◆−五大魔族と五人の部下達in降魔戦争−紫堂 遙陽 (2006/2/21 14:21:53) No.17520 ┣第三十三夜:糖分の重み−紫堂 遙陽 (2006/2/21 14:23:32) No.17521 ┃┗御久し振りです−GURE-TO MASA (2006/2/21 15:02:08) No.17522 ┃ ┗御久し振りです。−紫堂 遙陽 (2006/2/21 18:53:47) No.17523 ┃ ┗Re:御久し振りです。−GURE-TO MASA (2006/2/21 19:03:01) No.17524 ┃ ┗何度もすみません(汗)−紫堂 遙陽 (2006/2/21 19:22:17) No.17525 ┃ ┗大学受験は−GURE-TO MASA (2006/2/21 20:18:12) No.17526 ┃ ┗そうですね−紫堂 遙陽 (2006/2/21 20:55:30) No.17527 ┣第三十四夜:決定事項−紫堂 遙陽 (2006/2/21 21:50:55) No.17528 ┃┗Re:第三十四夜:決定事項−GURE-TO MASA (2006/2/21 21:58:01) No.17529 ┃ ┗早ッ!−紫堂 遙陽 (2006/2/21 22:08:58) No.17530 ┗第三十五夜:囮人−紫堂 遙陽 (2006/2/25 11:46:27) No.17540
17520 | 五大魔族と五人の部下達in降魔戦争 | 紫堂 遙陽 URL | 2006/2/21 14:21:53 |
そんな訳で(どういう訳だ)行って見ましょう。 ここの文章捻れなくてすみません。 |
17521 | 第三十三夜:糖分の重み | 紫堂 遙陽 URL | 2006/2/21 14:23:32 |
記事番号17520へのコメント 「フィブリゾ」 「え?」 いきなり背後から手が伸び、ぽん、とフィブリゾの肩を叩く。 振り返るフィブリゾ。 フィアナが無表情に立っていた。 「フィアナ」 「うにょ」 フィアナはよくわからん返事をしつつ、ちゃい、と右手を挙げる。 安心したように胸を撫で下ろし、 「あーよかった。無事だったよ。 後先考えずに神術撃っちゃったから、ヘタしたら巻き込んだかなーとか思って心配してた」 「…………」 そんな心配するなら最初から撃たないでほしい。 「…いいの?戦闘中でしょ?」 ちらりと背後を見やるフィブリゾ。 未だ炎やら何やらが空間を包んでいる。 フィアナは軽く笑い、 「ダミーの気配作って漂わせてる。リンディア鈍いし、しばらく気付かんだろう」 「…………」 えらい言われ様である。 「それでさ。フィブリゾ。どうする?」 「どうするって?」 「こっちの世界あんまり顔出してないし、情勢もやっぱりイマイチ完全把握できてないからな。 こういう場合どうしていいのかよくわからん。お前はどうしたいんだ?」 「…どうって…ねぇ…」 考えるフィブリゾ。 追い返してもまたどうせ襲ってくる。 捕えても…あの性格だ。何かを引き出すのは難しいかもしれない。 だけど… 「殺しちゃえーって言いたい所だけど、なんかまた厄介なことになりそうな気がするんだよね」 「奇遇だな。私もそう思う」 フィアナは言うと、溜息を付いた。 ごそごそと胸元(電圧で谷間がぱっくり見えている)を探り…何やら板状のものを取り出し、口に運ぶ。 甘い香りが広がった。 …チョコレートらしい。 もぐもぐ咀嚼して、フィブリゾの視線に気付くと、 「あげないよ」 「いらないよ」 世界広しと言えど、こんな状況でチョコレートを食うのはフィアナくらいであろう。 フィブリゾのジト目に気付いたのか、フィアナはやけに真面目な顔で、指をぴこぴこ振る。 「脳は成長する時と働く時に糖分を使うんだ。 いい考えが浮かぶかもしれないぞ」 「あーはいはいそーですかー」 適当に流すフィブリゾ。 フィアナは気にした様子も無く、黙々とチョコレートを食し続けている。 ちらりとフィブリゾを見ると、 「…………」 突然、ぱきん、とそれを割り。 「気が変わった。はいあーん」 「んぐぐっ!」 いきなりフィブリゾの口に押し込んだ。 むわっと、独特の甘い香りが口に広がる。 フィブリゾは取り敢えずそれを口の奥へと追いやり飲み込んで、 「何するかっ!」 「チョコレート食わせた」 「解ってるよっ!何を考えてそんなことするんだって聞いてるんだよ!」 「なんかフィブリゾ難しそうな顔してるし。 相対的に一人チョコ食ってる私がバカみたいに見えるかなと思ってお前にも食わせてみた」 「絶対的にバカに見えるよっ!」 フィアナは不意に困った様な顔をして、 「フィブリゾ、そんな大声を出したらリンディアに見付かるぞ」 「…………」 最高だ、この女。 「うーん、そうだなー」 ふるふる震えているフィブリゾを尻目に、うーんと考え込むフィアナ。 「…あ、そうだ」 ぽん、と手を打つ。 「裏切らせよう」 「えっ!?」 言うが早いか、ぽん、と手を打ち合わせるフィアナ。 ふっ、と視界を遮っていた炎が消え、お互いの姿がはっきり視認できる様になる。 きょろきょろと辺りを見渡していたリンディアは…フィアナを見つけ、ぴ、と指差した。 「フィアナ、みっけ」 「みっかった」 フィアナは遊んでいる様な口調で言うと、 「リンディア、アクロンのこれからの計画とか聞いてる?」 「略すんなよ可哀想ね。緑の胃薬みたいじゃない」 「これ読んでる奴の何人がサ○ロンなんて知ってるのかは謎だが… 答えろよ」 「うん、知ってるわよ」 「教えてくれない?」 「そんなこと言われて教える奴いないわよ」 「チョコあげるから」 「取り敢えず、この大陸でライアナの欠片をいくつか集めて、『パンドラ』の可動力をもう少し上げるの。 それから貴女へのアプローチとドゥルドゥラ大陸への侵攻を同時に進める予定よ」 「ありがとう」 「…………」 口軽っ。 フィブリゾは、フィアナからチョコをもらって幸せそうな顔をしているリンディアをまじまじと見詰める。 …そうか、こいつはそういう風に扱うのか。 ひとつ賢くなったフィブリゾである。 「ついでにさ、リンディア。 私へのアプローチって、やっぱり私、殺されるの?」 「ついででそんなこと訊かないでよ」 「クッキーあげるから」 「うーん、どうかしらねー…」 「…………」 懐からクッキーの入った包みを取り出すフィアナ。 それを受け取ってから首を捻るリンディア。 遠い目で何やら考え込むフィブリゾ。 リンディアは話を続ける。 「アークロンドは『お姉サンにアタックする』って言ってただけだし。 殺さなくても回収できるんかしらねー…どうだろう」 「今までは?人間とかの回収する時はどうしてたんだ?」 「…………」 「干しブドウ食べるか?」 「人間とかはあっさり殺してたわよ。 殺して、魂抜き取って、後でちまちま濾過して回収、みたいな感じかしら」 「…………」 フィアナ、お菓子持ちすぎ。 リンディア、甘いもの好きすぎ。 神族は全体的に甘党なのかもしれない。 「何にしても、そこらへんは微妙なのよね。 体から魂取り出して弄くる…って、できない訳でも無いだろうけど。やっぱ、耐久力の問題なんじゃないの。 人間の体って、魂離れたらすぐ痛むじゃない。魂もちょっと弄っただけで壊れるし。手早く処理しなきゃなのよね… あんたはもう少し持つだろうから、もしかしたら殺されなくて済むかも」 「微妙だなー…」 もくもく干しブドウを摘むフィアナ。 リンディアも分けてもらった干しブドウをもくもくと摘んでいる。 「…………」 なんなの、こいつら。 フィブリゾは今日何度目かになる疑問に頭を悩ませていた。 「そこらへん、フィアナとしてはどうなのよ」 「え?」 「やっぱりさ、妹愛しさとかはあるんでしょ?」 「まぁ、それなりに」 「アークロンドのやってることが微妙だっつーのもあるんでしょ?」 「まぁ、それなりに」 「天秤に掛けたら、どっち重い訳?」 フィアナは黙った。 答えない。 「どっち、取るの?」 フィアナは答えない。 答えない――― 言い訳あんど言い逃れ。 遊びました。短いです。 何事にもこだわりの無いリンディアは、どう付き合うにしても怖い様です。 因みにフィアナはまだケーキとかいちごとかを隠し持っているはず。 受験も終わったことだし、これからは少しずつ投稿頻度増やしていけたらいいなーと。 どんな形にしろ、始めた話を終わらせるのは作者の責任ですから。 それでは、また次回。 幕。 |
17522 | 御久し振りです | GURE-TO MASA | 2006/2/21 15:02:08 |
記事番号17521へのコメント 受験終了、おめでとうございます。 自分も大学の定期試験とかバイトで忙しい毎日を送っております。 今後の展開、楽しみにしております。 |
17523 | 御久し振りです。 | 紫堂 遙陽 URL | 2006/2/21 18:53:47 |
記事番号17522へのコメント >受験終了、おめでとうございます。 >自分も大学の定期試験とかバイトで忙しい毎日を送っております。 >今後の展開、楽しみにしております。 ありがとうございます。 そちらもなかなか忙しい様ですね。 楽しみにしていただけたら幸せです。 しょうもない展開の話ではありますけれど。 |
17524 | Re:御久し振りです。 | GURE-TO MASA | 2006/2/21 19:03:01 |
記事番号17523へのコメント いえいえ、自分も始まる前から楽しみにしていたので。 では、受験がいい結果であるように祈っております。 |
17525 | 何度もすみません(汗) | 紫堂 遙陽 URL | 2006/2/21 19:22:17 |
記事番号17524へのコメント >いえいえ、自分も始まる前から楽しみにしていたので。 >では、受験がいい結果であるように祈っております。 ありがとうございます。 結果、いくつか届いてはおりますが、まだ何処にするかは決めておりません。 なんにしろ、後悔の無い様にはしたいと考えてます。 |
17526 | 大学受験は | GURE-TO MASA | 2006/2/21 20:18:12 |
記事番号17525へのコメント 真剣に考えませんとね。 将来にかかわる事ですから。 では。 |
17527 | そうですね | 紫堂 遙陽 URL | 2006/2/21 20:55:30 |
記事番号17526へのコメント >真剣に考えませんとね。 >将来にかかわる事ですから。 >では。 そうですね。 …なんかこのやりとりって、ここでやる必要あるんだろうか(汗) 自分でやっときながら少し切ない気分になりました。 でも、励ましてくださってありがとうございます。 嬉しいです。 |
17528 | 第三十四夜:決定事項 | 紫堂 遙陽 URL | 2006/2/21 21:50:55 |
記事番号17520へのコメント フィアナは黙って。 そして、笑った。 心底、楽しそうに―― 犯しそうな笑顔を浮かべ、可笑しそうに笑った。 「底意地悪いな、相変わらず」 「私のアイデンティティだもんね」 「そんなアイデンティティ棄ててしまえ」 何故か自慢げに、Vサインとかしてみせるリンディアに、フィアナは呆れた様に笑いながら言い…そして、溜息を付いた。 そして、にやっと嫌らしい感じに笑んでみせる。 『ほくそ笑む』――そんな表現が、きっとぴったりだ。 笑っているのに――楽しそうなのに、すごく凶悪っぽい笑顔。 なまじ美人だけに、そういう表情がとても似合う。 そしてもう一度、全ての感情を失ったかの様な真顔で、 「どうでもいい」 ぽつりと呟いた。 今度はリンディアが黙る。 予想外だったかの様な表情。 予想外だったのだろう。 輪の外に追いやられながら聞いていたフィブリゾにも、フィアナのその答は予想外だった。 フィアナなら… いや、この予想は全く根拠の無いものだから、フィアナにとっては恐らく迷惑この上ない話かもしれない。 だけど――フィアナなら、しっかりとした答を出すと、思っていた。 リンディアはしばらく黙って、もう一度笑う。 「無難な回答ねぇ」 「無難が一番だろ、世の中」 「そうかもしれないわね」 「無難無難ですり抜けて行けたら一番いいんじゃないか? まぁ、相当つまんない人生歩む事にはなりそうだけどな」 フィアナは、ははんと笑う。 無難な生など望むべくも無かった彼女。 有難でつまらない生を歩んだ彼女。 しかし、難易度高くてつまらない生命って、繋ぐ価値あるんだろうか、実際。 「まぁそれはいいとして…。 実際本当に心の底から、かなりのレベルでどうでもいいんだよ。どうでもいいこと世界最強」 「世界一どうでもいいってこと?」 「世界は一つじゃないから世界一っていうのはどの世界で一番なのかよく解らないけれど、まぁそんな部類。 …ライアナのこともアークロンドのことも、私の中ではとっくに終わったことだったからな」 「終わったこと、ね… ま、そうよね。 あんた、最後はほとんど神界と縁切る様な感じだった訳だし?終わったっていうか、あんたが望んで終わらせたのよね」 「うん」 フィアナは少し言葉を選んで、 「…つか…アークロンドの計画聞かされた時も、悲しみとか怒りとか、そんなより驚きが先に来たかな。 え、まだやってんの、っていうか」 「その辺ドライよね、あんた」 「ドライなのかな。クールなのかな」 「ドライ&クール。ドライヤーの設定みたいね」 「髪乾かせるかな」 「無理でしょ」 しょうも無いことを言い合い、軽く笑う。 フィアナは笑ってから言葉を続ける。 「でもまぁ、事実だよ。 さっき言ったみたいに、ライアナに逢ってみたいとか…アークロンドのやってることが微妙だとかさ。そういうことは思う。 思ったけど…その前に…最初の感想はやっぱ、『えええ?』だよ。 結局のところ、詰まる所は私、どうでもいいんだよな、そんなこと。 ライアナが生き返るなら生き返るのが運命、生き返らないなら生き返らないのが運命。 それでアークロンドがどうにかなろうとなるまいと、運命だよなーっていうか」 そこでフィアナは一旦言葉を切った。 「運命は、そこまで甘く無いからな」 既に決められた道筋。 変更不可能な何か。 既にライアナの復活が『運命』ならば――それは、例え魔族たちがアークロンドを邪魔した所で、それを妨げることは不可能だ。 アークロンドがその努力をしなかった所で、別の誰かがいつか必ずそれを成す。 回り道はできても――辿り付く結末は、同じ。 因は違えど、果は同じ。 「…つまり?」 「…つまり」 フィアナは笑う。 とびきりの笑顔。 魅惑的で、魅力的で―― 挑発的。 「リンディア」 「ん?」 「お前も、神だと言うのなら」 フィアナは笑う。 目に、悪戯っぽい輝きを湛えて。 「運命の外を、見てみたくは無いか?」 二時間後。 「もしもし、ゼラス?」 街中。 何処の町にでもある様な住宅街。 その中の一軒…恐らく新築の家の前。 三段ほどの段差に、二人は腰を下ろしていた。 この家この段差を選んだ意味などは無い。 この家を格別気に入った訳でも無いし、この家が格別素晴らしかったという訳でも無い。 理由の無い選択。 だけれど――きっと、この場所を選択することは、運命で決まっていた。 運命というのは、そういうものなのだ。 フィブリゾは一番下の段。 フィアナは一番上の段で座っている。 フィアナは、精神会話で仲間と連絡を取る友人の後頭部を特に意味も無く見詰めながら、ふああ、と欠伸した。 「うん。僕だよ。 …そう。うん。 悪いんだけど、もう一度ゼロスを貸してほしいんだ。 ゼロスは物じゃない?解ってるよ、解ってるさ。 …うん。別にそういう訳じゃない。別に僕の手駒に加えたいとかじゃなくて… …うん。だからさ、この後リノアンとかノーストも…うん、ありがとう」 「しかしお前もひねくれ者だな」 フィアナはフィブリゾが通話を一旦終えたのを確認して声を掛ける。 「そりゃ、“イヴ”だのアークロンドだのとの接触度合い多い奴の方が条件には合うけどさ。 自分の部下の方が、扱いやすくないか?」 「自分の部下だから扱いにくいんだよ。 ある程度思考のパターンが偏るからね…君、部下持ったこと無いでしょ」 「部下はいたけどさ。口うるさい小姑みたいなんが。おやつは三時だけに 当然お前らみたいに自分の体の一部変化させたーみたいな訳にはいかないさ。 …ま、それはともかく…気心知れてるからやりやすいことと、気心知れてるからやりにくいことって、確かにあるよな」 「でしょ? …やほ、ダルフィン?」 「…………」 続いて連絡を取り始めるフィブリゾ。 フィアナは空を見た。 空を見るのは好きだ。 何もかもを、忘れられ… 「…………」 「…ふー…ダルフは話しやすくて好きだよ… って、フィアナ、何上向いて硬直してんの?」 「…………フィブリゾ」 「何?」 「首の筋違えたから助けてくれ」 「一生やってろ」 言い訳あんど言い逃れ なんか最近伏線編ばっかりですねー… 実は作者がイマイチこの物語の勘取り戻せていません。 もうしばらくしたらテンポ良くなると想いますんで、今しばらくお待ちを。 そういう訳で、今回は余りあとがきにも力入れられてません。ふよふよ。(浮遊) 幕。 |
17529 | Re:第三十四夜:決定事項 | GURE-TO MASA | 2006/2/21 21:58:01 |
記事番号17528へのコメント >言い訳あんど言い逃れ > >なんか最近伏線編ばっかりですねー… >実は作者がイマイチこの物語の勘取り戻せていません。 仕方ありませんよ、受験でSSから離されていれば。 実際、自分もそうでしたし。 >もうしばらくしたらテンポ良くなると想いますんで、今しばらくお待ちを。 >そういう訳で、今回は余りあとがきにも力入れられてません。ふよふよ。(浮遊) > そうですか、頑張って下さい。 今、チャットで居ますので、よかったらどうぞ。 |
17530 | 早ッ! | 紫堂 遙陽 URL | 2006/2/21 22:08:58 |
記事番号17529へのコメント 雷光の如き素早さのレス、ありがとうございます(汗) >>言い訳あんど言い逃れ >> >>なんか最近伏線編ばっかりですねー… >>実は作者がイマイチこの物語の勘取り戻せていません。 >仕方ありませんよ、受験でSSから離されていれば。 >実際、自分もそうでしたし。 多分、もうすぐ戻ってきます。 それまでお待ちくださいv >>もうしばらくしたらテンポ良くなると想いますんで、今しばらくお待ちを。 >>そういう訳で、今回は余りあとがきにも力入れられてません。ふよふよ。(浮遊) >> >そうですか、頑張って下さい。 >今、チャットで居ますので、よかったらどうぞ。 頑張ります。 ううー、現在別所のチャットにいるのですー(汗) 余裕があれば行くかもです。 |
17540 | 第三十五夜:囮人 | 紫堂 遙陽 URL | 2006/2/25 11:46:27 |
記事番号17520へのコメント ――先の見えた物語に、終わりはありません。 ――ただただ、失い続けるばかりです。 「しかし、相変わらず突飛なことを考える御方ですね」 一見穏和な笑みを浮かべた好青年――獣神官もといゼロスは、ちゅるるる、とジュースをストローで吸い上げながら溜息を付いた。 因みに格好はいつもの神官服では無く、ごく一般的な布の服である。 何故かというとこの大陸、チェリンカは、ほとんど神殿とかそういう類が存在しないのだそうだ。 全く無いという訳でも無く、地方都市にいくつか点在しているのだが…それらはほとんど、王家と対立し、市民からは邪教集団の如く敵視されている。 一同が現在滞在する国…その王家の政策である…『王権神授説』というか、神権政治が根付いた土地だからこそであろう。 とは言え調べによると先代の王の時まではそこまで神権政治に傾いていなかったらしい。 現在の女王が国を継ぎ、同時にある将軍が軍事全権を握り…その時から、奉神戦争という名目で内外に向かって争いを仕掛ける様になったそうだ。 チェリンカは複数の国家がある大陸だが、周りの国も特に神に対する熱烈な信仰心は無かったらしく、『あるというだけで戦争を仕掛けられるよりは』と、各地の神殿を破壊することにしたという。 そんなお土地柄なので、ゼロスもいつもの様に『少し怪しげなプリースト』はできない。 そんな土地で神官の格好なんぞしようものなら、速攻王家の兵士に通報されてしまうからである。 そういう訳で、ゼロスは普通の『そこらへんの青年』風。 そこらへんの青年風では例の髪型が微妙に浮くというのは自覚するところらしく、白い帽子を被ってごまかしていた。 他の髪型に変えようとかいう気は無いらしい。 「この場合、突飛なことを考えたのはフィアナらしいけどね」 二十代前半程…長い髪は紫か銀かよく解らない美女…海王神官リノアンが、壺の中身が砂糖か塩か考えながらゼロスに答える。 彼女の格好はいつもとほぼ同じ。ただ、錫杖は持てないので手ぶら…かと思いきや、ちゃんと鞄を持ってきている。 品のある、しかし要所要所に散りばめられた宝石はかなり質のいいものであることを窺わせるハンドバッグだ。 何が入っているかは不明だが、振るとことこと音がする。取り敢えずからっぽでは無いらしい。 「あ、そこのおネーさん、お水を一杯… ああ、なんと美しい…白魚の様な手…」 「透明でぴちぴち水ハネしてんのね」 リノアンは、会話に加わらずにウェイトレスをナンパしている残り約一名に冷たいツッコミを入れる。 その言葉を聴いた途端、さーっと去っていってしまうウェイトレス。 約一名は恨めしげな視線でリノアンを見た。 黒い長髪を頭の後ろで纏めた美形青年、覇王将軍ノースト。 彼は普段から戦士風なのでいつも通り。簡素な胸当てと、背に負った長剣だけが特徴的で、後は何処にでもある麻の服である。 「…リノアン…何の権利があって私の邪魔を…」 「知り合いとしての義務よ」 リノアンはジト目で言うと、壺の中から一つまみ白い粉を取り出して舐め、顔を顰めた。 塩だったらしい。 ゼロス・リノアン・ノースト。 イグナス探訪で任務を終えた筈の三人は、再びチェリンカの地へと呼び出されていた。 勿論、フィアナとの再会やパンドラの紛失(ということになるらしい)については、聞いてはいるものの説明されていない。 いいから来い、それだけである。 上司に振り回されるのはいつものことだが、それが直属の上司では無い為、少々おもしろくない三人様であった。 リノアンの場合は直属の上司であっても不平たらたらだったかもしれないが。 そんな訳で…現在三人は、相手…フィブリゾに指定された喫茶店に来ていた。 …いや、何故喫茶?という説もあるのだが…フィブリゾの心の内など読めないし、読んでも仕方が無い。 フィアナの話では無いが、脚の百本無い奴がムカデの歩き方を知ってもどうしようもないのである。 「…それにしても、いつ来るのかしらねぇ…」 時計を窺うリノアン。 既に正午を過ぎている。 別に時間を指定された訳では無いから、遅いと言って相手を責めることはできない。 しかし、一同がここに会してから、既に三時間程が経過していた。 間を持たせる為時々リノアンが甘味を注文などしているが、流石に店員その他の視線が痛い。 三人がそれなりに普通に見える格好をしていなければ、速攻摘み出されているところである。 「…んー… あ、りんごのクレープ御願いします」 「畏まりました」 頭を下げ、厨房へ下がっていくウェイトレス。 因みにリノアンは先程までに既にチョコクレープ・バナナクレープを二枚ずつ、フルーツパフェを三杯、抹茶ミルクを二杯口にしている。 魔族だからいいものの、普通の人間なら腹を下している所であろう。 「全く…」 リノアンが呟いた途端、一同の背後の席で、おっとりとした上品な声が聞こえた。 品のある柔らかな声。 しかしその内容は、 「ラズベリーパイをひとつ、…この抹茶ミルク、ジョッキで三杯程。クリームいっぱい入れてください。 あと、このムーン・ゼリー季節のフルーツ添え、えーと…二皿程。 いちごショート。もう切ってくれなくていいです。ホールで二つ」 「…当店はお持ち帰りのメニューは御用意しておりませんが」 「全部ここで食べます」 「…は、はい…畏まりました…」 席と席の間には仕切りがある為よく見えないが、応対するウェイトレスも少々慌て気味。 しかし…リノアンには、心当たりがあった。 こういうことをする奴というのは、彼女の知る限り一人しかいない。 リノアンは席を立ち、横から覗く。 「…フィアナ」 「…ああ、リノアン」 そこには、ぱっと見上品にココアを飲むフィアナがいた。 …ぱっと見上品に。 ココアのカップがジョッキで無くて、底に解け残りの砂糖が澱となっているのを見ないふりをすれば、完全に上品に見えるのだが。 「なんであんたがいるのよ。冥王様は?」 「ちょっと『ヘル』の具合がおかしいらしくてね。戻っちゃった。 だから代わりに私が案内人」 「案内人がなんでそんな甘味をぱくぱく食べてる訳」 「お前らと話始めたら食べられなくなるだろ。この店結構評判いいんだぞ。 その前に食べとかなきゃと思っ―――」 「フィアナさんv」 ノーストがフローリングの床を滑る様にしてフィアナの傍に跪く。 その手を取って甲に小さくキスを落とし、 「ああ、再び貴女とまみえる日が来るとは…まるで夢の中の様な心地です」 「夢だったら良かったんだけどねぇ」 口元引き攣った笑みと共に手を払うフィアナ。 リノアンは思った。 本当は、ノーストと会うのを先延ばしにしたかったのでは無いか、と。 「さて、本題だけど」 席を移動して。 フィアナは、運ばれてきたケーキ類を口に運びながら話を始めた。 緊張感のカケラも無い姿だが、この際無視したい。 「ぶっちゃけた話、あんたらに頼みたいのはアレ。オトリ」 「…ストレートですね」 ゼロスが軽く笑う。 「誤魔化すのと隠すの、よくやるけど余り好きじゃないんだ。 後で話が違うとか言って拗ねられても困るしな。だから先に言っておく」 「フィアナさん、私は貴女のそんな素直な所が――」 「具体的には」 ノーストを視界に入れない様にして話を続けるフィアナ。 既に目の焦点が合っていない。 「まずはアークロンドじゃなくて、『パンドラ』でもなくて… 『ライアナ』のカケラを誘き出して欲しい」 「彼女の…ですか」 「そう。ライアナの欠片を持った人間を探して欲しい。魔王の欠片よりは大分見つけやすいと思う。 こういう精神的な仕事なら、お前らの方に間違いなく分があるしな。そんで、見付けたら徹底的に尾行プラス保護を頼む。 多分その内アークロンドも来る。『ライアナ』の気配と魔族の気配が同時にしたら、それは当然だ。 アークロンドか『パンドラ』の気配を確認したら、即フィブリゾと私、もしくは各上司に連絡。 私来るまでは取り敢えずその人間を守れ。守りきれなかったら殺せ。取り敢えずアークロンドに殺させるな」 「…すげぇ内容ね」 「…取り敢えず、アークロンドと話がしたいんだ。 それと、『ライアナ』の欠片を回収させない為の問題だからな…それで大体魂は散るから回収不可能になる。 もし『ライアナの欠片』が選別できた場合は、私の所に持ってきてほしい」 「どうすんの?」 「直接混沌に沈める。自然に昇って行くの待ってると、途中で誰かに捕まるかもしれんし」 「ふーん。…で、それに私たちを選んだ理由は?」 「アークロンドとか『パンドラ』とか、そういう系の気配には、多分お前らが一番敏感だろう」 「…なるほど?」 あの大陸での数週間。 研ぎ澄まされた感覚。 「鈍っていなければ…の話だけどな」 「それは平気ですよ」 ゼロスが言う。 相変わらず飄々とした調子だ。 「それで、僕らがそれを引き受けるメリットは?」 「やっぱそう来たか」 「獣王様からは『冥王様の依頼』と言われていますからね。貴女の依頼じゃない」 「代理人だから似た様なもんだと思うけどな…」 フィアナは苦笑し、 「何かあったら呼び出せば飛んできてやる、くらいしか」 「ふむ…まぁ、保留にしておきましょう」 「そうしてくれるとありがたい… やってくれるかな?」 「フィアナさん、貴女の頼みとあらば…」 「…別にいいけどね」 「他に選択肢は無いんでしょう」 こくりと頷く三人。 「それからは?」 リノアンが口に出した疑問。 フィアナは、こくん、と首を傾げて見せる。 髪が白い肌に掛かって、何処と無く愛らしい子供の様な仕草。 「当たって砕けろ?」 「「「おい。」」」 三人の声は、見事なまでに唱和したのだった。 言い訳あんど言い逃れ。 タイトルは『オトリビト』と読みます。 勿論『囚人』を意識した造語。 そんな訳で三人様再登場です。 ドゥルドゥラの三人組は一体いつ出てくるやら。 取り敢えず手早く済ませたいと思っているので勘弁してください(汗) それではまた次回ー。 幕。 |