◆−時の旅人外伝 かつてはあった平穏?な日々 まえがき−羅城 朱琉 (2006/5/26 08:23:45) No.17664
 ┣かつてはあった平穏?な日々 1:Bloody Knight 〜Aries〜−羅城 朱琉 (2006/5/26 08:25:14) No.17665
 ┃┗彼女らしくも、穏やかですね。−十叶 夕海 (2006/5/28 14:32:02) No.17666
 ┃ ┗これこそが、アリエスの本性(?)なんでしょう。−羅城 朱琉 (2006/5/29 08:32:20) No.17669
 ┣かつてはあった平穏?な日々 2:Shooting Wing 〜Deathtear〜−羅城 朱琉 (2006/5/29 08:20:42) No.17668
 ┃┗知り合いだったんですね、この二人。−十叶 夕海 (2006/5/30 22:29:09) No.17676
 ┃ ┗降魔戦争のときの知り合いです。−羅城 朱琉 (2006/5/31 08:31:40) No.17677
 ┣かつてはあった平穏?な日々 3:Conducting Sage 〜Libra〜−羅城 朱琉 (2006/6/2 08:19:11) No.17681
 ┃┗切なげですね。−十叶 夕海 (2006/6/4 22:40:01) No.17684
 ┃ ┗切ないけれど、優しさの形。−羅城 朱琉 (2006/6/5 08:34:28) No.17687
 ┗かつてはあった平穏?な日々 4:Wandering Teller 〜Lucill〜−羅城 朱琉 (2006/6/5 08:21:01) No.17686
  ┣涙洪水警報&暴走注意報発令(本気と書いて、マジに滝涙。)−十叶 夕海 (2006/6/5 22:17:33) No.17688
  ┃┗・・・・・・・・ありがとうございます。−羅城 朱琉 (2006/6/6 08:47:37) No.17690
  ┗Re:かつてはあった平穏?な日々 4:Wandering Teller 〜Lucill〜−神高 紅 (2006/6/5 23:27:29) No.17689
   ┗科学で証明できなくても・・・・−羅城 朱琉 (2006/6/6 09:06:35) No.17691


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17664時の旅人外伝 かつてはあった平穏?な日々 まえがき羅城 朱琉 2006/5/26 08:23:45


 こんにちは、羅城 朱琉です。

 今回から3話か4話ほど、外伝になります。アリエスが生まれ育った時代、500年前のレティディウス公国が舞台です。

 第4部と第5部の間に当たる『時の旅人外伝』と銘打ってはいますが、何分過去の話なので、本編でまともに登場しているのは、今の所アリエスひとりです。そのアリエスも、本編とは性格が結構違います。
 まあ、その分、本編を読んでいなくても、一応は、読める話にはなっていると思うんですけど・・・・。

 以上を留意の上、どうぞ!



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17665かつてはあった平穏?な日々 1:Bloody Knight 〜Aries〜羅城 朱琉 2006/5/26 08:25:14
記事番号17664へのコメント


 『氷の瞳の探求者』、『凍れる時の姫』、他いろいろ・・・・

 冷たい二つ名を数多く持つ、彼女の名前はアリエス=オルフェーゼ=ラーナ。

 でも、そんな彼女も、かつては・・・・・・・・


 今を遡ること約500年。

 不死研究者の集う場所、レティディウス公国首都、レティス・シティ。

 アリエス13歳の時のこと。

 その、恐らくは平穏な日々。


  時の旅人外伝
   かつてはあった平穏?な日々

  1:Bloody Knight 〜Aries〜

 レティス・シティも郊外となると、安全な場所はほとんど無い。毎日どこかで人が連れ去られ、他人は皆、見ない振り。不死の研究を続ける魔道士たちが一堂に会した、と言っても過言ではないこの国の、しかも首都では、それが日常茶飯事。連れ去られた人々は、皆不死研究の実験台とされているのだろう。今日もまた、そんな一日が始まる。
それは、1人の女性の悲鳴から・・・・


「いやぁっ!助けて・・・・助けて!」
「へへへ、悪いねぇ・・・・。こっちも仕事でね。」
 道を引きずられるように、1人の女性が連れて行かれている。彼女を引きずるのは、大きなバスタードソードを持ち、どう見ても魔道士には見えない、ごつい悪役顔の男。この時代にはよくいた、傭兵とは名ばかりの人攫い専門家だ。女性の悲鳴に、しかし、周りは反応しない・・・・と、いうのが、一般的なはずだった。しかし、なぜかここの界隈の人々は、哀れむような眼差しを『男に』向けていた。男は、少々それを不気味に思いつつも、手出しをしないならいいと思い、そのまま女性を引きずっていく。と、その時、男の前に小さな人影が立ちはだかった。
 年のころなら12〜3。背中に僅かにかかる髪は綺麗な銀色、大きな瞳は千変万化の淡緑色。どこにでもありそうな簡素なワンピースに、買い物籠を引っさげて、腰にはなぜか不似合いなショートソードが2本。少女の姿を見た途端、なぜか周りの人たちが、あからさまにほっとしたのが男にはわかった。
「アリエスちゃん!!」
「ジャネットさん・・・・。また、攫われかけてるの?」
 男に引きずられたまま、ジャネットというらしいその女性は喜びの声をあげ、少女・・・・アリエスは、ちょっと疲れたような声で返した。
「見ての通りよ。もぅ、いくらあたしが若く美しいからってぇ。」
「・・・・・・・・はぁ。」
 冗談めかしてしなを作るジャネット。そっぽを向いて溜息をつくアリエス。男、完全に無視である。
「っなっ・・・・!!ナメやがって、このガキがぁ!!」
「ああ、人攫いのおじさん、まだいたの?買い物の邪魔だから、ジャネットさん置いて帰ってよ。で・・・・ジャネットさん、キャベツと人参、あとラディッシュと苺下さいな。」
「はーい、まいどあり〜!」
 ちなみに、ジャネットの職業は八百屋である。男は顔を真っ赤にしてジャネットを捨て、アリエスに掴みかかった。
「ガキがぁ!!痛い目みねぇとわかんねぇか!!!?」
 近所の人の哀れむような視線にも気付かず、アリエスを掴もうとする直前・・・・・・・・男は、アリエスを見失った。
「っな?」
 アリエスは、ただ半歩ほど、横にずれただけだった。そして、ひょい、と足を引っ掛け、男を転ばせる。そのまま流れるような動作で右手でショートソードを抜き放ち、地に這い蹲る男に向けた。
「一応、選択肢としては、いち、このまま立ち去る。に、姉様の実験台になる。さん、私に切られる・・・・の3つがあるけど?」
 嫌味にしか聞こえないような言葉を、しかしアリエスは誠意を持って言っていた。ある意味、こういうのが一番たちが悪い。案の定、男はバカにされた恨みを力に変えて、突きつけられた剣を持つアリエスの右手を、砕けろとばかりに握りしめ、引き倒す。もう片手は、仕込み武器であろう小型のナイフを握っていた。
 アリエスは、小声で言った。
「選択肢そのよん、切られた上で姉様の実験台に決定。」
 その瞬間、アリエスの左手が閃いた。
 一瞬にして残る一刀を抜き放ち、右手を掴む手を切り裂く。そのまま、更に剣を一閃、両手足を切りつけ動作を奪う。そして相手の懐に飛び込み、剣の柄を使った強烈な当て身を一撃。男は意識を失いこそしなかったものの、全く身動きが取れなくなった。
「て・・・・てめぇ・・・・まさか・・・・」
「まだ喋れるんだ・・・・。じゃあ、仕上げの・・・・」
「うわっ!ま・・・・待ってくれ・・・・ここがてめぇ・・・・じゃなくて『血塗れの騎士(ブラッディ・ナイト)』様の狩場だと知っていれば・・・・」
 男が慌てて言った言葉に、アリエスは『烈閃槍(エルメキア・ランス)』の詠唱を止め、頬を膨らました。
「狩場じゃないし。第一、何その呼び名!!?」
「だ、だって・・・・ラーナとかいう魔道士を守るために、3千人からなる魔道士軍団を殲滅し、大地を血で染め上げたとか・・・・」
「尾鰭(おひれ)どころか、背鰭・胸鰭・鰓・浮袋までついてるじゃないですか!?」
 顔を赤くして怒鳴り返すアリエス。後ろで、先ほどまできゃーきゃー言っていたジャネットが、近所のおばちゃんおじちゃん達とぽそぽそ話していた。
「それって・・・・去年来た、暗黒ナントカ8人衆っていう黒フード集団?」
「いや〜、それよりも、半年前に来た、魔女王何某(なにがし)とかいうのだと思うけど?」
「いやいや、それよりも、今年の春に来た、魔道戦隊なにやらファイブとかいう、ハデな5色ローブじゃろう。あれは傑作だった。」
 それが聞こえていたせいか、アリエスの顔は真っ赤になっていた。
「と・・・・とにかく!姉様の実験室送り決定です!これまで自分が人攫いしてきた報いと思って、大人しくしてください・・・・・・の、『烈閃槍(エルメキア・ランス)』!!」
 完全に不意打ちで、光の矢が男に突き刺さる。あっさりぽてんと倒れた男を引きずって、アリエスは一言。
「で・・・・ジャネットさん、キャベツと人参とラディッシュと苺、下さい。」

 結局、何だかんだで割り引いてもらい、アリエスは男を引きずって家に帰るのだった。


     *     *     *     *     *


 
「姉様〜。ただいま帰りました〜。」
 扉を開けると、姉のリブラが出迎えてくれた。
「お帰り、アリエス。・・・・それは?」
「人攫いの・・・・ええっと・・・・名前は知らないけど、ジャネットさん攫おうとしてた人。」
「あらあら。」
 リブラはころころと笑って、壁に立てかけてあった台車に男を乗せ、『眠り(スリーピング)』をかけた後、実験室に運んでゆく。・・・・・・・・リブラもまた、不死を研究する魔道士。しかし、こうして捕まえた『誘拐者』しか実験に使用していないところが、一応の良心だとリブラは言う。だから、『誘拐者狩り』をしているアリエスは、ご近所の人にはかえって感謝されてすらいるのだ。

「ねえ、姉様・・・・私、前から聞きたかったんだけど・・・・」
 アリエスが唐突に言った。
「何?」
 リブラは、優しい微笑で先を促す。
「何で、不死の研究をしてるの?」
 リブラは、少し驚いたようだった。そして、しばらくした後に、すこし悲しそうに笑う。そして、言った。
「いつか、アリエスにもわかるときがくるわ。」



 それを理解するのは、それから500年も経ってからのことだとは、その時は知る由もなかったけれど・・・・




++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 今回が、導入編。次は、出会い編になります。
 次回、『Shooting wing 〜Deathtear〜』、お楽しみに!


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17666彼女らしくも、穏やかですね。十叶 夕海 2006/5/28 14:32:02
記事番号17665へのコメント


>
> レティス・シティも郊外となると、安全な場所はほとんど無い。毎日どこかで人が連れ去られ、他人は皆、見ない振り。不死の研究を続ける魔道士たちが一堂に会した、と言っても過言ではないこの国の、しかも首都では、それが日常茶飯事。連れ去られた人々は、皆不死研究の実験台とされているのだろう。今日もまた、そんな一日が始まる。
>それは、1人の女性の悲鳴から・・・・


久遠:いわゆる、ニューヨークのハーレム、ロンドンのイーストエンドのような訳なのね。
ユア;今は、結構治安いいですけどね。
久遠;でも、不死の研究者こそ居なかったけど、金持ちの楽しみのためとか、臓器のためとか、快楽殺人者が居るようなところだったしね.
ユア;・・・・さすがは、『血吸いの魔剣』『赤き死神』

>
>
>「いやぁっ!助けて・・・・助けて!」
>「へへへ、悪いねぇ・・・・。こっちも仕事でね。」
> 道を引きずられるように、1人の女性が連れて行かれている。彼女を引きずるのは、大きなバスタードソードを持ち、どう見ても魔道士には見えない、ごつい悪役顔の男。この時代にはよくいた、傭兵とは名ばかりの人攫い専門家だ。女性の悲鳴に、しかし、周りは反応しない・・・・と、いうのが、一般的なはずだった。しかし、なぜかここの界隈の人々は、哀れむような眼差しを『男に』向けていた。男は、少々それを不気味に思いつつも、手出しをしないならいいと思い、そのまま女性を引きずっていく。と、その時、男の前に小さな人影が立ちはだかった。

久遠;気持ちのいいくらい雑魚の小悪党登場シーンね。

> 年のころなら12〜3。背中に僅かにかかる髪は綺麗な銀色、大きな瞳は千変万化の淡緑色。どこにでもありそうな簡素なワンピースに、買い物籠を引っさげて、腰にはなぜか不似合いなショートソードが2本。少女の姿を見た途端、なぜか周りの人たちが、あからさまにほっとしたのが男にはわかった。
>「アリエスちゃん!!」
>「ジャネットさん・・・・。また、攫われかけてるの?」
> 男に引きずられたまま、ジャネットというらしいその女性は喜びの声をあげ、少女・・・・アリエスは、ちょっと疲れたような声で返した。
>「見ての通りよ。もぅ、いくらあたしが若く美しいからってぇ。」
>「・・・・・・・・はぁ。」
> 冗談めかしてしなを作るジャネット。そっぽを向いて溜息をつくアリエス。男、完全に無視である。
>「っなっ・・・・!!ナメやがって、このガキがぁ!!」
>「ああ、人攫いのおじさん、まだいたの?買い物の邪魔だから、ジャネットさん置いて帰ってよ。で・・・・ジャネットさん、キャベツと人参、あとラディッシュと苺下さいな。」
>「はーい、まいどあり〜!」
> ちなみに、ジャネットの職業は八百屋である。男は顔を真っ赤にしてジャネットを捨て、アリエスに掴みかかった。

ユア;アリエス嬢・・・というよりは、アリエスちゃんと呼んだ方がしっくり来ますね。
久遠;こういう状況で、日常会話が出来るのは、さすがだと思うわ。

>「て・・・・てめぇ・・・・まさか・・・・」
>「まだ喋れるんだ・・・・。じゃあ、仕上げの・・・・」
>「うわっ!ま・・・・待ってくれ・・・・ここがてめぇ・・・・じゃなくて『血塗れの騎士(ブラッディ・ナイト)』様の狩場だと知っていれば・・・・」
> 男が慌てて言った言葉に、アリエスは『烈閃槍(エルメキア・ランス)』の詠唱を止め、頬を膨らました。
>「狩場じゃないし。第一、何その呼び名!!?」
>「だ、だって・・・・ラーナとかいう魔道士を守るために、3千人からなる魔道士軍団を殲滅し、大地を血で染め上げたとか・・・・」
>「尾鰭(おひれ)どころか、背鰭・胸鰭・鰓・浮袋までついてるじゃないですか!?」
> 顔を赤くして怒鳴り返すアリエス。後ろで、先ほどまできゃーきゃー言っていたジャネットが、近所のおばちゃんおじちゃん達とぽそぽそ話していた。


久遠;渾名って、結構大仰よね。
   今でこそ、私も『血吸いの魔剣』って、落ち着いてるけど、最初の頃は、『ブラッディ・ウィドー(血塗れの未亡人)』って、渾名されてたもの。
ユア;宿った人格はまともな男でしたが、今では・・・・。
久遠:なに?
ユア;噂は、大きくなるものですね。(誤摩化した)


>「それって・・・・去年来た、暗黒ナントカ8人衆っていう黒フード集団?」
>「いや〜、それよりも、半年前に来た、魔女王何某(なにがし)とかいうのだと思うけど?」
>「いやいや、それよりも、今年の春に来た、魔道戦隊なにやらファイブとかいう、ハデな5色ローブじゃろう。あれは傑作だった。」

ユア;先の二つはともかく、最期の一つは、○ジレンジャー?

> リブラはころころと笑って、壁に立てかけてあった台車に男を乗せ、『眠り(スリーピング)』をかけた後、実験室に運んでゆく。・・・・・・・・リブラもまた、不死を研究する魔道士。しかし、こうして捕まえた『誘拐者』しか実験に使用していないところが、一応の良心だとリブラは言う。だから、『誘拐者狩り』をしているアリエスは、ご近所の人にはかえって感謝されてすらいるのだ。

久遠;良心ではあるけど、良心でもない。
   微妙よね。


> 今回が、導入編。次は、出会い編になります。
> 次回、『Shooting wing 〜Deathtear〜』、お楽しみに!
>
>


ユア;ディス嬢ですね。
久遠;ディスちゃんか・・・・楽しみね。
二人;それでは、次回で.

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17669これこそが、アリエスの本性(?)なんでしょう。羅城 朱琉 2006/5/29 08:32:20
記事番号17666へのコメント


朱琉:こんにちは!早速ですが、返レスです。

>
>>
>> レティス・シティも郊外となると、安全な場所はほとんど無い。毎日どこかで人が連れ去られ、他人は皆、見ない振り。不死の研究を続ける魔道士たちが一堂に会した、と言っても過言ではないこの国の、しかも首都では、それが日常茶飯事。連れ去られた人々は、皆不死研究の実験台とされているのだろう。今日もまた、そんな一日が始まる。
>>それは、1人の女性の悲鳴から・・・・
>
>
>久遠:いわゆる、ニューヨークのハーレム、ロンドンのイーストエンドのような訳なのね。
>ユア;今は、結構治安いいですけどね。
>久遠;でも、不死の研究者こそ居なかったけど、金持ちの楽しみのためとか、臓器のためとか、快楽殺人者が居るようなところだったしね.
>ユア;・・・・さすがは、『血吸いの魔剣』『赤き死神』
朱琉:イメージ的には、そんな感じですね。
アミイ:後は、ホラ・・・・九龍城とか?
朱琉:と、言うより、GBの無限城・・・・
アミイ:まあ、とにかく、そんなひたすらに物騒な場所、ってことね。

>
>>
>>
>>「いやぁっ!助けて・・・・助けて!」
>>「へへへ、悪いねぇ・・・・。こっちも仕事でね。」
>> 道を引きずられるように、1人の女性が連れて行かれている。彼女を引きずるのは、大きなバスタードソードを持ち、どう見ても魔道士には見えない、ごつい悪役顔の男。この時代にはよくいた、傭兵とは名ばかりの人攫い専門家だ。女性の悲鳴に、しかし、周りは反応しない・・・・と、いうのが、一般的なはずだった。しかし、なぜかここの界隈の人々は、哀れむような眼差しを『男に』向けていた。男は、少々それを不気味に思いつつも、手出しをしないならいいと思い、そのまま女性を引きずっていく。と、その時、男の前に小さな人影が立ちはだかった。
>
>久遠;気持ちのいいくらい雑魚の小悪党登場シーンね。
朱琉:何しろこいつ、『名もなき雑魚その1』ですから。ひたすらに小悪党です。

>
>> 年のころなら12〜3。背中に僅かにかかる髪は綺麗な銀色、大きな瞳は千変万化の淡緑色。どこにでもありそうな簡素なワンピースに、買い物籠を引っさげて、腰にはなぜか不似合いなショートソードが2本。少女の姿を見た途端、なぜか周りの人たちが、あからさまにほっとしたのが男にはわかった。
>>「アリエスちゃん!!」
>>「ジャネットさん・・・・。また、攫われかけてるの?」
>> 男に引きずられたまま、ジャネットというらしいその女性は喜びの声をあげ、少女・・・・アリエスは、ちょっと疲れたような声で返した。
>>「見ての通りよ。もぅ、いくらあたしが若く美しいからってぇ。」
>>「・・・・・・・・はぁ。」
>> 冗談めかしてしなを作るジャネット。そっぽを向いて溜息をつくアリエス。男、完全に無視である。
>>「っなっ・・・・!!ナメやがって、このガキがぁ!!」
>>「ああ、人攫いのおじさん、まだいたの?買い物の邪魔だから、ジャネットさん置いて帰ってよ。で・・・・ジャネットさん、キャベツと人参、あとラディッシュと苺下さいな。」
>>「はーい、まいどあり〜!」
>> ちなみに、ジャネットの職業は八百屋である。男は顔を真っ赤にしてジャネットを捨て、アリエスに掴みかかった。
>
>ユア;アリエス嬢・・・というよりは、アリエスちゃんと呼んだ方がしっくり来ますね。
>久遠;こういう状況で、日常会話が出来るのは、さすがだと思うわ。
アミイ:物心付いたときからこんな環境だったから、すでに感覚が麻痺してるんでしょうね。
朱琉:この時代は、こんなに可愛い(?)子でした(苦笑)

>
>>「て・・・・てめぇ・・・・まさか・・・・」
>>「まだ喋れるんだ・・・・。じゃあ、仕上げの・・・・」
>>「うわっ!ま・・・・待ってくれ・・・・ここがてめぇ・・・・じゃなくて『血塗れの騎士(ブラッディ・ナイト)』様の狩場だと知っていれば・・・・」
>> 男が慌てて言った言葉に、アリエスは『烈閃槍(エルメキア・ランス)』の詠唱を止め、頬を膨らました。
>>「狩場じゃないし。第一、何その呼び名!!?」
>>「だ、だって・・・・ラーナとかいう魔道士を守るために、3千人からなる魔道士軍団を殲滅し、大地を血で染め上げたとか・・・・」
>>「尾鰭(おひれ)どころか、背鰭・胸鰭・鰓・浮袋までついてるじゃないですか!?」
>> 顔を赤くして怒鳴り返すアリエス。後ろで、先ほどまできゃーきゃー言っていたジャネットが、近所のおばちゃんおじちゃん達とぽそぽそ話していた。
>
>
>久遠;渾名って、結構大仰よね。
>   今でこそ、私も『血吸いの魔剣』って、落ち着いてるけど、最初の頃は、『ブラッディ・ウィドー(血塗れの未亡人)』って、渾名されてたもの。
>ユア;宿った人格はまともな男でしたが、今では・・・・。
>久遠:なに?
>ユア;噂は、大きくなるものですね。(誤摩化した)
朱琉:久遠さんの二つ名が気になるところ・・・・
アミイ:その点、私は何と言われても大抵大仰じゃないから、いいわよね〜。
朱琉:・・・・まあ、本性破壊神な人に『悪魔』だの『死神』だのつけたって、違和感ないですけど・・・・

>
>
>>「それって・・・・去年来た、暗黒ナントカ8人衆っていう黒フード集団?」
>>「いや〜、それよりも、半年前に来た、魔女王何某(なにがし)とかいうのだと思うけど?」
>>「いやいや、それよりも、今年の春に来た、魔道戦隊なにやらファイブとかいう、ハデな5色ローブじゃろう。あれは傑作だった。」
>
>ユア;先の二つはともかく、最期の一つは、○ジレンジャー?
朱琉:最近、そんなのまであるんですか?日曜朝定番の5人組戦隊ものって・・・・(遠い眼)
アミイ:朱琉、その時間いつも寝てるからね。最後の一つって、完全にウケ狙いだったんでしょ?
朱琉:いえす・・・・・・・・。

>
>> リブラはころころと笑って、壁に立てかけてあった台車に男を乗せ、『眠り(スリーピング)』をかけた後、実験室に運んでゆく。・・・・・・・・リブラもまた、不死を研究する魔道士。しかし、こうして捕まえた『誘拐者』しか実験に使用していないところが、一応の良心だとリブラは言う。だから、『誘拐者狩り』をしているアリエスは、ご近所の人にはかえって感謝されてすらいるのだ。
>
>久遠;良心ではあるけど、良心でもない。
>   微妙よね。
アミイ:良心・・・・なのかしらね?少なくとも、無辜の人には手を出していないけれど・・・・。
朱琉:この時代は、それでもいい人だったんでしょう。

>
>
>> 今回が、導入編。次は、出会い編になります。
>> 次回、『Shooting wing 〜Deathtear〜』、お楽しみに!
>>
>>
>
>
>ユア;ディス嬢ですね。
>久遠;ディスちゃんか・・・・楽しみね。
>二人;それでは、次回で.
朱琉:はい、では、また!
二人:また次回!


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17668かつてはあった平穏?な日々 2:Shooting Wing 〜Deathtear〜羅城 朱琉 2006/5/29 08:20:42
記事番号17664へのコメント





   時の旅人外伝
かつてはあった平穏?な日々

  2:Shooting Wing 〜Deathtear〜

 平穏な日々はゆっくりと、しかし、確実に流れていく。
 変わりのない、しかし小さな変化には満ち溢れた日々は積み重なり、アリエスは15歳になっていた。


 焼きたてふかふかのパンの匂いに、漂うスープのいい香り。ラーナ家において、炊事はアリエスの仕事である。
 ・・・・・・・・と、いうのも、リブラはなぜか超のつく料理ベタ。味覚は普通のはずなのに、なぜか作るものは『最凶兵器』とでも言ったほうが正しいようなものばかりである。例えば・・・・今から1年位前のこと。リブラの入れてくれたコーヒーを、飲み物ならば大丈夫だろうと軽い気持ちで飲んだアリエスは、瞬間、真っ青になった。色と匂いはごく普通。しかし、その味はといえば、何をどうしたらこうなるのか、もはや『味』ではなく、物理的な『痛み』と言ったほうが正しいだろうものが、口の中に広がった。かろうじて飲み込むも、飲み込んだ後、喉から胃にかけてが、まるで硫酸でも飲み込んだかのように痛み、焼け爛れ・・・・その後、意識を失ったアリエスは、1週間ほど生死の境をさまよった。そして、目覚めたときには、コーヒーを見るだけで体が拒絶反応を起こすようになっていたのだった。それ以来、アリエスはリブラを台所に入れたことは無い。

 今日も今日とて料理を作り、姉を研究室から引っ張り出して、食事をしたら洗濯をして、それから買い物に出かける。そんな普通の一日が、今日も始まると思っていた。


「ええと・・・・今日買うものは、小麦粉と茄子とトマトと挽肉と・・・・」
 ぷちぷちと呟きながら、通い慣れた商店街への道を急ぐ。あれから大分伸びた髪を桜色の飾り布で束ねて、買い物籠を片手にアリエスは行く。ごくごく普通のワンピースの後ろに下げた剣は『天雷閃』と『銀晶輝』。姉がくれた、双子の魔力剣。ここ最近は、アリエスの(本人にとっては不本意な)二つ名が知れ渡ったせいか、商店街は妙に平和になっている。それでも、アリエスが装備を欠かしたことは一度も無い。
 それが、良かったのか悪かったのかは、少し疑問に思うところ。


     *     *     *     *     *


 なぜ、その時、その場所に足を運んだのか・・・・と聞かれれば、気まぐれだった、と答えるしかないだろう。あえて言うのならば、この『負の感情』に満ち溢れた土地が気にかかったせいか。・・・・それを『運命』と呼ぶ者もいるかもしれないが。
 とにかく、彼女はそのときそこにいた。レティス・シティの街はずれ、ラーナ家から商店街へ向かう道の途中に。

 アリエスは、物陰に隠れてぴたりと足を止めた。しばらく前から、気配は消している・・・・この強大な瘴気を感じたときから。
 見えたのは、一人の女性だった。年のころなら20歳前後、青銀の長髪は光に照らされ、冷たくも美しく輝いている。オレンジ色のその瞳は、その明るい色に反して虚無を映し、闇を帯びる。アリエスよりも頭2つ分は高い身長の女性からは、間違えようも無い瘴気の気配。
 アリエスは、意を決して姿を現した。
「魔族が、こんな所に何の御用ですか?」
 女性の姿をした魔族が振り返る。淡緑とオレンジの視線が絡まる。
「・・・・特に、用事は無いな。」
 答えが返ってくるとは思わなかったアリエスは、一瞬驚いたものの、すぐに立ち直り問いを重ねる。
「腹心クラスと思しき魔族が、用も無くうろつき回る!?そのようなこと、誰が信じると?」
 既に、買い物籠は放り出してきている。いつでも戦闘体勢に入れるように、アリエスは腰の二刀に手をやった。
「よく見抜いたな。しかし、魔族もいろいろだ。私のようなのも、たまにはいる。」
 その証拠に、彼女に敵意は欠片もない。アリエスは封魔体質・・・・魔を、瘴気を身の内に封じる。自然、瘴気の気配には敏感になるのだが、それにも戦闘の気配は見られない。しばらく彼女を見つめた後、アリエスは剣から手を離した。
「本当に・・・・変わった魔族ですね。」
 少し苦笑して、アリエスは言った。
「無礼をお詫びします。まさか、出会い頭に戦闘にならない魔族がいるなんて思いませんでした。」
「いや、いい。人間は普通そう思うのだろうな。しかし、魔族・魔族と言うな・・・・私にも名はある。」
「私にも、『人間』ではなく『アリエス=オルフェーゼ=ラーナ』という名がありますよ。・・・・あなたは?」
「ディスティアだ。ディスティア=ペシュテル。」
 それが、二人の出会いだった。


 その後、ディスティアはしばしばアリエスの元を訪れるようになった。アリエスもこの変わった魔族のことが好きだった。あるいは・・・・もう1人の姉とすら思っていた時もある。魔族と友好を深められるなど、それまでは思いつきもしなかったというのに・・・・。

 それもまた、今思えば、幸せだった日々。


     *     *     *     *     *


「ディスティアさん・・・・」
 そんなある日のことだ。見慣れぬ赤い石のチョーカーを付けたアリエスが、暗い顔でディスティアに言ったのは。
「姉が・・・・あなたに会ってみたいそうです。来て、くれますか?」
 上目遣いに聞いてくるアリエスを、可愛いと思ってしまったのは内緒にしておこう。別にそれくらいは構うまいと頷くディスティアに、アリエスはしつこいくらいに注意を繰り返した。曰く、『少しでも様子が変だと感じたら迷わず逃げろ』、『姉が出したものには口をつけるな』、『自分の身の安全を第一に考えろ』、等々。
 それを半分聞き流しつつ、ディスティアはアリエスに案内され、ラーナ家の門をくぐった。

 まず、思ったのは、『何でここにこいつがいるんだ!?』だった。にこにこ笑う彼女・・・・リブラ=セイディーン=ラーナを見て、ディスティアは本気で驚いたのだった。
「いらっしゃい。あなたが、アリエスのお友達の魔族さん?」
「あ・・・・ああ。」
「まあまあ、どうぞ中へ。紅茶でも入れますね。」
 落ち着いた声でそういったリブラに、アリエスは慌てて言った。
「ね・・・・姉様!紅茶は私が入れるから!!」
 そう言って、アリエスは台所に駆け込む。それを見届け、リブラは改めてディスティアに向き直った。
「お久しぶりですね・・・・。アリエスから聞いたときはまさかと思いましたが、やっぱりあなたでしたか。『魔王の娘』さん?」
「なぜ・・・・生きている?あの戦いから、もう500年は経つぞ?」
「そうですね・・・・。降魔戦争から、もう500年経つんですよね・・・・。」
 そう言って、リブラは上品に笑う。それでも、その目はどこか、いたずらに成功した子供のようで。
「あの時以来、私は歳をとっていませんから。・・・・でも、それももうじき終わり。」
「?」
 リブラは、上品な笑いのまま。
「あなたが気付いていないということは、他の魔族も気付いていない様子。私の魔法も、まだまだ捨てたものではありませんね。」
 ディスティアに聞かせているようでそうではない、一方的な話は続く。
「ふふふ・・・・でも、『妹の友人』のよしみでヒントをあげましょう。最も、気付いたところで、もう意味のないことですけどね。・・・・『アリエスを、あなたの親にする気はありませんよ。』」
「それは・・・・!」
「姉様!紅茶ですッ!」
 決死の形相のアリエスが戻ってきたのは、その時だった。
「あら、アリエス。どうしたの?そんなに慌てて。」
 やはり上品に、リブラは言う。アリエスは力なく『いいえ・・・・何でも・・・・』と言うと、ディスティアに耳打ちした。
「(あの・・・・姉様に何かされませんでしたか?)」
「失礼ね、アリエス。私が『妹の友人』に危害を加えるとでも?」
「そういう意味じゃないよ、姉様・・・・。姉様、昨日から妙にわくわくしてたから、ちょっと心配で・・・・あ!」
 言ってから、アリエスは失言に気付いたようだった。
「あぁら?私ってそんなに危ない人?」
「それより姉様!ディスティアさんとの話って終わったの!?終わったなら私達行くから!!」
 そうして、アリエスは未だ何かを考え込んでいるディスティアを連れて、家を出たのだった。

「ごめん、ディスティアさん。姉様、何か困らせるようなことを言ったんでしょう?」
「そんなことはない。ただ・・・・」
 ディスティアは、アリエスを見た。いや・・・・その奥にある『何か』を。
「ただ?」
 アリエスは問い返す。ディスティアは、はっとしたように視線を逸らした。
「いや、なんでもない。」
 ディスティアは、解ってしまった。アリエスの奥、厳重に封印されてはいるものの、僅かに見え隠れするもの・・・・先日までは無かった、膨大な『瘴気』を。リブラの言葉とあわせて、それが意味するものが解らないほど、ディスティアは愚かではなかった。
 ・・・・・・・・そしてアリエスは、そんなディスティアの様子から、何も読み取れないほど愚鈍ではなかった。
 それを悲劇というかは、まだ解らないけれど。


 今、確かなことは、アリエスとディスティアの間には、確かに友情が存在したということ。
 そして、その友情ゆえに、二人は迷いを抱えているということ。




++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ディスティア嬢との出会い編でした。今回の副題にある『Shooting Wing』は、羅城なりにディス嬢の二つ名=『流思の天翼』を英訳したものです。
 次回は、『真実編』です。何の真実なのかは・・・・乞うご期待。
 それでは、次回、『Conducting Sage 〜Libra〜』でお会いしましょう!


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17676知り合いだったんですね、この二人。十叶 夕海 2006/5/30 22:29:09
記事番号17668へのコメント


ユア;レス行きます。



>
>
> 焼きたてふかふかのパンの匂いに、漂うスープのいい香り。ラーナ家において、炊事はアリエスの仕事である。
> ・・・・・・・・と、いうのも、リブラはなぜか超のつく料理ベタ。味覚は普通のはずなのに、なぜか作るものは『最凶兵器』とでも言ったほうが正しいようなものばかりである。例えば・・・・今から1年位前のこと。リブラの入れてくれたコーヒーを、飲み物ならば大丈夫だろうと軽い気持ちで飲んだアリエスは、瞬間、真っ青になった。色と匂いはごく普通。しかし、その味はといえば、何をどうしたらこうなるのか、もはや『味』ではなく、物理的な『痛み』と言ったほうが正しいだろうものが、口の中に広がった。かろうじて飲み込むも、飲み込んだ後、喉から胃にかけてが、まるで硫酸でも飲み込んだかのように痛み、焼け爛れ・・・・その後、意識を失ったアリエスは、1週間ほど生死の境をさまよった。そして、目覚めたときには、コーヒーを見るだけで体が拒絶反応を起こすようになっていたのだった。それ以来、アリエスはリブラを台所に入れたことは無い。

ユア;なるほど、こちらのルピママを遥かにしのぐ、料理ベタ。
久遠;そう言うレベルじゃないと思うわ。


>
>
> なぜ、その時、その場所に足を運んだのか・・・・と聞かれれば、気まぐれだった、と答えるしかないだろう。あえて言うのならば、この『負の感情』に満ち溢れた土地が気にかかったせいか。・・・・それを『運命』と呼ぶ者もいるかもしれないが。
> とにかく、彼女はそのときそこにいた。レティス・シティの街はずれ、ラーナ家から商店街へ向かう道の途中に。
>
> アリエスは、物陰に隠れてぴたりと足を止めた。しばらく前から、気配は消している・・・・この強大な瘴気を感じたときから。
> 見えたのは、一人の女性だった。年のころなら20歳前後、青銀の長髪は光に照らされ、冷たくも美しく輝いている。オレンジ色のその瞳は、その明るい色に反して虚無を映し、闇を帯びる。アリエスよりも頭2つ分は高い身長の女性からは、間違えようも無い瘴気の気配。
> アリエスは、意を決して姿を現した。
>「魔族が、こんな所に何の御用ですか?」
> 女性の姿をした魔族が振り返る。淡緑とオレンジの視線が絡まる。
>「・・・・特に、用事は無いな。」
> 答えが返ってくるとは思わなかったアリエスは、一瞬驚いたものの、すぐに立ち直り問いを重ねる。
>「腹心クラスと思しき魔族が、用も無くうろつき回る!?そのようなこと、誰が信じると?」
> 既に、買い物籠は放り出してきている。いつでも戦闘体勢に入れるように、アリエスは腰の二刀に手をやった。
>「よく見抜いたな。しかし、魔族もいろいろだ。私のようなのも、たまにはいる。」
> その証拠に、彼女に敵意は欠片もない。アリエスは封魔体質・・・・魔を、瘴気を身の内に封じる。自然、瘴気の気配には敏感になるのだが、それにも戦闘の気配は見られない。しばらく彼女を見つめた後、アリエスは剣から手を離した。


ユア;ディス嬢ですね。
久遠;なに、人の悪い微笑みしちゃって。
ユア;いや、これをふまえて、『家族の写真』で、二人の出会いの短編を書こうかなと。
   それにしても、ディス嬢かっこいい。

>「本当に・・・・変わった魔族ですね。」
> 少し苦笑して、アリエスは言った。
>「無礼をお詫びします。まさか、出会い頭に戦闘にならない魔族がいるなんて思いませんでした。」
>「いや、いい。人間は普通そう思うのだろうな。しかし、魔族・魔族と言うな・・・・私にも名はある。」
>「私にも、『人間』ではなく『アリエス=オルフェーゼ=ラーナ』という名がありますよ。・・・・あなたは?」
>「ディスティアだ。ディスティア=ペシュテル。」
> それが、二人の出会いだった。
>
>
> その後、ディスティアはしばしばアリエスの元を訪れるようになった。アリエスもこの変わった魔族のことが好きだった。あるいは・・・・もう1人の姉とすら思っていた時もある。魔族と友好を深められるなど、それまでは思いつきもしなかったというのに・・・・。
>
> それもまた、今思えば、幸せだった日々。
>

ユア;そうですよね、昔は当時はそう思ってなくても、終わってみれば、遠くなれば、幸せってあることですよね。
久遠;また、それも、普遍かつ不変なことよね。

>
>     *     *     *     *     *
>
>
>「ディスティアさん・・・・」
> そんなある日のことだ。見慣れぬ赤い石のチョーカーを付けたアリエスが、暗い顔でディスティアに言ったのは。
>「姉が・・・・あなたに会ってみたいそうです。来て、くれますか?」
> 上目遣いに聞いてくるアリエスを、可愛いと思ってしまったのは内緒にしておこう。別にそれくらいは構うまいと頷くディスティアに、アリエスはしつこいくらいに注意を繰り返した。曰く、『少しでも様子が変だと感じたら迷わず逃げろ』、『姉が出したものには口をつけるな』、『自分の身の安全を第一に考えろ』、等々。
> それを半分聞き流しつつ、ディスティアはアリエスに案内され、ラーナ家の門をくぐった。

久遠;アリエスちゃん、実のお姉さん(だと思っている人)に、それは無いと思うわ。

>
> まず、思ったのは、『何でここにこいつがいるんだ!?』だった。にこにこ笑う彼女・・・・リブラ=セイディーン=ラーナを見て、ディスティアは本気で驚いたのだった。
>「いらっしゃい。あなたが、アリエスのお友達の魔族さん?」
>「あ・・・・ああ。」
>「まあまあ、どうぞ中へ。紅茶でも入れますね。」
> 落ち着いた声でそういったリブラに、アリエスは慌てて言った。
>「ね・・・・姉様!紅茶は私が入れるから!!」
> そう言って、アリエスは台所に駆け込む。それを見届け、リブラは改めてディスティアに向き直った。
>「お久しぶりですね・・・・。アリエスから聞いたときはまさかと思いましたが、やっぱりあなたでしたか。『魔王の娘』さん?」
>「なぜ・・・・生きている?あの戦いから、もう500年は経つぞ?」
>「そうですね・・・・。降魔戦争から、もう500年経つんですよね・・・・。」
> そう言って、リブラは上品に笑う。それでも、その目はどこか、いたずらに成功した子供のようで。
>「あの時以来、私は歳をとっていませんから。・・・・でも、それももうじき終わり。」
>「?」
> リブラは、上品な笑いのまま。
>「あなたが気付いていないということは、他の魔族も気付いていない様子。私の魔法も、まだまだ捨てたものではありませんね。」
> ディスティアに聞かせているようでそうではない、一方的な話は続く。
>「ふふふ・・・・でも、『妹の友人』のよしみでヒントをあげましょう。最も、気付いたところで、もう意味のないことですけどね。・・・・『アリエスを、あなたの親にする気はありませんよ。』」
>「それは・・・・!」


ユア;二人は、知り合いだったんですね。
久遠;なおかつ、知ってるのね、アリエスちゃんの中のこと。
ユア;・・・・にしても、こういう腹に一物持ってそうな会話って素敵♪


>
>「ごめん、ディスティアさん。姉様、何か困らせるようなことを言ったんでしょう?」
>「そんなことはない。ただ・・・・」
> ディスティアは、アリエスを見た。いや・・・・その奥にある『何か』を。
>「ただ?」
> アリエスは問い返す。ディスティアは、はっとしたように視線を逸らした。
>「いや、なんでもない。」
> ディスティアは、解ってしまった。アリエスの奥、厳重に封印されてはいるものの、僅かに見え隠れするもの・・・・先日までは無かった、膨大な『瘴気』を。リブラの言葉とあわせて、それが意味するものが解らないほど、ディスティアは愚かではなかった。
> ・・・・・・・・そしてアリエスは、そんなディスティアの様子から、何も読み取れないほど愚鈍ではなかった。
> それを悲劇というかは、まだ解らないけれど。
>

久遠;ある意味で、悲劇ね。
ユア;誰も、悲劇だと知らないから?
久遠;そうかもしれないわ。


>
>
>
>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
>
> ディスティア嬢との出会い編でした。今回の副題にある『Shooting Wing』は、羅城なりにディス嬢の二つ名=『流思の天翼』を英訳したものです。
> 次回は、『真実編』です。何の真実なのかは・・・・乞うご期待。
> それでは、次回、『Conducting Sage 〜Libra〜』でお会いしましょう!
>
>

ユア;はい、次回も楽しみにしてます。
二人;それでは。

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17677降魔戦争のときの知り合いです。羅城 朱琉 2006/5/31 08:31:40
記事番号17676へのコメント


>
>ユア;レス行きます。
朱琉:では、こちらも返レス参ります。

>
>
>
>>
>>
>> 焼きたてふかふかのパンの匂いに、漂うスープのいい香り。ラーナ家において、炊事はアリエスの仕事である。
>> ・・・・・・・・と、いうのも、リブラはなぜか超のつく料理ベタ。味覚は普通のはずなのに、なぜか作るものは『最凶兵器』とでも言ったほうが正しいようなものばかりである。例えば・・・・今から1年位前のこと。リブラの入れてくれたコーヒーを、飲み物ならば大丈夫だろうと軽い気持ちで飲んだアリエスは、瞬間、真っ青になった。色と匂いはごく普通。しかし、その味はといえば、何をどうしたらこうなるのか、もはや『味』ではなく、物理的な『痛み』と言ったほうが正しいだろうものが、口の中に広がった。かろうじて飲み込むも、飲み込んだ後、喉から胃にかけてが、まるで硫酸でも飲み込んだかのように痛み、焼け爛れ・・・・その後、意識を失ったアリエスは、1週間ほど生死の境をさまよった。そして、目覚めたときには、コーヒーを見るだけで体が拒絶反応を起こすようになっていたのだった。それ以来、アリエスはリブラを台所に入れたことは無い。
>
>ユア;なるほど、こちらのルピママを遥かにしのぐ、料理ベタ。
>久遠;そう言うレベルじゃないと思うわ。
朱琉:設定には、『アニメ版のゼロスと料理対決するといい勝負になるくらいの料理ベタ』とか書いた覚えが・・・・
アミイ:つまりは、あれ?料理の皮をかぶった凶器?
朱琉:まさにそんな感じです。

>
>
>>
>>
>> なぜ、その時、その場所に足を運んだのか・・・・と聞かれれば、気まぐれだった、と答えるしかないだろう。あえて言うのならば、この『負の感情』に満ち溢れた土地が気にかかったせいか。・・・・それを『運命』と呼ぶ者もいるかもしれないが。
>> とにかく、彼女はそのときそこにいた。レティス・シティの街はずれ、ラーナ家から商店街へ向かう道の途中に。
>>
>> アリエスは、物陰に隠れてぴたりと足を止めた。しばらく前から、気配は消している・・・・この強大な瘴気を感じたときから。
>> 見えたのは、一人の女性だった。年のころなら20歳前後、青銀の長髪は光に照らされ、冷たくも美しく輝いている。オレンジ色のその瞳は、その明るい色に反して虚無を映し、闇を帯びる。アリエスよりも頭2つ分は高い身長の女性からは、間違えようも無い瘴気の気配。
>> アリエスは、意を決して姿を現した。
>>「魔族が、こんな所に何の御用ですか?」
>> 女性の姿をした魔族が振り返る。淡緑とオレンジの視線が絡まる。
>>「・・・・特に、用事は無いな。」
>> 答えが返ってくるとは思わなかったアリエスは、一瞬驚いたものの、すぐに立ち直り問いを重ねる。
>>「腹心クラスと思しき魔族が、用も無くうろつき回る!?そのようなこと、誰が信じると?」
>> 既に、買い物籠は放り出してきている。いつでも戦闘体勢に入れるように、アリエスは腰の二刀に手をやった。
>>「よく見抜いたな。しかし、魔族もいろいろだ。私のようなのも、たまにはいる。」
>> その証拠に、彼女に敵意は欠片もない。アリエスは封魔体質・・・・魔を、瘴気を身の内に封じる。自然、瘴気の気配には敏感になるのだが、それにも戦闘の気配は見られない。しばらく彼女を見つめた後、アリエスは剣から手を離した。
>
>
>ユア;ディス嬢ですね。
>久遠;なに、人の悪い微笑みしちゃって。
>ユア;いや、これをふまえて、『家族の写真』で、二人の出会いの短編を書こうかなと。
>   それにしても、ディス嬢かっこいい。
朱琉:よかった・・・・
アミイ:このシーン、登場シーンだけあって反応が気になってたのよね。

>
>>「本当に・・・・変わった魔族ですね。」
>> 少し苦笑して、アリエスは言った。
>>「無礼をお詫びします。まさか、出会い頭に戦闘にならない魔族がいるなんて思いませんでした。」
>>「いや、いい。人間は普通そう思うのだろうな。しかし、魔族・魔族と言うな・・・・私にも名はある。」
>>「私にも、『人間』ではなく『アリエス=オルフェーゼ=ラーナ』という名がありますよ。・・・・あなたは?」
>>「ディスティアだ。ディスティア=ペシュテル。」
>> それが、二人の出会いだった。
>>
>>
>> その後、ディスティアはしばしばアリエスの元を訪れるようになった。アリエスもこの変わった魔族のことが好きだった。あるいは・・・・もう1人の姉とすら思っていた時もある。魔族と友好を深められるなど、それまでは思いつきもしなかったというのに・・・・。
>>
>> それもまた、今思えば、幸せだった日々。
>>
>
>ユア;そうですよね、昔は当時はそう思ってなくても、終わってみれば、遠くなれば、幸せってあることですよね。
>久遠;また、それも、普遍かつ不変なことよね。
アミイ:そうよね。そして、それに気付かないから、『後悔』なんて言葉がある。
朱琉:だからこそ、過去を懐かしむということもあるんですけど。

>
>>
>>     *     *     *     *     *
>>
>>
>>「ディスティアさん・・・・」
>> そんなある日のことだ。見慣れぬ赤い石のチョーカーを付けたアリエスが、暗い顔でディスティアに言ったのは。
>>「姉が・・・・あなたに会ってみたいそうです。来て、くれますか?」
>> 上目遣いに聞いてくるアリエスを、可愛いと思ってしまったのは内緒にしておこう。別にそれくらいは構うまいと頷くディスティアに、アリエスはしつこいくらいに注意を繰り返した。曰く、『少しでも様子が変だと感じたら迷わず逃げろ』、『姉が出したものには口をつけるな』、『自分の身の安全を第一に考えろ』、等々。
>> それを半分聞き流しつつ、ディスティアはアリエスに案内され、ラーナ家の門をくぐった。
>
>久遠;アリエスちゃん、実のお姉さん(だと思っている人)に、それは無いと思うわ。
アミイ:実の姉だと思っているからこそ、かもね?
朱琉:友人が実の姉の研究材料にされたり、料理型兵器の餌食になったりして欲しくないでしょう、ってことです。

>
>>
>> まず、思ったのは、『何でここにこいつがいるんだ!?』だった。にこにこ笑う彼女・・・・リブラ=セイディーン=ラーナを見て、ディスティアは本気で驚いたのだった。
>>「いらっしゃい。あなたが、アリエスのお友達の魔族さん?」
>>「あ・・・・ああ。」
>>「まあまあ、どうぞ中へ。紅茶でも入れますね。」
>> 落ち着いた声でそういったリブラに、アリエスは慌てて言った。
>>「ね・・・・姉様!紅茶は私が入れるから!!」
>> そう言って、アリエスは台所に駆け込む。それを見届け、リブラは改めてディスティアに向き直った。
>>「お久しぶりですね・・・・。アリエスから聞いたときはまさかと思いましたが、やっぱりあなたでしたか。『魔王の娘』さん?」
>>「なぜ・・・・生きている?あの戦いから、もう500年は経つぞ?」
>>「そうですね・・・・。降魔戦争から、もう500年経つんですよね・・・・。」
>> そう言って、リブラは上品に笑う。それでも、その目はどこか、いたずらに成功した子供のようで。
>>「あの時以来、私は歳をとっていませんから。・・・・でも、それももうじき終わり。」
>>「?」
>> リブラは、上品な笑いのまま。
>>「あなたが気付いていないということは、他の魔族も気付いていない様子。私の魔法も、まだまだ捨てたものではありませんね。」
>> ディスティアに聞かせているようでそうではない、一方的な話は続く。
>>「ふふふ・・・・でも、『妹の友人』のよしみでヒントをあげましょう。最も、気付いたところで、もう意味のないことですけどね。・・・・『アリエスを、あなたの親にする気はありませんよ。』」
>>「それは・・・・!」
>
>
>ユア;二人は、知り合いだったんですね。
>久遠;なおかつ、知ってるのね、アリエスちゃんの中のこと。
>ユア;・・・・にしても、こういう腹に一物持ってそうな会話って素敵♪
朱琉:降魔戦争のとき、知り合ってます。
アミイ:で、結局その降魔戦争話、どうするの?
朱琉:第5部の後に外伝として書く予定です。少なくとも、語り部さんの正体をばらさないことには書けないので。

>
>
>>
>>「ごめん、ディスティアさん。姉様、何か困らせるようなことを言ったんでしょう?」
>>「そんなことはない。ただ・・・・」
>> ディスティアは、アリエスを見た。いや・・・・その奥にある『何か』を。
>>「ただ?」
>> アリエスは問い返す。ディスティアは、はっとしたように視線を逸らした。
>>「いや、なんでもない。」
>> ディスティアは、解ってしまった。アリエスの奥、厳重に封印されてはいるものの、僅かに見え隠れするもの・・・・先日までは無かった、膨大な『瘴気』を。リブラの言葉とあわせて、それが意味するものが解らないほど、ディスティアは愚かではなかった。
>> ・・・・・・・・そしてアリエスは、そんなディスティアの様子から、何も読み取れないほど愚鈍ではなかった。
>> それを悲劇というかは、まだ解らないけれど。
>>
>
>久遠;ある意味で、悲劇ね。
>ユア;誰も、悲劇だと知らないから?
>久遠;そうかもしれないわ。
アミイ:今の段階では、わかる人はいないけどね。それが後々になって、悲劇とわかってくるけれど。
朱琉:ある意味、一番イヤですが。

>
>
>>
>>
>>
>>++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
>>
>> ディスティア嬢との出会い編でした。今回の副題にある『Shooting Wing』は、羅城なりにディス嬢の二つ名=『流思の天翼』を英訳したものです。
>> 次回は、『真実編』です。何の真実なのかは・・・・乞うご期待。
>> それでは、次回、『Conducting Sage 〜Libra〜』でお会いしましょう!
>>
>>
>
>ユア;はい、次回も楽しみにしてます。
>二人;それでは。
朱琉:はい、では、また次回。今週中には投稿予定です。
二人:では、また!



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17681かつてはあった平穏?な日々 3:Conducting Sage 〜Libra〜羅城 朱琉 2006/6/2 08:19:11
記事番号17664へのコメント






  時の旅人外伝
   かつてはあった平穏(?)な日々

   3:Conducting Sage 〜Libra〜

 まだ少し肌寒い、それでも、確かに春の温もりを感じさせる、そんな日。
 今日は、アリエス16歳の誕生日。


「おめでとう、アリエス。」
 言葉少なながらも、友の祝福に、アリエスはふわりと笑った。
「ありがとう、ディスティア。・・・・実は、今日来てくれるとは思ってなかったの。」
 『だって、生まれてきたことに感謝と祝福を捧げる日でしょう?』と続け、アリエスはまた笑った。
「本当にありがとう、ディスティア。最高のプレゼントね!」
 ディスティアは、不思議そうに首を傾げる。
「私は、何も渡した覚えは無いが?」
「ここにこうしていてくれるのが、最高の贈り物よ。・・・・姉様とは、最近めったに顔を合わせないから・・・・」
「・・・・不死の研究、か。」
「ええ。」
 アリエスの笑顔が翳った。
 ここ最近、リブラはますます研究に没頭している。今日がアリエスの誕生日だということも、覚えているか危ういものだ。しかし・・・・アリエスは、ここ最近、そんな姉の気持ちもわかるような気がするのだ。そして、恐らくはそんなことも終わりに近づいているだろう事も。だから、なのかもしれない。少しずつ、小さな変化を起こしているのも。
 例えば、『ディスティアさん』と呼んでいたのが『ディスティア』と呼び捨てるようになったり。
 例えば、些細なことでもよく微笑むようになったり。
 例えば・・・・・・・・少しだけ、友に語ってみたり。
「前から聞いてみたかったんですが・・・・。ディスティア。魔族は、滅びたいんですよね?」
 唐突に、アリエスは切り出した。
「ああ。確かに、私達の根底には『滅びたい』という願いがある。」
 話の唐突さに内心首を傾げつつも、ディスティアは答える。アリエスはそれを聞くと、天を見上げて詠うように言った。
「人が生を望むのと同じく、魔族は滅びを欲する。・・・・そうと知っていても、ディスティア、私はあなたが長生きしてくれるといいな、と思うよ。」
「何だ?突然。」
 アリエスは笑う。素直に気持ちを口に出す。
「人間としては、そう思う。友には元気でいてほしい。けど、それは私のエゴでもある。・・・・人間、魔族、差は大きいけど、ディスティアは私の『友達』。それは、絶対だよ。」
 アリエスの瞳が、ディスティアを捉えた。その瞳は妙に大人びていて・・・・奥には、諦観にも似た決意の色。
 ディスティアは、不意に『不安』を覚え、アリエスの手を咄嗟に掴む。
「アリエス!・・・・・・・・何を、するつもりだ!?」
 アリエスは、微笑むだけ。陽だまりのように温かく、しかし、人を寄せ付けない・・・・まるで、温室の中に咲く花を、外から眺めているかのよう。つないだ手だけが、彼女をここに留め置く縁(よすが)のようで、ディスティアはますますその手を離せなくなった。アリエスも、その手を拒むことは無い。
 アリエスの手の温もりが冷たいディスティアの手を温め、ディスティアの手の冷たさがアリエスの手の熱を鎮める。
 いつまで、そうしていただろうか?吹く風の音だけする中に、滑り落ちたのはアリエスの声。
「明日は、ここに来ないでね。」
「アリエス。」
 ディスティアがアリエスの名を呼んだのは、制止だろうか?それとも詰問?何とでも取れる、虚ろな声。
「今日はありがとう。会えて嬉しかった。」
 さりげなく解かれる、手。風そのもののように身を翻し、アリエスはディスティアから数歩離れる。
「さよなら・・・・ディスティア。」

 その『さよなら』は、再会の約束?それとも・・・・永遠の別れ?

 答えを持つ少女は、既に立ち去った後。


     *     *     *     *     *


 かりかりと羽ペンを動かし、文字を綴る。研究記録の類ではない。ただの日記だ。これを書くのも最後かな?と思い、リブラは頬を緩めた。
 これを書くことがない、というのは、もう死ぬかな?ということ。ずっとずっと、1日も欠かさず書き続けた日記をいとおしげに撫で、リブラは呟く。
「リアネス・・・・アルシアン・・・・ロゼウス・・・・・・・・・・・・そして、ルシル。皆と交した『契約』、少し形は違うけど、果たしますよ。」
 静かに、しかし、澄んだ声で。
「アリエス・・・・ごめんね。本当は私の役目だったことを押し付けてしまって・・・・。」
 祈りというなら、これ以上に純粋な祈りは無いであろう程に。
「今は、こうするしか手が無いけれど・・・・どうか、アリエスが未来で幸せになりますように・・・・」
 深く、深く祈っていたその時、部屋のドアがノックされた。
 リブラが入室を促す。開いた扉の前に立っていたのは、アリエス。
 リブラは、悲しい声色で言った。
「覚悟は、できた?」
 アリエスは答えた。
「ええ、『始祖様』。」
 悲しい、しかし、どこか笑みを含んだ声で。


 そして、『それ』は始まる。


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 少々予定が狂って、3話予定が1話増えることになりました。
 次回が『真実編・後編』となり、この外伝の最終話になる予定です。
 では、次回、『Wandering Teller 〜Lucill〜』でお会いしましょう!


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17684切なげですね。十叶 夕海 2006/6/4 22:40:01
記事番号17681へのコメント



ユア;こんにちは、レス行きます。



>
>「おめでとう、アリエス。」
> 言葉少なながらも、友の祝福に、アリエスはふわりと笑った。
>「ありがとう、ディスティア。・・・・実は、今日来てくれるとは思ってなかったの。」
> 『だって、生まれてきたことに感謝と祝福を捧げる日でしょう?』と続け、アリエスはまた笑った。
>「本当にありがとう、ディスティア。最高のプレゼントね!」
> ディスティアは、不思議そうに首を傾げる。
>「私は、何も渡した覚えは無いが?」

ユア;・・・・・なるほど。
久遠;そうよね、私みたいな半分魔族に近い九十九神でも、辛いのに。
   純魔族なら、推して知るべし、ね。
ユア;それでも、『友人』の誕生日を祝いたかったのでしょう、ディス嬢は。


> 例えば、『ディスティアさん』と呼んでいたのが『ディスティア』と呼び捨てるようになったり。
> 例えば、些細なことでもよく微笑むようになったり。
> 例えば・・・・・・・・少しだけ、友に語ってみたり。

ユア;・・・・・・そう言えば、アリエス嬢、親しい人には、呼び捨てでしたよね・・・・。
久遠;どうしたの?
ユア;家族の写真のほう、『ディスティアさん』呼んでいるからね。
   ・・・・・・まあ、三年ブランクあるし。

>「前から聞いてみたかったんですが・・・・。ディスティア。魔族は、滅びたいんですよね?」
> 唐突に、アリエスは切り出した。
>「ああ。確かに、私達の根底には『滅びたい』という願いがある。」
> 話の唐突さに内心首を傾げつつも、ディスティアは答える。アリエスはそれを聞くと、天を見上げて詠うように言った。
>「人が生を望むのと同じく、魔族は滅びを欲する。・・・・そうと知っていても、ディスティア、私はあなたが長生きしてくれるといいな、と思うよ。」
>「何だ?突然。」
> アリエスは笑う。素直に気持ちを口に出す。
>「人間としては、そう思う。友には元気でいてほしい。けど、それは私のエゴでもある。・・・・人間、魔族、差は大きいけど、ディスティアは私の『友達』。それは、絶対だよ。」
> アリエスの瞳が、ディスティアを捉えた。その瞳は妙に大人びていて・・・・奥には、諦観にも似た決意の色。
> ディスティアは、不意に『不安』を覚え、アリエスの手を咄嗟に掴む。
>「アリエス!・・・・・・・・何を、するつもりだ!?」
> アリエスは、微笑むだけ。陽だまりのように温かく、しかし、人を寄せ付けない・・・・まるで、温室の中に咲く花を、外から眺めているかのよう。つないだ手だけが、彼女をここに留め置く縁(よすが)のようで、ディスティアはますますその手を離せなくなった。アリエスも、その手を拒むことは無い。
> アリエスの手の温もりが冷たいディスティアの手を温め、ディスティアの手の冷たさがアリエスの手の熱を鎮める。
> いつまで、そうしていただろうか?吹く風の音だけする中に、滑り落ちたのはアリエスの声。
>「明日は、ここに来ないでね。」
>「アリエス。」
> ディスティアがアリエスの名を呼んだのは、制止だろうか?それとも詰問?何とでも取れる、虚ろな声。
>「今日はありがとう。会えて嬉しかった。」
> さりげなく解かれる、手。風そのもののように身を翻し、アリエスはディスティアから数歩離れる。
>「さよなら・・・・ディスティア。」

ユア:・・・・・・(涙をハンカチで拭いつつ)
久遠;・・・切ないわね、人間の女の子の強い決意こそ切ないモノはないわね。

>
> その『さよなら』は、再会の約束?それとも・・・・永遠の別れ?
>
> 答えを持つ少女は、既に立ち去った後。


久遠;ユアちゃん、答えれないようだけど、代弁するなら。
   『再会の約束であって欲しいです。このまま分かれるのは切なくて、哀しいです。』?
ユア;・・・・・(必死に、頷きつつも、涙する)

>
>
> かりかりと羽ペンを動かし、文字を綴る。研究記録の類ではない。ただの日記だ。これを書くのも最後かな?と思い、リブラは頬を緩めた。
> これを書くことがない、というのは、もう死ぬかな?ということ。ずっとずっと、1日も欠かさず書き続けた日記をいとおしげに撫で、リブラは呟く。
>「リアネス・・・・アルシアン・・・・ロゼウス・・・・・・・・・・・・そして、ルシル。皆と交した『契約』、少し形は違うけど、果たしますよ。」
> 静かに、しかし、澄んだ声で。
>「アリエス・・・・ごめんね。本当は私の役目だったことを押し付けてしまって・・・・。」
> 祈りというなら、これ以上に純粋な祈りは無いであろう程に。
>「今は、こうするしか手が無いけれど・・・・どうか、アリエスが未来で幸せになりますように・・・・」


ユア;・・・・刹なく、切ないね。
久遠;・・・・そうよね、こうまで・・・・ねぇ。
   でも、いいの、『家族の写真』でアリエスちゃん関連で、似たような台詞&シーンあったわよね?
ユア;・・・・・のうこめんと。


>
>
>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
>
> 少々予定が狂って、3話予定が1話増えることになりました。
> 次回が『真実編・後編』となり、この外伝の最終話になる予定です。
> では、次回、『Wandering Teller 〜Lucill〜』でお会いしましょう!
>
>
ユア;はい、楽しみにしてます。
二人;では、次回。

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17687切ないけれど、優しさの形。羅城 朱琉 2006/6/5 08:34:28
記事番号17684へのコメント


>
>
>ユア;こんにちは、レス行きます。
朱琉:こんにちは、早速返レス参ります。

>
>
>
>>
>>「おめでとう、アリエス。」
>> 言葉少なながらも、友の祝福に、アリエスはふわりと笑った。
>>「ありがとう、ディスティア。・・・・実は、今日来てくれるとは思ってなかったの。」
>> 『だって、生まれてきたことに感謝と祝福を捧げる日でしょう?』と続け、アリエスはまた笑った。
>>「本当にありがとう、ディスティア。最高のプレゼントね!」
>> ディスティアは、不思議そうに首を傾げる。
>>「私は、何も渡した覚えは無いが?」
>
>ユア;・・・・・なるほど。
>久遠;そうよね、私みたいな半分魔族に近い九十九神でも、辛いのに。
>   純魔族なら、推して知るべし、ね。
>ユア;それでも、『友人』の誕生日を祝いたかったのでしょう、ディス嬢は。
アミイ:そうね。魔族が『お祝い』をしたいと感じるほどに、二人は仲良しだったわ。

>
>
>> 例えば、『ディスティアさん』と呼んでいたのが『ディスティア』と呼び捨てるようになったり。
>> 例えば、些細なことでもよく微笑むようになったり。
>> 例えば・・・・・・・・少しだけ、友に語ってみたり。
>
>ユア;・・・・・・そう言えば、アリエス嬢、親しい人には、呼び捨てでしたよね・・・・。
>久遠;どうしたの?
>ユア;家族の写真のほう、『ディスティアさん』呼んでいるからね。
>   ・・・・・・まあ、三年ブランクあるし。
朱琉:最初は、『ディスティアさん』で通そうと思っていたんですが・・・・
アミイ:絶対に、こっちはそれ以上に仲良いよな・・・・と思ったのよね。
朱琉:『友人』と言うより『親友』もしくは『信友』ですから。

>
>>「前から聞いてみたかったんですが・・・・。ディスティア。魔族は、滅びたいんですよね?」
>> 唐突に、アリエスは切り出した。
>>「ああ。確かに、私達の根底には『滅びたい』という願いがある。」
>> 話の唐突さに内心首を傾げつつも、ディスティアは答える。アリエスはそれを聞くと、天を見上げて詠うように言った。
>>「人が生を望むのと同じく、魔族は滅びを欲する。・・・・そうと知っていても、ディスティア、私はあなたが長生きしてくれるといいな、と思うよ。」
>>「何だ?突然。」
>> アリエスは笑う。素直に気持ちを口に出す。
>>「人間としては、そう思う。友には元気でいてほしい。けど、それは私のエゴでもある。・・・・人間、魔族、差は大きいけど、ディスティアは私の『友達』。それは、絶対だよ。」
>> アリエスの瞳が、ディスティアを捉えた。その瞳は妙に大人びていて・・・・奥には、諦観にも似た決意の色。
>> ディスティアは、不意に『不安』を覚え、アリエスの手を咄嗟に掴む。
>>「アリエス!・・・・・・・・何を、するつもりだ!?」
>> アリエスは、微笑むだけ。陽だまりのように温かく、しかし、人を寄せ付けない・・・・まるで、温室の中に咲く花を、外から眺めているかのよう。つないだ手だけが、彼女をここに留め置く縁(よすが)のようで、ディスティアはますますその手を離せなくなった。アリエスも、その手を拒むことは無い。
>> アリエスの手の温もりが冷たいディスティアの手を温め、ディスティアの手の冷たさがアリエスの手の熱を鎮める。
>> いつまで、そうしていただろうか?吹く風の音だけする中に、滑り落ちたのはアリエスの声。
>>「明日は、ここに来ないでね。」
>>「アリエス。」
>> ディスティアがアリエスの名を呼んだのは、制止だろうか?それとも詰問?何とでも取れる、虚ろな声。
>>「今日はありがとう。会えて嬉しかった。」
>> さりげなく解かれる、手。風そのもののように身を翻し、アリエスはディスティアから数歩離れる。
>>「さよなら・・・・ディスティア。」
>
>ユア:・・・・・・(涙をハンカチで拭いつつ)
>久遠;・・・切ないわね、人間の女の子の強い決意こそ切ないモノはないわね。
朱琉:この決意の正体は・・・・確かに切ない結果になってしまいますね。
アミイ:4で書いたわね。そっちを読んでくださいな。
>
>>
>> その『さよなら』は、再会の約束?それとも・・・・永遠の別れ?
>>
>> 答えを持つ少女は、既に立ち去った後。
>
>
>久遠;ユアちゃん、答えれないようだけど、代弁するなら。
>   『再会の約束であって欲しいです。このまま分かれるのは切なくて、哀しいです。』?
>ユア;・・・・・(必死に、頷きつつも、涙する)
朱琉:・・・・・・・・大変申し訳ありません。
アミイ:再会、するじゃない?本編でそろそろ。
朱琉:・・・・・・・・だって、そのための布石的外伝ですから・・・・。

>
>>
>>
>> かりかりと羽ペンを動かし、文字を綴る。研究記録の類ではない。ただの日記だ。これを書くのも最後かな?と思い、リブラは頬を緩めた。
>> これを書くことがない、というのは、もう死ぬかな?ということ。ずっとずっと、1日も欠かさず書き続けた日記をいとおしげに撫で、リブラは呟く。
>>「リアネス・・・・アルシアン・・・・ロゼウス・・・・・・・・・・・・そして、ルシル。皆と交した『契約』、少し形は違うけど、果たしますよ。」
>> 静かに、しかし、澄んだ声で。
>>「アリエス・・・・ごめんね。本当は私の役目だったことを押し付けてしまって・・・・。」
>> 祈りというなら、これ以上に純粋な祈りは無いであろう程に。
>>「今は、こうするしか手が無いけれど・・・・どうか、アリエスが未来で幸せになりますように・・・・」
>
>
>ユア;・・・・刹なく、切ないね。
>久遠;・・・・そうよね、こうまで・・・・ねぇ。
>   でも、いいの、『家族の写真』でアリエスちゃん関連で、似たような台詞&シーンあったわよね?
>ユア;・・・・・のうこめんと。
朱琉:アリエス&アリエスを大切に思う人たちは、多かれ少なかれこういう決断を下さざるを得ないときがありますから・・・・ねぇ。
アミイ:本当に、『刹なく、切ない』ことだけれども。

>
>
>>
>>
>>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
>>
>> 少々予定が狂って、3話予定が1話増えることになりました。
>> 次回が『真実編・後編』となり、この外伝の最終話になる予定です。
>> では、次回、『Wandering Teller 〜Lucill〜』でお会いしましょう!
>>
>>
>ユア;はい、楽しみにしてます。
>二人;では、次回。
朱琉:はい、では、この辺で。
アミイ:それじゃあ、またね!


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17686かつてはあった平穏?な日々 4:Wandering Teller 〜Lucill〜羅城 朱琉 2006/6/5 08:21:01
記事番号17664へのコメント





  時の旅人外伝
   かつてはあった平穏(?)な日々

  4:Wandering Teller 〜Lucill〜

 白。
 目の前が純白に塗りつぶされる。・・・・いや、目は閉じている。それでもなお、瞼を貫き閃光は瞳を刺す。
 瞳だけではない。溢れる光の一粒一粒が次々と体を貫き、カラダを作り変えていく。
   イタイ
   クルシイ
   ツライ
 言葉にするならそうであろうに、思いは千々に乱れ言葉すら脳裏から消し飛ばす。そんな爆光の中で、少女・・・・アリエスは、リブラを『見た』。リブラの口の端から、一筋の血が流れている。涙を、嗚咽を堪えるために噛み締めたその歯が、唇を噛み切っているのだ。瞳を閉じていても、アリエスにはなぜかそれが解った。
だから、アリエスはゆっくりと目を開く。純白の光の中で、視力は全く使い物にならないとわかっていても・・・・。アリエスはリブラを気配で探し、微笑みかける。そして、口を動かし、声にならない声を紡ぐ。

  大丈夫ダヨ 姉様

途切れゆく意識の中、アリエスはもう一度微笑んで、目を閉じた。


     *     *     *     *     *


 けぶるような微笑を浮かべ、アリエスの体が脱力する。『時』からの切り離しと、『眠り』・・・・その二つの術によって。口元に血を滴らせながら、リブラは泣き顔に近い笑みを浮かべた。
 光は、まだ収まらない。それどころか、徐々に強まっていく。家を包み込み、街に溢れ・・・・触れたもの全てを消失させながら。
 リブラ本人も、影響を受けずにはいられなかった。他のもののように、一瞬にして消失することは無かったものの、体の端々が無機物のように崩れ、光に還元されていく。
 と、一瞬光が弱まった。そして、そこに光よりも更に白い人物が現れる。まともに目を開けていられないであろう光の中にあって、その人物だけは、なぜかはっきりと見える。・・・・白い異国風の衣を纏った、白亜の人物。服装は違えど、リブラはその人物を知っていた。
「ルシルね。・・・・久しぶり。」
「久しいね。随分なことになっているじゃないか。『時の力』が暴走している。・・・・・・・・止めようか?」
 光の中に平然と立ち、ルシルは辺りを示し、言う。リブラはしかし、首を横に振った。
「いいの・・・・。このままでいいの。でないと、術が完成しないわ。」
「命をもって、術を構成したのか・・・・。馬鹿なことを。何が、君をそこまでさせるのかな?」
 リブラの左腕が、崩れて光となる。それでも、リブラは笑って言う。
「アリエスが・・・・『姉』と呼んでくれたの。」
「?」
「全部知った上で・・・・アリエスに私の役目を押し付けて・・・・本当は『姉』じゃないとわかっていても、それでもアリエスは最後に『姉』と呼んでくれた。ねえ、ルシル・・・・だから、私はあの子の『姉』なのよ。」
「それで?」
 リブラの体が、光に紛れる。半透明になった体で、しかしリブラは誇らしげに言う。
「『妹』が命懸けで頑張ってくれたんですもの、『姉』の私が頑張らなくてどうするの?」
「・・・・・・・・!」
 口よりも雄弁にものを語っていたルシルの瞳が、初めて動揺を映した。
「アリエスのためだけか、と聞かれれば、そうじゃない、と答えるしかないけれど・・・・それでも、今の『シーシェンズ』や『ヴェルリュード』にアリエスを任せたくなかった。・・・・・・・・あいつら、何であんなに狂っちゃったんだろう・・・・?」
 一瞬、リブラの瞳が愁いに翳る。ルシルは、静かに口を開いた。
「時を止めずに意思だけ奪い、瘴気に飲み込まれたら殺す・・・・か。そんな風に力を使うとは・・・・ね。」
「だから、アリエスは渡せない・・・・渡さない。でも、今のままじゃいつかは・・・・・・・・。だから・・・・」
 リブラの姿が一層薄まる。それでも、その瞳はまっすぐにルシルを見つめていた。
「ルシル。私の術による『眠り』は、せいぜい持って300年。だから、お願い、それまでアリエスを守って。その後は、アリエスを導いて!」
 リブラの必死の声に、しかしルシルは無感情の声で応じる。
「守るのはともかく、導くことはできない。そこまでの干渉は許されない。」
「ならば・・・・せめて見届けて。あの子の行く道を・・・・。お願いよ、ルシル・・・・・・・・『レイノリス』。」
 ルシルは、目を伏せた。しばしの沈黙が辺りを包む。光と同化しつつあるリブラの前に、ルシルは覚悟を決めた。
「わかった。見届けよう、アリエスの歩むその道を。導くことは出来ずとも、せめて、心と真実を語り伝えよう。ルシル=グラディウスと、レイノリスの名において。・・・・これは、誓約だ。」
 リブラは、それを聞いて安心したように息をついた。
「ありがとう。・・・・無理難題を言ってごめんね?」
「いや・・・・。ある意味、最も卑怯な逃げ道だよ。『導かす、伝えるだけ』・・・・って。」
「あら?そんな事言ったら、吟遊詩人や語り部はどうなるの?立派な職業じゃない。・・・・同じことよ。情報があれば考えることが出来るわ。」
 笑って言ったリブラに、ルシルは呆気にとられたような顔をする。それが、優しい苦笑に変わるまで、そう時間はかからなかった。
「じゃあ、今日から僕は『語り部』、か。」
「似合うじゃない。ルシル、前に吟遊詩人の服着てたときもよく似合ってたものね。そうね・・・・気ままに世界を巡り歩き、言の葉を伝える『放浪の語り部』ってどう?」
 冗談めかして言い、二人は笑いあう。リブラの姿は、もうほとんど見えなくなっていたが、二人の会話は朗らかで。それでもルシルは、最後にどうしても一言言わずには居れなかった。
「・・・・本当に、後悔しないね?ここで消えることを。」
「うん。もう、決めたから。」
「そうか・・・・。」
 その声に、寂しげな響きが含まれてしまったのはいかんともしがたいが、それでもルシルは強引に引き止めようとはしなかった。・・・・それが、『友』の選択ならば。
だからせめて、ルシルは笑った。務めて明るい声で、最後の言葉を言うために。
「さようなら、リブラ。・・・・我が友よ。」
 瞬間、リブラの姿が完全に光に還元される。その一刹那前に紡がれたリブラの声が、ルシルに届く前に。
『さよなら、ルシル。・・・・ありがとう・・・・・・・・』
 移ろう光の中から響いたその声を聞き届け、ルシルは短い黙祷を捧げた。


     *     *     *     *     *


 白と黒の翼が翻り、爆風をやり過ごす。眼下には、圧倒的という言葉すら生温い、膨大な魔力と光の渦。・・・・ディスティアは、アリエスに言われたことを破り、レティス・シティ上空へ来ていた。
「これは・・・・何が起こった!?この魔力、これは、『時』の・・・・・・・・」
 自身の考えを纏めるためだろう、ディスティアは誰にとも無く呟くが、それがあまり効果を挙げているようには思えない。・・・・・・・・と、光の渦が一瞬揺らいだ。次の瞬間、光は中心に向かって収縮する。やがて、完全に光が消えたときには・・・・レティス・シティであったはずの場所は、草一本、瓦礫の一欠けらすらない荒野へと姿を変えていた。ディスティアは、街の様子には構わず目を凝らす。光の中心を見極めるために。
 そこに立っていたのは、異国風の服を着た白亜の人物・・・・ルシル。その手に、完全に意識を失ったアリエスを抱えて・・・・。
「降りてきたらどうだい?赤き魔の姫君。」
「!」
 遥か上空にいて、気付かれるはずなどないはずだったディスティアを、ルシルはいとも簡単に見つけ出し、呼ぶ。ディスティアは驚きながらもアリエスが気になって、ルシルの言葉に従った。
「お前は・・・・!?」
 ディスティアの問いに、ルシルは僅かに笑みを浮かべて答える。
「ああ、そうだね・・・・。降魔戦争のときは、僕は直接君と会ってはいなかったね。・・・・僕は、降魔戦争の折、『ルシル=グラディウス』と名乗っていたもの。魔族ならば、『レイノリス』か『レイズファータ』の方がよく解るかな?」
 ディスティアは、次の瞬間何かを言おうとしたようだった。しかし、その言葉はルシルの言葉によって遮られる。
「恐らく、君の想像している通りのものだよ。でも、今日からは『放浪の語り部』だ。」
 最後の一言だけは、ほんの少しからかいを含んだ声で、それでもどこか誇らしげに宣言する。と、ルシルは少しだけ目を眇めて、ディスティアを眺めた。
「君の目的は、アリエスだろう?見ての通り、時が止まっている上で眠っているから、手出しは出来ないよ。君の目的は・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・アリエスの中の、赤き魔王の欠片かい?」
「違う!・・・・いや、違わないが、それが全てではない。」
 ルシルのかけた問いに、ディスティアは即答した。それこそが、ディスティアがそれを知っていた証であり・・・・それが真実である証でもある。
 ルシルは面白そうに嗤うと、続きを促した。
「アリエスは、友だと・・・・私は、そう思っている。父に・・・・魔王様に会いたいという気持ちもあるが、今日ここへ来たのは、アリエスに会いたかったからだ。・・・・・・・・魔族としては、異端もいいところな感情なのだろうがな。」
 聞かせているのか、呟いているのか、よく解らぬ声でディスティアは言った。ルシルは、不思議そうにディスティアを眺めた後、朗々と言った。
「闇の最果ては光に、光の最果ては闇に、それぞれが近づいてゆく。元は同じ混沌より生まれ出でた故だろうか・・・・?」
「何?」
「光色と闇色の翼を持つ魔の姫君。君の翼は風を捕えるためでなく、思いを貫き高みに駆け上るためのもののようだ。心ゆえに思いに羽ばたき、心ゆえに思いに流され天を舞う・・・・《流思の天翼》と呼ぶが相応しかろうか。君は、魔族でありながら、どこか光に近い気がするよ。」
 にまりと笑い、ルシルはアリエスを示す。
「アリエスは、しばらく起きないよ。心は『眠り』で、体は『時』で、それぞれ封じられたから。しばらくは、放っておいたほうがいいんじゃないかい?」
ルシルと共に、アリエスも光に包まれる。その光が『転移』の魔法であるとわかっても、ディスティアは何もすることが出来ない。
「因と果を紡ぎ、織り成される時。綾なすその道の交錯点にて、また会おう、《流思の天翼》。」
 そして、光は消え去り、二人の姿もまた、消える。
 魔力を含んで吹く風が、残されたディスティアの髪を揺らしていった。





 そして、それから約500年の時が過ぎて。ディスティアはルシルの予言どおり再会することとなる。
 相も変らぬ笑みを浮かべたルシル・・・・『放浪の語り部』と・・・・

 ・・・・・・・・変わらぬ姿の友人に。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 少々長くなりましたが、これにて外伝は終わりです。
 次回から、また本編を進めていくので、よろしくお願いします。
 では、徒然之四でも書きました次回予告をもう一度。
   求めるものは旅立ち。しかし、乙女の傷は深くて。
   癒しを必要とする者は、思い出の内にて翼を休める。
   眠りの傍らにて語られる思いは、誇り高くも優しき誓い。
   そして、再び物語は流れ始める。
  次回、『時の旅人』48話、『友への誓い』
 では、今度は本編でお会いしましょう!

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17688涙洪水警報&暴走注意報発令(本気と書いて、マジに滝涙。)十叶 夕海 2006/6/5 22:17:33
記事番号17686へのコメント



ユア:こんにちは、ユアです。
久遠;久遠よ。
ユア;これを最初に読んだのは、学校行く直前だったのですが、マジ泣きしてしまい、常識的な女子ならば、学校行けるかーという程度に目が腫れてしまいました。
久遠;珍しいわね。
   ・・・・レス行きましょ。


> 白。
> 目の前が純白に塗りつぶされる。・・・・いや、目は閉じている。それでもなお、瞼を貫き閃光は瞳を刺す。
> 瞳だけではない。溢れる光の一粒一粒が次々と体を貫き、カラダを作り変えていく。
>   イタイ
>   クルシイ
>   ツライ
> 言葉にするならそうであろうに、思いは千々に乱れ言葉すら脳裏から消し飛ばす。そんな爆光の中で、少女・・・・アリエスは、リブラを『見た』。リブラの口の端から、一筋の血が流れている。涙を、嗚咽を堪えるために噛み締めたその歯が、唇を噛み切っているのだ。瞳を閉じていても、アリエスにはなぜかそれが解った。
>だから、アリエスはゆっくりと目を開く。純白の光の中で、視力は全く使い物にならないとわかっていても・・・・。アリエスはリブラを気配で探し、微笑みかける。そして、口を動かし、声にならない声を紡ぐ。
>
>  大丈夫ダヨ 姉様
>
>途切れゆく意識の中、アリエスはもう一度微笑んで、目を閉じた。
>

ユア:この時点で、涙しちゃいました。
久遠;下でも、リブラちゃん自身言っているけど、こういうことになった原因なのに、『姉』と呼べるなんて、アリエスちゃん、強いわね。
ユア;・・・でもぉ・・・・・


>
>
> けぶるような微笑を浮かべ、アリエスの体が脱力する。『時』からの切り離しと、『眠り』・・・・その二つの術によって。口元に血を滴らせながら、リブラは泣き顔に近い笑みを浮かべた。
> 光は、まだ収まらない。それどころか、徐々に強まっていく。家を包み込み、街に溢れ・・・・触れたもの全てを消失させながら。
> リブラ本人も、影響を受けずにはいられなかった。他のもののように、一瞬にして消失することは無かったものの、体の端々が無機物のように崩れ、光に還元されていく。

ユア;・・・・・・
久遠;・・肉体的だけじゃなくて、精神的というか霊魂的にも、消滅とみていいかしら?(見ていられないように、顔を背けるように)

> と、一瞬光が弱まった。そして、そこに光よりも更に白い人物が現れる。まともに目を開けていられないであろう光の中にあって、その人物だけは、なぜかはっきりと見える。・・・・白い異国風の衣を纏った、白亜の人物。服装は違えど、リブラはその人物を知っていた。
>「ルシルね。・・・・久しぶり。」
>「久しいね。随分なことになっているじゃないか。『時の力』が暴走している。・・・・・・・・止めようか?」
> 光の中に平然と立ち、ルシルは辺りを示し、言う。リブラはしかし、首を横に振った。
>「いいの・・・・。このままでいいの。でないと、術が完成しないわ。」
>「命をもって、術を構成したのか・・・・。馬鹿なことを。何が、君をそこまでさせるのかな?」
> リブラの左腕が、崩れて光となる。それでも、リブラは笑って言う。
>「アリエスが・・・・『姉』と呼んでくれたの。」
>「?」
>「全部知った上で・・・・アリエスに私の役目を押し付けて・・・・本当は『姉』じゃないとわかっていても、それでもアリエスは最後に『姉』と呼んでくれた。ねえ、ルシル・・・・だから、私はあの子の『姉』なのよ。」
>「それで?」
> リブラの体が、光に紛れる。半透明になった体で、しかしリブラは誇らしげに言う。
>「『妹』が命懸けで頑張ってくれたんですもの、『姉』の私が頑張らなくてどうするの?」
>「・・・・・・・・!」


ユア:・・・・・みゅみゅぅ〜!!
久遠;なになに・・・本当の姉妹じゃなかったけど、本当の姉妹より姉妹らしい・・・リブラさんの言葉が・・少し痛ましいけど逆に、切なくて泣けるって・・・言葉で言いなさいよ。
ユア;・・・・・・・みゅっみゅ〜。
久遠:言えるか!!ね。

> 口よりも雄弁にものを語っていたルシルの瞳が、初めて動揺を映した。
>「アリエスのためだけか、と聞かれれば、そうじゃない、と答えるしかないけれど・・・・それでも、今の『シーシェンズ』や『ヴェルリュード』にアリエスを任せたくなかった。・・・・・・・・あいつら、何であんなに狂っちゃったんだろう・・・・?」
> 一瞬、リブラの瞳が愁いに翳る。ルシルは、静かに口を開いた。
>「時を止めずに意思だけ奪い、瘴気に飲み込まれたら殺す・・・・か。そんな風に力を使うとは・・・・ね。」
>「だから、アリエスは渡せない・・・・渡さない。でも、今のままじゃいつかは・・・・・・・・。だから・・・・」
> リブラの姿が一層薄まる。それでも、その瞳はまっすぐにルシルを見つめていた。
>「ルシル。私の術による『眠り』は、せいぜい持って300年。だから、お願い、それまでアリエスを守って。その後は、アリエスを導いて!」
> リブラの必死の声に、しかしルシルは無感情の声で応じる。
>「守るのはともかく、導くことはできない。そこまでの干渉は許されない。」
>「ならば・・・・せめて見届けて。あの子の行く道を・・・・。お願いよ、ルシル・・・・・・・・『レイノリス』。」
> ルシルは、目を伏せた。しばしの沈黙が辺りを包む。光と同化しつつあるリブラの前に、ルシルは覚悟を決めた。
>「わかった。見届けよう、アリエスの歩むその道を。導くことは出来ずとも、せめて、心と真実を語り伝えよう。ルシル=グラディウスと、レイノリスの名において。・・・・これは、誓約だ。」
> リブラは、それを聞いて安心したように息をついた。
>「ありがとう。・・・・無理難題を言ってごめんね?」
>「いや・・・・。ある意味、最も卑怯な逃げ道だよ。『導かす、伝えるだけ』・・・・って。」
>「あら?そんな事言ったら、吟遊詩人や語り部はどうなるの?立派な職業じゃない。・・・・同じことよ。情報があれば考えることが出来るわ。」
> 笑って言ったリブラに、ルシルは呆気にとられたような顔をする。それが、優しい苦笑に変わるまで、そう時間はかからなかった。
>「じゃあ、今日から僕は『語り部』、か。」
>「似合うじゃない。ルシル、前に吟遊詩人の服着てたときもよく似合ってたものね。そうね・・・・気ままに世界を巡り歩き、言の葉を伝える『放浪の語り部』ってどう?」
> 冗談めかして言い、二人は笑いあう。リブラの姿は、もうほとんど見えなくなっていたが、二人の会話は朗らかで。それでもルシルは、最後にどうしても一言言わずには居れなかった。
>「・・・・本当に、後悔しないね?ここで消えることを。」
>「うん。もう、決めたから。」
>「そうか・・・・。」
> その声に、寂しげな響きが含まれてしまったのはいかんともしがたいが、それでもルシルは強引に引き止めようとはしなかった。・・・・それが、『友』の選択ならば。
>だからせめて、ルシルは笑った。務めて明るい声で、最後の言葉を言うために。
>「さようなら、リブラ。・・・・我が友よ。」
> 瞬間、リブラの姿が完全に光に還元される。その一刹那前に紡がれたリブラの声が、ルシルに届く前に。
>『さよなら、ルシル。・・・・ありがとう・・・・・・・・』
> 移ろう光の中から響いたその声を聞き届け、ルシルは短い黙祷を捧げた。

ユア;最期なのに、街角で少し再会して、また会おうって感じなのに、語り部さんはリブラさんと会うことがないんだな。
久遠;リブラちゃん、安らかに。
   その魂に、平穏を。
ユア;・・・・らしくないけど、らしい言葉ね、久遠。
久遠;・・・それだけ、リブラちゃんは嫌いじゃなかったわ。



>
>
> 白と黒の翼が翻り、爆風をやり過ごす。眼下には、圧倒的という言葉すら生温い、膨大な魔力と光の渦。・・・・ディスティアは、アリエスに言われたことを破り、レティス・シティ上空へ来ていた。

ユア;ある意味、予想通り。
久遠;ディスちゃんなら、来そうだものね、『来るな』言われれば・・・・ねぇ。

>
> そこに立っていたのは、異国風の服を着た白亜の人物・・・・ルシル。その手に、完全に意識を失ったアリエスを抱えて・・・・。
>「降りてきたらどうだい?赤き魔の姫君。」
>「!」
> 遥か上空にいて、気付かれるはずなどないはずだったディスティアを、ルシルはいとも簡単に見つけ出し、呼ぶ。ディスティアは驚きながらもアリエスが気になって、ルシルの言葉に従った。
>「お前は・・・・!?」
> ディスティアの問いに、ルシルは僅かに笑みを浮かべて答える。
>「ああ、そうだね・・・・。降魔戦争のときは、僕は直接君と会ってはいなかったね。・・・・僕は、降魔戦争の折、『ルシル=グラディウス』と名乗っていたもの。魔族ならば、『レイノリス』か『レイズファータ』の方がよく解るかな?」

ユア;なんか、因縁深そうですね。
久遠:このへんに、ゼロスちゃんが、語り部ちゃんを嫌う理由があるのかしらね。

> ディスティアは、次の瞬間何かを言おうとしたようだった。しかし、その言葉はルシルの言葉によって遮られる。
>「恐らく、君の想像している通りのものだよ。でも、今日からは『放浪の語り部』だ。」
> 最後の一言だけは、ほんの少しからかいを含んだ声で、それでもどこか誇らしげに宣言する。と、ルシルは少しだけ目を眇めて、ディスティアを眺めた。
>「君の目的は、アリエスだろう?見ての通り、時が止まっている上で眠っているから、手出しは出来ないよ。君の目的は・・・・・・・・
> ・・・・・・・・・・・・アリエスの中の、赤き魔王の欠片かい?」
>「違う!・・・・いや、違わないが、それが全てではない。」
> ルシルのかけた問いに、ディスティアは即答した。それこそが、ディスティアがそれを知っていた証であり・・・・それが真実である証でもある。
> ルシルは面白そうに嗤うと、続きを促した。
>「アリエスは、友だと・・・・私は、そう思っている。父に・・・・魔王様に会いたいという気持ちもあるが、今日ここへ来たのは、アリエスに会いたかったからだ。・・・・・・・・魔族としては、異端もいいところな感情なのだろうがな。」
> 聞かせているのか、呟いているのか、よく解らぬ声でディスティアは言った。ルシルは、不思議そうにディスティアを眺めた後、朗々と言った。

ユア;すごいディスティアらしいと言うか。
久遠;ユアちゃんが書くより、いいかも。


>「闇の最果ては光に、光の最果ては闇に、それぞれが近づいてゆく。元は同じ混沌より生まれ出でた故だろうか・・・・?」
>「何?」
>「光色と闇色の翼を持つ魔の姫君。君の翼は風を捕えるためでなく、思いを貫き高みに駆け上るためのもののようだ。心ゆえに思いに羽ばたき、心ゆえに思いに流され天を舞う・・・・《流思の天翼》と呼ぶが相応しかろうか。君は、魔族でありながら、どこか光に近い気がするよ。」
> にまりと笑い、ルシルはアリエスを示す。
>「アリエスは、しばらく起きないよ。心は『眠り』で、体は『時』で、それぞれ封じられたから。しばらくは、放っておいたほうがいいんじゃないかい?」
>ルシルと共に、アリエスも光に包まれる。その光が『転移』の魔法であるとわかっても、ディスティアは何もすることが出来ない。
>「因と果を紡ぎ、織り成される時。綾なすその道の交錯点にて、また会おう、《流思の天翼》。」
> そして、光は消え去り、二人の姿もまた、消える。
> 魔力を含んで吹く風が、残されたディスティアの髪を揺らしていった。
>
>
>
>
>
> そして、それから約500年の時が過ぎて。ディスティアはルシルの予言どおり再会することとなる。
> 相も変らぬ笑みを浮かべたルシル・・・・『放浪の語り部』と・・・・
>
> ・・・・・・・・変わらぬ姿の友人に。

ユア;泣かせていただきました。
   着ていく予定だったTシャツが着ていけなくなるぐらいには。
   ディスティアの親として・・・・いいえ、一読者として、ありがとうございました。

>
>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
>
> 少々長くなりましたが、これにて外伝は終わりです。
> 次回から、また本編を進めていくので、よろしくお願いします。
> では、徒然之四でも書きました次回予告をもう一度。
>   求めるものは旅立ち。しかし、乙女の傷は深くて。
>   癒しを必要とする者は、思い出の内にて翼を休める。
>   眠りの傍らにて語られる思いは、誇り高くも優しき誓い。
>   そして、再び物語は流れ始める。
>  次回、『時の旅人』48話、『友への誓い』
> では、今度は本編でお会いしましょう!
>

ユア;はい!!
久遠;待ってるわ。
二人;では、本編で。

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17690・・・・・・・・ありがとうございます。羅城 朱琉 2006/6/6 08:47:37
記事番号17688へのコメント


>
>
>ユア:こんにちは、ユアです。
>久遠;久遠よ。
>ユア;これを最初に読んだのは、学校行く直前だったのですが、マジ泣きしてしまい、常識的な女子ならば、学校行けるかーという程度に目が腫れてしまいました。
>久遠;珍しいわね。
>   ・・・・レス行きましょ。
朱琉:こんにちは、朱琉です。そう言って頂けると、作者冥利といいますか・・・・
アミイ:読み返して、朱琉自身微妙に涙ぐんでたけどね。
朱琉:書くときは集中して、ほとんど何かに乗り移られたように書くので・・・・。
 では、返レスです。

>
>
>> 白。
>> 目の前が純白に塗りつぶされる。・・・・いや、目は閉じている。それでもなお、瞼を貫き閃光は瞳を刺す。
>> 瞳だけではない。溢れる光の一粒一粒が次々と体を貫き、カラダを作り変えていく。
>>   イタイ
>>   クルシイ
>>   ツライ
>> 言葉にするならそうであろうに、思いは千々に乱れ言葉すら脳裏から消し飛ばす。そんな爆光の中で、少女・・・・アリエスは、リブラを『見た』。リブラの口の端から、一筋の血が流れている。涙を、嗚咽を堪えるために噛み締めたその歯が、唇を噛み切っているのだ。瞳を閉じていても、アリエスにはなぜかそれが解った。
>>だから、アリエスはゆっくりと目を開く。純白の光の中で、視力は全く使い物にならないとわかっていても・・・・。アリエスはリブラを気配で探し、微笑みかける。そして、口を動かし、声にならない声を紡ぐ。
>>
>>  大丈夫ダヨ 姉様
>>
>>途切れゆく意識の中、アリエスはもう一度微笑んで、目を閉じた。
>>
>
>ユア:この時点で、涙しちゃいました。
>久遠;下でも、リブラちゃん自身言っているけど、こういうことになった原因なのに、『姉』と呼べるなんて、アリエスちゃん、強いわね。
>ユア;・・・でもぉ・・・・・
アミイ:あえて心境を代弁するならば、『例え偽りであったとしても、例え何が起ころうとも、これまで過ごした時間は消えません。そして、その内で培った思いも。』といったとこかしら?
朱琉:とはいえ、そんなことは後で付け足した理由でしかないでしょう。この時点では、ただ、苦しそうな姉を安心させたかっただけで。
アミイ:・・・・・・・・アリエスちゃんは、お姉さんが大好きだったのね。

>
>
>>
>>
>> けぶるような微笑を浮かべ、アリエスの体が脱力する。『時』からの切り離しと、『眠り』・・・・その二つの術によって。口元に血を滴らせながら、リブラは泣き顔に近い笑みを浮かべた。
>> 光は、まだ収まらない。それどころか、徐々に強まっていく。家を包み込み、街に溢れ・・・・触れたもの全てを消失させながら。
>> リブラ本人も、影響を受けずにはいられなかった。他のもののように、一瞬にして消失することは無かったものの、体の端々が無機物のように崩れ、光に還元されていく。
>
>ユア;・・・・・・
>久遠;・・肉体的だけじゃなくて、精神的というか霊魂的にも、消滅とみていいかしら?(見ていられないように、顔を背けるように)
朱琉:その通りです。もう忘れられてるかもしれませんが、かなり昔の徒然編に出てきたプリムラさんと同じ、魂の欠片も残さぬ完璧な消滅です。
アミイ:この世界・・・・というか、『輪転の女王(レジーナ・オブ・クロノス)』の支配する時間世界において『輪廻転生』は存在しないけど、もしあったとしても、生まれ変わることも叶わない、そんな『消滅』。・・・・・・・・悲しいけど・・・・ね。

>
>> と、一瞬光が弱まった。そして、そこに光よりも更に白い人物が現れる。まともに目を開けていられないであろう光の中にあって、その人物だけは、なぜかはっきりと見える。・・・・白い異国風の衣を纏った、白亜の人物。服装は違えど、リブラはその人物を知っていた。
>>「ルシルね。・・・・久しぶり。」
>>「久しいね。随分なことになっているじゃないか。『時の力』が暴走している。・・・・・・・・止めようか?」
>> 光の中に平然と立ち、ルシルは辺りを示し、言う。リブラはしかし、首を横に振った。
>>「いいの・・・・。このままでいいの。でないと、術が完成しないわ。」
>>「命をもって、術を構成したのか・・・・。馬鹿なことを。何が、君をそこまでさせるのかな?」
>> リブラの左腕が、崩れて光となる。それでも、リブラは笑って言う。
>>「アリエスが・・・・『姉』と呼んでくれたの。」
>>「?」
>>「全部知った上で・・・・アリエスに私の役目を押し付けて・・・・本当は『姉』じゃないとわかっていても、それでもアリエスは最後に『姉』と呼んでくれた。ねえ、ルシル・・・・だから、私はあの子の『姉』なのよ。」
>>「それで?」
>> リブラの体が、光に紛れる。半透明になった体で、しかしリブラは誇らしげに言う。
>>「『妹』が命懸けで頑張ってくれたんですもの、『姉』の私が頑張らなくてどうするの?」
>>「・・・・・・・・!」
>
>
>ユア:・・・・・みゅみゅぅ〜!!
>久遠;なになに・・・本当の姉妹じゃなかったけど、本当の姉妹より姉妹らしい・・・リブラさんの言葉が・・少し痛ましいけど逆に、切なくて泣けるって・・・言葉で言いなさいよ。
>ユア;・・・・・・・みゅっみゅ〜。
>久遠:言えるか!!ね。
朱琉:・・・・・・・・・・・・・・・・。
アミイ:何黙り込んでるの?・・・・え?これがリブラさんの本心なんです。って?で・・・・血のつながりは無い・・・・もとい、薄いけど、二人は紛う事無き『姉妹』だったんです、って?・・・・自分で言えば?
朱琉:言いたいんですけど・・・・・っ!ああぁ〜!!私の乏しいボキャブラリーが憎い!言いたい言葉がうまく言えない〜っ!!!!

>
>> 口よりも雄弁にものを語っていたルシルの瞳が、初めて動揺を映した。
>>「アリエスのためだけか、と聞かれれば、そうじゃない、と答えるしかないけれど・・・・それでも、今の『シーシェンズ』や『ヴェルリュード』にアリエスを任せたくなかった。・・・・・・・・あいつら、何であんなに狂っちゃったんだろう・・・・?」
>> 一瞬、リブラの瞳が愁いに翳る。ルシルは、静かに口を開いた。
>>「時を止めずに意思だけ奪い、瘴気に飲み込まれたら殺す・・・・か。そんな風に力を使うとは・・・・ね。」
>>「だから、アリエスは渡せない・・・・渡さない。でも、今のままじゃいつかは・・・・・・・・。だから・・・・」
>> リブラの姿が一層薄まる。それでも、その瞳はまっすぐにルシルを見つめていた。
>>「ルシル。私の術による『眠り』は、せいぜい持って300年。だから、お願い、それまでアリエスを守って。その後は、アリエスを導いて!」
>> リブラの必死の声に、しかしルシルは無感情の声で応じる。
>>「守るのはともかく、導くことはできない。そこまでの干渉は許されない。」
>>「ならば・・・・せめて見届けて。あの子の行く道を・・・・。お願いよ、ルシル・・・・・・・・『レイノリス』。」
>> ルシルは、目を伏せた。しばしの沈黙が辺りを包む。光と同化しつつあるリブラの前に、ルシルは覚悟を決めた。
>>「わかった。見届けよう、アリエスの歩むその道を。導くことは出来ずとも、せめて、心と真実を語り伝えよう。ルシル=グラディウスと、レイノリスの名において。・・・・これは、誓約だ。」
>> リブラは、それを聞いて安心したように息をついた。
>>「ありがとう。・・・・無理難題を言ってごめんね?」
>>「いや・・・・。ある意味、最も卑怯な逃げ道だよ。『導かす、伝えるだけ』・・・・って。」
>>「あら?そんな事言ったら、吟遊詩人や語り部はどうなるの?立派な職業じゃない。・・・・同じことよ。情報があれば考えることが出来るわ。」
>> 笑って言ったリブラに、ルシルは呆気にとられたような顔をする。それが、優しい苦笑に変わるまで、そう時間はかからなかった。
>>「じゃあ、今日から僕は『語り部』、か。」
>>「似合うじゃない。ルシル、前に吟遊詩人の服着てたときもよく似合ってたものね。そうね・・・・気ままに世界を巡り歩き、言の葉を伝える『放浪の語り部』ってどう?」
>> 冗談めかして言い、二人は笑いあう。リブラの姿は、もうほとんど見えなくなっていたが、二人の会話は朗らかで。それでもルシルは、最後にどうしても一言言わずには居れなかった。
>>「・・・・本当に、後悔しないね?ここで消えることを。」
>>「うん。もう、決めたから。」
>>「そうか・・・・。」
>> その声に、寂しげな響きが含まれてしまったのはいかんともしがたいが、それでもルシルは強引に引き止めようとはしなかった。・・・・それが、『友』の選択ならば。
>>だからせめて、ルシルは笑った。務めて明るい声で、最後の言葉を言うために。
>>「さようなら、リブラ。・・・・我が友よ。」
>> 瞬間、リブラの姿が完全に光に還元される。その一刹那前に紡がれたリブラの声が、ルシルに届く前に。
>>『さよなら、ルシル。・・・・ありがとう・・・・・・・・』
>> 移ろう光の中から響いたその声を聞き届け、ルシルは短い黙祷を捧げた。
>
>ユア;最期なのに、街角で少し再会して、また会おうって感じなのに、語り部さんはリブラさんと会うことがないんだな。
>久遠;リブラちゃん、安らかに。
>   その魂に、平穏を。
>ユア;・・・・らしくないけど、らしい言葉ね、久遠。
>久遠;・・・それだけ、リブラちゃんは嫌いじゃなかったわ。
アミイ:そのリブラちゃんの『思い』、今のアリエスちゃんは曲解してるのよね・・・・。
朱琉:リブラは、本当にアリエスのために一生懸命だっただけなのに・・・・。
アミイ:リブラちゃんは、もういないけれど・・・・恒久の消失の果てにあるものが、どうか安らぎに等しいものでありますように・・・・。

>
>
>
>>
>>
>> 白と黒の翼が翻り、爆風をやり過ごす。眼下には、圧倒的という言葉すら生温い、膨大な魔力と光の渦。・・・・ディスティアは、アリエスに言われたことを破り、レティス・シティ上空へ来ていた。
>
>ユア;ある意味、予想通り。
>久遠;ディスちゃんなら、来そうだものね、『来るな』言われれば・・・・ねぇ。
朱琉:ミもフタも無いことを言ってしまえば・・・・いわゆる『お約束』です(苦笑)

>
>>
>> そこに立っていたのは、異国風の服を着た白亜の人物・・・・ルシル。その手に、完全に意識を失ったアリエスを抱えて・・・・。
>>「降りてきたらどうだい?赤き魔の姫君。」
>>「!」
>> 遥か上空にいて、気付かれるはずなどないはずだったディスティアを、ルシルはいとも簡単に見つけ出し、呼ぶ。ディスティアは驚きながらもアリエスが気になって、ルシルの言葉に従った。
>>「お前は・・・・!?」
>> ディスティアの問いに、ルシルは僅かに笑みを浮かべて答える。
>>「ああ、そうだね・・・・。降魔戦争のときは、僕は直接君と会ってはいなかったね。・・・・僕は、降魔戦争の折、『ルシル=グラディウス』と名乗っていたもの。魔族ならば、『レイノリス』か『レイズファータ』の方がよく解るかな?」
>
>ユア;なんか、因縁深そうですね。
>久遠:このへんに、ゼロスちゃんが、語り部ちゃんを嫌う理由があるのかしらね。
朱琉:嫌う・・・・って言うより、畏れている、でしょうか?
アミイ:語り部さんの正体、魔族上層部は皆知ってるからねぇ。

>
>> ディスティアは、次の瞬間何かを言おうとしたようだった。しかし、その言葉はルシルの言葉によって遮られる。
>>「恐らく、君の想像している通りのものだよ。でも、今日からは『放浪の語り部』だ。」
>> 最後の一言だけは、ほんの少しからかいを含んだ声で、それでもどこか誇らしげに宣言する。と、ルシルは少しだけ目を眇めて、ディスティアを眺めた。
>>「君の目的は、アリエスだろう?見ての通り、時が止まっている上で眠っているから、手出しは出来ないよ。君の目的は・・・・・・・・
>> ・・・・・・・・・・・・アリエスの中の、赤き魔王の欠片かい?」
>>「違う!・・・・いや、違わないが、それが全てではない。」
>> ルシルのかけた問いに、ディスティアは即答した。それこそが、ディスティアがそれを知っていた証であり・・・・それが真実である証でもある。
>> ルシルは面白そうに嗤うと、続きを促した。
>>「アリエスは、友だと・・・・私は、そう思っている。父に・・・・魔王様に会いたいという気持ちもあるが、今日ここへ来たのは、アリエスに会いたかったからだ。・・・・・・・・魔族としては、異端もいいところな感情なのだろうがな。」
>> 聞かせているのか、呟いているのか、よく解らぬ声でディスティアは言った。ルシルは、不思議そうにディスティアを眺めた後、朗々と言った。
>
>ユア;すごいディスティアらしいと言うか。
>久遠;ユアちゃんが書くより、いいかも。
朱琉:お母様(?)にそう言って頂けるとは・・・・・・・・(感涙)
アミイ:うれし泣きしない。ここ学校で、しかもロビー。

>
>
>>「闇の最果ては光に、光の最果ては闇に、それぞれが近づいてゆく。元は同じ混沌より生まれ出でた故だろうか・・・・?」
>>「何?」
>>「光色と闇色の翼を持つ魔の姫君。君の翼は風を捕えるためでなく、思いを貫き高みに駆け上るためのもののようだ。心ゆえに思いに羽ばたき、心ゆえに思いに流され天を舞う・・・・《流思の天翼》と呼ぶが相応しかろうか。君は、魔族でありながら、どこか光に近い気がするよ。」
>> にまりと笑い、ルシルはアリエスを示す。
>>「アリエスは、しばらく起きないよ。心は『眠り』で、体は『時』で、それぞれ封じられたから。しばらくは、放っておいたほうがいいんじゃないかい?」
>>ルシルと共に、アリエスも光に包まれる。その光が『転移』の魔法であるとわかっても、ディスティアは何もすることが出来ない。
>>「因と果を紡ぎ、織り成される時。綾なすその道の交錯点にて、また会おう、《流思の天翼》。」
>> そして、光は消え去り、二人の姿もまた、消える。
>> 魔力を含んで吹く風が、残されたディスティアの髪を揺らしていった。
>>
>>
>>
>>
>>
>> そして、それから約500年の時が過ぎて。ディスティアはルシルの予言どおり再会することとなる。
>> 相も変らぬ笑みを浮かべたルシル・・・・『放浪の語り部』と・・・・
>>
>> ・・・・・・・・変わらぬ姿の友人に。
>
>ユア;泣かせていただきました。
>   着ていく予定だったTシャツが着ていけなくなるぐらいには。
>   ディスティアの親として・・・・いいえ、一読者として、ありがとうございました。
朱琉:そう言って頂けて本当に良かったと、今しみじみと思っています。
アミイ:ディスちゃんも、アリエスも、この『時の旅人』の中でも、幸せになって欲しいわ・・・・。
朱琉:それを目指して、頑張ります。

>
>>
>>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
>>
>> 少々長くなりましたが、これにて外伝は終わりです。
>> 次回から、また本編を進めていくので、よろしくお願いします。
>> では、徒然之四でも書きました次回予告をもう一度。
>>   求めるものは旅立ち。しかし、乙女の傷は深くて。
>>   癒しを必要とする者は、思い出の内にて翼を休める。
>>   眠りの傍らにて語られる思いは、誇り高くも優しき誓い。
>>   そして、再び物語は流れ始める。
>>  次回、『時の旅人』48話、『友への誓い』
>> では、今度は本編でお会いしましょう!
>>
>
>ユア;はい!!
>久遠;待ってるわ。
>二人;では、本編で。
朱琉:はい、それでは、また!
二人:また次回!


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17689Re:かつてはあった平穏?な日々 4:Wandering Teller 〜Lucill〜神高 紅 2006/6/5 23:27:29
記事番号17686へのコメント

紅:どーもこんばんはorこんにちはです。神高紅でする。
ア:こんばんはだ朱琉殿。紅髪の狂科学者アイリスちゃんだよ。いやあ実に九ヶ月ぶりだねえ。
紅:うん。多分向こうはもう覚えてないよアイリス。
ア:ううっそんな・・・アイリスちゃん悲しいわ(注:嘘泣き)
紅:・・・・・・えー、一応このアイリスはそちらに送ったアイリスとは並行存在と言うことで。では感想レスに行かせて貰います。
> けぶるような微笑を浮かべ、アリエスの体が脱力する。『時』からの切り離しと、『眠り』・・・・その二つの術によって。口元に血を滴らせながら、リブラは泣き顔に近い笑みを浮かべた。
> 光は、まだ収まらない。それどころか、徐々に強まっていく。家を包み込み、街に溢れ・・・・触れたもの全てを消失させながら。
> リブラ本人も、影響を受けずにはいられなかった。他のもののように、一瞬にして消失することは無かったものの、体の端々が無機物のように崩れ、光に還元されていく。
ア:ふむ・・・よくはわからないんだけどさ、これって自身という存在ごと還元されてるのかい?
紅:何言ってるかわかんにゃい・・・
ア:よーするに、肉体だけ光になってるんじゃなくて魂ごとの還元なのかってことよ。
紅:つまり、混沌に還らないってことですか?この描写だけじゃわかんないですねえ。
> と、一瞬光が弱まった。そして、そこに光よりも更に白い人物が現れる。まともに目を開けていられないであろう光の中にあって、その人物だけは、なぜかはっきりと見える。・・・・白い異国風の衣を纏った、白亜の人物。服装は違えど、リブラはその人物を知っていた。
>「ルシルね。・・・・久しぶり。」
>「久しいね。随分なことになっているじゃないか。『時の力』が暴走している。・・・・・・・・止めようか?」
> 光の中に平然と立ち、ルシルは辺りを示し、言う。リブラはしかし、首を横に振った。
>「いいの・・・・。このままでいいの。でないと、術が完成しないわ。」
>「命をもって、術を構成したのか・・・・。馬鹿なことを。何が、君をそこまでさせるのかな?」
> リブラの左腕が、崩れて光となる。それでも、リブラは笑って言う。
>「アリエスが・・・・『姉』と呼んでくれたの。」
>「?」
>「全部知った上で・・・・アリエスに私の役目を押し付けて・・・・本当は『姉』じゃないとわかっていても、それでもアリエスは最後に『姉』と呼んでくれた。ねえ、ルシル・・・・だから、私はあの子の『姉』なのよ。」
>「それで?」
> リブラの体が、光に紛れる。半透明になった体で、しかしリブラは誇らしげに言う。
>「『妹』が命懸けで頑張ってくれたんですもの、『姉』の私が頑張らなくてどうするの?」
紅:姉妹とか兄弟とか親子とか、家族ってのは血の繋がりだけじゃない何かがあるんじゃないですかね。
ア:かかか、そーゆう非科学的なもんもこの世にはあるのよねえ。
>「・・・・・・・・!」
> 口よりも雄弁にものを語っていたルシルの瞳が、初めて動揺を映した。
>「アリエスのためだけか、と聞かれれば、そうじゃない、と答えるしかないけれど・・・・それでも、今の『シーシェンズ』や『ヴェルリュード』にアリエスを任せたくなかった。・・・・・・・・あいつら、何であんなに狂っちゃったんだろう・・・・?」
> 一瞬、リブラの瞳が愁いに翳る。ルシルは、静かに口を開いた。
>「時を止めずに意思だけ奪い、瘴気に飲み込まれたら殺す・・・・か。そんな風に力を使うとは・・・・ね。」
>「だから、アリエスは渡せない・・・・渡さない。でも、今のままじゃいつかは・・・・・・・・。だから・・・・」
ア:狂気は誰にでも何処にでもあるのさ。もしかしたら彼らもはなから狂ってたのかもしれないね、私のようにね・・・
紅:それに純粋にアリエスのためだけじゃなくてもいいんじゃないでしょうか。それくらいの気持ちで丁度いいんですよ。完善なんてものはないんですから。
>「守るのはともかく、導くことはできない。そこまでの干渉は許されない。」
>「ならば・・・・せめて見届けて。あの子の行く道を・・・・。お願いよ、ルシル・・・・・・・・『レイノリス』。」
> ルシルは、目を伏せた。しばしの沈黙が辺りを包む。光と同化しつつあるリブラの前に、ルシルは覚悟を決めた。
>「わかった。見届けよう、アリエスの歩むその道を。導くことは出来ずとも、せめて、心と真実を語り伝えよう。ルシル=グラディウスと、レイノリスの名において。・・・・これは、誓約だ。」
> リブラは、それを聞いて安心したように息をついた。
>「ありがとう。・・・・無理難題を言ってごめんね?」
>「いや・・・・。ある意味、最も卑怯な逃げ道だよ。『導かす、伝えるだけ』・・・・って。」
>「あら?そんな事言ったら、吟遊詩人や語り部はどうなるの?立派な職業じゃない。・・・・同じことよ。情報があれば考えることが出来るわ。」
> 笑って言ったリブラに、ルシルは呆気にとられたような顔をする。それが、優しい苦笑に変わるまで、そう時間はかからなかった。
>「じゃあ、今日から僕は『語り部』、か。」
>「似合うじゃない。ルシル、前に吟遊詩人の服着てたときもよく似合ってたものね。そうね・・・・気ままに世界を巡り歩き、言の葉を伝える『放浪の語り部』ってどう?」
紅:これがあったから、彼(でよかったっけ?)『放浪の語り部』を名乗っているんですね。
ア:別に卑怯でもいいんじゃないかい?何もしないよりはしたほうがまあ、ちょっぴりはましだろうからねえ?
紅:何故意地悪く言うかな・・・
ア:いやいやついね(嫌な笑み)
>「君の目的は、アリエスだろう?見ての通り、時が止まっている上で眠っているから、手出しは出来ないよ。君の目的は・・・・・・・・
> ・・・・・・・・・・・・アリエスの中の、赤き魔王の欠片かい?」
>「違う!・・・・いや、違わないが、それが全てではない。」
> ルシルのかけた問いに、ディスティアは即答した。それこそが、ディスティアがそれを知っていた証であり・・・・それが真実である証でもある。
> ルシルは面白そうに嗤うと、続きを促した。
>「アリエスは、友だと・・・・私は、そう思っている。父に・・・・魔王様に会いたいという気持ちもあるが、今日ここへ来たのは、アリエスに会いたかったからだ。・・・・・・・・魔族としては、異端もいいところな感情なのだろうがな。」
ア:数がいれば異端も出るものよ。人と友になる魔がいても不思議じゃあないわ。
紅:どーでもいいですがさらっとすごい会話してますよねえ。
> 少々長くなりましたが、これにて外伝は終わりです。
> 次回から、また本編を進めていくので、よろしくお願いします。
> では、徒然之四でも書きました次回予告をもう一度。
>   求めるものは旅立ち。しかし、乙女の傷は深くて。
>   癒しを必要とする者は、思い出の内にて翼を休める。
>   眠りの傍らにて語られる思いは、誇り高くも優しき誓い。
>   そして、再び物語は流れ始める。
>  次回、『時の旅人』48話、『友への誓い』
> では、今度は本編でお会いしましょう!
ア:ではではーまた次回以降でね。まあ私じゃなくてコウクロのコンビだと思うけどねえ。
紅:ではさよーなら。あとどーでもいいんですが、そっちのアイリスは使えないんですがこのアイリスは徒然編でアリエスが使ってた「巻き戻し」が使えるので意外な共通点にビックリしたり。

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17691科学で証明できなくても・・・・羅城 朱琉 2006/6/6 09:06:35
記事番号17689へのコメント


>紅:どーもこんばんはorこんにちはです。神高紅でする。
>ア:こんばんはだ朱琉殿。紅髪の狂科学者アイリスちゃんだよ。いやあ実に九ヶ月ぶりだねえ。
>紅:うん。多分向こうはもう覚えてないよアイリス。
>ア:ううっそんな・・・アイリスちゃん悲しいわ(注:嘘泣き)
>紅:・・・・・・えー、一応このアイリスはそちらに送ったアイリスとは並行存在と言うことで。では感想レスに行かせて貰います。
朱琉:こんにちは。朱琉です。ちなみに、アイリスさん、忘れていませんよ。そして・・・・
アミイ:あなたのレスでは始めまして、ね。
朱琉:・・・・と、言うわけで、今回はアミイさんこと『華散夜の滅消者』アミリータさんと共に、返レスです。

>> けぶるような微笑を浮かべ、アリエスの体が脱力する。『時』からの切り離しと、『眠り』・・・・その二つの術によって。口元に血を滴らせながら、リブラは泣き顔に近い笑みを浮かべた。
>> 光は、まだ収まらない。それどころか、徐々に強まっていく。家を包み込み、街に溢れ・・・・触れたもの全てを消失させながら。
>> リブラ本人も、影響を受けずにはいられなかった。他のもののように、一瞬にして消失することは無かったものの、体の端々が無機物のように崩れ、光に還元されていく。
>ア:ふむ・・・よくはわからないんだけどさ、これって自身という存在ごと還元されてるのかい?
>紅:何言ってるかわかんにゃい・・・
>ア:よーするに、肉体だけ光になってるんじゃなくて魂ごとの還元なのかってことよ。
>紅:つまり、混沌に還らないってことですか?この描写だけじゃわかんないですねえ。
アミイ:で・・・・朱琉?
朱琉:判りにくくてすみません。はい、魂ごと還元されてます。混沌に還ることは出来ませんし、(『輪転の女王(レジーナ・オブ・クロノス)』の世界に輪廻転生はない、という設定ですが、あったとしても)生まれ変わることも出来ません。
アミイ:まったく・・・・きちんと書きなさい、きちんと!

>> と、一瞬光が弱まった。そして、そこに光よりも更に白い人物が現れる。まともに目を開けていられないであろう光の中にあって、その人物だけは、なぜかはっきりと見える。・・・・白い異国風の衣を纏った、白亜の人物。服装は違えど、リブラはその人物を知っていた。
>>「ルシルね。・・・・久しぶり。」
>>「久しいね。随分なことになっているじゃないか。『時の力』が暴走している。・・・・・・・・止めようか?」
>> 光の中に平然と立ち、ルシルは辺りを示し、言う。リブラはしかし、首を横に振った。
>>「いいの・・・・。このままでいいの。でないと、術が完成しないわ。」
>>「命をもって、術を構成したのか・・・・。馬鹿なことを。何が、君をそこまでさせるのかな?」
>> リブラの左腕が、崩れて光となる。それでも、リブラは笑って言う。
>>「アリエスが・・・・『姉』と呼んでくれたの。」
>>「?」
>>「全部知った上で・・・・アリエスに私の役目を押し付けて・・・・本当は『姉』じゃないとわかっていても、それでもアリエスは最後に『姉』と呼んでくれた。ねえ、ルシル・・・・だから、私はあの子の『姉』なのよ。」
>>「それで?」
>> リブラの体が、光に紛れる。半透明になった体で、しかしリブラは誇らしげに言う。
>>「『妹』が命懸けで頑張ってくれたんですもの、『姉』の私が頑張らなくてどうするの?」
>紅:姉妹とか兄弟とか親子とか、家族ってのは血の繋がりだけじゃない何かがあるんじゃないですかね。
>ア:かかか、そーゆう非科学的なもんもこの世にはあるのよねえ。
朱琉:そうですね。最先端の科学を駆使しても、心理学を学んでも、それで全てが解明できるような世の中ではないと思います。
アミイ:・・・・あんた医学系でしょ?その最先端・・・・かどうかは分からないけど、科学を武器に病気を発見するのが役目でしょ?
朱琉:・・・・・・・そういう方面だからこそ、科学の無力さを知ることもあるのです。

>>「・・・・・・・・!」
>> 口よりも雄弁にものを語っていたルシルの瞳が、初めて動揺を映した。
>>「アリエスのためだけか、と聞かれれば、そうじゃない、と答えるしかないけれど・・・・それでも、今の『シーシェンズ』や『ヴェルリュード』にアリエスを任せたくなかった。・・・・・・・・あいつら、何であんなに狂っちゃったんだろう・・・・?」
>> 一瞬、リブラの瞳が愁いに翳る。ルシルは、静かに口を開いた。
>>「時を止めずに意思だけ奪い、瘴気に飲み込まれたら殺す・・・・か。そんな風に力を使うとは・・・・ね。」
>>「だから、アリエスは渡せない・・・・渡さない。でも、今のままじゃいつかは・・・・・・・・。だから・・・・」
>ア:狂気は誰にでも何処にでもあるのさ。もしかしたら彼らもはなから狂ってたのかもしれないね、私のようにね・・・
>紅:それに純粋にアリエスのためだけじゃなくてもいいんじゃないでしょうか。それくらいの気持ちで丁度いいんですよ。完善なんてものはないんですから。
アミイ:その言葉、ぜひともリブラちゃんに聞かせてあげたいわ。
朱琉:ついでに、アリエスと語り部さんにも聞かせてあげてください。彼ら、その辺の考えがすっぽり抜ける傾向にあるので・・・・

>>「守るのはともかく、導くことはできない。そこまでの干渉は許されない。」
>>「ならば・・・・せめて見届けて。あの子の行く道を・・・・。お願いよ、ルシル・・・・・・・・『レイノリス』。」
>> ルシルは、目を伏せた。しばしの沈黙が辺りを包む。光と同化しつつあるリブラの前に、ルシルは覚悟を決めた。
>>「わかった。見届けよう、アリエスの歩むその道を。導くことは出来ずとも、せめて、心と真実を語り伝えよう。ルシル=グラディウスと、レイノリスの名において。・・・・これは、誓約だ。」
>> リブラは、それを聞いて安心したように息をついた。
>>「ありがとう。・・・・無理難題を言ってごめんね?」
>>「いや・・・・。ある意味、最も卑怯な逃げ道だよ。『導かす、伝えるだけ』・・・・って。」
>>「あら?そんな事言ったら、吟遊詩人や語り部はどうなるの?立派な職業じゃない。・・・・同じことよ。情報があれば考えることが出来るわ。」
>> 笑って言ったリブラに、ルシルは呆気にとられたような顔をする。それが、優しい苦笑に変わるまで、そう時間はかからなかった。
>>「じゃあ、今日から僕は『語り部』、か。」
>>「似合うじゃない。ルシル、前に吟遊詩人の服着てたときもよく似合ってたものね。そうね・・・・気ままに世界を巡り歩き、言の葉を伝える『放浪の語り部』ってどう?」
>紅:これがあったから、彼(でよかったっけ?)『放浪の語り部』を名乗っているんですね。
>ア:別に卑怯でもいいんじゃないかい?何もしないよりはしたほうがまあ、ちょっぴりはましだろうからねえ?
>紅:何故意地悪く言うかな・・・
>ア:いやいやついね(嫌な笑み)
アミイ:『ちょっぴり』でいいから、マシになれると良いわね。
朱琉:皆きっと、その『ちょっぴり』のために、皆頑張っているんですよ。

>>「君の目的は、アリエスだろう?見ての通り、時が止まっている上で眠っているから、手出しは出来ないよ。君の目的は・・・・・・・・
>> ・・・・・・・・・・・・アリエスの中の、赤き魔王の欠片かい?」
>>「違う!・・・・いや、違わないが、それが全てではない。」
>> ルシルのかけた問いに、ディスティアは即答した。それこそが、ディスティアがそれを知っていた証であり・・・・それが真実である証でもある。
>> ルシルは面白そうに嗤うと、続きを促した。
>>「アリエスは、友だと・・・・私は、そう思っている。父に・・・・魔王様に会いたいという気持ちもあるが、今日ここへ来たのは、アリエスに会いたかったからだ。・・・・・・・・魔族としては、異端もいいところな感情なのだろうがな。」
>ア:数がいれば異端も出るものよ。人と友になる魔がいても不思議じゃあないわ。
>紅:どーでもいいですがさらっとすごい会話してますよねえ。
朱琉:とんでもないことをさらっと言うのは、語り部さんの得意技(?)です。
アミイ:それに、異端だっていいと思うんだけどねぇ。

>> 少々長くなりましたが、これにて外伝は終わりです。
>> 次回から、また本編を進めていくので、よろしくお願いします。
>> では、徒然之四でも書きました次回予告をもう一度。
>>   求めるものは旅立ち。しかし、乙女の傷は深くて。
>>   癒しを必要とする者は、思い出の内にて翼を休める。
>>   眠りの傍らにて語られる思いは、誇り高くも優しき誓い。
>>   そして、再び物語は流れ始める。
>>  次回、『時の旅人』48話、『友への誓い』
>> では、今度は本編でお会いしましょう!
>ア:ではではーまた次回以降でね。まあ私じゃなくてコウクロのコンビだと思うけどねえ。
>紅:ではさよーなら。あとどーでもいいんですが、そっちのアイリスは使えないんですがこのアイリスは徒然編でアリエスが使ってた「巻き戻し」が使えるので意外な共通点にビックリしたり。
朱琉:意外なところでシンクロニシティ。びっくりです。
アミイ:じゃあ、今回はこの辺でね!
二人:では、また!