、アンナが比較的冷静に振る舞っているのは、とりあえず「夢だ」と >思っているからでしょうけれど。 >……「異世界入り込み型」で「現実」だったら、さすがに焦るでしょうね(^_^;) >某「十二○記」アニメ版オリキャラみたいに、「私はこの世界を救うために呼ばれた、 >選ばれた戦士!(デンパ妄想型)」とか、「だって、ここはゲームの世界だろ?(徹底拒否型)」には >ならないと思いますが……。 そうなったら、急に心細くなるか、逆に嬉しがるか、のどちらかだと思います。どちらなのかはちょっと分かんないですが。 > >何にせよ、目の前で起きている状況を冷静に観察しつつ、「ルイスと美少年の悲恋」という >妄想までしてしまうアンナが楽しかったです。 >ルイスもさすがに、自分の後にいる娘が、自分を主人公にした「ソフトなボーイズラブ」妄想を >しているとは思いませんよね(笑) もうここまで来ると、ルイスの世界よりもアンナの頭の中身の方がよっぽど異世界といった感じかも(笑)。まあ、発想自体は奇妙ではあっても、平凡と言えば、平凡ですが。 >そして砂喰いと砂喰い狩り……。この世界の構成で、もっとも重要な存在のようですね。 >倒した証拠を示すのは当然のことですが、槍を証拠にするのは、砂喰い同様に、 >砂喰い狩りも死ぬと身体が消えてしまうのかも、と勝手に想像しました。 >生きているのから奪っても、勝手に持ち主の所に戻ってしまうとか、実は槍が本体(笑)で、 >アンナ命名「黒ハゲ」は槍が物質化させているだけの存在で、本体が死ぬと消える、とか。 >同様に、アンナの叔母さんにもいろいろと勝手な想像を働かせています。 >ルイスの言っていた「以前来た少女」は叔母さんで、ここで本が嫌いになるような経験をし、 >また、異世界と繋がっている屋根裏の番人兼砂喰いの世話係をしているとか、 >(砂を撒くのは砂喰いに餌を与えるため)。 >その他にもいろいろと……(^_^;) ううむ、「以前来た少女=叔母さん」は浮かばなかったなあ。その手もあるか(かなり待て)。 > >さて、いつの間にやらベットで眠っていたアンナ。 >目が覚めたら、どちらの世界が待っているのでしょうか。 > >それでは、続きを楽しみにしつつ、今日はこの辺で失礼します。 すみません、あとがき入れるの遅れてしまったみたいで伝えられてなかったみたいですが、尻切れですが本作はこれでいったん終わりです。 もちろん、話はやっと始まったばかりで、説明も充分にされていない状態なので、まだまだ続きはしますけれど、他の連載があることや構想が不完全なところを見ると、今は無理っぽいです。 本当にすみません。 いつか、もっと良いものにして発表するかと思いますので、どうかご寛恕ください。 ご感想どうもありがとうございました。 |
16387 | あとがき | ハイドラント | 2004/5/15 20:03:19 |
記事番号16377へのコメント こんばんはハイドラントです。 どうも、お読みいただきどうもありがとうございます。 そしてお疲れ様でした。 本作はこれで終了いたしました。 中途半端で説明不足ですが、いったんは終わりです。 でもいずれ長編化して発表するかと思われますので、どうかご寛恕くださいませ。 次回作は、ヴァルフィリのラヴストーリーの予定。 ヴァルとフィリアの都市生活の中でのいき違いを、二人それぞれの視点で書いたものになるはずです。 二つの視点が使われることを利用して、ヴァル編で謎となっていることがフィリア編で明かされ、フィリア編で謎となっていることがヴァル編で明かされるという風に、双方が読み方によっては問題編にも解決編(こう書いたからには、やはり推理小説みたいに論理的に解けるものにしたい!)にもなるといった風な仕掛け(多分、そんなに珍しいものではないはずですが)をしたいので、かなり時間が掛かりそうですが、まあやってみます。 またTRYの方もそろそろ再開されるはずです。 それでは、これで失礼致します。 |