◆−白銀の刃 閃かせ舞うは黒髪の剣姫  プロローグ−十叶 夕海 (2007/10/27 18:38:05) No.18376
 ┣風舞う先の運命の剣。−月読乾 (2007/12/30 22:20:31) No.18416
 ┃┗その切っ先は、何処へ向く?−十叶 夕海 (2008/1/12 16:38:01) No.18419
 ┗白銀の刃 閃かせ舞うは黒髪の剣姫  第一幕−十叶夕海 (2008/3/19 00:57:13) No.18440


トップに戻る
18376白銀の刃 閃かせ舞うは黒髪の剣姫  プロローグ十叶 夕海 2007/10/27 18:38:05






「いつでしたかね。
 ・・・・・・・・そう、北宋の時代で。
 あの時も、同じような外見で。
 そういえば、あれは、お祖父様でしたっけね。」
《賢き愚者》は、自宅でそう呟く。
今、2006年から、数えて1000年ほど昔の事だ。
彼にしては、珍しく、《歌乙女》関連で、『楽しかった』と思える記憶だ。
「珍しいね、父さんが、過去の記憶を純粋に、『楽しかった』なんて言えるのはさ。」
「おや、久しぶり。」
「かれこれ、二ヶ月ぶり
 年末に会えた以来だし?
 ・・・・・・・ま、今代の《御伽噺》が動くみたいだし、その前に、会ってっておこうと思って。」
《運命演算三姉妹の長女》が、本来の金髪の少年の姿をとり、《賢き愚者》の元を訪ねて来た。
珍しい事ではないけれど、それでも、二ヶ月半ほど前回より空いていた。
「どんなことがあったの?
 《歌乙女》関連?」
「そう。話そうか。」


白銀の刃 閃かせ舞うは黒髪の剣姫  プロローグ


北宋の首都・開封は、その日も賑わっていた。
そして、この時代は、まだ穏やかな・・・平穏な日々が続いていた。
街は賑わい、人は陽気に過ごしていた。
この市場も、大勢の人出があった。
だけれど、何処でもどんな時代でも、いるように、チンピラはいた。
「ってぇ。
 ・・・んだ、毛色は珍しいがイイオンナじゃなネェか。
 今夜一晩、お相手してくれや。」
「そやそや、アニキにぶつかったんや、それぐらいしてや。」
「い、嫌です。
 離してください。」
「あぁん、悪いと思うてないんか?」
「嫌ぁ!!」
僕は腕をかなり強く掴まれた。
あ、そん時、女装してたんだ。
よくも悪くも、今と同じようなスノウブロンドで、おまけに赤みの強い瞳だったからね。
髪を編み込んで、長い衣とベールで、隠せば、旅芸人の仕上がりだ。
男の姿で、一人旅をすると面倒でも、女性だと切り抜けれる事も在るしね。
こう言う事も在るけど。
だから、暗器でぶちのめそうか、なんて考えていたときだった。
「止めろ、下郎。
 嫌がっているだろうが。」
黒く長い髪を高く結っていて、蒼色の柄布で纏めていて、すらりとした長身の・・・ただしその国の男性にしては、少々低い身長の青年が、柄も刀身も白銀の中華剣を構えていた。
その切っ先は、チンピラの兄貴分の首筋にあった。
「ひぃ。
 兄さん、ちょいとした・・・・・そ、その白銀の刃は、銀康龍(イン・ホンロン)。」
「げ〜、アニキマズいよぉ.。」
「逃げろ〜。」
チンピラ二人は、走り逃げ去った。
その進行方向に、追い払った青年に似ているが、背のノッポの青年が、いた。
むんずと、チンピラ二人の首を掴み、額と額をごっちんとぶつける。
そして、二人は夢の中。
「また、無茶したね。
 ま、この二人は俺が連れてくから、月(ユエ)と龍(ロン)は、そのお姉さんのことよろしくね。
 花蘭さんには、晩に行くって言っといて。」
また、別の・・・今度は少年と言っていいほどの年齢の長髪を結った猫のような男性が、チンピラ二人を引き取っていった。
先の二人の仲間で、展昭(テンショウ)と言うらしかった。
「えっと、お姉さん、大丈夫?」
「え、あ、はい。
 大丈夫です。」
「立てる?」
「・・・・・・・・・・すいません、無理なようです。」
先ほど、チンピラに、康龍と呼ばれた青年が、覗き込んで来た。
もう一人は、すぐ傍に立っていた。
そんでね、情けない事に、足をひねっていた上に、腰を抜かしてたんだ。
「龍大哥(ロン・ターチェ)、蘭姉さんのトコ連れてこう。」
「はいはい。」
こうして、僕は、ノッポの青年に、花嫁さん抱っこをされて、大きな劇場に連れてかれたんだ。
まだ、このときは気付いてなかったんだけどね。
別れるまで気付かない方が、幸せだったかもだけど。

トップに戻る
18416風舞う先の運命の剣。月読乾 2007/12/30 22:20:31
記事番号18376へのコメント

こんばんは、乾です。
今回は中華風?
の世界観でまた新しい広がりを感じさせる展開ですね。
では、レスさせて頂きます。


>「いつでしたかね。
> ・・・・・・・・そう、北宋の時代で。
> あの時も、同じような外見で。
> そういえば、あれは、お祖父様でしたっけね。」
>《賢き愚者》は、自宅でそう呟く。
>今、2006年から、数えて1000年ほど昔の事だ。
>彼にしては、珍しく、《歌乙女》関連で、『楽しかった』と思える記憶だ。
>「珍しいね、父さんが、過去の記憶を純粋に、『楽しかった』なんて言えるのはさ。」
>「おや、久しぶり。」
>「かれこれ、二ヶ月ぶり
> 年末に会えた以来だし?
> ・・・・・・・ま、今代の《御伽噺》が動くみたいだし、その前に、会ってっておこうと思って。」
>《運命演算三姉妹の長女》が、本来の金髪の少年の姿をとり、《賢き愚者》の元を訪ねて来た。
>珍しい事ではないけれど、それでも、二ヶ月半ほど前回より空いていた。

目くるめく辿られる記憶のピース…
今回辿るのはどの破片?
その行き着く先は?

>「どんなことがあったの?
> 《歌乙女》関連?」
>「そう。話そうか。」
>
>
>白銀の刃 閃かせ舞うは黒髪の剣姫  プロローグ
>
>
>北宋の首都・開封は、その日も賑わっていた。
>そして、この時代は、まだ穏やかな・・・平穏な日々が続いていた。
>街は賑わい、人は陽気に過ごしていた。
>この市場も、大勢の人出があった。
>だけれど、何処でもどんな時代でも、いるように、チンピラはいた。
>「ってぇ。
> ・・・んだ、毛色は珍しいがイイオンナじゃなネェか。
> 今夜一晩、お相手してくれや。」
>「そやそや、アニキにぶつかったんや、それぐらいしてや。」
>「い、嫌です。
> 離してください。」
>「あぁん、悪いと思うてないんか?」
>「嫌ぁ!!」
>僕は腕をかなり強く掴まれた。
>あ、そん時、女装してたんだ。
>よくも悪くも、今と同じようなスノウブロンドで、おまけに赤みの強い瞳だったからね。
>髪を編み込んで、長い衣とベールで、隠せば、旅芸人の仕上がりだ。
>男の姿で、一人旅をすると面倒でも、女性だと切り抜けれる事も在るしね。
>こう言う事も在るけど。
>だから、暗器でぶちのめそうか、なんて考えていたときだった。
>「止めろ、下郎。
> 嫌がっているだろうが。」
>黒く長い髪を高く結っていて、蒼色の柄布で纏めていて、すらりとした長身の・・・ただしその国の男性にしては、少々低い身長の青年が、柄も刀身も白銀の中華剣を構えていた。
>その切っ先は、チンピラの兄貴分の首筋にあった。
>「ひぃ。
> 兄さん、ちょいとした・・・・・そ、その白銀の刃は、銀康龍(イン・ホンロン)。」
>「げ〜、アニキマズいよぉ.。」
>「逃げろ〜。」

う〜む…
逃げるヒロイン(男だけど)
に颯爽と現れる剣士!
おまけに三下のチンピラ…
完璧なキャスティングですね(ぇ
ある意味、これも一種の運命演算?

>チンピラ二人は、走り逃げ去った。
>その進行方向に、追い払った青年に似ているが、背のノッポの青年が、いた。
>むんずと、チンピラ二人の首を掴み、額と額をごっちんとぶつける。
>そして、二人は夢の中。
>「また、無茶したね。
> ま、この二人は俺が連れてくから、月(ユエ)と龍(ロン)は、そのお姉さんのことよろしくね。
> 花蘭さんには、晩に行くって言っといて。」
>また、別の・・・今度は少年と言っていいほどの年齢の長髪を結った猫のような男性が、チンピラ二人を引き取っていった。
>先の二人の仲間で、展昭(テンショウ)と言うらしかった。
>「えっと、お姉さん、大丈夫?」
>「え、あ、はい。
> 大丈夫です。」
>「立てる?」
>「・・・・・・・・・・すいません、無理なようです。」
>先ほど、チンピラに、康龍と呼ばれた青年が、覗き込んで来た。
>もう一人は、すぐ傍に立っていた。
>そんでね、情けない事に、足をひねっていた上に、腰を抜かしてたんだ。
>「龍大哥(ロン・ターチェ)、蘭姉さんのトコ連れてこう。」
>「はいはい。」
>こうして、僕は、ノッポの青年に、花嫁さん抱っこをされて、大きな劇場に連れてかれたんだ。
>まだ、このときは気付いてなかったんだけどね。
>別れるまで気付かない方が、幸せだったかもだけど。

今後また、どういう話が進むのでしょうか?
パズルの破片が埋まっていくのを、また次回に…

トップに戻る
18419その切っ先は、何処へ向く?十叶 夕海 2008/1/12 16:38:01
記事番号18416へのコメント


>こんばんは、乾です。
>今回は中華風?
>の世界観でまた新しい広がりを感じさせる展開ですね。
>では、レスさせて頂きます。

こんにちは、夕海です。
中華風ではありますが、実際の王朝名出した意味無いですの。
ともあれ、返レス行きます。

>
>
>>「いつでしたかね。
>> ・・・・・・・・そう、北宋の時代で。
>> あの時も、同じような外見で。
>> そういえば、あれは、お祖父様でしたっけね。」
>>《賢き愚者》は、自宅でそう呟く。
>>今、2006年から、数えて1000年ほど昔の事だ。
>>彼にしては、珍しく、《歌乙女》関連で、『楽しかった』と思える記憶だ。
>>「珍しいね、父さんが、過去の記憶を純粋に、『楽しかった』なんて言えるのはさ。」
>>「おや、久しぶり。」
>>「かれこれ、二ヶ月ぶり
>> 年末に会えた以来だし?
>> ・・・・・・・ま、今代の《御伽噺》が動くみたいだし、その前に、会ってっておこうと思って。」
>>《運命演算三姉妹の長女》が、本来の金髪の少年の姿をとり、《賢き愚者》の元を訪ねて来た。
>>珍しい事ではないけれど、それでも、二ヶ月半ほど前回より空いていた。
>
>目くるめく辿られる記憶のピース…
>今回辿るのはどの破片?
>その行き着く先は?

数多過ぎ、全てを思い出されていない欠片。
今回めくるは、千年も昔のお話。
行き着く先は、悲劇しか非ず。

>
>>白銀の刃 閃かせ舞うは黒髪の剣姫  プロローグ
>>
>>
>>北宋の首都・開封は、その日も賑わっていた。
>>そして、この時代は、まだ穏やかな・・・平穏な日々が続いていた。
>>街は賑わい、人は陽気に過ごしていた。
>>この市場も、大勢の人出があった。
>>だけれど、何処でもどんな時代でも、いるように、チンピラはいた。
>>「ってぇ。
>> ・・・んだ、毛色は珍しいがイイオンナじゃなネェか。
>> 今夜一晩、お相手してくれや。」
>>「そやそや、アニキにぶつかったんや、それぐらいしてや。」
>>「い、嫌です。
>> 離してください。」
>>「あぁん、悪いと思うてないんか?」
>>「嫌ぁ!!」
>>僕は腕をかなり強く掴まれた。
>>あ、そん時、女装してたんだ。
>>よくも悪くも、今と同じようなスノウブロンドで、おまけに赤みの強い瞳だったからね。
>>髪を編み込んで、長い衣とベールで、隠せば、旅芸人の仕上がりだ。
>>男の姿で、一人旅をすると面倒でも、女性だと切り抜けれる事も在るしね。
>>こう言う事も在るけど。
>>だから、暗器でぶちのめそうか、なんて考えていたときだった。
>>「止めろ、下郎。
>> 嫌がっているだろうが。」
>>黒く長い髪を高く結っていて、蒼色の柄布で纏めていて、すらりとした長身の・・・ただしその国の男性にしては、少々低い身長の青年が、柄も刀身も白銀の中華剣を構えていた。
>>その切っ先は、チンピラの兄貴分の首筋にあった。
>>「ひぃ。
>> 兄さん、ちょいとした・・・・・そ、その白銀の刃は、銀康龍(イン・ホンロン)。」
>>「げ〜、アニキマズいよぉ.。」
>>「逃げろ〜。」
>
>う〜む…
>逃げるヒロイン(男だけど)
>に颯爽と現れる剣士!
>おまけに三下のチンピラ…
>完璧なキャスティングですね(ぇ
>ある意味、これも一種の運命演算?

王道ですねー。
一種の、運命演算と言うか、某ディオ様風に言うと。
「計算されたかのような関係」でしょうか?

>
>>チンピラ二人は、走り逃げ去った。
>>その進行方向に、追い払った青年に似ているが、背のノッポの青年が、いた。
>>むんずと、チンピラ二人の首を掴み、額と額をごっちんとぶつける。
>>そして、二人は夢の中。
>>「また、無茶したね。
>> ま、この二人は俺が連れてくから、月(ユエ)と龍(ロン)は、そのお姉さんのことよろしくね。
>> 花蘭さんには、晩に行くって言っといて。」
>>また、別の・・・今度は少年と言っていいほどの年齢の長髪を結った猫のような男性が、チンピラ二人を引き取っていった。
>>先の二人の仲間で、展昭(テンショウ)と言うらしかった。
>>「えっと、お姉さん、大丈夫?」
>>「え、あ、はい。
>> 大丈夫です。」
>>「立てる?」
>>「・・・・・・・・・・すいません、無理なようです。」
>>先ほど、チンピラに、康龍と呼ばれた青年が、覗き込んで来た。
>>もう一人は、すぐ傍に立っていた。
>>そんでね、情けない事に、足をひねっていた上に、腰を抜かしてたんだ。
>>「龍大哥(ロン・ターチェ)、蘭姉さんのトコ連れてこう。」
>>「はいはい。」
>>こうして、僕は、ノッポの青年に、花嫁さん抱っこをされて、大きな劇場に連れてかれたんだ。
>>まだ、このときは気付いてなかったんだけどね。
>>別れるまで気付かない方が、幸せだったかもだけど。
>
>今後また、どういう話が進むのでしょうか?
>パズルの破片が埋まっていくのを、また次回に…

悲劇なるか、喜劇なるか。
次の欠片は、どうなるか?

トップに戻る
18440白銀の刃 閃かせ舞うは黒髪の剣姫  第一幕十叶夕海 2008/3/19 00:57:13
記事番号18376へのコメント





カンカンカンと、小気味いい音が、開封のとある場所で、剣の打ち合う音が聞こえる。
今は、官帽を外し、黒い髪を長く伸ばして、赤い官服の青年と淡い白雪のようなスノーブロンドのずるりとした踊り子などの劇場で、舞台に立っていても、違和感の無い服装の女性?が刃を潰した剣でだ。
ほぼ、互角でである。
片方は、展昭といい、少し前まで、「南侠」と呼ばれる、この時代のヒーローといっても良い。
剣の「南侠」・刀の「北侠」と言われるほど、腕が立つ。
その展昭相手に、女性にしか見えない麗煌こと、クリストフは互角に立ち会っている。
「結構、やりますね。
 健龍さんと同じか、それ以上かな。」
「喋ってっていいのかな!」
「う〜ん、本気じゃないですし。
 おまけに、この衣装がハンディになっているの気付いていますか?」
「でも、力量だけが、全てじゃないですよ。」
「否定はしない。
 だけど、ある程度は、それが決めるし、まだ展昭くんは、若いから、迷いも多い。」
展昭が、横薙ぎに剣を払えば、クリストフは、身をかがめ、それを避ける。
そして、その体勢から、バネ仕掛けのように、下から上へと逆に薙ぎ払う。
ちなみに、刃が潰してあるとはいえ、その剣は、金属の塊だ。
まともに当たれば、骨がおれる可能性どころか、確実に折れるわけで。
クリストフは、にこにこと、喋り、人差し指を建てるなどと言う余裕すらあり、微笑みすら浮かべていた。
もちろん、息一つ乱さず、汗を一滴すら流していない。
対する展昭は、徐々に、余裕を無くし、息を乱していく。
趣味が悪いとは想ったけど、そのとき、もう少しで、お昼ご飯だった。
だから、急速にスピードを上げる。
そして、動きについていけなくなったことで、生まれた隙を付き、肩を突き飛ばし、勢いのまま押し倒して。
「はい、おしまい。」
顔の真横に、模造剣を突き立てる。
もちろん、にっこり笑ってね。
「・・・・・ま、参った。」
「その年齢で、それなら、最高峰だと思いますよ。」
「・・・・・・ということは、その外見はまやかしかな?」
「まやかし・・・ええと、幻術か?と言う事でしたら、ノーです。
 ややこしいんですよ、僕はね。」
横合いから、一人の男の声がかかる。
黒い官服を来た肌の黒い三十歳近い男だ。
名前を包拯という、この時代の名裁判官だ。
日本でなら、大岡越前というような存在だろう。
彼は、ある意味人ではないかもしれないが、それでも、鋭い指摘だ。
ちなみに、さきほど、開封のある場所と言ったけれど、開封府・・・日本で言うなら最高裁判所に値するような場所の庭で、打ち合いをしていたのだ。
いわゆる、実践めいたお手合わせだ。
一応ね、僕は、その時は、完全に人間だったけれど、《賢き愚者》としての記憶とその特殊性で、剣の腕に秀でていたんだ。
「興味あらば、《御伽噺》をお調べください。
 これ以上は、お教えは出来ませんよ。」
「《御伽噺》?」
「ええ、《御伽噺》。
 古く古く連綿続く悲喜劇。
 《文曲星君》包青天殿?」
煙に巻く形で、僕は、その場を後にした。
昼飯がてらに、花蘭さんと劇場の座長と今日の打ち合わせしなくては行けなかったから。
それに、包拯さん、そこらの勘のいい人間よりも、恐ろしいもん。
これが、この街にきてから、3日め4日めのデキゴトだった。
ほんとね、幸せだった。
恐ろしいぐらいの幸せ。
珍しく、本当に珍しく、幸せだった。



「どうしたの?
 麗煌さん、ぐったりして。」
「あはは、女だと思って甘く見られた上に、べたべたああも触られちゃ、ぐったりもしたくなるよ。」
一日一回、夜の公演の時にだけ、場繋ぎに歌を歌ってたの。
だけどね、女で、しかも、美人なせいもあって、今で言うセクハラ紛いの事もされたし。
楽屋まで来て、口説かれたり、妾にならないか?って言われたり。
初めて、十日後には、月蘭が、心配するぐらいに、ぐったりしてた。
ま、花蘭さん曰く、「ちょうど良い色気になるわよ。」と言われたけどね。
でもね、基本的に、この時の僕は、ノンケ。
しかも、ボンキュボンのナイスバディの抱き心地のいい女性が好きだったんだ。
え?今は、どうかって?
一応女性は、そうだけど。
男性も、今はイケルよ。
一応、バイってヤツ。
「だって、麗煌さん、キレーだし。」
「あのね、一応、僕男だよ?」
「龍兄さんよりも、細いのに?」
「それは、個人差。」
「私より、可愛いよ?」
「月(ゆえ)のほうが、可愛い。」
「・・・・・・・で、いちゃいちゃするなら、外でやってね。
 月に、麗。」
「「いえっさー、花蘭大姐さま。」」
でもね、月蘭は、全然そうじゃ無いの。
むしろ、胸もケツも、ささやかで全体的に華奢なんだよね。
だから、肩幅とか誤摩化せる服を着れば、少年で通せるんだ。
すんごい、カッコイイよりも、カワカッコイイって言う感じの少年に。
でも、触れば、形のいい・・・え?オジン臭い?
長く生きれば、長く存在すればかな?そうなれば、多少そうなるよ。
んで、会話してると、夜食のゴマ団子と茉莉花と檸檬の皮の茶を持って、来たのが、花蘭さん。
笑うなよ、ミカル。
一応ね、ああいう、キップの良いと言うか、気の強い女性は、一番初めの義兄弟でもあった《泉の乙女》に似ているから、逆らえないの。
「阿月(ゆえちゃん)、明後日、お仕事おやすみだから、麗に、開封を案内してあげてね。」
「え?」
「展昭ちゃんも、一応、一緒に案内するって言っているし。」
「いいけど。」
「それじゃ、お土産、白雲の桃饅頭でよろしくね。」
「それが、目的ですか?」
そんな、会話が自然に交わされた。
幸せな・・・ごく普通の会話だった。
終わった過去に、『If』はないけれど、僕が去っていれば、まだ何かが違ったかもしれない。
そう思うのは、間違っているかもしれないけど。





「そう思うのは、間違ってるかもしれないけど。
 だけど、それほどまでに、ずっと続いて欲しかった光景なんですよ。」
「・・・・・・パピィ、この時のパピィ、ってか、《賢き愚者》って、すごくまともなんだね。」
ミカルは、話が一区切りつくと、開口一番こう言った。
いつもは、「親父」か、「父さん」としか、呼ばないのに、「パピィ」と言っている。
敢えて言おう、少々怖い。
「・・・・・・・・・・ミカル?
 私の何処が、まともじゃないと?」
「実の息子を、××して、××××したあげく、性奴隷として、××した人間が、まともを論じるな。」
「・・・・・・・・・・・襲いますよ?」
「うわぁい、おとうさま、ごめんね。(うわぁい、お父様ごめんね。)
 おとうさまって、りそうてきなぱぱだよ。」(お父様って理想的なパパだよ)
静かに、クリストフパパが、爆弾発言をすると、可愛らしくミカルは、弁解する。
にゃんにゃんをしない時は、まぁ、こんなおちゃっぴいな会話もする親子なのだ。
「・・・・・ま、続き話しましょうか?」
「うん。」