◆−家族の写真 ACT74 五月十五日ー夜 U/ただ守りたい者 A ー−十叶 夕海 (2007/5/24 02:02:25) No.18104 ┣ものすごくお久しぶりです。(レスという名の近況報告)−羅城 朱琉 (2007/5/27 21:18:14) No.18109 ┃┗すいません、返レス遅れました。−十叶 夕海 (2007/6/8 00:48:18) No.18121 ┣家族の写真 ACT75 五月十五日ー夜 V/ただ一つ願うコトー−十叶 夕海 (2007/6/8 00:45:45) No.18120 ┃┗更衣室 朱琉の絶叫 こだまする (五七五調で)−羅城 朱琉 (2007/6/8 21:58:59) No.18122 ┃ ┗次回も次回で、絶叫かなと。−十叶 夕海 (2007/6/9 18:51:24) No.18124 ┣家族の写真 ACT76 五月十五日ー夜 W/ただ想い続けるコト ー−十叶 夕海 (2007/6/9 18:58:51) No.18125 ┃┗単純に私の文章力不足が原因かもしれない短縮レス−羅城 朱琉 (2007/6/9 21:43:12) No.18126 ┃ ┗収拾つくのかは私にも不明です。−十叶 夕海 (2007/6/15 21:17:21) No.18139 ┣家族の写真 ACT74 五月十五日ー夜 X/ただ後悔する事 ー−十叶 夕海 (2007/6/15 20:03:18) No.18138 ┃┗気になること多し。−羅城 朱琉 (2007/6/17 19:13:15) No.18144 ┃ ┗彼は、それなりに複雑な立場です。−十叶 夕海 (2007/6/21 22:49:57) No.18150 ┗家族の写真 ACT77 五月十五日ー夜 Y/ただ忘れる事はしない事 ー−十叶 夕海 (2007/6/24 20:03:49) No.18161
18104 | 家族の写真 ACT74 五月十五日ー夜 U/ただ守りたい者 A ー | 十叶 夕海 | 2007/5/24 02:02:25 |
「・・・・・・・ここ、どこ?」 「気がついたか。 ここは、私の家だよ、宵颯。」 宵颯が、意識を取り戻したのだった。 起き上がろうとする彼をディスティアは押しとどめ、寝かせる。 布団を首まで、掛け直し、額に手を当て体温を簡単に計る。 「ん・・・。 熱は無いから、感染症とかそう言う心配は無いかな。 明日、一応、薔薇姫さんか、不知火さんに、見てもらった方が良いか。 ライラは、もう向こうに帰ってるしな・・・・・・。」 薬湯をあわせながら、ディスティアはそう言う。 最後に、沈殿させる為に、盆の上に急須を静かに置く。 「・・・・・・・さて、何を聞きたい?」 「なんで、助けたの?」 「ガキを見捨てるほど、阿呆じゃない。 ・・・・・・・・それに、昔の、ホント昔の知り合いに似てたから。 死なせたくない、って思った。」 「・・・《氣殺》で、もうすぐ死ぬのに?」 「・・・・・・・・・・・その《氣殺》を編み出したのが、その知り合いだよ。 ・・・・・・・・・今どうしてんだろうね。 生きては、いるんだろうけど。」 ディスティアは、少し寂しげにそう言った。 自分のせいで、失った何世代を経ても、親友だったあの男のことを忘れるなどと言うことは無いのだろう。 恋人でもなく、ただの親友と呼べた異性だった。 遠い遠い《御伽噺》の中での友人。 その心は、今も、自己を終われずに、輪廻の輪を回り続けているのだろう。 「・・・・・・・・・・・好きだったの?」 「う〜と、好きだけど、恋人とかそう言うもんじゃか無かったね。 《幼なじみ》かな、一番近いのは。」 「お伽噺の? 八百年前のディスティアが庇った人?」 「・・・・・・・・・・何処で聞いたの?」 「榮太郎に聞いた。」 「そう。 うん、そうだね、《御伽噺》での幼なじみだ。」 「・・・・・痛いことは痛いって、言ってよ、ディスティア。 痛いのを我慢してるみたい。」 「・・・・・・・・・・・・そうかしら?」 「うん、誰かに甘えたいのに、出来てないって感じ。 ディスティアは、僕とか、他の皆の心配ばかりするけど、ディスティアは、誰かに寄りかかれてる?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・叶わないなぁ。 当たってるよ、それ。」 ディスティアは、泣きたいのを我慢するかのように、宵颯の言葉を肯定した。 それを振り払うかのように、急須の中の薬湯を杯に注ぎ、彼に起きるように、促す。 杯を渡し、ディスティアは、独り言のように言う。 「榮太郎は、貴方を私に預けると言ったわ。 どうする? 敵方だけれど、悪いようにはしないわ。 暮らしたければ、この家で過ごせば良い。 父さんには、道都でも誤摩化せる。」 「・・・・・・・・・・・・ディスティアの傍になら、いる。」 「わかった。 それを飲んだら、また寝なさい。 ・・・それとも、何か食べる?」 こくりと、頷いた宵颯に、ディスティアは、おにぎりとみそ汁、里芋とイカの煮物を盆に載せ、持って来た。 流石に、少し多めに持って来たのをぺろりと食べたのは、驚いたが。 それを食べ、寝入った彼を見届け、ルキウスを連れ、自分の部屋に引き上げた。 刹を万が一の為の、見張り役として、残して。 ・・・・・・《御伽噺》に、関わらせたくないというのも、含めて、彼を残して。 ディスティアの部屋ー。 寝間着の甚兵衛に着替えたディスティアは、まだあうあう言っている赤ん坊ルキウスと向き合う形で、抱き上げる。 「・・・・・・さて、《絶望を呼ぶ占い師》、《世界樹の翁》いるんでしょう?」 『お前が出たせいだぞ、絶望の』 『ん〜、でもぉ、《歌乙女》は気付いていたみたいだぞ?』 「確信したのは、今日、《絶望を呼ぶ占い師》を見てから。 でも、エイレンさん、《影の語り部》の性格からして、一年以内に確実にごたごたしそうなのに、手間のかかるもんを渡すことはほとんどない。」 ルキウスを暗示の応用で、眠らせた後、そう話しかけると。 それぞれ、甘く低い声と、ちょっとふざけたノリの男性声が、ルキウスの口から洩れる。 赤ん坊の口から、出るには、少し違和感のある声。 「・・・ルキの負担になるから、具現化しろ。 短時間なら、可能だろう?」 『了解ぃ。』 そういうと、二人は、ルキから離れた位置に、具現化する。 漆黒の占い師風の衣装とフード付きの濃い水色のボレロを着て、濃い紫色の髪は、ただ艶やかで、しなやかに真っ直ぐだった。長さは、床に着くほどに長かった。 、 瞳は、何処か泣きそうななアイオライトの淡いブルー。 白く細い指に、やんわりと握られるのは、銀色のキセルで、年の頃は、十代にも、四十代にも見えるそんな人物ー《絶望を呼ぶ占い師》イリヤ。 若葉色のおかっぱの髪といつもは穏やかそうな瞳で、焦げ茶のローブの上に、純白の貫頭衣とフード付きのマント姿の青年で、その顔は、《歌乙女》が60年以上前に、手をかけたレーヴェン=ディールに似ている人物ー《世界樹の翁》ユーグ。 そんな二人が具現した。 ディスティアは、それを認めると、ベビーベッドにルキウスを寝かせ、布団をかけてあげる。 再び、ベッドに腰掛け、二人を半ば睨むように、対峙した。 「・・・・・・・やっぱり、キツいね。 私じゃないとは言え、《歌乙女》が手をかけた相手の顔を見ると言うのは。」 『あれは、《御伽噺》上のことだ。 《泉の乙女》に、重荷を背負わせる形になったのは、不本意だったけれどね。』 『・・・・・んなのあったぁ?』 『お前は多分、《戦乙女》の方を見ていたのだろう?』 『そう、かもねぇ。』 「で、お前達が出て来たと言うことは、事態はかなり悪そうだな。」 放っておけば、何時までの続きそうだった為、ディスティアは止める。 そして、苦々しそうに、そう言った。 八百年前も、友人だったあの男のことを、頭に置きながら。 『想い出に出来ていないか、《歌乙女》。 もう、八百年になるだろう。』 「『まだ』八百年よ。 彼が、自分のせいだと思える状況で、《歌乙女》が、死んだのだから。」 『あれも、僕のせい,だもんねぇ。』 「・・・・・・・・・変えようとする心を忘れないのは、別に良いとは思う。」 『《歌乙女》に、そう言われるとぉ、ホントぉ立つ瀬ないねぇ。』 苦笑するように、キセルを一吸いする《絶望を呼ぶ占い師》 しばしの沈黙。 しばしの逡巡。 永遠に続けばと願う者もいたが、ディスティアが、声を出す。 「・・・・・・・ルキウスが、今代の《世界樹の翁》なわけね。」 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 二人は、揃って、沈黙する。 それが、言葉をろうするよりも、雄弁に肯定していた。 今日の会合の状況で、確信はしていた。 だが、こうも、肯定されるとまた別種の辛さがある。 「・・・・・・・・そっか。 ルキが、《世界樹の翁》か。 なら、《世界樹の翁》を殺害して、『強制終了』っていうのは、使えないと言うか、使いたくないわ。」 『昔から、身内にはぁ、甘いねぇ。』 「甘いと言うか、失って、心に穴をあけるよりも、マシだから。」 『・・・・・・いいのか、居ても。』 「いいよ。 お前が中にいるからと言って、ルキを放り出す訳にもいかない。 ・・・・・・・・・・・・・《世界樹の翁》として、起こすとかはお前の良心に任せる。」 『けせらせら、なるようになれ?』 『・・・・・・・・』 『なに、暗い顔してんのぉ、《世界樹の翁》?』 「・・・・・・・・幸せになっていいと思うよ? 《御伽噺》の《傍観者》たらねば、ならない立場でも、幸せを望むのは普通のことだ。」 実際この時、ディスティアは、薄く薄く、本当に薄く気付いていたのかもしれない。 ルキウスが、《世界樹の翁》として覚醒して。 この家を出て行くことを。 まだ、予知と言うにも、予感と言うにも、薄く薄く、淡い感覚だったので把握していなかったのだろう。 『・・・・・・・・ありがとう、《歌乙女》。』 「かまわない。 ・・・《絶望を呼ぶ占い師》もいるんだろう。」 『まぁね。 でも、色々と調べたいし、バレた以上は、ふらふらしているだろうけど。』 三人は、淡く淡く微笑みあう。 この暖かで過ごしやすい日々が少しでも続くように。 「ともあれ、おやすみなさい。」 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 色々と衝撃な一回でした。 数日中に、投稿される予定の番外編&予告で、更に、驚かれることでしょう。 それでも、ただ一つの結末の為です。 ・・・・・・・・・・・・・・・一ヶ月近く悩んでいた作者の台詞ではないですが。 ともあれ、番外編か、予告か、次回で。 |
18109 | ものすごくお久しぶりです。(レスという名の近況報告) | 羅城 朱琉 | 2007/5/27 21:18:14 |
記事番号18104へのコメント こんにちは。本気でお久しぶりです。羅城 朱琉です。 本日、ついに自分のパソにネットを接続しました!・・・・とはいえ、無線LANでつないだので、ブースターつけてない今はまだ不安定なのです。 さて、では本当に久しぶりのレスです。 これまでのを纏めて・・・・と思うと、言えるのは『なんて言うか怒涛の展開ですねぇ・・・・。』の一言に尽きるんですが。 特に、ルキウス君が、まさか・・・・まさか今代《世界樹の翁》だったとは・・・・ッ! こればっかりは、流石に全く予想していませんでした。 新生活が始まったばかりで(ちなみに、就職しました。車の免許も取りました。)続きもなかなか書けないですが、今後はこまめにレスできると思います。 今後とも、よろしくお願いします。 |
18121 | すいません、返レス遅れました。 | 十叶 夕海 | 2007/6/8 00:48:18 |
記事番号18109へのコメント > > こんにちは。本気でお久しぶりです。羅城 朱琉です。 > 本日、ついに自分のパソにネットを接続しました!・・・・とはいえ、無線LANでつないだので、ブースターつけてない今はまだ不安定なのです。 こんにちは、そうですね。 投稿自体も、それなりに、時間空きました。 > > さて、では本当に久しぶりのレスです。 > これまでのを纏めて・・・・と思うと、言えるのは『なんて言うか怒涛の展開ですねぇ・・・・。』の一言に尽きるんですが。 色んな意味で、今まで以上に、『夜編』は、怒濤の展開です。 前提条件を崩す事になるのですから。 > 特に、ルキウス君が、まさか・・・・まさか今代《世界樹の翁》だったとは・・・・ッ! > こればっかりは、流石に全く予想していませんでした。 意外性ナンバーワンと言う事なのです。 彼も、彼なりの選択をするでしょうし。 > > 新生活が始まったばかりで(ちなみに、就職しました。車の免許も取りました。)続きもなかなか書けないですが、今後はこまめにレスできると思います。 > 今後とも、よろしくお願いします。 はい、こちらこそ、よろしく御願いします。 では、また。 |
18120 | 家族の写真 ACT75 五月十五日ー夜 V/ただ一つ願うコトー | 十叶 夕海 | 2007/6/8 00:45:45 |
記事番号18104へのコメント 夜も更け十時半を過ぎた頃。 《L》・・・ラディハルト=レンスターのマンション。 叔父のガウェインが、この国に幾つか持っていたうちの一つだ。 一部屋は、サーバーで埋まっているが。 そこで、風呂上がりの、Tシャツにトランクスと言う格好で、台所に彼はいた。 夕飯にだろうか、フライパンの中で、キャベツと人参、モヤシ、豚バラが、美味しそうな匂いと音を立てながら、炒められている。 焼き肉のタレを回し入れられたそれは、更に、美味しそうな匂いと音を加速させる。 それを、大きな丼に盛られた白飯の上に、ざっとかける。更に、白ヒゲにして、水にさらしてあった細く縦に切られたネギをちょいとのせた。 ウーロン茶のペットボトルとロングショットのグラスに、氷を入れたモノを小脇に抱えて、パソコンの置いてある部屋に行く。 オンナを引っ掛けるときは、別のマンションを使うから、別に、何も気にしない。 食べながら、幾つかのアングラサイトを回る。 幾つかの掲示版で、今日の会合の事が話題になっていた。 ハッカー・クラッカー問わず、《C.C.》をあまりよく思っていないのは、ハッカー達にも、いるのだろう。 ただ、何人かは、組織に入っているのもいるようだろう。 「あ、エンヴィーはん、おるわ。 こん人は、《C.C.》の幹部やあたわな。」 裏稼業で仲の良いラビと反目し合っている《エンヴィー》を、ラディハルトは思う。 まだ、何も知らずに、叔父のガウェインに、引き合わされたずっと二十歳のままの青年。 「・・・・・・・・・終わりたいんか? カインはん、《片眼王》でも、アベルとしてでもなく、カインとして終わりたいん?」 同じ少女を取り合っている事も、敵対している事も知っている。 知っているが、ラディハルトにしてみれば、『カイン』として、死にたいからの行動にしか思えないのだ。 「・・・も、誰も死んで欲しゅうないんやけどな。」 食べ終わった器を、横にのけ、コードだけがついたバイザーをパソコンに繋ぎ、ログインの手続きをする。 いつも、使うアバター(電脳的分身外見)を選び、自身の意識をパソコンの中へと落とす。 「今日の会合、どうでしたか?」 「まぁまぁ、やな。 《D》、そっちはどないやった?」 「まともな、お客様が、千五百三十二人。 不届き者が、三十五組、百二十一人。 もちろん、不届き者には、PCクラッシュまで、しっかりv」 「おー、こわ。」 「くすくす、ここは、《白亜の図書館》であって、《情報庫》ではないですから。」 上品な印象に、白で統一された図書館の貸し出しカウンターを挟んで二人の人物がいた。 同じ外見パーツのアバターを使っている二人だが、対称的な雰囲気だ。 二人とも、男性らしい長身のアバターだが。 カウンターの内側から、迎えた方が、赤が混じるノイズ色の髪と瞳に、黒く長いローブから指をほんの少しだしていて、髪と同じ色のショール姿の穏やかな印象を持たせる青年だ。 焦げ茶の杖を持っている。 入って来たのは、濃い金髪と青い瞳、詰め襟の赤い服に白いローブを連想させるコート姿の青年だ。 日本刀を持っている。 二人が手に持っているのは、それぞれのアタックプログラムだ。 前者は、《D》=オラクル。 後者は、《L》=ガーディ。 インターネット・・・・・特に、アングラネット界で、《図書館》と言えば、二人がいる場所だ。 元々は、二年前に病死したガウェイン=レンスターが、それよりも更に昔に亡くなった相棒・キーラ=デミンとともに作ったモノだ。 登録された人とパソコンのみが入れる。図書館。 悪用すれば、アメリカですら、半日もあれば崩落する。 ある意味で、情報の墓場でもある場所だ。 「ま、そやわな。 ・・・・・あ、《風舞姫》には、言ってねぇからな。 お前の現実(リアル)のこと。」 「ありがとう、《L》。」 「確かに、姉さんが、知るのは、三年前の再来になりかねないもんね。」 「《ラビ》・・・・・ですか?」 「ん、そう。 久しぶり、《D》。」 また、一人、カウンターにやって来た。 彼は、膝を隠すほどの長いウィンドブレーカーを纏い、フードを被っている。 フードからわずかに覗く、髪は真白の雪色だ。 彼は、《魔導師(マジスタ)ラビ》とよばれる凄腕のクラッカーの運び屋だ。 師匠が、情報屋で、元々パソコンマニアのせいもあり、情報屋としても、超一流だ。 「なんか、本格的に動き出したって感じだね。」 「そうやな。 前ん時は、最終決戦に行くのに、半年ぐらいやったから、今回は11月ぐらいか。」 「・・・・・・・前のときは、《万象知悉》が殺されて瓦解したのでしたね?」 「そう。 今回も、そうなれば、《風舞姫》は精神崩壊だろうね。」 「確かになぁ、姫はん、あんまし強う無いもん。」 そこまで話すと、《L》と《ラビ》は、顔を見合わせ、溜め息二つ。 打ち合わせたかのように、次は、《D》の顔を向けた。 「な、なんですか?」 「・・・・・姉さんをよろしくね。 《D》、ううん、ユヴェルさん。」 「せやなぁ、リアルで、本気に寄っかかれるん、ユヴェルぐらいやもんな。」 「はい?」 「義兄さんに、なるなら、ユヴェルの方が良いってこと。」 「はいぃ?」 二人の言葉に、《D》はただ目を丸くするばかり。 その間に、三人の現実での名前を明かそう。 《D》・オラクルは、ユヴェル=ディティス。 《L》・ガーディは、ラディハルト=レンスター。 《魔導師・ラビ》は、アルト=ヴァリード。 そう、《D》は、ディスティアの友人であり、想い人でもあるユヴェルなのだ。 パソコンマニアで、《アンダーサーチアイ》という情報屋に取って喉空手が出るほど欲しいスキルを持っているが、一般人である。 「何故、そこで、《風舞姫》さん、ディスティアさんが出てくるのですか?」 「姫はんが、ユヴェルに、『L・O・V・Ev』なんは、火を見るより、明らかやろが。」 「・・・・・・自覚してないんだ。」 「自覚してないって、何を?」 「バレンタイン、ハロウィン、クリスマスに、プレゼントもろうとるやろ?」 「っていうか、ふだんから、普段からよく特製のお菓子貰ってるよね。」 「?」 《D》は、首を傾げ、はてなマークを頭の上に浮かべている。 本気に解っていないようだ。 そんなときだ。 けたたましいアラーム音が鳴る。 『ガーディ様、ラビさんもいるなら、とっと迎撃してください。 ミンティアが出ていますが、力量不足です。』 結局、《最強の守護者(パーフェクトガーディアン)》とも呼ばれる《L》と、クラッカーとして最高クラスの《ラビ》の手に掛かっては、無事で済むはずもなし。 侵入者は、パソコンごとクラッシュされた。 『すいません、マスタァ。』 「ええって。 ・・・・・・でも、珍しいわな、ミンティアが追いつめられるんわ。」 『・・・・・《C.C》のミスタァ・メフェストフェレスこと、《電脳空間の恋人》の関与の可能性があります。』 壊された図書館の塀・・・を模したガードプログラムを修復したミンティアが駆け寄って来た。 ミント色のふわふわの髪を肩まで伸ばし、白いワンピース姿の15歳ぐらいの少女型のA・Iプログラムだ。 「《エンヴィー》の差し金かな。」 「ラビ?」 「ん?どうったの?」 ミンティアと《L》の会話にはいるでもなく、そこにただいた《ラビ》は、そうとだけ呟いた。 彼の呟きに二人は彼に顔を向ける。 口元しか見えなかったが、その笑みは、何処か怖かった。 思わず、ミンティアが不安げな声を上げると、それにはなんでもないように返した。 「ラビ、ミンティア怯えてんで。 女の子は怖がらちゃ、あかんよ。」 「ごめん、ごめん,ミンティア。」 『気にしていません、ファザァ。』 「・・・・・ミンティア、それ、どうにかならない?」 『どうにもなりません、ファザァ。 ファザァは、ファザァです。』 ミンティアは、アルトに制作されたA・Iプログラムだ。 何処かの頭脳集団から流れて来た人格テンプレートを元にだ。 それ故の『ファザァ』・・・父親呼ばわりなのだろうけど、16歳で乳呼ばわりは色んな意味でアルトでも、心外なのだろう。 「ともかく、《C.C》を敵に回した言う事は、《電脳空間の恋人》をも、的に真輪知ったっちゅー事やな。」 「そーだね。 ・・・・・・あ、もう、二時だ。 明日も起きれないと、姉さん怒るからもう帰るね。 ミンティア、明日か明後日、メンテするから、マンションの方に来てね。」 「了解しました、ファザァ。」 アルトが、現実空間に戻ったのを確認すると、ラディハルトは、ミンティアに向き直った。 「さて、わいも、《D》も戻らなアカンけど。 其の前に、茶しばいてから、やな。」 『仮想空間では、意味ないです。 マスター・《L》。』 「こいのは、気分やて。」 それから、約一時間後。 ラディハルトは、現実空間に戻って来た。 コードを外してから、バイザーを次いで外す。 「・・・・・・・・にしても、アルトも、煮詰まっとんな。 ディスティアはんに、気取られんように、誤摩化しとる言うても、何時まで持つんやろ。」 アルトは、すでに、《妖鳳王》の記憶が、断片的ながら戻って来ている事を姉で、《歌乙女》に黙っているのだ。 そっちのほうが、良いと言うのも、ラディハルトの考えでもある。 しかし、アルトのため、というよりも、大好きな・・・・・・愛していると言った方が良い、ディスティアの心労を増やさない方が良いと言うのに近い。 いずれ、バレると言っても、今のタイミングだと、ディスティアが潰されかねないのを危惧しているのだ。 「それでいいん、《風舞姫》はん・・・・・・いいや、ディスティアはん?」 ラディハルトの呟きは、夜闇に解け消えた。 今日で、打倒《C.C》が動き出した。 ある意味で、総力戦になるだろう。 だから、一番大切なディスティアが心配なのだ。 「なるようにしかならへんのやろうけど。 ・・・・・・・・・ま、ええわ、寝よ。」 ちなみに、次の日、彼は、寝坊して、講義をサボる結果になった。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ この話は、他に、アルトと《L》サイドで、もう二度語られます。 そこで、また別の顔を見せる事になるのでしょう。 次回は、夜闇に生きる二人がメインです。 では、次回で会いましょう。 |
18122 | 更衣室 朱琉の絶叫 こだまする (五七五調で) | 羅城 朱琉 | 2007/6/8 21:58:59 |
記事番号18120へのコメント 朱琉:こんにちは。久々にまともなレスになります。 アミイ:言ってて情けなくない? 朱琉:・・・・実は、かなり。 アミイ:それ以前に、咳き込みながらパソ打つのもどうなのよ? 朱琉:心配無用です。声は大分戻りました。(←現在喉頭炎) アミイ:・・・・まあ、はやくレス行きなさいな。 > > > >夜も更け十時半を過ぎた頃。 > >《L》・・・ラディハルト=レンスターのマンション。 >叔父のガウェインが、この国に幾つか持っていたうちの一つだ。 >一部屋は、サーバーで埋まっているが。 >そこで、風呂上がりの、Tシャツにトランクスと言う格好で、台所に彼はいた。 >夕飯にだろうか、フライパンの中で、キャベツと人参、モヤシ、豚バラが、美味しそうな匂いと音を立てながら、炒められている。 >焼き肉のタレを回し入れられたそれは、更に、美味しそうな匂いと音を加速させる。 >それを、大きな丼に盛られた白飯の上に、ざっとかける。更に、白ヒゲにして、水にさらしてあった細く縦に切られたネギをちょいとのせた。 >ウーロン茶のペットボトルとロングショットのグラスに、氷を入れたモノを小脇に抱えて、パソコンの置いてある部屋に行く。 >オンナを引っ掛けるときは、別のマンションを使うから、別に、何も気にしない。 朱琉:料理できる男の人っていいですねぇ。 アミイ:そういう問題? 朱琉:気立てがよくて料理できて、な二枚目半。そりゃ女も引っかかりますよ。 >食べながら、幾つかのアングラサイトを回る。 >幾つかの掲示版で、今日の会合の事が話題になっていた。 >ハッカー・クラッカー問わず、《C.C.》をあまりよく思っていないのは、ハッカー達にも、いるのだろう。 >ただ、何人かは、組織に入っているのもいるようだろう。 >「あ、エンヴィーはん、おるわ。 > こん人は、《C.C.》の幹部やあたわな。」 >裏稼業で仲の良いラビと反目し合っている《エンヴィー》を、ラディハルトは思う。 >まだ、何も知らずに、叔父のガウェインに、引き合わされたずっと二十歳のままの青年。 >「・・・・・・・・・終わりたいんか? > カインはん、《片眼王》でも、アベルとしてでもなく、カインとして終わりたいん?」 >同じ少女を取り合っている事も、敵対している事も知っている。 >知っているが、ラディハルトにしてみれば、『カイン』として、死にたいからの行動にしか思えないのだ。 >「・・・も、誰も死んで欲しゅうないんやけどな。」 >食べ終わった器を、横にのけ、コードだけがついたバイザーをパソコンに繋ぎ、ログインの手続きをする。 >いつも、使うアバター(電脳的分身外見)を選び、自身の意識をパソコンの中へと落とす。 朱琉:何だか・・・・ラディの台詞を通してみると、カインって・・・・ アミイ:切ない? 朱琉:と、言うより、遣る瀬無い、ですかね。 ふっと思い出した、とある歌の一節があるんですが、「君がいない今、僕は独り 生命という檻の中」という。 私なりの、今現在の認識における、ゼノン・アベル・カインの関係がそんなかんじかなぁ、と。 > > > > > > >「今日の会合、どうでしたか?」 >「まぁまぁ、やな。 > 《D》、そっちはどないやった?」 >「まともな、お客様が、千五百三十二人。 > 不届き者が、三十五組、百二十一人。 > もちろん、不届き者には、PCクラッシュまで、しっかりv」 >「おー、こわ。」 >「くすくす、ここは、《白亜の図書館》であって、《情報庫》ではないですから。」 >上品な印象に、白で統一された図書館の貸し出しカウンターを挟んで二人の人物がいた。 >同じ外見パーツのアバターを使っている二人だが、対称的な雰囲気だ。 >二人とも、男性らしい長身のアバターだが。 >カウンターの内側から、迎えた方が、赤が混じるノイズ色の髪と瞳に、黒く長いローブから指をほんの少しだしていて、髪と同じ色のショール姿の穏やかな印象を持たせる青年だ。 >焦げ茶の杖を持っている。 >入って来たのは、濃い金髪と青い瞳、詰め襟の赤い服に白いローブを連想させるコート姿の青年だ。 >日本刀を持っている。 >二人が手に持っているのは、それぞれのアタックプログラムだ。 >前者は、《D》=オラクル。 >後者は、《L》=ガーディ。 >インターネット・・・・・特に、アングラネット界で、《図書館》と言えば、二人がいる場所だ。 >元々は、二年前に病死したガウェイン=レンスターが、それよりも更に昔に亡くなった相棒・キーラ=デミンとともに作ったモノだ。 >登録された人とパソコンのみが入れる。図書館。 >悪用すれば、アメリカですら、半日もあれば崩落する。 朱琉:おっそろしいですねぇ。 アミイ:以上、初めて読んだとき実際に朱琉が呟いた一言でした。 >ある意味で、情報の墓場でもある場所だ。 >「ま、そやわな。 > ・・・・・あ、《風舞姫》には、言ってねぇからな。 > お前の現実(リアル)のこと。」 >「ありがとう、《L》。」 >「確かに、姉さんが、知るのは、三年前の再来になりかねないもんね。」 >「《ラビ》・・・・・ですか?」 >「ん、そう。 > 久しぶり、《D》。」 >また、一人、カウンターにやって来た。 >彼は、膝を隠すほどの長いウィンドブレーカーを纏い、フードを被っている。 >フードからわずかに覗く、髪は真白の雪色だ。 >彼は、《魔導師(マジスタ)ラビ》とよばれる凄腕のクラッカーの運び屋だ。 >師匠が、情報屋で、元々パソコンマニアのせいもあり、情報屋としても、超一流だ。 >「なんか、本格的に動き出したって感じだね。」 >「そうやな。 > 前ん時は、最終決戦に行くのに、半年ぐらいやったから、今回は11月ぐらいか。」 >「・・・・・・・前のときは、《万象知悉》が殺されて瓦解したのでしたね?」 >「そう。 > 今回も、そうなれば、《風舞姫》は精神崩壊だろうね。」 >「確かになぁ、姫はん、あんまし強う無いもん。」 >そこまで話すと、《L》と《ラビ》は、顔を見合わせ、溜め息二つ。 >打ち合わせたかのように、次は、《D》の顔を向けた。 >「な、なんですか?」 >「・・・・・姉さんをよろしくね。 > 《D》、ううん、ユヴェルさん。」 >「せやなぁ、リアルで、本気に寄っかかれるん、ユヴェルぐらいやもんな。」 >「はい?」 >「義兄さんに、なるなら、ユヴェルの方が良いってこと。」 >「はいぃ?」 >二人の言葉に、《D》はただ目を丸くするばかり。 >その間に、三人の現実での名前を明かそう。 >《D》・オラクルは、ユヴェル=ディティス。 >《L》・ガーディは、ラディハルト=レンスター。 >《魔導師・ラビ》は、アルト=ヴァリード。 >そう、《D》は、ディスティアの友人であり、想い人でもあるユヴェルなのだ。 朱琉:ぬゅを!? アミイ:とまあ、実際にここで叫んだのよね。しかも、携帯で見てたから、叫んだの会社の更衣室の中。他に誰もいなくてよかったよかった。 朱琉:(口をぱくぱくさせて、画面を指差している) アミイ:ああ・・・・。《D》の正体予想の中に名前は挙がってたけど、カッコ大穴ってつけてたからね。驚いてるわけだ。 朱琉:(こくこく頷く) >パソコンマニアで、《アンダーサーチアイ》という情報屋に取って喉空手が出るほど欲しいスキルを持っているが、一般人である。 >「何故、そこで、《風舞姫》さん、ディスティアさんが出てくるのですか?」 >「姫はんが、ユヴェルに、『L・O・V・Ev』なんは、火を見るより、明らかやろが。」 >「・・・・・・自覚してないんだ。」 >「自覚してないって、何を?」 >「バレンタイン、ハロウィン、クリスマスに、プレゼントもろうとるやろ?」 >「っていうか、ふだんから、普段からよく特製のお菓子貰ってるよね。」 >「?」 >《D》は、首を傾げ、はてなマークを頭の上に浮かべている。 >本気に解っていないようだ。 >そんなときだ。 >けたたましいアラーム音が鳴る。 >『ガーディ様、ラビさんもいるなら、とっと迎撃してください。 > ミンティアが出ていますが、力量不足です。』 > > > > > > > > > > >それから、約一時間後。 >ラディハルトは、現実空間に戻って来た。 >コードを外してから、バイザーを次いで外す。 >「・・・・・・・・にしても、アルトも、煮詰まっとんな。 > ディスティアはんに、気取られんように、誤摩化しとる言うても、何時まで持つんやろ。」 >アルトは、すでに、《妖鳳王》の記憶が、断片的ながら戻って来ている事を姉で、《歌乙女》に黙っているのだ。 >そっちのほうが、良いと言うのも、ラディハルトの考えでもある。 >しかし、アルトのため、というよりも、大好きな・・・・・・愛していると言った方が良い、ディスティアの心労を増やさない方が良いと言うのに近い。 >いずれ、バレると言っても、今のタイミングだと、ディスティアが潰されかねないのを危惧しているのだ。 >「それでいいん、《風舞姫》はん・・・・・・いいや、ディスティアはん?」 >ラディハルトの呟きは、夜闇に解け消えた。 >今日で、打倒《C.C》が動き出した。 >ある意味で、総力戦になるだろう。 >だから、一番大切なディスティアが心配なのだ。 >「なるようにしかならへんのやろうけど。 > ・・・・・・・・・ま、ええわ、寝よ。」 > > > >ちなみに、次の日、彼は、寝坊して、講義をサボる結果になった。 > > > 朱琉:楽しく読ませていただきました。何だか、最近毎回驚いてる気がします。 アミイ:そういえば、そうね。前回も、今回も・・・・ 朱琉:何かもう、次に何が出てくるのかがとても楽しみです。 > > > > > >@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ > >この話は、他に、アルトと《L》サイドで、もう二度語られます。 >そこで、また別の顔を見せる事になるのでしょう。 > >次回は、夜闇に生きる二人がメインです。 >では、次回で会いましょう。 朱琉:はい、では、また。 時の旅人、今日当たり投稿予定でしたが、内容に一部不適切な部分が見つかったため、修正してから投稿します。 アミイ:なんで素直に流血表現に気合入れすぎて注意書きが必要になったから書き直す、って言えないの? 朱琉:・・・・それはそれで、恥ずかしいので。 では、また次回。 |
18124 | 次回も次回で、絶叫かなと。 | 十叶 夕海 | 2007/6/9 18:51:24 |
記事番号18122へのコメント > >朱琉:こんにちは。久々にまともなレスになります。 >アミイ:言ってて情けなくない? >朱琉:・・・・実は、かなり。 >アミイ:それ以前に、咳き込みながらパソ打つのもどうなのよ? >朱琉:心配無用です。声は大分戻りました。(←現在喉頭炎) >アミイ:・・・・まあ、はやくレス行きなさいな。 ユア:こんにちは。・・・・・そういえばそうですね。 久遠:こっちもこっちで、テンションが微妙なレスばかりだったし。 ユア:ともあれ、返レス行きます!! 久遠:・・・・・・・夕海ちゃん、無理に流れ変えようとしてない? ユア:気のせい!! > >> >> >> >>夜も更け十時半を過ぎた頃。 >> >>《L》・・・ラディハルト=レンスターのマンション。 >>叔父のガウェインが、この国に幾つか持っていたうちの一つだ。 >>一部屋は、サーバーで埋まっているが。 >>そこで、風呂上がりの、Tシャツにトランクスと言う格好で、台所に彼はいた。 >>夕飯にだろうか、フライパンの中で、キャベツと人参、モヤシ、豚バラが、美味しそうな匂いと音を立てながら、炒められている。 >>焼き肉のタレを回し入れられたそれは、更に、美味しそうな匂いと音を加速させる。 >>それを、大きな丼に盛られた白飯の上に、ざっとかける。更に、白ヒゲにして、水にさらしてあった細く縦に切られたネギをちょいとのせた。 >>ウーロン茶のペットボトルとロングショットのグラスに、氷を入れたモノを小脇に抱えて、パソコンの置いてある部屋に行く。 >>オンナを引っ掛けるときは、別のマンションを使うから、別に、何も気にしない。 >朱琉:料理できる男の人っていいですねぇ。 >アミイ:そういう問題? >朱琉:気立てがよくて料理できて、な二枚目半。そりゃ女も引っかかりますよ。 > ユア:ですよね、料理が出来る人は。 久遠:確かに、女の子ってそう言う人に弱いわよね。 ラディ君、大学生メンバーじゃ、それなりに、オトナな部分もあるし。 >>食べながら、幾つかのアングラサイトを回る。 >>幾つかの掲示版で、今日の会合の事が話題になっていた。 >>ハッカー・クラッカー問わず、《C.C.》をあまりよく思っていないのは、ハッカー達にも、いるのだろう。 >>ただ、何人かは、組織に入っているのもいるようだろう。 >>「あ、エンヴィーはん、おるわ。 >> こん人は、《C.C.》の幹部やあたわな。」 >>裏稼業で仲の良いラビと反目し合っている《エンヴィー》を、ラディハルトは思う。 >>まだ、何も知らずに、叔父のガウェインに、引き合わされたずっと二十歳のままの青年。 >>「・・・・・・・・・終わりたいんか? >> カインはん、《片眼王》でも、アベルとしてでもなく、カインとして終わりたいん?」 >>同じ少女を取り合っている事も、敵対している事も知っている。 >>知っているが、ラディハルトにしてみれば、『カイン』として、死にたいからの行動にしか思えないのだ。 >>「・・・も、誰も死んで欲しゅうないんやけどな。」 >>食べ終わった器を、横にのけ、コードだけがついたバイザーをパソコンに繋ぎ、ログインの手続きをする。 >>いつも、使うアバター(電脳的分身外見)を選び、自身の意識をパソコンの中へと落とす。 >朱琉:何だか・・・・ラディの台詞を通してみると、カインって・・・・ >アミイ:切ない? >朱琉:と、言うより、遣る瀬無い、ですかね。 > ふっと思い出した、とある歌の一節があるんですが、「君がいない今、僕は独り 生命という檻の中」という。 > 私なりの、今現在の認識における、ゼノン・アベル・カインの関係がそんなかんじかなぁ、と。 ユア:・・・・・・となると、エイレン嬢の悪役度上がりっ放し? 久遠:お願いだから、さわやかな笑顔で言わないで。 ユア:なんにせよね、今回の騒動の大本って、エイレン嬢が、アベルとセシルを殺した事が発端じゃないですか? 久遠:・・・・・そーね。 だけど、救いは作るんでしょ? ユア:もちろん。 > >> >> >> >> >> >> >>「今日の会合、どうでしたか?」 >>「まぁまぁ、やな。 >> 《D》、そっちはどないやった?」 >>「まともな、お客様が、千五百三十二人。 >> 不届き者が、三十五組、百二十一人。 >> もちろん、不届き者には、PCクラッシュまで、しっかりv」 >>「おー、こわ。」 >>「くすくす、ここは、《白亜の図書館》であって、《情報庫》ではないですから。」 >>上品な印象に、白で統一された図書館の貸し出しカウンターを挟んで二人の人物がいた。 >>同じ外見パーツのアバターを使っている二人だが、対称的な雰囲気だ。 >>二人とも、男性らしい長身のアバターだが。 >>カウンターの内側から、迎えた方が、赤が混じるノイズ色の髪と瞳に、黒く長いローブから指をほんの少しだしていて、髪と同じ色のショール姿の穏やかな印象を持たせる青年だ。 >>焦げ茶の杖を持っている。 >>入って来たのは、濃い金髪と青い瞳、詰め襟の赤い服に白いローブを連想させるコート姿の青年だ。 >>日本刀を持っている。 >>二人が手に持っているのは、それぞれのアタックプログラムだ。 >>前者は、《D》=オラクル。 >>後者は、《L》=ガーディ。 >>インターネット・・・・・特に、アングラネット界で、《図書館》と言えば、二人がいる場所だ。 >>元々は、二年前に病死したガウェイン=レンスターが、それよりも更に昔に亡くなった相棒・キーラ=デミンとともに作ったモノだ。 >>登録された人とパソコンのみが入れる。図書館。 >>悪用すれば、アメリカですら、半日もあれば崩落する。 >朱琉:おっそろしいですねぇ。 >アミイ:以上、初めて読んだとき実際に朱琉が呟いた一言でした。 ユア:現在の世界情勢で、アメリカを潰すなら、単純な戦力よりも、情報戦かなと。 久遠:・・・・・以上、ユアちゃんの恐ろしい思考よ。 ま、実際、情報が世界を制してるしね。 > >>ある意味で、情報の墓場でもある場所だ。 >>「ま、そやわな。 >> ・・・・・あ、《風舞姫》には、言ってねぇからな。 >> お前の現実(リアル)のこと。」 >>「ありがとう、《L》。」 >>「確かに、姉さんが、知るのは、三年前の再来になりかねないもんね。」 >>「《ラビ》・・・・・ですか?」 >>「ん、そう。 >> 久しぶり、《D》。」 >>また、一人、カウンターにやって来た。 >>彼は、膝を隠すほどの長いウィンドブレーカーを纏い、フードを被っている。 >>フードからわずかに覗く、髪は真白の雪色だ。 >>彼は、《魔導師(マジスタ)ラビ》とよばれる凄腕のクラッカーの運び屋だ。 >>師匠が、情報屋で、元々パソコンマニアのせいもあり、情報屋としても、超一流だ。 >>「なんか、本格的に動き出したって感じだね。」 >>「そうやな。 >> 前ん時は、最終決戦に行くのに、半年ぐらいやったから、今回は11月ぐらいか。」 >>「・・・・・・・前のときは、《万象知悉》が殺されて瓦解したのでしたね?」 >>「そう。 >> 今回も、そうなれば、《風舞姫》は精神崩壊だろうね。」 >>「確かになぁ、姫はん、あんまし強う無いもん。」 >>そこまで話すと、《L》と《ラビ》は、顔を見合わせ、溜め息二つ。 >>打ち合わせたかのように、次は、《D》の顔を向けた。 >>「な、なんですか?」 >>「・・・・・姉さんをよろしくね。 >> 《D》、ううん、ユヴェルさん。」 >>「せやなぁ、リアルで、本気に寄っかかれるん、ユヴェルぐらいやもんな。」 >>「はい?」 >>「義兄さんに、なるなら、ユヴェルの方が良いってこと。」 >>「はいぃ?」 >>二人の言葉に、《D》はただ目を丸くするばかり。 >>その間に、三人の現実での名前を明かそう。 >>《D》・オラクルは、ユヴェル=ディティス。 >>《L》・ガーディは、ラディハルト=レンスター。 >>《魔導師・ラビ》は、アルト=ヴァリード。 >>そう、《D》は、ディスティアの友人であり、想い人でもあるユヴェルなのだ。 >朱琉:ぬゅを!? >アミイ:とまあ、実際にここで叫んだのよね。しかも、携帯で見てたから、叫んだの会社の更衣室の中。他に誰もいなくてよかったよかった。 >朱琉:(口をぱくぱくさせて、画面を指差している) >アミイ:ああ・・・・。《D》の正体予想の中に名前は挙がってたけど、カッコ大穴ってつけてたからね。驚いてるわけだ。 >朱琉:(こくこく頷く) ユア:割合、早い段階。 久遠:《L》&《D》の名前が出た当たりで、彼にしようかなと決めてたのよね。 ユア:驚いていただけたようで、何よりです。 久遠:大穴中の大穴よね。 一般人らしい一般人だけど。 >> >> >> >>それから、約一時間後。 >>ラディハルトは、現実空間に戻って来た。 >>コードを外してから、バイザーを次いで外す。 >>「・・・・・・・・にしても、アルトも、煮詰まっとんな。 >> ディスティアはんに、気取られんように、誤摩化しとる言うても、何時まで持つんやろ。」 >>アルトは、すでに、《妖鳳王》の記憶が、断片的ながら戻って来ている事を姉で、《歌乙女》に黙っているのだ。 >>そっちのほうが、良いと言うのも、ラディハルトの考えでもある。 >>しかし、アルトのため、というよりも、大好きな・・・・・・愛していると言った方が良い、ディスティアの心労を増やさない方が良いと言うのに近い。 >>いずれ、バレると言っても、今のタイミングだと、ディスティアが潰されかねないのを危惧しているのだ。 >>「それでいいん、《風舞姫》はん・・・・・・いいや、ディスティアはん?」 >>ラディハルトの呟きは、夜闇に解け消えた。 >>今日で、打倒《C.C》が動き出した。 >>ある意味で、総力戦になるだろう。 >>だから、一番大切なディスティアが心配なのだ。 >>「なるようにしかならへんのやろうけど。 >> ・・・・・・・・・ま、ええわ、寝よ。」 >> >> >> >>ちなみに、次の日、彼は、寝坊して、講義をサボる結果になった。 >> >> >> >朱琉:楽しく読ませていただきました。何だか、最近毎回驚いてる気がします。 >アミイ:そういえば、そうね。前回も、今回も・・・・ >朱琉:何かもう、次に何が出てくるのかがとても楽しみです。 ユア:・・・・・・・・次回は、ディス嬢が、前回思い浮かべた人の登場ですねい。 久遠:ある意味で、夜編って、これまでのことをぶっ壊すのが、基本コプセントだっけ? ユア:ええと、まぁそうです。 夜編終われば、しばらく日常風味です。 > >> >> >> >> >> >>@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ >> >>この話は、他に、アルトと《L》サイドで、もう二度語られます。 >>そこで、また別の顔を見せる事になるのでしょう。 >> >>次回は、夜闇に生きる二人がメインです。 >>では、次回で会いましょう。 >朱琉:はい、では、また。 > 時の旅人、今日当たり投稿予定でしたが、内容に一部不適切な部分が見つかったため、修正してから投稿します。 >アミイ:なんで素直に流血表現に気合入れすぎて注意書きが必要になったから書き直す、って言えないの? >朱琉:・・・・それはそれで、恥ずかしいので。 > では、また次回。 ユア:そう言うときもあります。 久遠:ユアちゃんは、一言の台詞を入れるか入れないかで、迷うもんね。 ユア:否定しないです。 ともあれ、次回で。 > > |
18125 | 家族の写真 ACT76 五月十五日ー夜 W/ただ想い続けるコト ー | 十叶 夕海 | 2007/6/9 18:58:51 |
記事番号18104へのコメント 「終わったね。」 「・・・・・・いや、始まりだろう。 それにしても、色々と動き出すだろうね。 ・・・・・・面倒な体質を押し付けて悪い。」 「この体質が、そうだと思ったことは無いよ。 ・・・・・・・・・二人で、夜の果てに朽ち果てるのも、悪くないしね。」 夜も更け、日付がもう少しで、変わると言う頃。 東京二十三区の中でも、特に治安の悪い新宿のとあるビルの三階部分。 その部屋の奥まった部分のソファセットとオーディオのみが置かれた部屋。 低くクラシックが奏でられる中、少女と青年が向かい合い、座っていた。 黒く短い髪に、彫りの深めの顔、そして、黒い牧師服なのは、乾詠太郎。 銀の長い髪に、人形のような無表情、淡い翠の色合いのワーンピース姿のジュリ=ローゼンマリア。 「・・・・・・・・私と守護する龍、世界樹の翁、絶望を呼ぶ占い師、後は、義弟か。 私と守護する龍が、全てが結末した後、夜を見守る語り部になること。」 「ジュリさんは、元々だし。 僕は、家族がほとんどいないしね、問題は無いよ。」 「でも、まぁ、オリジナルの《泉の乙女》と《守護する龍》は、何を考えていたんだろう。 別人になってしまうのに、なんで、一緒に過ごしたいと呪いをかけたいんだろうね、ほんと。」 「素敵だと思うけど? 誰かと、終わりまで一緒に居たいって言うのは。」 つらつらと、意味も無く、ただ確認するように、乾とジュリは言葉を交わす。 そこに、まだ若いというよりは、幼いと言った方が良さそうな声が割り込んでくる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・主様(ぬしさま)、狩り行かないの?」 「今日は行かない。 一応、血液パックで事足りるし。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも、そこの人間邪魔。」 「・・・・・・あのね、かなり嫌っているようだけど、わけもいわれないで、そうされると流石に、頭にくるんだけど?」 「・・・特務エクソシストだろうと、僕を殺せるの、人間が?」 「止めとけ、シュライル、乾。」 その声の主は、銀に錆びた銅色を混ぜた髪を肩口で適当揃え、暗い真紅に金が混じった縦の瞳孔の瞳、褐色の肌、それよりも暗い闇色の七分丈ボディースーツの上にハーフ丈のジーパンの上下を着ている。 そこまでなら、普通だったけれど、銀銅色の髪には、黄色のと黒の縞々の耳が、腰には、同じ配色のシッポが揺れている。 「さぁ?やってみないと解らないと思うけど?」 「・・・ふん、人間如きが、人虎と吸血鬼のハーフに勝てるの?」 「正確には、人虎とダンピールとのハーフだろうが。 ・・・・ともかく、やめとけ、シュライル、乾。」 「それでも、強力は強力だろうけどね。 ・・・・・・・・でもね、シュロ君。 人間は、人外に腕力魔力ともに叶わないけれどね。 それを技術でフォローするのが、人なんだよ?」 そんな会話を交わしつつ、乾は、ペティナイフを構えた。 シュライルも、爪をだし臨戦態勢だ。 場の雰囲気が、張りつめ、はじけるその寸前。 「・・・・・やめとけと、言ったのが聞こえないほど、耳が悪いのか?」 疲れたような声と面倒そうな所作で、二人の頭を掴み、それぞれの額をかち合わせる。 後に、乾は語る。 『星が見えた』と。それくらいの衝撃だったのだ。 ただ、その時は、乾は言葉なく、シュライルは『みゅ〜、みゅ〜』泣きながら、頭を抱えていた。 「なにを・・・・・・」 涙目で、乾は、ジュリに何かを訊ねかけたが、彼女の無言の微笑みで、先を続けられなかった。 シュライルは、『主様、酷い!!』とでもいうように、ジトーっとジュリを見たまま、声無く泣いていた。 「シュロ、茶を入れて来てくれない? ・・・・・・・そうだね、アーモンド&クリームティとロイヤルミルクティがいいな。 ああと、二人分づつお願い」 「了解。 おいしく入れてくるね。」 「気をつけて。」 シュロに聞かせたくなかったのか、用を言いつけて、この部屋から出て行かせる。 ジュリは改めて、乾に向き直った。 「・・・・・・・・あと、やっぱり、《歌乙女》は、《賢き愚者》が生きていることを知らなかったね。」 「だね。 八百年前の時に、《歌乙女》が自分を庇って死んだショックで行方不明になったきりと言うことになってるね。 ・・・・・・・・で、どうする、《賢き愚者》?」 「・・・・え?」 ジュリが、何でも無いように、乾がここにいないと思っていた人物に、言葉を促す。 それと同時に、オーディオセットの横に、一人の人物が現れた。 スノウブロンドの髪を腰まで伸ばしたのをゆるく三つ編みにし、意志の強さを映す瞳は、紫味を帯びた青で、背筋がピンと伸び、野性味と知性が同居している中性的な容貌だ。 服は、ハイネックで、肩で止める何処かの民族衣装のような淡い翠の長衣と黒いスラックス。 笑顔であるのに、ココロを決して和ませることが無い、そんな冷たさを持った表情だ。 「・・・ジュリ先輩には、気付かれてしまいますか。」 「同族で、《お伽噺》では、義兄弟だ。 気付かない方がどうかしているよ、」 「何時からいたの?」 「・・・・う〜んと、『終わったね』『いや始まりだろう〜』とかから?」 「ほとんど、最初からだろ、それ?」 「そうとも言いますね。 《守護する龍》、カリカリする男は嫌われますよ?」 挑発するような《賢き愚者》の言葉に、何かを言いかけた乾。 しかし、ジュリに制され、ぐっと黙る形となった。 そして、沈黙が落ちる。 最初に口を開いたのは、ジュリだった。 普段は、決してとは言わないが、少なくとも、味方や中立にはほとんど向けないような皮肉めいた微笑みを浮かべながら。 「《賢き愚者》、お前はどうする? 今回で、ある意味での終止符が打たれる。 総力戦になるだろう、人間としても、《御伽噺》としても。 お前は、どうする?」 「私? 解っているでしょうに、意地が悪い。 ・・・・・・ただ、想い人《歌乙女》が、幸せになるように動くだけです。 それが、《歌乙女》を裏切ることになっても、そういう風に動く。 私が、私に架した運命です。」 「・・・・・・邪魔をするなら、義兄弟の私でも、滅ぼす?」 「ええ、先輩を殺すことに、何のためらいも無いですよ。 《守護する龍》は、尚更、ためらいはありません。」 「・・・・・ディスティアさんが、嘆いて、止めようとしても?」 「・・・今代の《歌乙女》ですか? 何を今更?」 ふふ、と《賢き愚者》は、笑う。 彼に、狂ったようなところなど、見えない。 むしろ、一途に恋をする青年と言った風情だ。 どこまでも、冷静に、熱情に惑わされず、淡々と、《歌乙女》を、《御伽噺》では、双子の姉だった《歌乙女》を思うのだろう。 無知だったが故に、生まれ『終末を迎えた』悲喜劇。 せめて、《賢き愚者》が、彼女を双子の姉だと知らなければ。 ・・・・・・少しは、幸せに『終末を迎えれた』のだろうか? 「私は、其の為に、《御伽噺》の《神々の黄昏》を糸引いたのですよ。」 「そうか、そうだったな。 今更、それは愚問だな、お前に取って。」 「でも、僕らは、君とも、《影の語り部》とも、違う方法で、ピリオドを討つよ。」 「・・・できますか?。 特に、《影の語り部》様の役目は、『終止符を打つ』じゃなくて、『運命の輪を廻す』に特化しているのですよ ・・・・・・《世界樹の翁》を殺されれば、《御伽噺》は廻り、巡りますよ?」 「なんだよねぇ。 あの女が・・・・・・先代の《戦乙女》と《片眼王》を殺した以上。 赤ん坊を殺すのにでも、躊躇するはずが無いもんね。」 「そういうことですね。 ・・・・・・・・・ところで、ケン・グローワーズは、元気ですか?」 「・・・・13年前に、吸血鬼に殺されたよ。 奥さん関連のごたごたでね。」 「短い・・・・・・・・・・・・・だから、人は好かないのですよ。 いつも、気まぐれに関わって、突然いなくなってしまう。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて、おいとましましょう。」 「・・・・・・《賢き愚者》、やはり、お前は狂っているよ。」 「狂気の定義など、人次第でしょう?」 「それでも、お前は狂っているよ。 お前が愛した《歌乙女》は、厳密にはもういないんだぞ?」 「・・・・・・・・・・どうにせよ、ごきげんよう、《泉の乙女》《守護する龍》。」 つらつらと、ある意味、空恐ろしい事を三人は言葉をとして交わす。 そして、唐突とも言えるタイミングで、《賢き愚者》は、空間を歪ませ、そこからどこへともなく渡り消えた。 最後の、彼からの質問は、何故か、彼にしては、珍しく《歌乙女》以外に、対する言葉だった。 彼がいなくなったタイミングを計った訳ではないだろうが、シュロが入って来た。 がちゃがちゃと、茶器が音を立てる。 「主様。遅くなりました。」 「ありがと、シュロ。 お前はもう休みな、明日からまた忙しくなる。 今日はゆっくり寝ると良いよ。」 「・・・・・・・・・・・はぁい、姉様の事よろしくですよ。」 「わかっているよ。 それじゃ、おやすみ、シュロ。」 シュロが行った後、しばらくは無言でお茶が消費される。 そして、乾が、時間を確認したら、もう、始発が出る時間になっていた。 「あっと、ジュリさん。 出社する前に、一回アパート戻りたいから、もう帰るね。」 「もうそんな時間か。 明日から、蛇公爵夫人の取材だったか。」 「うん、気に入られたしね。 ・・・・・ともあれ・・・ね。」 「ええ。」 『我らは、何人たりにも縛られず、ただ自らの意思と願いの赴くままに。 そして、ただ自らが正しいと信じるままに、力行使せん。』 さようならとしては、異様な言葉だが、二人は、同時にそう言った。 それは、誓いであり祈りのような言葉でもあった。 ・・・・・・・ちょっと、哀しさが伝わるモノであったけれど。 「なんにせよ、終わった、終わらされた恋に執着しても、実は成らないんだよ。 ・・・・・・・・解らない訳じゃないだろうに。」 誰もいなくなった其の部屋に、ジュリの呟きは、冷たく冷たく解け消えた。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ というわけで、今回は、《賢き愚者》の登場です。 それがメインと言う訳ではないですが。 彼の信念は、或る意味、ファルトに近いもんがありますが。 ・・・・・・でも、違います。 ファルトは、ライラを必ず手に入れたいと思う事。 彼は、《歌乙女》を必ず幸せにしたいと思う事。 それが、シンプルにして最大のねがいなんです。 ともあれ、次回。 夜編3のバージョンアルトです。 お楽しみに。 |
18126 | 単純に私の文章力不足が原因かもしれない短縮レス | 羅城 朱琉 | 2007/6/9 21:43:12 |
記事番号18125へのコメント こんにちは、羅城 朱琉です。 今回短縮レスなんですが・・・・理由は、『時間が無い』からではなく、感想が一言に尽きてしまうためです。普通に書くと、ぐだぐだになってしまいそうなので。 実際、「壮大だなぁ・・・・。」の一言に尽きるんですよね。最も、今回の感想というよりは、今回までの感想、と言ったほうが正しいんですが。 いえ、つい先日、思い立って人物相関図を書いてみたら・・・・これがもう広がる広がる。驚きです。 今後も楽しみに読まさせて頂きます。 では、本当に短いですが、この辺で。 |
18139 | 収拾つくのかは私にも不明です。 | 十叶 夕海 | 2007/6/15 21:17:21 |
記事番号18126へのコメント > > こんにちは、羅城 朱琉です。 > 今回短縮レスなんですが・・・・理由は、『時間が無い』からではなく、感想が一言に尽きてしまうためです。普通に書くと、ぐだぐだになってしまいそうなので。 こんばんは、夕海です。 ・・・・・・・・・(真っ赤) > > 実際、「壮大だなぁ・・・・。」の一言に尽きるんですよね。最も、今回の感想というよりは、今回までの感想、と言ったほうが正しいんですが。 > いえ、つい先日、思い立って人物相関図を書いてみたら・・・・これがもう広がる広がる。驚きです。 ユア:・・・・・・・・・(真っ赤なまま硬直中 久遠:壮大って言われて、真っ赤になってるわね。 ユア:・・・・・人物相関・・・・・・・・書いたコトないですよ。 誰をメインにするかでも、変わりますしね〜。 > > 今後も楽しみに読まさせて頂きます。 > では、本当に短いですが、この辺で。 > はい、ありがとうございました。 これからもよろしくです。 |
18138 | 家族の写真 ACT74 五月十五日ー夜 X/ただ後悔する事 ー | 十叶 夕海 | 2007/6/15 20:03:18 |
記事番号18104へのコメント 日付が変わる少し前。 《魔導師(マジスタ)ラビ》―アルト=ヴァリード。 午後十一時も過ぎ、兄や姉達は、もう自室だろう。 姉のディスティアは、一階の客室にいるのかもしれないが。 そんなころ、台所で、アルトは、夜食を調達していた。 ハムチーズトーストを一口サイズに、切ったモノや、冷蔵庫に常備されている卵ディップとスティックタイプの乾パン。 コーラのペットボトルと氷入りのグラスを抱えて、自室に引っ込む。 パソコンデスクとしても使っている机のサイドテーブルに纏めておく。 ・・・・・・断っておくが、夕食を一人前以上、きっちりお腹に収めた上での夜食なのだ。 片手で摘みながら、幾つかのアングラサイトを回る。 幾つかの掲示版で、今日の会合の事が話題になっていた。 ハッカー・クラッカー問わず、《C.C.》をあまりよく思っていないのは、ハッカー達にも、いるのだろう。 それでも、こういう中にも、スパイ的に組織にいるハッカーの連中もいるのだろう。 「げ、《エンヴィー》もいやがる。 ・・・・・・・・・・ったく、この人も、至高と歌われたなら、もう少し疑って欲しいもんだよ。」 アルトは、そう、一人ごちた。 おそらくは、《賢き愚者》と《影の語り部》などの、中立者以外では自分しか知りえない事を。 自分とて、全てを想い出した訳じゃない。 だが、《歌乙女》も、知り得ていないことを知っている。 「・・・・・終わらせてあげたいよ。 《片眼王》を一度は、慕った身としてはさ。 意味のない、自分に取って意味の無い生こそ、倦むべきモノだってコトは僕も知っているから。」 最後のチーズトーストを口にほおり込み、ゴテゴテと頭の上半分を覆うバイザーのコードをパソコンに繋ぎ、ログインの手続きをする。 いつものアバター(電脳的分身外見)を選び、電脳空間に意識を落とす。 何やかにや言って、この瞬間が、春の微睡みのようで好きなのである、アルトは。 いつも通り、腕輪型に細工した認証コードを白亜の図書館の門に通し、中に入る。 吹き抜けのロビーを抜け、書架を通り、最奥のカウンターに彼はついた。 ほぼいつも通り、赤いノイズの髪と瞳の柔和な青年と金髪碧眼の男臭い青年がいた。 アルトはつくづく思う。 髪と瞳の色と服装以外一緒のデザインのアバターを使っているはずなのだ。 どうして、こんなに印象が違うのか。 「確かに、姉さんが、知るのは、三年前の再来になりかねないもんね。」 「《ラビ》・・・・・ですか?」 「ん、そう。 久しぶり、《D》。」 「なんか、本格的に動き出したって感じだね。」 「そうやな。 前ん時は、最終決戦に行くのに、半年ぐらいやったから、今回は11月ぐらいか。」 「・・・・・・・前のときは、《万象知悉》が殺されて瓦解したのでしたね?」 「そう。 今回も、そうなれば、《風舞姫》は精神崩壊だろうね。」 あの時の姉さんは、母さん達の手前、必死に隠してたけど。 医療用の栄養剤以外口に出来ていなかった。 決して、ディスティアは、強くはない。 強くあらねばならなかったから、強いだけなのだ。 「確かになぁ、姫はん、あんまし強う無いもん。」 会話が途切れた時に、《L》と《ラビ》は、顔を見合わせ、溜め息二つ。 そろって、《D》の方を見る。 「な、なんですか?」 「・・・・・姉さんをよろしくね。 《D》、ううん、ユヴェルさん。」 「せやなぁ、リアルで、本気に寄っかかれるん、ユヴェルぐらいやもんな。」 「はい?」 「義兄さんに、なるなら、ユヴェルの方が良いってこと。」 「はいぃ?」 (少なくとも、《エータミレアム》が、義兄さんになるよりは良いもんね) 二人の言葉に、《D》はただ目を丸くしていた。。 その間に、彼の現実での名前を明かそう。 《D》・オラクルは、ユヴェル=ディティス。 そう、《D》は、姉の友人であり、想い人でもあるユヴェルなのだ。 パソコンマニアで、《アンダーサーチアイ》という、アルトですら、欲しい能力だ。 自分は、クラッカー系の能力に関しては、感と経験しかない。 正直言って、重力を操る能力よりも、そっち系の能力が、欲しいと思う。 ともあれ、今は、気付かせないと。 「何故、そこで、《風舞姫》さん、ディスティアさんが出てくるのですか?」 「姫はんが、ユヴェルに、『L・O・V・Ev』なんは、火を見るより、明らかやろが。」 「・・・・・・自覚してないんだ。」 「自覚してないって、何を?」 「バレンタイン、ハロウィン、クリスマスに、プレゼントもろうとるやろ?」 「っていうか、ふだんから、普段からよく特製のお菓子貰ってるよね。」 「?」 《D》は、首を傾げ、はてなマークを頭の上に浮かべている。 本気に解っていないようだ。 鈍いとか、そう言う問題じゃないよ、この人のは。 そんなときだ。 けたたましいアラーム音が鳴る。 『ガーディ様、ラビさんもいるなら、とっと迎撃してください。 ミンティアが出ていますが、力量不足です。』 クラッカーね。 運良く手に入れば、それなりに、価値があるもんねぇ。 結局、《最強の守護者(パーフェクトガーディアン)》とも呼ばれる《L》と、クラッカーとして最高クラスの《ラビ》の手に掛かっては、無事で済むはずもなし。 侵入者は、パソコンごとクラッシュされた。 それに、運が悪かった。 アルトは機嫌が悪かったのだから。 『すいません、マスタァ。』 「ええって。 ・・・・・・でも、珍しいわな、ミンティアが追いつめられるんわ。」 『・・・・・《C.C》のミスタァ・メフェストフェレスこと、《電脳空間の恋人》の関与の可能性があります。』 ラディとミンティアが、会話している。 ミント色のふわふわの髪を肩まで伸ばし、白いワンピース姿の15歳ぐらいの少女型のA・Iプログラムだ。 アルトが作ったプログラムだ。 ただ、彼が、12歳の頃にネットで出会った少女・・・・女性と言った方が良い年齢だった・・・・・・・がモデルなのは、誰も知らない。 「《エンヴィー》の差し金かな。」 「ラビ?」 「ん?どうったの?」 ただ、彼は呟いた。 至極当たり前のように。ある種の予感のように。 其の呟きに、バネ仕掛けのように、二人はアルトに、向いた。 どこか、見ては行けないモノを見たような表情だ。 特に、ミンティアは、怯えてすらいるようだ。 (・・・・・・・・この子は、リーチェじゃないのに) 思わず、ミンティアが不安げな声を上げると、それにはなんでもないように返した。 それでも、怯えさせるのも、嫌だった。 「ラビ、ミンティア怯えてんで。 女の子は怖がらちゃ、あかんよ。」 「ごめん、ごめん,ミンティア。」 『気にしていません、ファザァ。』 「・・・・・ミンティア、それ、どうにかならない?」 『どうにもなりません、ファザァ。 ファザァは、ファザァです。』 ミンティアを作ったのは、アルトだ。 リーチェの居た頭脳集団から流れて来た人格テンプレートを元にだ。 それ故の『ファザァ』・・・父親呼ばわりなんだろうけど、そう呼ばれたくはない。 少なくとも、リーチェにそう呼ばれているようで、気分はよく無いのだ。 「ともかく、《C.C》を敵に回した言う事は、《電脳空間の恋人》をも、敵に回したっちゅー事やな。」 「そーだね。 ・・・・・・あ、もう、二時だ。 明日も起きれないと、姉さん怒るからもう帰るね。 ミンティア、明日か明後日、メンテするから、マンションの方に来てね。」 「了解しました、ファザァ。」 アルトが、現実空間に戻る。 自分で、そうしたとは言え、ミンティアと一緒にいるとリーチェに、『なんで、助けてくれなかったのさ?』とでも、攻められているようで、あんまり一緒に居たくないのだ。 「今はさ、アリエスさんの事が好き。 でも、リーチェへの感情がそういう好きだったかは解らない。」 戻って来て、バイザーをやや乱暴に外すと、そう呟く。 少なくとも、『愛してる』に通じる『好き』ではなかったとは思うけど、でも、今の自分を作っている事には違いない。 たぶん、今生きている中で、知っているのは、ラディハルトとあの喫茶店のイルミナぐらいだろう。 「リーチェは死んではいないけど、話せないだろうけど。」 ベアトリーチェ。 ミンティアと同じ外見だった約十年前は、幸せいっぱいで。 でも、泥水を啜るような生活に堕ちて、最後は使い潰された少女。 実際は、最後に会ったときでも、二十歳ぐらいだった。 「でも、今はアリエスさんが、好きだよ。 一緒にずっといたい。 ・・・・・・この感情が、《妖鳳王》が《戦乙女》に対するのでも良い。 アリエスさんが好き、それが俺の真実なんだろうね、きっとさ。」 リーチェの事は、忘れちゃいないし、忘れられないけど。 今は、アリエスさんの事が好きだ。 だから、その想いを護りたいんだと思う。 そんな想いを持てるように育ててくれた家族も失いたくない。 「だから、ディス姉ぇ、壊れないでね。」 そう呟いた声は、誰の耳にも・・・呟いた本人の耳にも届かなかった。 そんな微かな祈りのような言葉が、完全に空気に消えたのとほぼ同時に、アルトは、ベッドに潜り込んだ。 少しは、よく眠れるかもしれないと思いつつ。 しかし、いつも通り、寝坊したのは追記しておく。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 夜編3のサイド:アルトです。 色々と解ってますねぇ。 ということで、と言う訳ではないですが、アルトの外伝を夜編が終了後、インターバルとして、投稿予定です。 そこで、『リーチェ』の事も解ってきますでしょう。 ともあれ、また次回で。 恐らく、短編番外で。 |
18144 | 気になること多し。 | 羅城 朱琉 | 2007/6/17 19:13:15 |
記事番号18138へのコメント 朱琉:こんにちは、羅城 朱琉です。夜勤週が終わったら・・・・何か、痩せてました。 アミイ:それ、『やつれた』って言うんじゃないの? 朱琉:・・・・・・・・(汗) さて、ではレス参ります! アミイ:ごまかしたわね・・・・。 > > >日付が変わる少し前。 > >《魔導師(マジスタ)ラビ》―アルト=ヴァリード。 >午後十一時も過ぎ、兄や姉達は、もう自室だろう。 >姉のディスティアは、一階の客室にいるのかもしれないが。 >そんなころ、台所で、アルトは、夜食を調達していた。 >ハムチーズトーストを一口サイズに、切ったモノや、冷蔵庫に常備されている卵ディップとスティックタイプの乾パン。 >コーラのペットボトルと氷入りのグラスを抱えて、自室に引っ込む。 >パソコンデスクとしても使っている机のサイドテーブルに纏めておく。 >・・・・・・断っておくが、夕食を一人前以上、きっちりお腹に収めた上での夜食なのだ。 >片手で摘みながら、幾つかのアングラサイトを回る。 >幾つかの掲示版で、今日の会合の事が話題になっていた。 >ハッカー・クラッカー問わず、《C.C.》をあまりよく思っていないのは、ハッカー達にも、いるのだろう。 >それでも、こういう中にも、スパイ的に組織にいるハッカーの連中もいるのだろう。 >「げ、《エンヴィー》もいやがる。 > ・・・・・・・・・・ったく、この人も、至高と歌われたなら、もう少し疑って欲しいもんだよ。」 >アルトは、そう、一人ごちた。 >おそらくは、《賢き愚者》と《影の語り部》などの、中立者以外では自分しか知りえない事を。 >自分とて、全てを想い出した訳じゃない。 >だが、《歌乙女》も、知り得ていないことを知っている。 >「・・・・・終わらせてあげたいよ。 > 《片眼王》を一度は、慕った身としてはさ。 > 意味のない、自分に取って意味の無い生こそ、倦むべきモノだってコトは僕も知っているから。」 >最後のチーズトーストを口にほおり込み、ゴテゴテと頭の上半分を覆うバイザーのコードをパソコンに繋ぎ、ログインの手続きをする。 >いつものアバター(電脳的分身外見)を選び、電脳空間に意識を落とす。 >何やかにや言って、この瞬間が、春の微睡みのようで好きなのである、アルトは。 朱琉:やっぱり・・・・アルト君はいろいろ知ってるみたいですねぇ・・・・。 アミイ:思い出したことのみ、なのか、そこに推論情報いろいろ混じってるのかはわからないけど・・・・きになるわ。 > > > > > > >いつも通り、腕輪型に細工した認証コードを白亜の図書館の門に通し、中に入る。 >吹き抜けのロビーを抜け、書架を通り、最奥のカウンターに彼はついた。 >ほぼいつも通り、赤いノイズの髪と瞳の柔和な青年と金髪碧眼の男臭い青年がいた。 >アルトはつくづく思う。 >髪と瞳の色と服装以外一緒のデザインのアバターを使っているはずなのだ。 >どうして、こんなに印象が違うのか。 >「確かに、姉さんが、知るのは、三年前の再来になりかねないもんね。」 >「《ラビ》・・・・・ですか?」 >「ん、そう。 > 久しぶり、《D》。」 >「なんか、本格的に動き出したって感じだね。」 >「そうやな。 > 前ん時は、最終決戦に行くのに、半年ぐらいやったから、今回は11月ぐらいか。」 >「・・・・・・・前のときは、《万象知悉》が殺されて瓦解したのでしたね?」 >「そう。 > 今回も、そうなれば、《風舞姫》は精神崩壊だろうね。」 >あの時の姉さんは、母さん達の手前、必死に隠してたけど。 >医療用の栄養剤以外口に出来ていなかった。 >決して、ディスティアは、強くはない。 >強くあらねばならなかったから、強いだけなのだ。 >「確かになぁ、姫はん、あんまし強う無いもん。」 >会話が途切れた時に、《L》と《ラビ》は、顔を見合わせ、溜め息二つ。 >そろって、《D》の方を見る。 >「な、なんですか?」 >「・・・・・姉さんをよろしくね。 > 《D》、ううん、ユヴェルさん。」 >「せやなぁ、リアルで、本気に寄っかかれるん、ユヴェルぐらいやもんな。」 >「はい?」 >「義兄さんに、なるなら、ユヴェルの方が良いってこと。」 >「はいぃ?」 >(少なくとも、《エータミレアム》が、義兄さんになるよりは良いもんね) >二人の言葉に、《D》はただ目を丸くしていた。。 >その間に、彼の現実での名前を明かそう。 >《D》・オラクルは、ユヴェル=ディティス。 >そう、《D》は、姉の友人であり、想い人でもあるユヴェルなのだ。 >パソコンマニアで、《アンダーサーチアイ》という、アルトですら、欲しい能力だ。 >自分は、クラッカー系の能力に関しては、感と経験しかない。 >正直言って、重力を操る能力よりも、そっち系の能力が、欲しいと思う。 >ともあれ、今は、気付かせないと。 >「何故、そこで、《風舞姫》さん、ディスティアさんが出てくるのですか?」 >「姫はんが、ユヴェルに、『L・O・V・Ev』なんは、火を見るより、明らかやろが。」 >「・・・・・・自覚してないんだ。」 >「自覚してないって、何を?」 >「バレンタイン、ハロウィン、クリスマスに、プレゼントもろうとるやろ?」 >「っていうか、ふだんから、普段からよく特製のお菓子貰ってるよね。」 >「?」 >《D》は、首を傾げ、はてなマークを頭の上に浮かべている。 >本気に解っていないようだ。 >鈍いとか、そう言う問題じゃないよ、この人のは。 朱琉:ユヴェル・・・・鈍いどころの騒ぎじゃない・・・・。 アミイ:『時の旅人(100年前)』のアリエスちゃんと張るんじゃないかしら?これは。 朱琉:ディス嬢も大変ですね(苦笑) >そんなときだ。 >けたたましいアラーム音が鳴る。 >『ガーディ様、ラビさんもいるなら、とっと迎撃してください。 > ミンティアが出ていますが、力量不足です。』 >クラッカーね。 >運良く手に入れば、それなりに、価値があるもんねぇ。 > > > > > > > >結局、《最強の守護者(パーフェクトガーディアン)》とも呼ばれる《L》と、クラッカーとして最高クラスの《ラビ》の手に掛かっては、無事で済むはずもなし。 >侵入者は、パソコンごとクラッシュされた。 >それに、運が悪かった。 >アルトは機嫌が悪かったのだから。 >『すいません、マスタァ。』 >「ええって。 > ・・・・・・でも、珍しいわな、ミンティアが追いつめられるんわ。」 >『・・・・・《C.C》のミスタァ・メフェストフェレスこと、《電脳空間の恋人》の関与の可能性があります。』 >ラディとミンティアが、会話している。 >ミント色のふわふわの髪を肩まで伸ばし、白いワンピース姿の15歳ぐらいの少女型のA・Iプログラムだ。 >アルトが作ったプログラムだ。 >ただ、彼が、12歳の頃にネットで出会った少女・・・・女性と言った方が良い年齢だった・・・・・・・がモデルなのは、誰も知らない。 >「《エンヴィー》の差し金かな。」 >「ラビ?」 >「ん?どうったの?」 >ただ、彼は呟いた。 >至極当たり前のように。ある種の予感のように。 >其の呟きに、バネ仕掛けのように、二人はアルトに、向いた。 >どこか、見ては行けないモノを見たような表情だ。 >特に、ミンティアは、怯えてすらいるようだ。 >(・・・・・・・・この子は、リーチェじゃないのに) >思わず、ミンティアが不安げな声を上げると、それにはなんでもないように返した。 >それでも、怯えさせるのも、嫌だった。 >「ラビ、ミンティア怯えてんで。 > 女の子は怖がらちゃ、あかんよ。」 >「ごめん、ごめん,ミンティア。」 >『気にしていません、ファザァ。』 >「・・・・・ミンティア、それ、どうにかならない?」 >『どうにもなりません、ファザァ。 > ファザァは、ファザァです。』 >ミンティアを作ったのは、アルトだ。 >リーチェの居た頭脳集団から流れて来た人格テンプレートを元にだ。 >それ故の『ファザァ』・・・父親呼ばわりなんだろうけど、そう呼ばれたくはない。 >少なくとも、リーチェにそう呼ばれているようで、気分はよく無いのだ。 >「ともかく、《C.C》を敵に回した言う事は、《電脳空間の恋人》をも、敵に回したっちゅー事やな。」 >「そーだね。 > ・・・・・・あ、もう、二時だ。 > 明日も起きれないと、姉さん怒るからもう帰るね。 > ミンティア、明日か明後日、メンテするから、マンションの方に来てね。」 >「了解しました、ファザァ。」 >アルトが、現実空間に戻る。 >自分で、そうしたとは言え、ミンティアと一緒にいるとリーチェに、『なんで、助けてくれなかったのさ?』とでも、攻められているようで、あんまり一緒に居たくないのだ。 朱琉:ミンティアさん・・・・ アミイと、言うより、リーチェちゃん。でしょ?朱琉が気にしてるのは。 朱琉:はい。どんな人なのかなぁ、と。 外伝楽しみにしてます。 > > > > > > >「今はさ、アリエスさんの事が好き。 > でも、リーチェへの感情がそういう好きだったかは解らない。」 >戻って来て、バイザーをやや乱暴に外すと、そう呟く。 >少なくとも、『愛してる』に通じる『好き』ではなかったとは思うけど、でも、今の自分を作っている事には違いない。 >たぶん、今生きている中で、知っているのは、ラディハルトとあの喫茶店のイルミナぐらいだろう。 >「リーチェは死んではいないけど、話せないだろうけど。」 >ベアトリーチェ。 >ミンティアと同じ外見だった約十年前は、幸せいっぱいで。 >でも、泥水を啜るような生活に堕ちて、最後は使い潰された少女。 >実際は、最後に会ったときでも、二十歳ぐらいだった。 >「でも、今はアリエスさんが、好きだよ。 > 一緒にずっといたい。 > ・・・・・・この感情が、《妖鳳王》が《戦乙女》に対するのでも良い。 > アリエスさんが好き、それが俺の真実なんだろうね、きっとさ。」 >リーチェの事は、忘れちゃいないし、忘れられないけど。 >今は、アリエスさんの事が好きだ。 >だから、その想いを護りたいんだと思う。 アミイ:強いわね、アルト君。 朱琉:そう言えるだけの強さは、中々持ちえないものだと思います。 >そんな想いを持てるように育ててくれた家族も失いたくない。 >「だから、ディス姉ぇ、壊れないでね。」 >そう呟いた声は、誰の耳にも・・・呟いた本人の耳にも届かなかった。 >そんな微かな祈りのような言葉が、完全に空気に消えたのとほぼ同時に、アルトは、ベッドに潜り込んだ。 >少しは、よく眠れるかもしれないと思いつつ。 > > >しかし、いつも通り、寝坊したのは追記しておく。 > > > > >@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ > > >夜編3のサイド:アルトです。 >色々と解ってますねぇ。 >ということで、と言う訳ではないですが、アルトの外伝を夜編が終了後、インターバルとして、投稿予定です。 >そこで、『リーチェ』の事も解ってきますでしょう。 > > >ともあれ、また次回で。 >恐らく、短編番外で。 朱琉:はい、それでは、また。 アミイ:こっちも、早めに続き書かないとね。 二人:では、また次回! |
18150 | 彼は、それなりに複雑な立場です。 | 十叶 夕海 | 2007/6/21 22:49:57 |
記事番号18144へのコメント > >朱琉:こんにちは、羅城 朱琉です。夜勤週が終わったら・・・・何か、痩せてました。 >アミイ:それ、『やつれた』って言うんじゃないの? >朱琉:・・・・・・・・(汗) > さて、ではレス参ります! >アミイ:ごまかしたわね・・・・。 ユア:こんにちは、ユアです。 やっぱり、夜勤とかって、やつれるんですね。 久遠:大変なのよ、やっぱり。 それでも、夜勤とかの方が、夜のお仕事の方が実入りがいいのよねぇ。 ユア:。。。。。否定はしないですが。 ともあれ、レスに行きます。 > >> >> >>日付が変わる少し前。 >> >>《魔導師(マジスタ)ラビ》―アルト=ヴァリード。 >>午後十一時も過ぎ、兄や姉達は、もう自室だろう。 >>姉のディスティアは、一階の客室にいるのかもしれないが。 >>そんなころ、台所で、アルトは、夜食を調達していた。 >>ハムチーズトーストを一口サイズに、切ったモノや、冷蔵庫に常備されている卵ディップとスティックタイプの乾パン。 >>コーラのペットボトルと氷入りのグラスを抱えて、自室に引っ込む。 >>パソコンデスクとしても使っている机のサイドテーブルに纏めておく。 >>・・・・・・断っておくが、夕食を一人前以上、きっちりお腹に収めた上での夜食なのだ。 >>片手で摘みながら、幾つかのアングラサイトを回る。 >>幾つかの掲示版で、今日の会合の事が話題になっていた。 >>ハッカー・クラッカー問わず、《C.C.》をあまりよく思っていないのは、ハッカー達にも、いるのだろう。 >>それでも、こういう中にも、スパイ的に組織にいるハッカーの連中もいるのだろう。 >>「げ、《エンヴィー》もいやがる。 >> ・・・・・・・・・・ったく、この人も、至高と歌われたなら、もう少し疑って欲しいもんだよ。」 >>アルトは、そう、一人ごちた。 >>おそらくは、《賢き愚者》と《影の語り部》などの、中立者以外では自分しか知りえない事を。 >>自分とて、全てを想い出した訳じゃない。 >>だが、《歌乙女》も、知り得ていないことを知っている。 >>「・・・・・終わらせてあげたいよ。 >> 《片眼王》を一度は、慕った身としてはさ。 >> 意味のない、自分に取って意味の無い生こそ、倦むべきモノだってコトは僕も知っているから。」 >>最後のチーズトーストを口にほおり込み、ゴテゴテと頭の上半分を覆うバイザーのコードをパソコンに繋ぎ、ログインの手続きをする。 >>いつものアバター(電脳的分身外見)を選び、電脳空間に意識を落とす。 >>何やかにや言って、この瞬間が、春の微睡みのようで好きなのである、アルトは。 >朱琉:やっぱり・・・・アルト君はいろいろ知ってるみたいですねぇ・・・・。 >アミイ:思い出したことのみ、なのか、そこに推論情報いろいろ混じってるのかはわからないけど・・・・きになるわ。 ユア:そうですね、色々と知っちゃってます。 久遠:想い出した+覚えていたと言うか。 ユア:《歌乙女》は、どうしてもそこに在った感情の関係上、思考にロックが掛かってますしね。 > >> >> >> >> >> >> >>いつも通り、腕輪型に細工した認証コードを白亜の図書館の門に通し、中に入る。 >>吹き抜けのロビーを抜け、書架を通り、最奥のカウンターに彼はついた。 >>ほぼいつも通り、赤いノイズの髪と瞳の柔和な青年と金髪碧眼の男臭い青年がいた。 >>アルトはつくづく思う。 >>髪と瞳の色と服装以外一緒のデザインのアバターを使っているはずなのだ。 >>どうして、こんなに印象が違うのか。 >>「確かに、姉さんが、知るのは、三年前の再来になりかねないもんね。」 >>「《ラビ》・・・・・ですか?」 >>「ん、そう。 >> 久しぶり、《D》。」 >>「なんか、本格的に動き出したって感じだね。」 >>「そうやな。 >> 前ん時は、最終決戦に行くのに、半年ぐらいやったから、今回は11月ぐらいか。」 >>「・・・・・・・前のときは、《万象知悉》が殺されて瓦解したのでしたね?」 >>「そう。 >> 今回も、そうなれば、《風舞姫》は精神崩壊だろうね。」 >>あの時の姉さんは、母さん達の手前、必死に隠してたけど。 >>医療用の栄養剤以外口に出来ていなかった。 >>決して、ディスティアは、強くはない。 >>強くあらねばならなかったから、強いだけなのだ。 >>「確かになぁ、姫はん、あんまし強う無いもん。」 >>会話が途切れた時に、《L》と《ラビ》は、顔を見合わせ、溜め息二つ。 >>そろって、《D》の方を見る。 >>「な、なんですか?」 >>「・・・・・姉さんをよろしくね。 >> 《D》、ううん、ユヴェルさん。」 >>「せやなぁ、リアルで、本気に寄っかかれるん、ユヴェルぐらいやもんな。」 >>「はい?」 >>「義兄さんに、なるなら、ユヴェルの方が良いってこと。」 >>「はいぃ?」 >>(少なくとも、《エータミレアム》が、義兄さんになるよりは良いもんね) >>二人の言葉に、《D》はただ目を丸くしていた。。 >>その間に、彼の現実での名前を明かそう。 >>《D》・オラクルは、ユヴェル=ディティス。 >>そう、《D》は、姉の友人であり、想い人でもあるユヴェルなのだ。 >>パソコンマニアで、《アンダーサーチアイ》という、アルトですら、欲しい能力だ。 >>自分は、クラッカー系の能力に関しては、感と経験しかない。 >>正直言って、重力を操る能力よりも、そっち系の能力が、欲しいと思う。 >>ともあれ、今は、気付かせないと。 >>「何故、そこで、《風舞姫》さん、ディスティアさんが出てくるのですか?」 >>「姫はんが、ユヴェルに、『L・O・V・Ev』なんは、火を見るより、明らかやろが。」 >>「・・・・・・自覚してないんだ。」 >>「自覚してないって、何を?」 >>「バレンタイン、ハロウィン、クリスマスに、プレゼントもろうとるやろ?」 >>「っていうか、ふだんから、普段からよく特製のお菓子貰ってるよね。」 >>「?」 >>《D》は、首を傾げ、はてなマークを頭の上に浮かべている。 >>本気に解っていないようだ。 >>鈍いとか、そう言う問題じゃないよ、この人のは。 >朱琉:ユヴェル・・・・鈍いどころの騒ぎじゃない・・・・。 >アミイ:『時の旅人(100年前)』のアリエスちゃんと張るんじゃないかしら?これは。 >朱琉:ディス嬢も大変ですね(苦笑) ユア:ここまで鈍いと逆に笑うしかないです。 久遠:たしかに、100年前のアリエスちゃんとタイマン晴れそうね。 ユア:・・・・・・ですねぇ、彼と結ばれるのをエンドに持ってきたいんですけどね。 >> >> >> >> >>結局、《最強の守護者(パーフェクトガーディアン)》とも呼ばれる《L》と、クラッカーとして最高クラスの《ラビ》の手に掛かっては、無事で済むはずもなし。 >>侵入者は、パソコンごとクラッシュされた。 >>それに、運が悪かった。 >>アルトは機嫌が悪かったのだから。 >>『すいません、マスタァ。』 >>「ええって。 >> ・・・・・・でも、珍しいわな、ミンティアが追いつめられるんわ。」 >>『・・・・・《C.C》のミスタァ・メフェストフェレスこと、《電脳空間の恋人》の関与の可能性があります。』 >>ラディとミンティアが、会話している。 >>ミント色のふわふわの髪を肩まで伸ばし、白いワンピース姿の15歳ぐらいの少女型のA・Iプログラムだ。 >>アルトが作ったプログラムだ。 >>ただ、彼が、12歳の頃にネットで出会った少女・・・・女性と言った方が良い年齢だった・・・・・・・がモデルなのは、誰も知らない。 >>「《エンヴィー》の差し金かな。」 >>「ラビ?」 >>「ん?どうったの?」 >>ただ、彼は呟いた。 >>至極当たり前のように。ある種の予感のように。 >>其の呟きに、バネ仕掛けのように、二人はアルトに、向いた。 >>どこか、見ては行けないモノを見たような表情だ。 >>特に、ミンティアは、怯えてすらいるようだ。 >>(・・・・・・・・この子は、リーチェじゃないのに) >>思わず、ミンティアが不安げな声を上げると、それにはなんでもないように返した。 >>それでも、怯えさせるのも、嫌だった。 >>「ラビ、ミンティア怯えてんで。 >> 女の子は怖がらちゃ、あかんよ。」 >>「ごめん、ごめん,ミンティア。」 >>『気にしていません、ファザァ。』 >>「・・・・・ミンティア、それ、どうにかならない?」 >>『どうにもなりません、ファザァ。 >> ファザァは、ファザァです。』 >>ミンティアを作ったのは、アルトだ。 >>リーチェの居た頭脳集団から流れて来た人格テンプレートを元にだ。 >>それ故の『ファザァ』・・・父親呼ばわりなんだろうけど、そう呼ばれたくはない。 >>少なくとも、リーチェにそう呼ばれているようで、気分はよく無いのだ。 >>「ともかく、《C.C》を敵に回した言う事は、《電脳空間の恋人》をも、敵に回したっちゅー事やな。」 >>「そーだね。 >> ・・・・・・あ、もう、二時だ。 >> 明日も起きれないと、姉さん怒るからもう帰るね。 >> ミンティア、明日か明後日、メンテするから、マンションの方に来てね。」 >>「了解しました、ファザァ。」 >>アルトが、現実空間に戻る。 >>自分で、そうしたとは言え、ミンティアと一緒にいるとリーチェに、『なんで、助けてくれなかったのさ?』とでも、攻められているようで、あんまり一緒に居たくないのだ。 >朱琉:ミンティアさん・・・・ >アミイと、言うより、リーチェちゃん。でしょ?朱琉が気にしてるのは。 >朱琉:はい。どんな人なのかなぁ、と。 > 外伝楽しみにしてます。 ユア:性格的には、真逆です。 感情的だからこそ無表情なのが、リーチェですね。 久遠:外見は、砂糖菓子、中身は、スパイシーなかんじだっけ? ユア:そうですね。 夜編終了後になるですね、多分七月半ばぐらいかな。 > >> >> >> >> >> >> >>「今はさ、アリエスさんの事が好き。 >> でも、リーチェへの感情がそういう好きだったかは解らない。」 >>戻って来て、バイザーをやや乱暴に外すと、そう呟く。 >>少なくとも、『愛してる』に通じる『好き』ではなかったとは思うけど、でも、今の自分を作っている事には違いない。 >>たぶん、今生きている中で、知っているのは、ラディハルトとあの喫茶店のイルミナぐらいだろう。 >>「リーチェは死んではいないけど、話せないだろうけど。」 >>ベアトリーチェ。 >>ミンティアと同じ外見だった約十年前は、幸せいっぱいで。 >>でも、泥水を啜るような生活に堕ちて、最後は使い潰された少女。 >>実際は、最後に会ったときでも、二十歳ぐらいだった。 >>「でも、今はアリエスさんが、好きだよ。 >> 一緒にずっといたい。 >> ・・・・・・この感情が、《妖鳳王》が《戦乙女》に対するのでも良い。 >> アリエスさんが好き、それが俺の真実なんだろうね、きっとさ。」 >>リーチェの事は、忘れちゃいないし、忘れられないけど。 >>今は、アリエスさんの事が好きだ。 >>だから、その想いを護りたいんだと思う。 >アミイ:強いわね、アルト君。 >朱琉:そう言えるだけの強さは、中々持ちえないものだと思います。 久遠:そうね、本当に強いわ。 ユア:好きな人の為だから。ってことで頑張れた事も結構在るようですし。 > >> >>@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ >> >> >>夜編3のサイド:アルトです。 >>色々と解ってますねぇ。 >>ということで、と言う訳ではないですが、アルトの外伝を夜編が終了後、インターバルとして、投稿予定です。 >>そこで、『リーチェ』の事も解ってきますでしょう。 >> >> >>ともあれ、また次回で。 >>恐らく、短編番外で。 >朱琉:はい、それでは、また。 >アミイ:こっちも、早めに続き書かないとね。 >二人:では、また次回! > ユア:はい、また次回で。 久遠:正確には、短編で、ね。 二人:ともかく、さようなら!! > |
18161 | 家族の写真 ACT77 五月十五日ー夜 Y/ただ忘れる事はしない事 ー | 十叶 夕海 | 2007/6/24 20:03:49 |
記事番号18104へのコメント 「エイレンサン、起きていますか?」 「起きてるよ、入って来な。」 紫苑が、半ば恐る恐るエイレンの部屋に入る。 エイレンノ部屋は、モノトーンの黒をベースにしている。 パソコンやクッションが、銀や鮮やかなで淡い色にしてアクセントにしている部屋だ。 パソコンデスクの椅子に、エイレンは座っていた。 「・・・・・ヴィーから真実を話そうだなんて、初めてね。」 「ヴィーサン?」 「昼間の緑色のヤツ。 ヴィーテ=ヴィート=ヴィリジアンだから、ヴィー。」 「知り合イのよウナものですカ?」 「知り合いと言うか、一番傍にいたヤツだよ、小さい頃からね。」 適当に、座るように紫苑に促したエイレンは、手早く濃いめの紅茶にコンデスミルクとハーブの粉末を入れたモノを作る。 『後は、もう一人の自分っての入れたらどうだ? あながち間違いではないのですから?』 「現れるなら、先に言え、ヴィー。」 そして、いきなり、ヴィーテは現れた。 紫苑が、所在無さげに、ベッドに座ったすぐとなりに足を組み座っていた。 女性にしては太く、男性にしては細い、体格。 そんな中性的な存在だ。 『良いじゃねぇの、レン。 早々に崩してもよろしいいので?』 「いいよ、私の過去に踏み込み過ぎなきゃね。」 「了解、了解しましたよ。 さてさて、真実というのは、優しい絹衣か、冷たき刃か? どっちなんだろうか?」 楽しげに哀しげに、或いは嬉しげに苦しげに、ヴィーテは、身体はそのまま、顔だけを紫苑に向け、意地悪にただ微笑んだ。 『さて、竜胆紫苑くん。 君は、《御伽噺》をどう知ってんだ?』 「《片眼王》ガ、《戦乙女》を愛シていテ、それデ《妖鳳王》に譲りたくなくテ。 それヲ、《歌乙女》、昔のディスティアサンに、彼女ト《片眼王》の死を持っテ、引き止めタ。 ソう言うのデすよネ?」 『うん、まぁ、正解だねぇ。 前提として、《片眼王》が、《戦乙女》に男女間の意味で、愛していると言うのが必要ですが。』 「・・・・・・・・・違ウいうますカ?」 『違うってかね。 ・・・・・・なんて、言うべきだと思います、レン?』 「アイツは、お話丸ごと詐欺ったからねぇ。 前提自体間違っていると言う事ですね。 ・・・・・・・一言で《片眼王》は、《戦乙女》を愛してなんかいないということかな?」 紫苑が息をのむ。 それでも、表情を変えないのは、彼が彼たる所以か。 しかし、今、《御伽噺》の前提を《御伽噺》の関係者の口から、否定されたのだ。 《片眼王》が、《戦乙女》を愛していたから。 部下の他人の妻だった《戦乙女》を手に入れたがったから、生まれた悲劇ではなかったのか? 「・・・・・・・・・・・紫苑?」 「は、はイ!!」 「やっぱり、驚かれてしまったようね、ヴィー。」 『こっちの世界でも、数千年前に、情報操作をやってのけちまったんだよな、《道化師》のヤツは。』 「でも、あれは、《賢き愚者》に誘導されてだろう?」 『誘導でしょうと、彼らが選んだ事です。』 「あ、あノ、話見えなイんデスが?」 『んと、何処が特に解らない?』 「・・・・他人ノ奥サンだった《戦乙女》サンを欲しがったカラ、じゃないんデスカ?」 『うん、それは間違いねぇよ。 ですけど、それは、《片眼王》自身の心から生まれたモノではないです。』 解るような解らないような返答に、紫苑は頭を抱える。 ヴィーテも、ある程度の・・・《歌乙女》程度に記憶が戻っているか、知識を得ていないと解らないように、話している節がある。 (ヴィー、もう少し情報開示したら?) (でも、記憶が戻ったら、敵になるかもしれない。 ・・・・・・あの男に、情報をこれ以上与えるのは、マズいからね。) 二人は、思念でそう会話を交わす。 一応、昼間は話すと言ったモノのそれなりに、隠さなければ行けない、 さりとて、幾つかは明かす必要がある。 矛先を変える為か、ヴィーテはこんな話を紫苑に向ける。 『《御伽噺》は、悲劇です。 そもそもの悲劇は何処にあったのか?にもよるけれどね。 僕は、《賢き愚者》が、《歌乙女》を姉と知らずに、好きに・・・・・・愛してしまったのが悲劇なのだと思いますよ?』 「・・・っ!!」 世間事に疎いとは言え、紫苑も近親相姦のダブーを知らない訳ではない。 これは、流石の彼でも、驚きが顔にありありと浮かんだ。 『言っとくが、《賢き愚者》には、咎は無い。 ・・・・・・・当時、最高峰で双璧の魔術使いの片方、《歌乙女》が、もう片方の《片眼王》の愛妾的な立場に収まったのも、マズかったですけれど。』 「・・・・・・・ヴィー、紫苑が混乱してる。 詩に仕立てて、歌ってやればいいんじゃないか?」 『防音聞いてるの?』 「普通の住宅よりは。 拷問にも、使用した事があるよ。」 『そりゃ、重畳。』 紫苑が硬まっている間に、エイレン達で、話は進んだ。 歌うとなると・・・・・・特に、《御伽噺》になると竪琴じゃ、彼女に申し訳ない。とでも言わんばかりに、竪琴をしまい、代わりに、リュートのような弦楽器を何処からとも無く、取り出した。 ネックの先に、青く澄んだ石の・・・元は、マント留めかなにかを加工して、ひもに通したモノがあった。 紫苑には知るべくもないが、リュートは《歌乙女》の、マント留めだったリュート飾りは《片眼王》の、それぞれ唯一と言っていいほどの形見であり遺品であるのだ。 ヴィーテは、一息,息を大きく吸い、リュートを爪弾き始めた。 ♪ 遥か遥か旧き時 彼の時 彼の世界は 至高と謳われし《片眼王》が元にて 繁栄を迎えていた 武としては 《龍殺ノ英雄》《戦乙女》が 彼の王の元に 知としては 《歌乙女》《道化師》が 彼の王の元に 中立なれど 彼の王が世界に 《世界樹の翁》《泉の乙女》《守護する龍》が在りた 真意は読めぬなれど 《賢き愚者》も 彼の土地に在りた 彼の世界は 繁栄していた 《名も無き民達》は《片眼王》を褒めたたえた ♪ ♪ 彼の王の世界に 双璧たる魔術使いあり 彼の王はその片壁 頑強たる炎術使い 《片眼王》 彼の王の傍に侍りし 儚げながらも自由な風術使い 《歌乙女》 対立は最後の時以外は ありえず 彼の時まで 仲睦まじい二人 《歌乙女》は 彼の王をただひた向きなまでに 慕い想った それ故の 身も心も 《歌乙女》の 血の一雫 髪の毛一筋も 彼の王に捧げていた それが故の結末 それが故の悲劇 ♪ ♪ 《賢き愚者》と言う男あり 彼の者 伝えるはトリックスターという 彼の者 《歌乙女》と双子であると 私は知っていた されど彼の者が それを知りしは 彼の者が《歌乙女》を愛してると自覚した後のこと 西の断崖に咲きし花とて 《歌乙女》が望むならば 魔力使わず その身一つで 取りにあがっただろう それほどまでに 彼女を慕い 愛していた 彼の者 せめてせめて 同父異母ならば まだ蜘蛛の糸ほどの希望在りた ♪ ♪ 《歌乙女》は 《片眼王》と在りても 無かった時のような微笑みは 決して決して 見せる事は無かった 只在ったのは寂しげな微笑みだった 《賢き愚者》は 考えた どうしたら あの花のような微笑みが戻るかと そして 彼の者は 糸を引いた さまざまな悲喜劇の元になる糸を されとて 彼の者が考えたのは 幾千年経とうとも ただ一つ ただ一つ 《歌乙女》が幸せだけ それ以外は自身の幸せさえ願わなかった それが ただ静寂に満ちた 或いは 狂気に満ちた願いだった その願いが 今日まで続く悲劇の幕開けとなりしが 結果也て ♪ 「・・・・・・・・・・・・・・・・恋愛っテ、怖イですネ。」 『そうか? 少なくとも、孤独を癒すには、恋愛は怖いモノではないですよ?』 ヴィーテが歌い終わった後の、紫苑の第一声に、彼はそう言った。 皮肉げというよりは、寂しそうな声だった。 自分は、ずっと一人だった。とでも言うように。 そう言う意味では、彼が『恋愛』に憧れるのも、ありなのだろう。 『ともかくねぇ、仮定は意味をなせねぇけど、《賢き愚者》がいなきゃ。 いいえ、せめて、《歌乙女》に恋慕いたさなければ、悲劇は起こりえなかったのでしょうね。』 「紫苑、難しく考えるな。 お前は、誰をそのテで護りたい?」 「・・・・・ディスティアサン。 こノ手を汚シテも、彼女ヲ護りたイでスヨ。」 「それでいいの。 こういう稼業で、余計なもん背負っても、それがあるから闘えると思う。 ・・・・・もう、三時だ。 明日は、通常通りに店を開けるから、一眠りでもしな。」 「はイ。」 そういうと、紫苑は、素直に自室に戻っていった。 ほぼ同時に、ヴィーテも、きた時と同じく音も気配もなく去っていった。 「・・・・・さて、私も寝るか?」 エイレンがそう呟くと同時に、部屋にひいてある電話が鳴る。 裏稼業の人間にしか教えていないホットラインの電話だ。 「はい、もしもし。」 『先日はどうも、《影の語り部》殿?』 「・・・・・・《片眼王》、なんのようだ?」 『何時空いてる?』 「は?」 『この間の戦闘のとき、会ってあげるって言ったじゃん。』 電話の相手は、《片眼王》こと、カインだった。 軽い声が、エイレンの鼓膜を揺らした。 声質も、調子も違うし、本当の彼の声を聞いた事の無いエイレン・・・・・・いや、《影の語り部》でも、どこか果てなく遠い《片眼王》を彷彿とさせた。 しかし、軽めの調子さえ除けば、エイレンも昔は兄と慕ったアベルの声だった。 ・・・・自分で殺したはずで、でも、今も生き延びさせられてる。 カインは、彼のクローンだ。 似ていて当たり前のはずなのに、何故か胸がいたかった。 「・・・・・・言ったけれどね。 今、何時だと思う?」 『ん〜、と夜の六時?』 「戯け、今はこっちは三時過ぎだ。 こっちの夜の六時・・・・そちらの朝の九時過ぎに掛け直せ、流石に眠いんだけど?」 『うん、わかった。 でも、しばらくは、色々と忙しいし、一週間以内に掛けるから。』 「そうか。」 『そんじゃ、おやすみね、エイレン。』 高く小さな金属音とともに、電話が終わる。 短い電話だったけど、とても、エイレンの胸を締める電話だった。 殺さなければ、気付かなければ、失恋で終わったとしても、アベルに初恋をしていたんだろう。 「・・・・・・辛いねぇ。 でも、《御伽噺》を終わらせる訳にも行かないんだよ?」 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 久遠:・・・・・・・・ユアちゃん、覚悟できてる? ユア:怖いですよぅ、久遠。 エイレン嬢を悪役にしたのを怒ってる? 久遠:当たり前。 ユア:・・・・・・・・・・・厳密に言えば、悪役じゃないですよ。 役目からすれば、ベストな行動は、悪役ですけど。 それをそのまま行なえるほど、人間捨ててないです。 久遠:そう。 でも・・・・・・ね。 ユア:と、ともあれ、また次回。 |