◆−家族の写真 ACT66 五月十五日 ―当日/ソレゾレノ理由Cー−十叶 夕海 (2006/11/16 22:43:14) No.17902 ┣短縮で失礼します。−羅城 朱琉 (2006/11/20 08:28:09) No.17908 ┃┗ありがとうです。−十叶 夕海 (2006/11/20 22:46:06) No.17910 ┣家族の写真 ACTACT67 五月十五日 ―当日/電脳の苦悩 そして焦燥 SIDE:Enemyー−十叶 夕海 (2006/11/21 00:36:42) No.17912 ┃┗・・・・・・・・(本筋関係ないところで動揺している人)−羅城 朱琉 (2006/11/30 08:41:18) No.17915 ┃ ┗・・・・・・・・(ワオ、偶然だね!!)−十叶 夕海 (2006/11/30 22:21:36) No.17916 ┣家族の写真 ACT68 五月十五日 ―当日/ソレゾレノ理由Dー−十叶 夕海 (2006/12/13 00:37:54) No.17919 ┣家族の写真 ACT69 五月十五日 ―当日/電脳の苦悩 そして焦燥 SIDE:Friendー−十叶 夕海 (2007/1/18 00:04:24) No.17934 ┃┗もの凄く遅くなりましたです・・・・。−羅城 朱琉 (2007/1/22 12:06:08) No.17943 ┃ ┗いえいえ、ありがとうございます。−十叶 夕海 (2007/1/24 23:07:20) No.17947 ┗家族の写真 ACT70 五月十五日 ―当日/《泉の乙女》の過去悪夢ー−十叶 夕海 (2007/1/29 22:42:01) No.17960 ┗鬼畜外道といわれても・・・・−羅城 朱琉 (2007/2/13 15:45:44) No.17979 ┗哀しみ 多い道なれど それでも歩みいくほか道はなし。−十叶 夕海 (2007/2/14 15:10:27) No.17982
17902 | 家族の写真 ACT66 五月十五日 ―当日/ソレゾレノ理由Cー | 十叶 夕海 | 2006/11/16 22:43:14 |
「次は、俺だよね? 《死風舞の風舞姫》?」 「そうだけど。 どこまで、話す気? 《罪業の聖柩》、兄のことも話すなら、身のうちの《月の者》のことも話すことになるよ?」 《幻影処刑人(イリュージョンパニッシャー)》の質問に、《風舞姫》は、彼の二つの本名をもじって、忠告めいた言葉を返した。 それに、猫のようなイタズラっぽい微笑みで、《幻影処刑人(イリュージョンパニッシャー)》―アーク=クラウネルは、こう返す。 何を、当たり前のことを?とでも言いたいように。 「覚悟の上だよ? 出来るなら、義姉さんに、ちい兄を返したいし?」 「・・・・・・・何も言わない、これ以上。 だけど、語るなら、全部自分でね。」 「もち。 ナメないでよ、これでも、《シルフィーダンサーズ》連合の四代目なんだから。」 「・・・・・・・・・ここで、出すな、おバカ。」 アークの頭に、かなり真面目に、痛そうなゲンコツが、《風舞姫》―ディスティアによって落とされる。 動機+《幻影処刑人(イリュージョンパニッシャー)》―アーク=クラウネルの場合+ 「俺の動機は、人探しと俺の就任より前とは言え、出入りの情報屋を二人殺したヤツへの復讐だね。 人探しは、俺の義理の兄貴達・・・・っても、従兄弟か又従兄弟か、とりあえず、血は繋がってるね。 その二人の奪還がメイン目的。 ・・・・・そろそろ、上の兄貴の言う期限もあるし? あと、俺が、就任したのは、レイティスの死んだ後だけど、そいつとエリスを殺した組織が、《チャイルドクラン》だからだね、参加するのは。」 『あ、あの、なんで、恨むのは、《吸血鬼》じゃなくて、《チャイルドクラン》に復讐なんですか?』 それまで、部屋の隅のプロジェクターの中で、沈黙していた《水衣の君》が、初めて他人の話に対して、反応した。 おずおずとではあったが。 「初めて、だね、話すの。 ・・・・・・・だってね、一応、エリス達を殺したとは言え、シャアル兄貴の同級だし、事情も事情だし、憎みきれねぇもん。」 それに対し、表面上は、ペロッと下を出して明るく言っては居るが、迷って泣き出したいかのうように、答える。 ディスティアなど、《吸血鬼》の正体を知っていて、割り切って、殺すと言う人。 アリエスなど、《吸血鬼》の正体を朧げなながら確信していて、なお殺すと言う人。 なんかは、まだ『私憤』であっても、納得して『殺す』コトを選んでいる。 しかし、アークは、《吸血鬼》の正体を知って、迷っているのだ。 甘いことだ。 『・・・・甘いです、アークさん。 お兄さん達が、どうなってるか「分ってるよ、だから、迷ってんの。」 呟くような《水衣の君》の言葉に、被せかけるように、アークは言う。 正確には、カルマと言う方が良いのだろうか? どちらでもあって、どちらでもない。 だけど、『彼』のまごうこと無き本心なのだろう。 「ともかく、サラディン兄貴とシャアル兄貴を取り返したいって言うのが、最初の目的。」 というと、黙ってしまった。 そして、しばらく沈黙が落ちる。 「次は、イライアス坊やか? そうだな、《風舞姫》。」 「ええ、そうだけど。 名前言ったっけ、《リンデン》の。」 「くすくす、少しね、縁があるんだ。 少し、話しても良いか?」 ジュリは、懐かしげに、そういうと、はす向かいに座っていたイライアスに、目を向ける。 その視線は、彼自身を見ていると言うよりは、別の誰かを見ているようだった。 「流石、リアとヴィクの息子だ。 色は、リアだけど、目元はヴィク似だね。」 「・・・・・・・《泉の乙女》!!」 「エイレン、これは《お伽噺》は関係ない。 ジュリア=ローゼスとして、私が出逢い別れた人間の息子に、情報を渡すぐらい良いだろう?」 彼女は、哀しげだか、それでも何処か嬉しげに、そう言う。 会うはずのない人物にあったとでも言うように。 そして、イライアスは、こう一言をやっと絞り出す。 「・・・・母と父を知っているのですか?」 「うん、知ってるよ。 アメリカのボストンだったかな、そこのマサチューなんとか工科大学だったか? そこで知り合ったカップルでね。 卒業してからも、結婚したとか、子どもが生まれたとか、手紙をくれたり、遊びに行ったりした。 グロリアも、ヴィクトリーも、私の正体知っても、遠ざけたりもしなかったね。 小さい頃、遊んであげたの覚えてない?」 「・・・・・・・・・・ジュリア小母さん?」 「ジュリア『お姉さん』。 幻術で、リアと同じぐらいの年齢に見せていたけど、今の外見でそう呼ぶな、14歳で止まってるのに。 ・・・・・・・・・本当に、恨まないと行けないのは、何か分ってる?」 懐かしそうに、楽しそうに、外見年齢の14歳相応に、朗らかに、そう言っていたジュリ。 が、最後の一言は、ピンと張りつめた弦のように、はっきりと問う。 いつもより長い沈黙の後、イライアスははっきりと言った。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・組織としては、《チャイルドクラン》。 ・・・・・・・・・・・個人としては、《地獄の吟遊詩人》。 なぜ、こういうことを?」 「正解。 何故かは秘密。 ・・・・・・ま、ある種の懺悔だね。」 動機―《リンデン》・イライアス=ヴィドルの場合― 「・・・・・・私の動機も、復讐です。 ・・・・・・九年前のクリスマス、私は家族を全て失いました。 表向きは、マフィアに、裏向きは、《チャイルドクラン》の《地獄の吟遊詩人》に。 ・・・・・殺されました。 正確に言えば、吸血されて殺されました。 《チャイルドクラン》の七大幹部、《怠惰(スロウス)》のマーティン=クロイスラー・・・・・・・今はマティルナ=クロイスラーと呼ばれて居いるようです。 その彼が、《地獄の吟遊詩人》で、私の仇です。」 淡々としてはいたが、いつもの陰々鬱々とした様子ではなかった。 時折、彼特有の沈黙が混じる他は、彼らしくはなかったが、あまりにもフツーだった。 「それを滅ぼして・・・・・終わりにしたいんです。 ・・・・・・・自殺と言う手段でも構わないので終わりにしたいんです。」 「《リンデン》。 なんで、そーいうこという? 思ってくれる人が居るのにさ。」 「四代目、・・・・・居るからこそですよ。 いるからこそ、私は選択したいのですよ、自殺を。 ・・・・・・・・・・・・久遠さんのことも、昔からの仲間のことも、大好きですよ。 でも・・・・・ディスティアさんが、昔、私の自殺のことは、他人の気を引くためと評されましたが。 それも、間違いではないのですが・・・・・・本当の意味でも、私は『死』を望んでいるようです。」 イライアスの、彼の瞳に『狂気』は無かった。 ただ、純粋に『死』を望む。 それが、亡くなった家族への贖罪であるように。 或いは、それが『誰か僕だけを愛して。僕を認めて。』と泣いているようで。 それでも、どこか『狂気』めいている。 しかし、それは、幼子が母を求めているようでもあり。 「だから、私は参加したのかもしれません。」 バシシン。 イライアスの頬が、両側から張り飛ばされた。 両側から、挟む込むような形だ。 隣に座っていた久遠は、構えてはいたが、まだ動いていなかった。 「アホか。 グロリアや、ヴィクトリーが、喜ぶか、そんなことで。」 「バカですか? 親兄弟が先に逝ったのなら、這いつくばってでも生きなさい。 少なくとも、死んではダメです。」 ジュリと《ギルトマスター》だった。 少なくとも、ジュリは純粋に怒りの表情だったが、《ギルトマスター》は仮面でよく分らない。 しかし、『怒り』のような勢いのある感情と言うよりは、『哀しみ』のような静かな感情なのは分る。 「それでもー」 「はいはい、香草坊やはん、お前はんの負けやな。 《ギルトマスター》の旦那はんは、大切なんを守りとうて、危険から遠ざけとうて、この世界に入ったお人やもん。」 「そうよね、《L》ちゃんの言う通りね。 ・・・・今日は、イライアちゃんの負けね。」 《L》と久遠の言葉に、黙るしか無かった、イライアスだった。 動機ー《ギルトマスター》・レンシェルマ=ヴァリードの場合ー 「すみませんね、《リンデン》。 でも、あれは、私にとって、譲ることが出来ない矜持なんです。」 仮面で、表情は見えない。 見えないながらも、『苦笑』して、『どうしても、守りたいんです。』と言っているように見えた。 そして、語り出す。 「私が、この稼業に入る決意をしたのは、七年、八年前ですか。 それくらい前に、娘の一人が、浅いとは言え、この世界に入ってしまいましてね。 ・・・・それがきっかけです。 寝るべく危険な目に遭わせないために。」 《ギルトマスター》は、哀しげではあったが、『それだけは譲れない』と言う意思があった。 それでも、七ヶ月前のことや、六年前、三年前のことを悔やんでいるのかもしれない。 「これは、私のエゴです。 この稼業は、死神と結婚しているも同然なんです。 だけど、それを返られなくても、死なせたくはなかったんです。 私に、特殊能力はありません。 あるのは、努力で手に入れた情報収集能力と煽動能力だけです。 ・・・・・・でも、私は戦う道を選びとります。 《チャイルドクラン》を潰して、多くの悲劇に幕を引くためにも。」 「ねぇ、ねぇ、《ギルトマスター》?」 彼の話が終わるのを待っていたように、アークがそう話しかけてきた。 それに、柔らかに、応じる《ギルトマスター》。 「なんで、顔隠してんの? ラビのは、理由知ってるけど。 《ギルトマスター》はなんで?」 「・・・・・・・・・アークじゃないよね。 カルマ、何してんのかな?」 《ギルトマスター》との会話を聞いていたディスティアが、彼が彼でないことに気がついた。 アーク・・・・いえ、カルマはこう、鼻で笑って答えた。 「ここは、《月》の世界だよ? 俺も、サラやシャアルを助けたいもん。」 「それと、《ギルトマスター》の素顔となんの関係があるかな?」 「・・・・・・《幻影処刑人》、《風舞姫》、《魔導師(マジスタ)ラビ》の三人は、確実知ったら、驚き過ぎるか、止めると思いますよ。 知ったら、後悔するでしょうね、きっと。」 二人の会話を止める意味でも、《ギルトマスター》は、そうとだけ呟く。 ある意味で、これ以上にないヒントだけど。 三人が、気付くことは、まず無いだろう。 一番、そう思いたくないだろうから。 @―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@−@−@−@−@−@ 色んな意味で、衝撃?の一話。 というか、『五月十五日編』は、ある意味、ジェットコースター並みにそんな感じ。 ってか、『五月十五日編』何時終わるの〜!! ・・・・すこし、テンパって居るユアです。 次回は、《パパ・ライアン》こと、ブライアン=オットー=ティラーが登場します。 それでは、また次回で。 |
17908 | 短縮で失礼します。 | 羅城 朱琉 | 2006/11/20 08:28:09 |
記事番号17902へのコメント こんにちは、羅城 朱琉です。 短縮版で失礼します。 アーク君の仄かな狂気の香りに再度惚れつつ。 イライアス君は、その言葉が切なくて。 レン父さん、さりげにとても強いですね。 皆々様それぞれの事情に、毎回毎回胸をじーんとさせております。 とても短くなってしまいましたが、今回はこの辺で。 |
17910 | ありがとうです。 | 十叶 夕海 | 2006/11/20 22:46:06 |
記事番号17908へのコメント > > こんにちは、羅城 朱琉です。 > 短縮版で失礼します。 こんにちは、ユアです。 いいえ、ありがとうです。 > > アーク君の仄かな狂気の香りに再度惚れつつ。 本人は、気付いてないですけどね。 ラストは、かなり切なくハッピーエンドに持って行きたいですし。 > イライアス君は、その言葉が切なくて。 ある意味での、宵颯くんの救われた・・・誰か大切な人を見つけれた版なんです。 それでも・・・・・香草坊やには、まだまだ、闇が心にある訳です。 > レン父さん、さりげにとても強いですね。 父親だから、というには背負っているものもそれなりに想いですけど。 強さを強さと感じさせてないパパさんなのです。 > > 皆々様それぞれの事情に、毎回毎回胸をじーんとさせております。 > とても短くなってしまいましたが、今回はこの辺で。 > 次々回は、怒るか涙するかのどちらかでしょうし、次回も切な目なのです。 では、次回で。 |
17912 | 家族の写真 ACTACT67 五月十五日 ―当日/電脳の苦悩 そして焦燥 SIDE:Enemyー | 十叶 夕海 | 2006/11/21 00:36:42 |
記事番号17902へのコメント 「おはよう・・・・・そう言うべきかな? 《嫉妬(エンヴィー)》、《強欲(グリード)》のご両人。」 「サンキュ、《パパ=ライアン》。 いやぁ、お前のプログラム無かったらもう少し、苦戦してたって。」 此処は、時乃市でもなく、また日本でもない外国の都市、その摩天楼の一角を占める超高層ビル。 その上層階のワンフロアの半分以上を占めている部屋で、異国のディスティアの部屋にあったのと似た雰囲気の《ポッド》と数台のスパコン、その司令塔的役目のデスクトップパソコン、その他ファイルラックなどの最低限の家具。 窓すら無い、真白い印象の部屋。 《ポッド》から出てきたのは、カインとファルトの先ほどまで、電脳空間でエイレンとライラとやり合っていた二人だ。 それを迎えたのは、《パパライアン》こと、ブライアン=オットー=ティラーだった。 彼は、銀色の髪が白髪になったようなそんな白銀色の髪を肩口で揃え、水色の細い瞳、身長は、190センチに達しているだろうに、体重は、70キロもなさそうな長身痩躯で、シャープな印象だ。 年齢不詳ぎみだが、エイレンの話から推測するに、30代後半〜40代前半ぐらいだろう。 服は、ハイネックのグレイの長袖Tシャツとジーパンの上から、白衣のような者を着ていた。 ネームプレートには、シンプルなアルファベット飾り文字で、『【メフィストフェレス】ブライアン=ティラー』とあった。 「・・・・エイレンちゃんは、私が死んでいると思っているからね。 精神的にも、打撃だっただろうねぇ。」 「好きな人を傷つけ付けるかもしれないのに、よく敵対できますね。」 「・・・・ファルトくんより、正気だと思うけど? 相手を傷つけると分っていて、ああいうこと出来るんだし?」 とたんに、部屋の気温が十度ほど下がる。 何時ものことなのだが、かといって放っておく訳にも行かないカインは、こう取りなす。 無論、いやいやと言う形容詞がつくのだが。 「戯れ合いはヤメとけって。 それに、こっちに『戻って』きたばっかなんだし、Dr.ヴァイスの健康診断受けなきゃ行けないだろうが。 それじゃ、《パパライアン》、ありがとな。」 カインは、そう言いつつ、ファルトを半ば引っ張るように、部屋を出て行く。 二人が出て行き、ドアの音が消えると。 この部屋の司令塔のデスクトップパシコンのデスクに座る。 「・・・・・エイレンちゃん、元気そうなのは、いいけど。 やっぱり、《お伽噺》に、押しつぶされかけてる感じあるね。」 そう一人、ごちる。 カインとエイレンの会話を聞いていたのだ。 機械越しとは言え、二十数年ぶりの肉声。 彼にとって、なによりも、嬉しいことだった。 だけれど、《影の語り部》として、大好きなエイレンが、《お伽噺》に押しつぶされそうになっているのは、彼は哀しいと思っている。 『マイスター・ブライアン。 自己整備(セルフチェック)、終了いたしました。 オールグリーンです。』 「わかったよ、紫麒(しき) 今日は、お休み。 ・・・・・・・機能の一部を《お伽噺》の探索に割いて、ね。」 『イエス、マイスター・ブライアン。』 デスクの横においてあるホログラム投影装置に、一つの画像が結ばれる。 カシスのような紅い色の長い髪と瞳ではあったが、エイレンにそれは似ていた。 エイレンを男性的にしたような柔らかな雰囲気の男性の人工知能プログラムだった。 エイレンが、裏稼業に殺された家族には、父母、兄と弟がいた。 その兄の名前が、『シキ』だった。 紫麒は、その『シキ』をモデルにして、作ったプログラムである。 彼の画像が、再び消えると、ブライアンは、コーヒーでも入れるために、部屋の反対の隅にある飲料ディスペンサーのほうへ歩き出そうとした。 『・・・・貴方が、《パパ・ライアン》氏? エイレン嬢が、大切に持っているロケットの一つの写真のお人。』 「誰かな。 エイレンちゃんの知り合い?」 再び、ホログラム投影機に、画像が結ばれる。 それは、アカシア蜜色のウェービーな長髪とロゼワインのような紫色の瞳、深い藍色の肩で結んでは居るが、肩と二の腕のほとんどが出ている足元までゆったりと覆う衣装とベレー帽の十代半ばの少女。 彼女の衣装とベレー帽には、時計の文字盤や計器のような模様があしらわれている。 そう、エイレンの《使鬼》の一人、《節制の電脳少女》エモーション=エレクトリックだった。 『肯定。 私は、《節制》エモーション=エレクトリックと言う。 ・・・・・・再び問う、貴方は《パパライアン》ブライアン=オットー=ティラー氏?』 「そうだよ。 エモーション・・・・最近、よく聞く名前だね。 嘘みたいに、美しい少女が、動いているって、ねぇ。」 『未否定。 私は、確かに、最近作られ、《チャイルドクラン》を嗅ぎ回っている。 エイレン嬢は、貴方が生存していると聞いて、大変喜び、泣いていた。』 「・・・・・・・・・それで何の用かな? 一応、ここ、《チャイルドクラン》の本部だよ?」 苦笑するように、ブライアンは、彼女と言葉を交わす。 無表情なその顔に、エイレンと似たところなど無いのに、何故か彼女と話しているような感覚に襲われる。 それ以前に、何故此処まで入ってこられたのかが、不思議なくらいである。 『エイレン嬢に、瓜二つの・・・・・『シキ氏』のコピーを行動不能に追い込んで、突破した。 ・・・・・もう少し、防御プログラム、凝った方が良いよ。 多少訓練してたとは言え、戦闘に関しては素人の私の一撃で、昏倒していたから。 ・・・・・目的は、話したかったから・・・・かな。 エイレン嬢が、気にかけている人だから、今までは、居場所が不明だったけど、今回の接触で、糸(パス)が出来たから。』 「・・・・・・マイスターの意思を超えることは出来ないはずだけどねぇ?」 『否定。 超えれないが、私は、通常の人工知能とは、些少異なる。 精神生命体的な側面もある。 ・・・・・・それに、エイレン嬢は・・・・・・まだ・・・・・』 「ストップ。 エイレンちゃんじゃないなら、それ以上は言っちゃダメだよ?」 つらつらと、無表情のままで、言葉を流すエモーション。 かといって、声まで無表情な訳ではない。 どちらかと言えば、迷っているようなそんな感じだ。 『・・・・・了承しました。 ・・・・・・・・・・・・・・貴方は、後悔しないですか?』 「何を・・・・何を後悔すると? 僕がする後悔は、エイレンちゃんをあの時、裏稼業に行かせてしまったことだけ。 それ以外は、しないし、したくもない。」 『了承。 また、会う可能性ある。 ・・・・アンダーグラウンドを彷徨う限り。 さようなら、《パパ・ライアン》。』 来た時同様、エモーションは、すっと消えた。 ブライアンは、それを見届けると、パソコンを操作し、紫麒のプログラムソースを一通りチェックする。 あの少女の言った通り、大きな傷も無いようだった。 その後、自分でいれたコーヒーを片手に、ブライアンは、こう一人ごちる。 「・・・・エイレンちゃんが覚えていてくれた。 でも、これで、完全に敵対。 ・・・・・・・・・手に入れたいとは思うけど、言えないよね。」 哀しげな、でも嬉しげな呟きだった。 ブライアンは、このコンピュータ室を後にし、部屋には、闇の沈黙が落ちる。 まるで、彼の心象を表現するかのように。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ というわけで、アナザーサイドです。 一応、敵サイドの電脳の苦悩ですので、一応、味方サイドのもあるのです。 前にやった、同じ台詞で、違う人の心情をこれのいちぶでやるつもりです。 これからもよろしくです。 |
17915 | ・・・・・・・・(本筋関係ないところで動揺している人) | 羅城 朱琉 | 2006/11/30 08:41:18 |
記事番号17912へのコメント こんにちは、羅城 朱琉です。またまたとても遅れてしまった上に短縮版ですみません。 《パパ・ライアン》氏とエモーション嬢の会話に少し涙ぐみたい心境に刈られました。何だか、切ないですよね。 そして、全く何の関係もない部分で、激しく動揺。『シキ』って・・・・『シキ』って・・・・(汗)いえ、某ゲームのキャラで同じ名前の方がいて、そのイメージが強すぎただけなので・・・・あまり気にしないでいただけると嬉しいです。 本当に、今回は私、何書いてるやら・・・・。 取り留めのないことで申し訳ありませんでした。 それでは、また。 |
17916 | ・・・・・・・・(ワオ、偶然だね!!) | 十叶 夕海 | 2006/11/30 22:21:36 |
記事番号17915へのコメント > > こんにちは、羅城 朱琉です。またまたとても遅れてしまった上に短縮版ですみません。 こんにちは、ユアです。 いえいえ、短縮でもレスは嬉しいのです。 > > 《パパ・ライアン》氏とエモーション嬢の会話に少し涙ぐみたい心境に刈られました。何だか、切ないですよね。 なんですよね。 個人レベルじゃ・・・・・ね。 一応、同じ会話を、エモーション嬢から見た版も、次々回投稿予定です。 > そして、全く何の関係もない部分で、激しく動揺。『シキ』って・・・・『シキ』って・・・・(汗)いえ、某ゲームのキャラで同じ名前の方がいて、そのイメージが強すぎただけなので・・・・あまり気にしないでいただけると嬉しいです。 なのですか。 一応、過去のエイレン嬢(男バージョン)の名前なのです。 > > 本当に、今回は私、何書いてるやら・・・・。 > 取り留めのないことで申し訳ありませんでした。 > それでは、また。 > はい、ありがとうございました。 多分、次回は、日曜ぐらいに。 それでは失礼します。 |
17919 | 家族の写真 ACT68 五月十五日 ―当日/ソレゾレノ理由Dー | 十叶 夕海 | 2006/12/13 00:37:54 |
記事番号17902へのコメント 「《風舞姫》。 次ハ、私ダネ。」 「ええ、おねがいします。 《ノーフェイス》。」 次の動機の語り手は、真白の仮面、手袋、マントなど、肌の露出が極端に控えた、性別すら不明の人物。 彼女は、本名・リーシェラ=エメルディーン。 それを知るのは、15年以上の付き合いがある存在だけだ。 エイレン、ジュリ、もう鬼籍に乗ってしまっているガウェインなど、両手で数えられる人間しか知らない名前だ。 ・・・・・女性と言うことすら、知っているのは、ごく少数だ。 現代の魔女暗殺者《ウィッチ・キルドール(魔女の殺戮人形)》と呼ばれた伝説の殺し屋の女性だ。 動機ー《ノーフェイス》リーシェラ=エメルディーンー 「私ノ本名ハ、『リーシェラ=エメルディーン』。 ソレヲ知ルノハ、『エイレン』ト『ジュリ』トカ、数少ナイ。 『エイレン』『ガウェイン』トトモニ、《クラン》ヲ潰シタ一人デモアルネ。」 「おねえはん、何でそないに、発音微妙なん?」 「二代目《L》、ソレガ、私ノ動機ニ大キク関ワルノダヨ?」 《L》が中断する形になったが、それを怒らず、むしろ、それすらも、《ノーフェイス》は、流れに組み込んでしまう。 ある種、長い年月を過ごした古参の余裕とすら受け取れる。 「私ガコウイウ服装ヲスルヨウニナッタノハ、十ト何年前ダッタカナ? 坊ヤ達ヲ助ケタ、一年クライノ時ダカラ、十六年前グライダネ。 ソノ時ニ、《クラン》ニ捕マッタ。 ・・・・・・・・ソレデ、拷問ヲ受ケタ。 息子達ハ、死ンダヨ、殺サレタ。 私モ、皮膚ヲ剥ガサレ、火デ灼カレ、爪ヲ剥ガレタヨ。 顔ハ、左半分見ルニ耐エナイ、ダロウネ、右半分ガ綺麗ナ分。 喉モ、傷ツケラレテ、コノ発音サネ。 ダカラ、ノコノ格好ナノサ。 ダカラ、私ハ、《ノーフェイス(顔無し)》ナノサ。 分ッタカナ、二代目《L》?」 「ふわぁ、えらいめにおうてきたんやな。 凄いわぁ、《ノーフェイス》はん。」 事情をあらかた話し終え、ある種の侮蔑とも取れる言葉を《ノーフェイス》は、《L》に投げかける。 しかし、それを気にせず、彼は、明るい語調でそう返し、《ノーフェイス》を抱き寄せ、ぎゅ〜〜っと、抱き締める。 仮面で解らないが、彼女は、目を白黒させているだろうし、他の面々も、あまりの暴挙に、固まっている。 自分の母親・・・そこまで離れていないが、それなりに年上の女性に、《L》・・・ラディハルトは抱きついている。 「ナ、何ヲ?」 「ハグしとん。」 「ナ、何故?」 「何でやろうなぁ。」 「放セ。」 「いやや。」 「・・・放しなさい。」 「・・・イヤです。」 「放して。」 「いやん。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・息子達ヲ殺シタ男が、《チャイルドクラン》ニ所属シテイルカラネ。 ソレヲ殺ス為、作戦参加シタイ。」 諦めたのか、そのままの体勢で、《ノーフェイス》は、残りの一言を話し終えた。 終えたが、反応が返ってこない。 「・・・・・次ニ、行ッテクレ。」 動機 +《グレイトキャット》ライラ=リー=ソロミネス+ 「ああと、ライラさんお願いします。」 「わかったわ。」 ディスティアに、促されライラは話し始める。 「私のは・・・・・・復讐なのかしらね。 ・・・・・・私の夫は、五年前に死んだ先々代の《氣殺》だったわ。 『家族』を無くしたモノ同士の傷のナメアイに近い夫婦だったけど、幸せだった。 でもね、彼は、家族を奪った組織への復讐の為に、《氣殺》を宿したの。 後、どんなに持ちこたえても、半年しか『時間』が無いときだったわ。 彼は、殺されたわ、《電脳の悪魔王(ルシュファード)》・・・実の弟にね。 ・・・・・そいつが、《チャイルドクラン》にいるから、私はこの作戦に参加したいのよ。 そいつを殺したいのかはよく解らない、ただもう一度会う必要がある。 少しでも・・・・・一分一秒でも長く続けたかった。 終わってしまうって、解っていても・・・・・覚悟していても、ああいう形での結末を望んでいなかったわ。 ただ、あの三人の生活が、懐かしいだけ。」 そう、哀しげというよりは、後悔に沈むとでも言うように、ライラは語る。 しばらくの沈黙。 「・・・・ライラさんの義弟って。 暴走族《シルフィーダンサー連合》配下《芭芙織麻都屠(バフォメット)》所属のファルト=ソロミネス?」 それをディスティアが破る。 質問と言うよりも、確認の意味合いがつよい。 「・・・・・・そうよ。」 「・・・そっか。 ・・・・・・《因業の聖櫃》、4代目としてどうすれば良いか解るよね?」 ライラは、静かに素っ気なく返す。 それに対して、『怒り』と『哀しみ』のブレンドソースをトロトロというよりは、ドロドロになるまで煮詰めたような感情を、理性と言う鉄蓋で押さえ込んだような声音で応じるディスティア。 「もちろん。 海外旅行中、らしいけど、どうせ《チャイルド・クラン》関連だと思うし。 レスと、他の守護六人衆に、連絡はしとくよ。」 「・・・・・どういう相談ですか、4代目、ディスティア。」 「ん〜、『制裁』だよね、三代目?」 「まぁね。 そろそろ、時期的にも、見せしめくんが欲しかったし、ちょうど良いかな。 殺しはしないけど、他の五人、暴走するかもねぇ。 ・・・・・・・・・・・・いじゃなかったのに。」 当たり前のように、アークとディスティアは、話す。 質問したイライアスも含め、引き腰になる。 彼らのような深い裏稼業とも違う、任侠にも通じる『筋』の通し方の雰囲気のせいだろうか。 しかし、ディスティアの言葉の最後、『・・・それほど嫌いじゃなかったのに。』というのは、誰の耳にも届くことは無かった。 そして、再びの沈黙。 動機+《鮮血微笑の退魔師》乾詠太郎+ 「あー、次は、俺だったね。 それじゃ、話すわ。」 乾が、取りなすように、話し始める。 その声は、大きいとは言えなかったが、静かだったが、どこか寂しそうであった。 「もう、12年・・・・13年になるのかな。 それまでは、どこにでもいるような少し引っ込み思案の中学生だった。 母方の祖父が、イタリア系英国人で、元・特務エクソシストだったのが、唯一の非凡だった。 それまでは、それなりに馬鹿やってた。 その年の秋だったかな。 部活の後、ラーメン屋によったせいで、門限に遅れてさ。 父さん、母さんと兄貴と喧嘩して、仲違いしてね。 まだ、小学校だった妹も、心配そうに見てたよ。 ・・・・・・俺はね、次の日に謝るつもりだった。 でもね、家族に謝るって朝は、永遠に来なかった。 次の日、土曜日で、俺は寝坊してしまったんだ。 起きてみたら、居間で、父さんも母さんも、空手部だった高校生の兄さんも、真奈見も死んでた。 自分と他の家族の血の海に沈んでさ。 ・・・・・・・その後、母方の祖父母に引き取られた。 その道じゃ、《剣舞師》の渾名を持つ祖父から言われた、犯人が《地獄の吟遊詩人(ヘルズ・バート)》マーティン=クロイスラーと教えられた。 昔自分を苦しめた《剣舞師》の愛娘だからって理由で。 それから、祖父に仕込まれて、十年前に、特務エクソシストになった。 祖父の次に早いそうだよ。」 乾が語る様子は、哀しげで、思い出したくない過去を絞り出しているようでもあった。 「それから、俺は、一年で《ブラッティ・カタリナ》なんて、呼ばれるようになるまで、職務に励んだ。 ・・・・・・特務エクソシストっていうのは、映画の『エクソシスト』とは、真逆にいる存在。 彼らが、対人の精神なら、特務エクソシストは対人外の殲滅部隊。 何匹滅ぼしてきたのか解らないよ。 今から、八年前にそれもヤメた。 ・・・《地獄の吟遊詩人(ヘルズ・バート)》を追いつめて、逆に一家を虐殺させてしまうような結果にしてしまったから。」 「・・・・・・・・・もしかして、私の一家ですか?」 イライアスが、思わず口を挟んだ。 『まさか、生死不明の末子・・・・』と口の中で乾は呟く。 そう、ある意味で、間接的とは言え、乾はイライアスの家族の仇なのだ。 「・・・・・・俺も加害者なわけか。」 「安心しろ、八年前の悲劇の発端もそもそも私だ。 ・・・・・・終わりまで、話せ、乾。」 《凍れる樹姫》が、そうフォローを入れるが。 入れるが、どう考えても、フォローになっていなさそうなのは、気のせいだろうか。 とりあえず、続きを話す《退魔師》。 「それからは、情報屋と平行して、人外が関わっていそうな運び屋業もやったね。 どうにも、人外を殲滅している時に、微笑んでいるように見えるから、《鮮血微笑の退魔師》・・・・そんな剣呑な通り名で呼ばれるようになった。 三年前から、それも開店休業状態だけど、 《守護する龍》としての記憶が、戻り始めていたせいで、ゴタゴタしてたから。 ジュリさんに出逢わなかったら、黄色の救急車に乗っていたかもね。 ・・・・・俺も、《地獄の吟遊詩人(ヘルズ・バート)》を殲滅したいんだろうね。 家族へのせめてもの、『華』だよ。」 一通り、語り終わった乾は、改めて、真横に座っていたイライアスに、向き直る。 しばらく、金魚のように口をぱくぱくさせてから、こう一言。 「俺を恨んでも良いんだよ。 《リンデン》イライアス=ヴィドル。」 @ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ さて、ある種緊迫した場面で次回です。 次回ですが、この続きは、次々回になります。 次回は、『五月十五日 ―当日/電脳の苦悩 そして焦燥 SIDE:Friendー』になります。 そうです、ACT67の味方サイドです。 では、次回もお楽しみに。 |
17934 | 家族の写真 ACT69 五月十五日 ―当日/電脳の苦悩 そして焦燥 SIDE:Friendー | 十叶 夕海 | 2007/1/18 00:04:24 |
記事番号17902へのコメント 「糸(パス)を辿る。 実行、可能、続行。」 エイレンとライラが、階下に降りた後、侵入者二人が、入ってきた経路を辿り、侵入元を探る、エモーション。 「・・・仮初めと言えど、肉体置いて行くは、不安。 仕方なし、火急、のこと。」 『私が見ていようか?』 「・・・・・・《水衣の君》セシル・リリーベル=シルベスタ嬢。 正確には、セシル・リリーベル=ウツギ・アシュハ嬢。」 『ええ、《節制の少女》エモーション=エレクトリック。 おひさしぶりね、・・・・・・って言っても、3日前のサイバーカフェの方であったけれど。』 パソコンのモニターに現れたのは、水色の髪と瞳と衣の、何もかもを水を通して見ているようなそんな印象の女性だ。今、階下でなされている作戦のメンバーの一人だ。 肉体は、ここには無く・・・。 外国の《チャイルド・クラン》の本部の奥深くに眠っている。 「そうだな。 フィルターを取ったらどうだ? 動きにくい、違う?」 『そうね。ありがとう。』 彼女―《水衣の君》セシルは、そう言うと、カバーをはがすように髪と瞳の印象を一変させた。 水色の波打つ髪は、硬質な印象の銀色に。 水色の穏やかな瞳は、新緑の若葉色に。 そして、それは、ディスティアを追いかけ回すシヴァ=オルコットに、よく似ていた。 でも、それを知るのは、片手にも満たない人間だけだった。 『ふふ、久しぶりね。 フィルターを取るのも。』 「肯定。 前回、外したのは、五ヶ月と二十三日と十六時間三十七分五十三秒前。」 『よく覚えているわね。 私に、此処を任せて。』 口に手を添えて、静かにセシルは微笑む。 それに、エモーションは、表情を変えず、そう呟いた。 「・・・・・・可能。 よろしく頼む。 兄を追いつめることになるぞ?」 『構わないわ。私は、アベルが死んだ時に、もう死んでるの。 大切な赤ちゃんを置いていくはずだったのよ。 《チャイルドクラン》は、ゼオンが、アベルを生き返らせる為の組織だもの、大嫌い。 死んだ人は、戻ってこないのが、セオリーよ。 ディスちゃんは、あえて、私に動機を語らせようとしないけれど。 これ以上、語らないのも、そういうふうにいかないもの。』 哀しげに、セシルは語る。 自分は、人間としての人生は終わってはずなのに、まだ生かされ続けていると。 『行って来て。』 「・・・・・・感謝。 では、頼む。」 それ以上は、追求しようとせずに、エモーションは、グラスカバーをかけ、コンピュータを接続し、電脳侵入(ダイヴ・イン)をした。 『・・・・・・・・・・・どうしましょうね、本当に。 あの時、死んでいれば、こうまでこじれなかったかもしれないわね。 ・・・・・・・・・・・・・・・私の赤ちゃんが、無事に育ったのを見れて、嬉しくないはずが無いけれど。』 エモーションは、電脳空間を南の方の珊瑚礁のあるような遠浅の海のように知覚する。 上から降り注ぐ陽光に、周りがきらきらと反射し、ゆらゆらと揺れる風景だ。 そこに、彼女は降り立った。 目の前には、遥か遠くまで続く細い細い白色の糸が、何処かへ続いている。 『何処に続く? 外国ならば、作戦のとき、未成年組は大変だろうな。』 そう言って、その糸を辿って行った。 そして、水白色色の箱―ビルのような建物の入り口に続いている。 『・・・・・流石に、巨大。 哀しみを許容して、育ったせいだろうね。』 その建物に入り、更に糸を辿る。 とある部屋のドアの前で、それは途切れてしまった。 現実世界に直せば、サーバーの前で途切れたに値する。 『何者ですか? 侵入者ならば、殲滅いたします。』 剣呑な雰囲気を超えに、滲ませ、ドアとエモーションの間に立ちはだかる影がいた。 それを認めるなり、エモーションは固まった。 カシスのような紅い色の長い髪と瞳ではあったが、主であるエイレンにそれは似ていた。 主を男性的にしたような柔らかな雰囲気の男性の形をした同族だと、気がついた。 気がついても、動けない。 エモーションに取っては、主の顔をした存在を消せと言われているような物なのだ。 細い白刃が、煌めく。 ナイフが、エモーションに、振り下ろされる。 少しでも、傷つけば、プログラムの自分は、消えるであろう一撃。 それが、自身に触れる前に、咄嗟に、腕を突き出す。 単純な動作だった。 幼児が、ぐずるようなそんな動作。 しかし、エモーションの腕に恒常的に組まれている【スタン】が、彼女の主にも似たプログラムを停止させる。 【スタン】は、名称からも多少想像がつくかもしれないが、現実で言うなら、スタンガンのような物だ。 触れたモノを停止させるだけのものだ。 『・・・・危険あり。 回避、歓喜すべき。』 彼が、守っていたドアを開ける。 自分が、降りれそうな・・・・・・・ホログラム装置が、あったので、そこに降りた。 部屋にいたのは、一人の男性。 彼は、銀色の髪が白髪になったようなそんな白銀色の髪を肩口で揃え、氷みたいな冷たい色の瞳で、身長はディスティア位なのに、体重はさほど無いようなそんな外見。 年齢不詳ぎみだが、主の話から計算するに、30代後半〜40代前半ぐらいだろう。 服は、ハイネックのグレイの長袖Tシャツとジーパンの上から、白衣のような者を着ていた。 どこか、哀しそうな雰囲気だと、エモーションは思った。 『・・・・貴方が、《パパ・ライアン》氏? エイレン嬢が、大切に持っているロケットの一つの写真のお人。』 「誰かな。 エイレンちゃんの知り合い?」 そのホログラム装置を使用し、何時も使っている画像を結ぶ。 それは、薄い蜜色のソバージュと深い紫色の瞳、、深い藍色の肩で結んでは居るが、肩と二の腕のほとんどが出ている足元までゆったりと覆う衣装とベレー帽の十代半ばの少女。 彼女の衣装とベレー帽には、時計の文字盤や計器のような模様があしらわれている。 そう、エイレンの《使鬼》の一人、《節制の電脳少女》エモーション=エレクトリックだった。 ロボットプログラムなのに、その範疇にいない少女。 『肯定。 私は、《節制》エモーション=エレクトリックと言う。 ・・・・・・再び問う、貴方は《パパライアン》ブライアン=オットー=ティラー氏?』 「そうだよ。 エモーション・・・・最近、よく聞く名前だね。 嘘みたいに、美しい少女が、動いているって、ねぇ。」 『未否定。 私は、確かに、最近作られ、《チャイルドクラン》を嗅ぎ回っている。 エイレン嬢は、貴方が生存していると聞いて、大変喜び、泣いていた。』 実際、エモーションは、アングラネットーアンダーグラウンドネット・・・・・・そこ中でも、最下層に分類される場所に好んで、行くのだ。 「・・・・・・・・・それで何の用かな? 一応、ここ、《チャイルドクラン》の本部だよ?」 エモーションは、人間で言うなら、『動揺』してはいたが、それを押し隠すように無表情にブライアンとの会話をする。 彼は、彼女の主・エイレンが言うには、何も無くオトナになっていれば、結婚していたかもしれないと聞かされていた相手だ。 『エイレン嬢に、瓜二つの・・・・・『シキ氏』のコピーを行動不能に追い込んで、突破した。 ・・・・・もう少し、防御プログラム、凝った方が良いよ。 多少訓練してたとは言え、戦闘に関しては素人の私の一撃で、昏倒していたから。 ・・・・・目的は、話したかったから・・・・かな。 エイレン嬢が、気にかけている人だから、今までは、居場所が不明だったけど、今回の接触で、糸(パス)が出来たから。』 エモーションは、ブライアンの声無き、質問に答えるようにつらつらとそう話す。 本心を知られたくない子供が、言葉多く言い訳するがように。 「・・・・・・マイスターの意思を超えることは出来ないはずだけどねぇ?」 『否定。 超えれないが、私は、通常の人工知能とは、些少異なる。 精神生命体的な側面もある。 ・・・・・・それに、エイレン嬢は・・・・・・まだ・・・・・』 「ストップ。 エイレンちゃんじゃないなら、それ以上は言っちゃダメだよ?」 どこか、急いでいるようなエモーションをブライアンは、制止する。 少なくとも、彼には、彼女が・・・・・・彼女の口を借りて言われるであろうエイレンの言葉には、想像がついた。 だからこその制止だ。 その言葉を受け取るには、年を取りすぎた。 『・・・・・了承しました。 ・・・・・・・・・・・・・・貴方は、後悔しないですか?』 「何を・・・・何を後悔すると? 僕がする後悔は、エイレンちゃんをあの時、裏稼業に行かせてしまったことだけ。 それ以外は、しないし、したくもない。」 『了承。 また、会う可能性ある。 ・・・・アンダーグラウンドを彷徨う限り。 さようなら、《パパ・ライアン》。』 来た時同様、エモーションは、ホログラムからすっと抜ける。 静かに、来たとき以上に、ゆっくりと彼女は、元来た道を辿る。 なぜか、名残惜しくて。 なぜか、ブライアンに興味を持って。 解らない・・・・・プログラムとしては、あってはならない現象に、戸惑いを覚えながら、ディスティアの・・・・出発した部屋に戻っていた。 そこにの仮初めの肉体に、戻る。 『お疲れさま。』 「ありがとう、感謝する、セシル。」 出たとき同様に、パソコンのディスプレイに、《水衣の君》は、存在していた。 違うのは、その表情。 何処か嬉しげで、何処か哀しげで・・・・・・でも、覚悟を決めた表情の《水衣の君》。 『あのね、エル。 階下に、《凍れる樹姫》の招待で、シヴァ=オルコットが来てるの。 ・・・・・・元気そうだった。 ・・・・・・・・・・・・・・息子が元気なのに、お母さんが、躊躇しているわけにはいかないわ。』 エモーションは、思った。 彼女は、今は、コンピュータの中か、現実研究所のあの青色の水溶液でたゆたうしかできないが、元は人間だ。 やはり、自分とは違うのだろう。 主・エイレンの予想の範疇でしか動けない自分とは違う。 「そうか、それはよかった。 ・・・・・・・もう、そろそろ、《凍れる樹姫》の話も、《過去の人形(パストドール)》の話に差し掛かるだろう。」 『そうね、息子を逃がしてくれるように、頼んだ《人形》の正体。 ・・・・・・・ねぇ、エル。 造られた物でも、偽りの存在でも、時間が経てば、『心』は生まれるわ。 だから、今は、エイレンの予想の範疇でしか動けなくても、時間が経てば、『心』は生まれるわ。』 「・・・・・・・・・・・・・・・・エセル、急がないと、出るタイミングずれるぞ?」 『そうね。 では、またね。 電脳空間を彷徨う限り、何時か何処かで。』 《水衣の君》エセルは、そういうと、手を振りながら、ディスプレイから消えた。 今のエモーションが、嘘でも欲しかった言葉を残して。 「・・・・・・だから、嫌いだよ。 ・・・・・・だから、好きだよ。 エセル、君は、まだ少し甘いのかもしれないぞ。」 彼女は、誰もいない部屋でそう呟く。 今の・・・・・まだ、エイレンの追従する以外をあまり知らないエモーションには、よく解らない苦く、でも少しだけ甘い感情プログラムが、彼女の心を満たしていた。 思い浮かぶのは、何故か、先刻殺されかけた『シキ』の顔だった。 彼女はまだ知らない。 その感情を人間が何と呼ぶのかを。 ・・・・・・すなわち、『恋』と。 @ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー ACT67の裏パートというか、同じ時間の彼らです。 表パート以上に、色々と驚愕の事実が、解ってます。 一応、整理。 《水衣の君》は、精神体のみの存在。 《チャイルドクラン》と浅からぬ縁の持ち主。 シヴァ=オルコットの実の母親。 母親云々を、階下の面々が知るのは、72話以降になるかと思います。 時間軸的には、その辺の裏パートでもあります。 それでは、また次回で。 |
17943 | もの凄く遅くなりましたです・・・・。 | 羅城 朱琉 | 2007/1/22 12:06:08 |
記事番号17934へのコメント こんにちは、お久しぶりです、羅城 朱琉です。 久々にネットに繋げましたが・・・・明日から後期期末考査&レポート提出期限間近につき、2話分纏めて短縮で失礼します。・・・・・・・・って、最近こんなことばかりですね。本当にすみません。 ええと・・・・とりあえず、2話とも「ぅえぇぇぇっ!!マジっすか!?」というのが第一感想でしたね、いろんな意味で。《ノーフェイス》さんの参戦理由とかは特に、完全に予想外だったので。セシル嬢の姓なんかでも、叫びました。 最近、本当に書いている時間がなくて、正月編はどうやら投稿できなさそうです。来年度はさらに忙しくなるでしょうし、国家試験もありますし・・・・ということで、今後とも更新&レスは非常に遅くなるかと思います。本当にすみません。読むだけは携帯でできるんですが・・・・パケット料が怖くて。 では、レスより近況報告(?)が長くなってしまいましたが、この辺で失礼します。 それでは、また。 |
17947 | いえいえ、ありがとうございます。 | 十叶 夕海 | 2007/1/24 23:07:20 |
記事番号17943へのコメント > > こんにちは、お久しぶりです、羅城 朱琉です。 > 久々にネットに繋げましたが・・・・明日から後期期末考査&レポート提出期限間近につき、2話分纏めて短縮で失礼します。・・・・・・・・って、最近こんなことばかりですね。本当にすみません。 こんにちは、ユアです。お元気そうで何よりです。 そういう日が結構続く時は続きますからね。 > > ええと・・・・とりあえず、2話とも「ぅえぇぇぇっ!!マジっすか!?」というのが第一感想でしたね、いろんな意味で。《ノーフェイス》さんの参戦理由とかは特に、完全に予想外だったので。セシル嬢の姓なんかでも、叫びました。 驚いていただけたようで。 《ノーフェイス》さんの外見の妖しさと理由は一番一致しないでしょう。 だけど、基本的に、お母さんです、彼女は。 あと、セシルさんは、結構微妙な立場なのです。 一応、フォロー?の短編は投稿しますが。 > > 最近、本当に書いている時間がなくて、正月編はどうやら投稿できなさそうです。来年度はさらに忙しくなるでしょうし、国家試験もありますし・・・・ということで、今後とも更新&レスは非常に遅くなるかと思います。本当にすみません。読むだけは携帯でできるんですが・・・・パケット料が怖くて。 > では、レスより近況報告(?)が長くなってしまいましたが、この辺で失礼します。 > > それでは、また。 はい、これからも頑張ってください。 では、また。 > |
17960 | 家族の写真 ACT70 五月十五日 ―当日/《泉の乙女》の過去悪夢ー | 十叶 夕海 | 2007/1/29 22:42:01 |
記事番号17902へのコメント 「恨むなら、恨んでも良いよ。 《リンデン》イライアス=ヴィドル。」 乾は、もう一度静かに言う。 自分と同じ境遇を作り出したのは、他ならぬ自分なのだと述懐するように。 「恨むのは、《地獄の吟遊詩人(ヘルズ・バート)》ですよ。 ・・・・・・・・・・・それは、変わりありません。」 「そう言ってもらえると助かる。」 自分よりも、長身だけれど、痩躯のイライアスに抱き締められ、正直複雑そうであるが、ほっとしている乾。 それを嬉しそうに、でも懐かしそうに眺めるジュリ。 「さて、次は、私か。 ・・・って言っても、後三人、お客さん待つ必要があるけれど。」 「誰と誰を?」 「《風舞姫》も、よく知っていると思うよ? 確か、レスティオ=フェンテン、シヴァ=オルコット、ルガー=ドゥルテン。 ・・・・・だよね、乾。」 「うん、《お伽噺》より、調べるの簡単だったし。 間違いないよ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「どうした、《風舞姫》? 風邪でも引いたか?」 ジュリの言葉に、ディスティアは、めまいを覚えた。 それの理由を知らない彼女の質問に対して、絞り出すようにこう返す。 「何で、この三人?」 「レスティオは、やって欲しいことと、血縁だし、いないとマズいから。 シヴァは、彼には真実を知る権利がある。 ルガーは、ルガー自身のコトを。 それぞれ、私の話に関わっている。 ・・・・・・ある種のエゴだよ。 話して、楽になりたいと言うね。」 「・・・・・・・・・来る前に顔隠してくる。 じゃないと、シヴァは話すらできない。」 呆れたように、さっき着替えた時に、外したベールとウィンプルを取りに行く。 ついでに、ルキウスの毛布も取りに行く。 それを見送った後、ジュリは、エイレンにこういう。 「止めるなよ。 《世界樹の翁》のくそったれた失敗や幾つかは語らない。 その代わりに、お前のあのコトを含めたいくつかは話させてもらう。」 「・・・・解った。 だけど、止める時は止めるわ。」 渋々ながら、エイレンは、《影の語り部》として、許可を出した。 それに対して、ジュリは、《泉の乙女》は、にっこりと微笑んだ。 付き合いの長い、乾、エイレン、《ノーフェイス》ガ、驚くほど晴れやかな笑顔であった。 それから、十数分 ―。 未だ、ジュリは、語ろうとはしない。 その場を、痛いほどの沈黙が支配する。 アルトは、少しそわそわしている。 たぶん、彼が、《欠片ノ継承者(ピース・テラー)》としては、一番中途半端な位置にいるからだろう。 その雰囲気も手伝って、静かな・・・だけど、張りつめた空気がその場に満ちていた。 「ジュリはん、何のようでありんすか? 何故、裏稼業の重鎮はんやら、レイのお兄はんのいとこはんもおります? あちしも、裏稼業でありんすけど、此処に呼ばれるほど深う関わっておりませんえ?」 「ってか、俺ら、そのチビッコの方に呼ばれたけど、知らねーのに、何で呼ばれたんだ?」 「・・・・・・・・・・・・」 そのうち、三人が入って来た。 三者三様、正装だ。 レスとルガーは、高級そうなスーツ。 シヴァは、迷彩柄のタンクトップに、漆黒の長特攻服。 一応、正装には違いないだろうが・・・・・・少し違うと思うのは、作者だけだろうか? 「来ましたか。 適当に座ってください、歓迎もしませんが、追い出しもs・・・」 「マイハニーvvvvv 尼僧服も、ストイックで素敵だよ。 でも、俺の為に、ウェディングドレスを着て欲しい。」 ディスティアが、タイミングよく、ベールとウィンプルをつけ、毛布を片手に降りて来た。 それと同時に、シヴァが、瞬間移動かとツッコミたくなるほど、素早く、階段を駆け上がり、彼女の腰を引き寄せた。 寄せたが、ディスティアは、容赦なくけり落とす。 変声器チョーカーで、普段のメゾソプラノの声を、アルトのハスキーボイスに変えていたのを見抜いていたのだ。 数分後―。 とりあえず、面々は、それぞれ座っていた。 「質問は、最後に聞くから、最後まで聞いてくれ。」 ・・・・・・・・・・この場を支配していたのは、間違いなくジュリだった。 動機 ージュリ=ローゼンマリアの場合ー 「まず、私が、この作戦に関わる理由から話して行こう。 親友・マティを止める・・・・・・殺す為。 《地獄の吟遊詩人(ヘルズ・バード)》マーティン=クロイスラーは、私の兄弟子というか、吸血鬼的血族の兄にあたる女装好きの吸血鬼だ。 親のクロイツは、私が吸血鬼になってすぐに、人間に滅ぼされたから、マティがお父さん代わりだった。 でも、私が《泉の乙女》として、目覚めた頃だったから、1600年ほど前かな、それくらいに別々に暮らすようになった。 時々、50年に一度とか会うぐらいだったね。 だけど、1000年ほど前のあの日、完全に決別した。 その年もね、数十年ぶりの再会だった。 その時に、一人の青年に出会ったのが、キッカケ。 名前は、ルーグ=ドゥシャス。 金色の短い髪と青い瞳の気持ちのいいヤツだった。 少し、毒舌過ぎるのが、玉にきずだったけれどね。」 《凍れる樹姫》は、静かに語る。 口調は、思い出を語る優しく懐かしそうなモノ。 なのに、語調は、人工音声が話すような抑揚の無い。 「ルーグはね、人間に、同族に殺された。 それで、マティは、人間を深く深く、熱く熱く憎悪をたぎらせた。 それでも、私は、人間への愛情や温もりを捨てきれなかった。 ・・・・・・・マティも、ルーグを殺した人間ばかりじゃないって、解って入るんだろうけどね。 それから・・・・その決別のあと、私はルーグを模して、神影とソラという使い魔を造った。 ・・・・・・・千年。 私は、《お伽噺》の流れにいたけれど、何度もマティと殺し合いをしたわ。 ・・・・・三代前の《世界樹の翁》と《守護する龍》を見送った後だから、60年位前のことかな。 ある意味で、最後の別れをした。 それまでは、まだ仲直りできるって信じてたんだけどね。 その闘いの後、私は40年ほど、封印されていた。 ・・・・・・その間に、神影とソラを奪われた。 それを取り戻すことと、マティを止める・・・・・最悪殺すのが、私・ジュリ=ローゼンマリアの願い。」 「・・・・・・・・・・・・・・・ジュリとしてなら、平穏この上ないんだけどね。」 「そうでありんすの? ・・・・・・三代目。」 自身として・・・・・《お伽噺》関連ではない自身の願いを語り終えたジュリは、区切るように、口をつぐむ。 それに、エイレンは、安堵と呆れを混ぜたような声で、そう呟いた。 判断材料を少しでも多く集めたいのか、レスはそう訊ねる。 「・・・・・・そうね。 友人を捜して、所有物を取り戻して、友人を止めたいって言うのは、平穏ね。 ほとんどが、何かしらの復讐が目的なのが、通常なのだから。 ・・・・・私も、例に漏れずそうだしね。」 ディスティアは、そう沈んだ声で、返したのだった。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ はい、『光への憧憬』とは違うジュリの過去と彼女の理由編でした。 次回は、多少『お伽噺』の裏というか、そういうのが、話されます。 では、また次回で。 |
17979 | 鬼畜外道といわれても・・・・ | 羅城 朱琉 | 2007/2/13 15:45:44 |
記事番号17960へのコメント こんにちは、羅城 朱琉です。 ええと・・・・こちらも手短に失礼します。 乾とイライアスがかっこいいです。冒頭のやり取りになんともいえない色気(?)があって、素敵だなぁ、と。 そして、ディス嬢の変装を一発で見破るシヴァ氏。愛の力は偉大なり、というか、ストーカーの目は誤魔化せない、というか・・・・。 ジュリさんの理由・・・・わからないでもないけれど、やはり少し悲しいです。 ここに集まった皆は、多かれ少なかれ悲しみを抱えていて、それが絡み合って・・・・というのは、ストーリー的にとても好きです。ええ、鬼畜外道と言われようとも好きなものは好きなんですっ!! と、まあ、最後は少し暴走してますが、この辺で。 では、また。 |
17982 | 哀しみ 多い道なれど それでも歩みいくほか道はなし。 | 十叶 夕海 | 2007/2/14 15:10:27 |
記事番号17979へのコメント > > こんにちは、羅城 朱琉です。 > ええと・・・・こちらも手短に失礼します。 こんにちは、はい、了解しました。 > > 乾とイライアスがかっこいいです。冒頭のやり取りになんともいえない色気(?)があって、素敵だなぁ、と。 ありがとうございます。 モデルの友人には、電話で開口一番、照れながら怒られました。 > そして、ディス嬢の変装を一発で見破るシヴァ氏。愛の力は偉大なり、というか、ストーカーの目は誤魔化せない、というか・・・・。 多少、強引でも、ディス嬢への愛は本物ですから。 次回でも、爆弾投下してます。 > ジュリさんの理由・・・・わからないでもないけれど、やはり少し悲しいです。 ジュリ;20年、迷ったけど、これしかいい方法が思いつかなかったからね。 ・・・・・・仕方ないさ。 というぐあいに、截然とは思ってない様子です。 > ここに集まった皆は、多かれ少なかれ悲しみを抱えていて、それが絡み合って・・・・というのは、ストーリー的にとても好きです。ええ、鬼畜外道と言われようとも好きなものは好きなんですっ!! 次回から、一部、もっと酷いことがジュリの口から、バレるのです。 その期待に、答えれるように、頑張りますですね。 > > と、まあ、最後は少し暴走してますが、この辺で。 > では、また。 > はい、では、またじかいで。 |