◆−『CIV』番外編!――再び!パレードが呼んでいる! 2――−蛇乃衣 (2004/6/26 19:25:04) No.16516 ┗『CIV』番外編!――うぅ、ずっと呼んでいましたのに!――−蛇乃衣 (2004/6/26 19:32:35) No.16517
16516 | 『CIV』番外編!――再び!パレードが呼んでいる! 2―― | 蛇乃衣 | 2004/6/26 19:25:04 |
前のツリー、落としてしまいました・・・ハワワ・・・;; ******* パンッ!パパパパンッ! パレードの開始を告げる花火が、夜空に勢い良く打ち上げられる。 今日一日の最後の魔法。スモッグが現実のたがを緩めれば、人々は皆、闇と光のイリュージョンに引き込まれる。 踊るフェアリーは愛らしく、奇怪に唸るモンスターはおどろおどろしく、鎌首をもたげ、咆哮を上げるドラゴンは厳しい。 が、無論キャストは人間であって人間であるからには杖の一振りで物事を解決など出来ずきらびやかさの裏に絶え間ない努力や悩みがありそれを表に出さないのがプロというものだがしかしタマゴどころか舞台も映画も興味すらない少年にそれを求めるのは酷というものであるマル 「ゼルガディス。もっと手を振らなくては、お客が喜びませんよ?」 「…………」 「ほら、ちゃんと顔を上げて前を見ないと」 「……………」 「おやおや。顔がこわばってしまって……そんなに恥ずかしがらなくてもよいのに…似合っているのですから」 「……………呆れてるんだよ(ボソッ)」 「なにか言いました?」 「いやべつに」 ゼルガディスはそっぽを向いて、会話――にもなっていなかったが――それを打ち切った。 背中にレゾの不満そうな視線を感じつつ、小さく息をはいた。 ため息、ではない。 これが暑いのだ。意外と。 夜風は涼しく陽も落ちているため、昼に比べて気温は低いのだが、そのかわり、昼はお目見得しなかった色とりどりのライトが今はある。 スポットライトから、台座の飾り、洋服にまで付いているのだ。 その熱量推して知るべし。 動き回っているわけでもないのに、ゼルガディスはじっとりと汗ばんできてしまった。 チラリと横目でレゾを見る。 ゼルガディスのコスチュームは、昼間のものをより華やかにしたデザインで、新たに魚の胸ビレのような大きな羽を背中にしょっている。 この羽、光ファイバー仕込みと手の込んだもので、見事なグラデーションを生み出しながらキラキラ輝いているのだ。 ……見た目ほど軽くはないが。 レゾはというと、こちらは背格好とゼルガディスの近くにいられる、ということで王様役である。 服は、やはり青が基調とされていて、軍服とローブを足して二で割ったようなデザインだ。 ボタンや鎖といった、金銀に輝く飾りがたくさん付いている。 足元まで届く重たそうなマントをつけているのに、彼はまったく暑くなさそうだ。 鍛え方が違うのかな…などと思っていると、 「見惚れるほど似合っています?」 ゼルガディスの視線に気付き、軽く腕を上げて尋ねてきた。 「……そーだな。独裁者ってかんじで良く似合っているんじゃないか?」 上目使いで吐かれた毒も、 「そうですか?はははは。嬉しいですね」 ――――故意なのか天然なのか…。 効いていないという点では同じことに気付くのに、さしたる時間はかからなかった。 ゼルガディスは軽くため息を付き、再び顔を反らした。 と、 「ゼルガディス、笑わないと駄目ですってば」 いきなり後ろから抱き込まれた。 そして、 「ぉわひゃっ!?あっあははははは!」 脇腹辺りをこれでもか!というぐらいこそばされる。 「あハあふっ…や、やめ…あはは!れ、レゾ!あははははは!」 「やーめーまーせーんー」 「はなっ…フッ、アハハ…放、せ!くっ、ふふっ…あはははははは!」 「はーなーしーまーせーん」 遠目からは、王様と抱き抱えられた巫が、楽しそうに笑っているようにしか見えない。 「やめって言ってフッ、あはは!アハハはははひゃひゅ!ごほごほっ……!」 咳き込み、酸欠で顔が赤くなっているのも、観客からはいまいち良く分からなかった。 幸いなこと、である。 こうして、パレードは一応おおむね無事に終った。 |
16517 | 『CIV』番外編!――うぅ、ずっと呼んでいましたのに!―― | 蛇乃衣 | 2004/6/26 19:32:35 |
記事番号16516へのコメント 丸い黄金が東南の夜空をゆっくりと昇るころ、ゼルガディスとレゾは二人並んで家路についていた。 テーマパークで買ったものはあらかた輸送してしまい、今はレゾの手に白い箱があるだけである。 中身はベークドチーズケーキ。夜食に、と思ったのだ。 「今日は楽しかったですね」 「――俺は疲れた…」 「…楽しくありませんでした?」 「………」 「まったく?少しも?」 「…………全然、とまではいかない…」 ゼルガディスは下を向いていたが、隣を歩むの男が笑ったのが空気で分かった。 優しい夜風が頬を撫で、銀と漆黒の髪をふわりと持ち上げる。 大通りを抜けてから、彼らの他に人影はなく、喧騒も遠い。 「ゼルガディス」 「ん?」 「ありがとうございました」 「…うん」 それから言葉は途切れ、けれど歩みは変わらない。 沈黙の中聞こえる足音は、不思議と心地良かった。 家も間近になり、 「……ヴァル?」 骨董店の前、ポツンと立っていたその人物に気付いたのは、ゼルガディスが先だった。 あちらも気付いたらしく、小走りに近付いてくる。 「よぉ、ヴァル。どうしたんだ?」 「こんばんは、ヴァルさん。すみません。残念ながら、お土産は今持っていな――」 「ごめん」 開口一番謝られる。 ゼルガディスとレゾは顔を見合わせた。 「……なにかしでかしたのですか?」 「なにも頼んでなかっただろ?」 前日、たまたま遊びに来たので、出かけることは告げていたが、別に彼に留守番を頼んだというわけではない。 ゼルガディスが一緒に来るかと誘いもしたのだが、レゾの柳眉がほんの一瞬寄ったのを見逃さなかったヴァルは、丁寧に断ったのだ。 実に賢明な判断だったと言えよう。 「前を通りかかったら捕まってさ…詰め寄られて…行き先、しゃべった」 誰に?と、二人は聞かなかった。 答えが、それよりも先に暗がりの中から現れたからだ。 「レゾ様!」 クリーム色のスーツに身をつつんだ、少女の域をわずかに出た黒髪の女性。 「エリス……?」 その愛称を呟きにしたのは、名を呼ばれたレゾだった。 「レゾ様…うぅ…あ、あんまりです!いくらかけても電話は繋がらないし…!」 「え…?」 目尻に涙まで浮かべて非難するも、非難されている当人にはその理由が思い付かないらしい。 「私、ずっと待っていましたのにっ。まさかレゾ様の身になにかあったのではと、心配もしていましたのにっ…!ゼルガディスとテーマパークに行っていたなんてっ……!」 「なんか、昼前ぐらいから待ちぼうけだったみたいだぜ?」 と、後ろから小声でヴァル。 「…なにしたんだよ、あんた」 「いや…なにもないと……」 エリスに、というよりも、ゼルガディスの白い眼に焦り、レゾは記憶を巻き戻し始めるが、 (――思い当たりませんねぇ…) 「……あの、エリス、なぜあなたがここに?」 「なぜって…ホテルの新期従業員採用試験、面接まで残った希望者のリストを、次の日曜に持ってくるよう、レゾ様がおっしゃったではないですかぁ!」 「―――――あ………今日でしたか…」 「へぇ…自分で指示しといて忘れてたんだ…」 非難の意をひしひし込めて、ジト目でレゾを見やるゼルガディス。 「うっ……あなたと遊びに行く予定が立ったので…その…つい、すっかり忘れてしまって…」 「ふーん…」 (し、視線が…ゼルガディスの視線が痛い……はあ…なぜ、楽しいままに一日が終わってくれないのでしょう) 自分のせいだろ。 と、つっこみを入れる相手は、悲しいかないなかった。 声に出していれば、ゼルガディスが口に出し、ヴァルが心の中で呟いたに違いない。 “どうにかしろよ”という二対の視線での訴えに、レゾは口を開いた。 「あー……エリス」 ややあってからの呼び掛けに、しゃがみこみ、ぶつぶつ地面に向かって(本人でないのがなんともはや…)呟いていたエリスは顔を上げる。 「長い間待たせてしまって、すみませんでした」 言いながら、空いている手でエリスの手を取り、立たせるレゾ。 「まさか、これほど待っていていただけていたとは…… お詫びにはならないかもしれませんが、お茶の一杯でも煎れさせて下さい。ちょうどチーズケーキもありますし。 あまり甘くありませんから、あなたの口にも合ういいのですが…」 「そんな!レゾ様が勧めて下さるものがおいしくないはずありません!」 わずかに眉を寄せ、不安げな表情を見せるレゾに、エリスはぶんぶか首を振り、間髪入れずに言い切った。 「そうですか…?」 「はい!もちろん!」 「それはよかった」 柔らかく微笑むレゾに、エリスもつられるように満面の笑み浮かべる。 怒りは熔けてしまったらしい。 「……なあ、ゼルガディス…なんかさ、騙されてるよなぁ…」 「本人がそれでいいなら、いいんじゃないか…?」 「まあ、丸く収まったような気もしなくもないような…するような……」 「大人って、いやなものだな……」 「いや……俺、これはかなり特殊な実例だと思うぜ…?」 「二人とも、なにをボソボソしゃべっているのです? ほら、お茶にしましょう?就寝前の一息に。 ヴァルさんも、今日は泊まっていきなさい」 レゾに手招きされ、二人は一度ため息をついてから家へと入っていった。 ブランデーを垂らした紅茶と、満月のようなベークドチーズケーキは、絶品であったことだけ最後に述べておこう。 終わり。 ****** あ〜…やっと終りました;祭様、遅くなって本当にすみません。 オチも微妙についていないなぁ…どうしましょう;; 蛇乃、これでも一応受験生でして、なかなかパソに触れないんですよ; はぅ…禁断症状が…… お付き合いいただき、ありがとうございました〜。 |