◆−短編小説でGO!−リラーイド=ヴァイス (2005/7/22 18:35:49) No.17151
 ┣短編小説でGO!2−リラーイド=ヴァイス (2005/7/25 14:29:54) No.17154
 ┣短編小説でGO!3−リラーイド=ヴァイス (2005/7/26 11:54:34) No.17156
 ┃┗Re:短編小説でGO!3−エスエル (2005/7/27 09:47:47) No.17158
 ┃ ┗きゃぁぁぁぁっ!−リラーイド=ヴァイス (2005/7/27 14:24:33) No.17159
 ┃  ┗Re:きゃぁぁぁぁっ!−エスエル (2005/7/28 13:34:37) No.17162
 ┃   ┗Re:きゃぁぁぁぁっ!−エスエル (2005/7/28 13:37:56) No.17163
 ┃    ┗うーん・・・−リラーイド=ヴァイス (2005/7/29 17:47:26) No.17166
 ┃     ┗Re:うーん・・・−エスエル (2005/7/30 14:16:04) No.17168
 ┃      ┗じゃあ・・・−リラーイド=ヴァイス (2005/7/31 18:21:17) No.17174
 ┃       ┗Re:じゃあ・・・−エスエル (2005/7/31 20:39:05) No.17176
 ┃        ┗Re:じゃあ・・・−エスエル (2005/8/6 12:43:13) No.17181
 ┣短編小説でGO!4−リラーイド=ヴァイス (2005/8/17 18:26:49) No.17198
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17151短編小説でGO!リラーイド=ヴァイス 2005/7/22 18:35:49


どうも、先日まで魔族の無意味な長編(?)を書いていたリラーイド=ヴァイスです。
長編じゃ更新停滞しまくりそうなので短編をちょこちょこ書こうと思っています。どんなことになるかは分かりません。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「はじめまして。ゼロスといいます」
「ふーん・・・君、とうとう部下を作ったんだ」
「ああ。いい加減一人で仕事をやっていると不便になってきたのでな」
冥王城。
冥王(ヘルマスター)フィブリゾとその部下が暮らす、大きな城である。
そこの一室、城主フィブリゾの部屋に、今日は二人の客が来ていた。
一人は、金髪を短くまとめていて、タレ目だが鋭い印象を与える、簡素な旅人風の服の女性だ。
もう一人は、ひとつの家庭に一人はいそうな、どこにでも売っているような黒い神官服を着た、黒髪をおかっぱにして顔の筋肉がそのまま固まりそうなほどの笑みを保持している男性だ。
女性の名は獣王(グレーター・ビースト)ゼラス=メタリオム、男性の名は獣神官(プリースト)ゼロス。獣王城を住居とする、獣王軍の高位魔族だ。
「一人しか作ってないの?」
「ああ。お前みたいに八人も作ると、給料なんかが大変だろう」
「大丈夫。僕んトコは現物支給だから」
ゼラス=メタリオムことゼラスとしゃべっているのは、今彼らが存在している城の城主、冥王フィブリゾだった。
光の当たり具合によっては青にも紫にも見える、肩で切りそろえられた髪には、ゆるくウェーブがかかっている。下手すれば少女とも思えるくらいの美少年だが、ぺリドットのような黄緑の瞳には外見年齢にそぐわぬ鋭い光がこもっていた。
「・・・負の感情のか?」
「あったりー。何で分かったの?」
「分かるに決まっているだろう」
あきれたように腕を組むゼラスを無視して、フィブリゾはゼロスに視線を向けた。
「一人しか作ってないんだよね?」
「だからそう言っているだろう」
怪しく微笑むフィブリゾに、ゼラスはいい加減しつこい、と言わんばかりに険悪な声を返した。
「じゃあ、僕んトコの八人と互角かな?」
「・・・単純に計算すればな。
 しかし作った方の力量が違うのだから、少し八人のほうが強いと思うが」
「ゼロスには武器でも持たせたらいいじゃない。君が魔力込めてさ。
 僕んトコの八人には、ごく普通の武器を持たせるから。それでいいよね?」
「・・・ちょっと待て。何の話をしている?」
ゼラスが聞くと、フィブリゾは驚いたように目を見開き、
「何言ってんの?僕んトコの八人と、そっちのゼロスを戦わせるんじゃないの?」
と言う突拍子も無い事を言い出した。

「はァ?」
思わず間抜けな声を出してしまったゼラスに、フィブリゾは嫌味ったらしく言う。
「何?君、そんなことも理解できないの?兄として恥ずかしいよ」
「そういう問題じゃない!」
ばんっ!とテーブルを手でたたき、食って掛かるようにして立ち上がる。
「そんなことが目的だったのか、まさか?」
「んー?何のことかな?」
白々しく目をそらす。それが彼女の癇に障ったらしい。
「帰るぞ、ゼロス!こんなところにいると、こいつの性格の悪いのがうつる!」
ドアに向かって歩き出そうとするゼラス。しかしゼロスは動かなかった。いや、動けなかった。
「・・・君の大切な部下がどうなってもいいのかな?」
「な・・・っ!?」
兄の声に不吉なものを感じ取り、彼女が振り向くと。
「ぜらすさまぁ・・・」
眉毛をハの字に曲げ半泣きで涙目で涙声のゼロスが、フィブリゾにナイフを突きつけられていた。当然、狙っているところは首である。
「貴様・・・!ゼロスを放せ!」
「やだv」
ハートマークさえつけて、彼はあっさり断った。
「君がゼロスを戦わせると約束するなら、放してあげてもいいけど?」
あくまで人懐っこい笑みで、フィブリゾはしゃべり続ける。しかしその笑顔の奥では、魔族の軍師という素顔が見え隠れしていた。
「ぜらすさまぁ・・・」
また同じように声を上げるゼロス。ゼラスは歯噛みする。
「・・・ゼロス。給料は出ないが、フィブリゾのところの部下と戦うか?」
戦うべき本人よりもずっと緊迫した表情で、彼女は自分のたった一人の部下を見た。
「・・・ええ・・・戦いますからぁ・・・放してくださいようぅ・・・」
その言葉を聞いて、フィブリゾはナイフを彼の首から放した。
「じゃあ、僕の部下を呼んでこようか。武器でも用意して待っていて」
フィブリゾの顔からは、死を司る軍師の影は消え、また人懐っこい笑みが現れていた。

フィブリゾは廊下を歩いていた。
ぱちんっ!
「冥神官ヘル、マース、ティア、フェヴィリ、冥将軍リザ、ルトア、ミント、レンティア!」
指を鳴らし、八人分の名前を一息に呼び、そして名前を呼んだ全員が現れても、廊下を歩く早さは変わらなかった。と言っても、彼はその八人に比べたら足は短いほうだったので、足の長いものなどはのんびりと歩いていたが。
「ゼラスのところのゼロスっていう部下と戦ってね。死なない程度にやらないと、僕がゼラスに恨まれちゃうから」
『はい』
見事に声を重ならせて、四人の冥神官と四人の冥将軍は返事をした。
「ふぃぶりぞさま、まーすたちはなにでたたかうの?ぜろすっていうひともなにでたたかうの?」
「えーと・・・『フィブリゾ様、マースたちは何で戦うの?ゼロスって言う人も何で戦うの?』っていうことだね?」
一番幼い声の女の子が、フィブリゾに質問した。
・・・マース。
二人目の冥神官で、外見年齢は魔族の中で一番小さい。中身も一番幼い。話す言葉はすべて平仮名で、いつでもニコニコと笑っている。ゼロスのようなずっと維持している笑顔ではなく、無邪気で朗らかな笑顔だ。青と黒がベースの神官服で、少し色の薄い水色の髪を二つにしばっている。瞳はサファイアのような澄んだ青、腰に結んだリボンも青だ。
フィブリゾの歩くのと同じ速さで、九人分の足音が響く。
冥王軍の高位魔族たちは、武器のたくさん置いてある、フィブリゾの趣味の部屋に来ていた。
・・・どうな趣味なのやら。
「君たちには人間の武器で戦ってもらう。魔力を込めずに、そのまま戦ってね。ゼロスのほうは、ハンデとして自分で用意した武器に魔力を込めてもらう。人数はこちらのほうが多いしね。
 ・・・ほかに質問はあるかな?」
落ちる沈黙。
「無いね?じゃあ自分の好きな武器を選んで、魔力など込めずにそのまま使ってね。自分の分身として作った、シェーラのとこのドゥールゴーファみたいなのはNGだよ」
『はい』
また声が重なった。
フィブリゾは満足そうにうなずくと、ゼラスたちが待っているであろう自分の部屋へ足を向けた。
あとには、ため息をつく冥神官と冥将軍が残された。

「で?何にする、皆?」
一番最初に口を開いたのは、フィブリゾの部下の中で唯一の男、冥将軍ミント。長い黒髪で耳の横に左右一本ずつ細い三つ編みを作っているという、どことなく女っぽい髪型の男である。紫と青がベースの剣士服に、いささか不似合いな黒いマントを羽織っている。何の特徴も無くほかの軍の者にはあまり覚えてもらえていない、どこぞの覇王将軍とは違う悲しみを持っている奴だ。
「私はやはり・・・」
と、黒髪をポニーテールにまとめた女がつぶやき、
「これですね」
レイピアを手に取った。彼女がルトアだ。瞳の色と同じ赤いイヤリングと黄色の石のペンダントだけの簡単なアクセサリー、紫の上着と青のロングスカートが清楚な印象を与える、なかなかの美人である。ややたれ目がちで、ゼロスに少々似ている。
「へー、やっぱりあんたはそれなのね。あたしはどれにしようかしら・・・」
品定めするギャルの目で、紫がかった銀の髪をツインテールにした少女が言った。冥将軍レンティアだ。ピンクのミニのドレスにオレンジ色のマントとブーツ、首元に輝いているのはハート型のペンダント、少しツリ目なところがルトアと正反対のように思える。性格も正反対で、ルトアが変化球ならレンティアはストレートの球だろう。二つの剣を見比べた後、軽いほうを選んだ。
「わたし、これにしますぅ・・・」
皆の顔色を伺いながら、青みがかった銀髪の少女がダガーをそっと持った。うつむきがちな顔は青白く、おどおどしているという印象を禁じえない。紫と黒がベースの神官服で、頭のてっぺんの髪はアンテナのような形だ。冥神官ティア。気弱な少女だが、いざとなったら一番肝が据わっている。
「ティアはそれにするの?あたし、どれがいいかなぁ・・・」
心の焦りが丸みえな、黒髪を二つにしばった少女。青がベースの神官風で、少し眠そうな顔をしている。一番粗忽者であせってばかりいて、勘違いは多く早とちりももちろん多い。冥神官ヘル。地獄と言う名の少女だ。その後しばらく迷っていたが、結局身の丈ほどもあろうかというくらいの大剣を手に取っていた。
「まーすね、これにする!」
マースが、ルトアの剣より短くそして細い剣を構えた。
「私は・・・これかな」
声に抑揚の無い女性が、パチンコ玉くらいの大きさの弾丸を軽く上に放り投げた。フィブリゾによく似ている、赤毛で黒がベースの神官服を着た、かなり背の高い女性だ。冥神官フェヴィリという。魔族の中で「ヅェヌイ」と並んで言いにくい名前だ。フィブリゾの子供と言う位置にいるが、年の離れた姉か若い母かと言うくらい似ている。
「じゃあ、私はこれにしようかな」
茶髪に黒い髪飾りをつけた、長い白い杖を持った女性が細いナイフがたくさん入った箱を持ち上げた。投げナイフだ。実は彼女、サーカスに入れるほどの腕前である。
茶色がベースの剣士服で、ベストの中には黒いTシャツを着ている。冥将軍リザだ。ミントと同じようにあまり特徴のあるほうでもなく、あまり存在感が無い。五人の腹心の存在感が濃すぎて、将軍や神官まで意識が行かないのかもしれない。
「ふーん・・・皆決まったんだ。俺はどうしよう・・・うーん・・・」
ミントは優柔不断なほうで、こういうときは最後まで悩んでいたりする。
「これなんかどう?あんたに合いそうじゃない」
レンティアが見せたのは、ごく普通の長剣。
「えー・・・?普通過ぎないか?」
「そんなら武器なしで挑めばいいじゃない。あたしは知らないわよ」
「・・・じゃあそれにする」
「最初からそうしなさいよ!」
ああもうイライラする。そういったオーラがレンティアから発される。しかしミントはのんびりと、レンティアから手渡された剣を眺めるだけだった。
「じゃあ、行きましょうか」
ゼロスのような笑みを浮かべ、ルトアが七人に声をかける。
同時にうなずくのを確認してから、彼女は先頭に立って歩き始めた。
戦闘開始まであと数分。

「来ました」
「うん、分かった。そっちにいるのがゼロスだよ。ルトア、君に少し似ていると思う」
「そうですか?」
「そうかもしれませんね」
フィブリゾがゼロスに視線を向け、それからルトアに視線を移す。つられて視線を動かすゼロスが問いかけると、ルトアは微笑みながらフィブリゾに同意した。
「早速、始めるかい?それとも自己紹介からはじめる?」
「見合いでもあるまいに。さっさと済ませればよかろう」
グラウシェラー並みの冷たい声で、ゼラスは戦いの始まりをせかした。彼女はもともと温厚な人(?)なのだ。
「そう?じゃあルールを決めようか。
 まず武器。ゼロスのほうは・・・」
「ゼラス様からいただいた錫杖を使います」
「そう。僕の部下八人は、魔力を込めない人間の武器で戦うよ。
 次に勝ち負けの決め方だけど・・・」
「絶対に滅ぼすな」
「分かった。ゼラスからの希望で、滅ぼさないように、と言うことになったよ。とりあえず、最悪の場合でも『物質世界面(マテリアル・サイド)に具現化できないくらいまで』と言うことにしようか。それならいいでしょ?」
「ああ」
「じゃ、そういうことで。
 さっさとはじめようか。
 レディー、ゴー!」
そして、戦いは始まった。

「女性ばっかりですか・・・」
ため息をつきながら、ゼロスは錫杖を構えた。
最初に向かってきたのはルトア。
「貴方に恨みはありませんが、運命だと思ってください」
一息に間合いをつめ、ゼロスに攻撃させる暇を与えない。
「フェヴィリ!早く!」
「ルトア、よけろよ!」
弾丸を指で弾き、かなり離れたゼロスの腹に命中させるフェヴィリ。
「残念ですね」
ルトアは、耳元でささやかれたゼロスの言葉を聞いた。
次の瞬間、ルトアは床に倒れていた。背中には、フェヴィリの弾いた弾丸。
「言っちゃあだめなんですよ。フェヴィリさん・・・でしたっけ?貴女のほうがわずかに年上なのに・・・僕のほうが戦いに慣れているんじゃないですか?」
「・・・私は、戦闘向きではないのでな」
ヒュンッ。
ゼロスの後ろで音がした。風を切る、鋭い音。
「あたしたちが戦闘向きなのよ」
とす・・・と軽い音がして、ゼロスが傾いた。
「柄でたたいただけ。あたしよりあんたのほうが力も強いのよ。戦いにもならないはずなんだけど・・・あんたは手加減でもしてるの?」
ぎらりと、レンティアの紫の瞳がゼロスをにらむ。
「・・・大正解です」
目にも留まらぬ速さで体勢を立て直し、錫杖の先を彼女に向ける。
「だって、簡単に決着がついちゃつまらないでしょう?」
「そういうわけでもないんだけどね」
肩をすくめ、剣を握りなおす。
「連係プレー、って奴かしら、必要なのは」
リザが後ろでつぶやいた。
「じゃあそうしましょうか」
立ち上がったルトアがにやりと怪しく微笑んだ。
「連係プレーを使いましょう!」
部屋中に響く大声で、冥将軍ルトアは叫んだ。
ここからが本番。

「連係プレー?」
眉をひそめるゼロスに、冥王軍の八人は笑った。
「フォーメーションAです!」
全員を見回して、ルトアはさらに叫ぶ。
『了解!』
バッと八人が跳ぶ。半円の形に二列に並んだ。
一列目は、ゼロスの右からルトア、レンティア、マース、ティア。二列目は、同じくゼロスの右からフェヴィリ、ミント、ヘル、リザ。
「・・・どういうつもりですか?」
「貴方を倒すつもりです。貴方は勝てません」
リーダーはおそらくルトア。ならばまずルトアを倒すか。
ゼロスが考えている間に、いきなりティアが斬りかかってきた。よければ二列目のリザがナイフを投げる。それを錫杖で弾いている間に、今度はルトアがかかってきた。またよけようとすると、今度はフェヴィリが弾丸を弾いてくる。
「・・・くっ・・・!」
おそらく相手は二列で一組。どちらかを崩そうとするともう片方がかかってくる。なかなかいい作戦だと思う。
遠距離攻撃派のフェヴィリとリザ。近距離攻撃派のレンティア、ルトア、ティア。中距離攻撃派のミント、マース、ヘル。バランスの取れた軍だ。軍師フィブリゾが主だと、こうまで強くなるものなのか。
片っ端から狙おうとする。しかしまた斬りかかられ、仕方なく退くとまた攻撃がくる。隙を狙おうとしても隙が無い。
「貴方は勝てませんよ」
ルトアがまた言う。ゼロスは余裕が無くなる。
「フォーメーションB!」
また、八人がバッと跳んだ。今度は全員でゼロスに向かってくる。
ティアがダガーを突き刺そうとする。
ヘルが大剣でゼロスをたたこうとする。
レンティアが剣を横に薙ぐ。
ミントが長剣をたてに振る。
マースが剣を構えてゼロスに向かう。
フェヴィリが弾丸を弾く。
リザがナイフを投げてすべてを命中させた。
七人に気を取られ、ゼロスは気づかなかった。
後ろから向かってくる、自分に少し似た女性に。
そしてルトアは、ゼロスに剣を突き刺した。
「ゲーム・セット。ですね」
ゼロスは床に倒れ伏した。

「勝ったね」
「だから言っただろう。お前のほうがもともと強いのだから、私が作った部下じゃ弱い、と」
弱ったゼロスをお姫様抱っこして、ゼラスは冥王城の玄関にいた。
見送りに来た・・・というより勝ったことを自慢したいのか、フィブリゾも一緒だ。
「お見舞いに行くよ、いつか」
「完治したころに来ても追い出すだけだからな」
「フルーツでも持っていくよ」
「ああ、そうしてくれ。そのほうがこいつも喜ぶだろう」
腕の中のゼロスを見て、ムスッとした顔でフィブリゾの軽口に応じるゼラス。
「じゃね。また来てね」
「誰が来るか!」
そう言っておいて結構すぐに来てしまうのが、お人よしな所以なのだ。
苦笑して、素直でない同僚に言う。
「また来てね」
純真無垢な笑顔の裏には、やはり軍師フィブリゾの顔が見え隠れしていた。

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かなり長くなりました。二日かかりました。
それでは家族にせかされているのでこの辺で。
また次も魔族になりそうです。

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17154短編小説でGO!2リラーイド=ヴァイス 2005/7/25 14:29:54
記事番号17151へのコメント

こんにちは、リラーイド=ヴァイスです。
タイトルにあるとおり短編小説です。
そして予告どおり魔族だったりします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「はぁ・・・」
乙女ちっくにため息をつく茶髪に赤眼の神官服の男が一人。赤眼の王(ルビーアイ)シャブラニグドゥだ。
これはまだ、彼が七つに分かたれていなかったときの話。

「お父様」
コンコン。
ノックの音が部屋に響く。
「お父様」
呼ぶのは、一人の少年。
「お父様」
声が険悪になってきた。
「お父様・・・!」
顔がイラついたように歪んでいると思われる。
「お・と・う・さ・ま!」
バキッ!
ついに少年の声の主はドアをたたき破った。顔は怒りに歪み、その怒りを抑えるように肩で息をし、黒の髪は意思を持ったようにゆらゆらと逆立ち、ぺリドット色の瞳にはやはり怒りの炎が燃え盛っていた。
「何回も呼んでいるでしょう!何で出ないんですか!」
「・・・フィブ?」
たった今気づいたかのように―――実際に今気づいたのだろうが―――ゆっくりと振り向くシャブラニグドゥこと部下S。
「そうです!気づかなかったんですか!?」
我慢の限界が来たかのように叫び散らす冥王フィブリゾ。しかし対するSは、
「ええ・・・つい、物思いにふけってしまったものですから・・・」
恋する乙女のように頬を赤らめて、夢見るような声で言葉を返した。
・・・おかしい。おかしすぎる!
恋する乙女のような顔の赤らめ方。夢見るような声。僕の存在に気づかなかった・・・
S様がおかしい!
当然の思考回路で当然の結論にたどり着いたフィブリゾは、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!S様が壊れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
泣き叫びながら部屋を出て行った。
「はぁ・・・」
また、夢見るような目で頬を赤らめて、赤眼の魔王はため息をついた。

「ダルフィンっ!」
海王ダルフィンの部屋に飛び込むなり、フィブリゾは彼女の首をつかんだ。
「どぉせ君でしょ!?S様をあんなふうにしたのは!」
かっくんかっくんかっくんかっくん。
前後にゆすぶられながらも、必死で言葉を返すダルフィン。
「わっ、たくしじゃっ、ありまっ、せんこっ、とよっ」
訳:「わたくしじゃありませんことよ」。
「じゃあ誰なのさ!僕は君以外に心当たりは無いと思ってる!」
かっくんかっくんかっくんかっくん。
「しりまっ、せんっ、わっ」
訳:「知りませんわ」。
「しらばっくれる気!?僕は知ってるんだよ!君が『乙女ちっくになる薬v』をひそかに開発していたことを!」
かっくんかっくんかっくんかっくん。
「な・・・っ!?なぜそっ、のことをっ?」
訳:「な・・・っ!?なぜその事を?」。
・・・いい加減いやになってきた。
「君がS様に飲ませたんじゃないのっ!?」
かっくんかっくんかっくんかっくん。
「そんなことしませんわよっ!」
ばきぃっ!
長いドレスのすその下、同じように長い足で繰り出されたキックを、フィブリゾはよけることができなかった。
黒く長い髪は手入れがよく行き届いている。そのまま絹糸として売っても誰も疑わないだろう。魚の目のように、のっぺりとしたようで出っ張っている青の瞳には、好奇心と言う名の光がしっかりと映っている。装飾品はかなり多く、人間の金ですべて買ったら、卸値だけで一戸建ての家が一ダース買えるくらいだ(当社比)。着ている青いドレスは彼女の部下の一人が夜なべして作ったもので、似たようなデザインのドレスがクローゼットいっぱいに詰まっている。
彼女は実験と名のつくものを好み、特に『人体実験』という言葉を好む。当然、その内容も。生贄・・・もとい実験台は彼女の部下か同僚。瞳の光は知的好奇心の賜物だ。
お嬢様体質のダルフィンは、とことんおしゃれを好むので、あまり服が崩れるような野蛮なまねはしない。しかし時折二重人格のようになるので、そんなときは近くにいる者がたいてい犠牲になる。今のフィブリゾはその見本と言えよう。
「わたくし、自分より地位の上の方には実験をしないことと決めておりますの。ですから、S様を実験台にするなどというふざけた真似はしませんのよ」
倒れてぴくぴくしているフィブリゾを見下ろし、腕を組んで彼女は告げた。海王の威厳と言うものが現れている。
「で・・・も・・・」
ダメージを受けた体を無理やり起こし、フィブリゾは言葉を搾り出す。
「それなら・・・誰がS様に薬を・・・」
「知りませんわ。誰かが持ち出したんじゃありませんこと?」
「あたしが持ち出したの」
二人の会話に、澄んだ女の声が混じった。
ぴしっ。
音さえ立てるような勢いで、フィブリゾとダルフィンは硬直した。その声には聞き覚えがあり、その声が聞こえたときにはたいてい自分たちや自分たちの上司が大きな被害にあうのだ。まさに不幸を呼ぶ声というわけだ。
「ダルフの机の上にあったから、とりあえず実験としてSに飲ませてみようかと・・・」
「貴女様・・・でしたか・・・」
仮の姿と通り名しか明かさず、その通り名を聞いただけで魔族全員が恐れ多いと言う存在。
金色の魔王・ロード・オブ・ナイトメア。
震えがとまらない。大きな力の差を感じて、ダルフィンはまさに震度五くらいの地震まがいの震えを起こしていた。
がたがたがたがた。
がたがたがたがた!
長い金髪。同じ色の、自信に満ち溢れてきらめく瞳。露出度の高い黒のドレス。抜群のスタイル。
どれをとっても超美人。しかしその中に満ち溢れるパワーと我が儘さは、超美人と言うイメージを覆すくらいのものだった。
ゆえに。
ダルフィンがおびえるのも当然であり、フィブリゾが何もいえないのも当然であり、Sがおとなしく薬を飲んでしまったのも当然である。
「でもねー、一日中うっとりしてるみたいで、ぜんぜん仕事が進まないみたいなのよ。フィブだって、仕事について何か言うためにあいつの部屋に行ったんでしょ?」
そういえば。
ダルフィンとちょっとした漫才のようなことをやっていたのですっかり忘れていたが、フィブリゾはSに仕事が進まないと文句を言いにいったのだった。
「・・・そうでした」
「ね?
 で、ダルフ。解毒剤とか無いの?」
「それが・・・試作品の段階だったので・・・」
目をそらして震え声で答えるダルフィンに金色の魔王ことLは、かわいらしくあごに人差し指を当て、考えるようなしぐさをした。
「・・・ダルフ、ほかにあいつの目を覚まさせる方法は?」
「わ・・・わたくしの薬はたいてい人に害を及ぼさせたりするものが多いので・・・手っ取り早く解決させるために、殴るや蹴るなどの暴行を加えれば目を覚ますようになっていますわ」
「えらい!それならあたしの得意分野だわ!」
そりゃあそうだろう。
LがSに暴行を加えるなど、魔族の間ではすでに日常茶飯事である。
「早速行くことにしましょ。あんたたちもついてくる?」
ふるふるふるふる!
扇風機がものすごい速さで首を振るように、魔族扇風機とでも名をつけて売れば大ヒットするのではないかと思うくらいの速さで首を否定の形に振る二人を見て、Lは軽くため息をついてSの部屋に向かったのだった。
・・・Lが去った後、ダルフィンとフィブリゾは塩をまいたという。

さてその頃。
Sはまだ、うっとりしながらため息をついていた。
「Sっ!」
ばったーん!
すごい勢いで部屋のドアを開けて来たLを見て、Sは少し驚いたような顔でそちらを見た。
・・・フィブリゾに壊されたはずだったのだが。このドアは。
そんなことも気にせず、Sはすぐに笑顔になった。その笑顔はまさに、好きな人に偶然出会えた純情な少女。
「L様・・・v」
すぅ・・・っと音も無く近づき、きゅっ、と彼女を抱きしめた。
「な・・・っ?」
当然驚くLだが、Sはお構いなしに、
「L様・・・」
とうつろな声でつぶやくのみ。
「なにすんのよ!」
ばこっ。
隠し持っていたらしい分厚い辞書で、いい音がするくらいSの頭を殴った。Sの頭からは血が流れている。
「L様ぁ・・・」
すたすたすたすたすたすた。
ずずっ・・・ずずっ・・・
すたすた歩いていくLにSはしがみつく。
「L様ぁ・・・」
このやり取りは、LがSを後一発で滅ぼせると言うくらい弱らせた時点で終わった。
・・・暴行と言えるほどダメージの少ないものだったのだろうか。というか暴行と言うものの基準はどこまでだろうか。
ともかく、Sは滅びそうになりながらも最後までLの名を呼ぶことをやめなかった。

「・・・フィブちゃん」
「何、ダルフ?」
「怒らないで下さる?」
きまりの悪そうな顔で、ダルフィンはぼそりと口を開いた。
「あれ・・・実は惚れ薬だったみたいなんですの」
「はァ!?」
「ですから・・・惚れ薬・・・」
目をそらそうとしても、フィブリゾの攻めるような視線がダルフィンを貫く。
少年は少し考えた後、
「じゃあ・・・今頃お母様・・・」
「乙女ちっくでL様にめろめろのS様に・・・」
「・・・迫られてるかもしれないってこと?」
「・・・そうなりますわね」
気まずい沈黙が二人の間に落ちる。
「L様のお叱りを受けるのはいやだからね!」
「わたくしもですわよ!」
「君が薬なんか作るのが悪いんだろう!?」
「持ち出したのはL様のほうですわ!」
「二人とも、もう言い争いはいいわよ」
今、最も聞きたくない声を聞いてしまった。
ぎぎぎぎぎぃ・・・っ、と振り向けば。
「あたしのせいにしようとしてたのね?」
まだ乾いていない真新しい血のついた、分厚い辞書を持ってたたずむLの姿があった。
二人の記憶は、そこで途絶えた。
最後に聞いたのは、自分自身の悲鳴だと言う。
「あたしのせいにしようとした罪は、相当のものなのよv」
にっこり笑ったLの顔には、べっとりと赤い血がついていた・・・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Sが壊れました。
Lが怖いです。
一体何を伝えたかったのかが分かりません、自分にも。
次回もまた魔族になりそうです。海王軍か覇王軍に迫る!

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17156短編小説でGO!3リラーイド=ヴァイス 2005/7/26 11:54:34
記事番号17151へのコメント

どうも、また魔族になります。
読んでくださる方がいらっしゃるかどうかも分からないのに何やってるんでしょう私・・・

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「覇王様、本日の食事当番のなんですが・・・」
覇王軍の将軍の一人、シェーラが言った。黒い騎士服、同色の三つ編みにした髪、ぺリドット色の瞳の元気そうな少女だ。
「覇王様ですので、早いとこ準備してくださいますか?」
魔族は食事を取らなくてもよい。
それは周知の事実である。
しかし、魔族だって食事くらい楽しみたい。そんな思いが芽生えるのも仕方ないことであろう。
よって、部下に道楽者が多い覇王軍は、主の反対も押し切って部下が食事計画を進めているのである。食事当番表にはしっかりと覇王(ダイナスト)グラウシェラーの名前も書かれている。
「・・・ああ。分かった」
黒い服を着込み、銀髪を長く伸ばしてゆるくまとめている男性。それが覇王グラウシェラーだ。アイスブルーの瞳とつめたい表情が、氷を思わせる。
彼は短く返事をすると、イスから腰を上げて台所へ急いだ。
「今日はどんなものを作ってくださるのかしら。楽しみだわ〜」
軽く口の端を上にゆがめると、書類を自分の机の上に置き、同僚の覇王将軍の部屋へ向かった。

「ね、ノースト。今日の食事当番って覇王様じゃない?」
「そうだな」
「どんな料理を作ってくださるのかしら、楽しみだわ〜」
先ほどとほぼ同じ意味の言葉をつぶやき、ねぇ?ともう一人の存在に同意を求める。
覇王将軍(ジェネラル)ノースト。シェーラと同じ立場にいる、人間で言えば彼女の兄に当たる存在である。
髪型は、一言で言えば横ロール。二言で言えば音楽家のような横ロール。後ろの髪の幾房かをくるくると巻いたような髪型で、髪の色は覇王軍の神官・将軍で共通の黒である。緑のロングコートと中に着た黒の上着とズボン。同じく黒の大剣を背中に背負っている、目つきの悪い少年だ。
外見だけ見れば剣士のようだが、中身は暗殺者のような奴だ。血を見るのが何よりも好きで、上司に対してもタメ口をきく。セイルーンの王宮に人気投票についてのインタビューに行ったものの、あまりの素行の悪さにつまみ出されたと言う経験を持っているくらいだ。
「さあ?別にメシなんて、腹に入っちまえば一緒だろ」
「ああもう、あんたってばガサツな奴ね。口の中でふわりととろける感触とか、舌に乗ったときのほどよい温度、それから口に入れる前のいい香り・・・それを楽しむのが食事の上での楽しみでしょ?空腹を満たすと言う意味もあるけど、どうせ魔族なんだから意味ないし・・・
 ま、こんなこと言ってもあんたには分からないかもしれないけどね」
「ああ、分かんねぇ」
やっぱり、といわんばかりの顔でシェーラは軽くため息をついた。
『手伝いに来い』
ふと、部屋に主の声が響いた。スピーカーから声が流れている。
「じゃあ行きましょか」
「そうだな。どうせ手伝わねーと食べさせねぇつもりだろーし」
二人は部屋を出て、台所へと走っていった。
途中で競争まがいのことになり、広い廊下の分かれ道から歩いてきた覇王神官の一人にぶつかったのはまた別の話。

「お、やっと来たか」
スレイヤーズNEXTでゼロスが着ていたようなエプロンでサラダを運ぶグラウシェラー。その視線の先には四人の部下がいた。三人は体のあちこちに擦り傷のようなものが見られる。
「・・・何をやってきたんだ」
「転びました」
「ディーが飛び出してきたんだぜ!」
「お前らが競争してたんだろ!」
三者三様の答えに、とりあえず傷のなかった覇王神官に視線を移す。
「さあ・・・私にも、わかりませぇん。やっぱり、三人に、聞くのが、いいと、思いますがぁ?」
覇王神官グロウ。シェーラの姉に当たる存在である。
おっとりのんびりした行動。句読点の多い、聞いているほうが力が抜けそうなしゃべり方。あまり戦闘向きではないタイプだろう。
緑がベースの神官服の背中には、黄色のヴェールがついている。つややかな黒い髪には青の髪飾りをつけていて、それは彼女の武器が変化した姿だ。ややたれ目がちの青い瞳には、優しげな光が宿っていた。
「はぁ・・・」
言い争いの始まった三人を見て、グラウシェラーは大きなため息をついた。意外に苦労人なところもあるらしかった。
「シェーラ!」
「はいっ!」
黒の騎士服を着た少女が振り向く。
「お前の言い分は?」
「あたしとノーストが急いで台所に向かおうとして走っていたら、急ぐ様子も見せずにのんびり歩いていたディーと衝突、結果滑って転びました」
淡々と事実と自分の意見を程よく混ぜた答えを述べるシェーラ。
「分かった。
 ノーストの言い分は?」
「シェーラと同じだよ。俺たちが走っててディーが飛び出してきて衝突、そして怪我。そんだけだ」
肩をすくめながらけだるそうに答えるノースト。
「分かった。
 ディーの言い分は?」
「俺が歩いていたら突然脇からシェーラとノーストが走ってきて、主にノーストがぶつかってきて転びました」
「何で俺だけなんだよ!」
「俺の愛するシェーラに罪をかぶせるなんて・・・俺にはできないからさ」
クサイ台詞を並べ立てる少年。覇王神官ディーだ。やはりシェーラの兄に当たる。
大きな緑の宝石がついた、青と白がベースの神官服に黒いマント。長く伸ばした黒髪を背中の真ん中辺りでゆるく束ねている、優しそうな印象を与える少年だ。左の前髪を緑のヘアピンで留めている。
『シェーラLOVEv』な性格で、どんなときでもシェーラを優先する。しかし告白しても冷たくあしらわれているので便利な道具としか思われていないかもしれない。
「・・・分かった。
 その件についてはもういいから、早く手伝え」
またため息をついて、四人にエプロンを渡した。

「シェーラはなべをかき混ぜろ。焦げないように見ているように。
 ノーストはこれを運べ。人数分用意してあるから、ちゃんと配るように。
 ディーはこっちの野菜を切れ。すべてさいの目切りにな。
 グロウは洗い物をしろ。皿を割るなよ」
てきぱきと指示を下すグラウシェラー。それにしたがって動く四人だが、時折事件もおきる。
「覇王様、沸騰してきました!怖いです!吹き零れます!」
「火を止めろ、早く!」
「覇王様、指切っちゃいました」
「絆創膏もってこい!」
「覇王様ぁ・・・お皿が、割れて、しまいましたぁ・・・」
「その皿高かったのに!」
「グラウ、これ色が変だぞ」
「赤ピーマンだ、赤ピーマン!ピーマンがすべて緑と思ったら大間違いだ!」
料理とは戦いである。
誰が言った言葉だったっけ・・・
今の状況にぴったりな気がする・・・
大騒ぎの中、グラウシェラーは頭の冷静なところでそう考えていた。

「いただきまーす!」
元気なディーの声で、五人は箸を動かし始めた。
あのあと、味付けやら盛り付けやら事件が多発したやらで時間がかかり、結局食べ始められたのは一時間後のことだった。
「今日のメニューは?」
「カタート山付近の羊の肉とローズマリーの蒸し焼き、夏野菜のサラダ、パンだ。ローズマリーと羊が合っているかどうかが問題なのだが・・・」
「いいんじゃないですか?」
なんとも微妙な創作料理。カタート山付近と言うのがどう関係しているのだか。
「そういえば覇王様、冥王様が用があるといっていましたが」
「またなにか考えたな。よく飽きないものだ、同僚で遊んで」
「覇王様、リアクション、激しい、ですからぁ・・・」
「ひょっとしたら戦いの申し込みかもしれないぜ?ゼラスんトコのゼロスとかいう部下も、冥王んトコの部下と戦って療養中らしいし」
「そしたらあたしたちが戦うの?何それー・・・やんなっちゃう」
にぎやかな食事。暖かな空間。
覇王軍の食事は、いつもこうして過ぎていく・・・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

魔族らしくないですね。なんだか。
最後のほうなんか正の感情があふれまくってますし。
次は海王軍にチャレンジしてみようかと思う今日この頃。

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17158Re:短編小説でGO!3エスエル 2005/7/27 09:47:47
記事番号17156へのコメント


>どうも、また魔族になります。
うふふふふ(期待/きもちわるい…)
>読んでくださる方がいらっしゃるかどうかも分からないのに何やってるんでしょう私・・・
こんにちわ、リラーイド=ヴァイスさん。実は何気なく読ませていただいていた私です。文字うつとエラーがでて書きかけの小説(知るか)にも手を付けられない状態でした(はい。はい)

>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
>
>「覇王様、本日の食事当番のなんですが・・・」
>覇王軍の将軍の一人、シェーラが言った。黒い騎士服、同色の三つ編みにした髪、ぺリドット色の瞳の元気そうな少女だ。
おぅおっ
>「覇王様ですので、早いとこ準備してくださいますか?」
>魔族は食事を取らなくてもよい。
>それは周知の事実である。
>しかし、魔族だって食事くらい楽しみたい。そんな思いが芽生えるのも仕方ないことであろう。
アァ魔族って便利。(何が)
>よって、部下に道楽者が多い覇王軍は、
確かに・・・

>主の反対も押し切って部下が食事計画を進めているのである。食事当番表に>はしっかりと覇王(ダイナスト)グラウシェラーの名前も書かれている。
覇王…一体何をつくるんだ…

>「今日はどんなものを作ってくださるのかしら。楽しみだわ〜」
あ、私も。


>「覇王様、沸騰してきました!怖いです!吹き零れます!」
おッ恐れてる〜〜。

>「覇王様、指切っちゃいました」
一体どんな包丁の使い方を…

>「覇王様ぁ・・・お皿が、割れて、しまいましたぁ・・・」
>「その皿高かったのに!」
どこで入手!?
>「グラウ、これ色が変だぞ」
>「赤ピーマンだ、赤ピーマン!ピーマンがすべて緑と思ったら大間違いだ!」
>料理とは戦いである。
>誰が言った言葉だったっけ・・・
>今の状況にぴったりな気がする・・・
>大騒ぎの中、グラウシェラーは頭の冷静なところでそう考えていた。
うわさすが覇王ですねえ…。


>魔族らしくないですね。なんだか。
いや、たのしかったしいいと思いますっ!!
>最後のほうなんか正の感情があふれまくってますし。
>次は海王軍にチャレンジしてみようかと思う今日この頃。
おし、読も。

あ、すいませんそろそろ部活に行かなければ行けない時間なので失礼します。
はぁ…肩と、膝と、足首と、右手首と、あと背中が痛い…(危ないって!)
ではではっ!


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17159きゃぁぁぁぁっ!リラーイド=ヴァイス 2005/7/27 14:24:33
記事番号17158へのコメント

久しぶりにレスをいただきました!そしてこちらでははじめまして!

>>しかし、魔族だって食事くらい楽しみたい。そんな思いが芽生えるのも仕方ないことであろう。
>アァ魔族って便利。(何が)

便利になるように書いてます。好きな姿になれるし空間は渡れるし食事だってできます。人間よりお得です。・・・ちょっとうらやましいとです。

>>よって、部下に道楽者が多い覇王軍は、
>確かに・・・

主だけで言ったら海王軍が一番道楽者・・・

>>主の反対も押し切って部下が食事計画を進めているのである。食事当番表に>はしっかりと覇王(ダイナスト)グラウシェラーの名前も書かれている。
>覇王…一体何をつくるんだ…
>
>>「今日はどんなものを作ってくださるのかしら。楽しみだわ〜」
>あ、私も。

ゼロスよりはまともですが覇王将軍・神官の女の子の方が料理はうまいです。

>>「覇王様、沸騰してきました!怖いです!吹き零れます!」
>おッ恐れてる〜〜。

吹き零れは怖いです。沸騰してきただけで怖いです。火を扱うの自体怖い私です。昔、火にかけていたフライパン(ジャガイモを焼いていた)を見ていたとき、指に引っ掛けて全部床に落としたこともあるくらいです。

>>「覇王様、指切っちゃいました」
>一体どんな包丁の使い方を…

手をしっかり丸めていなかったというのが敗因です。

>>「覇王様ぁ・・・お皿が、割れて、しまいましたぁ・・・」
>>「その皿高かったのに!」
>どこで入手!?

・・・物質世界面(マテリアル・サイド)の高級食器店で衝動買い・・・(ボソッ)

>>「グラウ、これ色が変だぞ」
>>「赤ピーマンだ、赤ピーマン!ピーマンがすべて緑と思ったら大間違いだ!」
>>料理とは戦いである。
>>誰が言った言葉だったっけ・・・
>>今の状況にぴったりな気がする・・・
>>大騒ぎの中、グラウシェラーは頭の冷静なところでそう考えていた。
>うわさすが覇王ですねえ…。

冷静なところもあり、あわてるところもあり、メリハリをつけて行動するのが覇王たる所以です(何)

>>魔族らしくないですね。なんだか。
>いや、たのしかったしいいと思いますっ!!

楽しんでいただけたら光栄ですっ!

>>最後のほうなんか正の感情があふれまくってますし。
>>次は海王軍にチャレンジしてみようかと思う今日この頃。
>おし、読も。

おし、読者一人ゲット。(笑)

>あ、すいませんそろそろ部活に行かなければ行けない時間なので失礼します。

部活ですか・・・大変ですね。私が入っている部活は目立たない上に活動時間が比較的短いので毎日遊びほうけてます。


>はぁ…肩と、膝と、足首と、右手首と、あと背中が痛い…(危ないって!)
>ではではっ!

そんなに体中痛くなるなんてどんな部活なんですか・・・危ないですよ!
では、また読んでくださるとうれしいです(ずうずうしいよ)
ありがとうございました!

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17162Re:きゃぁぁぁぁっ!エスエル 2005/7/28 13:34:37
記事番号17159へのコメント

こんにちわ。えぇもうそんなに体痛くなるような部活みたいな物体です。

練習時間は三時間。外連あわせて四時間。休憩はあって二回。

筋トレは、腕立て、背筋、腹筋30回を3セット。

休もうとすると目線が屈折…。

ユニフォームは全部びしょぬれ下着丸見え…。

って…贅沢言うなって感じですよね。

さて問題。私は何部でしょー。
見事当てたら、小説みたいなののリク権プレゼント〜〜〜。ってわかるかいな!

というわけで四択〜〜。

A、バレー。  B、バスケ  C、テニス  D、バド

というわけで問題をよく読むと、外連あわせて・・・とかいてるのでテニスはボツ〜

ではでは〜〜〜。

じゃなくて・・・・・
はい、次回もよませて頂きます!!!

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17163Re:きゃぁぁぁぁっ!エスエル 2005/7/28 13:37:56
記事番号17162へのコメント

すいません。もうちっとヒントを・・・(まだ!?)

私の属性(何)
@自分のミスでおこられるのはいやだ。

A球はきらい。

Bあぁ風がほしいナァ〜


これを全て解約すると。。・。ってもう答え・・・

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17166うーん・・・リラーイド=ヴァイス 2005/7/29 17:47:26
記事番号17163へのコメント

どうも、リラーイド=ヴァイスです。
クイズ(?)の答えですが、「D.バド」ですか?
友達がバド部で、「風が入るとシャトルが飛ぶから全部体育館の窓とかを閉め切る」とか何とか言ってるので、バドミントンかなー・・・と。
合ってますか?

私の部活は前に某掲示板で言ったことがあるので、クイズとかは意味が無いですね。
私が入っている部活は室内ですが、もともと部室があったところが耐震工事とやらで使えなくなったので、まったく関係の無い美術室でやっております。4階で、とてつもなく蒸し暑いです。おまけになんだか変な石鹸のようなにおいが。工事の時には引越しですよ、部室から美術室へ。
部室は北校舎1階、美術室は南校舎4階。水槽やガラス器具、鉢植えに電気コンロといろいろな物をを運ぶために何往復も。正直腕が痛かったです。

「D、バド」で合っていたら、小説リク権もらえるんですよね!合ってたらいいな、とか思っていたり。
合ってますようにー。

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17168Re:うーん・・・エスエル 2005/7/30 14:16:04
記事番号17166へのコメント

こんにちわ。
ほっきり言ってあってます。
本当、ばかげてますよね〜私のクイズ(!?)って〜。
石鹸のにおい!?き・・・危険じゃ・・・。
何かシックハウス症候群なりそうですよね・・・それ・・・。

あ、ではどうぞどうぞ、物体しかかけないですが・・・・
久しぶりに頑張ります。

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17174じゃあ・・・リラーイド=ヴァイス 2005/7/31 18:21:17
記事番号17168へのコメント

じゃあ・・・何にしましょうかね。この機会を逃したらもう後が無いなどと思ったり。

では「五人の腹心でギャグ」とか。「お茶会をしていたらダルフィンが持ってきていたティーカップが割れて、そこから連鎖していくように皆がキレていく・・・」という感じで。
だめだったら言ってください。またリクエストしなおします。
お願いしますですー。

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17176Re:じゃあ・・・エスエル 2005/7/31 20:39:05
記事番号17174へのコメント

腹心ギャグですかぁ〜
昔はよく書いてた(ような)気がするので頑張ってみます〜。
本当にすいません、駄文になることは間違いなしですが・・・・。

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17181Re:じゃあ・・・エスエル 2005/8/6 12:43:13
記事番号17176へのコメント

リラーイドさん。すまいせん。1に投稿してしまいました。
しかも何かジャンルかわってきました。
すいません

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17198短編小説でGO!4リラーイド=ヴァイス 2005/8/17 18:26:49
記事番号17151へのコメント

今回は海王軍に挑戦です。
ダルフィンのキャラクターが壊れまくっていると思われます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ちくちくちくちくちくちく。
かち、かち、かち、かち、かち。
カッカッカッカッカッ。
「はぁ・・・また海王様のドレスか・・・」
暗い部屋の中でなにやら針を動かしている少年が二人。
「でも俺も手伝ってるし。海王様のためなら苦労はいとわないんでしょ?」
「そうだけどさ・・・オレの仕事ってこういうのばっかりだから・・・」
「いいんじゃないの?」
「でもさぁ・・・」
針を動かす音、時計の針の音、それから片方の少年が床を靴の底でたたく音の三つが響く中で、二人はうつむいてお裁縫をしていた。
「フィンはいいよな。料理みたいな、時間がかからないし、できたものが汚れたりしないような仕事だし。オレはどうせ裁縫だよ・・・」
「・・・何言ってるのかな?」
フィンと呼ばれた少年が顔を上げた。
「料理だってね、あの方の前じゃあただ時間かけずに作ったような即席料理は無力なの!前日から下ごしらえしなくちゃならないし、食事の三時間前には台所に入らなくちゃならないし、食器だって無駄に使うから洗剤はすぐなくなるし、環境に悪いし・・・
 お裁縫のほうが楽なはずだよ!少なくともテーブルから払いのけられるなんて言うのはないし!」
「裁縫だってな、型紙とかから作んなくちゃならないんだよ!同じ型紙で作ったら『手抜きだ』とか言われちゃうし!」
お互い一歩も引かず、にらみ合いながらどちらが損かを言い合っている。
二人は海王軍の神官と将軍である。
フィンと呼ばれた少年は海神官。水色の長い髪を腰の辺りでゆるくまとめていて、下手をすれば十人中九人が「女」と言ってしまうくらいきれいな顔をしている。神官服は黄緑がベースで、マントは深緑色だ。マシンガントークな料理上手、いらついていたり仕事をしていたりするときに床を靴の底でたたく癖がある。靴の音はこいつの仕業だ。
もう片方の少年は海将軍でダルスという。黒髪を肩の辺りで切りそろえ、海王からもらったという青い帽子をかぶっている。青がベースの剣士服で、白い大きな剣を担いでいるのだが、それを使うことはあまりない。敵のほとんどを、主であるダルフィンが倒してしまうからだ。おしとやかに見えるダルフィンだが、実は結構血の気が多い。
「料理はね・・・!」
「裁縫はな・・・!」
口喧嘩をしながらも、手はしっかりと動いている。
知らないうちに身についた業だろう。

「終わった〜〜〜〜・・・」
「やっとだねー・・・」
二人そろって手を止めて、座っていたイスに背中をもたれさせた。今まで前のめりになって猫背で裁縫をしていたので背もたれの意味はなかったのだが、今はゆっくりと息をつきながら背もたれに本当の仕事をさせていた。
「・・・さ!」
ダルスはほぼ百八十度倒していた体を腹筋だけで起こして、縫い終えたドレスを手に取った。
「海王様に渡してくる」
「いってらっしゃーい。俺は料理始めとくよー」
そう言って二人は別れた。

コンコン。
「海王様、ドレスが縫いあがりました」
ダルフィンの部屋のドアをノックし、用件を伝える。
「どうぞ」
すました声が部屋の中から聞こえ、その声を合図にダルスはドアを開ける。
中では、海王(ディープ・シー)ダルフィンが、お茶を飲みながら読書していた。部下と違って、こちらは優雅なものだ。
「フィンにも手伝って貰ったのですが、いかがでしょうか」
先ほどまで喧嘩していたことを思わせないほどの満面の笑みだ。海王軍は二重人格状態の者が多いらしい。
「・・・ええ、上出来ですわ。これならフィブちゃんのところへ行くときでも着て行けます」
フィブリゾは意外にもおしゃれにうるさいらしく、ダルフィンはそれと競うようにしてきれいなドレスを着ていく。と言ってもほとんどのドレスのデザインが同じなので、フィブリゾが気づいているかも怪しいところだ。
「そうですか。そういっていただければ光栄です。
 では、フィンが食事の支度を始めるそうなので、オレも手伝ってきます」
「分かりましたわ。
 ・・・そうそう、今度ゼラスにドレスを差し上げなければならなくなりましたの。サイズを書いた紙を渡しておきますので、気合を入れて作っておいてくださらない?」
どんな用事なのだろう。ダルスはそう思ったがとりあえず口には出さずに、他の質問をした。
「どんなデザインがいいのでしょうか?」
ダルフィンのドレスのように派手に作るのは慣れているが、あの獣王ゼラス=メタリオムがそんなものを着るとは思えない。ゼラスは質素でいて派手でないものを好むのだ。
「そうですわね。
 では色は赤。なるべく露出度を抑えて、飾りは最低限のものだけで。間違っても宝石類はつけないように」
意外にも具体的な答えが返ってきたので、少々拍子抜けしつつまた聞いた。
「すそは長めで?」
「ええ。短いのだとまたうるさいでしょうし」
肩をすくめて答えると、彼女は自分の机の引き出しから赤い布を取り出した。
「はい」
ニッコリ笑ってそれを差し出すと、部屋の外へ出るように指で示した。
「・・・闘牛でもしろとおっしゃるのですか?」
「そんなわけが無いでしょうっ!」
ダルスの頭に必殺チョップを叩き込んで、無理やり部屋から押し出すようにしてダルフィンは叫んだ。
「それでゼラスのドレスを作れと言っているのです!まったく物分りが悪いのですから・・・」
ぶつぶつとつぶやくダルフィンを見てため息をつき、一言だけ「失礼します」と言うと、ダルスは部屋を出て行った。
どんな風につくろうかな・・・などとドレスのことを考えつつ。

「フィンー。手伝いに来たけどー」
「手伝って!」
なぜか煙があふれる台所へ、ダルスはなるべく優しく声を投げ込んだ。しかしかなり険悪な声が、煙の向こうから聞こえてくる。
「・・・なんだよ、せっかく人(?)が手伝いに来てやったって言うのに」
「今魚焦がしちゃったの!急いで次の買いに行かなくちゃ、間に合わないんだよ!」
なるほど、確かに機嫌が悪くなるのも分かる。しかし何より気になるのが、海王が魚食っちゃ共食いになるのでは、と言うことだ。
まあそんなことは気にしていないのだろうが。
「分かった!なんの魚だ!?」
「鯖、秋刀魚、鮭!」
日本風だ。
「分からない!なんの魚だ!?」
そもそも字が読めなかったらしい。大声で煙の向こうへ声を投げかけると、
「この馬鹿!「さば」「さんま」「さけ」だよ!」
「分かった!買って来る!」
空間移動して物質世界面(マテリアル・サイド)に飛んだダルスのいた場所を煙の向こう側から見てフィンは、
「まさかあそこまで馬鹿だったとは・・・あきれちゃうね」
かわいい顔して、意外に毒舌なフィンだった。

その頃。
「ゼラスも・・・S様が『久しぶりにパーティでもしよう』って言うからわたくしのドレスを貸そうと言いましたのに・・・まったく、何が『お前のドレスはサイズが合わん』ですか。貴女が大柄なのが悪いんでしょう・・・」
いまだにダルフィンはぶつぶつ言っていた。
ちょうどダルスが帰ってきたらしく、ドアが開いて閉まる音がした。
「あら・・・どこへ行っていたのでしょうね。まあわたくしには関係ありませんが」
ふと視線を部屋の隅にやると、そこにはランディ君(分かる人だけ分かれ)と言う名のゴキブリが。
「・・・☆◇▼♪●※■◎!?」
声にならない悲鳴。それを聞きつけたのは――

「はっ!あれは海王様の悲鳴!行くぞフィン!」
「分かってるよダルス!」
当然、部下であるこの二人だった。
海王ダルフィンのゴキブリ嫌いは、相当なものだった。
姿を見れば悲鳴を上げる。かさかさと言う音を聞いただけで気絶しそうになる。悲鳴はきいきいという金切り声で、その名を呼んだものには天誅を下すと言う・・・
そんなダルフィンが今、どんな状況に陥っているか。それを考えただけで、ダルスとフィンは心配で胸が張り裂けそうになるのだ。
そして、無駄に広い海王城の中にダルスとフィンの足音とダルフィンの悲鳴が響く。

「ふぃ・・・フィン・・・ダルス・・・」
歯の根が合わなくなるほどの震え。半ば涙目の瞳。部屋の隅にじっとうずくまり、ドアから入ってきた2人の名を呼ぶ。
「あ、やっぱりゴキブ・・・」
「その名を呼ぶな、っていつも言っているでしょう!!!」
華麗なる回し蹴り、クリティカルヒット。フィンは気絶した。
「大丈夫です、落ち着いてください海王様・・・」
必死になだめるダルスに彼女は、
「そういうのなら早く退治してくださらない!?」
と叫んだ。
「分かりました、分かりましたから落ち着いてください・・・」
こっちが震えたいよ、と思いながら、海将軍は殺虫剤を手に取る。
ランディ君にそっと近づき、一吹き。
「もう大丈夫ですよ」
「ありがとう。ところで・・・ご飯はいつなのかしら?」
あんたがそのご飯を作る奴をつぶしたんだろ、と思ったがやはり口には出さず、とりあえず笑って答えた。
「きっと、フィンの目が覚めるまでできません・・・」
「何ですって!?」
急に起こり始めたダルフィンに、半泣きになりながらダルスは言う。
「だから、フィンの料理が一番うまいんですから、フィンが倒れたとなると作りようがないので・・・」
「それならわたくしが作りますわ!」
机に手をたたきつけて、彼女は叫んだ。
「誰も作れないのなら、自分で作ればいいんですわ!軟弱なフィンに変わって、わたくしが作ります!」
ダルフィンの見えないところで、ダルスはこっそりため息をついた。
(貴女が倒したんです、フィンを・・・それに我が儘もいいところですよ、そんなの・・・)
しかしやはり言う勇気はなく、結局食事はダルフィンの手製のものとなるのだった・・・
ダルスは誰にも見えないように十字を切った。
同僚の冥福と、自分の無事を祈って――

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

海王軍です。ダルフィンです。その部下二人です。
人数が少ないので比較的大人しめ・・・かと思いきや、ダルフィンが騒いでいてそう変わりませんでした。
つぎは多分五人の腹心のティータイムの話に・・・

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17205短編小説でGO!5リラーイド=ヴァイス 2005/9/1 17:12:55
記事番号17151へのコメント

お久しぶりです。リラーイド=ヴァイスです。
たまにはシリアスでも書いてみようかと思い立ち、早速。
お茶会の話は延期です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『硝子の心』

人の心は、硝子のようにもろい。
たとえ心の外側をダイヤモンドで守っても、辛い言葉や出来事はそれを越えて、心を貫いてくる。
辛い言葉は・・・ダイヤモンドよりも、硬い。

『道具』。
シェーラにとって、それは辛い言葉。
その言葉を言われてから。
生きがいとしていた仕事を休み。
同じ軍の仲間に、ひどく当たり。
ほかのものを傷つけて。
自分をも傷つけて。
すべてを拒絶して。
もろい硝子の心は・・・ぱりん、と砕けた。
シェーラの心は壊れた。
すべては『道具』という言葉のせい?
すべてはそれを言った『主』のせい?

部屋に閉じこもり。
食事もせず。
何もせず。
ただ、涙が涸れるほど泣く。
それだけしかやらない日々。
それだけしかできない日々。

硝子の心は、いともたやすく砕ける。
砕いたのは何か。
砕いたのは誰か。
本人か。
主か。
主が言った言葉か。
それはきっと、誰も知らない。
それはきっと、誰も知れない。

硝子の心は、とてももろい。
ダイヤモンドではなく、石を投げ入れても・・・すぐ砕けてしまう。
砕けたら、また新しい硝子を作るのが一番よい。
・・・それができるのなら。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ということで、シェーラ主役の『硝子の心』でした。
前のに比べると短いですが、短編というのは本来こういうものなのだと思ってみたり。
またシリアスでも書こうかな、などと思いながら、消えようかと。

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17229短編小説でGO!6 〜時間よ、急げ〜リラーイド=ヴァイス 2005/9/11 17:28:34
記事番号17151へのコメント

今回も短めでシリアスです。
読んでくださったら嬉しいかなー、と。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

時間よ、急げ

時間よ、急げ

急げ、急げ

早く行かなければならないのに

危ないというのに、皆が


あたしのお父様
あたしのお兄ちゃん
あたしのお姉ちゃん
あたしの子供
あたしの叔父
あたしの叔母
あたしの従姉弟たち
あたしの甥
あたしの姪
あたしの・・・あたしの、仲間たち!
皆が
皆が
危ないというのに!

戦争なんて、キライよ


引き金を引いたのは、あたしを好きだと言ってくれた人
お爺様を起こしたのも、あたしを好きだといってくれた人
でも

戦争なんて、キライよ


負の感情は好きだわ
それを貰うチャンスの戦争はキライよ
矛盾しているとは思うわ
でも、キライよ

時間よ、急げ

皆を助けるのよ

戦争なんて、早く終わって


・・・時間よ、急げ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

シェーラ独白です。もう毎回こんな感じですね。
シリアス=シェーラか覇王軍、もしくは冥王。
神魔戦争か降魔戦争の途中あたりを想像してくだされば嬉しかったり。
それと、今回からサブタイトルをつけてみようかと思いましたのでつけてみました。次はあるんでしょうか、サブタイトル以前に投稿することが。