◆−時の旅人外伝 徒花の意味−羅城 朱琉 (2007/1/13 12:16:32) No.17932 ┗徒花なれど、咲いたからには、ぱっと散るまで咲き乱れましょう。−十叶 夕海 (2007/2/14 15:05:53) No.17981 ┗刹なに切なく、美しいもの。それは・・・・−羅城 朱琉 (2007/2/22 12:11:25) No.17988
17932 | 時の旅人外伝 徒花の意味 | 羅城 朱琉 | 2007/1/13 12:16:32 |
あけましておめでとうございます。羅城 朱琉です。 新年始めが本編外伝(正月記念外伝に非ず)、というのが何ともな所ですが・・・・早速どうぞ。 さて、例え話をしようか。 私は、ただ見ているだけ、という道を選んだ。 貴殿は、道を選ばず、それゆえにただ見ている。 仮に、このまま世界が哀しい運命を辿るとして・・・・後悔するのは、私と貴殿のどちらかな? 私の言うことではないのだろうが、少々気になったので・・・・ね。 誰も彼も、皆、愚かなことに変わりはない。 『後に悔いる』と書いて『後悔』と言うように、後になって過去に嘆く。 さて、例え話をしようか。 私が動かずとも、時は流れる。 貴殿が動かずとも、時は流れる。 ・・・・そして、動いても時は流れる。 何が言いたいか、って? さあね。私は意味のあることは言わないよ。 『不動の放浪者』となったときから、この口からこぼれるのは、戯言ばかりなのだよ。 時の旅人外伝 徒花の意味 騒がしい、と、思った。 何が?・・・・この『本』が。 『出せ』、という思いが聞こえる。確かに、この『魔本』の中から。しかし、『魔本』の主たる小柄な女性・・・・エイレンは、その声の主を知らなかった。それでも、思いは確かに本の中から響く。エイレンは、初めて遭遇する事態に首を傾げた。 「これは、一体・・・・」 声に出して呟いたのは、無意識のことだった。しかし・・・・それに、答える声があった。 「私が呼んだ。リコはそれに答えた。それだけだ。」 その瞬間、気配が生じた。いつの間にやら正面の木に凭れていた人物が、紅い唇を吊り上げる。 「異界の神族、マイセリアル殿とお見受けする。私は『不動の放浪者』。名は過去に置いてきたから、ない。が、今はルートレス・・・・『根無し草』と呼ばれることが多い。以後、お見知りおきを。」 男子の礼装を着こなした、しかし女性と思しき人物・・・・ルートレスは、そう言って嫌味なまでに優雅な礼をした。そして、続ける。 「『螺旋の預言者』の配下にして、私の大切な友人、死と滅びの精霊たるリコリス=ルウィンに会いにきた。どうか、彼女を呼び出していただきたい。」 「・・・・・・・・仮に、その話が本当だとして、だ。リコリスは答えはしないぞ。」 エイレンは、探るように言う。リコリスを知っているということは、おそらくあの『語り部』の関係者であることに間違いはないのだろう。『不動の放浪者』という存在についても、聞いたことはある。元は人間でありながら神魔を超える力を持ち、その姿は黒髪黒目の男装の麗人。確かに、目の前に居る人物と一致する。しかし・・・・それが即ち、信じることに繋がりはしない。『語り部』の関係者だというのならば、なおさらに。 しかし、ルートレスは楽しげに返した。言葉に篭っていたであろう不審の念すら心地よいと言わんばかりに、ふてぶてしいまでの自信に満ちた黒瞳を細めて。 「答えた、だろう?例え『螺旋の預言者』の声に応えなくとも、私の声はリコに届く。」 事実、だった。今となっては、この知らない思いの主がリコリスだということも伝わってくる。 「さあ。」 促すように、ルートレスが言う。エイレンは静かに一息つくと・・・・召喚の呪文を唱え始めた。 「我は【魔本と全門の守護者】 エイレン=レティナ=ジャスティ=エファリディルマイセリアルなり 我の呪われるべき名において 我の意思の禍つ渦を受けよ 魔本の門よ 接続せよ その空虚なる門を開け 虚ろなる力よ 魔本の虚陣を敷き開け 虚陣よ その無なる門を召喚せよ 現れよ 死と滅びの精霊のリコリス=ルウィンよ 具象せよ 【解放】 」 フワリ、と、黒いレースがたなびく。拘束服に縛られた、深紫紺色の少女が、宙に浮かんでいた。ルートレスは、その姿を見て、少し悲しそうな顔をする。 「まったく・・・・『螺旋の預言者』は乱暴だね。 【『白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける』・・・・露と化し、玉と化し、呪縛は散りて地に消える】」 ルートレスが、聞き覚えのない言語で何事か呟き、同時にリコリスの胸辺りをとん、と叩く。途端、リコリスを戒める拘束服が溶けた。それは、小さな黒い玉となって地面に散らばり、すぐに溶け消える。後に残ったのは・・・・深紫紺の長い髪を風に遊ばせた、銀刺繍の入った黒衣の少女。 「リコ、起きたかい?」 リコリスが、ゆっくりと目を開く。エイレンもはじめて見るリコリスの瞳は、濃い寒色で統一されたリコリスの中で唯一、温かみのある陽光のような色をしていた。 「・・・・ルー・・・・・・・・?」 「そう、『ルー』だ。」 「あ・・・・・・・・あァッ!!」 徐々に瞳に意思の色が戻ってきた、と思った途端、リコリスは頭を強く抱え、叫びだす。その周囲に濃い魔力が漂い、滅びの力として集束し・・・・ 「【『雲はみな払ひ果てたる秋風を松に残して月を見るかな』・・・・荒れる力を雲と見て、澄む月の心を我は求める】」 ルートレスがリコリスを指差し、再び聞いたことのない言葉で呟く。と、その指から放たれた涼やかな風が、集束しつつあった魔力を吹き散らした。 「落ち着け。ここには、リコに滅びを強制する者はいない。もう、大丈夫だよ。・・・・・・・・ただいま、リコ。遅くなって、ごめんね。」 そうして、ルートレスがリコリスを抱き寄せる。母がわが子を抱くように、優しく、慈愛に満ちた微笑で。その頭をルートレスがぽんぽんと撫ぜてやると、リコリスの瞳から大粒の涙がこぼれた。 「・・・・ルー・・・・ルーのばかぁ・・・・。すぐ帰ってくるって、言ったのに・・・・。」 「うん。ごめんね。」 「寂しかったし、すごく怖くて・・・・皆、変になっちゃうし・・・・」 「うん。ごめん。・・・・本当に、ごめん。」 ひたすらに泣きつつルートレスを詰るリコリスを抱きしめ、ルートレスはただただ謝り続ける。穏やかな声で、リコリスの頭を撫でながら。 * * * * * リコリスが泣きつかれて眠った頃。ルートレスはようやくエイレンに意識を戻し、笑った。それは、リコリスに向けていた柔らかなものとは全く違う、ふてぶてしいまでの自信に溢れた、勝気な笑み。 「さて・・・・まずは、リコを預かっていただいたことに感謝を。そして、もうしばらくはリコを預かっていただきたい。『中枢予定表』が、リコを狙っているのでね。」 「・・・・目的を、聞きたい。」 何の、なのかは、エイレン自身にもよく解らなかった。リコリスのことについてなのか、ルートレスについてなのか、それとも、他の何かについてなのか・・・・。きっと、その全て。だから、何といわれると、答えられない。そんな問い。しかし、ルートレスはその問いの内容をどう理解したのか、妙なことを言ってきた。 「さて・・・・。マイセリアル殿、例えば、変化を求めるものが居るとして・・・・何故その彼、もしくは彼女は変化を求めると思う?また、例えば、贖罪を望むものが居て・・・・何故、その彼、もしくは彼女は贖罪を望むと思う?」 「?」 エイレンは、意味を捉えかねて首を傾げる。ルートレスは、その反応を見て、続けた。 「変化を求めるのは、現状に不満を持つからなのだろうか?・・・・例え、現状が幸せでも、他者のために変化を求める。その思いを、何と呼ぼう? 贖罪を望むのは、誰かに許されるためなのだろうか?・・・・例え、誰もが償いを望まなくとも、自らが自らを許すために贖罪をする。それを、何と呼ぼう? 答えは、個人によって違う。私なら・・・・前者は犠牲、後者は欺瞞。そう呼ぼう。 けれど、ある人はこの問いにこう答えた。前者は愛、後者は自戒だと。 さあ、貴殿はこの問いにどう答える?」 「それに、何の意味がある?」 「さあ・・・・ね?どれほど意味のある言葉でも、受け手が無意味と思えば戯言となる。逆もまた然り。この問いの意味を決めるのは、貴殿自身。だから、答えなくても別にいい。ただ・・・・私は、貴殿の答えが知りたい。」 そして、スッと目を伏せ、独り言のように言う。 「つまりは、戯言の中から隠された真実を読み取れるか・・・・それは、聞き手次第。」 そう言って、目を開く。その瞬間のルートレスの瞳は・・・・どこか、語り部が時折見せるものに似ている気がした。 そして、沈黙。 それ以上、ルートレスが何も言わないと悟ったエイレンは、しばしの思考の末、答えを出した。 「前者は・・・・好意、慕情、愛・・・・呼び方はどうでもいいが、そういうものだろうさ。 後者は、偽善にすらならない偽善、だろう?そんなことで何が変わる?変わらないだろう。」 前半は、皮肉と哀しさが同居した自嘲交じりの声になってしまった。・・・・思い出す。シフェルとガイスのことを。その思いを振り払うように思考を断ち切り、エイレンはルートレスを見た。 「答えたぞ。それで・・・・?キミは、私の問いに答えてはくれないのか?」 エイレンの言葉に、ルートレスはふと笑った。そして・・・・ 「私の問いこそ、私の答え。」 言うのは、やはり妙なこと。今回は本人も自覚しているのか、すぐに続けて言った。 「幸福を約束されたものが、絶望の道を歩むもののため、変化を望んでいる。絶望の道を歩むものから見れば、彼らは犠牲。しかし、幸福を約束されたものたちの行動理念は、愛。 変化を望むものに手を貸すものがいる。それこそが、償いだとでも思っているのか?所詮は欺瞞。所詮は偽善。しかし、本人はそうは思っていない。本人だけが、気付いていない。」 詠うように言って、ルートレスは再び目を伏せた。そこから先は、独り言のように。 「幸福なものの名は、レンシェルマ。絶望の道を歩むものの名は、アリエス、そして、ルピナス。手を貸すものは・・・・『螺旋の預言者』。誰も動かずとも、時は流れる。誰かが動いても、時は流れる。今の状態では・・・・変化を求める者たちの、圧倒的不利だね。」 そして、再びフと微笑み、エイレンを見た。 「私は、知りたいのだよ。弛まぬ時の流れの中で、変革を求めてもがく者たちの、その行く末を。『運命』という名の束縛を、断ち切ることが出来るのか。強い願いは、真摯な祈りは、何かを変えることが出来るのか、貫き通すことが出来るのか・・・・・・・・。・・・・・・・・かつては、私もそうであったかのように。 貴殿に何を望むわけではない。ただ、私は示唆しよう。『何よりも強い力』の存在を。『全てを貫く思い』の存在を。それを犠牲ととるか、愛ととるか、それは、個人次第。それに動くか、動かないか、それも、個人次第。」 諷詠するように言って、ルートレスは立ち上がる。リコリスをエイレンに再び託すと、謎掛けのような言葉を今一度紡いだ。 「実を結ばぬ花を、徒花と言う。儚く散りゆく花も、また徒花と呼ばれ、末遂げられぬ恋の例えとされている。季節はずれに咲く花も、また徒花と。『徒』とは、『はかない』『かりそめ』『無駄』という意味。 けれど・・・・本当に、徒花は無駄なものなのだろうか?本当に、儚いものなのだろうか?・・・・徒花の意味を、知らないだけなのではないだろうか? 末遂げられぬとはいえ、恋する人は幸せだろう?末を思って嘆くより、儚い今の幸せに酔いしれていたい。実を結ばぬ花だとて、心に何かを残してゆく。失われるものは何もない。全て、意味を残してゆく。意味を残さぬとすれば・・・・受け手が、意味を探らなかったとき。 ・・・・貴殿の行く末も、私は知りたく思うよ。」 そうして、ルートレスは一礼すると、消えた。 * * * * * ルートレスは、願う。 この言葉が、徒花にならぬようにと、願う。 その心が折れないようにと、願う。 ただ示唆するしか出来ぬがゆえに・・・・願う。 「【『いつはりのなき世なりせばいかばかり人の言の葉うれしからまし』・・・・偽り多き世なれど、その心よ不変であれと・・・・我は切に願う。】」 そう結び、ルートレスは目を閉じる。 『中枢予定表』を押さえ、封じるために。変革を目指すものたちの一助となるように。彼らへ・・・・期待と、願いをこめて。 古典文学を愛する医者の卵であった時代を、懐かしく思い返しながら。 あとがき さて、改めまして、こんにちは、あけましておめでとうございます。今年も一年、よろしくお願いします。 さて・・・・今回はどうだったでしょうか?これから、いろいろな人を合流させるために、こういう少し意味のわからない(伏線満載の、とも言う)短編を幾つか書きますので、よろしくお付き合いください。 今回、『不動の放浪者』ルートレスさんが唱えている呪文の中の和歌は、全て実際に残っている和歌から頂きました。なので、一応その作者と、正しい訳を明記しておきます。 ・『白露に〜』 作者:文屋朝康 訳:草の葉に降りた白露に風がしきりに吹いている秋の野は、まるで緒に通して止めていない玉が散り乱れているようである。 ・『雲はみな〜』 作者:藤原義経 訳:雲をすっかり吹き払ってしまった秋風の音だけが松の梢に残っている、その音を聞きながら澄んだ月を眺めることであるよ。 ・『いつはりの〜』 作者:よみ人しらず 訳:偽りのない世であったならばどんなにあなたのおことばがうれしいことでしょう。 以上の訳は、『古語林 古典文学事典/名歌名句事典』を参照しました。 |
17981 | 徒花なれど、咲いたからには、ぱっと散るまで咲き乱れましょう。 | 十叶 夕海 | 2007/2/14 15:05:53 |
記事番号17932へのコメント > > あけましておめでとうございます。羅城 朱琉です。 > 新年始めが本編外伝(正月記念外伝に非ず)、というのが何ともな所ですが・・・・早速どうぞ。 ユア;こんにちは、ユアです。 久遠:一月経っちゃってるけど、レスするわね〜。 ユア;検定、テスト、と重なった結果ですよ。 ともあれ、レスにゴー。 > > > > さて、例え話をしようか。 > > 私は、ただ見ているだけ、という道を選んだ。 > > 貴殿は、道を選ばず、それゆえにただ見ている。 > > 仮に、このまま世界が哀しい運命を辿るとして・・・・後悔するのは、私と貴殿のどちらかな? > > > 私の言うことではないのだろうが、少々気になったので・・・・ね。 > > 誰も彼も、皆、愚かなことに変わりはない。 > > 『後に悔いる』と書いて『後悔』と言うように、後になって過去に嘆く。 > > > さて、例え話をしようか。 > > 私が動かずとも、時は流れる。 > > 貴殿が動かずとも、時は流れる。 > > ・・・・そして、動いても時は流れる。 > > > 何が言いたいか、って? > > さあね。私は意味のあることは言わないよ。 > > 『不動の放浪者』となったときから、この口からこぼれるのは、戯言ばかりなのだよ。 ユア:戯れ言でも、何かを言うのは、怖いことだと思うよ? 久遠:そうよねぇ、《破滅の占い師》ちゃんにしてもね。 何かを言うことで、誰かを動かしてしまうことってあるもの。 >「異界の神族、マイセリアル殿とお見受けする。私は『不動の放浪者』。名は過去に置いてきたから、ない。が、今はルートレス・・・・『根無し草』と呼ばれることが多い。以後、お見知りおきを。」 > 男子の礼装を着こなした、しかし女性と思しき人物・・・・ルートレスは、そう言って嫌味なまでに優雅な礼をした。そして、続ける。 >「『螺旋の預言者』の配下にして、私の大切な友人、死と滅びの精霊たるリコリス=ルウィンに会いにきた。どうか、彼女を呼び出していただきたい。」 >「・・・・・・・・仮に、その話が本当だとして、だ。リコリスは答えはしないぞ。」 > エイレンは、探るように言う。リコリスを知っているということは、おそらくあの『語り部』の関係者であることに間違いはないのだろう。『不動の放浪者』という存在についても、聞いたことはある。元は人間でありながら神魔を超える力を持ち、その姿は黒髪黒目の男装の麗人。確かに、目の前に居る人物と一致する。しかし・・・・それが即ち、信じることに繋がりはしない『語り部』の関係者だというのならば、なおさらに。 > しかし、ルートレスは楽しげに返した。言葉に篭っていたであろう不審の念すら心地よいと言わんばかりに、ふてぶてしいまでの自信に満ちた黒瞳を細めて。 >「答えた、だろう?例え『螺旋の預言者』の声に応えなくとも、私の声はリコに届く。」 > 事実、だった。今となっては、この知らない思いの主がリコリスだということも伝わってくる。 >「さあ。」 > 促すように、ルートレスが言う。エイレンは静かに一息つくと・・・・召喚の呪文を唱え始めた。 久遠:このエイレンちゃんも、優しいわね。 突っぱねることも出来たのに。 ユア:この場合、優しいと言うよりは、呆れたとかのほうに近いかと。 それに、多少、直感で動く人ですし。 > フワリ、と、黒いレースがたなびく。拘束服に縛られた、深紫紺色の少女が、宙に浮かんでいた。ルートレスは、その姿を見て、少し悲しそうな顔をする。 >「まったく・・・・『螺旋の預言者』は乱暴だね。 > 【『白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける』・・・・露と化し、玉と化し、呪縛は散りて地に消える】」 > ルートレスが、聞き覚えのない言語で何事か呟き、同時にリコリスの胸辺りをとん、と叩く。途端、リコリスを戒める拘束服が溶けた。それは、小さな黒い玉となって地面に散らばり、すぐに溶け消える。後に残ったのは・・・・深紫紺の長い髪を風に遊ばせた、銀刺繍の入った黒衣の少女。 >「リコ、起きたかい?」 > リコリスが、ゆっくりと目を開く。エイレンもはじめて見るリコリスの瞳は、濃い寒色で統一されたリコリスの中で唯一、温かみのある陽光のような色をしていた。 >「・・・・ルー・・・・・・・・?」 >「そう、『ルー』だ。」 >「あ・・・・・・・・あァッ!!」 > 徐々に瞳に意思の色が戻ってきた、と思った途端、リコリスは頭を強く抱え、叫びだす。その周囲に濃い魔力が漂い、滅びの力として集束し・・・・ >「【『雲はみな払ひ果てたる秋風を松に残して月を見るかな』・・・・荒れる力を雲と見て、澄む月の心を我は求める】」 > ルートレスがリコリスを指差し、再び聞いたことのない言葉で呟く。と、その指から放たれた涼やかな風が、集束しつつあった魔力を吹き散らした。 >「落ち着け。ここには、リコに滅びを強制する者はいない。もう、大丈夫だよ。・・・・・・・・ただいま、リコ。遅くなって、ごめんね。」 > そうして、ルートレスがリコリスを抱き寄せる。母がわが子を抱くように、優しく、慈愛に満ちた微笑で。その頭をルートレスがぽんぽんと撫ぜてやると、リコリスの瞳から大粒の涙がこぼれた。 >「・・・・ルー・・・・ルーのばかぁ・・・・。すぐ帰ってくるって、言ったのに・・・・。」 >「うん。ごめんね。」 >「寂しかったし、すごく怖くて・・・・皆、変になっちゃうし・・・・」 >「うん。ごめん。・・・・本当に、ごめん。」 > ひたすらに泣きつつルートレスを詰るリコリスを抱きしめ、ルートレスはただただ謝り続ける。穏やかな声で、リコリスの頭を撫でながら。 > リコリスが泣きつかれて眠った頃。ルートレスはようやくエイレンに意識を戻し、笑った。それは、リコリスに向けていた柔らかなものとは全く違う、ふてぶてしいまでの自信に溢れた、勝気な笑み。 ユア:ダレデスカ?りこりすサンデスヨネ。 久遠:だと、思うわよ? 家族(みたいな存在)の前だと、別人になっても仕方ないと思うけど? >「さて・・・・。マイセリアル殿、例えば、変化を求めるものが居るとして・・・・何故その彼、もしくは彼女は変化を求めると思う?また、例えば、贖罪を望むものが居て・・・・何故、その彼、もしくは彼女は贖罪を望むと思う?」 >「?」 > エイレンは、意味を捉えかねて首を傾げる。ルートレスは、その反応を見て、続けた。 >「変化を求めるのは、現状に不満を持つからなのだろうか?・・・・例え、現状が幸せでも、他者のために変化を求める。その思いを、何と呼ぼう? > 贖罪を望むのは、誰かに許されるためなのだろうか?・・・・例え、誰もが償いを望まなくとも、自らが自らを許すために贖罪をする。それを、何と呼ぼう? > 答えは、個人によって違う。私なら・・・・前者は犠牲、後者は欺瞞。そう呼ぼう。 > けれど、ある人はこの問いにこう答えた。前者は愛、後者は自戒だと。 > さあ、貴殿はこの問いにどう答える?」 >「それに、何の意味がある?」 >「さあ・・・・ね?どれほど意味のある言葉でも、受け手が無意味と思えば戯言となる。逆もまた然り。この問いの意味を決めるのは、貴殿自身。だから、答えなくても別にいい。ただ・・・・私は、貴殿の答えが知りたい。」 > そして、スッと目を伏せ、独り言のように言う。 久遠:あのやりとりね。 ユア;そーだねぇ。久遠なら、どう答えます? 久遠:前者は、愛とか、優しさかしら? 後者は、自己犠牲の自己満足、ルートレスちゃんとおなじく、欺瞞のような意味でとってちょうだい。 >「つまりは、戯言の中から隠された真実を読み取れるか・・・・それは、聞き手次第。」 > そう言って、目を開く。その瞬間のルートレスの瞳は・・・・どこか、語り部が時折見せるものに似ている気がした。 > そして、沈黙。 > それ以上、ルートレスが何も言わないと悟ったエイレンは、しばしの思考の末、答えを出した。 >「前者は・・・・好意、慕情、愛・・・・呼び方はどうでもいいが、そういうものだろうさ。 > 後者は、偽善にすらならない偽善、だろう?そんなことで何が変わる?変わらないだろう。」 > 前半は、皮肉と哀しさが同居した自嘲交じりの声になってしまった。・・・・思い出す。シフェルとガイスのことを。その思いを振り払うように思考を断ち切り、エイレンはルートレスを見た。 ユア:ちょいと、哀しいことではありますが。 久遠:忘れれるほど、軽く見てなかったのね。 >「答えたぞ。それで・・・・?キミは、私の問いに答えてはくれないのか?」 > エイレンの言葉に、ルートレスはふと笑った。そして・・・・ >「私の問いこそ、私の答え。」 > 言うのは、やはり妙なこと。今回は本人も自覚しているのか、すぐに続けて言った。 >「幸福を約束されたものが、絶望の道を歩むもののため、変化を望んでいる。絶望の道を歩むものから見れば、彼らは犠牲。しかし、幸福を約束されたものたちの行動理念は、愛。 > 変化を望むものに手を貸すものがいる。それこそが、償いだとでも思っているのか?所詮は欺瞞。所詮は偽善。しかし、本人はそうは思っていない。本人だけが、気付いていない。」 > 詠うように言って、ルートレスは再び目を伏せた。そこから先は、独り言のように。 >「幸福なものの名は、レンシェルマ。絶望の道を歩むものの名は、アリエス、そして、ルピナス。手を貸すものは・・・・『螺旋の預言者』。誰も動かずとも、時は流れる。誰かが動いても、時は流れる。今の状態では・・・・変化を求める者たちの、圧倒的不利だね。」 久遠:不利だろうと、無茶だろうと、動きたいと願うのは、好きだからよ。 ユア:だから、こそ、悩み、嘆きに身を浸すことになっても、行動しようとする? 久遠:そうね。ルートレスちゃん、貴方がそういうのは、私にはそうきこえるの。 > そして、再びフと微笑み、エイレンを見た。 >「私は、知りたいのだよ。弛まぬ時の流れの中で、変革を求めてもがく者たちの、その行く末を。『運命』という名の束縛を、断ち切ることが出来るのか。強い願いは、真摯な祈りは、何かを変えることが出来るのか、貫き通すことが出来るのか・・・・・・・・。・・・・・・・・かつては、私もそうであったかのように。 > 貴殿に何を望むわけではない。ただ、私は示唆しよう。『何よりも強い力』の存在を。『全てを貫く思い』の存在を。それを犠牲ととるか、愛ととるか、それは、個人次第。それに動くか、動かないか、それも、個人次第。」 > 諷詠するように言って、ルートレスは立ち上がる。リコリスをエイレンに再び託すと、謎掛けのような言葉を今一度紡いだ。 ユア:何か哀しいです。 なにが、どう?と言う訳でなしに、ルートレス嬢の言葉は哀しい。 打ちのめされたモノが、再び立ち上がろうとするかのように。 >「実を結ばぬ花を、徒花と言う。儚く散りゆく花も、また徒花と呼ばれ、末遂げられぬ恋の例えとされている。季節はずれに咲く花も、また徒花と。『徒』とは、『はかない』『かりそめ』『無駄』という意味。 > けれど・・・・本当に、徒花は無駄なものなのだろうか?本当に、儚いものなのだろうか?・・・・徒花の意味を、知らないだけなのではないだろうか? > 末遂げられぬとはいえ、恋する人は幸せだろう?末を思って嘆くより、儚い今の幸せに酔いしれていたい。実を結ばぬ花だとて、心に何かを残してゆく。失われるものは何もない。全て、意味を残してゆく。意味を残さぬとすれば・・・・受け手が、意味を探らなかったとき。 > ・・・・貴殿の行く末も、私は知りたく思うよ。」 > そうして、ルートレスは一礼すると、消えた。 エイレン:・・・・・・・・・・・私に『何』かを成すことが、出来るのか? 故郷を失い、友をも亡くし、寄る辺も無い私に。 ユア:エイレン嬢、なら、多分こう思っているだろうなと。 久遠:私個人にある通り、『徒花であっても、咲いたからには、散るまで華々しく咲き誇りましょう。 > > > * * * * * > > > ルートレスは、願う。 > > この言葉が、徒花にならぬようにと、願う。 > > その心が折れないようにと、願う。 > > ただ示唆するしか出来ぬがゆえに・・・・願う。 > > >「【『いつはりのなき世なりせばいかばかり人の言の葉うれしからまし』・・・・偽り多き世なれど、その心よ不変であれと・・・・我は切に願う。】」 > そう結び、ルートレスは目を閉じる。 > 『中枢予定表』を押さえ、封じるために。変革を目指すものたちの一助となるように。彼らへ・・・・期待と、願いをこめて。 > 古典文学を愛する医者の卵であった時代を、懐かしく思い返しながら。 ユア:・・・・・・・・・・・・・にゅあ(涙ながし) 久遠:ええと、『《破滅を呼ぶ占い師》ちゃんにも、通じるようなルートレスちゃんの刹なに切なすぎる願いと、かつての想いが、泣ける〜っ』 そうね、諦めていても、諦めきれないことで足掻いているようにも思うわ。 > > > > あとがき > さて、改めまして、こんにちは、あけましておめでとうございます。今年も一年、よろしくお願いします。 > さて・・・・今回はどうだったでしょうか?これから、いろいろな人を合流させるために、こういう少し意味のわからない(伏線満載の、とも言う)短編を幾つか書きますので、よろしくお付き合いください。 > > 今回、『不動の放浪者』ルートレスさんが唱えている呪文の中の和歌は、全て実際に残っている和歌から頂きました。なので、一応その作者と、正しい訳を明記しておきます。 >・『白露に〜』 > 作者:文屋朝康 > 訳:草の葉に降りた白露に風がしきりに吹いている秋の野は、まるで緒に通して止めていない玉が散り乱れているようである。 >・『雲はみな〜』 > 作者:藤原義経 > 訳:雲をすっかり吹き払ってしまった秋風の音だけが松の梢に残っている、その音を聞きながら澄んだ月を眺めることであるよ。 >・『いつはりの〜』 > 作者:よみ人しらず > 訳:偽りのない世であったならばどんなにあなたのおことばがうれしいことでしょう。 > > 以上の訳は、『古語林 古典文学事典/名歌名句事典』を参照しました。 > ユア;・・・・・・(涙を拭うのに忙しい) 久遠:楽しく、切なく、読ませてもらったわ。 ともあれ、また次回でね。 > |
17988 | 刹なに切なく、美しいもの。それは・・・・ | 羅城 朱琉 | 2007/2/22 12:11:25 |
記事番号17981へのコメント > >> >> あけましておめでとうございます。羅城 朱琉です。 >> 新年始めが本編外伝(正月記念外伝に非ず)、というのが何ともな所ですが・・・・早速どうぞ。 > >ユア;こんにちは、ユアです。 >久遠:一月経っちゃってるけど、レスするわね〜。 >ユア;検定、テスト、と重なった結果ですよ。 > ともあれ、レスにゴー。 朱琉:こんにちは。遅くなりました、羅城 朱琉です。 アミイ:風邪ひいてるくせに。 朱琉:熱もないし頭痛も腹痛も悪心もないからいいんです。それに、大分治ってきたし。 アミイ:未だにひどい声してるくせに。 朱琉:その辺は一切合財横においておいて。では、返レスです。 > >> >> >> >> さて、例え話をしようか。 >> >> 私は、ただ見ているだけ、という道を選んだ。 >> >> 貴殿は、道を選ばず、それゆえにただ見ている。 >> >> 仮に、このまま世界が哀しい運命を辿るとして・・・・後悔するのは、私と貴殿のどちらかな? >> >> >> 私の言うことではないのだろうが、少々気になったので・・・・ね。 >> >> 誰も彼も、皆、愚かなことに変わりはない。 >> >> 『後に悔いる』と書いて『後悔』と言うように、後になって過去に嘆く。 >> >> >> さて、例え話をしようか。 >> >> 私が動かずとも、時は流れる。 >> >> 貴殿が動かずとも、時は流れる。 >> >> ・・・・そして、動いても時は流れる。 >> >> >> 何が言いたいか、って? >> >> さあね。私は意味のあることは言わないよ。 >> >> 『不動の放浪者』となったときから、この口からこぼれるのは、戯言ばかりなのだよ。 > > >ユア:戯れ言でも、何かを言うのは、怖いことだと思うよ? >久遠:そうよねぇ、《破滅の占い師》ちゃんにしてもね。 > 何かを言うことで、誰かを動かしてしまうことってあるもの。 朱琉:言葉は人を動かす力になる。だからこそ、ルートレスさんは言わずにはおれないんです。 アミイ:以下に強かろうとも、直接関われないからねぇ。せめて言葉で、誰かを動かしたいと思うわけよ。 > >>「異界の神族、マイセリアル殿とお見受けする。私は『不動の放浪者』。名は過去に置いてきたから、ない。が、今はルートレス・・・・『根無し草』と呼ばれることが多い。以後、お見知りおきを。」 >> 男子の礼装を着こなした、しかし女性と思しき人物・・・・ルートレスは、そう言って嫌味なまでに優雅な礼をした。そして、続ける。 >>「『螺旋の預言者』の配下にして、私の大切な友人、死と滅びの精霊たるリコリス=ルウィンに会いにきた。どうか、彼女を呼び出していただきたい。」 >>「・・・・・・・・仮に、その話が本当だとして、だ。リコリスは答えはしないぞ。」 >> エイレンは、探るように言う。リコリスを知っているということは、おそらくあの『語り部』の関係者であることに間違いはないのだろう。『不動の放浪者』という存在についても、聞いたことはある。元は人間でありながら神魔を超える力を持ち、その姿は黒髪黒目の男装の麗人。確かに、目の前に居る人物と一致する。しかし・・・・それが即ち、信じることに繋がりはしない『語り部』の関係者だというのならば、なおさらに。 >> しかし、ルートレスは楽しげに返した。言葉に篭っていたであろう不審の念すら心地よいと言わんばかりに、ふてぶてしいまでの自信に満ちた黒瞳を細めて。 >>「答えた、だろう?例え『螺旋の預言者』の声に応えなくとも、私の声はリコに届く。」 >> 事実、だった。今となっては、この知らない思いの主がリコリスだということも伝わってくる。 >>「さあ。」 >> 促すように、ルートレスが言う。エイレンは静かに一息つくと・・・・召喚の呪文を唱え始めた。 > >久遠:このエイレンちゃんも、優しいわね。 > 突っぱねることも出来たのに。 >ユア:この場合、優しいと言うよりは、呆れたとかのほうに近いかと。 > それに、多少、直感で動く人ですし。 朱琉:基本的に、優しい人だと思ったので。 アミイ:断っても、結局ルートレスちゃんが口八丁手八丁で丸め込んだとも思うけどね。 > > >> フワリ、と、黒いレースがたなびく。拘束服に縛られた、深紫紺色の少女が、宙に浮かんでいた。ルートレスは、その姿を見て、少し悲しそうな顔をする。 >>「まったく・・・・『螺旋の預言者』は乱暴だね。 >> 【『白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける』・・・・露と化し、玉と化し、呪縛は散りて地に消える】」 >> ルートレスが、聞き覚えのない言語で何事か呟き、同時にリコリスの胸辺りをとん、と叩く。途端、リコリスを戒める拘束服が溶けた。それは、小さな黒い玉となって地面に散らばり、すぐに溶け消える。後に残ったのは・・・・深紫紺の長い髪を風に遊ばせた、銀刺繍の入った黒衣の少女。 >>「リコ、起きたかい?」 >> リコリスが、ゆっくりと目を開く。エイレンもはじめて見るリコリスの瞳は、濃い寒色で統一されたリコリスの中で唯一、温かみのある陽光のような色をしていた。 >>「・・・・ルー・・・・・・・・?」 >>「そう、『ルー』だ。」 >>「あ・・・・・・・・あァッ!!」 >> 徐々に瞳に意思の色が戻ってきた、と思った途端、リコリスは頭を強く抱え、叫びだす。その周囲に濃い魔力が漂い、滅びの力として集束し・・・・ >>「【『雲はみな払ひ果てたる秋風を松に残して月を見るかな』・・・・荒れる力を雲と見て、澄む月の心を我は求める】」 >> ルートレスがリコリスを指差し、再び聞いたことのない言葉で呟く。と、その指から放たれた涼やかな風が、集束しつつあった魔力を吹き散らした。 >>「落ち着け。ここには、リコに滅びを強制する者はいない。もう、大丈夫だよ。・・・・・・・・ただいま、リコ。遅くなって、ごめんね。」 >> そうして、ルートレスがリコリスを抱き寄せる。母がわが子を抱くように、優しく、慈愛に満ちた微笑で。その頭をルートレスがぽんぽんと撫ぜてやると、リコリスの瞳から大粒の涙がこぼれた。 >>「・・・・ルー・・・・ルーのばかぁ・・・・。すぐ帰ってくるって、言ったのに・・・・。」 >>「うん。ごめんね。」 >>「寂しかったし、すごく怖くて・・・・皆、変になっちゃうし・・・・」 >>「うん。ごめん。・・・・本当に、ごめん。」 >> ひたすらに泣きつつルートレスを詰るリコリスを抱きしめ、ルートレスはただただ謝り続ける。穏やかな声で、リコリスの頭を撫でながら。 >> リコリスが泣きつかれて眠った頃。ルートレスはようやくエイレンに意識を戻し、笑った。それは、リコリスに向けていた柔らかなものとは全く違う、ふてぶてしいまでの自信に溢れた、勝気な笑み。 > >ユア:ダレデスカ?りこりすサンデスヨネ。 >久遠:だと、思うわよ? > 家族(みたいな存在)の前だと、別人になっても仕方ないと思うけど? 朱琉:ええと・・・・・・・・ アミイ:リコリスちゃんの現在の様子は、 『寝起きで幼児退行40%+(ルートレスちゃんに会えた喜び30%+これまでの怒りとか寂しさとか30%)、ってところで、こんな感じに。 > > >>「さて・・・・。マイセリアル殿、例えば、変化を求めるものが居るとして・・・・何故その彼、もしくは彼女は変化を求めると思う?また、例えば、贖罪を望むものが居て・・・・何故、その彼、もしくは彼女は贖罪を望むと思う?」 >>「?」 >> エイレンは、意味を捉えかねて首を傾げる。ルートレスは、その反応を見て、続けた。 >>「変化を求めるのは、現状に不満を持つからなのだろうか?・・・・例え、現状が幸せでも、他者のために変化を求める。その思いを、何と呼ぼう? >> 贖罪を望むのは、誰かに許されるためなのだろうか?・・・・例え、誰もが償いを望まなくとも、自らが自らを許すために贖罪をする。それを、何と呼ぼう? >> 答えは、個人によって違う。私なら・・・・前者は犠牲、後者は欺瞞。そう呼ぼう。 >> けれど、ある人はこの問いにこう答えた。前者は愛、後者は自戒だと。 >> さあ、貴殿はこの問いにどう答える?」 >>「それに、何の意味がある?」 >>「さあ・・・・ね?どれほど意味のある言葉でも、受け手が無意味と思えば戯言となる。逆もまた然り。この問いの意味を決めるのは、貴殿自身。だから、答えなくても別にいい。ただ・・・・私は、貴殿の答えが知りたい。」 >> そして、スッと目を伏せ、独り言のように言う。 > >久遠:あのやりとりね。 >ユア;そーだねぇ。久遠なら、どう答えます? >久遠:前者は、愛とか、優しさかしら? > 後者は、自己犠牲の自己満足、ルートレスちゃんとおなじく、欺瞞のような意味でとってちょうだい。 朱琉:あのやりとりです。 アミイ:この質問、実はかなり悩んだのよね。 > >>「つまりは、戯言の中から隠された真実を読み取れるか・・・・それは、聞き手次第。」 >> そう言って、目を開く。その瞬間のルートレスの瞳は・・・・どこか、語り部が時折見せるものに似ている気がした。 >> そして、沈黙。 >> それ以上、ルートレスが何も言わないと悟ったエイレンは、しばしの思考の末、答えを出した。 >>「前者は・・・・好意、慕情、愛・・・・呼び方はどうでもいいが、そういうものだろうさ。 >> 後者は、偽善にすらならない偽善、だろう?そんなことで何が変わる?変わらないだろう。」 >> 前半は、皮肉と哀しさが同居した自嘲交じりの声になってしまった。・・・・思い出す。シフェルとガイスのことを。その思いを振り払うように思考を断ち切り、エイレンはルートレスを見た。 > >ユア:ちょいと、哀しいことではありますが。 >久遠:忘れれるほど、軽く見てなかったのね。 アミイ:まあ、忘れられないでしょうね。 朱琉:そんな簡単なものではなかったでしょうから。 > >>「答えたぞ。それで・・・・?キミは、私の問いに答えてはくれないのか?」 >> エイレンの言葉に、ルートレスはふと笑った。そして・・・・ >>「私の問いこそ、私の答え。」 >> 言うのは、やはり妙なこと。今回は本人も自覚しているのか、すぐに続けて言った。 >>「幸福を約束されたものが、絶望の道を歩むもののため、変化を望んでいる。絶望の道を歩むものから見れば、彼らは犠牲。しかし、幸福を約束されたものたちの行動理念は、愛。 >> 変化を望むものに手を貸すものがいる。それこそが、償いだとでも思っているのか?所詮は欺瞞。所詮は偽善。しかし、本人はそうは思っていない。本人だけが、気付いていない。」 >> 詠うように言って、ルートレスは再び目を伏せた。そこから先は、独り言のように。 >>「幸福なものの名は、レンシェルマ。絶望の道を歩むものの名は、アリエス、そして、ルピナス。手を貸すものは・・・・『螺旋の預言者』。誰も動かずとも、時は流れる。誰かが動いても、時は流れる。今の状態では・・・・変化を求める者たちの、圧倒的不利だね。」 > >久遠:不利だろうと、無茶だろうと、動きたいと願うのは、好きだからよ。 >ユア:だから、こそ、悩み、嘆きに身を浸すことになっても、行動しようとする? >久遠:そうね。ルートレスちゃん、貴方がそういうのは、私にはそうきこえるの。 朱琉:結局は、そういう意味です。それを、ルートレスさんはもって回ったようなややこしくも面倒な言い回しで言っているわけです。 アミイ:いい意味にも悪い意味にも取れるように・・・・ね。 結局、そういう意味では、ルートレスちゃんは根っからの『偽悪者』で、それを楽しんでもいるのよね。 > >> そして、再びフと微笑み、エイレンを見た。 >>「私は、知りたいのだよ。弛まぬ時の流れの中で、変革を求めてもがく者たちの、その行く末を。『運命』という名の束縛を、断ち切ることが出来るのか。強い願いは、真摯な祈りは、何かを変えることが出来るのか、貫き通すことが出来るのか・・・・・・・・。・・・・・・・・かつては、私もそうであったかのように。 >> 貴殿に何を望むわけではない。ただ、私は示唆しよう。『何よりも強い力』の存在を。『全てを貫く思い』の存在を。それを犠牲ととるか、愛ととるか、それは、個人次第。それに動くか、動かないか、それも、個人次第。」 >> 諷詠するように言って、ルートレスは立ち上がる。リコリスをエイレンに再び託すと、謎掛けのような言葉を今一度紡いだ。 > >ユア:何か哀しいです。 > なにが、どう?と言う訳でなしに、ルートレス嬢の言葉は哀しい。 > 打ちのめされたモノが、再び立ち上がろうとするかのように。 朱琉:立ち上がろうとしても、自身にそれは叶わない。これが自らの『物語』ではなく、自分はイレギュラーと知っているから・・・・どこか物悲しい言葉に乗せて、他者に託すしかないのです。 > >>「実を結ばぬ花を、徒花と言う。儚く散りゆく花も、また徒花と呼ばれ、末遂げられぬ恋の例えとされている。季節はずれに咲く花も、また徒花と。『徒』とは、『はかない』『かりそめ』『無駄』という意味。 >> けれど・・・・本当に、徒花は無駄なものなのだろうか?本当に、儚いものなのだろうか?・・・・徒花の意味を、知らないだけなのではないだろうか? >> 末遂げられぬとはいえ、恋する人は幸せだろう?末を思って嘆くより、儚い今の幸せに酔いしれていたい。実を結ばぬ花だとて、心に何かを残してゆく。失われるものは何もない。全て、意味を残してゆく。意味を残さぬとすれば・・・・受け手が、意味を探らなかったとき。 >> ・・・・貴殿の行く末も、私は知りたく思うよ。」 >> そうして、ルートレスは一礼すると、消えた。 > >エイレン:・・・・・・・・・・・私に『何』かを成すことが、出来るのか? > 故郷を失い、友をも亡くし、寄る辺も無い私に。 ルートレス:徒花それ自身は、自身の意味など知らぬものだ。意味を決めるのは、常に自身ではなく他者。 貴殿の思うままに動くといい。意味は後からついてくるものだ。 私も既に故郷はなく、友と呼べるものもいない。唯一守りたいと思っていたものも、既に。しかし、私はここにいる。ならば、まだ、何かができるはずだ。だから、私は、今も存在し続けている。 > >ユア:エイレン嬢、なら、多分こう思っているだろうなと。 >久遠:私個人にある通り、『徒花であっても、咲いたからには、散るまで華々しく咲き誇りましょう。 朱琉:ルートレスさんなら、こう言い返すかと。 アミイ:ある意味、酷な言葉かもしれないけどね。 > >> >> >> * * * * * >> >> >> ルートレスは、願う。 >> >> この言葉が、徒花にならぬようにと、願う。 >> >> その心が折れないようにと、願う。 >> >> ただ示唆するしか出来ぬがゆえに・・・・願う。 >> >> >>「【『いつはりのなき世なりせばいかばかり人の言の葉うれしからまし』・・・・偽り多き世なれど、その心よ不変であれと・・・・我は切に願う。】」 >> そう結び、ルートレスは目を閉じる。 >> 『中枢予定表』を押さえ、封じるために。変革を目指すものたちの一助となるように。彼らへ・・・・期待と、願いをこめて。 >> 古典文学を愛する医者の卵であった時代を、懐かしく思い返しながら。 > > >ユア:・・・・・・・・・・・・・にゅあ(涙ながし) >久遠:ええと、『《破滅を呼ぶ占い師》ちゃんにも、通じるようなルートレスちゃんの刹なに切なすぎる願いと、かつての想いが、泣ける〜っ』 > そうね、諦めていても、諦めきれないことで足掻いているようにも思うわ。 朱琉:諦められれば楽でしょうけど、諦めきれないからこそ、その姿は切ないのです。 アミイ:生きていれば、そんなのの連続でしかないけれど・・・・だからこそ、『命』は > >> >> >> >> あとがき >> さて、改めまして、こんにちは、あけましておめでとうございます。今年も一年、よろしくお願いします。 >> さて・・・・今回はどうだったでしょうか?これから、いろいろな人を合流させるために、こういう少し意味のわからない(伏線満載の、とも言う)短編を幾つか書きますので、よろしくお付き合いください。 >> >> 今回、『不動の放浪者』ルートレスさんが唱えている呪文の中の和歌は、全て実際に残っている和歌から頂きました。なので、一応その作者と、正しい訳を明記しておきます。 >>・『白露に〜』 >> 作者:文屋朝康 >> 訳:草の葉に降りた白露に風がしきりに吹いている秋の野は、まるで緒に通して止めていない玉が散り乱れているようである。 >>・『雲はみな〜』 >> 作者:藤原義経 >> 訳:雲をすっかり吹き払ってしまった秋風の音だけが松の梢に残っている、その音を聞きながら澄んだ月を眺めることであるよ。 >>・『いつはりの〜』 >> 作者:よみ人しらず >> 訳:偽りのない世であったならばどんなにあなたのおことばがうれしいことでしょう。 >> >> 以上の訳は、『古語林 古典文学事典/名歌名句事典』を参照しました。 >> > > >ユア;・・・・・・(涙を拭うのに忙しい) >久遠:楽しく、切なく、読ませてもらったわ。 > ともあれ、また次回でね。 朱琉:はい、それでは、また。 二人:また次回! > > > >> |