◆−家族の写真番外 いつかの別れ 〜始まりの夜?〜(ある種の予告−十叶 夕海 (2007/5/26 00:21:35) No.18106
 ┣家族の写真 予告 五月十五日以降決戦直前。−十叶 夕海 (2007/5/26 01:03:26) No.18107
 ┗家族の写真外伝 とある《C.C》の日常的なお茶会のデキゴト−十叶 夕海 (2007/6/21 23:06:34) No.18151


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18106家族の写真番外 いつかの別れ 〜始まりの夜?〜(ある種の予告十叶 夕海 2007/5/26 00:21:35







窓が開け放った、《歌乙女》のディスティアの部屋。
寝ていたベビーベッドを起き出し、外出用のベビー服に着替え、僕は、ママンの枕元にいた。
微かな月の光を跳ね返す金髪とママンと同じオレンジ色の瞳。
そこには、涙は無いのだろう。
凄く凄く泣きたいのに、泣けずにいる。
「ママン・・・・・・」





ママン・・・・・

ママン・ディスティア。

ごめんね、ママン、ごめんね。

僕、ママンのことは

いっぱいいっぱい大好きで

いっぱいいっぱい感謝してる。

だけど、僕はママンの傍に居ちゃダメなんだって。

でも、僕、ママンの傍に居ていい?

僕は、《世界樹の翁》なんだって。

《泉の乙女》と《守護する龍》が言うには、

僕は中立じゃなきゃ行けないんだって。

ママン、ママン・ディスティア。

僕は、ママンのそばに居ちゃ行けない?

役目からしたら、傍に居るのはダメなんだ。

だけど、僕は、ママンの傍にいたい

ママンの傍で、ちょっとづつちょっとづつ大きくなりたいな

まだまだ、ママンの傍に居たい

普通に、『ママンをお嫁さんにするの。』とか、

普通に、『ママン、大好き』って、抱きつくとか、

つまんないって言われるかもしれないけれど、

そんな風に、大きくなりたいな。

ふつうに、大きくなりたい。

それが、ダメだって言うなら、

ママンが 笑えて

ママンが 泣くことは無ければいい。

そうあれるなら、僕が側に在れなくても良い。

ママンが・・・・・・・幸せになれば良いよ。

僕がいなくても 笑ってて。

笑ってて欲しいんだ。

だから、バイバイ。

バイバイ、僕が一番大好きなママン・ディスティア





「バイバイ、ママン・ディスティア。」
僕は、ママンが寝ているのを確認して、最後になるかもしれないキスをママンの額に落とす。
これからすることは、多分、ママンを哀しませるかもしれない。
だけど、僕はママンに死んで欲しくない。
《影の語り部》のシナリオに、踊らされずに、ママンを死なせないには、これしか無いと思う。
だから、僕は、ママンの傍にいないほうが、それは成功しやすい。
「元気で、笑ってて。」
僕は、そう言って、ママンが買ってくれた秋用のコートを羽織る。
コートというよりも、マントとかポンチョに近いそういう形式のヤツ。
まだ、売り出されたばかりで、安くないのに、そう言う時期の七月に買ってくれた。
一緒に着ようって、同じようなデザインの一緒に買ってくれたのに約束守れなかったね。
そうして、僕は、窓の桟を蹴り、夜の時乃市の空に隠れ、ママンの家から消えた。
ママン・ディスティアを死なせたくはないから。







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本編で、『ルキウス=《世界樹の翁》と解ったので、記念に?です。
一応、これに準ずるシーンは、そのうちあります。

ともあれ、お楽しみに。

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18107家族の写真 予告 五月十五日以降決戦直前。十叶 夕海 2007/5/26 01:03:26
記事番号18106へのコメント




「それでいいん、《風舞姫》・・・いや、ディスティアはん?」
―夜闇に消える、《L》の呟き。

「壊れないでね、ディス姉さん。」
―《魔導師 ラビ》の幽玄な願い。

『・・・・・・御慕い申し上げております、マスター・《D》。
 ラヴェリアは、マスター《D》のことをお慕いします。』
―機械仕掛けの心臓は、高鳴る。
 そして、電気信号は、想いを紡ぐ。

「それでも、強力は強力だろうけどね。
 ・・・・・・・・でもね、シュロ君。
 人間は、人外に腕力魔力ともに叶わないけれどね。
 それを技術でフォローするのが、人なんだよ?」
―人は、魔に魔力で劣る。
 されど、工夫で抗するが人が人たる所以。

「お前は、どうする?」
「私?
 解っているでしょうに、意地が悪い。
 ・・・・・・ただ、想い人《歌乙女》が、幸せになるように動くだけです。
 それが、《歌乙女》を裏切ることになっても、そういう風に動く。
 私が、私に架した運命です。」
―想いはただ、願いと共に。
 《賢き愚者》の真摯なる想い。

「さてさて、真実というのは、優しい絹衣か、冷たき刃か?
 どっちなんだろうか?」
―優しく紡ぐは、《御伽噺》の語り継がれぬ部分。
 想い出はただ優しく、真実はただ惨い。

「俺は、お前を裏切らねぇよ、《怠惰》。」
「・・・・・・・・感謝。」
―巨漢と幼女の会話。
 記憶無き男と人工物。

「アリエスさん、数学と化学教えて!!」
「・・・・・・アルト、それは依頼として受け取りますよ?」
―まだまだ、ちょっと距離のある二人。
 呆れたようなアリエスと必死なアルト。

「僕はね、ただ、《戦乙女》が欲しいだけ。」
「奇遇だね、俺は、《歌乙女》が欲しいんだ。」
―誘導されども、其の想いは真実也。
 糸を引くは、誰の影?

「アリエスさん、英語と音楽教えて。」
「・・・音痴だものね。
それに、授業中寝ているからよ。
 ・・・・それで、どこが知りたいの?私のノートで良ければ、参考程度にどうぞ。」
―少しだけ、縮まる距離。
 でも、まだ呆れたようなアリエスと嬉しそうなアルト。

「ねぇねぇ、アリエスさん。
 父さんの別荘、アリエスさんも行かない?」
「別荘ですか?」
―夏休みの誘い。
 これが、運命の分岐点なり得たか?

「君がくれば、アルト君は、傷つけない。」
「・・・・・・私が、そっちへですか?」
「うん。あ、来てくれれば、事は強引に進めないから。」
―《片眼王》カインからの《戦乙女》への条件

「・・・・・・《世界樹の翁》、いや、ルキウス。
 お前が、《歌乙女》の傍にいるのはマズいよ。」
『離れなくちゃダメってこと?
 いやだよ、ママンから離れたくない。』
「お前が傍にいれば、ママンが危ないぞ。」
―古い知己からの忠告。




「さあ、終わらせよう。」
―そして、決戦へ・・・・・・・・。







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予告です。
一応、順番に準じて、物語は進むのでしょう。
いつ、到達するかは不明な感じですが。

では、また。

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18151家族の写真外伝 とある《C.C》の日常的なお茶会のデキゴト十叶 夕海 2007/6/21 23:06:34
記事番号18106へのコメント





「開いていますよ。
 どうぞ、入ってください。」
ここは、《チャイルドクラン》の本部・居住区。
その一室からの応答で、青年が、その部屋に入る。
中に居たのは、二人の青年。
三人は、それぞれに対極まではいかなくても、三者三様違う様相だった。
声をかけ、入るように言ったのは、真白に近い銀色の髪を踝近くまでの三つ編みにして、やや淡い上質なサファイアの青紫色の瞳で、今は黒色のスーツのような長衣と赤いネクタイ姿の見た目、二十代の青年―皓野白銀。
初めから中に居たのは、純白の髪を肩あたりで適当に切られた髪に、青白の焦点の合わない瞳、白人系の白皙の美青年な、高級と解る淡い緑ののスーツ姿の見た目、二十代後半の青年―ウォルフ=イクス=ノクトルム。
入って来たのは、金髪を明るい色のビーズを通した革ひもでシッポのように結び、コーヒーブラウンの肌に、瞳は、感情溢れるロゼワインの紫色、ハイティーンのようなTシャツにジーパン姿の二十代にしか見えない青年―カイン=ディラストル。
「よう、久しぶりだな。
 ここ、三ヶ月ほど定例会も、無かったしな。
 ・・・うお、ウォルフもいたのか。」
「その声は、カインさんですか。
 確かに、久しぶりですね。」
「・・・ってか、お前の場合、能力でこの階に付いた時点で解ってたろ?」
「・・・・・・・まぁ、座って座って。
 いい茶葉が入ったところに、リッツからお菓子貰いましてね。
 クロエさんにも、レキさんにも、クエロくんにも、命さんにも、声をかけたんだけど任務だったり、無視されたりで、イクスくんとカインくんしか掴まらなかったんですよ。」
「(ウォルフ、クロエが白銀のこと苦手なの、知らないのか?)」
「(付き合い長いようですが、そうあまり接すること自体無いからだと思いますよ?)」
銀髪三つ編みの青年の言葉に、ウォルフとカインは、顔をよせひそひそ話で、そう相談する。
何時ものことなのか、白銀は特に気にせず、人数分の紅茶を入れている。
「冷める前に、どうぞ。」
「どうも。
 ・・・・・・・・で、茶を飲ませる為だけに、【七罪】ともう一人のボス補佐を召喚しようとしたわけじゃないだろ?」
「闇霧榮太郎の件ですか、白銀?
 あのデキゴトことから、まだ1年も経っていないのでしょう?
先代《強欲》を殺してからでも、二年は経っていないですよ。」
「・・・・・・・おや、隠しごとは、できないようですね。
 そうですよ。」
「ゼオンは、なんて言ってた?」
「好きなように。だそうですよ?
 ・・・・・・彼の《道化師》としての力も、身体強化能力も、有用ですからね。
 それに・・・・」
白銀が、言葉の続きを紡ぐ前に、騒々しく一人の少年が入ってくる。
彼は、白銀と同じく真白に近い色の銀髪をクセのままにしたショートで、砂色の悪戯そうな猫目、黒地に真っ赤な炎をバックにした銀ふちの黒髑髏プリントのロングTシャツ、ベージュのショートパンツに、黒赤のサスペンダーのやや小柄な10代半ばに見える少年だ。
名前をアレク=シュレディンガーという。
「・・・『あれ』をまだ仲間にするしないって、まだもめてんの?
 お父さんを殺したヤツなのに?」
「・・・・・・アレク、もう少し静かに入って来てください。」
「いいじゃん、いいじゃん。
 それに、僕にも無関係って訳じゃないし。
 『アレ』が仲間になれば、僕の直属の上司になるんでしょ?
 《強欲》アイナ=シュレディンガーを、父を殺したんだし、僕はキライだよ、アイツなんかに従いたくないもん。」
ふくれながら、頼まれたいた封筒を白銀に渡し、空いていた席に座る。
それを確認しながら、なだめるように、手をつけていなかった自分のカップとお菓子をアレクの前にずらした。
手をつけながら、『母親』である白銀の反応を待つのだった。
「どう?」
「・・・・・・・・・・ふふふふ、面白いですね。
 今生の《道化師》は、やっぱり、《道化師》のようですね。」
「で、どうするのですか?」
「俺は良いと思うけどね〜、ああいう一途なのは好きだけどね?」
「でも、こっち側に引き込むにしても、アイナさんの部下だった人とか、色々とめんどうじゃないですか?」
「ああ、そっちは、次の人事で激戦区に送って始末しようと思うんです。」
「お母さん、悪〜い。」
「おや、私達は、世間一般の道徳からすれば、悪人でしょう?」
つらつらと、アレクと白銀、ウォルフ、カインは、会話をしていく。
『次の出張は、東京に行ってもらいましょうか。』とでも言うように、人の生きに死を楽しげとすら言うように。
いくら、美形達と言えど・・・・・正確に言うなら、美形だからこそ、うすら寒い光景だ。
下っ端の命など、虫ほどの価値もないのだろう、彼らにとっては。
「それと、アレク。」
「なに、お母さん?」
「それです、そのお母さんと言うのはヤメなさい。」
「だって、お母さんはお母さんでしょ?」
「そうですがね。
 ・・・・・・・アレイアは、そう呼ばなかったのに。」
「あんな、記憶喪失男と一緒にしないでよ。」
「では、シャラも、そう呼ばなかったのに?」
「・・・・・・人形と一緒にしないでよ。」
白銀とアレクがいつも通りと言うか、定番的な会話をまた始めた。
カインとウォルフは、やれやれ、とでもいうように、呆れたように見ていた。
ちなみに、アレイアとは、この話の約七年前、つまりは十年前に、エイレン=マイセリアルに引き取られた竜胆紫苑の事である。
また、シャラは、シャラザードといい、アレイアの妹であり、アレクの姉である。
アレイア、アレクとシャラは、同じ計画から生まれた試験管ベイビーなのだ。
ただし、卵子と精子の間ではなく、白銀とアイナ・・・男性同士の細胞から、生まれたという特殊性なのだが。
だから、アレクは、白銀を『お母さん』と呼ぶのだ。
蛇足ながら、まだ《C.C》にいた頃の紫苑は、『白銀』で、シャラは『てて様』である。
シャラは、親を二人とも、『父』と見ているらしいのだ。
「んで、何処に送る?
 激戦区だっていっても、あんましないよね。」
「そうですね、《万象知悉》が亡くなられて、裏社会のマフィアの類いですら、縮こまってますから。
 適当な戦地は、ないですね。」
「あ、それなら、数日前に、フィレンチェとシカゴと、上海に、それぞれ火種を巻いてきましたから。
 一週間以内に、火種から家事になるでしょうから。」
いつも通り、アレクがすねたところで、カインが、先ほどの欠点を投げかける。
ウォルフも、それを補強するようなことを言ったのだが、白銀は、いつものそこの見ええない微笑みのまま、とんでもない事を言う。
「・・・・・・流石は、《永遠(とこしえ)の観察者》というところかな?」
「《片眼王》、貴方ぐらいですよ。
 私をそう呼ぶのは。
 他は、《悠久の傍観者》と呼ぶのに?」
カインの呟きに、白銀は、やや困ったように微笑んだ。
彼が女であるならば、男がその憂いを晴らそうと国をも傾けてしまうようなつやも含んでいたが。
カインは、歪で複雑でも、《片眼王》として、《悠久の傍観者》を知っている。
ある程度、自分の意志がままに、この世界を動かし、その結果を見続ける存在だ。
そして、同時に空気が一触即発の域にまで張りつめる。
「・・・・カインさん、白銀様。
 一応、同僚同士でのイザコザは、禁止のはずですよ?」
「はいはい。
 ま、いずれ、定例会で、報告があるだろうさ。
 ・・・・・・ともあれ、明日早いから、今日はこれでな。
 茶と菓子、美味かったぜ。」
ウォルフの溜め息混じりのその言葉に、その空気は緩んだが。
カインは、そう言って、この部屋を出て行った。
もとより、明日の朝、『今代《戦乙女》の観察』ノ任務で出る予定なのを白銀や、ウォルフは知っていたので、別段驚きもしなかった。
ただ、カインは、こう最後に呟いて、出て行った。
 「これで、元・アイナの部下を全員始末できるといいな。」と。






それからほどなくして、ウォルフも、アリアからの報告を受けるため、退室していった、
いれ直した紅茶を飲みながら、親子?は、こんな会話をする
「ねぇねぇ、お母さん。
 お母さんは、Dグレでいうところの代替わりしないブックマンなんでしょ?」
「そうですね。
 少なくとも、流れを見て、記憶していくと言う点では。」
「ならさ、寂しくない?」
「なにがです?」
「誰も一緒にいないのに。」
「・・・・・・そうですね、迷った時期もありましたけど。
 今は、貴方やシャラがいるから、目的もできましたから、そうでもないですよ?」
「ふぅん。」
「アレク、今日は一緒に寝ましょうか?」
「え、いいの?
 じゃ、後から枕だけ持ってくるね。」
まだ、何かが始まる前の《C.C》の幹部達の日常。
血腥くても、謀略の匂いがあっても、これが、彼らの日常だった。






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というわけで、《C.C》の一部の幹部の日常です。
正確には、情報交換ですね、お茶会を装った。
さりげなく?結構衝撃な事も、バラしてますが。


では、次回の本編であいましょう。