◆−無道学園。入学式−どら (2005/4/17 22:06:52) No.17026


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17026無道学園。入学式どら 2005/4/17 22:06:52


入学式とは退屈な行事。これは、どの地方に行っても、どの学校に行っても変わることは無い。

私は欠伸をかみ殺して、校長の長ったるい演説が終わるのを待つ。

「で、あるからして・・・我が高校には優秀な、未来ある若者が集い・・・」

はい、そうですか。

心の中で適当に相槌を打つ。退屈な授業のときに使うと、1時間寝ないですごすことが出来る。

実際、寝てはいけない授業などには大変役に立つのだ。

相槌を打つのもあほらしい場合は、さっさと寝るのだが。



「えー。そして理事長の教えの元・・・・・・この高校は」

演説を始めて二十分が経過した。

・・・・・・・・・長い。長すぎる!

こういった行事の演説は長くなる。それはもう、一般常識レベルの話だがしかし長すぎる。

私だってこんなに長ったるい演説には遭遇したことは無い。

もし入学式を炎天下のグラウンドで行っていたら、そろそろ気絶者が出てきてもおかしくは無い。

「いつ終わるんだよ・・・ったく・・・」

「いい加減にしろっての・・・」

よどみなくしゃべり続ける校長に、新入生の殺意が集中していく。

しかし、肌が痛いほどに張り詰めた緊張の中校長はさらに調子よくしゃべり続ける。

その如何にも厚そうな面の皮ですべてはじき返しているのだろうか。素晴らしい。素晴らしすぎるぞこの男。

演説の内容もすでに私生活の部分に移っている。誰も聞きたくない情報を網羅されてもちと困る。

演説が30分を過ぎた辺りから、校長は歌を歌い始めた。話す言葉がなくなったのだろう。

どうやらこの人は演歌が好きなようだ。与作を十回歌った後、ズンドコ節を歌いだした。

・・・校長って、こんな奴でもなれるんだ・・・私があきれている間に、舞台袖からいきなり生徒が飛び掛った。

どんがらがっしゃん

「こ、校長先生やめてください!」

「離せぇ!!歌はまだ終わっていない!!私の歌を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

生徒会役員らしき人物達が10人ほど束になって校長を舞台裏に引きずり出し・・・
しばしの間、沈黙が辺りを包み込む。

・・・・・

・・・



―舞台裏―

「離せ!!わしの歌を、わしの歌を待っているファンが居るのじゃ!!」

引きずられながらも、足だけは前へ前へと動き続ける。

私はため息をついて、校長に近づき・・・

プスッ

「あうっ・・・・」

首筋にこっそりと取り出したクスリを打つと、校長はぽっくりと眠りについた。

「初芝。予定を繰り上げるぞ。生徒会長を呼んで来い」

初芝と呼ばれた少年が答える。

「はい。・・・・少し遅かったみたいですが」

「何?」

初芝の視線は舞台の真中。つまり、壇上に向けられていた。

「・・・司会に伝えろ。予定を繰り上げて生徒会長挨拶をはじめる。」

『校長先生ありがとうございました。それではこれより生徒会長挨拶に移ります。』

指示が飛ぶ前に、放送は流れた。

「・・・・・・・・・」

間が悪い。私は何故かいつもいつも間が悪いのだ。

隅のほうで少し黄昏ていると、初芝がぽんっと肩に手をおく。

「班長・・・本当にお疲れ様です。」

「入学式が終わったら、暫く有給でも取るかな・・・」

締め切っている体育館に何故か隙間風が吹く。

4月だというのに、彼にはその風がとても冷たく感じた。



『生徒会長挨拶。』

司会の女の子の、澄んだ声が体育館に響き渡る。

会場に居る全員の視線が壇上に向けられる。

身長は大体リナと同じくらい。燃える様な赤いポニーテールと、赤い瞳。

リナがこの学校に来たのは、彼女に会うためだった。

「新入生諸君おはよう。私がこの学校の生徒会長の、星空 天馬だ。」

彼女は静かな口調でそういった。

先ほどまでざわざわと騒いでいた新入生達も、静かに次の言葉を待つ。

「・・・・・・・・・・」

彼女は何も言わず、新入生達を見渡す。

深い・・・・・沈黙

新入生達は、彼女の一挙一動に静かに注目する。

彼女はしばらく新入生を眺めると、何かに気づいたように彼女は舞台袖を向き

「えっと・・・・次何を言うんだっけ?」

ずどどどどどどどどどど

大半の生徒が椅子から転げ落ちた。

私とガウリイは何とか、地べたに座るという失態を免れた。いや、私は滑りかけるのをこらえたが・・・

ぼけーっと舞台を見る彼を見て、私は思った。こいつは純粋に意味が分からなかっただけだ。そうに違いない

舞台袖も大慌てのようだ。大急ぎで書いたらしい、字の汚いカンペが袖からちらちらと見える。

生徒会長はちらちらと横を向きながら、たどたどしくカンペに書かれた文字を読む。

あ、袖の方で誰か頭を抱えてる。

「えーと。一年生諸君には・・・ぜん?前途ある一年生諸君には・・・この学校で大きく羽ばたいてほしいです」

この人を生徒会長に持ってきたのは間違いではないだろうか?先ほどの校長のほうがまだましだぞ。

「えっと、だから・・・その・・・」

カンペが間に合わなかったのだろう。どんどん彼女の口数は少なくなっていき

「ああもう!!めんどくさい!!」

ドーンッ!

彼女が腕を振り下ろすと、演説台が真ん中から二つに割れた。

どれくらい力を入れたのだろうか。100キロはありそうな演説台は大きな音を立てて左右に倒れた。

「私がこの学校の頭だ!皆私に従え!!」

おいおい

舞台袖からの突っ込み(カンニングペーパーでの)を完璧に無視し、独裁者宣言を発し続ける星空会長。

笑いを誘っているようにしか思えない騒動を見ながら、リナは酷く冷めた笑みを浮かべる。

・・・・・・・・・来る高校、間違えたかもしれない。

舞台の上ではまた一騒動起こっているようだ。しかし私は椅子に座りなおし、さっさと目を閉じる。

十分後には夢の世界に居るだろう。私は誰に言うともなくおやすみ、とつぶやいた。





あとがき
かなり遅くなりました。序章も終わり、無道学園やっと第一話です。(ぱちぱち)
・・・・・・ああ、長かった・・・・苦しかった受験も終わり、肩慣らしの一品です。
楽しんでもらえたのなら、本当に感激です。ここまで読んでくれているお方!
ありがとうございます!!

それではまた。今度はもっと早く更新しますね!!