◆−家族の写真 番外 さようなら、そんな君は大嫌いだった、−十叶 夕海 (2007/11/15 20:46:12) No.18395 ┗嫌い嫌い嫌い…それでも好き?−月読乾 (2007/12/27 21:43:05) No.18414 ┗だからこそ、大嫌い。−十叶 夕海 (2007/12/29 03:59:15) No.18415
18395 | 家族の写真 番外 さようなら、そんな君は大嫌いだった、 | 十叶 夕海 | 2007/11/15 20:46:12 |
「なんで、完全に馴れ合わないかって?」 「ええ、だって、エリスちゃんの時も、今のレイちゃんの時も、葬儀に出て、墓を参るのに。 協力しないときは一切しない中立な立場をなんで、貫くのかなーって。」 「ふん、哀しくないわけじゃない。」 「間に合わなかったのは、仕事でしょ?」 三年ほど前のあるけぶるような雨の日だ。 正確に言うなら、三月の終わり位だ。 場所は、墓だ。 墓碑銘は、『親愛なる 偉大な情報屋 レイティス=アイルテ が眠る』だ。 まだ、真新しい・・・数日前に、経ったばかりなのだ。 つい二週間ほど前、この墓標の主は、死んだ。 《吸血鬼》と渾名される、親友だった男の手に掛かり。 養い子を一人残して、レイティスは死んだのだ。 そして、そのことは、養い子・アリエスは知らず、レイティスの友人・・・仲間・知り合いしか知らない。 今、墓の前に、性別・年齢不詳の二人が居た 印象はある意味、真逆であった。 片方は、ワイシャツと肌と瞳、装飾品以外が、黒いスーツ姿で、シャツと肌、装飾品は、白や銀でモノートーンで、瞳だけが金茶だった。 彼の髪は、縮れ髪で、それを纏める布も色合いは微妙に違うモノの黒だった。 装飾品が、ゴッシクなイメージのモノが多いせいか、死神を彷彿とさせる。 いつもの彼よりも、三割増で、機嫌が悪そうだ。 もう片方は、ピンクに近い赤紫色の髪をポニーテールにして、前髪で右眼を覆い、左眼は空の蒼で、葬儀には不向きな白地に、裾と袖に血が散ったような模様入りのブラウスと黒のスラックスという格好。 どこか、婀っぽい雰囲気である。 ちなみに、後者は確実に男なので悪しからず。 「うん、君も、中々無為な事を聞いてくる。 知らないわけではないだろう、錬度が上がりきった「予知」系の能力者こそ、仲間と思っても馴れ合いきれない。 特に、裏稼業では、いつ死ぬか解っているのは、辛いモノだぞ?」 「・・・・・・・だけど、知ってるわよう。 チレスちゃんから聞いたけど、ある程度の知り合いが死んだ時には、鎮魂歌を歌うし。 今、仕事をあんまり受けないのも、チレスちゃんの世話ってよりも、2年前の事件で亡くした人が好きだったから、そのショックだって。」 「・・・・・・・・黙れ、というか、チレス、帰ったら、オシオキだ!!」 「ごめんごめん。 というか、鬱々とやる位なら、一回お姉さんと殺り合いましょ?」 前者―ヴィットが、後者―久遠の言葉が癇に障ったのか、ナイフを首筋に突きつける。 実際、失った後に、その人が大切だと自覚してしまうと言うのは、大切な人を無くすのと同じ位・・・下手すれば、それよりもキツいのだ。 それを察して尚、久遠は自分の感情を優先した。 一応は、戦って発散すれば良いと思っていたからなのだけれど。 しかし、思い出して欲しい、此処は墓場だ。 生無き眠りを続けるモノ達のある場所だ。 まぁ、一応、格闘ゲームで舞台になる事は珍しくないにせよ、罰当たりだ。 それでも、止める人がいない以上は、バトルに発展してしまうわけで。 久遠が、すらりと腰に固定していた短いけれど、肉厚なナイフを抜けば。 ヴィットが、彼の首から、ナイフを離しバク転で距離を取る。 「勝てない闘いを挑むとは、久遠、君も物好きだね。」 「あら、能力は知ってるわよ?」 「能力を知っていても、勝てる類いではないよ?」 「・・・『思考を読む』のも能力の一つよね。」 「うん、それに、勝てる? 特殊系とは言え、力の大妖と呼ばれる吸血鬼の僕が得れば、九十九神が、叶わないと思うけれど?」 「え? 舐めないでちょうだいよ、私は、血と破滅と闘争が好きなのよ。 その為なら、幾らでも能力は上げるわよ?」 手の平大のナイフを、指の間に八本はさみ、臨戦態勢に入るヴィット。 久遠は、あくまで楽しそうに、ナイフを構え、妙な具合に、カカトを慣らしている。 ヴィットの方は、戦い難そうだが、久遠は100%闘いを楽しんでいる。 「・・・・・・・・エイレンから、文句は受け付けないし。 他の使鬼から、報復も受けないからな。」 「ええ、そんなの闘争を穢すだけよ?」 その言葉が合図になったのか、久遠は駆け出し、ヴィットは、八本のナイフを投げ放つ。 ひゅい、と、静かに甲高い音を立てて、ナイフは、幾筋もの軌道を描き、久遠に殺到していく。 一本でもかすれば、肉を抉っていきそうな、スピードだ。 しかし,久遠は、臆せず、突っ込んでくる。 ヴィットは、乗り気にならないまま、溜め息一つ、懐から、拳銃を取り出す。 装弾数が、それなりに多く、威力もそこそこあるグロッグだ。 「あ、ヴィットちゃん。 拳銃変えたの、ワルサーやめたの?」 「力が無いのは嫌だからね。 かといって、リボルバーは、余計なのを思い出すから、だ。」 気の抜けるような音を立てながら、次々に発砲していく。 進行を邪魔し、決して久遠を近づけさせない弾筋だ。 ちなみに、弾丸は、純銀製で、古代ヘブライ語で、「汝、存在せぬ存在也」と刻まれている。 完全に、殺傷の中でも、殺害ー滅ぼす事に重点を置かれた弾を使用している。 やる気が無いようなことを言っているが、殺害しようとしているというのは、矛盾しているようだ。 しかし、全力を出すのが、ある意味で、相手に対する最低限の礼儀だろう。 殺す気なのも、その一つだ。 しかし、弾丸は、あくまで対象に当たってこそ、意味をなすモノだ。 ヴィットは、久遠に接近を許してしまう。 鋭い中段蹴りを避けた・・・・・はずだったのだが、ヴィットのスーツが、はらりと斬られた。 久遠の靴の先に、短いならも、幅広の刃が覗いている。 「リサールウェポンなのは、変わりないわけか。 面倒だ、不謹慎だし、とっとと決着をつけさせてもらうよ。 『虚空に漂いし 我が朋友たる風と水の精霊よ 我は、ヴィットーリア=F=リージ。 我が喚びかけに答えよ 汝らよ 汝らが朋友の呼びかけに答えよ。 凝縮せよ 空の涙を精製せよ 我の遠き御手にならんことを願う 打ち抜け 打ち砕け 我が意のままに 我と相対せし者を射抜け。』 行け、風と水の精霊の間の子、よ。」 ヴィットは、早口に、呪文を口にする。 正確に言えば、『』内は、「スート・ベルラナ・ウィン・アッテア・・・・」と異国の響きの言葉なのだけれど、訳すれば、『』内のようになる呪文だ。 その呪文が終わると同時に、無数の氷の礫が、ヴィットの周りに漂う。 そして、発信を命ずると、久遠に多少の時間差をつけて、殺到する。 地面以外のほぼ全方位からだ。 「止めとけ〜っての。 それ以上、続けんだったら、あたしが相手すんぞ。」 しかし、それは、そんな声と突然掛かった重力で、久遠・ヴィット両人と氷の礫は地面に張り付けになる。 正確に言えば、久遠は踏みつぶされたカエルのように。 ヴィットは、膝をついた状態でだ。 礫を避けようと不安定な体勢ならばこそ、久遠はそうなった。 声をかけたのは、焦げ茶の髪を片方だけ結び、動きやすい服装で、右耳のみに白い石のピアスをしている少女だ。 服装で、少々設定年齢より、若く見られがちなエイレンの使鬼で、黒百合姫と言う。 薔薇姫と、姉妹的な位置にいる存在だ。 彼女が、《重圧の魔術師》で、薔薇姫が、《治癒の女教皇》で、エイレンの《占札の使鬼》の中でそんな役割も貰っている。 ちなみに、和名よりも、英語の百合と意味する、リリィの方で呼ばれたがる少女だ。 「はいはい。 一応、僕は拒否したのだけれどね?」 「うっさい、受けた以上同罪だ。 レイティスが死んだ後49日位は、静かにできねぇの? この戦鬪狂のトンチキども!!」 「もー、リリィちゃん、とっても、良いところだったのにぃー。」 「良くない。」 「え、だって、ヴィットちゃんが魔術を使うこと自体稀でしょ?」 「稀でも、チレスを残していくわけにも行かないから、使っただけだ。」 「もぅ、情無ないわね。 お姉さん的に、ビンビンだったのに。」 「「お兄さん(だろ?)(だろう?)」」 久遠は、地面に張り付けられたままでも、そんな軽口をたたく。 本当に、残念そうに残念そうに。 真面目に、久遠は、戦闘に決着が付かなかった事を残念がっているのだ。 「ともかく、エイレンが、お茶ぐらいしてけって。 あたしを迎えに出したんだ。 んで、なんで、このノータリン野郎共は、墓場でドンパチやってんだよ。」 重圧を解きながら、リリィはそう二人に質問した。 起き上がりながら、あくまで、朗らかにというか。 夜の生活が、最高の美容というセレブのような。 そんな様子で、久遠が言うには、こういう理由だった。 「ヴィットちゃんが、鬱々悩んでるから、それなら、いっそ、やっちゃおっかなって?」 「・・・・・・・あっちの方でなくて良かったと言うべきか?」 「んもう、そっちも、良いと思うけど、お姉さん的に、青○は好みじゃないのよぅ。」 「だ、だだだだだ、誰が、其処まで言えと、言ったこのポンツク女男。」 「あらァ、リリィちゃんそれくらいで、真っ赤になっちゃって可愛い。 ・・・・・・・・・・・・って、ヴィットちゃんは?」 久遠とリリィの軽口というか、微妙に下品な掛け合いに、いつもなら、実力行使付きか、でなきても、ツッコミが入っているだろうに、いつまでも入って来ない。 怪訝に思った二人が、ヴィットの方に、視線を向けると、ヴィットが、完全に倒れ伏していた。 「ちょ、ちょっと、ヴィットちゃん。 ・・・・・・・って、熱。」 「おいおいおい、吸血鬼ってのは、死体同然で、低温のはずだろ?」 「そうだけど。」 駆け寄り、久遠が、抱き起こすと、ヴィットの身体は熱かった。 眼は閉じられ、息も、絶え絶えなばかりか、かなり浅い呼吸だ。 人間が、熱にうなされているような状況と言えば、一番近いだろう。 「言ったろ・・・・僕は・・・・仕事を、終えて此処に来たと・・・・・。」 「・・・・・・・・・・は、ということは、魔力が枯渇気味だったの?」 「ああ、・・・でなくて、九十九神に・・・・・・そこ、まで・・・・掛からない。」 「んもう、尚更悔しいわ。」 「悔しがってる場合か、この穀潰し女男。 ええと、AB型のRHマイナスで、良かったんだよな。」 「うん・・・・、今日採血したモノだったら・・・・・・サイコー・・・・・だけど。」 「無理し過ぎよ、ヴィットちゃん。 リリィちゃん、私は、彼女をエイレンちゃんのとこに運ぶから、直接、血を貰ってきて頂戴。」 やや、慌ただしく、久遠は、ヴィットをエイレンの家に運んだのだった。 「何回、放った?」 「さぁ、数えていると思っていないからこその、その台詞じゃないかな。」 「だろうが、《凍れる樹姫》からの話からだと、最下級魔法数百発単位で放たなければ、ああはならないはずだぞ?」 「久遠との戦闘で、下上級呪文を使わなければ、そうなら無かった。」 ヴィットは、エイレンの家で、輸血用として採血された血液パックを合計十リットル強を飲み、やっと人心地に付いた。 物足りないぐらいだが、とりあえずは持つだろう。 そこに、エイレンの先ほどの質問だ。 おっくうそうに、ヴィットは、答え、やや沈黙の後にこう付け加える。 「少なくとも、私は、やり残している事があるし、やる事もある。 でもね、レイティスの葬儀ぐらいは出たかったよ。 付き合いの悪い私でも、数ヶ月に一度、何かにつけて、メールをくれていた彼の葬儀にはね。」 「それを、普段恨みを買っていた連中が、邪魔して到着に、数週間遅れたわけね。」 「否定できない。」 「・・・・・少し、休め。 必要なら、もっと貰ってくるが。 なんにせよ、用事があれば,ベッドサイドのケータイの一番から電話しろ。」 「わかった。 血液は、もういい。 ・・・エイレン、僕は、僕也に、レイとエリスの仇を討つよ。 だけど、君たちとは行動を一緒にしない。」 「うん、解ってる。」 エイレンは、そう言って、部屋を出ていった。 彼女のベッドにみを沈めながら、ヴィットはまた眼を閉じた。 閉じる間際に、こう呟いた。 「さようなら、レイティス。 自分を省みない、そんな君大嫌いだったよ。」 誰にも、届かず、すぐに声は空気に解け消えた。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ ユア:というわけで、ACT91に登場する「女性」の三年前、某二次創作本編時間よりも、二三年前のお話です。 久遠:お姉さん、あんなにドキドキした闘い、此処数年で、ヴィットちゃんぐらいよ? ユア:やり難い、掴めないですけどね。 久遠:なのよね。 ユア:ともあれ、詳しくは本編を見てください。 久遠:同じ後書きって言うのも、ね。 ユア:そう。 二人:では、またどこかで、 |
18414 | 嫌い嫌い嫌い…それでも好き? | 月読乾 | 2007/12/27 21:43:05 |
記事番号18395へのコメント こんばんは、乾です。 今回は、他の設定も絡んだ異色番外と言った感じですね。 では、レス行かせて頂きます。 >「なんで、完全に馴れ合わないかって?」 >「ええ、だって、エリスちゃんの時も、今のレイちゃんの時も、葬儀に出て、墓を参るのに。 > 協力しないときは一切しない中立な立場をなんで、貫くのかなーって。」 >「ふん、哀しくないわけじゃない。」 >「間に合わなかったのは、仕事でしょ?」 >三年ほど前のあるけぶるような雨の日だ。 >正確に言うなら、三月の終わり位だ。 >場所は、墓だ。 >墓碑銘は、『親愛なる 偉大な情報屋 レイティス=アイルテ が眠る』だ。 >まだ、真新しい・・・数日前に、経ったばかりなのだ。 >つい二週間ほど前、この墓標の主は、死んだ。 >《吸血鬼》と渾名される、親友だった男の手に掛かり。 >養い子を一人残して、レイティスは死んだのだ。 >そして、そのことは、養い子・アリエスは知らず、レイティスの友人・・・仲間・知り合いしか知らない。 知るべき者が知らないから引き起こされる悲劇… 知らざるべき者が知るからこそ巻き起こされる惨劇… 悲しみとすれ違いと憎しみと思慕の螺旋はどこに行き着くのでしょうか…? >今、墓の前に、性別・年齢不詳の二人が居た >印象はある意味、真逆であった。 >片方は、ワイシャツと肌と瞳、装飾品以外が、黒いスーツ姿で、シャツと肌、装飾品は、白や銀でモノートーンで、瞳だけが金茶だった。 >彼の髪は、縮れ髪で、それを纏める布も色合いは微妙に違うモノの黒だった。 >装飾品が、ゴッシクなイメージのモノが多いせいか、死神を彷彿とさせる。 >いつもの彼よりも、三割増で、機嫌が悪そうだ。 19世紀のマフィアか用心棒風? カッコいい系ですね。 >もう片方は、ピンクに近い赤紫色の髪をポニーテールにして、前髪で右眼を覆い、左眼は空の蒼で、葬儀には不向きな白地に、裾と袖に血が散ったような模様入りのブラウスと黒のスラックスという格好。 >どこか、婀っぽい雰囲気である。 >ちなみに、後者は確実に男なので悪しからず。 多少S系ゴシック? しかし、確実に男…って(汗 >「うん、君も、中々無為な事を聞いてくる。 > 知らないわけではないだろう、錬度が上がりきった「予知」系の能力者こそ、仲間と思っても馴れ合いきれない。 > 特に、裏稼業では、いつ死ぬか解っているのは、辛いモノだぞ?」 >「・・・・・・・だけど、知ってるわよう。 > チレスちゃんから聞いたけど、ある程度の知り合いが死んだ時には、鎮魂歌を歌うし。 > 今、仕事をあんまり受けないのも、チレスちゃんの世話ってよりも、2年前の事件で亡くした人が好きだったから、そのショックだって。」 >「・・・・・・・・黙れ、というか、チレス、帰ったら、オシオキだ!!」 >「ごめんごめん。 > というか、鬱々とやる位なら、一回お姉さんと殺り合いましょ?」 >前者―ヴィットが、後者―久遠の言葉が癇に障ったのか、ナイフを首筋に突きつける。 殺伐としてるのに緊張感が微妙な会話の気が…(汗 久遠さんには、最大限の慰めなのかな? >実際、失った後に、その人が大切だと自覚してしまうと言うのは、大切な人を無くすのと同じ位・・・下手すれば、それよりもキツいのだ。 >それを察して尚、久遠は自分の感情を優先した。 >一応は、戦って発散すれば良いと思っていたからなのだけれど。 >しかし、思い出して欲しい、此処は墓場だ。 >生無き眠りを続けるモノ達のある場所だ。 >まぁ、一応、格闘ゲームで舞台になる事は珍しくないにせよ、罰当たりだ。 >それでも、止める人がいない以上は、バトルに発展してしまうわけで。 >久遠が、すらりと腰に固定していた短いけれど、肉厚なナイフを抜けば。 >ヴィットが、彼の首から、ナイフを離しバク転で距離を取る。 >「勝てない闘いを挑むとは、久遠、君も物好きだね。」 >「あら、能力は知ってるわよ?」 >「能力を知っていても、勝てる類いではないよ?」 >「・・・『思考を読む』のも能力の一つよね。」 >「うん、それに、勝てる? > 特殊系とは言え、力の大妖と呼ばれる吸血鬼の僕が得れば、九十九神が、叶わないと思うけれど?」 >「え? > 舐めないでちょうだいよ、私は、血と破滅と闘争が好きなのよ。 > その為なら、幾らでも能力は上げるわよ?」 >手の平大のナイフを、指の間に八本はさみ、臨戦態勢に入るヴィット。 >久遠は、あくまで楽しそうに、ナイフを構え、妙な具合に、カカトを慣らしている。 >ヴィットの方は、戦い難そうだが、久遠は100%闘いを楽しんでいる。 何か…戦うことでしか分かり合えない…って感情なんでしょうか(汗? ヴィットさんは微妙だと思いましたけど(汗 >「・・・・・・・・エイレンから、文句は受け付けないし。 > 他の使鬼から、報復も受けないからな。」 >「ええ、そんなの闘争を穢すだけよ?」 >その言葉が合図になったのか、久遠は駆け出し、ヴィットは、八本のナイフを投げ放つ。 >ひゅい、と、静かに甲高い音を立てて、ナイフは、幾筋もの軌道を描き、久遠に殺到していく。 >一本でもかすれば、肉を抉っていきそうな、スピードだ。 >しかし,久遠は、臆せず、突っ込んでくる。 >ヴィットは、乗り気にならないまま、溜め息一つ、懐から、拳銃を取り出す。 >装弾数が、それなりに多く、威力もそこそこあるグロッグだ。 >「あ、ヴィットちゃん。 > 拳銃変えたの、ワルサーやめたの?」 >「力が無いのは嫌だからね。 > かといって、リボルバーは、余計なのを思い出すから、だ。」 >気の抜けるような音を立てながら、次々に発砲していく。 >進行を邪魔し、決して久遠を近づけさせない弾筋だ。 >ちなみに、弾丸は、純銀製で、古代ヘブライ語で、「汝、存在せぬ存在也」と刻まれている。 >完全に、殺傷の中でも、殺害ー滅ぼす事に重点を置かれた弾を使用している。 >やる気が無いようなことを言っているが、殺害しようとしているというのは、矛盾しているようだ。 なんだかんだで、ヴィットさんも礼儀に報いてる? それとも戦闘マニア? 銃器には、結構こだわりがありそうですね。 >しかし、全力を出すのが、ある意味で、相手に対する最低限の礼儀だろう。 >殺す気なのも、その一つだ。 >しかし、弾丸は、あくまで対象に当たってこそ、意味をなすモノだ。 >ヴィットは、久遠に接近を許してしまう。 >鋭い中段蹴りを避けた・・・・・はずだったのだが、ヴィットのスーツが、はらりと斬られた。 >久遠の靴の先に、短いならも、幅広の刃が覗いている。 >「リサールウェポンなのは、変わりないわけか。 > 面倒だ、不謹慎だし、とっとと決着をつけさせてもらうよ。 > 『虚空に漂いし 我が朋友たる風と水の精霊よ > 我は、ヴィットーリア=F=リージ。 > 我が喚びかけに答えよ 汝らよ 汝らが朋友の呼びかけに答えよ。 > 凝縮せよ 空の涙を精製せよ 我の遠き御手にならんことを願う > 打ち抜け 打ち砕け 我が意のままに 我と相対せし者を射抜け。』 > 行け、風と水の精霊の間の子、よ。」 >ヴィットは、早口に、呪文を口にする。 >正確に言えば、『』内は、「スート・ベルラナ・ウィン・アッテア・・・・」と異国の響きの言葉なのだけれど、訳すれば、『』内のようになる呪文だ。 >その呪文が終わると同時に、無数の氷の礫が、ヴィットの周りに漂う。 >そして、発信を命ずると、久遠に多少の時間差をつけて、殺到する。 >地面以外のほぼ全方位からだ。 おお! 何だか、状況が凄い事に…(汗 旗から見ると、喧嘩にミサイル使うみたいなものですよ(汗 >「止めとけ〜っての。 > それ以上、続けんだったら、あたしが相手すんぞ。」 >しかし、それは、そんな声と突然掛かった重力で、久遠・ヴィット両人と氷の礫は地面に張り付けになる。 >正確に言えば、久遠は踏みつぶされたカエルのように。 >ヴィットは、膝をついた状態でだ。 >礫を避けようと不安定な体勢ならばこそ、久遠はそうなった。 >声をかけたのは、焦げ茶の髪を片方だけ結び、動きやすい服装で、右耳のみに白い石のピアスをしている少女だ。 >服装で、少々設定年齢より、若く見られがちなエイレンの使鬼で、黒百合姫と言う。 >薔薇姫と、姉妹的な位置にいる存在だ。 >彼女が、《重圧の魔術師》で、薔薇姫が、《治癒の女教皇》で、エイレンの《占札の使鬼》の中でそんな役割も貰っている。 >ちなみに、和名よりも、英語の百合と意味する、リリィの方で呼ばれたがる少女だ。 使鬼…一種の式神? 外見は少女みたいですけど、実際の概念は? >「はいはい。 > 一応、僕は拒否したのだけれどね?」 >「うっさい、受けた以上同罪だ。 > レイティスが死んだ後49日位は、静かにできねぇの? > この戦鬪狂のトンチキども!!」 >「もー、リリィちゃん、とっても、良いところだったのにぃー。」 >「良くない。」 >「え、だって、ヴィットちゃんが魔術を使うこと自体稀でしょ?」 >「稀でも、チレスを残していくわけにも行かないから、使っただけだ。」 >「もぅ、情無ないわね。 > お姉さん的に、ビンビンだったのに。」 >「「お兄さん(だろ?)(だろう?)」」 >久遠は、地面に張り付けられたままでも、そんな軽口をたたく。 >本当に、残念そうに残念そうに。 >真面目に、久遠は、戦闘に決着が付かなかった事を残念がっているのだ。 >「ともかく、エイレンが、お茶ぐらいしてけって。 > あたしを迎えに出したんだ。 > んで、なんで、このノータリン野郎共は、墓場でドンパチやってんだよ。」 >重圧を解きながら、リリィはそう二人に質問した。 >起き上がりながら、あくまで、朗らかにというか。 >夜の生活が、最高の美容というセレブのような。 >そんな様子で、久遠が言うには、こういう理由だった。 >「ヴィットちゃんが、鬱々悩んでるから、それなら、いっそ、やっちゃおっかなって?」 >「・・・・・・・あっちの方でなくて良かったと言うべきか?」 >「んもう、そっちも、良いと思うけど、お姉さん的に、青○は好みじゃないのよぅ。」 >「だ、だだだだだ、誰が、其処まで言えと、言ったこのポンツク女男。」 >「あらァ、リリィちゃんそれくらいで、真っ赤になっちゃって可愛い。 > ・・・・・・・・・・・・って、ヴィットちゃんは?」 >久遠とリリィの軽口というか、微妙に下品な掛け合いに、いつもなら、実力行使付きか、でなきても、ツッコミが入っているだろうに、いつまでも入って来ない。 >怪訝に思った二人が、ヴィットの方に、視線を向けると、ヴィットが、完全に倒れ伏していた。 >「ちょ、ちょっと、ヴィットちゃん。 > ・・・・・・・って、熱。」 >「おいおいおい、吸血鬼ってのは、死体同然で、低温のはずだろ?」 >「そうだけど。」 >駆け寄り、久遠が、抱き起こすと、ヴィットの身体は熱かった。 >眼は閉じられ、息も、絶え絶えなばかりか、かなり浅い呼吸だ。 >人間が、熱にうなされているような状況と言えば、一番近いだろう。 >「言ったろ・・・・僕は・・・・仕事を、終えて此処に来たと・・・・・。」 >「・・・・・・・・・・は、ということは、魔力が枯渇気味だったの?」 >「ああ、・・・でなくて、九十九神に・・・・・・そこ、まで・・・・掛からない。」 >「んもう、尚更悔しいわ。」 >「悔しがってる場合か、この穀潰し女男。 > ええと、AB型のRHマイナスで、良かったんだよな。」 >「うん・・・・、今日採血したモノだったら・・・・・・サイコー・・・・・だけど。」 >「無理し過ぎよ、ヴィットちゃん。 > リリィちゃん、私は、彼女をエイレンちゃんのとこに運ぶから、直接、血を貰ってきて頂戴。」 >やや、慌ただしく、久遠は、ヴィットをエイレンの家に運んだのだった。 > > ストレス解消にして、礼儀にして、実益でもある? > > > > >「何回、放った?」 >「さぁ、数えていると思っていないからこその、その台詞じゃないかな。」 >「だろうが、《凍れる樹姫》からの話からだと、最下級魔法数百発単位で放たなければ、ああはならないはずだぞ?」 >「久遠との戦闘で、下上級呪文を使わなければ、そうなら無かった。」 >ヴィットは、エイレンの家で、輸血用として採血された血液パックを合計十リットル強を飲み、やっと人心地に付いた。 >物足りないぐらいだが、とりあえずは持つだろう。 >そこに、エイレンの先ほどの質問だ。 >おっくうそうに、ヴィットは、答え、やや沈黙の後にこう付け加える。 >「少なくとも、私は、やり残している事があるし、やる事もある。 > でもね、レイティスの葬儀ぐらいは出たかったよ。 > 付き合いの悪い私でも、数ヶ月に一度、何かにつけて、メールをくれていた彼の葬儀にはね。」 >「それを、普段恨みを買っていた連中が、邪魔して到着に、数週間遅れたわけね。」 >「否定できない。」 >「・・・・・少し、休め。 > 必要なら、もっと貰ってくるが。 > なんにせよ、用事があれば,ベッドサイドのケータイの一番から電話しろ。」 >「わかった。 > 血液は、もういい。 > ・・・エイレン、僕は、僕也に、レイとエリスの仇を討つよ。 > だけど、君たちとは行動を一緒にしない。」 >「うん、解ってる。」 >エイレンは、そう言って、部屋を出ていった。 >彼女のベッドにみを沈めながら、ヴィットはまた眼を閉じた。 >閉じる間際に、こう呟いた。 >「さようなら、レイティス。 > 自分を省みない、そんな君大嫌いだったよ。」 >誰にも、届かず、すぐに声は空気に解け消えた。 今は、嫌いと言わせて欲しい… いつか遠くないうちに、忘れられなくなる罪作りな相手に… |
18415 | だからこそ、大嫌い。 | 十叶 夕海 | 2007/12/29 03:59:15 |
記事番号18414へのコメント >こんばんは、乾です。 >今回は、他の設定も絡んだ異色番外と言った感じですね。 >では、レス行かせて頂きます。 もうすぐ、おはようございます。 ですね、一応、スピンオフに近いです。 ともあれ、返レス行きます。 > > >>「なんで、完全に馴れ合わないかって?」 >>「ええ、だって、エリスちゃんの時も、今のレイちゃんの時も、葬儀に出て、墓を参るのに。 >> 協力しないときは一切しない中立な立場をなんで、貫くのかなーって。」 >>「ふん、哀しくないわけじゃない。」 >>「間に合わなかったのは、仕事でしょ?」 >>三年ほど前のあるけぶるような雨の日だ。 >>正確に言うなら、三月の終わり位だ。 >>場所は、墓だ。 >>墓碑銘は、『親愛なる 偉大な情報屋 レイティス=アイルテ が眠る』だ。 >>まだ、真新しい・・・数日前に、経ったばかりなのだ。 >>つい二週間ほど前、この墓標の主は、死んだ。 >>《吸血鬼》と渾名される、親友だった男の手に掛かり。 >>養い子を一人残して、レイティスは死んだのだ。 >>そして、そのことは、養い子・アリエスは知らず、レイティスの友人・・・仲間・知り合いしか知らない。 > >知るべき者が知らないから引き起こされる悲劇… >知らざるべき者が知るからこそ巻き起こされる惨劇… >悲しみとすれ違いと憎しみと思慕の螺旋はどこに行き着くのでしょうか…? それが、同時に救いでもある。 それが、同時に苦しみでもある。 まだ、その螺旋の端は見えて来ない。 > >>今、墓の前に、性別・年齢不詳の二人が居た >>印象はある意味、真逆であった。 >>片方は、ワイシャツと肌と瞳、装飾品以外が、黒いスーツ姿で、シャツと肌、装飾品は、白や銀でモノートーンで、瞳だけが金茶だった。 >>彼の髪は、縮れ髪で、それを纏める布も色合いは微妙に違うモノの黒だった。 >>装飾品が、ゴッシクなイメージのモノが多いせいか、死神を彷彿とさせる。 >>いつもの彼よりも、三割増で、機嫌が悪そうだ。 > >19世紀のマフィアか用心棒風? >カッコいい系ですね。 ですね、シックで、フォーマルです。 いわゆる、男装なのですけれどね > >>もう片方は、ピンクに近い赤紫色の髪をポニーテールにして、前髪で右眼を覆い、左眼は空の蒼で、葬儀には不向きな白地に、裾と袖に血が散ったような模様入りのブラウスと黒のスラックスという格好。 >>どこか、婀っぽい雰囲気である。 >>ちなみに、後者は確実に男なので悪しからず。 > >多少S系ゴシック? >しかし、確実に男…って(汗 女装ではないです。 ですが、女性っぽい服装で、女性形のスタイルだと間違われるかなぁと。 > >>「うん、君も、中々無為な事を聞いてくる。 >> 知らないわけではないだろう、錬度が上がりきった「予知」系の能力者こそ、仲間と思っても馴れ合いきれない。 >> 特に、裏稼業では、いつ死ぬか解っているのは、辛いモノだぞ?」 >>「・・・・・・・だけど、知ってるわよう。 >> チレスちゃんから聞いたけど、ある程度の知り合いが死んだ時には、鎮魂歌を歌うし。 >> 今、仕事をあんまり受けないのも、チレスちゃんの世話ってよりも、2年前の事件で亡くした人が好きだったから、そのショックだって。」 >>「・・・・・・・・黙れ、というか、チレス、帰ったら、オシオキだ!!」 >>「ごめんごめん。 >> というか、鬱々とやる位なら、一回お姉さんと殺り合いましょ?」 >>前者―ヴィットが、後者―久遠の言葉が癇に障ったのか、ナイフを首筋に突きつける。 > >殺伐としてるのに緊張感が微妙な会話の気が…(汗 >久遠さんには、最大限の慰めなのかな? なんというか、ケーキのトッピングに、キムチを使ってみました?な会話。 一応は、慰めと言うか、それに近いはずです。 > >>実際、失った後に、その人が大切だと自覚してしまうと言うのは、大切な人を無くすのと同じ位・・・下手すれば、それよりもキツいのだ。 >>それを察して尚、久遠は自分の感情を優先した。 >>一応は、戦って発散すれば良いと思っていたからなのだけれど。 >>しかし、思い出して欲しい、此処は墓場だ。 >>生無き眠りを続けるモノ達のある場所だ。 >>まぁ、一応、格闘ゲームで舞台になる事は珍しくないにせよ、罰当たりだ。 >>それでも、止める人がいない以上は、バトルに発展してしまうわけで。 >>久遠が、すらりと腰に固定していた短いけれど、肉厚なナイフを抜けば。 >>ヴィットが、彼の首から、ナイフを離しバク転で距離を取る。 >>「勝てない闘いを挑むとは、久遠、君も物好きだね。」 >>「あら、能力は知ってるわよ?」 >>「能力を知っていても、勝てる類いではないよ?」 >>「・・・『思考を読む』のも能力の一つよね。」 >>「うん、それに、勝てる? >> 特殊系とは言え、力の大妖と呼ばれる吸血鬼の僕が得れば、九十九神が、叶わないと思うけれど?」 >>「え? >> 舐めないでちょうだいよ、私は、血と破滅と闘争が好きなのよ。 >> その為なら、幾らでも能力は上げるわよ?」 >>手の平大のナイフを、指の間に八本はさみ、臨戦態勢に入るヴィット。 >>久遠は、あくまで楽しそうに、ナイフを構え、妙な具合に、カカトを慣らしている。 >>ヴィットの方は、戦い難そうだが、久遠は100%闘いを楽しんでいる。 > >何か…戦うことでしか分かり合えない…って感情なんでしょうか(汗? >ヴィットさんは微妙だと思いましたけど(汗 解り合えないというよりも。 闘う事でしか、発散できないというような。 ヴィットは、微妙に、嫌がってるわけですが。 > >>「・・・・・・・・エイレンから、文句は受け付けないし。 >> 他の使鬼から、報復も受けないからな。」 >>「ええ、そんなの闘争を穢すだけよ?」 >>その言葉が合図になったのか、久遠は駆け出し、ヴィットは、八本のナイフを投げ放つ。 >>ひゅい、と、静かに甲高い音を立てて、ナイフは、幾筋もの軌道を描き、久遠に殺到していく。 >>一本でもかすれば、肉を抉っていきそうな、スピードだ。 >>しかし,久遠は、臆せず、突っ込んでくる。 >>ヴィットは、乗り気にならないまま、溜め息一つ、懐から、拳銃を取り出す。 >>装弾数が、それなりに多く、威力もそこそこあるグロッグだ。 >>「あ、ヴィットちゃん。 >> 拳銃変えたの、ワルサーやめたの?」 >>「力が無いのは嫌だからね。 >> かといって、リボルバーは、余計なのを思い出すから、だ。」 >>気の抜けるような音を立てながら、次々に発砲していく。 >>進行を邪魔し、決して久遠を近づけさせない弾筋だ。 >>ちなみに、弾丸は、純銀製で、古代ヘブライ語で、「汝、存在せぬ存在也」と刻まれている。 >>完全に、殺傷の中でも、殺害ー滅ぼす事に重点を置かれた弾を使用している。 >>やる気が無いようなことを言っているが、殺害しようとしているというのは、矛盾しているようだ。 > >なんだかんだで、ヴィットさんも礼儀に報いてる? >それとも戦闘マニア? >銃器には、結構こだわりがありそうですね。 礼儀は、礼儀ですし。 戦闘マニアではありません。 銃器は、ミスタ関連で、拘らざる得ない。って感じです。 > >>しかし、全力を出すのが、ある意味で、相手に対する最低限の礼儀だろう。 >>殺す気なのも、その一つだ。 >>しかし、弾丸は、あくまで対象に当たってこそ、意味をなすモノだ。 >>ヴィットは、久遠に接近を許してしまう。 >>鋭い中段蹴りを避けた・・・・・はずだったのだが、ヴィットのスーツが、はらりと斬られた。 >>久遠の靴の先に、短いならも、幅広の刃が覗いている。 >>「リサールウェポンなのは、変わりないわけか。 >> 面倒だ、不謹慎だし、とっとと決着をつけさせてもらうよ。 >> 『虚空に漂いし 我が朋友たる風と水の精霊よ >> 我は、ヴィットーリア=F=リージ。 >> 我が喚びかけに答えよ 汝らよ 汝らが朋友の呼びかけに答えよ。 >> 凝縮せよ 空の涙を精製せよ 我の遠き御手にならんことを願う >> 打ち抜け 打ち砕け 我が意のままに 我と相対せし者を射抜け。』 >> 行け、風と水の精霊の間の子、よ。」 >>ヴィットは、早口に、呪文を口にする。 >>正確に言えば、『』内は、「スート・ベルラナ・ウィン・アッテア・・・・」と異国の響きの言葉なのだけれど、訳すれば、『』内のようになる呪文だ。 >>その呪文が終わると同時に、無数の氷の礫が、ヴィットの周りに漂う。 >>そして、発信を命ずると、久遠に多少の時間差をつけて、殺到する。 >>地面以外のほぼ全方位からだ。 > >おお! >何だか、状況が凄い事に…(汗 >旗から見ると、喧嘩にミサイル使うみたいなものですよ(汗 あはは、それでも、負けたく無い、負けられないと言う事もありますですよ? > >>「止めとけ〜っての。 >> それ以上、続けんだったら、あたしが相手すんぞ。」 >>しかし、それは、そんな声と突然掛かった重力で、久遠・ヴィット両人と氷の礫は地面に張り付けになる。 >>正確に言えば、久遠は踏みつぶされたカエルのように。 >>ヴィットは、膝をついた状態でだ。 >>礫を避けようと不安定な体勢ならばこそ、久遠はそうなった。 >>声をかけたのは、焦げ茶の髪を片方だけ結び、動きやすい服装で、右耳のみに白い石のピアスをしている少女だ。 >>服装で、少々設定年齢より、若く見られがちなエイレンの使鬼で、黒百合姫と言う。 >>薔薇姫と、姉妹的な位置にいる存在だ。 >>彼女が、《重圧の魔術師》で、薔薇姫が、《治癒の女教皇》で、エイレンの《占札の使鬼》の中でそんな役割も貰っている。 >>ちなみに、和名よりも、英語の百合と意味する、リリィの方で呼ばれたがる少女だ。 > >使鬼…一種の式神? >外見は少女みたいですけど、実際の概念は? 実在する、人外との契約。 一種の主従関係。 > >>「はいはい。 >> 一応、僕は拒否したのだけれどね?」 >>「うっさい、受けた以上同罪だ。 >> レイティスが死んだ後49日位は、静かにできねぇの? >> この戦鬪狂のトンチキども!!」 >>「もー、リリィちゃん、とっても、良いところだったのにぃー。」 >>「良くない。」 >>「え、だって、ヴィットちゃんが魔術を使うこと自体稀でしょ?」 >>「稀でも、チレスを残していくわけにも行かないから、使っただけだ。」 >>「もぅ、情無ないわね。 >> お姉さん的に、ビンビンだったのに。」 >>「「お兄さん(だろ?)(だろう?)」」 >>久遠は、地面に張り付けられたままでも、そんな軽口をたたく。 >>本当に、残念そうに残念そうに。 >>真面目に、久遠は、戦闘に決着が付かなかった事を残念がっているのだ。 >>「ともかく、エイレンが、お茶ぐらいしてけって。 >> あたしを迎えに出したんだ。 >> んで、なんで、このノータリン野郎共は、墓場でドンパチやってんだよ。」 >>重圧を解きながら、リリィはそう二人に質問した。 >>起き上がりながら、あくまで、朗らかにというか。 >>夜の生活が、最高の美容というセレブのような。 >>そんな様子で、久遠が言うには、こういう理由だった。 >>「ヴィットちゃんが、鬱々悩んでるから、それなら、いっそ、やっちゃおっかなって?」 >>「・・・・・・・あっちの方でなくて良かったと言うべきか?」 >>「んもう、そっちも、良いと思うけど、お姉さん的に、青○は好みじゃないのよぅ。」 >>「だ、だだだだだ、誰が、其処まで言えと、言ったこのポンツク女男。」 >>「あらァ、リリィちゃんそれくらいで、真っ赤になっちゃって可愛い。 >> ・・・・・・・・・・・・って、ヴィットちゃんは?」 >>久遠とリリィの軽口というか、微妙に下品な掛け合いに、いつもなら、実力行使付きか、でなきても、ツッコミが入っているだろうに、いつまでも入って来ない。 >>怪訝に思った二人が、ヴィットの方に、視線を向けると、ヴィットが、完全に倒れ伏していた。 >>「ちょ、ちょっと、ヴィットちゃん。 >> ・・・・・・・って、熱。」 >>「おいおいおい、吸血鬼ってのは、死体同然で、低温のはずだろ?」 >>「そうだけど。」 >>駆け寄り、久遠が、抱き起こすと、ヴィットの身体は熱かった。 >>眼は閉じられ、息も、絶え絶えなばかりか、かなり浅い呼吸だ。 >>人間が、熱にうなされているような状況と言えば、一番近いだろう。 >>「言ったろ・・・・僕は・・・・仕事を、終えて此処に来たと・・・・・。」 >>「・・・・・・・・・・は、ということは、魔力が枯渇気味だったの?」 >>「ああ、・・・でなくて、九十九神に・・・・・・そこ、まで・・・・掛からない。」 >>「んもう、尚更悔しいわ。」 >>「悔しがってる場合か、この穀潰し女男。 >> ええと、AB型のRHマイナスで、良かったんだよな。」 >>「うん・・・・、今日採血したモノだったら・・・・・・サイコー・・・・・だけど。」 >>「無理し過ぎよ、ヴィットちゃん。 >> リリィちゃん、私は、彼女をエイレンちゃんのとこに運ぶから、直接、血を貰ってきて頂戴。」 >>やや、慌ただしく、久遠は、ヴィットをエイレンの家に運んだのだった。 >> >> >ストレス解消にして、礼儀にして、実益でもある? ある意味では。 >> >> >> >> >>「何回、放った?」 >>「さぁ、数えていると思っていないからこその、その台詞じゃないかな。」 >>「だろうが、《凍れる樹姫》からの話からだと、最下級魔法数百発単位で放たなければ、ああはならないはずだぞ?」 >>「久遠との戦闘で、下上級呪文を使わなければ、そうなら無かった。」 >>ヴィットは、エイレンの家で、輸血用として採血された血液パックを合計十リットル強を飲み、やっと人心地に付いた。 >>物足りないぐらいだが、とりあえずは持つだろう。 >>そこに、エイレンの先ほどの質問だ。 >>おっくうそうに、ヴィットは、答え、やや沈黙の後にこう付け加える。 >>「少なくとも、私は、やり残している事があるし、やる事もある。 >> でもね、レイティスの葬儀ぐらいは出たかったよ。 >> 付き合いの悪い私でも、数ヶ月に一度、何かにつけて、メールをくれていた彼の葬儀にはね。」 >>「それを、普段恨みを買っていた連中が、邪魔して到着に、数週間遅れたわけね。」 >>「否定できない。」 >>「・・・・・少し、休め。 >> 必要なら、もっと貰ってくるが。 >> なんにせよ、用事があれば,ベッドサイドのケータイの一番から電話しろ。」 >>「わかった。 >> 血液は、もういい。 >> ・・・エイレン、僕は、僕也に、レイとエリスの仇を討つよ。 >> だけど、君たちとは行動を一緒にしない。」 >>「うん、解ってる。」 >>エイレンは、そう言って、部屋を出ていった。 >>彼女のベッドにみを沈めながら、ヴィットはまた眼を閉じた。 >>閉じる間際に、こう呟いた。 >>「さようなら、レイティス。 >> 自分を省みない、そんな君大嫌いだったよ。」 >>誰にも、届かず、すぐに声は空気に解け消えた。 > >今は、嫌いと言わせて欲しい… >いつか遠くないうちに、忘れられなくなる罪作りな相手に… そう言う事をしない君なら、大好きなのにね。 と言う意味合いでしょうか。 |