◆−remembrance−青月かなた (2005/9/24 13:12:30) No.17257


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17257remembrance青月かなた 2005/9/24 13:12:30


 投稿小説では忘れ去れているに違いないとか思うくらいお久しぶりの青月です。今回も性懲りもなくルクミリです。しかも雰囲気が微妙な感じです。暗いですし。とりあえず糖度は高いので、それでもいいと言うチャレンジャーな方はどうぞ。少しでもお楽しみいただけたなら幸いです。


  remembrance

 ―――もしも、誰かのために死ねるさえというのなら、それは、ただ。
 その存在のいない世界に耐え切れないだけ。
 

 例えば、ほんのちょとした変化でも、嬉しい。

「ミリーナ」
「………なにか用?」
 答える顔は無表情。
 それでも、答えてくれない頃だってあったのだから、これでも進歩なのだ。
「別に用はねぇけどよ、こう、二人っきりなんだし話くらいしたっていいと思わねぇか?」
「思わないわ」
「つれねぇな」

「相手によりますよ?」
「な…じゃあミリーナが愛想よくする相手もいるのか 」
 少し大袈裟とも言える動作で問う。
「さぁ? あなたでないことだけはたしかです」
「ミっ、ミリーナぁ! まさか…! 浮気とか?」
「情けない声出さないで。あなたと私は付き合っているわけでないのだから、浮気もなにもないでしょう。
 ともかく日暮れまでにこの森をでましょうね」
「誰かいるのかよ!?」
 必死の問いに答える声はなくて、ただスタスタと歩くつれない背中を見ていた。
 けれどたしかに傍に彼女のいた日々。


 瞼裏に浮かんだ光景を、振り払うように首を振った。
 決して手の届かない場所に、彼女は逝った。
 少しだけの微笑と、言葉だけを残して。
 そんな不器用な優しさが愛しいのだけど……
 心に広がる闇は消えない。
 ここにいる俺に寄り添うのは、彼女ではなく赤い闇。
 
 ただあいつがいないだけで、世界はこんなにも色あせて。
 思い出だけが鮮やかで、痛い。

 …だから、これは、最後の賭け。
 どっちに転んでも俺は世界と決別する。

「…おせぇな…」
 待ちくたびれるぜ? 
 時間は意味もねぇくせに無駄にあるんだけどな…

 賭けよう。すべての『運命』とやらを。
 栗色の魔道士と、その保護者。
 そいつらに賭けよう。


あとがき
 短い上に暗い、ルーク一人称。十五巻でガウリナを待っている感じのイメージです。
 こんなのかいててもルクミリは変わらず好きです。
 でもこのルークは偽者くさいです。口調一つ取ってみてもニセくさいです。
 やはり日々精進だな、と思うしだいです。
 ここまで読んでくださったあなたに感謝しつつ幕をおろそうと思います。