◆−家族の写真 番外 同じ空の下には、もういない−十叶 夕海 (2007/7/22 20:18:37) No.18236 ┣家族の写真 外伝 未来は余りに不確かで、過去は余りに密接で side:white−十叶 夕海 (2007/7/25 16:58:30) No.18243 ┃┣家族の写真 外伝 未来は余りに不確かで、過去は余りに密接で side:black−十叶 夕海 (2007/7/25 17:00:36) No.18244 ┃┃┗Re:家族の写真 外伝 未来は余りに不確かで、過去は余りに密接で side:black−月読 乾 (2007/8/12 21:10:44) No.18270 ┃┃ ┗復讐と言うには、もう愛着がわき過ぎている・・・・・そんな感情。−十叶 夕海 (2007/8/13 04:10:13) No.18272 ┃┣家族の写真 外伝 会いたくて でも会えなくて side:gray−十叶 夕海 (2007/7/25 20:13:21) No.18245 ┃┗過去も未来も今は同じ場所に……−月読 乾 (2007/8/6 21:16:43) No.18266 ┃ ┗ピー○姫になってるのは、男としてどうかとは思うけれど。−十叶 夕海 (2007/8/13 03:51:00) No.18271 ┣Re:家族の写真 番外 同じ空の下には、もういない−月読 乾 (2007/7/25 21:20:10) No.18246 ┃┗好きだからこそ、忘れる事はない。−十叶 夕海 (2007/7/30 00:02:06) No.18255 ┗慣れないマスカラはつけるものではありません。(内容に関係は・・・・微妙に有り?)−羅城 朱琉 (2007/7/28 19:57:02) No.18252 ┗だから、化粧は女の戦装束たりえる。−十叶 夕海 (2007/7/30 02:05:58) No.18256
18236 | 家族の写真 番外 同じ空の下には、もういない | 十叶 夕海 | 2007/7/22 20:18:37 |
その日は、満月だった。 まだ、マティに封印されて、それを解いてもらってから。 そうそう時間が立っていない、そんな頃だった。 私は、窓から、月を見ていた。 紫乃から、『とっとと寝ろ』と言われて、渡されたホットミルクもとうに冷めていた。 「やっぱり忘れる事など出来ないね。」 私は、そう呟いた。 そして、思い返す。 家族の写真 番外 同じ空の下には、もういない そして、思い返す。 私が、誰かを亡くして、自分を失ったのは何度か合った。 特に酷かったのは、確か・・・・・・・。 吸血鬼としての父親のクロイツを失った時。 大好きだったルーグを亡くした時。 そして、カーティスを失った時だ。 特に、三つ目のカートの時は酷かった。 100年近く、ふて寝していたからな。 そもそも、アイツに出会ったのは、900年ほど前か。 ルーグを失って、神影作って、ソラを作り直して、欧州中を当て所も無く彷徨っていたっけ。 踊り子と楽士と護衛って形で。 で、途中で、カートを拾った。 ブラウンの髪と淡い空色の瞳で、拾った時は10歳ぐらいだったかな。 久しぶりに、立ち寄れた街で、死にかけてた。 なんで、助けたのかも解らない。 薄汚れたガキだった。 「ありがと。 俺、カート。 カーティス・フォン・ジークルーゼってんだ。 姉ちゃんと、後一緒に居たあんちゃんたちはなんて名前?」 「私は、ジュリ。 あとから、紹介するが、黒い方が神影、白い方がソラ。」 「へぇ、綺麗な名前だね。」 「・・・・・・・・・貴族のガキが、なにしてた?」 「良くある話だよ。 親が早くに死んで、親族に財産取られて、殺されかけて、逃げたけど、のたれ死するとこだったってこと。」 「確かに、なくもない、話だ。」 「姉ちゃんは? こんないい宿に泊まれるぐらいだから、いいトコのお嬢様じゃないの?」 「ちがうよ、ただの旅芸人。」 貴族のガキだってのには、驚いた。 らしくなかったからね。 娼婦の子供が、親に捨てられていたってほうが、よっぽどしっくり来るような口調だったしね。 それから、一緒に連れて歩いた。 神影とソラは驚いたけど、たいした意味は無い。 気まぐれに近いもんだった。 神影に、剣を教えてもらってたりもした。 五年もすれば、客寄せの口上も、上手くなっていた。 顔もいいし、街のお姉さんがたに、すごくすごくモテたね。 それこそ、日替わりで、夜のお相手するくらいにね。 ・・・・・・拾ってから、10年。 カートが20歳になった時に言った。 「ここ十年で、解ったと思うけど、私はバケモノよ。 それでも、一緒に来る? 別れても、構わないよ。 自由にしろ、お前の人生だ。」 あの時代は、16歳で一人立ちするのが、習わしだったけど。 だけど、ずるずると、四年も延ばしてしまった。 笑えるだろう? 吸血鬼が、不老不死で、しかも使い魔持ちが、人間と離れたくなかったなんて。 でも、彼は笑い飛ばしてこう言った。 「バケモノだろうとなんだろうと、ジュリはジュリだろ? 10年間一緒に居た時間がニセモノだってんなら、別れっけど。 そうじゃねぇんだろ? なら、別れねぇ。 俺の命尽きるまで、何年あるかはわからないけどよ。 ついていけなくなるまで、ついてくよ。」 吃驚して、その時は、言葉が出なかった。 神影は、人悪く笑うだけだったし。 ソラは、静かに微笑むだけだった。 「・・・・・・・いいのか?」 やっと出たのは、その言葉だった。 別れる時は来るにしても、そう近い事ではない事ではないって知ったから、それからの旅は何倍も楽しかった。 四季も、ルーグが死んでから、くすんで見えてたのに、カートとしばらくいられるってだけで、鮮やかさを取り戻してた。 少なくとも、恋人同士の意味での好きではなかったけど、親子とか兄弟とかそんな感じの好きだったとは思う。 でも、一人の人間とそんなに長く過ごしたのは、《御伽噺の幽霊》とフィッルーカ・ファミリーの一部の幹部たちぐらいだ。 個人だけなら、カートが一番長い。 「俺ね、ジュリの事好きだよ。 一緒に住めないのは、解ってるけど、それでも大好き。」 冬のある日そう言ってくれた。 だけど、その数日後、彼は死んだ。 山賊に、囲まれて、私を護ろうとして、死んだ。 同じ『ヒト』に、殺されて死んだ。 街で、騒動が起こってそのままいたら、殺されかねなかったから、山越えをしていた日にことだ。 その街の近くの森の奥に廃城があったから、そこを目指してたんだ。 死ねないって、死なないって、知ってたはずだったのに、山賊の剣と私の間に立って、斬られた。 血が、私の白い頬を染めた。 その血が、私の吸血鬼の部分を熱く熱くした。 視界が真っ白に染まった。 気付いたら、神影に抱き締められてた。 「落ち着いて、主。 そのままだと、森も、カートも跡形も無くなってしまう。」 「あ、う、うん。」 当たりの木々がなぎ倒され、山賊だったとおぼしき『肉片』が木や雪の上にこびりついていた。 我に返ってすぐ、カートとソラを探した。 ソラは、戦闘には参加しないでいたはずだった。 わりあい、すぐ傍にソラとカートはいた。 ソラの白い服も、周りの雪も、赤く紅く、キレイナ赤に染まっていた。 カートの血で、染まっていた。 「・・・・っカート。」 「たは・・・・・ドジった。 ・・・ジュリさん・・・・・・怪我・・・・・・して、ない?」 「して、ない。」 「・・・・・・ジュリさん、残念ですが。」 ソラのその短い一言で、全部解ってしまった。 いや、認めてしまったか。 あれだけ、血が流れていたんだ。 『ヒト』ならば、死ぬ量だ。 「・・・・・・・・・・ごめん、カート。」 「ううん・・・じゅり、は・・・・悪・・・くない。 ごめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 続きは、紡がれる事は無かった。 ずっと、ずっと、カートは黙ったままだった。 私は、泣いた。 天を衝くかと言うほど、泣いた。 それから、近くにあった廃城の傍にカートを埋めた。 その廃城を、人が住めるように数年かけて、修理した。 泣ける場所が欲しかったのだ。 どうしても、神影やソラの前では、泣くに泣けないのだ。 だから、修理が終わった日、私は、二人に『起きてくるまで起こすな』と言って、寝室にした部屋に引っ込んだ。 ・・・・・・・大切な人を奪っていく世界を知覚していたくなかったんだ。 しばらく、何も考えずに、眠った。 時折、泣き寝入りのような形になっていたのを微かに覚えている。 100年が経ったくらいだろうか、私は起きた。 髪が、身長より長く長くなっていた。 それで、やっと認める事が出来た。 カートが同じ空の下にいない事を。 ソラに髪の毛を切ってもらって、また欧州中を彷徨う生活に戻った。 だけど、数年に一回、その廃城に戻って、カートが眠る墓に参ずることだけは止めなっった。 「懐かしいな。 カートが死んだ日の晩も、こんな月だった。」 もう900年が経った。 なのに、カートを失った痛みは、私の胸を痛ませた。 それ以上に胸を痛ませるのは、ルーグを失った事だけれど。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 友人と、吸血鬼は、不老不死だし、基本的に年は取らないけど。 髪の毛は伸びるのか?という遣り取りの中で、多分のびるし、膜は再生するんだろうと言う結論に達しまして。 それで、生まれた話です。 一応、エッチシーンがあるプロットでしたが、無くなりました。 ・・・・・・・・・しかし、よくジュリは、人間嫌いにならないモノだねぇ。と人ごとのように行ってみます。 次は、本編の夜編9直後の時間軸の短編を投稿予定です。 ではでは。 |
18243 | 家族の写真 外伝 未来は余りに不確かで、過去は余りに密接で side:white | 十叶 夕海 | 2007/7/25 16:58:30 |
記事番号18236へのコメント 全く、他世界から隔絶されたこの世界に在っても。 自分の立場が危ういことはわかっています。 私が 貴方の枷になるならばこの身すらいらないけれど。 それでは貴方の受けた屈辱が無駄になってしまうし 貴方も自分を捨ててしまうかもしれないと思うと出来ないんです。。 だけど、無茶はしないでください。 だから、無茶はしないでください。 私は、このまま囚われていますから、この空間に居ますから。 だれも、欠けて欲しくない。姫に堕ちた白き隠者の只一つの願いなのですから。 未来は余りに不確かで、過去は余りに密接で side:white ―だから 貴方を憎む事は出来ない どこかの空間。 真白の霧か雲か、そんな空間。 そこに、二人の黒と白の人物が、存在する。 黒い方は、黒いちぢれた髪を背中の中程まで伸ばし、細く古びた赤いリボンで纏めている。 瞳は、楽しげな色宿る黒曜石色だった。 肌は、どこまでも白く、人形を想起させる。また、黒いルージュを引いていた。 服は、スーツのような服に、コートと言うよりも外套と呼んだ方がしっくりと来るモノに、翡翠に赤い組紐の紐タイというもので、スーツも外套も真黒というよりは、夜色のものだ。 それに、焦げ茶のロイド眼鏡を掛けている二十歳後半の青年だ。 この空間では、一番浮いて見える。 名前を神影という。 白い方は、限りなく白に近い淡い茶色の直毛を銀のサークレットで押さえ、先の方を青く輝く布で纏めている。 瞳は、憂いを含んだ淡い琥珀色だった。 肌は、何処までも白く、死人を想起させる。また、唇は珊瑚のように艶やかだった。 服は、古ぼけた吟遊詩人のようなゆったりとしたローブに上衣に、そして、ケルティックハープを持っていた。色は、ほぼ例外無く白地に銀の複雑な刺繍だ。 数少ない例外は、銀鎖で結ばれたサファイアで彫られた花がついたチョーカーぐらいである。 白皙というのに相応しい静謐な容貌の二十歳と少しぐらいの青年だ。 名前をソラという。 この霧のようなモノが満ちた空間を支配していたのは、いたいほどの『静寂』だった。 しかし、その静寂を打ち破ったのは、神影の方だった。 「未だ同じ望みを抱くのだね」 淡々とした、それでいてどこか喜色を滲ませた声にソラは応えるものを持っていなかった。 否。持っていないふりをした。 くつくつと押し殺された笑い声は、おそらくソラが振り向かない間は後ろに存在する神影が漏らしたものだ。 神影。 《地獄の吟遊詩人(ヘルズバード)》の配下になり下がったかつての相棒だ。 道具が、作り主にして使い手の《凍れる樹姫》に反逆した存在。 「・・・・・・私の望み、ですか。」 「そう。純粋で単純であるが故に、ひどく複雑で難解なモノだ。」 「っ!」 彼の出現はいつだって唐突で、こちらの不意をつく。 しかし目の前に立ち塞がるような、まともに姿の見える現れ方はしなかった。 ソラが、作り出し、支配するこの空間に、日参までは行かなくても、暇さえあれば、顔を出していてすら、そうしなかった。 死角に存在しているのが当たり前だった。 「きちんと顔を見せてくれるのは随分と久しぶりですね。」 「おや、機嫌を損ねてしまったかな。《白き隠者》、いや《白き深遠なる歌い手》かな?」 「私の名は『ソラ』です。 その呼称は、止めてください。」 ロイド眼鏡の奥の瞳がすぅっと細まる。 「ソラ。君は何故立て篭る?」 彼の言葉の意味はよくわかっている。 彼の隣りに立つのは、ソラの役目ではない。 ジュリのソラと彼の作り手でもあるジュリの役目でもない。 今、神影とソラの主は、契約上は、マティルナ=クロイスラーだ。 道具は、主を裏切っては行けない。 そして、それを逆らっているのは、ソラなのだ。 「私が、逆らっても行けないような事なのに?」 ソラにしては、多少皮肉な物言いになってしまったのは仕方がない。 「『ソラの望み』はマティルナ様の妨げとなってしまう」 「知っています。 ・・・・・でも、知っているはずでしょう?」 ソラの持つ望み。 それがソラをこの場所を紡ぎ続ける立場に引き止める唯一の蜘蛛の糸だ。 そしてそれこそがソラを神野と立場を違えている唯一にして、最大の理由。 「私の望みはしばらくは絶対に叶わない」 「だからこそソラ、君と私とは違う。 例え君が《白き隠者》として全てを厭い、全てに唾棄し、全てに背を向けようと・・・・・・。 ・・・・・そう、自我を捨て去ろうとも。」 かつて、ソラ達は『母』を追い求めた。 全てを知ろうとし、あらゆる魔法も魔術も希望も絶望すらも身のうちに溜めようとした。 神影の一番の望みであり、自分の願いでもあったから。 でも、今はそれを望んでいない。 ・・・・・それでも。 「ジン」 ソラは神影が神影である事を止めてから、始めてその名前を呼んだ。 六十年前以来だ。 ソラが、この空間を作り出し、閉じ篭ってから、それ以来に呼んだ。 不意をつかれたように黙り込んだ彼に昔の面影を見出すのは簡単だった。 「でも、まだわかっていませんよね?」 いつだって、 どんな時だって、 どこでだって、 どんな想いの中にいたって、 ―――私が欲しかったのは。 「・・・・・・・私には全ての者の望みを叶える力がある。読み取る力も持っている。」 正確には、主に持たされたと言うべきなのだろうけど。」 「例外なのは、私が神影、あなた自身でもあることです。 誰でも自分の姿や望みを見ることはできません。 まして、貴方なら、尚更、難しいんですよ。」 「なるほど。そう思うのならば、それも一つの真実の断面だろう。 しかし私はソラの望みがわかっている」 ソラはなんだか淋しいような、虚しいような気分になって首を振る。 そうではあるけれど、そうじゃないのに。 「何が違うのかね?君の望みは私の『消滅』だろう」 これが、白き隠者と黒き従者の間に出来た深い深い、地獄の底さえも通り過ぎるほどの溝。 垣間見えるたびに沸き起こる絶望感を、どう言い表せるというのだろう。 百万言を弄しても、できないだろう。 《片眼王》の味わった闇より、なお暗く。 古くは裏切り者であった《道化師》の無力感よりも、なお虚ろに。 ソラを蝕んでいく。 「それは望みを叶えるための通過地点でしかないです。」 「何を・・・・・・」 「ねえ」 ソラは嗤う。 哀しげに嗤う。 《歌乙女》のように純粋で優しくあったなら。いやせめて、普通の存在であったなら。 泣いてしまいたかったけれど。 「私はずっと、」 六十年前から、ずっと願いを途切れさせていない願い。 「あの頃に戻りたいだけなんですよ……?」 いつだって、 どんな時だって、 どこでだって、 どんな想いの中にいたって、 ―――あたしが欲しかったのは。 貴方とジュリさんと過ごしていた時間。 ジュリさんが、お菓子を焼いて 私が、お茶をいれて ジンが、言葉で遊んでいた時間。 あの頃の私。 御伽噺のように古い、二人がまだ相棒だった頃の――― 「・・・・・ソラ・・・・・?」 その声はあまりにも昔のままだった。 「・・・・・・ただの、幕間の小話です。 それだけ、それだけなんです。」 ソラは、そう言って、顔を手で覆い首を振るだけだ。 彼にしてみても、解らないのだー哀しいのか、虚しいのか、怒っているのかさえ、解らない。 「・・・・・・・・ソラ、真実と言うのは、一つではないのだよ?」 「それでも、貴方が裏切り者と言う事には変わりないのに。」 「だから、こそ、なんだけどね。 ・・・・・・・いいニュースかどうかはともかく、主や《歌乙女》たちが動くみたいだよ。」 「・・・・・そう、ですか?」 「嬉しくないのかい?」 「さぁ、どうなんでしょうね。 事態が動くと言う事は、結末に向かうと言う事ですから。」 「・・・・・・・・ま、ともあれ、またね、と言うところだ。 それとね、私が全く傷つかないと思わないで欲しいな。」 そして、神影は、一気にソラとの距離を詰めると、軽く・・・それこそ、かすめるようなキスとその言葉だけを残し、現れたとき同様、消えた。 ソラが、それを認識した時には、神影の姿は無く、誰も見る者もいなかったが、顔を赤くしていた。 「・・・・・・相変わらず、わかりませんね。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・余計な事まで想い出してしまったではないですか。」 そして、連鎖的に、押し倒された事まで想い出してしまったようで、更に顔を赤くしてしまった。 一応、ソラより年上なのに、神影は自分よりも年下に思えてしまう時がある。 「・・・・・・・なんにせよ、私には、待つしか出来ないのですけどね。 男のこの身で、ピー○姫というのも、かなり情けないですが。」 それでも、神影が欠けても、自分が欠けても、ジュリは哀しむだろうけど。 ただ、この結界空間を維持し続け、待とうと思う。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 三連作第一弾。 言い訳は、三つ投稿し終わったあとに良いますです。 では、第二弾で。 |
18244 | 家族の写真 外伝 未来は余りに不確かで、過去は余りに密接で side:black | 十叶 夕海 | 2007/7/25 17:00:36 |
記事番号18243へのコメント 私はね、君にどう思われてもいい。 どう思われても、君が生きていることが。 この私の幸せなのだから。 だから、この侮辱にぬれるこの立場にいるんだ。 本来の主に、逆らっても、君がいなくなって欲しくないから。 だから、君は動かないで欲しい。 どうか、君は動かないで欲しい 主様が、君の近くまで行くまで、あの空間にいて欲しい。 君に、居なくなって欲しくない 道化に堕ちた黒き従者の微かな願いだから。 未来は余りに不確かで、過去は余りに密接で side : black ―だから 君には存在していて欲しい 「お帰りなさいって、言うべきかしら、神影?」 「そうだね、と言って欲しいのかな、マティルナ様?」 黒い人影こと、神影が、《C.C.》の自室に戻りソファに座ると、同時に主人役のマティルナが入って来た。 それは、は、ほとんど灰色の金色で長い髪と蒼穹の青の瞳で、年の頃20代後半の恐らく男性である。 服装は、黒いハイネックのワンピースに、極彩色のストールに、黒のタイツに、同色のブーツという女装だ。 そして、笑顔では隠しきれないほどの喜色に満ちた状態であった. 「また、ソラに会って来たの? ・・・・・・・・言う事を聞かないお人形ちゃんのところに。」 「ええ、相手が本格的に動く以上、動かれては、マティルナ様も、お困りだろうと思ってね。」 「それは、否定しないわ。 ・・・・・・・・・でもね、神影。」 「何かな?」 座った神影の首に手を滑らせる。 片手で、胸板の方へ撫で、もう片手で、顔のライン沿いをするりと撫で、そのまま自分の方へ向かせる。 神影にしては珍しく渋い顔で、マティルナのされるがまに、されている。 「解っているわよね? 神影、貴方が従っているから、ソラは好きにさせていることよ。」 「忘れているとでも思ったのかい?」 「そんな事無いわ。 神影は、イイコだもの。」 くすくすと笑いながら、マティルナは、神影の唇と自分の唇と重ね合わせる。 無感情な神影の瞳と視線を合わせ、マティルナは、楽しげにキスを楽しむ。 舌同士を絡めても、歯茎をなぞっても、神影の表情は動かないし、嫌がる事はしない。 そんな風に、深いキスを二人は交わす。 数分後、やっとマティルナが唇とを離す。 「こんなことしても、抵抗しないものね。」 「反応が、無い人形相手に酔狂な事だね。」 「くすくす、神影のは、濃厚で情熱的ってわけじゃないわ。 でも、気分よくさせてくれるからねぇ。」 楽しげに楽しげに、マティルナは行為を楽しむ。 決して、神影が、言葉以上・・・・・行動として、嫌がれない、断れない事を知っているのだ。 だから、マティルナは、60年前、親友のジュリから奪ったはいいが、自分で作った異空間に引きこもったソラをそのままにしている。 ソラは、自分が知らないうちに、神影の枷になっている事は知らないだろうから、彼を裏切り者扱いしているのだろう。 そう考えただけでも、マティルナは、己が昂るのが解るのだ。 「・・・・・・そうかね?」 「ええ、二人とも、奪って来て片方が引き籠った時はどうしようかと思ったけど。 神影が、二人分、働いてくれてるからね。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「でも、解っているでしょう? ・・・・・・神影が反抗的だったら、ソラは壊しちゃうわ。 反対に言えば、神影が従順だったら、ソラは壊さないで放っておくわ。 それじゃ、また明日ね。」 「・・・・・・おやすみなさい、マティルナ様」 「ふふ、そうね、おやすみ、神影。」 「酔えもしないのに、酒が飲みたくなるのは、人間に毒された結果かな。」 数時間後、彼の部屋には、ラム酒やジンなどのフルボトルが、数十本机や床に転がっていた。 少なくとも、この短時間で、一人で且つ、肴無しで、飲んだのだとしたら、人間なら間違いなく、病院行きではないかと思う。 むしろ、病院に行く前に、天国に逝っているのではないかと言うような量だ。 それなのに、神影は、顔を赤くすらしていない。 素面と言われれば、納得してしまいそうだ。 基本的に、神影は、マティルナの事は嫌いではない。 この辺は、造り主であり、主のジュリ=ローゼンマリアの感情に寄るところが大きい。神影は、千年前のルーグ=ドゥシャスが主とマティルナに出会い、死別した事件を詳しくは、知らない。 しかし、その事件で、ジュリとマティルナは、完全に袂を分かち、敵対する関係になったと言う事なのは、間違いない。 それなのに、ジュリは、マティルナを憎むどころか嫌っても居ない。 直後に造られた自分や、その後の言葉の端々に、それがあるのだ。 だからと言っても、従っているのはその為ではない。 「私の主は、ジュリだけだよ。」 神影は、ジュリに造られた。 彼の世界には、初めは、ジュリしか居なかった。 周りの世界は、ジュリを介して存在していた。 初めは、ソラですら、そうだったのだ。 なのに、変わっていった。 いつの間にか、家族になっていった。 それこそ、失いたくない存在に。 ジュリと同じぐらいに、なっていた。 「初めは、家族だったんだ。 実年齢じゃ、ソラの方が上だけれどね、役割的にはお兄さんぶっていたね。」 それから、ジュリは、《御伽噺》のなかで、両手じゃ数えきれないほどの哀しみと別れを繰り返した。 だけども、彼女は、人を嫌わなかったし、厭わなかった。 また、《道化師》や、《賢き愚者》が、狂っていくのを止められなかったのには、泣いていたっけ。 その間にも、マティルナは、戦闘を挑んで来た。 何故かは解らないけど、ね。 それが、60年前の戦闘の後、マティルナは、神影とソラのジュリに結ばれていた『紲糸』を自分に結び変えて、従属を迫って来た。 それに、抵抗して、彼が持ちうる力を全て注ぎ込んで、《霧の縛呪空間(ミスティ・チェーンゾーン)》を作り出したソラは、そこに立て篭った。 「私は、自分の事を道具だと思っている。 道具は、造り手ではなく、使い手に従うモノなのに。 私より、自分を道具だと思っている君が、何故抵抗したのかね。」 マティルナには、それをすぐにでも壊せる余裕があったが、残った神影に、こう言ったのだ。 『ソラを消されたくなければ、自分の配下になれ』と。 是も非もなかった。 家族を消されると聞いて、否と言えなかった。 だから、従った。 その間にも、ソラの元に通った。 表向きは、『ソラへの説得』として。 裏向きは、『ソラに会いに』として。 屈辱的な目に、数えきれないほどあった。 だけど、ソラに会えるだけで、良かった。 「・・・・・・・いつからなんだろうね、君が『家族』ではなくなったのは。」 いつからかは解らないけど、神影に取って、ソラは家族ではなくなっていた。 それ以上の存在になっていた。 あの焦燥を。 あの切なさを。 『家族』への感情だと言ってしまったら、『恋愛』なんかないんじゃないかって言うくらいに、焦がれていた。 「それだけで、ソラを抱いてしまうと言うのは、我ながらガキ臭いとは思うけれどね。」 カンケイを持ってしまって、改めて気付いた。 自分が、ソラに恋愛感情を抱いていると。 そう神影は、自覚してしまった。 「道具が、造り手の想定しない感情を抱くのは、壊されても仕方ないのに。」 だから、神影は、それまで以上にマティルナにソラを壊されないように、立ち廻った。 屈辱的な目に遭おうと、ソラに居なくなって欲しくなかったから、 だから、ソラには、動いて欲しくない。 そうすれば、マティルナが、動く事はないから。 「・・・・・この《黒き死神》とか、呼ばれた身で、主頼りとは情けない。 大切な人を護れないとは・・・・・・・」 でも、もう少しでそれも終わるかもしれない。 《C.C.》とジュリ達の争いが本格化すれば、主はソラを助けにくるかもしれないのだから。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 三連作第二弾です。 時間軸が連続しているのは、ここまでです。 第三弾は、これより、一月ほどあとの話になります。 では、第三弾で。 |
18270 | Re:家族の写真 外伝 未来は余りに不確かで、過去は余りに密接で side:black | 月読 乾 | 2007/8/12 21:10:44 |
記事番号18244へのコメント こんばんは、乾です。連作も折り返しですね。 では、レス行かせてもらいます。 >私はね、君にどう思われてもいい。 >どう思われても、君が生きていることが。 >この私の幸せなのだから。 >だから、この侮辱にぬれるこの立場にいるんだ。 >本来の主に、逆らっても、君がいなくなって欲しくないから。 >だから、君は動かないで欲しい。 >どうか、君は動かないで欲しい >主様が、君の近くまで行くまで、あの空間にいて欲しい。 >君に、居なくなって欲しくない 道化に堕ちた黒き従者の微かな願いだから。 例え、君が全てを捨てたとしても君の捨てたものと同じくらいに 君の全てを守りたい…… 君が悠久の虚無を過ごすように、僕は永劫の闇を生きよう。 君となら、それも悪くない…… >「お帰りなさいって、言うべきかしら、神影?」 >「そうだね、と言って欲しいのかな、マティルナ様?」 >黒い人影こと、神影が、《C.C.》の自室に戻りソファに座ると、同時に主人役のマティルナが入って来た。 >それは、は、ほとんど灰色の金色で長い髪と蒼穹の青の瞳で、年の頃20代後半の恐らく男性である。 >服装は、黒いハイネックのワンピースに、極彩色のストールに、黒のタイツに、同色のブーツという女装だ。 >そして、笑顔では隠しきれないほどの喜色に満ちた状態であった. >「また、ソラに会って来たの? > ・・・・・・・・言う事を聞かないお人形ちゃんのところに。」 >「ええ、相手が本格的に動く以上、動かれては、マティルナ様も、お困りだろうと思ってね。」 >「それは、否定しないわ。 > ・・・・・・・・・でもね、神影。」 >「何かな?」 >座った神影の首に手を滑らせる。 >片手で、胸板の方へ撫で、もう片手で、顔のライン沿いをするりと撫で、そのまま自分の方へ向かせる。 >神影にしては珍しく渋い顔で、マティルナのされるがまに、されている。 >「解っているわよね? > 神影、貴方が従っているから、ソラは好きにさせていることよ。」 >「忘れているとでも思ったのかい?」 >「そんな事無いわ。 > 神影は、イイコだもの。」 >くすくすと笑いながら、マティルナは、神影の唇と自分の唇と重ね合わせる。 マルティナさん……天性S(滝汗 それはさておき、なされるがままになってるように見える神影も何かやらかしそうな感じ。 狸と狐の化かしあい? >無感情な神影の瞳と視線を合わせ、マティルナは、楽しげにキスを楽しむ。 >舌同士を絡めても、歯茎をなぞっても、神影の表情は動かないし、嫌がる事はしない。 >そんな風に、深いキスを二人は交わす。 >数分後、やっとマティルナが唇とを離す。 >「こんなことしても、抵抗しないものね。」 >「反応が、無い人形相手に酔狂な事だね。」 >「くすくす、神影のは、濃厚で情熱的ってわけじゃないわ。 > でも、気分よくさせてくれるからねぇ。」 >楽しげに楽しげに、マティルナは行為を楽しむ。 >決して、神影が、言葉以上・・・・・行動として、嫌がれない、断れない事を知っているのだ。 >だから、マティルナは、60年前、親友のジュリから奪ったはいいが、自分で作った異空間に引きこもったソラをそのままにしている。 >ソラは、自分が知らないうちに、神影の枷になっている事は知らないだろうから、彼を裏切り者扱いしているのだろう。 >そう考えただけでも、マティルナは、己が昂るのが解るのだ。 ソラさん、やはり姫ですねぇ…… 最強の人質(?)を捕られた神影さん、一体いつまでこのままでいるんでしょう? >「・・・・・・そうかね?」 >「ええ、二人とも、奪って来て片方が引き籠った時はどうしようかと思ったけど。 > 神影が、二人分、働いてくれてるからね。」 >「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 >「でも、解っているでしょう? > ・・・・・・神影が反抗的だったら、ソラは壊しちゃうわ。 > 反対に言えば、神影が従順だったら、ソラは壊さないで放っておくわ。 > それじゃ、また明日ね。」 >「・・・・・・おやすみなさい、マティルナ様」 >「ふふ、そうね、おやすみ、神影。」 結局、人質以上の感情を持ってる?マルティナさん。 神影さん、ここが男の見せ時(?)! >「酔えもしないのに、酒が飲みたくなるのは、人間に毒された結果かな。」 >数時間後、彼の部屋には、ラム酒やジンなどのフルボトルが、数十本机や床に転がっていた。 >少なくとも、この短時間で、一人で且つ、肴無しで、飲んだのだとしたら、人間なら間違いなく、病院行きではないかと思う。 >むしろ、病院に行く前に、天国に逝っているのではないかと言うような量だ。 >それなのに、神影は、顔を赤くすらしていない。 酔えないのに、飲みたくなる。 例え意味が無くてもやってみたくなるのは、無駄な行為でも人間らしい感情の証だと思います。 >素面と言われれば、納得してしまいそうだ。 >基本的に、神影は、マティルナの事は嫌いではない。 >この辺は、造り主であり、主のジュリ=ローゼンマリアの感情に寄るところが大きい。神影は、千年前のルーグ=ドゥシャスが主とマティルナに出会い、死別した事件を詳しくは、知らない。 >しかし、その事件で、ジュリとマティルナは、完全に袂を分かち、敵対する関係になったと言う事なのは、間違いない。 >それなのに、ジュリは、マティルナを憎むどころか嫌っても居ない。 >直後に造られた自分や、その後の言葉の端々に、それがあるのだ。 >だからと言っても、従っているのはその為ではない。 >「私の主は、ジュリだけだよ。」 >神影は、ジュリに造られた。 >彼の世界には、初めは、ジュリしか居なかった。 >周りの世界は、ジュリを介して存在していた。 >初めは、ソラですら、そうだったのだ。 >なのに、変わっていった。 >いつの間にか、家族になっていった。 >それこそ、失いたくない存在に。 >ジュリと同じぐらいに、なっていた。 >「初めは、家族だったんだ。 > 実年齢じゃ、ソラの方が上だけれどね、役割的にはお兄さんぶっていたね。」 >それから、ジュリは、《御伽噺》のなかで、両手じゃ数えきれないほどの哀しみと別れを繰り返した。 >だけども、彼女は、人を嫌わなかったし、厭わなかった。 >また、《道化師》や、《賢き愚者》が、狂っていくのを止められなかったのには、泣いていたっけ。 ソラさんもジュリさんも、一緒にいたからこそ言葉で言い表せない『家族』なんですね。 一緒にいたからこそ、その時間と記憶は失いたくないのでしょうか? >その間にも、マティルナは、戦闘を挑んで来た。 >何故かは解らないけど、ね。 >それが、60年前の戦闘の後、マティルナは、神影とソラのジュリに結ばれていた『紲糸』を自分に結び変えて、従属を迫って来た。 >それに、抵抗して、彼が持ちうる力を全て注ぎ込んで、《霧の縛呪空間(ミスティ・チェーンゾーン)》を作り出したソラは、そこに立て篭った。 >「私は、自分の事を道具だと思っている。 > 道具は、造り手ではなく、使い手に従うモノなのに。 > 私より、自分を道具だと思っている君が、何故抵抗したのかね。」 >マティルナには、それをすぐにでも壊せる余裕があったが、残った神影に、こう言ったのだ。 >『ソラを消されたくなければ、自分の配下になれ』と。 >是も非もなかった。 >家族を消されると聞いて、否と言えなかった。 >だから、従った。 >その間にも、ソラの元に通った。 >表向きは、『ソラへの説得』として。 >裏向きは、『ソラに会いに』として。 >屈辱的な目に、数えきれないほどあった。 >だけど、ソラに会えるだけで、良かった。 >「・・・・・・・いつからなんだろうね、君が『家族』ではなくなったのは。」 >いつからかは解らないけど、神影に取って、ソラは家族ではなくなっていた。 >それ以上の存在になっていた。 >あの焦燥を。 >あの切なさを。 >『家族』への感情だと言ってしまったら、『恋愛』なんかないんじゃないかって言うくらいに、焦がれていた。 >「それだけで、ソラを抱いてしまうと言うのは、我ながらガキ臭いとは思うけれどね。」 >カンケイを持ってしまって、改めて気付いた。 >自分が、ソラに恋愛感情を抱いていると。 >そう神影は、自覚してしまった。 >「道具が、造り手の想定しない感情を抱くのは、壊されても仕方ないのに。」 >だから、神影は、それまで以上にマティルナにソラを壊されないように、立ち廻った。 >屈辱的な目に遭おうと、ソラに居なくなって欲しくなかったから、 >だから、ソラには、動いて欲しくない。 >そうすれば、マティルナが、動く事はないから。 >「・・・・・この《黒き死神》とか、呼ばれた身で、主頼りとは情けない。 > 大切な人を護れないとは・・・・・・・」 >でも、もう少しでそれも終わるかもしれない。 >《C.C.》とジュリ達の争いが本格化すれば、主はソラを助けにくるかもしれないのだから。 マルティナさんのある意味、『復讐』なんでしょうか? 大事なものを奪う事で。 でも、マルティナさん自身にもその奪ったものに特別な感情を抱いてしまっている気がします。 |
18272 | 復讐と言うには、もう愛着がわき過ぎている・・・・・そんな感情。 | 十叶 夕海 | 2007/8/13 04:10:13 |
記事番号18270へのコメント >こんばんは、乾です。連作も折り返しですね。 >では、レス行かせてもらいます。 こんばんは。 ありがとうです。 返レス行きます。 > > > >>私はね、君にどう思われてもいい。 >>どう思われても、君が生きていることが。 >>この私の幸せなのだから。 >>だから、この侮辱にぬれるこの立場にいるんだ。 >>本来の主に、逆らっても、君がいなくなって欲しくないから。 >>だから、君は動かないで欲しい。 >>どうか、君は動かないで欲しい >>主様が、君の近くまで行くまで、あの空間にいて欲しい。 >>君に、居なくなって欲しくない 道化に堕ちた黒き従者の微かな願いだから。 > >例え、君が全てを捨てたとしても君の捨てたものと同じくらいに >君の全てを守りたい…… >君が悠久の虚無を過ごすように、僕は永劫の闇を生きよう。 >君となら、それも悪くない…… 他人から、家族に、家族から、特別な一人に そうなった君を護る。 それだけが、今の私の道だ。 お前の為なら、それもそう悪くはない。 > > >>「お帰りなさいって、言うべきかしら、神影?」 >>「そうだね、と言って欲しいのかな、マティルナ様?」 >>黒い人影こと、神影が、《C.C.》の自室に戻りソファに座ると、同時に主人役のマティルナが入って来た。 >>それは、は、ほとんど灰色の金色で長い髪と蒼穹の青の瞳で、年の頃20代後半の恐らく男性である。 >>服装は、黒いハイネックのワンピースに、極彩色のストールに、黒のタイツに、同色のブーツという女装だ。 >>そして、笑顔では隠しきれないほどの喜色に満ちた状態であった. >>「また、ソラに会って来たの? >> ・・・・・・・・言う事を聞かないお人形ちゃんのところに。」 >>「ええ、相手が本格的に動く以上、動かれては、マティルナ様も、お困りだろうと思ってね。」 >>「それは、否定しないわ。 >> ・・・・・・・・・でもね、神影。」 >>「何かな?」 >>座った神影の首に手を滑らせる。 >>片手で、胸板の方へ撫で、もう片手で、顔のライン沿いをするりと撫で、そのまま自分の方へ向かせる。 >>神影にしては珍しく渋い顔で、マティルナのされるがまに、されている。 >>「解っているわよね? >> 神影、貴方が従っているから、ソラは好きにさせていることよ。」 >>「忘れているとでも思ったのかい?」 >>「そんな事無いわ。 >> 神影は、イイコだもの。」 >>くすくすと笑いながら、マティルナは、神影の唇と自分の唇と重ね合わせる。 > >マルティナさん……天性S(滝汗 >それはさておき、なされるがままになってるように見える神影も何かやらかしそうな感じ。 >狸と狐の化かしあい? ドSです。 狐とイタチの方が、どちらかと言えば、近いかもです。 ・・・・・・・・・これで、悪意よりも、好意が勝っていると言うには、信じられないですが。 > >>無感情な神影の瞳と視線を合わせ、マティルナは、楽しげにキスを楽しむ。 >>舌同士を絡めても、歯茎をなぞっても、神影の表情は動かないし、嫌がる事はしない。 >>そんな風に、深いキスを二人は交わす。 >>数分後、やっとマティルナが唇とを離す。 >>「こんなことしても、抵抗しないものね。」 >>「反応が、無い人形相手に酔狂な事だね。」 >>「くすくす、神影のは、濃厚で情熱的ってわけじゃないわ。 >> でも、気分よくさせてくれるからねぇ。」 >>楽しげに楽しげに、マティルナは行為を楽しむ。 >>決して、神影が、言葉以上・・・・・行動として、嫌がれない、断れない事を知っているのだ。 >>だから、マティルナは、60年前、親友のジュリから奪ったはいいが、自分で作った異空間に引きこもったソラをそのままにしている。 >>ソラは、自分が知らないうちに、神影の枷になっている事は知らないだろうから、彼を裏切り者扱いしているのだろう。 >>そう考えただけでも、マティルナは、己が昂るのが解るのだ。 > >ソラさん、やはり姫ですねぇ…… >最強の人質(?)を捕られた神影さん、一体いつまでこのままでいるんでしょう? 姫なんですよね。 望まずともね、ピーチ姫化してますね。 作中時間で、三ヶ月四ヶ月ほど。 > > >>「・・・・・・そうかね?」 >>「ええ、二人とも、奪って来て片方が引き籠った時はどうしようかと思ったけど。 >> 神影が、二人分、働いてくれてるからね。」 >>「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 >>「でも、解っているでしょう? >> ・・・・・・神影が反抗的だったら、ソラは壊しちゃうわ。 >> 反対に言えば、神影が従順だったら、ソラは壊さないで放っておくわ。 >> それじゃ、また明日ね。」 >>「・・・・・・おやすみなさい、マティルナ様」 >>「ふふ、そうね、おやすみ、神影。」 > >結局、人質以上の感情を持ってる?マルティナさん。 >神影さん、ここが男の見せ時(?)! なんですよね。 少なくとも、人質にたいして持つには甘い感情なのです。 > >>「酔えもしないのに、酒が飲みたくなるのは、人間に毒された結果かな。」 >>数時間後、彼の部屋には、ラム酒やジンなどのフルボトルが、数十本机や床に転がっていた。 >>少なくとも、この短時間で、一人で且つ、肴無しで、飲んだのだとしたら、人間なら間違いなく、病院行きではないかと思う。 >>むしろ、病院に行く前に、天国に逝っているのではないかと言うような量だ。 >>それなのに、神影は、顔を赤くすらしていない。 > >酔えないのに、飲みたくなる。 >例え意味が無くてもやってみたくなるのは、無駄な行為でも人間らしい感情の証だと思います。 酔えないからこそ、飲みたいんかもしれないですね。 うぃ、彼は少なくとも、今は人形ではないです。 > >>素面と言われれば、納得してしまいそうだ。 >>基本的に、神影は、マティルナの事は嫌いではない。 >>この辺は、造り主であり、主のジュリ=ローゼンマリアの感情に寄るところが大きい。神影は、千年前のルーグ=ドゥシャスが主とマティルナに出会い、死別した事件を詳しくは、知らない。 >>しかし、その事件で、ジュリとマティルナは、完全に袂を分かち、敵対する関係になったと言う事なのは、間違いない。 >>それなのに、ジュリは、マティルナを憎むどころか嫌っても居ない。 >>直後に造られた自分や、その後の言葉の端々に、それがあるのだ。 >>だからと言っても、従っているのはその為ではない。 >>「私の主は、ジュリだけだよ。」 >>神影は、ジュリに造られた。 >>彼の世界には、初めは、ジュリしか居なかった。 >>周りの世界は、ジュリを介して存在していた。 >>初めは、ソラですら、そうだったのだ。 >>なのに、変わっていった。 >>いつの間にか、家族になっていった。 >>それこそ、失いたくない存在に。 >>ジュリと同じぐらいに、なっていた。 >>「初めは、家族だったんだ。 >> 実年齢じゃ、ソラの方が上だけれどね、役割的にはお兄さんぶっていたね。」 >>それから、ジュリは、《御伽噺》のなかで、両手じゃ数えきれないほどの哀しみと別れを繰り返した。 >>だけども、彼女は、人を嫌わなかったし、厭わなかった。 >>また、《道化師》や、《賢き愚者》が、狂っていくのを止められなかったのには、泣いていたっけ。 > >ソラさんもジュリさんも、一緒にいたからこそ言葉で言い表せない『家族』なんですね。 >一緒にいたからこそ、その時間と記憶は失いたくないのでしょうか? なんですね、ソラはそれ以上になってますけど。 ええ、自分が消えれば、その時間は永遠に亡くなってしまう。 > >>その間にも、マティルナは、戦闘を挑んで来た。 >>何故かは解らないけど、ね。 >>それが、60年前の戦闘の後、マティルナは、神影とソラのジュリに結ばれていた『紲糸』を自分に結び変えて、従属を迫って来た。 >>それに、抵抗して、彼が持ちうる力を全て注ぎ込んで、《霧の縛呪空間(ミスティ・チェーンゾーン)》を作り出したソラは、そこに立て篭った。 >>「私は、自分の事を道具だと思っている。 >> 道具は、造り手ではなく、使い手に従うモノなのに。 >> 私より、自分を道具だと思っている君が、何故抵抗したのかね。」 >>マティルナには、それをすぐにでも壊せる余裕があったが、残った神影に、こう言ったのだ。 >>『ソラを消されたくなければ、自分の配下になれ』と。 >>是も非もなかった。 >>家族を消されると聞いて、否と言えなかった。 >>だから、従った。 >>その間にも、ソラの元に通った。 >>表向きは、『ソラへの説得』として。 >>裏向きは、『ソラに会いに』として。 >>屈辱的な目に、数えきれないほどあった。 >>だけど、ソラに会えるだけで、良かった。 >>「・・・・・・・いつからなんだろうね、君が『家族』ではなくなったのは。」 >>いつからかは解らないけど、神影に取って、ソラは家族ではなくなっていた。 >>それ以上の存在になっていた。 >>あの焦燥を。 >>あの切なさを。 >>『家族』への感情だと言ってしまったら、『恋愛』なんかないんじゃないかって言うくらいに、焦がれていた。 >>「それだけで、ソラを抱いてしまうと言うのは、我ながらガキ臭いとは思うけれどね。」 >>カンケイを持ってしまって、改めて気付いた。 >>自分が、ソラに恋愛感情を抱いていると。 >>そう神影は、自覚してしまった。 >>「道具が、造り手の想定しない感情を抱くのは、壊されても仕方ないのに。」 >>だから、神影は、それまで以上にマティルナにソラを壊されないように、立ち廻った。 >>屈辱的な目に遭おうと、ソラに居なくなって欲しくなかったから、 >>だから、ソラには、動いて欲しくない。 >>そうすれば、マティルナが、動く事はないから。 >>「・・・・・この《黒き死神》とか、呼ばれた身で、主頼りとは情けない。 >> 大切な人を護れないとは・・・・・・・」 >>でも、もう少しでそれも終わるかもしれない。 >>《C.C.》とジュリ達の争いが本格化すれば、主はソラを助けにくるかもしれないのだから。 > >マルティナさんのある意味、『復讐』なんでしょうか? >大事なものを奪う事で。 >でも、マルティナさん自身にもその奪ったものに特別な感情を抱いてしまっている気がします。 『復讐』とは言い切れないのが、また哀しい。 そう、人に近い感情を持つ以上、憎み続ける事は、難しいもんなんです。 |
18245 | 家族の写真 外伝 会いたくて でも会えなくて side:gray | 十叶 夕海 | 2007/7/25 20:13:21 |
記事番号18243へのコメント 六月の下旬で、梅雨の中休みなある日 「久しぶりって程じゃないけど 初めてね、玄関から来るんなんて」 「そうでしたか?」 「うん、いつもは、ベッドに潜り込んでくるか、それか、外だもの。」 銀色の長髪を赤いリボンで結んだ赤い瞳の少女の住処の玄関に、黒い長髪を黒いリボンで結んだ陰鬱な黒曜石の瞳の青年が訪れ居ていた。 少々この気温の高い日に合わせて、隣のコンビニでアイスとフローズンカクテルを買って来たようだ。 しかも、銀髪の少女―ジュリの好みに合わせて、ベリー系の銘柄ばかり。 「・・・・・・ともかく、上がれ、イライアス。 一応、会おうと言い出したのは、こっちだしね。」 会いたくて でも会えなくて side:gray ―だけど、もう我慢はしない 「・・・・・・それで、今回は、情報屋の私の助力ですか?」 「・・・うみ・・・・むぐ、むぐ。」 イライアスが、珍しく呆れたような言葉をジュリにかけた。 ・・・のだが、ジュリは、シャルドネのアイスにラズベリーのアイスを食べつつ、フローズンカクテルの缶を開けている。 20個づつ持って来たのだが、既に三分の一は、彼女のお腹の中だ。 「・・・ジュリさん?」 「ああっと、ごめんごめん。 シュロがさ、一日三つまでって止めるからさ。」 「一日三つは明らかに食べ過ぎです。」 「吸血鬼、お腹壊さない。」 「にしてもです。 ・・・・・・・心配し過ぎで、胃が痛くなる前に、失礼します。」 「あー、はいはい、ごめんなさい。 私が悪かったです。」 毒々しい紫色の液体の入った注射器を首の静脈に添えつつ、イライアスはそう言う。 それを、中身が彼の体内に入らないように、素早く奪う。 再会して、片手に少し余るぐらいしか会ってないのに、何故こうなるのだろうと思いつつ、今夜彼を呼んだ理由を話し始めた。 「・・・・・というわけだ。 今までは、探れば、マーティンがこっちを攻める口実になると思って、探査を書けなかったんだが、結構複雑な立場らしい。 ソラが、異空間に立て篭っているみたいだね。」 「・・・・・・・その神影さんは、《地獄の吟遊詩人》に、無理矢理従わされていると?」 「みたいだね。 プライドは高くはないけど、低くもないからね、鬱憤溜まってるだろうさ。 ・・・・・・・・・・・生まれが違うけど、神影とソラは、互いが大切だからね。」 「異空間に立て篭っているからには、安全ではないんですか? ・・・・・・・《白き詩人》の結界・空間は、最硬だと聞いた事があります。」 「ダイヤモンドですら、一点に圧力をかけられれば、割れるよ。 それに、使い魔は、どれだけ強大な力を誇ろうと主の種族に勝てない。 ・・・・・・・・それこそ、太陽が東から昇り、西に沈むようなモノだ。」 そして、話が終わり、その途中で、わき上がった疑問を次々とイライアスは、解こうと質問の猛攻をジュリにぶつける。 答えていくジュリの表情は、余裕と言ったところだったが、ソラの話に及ぶと、哀しそうな顔になる。 それは、どこか、自分のした事に後悔しているようでもあった。 「・・・・・・もしかしてですけど、あの《黒き死神》でも、負けると?」 「そう、滅ぼされるね。 逃げるだけなら、可能だけれど、あの子がそうするほど、プライド低くはないしね。 それを抜いても、マティは、数少なく今生き残っている1000歳以上の男吸血鬼の一人だからね。 マティ以外だと、一人二人、いるかどうかだろうから。」 情を排し、ジュリは、客観的な意見を述べる。 それは、冷たくもあったが、どこか暖かくそして、呆れたような色が見えた。 「・・・・・・・だからこそ、必要なのさ。 《リンデン》、《C.C.》本部の詳細な見取り図、手に入れれるかな?」 「誰に言っているんですか? 一応、あの《占札の使鬼姫》の弟子でもあるんですから。」 「・・・・・・・・一応って、自分で言っていて、哀しくないか?」 「・・・・・・・・・・・・ええ少し。 あの人に敵わないのは、間違いないですから。」 「・・・・・・・・・・それで、何故そこまで、《地獄の吟遊詩人》は、ジュリさんを恨むんですか? 千年前でしょう。 そこまで時間が立てば、頭が冷えませんか?」 「時間が立ち過ぎたから、ここまで、こじれたとも言えるぞ?」 「そういうもんですか?」 「そういうもんなのよ。 今、生きてる中じゃ、私とマティが一番長生き組みじゃないかしら? 確かに、半分眠ったまま、起きてこないのとかも居るけど。」 イライアスの指摘に、ジュリは痛みをこらえるような微笑みで答える。 ジュリに取って、マティ・・・マーティン=クロイスラーは、吸血鬼的兄妹であると同時に、母であり、弟でもあり・・・・・・・親友でもあったのだ。 敵対するようになっても、それは変わらない。 殺せないのだ。 相手は、殺すつもりで着ているのに、ジュリは彼を殺せないのだ。 「・・・・・・・・そういえば、五月十五日のあの時は、詳しく聞いてませんでしたし、理由を聞いても?」 「・・・・・・そういうとこは、ヴィクに似てるわね。 いいわ、話す。」 約千年前。 私とマティは、予定通り、欧州のとある街で、落ち合った。 そこで、16歳のルーグと出会った。 彼は、顔役の息子だった。 今で言うなら、町長の息子に近いかな。 彼と私達は仲良くなった。 そのうち、私とルーグは付き合うようになった。 マティも、ルーグを好きだったみたいだけど、彼は私を選んだ。 その時は、珍しく一カ所に数年居た時期だったね。 でもさ、マティぐらいの年齢ならまだしも、私ぐらいの年齢で年を取らないのは、怪しまれる。 『魔女狩り』なんて言葉は生まれてすら居なかったけどさ。 異端は、狩り立てられる。 あの街みたいに、大きければ尚更難しい。 街を上げて、私とマティを狩り出そうとした。 ルーグが、私を庇って、大怪我をした。 私は、回復が苦手だったから、マティに任せた。 ・・・・・・私達に味方したと言っても、同族を殺そうとした人間に遠慮はいらないからね。 その人間達を殺して廻った。 マティとルーグと再会した頃には、ルーグは冷たくなっていた。 ・・・・・その日、その街は地図から消えたよ。 それから、会うたびに、見つかるたびに、殺されかけるから、私も応じてる。 「・・・・・大分端折ってませんか?」 「そうでもないわ。 確実に、解ることを並べれば、こうなる。 ・・・・・・・それに、ヒントは上げたぞ?」 「ヒントですか・・・・・。」 そう、ヒントは、彼にジュリは伝えている。 解り難いかもしれないが、大きな声でいうことではない。 だけども、ジュリはある意味予想していた。 イライアスの能力の真骨頂は、召喚能力でも、ハッキング能力でもない、その思考力だ。 召喚能力も、ハッキングも、それに依存している。 数分、イライアスは『・・・なのか?・・・・違う・・・・でも、』などとぶつぶつと思考を垂れ流して、考えを纏めていた。 「・・・・・イライアス。 あらゆる可能性を否定していって、残ったモノが、どんなに信じたくなくても、それが真実なんだよ。」 「では、やはり?」 「さぁ、どうだと思う?」 「・・・・・・・・・・最期に、《地獄の吟遊詩人》が愛した男が、ジュリさんの事しか言わなかったから?」 「ブラヴォ。 正解・・・・・だと思う。」 ジュリは、喝采の言葉を口にした。 やはり、彼はヴィクとリアの息子だなとも思った。 しかし、イライアスに取って、そう信じたくなかった類いの話だったようだ。 絞り出すように、こう聞いて来た。 「それくらいで?」 「それくらいかどうかは、本人にしか解らない。 だけど、ルーグが最期に言った言葉で、マティは動いているのだと思う。」 寂しそうで、でも、それを受け入れたジュリの表情に、イライアスは言葉を失う。 自分みたいに、甘えから死にたいと願っているわけじゃないのに、その時のジュリは生の気配は希薄だった。 「・・・・・ま、ともかく、泊まってきな。 夜も遅いし、バイクは止めた方が良い。 今日は、色々と面倒だ。」 これで話は終わりと言わんばかりに、何時ものような表情に戻ったジュリだった。 だけど、イライアスにはそれが、ガラス色の仮面のように思えたのだった。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ ってなわけで、三連作第三弾です。 さされる覚悟は出来てますよ、お兄さんお姉さん方! 以下言い訳 まず、ことの発端は、夜編10で、一部書いたモノの、《C.C.》の面々をあんまし書いていない。 じゃ、一番名前すら出てない幹部の一方選ぼう。 出張組が書きやすそうだぞ。 ってな、思考で、ソラと神影と、マティルナを選んだわけです。 プロットと流れは変わらないのに、エロ度は格段アップ。 ・・・・・神影とソラのお話は、昔書いた作品のリメイクしたのです。 色々と、問題がない気もないですが、エロ度が低いBLティストが入りました。 元版は、ソラ役は、女性だったせいもありますが。 なんにせよ、本編では話の展開で混ぜれなかったエピソードを幾つか。 そして、本編先行エピが、ジュリとイライアスの関係だったりします。 では、感想・苦情・文句ありましたら、レスよろしくです。 |
18266 | 過去も未来も今は同じ場所に…… | 月読 乾 | 2007/8/6 21:16:43 |
記事番号18243へのコメント こんばんは、乾です。 今回は、結構内容的にハード(色んな方向で。 ですね。 では、レス入れさせて頂きます。 >全く、他世界から隔絶されたこの世界に在っても。 >自分の立場が危ういことはわかっています。 >私が 貴方の枷になるならばこの身すらいらないけれど。 >それでは貴方の受けた屈辱が無駄になってしまうし >貴方も自分を捨ててしまうかもしれないと思うと出来ないんです。。 >だけど、無茶はしないでください。 >だから、無茶はしないでください。 >私は、このまま囚われていますから、この空間に居ますから。 >だれも、欠けて欲しくない。姫に堕ちた白き隠者の只一つの願いなのですから。 > > 誰も傷つけたくないが故に、全てを拒絶する…… 誰かを傷つけて、自分を守るか、 自分が傷ついて誰かを守り、誰かを傷つけるか。 この世界に、無傷で手に入れられるものは無い…… 囚われの姫に堕ちる事は、せめてもの抗いなのでしょうか? >どこかの空間。 >真白の霧か雲か、そんな空間。 >そこに、二人の黒と白の人物が、存在する。 >黒い方は、黒いちぢれた髪を背中の中程まで伸ばし、細く古びた赤いリボンで纏めている。 >瞳は、楽しげな色宿る黒曜石色だった。 >肌は、どこまでも白く、人形を想起させる。また、黒いルージュを引いていた。 >服は、スーツのような服に、コートと言うよりも外套と呼んだ方がしっくりと来るモノに、翡翠に赤い組紐の紐タイというもので、スーツも外套も真黒というよりは、夜色のものだ。 >それに、焦げ茶のロイド眼鏡を掛けている二十歳後半の青年だ。 >この空間では、一番浮いて見える。 >名前を神影という。 道化師の様な印象のひたすらに『黒』いキャラですね。 対照的な描写は対になる好きです。 >白い方は、限りなく白に近い淡い茶色の直毛を銀のサークレットで押さえ、先の方を青く輝く布で纏めている。 >瞳は、憂いを含んだ淡い琥珀色だった。 >肌は、何処までも白く、死人を想起させる。また、唇は珊瑚のように艶やかだった。 >服は、古ぼけた吟遊詩人のようなゆったりとしたローブに上衣に、そして、ケルティックハープを持っていた。色は、ほぼ例外無く白地に銀の複雑な刺繍だ。 >数少ない例外は、銀鎖で結ばれたサファイアで彫られた花がついたチョーカーぐらいである。 >白皙というのに相応しい静謐な容貌の二十歳と少しぐらいの青年だ。 >名前をソラという。 >この霧のようなモノが満ちた空間を支配していたのは、いたいほどの『静寂』だった。 >しかし、その静寂を打ち破ったのは、神影の方だった。 こちらは、落ち着いた感じのキャラですね。 冒頭で、『姫』の形容詞が出ましたが、衣装も何となくそんなイメージです。 >「未だ同じ望みを抱くのだね」 >淡々とした、それでいてどこか喜色を滲ませた声にソラは応えるものを持っていなかった。 >否。持っていないふりをした。 >くつくつと押し殺された笑い声は、おそらくソラが振り向かない間は後ろに存在する神影が漏らしたものだ 神影、何気に性格悪い(汗? せめて、真正面からものは言いましょう(違! > 神影。 > > 《地獄の吟遊詩人(ヘルズバード)》の配下になり下がったかつての相棒だ。 > 道具が、作り主にして使い手の《凍れる樹姫》に反逆した存在。 何故、反逆する事になったのか……? 明かされる時は来るのでしょうか? >「・・・・・・私の望み、ですか。」 >「そう。純粋で単純であるが故に、ひどく複雑で難解なモノだ。」 >「っ!」 >彼の出現はいつだって唐突で、こちらの不意をつく。 >しかし目の前に立ち塞がるような、まともに姿の見える現れ方はしなかった。 >ソラが、作り出し、支配するこの空間に、日参までは行かなくても、暇さえあれば、顔を出していてすら、そうしなかった。 >死角に存在しているのが当たり前だった。 >「きちんと顔を見せてくれるのは随分と久しぶりですね。」 >「おや、機嫌を損ねてしまったかな。《白き隠者》、いや《白き深遠なる歌い手》かな?」 >「私の名は『ソラ』です。 > その呼称は、止めてください。」 >ロイド眼鏡の奥の瞳がすぅっと細まる。 >「ソラ。君は何故立て篭る?」 >彼の言葉の意味はよくわかっている。 >彼の隣りに立つのは、ソラの役目ではない。 >ジュリのソラと彼の作り手でもあるジュリの役目でもない。 >今、神影とソラの主は、契約上は、マティルナ=クロイスラーだ。 >道具は、主を裏切っては行けない。 >そして、それを逆らっているのは、ソラなのだ。 >「私が、逆らっても行けないような事なのに?」 >ソラにしては、多少皮肉な物言いになってしまったのは仕方がない。 >「『ソラの望み』はマティルナ様の妨げとなってしまう」 >「知っています。 > ・・・・・でも、知っているはずでしょう?」 >ソラの持つ望み。 >それがソラをこの場所を紡ぎ続ける立場に引き止める唯一の蜘蛛の糸だ。 >そしてそれこそがソラを神野と立場を違えている唯一にして、最大の理由。 >「私の望みはしばらくは絶対に叶わない」 >「だからこそソラ、君と私とは違う。 > 例え君が《白き隠者》として全てを厭い、全てに唾棄し、全てに背を向けようと・・・・・・。 > ・・・・・そう、自我を捨て去ろうとも。」 >かつて、ソラ達は『母』を追い求めた。 >全てを知ろうとし、あらゆる魔法も魔術も希望も絶望すらも身のうちに溜めようとした。 >神影の一番の望みであり、自分の願いでもあったから。 >でも、今はそれを望んでいない。 >・・・・・それでも。 >「ジン」 >ソラは神影が神影である事を止めてから、始めてその名前を呼んだ。 >六十年前以来だ。 >ソラが、この空間を作り出し、閉じ篭ってから、それ以来に呼んだ。 >不意をつかれたように黙り込んだ彼に昔の面影を見出すのは簡単だった。 >「でも、まだわかっていませんよね?」 > 追い求めた『幻影』が大きければ大きいほど、亀裂と幻滅も大きい。 後に残った残酷な現実から残された者はただ無様でも抵抗するしか無いのでしょうか? 例え、それが絶望的なあがきと知りすぎるほど知っていても。 > いつだって、 > > どんな時だって、 > > どこでだって、 > > どんな想いの中にいたって、 > > > ―――私が欲しかったのは。 何が本当なのか、言葉にして想えば遠ざかる。 だけど、本当に求めるものは、確かに胸の内にある。 失って、初めて気づくもの…… >「・・・・・・・私には全ての者の望みを叶える力がある。読み取る力も持っている。」 > 正確には、主に持たされたと言うべきなのだろうけど。」 >「例外なのは、私が神影、あなた自身でもあることです。 > 誰でも自分の姿や望みを見ることはできません。 > まして、貴方なら、尚更、難しいんですよ。」 >「なるほど。そう思うのならば、それも一つの真実の断面だろう。 > しかし私はソラの望みがわかっている」 >ソラはなんだか淋しいような、虚しいような気分になって首を振る。 >そうではあるけれど、そうじゃないのに。 >「何が違うのかね?君の望みは私の『消滅』だろう」 >これが、白き隠者と黒き従者の間に出来た深い深い、地獄の底さえも通り過ぎるほどの溝。 >垣間見えるたびに沸き起こる絶望感を、どう言い表せるというのだろう。 >百万言を弄しても、できないだろう。 >《片眼王》の味わった闇より、なお暗く。 >古くは裏切り者であった《道化師》の無力感よりも、なお虚ろに。 >ソラを蝕んでいく。 >「それは望みを叶えるための通過地点でしかないです。」 >「何を・・・・・・」 >「ねえ」 >ソラは嗤う。 >哀しげに嗤う。 >《歌乙女》のように純粋で優しくあったなら。いやせめて、普通の存在であったなら。 >泣いてしまいたかったけれど。 >「私はずっと、」 >六十年前から、ずっと願いを途切れさせていない願い。 >「あの頃に戻りたいだけなんですよ……?」 全てを消し去る事は、救いになり得るのでしょうか? ずっと望み続ける日々は答えをくれはしないけど、その奥にあるのは純粋な願いがあるだけ…… > いつだって、 > > どんな時だって、 > > どこでだって、 > > どんな想いの中にいたって、 > > > ―――あたしが欲しかったのは たとえ、遠ざかっても忘れられないものがある…… ただ、一つだけ思い出せばいいだけなのに、それはとても難しい事…… > 貴方とジュリさんと過ごしていた時間。 > > ジュリさんが、お菓子を焼いて > > 私が、お茶をいれて > > ジンが、言葉で遊んでいた時間。 > > あの頃の私。 > > 御伽噺のように古い、二人がまだ相棒だった頃の――― ただ、それだけの純粋な願い…… >「・・・・・ソラ・・・・・?」 > その声はあまりにも昔のままだった。 >「・・・・・・ただの、幕間の小話です。 > それだけ、それだけなんです。」 >ソラは、そう言って、顔を手で覆い首を振るだけだ。 >彼にしてみても、解らないのだー哀しいのか、虚しいのか、怒っているのかさえ、解らない。 >「・・・・・・・・ソラ、真実と言うのは、一つではないのだよ?」 >「それでも、貴方が裏切り者と言う事には変わりないのに。」 >「だから、こそ、なんだけどね。 > ・・・・・・・いいニュースかどうかはともかく、主や《歌乙女》たちが動くみたいだよ。」 >「・・・・・そう、ですか?」 >「嬉しくないのかい?」 >「さぁ、どうなんでしょうね。 > 事態が動くと言う事は、結末に向かうと言う事ですから。」 >「・・・・・・・・ま、ともあれ、またね、と言うところだ。 > それとね、私が全く傷つかないと思わないで欲しいな。」 >そして、神影は、一気にソラとの距離を詰めると、軽く・・・それこそ、かすめるようなキスとその言葉だけを残し、現れたとき同様、消えた。 >ソラが、それを認識した時には、神影の姿は無く、誰も見る者もいなかったが、顔を赤くしていた。 >「・・・・・・相変わらず、わかりませんね。 > ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・余計な事まで想い出してしまったではないですか。」 >そして、連鎖的に、押し倒された事まで想い出してしまったようで、更に顔を赤くしてしまった。 >一応、ソラより年上なのに、神影は自分よりも年下に思えてしまう時がある。 >「・・・・・・・なんにせよ、私には、待つしか出来ないのですけどね。 > 男のこの身で、ピー○姫というのも、かなり情けないですが。」 >それでも、神影が欠けても、自分が欠けても、ジュリは哀しむだろうけど。 >ただ、この結界空間を維持し続け、待とうと思う。 ソラさん、見も心もお姫様ですか(滝汗 それはともかく、待ち続ける人はいずれは来て、沈黙に終止符が来るのでしょうか? 次も楽しみにしています。 |
18271 | ピー○姫になってるのは、男としてどうかとは思うけれど。 | 十叶 夕海 | 2007/8/13 03:51:00 |
記事番号18266へのコメント >こんばんは、乾です。 >今回は、結構内容的にハード(色んな方向で。 >ですね。 >では、レス入れさせて頂きます。 こんばんは、ありがとうございます。 返レス行きますね。 > > > > >>全く、他世界から隔絶されたこの世界に在っても。 >>自分の立場が危ういことはわかっています。 >>私が 貴方の枷になるならばこの身すらいらないけれど。 >>それでは貴方の受けた屈辱が無駄になってしまうし >>貴方も自分を捨ててしまうかもしれないと思うと出来ないんです。。 >>だけど、無茶はしないでください。 >>だから、無茶はしないでください。 >>私は、このまま囚われていますから、この空間に居ますから。 >>だれも、欠けて欲しくない。姫に堕ちた白き隠者の只一つの願いなのですから。 >> >> >誰も傷つけたくないが故に、全てを拒絶する…… >誰かを傷つけて、自分を守るか、 >自分が傷ついて誰かを守り、誰かを傷つけるか。 >この世界に、無傷で手に入れられるものは無い…… >囚われの姫に堕ちる事は、せめてもの抗いなのでしょうか? 誰かを護ると言う事は、誰かを傷つける事。 それならば、誰も傷つけたくない。 誰も死んで欲しくない。 そう願い、実行するのが、彼なのです。 囚われないとらわれの姫になることが、彼が選んだ道なのです。 > >>どこかの空間。 >>真白の霧か雲か、そんな空間。 >>そこに、二人の黒と白の人物が、存在する。 >>黒い方は、黒いちぢれた髪を背中の中程まで伸ばし、細く古びた赤いリボンで纏めている。 >>瞳は、楽しげな色宿る黒曜石色だった。 >>肌は、どこまでも白く、人形を想起させる。また、黒いルージュを引いていた。 >>服は、スーツのような服に、コートと言うよりも外套と呼んだ方がしっくりと来るモノに、翡翠に赤い組紐の紐タイというもので、スーツも外套も真黒というよりは、夜色のものだ。 >>それに、焦げ茶のロイド眼鏡を掛けている二十歳後半の青年だ。 >>この空間では、一番浮いて見える。 >>名前を神影という。 > >道化師の様な印象のひたすらに『黒』いキャラですね。 >対照的な描写は対になる好きです。 なんですよね。 ぷらすに、灰色系のジュリをくわえると三すくみで、また良いのです。 > > >>白い方は、限りなく白に近い淡い茶色の直毛を銀のサークレットで押さえ、先の方を青く輝く布で纏めている。 >>瞳は、憂いを含んだ淡い琥珀色だった。 >>肌は、何処までも白く、死人を想起させる。また、唇は珊瑚のように艶やかだった。 >>服は、古ぼけた吟遊詩人のようなゆったりとしたローブに上衣に、そして、ケルティックハープを持っていた。色は、ほぼ例外無く白地に銀の複雑な刺繍だ。 >>数少ない例外は、銀鎖で結ばれたサファイアで彫られた花がついたチョーカーぐらいである。 >>白皙というのに相応しい静謐な容貌の二十歳と少しぐらいの青年だ。 >>名前をソラという。 >>この霧のようなモノが満ちた空間を支配していたのは、いたいほどの『静寂』だった。 >>しかし、その静寂を打ち破ったのは、神影の方だった。 > >こちらは、落ち着いた感じのキャラですね。 >冒頭で、『姫』の形容詞が出ましたが、衣装も何となくそんなイメージです。 ですね。 争いを望まず、はんなりしてます。 でも、本人に『姫』というと、ハープで強打されます。 > > >>「未だ同じ望みを抱くのだね」 >>淡々とした、それでいてどこか喜色を滲ませた声にソラは応えるものを持っていなかった。 >>否。持っていないふりをした。 >>くつくつと押し殺された笑い声は、おそらくソラが振り向かない間は後ろに存在する神影が漏らしたものだ > >神影、何気に性格悪い(汗? >せめて、真正面からものは言いましょう(違! 皮肉屋なんだか、どうなんだか。 彼曰く、『顔合わせると、抱き締めたくなってしまう。』とのことです。 > > >> 神影。 >> >> 《地獄の吟遊詩人(ヘルズバード)》の配下になり下がったかつての相棒だ。 >> 道具が、作り主にして使い手の《凍れる樹姫》に反逆した存在。 > >何故、反逆する事になったのか……? >明かされる時は来るのでしょうか? 一応、ブラックで明かされてますね。 反逆しているけどしていない感じですね。 > > >>「・・・・・・私の望み、ですか。」 >>「そう。純粋で単純であるが故に、ひどく複雑で難解なモノだ。」 >>「っ!」 >>彼の出現はいつだって唐突で、こちらの不意をつく。 >>しかし目の前に立ち塞がるような、まともに姿の見える現れ方はしなかった。 >>ソラが、作り出し、支配するこの空間に、日参までは行かなくても、暇さえあれば、顔を出していてすら、そうしなかった。 >>死角に存在しているのが当たり前だった。 >>「きちんと顔を見せてくれるのは随分と久しぶりですね。」 >>「おや、機嫌を損ねてしまったかな。《白き隠者》、いや《白き深遠なる歌い手》かな?」 >>「私の名は『ソラ』です。 >> その呼称は、止めてください。」 >>ロイド眼鏡の奥の瞳がすぅっと細まる。 >>「ソラ。君は何故立て篭る?」 >>彼の言葉の意味はよくわかっている。 >>彼の隣りに立つのは、ソラの役目ではない。 >>ジュリのソラと彼の作り手でもあるジュリの役目でもない。 >>今、神影とソラの主は、契約上は、マティルナ=クロイスラーだ。 >>道具は、主を裏切っては行けない。 >>そして、それを逆らっているのは、ソラなのだ。 >>「私が、逆らっても行けないような事なのに?」 >>ソラにしては、多少皮肉な物言いになってしまったのは仕方がない。 >>「『ソラの望み』はマティルナ様の妨げとなってしまう」 >>「知っています。 >> ・・・・・でも、知っているはずでしょう?」 >>ソラの持つ望み。 >>それがソラをこの場所を紡ぎ続ける立場に引き止める唯一の蜘蛛の糸だ。 >>そしてそれこそがソラを神野と立場を違えている唯一にして、最大の理由。 >>「私の望みはしばらくは絶対に叶わない」 >>「だからこそソラ、君と私とは違う。 >> 例え君が《白き隠者》として全てを厭い、全てに唾棄し、全てに背を向けようと・・・・・・。 >> ・・・・・そう、自我を捨て去ろうとも。」 >>かつて、ソラ達は『母』を追い求めた。 >>全てを知ろうとし、あらゆる魔法も魔術も希望も絶望すらも身のうちに溜めようとした。 >>神影の一番の望みであり、自分の願いでもあったから。 >>でも、今はそれを望んでいない。 >>・・・・・それでも。 >>「ジン」 >>ソラは神影が神影である事を止めてから、始めてその名前を呼んだ。 >>六十年前以来だ。 >>ソラが、この空間を作り出し、閉じ篭ってから、それ以来に呼んだ。 >>不意をつかれたように黙り込んだ彼に昔の面影を見出すのは簡単だった。 >>「でも、まだわかっていませんよね?」 >> >追い求めた『幻影』が大きければ大きいほど、亀裂と幻滅も大きい。 >後に残った残酷な現実から残された者はただ無様でも抵抗するしか無いのでしょうか? >例え、それが絶望的なあがきと知りすぎるほど知っていても。 > だけども、それが想い出深ければ深いほど、求めずにはいられない。 それが、手に入れる事が難しくても。 幼子が、母親を求めるがように。 > > >> いつだって、 >> >> どんな時だって、 >> >> どこでだって、 >> >> どんな想いの中にいたって、 >> >> >> ―――私が欲しかったのは。 > > >何が本当なのか、言葉にして想えば遠ざかる。 >だけど、本当に求めるものは、確かに胸の内にある。 >失って、初めて気づくもの…… だけども、思わずにはいられない。 胸の内に秘め、願ってしまう。 無くして、尚大切なモノ。 > > >>「・・・・・・・私には全ての者の望みを叶える力がある。読み取る力も持っている。」 >> 正確には、主に持たされたと言うべきなのだろうけど。」 >>「例外なのは、私が神影、あなた自身でもあることです。 >> 誰でも自分の姿や望みを見ることはできません。 >> まして、貴方なら、尚更、難しいんですよ。」 >>「なるほど。そう思うのならば、それも一つの真実の断面だろう。 >> しかし私はソラの望みがわかっている」 >>ソラはなんだか淋しいような、虚しいような気分になって首を振る。 >>そうではあるけれど、そうじゃないのに。 >>「何が違うのかね?君の望みは私の『消滅』だろう」 >>これが、白き隠者と黒き従者の間に出来た深い深い、地獄の底さえも通り過ぎるほどの溝。 >>垣間見えるたびに沸き起こる絶望感を、どう言い表せるというのだろう。 >>百万言を弄しても、できないだろう。 >>《片眼王》の味わった闇より、なお暗く。 >>古くは裏切り者であった《道化師》の無力感よりも、なお虚ろに。 >>ソラを蝕んでいく。 >>「それは望みを叶えるための通過地点でしかないです。」 >>「何を・・・・・・」 >>「ねえ」 >>ソラは嗤う。 >>哀しげに嗤う。 >>《歌乙女》のように純粋で優しくあったなら。いやせめて、普通の存在であったなら。 >>泣いてしまいたかったけれど。 >>「私はずっと、」 >>六十年前から、ずっと願いを途切れさせていない願い。 >>「あの頃に戻りたいだけなんですよ……?」 > >全てを消し去る事は、救いになり得るのでしょうか? >ずっと望み続ける日々は答えをくれはしないけど、その奥にあるのは純粋な願いがあるだけ…… 消し去る事は、救いにはなりえないが、されとて、裏切り続けさせるよりも、ずっとずっと良いのかもしれない. でも、それを実現させえないからこそ、願い続けるだけ。 > >> いつだって、 >> >> どんな時だって、 >> >> どこでだって、 >> >> どんな想いの中にいたって、 >> >> >> ―――あたしが欲しかったのは > >たとえ、遠ざかっても忘れられないものがある…… >ただ、一つだけ思い出せばいいだけなのに、それはとても難しい事…… 遠ざかってしまうからこそ、忘れる事は出来ない。 そして、思い出せば、蔓のように連鎖を起こしてしまう。 > >> 貴方とジュリさんと過ごしていた時間。 >> >> ジュリさんが、お菓子を焼いて >> >> 私が、お茶をいれて >> >> ジンが、言葉で遊んでいた時間。 >> >> あの頃の私。 >> >> 御伽噺のように古い、二人がまだ相棒だった頃の――― > >ただ、それだけの純粋な願い…… 今は、まだ叶う事は無い願い。 > >>「・・・・・ソラ・・・・・?」 >> その声はあまりにも昔のままだった。 >>「・・・・・・ただの、幕間の小話です。 >> それだけ、それだけなんです。」 >>ソラは、そう言って、顔を手で覆い首を振るだけだ。 >>彼にしてみても、解らないのだー哀しいのか、虚しいのか、怒っているのかさえ、解らない。 >>「・・・・・・・・ソラ、真実と言うのは、一つではないのだよ?」 >>「それでも、貴方が裏切り者と言う事には変わりないのに。」 >>「だから、こそ、なんだけどね。 >> ・・・・・・・いいニュースかどうかはともかく、主や《歌乙女》たちが動くみたいだよ。」 >>「・・・・・そう、ですか?」 >>「嬉しくないのかい?」 >>「さぁ、どうなんでしょうね。 >> 事態が動くと言う事は、結末に向かうと言う事ですから。」 >>「・・・・・・・・ま、ともあれ、またね、と言うところだ。 >> それとね、私が全く傷つかないと思わないで欲しいな。」 >>そして、神影は、一気にソラとの距離を詰めると、軽く・・・それこそ、かすめるようなキスとその言葉だけを残し、現れたとき同様、消えた。 >>ソラが、それを認識した時には、神影の姿は無く、誰も見る者もいなかったが、顔を赤くしていた。 >>「・・・・・・相変わらず、わかりませんね。 >> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・余計な事まで想い出してしまったではないですか。」 >>そして、連鎖的に、押し倒された事まで想い出してしまったようで、更に顔を赤くしてしまった。 >>一応、ソラより年上なのに、神影は自分よりも年下に思えてしまう時がある。 >>「・・・・・・・なんにせよ、私には、待つしか出来ないのですけどね。 >> 男のこの身で、ピー○姫というのも、かなり情けないですが。」 >>それでも、神影が欠けても、自分が欠けても、ジュリは哀しむだろうけど。 >>ただ、この結界空間を維持し続け、待とうと思う。 > >ソラさん、見も心もお姫様ですか(滝汗 >それはともかく、待ち続ける人はいずれは来て、沈黙に終止符が来るのでしょうか? >次も楽しみにしています。 > 本人に言えば、ぶっ殺されますよう。 沈黙に終止符が打たれれば、また哀しみがうたれる事になる。 はい、ありがとうございました。 |
18246 | Re:家族の写真 番外 同じ空の下には、もういない | 月読 乾 | 2007/7/25 21:20:10 |
記事番号18236へのコメント こんばんは、月読乾です。 3連作の投稿お疲れ様でした、久しぶりにレスさせて頂きます。 > > > > >その日は、満月だった。 >まだ、マティに封印されて、それを解いてもらってから。 >そうそう時間が立っていない、そんな頃だった。 >私は、窓から、月を見ていた。 >紫乃から、『とっとと寝ろ』と言われて、渡されたホットミルクもとうに冷めていた。 >「やっぱり忘れる事など出来ないね。」 >私は、そう呟いた。 >そして、思い返す。 > > 長い夢から覚めたように、うたかたの時に想いを馳せているのでしょうか? でも、それは確かにあった事だと言う感じがします。 > > > 家族の写真 番外 同じ空の下には、もういない > > > >そして、思い返す。 >私が、誰かを亡くして、自分を失ったのは何度か合った。 >特に酷かったのは、確か・・・・・・・。 >吸血鬼としての父親のクロイツを失った時。 >大好きだったルーグを亡くした時。 >そして、カーティスを失った時だ。 >特に、三つ目のカートの時は酷かった。 >100年近く、ふて寝していたからな。 >そもそも、アイツに出会ったのは、900年ほど前か。 >ルーグを失って、神影作って、ソラを作り直して、欧州中を当て所も無く彷徨っていたっけ。 >踊り子と楽士と護衛って形で。 100年近くふて寝…… 幾つもの悲しみを背負いながらも、それを受け入れるしか無いのでしょうか? 自分を失うのは、まだ誰かを信じたいから……と言うのは救いにならない言葉でしょうか? >で、途中で、カートを拾った。 >ブラウンの髪と淡い空色の瞳で、拾った時は10歳ぐらいだったかな。 >久しぶりに、立ち寄れた街で、死にかけてた。 >なんで、助けたのかも解らない。 >薄汚れたガキだった。 >「ありがと。 > 俺、カート。 > カーティス・フォン・ジークルーゼってんだ。 > 姉ちゃんと、後一緒に居たあんちゃんたちはなんて名前?」 >「私は、ジュリ。 > あとから、紹介するが、黒い方が神影、白い方がソラ。」 >「へぇ、綺麗な名前だね。」 >「・・・・・・・・・貴族のガキが、なにしてた?」 >「良くある話だよ。 > 親が早くに死んで、親族に財産取られて、殺されかけて、逃げたけど、のたれ死するとこだったってこと。」 >「確かに、なくもない、話だ。」 >「姉ちゃんは? > こんないい宿に泊まれるぐらいだから、いいトコのお嬢様じゃないの?」 >「ちがうよ、ただの旅芸人。」 >貴族のガキだってのには、驚いた。 >らしくなかったからね。 >娼婦の子供が、親に捨てられていたってほうが、よっぽどしっくり来るような口調だったしね。 >それから、一緒に連れて歩いた。 良くも悪くも、貴族らしからぬ気取ったところの無い子供ですね。 好感が持てるタイプです! >神影とソラは驚いたけど、たいした意味は無い。 >気まぐれに近いもんだった。 >神影に、剣を教えてもらってたりもした。 >五年もすれば、客寄せの口上も、上手くなっていた。 >顔もいいし、街のお姉さんがたに、すごくすごくモテたね。 >それこそ、日替わりで、夜のお相手するくらいにね。 >・・・・・・拾ってから、10年。 >カートが20歳になった時に言った。 >「ここ十年で、解ったと思うけど、私はバケモノよ。 > それでも、一緒に来る? > 別れても、構わないよ。 > 自由にしろ、お前の人生だ。」 >あの時代は、16歳で一人立ちするのが、習わしだったけど。 >だけど、ずるずると、四年も延ばしてしまった。 >笑えるだろう? >吸血鬼が、不老不死で、しかも使い魔持ちが、人間と離れたくなかったなんて。 >でも、彼は笑い飛ばしてこう言った。 >「バケモノだろうとなんだろうと、ジュリはジュリだろ? > 10年間一緒に居た時間がニセモノだってんなら、別れっけど。 > そうじゃねぇんだろ? > なら、別れねぇ。 > 俺の命尽きるまで、何年あるかはわからないけどよ。 > ついていけなくなるまで、ついてくよ。」 >吃驚して、その時は、言葉が出なかった。 >神影は、人悪く笑うだけだったし。 >ソラは、静かに微笑むだけだった。 >「・・・・・・・いいのか?」 >やっと出たのは、その言葉だった。 >別れる時は来るにしても、そう近い事ではない事ではないって知ったから、それからの旅は何倍も楽しかった。 >四季も、ルーグが死んでから、くすんで見えてたのに、カートとしばらくいられるってだけで、鮮やかさを取り戻してた。 >少なくとも、恋人同士の意味での好きではなかったけど、親子とか兄弟とかそんな感じの好きだったとは思う。 >でも、一人の人間とそんなに長く過ごしたのは、《御伽噺の幽霊》とフィッルーカ・ファミリーの一部の幹部たちぐらいだ。 >個人だけなら、カートが一番長い。 信じてくれる人が近くにいるだけで、世界は違って見えますよね。 ジュリの運命を知っても、なお受け入れるカートは強いと思います。 >「俺ね、ジュリの事好きだよ。 > 一緒に住めないのは、解ってるけど、それでも大好き。」 >冬のある日そう言ってくれた。 >だけど、その数日後、彼は死んだ。 >山賊に、囲まれて、私を護ろうとして、死んだ。 >同じ『ヒト』に、殺されて死んだ。 >街で、騒動が起こってそのままいたら、殺されかねなかったから、山越えをしていた日にことだ。 >その街の近くの森の奥に廃城があったから、そこを目指してたんだ。 >死ねないって、死なないって、知ってたはずだったのに、山賊の剣と私の間に立って、斬られた。 >血が、私の白い頬を染めた。 >その血が、私の吸血鬼の部分を熱く熱くした。 >視界が真っ白に染まった。 >気付いたら、神影に抱き締められてた。 >「落ち着いて、主。 > そのままだと、森も、カートも跡形も無くなってしまう。」 >「あ、う、うん。」 >当たりの木々がなぎ倒され、山賊だったとおぼしき『肉片』が木や雪の上にこびりついていた。 >我に返ってすぐ、カートとソラを探した。 >ソラは、戦闘には参加しないでいたはずだった。 >わりあい、すぐ傍にソラとカートはいた。 >ソラの白い服も、周りの雪も、赤く紅く、キレイナ赤に染まっていた。 >カートの血で、染まっていた。 >「・・・・っカート。」 >「たは・・・・・ドジった。 > ・・・ジュリさん・・・・・・怪我・・・・・・して、ない?」 >「して、ない。」 >「・・・・・・ジュリさん、残念ですが。」 >ソラのその短い一言で、全部解ってしまった。 >いや、認めてしまったか。 >あれだけ、血が流れていたんだ。 >『ヒト』ならば、死ぬ量だ。 >「・・・・・・・・・・ごめん、カート。」 >「ううん・・・じゅり、は・・・・悪・・・くない。 > ごめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 >続きは、紡がれる事は無かった。 >ずっと、ずっと、カートは黙ったままだった。 >私は、泣いた。 >天を衝くかと言うほど、泣いた。 >それから、近くにあった廃城の傍にカートを埋めた。 >その廃城を、人が住めるように数年かけて、修理した。 >泣ける場所が欲しかったのだ。 >どうしても、神影やソラの前では、泣くに泣けないのだ。 >だから、修理が終わった日、私は、二人に『起きてくるまで起こすな』と言って、寝室にした部屋に引っ込んだ。 >・・・・・・・大切な人を奪っていく世界を知覚していたくなかったんだ。 >しばらく、何も考えずに、眠った。 >時折、泣き寝入りのような形になっていたのを微かに覚えている。 >100年が経ったくらいだろうか、私は起きた。 >髪が、身長より長く長くなっていた。 >それで、やっと認める事が出来た。 >カートが同じ空の下にいない事を。 >ソラに髪の毛を切ってもらって、また欧州中を彷徨う生活に戻った。 >だけど、数年に一回、その廃城に戻って、カートが眠る墓に参ずることだけは止めなっった。 > 理不尽な運命…… カートは最後までジュリと一緒にいて幸せだったのでしょうか…… > > > >「懐かしいな。 > カートが死んだ日の晩も、こんな月だった。」 >もう900年が経った。 >なのに、カートを失った痛みは、私の胸を痛ませた。 >それ以上に胸を痛ませるのは、ルーグを失った事だけれど。 > >失う人がこれ以上少しでも軽くなれば…… 900年の時は、大事な人をいつまでも縛り続けるのでしょうか? > > > > > > > > > > > >@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ > >友人と、吸血鬼は、不老不死だし、基本的に年は取らないけど。 >髪の毛は伸びるのか?という遣り取りの中で、多分のびるし、膜は再生するんだろうと言う結論に達しまして。 >それで、生まれた話です。 >一応、エッチシーンがあるプロットでしたが、無くなりました。 >・・・・・・・・・しかし、よくジュリは、人間嫌いにならないモノだねぇ。と人ごとのように行ってみます。 > >次は、本編の夜編9直後の時間軸の短編を投稿予定です。 > >ではでは。 人間嫌いにならない限り、ジュリはジュリだと思います。 いつか、幸せになれるといい……と言う言葉は軽率でしょうか? それでは。 |
18255 | 好きだからこそ、忘れる事はない。 | 十叶 夕海 | 2007/7/30 00:02:06 |
記事番号18246へのコメント >こんばんは、月読乾です。 >3連作の投稿お疲れ様でした、久しぶりにレスさせて頂きます。 こんにちは、夕海です。 ありがとうございます。 > > > >> >> >> >> >>その日は、満月だった。 >>まだ、マティに封印されて、それを解いてもらってから。 >>そうそう時間が立っていない、そんな頃だった。 >>私は、窓から、月を見ていた。 >>紫乃から、『とっとと寝ろ』と言われて、渡されたホットミルクもとうに冷めていた。 >>「やっぱり忘れる事など出来ないね。」 >>私は、そう呟いた。 >>そして、思い返す。 >> >> >長い夢から覚めたように、うたかたの時に想いを馳せているのでしょうか? >でも、それは確かにあった事だと言う感じがします。 ですね・・・・。 うたかたの夢であって欲しいと願うけれど。 だけども、確かにあってしまった事。 > >> >> >> 家族の写真 番外 同じ空の下には、もういない >> >> >> >>そして、思い返す。 >>私が、誰かを亡くして、自分を失ったのは何度か合った。 >>特に酷かったのは、確か・・・・・・・。 >>吸血鬼としての父親のクロイツを失った時。 >>大好きだったルーグを亡くした時。 >>そして、カーティスを失った時だ。 >>特に、三つ目のカートの時は酷かった。 >>100年近く、ふて寝していたからな。 >>そもそも、アイツに出会ったのは、900年ほど前か。 >>ルーグを失って、神影作って、ソラを作り直して、欧州中を当て所も無く彷徨っていたっけ。 >>踊り子と楽士と護衛って形で。 > >100年近くふて寝…… >幾つもの悲しみを背負いながらも、それを受け入れるしか無いのでしょうか? >自分を失うのは、まだ誰かを信じたいから……と言うのは救いにならない言葉でしょうか? 救いなようで、そうじゃないかと。 だけど、何度裏切られても、自分から背を向けはしないんだろうね、ジュリは。 > >>で、途中で、カートを拾った。 >>ブラウンの髪と淡い空色の瞳で、拾った時は10歳ぐらいだったかな。 >>久しぶりに、立ち寄れた街で、死にかけてた。 >>なんで、助けたのかも解らない。 >>薄汚れたガキだった。 >>「ありがと。 >> 俺、カート。 >> カーティス・フォン・ジークルーゼってんだ。 >> 姉ちゃんと、後一緒に居たあんちゃんたちはなんて名前?」 >>「私は、ジュリ。 >> あとから、紹介するが、黒い方が神影、白い方がソラ。」 >>「へぇ、綺麗な名前だね。」 >>「・・・・・・・・・貴族のガキが、なにしてた?」 >>「良くある話だよ。 >> 親が早くに死んで、親族に財産取られて、殺されかけて、逃げたけど、のたれ死するとこだったってこと。」 >>「確かに、なくもない、話だ。」 >>「姉ちゃんは? >> こんないい宿に泊まれるぐらいだから、いいトコのお嬢様じゃないの?」 >>「ちがうよ、ただの旅芸人。」 >>貴族のガキだってのには、驚いた。 >>らしくなかったからね。 >>娼婦の子供が、親に捨てられていたってほうが、よっぽどしっくり来るような口調だったしね。 >>それから、一緒に連れて歩いた。 > >良くも悪くも、貴族らしからぬ気取ったところの無い子供ですね。 >好感が持てるタイプです! ありがとうございます。 彼の基本コプセンとは、純朴なのです。 > >>神影とソラは驚いたけど、たいした意味は無い。 >>気まぐれに近いもんだった。 >>神影に、剣を教えてもらってたりもした。 >>五年もすれば、客寄せの口上も、上手くなっていた。 >>顔もいいし、街のお姉さんがたに、すごくすごくモテたね。 >>それこそ、日替わりで、夜のお相手するくらいにね。 >>・・・・・・拾ってから、10年。 >>カートが20歳になった時に言った。 >>「ここ十年で、解ったと思うけど、私はバケモノよ。 >> それでも、一緒に来る? >> 別れても、構わないよ。 >> 自由にしろ、お前の人生だ。」 >>あの時代は、16歳で一人立ちするのが、習わしだったけど。 >>だけど、ずるずると、四年も延ばしてしまった。 >>笑えるだろう? >>吸血鬼が、不老不死で、しかも使い魔持ちが、人間と離れたくなかったなんて。 >>でも、彼は笑い飛ばしてこう言った。 >>「バケモノだろうとなんだろうと、ジュリはジュリだろ? >> 10年間一緒に居た時間がニセモノだってんなら、別れっけど。 >> そうじゃねぇんだろ? >> なら、別れねぇ。 >> 俺の命尽きるまで、何年あるかはわからないけどよ。 >> ついていけなくなるまで、ついてくよ。」 >>吃驚して、その時は、言葉が出なかった。 >>神影は、人悪く笑うだけだったし。 >>ソラは、静かに微笑むだけだった。 >>「・・・・・・・いいのか?」 >>やっと出たのは、その言葉だった。 >>別れる時は来るにしても、そう近い事ではない事ではないって知ったから、それからの旅は何倍も楽しかった。 >>四季も、ルーグが死んでから、くすんで見えてたのに、カートとしばらくいられるってだけで、鮮やかさを取り戻してた。 >>少なくとも、恋人同士の意味での好きではなかったけど、親子とか兄弟とかそんな感じの好きだったとは思う。 >>でも、一人の人間とそんなに長く過ごしたのは、《御伽噺の幽霊》とフィッルーカ・ファミリーの一部の幹部たちぐらいだ。 >>個人だけなら、カートが一番長い。 > >信じてくれる人が近くにいるだけで、世界は違って見えますよね。 >ジュリの運命を知っても、なお受け入れるカートは強いと思います。 > ええ、セピアからフルカラーぐらいにはね。 うぃ、強さを強さと感じさせないのが、強さなのかもしれません。 >>「俺ね、ジュリの事好きだよ。 >> 一緒に住めないのは、解ってるけど、それでも大好き。」 >>冬のある日そう言ってくれた。 >>だけど、その数日後、彼は死んだ。 >>山賊に、囲まれて、私を護ろうとして、死んだ。 >>同じ『ヒト』に、殺されて死んだ。 >>街で、騒動が起こってそのままいたら、殺されかねなかったから、山越えをしていた日にことだ。 >>その街の近くの森の奥に廃城があったから、そこを目指してたんだ。 >>死ねないって、死なないって、知ってたはずだったのに、山賊の剣と私の間に立って、斬られた。 >>血が、私の白い頬を染めた。 >>その血が、私の吸血鬼の部分を熱く熱くした。 >>視界が真っ白に染まった。 >>気付いたら、神影に抱き締められてた。 >>「落ち着いて、主。 >> そのままだと、森も、カートも跡形も無くなってしまう。」 >>「あ、う、うん。」 >>当たりの木々がなぎ倒され、山賊だったとおぼしき『肉片』が木や雪の上にこびりついていた。 >>我に返ってすぐ、カートとソラを探した。 >>ソラは、戦闘には参加しないでいたはずだった。 >>わりあい、すぐ傍にソラとカートはいた。 >>ソラの白い服も、周りの雪も、赤く紅く、キレイナ赤に染まっていた。 >>カートの血で、染まっていた。 >>「・・・・っカート。」 >>「たは・・・・・ドジった。 >> ・・・ジュリさん・・・・・・怪我・・・・・・して、ない?」 >>「して、ない。」 >>「・・・・・・ジュリさん、残念ですが。」 >>ソラのその短い一言で、全部解ってしまった。 >>いや、認めてしまったか。 >>あれだけ、血が流れていたんだ。 >>『ヒト』ならば、死ぬ量だ。 >>「・・・・・・・・・・ごめん、カート。」 >>「ううん・・・じゅり、は・・・・悪・・・くない。 >> ごめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 >>続きは、紡がれる事は無かった。 >>ずっと、ずっと、カートは黙ったままだった。 >>私は、泣いた。 >>天を衝くかと言うほど、泣いた。 >>それから、近くにあった廃城の傍にカートを埋めた。 >>その廃城を、人が住めるように数年かけて、修理した。 >>泣ける場所が欲しかったのだ。 >>どうしても、神影やソラの前では、泣くに泣けないのだ。 >>だから、修理が終わった日、私は、二人に『起きてくるまで起こすな』と言って、寝室にした部屋に引っ込んだ。 >>・・・・・・・大切な人を奪っていく世界を知覚していたくなかったんだ。 >>しばらく、何も考えずに、眠った。 >>時折、泣き寝入りのような形になっていたのを微かに覚えている。 >>100年が経ったくらいだろうか、私は起きた。 >>髪が、身長より長く長くなっていた。 >>それで、やっと認める事が出来た。 >>カートが同じ空の下にいない事を。 >>ソラに髪の毛を切ってもらって、また欧州中を彷徨う生活に戻った。 >>だけど、数年に一回、その廃城に戻って、カートが眠る墓に参ずることだけは止めなっった。 >> >理不尽な運命…… >カートは最後までジュリと一緒にいて幸せだったのでしょうか…… > >> >> >> >>「懐かしいな。 >> カートが死んだ日の晩も、こんな月だった。」 >>もう900年が経った。 >>なのに、カートを失った痛みは、私の胸を痛ませた。 >>それ以上に胸を痛ませるのは、ルーグを失った事だけれど。 >> >>失う人がこれ以上少しでも軽くなれば…… >900年の時は、大事な人をいつまでも縛り続けるのでしょうか? うぃ、それだけ、ジュリはカートの事が大切でした。 だからこその、これだけ思うのでしょう。 >> >> >> >> >> >> >> >> >> >> >> >>@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ >> >>友人と、吸血鬼は、不老不死だし、基本的に年は取らないけど。 >>髪の毛は伸びるのか?という遣り取りの中で、多分のびるし、膜は再生するんだろうと言う結論に達しまして。 >>それで、生まれた話です。 >>一応、エッチシーンがあるプロットでしたが、無くなりました。 >>・・・・・・・・・しかし、よくジュリは、人間嫌いにならないモノだねぇ。と人ごとのように行ってみます。 >> >>次は、本編の夜編9直後の時間軸の短編を投稿予定です。 >> >>ではでは。 > >人間嫌いにならない限り、ジュリはジュリだと思います。 >いつか、幸せになれるといい……と言う言葉は軽率でしょうか? >それでは。 華族の写真版では、乾詠太郎氏が、幸せにする予定です。 ともあれ、ありがとうございました。 |
18252 | 慣れないマスカラはつけるものではありません。(内容に関係は・・・・微妙に有り?) | 羅城 朱琉 | 2007/7/28 19:57:02 |
記事番号18236へのコメント 朱琉:こんにちは、遅くなりましたです。 夜勤明けで疲れているくせに、ただただ美味しいコーヒーを求めて1時間以上かけて遠出いたしていたという、The☆趣味人・羅城 朱琉です。 アミイ:・・・・・・・・ばか? 朱琉:・・・・。 早速ですが、レスに参ります。(冷汗) > > > > >その日は、満月だった。 >まだ、マティに封印されて、それを解いてもらってから。 >そうそう時間が立っていない、そんな頃だった。 >私は、窓から、月を見ていた。 >紫乃から、『とっとと寝ろ』と言われて、渡されたホットミルクもとうに冷めていた。 >「やっぱり忘れる事など出来ないね。」 >私は、そう呟いた。 >そして、思い返す。 朱琉:人間には『忘却』という救いがあるのに、吸血鬼にはそれも許されないんでしょうか・・・・。 アミイ:忘却は罪、とも言うけれど、全てを覚えていたら、やってられないと思うのよね。 だからこその『忘却』。いかなる苦痛も悲しみも、絶望ですら、ゆっくりと包み隠してゆく。精神の救済システムとしての『忘却』。それが出来ないとなると・・・・・・・・苦しいわね、とても。 > > > > > 家族の写真 番外 同じ空の下には、もういない > > > >そして、思い返す。 >私が、誰かを亡くして、自分を失ったのは何度か合った。 >特に酷かったのは、確か・・・・・・・。 >吸血鬼としての父親のクロイツを失った時。 >大好きだったルーグを亡くした時。 >そして、カーティスを失った時だ。 >特に、三つ目のカートの時は酷かった。 >100年近く、ふて寝していたからな。 >そもそも、アイツに出会ったのは、900年ほど前か。 >ルーグを失って、神影作って、ソラを作り直して、欧州中を当て所も無く彷徨っていたっけ。 >踊り子と楽士と護衛って形で。 >で、途中で、カートを拾った。 >ブラウンの髪と淡い空色の瞳で、拾った時は10歳ぐらいだったかな。 >久しぶりに、立ち寄れた街で、死にかけてた。 >なんで、助けたのかも解らない。 >薄汚れたガキだった。 >「ありがと。 > 俺、カート。 > カーティス・フォン・ジークルーゼってんだ。 > 姉ちゃんと、後一緒に居たあんちゃんたちはなんて名前?」 >「私は、ジュリ。 > あとから、紹介するが、黒い方が神影、白い方がソラ。」 >「へぇ、綺麗な名前だね。」 >「・・・・・・・・・貴族のガキが、なにしてた?」 >「良くある話だよ。 > 親が早くに死んで、親族に財産取られて、殺されかけて、逃げたけど、のたれ死するとこだったってこと。」 >「確かに、なくもない、話だ。」 >「姉ちゃんは? > こんないい宿に泊まれるぐらいだから、いいトコのお嬢様じゃないの?」 >「ちがうよ、ただの旅芸人。」 >貴族のガキだってのには、驚いた。 >らしくなかったからね。 >娼婦の子供が、親に捨てられていたってほうが、よっぽどしっくり来るような口調だったしね。 朱琉:時代的に・・・・・・・・確かに、ありえますね。 アミイ:時代的に考えなくても、幼いうちに親を亡くした子供の末路って、結構悲惨なものじゃない? 朱琉:そう考えると、カート君はひねくれてない良い子の部類に入るのではないかと。 >それから、一緒に連れて歩いた。 >神影とソラは驚いたけど、たいした意味は無い。 >気まぐれに近いもんだった。 >神影に、剣を教えてもらってたりもした。 >五年もすれば、客寄せの口上も、上手くなっていた。 >顔もいいし、街のお姉さんがたに、すごくすごくモテたね。 >それこそ、日替わりで、夜のお相手するくらいにね。 >・・・・・・拾ってから、10年。 >カートが20歳になった時に言った。 >「ここ十年で、解ったと思うけど、私はバケモノよ。 > それでも、一緒に来る? > 別れても、構わないよ。 > 自由にしろ、お前の人生だ。」 >あの時代は、16歳で一人立ちするのが、習わしだったけど。 >だけど、ずるずると、四年も延ばしてしまった。 >笑えるだろう? >吸血鬼が、不老不死で、しかも使い魔持ちが、人間と離れたくなかったなんて。 >でも、彼は笑い飛ばしてこう言った。 >「バケモノだろうとなんだろうと、ジュリはジュリだろ? > 10年間一緒に居た時間がニセモノだってんなら、別れっけど。 > そうじゃねぇんだろ? > なら、別れねぇ。 > 俺の命尽きるまで、何年あるかはわからないけどよ。 > ついていけなくなるまで、ついてくよ。」 >吃驚して、その時は、言葉が出なかった。 >神影は、人悪く笑うだけだったし。 >ソラは、静かに微笑むだけだった。 >「・・・・・・・いいのか?」 >やっと出たのは、その言葉だった。 朱琉:・・・・・・・・。強いですね、カート君もジュリさんも。 アミイ:生物としても、時間的にも、自分と違う・・・・一緒に居続ける事は出来ないとわかっていても、それでも!って宣言したカート君は確かに強いかもしれないけど。でも・・・・ジュリちゃんの方は? 朱琉:必ず失うと解っていて、何度も何度も失うことを繰り返して、それでもまだ、隣に寿命の短いものを置いて置けることも、ある意味強さだと思いますよ。 >別れる時は来るにしても、そう近い事ではない事ではないって知ったから、それからの旅は何倍も楽しかった。 >四季も、ルーグが死んでから、くすんで見えてたのに、カートとしばらくいられるってだけで、鮮やかさを取り戻してた。 >少なくとも、恋人同士の意味での好きではなかったけど、親子とか兄弟とかそんな感じの好きだったとは思う。 >でも、一人の人間とそんなに長く過ごしたのは、《御伽噺の幽霊》とフィッルーカ・ファミリーの一部の幹部たちぐらいだ。 >個人だけなら、カートが一番長い。 >「俺ね、ジュリの事好きだよ。 > 一緒に住めないのは、解ってるけど、それでも大好き。」 >冬のある日そう言ってくれた。 >だけど、その数日後、彼は死んだ。 >山賊に、囲まれて、私を護ろうとして、死んだ。 >同じ『ヒト』に、殺されて死んだ。 >街で、騒動が起こってそのままいたら、殺されかねなかったから、山越えをしていた日にことだ。 >その街の近くの森の奥に廃城があったから、そこを目指してたんだ。 >死ねないって、死なないって、知ってたはずだったのに、山賊の剣と私の間に立って、斬られた。 >血が、私の白い頬を染めた。 >その血が、私の吸血鬼の部分を熱く熱くした。 >視界が真っ白に染まった。 >気付いたら、神影に抱き締められてた。 >「落ち着いて、主。 > そのままだと、森も、カートも跡形も無くなってしまう。」 >「あ、う、うん。」 >当たりの木々がなぎ倒され、山賊だったとおぼしき『肉片』が木や雪の上にこびりついていた。 >我に返ってすぐ、カートとソラを探した。 >ソラは、戦闘には参加しないでいたはずだった。 >わりあい、すぐ傍にソラとカートはいた。 >ソラの白い服も、周りの雪も、赤く紅く、キレイナ赤に染まっていた。 >カートの血で、染まっていた。 朱琉:・・・・・・・・(静かに涙) アミイ:やりきれないわね、こういうの。 朱琉:・・・・・・・・自己犠牲っていうのは、傍目には美しいけれど・・・・周囲の人を、傷つけるものでもあるんですよ・・・・カート君・・・・。 アミイ:それをあんたが言うわけ?朱琉。 朱琉:・・・・・・・・まあ、大好きですけど、そういうの。 >「・・・・っカート。」 >「たは・・・・・ドジった。 > ・・・ジュリさん・・・・・・怪我・・・・・・して、ない?」 >「して、ない。」 >「・・・・・・ジュリさん、残念ですが。」 >ソラのその短い一言で、全部解ってしまった。 >いや、認めてしまったか。 >あれだけ、血が流れていたんだ。 >『ヒト』ならば、死ぬ量だ。 >「・・・・・・・・・・ごめん、カート。」 >「ううん・・・じゅり、は・・・・悪・・・くない。 > ごめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 >続きは、紡がれる事は無かった。 >ずっと、ずっと、カートは黙ったままだった。 >私は、泣いた。 >天を衝くかと言うほど、泣いた。 >それから、近くにあった廃城の傍にカートを埋めた。 >その廃城を、人が住めるように数年かけて、修理した。 >泣ける場所が欲しかったのだ。 >どうしても、神影やソラの前では、泣くに泣けないのだ。 >だから、修理が終わった日、私は、二人に『起きてくるまで起こすな』と言って、寝室にした部屋に引っ込んだ。 >・・・・・・・大切な人を奪っていく世界を知覚していたくなかったんだ。 >しばらく、何も考えずに、眠った。 >時折、泣き寝入りのような形になっていたのを微かに覚えている。 >100年が経ったくらいだろうか、私は起きた。 >髪が、身長より長く長くなっていた。 >それで、やっと認める事が出来た。 >カートが同じ空の下にいない事を。 >ソラに髪の毛を切ってもらって、また欧州中を彷徨う生活に戻った。 >だけど、数年に一回、その廃城に戻って、カートが眠る墓に参ずることだけは止めなっった。 > > > > >「懐かしいな。 > カートが死んだ日の晩も、こんな月だった。」 >もう900年が経った。 >なのに、カートを失った痛みは、私の胸を痛ませた。 >それ以上に胸を痛ませるのは、ルーグを失った事だけれど。 > > > > 朱琉:泣きましたです。マスカラが落ちて目の下が黒くなる程度には。 アミイ:化粧落とせ、今すぐ。 朱琉:はい・・・・(まだ半泣き) > > > > > > > > > >@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ > >友人と、吸血鬼は、不老不死だし、基本的に年は取らないけど。 >髪の毛は伸びるのか?という遣り取りの中で、多分のびるし、膜は再生するんだろうと言う結論に達しまして。 >それで、生まれた話です。 >一応、エッチシーンがあるプロットでしたが、無くなりました。 >・・・・・・・・・しかし、よくジュリは、人間嫌いにならないモノだねぇ。と人ごとのように行ってみます。 朱琉:本当にそうですね。嫌いになっても、誰も文句言えないと思うのに。 > >次は、本編の夜編9直後の時間軸の短編を投稿予定です。 > >ではでは。 朱琉:はい、では、また。 二人:また今度! |
18256 | だから、化粧は女の戦装束たりえる。 | 十叶 夕海 | 2007/7/30 02:05:58 |
記事番号18252へのコメント > >朱琉:こんにちは、遅くなりましたです。 > 夜勤明けで疲れているくせに、ただただ美味しいコーヒーを求めて1時間以上かけて遠出いたしていたという、The☆趣味人・羅城 朱琉です。 >アミイ:・・・・・・・・ばか? >朱琉:・・・・。 > 早速ですが、レスに参ります。(冷汗) ユア:こんにちは、ありがとうです。 私もありますよう、近くのよりも、コメダコーヒーの白ノワールが食べたくて、そこまで足を伸ばす時があります。 久遠:ローカル過ぎな気がするわ。 ユア:好きなのです。 ともあれ、返レス行きますね。 > >> >> >> >> >>その日は、満月だった。 >>まだ、マティに封印されて、それを解いてもらってから。 >>そうそう時間が立っていない、そんな頃だった。 >>私は、窓から、月を見ていた。 >>紫乃から、『とっとと寝ろ』と言われて、渡されたホットミルクもとうに冷めていた。 >>「やっぱり忘れる事など出来ないね。」 >>私は、そう呟いた。 >>そして、思い返す。 >朱琉:人間には『忘却』という救いがあるのに、吸血鬼にはそれも許されないんでしょうか・・・・。 >アミイ:忘却は罪、とも言うけれど、全てを覚えていたら、やってられないと思うのよね。 > だからこその『忘却』。いかなる苦痛も悲しみも、絶望ですら、ゆっくりと包み隠してゆく。精神の救済システムとしての『忘却』。それが出来ないとなると・・・・・・・・苦しいわね、とても。 ユア:許されない・・・・・というよりも、忘れれない。でしょうか。 遥か過去の事であっても、ジュリには昨日の事のように鮮烈に記憶してしまっているデキゴト。 久遠:そうね、罪ではないわ。 だけど、忘れてしまえるほど、軽くはない存在だった。 人ならば、数十年もすれば、『無』になるけれど、数千年生きてしまっている彼女には寂しい事なのかもしれないわ、『忘却』が出来ないとなると。 > >> >> >> >> >> 家族の写真 番外 同じ空の下には、もういない >> >> >> >>そして、思い返す。 >>私が、誰かを亡くして、自分を失ったのは何度か合った。 >>特に酷かったのは、確か・・・・・・・。 >>吸血鬼としての父親のクロイツを失った時。 >>大好きだったルーグを亡くした時。 >>そして、カーティスを失った時だ。 >>特に、三つ目のカートの時は酷かった。 >>100年近く、ふて寝していたからな。 >>そもそも、アイツに出会ったのは、900年ほど前か。 >>ルーグを失って、神影作って、ソラを作り直して、欧州中を当て所も無く彷徨っていたっけ。 >>踊り子と楽士と護衛って形で。 >>で、途中で、カートを拾った。 >>ブラウンの髪と淡い空色の瞳で、拾った時は10歳ぐらいだったかな。 >>久しぶりに、立ち寄れた街で、死にかけてた。 >>なんで、助けたのかも解らない。 >>薄汚れたガキだった。 >>「ありがと。 >> 俺、カート。 >> カーティス・フォン・ジークルーゼってんだ。 >> 姉ちゃんと、後一緒に居たあんちゃんたちはなんて名前?」 >>「私は、ジュリ。 >> あとから、紹介するが、黒い方が神影、白い方がソラ。」 >>「へぇ、綺麗な名前だね。」 >>「・・・・・・・・・貴族のガキが、なにしてた?」 >>「良くある話だよ。 >> 親が早くに死んで、親族に財産取られて、殺されかけて、逃げたけど、のたれ死するとこだったってこと。」 >>「確かに、なくもない、話だ。」 >>「姉ちゃんは? >> こんないい宿に泊まれるぐらいだから、いいトコのお嬢様じゃないの?」 >>「ちがうよ、ただの旅芸人。」 >>貴族のガキだってのには、驚いた。 >>らしくなかったからね。 >>娼婦の子供が、親に捨てられていたってほうが、よっぽどしっくり来るような口調だったしね。 >朱琉:時代的に・・・・・・・・確かに、ありえますね。 >アミイ:時代的に考えなくても、幼いうちに親を亡くした子供の末路って、結構悲惨なものじゃない? >朱琉:そう考えると、カート君はひねくれてない良い子の部類に入るのではないかと。 久遠:でも、小さな子がそう言う目に遭うのって、お姉さん的に、哀しいわ。 ユア:その辺は、今だろうと昔だろうと変わらないですよ。 久遠:でも、The☆純朴って感じよね。 > >>それから、一緒に連れて歩いた。 >>神影とソラは驚いたけど、たいした意味は無い。 >>気まぐれに近いもんだった。 >>神影に、剣を教えてもらってたりもした。 >>五年もすれば、客寄せの口上も、上手くなっていた。 >>顔もいいし、街のお姉さんがたに、すごくすごくモテたね。 >>それこそ、日替わりで、夜のお相手するくらいにね。 >>・・・・・・拾ってから、10年。 >>カートが20歳になった時に言った。 >>「ここ十年で、解ったと思うけど、私はバケモノよ。 >> それでも、一緒に来る? >> 別れても、構わないよ。 >> 自由にしろ、お前の人生だ。」 >>あの時代は、16歳で一人立ちするのが、習わしだったけど。 >>だけど、ずるずると、四年も延ばしてしまった。 >>笑えるだろう? >>吸血鬼が、不老不死で、しかも使い魔持ちが、人間と離れたくなかったなんて。 >>でも、彼は笑い飛ばしてこう言った。 >>「バケモノだろうとなんだろうと、ジュリはジュリだろ? >> 10年間一緒に居た時間がニセモノだってんなら、別れっけど。 >> そうじゃねぇんだろ? >> なら、別れねぇ。 >> 俺の命尽きるまで、何年あるかはわからないけどよ。 >> ついていけなくなるまで、ついてくよ。」 >>吃驚して、その時は、言葉が出なかった。 >>神影は、人悪く笑うだけだったし。 >>ソラは、静かに微笑むだけだった。 >>「・・・・・・・いいのか?」 >>やっと出たのは、その言葉だった。 >朱琉:・・・・・・・・。強いですね、カート君もジュリさんも。 >アミイ:生物としても、時間的にも、自分と違う・・・・一緒に居続ける事は出来ないとわかっていても、それでも!って宣言したカート君は確かに強いかもしれないけど。でも・・・・ジュリちゃんの方は? >朱琉:必ず失うと解っていて、何度も何度も失うことを繰り返して、それでもまだ、隣に寿命の短いものを置いて置けることも、ある意味強さだと思いますよ。 ユア:その強さも、弱さの裏返しなのかもしれないですね。 久遠:だけど、それでも、二人がその道を選んだのは、『好き』だからでしょ? どちらかが必ず、どちらかを置いていくと解ってすら、それでも、一緒に居たいのは、『好き』以外にないでしょう ユア:・・・・・・老衰以外の終わり方だと、ダメージでかそうですが。 > >>別れる時は来るにしても、そう近い事ではない事ではないって知ったから、それからの旅は何倍も楽しかった。 >>四季も、ルーグが死んでから、くすんで見えてたのに、カートとしばらくいられるってだけで、鮮やかさを取り戻してた。 >>少なくとも、恋人同士の意味での好きではなかったけど、親子とか兄弟とかそんな感じの好きだったとは思う。 >>でも、一人の人間とそんなに長く過ごしたのは、《御伽噺の幽霊》とフィッルーカ・ファミリーの一部の幹部たちぐらいだ。 >>個人だけなら、カートが一番長い。 >>「俺ね、ジュリの事好きだよ。 >> 一緒に住めないのは、解ってるけど、それでも大好き。」 >>冬のある日そう言ってくれた。 >>だけど、その数日後、彼は死んだ。 >>山賊に、囲まれて、私を護ろうとして、死んだ。 >>同じ『ヒト』に、殺されて死んだ。 >>街で、騒動が起こってそのままいたら、殺されかねなかったから、山越えをしていた日にことだ。 >>その街の近くの森の奥に廃城があったから、そこを目指してたんだ。 >>死ねないって、死なないって、知ってたはずだったのに、山賊の剣と私の間に立って、斬られた。 >>血が、私の白い頬を染めた。 >>その血が、私の吸血鬼の部分を熱く熱くした。 >>視界が真っ白に染まった。 >>気付いたら、神影に抱き締められてた。 >>「落ち着いて、主。 >> そのままだと、森も、カートも跡形も無くなってしまう。」 >>「あ、う、うん。」 >>当たりの木々がなぎ倒され、山賊だったとおぼしき『肉片』が木や雪の上にこびりついていた。 >>我に返ってすぐ、カートとソラを探した。 >>ソラは、戦闘には参加しないでいたはずだった。 >>わりあい、すぐ傍にソラとカートはいた。 >>ソラの白い服も、周りの雪も、赤く紅く、キレイナ赤に染まっていた。 >>カートの血で、染まっていた。 >朱琉:・・・・・・・・(静かに涙) >アミイ:やりきれないわね、こういうの。 >朱琉:・・・・・・・・自己犠牲っていうのは、傍目には美しいけれど・・・・周囲の人を、傷つけるものでもあるんですよ・・・・カート君・・・・。 >アミイ:それをあんたが言うわけ?朱琉。 >朱琉:・・・・・・・・まあ、大好きですけど、そういうの。 久遠:ユアちゃんも、ここを書いてる時は、泣いてたわね。 ユア:書いた本人が泣いちゃ意味ないですが。 久遠:・・・・・なんにせよね、大切な人がいれば、身体が動いてしまうのよ。 それが、その人を傷つけると理解していても。 ユア:両方生き残れば、万々歳なのでしょうが、そうもいかないからこその、物語でしょうか。 > >>「・・・・っカート。」 >>「たは・・・・・ドジった。 >> ・・・ジュリさん・・・・・・怪我・・・・・・して、ない?」 >>「して、ない。」 >>「・・・・・・ジュリさん、残念ですが。」 >>ソラのその短い一言で、全部解ってしまった。 >>いや、認めてしまったか。 >>あれだけ、血が流れていたんだ。 >>『ヒト』ならば、死ぬ量だ。 >>「・・・・・・・・・・ごめん、カート。」 >>「ううん・・・じゅり、は・・・・悪・・・くない。 >> ごめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 >>続きは、紡がれる事は無かった。 >>ずっと、ずっと、カートは黙ったままだった。 >>私は、泣いた。 >>天を衝くかと言うほど、泣いた。 >>それから、近くにあった廃城の傍にカートを埋めた。 >>その廃城を、人が住めるように数年かけて、修理した。 >>泣ける場所が欲しかったのだ。 >>どうしても、神影やソラの前では、泣くに泣けないのだ。 >>だから、修理が終わった日、私は、二人に『起きてくるまで起こすな』と言って、寝室にした部屋に引っ込んだ。 >>・・・・・・・大切な人を奪っていく世界を知覚していたくなかったんだ。 >>しばらく、何も考えずに、眠った。 >>時折、泣き寝入りのような形になっていたのを微かに覚えている。 >>100年が経ったくらいだろうか、私は起きた。 >>髪が、身長より長く長くなっていた。 >>それで、やっと認める事が出来た。 >>カートが同じ空の下にいない事を。 >>ソラに髪の毛を切ってもらって、また欧州中を彷徨う生活に戻った。 >>だけど、数年に一回、その廃城に戻って、カートが眠る墓に参ずることだけは止めなっった。 >> >> >> >> >>「懐かしいな。 >> カートが死んだ日の晩も、こんな月だった。」 >>もう900年が経った。 >>なのに、カートを失った痛みは、私の胸を痛ませた。 >>それ以上に胸を痛ませるのは、ルーグを失った事だけれど。 >> >> >> >> >朱琉:泣きましたです。マスカラが落ちて目の下が黒くなる程度には。 >アミイ:化粧落とせ、今すぐ。 >朱琉:はい・・・・(まだ半泣き) ユア:だからこそ、泣けない時には、化粧は最高の戦装束になり得るわけで。 久遠:間違ってないけど、ズレまくってない? ユア:気のせいにしておいてください。 > >> >> >> >> >> >> >> >> >> >>@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ >> >>友人と、吸血鬼は、不老不死だし、基本的に年は取らないけど。 >>髪の毛は伸びるのか?という遣り取りの中で、多分のびるし、膜は再生するんだろうと言う結論に達しまして。 >>それで、生まれた話です。 >>一応、エッチシーンがあるプロットでしたが、無くなりました。 >>・・・・・・・・・しかし、よくジュリは、人間嫌いにならないモノだねぇ。と人ごとのように行ってみます。 >朱琉:本当にそうですね。嫌いになっても、誰も文句言えないと思うのに。 ユア:彼女が彼女だからこそ、嫌いになれないのかもしれないです。 > >> >>次は、本編の夜編9直後の時間軸の短編を投稿予定です。 >> >>ではでは。 >朱琉:はい、では、また。 >二人:また今度! > > ユア:ありがとうございました。 二人:では、また次回。 |