◆−桜色の追憶 (時の旅人外伝)−羅城 朱琉 (2006/7/3 08:24:56) No.17752
 ┗幸せな淡いバラ色の想い出・・・・?−十叶 夕海 (2006/7/3 21:17:14) No.17755
  ┗薔薇色の世界と言うには、苦味と塩味が効いてますが(?)−羅城 朱琉 (2006/7/4 08:44:10) No.17759


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17752桜色の追憶 (時の旅人外伝)羅城 朱琉 2006/7/3 08:24:56


 こんにちは、羅城 朱琉です。
 今回の外伝は、基本的にはディスティア嬢外伝なんですが、なんとも珍しい、約100年前メンバーも登場します。
 それでは、早速どうぞ!






 別れの言葉すら、言わせてあげなかった。

 言われてしまったら、本当に終わってしまう気がして。

 叶うはずのない夢だと知っていたけれど

 あなたに言った「さよなら」が再会の約束になるようにと・・・・


 私は、そう願っていた。




  時の旅人外伝
   桜色の追憶


 若草の香りを含んだ風が、アリエスの髪をさらりと揺らす。初夏の風を吸い込んで、アリエスはめったに見せない柔らかな微笑を浮かべた。
 ふと、目の端を桜色が掠める。髪を束ねる紗布が揺れているのだ。
 思い出す。そういえば、『あの日』もこんな風に爽やかで穏やかな日であったなぁ、と。

 それは、まだ平穏であった日のこと。確か、15歳の初夏のことだ。


     *     *     *     *     *


 レティス・シティの街はずれには、小高い丘がある。涼やかな風が吹きぬけるその場は、アリエスのお気に入りの場所のひとつだった。そして、最近は友との待ち合わせ場所にもなっている。今日も今日とて友人・・・・ディスティア=ペシュテルに会うために、アリエスは近道の茂みの中を通り、丘へと駆ける。たまにはディスティアよりも先について、待っていてみたい、などと思いつつ。
 その目論見は・・・・・・・・半分だけ成功した。


 いつも通り、待ち合わせの15分前に丘の上に現れたディスティアは、妙なものを目撃した。それは、丘の中ほどから裾野にかけて広がる茂みから突き出し、じたばたと暴れている、白い腕だった。
 よくよく見てみると、その腕はアリエスのものそっくりで・・・・・・・・ディスティアは、とりあえずそこまで降りていったのだった。

 確かにそれは、アリエスの腕だった。ところが、なぜかアリエスは一向に茂みから出てこない。不審に思って茂みをかき分けると・・・・
「・・・・いっ・・・・たぁ・・・・
  ・・・・・・・・・・・・・・・・あ・・・・ディスティアさん・・・・」
 半分涙目になっているアリエスがいた。
「どうしたんだ?こんな所で。」
 ディスティアが問うと、しばし躊躇った後、アリエスは気まずそうに言った。
「・・・・・・・・髪が、枝に絡まって・・・・・・・・」
「ほどけばいいだろう。」
「髪が絡まった拍子に倒れかけて、手を伸ばしたら袖口も引っかかって・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと、動けません。」
 アリエスは、恥ずかしさで真っ赤になった顔で言った。
 確かに、アリエスは妙な体勢のまま磔状態になっているようだ。さっきから見えていた暴れる腕も、どうやら枝から袖口を外そうと必死に努力していたらしい。
 ディスティアはひとつ息をつくと、アリエスの袖口を枝から外し、暴れたせいでかなり酷く縺れてしまった髪を、丁寧に解いてアリエスを解放した。
「あ・・・・ありがとう。」
 赤い顔のアリエスが、小声で礼をいう。そして、腰近くまである髪をつまんで、ぽつりと言った。
「流石に、切りますか。」
「伸ばしていたんではないのか?」
 この長さとなると、伸ばす意思がなければ伸ばせるものではない。しかし、アリエスは首を傾げた。
「一応は・・・・そうなるのかな?武器を隠すのに便利だったから・・・・」
「武器?」
 アリエスは頷くと、左手で髪をさらりと横に流した。手を下ろすと、そこに髪の毛よりも若干太い、金属質の銀色の糸がある。刃のついた鋼線・・・・極細のワイヤーソーだ。
「これが、5本ほど。いざというときのために。」
 殺伐とした時代に生きていることを考慮に入れても、アリエスは随分重装備だ。常に腰から下げている2本の短剣は言うに及ばず、簡素なワンピースの下にはチェインメイル、ピアスは魔力増幅装置、今知った通り、髪にはワイヤーソー、指輪の中には毒まで仕込まれている。
 それが何故かは、ディスティアは知らない。知ろうとも思わない。一度それに触れそうになったとき、アリエスはさりげなく話題を逸らした。きっと、聞かれたくないことなのだろうと思っている。
 だから、今回もあえてそれに触れることはなかった。
「縛ればいいだろう。」
「へ?何を?」
「髪を。」
 アリエスはしばし視線を彷徨わせた後、言った。
「そういえば、そんな方法もあるんだよね・・・・・・・・。
  ・・・・・・・・・・全然思いつかなかった。」
 この友人は、やっぱりどこか抜けている。ディスティアは、改めてそう思った。


     *     *     *     *     *


「さあさ、よってらっしゃい、みてらっしゃい。エルメキアの銀細工に、ソフィアの紗布
 あ、お姉はん、この腕輪なんかどや?お兄はん、意中の女性にこの髪飾りなんかどうや?」
 ある日のこと。『人間』として目立たなくなる程度の変装をしたディスティアは、アルトを伴いどこかの街を歩いていた。そんな時、この声が聞こえたのだ。
 金髪碧眼の二枚目半の青年が、道端で露店を開いている。ふと思い立って、ディスティアはそこへ立ち寄った。
「あ、いらっしゃい、何をお探しでしょか?」
「ああ、10代半ばの少女にプレゼントしたいんだけど。」
 これが、長い因縁の始まりだとは、その時は思いもしなかったのだけれど。

 結局、選ぶのにはしばらく時間がかかった。アルトを先に帰して正解だったと、今は思う。
 ナツメには、繊細な金細工のブローチを。アリエスには、美しく耐久性もある、ソフィアの紗布の、桜色をした髪布を。アリエスは普段、寒色と無彩色を好んで身につけているが、こういう優しい暖色も似合うと思うのだ。
 しばらく会えなかった友人の姿を思い出しつつ、ディスティアは宿への道を進んだ。


     *     *     *     *     *


 それから数日後。久々にアリエスと会ったディスティアは、ある意味予想通りな友人の姿に苦笑を隠せなかった。髪形自体は変ではないのだが、それを括っている布が、いかにも『適当に使えそうなの使いました』、といった感じのものだったから。
 だから。
「アリエス、ちょっと後ろを向いてくれないか?」
 アリエスは、首をかしげながらもそれに従う。
 アリエスの髪を解き、手櫛で軽く整えて、先日買った桜色の布で綺麗に束ねる。
「出来た。」
 不思議そうな顔で、アリエスは髪を触っていた。と、髪とは違う柔らかな感触。髪形を崩さぬように気を使いながらその正体を確かめようとして・・・・・・・・アリエスは、そこに結ばれた桜色の紗布を見つけた。
「これは・・・・?」
「プレゼント、だよ。」

 次の瞬間、アリエスの顔に浮かんだ表情を、ディスティアは忘れないだろう。はにかむような微笑は、柔らかく、暖かく、まるで、陽だまりのようで。
「ありがとう、ディスティアさん・・・・・・・・いいえ、『ディスティア』。」
 溢れる正の感情のせいで、苦しくはあったけれど・・・・・・・・その時のアリエスは、とても・・・・
    ・・・・・・・・とても、綺麗だと思った。


     *     *     *     *     *


 そうして、永い眠りの果てに目覚めたアリエスの髪にも、その桜色の紗布は結ばれていた。唯一、消失を免れたこれを、アリエスはずっと愛用している。
 髪布を見つめたまま、微笑を浮かべて立ち止まったアリエスを呼ぶ声があった。
「アーリーエースー!!!!何ぼーっとしてるの?」
 足早にこちらに駆け寄ってくるのは、リボンだらけの珍妙な格好をした魔道士・・・・フェリセ=ニーランデル。
「何か、あったんですか?」
 少し心配そうな声色で語りかけてくるのは、フェリセと一緒に走ってきた、月草色のローブの賢者・・・・ユヴェル=ディティス。
 今の、旅の仲間達。
「何でもないの。ただ、少し・・・・昔を思い出していただけ。」
 薄く笑って言うと、フェリセが人の悪い笑みを浮かべて言った。
「ははぁ〜ん・・・・。その髪布・・・・昔の友人に貰ったって言ってたけど・・・・男?男でしょ!?アリエスの恋人?」
「ちっ・・・・違う違う!!!!ディスティアは女だって!」
 あわてて言うと。フェリセは心底残念そうに舌打ちした。
「ちぇ・・・・。でも、そこまで仲良しさんだと、もう男も女も関係ないわよね?あぁっ!!アリエスは愛情より友情を取ってしまうのねっ!?ユヴェル、敵は強大よ?」
「ちょっと、フェリセ!ユヴェルまでバカな話に巻き込まないでよ!」
 そう言ってユヴェルに振り返ろうとしたアリエスは・・・・その前に、後ろからユヴェルに抱きすくめられた。
「そうですね。僕の敵は思い出の中、ですか・・・・。・・・・・・・・妬けますね。」
 そう言って、ユヴェルはアリエスを抱きしめたまま、涙を拭う振りをした。
「ユヴェル・・・・フェリセの話に乗らなくてもいいのに。私を抱いていても、ユヴェルが暑苦しいだけよ?」
(ユヴェル・・・・・・・・報われないわね・・・・。)
 フェリセは、心の中でぼそりと呟いた。先ほど、ユヴェルが涙を拭う振りをしたとき、実は本当にちょっぴり涙目だったのを、フェリセは目撃していたのだった。
(先は長いわよっ!ユヴェル、ファイト!!)
 こっそりエールを送り、フェリセは再び歩き出す。
「さあ!早くしないと、次の街にたどり着けないわよ?野宿はイヤよ、私。」
 アリエスとユヴェルは、顔を見合わせて小さく笑う。
「行きますか。」
「そうだね。」
 そうして、二人もまた、歩き出す。

 数歩歩いて、アリエスは再び足を止めた。
(信じています、ディスティア。私達は、また出会えると。)
 空を見上げて、アリエスは思う。懐かしい友の面影を。天を舞う、3枚の翼を。
(だから・・・・『さよなら、ディスティア。また会いましょう。』)
 あの日言えなかった、最後の一言を付け加えて・・・・・・・・

 アリエスは、また歩き出した。



++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 改めまして、こんにちは。『桜色の追憶』、いかがでしたでしょうか?
 羅城的には、100年前メンバーを書くのが非常に楽しかったです。実は、彼らにも裏話・・・・というか、本ストーリーというか、大きな冒険があるので、いつかそれも書けたらいいな、と思っています。

 では、今回はこの辺で。


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17755幸せな淡いバラ色の想い出・・・・?十叶 夕海 2006/7/3 21:17:14
記事番号17752へのコメント




ユア;こんにちは、ユアです。
久遠;レス行きましょ。


> レティス・シティの街はずれには、小高い丘がある。涼やかな風が吹きぬけるその場は、アリエスのお気に入りの場所のひとつだった。そして、最近は友との待ち合わせ場所にもなっている。今日も今日とて友人・・・・ディスティア=ペシュテルに会うために、アリエスは近道の茂みの中を通り、丘へと駆ける。たまにはディスティアよりも先について、待っていてみたい、などと思いつつ。
> その目論見は・・・・・・・・半分だけ成功した。
>
>
> いつも通り、待ち合わせの15分前に丘の上に現れたディスティアは、妙なものを目撃した。それは、丘の中ほどから裾野にかけて広がる茂みから突き出し、じたばたと暴れている、白い腕だった。
> よくよく見てみると、その腕はアリエスのものそっくりで・・・・・・・・ディスティアは、とりあえずそこまで降りていったのだった。
>
> 確かにそれは、アリエスの腕だった。ところが、なぜかアリエスは一向に茂みから出てこない。不審に思って茂みをかき分けると・・・・


ユア;なんか、普通のって表現もありえないとは思うけど、なんか普通だったんだね、アリエス嬢。
久遠;微笑ましいというか、年相応の茶目っ気よねぇ。


>「流石に、切りますか。」
>「伸ばしていたんではないのか?」
> この長さとなると、伸ばす意思がなければ伸ばせるものではない。しかし、アリエスは首を傾げた。


久遠;私みたいな化生とかだと仕方ないけど、確かに結構長いわよね。
ユア:確かに、私も今の肩より少し長いだけの髪でも、かなり鬱陶しいので、意志がないと無理ですね。

>「一応は・・・・そうなるのかな?武器を隠すのに便利だったから・・・・」
>「武器?」
> アリエスは頷くと、左手で髪をさらりと横に流した。手を下ろすと、そこに髪の毛よりも若干太い、金属質の銀色の糸がある。刃のついた鋼線・・・・極細のワイヤーソーだ。
>「これが、5本ほど。いざというときのために。」
> 殺伐とした時代に生きていることを考慮に入れても、アリエスは随分重装備だ。常に腰から下げている2本の短剣は言うに及ばず、簡素なワンピースの下にはチェインメイル、ピアスは魔力増幅装置、今知った通り、髪にはワイヤーソー、指輪の中には毒まで仕込まれている。
> それが何故かは、ディスティアは知らない。知ろうとも思わない。一度それに触れそうになったとき、アリエスはさりげなく話題を逸らした。きっと、聞かれたくないことなのだろうと思っている。

久遠;ユアちゃん、アレで重装備?
ユア;普段の備えとしてはね。
久遠;私の場合、基本・ダボ付いたブラウスに割合ぴったりとしたスラックス。
   で、両腕のリストバンドに十二本づつの千本、腰の前後に平たいナイフ。ベルトも薄い刃物、靴底に短剣、足にコルト銃、ピアスは小さな金属、指輪と髪にワイヤーソー・・・・あとは・・
ユア;もういいです。闘うの好きなのは分かりました。
   でも、なぜ、アリエス嬢は、そう言う重装備をしていたのでしょうね。

> だから、今回もあえてそれに触れることはなかった。
>「縛ればいいだろう。」
>「へ?何を?」
>「髪を。」
> アリエスはしばし視線を彷徨わせた後、言った。
>「そういえば、そんな方法もあるんだよね・・・・・・・・。
>  ・・・・・・・・・・全然思いつかなかった。」
> この友人は、やっぱりどこか抜けている。ディスティアは、改めてそう思った。
>

ユア;・・・可愛い。
久遠;天然よね・・・ちょっとしたことが抜けてるんだから。

>
>     *     *     *     *     *

>
> 結局、選ぶのにはしばらく時間がかかった。アルトを先に帰して正解だったと、今は思う。
> ナツメには、繊細な金細工のブローチを。アリエスには、美しく耐久性もある、ソフィアの紗布の、桜色をした髪布を。アリエスは普段、寒色と無彩色を好んで身につけているが、こういう優しい暖色も似合うと思うのだ。

ユア;確かに。
久遠;そうよね、優しめの暖色って、似合いそうよね、アリエス嬢。


>
>
> それから数日後。久々にアリエスと会ったディスティアは、ある意味予想通りな友人の姿に苦笑を隠せなかった。髪形自体は変ではないのだが、それを括っている布が、いかにも『適当に使えそうなの使いました』、といった感じのものだったから。
> だから。
>「アリエス、ちょっと後ろを向いてくれないか?」
> アリエスは、首をかしげながらもそれに従う。
> アリエスの髪を解き、手櫛で軽く整えて、先日買った桜色の布で綺麗に束ねる。
>「出来た。」
> 不思議そうな顔で、アリエスは髪を触っていた。と、髪とは違う柔らかな感触。髪形を崩さぬように気を使いながらその正体を確かめようとして・・・・・・・・アリエスは、そこに結ばれた桜色の紗布を見つけた。
>「これは・・・・?」
>「プレゼント、だよ。」
>
> 次の瞬間、アリエスの顔に浮かんだ表情を、ディスティアは忘れないだろう。はにかむような微笑は、柔らかく、暖かく、まるで、陽だまりのようで。
>「ありがとう、ディスティアさん・・・・・・・・いいえ、『ディスティア』。」
> 溢れる正の感情のせいで、苦しくはあったけれど・・・・・・・・その時のアリエスは、とても・・・・
>    ・・・・・・・・とても、綺麗だと思った。


ユア;・・・・・・どんなに辛いこよぎゃ・・・・・みゅう〜。
久遠;『どんなに辛いことが前途にあっても、頑張って欲しいです。』ね。
   ・・・・本当よね、人間と魔族が仲良しに慣れたのも奇跡かもしれないけど、もう一つ、『幸福な終わり方』っていう奇跡があるといいわね。
>

>
>     *     *     *     *     *
>
>
> そうして、永い眠りの果てに目覚めたアリエスの髪にも、その桜色の紗布は結ばれていた。唯一、消失を免れたこれを、アリエスはずっと愛用している。
> 髪布を見つめたまま、微笑を浮かべて立ち止まったアリエスを呼ぶ声があった。
>「アーリーエースー!!!!何ぼーっとしてるの?」
> 足早にこちらに駆け寄ってくるのは、リボンだらけの珍妙な格好をした魔道士・・・・フェリセ=ニーランデル。
>「何か、あったんですか?」
> 少し心配そうな声色で語りかけてくるのは、フェリセと一緒に走ってきた、月草色のローブの賢者・・・・ユヴェル=ディティス。
> 今の、旅の仲間達。
>「何でもないの。ただ、少し・・・・昔を思い出していただけ。」
> 薄く笑って言うと、フェリセが人の悪い笑みを浮かべて言った。
>「ははぁ〜ん・・・・。その髪布・・・・昔の友人に貰ったって言ってたけど・・・・男?男でしょ!?アリエスの恋人?」
>「ちっ・・・・違う違う!!!!ディスティアは女だって!」
> あわてて言うと。フェリセは心底残念そうに舌打ちした。
>「ちぇ・・・・。でも、そこまで仲良しさんだと、もう男も女も関係ないわよね?あぁっ!!アリエスは愛情より友情を取ってしまうのねっ!?ユヴェル、敵は強大よ?」
>「ちょっと、フェリセ!ユヴェルまでバカな話に巻き込まないでよ!」
> そう言ってユヴェルに振り返ろうとしたアリエスは・・・・その前に、後ろからユヴェルに抱きすくめられた。
>「そうですね。僕の敵は思い出の中、ですか・・・・。・・・・・・・・妬けますね。」
> そう言って、ユヴェルはアリエスを抱きしめたまま、涙を拭う振りをした。
>「ユヴェル・・・・フェリセの話に乗らなくてもいいのに。私を抱いていても、ユヴェルが暑苦しいだけよ?」
>(ユヴェル・・・・・・・・報われないわね・・・・。)
> フェリセは、心の中でぼそりと呟いた。先ほど、ユヴェルが涙を拭う振りをしたとき、実は本当にちょっぴり涙目だったのを、フェリセは目撃していたのだった。


ユア;男ルピナスくん以上に、いえ『家族の写真』のアルトくん以上に、報われないというか。
久遠;見ている分には、微笑ましいけど。
   ユヴェルくん・・・。


>
> 改めまして、こんにちは。『桜色の追憶』、いかがでしたでしょうか?
> 羅城的には、100年前メンバーを書くのが非常に楽しかったです。実は、彼らにも裏話・・・・というか、本ストーリーというか、大きな冒険があるので、いつかそれも書けたらいいな、と思っています。
>
> では、今回はこの辺で。


ユア;ありがとうございました。楽しく読ませていただきましたv
二人;それでは。


>
>

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17759薔薇色の世界と言うには、苦味と塩味が効いてますが(?)羅城 朱琉 2006/7/4 08:44:10
記事番号17755へのコメント


>
>
>
>ユア;こんにちは、ユアです。
>久遠;レス行きましょ。
朱琉:はい、では、返レスです。

>
>
>> レティス・シティの街はずれには、小高い丘がある。涼やかな風が吹きぬけるその場は、アリエスのお気に入りの場所のひとつだった。そして、最近は友との待ち合わせ場所にもなっている。今日も今日とて友人・・・・ディスティア=ペシュテルに会うために、アリエスは近道の茂みの中を通り、丘へと駆ける。たまにはディスティアよりも先について、待っていてみたい、などと思いつつ。
>> その目論見は・・・・・・・・半分だけ成功した。
>>
>>
>> いつも通り、待ち合わせの15分前に丘の上に現れたディスティアは、妙なものを目撃した。それは、丘の中ほどから裾野にかけて広がる茂みから突き出し、じたばたと暴れている、白い腕だった。
>> よくよく見てみると、その腕はアリエスのものそっくりで・・・・・・・・ディスティアは、とりあえずそこまで降りていったのだった。
>>
>> 確かにそれは、アリエスの腕だった。ところが、なぜかアリエスは一向に茂みから出てこない。不審に思って茂みをかき分けると・・・・
>
>
>ユア;なんか、普通のって表現もありえないとは思うけど、なんか普通だったんだね、アリエス嬢。
>久遠;微笑ましいというか、年相応の茶目っ気よねぇ。
朱琉:元々は、こんな子でした。素直で明るくて、少し警戒心が強いけど、普通の女の子でした。
アミイ:100年前の時点までは、まだまだそんな子だったんだけど・・・・ね。

>
>
>>「流石に、切りますか。」
>>「伸ばしていたんではないのか?」
>> この長さとなると、伸ばす意思がなければ伸ばせるものではない。しかし、アリエスは首を傾げた。
>
>
>久遠;私みたいな化生とかだと仕方ないけど、確かに結構長いわよね。
>ユア:確かに、私も今の肩より少し長いだけの髪でも、かなり鬱陶しいので、意志がないと無理ですね。
朱琉:ちなみに私は、つい数ヶ月前までマジで腰までの長さの髪でしたが、暑いわ重いわ鬱陶しいわ手入れが面倒だわで、本当に大変でした。
アミイ:確かに。普通の人間がそれだけ伸ばそうと思うと、本気で大変よね。

>
>>「一応は・・・・そうなるのかな?武器を隠すのに便利だったから・・・・」
>>「武器?」
>> アリエスは頷くと、左手で髪をさらりと横に流した。手を下ろすと、そこに髪の毛よりも若干太い、金属質の銀色の糸がある。刃のついた鋼線・・・・極細のワイヤーソーだ。
>>「これが、5本ほど。いざというときのために。」
>> 殺伐とした時代に生きていることを考慮に入れても、アリエスは随分重装備だ。常に腰から下げている2本の短剣は言うに及ばず、簡素なワンピースの下にはチェインメイル、ピアスは魔力増幅装置、今知った通り、髪にはワイヤーソー、指輪の中には毒まで仕込まれている。
>> それが何故かは、ディスティアは知らない。知ろうとも思わない。一度それに触れそうになったとき、アリエスはさりげなく話題を逸らした。きっと、聞かれたくないことなのだろうと思っている。
>
>久遠;ユアちゃん、アレで重装備?
>ユア;普段の備えとしてはね。
>久遠;私の場合、基本・ダボ付いたブラウスに割合ぴったりとしたスラックス。
>   で、両腕のリストバンドに十二本づつの千本、腰の前後に平たいナイフ。ベルトも薄い刃物、靴底に短剣、足にコルト銃、ピアスは小さな金属、指輪と髪にワイヤーソー・・・・あとは・・
>ユア;もういいです。闘うの好きなのは分かりました。
>   でも、なぜ、アリエス嬢は、そう言う重装備をしていたのでしょうね。
朱琉:ちなみに、上記の武器は『ディス嬢が知っている限りでの』アリエスの所持武器です。実際は、その3倍くらい普段から持ち歩いています。・・・・久遠さんよりは、少ないでしょうけど。
アミイ:一応、アリエスちゃんは武器より魔法使いよりだからね。重装備のわけは、本編でおいおい明かされる予定。一応、『かつてはあった平穏?な日常』で軽く答えを匂わせてはいるけど。

>
>> だから、今回もあえてそれに触れることはなかった。
>>「縛ればいいだろう。」
>>「へ?何を?」
>>「髪を。」
>> アリエスはしばし視線を彷徨わせた後、言った。
>>「そういえば、そんな方法もあるんだよね・・・・・・・・。
>>  ・・・・・・・・・・全然思いつかなかった。」
>> この友人は、やっぱりどこか抜けている。ディスティアは、改めてそう思った。
>>
>
>ユア;・・・可愛い。
>久遠;天然よね・・・ちょっとしたことが抜けてるんだから。
朱琉:こっちが本性(?)なんですよね、アリエス。

>
>>
>>     *     *     *     *     *
>
>>
>> 結局、選ぶのにはしばらく時間がかかった。アルトを先に帰して正解だったと、今は思う。
>> ナツメには、繊細な金細工のブローチを。アリエスには、美しく耐久性もある、ソフィアの紗布の、桜色をした髪布を。アリエスは普段、寒色と無彩色を好んで身につけているが、こういう優しい暖色も似合うと思うのだ。
>
>ユア;確かに。
>久遠;そうよね、優しめの暖色って、似合いそうよね、アリエス嬢。
アミイ:外見的には、ピンハだろうとゴスロリだろうと着こなせそうな可愛い系なのよね。本当は、優しい暖色が一番似合う色じゃないのかしら?
朱琉:ピンハやゴスロリは、絶対、本人が嫌がると思いますがね。『こんな動きにくい服が着れますか!!』って。

>
>
>>
>>
>> それから数日後。久々にアリエスと会ったディスティアは、ある意味予想通りな友人の姿に苦笑を隠せなかった。髪形自体は変ではないのだが、それを括っている布が、いかにも『適当に使えそうなの使いました』、といった感じのものだったから。
>> だから。
>>「アリエス、ちょっと後ろを向いてくれないか?」
>> アリエスは、首をかしげながらもそれに従う。
>> アリエスの髪を解き、手櫛で軽く整えて、先日買った桜色の布で綺麗に束ねる。
>>「出来た。」
>> 不思議そうな顔で、アリエスは髪を触っていた。と、髪とは違う柔らかな感触。髪形を崩さぬように気を使いながらその正体を確かめようとして・・・・・・・・アリエスは、そこに結ばれた桜色の紗布を見つけた。
>>「これは・・・・?」
>>「プレゼント、だよ。」
>>
>> 次の瞬間、アリエスの顔に浮かんだ表情を、ディスティアは忘れないだろう。はにかむような微笑は、柔らかく、暖かく、まるで、陽だまりのようで。
>>「ありがとう、ディスティアさん・・・・・・・・いいえ、『ディスティア』。」
>> 溢れる正の感情のせいで、苦しくはあったけれど・・・・・・・・その時のアリエスは、とても・・・・
>>    ・・・・・・・・とても、綺麗だと思った。
>
>
>ユア;・・・・・・どんなに辛いこよぎゃ・・・・・みゅう〜。
>久遠;『どんなに辛いことが前途にあっても、頑張って欲しいです。』ね。
>   ・・・・本当よね、人間と魔族が仲良しに慣れたのも奇跡かもしれないけど、もう一つ、『幸福な終わり方』っていう奇跡があるといいわね。
朱琉:『幸福』・・・・・・・・かどうかは判りませんが、少なくとも『不幸』にはならないと思います。
アミイ:まあ、頑張りなさいな、朱琉。

>>
>
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>>     *     *     *     *     *
>>
>>
>> そうして、永い眠りの果てに目覚めたアリエスの髪にも、その桜色の紗布は結ばれていた。唯一、消失を免れたこれを、アリエスはずっと愛用している。
>> 髪布を見つめたまま、微笑を浮かべて立ち止まったアリエスを呼ぶ声があった。
>>「アーリーエースー!!!!何ぼーっとしてるの?」
>> 足早にこちらに駆け寄ってくるのは、リボンだらけの珍妙な格好をした魔道士・・・・フェリセ=ニーランデル。
>>「何か、あったんですか?」
>> 少し心配そうな声色で語りかけてくるのは、フェリセと一緒に走ってきた、月草色のローブの賢者・・・・ユヴェル=ディティス。
>> 今の、旅の仲間達。
>>「何でもないの。ただ、少し・・・・昔を思い出していただけ。」
>> 薄く笑って言うと、フェリセが人の悪い笑みを浮かべて言った。
>>「ははぁ〜ん・・・・。その髪布・・・・昔の友人に貰ったって言ってたけど・・・・男?男でしょ!?アリエスの恋人?」
>>「ちっ・・・・違う違う!!!!ディスティアは女だって!」
>> あわてて言うと。フェリセは心底残念そうに舌打ちした。
>>「ちぇ・・・・。でも、そこまで仲良しさんだと、もう男も女も関係ないわよね?あぁっ!!アリエスは愛情より友情を取ってしまうのねっ!?ユヴェル、敵は強大よ?」
>>「ちょっと、フェリセ!ユヴェルまでバカな話に巻き込まないでよ!」
>> そう言ってユヴェルに振り返ろうとしたアリエスは・・・・その前に、後ろからユヴェルに抱きすくめられた。
>>「そうですね。僕の敵は思い出の中、ですか・・・・。・・・・・・・・妬けますね。」
>> そう言って、ユヴェルはアリエスを抱きしめたまま、涙を拭う振りをした。
>>「ユヴェル・・・・フェリセの話に乗らなくてもいいのに。私を抱いていても、ユヴェルが暑苦しいだけよ?」
>>(ユヴェル・・・・・・・・報われないわね・・・・。)
>> フェリセは、心の中でぼそりと呟いた。先ほど、ユヴェルが涙を拭う振りをしたとき、実は本当にちょっぴり涙目だったのを、フェリセは目撃していたのだった。
>
>
>ユア;男ルピナスくん以上に、いえ『家族の写真』のアルトくん以上に、報われないというか。
>久遠;見ている分には、微笑ましいけど。
>   ユヴェルくん・・・。
朱琉:実は、全『時の旅人』キャラの中で、最も不幸なのはこのユヴェル君かも知れません。
アミイ:そうよね・・・・いろんな意味で。

>
>
>>
>> 改めまして、こんにちは。『桜色の追憶』、いかがでしたでしょうか?
>> 羅城的には、100年前メンバーを書くのが非常に楽しかったです。実は、彼らにも裏話・・・・というか、本ストーリーというか、大きな冒険があるので、いつかそれも書けたらいいな、と思っています。
>>
>> では、今回はこの辺で。
>
>
>ユア;ありがとうございました。楽しく読ませていただきましたv
>二人;それでは。
朱琉:はい、では、今回はこの辺で。
二人:では、また!

>
>
>>
>>