◆−家族の写真 番外 時は巡りて +遥か昔の語り継がれないお伽噺+−十叶 夕海 (2006/7/19 20:32:15) No.17799 ┣傍観者の囁き(ちょっと違った形式のレス)−羅城 朱琉 (2006/7/21 14:43:19) No.17806 ┃┗語るモノの呟き(同じような形式で)−十叶 夕海 (2006/7/22 21:49:26) No.17809 ┗Re:家族の写真 番外 時は巡りて +遥か昔の語り継がれないお伽噺+−月読乾 (2006/7/31 09:46:00) No.17814 ┗・・・・・・・されど、今は語られえぬ御伽噺。−十叶 夕海 (2006/8/2 20:21:10) No.17820
17799 | 家族の写真 番外 時は巡りて +遥か昔の語り継がれないお伽噺+ | 十叶 夕海 | 2006/7/19 20:32:15 |
どうも、ゆあです。 このお話は、刹なに切なく、哀しいお話です。 そして、家族の写真のキャラがほとんど出てこないです。 なので、番外なのです。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 遥か昔の語り継がれないお伽噺 昔々、本当に昔のこと。 まだ、神々が、存在していて。 まだ、魔族が、存在していて。 人間と共存していた頃のお話です。 舞台は、人間界ではない何処かの世界。 その中に、一つの王国が在りました。 王様の名前を【片眼王】 太陽のような髪と褐色の肌の持ち主でした 【片眼王】には、たくさんの部下がいました。 なかでも、お気に入りは、【龍殺ノ英雄】と【戦乙女】の夫婦でした。 二人は、兄妹でもありました。 兄の【龍殺ノ英雄】は、金髪碧眼で、太陽のようでした。 妹の【戦乙女】は、銀髪で、紫色の瞳で月のようでした。 また、【片眼王】が、側によく侍らせる歌姫に【歌姫】がいました。 彼女は、【歌乙女】と言われていました。 彼女は、青く輝く長い髪と淡い水色の瞳で、水の精霊のようでした。 皆が、彼女について疑問に思うことが在りました。 彼女は、【片眼王】と同クラスの希代の魔女ということを知っていました。 なのに、何故、【片眼王】に従うのだろうかと。 それは、【片眼王】以外の二人と【道化師】だけが知っています。 【片眼王】は、三人が大切が、それぞれに大切で。 【戦乙女】は、【龍殺ノ英雄】に恋慕を、【片眼王】には忠誠を、【歌乙女】に友愛を。 【龍殺ノ英雄】は、【戦乙女】に恋慕を、【片眼王】には忠誠を、【歌乙女】に友愛を。 【歌乙女】は、【片眼王】に恋慕を、二人に友愛を。 長い間、この四人は、四方神のように、バランスのいいまま穏やかに暮らしていました。 他の部下が、それこそ、ヤキモチを妬く位に。 一つの絵を見ているようだ。とも。 だけど、その平穏は、あっけなく崩れました。 【龍殺ノ英雄】が死んだのです。 【戦乙女】は、嘆き悲しみました。 嘆きが深いせいもあり、日に日に【戦乙女】は、やつれていきます。 武術にこの人あり!!と言われた【戦乙女】は、見る影も在りません。 【歌乙女】も、歌にそれまでの艶がありません。 【片眼王】も、退屈です。 毎日みていた【歌乙女】の歌と楽器の音色に合わせて、演舞も見れなくなりました。 それから、何度季節が巡ったでしょう。 それから、何度太陽と月が逢瀬を繰り返したことでしょう。 まだ、【戦乙女】も【歌乙女】も、【龍殺ノ英雄】がいた頃のように輝きが戻りません。 どうしたらいいだろう。 そう、【片眼王】は、考えます。 それから、何度か季節が一巡しました。 ある部下から、こう提案が在りました。 部下の名前は、【道化師】と言いました。 彼は、カツラとメイクのせいで、髪や瞳の色はもちろん、性別もろくに解りませんでした。 曰く、『それならば、どちらかを【片眼王】様のお妃にしては如何ですか?』 その提案を受け入れた【片眼王】は、考えました。 さらに、二つの季節が巡る頃・・・・・。 【片眼王】は、【戦乙女】に、求愛しました。 曰く、『【龍殺ノ英雄】よりも、君を愛するから。私の妃になって欲しい。』と。 それに対する【戦乙女】の返答は、 曰く、『私は、貴方には、《忠誠》しか感じない。 私が必要とするのは、【龍殺ノ英雄】だけだ。』 そうです、いまでも、【戦乙女】は、【龍殺ノ英雄】を思っていたのです。 だから、幾ら深い忠誠を誓う【片眼王】からの求愛であっても。 一番、この時愛おしく思っていたあの人を裏切っては行けないのです。 だけど、もしかしたら、崩壊のレクイエムは、この時始まっていたのか知れないのです。 【片眼王】は、それでも、諦めずに毎日のように通いました、求婚の為に。 悋気を起こしたのは、【片眼王】では在りません。 【歌乙女】も、悋気・・・嫉妬をしていました。 しかし、その悋気は、【戦乙女】へではなく、【片眼王】に。 【道化師】だけは、微笑んでいました。 自分が、望む通りに三人が動いていました。 まるで、聖書の蛇のようにほくそ笑んでいました。 さらに幾年かが過ぎました。 相変わらず、【片眼王】は、退屈で。 相変わらず、【歌乙女】は、憂鬱で。 相変わらず、【戦乙女】は、悲嘆で。 相変わらず、【道化師】は、愉快で。 でも、この頃から、ある変化が在りました。 【戦乙女】に一つの変化が在りました。 彼女の家に、一人の男性が、訊ねてくるようになったのです。 彼は、白く羽毛のようなふわふわの長い髪と海のような深い蒼の瞳の青年でした。 また、彼は、髪の色と同じような二対の翼を持っていました。 彼は、【妖鳳王】と言いました。 東の方からの旅人でした。 彼もまた、【戦乙女】に求愛しに訊ねて来ているようでした。 だけど、【妖鳳王】は、最初の1日は、求愛はしたけれど、それ以降は、匂わせるだけでしようとはしなかった。 曰く、『無理矢理求婚よりも、まずは笑顔を戻そうってほうかな。 【戦乙女】の笑顔って、可愛いと思うんだ、きっとさ。』 ある日には、野花のブーケを。 ある日には、拙い木彫りの人形を。 ある日には、花の冠を。 ある日には、穏やかな月の歌を。 ある日には、季節の果物を。 そうして、また幾年かが過ぎました。 また一つ変化が在りました。 【戦乙女】が、家の外に出て来たのです。 そして、【片眼王】の元に、向かいました。 いつもと変わらず、【歌乙女】も、【道化師】も、その側にいます。 【妖鳳王】の手を取って、向かいました。 そして、【片眼王】に、言いました。 曰く、『私は、【妖鳳王】の故郷に行きます。 今まで、ありがとうございました。 【片眼王】様も、ご息災であられますように。』 しかし、【片眼王】は面白く在りません。 曰く、『ならぬ。』 そこで、初めて、【歌乙女】は、言葉を紡ぎました。 曰く、『王よ、我が王よ。 愛とは、縛るモノではございません。 包むものでございます。 ・ ・・・【戦乙女】の新地への門出を祝うのが・・・』 しかし、【片眼王】は、【歌乙女】の言葉を遮りました。 曰く、『我のことを捨てる輩は、いらぬ。』 【片眼王】は、言葉をさらに重ねました。 曰く、『我は、【戦乙女】がおれば良い・・・・』 その言葉に、元々、憂鬱そうな表情だった【歌乙女】にさらに哀しみの色が上乗せされた。 【歌乙女】の表情を見た【戦乙女】は、全てを悟りました。 【歌乙女】の表情を見た【道化師】は、嬉しさと哀しさと寂しさを等分に混ぜたような表情をする。 そして、『自分のモノにならないのなら。』という風に、『死の呪文』を【戦乙女】と【妖鳳王】に向けて、【片眼王】は、放ちます。 パキン・・・という軽く透明な音がした。 【歌乙女】が、リュートを核にするようにして、呪文を崩壊させたのだ。 そして、自分と後ろの二人を包むような決壊を張る。 曰く、『私は、貴方様をお慕いしておりました。 されども、貴方様はお変わりになられました。 私は、二人が、羨ましく思えるのです。 どうか、【片眼王】、二人を送り出して上げてください。』 曰く、『五月蝿い。 我は・・・・・我は・・・・・』 曰く、『逃げなさい、【戦乙女】【妖鳳王】。 ・・・・・幸せになってください。』 【歌乙女】は、【戦乙女】と【妖鳳王】に、顔を向けるとそう言った。 その顔は、とても美しかった。 覚悟を決めた者の高潔なまでの美しさ。 昔の彼女からは想像もできない類いのものであったが。 そこから、二人は、逃げ出した。 【歌乙女】の覚悟を無駄にしては行けないと思ったから。 【片眼王】と【歌乙女】は、対峙しました。 ただ、【歌乙女】は哀しそうで。 【片眼王】は、先ほどとは違い、どれかと言えば、困惑で。 【道化師】は、その二人からちょうど等分の距離に立ち、哀しさと嬉しさが同居した微笑みで。 それぞれ、立っていました。 先に口を開いたのはどちらだったでしょう。 恐らく、【歌乙女】なのでしょう。 曰く、『【片眼王】、諦めてくださいませ。』 曰く、『諦められるものか。 そこをどけ、【歌乙女】。』 自嘲の意味合いを込めて、【歌乙女】は、【片眼王】に、囁く。 曰く、『私如きなど、潰して行けばよろしいでしょう? それとも、自分に『情』を向ける相手など倒せませんか? 子どものように、臆病なオウサマ?』 言葉通りでは、嘲っているようにしか聞こえないでしょう。 でも、この場では、【道化師】だけが、【歌乙女】のことを知っています。 彼女が、【片眼王】のことが好きだから、『配下』に甘んじていることを。 でも、【道化師】は、【歌乙女】のことが好きなのです。 それでも、今の【片眼王】には、他の声は届きません。 曰く、『・・・そうしてまで、お前が、我を阻み、【戦乙女】を逃がそうとするのは解らん。 これが、最後だ、どけ、【歌乙女】。』 曰く、『いいえ、退きません。』 こうして、高級魔法使い同士の闘いは始まりました。。 ただし、最初は、刃を交えない闘いなのです。 曰く、『刻が過ぎれば、我も、お前も、【戦乙女】も、【妖鳳王】も、朽ち果てる。 輪廻の輪の中で、相見えれば、その時こそ、【戦乙女】を手に入れる。』 曰く、『あら、【片眼王】は、今世は諦めるのね? 【歌乙女】の名と魔力(ちから)におきて、運命の因果律を固定する。』 《言霊》でもなんでもない、言葉に力をのせ、魔力を暴れさせるのです。 それだけで、一から十どころか、一から百まで編まれた魔法のように、その言葉通りになりました。 その余波が、二人を中心に、嵐のように吹き荒れる。 だけど、そんな中であっても、【道化師】は、身を守る術以外使おうともせずに、ただ微笑んで、その場にいた。 曰く、『ははっは、では、同じ結末で終わらせない。 我【片眼王】と【戦乙女】を宿命が一対とする。 我と【戦乙女】を手に入れし者が、世界を手に入れさせよう。』 曰く、『哀しい人ね。 私は、自らを【戦乙女】の『守護』と成さん。』 そして、幾度目かの言葉の交わりが、終わった時、二人は動いた。 【歌乙女】は、彼女の細腕には似合わないバスタードソードを。 【片眼王】は、素手に『力』を纏わせて。 そして、交錯した。 曰く、『何ッ!!』 曰く、『ふふふふふふ、避けると思ったのでしょう? ・ ・・私は、誰も傷つけたくはないの。 だから、こういう方法が、截然と思いましたの。』 バスタードソードは、鍔元まで【片眼王】の胸に刺さり。 【片眼王】の手は、腕の付け根まで、【歌乙女】の胸に刺さり。 それを気にしなければ、二人は、恋人同士に見えたでしょう。 しかし、ゴフッと、二人は血を吐いてしまいます。 そして、さらさらと互いの身体や服が、端の方から、崩れて行きました。 子どもが作った砂の城が、波打ち際でゆるゆると削られるように崩れて行きます。 曰く、『うふふ・・・こういう終わり方も悪くないかな。 ・ ・・絶対に、貴方の思う通りにさせないわ、【片眼王】。』 曰く、『最後まで、小憎たらしいな、【歌乙女】。』 そうして、二人は、完全に崩れました。 ・・・人間風に言うならば、死んだのだです。 後に残ったのは、【片眼王】のマント留と【歌乙女】のリュートだけ。 それをただ、無感情に、【道化師】は、拾い呟きます。 曰く、『やれやれ。あれでは、心中カップルですね。 ・・・・私が、崩れるまで話して回りましょうか。 吟遊詩人・・・・くふふふ、悪くないですね。』 【片眼王】の国と隣国の境に、【戦乙女】と【妖鳳王】はいました。 そこで、【戦乙女】は、気付きました。 姉のように慕っていた【歌乙女】が、滅んだことを。 それでも、この後の【戦乙女】と【妖鳳王】は、幸せに暮らしました。 少なくとも、普通の平凡だけれど、温かな幸せを手に入れて・・・・・。 時は巡りて。 幾度と無く、この六人は、人のせいの中で、巡り会います。 そのなかで、このお伽噺のような人生を形を変え、理由を変え、繰り返します。 その出会いの中で、【片眼王】と【戦乙女】を手に入れようとする輩二も引き裂かれます。 しかし、数十年前。 【歌乙女】ディスティアや【戦乙女】アリエスの一世代前の時のことです。 その代の【片眼王】が、完全に死なずに、次の世代へ流れが受け継がれてしまったのです。 このことが、幾多の歪みを生みます。 そこから、『家族の写真』の物語は、始まったのかもしれないです。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 救いが在るのか無いのか、精一杯微妙です。 でも、このお話に、『悪役』はいないのかもしれません。 ただ、互いを思い合っていました。 それが、この悲劇を生んだのかもしれません。 ディスティアにしろ、アリエスにしろ、直接彼らの生まれ変わりではないのです。 ただ、『カケラ』を手に入れたのが、彼女達ということなのです。 それでは、次回で。 |
17806 | 傍観者の囁き(ちょっと違った形式のレス) | 羅城 朱琉 | 2006/7/21 14:43:19 |
記事番号17799へのコメント > > >どうも、ゆあです。 >このお話は、刹なに切なく、哀しいお話です。 >そして、家族の写真のキャラがほとんど出てこないです。 >なので、番外なのです。 朱琉:こんにちは。タイトルどおり、いつもとは少し違った形式でレスに参ります。 > > > > >@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ > > > > 遥か昔の語り継がれないお伽噺 > > > >昔々、本当に昔のこと。 >まだ、神々が、存在していて。 >まだ、魔族が、存在していて。 >人間と共存していた頃のお話です。 >舞台は、人間界ではない何処かの世界。 >その中に、一つの王国が在りました。 >王様の名前を【片眼王】 >太陽のような髪と褐色の肌の持ち主でした >【片眼王】には、たくさんの部下がいました。 >なかでも、お気に入りは、【龍殺ノ英雄】と【戦乙女】の夫婦でした。 >二人は、兄妹でもありました。 >兄の【龍殺ノ英雄】は、金髪碧眼で、太陽のようでした。 >妹の【戦乙女】は、銀髪で、紫色の瞳で月のようでした。 >また、【片眼王】が、側によく侍らせる歌姫に【歌姫】がいました。 >彼女は、【歌乙女】と言われていました。 >彼女は、青く輝く長い髪と淡い水色の瞳で、水の精霊のようでした。 >皆が、彼女について疑問に思うことが在りました。 >彼女は、【片眼王】と同クラスの希代の魔女ということを知っていました。 >なのに、何故、【片眼王】に従うのだろうかと。 >それは、【片眼王】以外の二人と【道化師】だけが知っています。 >【片眼王】は、三人が大切が、それぞれに大切で。 >【戦乙女】は、【龍殺ノ英雄】に恋慕を、【片眼王】には忠誠を、【歌乙女】に友愛を。 >【龍殺ノ英雄】は、【戦乙女】に恋慕を、【片眼王】には忠誠を、【歌乙女】に友愛を。 >【歌乙女】は、【片眼王】に恋慕を、二人に友愛を。 >長い間、この四人は、四方神のように、バランスのいいまま穏やかに暮らしていました。 >他の部下が、それこそ、ヤキモチを妬く位に。 >一つの絵を見ているようだ。とも。 平衡、調和、美しい世界。 平穏、協調、幸せな世界。 すべてがあった、綺麗な世界。 失くして初めて気づくもの。 >だけど、その平穏は、あっけなく崩れました。 >【龍殺ノ英雄】が死んだのです。 >【戦乙女】は、嘆き悲しみました。 >嘆きが深いせいもあり、日に日に【戦乙女】は、やつれていきます。 >武術にこの人あり!!と言われた【戦乙女】は、見る影も在りません。 >【歌乙女】も、歌にそれまでの艶がありません。 >【片眼王】も、退屈です。 >毎日みていた【歌乙女】の歌と楽器の音色に合わせて、演舞も見れなくなりました。 >それから、何度季節が巡ったでしょう。 >それから、何度太陽と月が逢瀬を繰り返したことでしょう。 失われた『ひとつ』、かけがえのない『ひとつ』 平衡は崩れ、調和は乱れる。 これは、崩壊告げし序曲か? 今は、誰もが悲しみのうちに。 > > > > > >まだ、【戦乙女】も【歌乙女】も、【龍殺ノ英雄】がいた頃のように輝きが戻りません。 >どうしたらいいだろう。 >そう、【片眼王】は、考えます。 >それから、何度か季節が一巡しました。 >ある部下から、こう提案が在りました。 >部下の名前は、【道化師】と言いました。 >彼は、カツラとメイクのせいで、髪や瞳の色はもちろん、性別もろくに解りませんでした。 >曰く、『それならば、どちらかを【片眼王】様のお妃にしては如何ですか?』 >その提案を受け入れた【片眼王】は、考えました。 >さらに、二つの季節が巡る頃・・・・・。 >【片眼王】は、【戦乙女】に、求愛しました。 >曰く、『【龍殺ノ英雄】よりも、君を愛するから。私の妃になって欲しい。』と。 >それに対する【戦乙女】の返答は、 >曰く、『私は、貴方には、《忠誠》しか感じない。 > 私が必要とするのは、【龍殺ノ英雄】だけだ。』 >そうです、いまでも、【戦乙女】は、【龍殺ノ英雄】を思っていたのです。 >だから、幾ら深い忠誠を誓う【片眼王】からの求愛であっても。 >一番、この時愛おしく思っていたあの人を裏切っては行けないのです。 >だけど、もしかしたら、崩壊のレクイエムは、この時始まっていたのか知れないのです。 囁かれた救い。それは、『救い』? 代償のように求めた愛。対価のように捧げた愛。 それは、本当に『愛』? 王よ、それは、本当に『愛』? >【片眼王】は、それでも、諦めずに毎日のように通いました、求婚の為に。 >悋気を起こしたのは、【片眼王】では在りません。 >【歌乙女】も、悋気・・・嫉妬をしていました。 >しかし、その悋気は、【戦乙女】へではなく、【片眼王】に。 >【道化師】だけは、微笑んでいました。 >自分が、望む通りに三人が動いていました。 >まるで、聖書の蛇のようにほくそ笑んでいました。 >さらに幾年かが過ぎました。 >相変わらず、【片眼王】は、退屈で。 >相変わらず、【歌乙女】は、憂鬱で。 >相変わらず、【戦乙女】は、悲嘆で。 >相変わらず、【道化師】は、愉快で。 終わらないパズル。欠けたピース。 強引に埋めれば、歪みが生まれる。 何もせずとも、歪みは生まれる。 壊れるのは・・・・誰? >でも、この頃から、ある変化が在りました。 >【戦乙女】に一つの変化が在りました。 >彼女の家に、一人の男性が、訊ねてくるようになったのです。 >彼は、白く羽毛のようなふわふわの長い髪と海のような深い蒼の瞳の青年でした。 >また、彼は、髪の色と同じような二対の翼を持っていました。 >彼は、【妖鳳王】と言いました。 >東の方からの旅人でした。 >彼もまた、【戦乙女】に求愛しに訊ねて来ているようでした。 >だけど、【妖鳳王】は、最初の1日は、求愛はしたけれど、それ以降は、匂わせるだけでしようとはしなかった。 >曰く、『無理矢理求婚よりも、まずは笑顔を戻そうってほうかな。 > 【戦乙女】の笑顔って、可愛いと思うんだ、きっとさ。』 >ある日には、野花のブーケを。 >ある日には、拙い木彫りの人形を。 >ある日には、花の冠を。 >ある日には、穏やかな月の歌を。 >ある日には、季節の果物を。 >そうして、また幾年かが過ぎました。 永劫の闇を満たすのは、無償の想い。無垢な愛。 捧げられた真の心。それは、迷い人を導く灯火。 二人の王の、二つの『愛』。想い人は、同じ人。 それでも違う、二つの『愛』。選ばれるのは、どちら? >また一つ変化が在りました。 >【戦乙女】が、家の外に出て来たのです。 >そして、【片眼王】の元に、向かいました。 >いつもと変わらず、【歌乙女】も、【道化師】も、その側にいます。 >【妖鳳王】の手を取って、向かいました。 >そして、【片眼王】に、言いました。 >曰く、『私は、【妖鳳王】の故郷に行きます。 > 今まで、ありがとうございました。 > 【片眼王】様も、ご息災であられますように。』 >しかし、【片眼王】は面白く在りません。 >曰く、『ならぬ。』 >そこで、初めて、【歌乙女】は、言葉を紡ぎました。 >曰く、『王よ、我が王よ。 > 愛とは、縛るモノではございません。 > 包むものでございます。 > ・ ・・・【戦乙女】の新地への門出を祝うのが・・・』 >しかし、【片眼王】は、【歌乙女】の言葉を遮りました。 >曰く、『我のことを捨てる輩は、いらぬ。』 >【片眼王】は、言葉をさらに重ねました。 >曰く、『我は、【戦乙女】がおれば良い・・・・』 >その言葉に、元々、憂鬱そうな表情だった【歌乙女】にさらに哀しみの色が上乗せされた。 >【歌乙女】の表情を見た【戦乙女】は、全てを悟りました。 >【歌乙女】の表情を見た【道化師】は、嬉しさと哀しさと寂しさを等分に混ぜたような表情をする。 王よ、王よ、あなたは何故気づかない? いとしき人が望むもの。いとしき人がもらったもの。 王よ。御身は代償にあらず。王よ、王よ、御身は御身。 何故、御身の真を示さなかった? >そして、『自分のモノにならないのなら。』という風に、『死の呪文』を【戦乙女】と【妖鳳王】に向けて、【片眼王】は、放ちます。 >パキン・・・という軽く透明な音がした。 >【歌乙女】が、リュートを核にするようにして、呪文を崩壊させたのだ。 >そして、自分と後ろの二人を包むような決壊を張る。 >曰く、『私は、貴方様をお慕いしておりました。 > されども、貴方様はお変わりになられました。 > 私は、二人が、羨ましく思えるのです。 > どうか、【片眼王】、二人を送り出して上げてください。』 >曰く、『五月蝿い。 > 我は・・・・・我は・・・・・』 >曰く、『逃げなさい、【戦乙女】【妖鳳王】。 > ・・・・・幸せになってください。』 >【歌乙女】は、【戦乙女】と【妖鳳王】に、顔を向けるとそう言った。 >その顔は、とても美しかった。 >覚悟を決めた者の高潔なまでの美しさ。 >昔の彼女からは想像もできない類いのものであったが。 >そこから、二人は、逃げ出した。 >【歌乙女】の覚悟を無駄にしては行けないと思ったから。 分かたれた道、離れた道。 友の思いに背を押され。 旅立つ道に幸いあれと。 残されし道に救いあれと。 > > > > > > >【片眼王】と【歌乙女】は、対峙しました。 >ただ、【歌乙女】は哀しそうで。 >【片眼王】は、先ほどとは違い、どれかと言えば、困惑で。 >【道化師】は、その二人からちょうど等分の距離に立ち、哀しさと嬉しさが同居した微笑みで。 >それぞれ、立っていました。 >先に口を開いたのはどちらだったでしょう。 >恐らく、【歌乙女】なのでしょう。 >曰く、『【片眼王】、諦めてくださいませ。』 >曰く、『諦められるものか。 > そこをどけ、【歌乙女】。』 >自嘲の意味合いを込めて、【歌乙女】は、【片眼王】に、囁く。 >曰く、『私如きなど、潰して行けばよろしいでしょう? > それとも、自分に『情』を向ける相手など倒せませんか? > 子どものように、臆病なオウサマ?』 >言葉通りでは、嘲っているようにしか聞こえないでしょう。 >でも、この場では、【道化師】だけが、【歌乙女】のことを知っています。 >彼女が、【片眼王】のことが好きだから、『配下』に甘んじていることを。 >でも、【道化師】は、【歌乙女】のことが好きなのです。 >それでも、今の【片眼王】には、他の声は届きません。 >曰く、『・・・そうしてまで、お前が、我を阻み、【戦乙女】を逃がそうとするのは解らん。 > これが、最後だ、どけ、【歌乙女】。』 >曰く、『いいえ、退きません。』 >こうして、高級魔法使い同士の闘いは始まりました。。 >ただし、最初は、刃を交えない闘いなのです。 >曰く、『刻が過ぎれば、我も、お前も、【戦乙女】も、【妖鳳王】も、朽ち果てる。 > 輪廻の輪の中で、相見えれば、その時こそ、【戦乙女】を手に入れる。』 >曰く、『あら、【片眼王】は、今世は諦めるのね? > 【歌乙女】の名と魔力(ちから)におきて、運命の因果律を固定する。』 >《言霊》でもなんでもない、言葉に力をのせ、魔力を暴れさせるのです。 >それだけで、一から十どころか、一から百まで編まれた魔法のように、その言葉通りになりました。 >その余波が、二人を中心に、嵐のように吹き荒れる。 >だけど、そんな中であっても、【道化師】は、身を守る術以外使おうともせずに、ただ微笑んで、その場にいた。 刃なくとも、戦場(いくさば)にありて 道化よ、何を微笑むや? 哀しき悲しき戦場で、言の葉・魔が音の響きあり。 世に比類なき戦場を、虚ろに思うは何故か? >曰く、『ははっは、では、同じ結末で終わらせない。 > 我【片眼王】と【戦乙女】を宿命が一対とする。 > 我と【戦乙女】を手に入れし者が、世界を手に入れさせよう。』 >曰く、『哀しい人ね。 > 私は、自らを【戦乙女】の『守護』と成さん。』 >そして、幾度目かの言葉の交わりが、終わった時、二人は動いた。 >【歌乙女】は、彼女の細腕には似合わないバスタードソードを。 >【片眼王】は、素手に『力』を纏わせて。 >そして、交錯した。 >曰く、『何ッ!!』 >曰く、『ふふふふふふ、避けると思ったのでしょう? > ・ ・・私は、誰も傷つけたくはないの。 > だから、こういう方法が、截然と思いましたの。』 >バスタードソードは、鍔元まで【片眼王】の胸に刺さり。 >【片眼王】の手は、腕の付け根まで、【歌乙女】の胸に刺さり。 >それを気にしなければ、二人は、恋人同士に見えたでしょう。 >しかし、ゴフッと、二人は血を吐いてしまいます。 >そして、さらさらと互いの身体や服が、端の方から、崩れて行きました。 >子どもが作った砂の城が、波打ち際でゆるゆると削られるように崩れて行きます。 >曰く、『うふふ・・・こういう終わり方も悪くないかな。 > ・ ・・絶対に、貴方の思う通りにさせないわ、【片眼王】。』 >曰く、『最後まで、小憎たらしいな、【歌乙女】。』 >そうして、二人は、完全に崩れました。 >・・・人間風に言うならば、死んだのだです。 >後に残ったのは、【片眼王】のマント留と【歌乙女】のリュートだけ。 >それをただ、無感情に、【道化師】は、拾い呟きます。 >曰く、『やれやれ。あれでは、心中カップルですね。 > ・・・・私が、崩れるまで話して回りましょうか。 > 吟遊詩人・・・・くふふふ、悪くないですね。』 ひとつが終わり、続く道。 語り伝える、謎多き者。 乙女よ、君は何を思うや? 王よ、御身は何を思うや? > > > >【片眼王】の国と隣国の境に、【戦乙女】と【妖鳳王】はいました。 >そこで、【戦乙女】は、気付きました。 >姉のように慕っていた【歌乙女】が、滅んだことを。 >それでも、この後の【戦乙女】と【妖鳳王】は、幸せに暮らしました。 >少なくとも、普通の平凡だけれど、温かな幸せを手に入れて・・・・・。 終わりを知りても、続く道。 新たな『幸せ』を、抱きて進む。 乙女の道に、幸いあれ。 王の道に、幸いあれ。 > > > > >時は巡りて。 >幾度と無く、この六人は、人のせいの中で、巡り会います。 >そのなかで、このお伽噺のような人生を形を変え、理由を変え、繰り返します。 >その出会いの中で、【片眼王】と【戦乙女】を手に入れようとする輩二も引き裂かれます。 >しかし、数十年前。 >【歌乙女】ディスティアや【戦乙女】アリエスの一世代前の時のことです。 >その代の【片眼王】が、完全に死なずに、次の世代へ流れが受け継がれてしまったのです。 >このことが、幾多の歪みを生みます。 >そこから、『家族の写真』の物語は、始まったのかもしれないです。 巡り巡りて、また始まる。歪みを孕んだ御伽噺。 繰り返されるか?その道は。新たな道を、望みつつも。 愛しき者たちのその道に、新たな光のあらんことを。 傍観者なれど、我は願う。彼らに新たな幸あれと。 > > > > >@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ > > > >救いが在るのか無いのか、精一杯微妙です。 >でも、このお話に、『悪役』はいないのかもしれません。 >ただ、互いを思い合っていました。 >それが、この悲劇を生んだのかもしれません。 > > > > >ディスティアにしろ、アリエスにしろ、直接彼らの生まれ変わりではないのです。 >ただ、『カケラ』を手に入れたのが、彼女達ということなのです。 > > >それでは、次回で。 朱琉:と、まあ、こんな感じです。読んだときについぼやいたことを、詩風にしてみました。 アミイ:詩にする理由がわかんないし。なんだってこう、まどろっこしいことするのよ!? 朱琉:雰囲気・・・・と、直接書くと愚痴になるから・・・・? アミイ:・・・・・・・・あのねぇ。 朱琉:まあ、とにかく、今回はこの辺で。ではっ! アミイ:あ、ちょっと待ちなさい朱琉!! ・・・・・・・・逃げたわね。あいつったら・・・・。 とにかくまあ、こんなわかりにくいレスでごめんなさい。じゃあ、また会いましょうね! |
17809 | 語るモノの呟き(同じような形式で) | 十叶 夕海 | 2006/7/22 21:49:26 |
記事番号17806へのコメント > >> >> >>どうも、ゆあです。 >>このお話は、刹なに切なく、哀しいお話です。 >>そして、家族の写真のキャラがほとんど出てこないです。 >>なので、番外なのです。 >朱琉:こんにちは。タイトルどおり、いつもとは少し違った形式でレスに参ります。 ユア;こんにちは。 では、こちらは、語り部もとい、『道化師』が、返します。 > >> >> >> >> >>@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ >> >> >> >> 遥か昔の語り継がれないお伽噺 >> >> >> >>昔々、本当に昔のこと。 >>まだ、神々が、存在していて。 >>まだ、魔族が、存在していて。 >>人間と共存していた頃のお話です。 >>舞台は、人間界ではない何処かの世界。 >>その中に、一つの王国が在りました。 >>王様の名前を【片眼王】 >>太陽のような髪と褐色の肌の持ち主でした >>【片眼王】には、たくさんの部下がいました。 >>なかでも、お気に入りは、【龍殺ノ英雄】と【戦乙女】の夫婦でした。 >>二人は、兄妹でもありました。 >>兄の【龍殺ノ英雄】は、金髪碧眼で、太陽のようでした。 >>妹の【戦乙女】は、銀髪で、紫色の瞳で月のようでした。 >>また、【片眼王】が、側によく侍らせる歌姫に【歌姫】がいました。 >>彼女は、【歌乙女】と言われていました。 >>彼女は、青く輝く長い髪と淡い水色の瞳で、水の精霊のようでした。 >>皆が、彼女について疑問に思うことが在りました。 >>彼女は、【片眼王】と同クラスの希代の魔女ということを知っていました。 >>なのに、何故、【片眼王】に従うのだろうかと。 >>それは、【片眼王】以外の二人と【道化師】だけが知っています。 >>【片眼王】は、三人が大切が、それぞれに大切で。 >>【戦乙女】は、【龍殺ノ英雄】に恋慕を、【片眼王】には忠誠を、【歌乙女】に友愛を。 >>【龍殺ノ英雄】は、【戦乙女】に恋慕を、【片眼王】には忠誠を、【歌乙女】に友愛を。 >>【歌乙女】は、【片眼王】に恋慕を、二人に友愛を。 >>長い間、この四人は、四方神のように、バランスのいいまま穏やかに暮らしていました。 >>他の部下が、それこそ、ヤキモチを妬く位に。 >>一つの絵を見ているようだ。とも。 > > 平衡、調和、美しい世界。 > 平穏、協調、幸せな世界。 > すべてがあった、綺麗な世界。 > 失くして初めて気づくもの。 平穏、協和、幸せな世界。 見せかけだったかもしれないけど、僕がそのままを望んだ世界。 離れて、初めて気がついた。 > >>だけど、その平穏は、あっけなく崩れました。 >>【龍殺ノ英雄】が死んだのです。 >>【戦乙女】は、嘆き悲しみました。 >>嘆きが深いせいもあり、日に日に【戦乙女】は、やつれていきます。 >>武術にこの人あり!!と言われた【戦乙女】は、見る影も在りません。 >>【歌乙女】も、歌にそれまでの艶がありません。 >>【片眼王】も、退屈です。 >>毎日みていた【歌乙女】の歌と楽器の音色に合わせて、演舞も見れなくなりました。 >>それから、何度季節が巡ったでしょう。 >>それから、何度太陽と月が逢瀬を繰り返したことでしょう。 > > 失われた『ひとつ』、かけがえのない『ひとつ』 > 平衡は崩れ、調和は乱れる。 > これは、崩壊告げし序曲か? > 今は、誰もが悲しみのうちに。 あいつは、僕にも優しかった。 いなくなったから、協和は崩れた。 居なくなったから、僕が、《崩壊を告げる鎮魂歌》を紡いだ。 今は、僕以外は純粋に哀しみの中に。 > >> >> >> >> >> >>まだ、【戦乙女】も【歌乙女】も、【龍殺ノ英雄】がいた頃のように輝きが戻りません。 >>どうしたらいいだろう。 >>そう、【片眼王】は、考えます。 >>それから、何度か季節が一巡しました。 >>ある部下から、こう提案が在りました。 >>部下の名前は、【道化師】と言いました。 >>彼は、カツラとメイクのせいで、髪や瞳の色はもちろん、性別もろくに解りませんでした。 >>曰く、『それならば、どちらかを【片眼王】様のお妃にしては如何ですか?』 >>その提案を受け入れた【片眼王】は、考えました。 >>さらに、二つの季節が巡る頃・・・・・。 >>【片眼王】は、【戦乙女】に、求愛しました。 >>曰く、『【龍殺ノ英雄】よりも、君を愛するから。私の妃になって欲しい。』と。 >>それに対する【戦乙女】の返答は、 >>曰く、『私は、貴方には、《忠誠》しか感じない。 >> 私が必要とするのは、【龍殺ノ英雄】だけだ。』 >>そうです、いまでも、【戦乙女】は、【龍殺ノ英雄】を思っていたのです。 >>だから、幾ら深い忠誠を誓う【片眼王】からの求愛であっても。 >>一番、この時愛おしく思っていたあの人を裏切っては行けないのです。 >>だけど、もしかしたら、崩壊のレクイエムは、この時始まっていたのか知れないのです。 > > 囁かれた救い。それは、『救い』? > 代償のように求めた愛。対価のように捧げた愛。 > それは、本当に『愛』? > 王よ、それは、本当に『愛』? > 囁いたのは、『救い』では無く、『甘い毒』。 あの人のココロを手に入れる為の布石。 王のあれは、『愛』か、『独占欲』か。 僕にも、解らない。 >>【片眼王】は、それでも、諦めずに毎日のように通いました、求婚の為に。 >>悋気を起こしたのは、【片眼王】では在りません。 >>【歌乙女】も、悋気・・・嫉妬をしていました。 >>しかし、その悋気は、【戦乙女】へではなく、【片眼王】に。 >>【道化師】だけは、微笑んでいました。 >>自分が、望む通りに三人が動いていました。 >>まるで、聖書の蛇のようにほくそ笑んでいました。 >>さらに幾年かが過ぎました。 >>相変わらず、【片眼王】は、退屈で。 >>相変わらず、【歌乙女】は、憂鬱で。 >>相変わらず、【戦乙女】は、悲嘆で。 >>相変わらず、【道化師】は、愉快で。 > > 終わらないパズル。欠けたピース。 > 強引に埋めれば、歪みが生まれる。 > 何もせずとも、歪みは生まれる。 > 壊れるのは・・・・誰? 抜けることが出来ない迷宮。出口の無い迷路(まよいみち)。 無理に抜ければ、崩壊を生む。 されど、そうせぬとも、王は・・・我も、歪み行く。 ・・・壊れていたのは、我やも知れぬ。 > >>でも、この頃から、ある変化が在りました。 >>【戦乙女】に一つの変化が在りました。 >>彼女の家に、一人の男性が、訊ねてくるようになったのです。 >>彼は、白く羽毛のようなふわふわの長い髪と海のような深い蒼の瞳の青年でした。 >>また、彼は、髪の色と同じような二対の翼を持っていました。 >>彼は、【妖鳳王】と言いました。 >>東の方からの旅人でした。 >>彼もまた、【戦乙女】に求愛しに訊ねて来ているようでした。 >>だけど、【妖鳳王】は、最初の1日は、求愛はしたけれど、それ以降は、匂わせるだけでしようとはしなかった。 >>曰く、『無理矢理求婚よりも、まずは笑顔を戻そうってほうかな。 >> 【戦乙女】の笑顔って、可愛いと思うんだ、きっとさ。』 >>ある日には、野花のブーケを。 >>ある日には、拙い木彫りの人形を。 >>ある日には、花の冠を。 >>ある日には、穏やかな月の歌を。 >>ある日には、季節の果物を。 >>そうして、また幾年かが過ぎました。 > > 永劫の闇を満たすのは、無償の想い。無垢な愛。 > 捧げられた真の心。それは、迷い人を導く灯火。 > 二人の王の、二つの『愛』。想い人は、同じ人。 > それでも違う、二つの『愛』。選ばれるのは、どちら? 空虚を埋めるは、計算の無いココロと純粋な恋慕。 彼の王が、捧げるは、真。 空虚な闇を歩くモノへのランタン 我が王と、彼の王の『愛』。焦がれるのは同じ身。 されど、違えるかの二人の愛。 選ばれるのは、彼の王。 > >>また一つ変化が在りました。 >>【戦乙女】が、家の外に出て来たのです。 >>そして、【片眼王】の元に、向かいました。 >>いつもと変わらず、【歌乙女】も、【道化師】も、その側にいます。 >>【妖鳳王】の手を取って、向かいました。 >>そして、【片眼王】に、言いました。 >>曰く、『私は、【妖鳳王】の故郷に行きます。 >> 今まで、ありがとうございました。 >> 【片眼王】様も、ご息災であられますように。』 >>しかし、【片眼王】は面白く在りません。 >>曰く、『ならぬ。』 >>そこで、初めて、【歌乙女】は、言葉を紡ぎました。 >>曰く、『王よ、我が王よ。 >> 愛とは、縛るモノではございません。 >> 包むものでございます。 >> ・ ・・・【戦乙女】の新地への門出を祝うのが・・・』 >>しかし、【片眼王】は、【歌乙女】の言葉を遮りました。 >>曰く、『我のことを捨てる輩は、いらぬ。』 >>【片眼王】は、言葉をさらに重ねました。 >>曰く、『我は、【戦乙女】がおれば良い・・・・』 >>その言葉に、元々、憂鬱そうな表情だった【歌乙女】にさらに哀しみの色が上乗せされた。 >>【歌乙女】の表情を見た【戦乙女】は、全てを悟りました。 >>【歌乙女】の表情を見た【道化師】は、嬉しさと哀しさと寂しさを等分に混ぜたような表情をする。 > > 王よ、王よ、あなたは何故気づかない? > いとしき人が望むもの。いとしき人がもらったもの。 > 王よ。御身は代償にあらず。王よ、王よ、御身は御身。 > 何故、御身の真を示さなかった? 我が王よ、何故そう思うのか、何故気付かない? 心求める人が願うもの。心求める人が得たものを。 我が王よ、御身の御心を・・・誠の御心を。 その御心の誠を何故、忘れた? > >>そして、『自分のモノにならないのなら。』という風に、『死の呪文』を【戦乙女】と【妖鳳王】に向けて、【片眼王】は、放ちます。 >>パキン・・・という軽く透明な音がした。 >>【歌乙女】が、リュートを核にするようにして、呪文を崩壊させたのだ。 >>そして、自分と後ろの二人を包むような決壊を張る。 >>曰く、『私は、貴方様をお慕いしておりました。 >> されども、貴方様はお変わりになられました。 >> 私は、二人が、羨ましく思えるのです。 >> どうか、【片眼王】、二人を送り出して上げてください。』 >>曰く、『五月蝿い。 >> 我は・・・・・我は・・・・・』 >>曰く、『逃げなさい、【戦乙女】【妖鳳王】。 >> ・・・・・幸せになってください。』 >>【歌乙女】は、【戦乙女】と【妖鳳王】に、顔を向けるとそう言った。 >>その顔は、とても美しかった。 >>覚悟を決めた者の高潔なまでの美しさ。 >>昔の彼女からは想像もできない類いのものであったが。 >>そこから、二人は、逃げ出した。 >>【歌乙女】の覚悟を無駄にしては行けないと思ったから。 > > 分かたれた道、離れた道。 > 友の思いに背を押され。 > 旅立つ道に幸いあれと。 > 残されし道に救いあれと。 僕が、分ち、離した道。 《戦乙女》よ、進みなさい。 旅立ちの貴女達に幸せあれと。 立ち向かう貴女に助けあれと。 願わずにはいられない。 > >> >> >> >> >> >> >>【片眼王】と【歌乙女】は、対峙しました。 >>ただ、【歌乙女】は哀しそうで。 >>【片眼王】は、先ほどとは違い、どれかと言えば、困惑で。 >>【道化師】は、その二人からちょうど等分の距離に立ち、哀しさと嬉しさが同居した微笑みで。 >>それぞれ、立っていました。 >>先に口を開いたのはどちらだったでしょう。 >>恐らく、【歌乙女】なのでしょう。 >>曰く、『【片眼王】、諦めてくださいませ。』 >>曰く、『諦められるものか。 >> そこをどけ、【歌乙女】。』 >>自嘲の意味合いを込めて、【歌乙女】は、【片眼王】に、囁く。 >>曰く、『私如きなど、潰して行けばよろしいでしょう? >> それとも、自分に『情』を向ける相手など倒せませんか? >> 子どものように、臆病なオウサマ?』 >>言葉通りでは、嘲っているようにしか聞こえないでしょう。 >>でも、この場では、【道化師】だけが、【歌乙女】のことを知っています。 >>彼女が、【片眼王】のことが好きだから、『配下』に甘んじていることを。 >>でも、【道化師】は、【歌乙女】のことが好きなのです。 >>それでも、今の【片眼王】には、他の声は届きません。 >>曰く、『・・・そうしてまで、お前が、我を阻み、【戦乙女】を逃がそうとするのは解らん。 >> これが、最後だ、どけ、【歌乙女】。』 >>曰く、『いいえ、退きません。』 >>こうして、高級魔法使い同士の闘いは始まりました。。 >>ただし、最初は、刃を交えない闘いなのです。 >>曰く、『刻が過ぎれば、我も、お前も、【戦乙女】も、【妖鳳王】も、朽ち果てる。 >> 輪廻の輪の中で、相見えれば、その時こそ、【戦乙女】を手に入れる。』 >>曰く、『あら、【片眼王】は、今世は諦めるのね? >> 【歌乙女】の名と魔力(ちから)におきて、運命の因果律を固定する。』 >>《言霊》でもなんでもない、言葉に力をのせ、魔力を暴れさせるのです。 >>それだけで、一から十どころか、一から百まで編まれた魔法のように、その言葉通りになりました。 >>その余波が、二人を中心に、嵐のように吹き荒れる。 >>だけど、そんな中であっても、【道化師】は、身を守る術以外使おうともせずに、ただ微笑んで、その場にいた。 > > 刃なくとも、戦場(いくさば)にありて > 道化よ、何を微笑むや? > 哀しき悲しき戦場で、言の葉・魔が音の響きあり。 > 世に比類なき戦場を、虚ろに思うは何故か? 僕は、刃なき戦場(いくさば)にありて 微笑むは、嬉しくも哀しいから。 ココロ、闇に満ちる戦場で、交わされるは真の心隠しし言葉。 これが、僕が、望んだもの? > >>曰く、『ははっは、では、同じ結末で終わらせない。 >> 我【片眼王】と【戦乙女】を宿命が一対とする。 >> 我と【戦乙女】を手に入れし者が、世界を手に入れさせよう。』 >>曰く、『哀しい人ね。 >> 私は、自らを【戦乙女】の『守護』と成さん。』 >>そして、幾度目かの言葉の交わりが、終わった時、二人は動いた。 >>【歌乙女】は、彼女の細腕には似合わないバスタードソードを。 >>【片眼王】は、素手に『力』を纏わせて。 >>そして、交錯した。 >>曰く、『何ッ!!』 >>曰く、『ふふふふふふ、避けると思ったのでしょう? >> ・ ・・私は、誰も傷つけたくはないの。 >> だから、こういう方法が、截然と思いましたの。』 >>バスタードソードは、鍔元まで【片眼王】の胸に刺さり。 >>【片眼王】の手は、腕の付け根まで、【歌乙女】の胸に刺さり。 >>それを気にしなければ、二人は、恋人同士に見えたでしょう。 >>しかし、ゴフッと、二人は血を吐いてしまいます。 >>そして、さらさらと互いの身体や服が、端の方から、崩れて行きました。 >>子どもが作った砂の城が、波打ち際でゆるゆると削られるように崩れて行きます。 >>曰く、『うふふ・・・こういう終わり方も悪くないかな。 >> ・ ・・絶対に、貴方の思う通りにさせないわ、【片眼王】。』 >>曰く、『最後まで、小憎たらしいな、【歌乙女】。』 >>そうして、二人は、完全に崩れました。 >>・・・人間風に言うならば、死んだのだです。 >>後に残ったのは、【片眼王】のマント留と【歌乙女】のリュートだけ。 >>それをただ、無感情に、【道化師】は、拾い呟きます。 >>曰く、『やれやれ。あれでは、心中カップルですね。 >> ・・・・私が、崩れるまで話して回りましょうか。 >> 吟遊詩人・・・・くふふふ、悪くないですね。』 > > ひとつが終わり、続く道。 > 語り伝える、謎多き者。 > 乙女よ、君は何を思うや? > 王よ、御身は何を思うや? 一幕降りて、尚続く。 語り伝えるは、僕 こと 《黒幕》 乙女は、我が王が、何を想い、逝ったのか。 解らぬ、幾千過ぎた今を持っても解らぬ。 > >> >> >> >>【片眼王】の国と隣国の境に、【戦乙女】と【妖鳳王】はいました。 >>そこで、【戦乙女】は、気付きました。 >>姉のように慕っていた【歌乙女】が、滅んだことを。 >>それでも、この後の【戦乙女】と【妖鳳王】は、幸せに暮らしました。 >>少なくとも、普通の平凡だけれど、温かな幸せを手に入れて・・・・・。 > > 終わりを知りても、続く道。 > 新たな『幸せ』を、抱きて進む。 > 乙女の道に、幸いあれ。 > 王の道に、幸いあれ。 結末知りても、歩む道。 新しい『想い出』を抱いて欲しい。 《戦乙女》《妖鳳王》よ、貴殿らに幸い在れ。 > >> >> >> >> >>時は巡りて。 >>幾度と無く、この六人は、人のせいの中で、巡り会います。 >>そのなかで、このお伽噺のような人生を形を変え、理由を変え、繰り返します。 >>その出会いの中で、【片眼王】と【戦乙女】を手に入れようとする輩二も引き裂かれます。 >>しかし、数十年前。 >>【歌乙女】ディスティアや【戦乙女】アリエスの一世代前の時のことです。 >>その代の【片眼王】が、完全に死なずに、次の世代へ流れが受け継がれてしまったのです。 >>このことが、幾多の歪みを生みます。 >>そこから、『家族の写真』の物語は、始まったのかもしれないです。 > > 巡り巡りて、また始まる。歪みを孕んだ御伽噺。 > 繰り返されるか?その道は。新たな道を、望みつつも。 > 愛しき者たちのその道に、新たな光のあらんことを。 > 傍観者なれど、我は願う。彼らに新たな幸あれと。 > 時は巡り、また開演する。歪みを内包するお伽噺。 繰り返す、その道に、終止符を。 生み出しモノが、願うものは、それでも、終止符を望む。 黒幕だからこそ、願う。 歪みのお伽噺に、終止符を。 そして、須く幸せになって欲しいと。 >> >> >> >> >>@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ >> >> >> >>救いが在るのか無いのか、精一杯微妙です。 >>でも、このお話に、『悪役』はいないのかもしれません。 >>ただ、互いを思い合っていました。 >>それが、この悲劇を生んだのかもしれません。 >> >> >> >> >>ディスティアにしろ、アリエスにしろ、直接彼らの生まれ変わりではないのです。 >>ただ、『カケラ』を手に入れたのが、彼女達ということなのです。 >> >> >>それでは、次回で。 >朱琉:と、まあ、こんな感じです。読んだときについぼやいたことを、詩風にしてみました。 >アミイ:詩にする理由がわかんないし。なんだってこう、まどろっこしいことするのよ!? >朱琉:雰囲気・・・・と、直接書くと愚痴になるから・・・・? >アミイ:・・・・・・・・あのねぇ。 >朱琉:まあ、とにかく、今回はこの辺で。ではっ! >アミイ:あ、ちょっと待ちなさい朱琉!! > ・・・・・・・・逃げたわね。あいつったら・・・・。 > とにかくまあ、こんなわかりにくいレスでごめんなさい。じゃあ、また会いましょうね! ユア;一応、これからのことも少々匂わせました。 久遠;たしかに、そうなりそうな無いようだものね。 ユア;はい、では、また。 二人;では、また会いましょう。 > > |
17814 | Re:家族の写真 番外 時は巡りて +遥か昔の語り継がれないお伽噺+ | 月読乾 | 2006/7/31 09:46:00 |
記事番号17799へのコメント >昔々、本当に昔のこと。 >まだ、神々が、存在していて。 >まだ、魔族が、存在していて。 >人間と共存していた頃のお話です。 既に、記録に残っていないほどの遥か昔の話…? でも、生きる為に同じところにいた聖と邪を目に見える形で2つに分ける事で、過去という事と決別し、自分になるのはいつでもどこでも同じ事? >舞台は、人間界ではない何処かの世界。 どこかのある世界。 それは確かにあった事ですよね? >その中に、一つの王国が在りました。 >王様の名前を【片眼王】 >太陽のような髪と褐色の肌の持ち主でした >【片眼王】には、たくさんの部下がいました。 >なかでも、お気に入りは、【龍殺ノ英雄】と【戦乙女】の夫婦でした。 >二人は、兄妹でもありました。 『個人名』と言う(こっちの世界の今の大多数の国にある)概念は存在しないのでしょうか? >兄の【龍殺ノ英雄】は、金髪碧眼で、太陽のようでした。 >妹の【戦乙女】は、銀髪で、紫色の瞳で月のようでした。 肉体と言う目に見える物を超えた、存在そのものを感じます。 『そういう存在』んおでしょうか? >また、【片眼王】が、側によく侍らせる歌姫に【歌姫】がいました。 >彼女は、【歌乙女】と言われていました。 >彼女は、青く輝く長い髪と淡い水色の瞳で、水の精霊のようでした。 束の間の安息に身を任せたいと思わせる… そんな感じの女性と言う印象を受けました。 >皆が、彼女について疑問に思うことが在りました。 >彼女は、【片眼王】と同クラスの希代の魔女ということを知っていました。 >なのに、何故、【片眼王】に従うのだろうかと。 >それは、【片眼王】以外の二人と【道化師】だけが知っています。 道化師? さり気に流されてますが、何か重要っぽいキャラが出てきましたね。 >【片眼王】は、三人が大切が、それぞれに大切で。 >【戦乙女】は、【龍殺ノ英雄】に恋慕を、【片眼王】には忠誠を、【歌乙女】に友愛を。 >【龍殺ノ英雄】は、【戦乙女】に恋慕を、【片眼王】には忠誠を、【歌乙女】に友愛を。 >【歌乙女】は、【片眼王】に恋慕を、二人に友愛を。 >長い間、この四人は、四方神のように、バランスのいいまま穏やかに暮らしていました。 >他の部下が、それこそ、ヤキモチを妬く位に。 >一つの絵を見ているようだ。とも。 >だけど、その平穏は、あっけなく崩れました。 >【龍殺ノ英雄】が死んだのです。 突然の理不尽な運命。 自分の意思ではどうしようもできない無常さに、 自分の力の無力さと、自身を打ち砕かれる… でも、そこから何かが見えて来ることも? >【戦乙女】は、嘆き悲しみました。 >嘆きが深いせいもあり、日に日に【戦乙女】は、やつれていきます。 >武術にこの人あり!!と言われた【戦乙女】は、見る影も在りません。 >【歌乙女】も、歌にそれまでの艶がありません。 >【片眼王】も、退屈です。 >毎日みていた【歌乙女】の歌と楽器の音色に合わせて、演舞も見れなくなりました。 >それから、何度季節が巡ったでしょう。 >それから、何度太陽と月が逢瀬を繰り返したことでしょう。 運命に抗う決意をして、その力が停滞した時、 静かに自分の精神が萎えていくのを見る事になる…? それは、ある意味最も苦痛を感じる時間でしょうか? >まだ、【戦乙女】も【歌乙女】も、【龍殺ノ英雄】がいた頃のように輝きが戻りません。 >どうしたらいいだろう。 >そう、【片眼王】は、考えます。 >それから、何度か季節が一巡しました。 >ある部下から、こう提案が在りました。 >部下の名前は、【道化師】と言いました。 >彼は、カツラとメイクのせいで、髪や瞳の色はもちろん、性別もろくに解りませんでした。 『殺竜事件』のEdみたいな印象を受けました。 (すいません、今読んでいるので…) >曰く、『それならば、どちらかを【片眼王】様のお妃にしては如何ですか?』 >その提案を受け入れた【片眼王】は、考えました。 >さらに、二つの季節が巡る頃・・・・・。 >【片眼王】は、【戦乙女】に、求愛しました。 >曰く、『【龍殺ノ英雄】よりも、君を愛するから。私の妃になって欲しい。』と。 >それに対する【戦乙女】の返答は、 >曰く、『私は、貴方には、《忠誠》しか感じない。 > 私が必要とするのは、【龍殺ノ英雄】だけだ。』 >そうです、いまでも、【戦乙女】は、【龍殺ノ英雄】を思っていたのです。 >だから、幾ら深い忠誠を誓う【片眼王】からの求愛であっても。 >一番、この時愛おしく思っていたあの人を裏切っては行けないのです。 >だけど、もしかしたら、崩壊のレクイエムは、この時始まっていたのか知れないのです。 >【片眼王】は、それでも、諦めずに毎日のように通いました、求婚の為に。 >悋気を起こしたのは、【片眼王】では在りません。 >【歌乙女】も、悋気・・・嫉妬をしていました。 >しかし、その悋気は、【戦乙女】へではなく、【片眼王】に。 >【道化師】だけは、微笑んでいました。 >自分が、望む通りに三人が動いていました。 >まるで、聖書の蛇のようにほくそ笑んでいました 黒澤映画の、『三十朗』みたいな奴ですね。 (いや、もっとわかんねえって…元ネタ…) >さらに幾年かが過ぎました。 >相変わらず、【片眼王】は、退屈で。 >相変わらず、【歌乙女】は、憂鬱で。 >相変わらず、【戦乙女】は、悲嘆で。 >相変わらず、【道化師】は、愉快で。 >でも、この頃から、ある変化が在りました。 >【戦乙女】に一つの変化が在りました。 >彼女の家に、一人の男性が、訊ねてくるようになったのです。 >彼は、白く羽毛のようなふわふわの長い髪と海のような深い蒼の瞳の青年でした。 >また、彼は、髪の色と同じような二対の翼を持っていました。 >彼は、【妖鳳王】と言いました。 >東の方からの旅人でした。 >彼もまた、【戦乙女】に求愛しに訊ねて来ているようでした。 >だけど、【妖鳳王】は、最初の1日は、求愛はしたけれど、それ以降は、匂わせるだけでしようとはしなかった。 >曰く、『無理矢理求婚よりも、まずは笑顔を戻そうってほうかな。 > 【戦乙女】の笑顔って、可愛いと思うんだ、きっとさ。』 >ある日には、野花のブーケを。 >ある日には、拙い木彫りの人形を。 >ある日には、花の冠を。 >ある日には、穏やかな月の歌を。 >ある日には、季節の果物を。 >そうして、また幾年かが過ぎました。 >また一つ変化が在りました。 >【戦乙女】が、家の外に出て来たのです。 >そして、【片眼王】の元に、向かいました。 >いつもと変わらず、【歌乙女】も、【道化師】も、その側にいます。 >【妖鳳王】の手を取って、向かいました。 >そして、【片眼王】に、言いました。 >曰く、『私は、【妖鳳王】の故郷に行きます。 > 今まで、ありがとうございました。 > 【片眼王】様も、ご息災であられますように。』 道化師のゲームに、或いは不確定要素が? もし、そこに本当の何かがあるのなら… >しかし、【片眼王】は面白く在りません。 >曰く、『ならぬ。』 >そこで、初めて、【歌乙女】は、言葉を紡ぎました。 >曰く、『王よ、我が王よ。 > 愛とは、縛るモノではございません。 > 包むものでございます。 > ・ ・・・【戦乙女】の新地への門出を祝うのが・・・』 >しかし、【片眼王】は、【歌乙女】の言葉を遮りました。 >曰く、『我のことを捨てる輩は、いらぬ。』 >【片眼王】は、言葉をさらに重ねました。 >曰く、『我は、【戦乙女】がおれば良い・・・・』 >その言葉に、元々、憂鬱そうな表情だった【歌乙女】にさらに哀しみの色が上乗せされた。 >【歌乙女】の表情を見た【戦乙女】は、全てを悟りました。 >【歌乙女】の表情を見た【道化師】は、嬉しさと哀しさと寂しさを等分に混ぜたような表情をする。 >そして、『自分のモノにならないのなら。』という風に、『死の呪文』を【戦乙女】と【妖鳳王】に向けて、【片眼王】は、放ちます。 >パキン・・・という軽く透明な音がした。 >【歌乙女】が、リュートを核にするようにして、呪文を崩壊させたのだ。 >そして、自分と後ろの二人を包むような決壊を張る。 >曰く、『私は、貴方様をお慕いしておりました。 > されども、貴方様はお変わりになられました。 > 私は、二人が、羨ましく思えるのです。 > どうか、【片眼王】、二人を送り出して上げてください。』 >曰く、『五月蝿い。 > 我は・・・・・我は・・・・・』 >曰く、『逃げなさい、【戦乙女】【妖鳳王】。 > ・・・・・幸せになってください。』 >【歌乙女】は、【戦乙女】と【妖鳳王】に、顔を向けるとそう言った。 >その顔は、とても美しかった。 >覚悟を決めた者の高潔なまでの美しさ。 >昔の彼女からは想像もできない類いのものであったが。 >そこから、二人は、逃げ出した。 >【歌乙女】の覚悟を無駄にしては行けないと思ったから。 狂い始めた歯車… けど、作り上げられた虚構に成り果てた物が崩れたら、 その後には、また真実が見え始める事も? 今は、それを目指しているとも >【片眼王】と【歌乙女】は、対峙しました。 >ただ、【歌乙女】は哀しそうで。 >【片眼王】は、先ほどとは違い、どれかと言えば、困惑で。 >【道化師】は、その二人からちょうど等分の距離に立ち、哀しさと嬉しさが同居した微笑みで。 >それぞれ、立っていました。 >先に口を開いたのはどちらだったでしょう。 >恐らく、【歌乙女】なのでしょう。 >曰く、『【片眼王】、諦めてくださいませ。』 >曰く、『諦められるものか。 > そこをどけ、【歌乙女】。』 >自嘲の意味合いを込めて、【歌乙女】は、【片眼王】に、囁く。 >曰く、『私如きなど、潰して行けばよろしいでしょう? > それとも、自分に『情』を向ける相手など倒せませんか? > 子どものように、臆病なオウサマ?』 >言葉通りでは、嘲っているようにしか聞こえないでしょう。 >でも、この場では、【道化師】だけが、【歌乙女】のことを知っています。 >彼女が、【片眼王】のことが好きだから、『配下』に甘んじていることを。 >でも、【道化師】は、【歌乙女】のことが好きなのです。 >それでも、今の【片眼王】には、他の声は届きません。 >曰く、『・・・そうしてまで、お前が、我を阻み、【戦乙女】を逃がそうとするのは解らん。 > これが、最後だ、どけ、【歌乙女】。』 >曰く、『いいえ、退きません。』 >こうして、高級魔法使い同士の闘いは始まりました。。 >ただし、最初は、刃を交えない闘いなのです。 それぞれが、仮面を付けていた… 道化師自身も、結局はその自分の奥にある感情は、実はとても幼稚で素直で純粋なもの? >曰く、『刻が過ぎれば、我も、お前も、【戦乙女】も、【妖鳳王】も、朽ち果てる。 > 輪廻の輪の中で、相見えれば、その時こそ、【戦乙女】を手に入れる。』 >曰く、『あら、【片眼王】は、今世は諦めるのね? > 【歌乙女】の名と魔力(ちから)におきて、運命の因果律を固定する。』 >《言霊》でもなんでもない、言葉に力をのせ、魔力を暴れさせるのです。 >それだけで、一から十どころか、一から百まで編まれた魔法のように、その言葉通りになりました。 >その余波が、二人を中心に、嵐のように吹き荒れる。 >だけど、そんな中であっても、【道化師】は、身を守る術以外使おうともせずに、ただ微笑んで、その場にいた。 >曰く、『ははっは、では、同じ結末で終わらせない。 > 我【片眼王】と【戦乙女】を宿命が一対とする。 > 我と【戦乙女】を手に入れし者が、世界を手に入れさせよう。』 >曰く、『哀しい人ね。 > 私は、自らを【戦乙女】の『守護』と成さん。』 >そして、幾度目かの言葉の交わりが、終わった時、二人は動いた。 >【歌乙女】は、彼女の細腕には似合わないバスタードソードを。 >【片眼王】は、素手に『力』を纏わせて。 >そして、交錯した。 >曰く、『何ッ!!』 >曰く、『ふふふふふふ、避けると思ったのでしょう? > ・ ・・私は、誰も傷つけたくはないの。 > だから、こういう方法が、截然と思いましたの。』 >バスタードソードは、鍔元まで【片眼王】の胸に刺さり。 >【片眼王】の手は、腕の付け根まで、【歌乙女】の胸に刺さり。 >それを気にしなければ、二人は、恋人同士に見えたでしょう。 >しかし、ゴフッと、二人は血を吐いてしまいます。 >そして、さらさらと互いの身体や服が、端の方から、崩れて行きました。 >子どもが作った砂の城が、波打ち際でゆるゆると削られるように崩れて行きます。 >曰く、『うふふ・・・こういう終わり方も悪くないかな。 > ・ ・・絶対に、貴方の思う通りにさせないわ、【片眼王】。』 >曰く、『最後まで、小憎たらしいな、【歌乙女】。』 >そうして、二人は、完全に崩れました。 >・・・人間風に言うならば、死んだのだです。 >後に残ったのは、【片眼王】のマント留と【歌乙女】のリュートだけ。 >それをただ、無感情に、【道化師】は、拾い呟きます。 あまりに、身に付けたものが多過ぎたから… 自分以外の存在を力として預かりすぎたから、自分を管理することが出来なかった… 矛盾を身に付けたけど、引き返せないから答えを1つ選んだだけ? やはり、2人は運命に抵抗したかったんだと思います。 >曰く、『やれやれ。あれでは、心中カップルですね。 > ・・・・私が、崩れるまで話して回りましょうか。 > 吟遊詩人・・・・くふふふ、悪くないですね。』 彼はこの後… >【片眼王】の国と隣国の境に、【戦乙女】と【妖鳳王】はいました。 >そこで、【戦乙女】は、気付きました。 >姉のように慕っていた【歌乙女】が、滅んだことを。 >それでも、この後の【戦乙女】と【妖鳳王】は、幸せに暮らしました。 >少なくとも、普通の平凡だけれど、温かな幸せを手に入れて・・・・・。 > > > > >時は巡りて。 >幾度と無く、この六人は、人のせいの中で、巡り会います。 >そのなかで、このお伽噺のような人生を形を変え、理由を変え、繰り返します。 >その出会いの中で、【片眼王】と【戦乙女】を手に入れようとする輩二も引き裂かれます。 >しかし、数十年前。 >【歌乙女】ディスティアや【戦乙女】アリエスの一世代前の時のことです。 >その代の【片眼王】が、完全に死なずに、次の世代へ流れが受け継がれてしまったのです。 >このことが、幾多の歪みを生みます。 >そこから、『家族の写真』の物語は、始まったのかもしれないです。 罪に苛まされても、 全てを失っても、そこから真実をまた見つけてもいいのかな…? 答えを見つけようとしていれば… |
17820 | ・・・・・・・されど、今は語られえぬ御伽噺。 | 十叶 夕海 | 2006/8/2 20:21:10 |
記事番号17814へのコメント >>昔々、本当に昔のこと。 >>まだ、神々が、存在していて。 >>まだ、魔族が、存在していて。 >>人間と共存していた頃のお話です。 > >既に、記録に残っていないほどの遥か昔の話…? > >でも、生きる為に同じところにいた聖と邪を目に見える形で2つに分ける事で、過去という事と決別し、自分になるのはいつでもどこでも同じ事? そうですね。 あるいは、記憶から消された歴史の部分でしょうか? そういう感じです。 > > > >>舞台は、人間界ではない何処かの世界。 > >どこかのある世界。 >それは確かにあった事ですよね? ええ、おぼえている人も数少ないことですが、実在していました。 > >>その中に、一つの王国が在りました。 >>王様の名前を【片眼王】 >>太陽のような髪と褐色の肌の持ち主でした >>【片眼王】には、たくさんの部下がいました。 >>なかでも、お気に入りは、【龍殺ノ英雄】と【戦乙女】の夫婦でした。 >>二人は、兄妹でもありました。 > >『個人名』と言う(こっちの世界の今の大多数の国にある)概念は存在しないのでしょうか? 在った。ということですが、永い永い気の遠い時間の流れの中で、忘れられていました。 > >>兄の【龍殺ノ英雄】は、金髪碧眼で、太陽のようでした。 >>妹の【戦乙女】は、銀髪で、紫色の瞳で月のようでした。 > >肉体と言う目に見える物を超えた、存在そのものを感じます。 >『そういう存在』んおでしょうか? > そうですね。 ギリシャ神話なら、アポロン・アルテミス兄妹よりも、ヘリオス・セレスの二人に近いです。 いわゆる、そういう役目そのままの存在なのです。 >>また、【片眼王】が、側によく侍らせる歌姫に【歌姫】がいました。 >>彼女は、【歌乙女】と言われていました。 >>彼女は、青く輝く長い髪と淡い水色の瞳で、水の精霊のようでした。 > >束の間の安息に身を任せたいと思わせる… >そんな感じの女性と言う印象を受けました。 実際、争い事とか、そういうことが嫌いで無縁な人ですね。 > >>皆が、彼女について疑問に思うことが在りました。 >>彼女は、【片眼王】と同クラスの希代の魔女ということを知っていました。 >>なのに、何故、【片眼王】に従うのだろうかと。 >>それは、【片眼王】以外の二人と【道化師】だけが知っています。 > >道化師? >さり気に流されてますが、何か重要っぽいキャラが出てきましたね。 重要っぽいのではなく、重要なのです。 黒幕さんですし、『家族の写真』の中で、結構重要さんなのです。 > >>【片眼王】は、三人が大切が、それぞれに大切で。 >>【戦乙女】は、【龍殺ノ英雄】に恋慕を、【片眼王】には忠誠を、【歌乙女】に友愛を。 >>【龍殺ノ英雄】は、【戦乙女】に恋慕を、【片眼王】には忠誠を、【歌乙女】に友愛を。 >>【歌乙女】は、【片眼王】に恋慕を、二人に友愛を。 >>長い間、この四人は、四方神のように、バランスのいいまま穏やかに暮らしていました。 >>他の部下が、それこそ、ヤキモチを妬く位に。 >>一つの絵を見ているようだ。とも。 >>だけど、その平穏は、あっけなく崩れました。 >>【龍殺ノ英雄】が死んだのです。 > >突然の理不尽な運命。 > >自分の意思ではどうしようもできない無常さに、 > >自分の力の無力さと、自身を打ち砕かれる… > >でも、そこから何かが見えて来ることも? 理不尽だけども、ある種の必然。 どうしようもないけれど。 それでも、『何か、できたのではないか?』と思ってしまう。 見えても、あの人は戻ってこない。 > >>【戦乙女】は、嘆き悲しみました。 >>嘆きが深いせいもあり、日に日に【戦乙女】は、やつれていきます。 >>武術にこの人あり!!と言われた【戦乙女】は、見る影も在りません。 >>【歌乙女】も、歌にそれまでの艶がありません。 >>【片眼王】も、退屈です。 >>毎日みていた【歌乙女】の歌と楽器の音色に合わせて、演舞も見れなくなりました。 >>それから、何度季節が巡ったでしょう。 >>それから、何度太陽と月が逢瀬を繰り返したことでしょう。 > >運命に抗う決意をして、その力が停滞した時、 >静かに自分の精神が萎えていくのを見る事になる…? > >それは、ある意味最も苦痛を感じる時間でしょうか? 運命はあがなうではなく、変えるモノ。 ゆるゆるとした時間こそ、何者にも耐えがたい苦痛。 だけど、まだ、これは平穏だった。 少なくとも、静寂が傍らにあったから。 > >>まだ、【戦乙女】も【歌乙女】も、【龍殺ノ英雄】がいた頃のように輝きが戻りません。 >>どうしたらいいだろう。 >>そう、【片眼王】は、考えます。 >>それから、何度か季節が一巡しました。 >>ある部下から、こう提案が在りました。 >>部下の名前は、【道化師】と言いました。 >>彼は、カツラとメイクのせいで、髪や瞳の色はもちろん、性別もろくに解りませんでした。 > >『殺竜事件』のEdみたいな印象を受けました。 >(すいません、今読んでいるので…) なるほど。 道化師=ピエロ?というふうに、ベタニ行きました。 > >>曰く、『それならば、どちらかを【片眼王】様のお妃にしては如何ですか?』 >>その提案を受け入れた【片眼王】は、考えました。 >>さらに、二つの季節が巡る頃・・・・・。 >>【片眼王】は、【戦乙女】に、求愛しました。 >>曰く、『【龍殺ノ英雄】よりも、君を愛するから。私の妃になって欲しい。』と。 >>それに対する【戦乙女】の返答は、 >>曰く、『私は、貴方には、《忠誠》しか感じない。 >> 私が必要とするのは、【龍殺ノ英雄】だけだ。』 >>そうです、いまでも、【戦乙女】は、【龍殺ノ英雄】を思っていたのです。 >>だから、幾ら深い忠誠を誓う【片眼王】からの求愛であっても。 >>一番、この時愛おしく思っていたあの人を裏切っては行けないのです。 >>だけど、もしかしたら、崩壊のレクイエムは、この時始まっていたのか知れないのです。 >>【片眼王】は、それでも、諦めずに毎日のように通いました、求婚の為に。 >>悋気を起こしたのは、【片眼王】では在りません。 >>【歌乙女】も、悋気・・・嫉妬をしていました。 >>しかし、その悋気は、【戦乙女】へではなく、【片眼王】に。 >>【道化師】だけは、微笑んでいました。 >>自分が、望む通りに三人が動いていました。 >>まるで、聖書の蛇のようにほくそ笑んでいました > >黒澤映画の、『三十朗』みたいな奴ですね。 >(いや、もっとわかんねえって…元ネタ…) わかるような・・・・・・微妙ですが。 ようするに、自分のたくらみどおりに動いているのが、うれしくて仕方がない。 > >>さらに幾年かが過ぎました。 >>相変わらず、【片眼王】は、退屈で。 >>相変わらず、【歌乙女】は、憂鬱で。 >>相変わらず、【戦乙女】は、悲嘆で。 >>相変わらず、【道化師】は、愉快で。 >>でも、この頃から、ある変化が在りました。 >>【戦乙女】に一つの変化が在りました。 >>彼女の家に、一人の男性が、訊ねてくるようになったのです。 >>彼は、白く羽毛のようなふわふわの長い髪と海のような深い蒼の瞳の青年でした。 >>また、彼は、髪の色と同じような二対の翼を持っていました。 >>彼は、【妖鳳王】と言いました。 >>東の方からの旅人でした。 >>彼もまた、【戦乙女】に求愛しに訊ねて来ているようでした。 >>だけど、【妖鳳王】は、最初の1日は、求愛はしたけれど、それ以降は、匂わせるだけでしようとはしなかった。 >>曰く、『無理矢理求婚よりも、まずは笑顔を戻そうってほうかな。 >> 【戦乙女】の笑顔って、可愛いと思うんだ、きっとさ。』 >>ある日には、野花のブーケを。 >>ある日には、拙い木彫りの人形を。 >>ある日には、花の冠を。 >>ある日には、穏やかな月の歌を。 >>ある日には、季節の果物を。 >>そうして、また幾年かが過ぎました。 >>また一つ変化が在りました。 >>【戦乙女】が、家の外に出て来たのです。 >>そして、【片眼王】の元に、向かいました。 >>いつもと変わらず、【歌乙女】も、【道化師】も、その側にいます。 >>【妖鳳王】の手を取って、向かいました。 >>そして、【片眼王】に、言いました。 >>曰く、『私は、【妖鳳王】の故郷に行きます。 >> 今まで、ありがとうございました。 >> 【片眼王】様も、ご息災であられますように。』 > >道化師のゲームに、或いは不確定要素が? >もし、そこに本当の何かがあるのなら… 道化師の場合、その不確定要素すら、計算に入れるでしょう。 ・・・・・・道化師も、ある人の掌で踊っているだけなのかもしれないですが。 > >>しかし、【片眼王】は面白く在りません。 >>曰く、『ならぬ。』 >>そこで、初めて、【歌乙女】は、言葉を紡ぎました。 >>曰く、『王よ、我が王よ。 >> 愛とは、縛るモノではございません。 >> 包むものでございます。 >> ・ ・・・【戦乙女】の新地への門出を祝うのが・・・』 >>しかし、【片眼王】は、【歌乙女】の言葉を遮りました。 >>曰く、『我のことを捨てる輩は、いらぬ。』 >>【片眼王】は、言葉をさらに重ねました。 >>曰く、『我は、【戦乙女】がおれば良い・・・・』 >>その言葉に、元々、憂鬱そうな表情だった【歌乙女】にさらに哀しみの色が上乗せされた。 >>【歌乙女】の表情を見た【戦乙女】は、全てを悟りました。 >>【歌乙女】の表情を見た【道化師】は、嬉しさと哀しさと寂しさを等分に混ぜたような表情をする。 >>そして、『自分のモノにならないのなら。』という風に、『死の呪文』を【戦乙女】と【妖鳳王】に向けて、【片眼王】は、放ちます。 >>パキン・・・という軽く透明な音がした。 >>【歌乙女】が、リュートを核にするようにして、呪文を崩壊させたのだ。 >>そして、自分と後ろの二人を包むような決壊を張る。 >>曰く、『私は、貴方様をお慕いしておりました。 >> されども、貴方様はお変わりになられました。 >> 私は、二人が、羨ましく思えるのです。 >> どうか、【片眼王】、二人を送り出して上げてください。』 >>曰く、『五月蝿い。 >> 我は・・・・・我は・・・・・』 >>曰く、『逃げなさい、【戦乙女】【妖鳳王】。 >> ・・・・・幸せになってください。』 >>【歌乙女】は、【戦乙女】と【妖鳳王】に、顔を向けるとそう言った。 >>その顔は、とても美しかった。 >>覚悟を決めた者の高潔なまでの美しさ。 >>昔の彼女からは想像もできない類いのものであったが。 >>そこから、二人は、逃げ出した。 >>【歌乙女】の覚悟を無駄にしては行けないと思ったから。 > >狂い始めた歯車… > >けど、作り上げられた虚構に成り果てた物が崩れたら、 >その後には、また真実が見え始める事も? > >今は、それを目指しているとも > だけれど、その狂わせ始めも、道化師の狂おしいまでの歌乙女への恋心があったから。 それでも、思ってしまうあの『虚構』の平穏でも。 とても、心地よく戻りたいと。 ・・・・・そうかもしれないそうじゃないかもしれない。 >>【片眼王】と【歌乙女】は、対峙しました。 >>ただ、【歌乙女】は哀しそうで。 >>【片眼王】は、先ほどとは違い、どれかと言えば、困惑で。 >>【道化師】は、その二人からちょうど等分の距離に立ち、哀しさと嬉しさが同居した微笑みで。 >>それぞれ、立っていました。 >>先に口を開いたのはどちらだったでしょう。 >>恐らく、【歌乙女】なのでしょう。 >>曰く、『【片眼王】、諦めてくださいませ。』 >>曰く、『諦められるものか。 >> そこをどけ、【歌乙女】。』 >>自嘲の意味合いを込めて、【歌乙女】は、【片眼王】に、囁く。 >>曰く、『私如きなど、潰して行けばよろしいでしょう? >> それとも、自分に『情』を向ける相手など倒せませんか? >> 子どものように、臆病なオウサマ?』 >>言葉通りでは、嘲っているようにしか聞こえないでしょう。 >>でも、この場では、【道化師】だけが、【歌乙女】のことを知っています。 >>彼女が、【片眼王】のことが好きだから、『配下』に甘んじていることを。 >>でも、【道化師】は、【歌乙女】のことが好きなのです。 >>それでも、今の【片眼王】には、他の声は届きません。 >>曰く、『・・・そうしてまで、お前が、我を阻み、【戦乙女】を逃がそうとするのは解らん。 >> これが、最後だ、どけ、【歌乙女】。』 >>曰く、『いいえ、退きません。』 >>こうして、高級魔法使い同士の闘いは始まりました。。 >>ただし、最初は、刃を交えない闘いなのです。 > >それぞれが、仮面を付けていた… > >道化師自身も、結局はその自分の奥にある感情は、実はとても幼稚で素直で純粋なもの? だけど、それでも、その心ゆえに、刃亡き刃を交わす。 そうです。 道化師の本心はとてもとても、純粋で、まっすぐなもの。 それを受け取る人が、誰かに心を向けてなければ、叶ったはずの心。 > >>曰く、『刻が過ぎれば、我も、お前も、【戦乙女】も、【妖鳳王】も、朽ち果てる。 >> 輪廻の輪の中で、相見えれば、その時こそ、【戦乙女】を手に入れる。』 >>曰く、『あら、【片眼王】は、今世は諦めるのね? >> 【歌乙女】の名と魔力(ちから)におきて、運命の因果律を固定する。』 >>《言霊》でもなんでもない、言葉に力をのせ、魔力を暴れさせるのです。 >>それだけで、一から十どころか、一から百まで編まれた魔法のように、その言葉通りになりました。 >>その余波が、二人を中心に、嵐のように吹き荒れる。 >>だけど、そんな中であっても、【道化師】は、身を守る術以外使おうともせずに、ただ微笑んで、その場にいた。 >>曰く、『ははっは、では、同じ結末で終わらせない。 >> 我【片眼王】と【戦乙女】を宿命が一対とする。 >> 我と【戦乙女】を手に入れし者が、世界を手に入れさせよう。』 >>曰く、『哀しい人ね。 >> 私は、自らを【戦乙女】の『守護』と成さん。』 >>そして、幾度目かの言葉の交わりが、終わった時、二人は動いた。 >>【歌乙女】は、彼女の細腕には似合わないバスタードソードを。 >>【片眼王】は、素手に『力』を纏わせて。 >>そして、交錯した。 >>曰く、『何ッ!!』 >>曰く、『ふふふふふふ、避けると思ったのでしょう? >> ・ ・・私は、誰も傷つけたくはないの。 >> だから、こういう方法が、截然と思いましたの。』 >>バスタードソードは、鍔元まで【片眼王】の胸に刺さり。 >>【片眼王】の手は、腕の付け根まで、【歌乙女】の胸に刺さり。 >>それを気にしなければ、二人は、恋人同士に見えたでしょう。 >>しかし、ゴフッと、二人は血を吐いてしまいます。 >>そして、さらさらと互いの身体や服が、端の方から、崩れて行きました。 >>子どもが作った砂の城が、波打ち際でゆるゆると削られるように崩れて行きます。 >>曰く、『うふふ・・・こういう終わり方も悪くないかな。 >> ・ ・・絶対に、貴方の思う通りにさせないわ、【片眼王】。』 >>曰く、『最後まで、小憎たらしいな、【歌乙女】。』 >>そうして、二人は、完全に崩れました。 >>・・・人間風に言うならば、死んだのだです。 >>後に残ったのは、【片眼王】のマント留と【歌乙女】のリュートだけ。 >>それをただ、無感情に、【道化師】は、拾い呟きます。 > >あまりに、身に付けたものが多過ぎたから… >自分以外の存在を力として預かりすぎたから、自分を管理することが出来なかった… > >矛盾を身に付けたけど、引き返せないから答えを1つ選んだだけ? > >やはり、2人は運命に抵抗したかったんだと思います。 そうですね、それは、『しがらみ』『執着』とか名前がつくと思います。 二人が見つけて果たしたこの『結末』は、救いがないけれど。 それでも、二人の抵抗と贖いの結果。 > > >>曰く、『やれやれ。あれでは、心中カップルですね。 >> ・・・・私が、崩れるまで話して回りましょうか。 >> 吟遊詩人・・・・くふふふ、悪くないですね。』 > >彼はこの後… > >>【片眼王】の国と隣国の境に、【戦乙女】と【妖鳳王】はいました。 >>そこで、【戦乙女】は、気付きました。 >>姉のように慕っていた【歌乙女】が、滅んだことを。 >>それでも、この後の【戦乙女】と【妖鳳王】は、幸せに暮らしました。 >>少なくとも、普通の平凡だけれど、温かな幸せを手に入れて・・・・・。 >> >> >> >> >>時は巡りて。 >>幾度と無く、この六人は、人のせいの中で、巡り会います。 >>そのなかで、このお伽噺のような人生を形を変え、理由を変え、繰り返します。 >>その出会いの中で、【片眼王】と【戦乙女】を手に入れようとする輩二も引き裂かれます。 >>しかし、数十年前。 >>【歌乙女】ディスティアや【戦乙女】アリエスの一世代前の時のことです。 >>その代の【片眼王】が、完全に死なずに、次の世代へ流れが受け継がれてしまったのです。 >>このことが、幾多の歪みを生みます。 >>そこから、『家族の写真』の物語は、始まったのかもしれないです。 > >罪に苛まされても、 >全てを失っても、そこから真実をまた見つけてもいいのかな…? > >答えを見つけようとしていれば… ええ、人間たちは、生きてさえすれば、何とかなります。 答えのない答えを探すことが、生きるということなのかもしれないのですから。 |