◆−家族の写真 ACT78 五月十五日ー夜 Z/ただ変えたくないだけ ー−十叶 夕海 (2007/7/13 04:59:51) No.18191
 ┣家族の写真 ACT79 五月十五日ー夜 [/ただ思い遺し続けるだけ ー−十叶 夕海 (2007/7/16 16:03:56) No.18205
 ┣家族の写真 ACT80 五月十五日ー夜 \/ただ日常的な謀るだけの事 ー−十叶 夕海 (2007/7/21 21:20:49) No.18228
 ┃┗全員(-数名ではあるものの・・・・)登場!さあ、叫ぼう!−羅城 朱琉 (2007/7/21 22:13:43) No.18230
 ┃ ┗これから、少しづつ出番は増えてくかもですね。−十叶 夕海 (2007/7/28 19:50:21) No.18251
 ┗家族の写真 ACT81 五月十五日ー夜 ]/ただ日陰でもあるけど日常な事 ー−十叶 夕海 (2007/7/21 21:24:33) No.18229


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18191家族の写真 ACT78 五月十五日ー夜 Z/ただ変えたくないだけ ー十叶 夕海 2007/7/13 04:59:51







午後八時半過ぎー。

バイトを終えた、ユヴェル=ディディスは、夕飯を食べた後の風呂上がり、軽くネットを廻っていた。
自分でも、そう危険が無いアングラも含めてである。
ユヴェルのマンションは、二部屋と風呂トイレから構成されている。
洋間・・・フローリングの部屋と台所が一緒と言うか繋がっている。ベランダの方に、八畳ほどの和室が付随して在るのだ。
その横に、風呂トイレなどの水回りがついている。
台所の裏には、ウォークインクローゼット等の収納が在る。
「・・・・・・・うわぁ、噂になってますね。
 ・・・悔しいな、僕は立場的にも、肉体的にも、協力は出来ても、参加が出来ないんですよね。」
掲示版を幾つか、周り、ユヴェルはそう呟く。
それは、本当に悔しそうで。
何故、出来ないんだろうと、しないんだろうと、そんな感情に満ちていた。
泣きそうで、でも泣けない。
「・・・・・そろそろ、《図書館》に潜りましょうか。
 今日も、後始末、大変そう。」
隣の寝室として使っている和室から、ゴツいゴーグルとインカムを持って来て、《潜入(ダイブイン)》を果たす。











「ラヴェ、ミンテ、今日はどうだった?」
『マスタァ《D》
 27時間、43分19秒ぶりですね。』
『マスター。
 不埒者は、三十組、七十五人でした。
 また、現在二組、三十人から、十三人と十五人の二組です・・・・それらから、別口で、一組からスパイダーアタックを受けております。』
《白亜の図書館》に降りると同時に、ミント色のふわふわの短い髪の若緑色のワンピースの少女とラヴェンダー色のストレートの長髪とシックな黒のホルダーネックドレスと白長手袋の妙齢の女性が、そう報告する。
ミント色が、ミンティア=グリーンノート。
ラヴェンダー色が、ラヴェリア=ヴァイノート。
同じテンプレートを使って、《ラビ》と《L》に作られたA・Iプログラムだ。
「わかったよ。
 ・・・・・・やっぱり減らないもんだね。」
『あと、マスタァ。
《C.C》の関与が見られるクラッカーが、いました。
 ・・・・・・・・とりあえず、今の二組のトドメ刺してきます。』
すらりと、柄がミンティアの背丈を軽くしかも大きく超え、刃部分も、身長ほどもある大鎌を取り出した。
彼女の本気用のアタックプログラムだ。
「一人で大丈夫?」
『・・・・・肯定します。
 PCクラッシュを行なえるのは、マスタァとラヴェリアしかいません。
 ・・・・・大丈夫です、まだ処理を行なえます。』
ユヴェルの言葉に答えたミンティアの言葉は、どこか『廃棄しないで』と言っているような泣き声にも似た声だった。
それに対して、何かをユヴェルが言う前に、さっさとミンティアは歩き去っていった。
「・・・・・・・さて、処理をしようか。」
『マスター?』
「うん?どうしたの、ラヴェ?」
『いえ、何でも在りません。』
それから数時間。
無言で処理が続く。
ミンティアは、先ほどの二組をトドメを刺して、スパイダーアタックをしていた一組も、潰したようだ。
ちなみに、途中で、高レベルの・・・・《魔術師(ウィザード)》と呼ばれるレベルのクラッカーが侵入を試みて来たため、ラヴェリアは席を外した。
そこまでハイレベルでなければ、ミンティア一人でも、相手に出来るのだろう。
しかし、襲って来たのは、《魔術師(ウィザード)》の中でも、コンビネーションで、三人一組の単独で仕事を受ける事が多い《トライアングルズ》だったため、ラヴェリアがサポートに廻ったのだ。
これは、ラヴェリアが、直接戦闘できないように・・・・・・防御型に設定されている為だ。
そんなわけで、ユヴェルが一人で、処理をしている。
そこへ、誰かがやって来た。
「今日の会合、どうでしたか?」
「まぁまぁ、やな。
 《D》、そっちはどないやった?」
「まともな、お客様が、千五百三十二人。
 不届き者が、三十五組、百二十一人。
 もちろん、不届き者には、PCクラッシュまで、しっかりv」
「おー、こわ。」
「くすくす、ここは、《白亜の図書館》であって、《情報庫》ではないですから。」
つくづくおもう、同じ外見パーツのアバターを使っているのに、どうして対称的な雰囲気になるんだろうと。
二人とも、男性らしい長身のアバターだが。
今来た彼の方が、男らしいのだ。
リアルでは、中性的な容貌のせいもあるのだろうが。
ともかく、いつも通りな会話を交わしている。
それこそ、太陽が西に沈むぐらい同じような会話だ。
「ま、そやわな。
 ・・・・・あ、《風舞姫》には、言ってねぇからな。
 お前の現実(リアル)のこと。」
「ありがとう、《L》。」
「確かに、姉さんが、知るのは、三年前の再来になりかねないもんね。」
「《ラビ》・・・・・ですか?」
「ん、そう。
 久しぶり、《D》。」
また、一人、カウンターにやって来た。
彼は、膝を隠すほどの長いウィンドブレーカーを纏い、フードを被っている。
フードからわずかに覗く、髪は真白の雪色だ。
彼は、《魔導師(マジスタ)ラビ》とよばれる凄腕のクラッカーの運び屋だ。
《Amazing Earath》という、オンラインゲームでは伝説とよばれるプレイヤーの今の姿だ。
その頃からの古い知り合いでもあるのだ。
「そうやな。
 前ん時は、最終決戦に行くのに、半年ぐらいやったから、今回は11月ぐらいか。」
「・・・・・・・前のときは、《万象知悉》が殺されて瓦解したのでしたね?」
「そう。
 今回も、そうなれば、《風舞姫》は精神崩壊だろうね。」
「確かになぁ、姫はん、あんまし強う無いもん。」
二人が、顔を見合わせて、溜め息をついたのをユヴェルは、『どうしましたか?』とでもいうように、小首を傾げた。
それに対して、二人は、息を合わせたかのように、彼に向き直った。
「な、なんですか?」
「・・・・・姉さんをよろしくね。
 《D》、ううん、ユヴェルさん。」
「せやなぁ、リアルで、本気に寄っかかれるん、ユヴェルぐらいやもんな。」
「はい?」
「義兄さんに、なるなら、ユヴェルの方が良いってこと。」
「はいぃ?」
二人の言葉に、ユヴェルは、目を丸くするようにしていた。
一応、彼は、ディスティアの自分への想いを気付いてはいる。
だけど、変わるのが怖い。
知られて、態度が変わってしまうかもしれない事が怖いのだ。
そんな彼の葛藤などつゆ知らず、会話は進む。
「何故、そこで、《風舞姫》さん、ディスティアさんが出てくるのですか?」
「姫はんが、ユヴェルに、『L・O・V・Ev』なんは、火を見るより、明らかやろが。」
「・・・・・・自覚してないんだ。」
「自覚してないって、何を?」
「バレンタイン、ハロウィン、クリスマスに、プレゼントもろうとるやろ?」
「っていうか、ふだんから、普段からよく特製のお菓子貰ってるよね。」
「?」
解っていないふりをする。
少なくとも、今の関係がずっと続く事はないかもしれないけど、それでも続く事を祈るから。
今の曖昧なままでいいのだ。
けたたましいアラーム音が鳴る。
『ガーディ様、ラビさんもいるなら、とっと迎撃してください。
 ミンティアが出ていますが、力量不足です。』
「げ、んじゃ、行ってくるね。」
「・・・・メンドイわ。
 しゃーないしけど。」
ちょうどよく、と言う訳ではないが、二人出て行き、ユヴェルはほっと胸を撫で下ろす。変わるのが恐いだなんて、子供みたいな感情を吐露しそうになったのだから。










「・・・・・・・・遅いですね。」
『強敵だったようなので、外壁の幾つかが、破壊されたのと、存外に遠い地に本体が在ったようなので、クラッシュに手間取ったのでしょう。』
と、会話を交わしつつ、ラヴェリアは半ば儀礼的に、紅茶を入れる。
彼女には、味と言う感覚は付加され、分析上の味は理解できても、感覚的には理解できないが、それえでも、マスターたちと飲むのは、心地いいとは思う。
正確には、マスター《D》と飲むのが、と言う方が正しいのだろう。
〈・・・・・ちょうど、アクセスしてくる人間もいないようです。
 これは、ある種のチャンスと取れる時間です。〉
ロボットプログラムである自分には、無縁と思っていたが、人間の書物・・・・・・・俗にいう恋愛小説/ロマンス小説などを参考にすると、この感情信号は、『恋心』らしい。
マスター《D》といると、顔は必死に無表情を繕っていても、中では、電子信号が通常よりも早く交換される・・・人間風に言うなら、脈が速くなるとか、心臓がドキドキするとか、そんなかんじになる。
『ま、マスター《D》』
「どうしましたか?」
『・・・・先に、飲みますか?
 一応、入れてしまいましたし。』
「あ、うん。それじゃ、貰います。」
言うべきだろうか?
しかし、自分は、『道具』だ。
でも、言わないと動作不良を起こしてしまいそうだ。
「・・・・ラヴェリア。
 どうしました?」
『いえ、なんでも・・・・・』
「・・・・・言いたい事が在れば、言っても良いですよ。」
マスター《D》が、言ったのはそう言う意味ではないだろうが。
少し、甘えてみることにした。
『・・・・・・御慕い申し上げております、マスター・《D》。
 ラヴェリア=ヴァイノートは、マスター《D》のことをお慕いします。』
「・・・・・好きだってことかな?」
『はい、この電子信号を人間の感情に当てはめると、そうなります。』
ラヴェリアは、ユヴェルに手招きされた。
それに、応じて、アンティークなイスに座る彼と向かい合う形で、立つ。
彼は、彼女の手を取り、こう言った。
本当に申し訳なさそうに。
「・・・・・・・ごめんね。
 僕は、あの人の感情を受け入れられないように。
 君の感情もうける事は出来ないんだ。」
『あの人とは、《死風舞の風舞姫》こと、ディスティアさんでございますか?』
「うん。その人。
 今の関係のままでいたいってワガママの為に、受けてないんだ。
 それに、ラヴェは、僕にとって妹みたいな者だから。
 だから、ごめん。」
『ごめんなさい、マスター《D》。』
ラヴェリアのCGの両目から雫が次々に、溢れた。
何故かは解らなかったが、とてもとても、哀しかった。
でも、出てくるはずが無いのに、人でも、有機物ですら無い自分に薙がせるはずが無いのに。
「ううん、僕の方こそ、ごめんね。
 もう一度お茶入れて来てくれるかな?
 ・・・・・もうすぐ、二人も帰ってくるだろうから。
 泣き顔、見せたくないんだろう?」
『はい、考慮感謝します。』
彼女が奥のミニ台所スペースに引っ込むと同時に、ラディハルトとミンティアが帰って来た。
その後、緩やかに、定例のお茶会は、進んでいった。









「予想外でしたね。
 でも、ディスティアさんの感情を受け入れてない以上、貴女のも、受け入れれないんです。」
ユヴェルが、現実に戻ると、もう空が白み始めていた。
今日は、一限だけだが、一限から講義がある。
今から寝るより、講義を受けてとっと帰って昼寝をする方がいいだろう。
そう、決めたユヴェルは、コーヒーを入れる為に、台所に向かった。
「なんにせよ、動き始めますね。」




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一応、ほのぼのらぶ目指したんですが、こけました。

ともあれ、ユヴェルはユヴェルの感情で今のスタンスにいるわけです。



それでは、また次回で。

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18205家族の写真 ACT79 五月十五日ー夜 [/ただ思い遺し続けるだけ ー十叶 夕海 2007/7/16 16:03:56
記事番号18191へのコメント



一応、忠告です。
この話は、キスシーンありです。
ちょっとあだるてぃです。
嫌な人は飛ばしてください。


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「・・・・狂っていますか。
 狂気の定義なんてモノは、人次第なんですよ、《泉の乙女》?」
この世界何処か、少なくとも、大都市と呼ばれる街の一角。
ゲットーや歓楽街などの汚濁を併せ持ったあまり治安のよくなさそうな街である。
そのはずれに、不釣り合いな高級マンション・・・高級住宅街に在りそうな・・・の最上階の一室に彼は居た。
そこには、つい先刻ほどまで、《泉の乙女》や《守護する龍》などと話していた青年の姿をしたモノがいた。
艶やかなスノウブロンドと容貌からは、二十歳を超えても、三十歳は到達していない雰囲気だ。
しかし、彼は、八百年を生きる吸血鬼である。
ベッドの上で、寝転ぶ訳でもなく、ただ膝を抱え座っていた。
彼は、このマンションのオーナーである。
最上階のこの部屋は、だから、と言う訳ではないが、部屋数が多い。
しかし、かろうじて使っているのは、今いる寝室と隣を居間兼仕事部屋、後はほとんど入る事はないが、サーバー&スパコン室、書庫用に一室、後は水回りだけである。
ウォークインクローゼットも在るが、春服夏服秋服冬服を全部あわせても、四割も埋まっていない。
家具も最低限しか置かず、色彩も黒と銀で纏めている。鮮やかななのは、萎れた観葉植物ぐらいである。
生活臭の薄い部屋ーそれが、《賢き愚者》の部屋だった。
「僕はね、《歌乙女》には、幸せになって欲しい、只それだけなんです。
 姉さんは、何度生まれ変わっても、僕を弟と知る事は一度たりとも無かったけれど。
 ・・・・・・・・・・それでも、ただただ嬉しかったです。
 側に在ってくれた事がとてもとてもね。
 ・・・・・・・・・・だからこそ、姉さんには幸せになって欲しい。」
そう虚ろに言う。
ちろりとのぞく舌がとても紅かったー血のように。
それは、何処か哀しい雰囲気が満ちていた。
ただ、『《歌乙女が》幸せになる事』、それだけを願った呟き。
願い続けて、幾百年のすり切れかけた願いだった。
それすら叶わずに、決して、幸せに穏便には終わらない。
彼女が自分で、架したとは言え、哀しい哀しい運命だ。
三代前は、《世界樹の翁》と《守護する龍》を殺した後、《泉の乙女》に殺された。
八代前は、エスパーニャ出身の踊り子で、覚醒する前に、《片眼王》と恋仲に成ったが、彼を殺したあと、自殺した。
十六代前は、名も無き小国の姫として生まれ、王族の常として、政治のコマとして使われ、若くして、狂死した。
六十代ほど前は、当時のオリエントの覇権争いの中で、将軍として勇壮に闘い、戦死した。
そして、二十五代前は、当時覚醒したばかりの《賢き愚者》の彼を庇って・・・死なないから、庇わなくても構わなかったのに、庇い、同族の人間に槍で刺し殺された。
「茜楠(せんな)と言う名前をつけてくれましたね。
 ・・・・・貴女以外にも知る人はいるけれど、それでも呼ばれたくはないんですよ?」
彼女以外には、数人しか知らないそんな名前。
呼ばれたいと思う人は、もういないけれど、だからこそ忘れる事は出来ない。
「だからこそ、今回こそ幸せになってください、《歌乙女》。
 今回はイレギュラーだらけだ。
 だからこそ、運命の連鎖を断ち切れるかもしれない。」
哀しげに嬉しげに、或いは憂いげに楽しげに、彼は呟く。
そう成って欲しい。
そうせつに願うほどに。
「・・・・・・父さん。
 《過去》は、もうどうやっても変わらないんだよ?
そして、《未来》は、《過去》の積み重ねだよ。」
彼以外いなかったはずの空間に、そんな声が響く。
幼いような年嵩のような、奇妙な男としては高い声。
《賢き愚者》は、ベランダの方向に、顔をやる。
そこにいたのは、髪と瞳の色は、《賢き愚者》と同じようなスノウブロンドと青紫に近い青の瞳の青年と呼べる年齢の男性だった。
服装は、この部屋に反発するかのように、ワイシャツにスラックス・・・共に白いものを着ている。
「着ぐるみ、脱がないんですね?
 ・・・・・・・久しぶり、ですね、ミカル、いえ、《運命演算三姉妹の長女》。」
「・・・・・・・・脱いだままヤられるより、来たままの方が、負担が少ないもん。
 それにしても、もう諦めたらどう?
 こっちの世界に、舞台を映してからでも、100回以上、前の世界出を会わせたら、三ケタじゃきかないほどに、同じく悲劇的な結末を迎えているのに。」
ただ、事実だけを、どうしても動かない『《歌乙女》が、幸せに死亡しない』・・・・『ベッドの上で、安らかに逝けない』という事実を突きつける。
しかし、《賢き愚者》は、表情すら、動かさない。
解りきっているのだ、彼とて。
そう終わると、『運命律』が、決められて動かせない事に。
だけど、それは彼の願いではない。
《賢き愚者》の、クリストフ=エイセルの願いは、『ベッドの上で、最期を迎えさせる事。』
『運命律』で、若くして死ぬのが、もしも、止められないのならば、それだけは叶えたい。
しかし、《運命演算三姉妹の長女》は、ミカル=エイセルはそれが成せないであろう事を知覚している。
「・・・・・・・・・今更、願いを変えられるほど、軽い願いではないんですよ。」
「《過去》は動かず、《現在》は過ぎ去り、《未来》はただたゆたうばかり。
 それでも、望むんだね。
 ・・・・・・・・ただ、ダーナさんに似ているからって、ドーラを抱いて僕を作るぐらいだもんね。」
「・・・・・それは、事故のようなモノです。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・当時、650歳過ぎていて、分別もつかない訳じゃないだろうに?」
「・・・想い人、八百年前の《歌乙女》の生き写しがいたら、商売女なら、なおさら、抱かなくてはどうするのです?」
「・・・・・・・人でなし。」
「貴方は、その人でなしの息子ですし。
 それに、私は、人ではないですから、無問題(もーまんたい)です。」
「・・・・・・・・・・・・・・慣用句にまで、文句付けられるとは思わなかった。」
つらつらと流れる《運命演算三姉妹の長女》と《賢き愚者》の会話。
ちなみに、《運命演算三『姉妹』》なのに、『息子=男』なのかといえば、偶々そうだったとしかいいようが無い。
過去にも、《歌乙女》が男で、《片眼王》が女だった時もある。
何かと、生まれ変わりと言うのは、不自由なモノだ。
「ともかく、《過去》からすれば、今回も《歌乙女》は、今回の・・・・十一月の決戦で死亡するだろうよ。」
「・・・・・・それだけはさせるわけにはいかないです。
 《歌乙女》が、幸せに・・・・ベッドの上で死ななければ、他は少なくとも若死にしようとも、ベッドの上で死ねるなんてことはさせません。」
「《過去》に、全て失敗していても?」
「ええ、今回は、幾つもの、イレギュラーが在ります。
 だから、今回こそは、死なせるにしても、ベッドで。
 できることならば、死なせません。」
「どんなことをしても?
 《過去》は、変わらない。
 《現在》も、《未来》も、《過去》の積み重ねなのに?」
更に言葉を重ねる二人。
熱が入って来たのか、《運命演算三姉妹の長女》ミカルは、《賢き愚者》に、歩み寄る。彼が座り込む、ベッドのすぐ傍にまで、歩み寄ったところで、足を止める。
「だから、もう止めて。
 お父さん、《御伽噺》に関わるのはもう止めて。」
「・・・・・・今更、もう止めれませんよ。
 ・・・それと、迂闊ですよ、ミカル。」
《賢き愚者》は、クリストフは、《運命演算三姉妹の長女》の、ミカルの手首を掴み引き寄せ、ベッドに引きずり込む。
ギシリとスプリングが音を立てる。 
楽しげな表情をくずさず、淡々とした動作でミカルの片腕を取り、背中とシーツの間に手を入れた。
もう片腕を後頭部に添えた。
ふっと顔を下ろして、唇と唇をあわせた。
数秒重ね、反応が返らないことを確認すると、もう一度くり返す。
たぶん、毎度の事とはいえ、驚きで固まっている。
固定する為に、後頭部に回した手を顎にそえた。
ミカルの反応をさぐるように、彼は唇が触れ合うだけのものから、顎を支えている指を引いて、より深い口付けを試していた。いっさい性急さはなく、ゆっくり少しずつ顔を傾ける。
そして、最後にひどくやさしい口付けを羽のように落とした。
かつてミカルの母親が、ドーラが気まぐれに行なっていたモノによく似ていた。
そして、ゆっくりと唇を離した。
「迂闊ですよ、ミカル。
 近づけば、こうなるって、解っていたでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こんのド変態親父!!」
「そのド変態親父の息子です。
 ・・・・・・このまま一緒に寝ます?」
「止めとく。
 今日、十時から、会議なの。」
「『Amazing Earth』の社長兼ゲームデザイナーは、大変ですね。」
「そう、またね。
 父さん、多分、次は六月になってからかな、早くても。」
「そうですか。
 では、またいつか。健康だけは気をつけて。」
クリストフは、そう会話しつつ、寝転ぶようにミカルの上から、離れた。
ミカルは、来た時同様、窓から朝焼けの街に消えた。
少なくとも、口では散々な事を言っているが、少なくとも、嫌ってはいなかった。
夜が完全明け、窓から朝日が入り、外から小学生の無駄に元気な声も入って来た。
そうなっても、クリストフは動かない。
八百年生きるうちに、日光は克服した。
少なくとも、浴びて気持ちのいいモノではないが、されとて、灰になる事も無い。
「・・・・・・また、息子に素気無くされて、悪態をつかれたか?」
「先輩って、いつも、私が落ち込んでる時に、来ますよね。」
「・・・・・《御伽噺》の《泉の乙女》の特権の《泉の水鏡》だよ。
 ここ五十年は、お前たち親子にしかつかっていないがな。」
そこに、冷やっこい缶チューハイの缶を彼の首筋に当てながら、呆れたように佇むジュリがいた。
恐らく乾を送り出してから、二人の気配とだいたいの会話を察して、来たのだろう。
起き上がりながら、クリストフはその缶チューハイを受け取る。
「・・・・・・それでも、律儀ですね。」
「百年近く前、マティと戦って、我を失っていた私を止めてくれた礼のようのもんだよ。」
「くすくす、イイオンナだよね、先輩は。」
「・・・・・・酒ならともかく、あっちの相手はしないぞ。
 第一、お前の愛情は解り難すぎるんだよ。」
缶チューハイ片手に、ベッドに座った二十代半ばとベッド脇に立った十四歳。
実年齢は、十倍以上で、その上、少女の方が年上とは思わないだろう。
「そうですか?」
「バイで、さらにハードコアな性嗜好なクセして、ドーラに残して来た香水、あれ、《ドナ=パフューム》の《プティ・フルール・ノーディア》でしょ?
 北の枯れ果てた大地にも根付く儚げで優しいのに、気丈な可愛い花が原料の。」
「・・・・・・・・・」
「ドーラは、確かに、商売女だった。
 だけど、それに似合う威勢の良さと、似合わない儚げで優しい女だった。」
ジュリは、数度しか在った事は無い。
まだ、ミカルも生まれる前だ。
だけど、その後に、ミカルに在ったとき、ジュリが驚いたのは、昔その香水が出来た後、『ダーナのイメージは、これです。誰かに渡す事は無いでしょうけど、この香りだけは持ち続けます』と、言っていたのをわたしていたことだ。
「・・・・確かに、最初は、ダーナに、八百年前の《歌乙女》に似ていたから、抱いていましたよ。
 だけど、そうじゃなくなったから、離れたんです。
 一緒に居たら、仲間に引き込みたくなってしまう。」
「・・・・・・・・そうだね、同族にしてしまったら、あの輝きは消えてしまうだろうね。」
「だから、離れたんです。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ったく、50年以上、親子やってんだろう?
 不器用だね、ほんと。
 ・・・今日は付き合うよ。」
「ありがとう、先輩。
 大好きですよ、ほんとうにね。」
「な、何言ってるのさ。」
「先輩、顔赤いですよ?」
決して短くはない、付き合いなのだ。
こうして、ジュリはクリストフのやけ酒につきあった。
翌日は、当然、二日酔いに悩まされた。








@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

どうだったでしょうか?
結構、複雑な親子なのです。
自立できるのかしら?と作者ながら、心配です。

ともあれ、また次回で。
次回は、《C.C.》メインです。

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18228家族の写真 ACT80 五月十五日ー夜 \/ただ日常的な謀るだけの事 ー十叶 夕海 2007/7/21 21:20:49
記事番号18191へのコメント





ここは、欧州のとある大都市の高層ビルの一室。
《C.C》の本部ビルだ。
窓は無いが、時刻は夕刻である。
窓が在れば、夕日が差し込んで来ているだろう。
この部屋をある種異様に見せているのは、天井・壁紙・床面・内装に至るまで真黒に統一されているのだ。
蛍光灯がついているのにも関わらず、あまり明るい印象を受けないのだ。
その部屋にいたのは、約二十人。
役が高いほど、奥にいる事になる。
最奥にいるのは、黒い総髪の長身の男性だった。
年齢は、50歳を過ぎた当たりだろうが、歳にそぐわぬ若々しさと威厳がある。
青みがかった瞳と浅黒い肌、そして2メートルに少しだけ足りない引き締まった身体。
着流しなどが似合いそうだが、今はシックなダークスーツ姿だ。
ふんぞり返ってと言う訳ではないが、余裕たっぷりに足を組んで座っている。
彼が、《C.C》の現ボス ゼオン=ウツギ=アシュハである。
「さて、ここ最近を報告してみろ。」
その彼から向かって、左に座っているのは、黒尽くめの長衣のようなスーツのようなごシク系服を着ている二十歳代半ばほどに見えるが年齢不詳の青年だった。
銀色の髪を踝近くまでの三つ編みにして、やや淡い上質なサファイアの青紫色の瞳で、笑顔なポーカーフェイスが不気味だった。
若過ぎると言う声も聞こえるかもしれないが、彼が《C.C》の副ボス《サマエル》皓野白銀である。
「・・・・・『運命律』も、定まり動き始めているようですね。」
その反対側に座っているのが、豊かな先のほうだけ緩くウェーブしたオレンジ色の髪をツインテールで結んだ十代半ばの今日は少女の人物である。
瞳は、深い蒼色で、天使の羽をオプションに付けたら似合いそうなパステルカラーの上着と共布のフレアスカート姿で、左手首に黒いハンカチを結んでいる。
ここにいるのですら、合わない少女だが、《C.C》の副ボス《リリト》 雪ノ輪天命の命の方だ。
「ん〜、裏社会の中立派も、少しづつ立ち位置決め始めてるみたい。」
その彼女の隣にいるのは、コーヒーブラウンの肌の二十代前半ほどの青年だ。
金髪をしっぽのように結んでいて、瞳は、感情溢れるロゼワインの紫色。
黒地に、飾り文字と言うかかなり崩したアルファベットで、『FACKYOU!!SUNOFABITCH!!』と書かれたTシャツにジーパンと言うラフでカジュアルな服装だった。
彼が、ゼオンの養子でもある《嫉妬(エンヴィー)》のカイン=ディラストルである。
「終わるなら、早く終わって欲しいね。
 楽しいのは好きだけど。」
その向かいにいるのは、薄い銀茶の肩口の髪 色素の薄い肌の二十歳ぐらいの青年だった。
瞳は、青紫色系の微妙に違うオッドアイで、白いワイシャツに、スラックスと言う全体的な印象が白い存在だった。
彼が、《強欲(グリード)》の闇霧詠太郎だ。
「愛しの君を中心とするグループも、再結成され、動いているよ。」
その横にいたのは、黒く長いストレートの髪を銀の金具付の白リボンで三つ編みに結んだ8歳ぐらいの幼女だった。
瞳は、感情の少なそうなアヤメ色の紫色で、黒いレースを最小限にしか使わないゴスロリ系の服装である。
この幼女は、《怠惰(スロウス)》のクロエ=マリオルである。
「・・・・・・気持ち悪い、《強欲(グリード)》しゃん。」
その向かいにいるのは、白に近い灰色の髪を肩口まで、無造作に伸ばしている。肌は、やや褐色かかった色をした二十歳ぐらいの青年。
瞳は、ぼんやりとしたアヤメ色の紫色で、灰色で纏められたクラシカルな印象のベストスラックスの折り目正しそうだった。
クロエをぼんやりと瞳で、凝視している。
この青年は、《色欲(スロウス)》のクエロ=マリオルである。
クロエとクエロは、同じ二人の人物を元にしたデザイナーチャイルドである。
ちなみに、幼女姿のクロエの方が、姉であるので悪しからず。
「・・・・・・・・・・・・・・・どうでもいい。」
その彼の隣に、無表情ながら、居心地悪そうにしているのは、純白の髪を肩あたりまで、適当に切られた髪。線の細い白人系二十歳後半の年嵩の青年だった。
青白い虚ろな瞳と淡い色合いの高級そうなスーツ姿の印象も淡い青年だった。
彼が、《大食(グリトニー)》のウォルフ=イクス=ノクトルムである。
「何にせよ、役を果たすまでです。」
その向かいの席は空いていた。
《憤怒(ラース)》の東雲璃都の席だった。
その横も、また空いていた。
《傲慢(プライド)》ラキ=マクダウェルの席だった。
この二人は、副官共々、出張でほとんど、本部に寄り付かないのだ。
それでも、その実力故に、その席を任ぜられているのだ。
一番末席に、三人の男女がいた。
二人が男だった。
名前をそれぞれ、《メフィストフェレス》のブライアン=オットーと、《ヴィネ》の時国宗留である。
ブライアンは、銀色の髪が白髪になったようなそんな白銀色の髪を肩口で揃え、水色の細い瞳、身長は、190センチに達しているだろうに、体重は、70キロもなさそうな長身痩躯で、シャープな印象だ。
年齢不詳ぎみだが、30代後半〜40代前半ぐらいの男性だ。
服は、ハイネックのグレイの長袖Tシャツとジーパンの上から、白衣のようなモノといつも通りだ。
「プログラマーをもう二人欲しいんだけど?」
宗留は、黒髪黒目のこれと言って特徴の無い青年と言うには年嵩で、中年と言うには、若い男性だ。
服装は、白いワイシャツに黒いスラックスと言うシンプルなモノだった。
「・・・・・特にない」
一人だけの女性は、《マルコシアス》リンネ=ナガミルバだ。
濃い紅茶のような赤茶の波打つ髪を花のように何枚も重ねた布で纏め、艶やかな口唇に更に、濃い色の紅を添え、チャイナドレスのようなハイネックで胸を大きく開いた黒い上衣に、真紅のパンツスタイルと言うある意味、オバさんチックな服装の女性だ。
年の頃、30代から、40代だろう。
「んふふ、楽しくなりそうね。」
以上が、上級幹部《七罪》と、電脳部門と情報部門、戦闘部門のそれぞれ主任である。
その後ろに、《七罪》の副官が影のように立っている。
《サリエル》白銀の後ろには、彼と同じく真白に近い色の銀髪をクセのままにしたショートで、砂色の悪戯そうな猫目の十代の小柄な少年だ。
黒地に真っ赤な炎をバックにした銀ふちの黒髑髏プリントのロングTシャツ、ベージュのショートパンツに、黒赤のサスペンダーという少年のような服装だ。
名前は、アレク=シュレティンガー。
「お母さんとシャラがいればいいや。」
《リリト》天命の後ろには、淡い金色のふわふわの猫っ毛で腰までの長さで、こぼれてしまうのではないかと思うほど、大きな青い瞳、シミ一つない真っ白な肌だ。
背中が大きく開いた真白で、ひらひらのワンピース姿だ。
どうみても、12歳ぐらいだが、17歳と主張している少女だ。
名前は、ピナ=セレスタ。
「あたしのほうが、ゼオンしゃまに役に立てるもん。」
《嫉妬(エンヴィー)》カインの後ろには、エメラルド色の透明感のある髪で、腰までの丈で、前髪は額で切りそろえられている。ガーネットの暗く燃える紅で、瞳孔は縦である。
年の頃は、17歳だが、実際は300歳上の少女だった。しかし、ほとんど洗濯板に梅干しというほど胸が小振りだった。
黒いゴッシック系の服装で、パニエを使用していないため、すとんとしたスカートのがよく似合っている。
名前は、エメラーダ=ビスカティーノ。
「・・・・・・・カイン様を守るのみ。」
《強欲(グリード)》榮太郎の後ろには、黒くツンツンの髪に、顔にデッカク刻まれた傷、ギラギラした鈍色の瞳の二十歳半ばの青年だ。
黒いジャケットを羽織り、中の服は、タンクトップのようなもので、ジーパンを合わせている。
名前は、ダルク=D=斬崎だ。
「キャハ、たくさん刻めそうじゃん。」
榮太郎には、もう一人副官がいるが、この場にはいない。
《怠惰(スロウス)》クロエの後ろには、30代半ばから40代ほどのの筋骨隆々で、
白めの肌に目立つ薄茶の傷が、頭に大きく一カ所、身体にも同様の傷がある2メートルほどの巨漢だ。
ジーパン生地の上下に、身体にフィットする黒いシャツ サングラスというチョピリ怖い服装だ。
正にデコボココンビである。
名前を、とりあえず、シュネー=スノーである。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
《色欲(ラスト)》クエロの後ろには、ほとんど灰色の金色で長い髪と蒼穹の青の瞳で、年の頃20代後半の恐らく男性である。
服装は、黒いハイネックのワンピースに、極彩色のストールに、黒のタイツに、同色のブーツという女装である。
名前をマーティン=クロイスラーというが、マティルナ=クロイスラーと名乗る事が多い人物である。
「ジュリも、動き出したみたいねぇ。」
《大食(グリトニー)》イクスの後ろにいるのは、一言で言えば、人間味を感じない無機質な日本美人だった。
鴉の濡れ羽色の真っ直ぐな髪に、感情のでない瞳で、着物を着慣れた雰囲気だ。
着ているのも、喪中の家庭の訪問にそのまま使えそうな青鈍色の訪問着だった。
名前を神無祇いつきという。
「・・・・・・・とても、とても面倒です。」
《憤怒(ラース)》璃都と、《傲慢(プライド)》ラキの席は、相変わらず、空席である。
「さて、今日はこれまでだな。
 何か在れば、私に、いつでも、些細な事でも連絡しろ。
 ・・・・以上、解さ・・・・・・久しぶりだな、久遠。
 かれこれ、30年ぶりか?」
『う〜ん、そうね、正確には28年前じゃないかしら?
 私が、ゼオンちゃんに、捨てられたのって。』
報告と話し合い・・・・・・正確には、謀(はかりごと)も終わり、ゼオンが終わりを宣言しようとしたら、彼は途中で止めた。
後ろにいる誰か・・・・久遠にそう話しかけた。
久遠は、赤紫色の髪で、パンツスタイルだが、少々厳つい事をのぞけば、女性として通る外見だ。
会話的にも、銀座のママになったかつてのホステスが、数十年ぶりに、ご贔屓客に在ったかのような台詞だ。
「そうだったか?」
『そうよぅ。
 ・・・・・・・・・・にしても、変わったわね。
 命は、一回限りだって、言い続けてた人が、親友と妹を生き返らせようとしてるなんて。』
「変わるさ。
 失ってみて、そうだと解ったからな。」
『残念よ、本当に。
 28年前のゼオンちゃんは本当に、輝いてた。
 この私が、惚れ込んで、全てを委ねる位に、ね。』
「なぁ、久遠。
 戻ってこないか?」
『何処に?』
「俺の補佐にだよ。」
『何故?』
「後悔してっから。」
『・・・・・・・・・・ゼオンちゃん、もう遅いわ。
 エイレンちゃんは、確かに、あの時、アベルちゃんとセシルちゃんを殺したわ。
 だけど、その後にジェラルちゃんを殺したのは、いただけないわ。
 それが原因で、レスちゃんのパパも抜けたんだし。』
「復讐はいけねぇって、説教か?」
『・・・・・そうじゃないわ。
 少なくとも、私が惚れ込んだゼオン=ウツギ=アシュハは死んだわ。』
「じゃ、なんで来た?」
『・・・・・・本当に、変わってしまったかの確認よ。
 今まで、勇気が無くて、来れなかったけれど。』
つらつらと二人は会話を交わす。
誰も介入できない。
義息子カインも、惚れて入ったピナも、誰も介入できない。
ただ、流れるような会話だけが続く。
意味など、求めていないそんな会話だった。
「じゃ、殺しに来たか?」
『・・・・・・・・・だと言ったら?』
「しゃあねぇかな。
 それだけの理由はお前にはあるだろうから。」
「ですが、殺させる訳には行きません。」
そんな時、一人が動いた。
白銀だった。
青い持ち手のレイピアを久遠の首元に、添える。
動けば、刺すという意思表示だ。
『あら、白銀ちゃんじゃない。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・ルール違反じゃないかしら?
 イルちゃんが知ったら、怒るわよう?』
「・・・・イルは関係ないですよ。」
『・・・・・・・・・・・・・・ま、いいわ。
 ゼオンちゃん、またいつかね。』
そう言い捨てると、久遠は、来た時同様、消え去った。
と、同時に、金縛りから解放される面々。
その後、流れ解散となったのであった。








@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

ブラック度(雰囲気などが黒い事を示す)が高い作品です。
怖いです。
悪役なだけがあります。
悪人と言う訳ではないのに。

といわけで、ではないですが、10と短編二編に一部続きます。
短編は、一部ですし、その前に別の短編を投稿しますが。



では、夜編10で。

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18230全員(-数名ではあるものの・・・・)登場!さあ、叫ぼう!羅城 朱琉 2007/7/21 22:13:43
記事番号18228へのコメント


朱琉:こんにちは、羅城 朱琉です。久々なのに何だかお馬鹿なタイトルでごめんなさい。
 ようやっと、パソコン復旧しました。
アミイ:元々入ってたソフトと、新しく入れたセキュリティソフトの相性が悪かったのよね。
朱琉:こればっかりは、実際インストールしてみないとわからなかったです。
   では、レス参ります。

>
>
>
>
>
>ここは、欧州のとある大都市の高層ビルの一室。
>《C.C》の本部ビルだ。
>窓は無いが、時刻は夕刻である。
>窓が在れば、夕日が差し込んで来ているだろう。
>この部屋をある種異様に見せているのは、天井・壁紙・床面・内装に至るまで真黒に統一されているのだ。
>蛍光灯がついているのにも関わらず、あまり明るい印象を受けないのだ。
>その部屋にいたのは、約二十人。
>役が高いほど、奥にいる事になる。
>最奥にいるのは、黒い総髪の長身の男性だった。
>年齢は、50歳を過ぎた当たりだろうが、歳にそぐわぬ若々しさと威厳がある。
>青みがかった瞳と浅黒い肌、そして2メートルに少しだけ足りない引き締まった身体。
>着流しなどが似合いそうだが、今はシックなダークスーツ姿だ。
>ふんぞり返ってと言う訳ではないが、余裕たっぷりに足を組んで座っている。
>彼が、《C.C》の現ボス ゼオン=ウツギ=アシュハである。
朱琉:ゼオン様かっこいい・・・・と思ってしまった私を許してください(汗)
アミイ:あんた、本気で誰の味方よ?
朱琉:それは私も思いましたですよ、自分で。



朱琉:さて、ごっそり削ってしまった中盤の感想です。
アミイ:書けば?ちゃんと。
朱琉:超・冗長かつ同じ様なことの繰り返し&叫びっぱなしになるので。ちょっとだけ真面目モードな感想に、それは似合いませんから。
 これを読みながら、《C.C》がどう攻撃(?)してくるのか考えてたんですけど・・・・結論・読みきれません。どう足掻いても、どこかでブロックされるんですよね、レジスト側に。まだレジスト側も《C.C》側も全容が明かされていないので、予想の段階でしかないんですが、それにしても・・・・
アミイ:朱琉朱琉、目が完全犯罪を計画する犯罪者か、犯人びいきのエセ推理小説作家になってる。
朱琉:あ・・・・すみません。結局、私では到底読みきれないので、大人しく先を待ってます、と言いたいだけのはずなんですけど・・・・。どうにも、某『京○堂シリーズ』を読んでる最中は、言い方が回りくどくなっていけないです。


>「さて、今日はこれまでだな。
> 何か在れば、私に、いつでも、些細な事でも連絡しろ。
> ・・・・以上、解さ・・・・・・久しぶりだな、久遠。
> かれこれ、30年ぶりか?」
>『う〜ん、そうね、正確には28年前じゃないかしら?
> 私が、ゼオンちゃんに、捨てられたのって。』
>報告と話し合い・・・・・・正確には、謀(はかりごと)も終わり、ゼオンが終わりを宣言しようとしたら、彼は途中で止めた。
>後ろにいる誰か・・・・久遠にそう話しかけた。
朱琉:・・・・・・・・何に驚いたって、ここで久遠さんが出てきたことに驚きました。
アミイ:元主従の邂逅は、もっと後と予想してたのにね。
朱琉:何か、いい意味で裏切られた感じで・・・・どきどきしました。

>久遠は、赤紫色の髪で、パンツスタイルだが、少々厳つい事をのぞけば、女性として通る外見だ。
>会話的にも、銀座のママになったかつてのホステスが、数十年ぶりに、ご贔屓客に在ったかのような台詞だ。
>「そうだったか?」
>『そうよぅ。
> ・・・・・・・・・・にしても、変わったわね。
> 命は、一回限りだって、言い続けてた人が、親友と妹を生き返らせようとしてるなんて。』
>「変わるさ。
> 失ってみて、そうだと解ったからな。」
>『残念よ、本当に。
> 28年前のゼオンちゃんは本当に、輝いてた。
> この私が、惚れ込んで、全てを委ねる位に、ね。』
>「なぁ、久遠。
> 戻ってこないか?」
>『何処に?』
>「俺の補佐にだよ。」
>『何故?』
>「後悔してっから。」
>『・・・・・・・・・・ゼオンちゃん、もう遅いわ。
> エイレンちゃんは、確かに、あの時、アベルちゃんとセシルちゃんを殺したわ。
> だけど、その後にジェラルちゃんを殺したのは、いただけないわ。
> それが原因で、レスちゃんのパパも抜けたんだし。』
>「復讐はいけねぇって、説教か?」
>『・・・・・そうじゃないわ。
> 少なくとも、私が惚れ込んだゼオン=ウツギ=アシュハは死んだわ。』
>「じゃ、なんで来た?」
>『・・・・・・本当に、変わってしまったかの確認よ。
> 今まで、勇気が無くて、来れなかったけれど。』
>つらつらと二人は会話を交わす。
>誰も介入できない。
>義息子カインも、惚れて入ったピナも、誰も介入できない。
>ただ、流れるような会話だけが続く。
>意味など、求めていないそんな会話だった。
>「じゃ、殺しに来たか?」
>『・・・・・・・・・だと言ったら?』
>「しゃあねぇかな。
> それだけの理由はお前にはあるだろうから。」
>「ですが、殺させる訳には行きません。」
>そんな時、一人が動いた。
>白銀だった。
>青い持ち手のレイピアを久遠の首元に、添える。
>動けば、刺すという意思表示だ。
>『あら、白銀ちゃんじゃない。
> ・・・・・・・・・・・・・・・・ルール違反じゃないかしら?
> イルちゃんが知ったら、怒るわよう?』
>「・・・・イルは関係ないですよ。」
>『・・・・・・・・・・・・・・ま、いいわ。
> ゼオンちゃん、またいつかね。』
>そう言い捨てると、久遠は、来た時同様、消え去った。
>と、同時に、金縛りから解放される面々。
>その後、流れ解散となったのであった。
朱琉:なんか・・・・この辺り一帯の会話、好きです。
アミイ:朱琉の好みって・・・・まあ、確かにね。白刃のようでありながら、霞のような会話。朱琉のツボにクリーンヒット、ってね。


>
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>@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
>
>ブラック度(雰囲気などが黒い事を示す)が高い作品です。
>怖いです。
>悪役なだけがあります。
>悪人と言う訳ではないのに。
>
>といわけで、ではないですが、10と短編二編に一部続きます。
>短編は、一部ですし、その前に別の短編を投稿しますが。
>
>
>
>では、夜編10で。
朱琉:はい、では、次回で。
二人:では、また!


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18251これから、少しづつ出番は増えてくかもですね。十叶 夕海 2007/7/28 19:50:21
記事番号18230へのコメント


>
>朱琉:こんにちは、羅城 朱琉です。久々なのに何だかお馬鹿なタイトルでごめんなさい。
> ようやっと、パソコン復旧しました。
>アミイ:元々入ってたソフトと、新しく入れたセキュリティソフトの相性が悪かったのよね。
>朱琉:こればっかりは、実際インストールしてみないとわからなかったです。
>   では、レス参ります。

ユア:こんにちは、夕海です;
久遠:そう言う事ってあるわよね。
   前なんか、エモーションちゃんの家のパソコンとセキュリティソフトの相性が悪過ぎて、エモーションちゃん、パソコン破壊しちゃったもの。
ユア:いや、何か違うよ、久遠。
   ともあれ、返レス行きます.

>
>>
>>
>>
>>
>>
>>ここは、欧州のとある大都市の高層ビルの一室。
>>《C.C》の本部ビルだ。
>>窓は無いが、時刻は夕刻である。
>>窓が在れば、夕日が差し込んで来ているだろう。
>>この部屋をある種異様に見せているのは、天井・壁紙・床面・内装に至るまで真黒に統一されているのだ。
>>蛍光灯がついているのにも関わらず、あまり明るい印象を受けないのだ。
>>その部屋にいたのは、約二十人。
>>役が高いほど、奥にいる事になる。
>>最奥にいるのは、黒い総髪の長身の男性だった。
>>年齢は、50歳を過ぎた当たりだろうが、歳にそぐわぬ若々しさと威厳がある。
>>青みがかった瞳と浅黒い肌、そして2メートルに少しだけ足りない引き締まった身体。
>>着流しなどが似合いそうだが、今はシックなダークスーツ姿だ。
>>ふんぞり返ってと言う訳ではないが、余裕たっぷりに足を組んで座っている。
>>彼が、《C.C》の現ボス ゼオン=ウツギ=アシュハである。
>朱琉:ゼオン様かっこいい・・・・と思ってしまった私を許してください(汗)
>アミイ:あんた、本気で誰の味方よ?
>朱琉:それは私も思いましたですよ、自分で。
>

久遠:ゼオンちゃんって、カッコいいのよね。
   年齢よりも若々しいし。
ユア:裏切り度数ナンバーワンになりそうですよ、久遠。
久遠:あ、でも、エイレンちゃんとはまた別よ。
ユア:こちらも、本当に誰の味方か不明のようで。

>
>
>朱琉:さて、ごっそり削ってしまった中盤の感想です。
>アミイ:書けば?ちゃんと。
>朱琉:超・冗長かつ同じ様なことの繰り返し&叫びっぱなしになるので。ちょっとだけ真面目モードな感想に、それは似合いませんから。
> これを読みながら、《C.C》がどう攻撃(?)してくるのか考えてたんですけど・・・・結論・読みきれません。どう足掻いても、どこかでブロックされるんですよね、レジスト側に。まだレジスト側も《C.C》側も全容が明かされていないので、予想の段階でしかないんですが、それにしても・・・・

ユア:確かに、19人だか、それくらいですしね。
久遠:作者ちゃん的には、しばらく・・・・本編上で、夏休み入るまでは、そうほうの日常を書いていくみたい。
ユア:今回のラストでの、イルミナ嬢と白銀の関係も含めてですね。

>アミイ:朱琉朱琉、目が完全犯罪を計画する犯罪者か、犯人びいきのエセ推理小説作家になってる。
>朱琉:あ・・・・すみません。結局、私では到底読みきれないので、大人しく先を待ってます、と言いたいだけのはずなんですけど・・・・。どうにも、某『京○堂シリーズ』を読んでる最中は、言い方が回りくどくなっていけないです。

久遠:ユアちゃんは、実はそこまで深く考えてないかもしれないわね。
ユア:失敬な。
   個々人の話で、胃痛が酷くなって、深く考えれないだけだ。
久遠:それでも、ある程度しっかりしたプロットがあるのは、すごいわよね。

>
>
>>「さて、今日はこれまでだな。
>> 何か在れば、私に、いつでも、些細な事でも連絡しろ。
>> ・・・・以上、解さ・・・・・・久しぶりだな、久遠。
>> かれこれ、30年ぶりか?」
>>『う〜ん、そうね、正確には28年前じゃないかしら?
>> 私が、ゼオンちゃんに、捨てられたのって。』
>>報告と話し合い・・・・・・正確には、謀(はかりごと)も終わり、ゼオンが終わりを宣言しようとしたら、彼は途中で止めた。
>>後ろにいる誰か・・・・久遠にそう話しかけた。
>朱琉:・・・・・・・・何に驚いたって、ここで久遠さんが出てきたことに驚きました。
>アミイ:元主従の邂逅は、もっと後と予想してたのにね。
>朱琉:何か、いい意味で裏切られた感じで・・・・どきどきしました。

ユア:さくっと、登場させました。
   ・・・・・・あ、本人逃げた。
   ともあれですね、久遠は数少ない過去を客観的に見れる存在な訳です。

>
>>久遠は、赤紫色の髪で、パンツスタイルだが、少々厳つい事をのぞけば、女性として通る外見だ。
>>会話的にも、銀座のママになったかつてのホステスが、数十年ぶりに、ご贔屓客に在ったかのような台詞だ。
>>「そうだったか?」
>>『そうよぅ。
>> ・・・・・・・・・・にしても、変わったわね。
>> 命は、一回限りだって、言い続けてた人が、親友と妹を生き返らせようとしてるなんて。』
>>「変わるさ。
>> 失ってみて、そうだと解ったからな。」
>>『残念よ、本当に。
>> 28年前のゼオンちゃんは本当に、輝いてた。
>> この私が、惚れ込んで、全てを委ねる位に、ね。』
>>「なぁ、久遠。
>> 戻ってこないか?」
>>『何処に?』
>>「俺の補佐にだよ。」
>>『何故?』
>>「後悔してっから。」
>>『・・・・・・・・・・ゼオンちゃん、もう遅いわ。
>> エイレンちゃんは、確かに、あの時、アベルちゃんとセシルちゃんを殺したわ。
>> だけど、その後にジェラルちゃんを殺したのは、いただけないわ。
>> それが原因で、レスちゃんのパパも抜けたんだし。』
>>「復讐はいけねぇって、説教か?」
>>『・・・・・そうじゃないわ。
>> 少なくとも、私が惚れ込んだゼオン=ウツギ=アシュハは死んだわ。』
>>「じゃ、なんで来た?」
>>『・・・・・・本当に、変わってしまったかの確認よ。
>> 今まで、勇気が無くて、来れなかったけれど。』
>>つらつらと二人は会話を交わす。
>>誰も介入できない。
>>義息子カインも、惚れて入ったピナも、誰も介入できない。
>>ただ、流れるような会話だけが続く。
>>意味など、求めていないそんな会話だった。
>>「じゃ、殺しに来たか?」
>>『・・・・・・・・・だと言ったら?』
>>「しゃあねぇかな。
>> それだけの理由はお前にはあるだろうから。」
>>「ですが、殺させる訳には行きません。」
>>そんな時、一人が動いた。
>>白銀だった。
>>青い持ち手のレイピアを久遠の首元に、添える。
>>動けば、刺すという意思表示だ。
>>『あら、白銀ちゃんじゃない。
>> ・・・・・・・・・・・・・・・・ルール違反じゃないかしら?
>> イルちゃんが知ったら、怒るわよう?』
>>「・・・・イルは関係ないですよ。」
>>『・・・・・・・・・・・・・・ま、いいわ。
>> ゼオンちゃん、またいつかね。』
>>そう言い捨てると、久遠は、来た時同様、消え去った。
>>と、同時に、金縛りから解放される面々。
>>その後、流れ解散となったのであった。
>朱琉:なんか・・・・この辺り一帯の会話、好きです。
>アミイ:朱琉の好みって・・・・まあ、確かにね。白刃のようでありながら、霞のような会話。朱琉のツボにクリーンヒット、ってね。

ユア:ありがとうございます、
   久遠自身は、この会話を意味をなさないとは知りつつも、流している。
   ・・・・・そんな感じです。

>
>
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>>
>>
>>
>>@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
>>
>>ブラック度(雰囲気などが黒い事を示す)が高い作品です。
>>怖いです。
>>悪役なだけがあります。
>>悪人と言う訳ではないのに。
>>
>>といわけで、ではないですが、10と短編二編に一部続きます。
>>短編は、一部ですし、その前に別の短編を投稿しますが。
>>
>>
>>
>>では、夜編10で。
>朱琉:はい、では、次回で。
>二人:では、また!

ユア:ありがとうございました。
二人:それでは、また次回。
>
>

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18229家族の写真 ACT81 五月十五日ー夜 ]/ただ日陰でもあるけど日常な事 ー十叶 夕海 2007/7/21 21:24:33
記事番号18191へのコメント






《C.C.》本部の廊下を、カインとエメラーダが、並んで歩いていた。
「・・・・・で、エラ、何か聞きたそうだね。」
「いえ、部下として、聞くべきではない事柄でしょう?
 特に、《C.C.》設立以前、《クラン》時代のことは、禁忌とされているようですから。」
「でも、聞きたそう。」
エメラーダの強固な言葉に、からかうように、ふと笑うカイン。
その表情に、彼女は、思わず、ドキリとしてしまう。
カインは、『あの人』と同じだけれど、違うのに。
『あの人』は、セシルと夫婦で。
『あの人』は、ゼオンの親友で。
『あの人』は、生きてはいるけど、死人で。
「・・・・・・それは、気にならないと言えば、嘘ですが。」
「・・・過去に嫉妬しちゃう?」
「そうですね。
 私が、知ってからも、知る前からも、ゼオン様は、『あの人』を知っていますから。」「んじゃ、俺の独り言ってことで聞いて。」
「・・・・・・・解りました。」
(どうやら、カイン様も、知って欲しかったみたいですね。)と、エメラーダは一人そう思った。
そして、カインが、『独り言』として、語ったのは次のような話。
元々は、日本好きの《クラン》の幹部が、偶々手に入れた西洋刀のスタイルで、日本刀の切れ味を持つ刀が、さっきの久遠だと言う事。
それが、当時の《クラン》のボスに献上された事。
ボスのお気に入りで、ボスの息子の親友だったゼオンの元に流れた事。
ゼオンは、いっぱしの剣士で、ボス補佐最有力だった事。
でも、妹と親友には、甘かった事。
組織の外で、エイレンとジェラルドとも、親交を持つようになった事。
久遠とゼオンは、相棒と言えるほどだったこと。
それこそ、互いの背中を任せ合えるほどに信頼していた事。
でも、28年前に、ゼオンが、久遠を突然手放した事。
その後は、行方知らずだった事。
「・・・・・そのあと、ゼオンが変わったのは、多分、俺が・・・オリジナルの俺が死んだから、ああいう風になったんだと思う。
 リカルドのおっさんも、それで抜けたみたいだしね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・アベル様は、死亡していないのでは?」
「九割九分九厘は、死んでる。
 機械で、無理矢理生かしてるだけ。
 自我意識がある分、同じ状況のセシルの方が行きてると言うかもしれないね。」
自嘲的に、カインは笑った。
自分は、自分なのに、自分以外が自分であるからの笑いだろうか。
「それでも、私が思う相手は『あの人』でも。
 仕えたいと、尽くしたいと思うのは、カイン様ですよ。」
「・・・・・・そっか、ありがと、エラ。」
「いえ。
 あと、明日以降は、定期任務以外大きな任務は入っていませんが、どうしましょうか?」
「ん〜、事実上、休暇に近いってこと?」
「そうなります。」
「来週か再来週位に、《影の語り部》に、会いに行くから、エラも来る?」
「遠慮しておきます。
 始末しなければならない事が幾つかありますので。」
「そっか、そりゃ残念。
 じゃぁさ、今日、今からさ、夕飯食べて、映画でも見にいくけど、どう?」
「それならば、お供いたします。」
「24時間アミューズセンターでさ、『ふざけた奴らのギャングスタな日々』っていう、アクションラブコメやってっからね。
 ・・・・・・あと、もうしばらくしたら、人ごみに日中入る任務もいれるから、それの服も買っちゃおか。」
「解りました。
 では、六時半頃に、ロビーに待ち合わせで?」
「そうだね。
 一応、それくらいに電話かメールちょうだい。」
エメラーダは、時々、解らなくなる。
彼女が惚れたのは、カインなのかアベルなのか。
こうも、優しくされると本当に、解らなくなる。
彼は、副官と一緒になるべくいないと行けない規則で一緒にいるはずなのに。
そう考えながら、一度エメラーダは自分の部屋に戻った。







「シュネー、歩くの早いよ。
 もう少し、ゆっくり歩いて。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「なに、この腕?」
「抱き上げた方が、早いからな。」
2メートル位の巨漢と、普通よりやや小柄な少女が、廊下を歩いていた。
コンパスが違うせいもあり、少女・クロエは、すぐに引き離されてしまった。
そして、いつも通りの会話が交わされる。
こう言える位には、いつもの会話なのだ。
しゃがみこんだ巨漢・シュネーが(それでも、クロエとそうそう変わらない高さだ)、腕を差し出して、それにクロエが掴まる。
抱き上げられた彼女とシュネーは、外見的な年齢差も在って、親子と言っても、違和感は無い。
ちなみに、今日は腕に抱っこだが、三回に一度は、肩車やおんぶである。
・・・・・余談だが、クロエはそれなりに、有能な幹部と言うか指揮官である。
一応、最高幹部な関係上、有能な・・・エリートが部下につくのだが。
《C.C.》の《怠惰(スロウス)》と《色欲(ラスト)》といえば、それなりに、怖いと言うか、組織内部でも、悪名轟く始末屋兼戦闘屋である。
最初は、シュネーの方を《怠惰》と思い、次に、クロエをそうだと知って驚くと言うのがほとんどだ。
外見的に、多少無表情なことをのぞけば、普通の子供なのだから、仕方ないのだろうけど。
だけども、その評価は任務になればすぐに、修正される事になるのも、いつものことである。
「・・・眠いのか?」
「うん、やっぱり、この身体嫌だ。
 十回も、能力使えば、眠くなっちゃうから。
 いつも、シュネーに迷惑かけるわ。」
いつも通り、無表情コンビだったけれど、クロエはどこかうとうとしかけた眠そうな表情だった。
それでも、表情らしい表情は薄いのである。
「・・・・・・・・構わん。
 部屋に戻るのか?」
「う〜、シュネーとご飯食べる。」
「・・・・・・・・・・・・なんか作ってやろうか?」
「嫌だ。
 《ドナ・リザ》で、ボンゴレ・スパゲティとマチェドニアと、ティラミス食べたい。」
「少し寝てからにしろ。
 お前は、無茶が効くようで効かないのだからな。」
「そうする。」
「じゃ、運ぶぞ。」
「・・・・・・・・・・・」
「寝たか。」
「むぅ、起きてるぅ」
「寝てろ、運んだら、《ドナ・リザ》に、予約しとくからよ。」
海坊主のようなシュネーに、クロエは寄りかかり、眠ってしまった。
疲れていたのだろう。
さっきの会議の前にも、能力を使う任務をこなしているのだ。
能力の大きさの代償が、或る意味この外見なのだ。
「俺には、能力なんざ、無いが。
 この組織は、ガキに持たせて、どうする気なんだろうな。」
「むに〜。」
シュネーには、能力も無いが、過去も無い。
8年前、気がついたら、本部のベッドにいた。
任務で怪我をしたらしい。
それから、このクロエの副官をしている。
初めは、つっけんどんで、無愛想だったクロエ。
でも、任務が無くて、手持ち無沙汰だった時に、クッキーと紅茶をセットで持っていくと、とても、喜んでくれた。
「早いもんだ。
 それからでも、7年か。
 ・・・・・起きてる時に、ガキらしいのは、甘いもん好きってことだけだよな。」
パスワードを知っているいるので、クロエの部屋の電子キーを解除して、中に入る。
キングサイズのベッドの中央に、彼女を横たえ、先ほど言った通り、《ドナ・リザ》に予約を入れた。
9時の予約だ。
しばらく、無言な時間が続いた。
予約の一時間半前には、シュネーは彼女を起こし、レストランに行ったのだった。
そして、その翌朝、《ドナ・リザ》で、満足するまで食べたクロエとシュネーが、彼女の部屋で寝ているのを、部下筆頭が起こしに来て、パニック状態となったのは、また別のお話である。








「とりあえず、デート風味に見えた方がいいだろうけど。
 夜だし、ご飯食べるなら、ジャケットとスラックスがいいかな?」
そう言いつつ、カインは、クローゼットをあさっている。
普段は、Tシャツにジーパンなど、カジュアルな物しか着ないせいか、ほとんどがタンスの肥やしならぬ、クローゼットの肥やしになっているのだ。
それでも、一応、肩書きはボスの息子。
それなりにいいモノは持っているのだ。
「あ、そう言えば、《影の語り部》に、電話しとこ。」
カインは、パソコンを付け、《ローレシア(通称:ローラ)》というA・Iを呼び出す。
そして、『《占札の使鬼姫》の今現在、一番直通で連絡の取りやすい電話番号を検索せよ』という指示を出す。
数分かかるだろうと、さっさと、淡い色合いのスラックスと揃いのジャケットを選び、着替える。
あと、エメラーダの髪色は、人ごみでは目立つだろうと黒く長い髪のカツラもついでに引っ張り出す。
『見つけました。
 日本国××の時乃市真摩町二丁目14の7です。
 電話番号は、××××ー××ー××××です。』
「了解、ありがとう、ローラ。
 あと、アングラで、今日の《レジスト》組の評判聞いて置いて。
 目に余る発言をしたヤツの住所と。」
『了解しました。』
電話番号をさらりとメモする。
ローラが、この番号を提示したと言う事は、ホットラインか何かなのだろうと、カインは当たりをつける。
そして、電話のボタンを順に押す。
妙に、ドキドキしている。
ハイティーンが、アコガレの人に電話をする訳じゃないのに。
苦笑しつつ、カインは繋がるのを待つ。
四回のコール音の後、繋がった。
『はい、もしもし。』
「先日はどうも、《影の語り部》殿?」
『・・・・・・《片眼王》、なんのようだ?』
「何時空いてる?」
『は?』
「この間の戦闘のとき、会ってあげるって言ったじゃん。」
電話の相手の《影の語り部》こと、エイレン=レティナ=マイセリアルだった。
メゾソプラノよりも、やや低いけれど、アルトと言うほど低くないそんな声だった。
声質も、調子も違うし、本当の彼の声を聞いた事の無いカイン・・・・・・いや、《片眼王》でも、あの人形のような人の悪かった《影の語り部》を彷彿とさせた。
そうでなくとも、自分の記憶でもはない記憶で、自分の友人の相棒だったレティナの声だった。
そうであった時から、年齢が加わった分落ち着きが増している。
・・・・自分を殺した相手だ。
彼女が自分を・・・アベルを殺さなければ、まだ親しい友であったであろう女性だ。
『・・・・・・言ったけれどね。
 今、何時だと思う?』
「ん〜、と夜の六時?」
少し早いが、それくらいのはずだ。
六時半までには、ロビーに降りなくては、エメラーダに怒られる・・・・ことはなくても、嗜められるだろう。
『戯け、今はこっちは三時過ぎだ。
 こっちの夜の六時・・・・そちらの朝の九時過ぎに掛け直せ、流石に眠いんだけど?』
「うん、わかった。
 でも、しばらくは、色々と忙しいし、一週間以内に掛けるから。」
『そうか。』
「そんじゃ、おやすみね、エイレン。」
高く小さな金属音とともに、電話が終わる。
一応、最後の遣り取りは、向こうに合わせてだ。
こちらは、まだまだ宵の口と言うにも、早い時間なのだ。
「にしても、可愛いね。
 ま、今の僕が言うと違和感あるのは間違いないけど。」
設定年齢上、永遠の27歳な訳だが、それでも、記憶の中ではもう、自分は、47歳のはずで、そんな矛盾でも、エイレンの事はそう思ってしまう。
身長も、同じ【七罪】のクロエよりも、やや高い程度だ。
それなのに、背負うモノが重い。
【《クラン》を壊滅させた者】の一人として。
【御伽噺の幽霊に生み出された者】として。
【裏稼業レジスト組の良き先鋒者】として。
【幼なじみと決別を選んだ者】として。
色々と、背負い過ぎてるのかもしれない。
「僕としても、嫌いじゃない印象だったしね。」
そのとき、甲高い電子音が部屋に鳴り響き、カインの思考を中断させた。
電話だ。
『カイン様、一応、もう五分ほどで、六時半です。』
「わかった。
 すぐ、降りるから。」
『では、失礼します。』
と言う内容と言うか、全会話である。
どこで、夕飯にするべきかなと、思いつつ、ウェストポーチに財布などを入れ、部屋を出た。
ある意味でのデートに向かう為に。







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というわけで、夜編全10編は、終了です。
本編自体は、日常編がしばらくはずです。
その前に、アルト君の外伝などを投稿しますので、本編は、夏休み明けでしょうか?


では、優しく甘苦い悪夢を貴方に。