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16958 | ゼルアメ小説 | バビ | 2005/2/1 13:35:42 |
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16959 | 永遠の白 | バビ | 2005/2/1 13:36:14 |
記事番号16958へのコメント 白と城と死路。 --- しんしんと降り狂う。 目を閉じて、静かに空を仰ぎ見る。降り狂う冬精の気配に耳を傾ける。 なぜこんなに静かになるのだろう。 柔らかく頬を滑るそれはまるで冷たくなくて余計にそら寒くなった。 息を吸い深く吐く。 真っ白い、溜め息にも似た煙の様な息。やけに子供じみた、自分のその 動きに変に笑いが出た。ぎゅうぎゅう泣く軍靴の声が新鮮だったが 構ってられず、前へと進む。 やがて前方に見える形。白く深く積もった綿毛の上にぽつり、ぽつりと 赤い染みが続くその先に寝そべっていた。 おい、と声をかけるが無反応。服の端々に這う白い塊が、彼女の白い肌に 馴染んで光って見えた。胸元にまた赤い染み。 またか、と思い口端を拭った。 もう一度、その腕を引きながら呼ぶ。はらはらと塊が落ちていく。 「いい加減にしろ、死ぬぞ。」 少しむっとした表情で睨まれる。次いで、寒さに涸れた声で、放っておいて 下さい、とそっぽを向かれた。もう一度、先刻と同じように息を吐く。 今度は只の溜め息だ。意を決し、白鯨のマントを翻し、広げて腰を下ろす。 何?と聞く声も無視して、足を組む。半ば期待していたのだろう、それ以上は 何も言わず小さく寄り添ってきた。彼女の吐く息の白味が段々と薄くなって 行くのは、外気と体温の差が縮まっている証しだろう。象牙の肌は溶ける 様に白く、おかしい程に唇は朱に染まっていた。 じっと待っていると幽かに涙声。目も向けず、髪を、撫でる。 あたしのかあさんはこんな日に死にました。 掠れてくぐもった声と毒の傷。発音する度に血塊を吐く。 まともな人間の言葉に聞こえず、痛々しい。 人間に殺されました。王家のにんげんにころされました。 あたしも。 あたしもこんな日に、人間にころされてしぬんでしょうか。 王家のにんげんにころされてしぬんでしょうか。 「だから?」 母と準うのか?こうやって、寒さに身を屈めて?同じ毒を盛られて。 馬鹿が。 怒りと吐き気を伴って湧く、あの厭な感情に沿って吐き捨てた小さな言葉に、 更に小さく身を固めて震え泣く。 「お前は今、生きてるんだ」 母と違い、同じ毒でも絶命せずにいる。 馬鹿が。 もう一度、呟く。 声を出せずにすすり泣く、その小さな丸い肩に、しんしんと冬精が降り狂う。 -- |
16960 | AFTER FOLOW | バビ | 2005/2/1 13:37:23 |
記事番号16958へのコメント ゆきがふりました。 うまれてはじめてふっているゆきをみました。 そのひかあさんがころされました。 またゆきがふりました。 にどめのふっているゆきです。 かあさんをさがしにそとへでました。 じぶんのつくるあかいしみはあのときの かあさんのそれにそっくりでした。 あたしもかあさんみたいにゆきのひに ころされるのでしょうか。 「馬鹿が。」 かなしそうにくやしそうにはきすてられた ことばに、かれのなかのじぶんのおもさを みて、 なきました。 「あのひながれたかあさんのなみだはいたみでなく きっとこれなんでしょうね。」 うたうあたしのことばにもういちど、 「馬鹿が。」 しんしんとふりくるう。 |
16961 | おかえり。 | バビ | 2005/2/1 13:40:34 |
記事番号16958へのコメント 息するごとに死の匂いがする。 呼吸が寒い。 深く 深く。 それを持続する事すら億劫で、辺りは変に暗くなっていく。 血 赤い 鉄、 鉄の匂いがする。 何時からか、時間感覚がおかしい。 此処は何処で、 今は何時で、 …あいつはどうしている? 寒そうに泣いていた。… 眼の端に佇む黒い神官。 何時からか、姿は見えずとも気配を感じ取れる様になっていた。 「喰いに来たか。」 「いえ。ヒトの安らかなる死はかえって正なんですよ。」 「なんのために。」 「見届けに。ご存じの通りあなたはもう人間ではありません。永き輪廻の輪から外れ、 人外の道を行く事になります。今死ねばもう滅ぶだけ。もう、「人」と交わる事もありません。 …どうですか?魔族に入りませんか?」 「…あいつは…」 「なんでしょう?」 「あいつはどうしてる…?」 「ああ。アメリアさんの事ですか?死にましたよ。二十歳ぐらいで。ん−。八十年ぐらい前ですかねえ。 赤竜の巫女を継いで、戦死しました。」 「…」 「おや?無反応ですか。」 「解りきっていた事だ…。全部。」 「…面白くありませんね。」 「貴様を持て成す気など初めから無い。」 「意地悪ですねぇ。」 「もういい…。疲れた。放っておいてくれ。」 「いいえ。返事を聞いてませんよ、ゼルガディスさん。」 掲げられる杖。当たりにたちこめる黒い陰。輪廻?滅ぶ? 俺が? 俺がか?! 無性に込み上げる、笑い。 「クク…ハハハハ!ハッハア!!」 「何をお笑いですか?」 「俺が魔族になって何になる!?あいつの居ないこの時間と空間の中で、悠久を生きろと言うのか?!! …俺が転生しないというのは嘘だ。それに、 あいつが!! あいつがだ!! 俺を放っておく訳が無かろう!!!…ゲホっ!ハア!!ハア!!」 「何を根拠に。」 「貴様が言った、んだぞ、ゼロス…ゲホ…!、ハア… 「ヒトの安らかなる死」。 少なくとも俺の魂は「ヒト」だ…!!貴様等、魔族…、神でさえ関与出来ない、 「人間の輪廻」!! あいつはきっと、探し出す…!探せる…!! 「ゼルガディス」じゃない、「オレ」を…!だ…!!ゲホ…、ガッ!!」 「空恐ろしい事を人間の分際で…。」 「ハア、ハア…。」 「ふう。感服しましたよ、ゼルガディスさん。」 「…は…、」 「貴方とアメリアさん、両方に同じ条件を出して、両方とも同じお答えですよ。 残念です。 ルビ−=アイ様がどうしても貴方を連れて来いとおっしゃってたんですが…。 やれやれ。骨折り損でした。」 「…ハ…・・・」 「なんですか?」 「…・ィ、…・…ァ・」 目を、閉じた。 −− 激風が身体を襲う。目を閉じ声を聞く。白い光の射す方へ。 時が動くのを待っていた。 あいつの名前は甘い匂いがする。 魂もきっとそうなんだろう。 何年、何十年経っても、「ココ」の痛みは忘れないものなんだな。 総ての魂の故郷の海に咲く、「イノチある花」。 −ゼルガディスさん…!!− 白い両手。光。 ああ、やっぱりお前だったんだな。 「アメリア。」 やっぱり甘い、匂いがした。 −−おかえりなあさい!!−− |