◆−無道学園物語 序章−どら・ゴン (2004/12/23 23:12:15) No.16928
 ┗無道学園物語 序章つぅ−どら・ゴン (2004/12/25 19:59:12) No.16929
  ┗Re:無道学園物語 序章つぅ−京極師棄 (2005/3/11 21:34:32) No.16982


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16928無道学園物語 序章どら・ゴン 2004/12/23 23:12:15


夜。私は一人で町を歩いていた。

ここ数年の治安悪化が原因で、都会のビルディングの群れは、昼の姿から一変し一種の魔界と化す。

こんな時間帯にこんな場所を歩いているのは、ほぼ全てが普通ではない人種だ。

かく言う私も、多分普通じゃないんだろうけど。


「一人…二人…三人…まだ居るの?」

背後からついてくる人影…多分、女目当てのゴロツキどもだろう。

この程度の人数なら…三分で終わらせる自信はあるけど

「時間が惜しいし…なにより大物が逃げちまう」

呟いて、私はビルディングの間に走りこむ。

この辺りの地形は、昼のうちに見回っている。

後ろの方で何人かが動いたみたいだが、あんな連中に追いつかれるような柔な鍛え方がしていないし、されてもいない。

数分で、私を追う気配は消えた。

……少し時間を無駄にしたな。

私は再び、路地の間を歩き始める。

…何かを待つように。夜が明けるまでの間、ずっと。




俺は急いでいた。というのも、今日は早く帰って来い、と親父殿にクギを刺されていたのに、公園でボケーッと座っていたらいつの間にか夜中の1時になっていたからだ。

まずい、このままでは本当にクギを刺されてしまう。左手あたりに。

自転車の車輪を足の裏で押す。片方の足が上がってくるので、それをまた押す。

この単純作業を繰り返していると、なぜか数台の車を追い越してしまっている。もちろん、走行中のものを。

長い金髪が、速度に見合った風圧で後ろにたなびいている。


…明日は…入学式だっけ?

眠気であまりよく働いていない脳みそ。普段から脳を動かしていないため、どうもさっきから眠りに落ちかけている。

…振り向いたのは偶然だった。ただ、何かを感じたから、右の路地を見た。

…女の子?

そう、この時間に不釣合いな格好をした、一人の女の子。

どこかの制服だろうか。薄い青と白で作られた、古風なセーラー服。

彼は自転車を止めて、彼女の横顔を見続ける。

キリッとした横顔、バンダナで固定された、栗色の綺麗な髪。その大きな瞳は、何かを見つめているように動かず、まっすぐ前を見ている。

引き込まれた。一瞬で。

自分が何故急いでいたのかさえ思い出せない。早足で歩き去る彼女。

置いていかれる…その思考が頭に思い浮かぶと、彼はその後を追いはじめた。



……食いついた!

ゴロツキをまいてからしばらく。やっと目的の奴に出会ったらしい。

ペロリッ…と軽く下唇を舐めて、少しずつ歩くペースを落としていく。

相手が動きやすいように路地裏に入り…気配を消す。

一秒…二秒…三!!

路地裏に入ってきた影に、思い切り延髄蹴りを食らわせる。

ヒュンッ、と私の左足は空を切る。

そんな、外した!?

絶対の自信を持っていた私の足技を、しかも不意打ちを受けたというのに。その相手はあっさりとかわしきると、私の足をつかみ、思い切り前方に投げつける。

ドガッ!!

「…っ!」

受身を取ったのに…この威力。

相手は私の反撃がある、と考えたのだろうか。一歩二歩下がり、いつでも迎撃できるように構える。

こいつ…強い!

久しぶりに手ごたえのある相手…わざわざ東京に引っ越してきた甲斐があったようだ。

私は立ち上がり、相手を注意深く見る。

生半可な攻撃では、一撃でとられる…なら、生半可な攻撃でなければいいのだ。

すぅ…っ

吐息…すって…吐いて…すって。

呼吸を媒介に、魔力を練り上げる…相手も何かしらの能力者らしく、一瞬表情が揺らいだ。

多分、続けるべきか否か…迷っているのだろう。

…私は、言葉をつむぎだす。

黄昏よりも暗き者

血の流れよりも赤きもの

時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において

「き、貴様!?まさかあの方の…」

男は、顔を強張らせてそう言った。

我ここに赤闇の長に誓わん

「くっ・・詠唱前に倒す!」

男は、恐怖を殺意で塗りつぶしたようだ。私の急所めがけて、隠し持っていたナイフを振るう。

キィン!

魔術を使うときに起きる魔力障壁…簡単に相手の小剣を止め、はじき返す。

遅いよ…遅い。

我らが前に立ちふさがりし全ての愚かなる者に

「ひ…ひぃぃ・・」

汝と我の力以て等しく滅びを与えんことを

「う…うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

「ドラグ…スレ!?」

呪文が発動する、その瞬間。

金髪の男が、私と男の間…つまり、呪文を発射する方角に現れた。

くっっ!

私は咄嗟に両腕を真上に向ける。

「ドラグスレェェェェイブ!!」




閃光……衝撃。

私が腕を向けた方角にあったモノは、例外残さず消失する。

「なっ…」

割り込んだ男が、驚きの声を上げる。…私と戦っていた相手は、すでに気絶しているようだ。

金髪の男…かなり背が高い。多分、外人だろう…かなり整った顔立ちだ。

普通に出会ったのなら、もう少しはいい印象になったんだろうが…

「…どういう、つもり?」

私はそう尋ねた。私の詠唱が何であるか、程度の知識は外人でもあるだろう。

何より…私は、戦いを邪魔されることを嫌う。

返答しだいでは、ただでは済まさない。

「どういうつもりもあるか。こんな時間に女の子一人で危ないなって思ってたら、いきなり男に襲われたり。助けようとしたら…」男は上を指差した。「これだろう?」

…おかしな男だ。普通、私のこれを見たらたいていの男は腰を抜かすというのに。

それに…

私は相手の体を眺める。…少なくとも、一般人の体つきではない…

「…名前は?」

「…は?」

私は聞き返した。金髪の男がいきなり名前を尋ねてきたからだ。

冗談かと思ったが、本気らしい…目つきで分かった。

普通なら一笑にふすところだけれど…私は少しこの男に興味を持った。

まとっている雰囲気はただの男でしかないが…何かが、おかしい。

「……リナ。印場リナよ」

「そうか…俺はガウリイ。ガウリイ・ガブリエフ」



決して、いい出会いというわけではないけれど。
それが私とガウリイが、出会った瞬間だった。




あとがき

書く暇無し
なので、明日書きます〜w

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16929無道学園物語 序章つぅどら・ゴン 2004/12/25 19:59:12
記事番号16928へのコメント
カツンッ・・・

軽い、本当に軽い音だ。一撃で俺の命を奪いかねない、死のメロディーだというのに。

・・・一人の老人が居た。彼は松葉杖をつきながら、俺に向かってゆっくりと歩を進める。

一歩・・・二歩。

その歩みと共に俺が流す汗の量が増大している。

「・・・十五年前・・・お前が生まれたとき、私は本当にうれしかった・・・だからこそ、偉大なる先祖、ガウリイ=ガブリエフの名前をお前に付けた・・・」

・・・淡々とした口調で、老人はそういった。

カツン・・・カツン。進むたびに老人用の杖が音を立てる。

「・・・親父・・・」

俺はそう呟いて・・・身構えた。

「この馬鹿者がぁぁぁぁぁぁ!!!わしは何も、不順異性交遊なんぞさせるためにお前を作ったのではないぞ!!」

「誤解だ!力いっぱい誤解だ!!」

老人の叫びに、ガウリイも叫びで応戦する。


遠めでそれを眺めていたリナは一言、「バカばっか」と呟いて居間を出る。

・・・ここはガウリイの家だ。


「うちに来ないか?」

彼はそういった。背中に気絶した男を背負ったまま、乗り捨ててあった自転車を拾い上げる。

・・・大した力だ。

素直にそう思った。人一人背負って、しかも決して小柄ではない男を背負って、スクワットに近いことを平然とやってのける。

強いな・・・と思うと共に、戦りたい・・・とも思う。だが・・・

「・・・会って数分の見知らぬ男についていくほど、尻軽じゃないわ」

別に行くところも無かったし、どこに眠っても暴漢どもに襲われるだろう。だが、見知らぬ男の誘いに乗るほど馬鹿でもない。

「・・・別に良いんだけど・・・残金17円で、どうやって今夜を過ごし気だ?」

・・・先ほどの戦いで偶然落としたがま口が、ぱっくりと口をあけている。

転がり出ているは、十円玉一つに5円玉一つ。それに、1円玉が・・・2個。

「・・・お世話になっていいかしら?」

現金問題という無慈悲な議題によって、私の方針は180度ほど回転することになった。


ヒュンッ!

杖に仕込まれていた剣・・・もちろん真剣が、ガウリイの頬をかすめる。

ろ・・・老人の動きじゃない。

齢50の彼の動きはまるで衰えていない。ただ、経験を増しただけである。

というか・・・「息子に向かって、殺意をこめるんじゃない!!」俺はほえた。

素手で相手できる相手じゃない。ましてや、親父が切れるたびに壊される家具の数は彼の悩みの種だ。

「じゃからしい!!」聞く耳もたねぇ、と体で表現する父親。

ガウリイに向かって放たれる二撃目。しかし、それは空を切る。ガウリイの体は、すでに数歩離れた位置に移動しているからだ。

一撃目に突き、二撃目で刀身を横に払う・・・幕末の時代、新撰組が考案し得手とした、平突き。後ろに逃れても横に逃げても逃げ切れない。

しかし、ガウリイはそれをよけた。類稀な身体能力のおかげでもあるが、何度も体で受ければ、タイミングは分かる・・・決して嬉しくは無いが。

「ふんっ!やるではないか馬鹿息子!」

「へっ、そっちもな!」

父子の戦いは佳境へ向かう・・・・・・・はずだった。


「あの・・・どこの部屋で眠ればいいんですか?」リナは尋ねた。

「おお、これはこれはすみません。ささっ部屋にご案内いたしましょう」

ドタッ、という音がした。振り向くと、ガウリイが倒れていた。転んだのだろうか。

ガウリイの父も、先ほどの形相とは打って変わって、人のいい笑みを浮かべている。

先ほどの騒動も、リナから見れば出来の悪い息子に対する、父親のお説教にしか見えなかった。

親子・・・か・・・

数年来考えなかった言葉を思い浮かべ・・・リナは早く眠りたい・・・と呟いた。




カーテンの隙間から漏れる光。ゆっくりと、私の体を包んでいく。

私はんんっ・・・と体を揺らして、いつまでも眠ろうとする体を揺り起こす。

・・・知らない、天井ね。綺麗な内装を施された部屋の中で、私はそう思った。

最近やってきたこの町で、見慣れた場所などあるはずもないのだが。

・・・そういえば・・・ここ、あいつの家だっけ。

急速に目を覚ましていく脳が、それを私に告げる。

っ・・・昨日殴られた部分が、赤くなっている。あの男も、かなりの手誰だった・・・というわけか。

「ざまぁ・・・ないな・・・」

噛み締めるように・・・自分に言い聞かせるように・・・私はそう、呟いた。


コンコン

ドアを二回、礼儀正しくノックする音が聞こえる。

「お食事の用意が出来ました。お着替えが済み次第、居間にお越しください」

執事だろうか。あんな時間にウロウロしているどら息子が居る家庭には、あまり似つかわしくない。

私は適当に返事をして着替えを済ませ、部屋を後にした・・・あのネグリジェは、着心地がよかったのだが。


「いやはや。リナさん、でしたかね?これも何かの縁。ゆっくりしていってください」

「いえ・・・こちらこそ、突然お邪魔してしまって申し訳ありません」

ガウリイの父・・・レックエートという名前らしい・・・は、丁寧な応対で私に席を勧めた。

私も礼節はわきまえている。社交辞令のような言葉を数回繰り返していると、食事が持ってこられた。

・・・見て、絶句した。

「地中海から直接輸入させた魚介類と、オリーブオイルの味は格別ですな・・・ささ、どうぞ遠慮なく」

・・・遠慮させていただきたい。

朝食としてはありえない量に、思わずそう言葉に出しそうになった。

数十人が座れるだろう長方形のテーブルに、目一杯載せられた料理の数々。こんなもの、フードファイターでも食いきれないだろう。

「お客人には、今出せる最大の物を出す。それが我がガブリエフ家の心情です」

なんて迷惑な心情だろう。しかし、好意を示す場合、良く知らない相手には物で好意を示すしかない。

そう思い、リナは迷惑だが嫌いではない・・・と考え・・・スプーンに手を付けた。

数分後、盛大に後悔することになったが。



「なあ、親父ー!今日の入学式、見に来てくれるのか?」

テーブル上に乗った食材のほぼ半分を腹に収めた怪物が、もう一人の怪物に尋ねた。

・・・どこに入ったんだ?あれが

想像するだけで気分が悪くなるが、ここまで好奇心が揺さぶられるものも少ない。

先ほど、2階から降りてきたガウリイは、私と同じ高校の制服を着ていた。

胸についた無道高校の校章・・・入学式、そうか、今日だったな。私があの高校に入学するのは

「ふんっ、お前のようなどら息子の入学式なんぞ、恥をかきに行くようなものじゃ。それにわしは忙しい」

冷たく言い放ち、レイエットは席を立つ。

「ちっ・・・ついでに車に乗せてもらおうと思ったのに」

惜しそうに彼は呟く。

あの高校はここから十数キロ先にある。まあ、車でいければ楽だろ・・・う・・・

ちょっとまて。

「じゃあ、何で行く気なの?」私が訪ねると、彼はにかっと笑って簡潔に答えた。「自転車さ」

時刻は七時半をマークしている。入学式が始まるのは・・・八時半

「ち、遅刻するじゃない、何で急がないのよ!」

私は急いで席を立つ。ガウリイは「あー、そうだなー」と呟いてから立ち上がった。

何なんだ、この男は。私は玄関から外に出て・・・気がついた。

・・・私も移動手段、無いじゃん。

でかい家の癖に、この家には車というものが無いのだろうか。

立ち尽くしている私に、ガウリイが後ろから声をかける。

「じゃあさ、俺の後ろに乗っけてやろうか?」

「・・・・・・ええ、お願い」

今まで急いでいたのがなんだか馬鹿らしくなった。



チャリン・・・自転車は今日も軽快に走る。

どこぞの詩人の真似ではないが、自動車を軽々と追い抜いていく姿には、その言葉が良く似合う。

・・・後ろに乗っている者は、存外に恐怖していたが。

リナは体感したことが無いスピードに恐怖していた。これがバイクだったなら、別段怖くは無かったろう。

ただ、それはあくまで機械で動くからであり、今現在自分が乗っているのは自重10キロも無い、ただの自転車だ。

いつ分解するかもわからない恐怖・・・時速80キロちかい状態で飛び降りて、無事なほうが奇跡に近い。

ああ、神様。私は人殺し以外に悪いことはしていないのに、ここで人生を終えるんですね。

そんな内容を祈る自体、神に対する冒涜のような気もするが・・・ともかく、私は神に祈りを捧げた。

・・・向こうからすれば、はた迷惑かも知れないが。


「ついたー!」

簡潔にガウリイはそういって、校門から校舎のほうへ入っていった。

・・・校舎に備えられている時計は、8時10分を刺している。

「化け物・・・」

「ん?何か言ったか?」

小さく呟いた言葉を聞いて、ガウリイは問い返す。

「なんでもないわ。そろそろおろしてくれる?」

彼はああ、と一言うなずいて、自転車をとめた。私はふわりっと飛び降り、さっさと体育館に向かう。

まってくれよー、とガウリイが言ったが、私はあえて振り向かなかった。

・・・この学校で、つかめるもの。それに全力を向ける。

今の私の目標を、達成するためにも。






序章の分と今回の分のあとがき(やけに長いな

さて。皆様。お久しぶりです〜(ノベル2じゃ初かもしれませんが)
以前ここでお世話になったどら・ゴンと申します。受験前で忙しいのに何やってるかな、私は(笑)
今回は第一章でもなんでもなく。序章2です。まだ本編に入ってませんよ〜?(笑)
ついでにリナを襲った男は何処に行ったんでしょうね〜♪

ご感想、もしくは批評など、ありましたらぜひお教えください。
それでは。

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16982Re:無道学園物語 序章つぅ京極師棄 2005/3/11 21:34:32
記事番号16929へのコメント

どうもお久しぶりの京極です。
お話読まさせていただきました。おもしろいです、特にガウリイの父さんとガウリイの関係が・・・
リナがこれからどうなっていくかガウリイもどう絡んでいくか!
これからも楽しみです。
短いですがコレにて・・・・・・