◆−『CIV』番外編!――こんにちは赤ちゃんお嬢ちゃん――−蛇乃衣 (2004/8/8 18:51:02) No.16628 ┣注!仕事中に読むのはやめましょう!!−リィ (2004/8/9 10:00:31) No.16629 ┃┗Re:気の利いたタイトルが思いつかない・・・(泣)−蛇乃衣 (2004/8/12 21:46:23) No.16635 ┣Re:『CIV』番外編!――こんにちは赤ちゃんお嬢ちゃん――−しーぷ (2004/8/12 11:21:29) No.16634 ┃┗Re:お待たせしてすみませんっ−蛇乃衣 (2004/8/12 21:52:47) No.16636 ┗『CIV』番外編!――こんにちは赤ちゃんお嬢ちゃん その2――−蛇乃衣 (2004/8/12 22:05:05) No.16637
16628 | 『CIV』番外編!――こんにちは赤ちゃんお嬢ちゃん―― | 蛇乃衣 | 2004/8/8 18:51:02 |
シープ様リクエスト作品です。どうぞお受け取り下さいませv ****** 「頼む!手を貸してくれ!」 挨拶をすっとばし、前置きもなく、切羽詰まった顔でそう言った緑髪の青年に、リナは玄関の戸を開けた姿勢のまましばし固まった。 別に彼がここに来ることは珍しいことではなく、頼み事をするのも、まあ、珍しいが固まるほどのことではない。 だが、重要な着目点は、彼が腕に抱えているものだ。 ―――すなわち、静かな寝息を立てているあかちゃん。たぶん生後一年弱。 「…………ヴァル、あんた」 ややあって、リナはふらふらと二、三歩下がって声を発した。 「あんた、とうとう乳児誘拐にまで手を出したわね!」 「違うわぁぁぁぁぁぁあ!!つーか、“とうとう”とか“まで”とかはなんだ!おい!」 ビシィッ!と指を付きつけられ叫ばれた言葉を、ヴァルは力の限り否定した。 「―――なにかあったのですか?」 大声でのやりとりに、屋主が奥から出てきた。 ちなみに、ガウリイとゼルガディスは夕食の買い出し中である。 「玄関先で……」 騒がないでくださいよ。 と、後に続くはずだったセリフは、空気を震わせることなく飲み込まれた。 レゾは未だすやすやと眠る赤ん坊とヴァルの顔を見比べ、 「それで、ベビーシッターと弁護士と、どちらを探しているのです?」 『…は?』 リナとヴァルの声が重なる。 「せんせー、しつもーん」 「はい、リナさん」 「ベビーシッターは分かるんだけど、なんで弁護士?」 「なぜって、大方、『あなたの子です。認知して育てるか、慰謝料払え』とでも言われたのでしょう?ねえ、ヴァルさん」 「ちっがぁぁぁぁぁぁぁあう!!」 「心配しなくとも、いい人材を見付けてあげますよ」 「男ならちゃぁぁあんと責任取んなさいよ」 「だから違うってんだ!こいつは―――」 クスクスクス 小さな、可愛らしい笑い声が下の方から聞こえてきた。 「クスクス……ヴァル兄ィ、いじめられっ子〜」 扉の向こうからひょっこりと顔をのぞかせたのは、五、六歳の女の子だった。 肩を過ぎる赤髪に、暗緑色の大きな瞳。 小さなフリルの付いた白いブラウスの似合う、抱き締めたくなるほど可愛い子だ。 「――おや、あなたは……」 なにやら言いかけたレゾを遮って、リナはビシィッ!と再びヴァルを指差すと、 「ヴァル!あんたロリコンだったの!?」 「なんでそうなるぅぅぅぅぅぅぅうっ!!」 ぅ……ひくっ…ふ、わぁぁぁあん!ひぎゃぁぁぁあ! ヴァルの絶叫と言っても過言ではないその音量に、とうとう赤ん坊が泣き出してしまった。 こちらもまた、耳を貫く騒音である。 「だー!待てまてマテ!ほら泣くな!泣くなって!」 「あ〜。ヴァル兄ィ、泣かせたぁ」 「はぁ〜…まさかあんたが小さい女の子連れて歩くのが好きだったとはね〜…」 「だから違う!……レゾさん!あんた、知ってんだからフォローしろよな!」 「フォロー、ですか?」 レゾは顎に手をやり、しばし思案してからリナの方を見て、 「……リナさん。人間一つや二つ、他人には理解しずらい趣味があったとしても、その人の全人格を否定してはいけませんよ?」 「う゛うっ………フォローの方向がズレてんだよ…」 しゃがみこみ、どんよりと影を背負ってしまった彼の背を見て、リナもレゾも、さすがに遊びすぎたかと少々反省する。 ぅあぁぁぁぁあん!ひきゃあぁぁぁぁぁあん!! 赤子も未だ泣き止まず。 泣きたいのは、それを抱えているヴァルも同じだろう。 「ほらほら、ヴァール!ただでさえ今日は暑いんだから、そんなじとーっとしてんじゃないわよ!」 おちょくりだした本人に言われても、哀愁がますだけである。 「とりあえず、中へどうぞ」 それでも、ヴァルがその言葉に従ったのは、腕の中の小さな温もりが発する音波に、脳が麻痺してきそうだったからだ。 (育児って、大変なんだな…ノイローゼになるやつがいても、おかしくないわな……) がっくりと肩を落とし、ヴァルは子育てをこなす世のかーさまとーさま方に、深ぁい尊敬の念を覚えた。 ****** なぜに私の書くヴァルはいじめられっ子か・・・ けして嫌いではないのに・・・むしろ好きなのに・・・・・ さて、オリキャラである女の子と赤ちゃんですが、二人はいったい誰の子供でしょう? |
16629 | 注!仕事中に読むのはやめましょう!! | リィ | 2004/8/9 10:00:31 |
記事番号16628へのコメント りぃです! 感想行きます!! >「あんた、とうとう乳児誘拐にまで手を出したわね!」 >「違うわぁぁぁぁぁぁあ!!つーか、“とうとう”とか“まで”とかはなんだ!おい!」 ・・・・・・・・・(只今腹筋がよじれてもだえ中) ヴァルさんてどこまでいってもいじられ役ですねぇっ(爆笑) >肩を過ぎる赤髪に、暗緑色の大きな瞳。 >小さなフリルの付いた白いブラウスの似合う、抱き締めたくなるほど可愛い子だ。 ・・・おや? >しゃがみこみ、どんよりと影を背負ってしまった彼の背を見て、リナもレゾも、さすがに遊びすぎたかと少々反省する。 >「ほらほら、ヴァール!ただでさえ今日は暑いんだから、そんなじとーっとしてんじゃないわよ!」 ・・・むごいです・・・ リナ&レゾの前に容赦という言葉はないですね(笑) >おちょくりだした本人に言われても、哀愁がますだけである。 >がっくりと肩を落とし、ヴァルは子育てをこなす世のかーさまとーさま方に、深ぁい尊敬の念を覚えた。 がーんばれーまーけるなーちかーらーのかぎりーいーきてやれー♪ 私はあなたを(笑いながら)応援しているわ! >なぜに私の書くヴァルはいじめられっ子か・・・ >けして嫌いではないのに・・・むしろ好きなのに・・・・・ そういう宿命なのですよ・・・(しみじみ) 好きだからこその愛のムチ(笑)ということで。 ほら、いじめてあげないといつまたせーらーガーヴに心奪われる変態さんにならんともかぎらんし。ここはひとつ心を鬼にして精神を鍛えて上げねば!(逆効果?) >さて、オリキャラである女の子と赤ちゃんですが、二人はいったい誰の子供でしょう? > ガーヴの兄貴じゃないですか? 赤髪だし。・・・っ母親は!! 笑かせていただきました! 腹の底から! 仕事中に一度読んだのですが笑うに笑えなくて辛かった・・・!! 家に帰ってから読み直して心置きなく笑うことができました。いや〜楽しかったですv 今回はリナ・レゾコンビでしたがここにゼルくんもおちょくり役で入ってたらヴァルさん再起不能でしょうね。お茶目なゼルのことだから天然ボケのふりしてとどめさしそう(笑) 続き楽しみにしてますねvvv |
16635 | Re:気の利いたタイトルが思いつかない・・・(泣) | 蛇乃衣 | 2004/8/12 21:46:23 |
記事番号16629へのコメント りぃ様、こんばんは〜(今、夜なので)。感想ありがとうございます! >>「あんた、とうとう乳児誘拐にまで手を出したわね!」 >>「違うわぁぁぁぁぁぁあ!!つーか、“とうとう”とか“まで”とかはなんだ!おい!」 >・・・・・・・・・(只今腹筋がよじれてもだえ中) >ヴァルさんてどこまでいってもいじられ役ですねぇっ(爆笑) えっと・・・愛です。愛。ほら、小動物とかってついついかまいたくなるじゃないですか。彼は良い反応をしてくれますし。・・・ね?(なにが?) >>しゃがみこみ、どんよりと影を背負ってしまった彼の背を見て、リナもレゾも、さすがに遊びすぎたかと少々反省する。 >>「ほらほら、ヴァール!ただでさえ今日は暑いんだから、そんなじとーっとしてんじゃないわよ!」 >・・・むごいです・・・ >リナ&レゾの前に容赦という言葉はないですね(笑) はっぱをかけるつもりで、傷口に塩を擦り込むタイプです。(嫌だな〜) >>おちょくりだした本人に言われても、哀愁がますだけである。 >>がっくりと肩を落とし、ヴァルは子育てをこなす世のかーさまとーさま方に、深ぁい尊敬の念を覚えた。 >がーんばれーまーけるなーちかーらーのかぎりーいーきてやれー♪ >私はあなたを(笑いながら)応援しているわ! ぜひ、「笑いながら」応援して下さい!(笑) >>なぜに私の書くヴァルはいじめられっ子か・・・ >>けして嫌いではないのに・・・むしろ好きなのに・・・・・ >そういう宿命なのですよ・・・(しみじみ) 好きだからこその愛のムチ(笑)ということで。 ほら、いじめてあげないといつまたせーらーガーヴに心奪われる変態さんにならんともかぎらんし。ここはひとつ心を鬼にして精神を鍛えて上げねば!(逆効果?) せーらーガーヴ・・・あれは、アニメスタッフ様思い切ったなぁと今でも思いますね。 あれに心奪われるのは・・・いや、なんと言いますか・・・出来る限り避けた方が・・・ 愛のムチで、ヴァルの今後の人生オモシロイ方向にいかきゃなきゃいいんですけど・・・もう手遅れ? >>さて、オリキャラである女の子と赤ちゃんですが、二人はいったい誰の子供でしょう? >> >ガーヴの兄貴じゃないですか? 赤髪だし。・・・っ母親は!! うふふふふv正解は「その2」で! > >笑かせていただきました! 腹の底から! 仕事中に一度読んだのですが笑うに笑えなくて辛かった・・・!! 家に帰ってから読み直して心置きなく笑うことができました。いや〜楽しかったですv それだけ笑って頂けると、作者冥利に尽きます! 本編がシリアス全開なので、その分はじけました。 >続き楽しみにしてますねvvv ありがとうございま〜す! |
16634 | Re:『CIV』番外編!――こんにちは赤ちゃんお嬢ちゃん―― | しーぷ | 2004/8/12 11:21:29 |
記事番号16628へのコメント こんにちは!お久しぶりです、しーぷです。 >シープ様リクエスト作品です。どうぞお受け取り下さいませv わぁ、ありがとうございます!ありがたく頂戴いたします。 >「あんた、とうとう乳児誘拐にまで手を出したわね!」 >「違うわぁぁぁぁぁぁあ!!つーか、“とうとう”とか“まで”とかはなんだ!おい!」 あはははは! あ、でも過去にスリしていたんでしたっけ… …ヴァルさん…強く生きてくださいね(ホロリ)。 >「クスクス……ヴァル兄ィ、いじめられっ子〜」 > >扉の向こうからひょっこりと顔をのぞかせたのは、五、六歳の女の子だった。 >肩を過ぎる赤髪に、暗緑色の大きな瞳。 >小さなフリルの付いた白いブラウスの似合う、抱き締めたくなるほど可愛い子だ。 ???……だれでしょう? 赤ちゃんとは姉妹(もしくは姉弟)ですよね。 > > >なぜに私の書くヴァルはいじめられっ子か・・・ >けして嫌いではないのに・・・むしろ好きなのに・・・・・ からかわれている彼も可愛いなぁと思います。 むしろ、遊ばれている彼に愛! もちろん遊んでいるリナレゾコンビも好きですよ〜v >さて、オリキャラである女の子と赤ちゃんですが、二人はいったい誰の子供でしょう? う〜ん…やっぱりガーヴさんの子供とか…… とっても面白かったです。 もう大笑いしました! 次も楽しみにしていますね! |
16636 | Re:お待たせしてすみませんっ | 蛇乃衣 | 2004/8/12 21:52:47 |
記事番号16634へのコメント >こんにちは!お久しぶりです、しーぷです。 お久しぶりです!というか、すみません。遅くなってしまって・・・ > >>「あんた、とうとう乳児誘拐にまで手を出したわね!」 >>「違うわぁぁぁぁぁぁあ!!つーか、“とうとう”とか“まで”とかはなんだ!おい!」 >あはははは! >あ、でも過去にスリしていたんでしたっけ… >…ヴァルさん…強く生きてくださいね(ホロリ)。 頑張っています。彼は頑張ってはいるのです。ただ、周りが手強すぎて・・・ >> >>扉の向こうからひょっこりと顔をのぞかせたのは、五、六歳の女の子だった。 >>肩を過ぎる赤髪に、暗緑色の大きな瞳。 >>小さなフリルの付いた白いブラウスの似合う、抱き締めたくなるほど可愛い子だ。 >???……だれでしょう? >赤ちゃんとは姉妹(もしくは姉弟)ですよね。 はい、姉弟ですよ〜。 >> >> >>なぜに私の書くヴァルはいじめられっ子か・・・ >>けして嫌いではないのに・・・むしろ好きなのに・・・・・ >からかわれている彼も可愛いなぁと思います。 >むしろ、遊ばれている彼に愛! >もちろん遊んでいるリナレゾコンビも好きですよ〜v 気に入って頂ければ幸いです。 彼の場合、痛い目に遭うほど出番は増えるんですけど・・・いえ、出番が増える分、痛い目に遭っていると言った方が正しいですか・・・ >>さて、オリキャラである女の子と赤ちゃんですが、二人はいったい誰の子供でしょう? >う〜ん…やっぱりガーヴさんの子供とか…… 「その2」で明らかになります! > >とっても面白かったです。 >もう大笑いしました! >次も楽しみにしていますね! ありがとうございました〜!続き、今から投稿します! |
16637 | 『CIV』番外編!――こんにちは赤ちゃんお嬢ちゃん その2―― | 蛇乃衣 | 2004/8/12 22:05:05 |
記事番号16628へのコメント 「で、誰なの?この子達」 とりあえず赤ん坊を泣き止ませた後。 リナはガラスの器からブラマンジェ(レゾ作)を一さじ掬い、向かいのソファーに座る来訪者のことを尋ねた。 「ああ、紹介しますね」 リナと少女にレモネードを、ヴァルにアイスコーヒーを出し、レゾはそれぞれを紹介する。 「リナさん、こちらヴィリジャン=サイアンさん。マゼンダさんと、カンゼェルさんの娘さんです」 「あの二人の!?」 「ヴィリジャンさん、こちらがリナ=インバースさんです」 「リナお姉ぇさん、はじめまして!ヴィリジャンです!よろしくおねがいしまーす! リナお姉ぇさんと、ドクターにも紹介するねっ。こっちは弟のアガットだよ!」 小さな弟を抱きかかえ、ニコッと屈託のない笑顔を見せる。 自然、リナの顔も綻んだ。 「どーも。よろしくね、ヴィリジャン、アガット。 そっかー、あの二人の子供か…てか、子供いたんだ。結婚してんのは知ってたけど……いわれてみれば、似てるわ。うん」 ヴィリジャンの顔の造りと赤髪はマゼンダから、瞳はカンゼェルからの遺伝なのだろう。 対して、アガットは父と同じ黒髪、眠っている今は見えないが、母譲りのブラウンの瞳だった。 「ちゃんと挨拶出来て偉いわねぇ〜」 「うん!きちんとしたあいさつは、ステキなレディーへの一歩、相手をゆだんさせるキソよ、ってママが」 「………なかなか将来有望なお子様ね」 「まあ、あのお二人の娘さんですから…」 「まったくだぜ…」 はぁ、と盛大なため息をついたのはヴァル。 「それにしても、なんであんたがこの子達の面倒みてんの?マゼンダとカンヅェルは仕事?」 ヴァルは首を横に振り、肩をすくめた。 「結婚五周年記念旅行、だとさ…つーか、子供押し付けてよく行くぜ。バリだぜ?バリ」 羨ましい限りだ、とぼやきながら、ヴァルはソファに沈む。 「パパとママはラブラブなの。でも、あたしとアガットがいると、ゆっくりラブラブできないの。だから良い子でおるすばんしてるんだ〜」 どこまで知っているのか、無邪気にヴリジャンが言う。 「カンヅェルさん、結婚に行き着くまで……行き着いてからもですが……いろいろ苦労していましたからねぇ…」 当時を知っているのだろう、しみじみとうなずくレゾ。 「へぇー。カンヅェルの方が最初に惚れたんだ」 「一目惚れだったらしいですよ」 「…なあ。俺、カンヅェルは初め敵対していた組し――企業にいたって聞いたんだが?」 ヴァルが口をはさんだ。 「ええ。一度正面衝突したことがありましてね。その時に」 「芽生えたわけ?愛が?」 映画かなんかみたいだと、その口調は言外に含ませている。 「はい。“ピンヒールにタイトスカートでサブマシンガン連射する姿に、心臓を撃ち抜かれた”そうです」 「…………へぇ…そうなんだぁ…」 「ママ、かっこい〜vv」 「実弾に撃ち抜かれなくて良かったよな……」 「それにも撃ち抜かれましたよ?心臓少し上でしたけど」 「………よく生きてたな…」 「パパ、すご〜いvv」 「まあ、すぐ手術しましたから………あ――」 レゾが裏口の方へ視線を向ける。 エンジン音が止まるのを聞き留めたのだ。 「ゼルガディス達が帰ってきたようですね」 「ゼル兄ぃが?ホント!?」 ヴリジャンがストッとソファから下り、 「あ、ヴァル兄ぃアガットだっこしてて」 ヴァルに弟をなかば無理矢理押し付け、玄関へと駆けて行く。 『おかえりなさーい!』 『ヴリジャン、来てたのか』 『んー?誰だ?』 『こんにちはー!初めましてー!』 『ああ、ガウリイは会ったことが無かったな。カンヅェルとマゼンダの子供だよ』 三人は自己紹介をしながらリビングへとやってくる。 「――それでね、ゼル兄ぃとガウリイお兄ぃさんに、ビックニュースがあるの!」 『ニュース?』 ガウリイとゼルガディスの声が重なった。 「ジャジャーン!!」 バッと小さな手が示す方に、二人の視線が向けられる。 無論、そこにいるのはすやすや眠るアガット。そしてそれを抱えるヴァル。 …………………………… 一瞬おちる沈黙。 一番に口を開いたのはガウリイだった。 「なんだよ。水くさいじゃないか、ヴァル」 朗らかなそのセリフに、ヴァルは嫌な予感を感じた。 もっとも、傍観しているリナとレゾにはめくるめく笑いの予感である。 「子供がいたなら教えろよなっ。男の子か?」 「違うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」 「なんだ女の子か」 「いやだからそうじゃなくてだな!」 「…もしかしてどっちでもないのか?」 「………性別は、正真正銘男だよ…」 ぐったりと疲れたふうにヴァルは答えた。 エメラルドグリーンの頭がすすけて見えるのは、きっと気のせいだろう。 すでに先程、彼に玄関で第一衝撃波をくらわせた二人は、ソファの背にしがみついてふるふると小さく震えている。 必死に笑いを噛み殺しているのだ。 ヴリジャンは首を傾げるばかり。 「ガウリイ…お前さんなぁ…」 ゼルガディスが呆れを含ませたため息をつく。 「いくらヴァルが赤ん坊かかえているのが似合っていても、いきなり本人の子供に決めつけるなよ」 「ゼルガディス…」 前半になにやら引っ掛かる部分が無きにしも非ずなのだが、ここにきて初めてかけられた理解ある言葉に、ヴァルは胸がじんときた。 いくら預かりもの二人の子守りが大変だったとはいえ、ここに助けを求めたのは間違いだったかもしれないと思いつつあったが、一人は自分の味方がいた。 今の心境を表すならば、そう、まさに敵戦場で聞き親しんだ自国の歌を耳にした兵士(大袈裟)。 思わず涙腺が緩む。 「そう言い掛かりをつけられても、否定しきれずに悩んでいるんだろうから」 撃・沈 アッハッハッハッハッハッハッ!!×2 「……ど、どうした?ヴァル。DNA鑑定でもしにきたんじゃなかったのか?」 ソファの上にうずくまり、腕の中の赤ん坊になにやらブツブツ言い始めた(「お前は真っ直ぐ育てよ」「友情ってなんだろうな」など)友人に、ゼルガディスは困惑して声をかけた。 「…ゼ、ゼル……しばらく…ほっとき……なさい、よ……っ」 「そ、そうです……そのうち…復活…す…るでしょ…から……」 「…あんたらも大丈夫か?」 コクコクと首を縦に振るリナとレゾ。笑いすぎて声もでないらしい。 一方、 「あの子はねー、あたしの弟のアガットよ」 「そっかー…弟だったのかぁ」 「えへへ。かわいいでしょー」 少し離れたところで、ガウリイとヴリジャンはほのぼのとした会話をかわしているのだった。 子供はまわりの大人を見て成長してゆくという。 良くも悪くも“エキセントリック”な大人達に囲まれて育った子供は、いったいどんな人間になるのか。 まあ、それが分かるのは、まだまだ先のことである。 ちゃんちゃんv ****** 今回は二話完結です。短め。 ちゃんとしたオリキャラが出た話は初めてだったのですが、いかがでしたでしょうか? ちなみに、名前の由来は「色」です。ヴィリジャンは緑系、アガットは茶系の色です。 ふふふっ。あの二人はカンヅェルとマゼンダのお子様でした〜! なんとなく、私の中ではあの二人セットなんですよね。 『CIV』では有能ラブラブ夫婦です。 マゼンダがカンヅェルを掌で転がしているとも言えます(笑)イメージ的にはルパ○とふ○子おねー様でしょうか。 にしても、「リナ中心のギャグ」のリクエストをクリアしていないような……ご、ごめんなさいしーぷ様……! |