◆−月華の対客(ガウリイVSゼロス)−沙夜(9/2-22:52)No.2158
 ┗Re:月華の対客(ガウリイVSゼロス)−中田 珂南(9/3-19:17)No.2161


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2158月華の対客(ガウリイVSゼロス)沙夜 E-mail URL9/2-22:52


お久しぶりです。
どうも物書きのくせに自分の意見をまとめるのは苦手です
ガウリイとゼロスのイメージを伝えたくて書いてみました。
私の中であくまでもガウリイは男でゼロスは魔族です。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです

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月華の対客

窓辺のテーブルで青年はグラスを傾ける。
隣室の少女も今日はおとなしく眠ったらしく、
かすかな寝息が感じられる、穏やかな夜。
開け放った窓の外には十三夜の月が冴え冴えとした光を放っている。
「出て来いよ。」
グラスを片手に、何もない空間に青年が声をかける。
返事するものはなく、はや肌寒さを感じさせる風がカーテンを揺らす。
「いるのはわかってる。さっさと姿を現せ。」
厳しさを増した声に、音もなく月が翳る。
窓の外に浮かぶ黒い姿。表情は影になり見えない。
「全く貴方の勘の良さには呆れますね。
 何時から気付いていました?」
ほのかに笑いを含んだ声。対峙する青年の声は固い。
「さあな。何をしに来た。さっさと消えろ。」
「おやおや、そんなつれないことを。呼んでくださったのではないのですか?」
「こそこそ覗かれるのは好きじゃない。せっかく気持ちよく飲んでるんだ。」
「今日はご機嫌が悪いですね。こんなに綺麗な月なのに。」
ふわり、窓の内側に降り立つ横顔を光を取り戻した月が照らす。
「まるでリナさんのようじゃありませんか。
差し伸べた指の間に在る月を握りつぶすかのようにゼロスは笑う。
「リナが月だと?この青白い光が?」
くっ。喉の奥で低く笑い、ガウリイはグラスを呷った。
「こんなに近くに見えるのに、どんなに手を差し伸べても届かない・・」
薄笑いを浮かべ歌うようにゼロス。
「あいつは月なんかじゃない。」
もう一度、ガウリイが呟く。
冴え渡る月光に浮かび上がる横顔。
光を宿したように金髪が輝く。
「僕たちにとって太陽とは、名を言うを憚るあのお方様ひとり。
 それに、リナさんの心とて盤石のものではなし、時に輝き、時に翳る。
 まことリナさんは月ですよ。時に太陽たるあのお方さえ己の想い故隠してしまう。
 貴方は僕に近しい者。なのに何故、リナさんに惹かれ、守るのです?」
ガウリイは答えない。

視線の先、テーブルの上に燃える蝋燭。
一匹の羽虫が揺らめく炎に近づき周りを踊り
やがて自ら飛び込み焼き尽くされる。
ガウリイは自嘲の笑みを漏らしぽつりと呟く。
「オレはこの虫と同じさ。
 リナという光に引き寄せられ炎の中に飛び込んじまう。」
ゼロスはそっと蝋燭を持ち上げ、息を吹きかける。
炎は揺らめきやがて消える。
「そうでしょうか。こうやって光を闇に変える風かもしれませんよ。」
「オレがリナを闇に落とすというのか?」
「落とさずとも変わるかもしれませんよ。
 人の想いは時に我らをもしのぐ力を持つ。
 ましてやそれが、『愛』という感情ならば・・」
月の光に浮かぶ笑い。
「人は誰でも『魔』に成れますよ。
 それを誰よりも知っておられるのはガウリイさんでしょうに・・。」
くすりと笑う。
新しい酒をグラスに注ぎ、ガウリイはゼロスを見つめる。
蒼い瞳に揺らめく炎。
「そうだな、人は誰でも『魔』になれる。
 だが、それだけじゃあない。人間だって捨てたもんじゃあないさ。」
「貴女がリナさんの大事な方だと他の魔族が知ったら・・
 いつまでも逃げ切れるものでは在りませんね。
 さて、そうなった時、リナさんは・・」
青年は一言も言わず、持っていたグラスを投げつけた。
砕けたグラスが光をまき散らし、あたりに酒の匂いが広がる。
髪から滴る滴を舐め取りゼロスは口だけで怯えてみせる。
「おおこわ。本当にご機嫌が悪い。
 人間図星を指されると動揺するもんですねえ。」
ぎり、と睨み付ける青年のまなざしを平然とゼロスは受け止める。

「どうしたのガウリイ。すごい音がしたけど?」
壁越しにかかる心配そうな声。
「何でもない。手が滑っただけだ。起こしてすまん。」
平静な声で告げる青年。
「あんたもいつまでも飲んでないで寝なさいよ。」
「ああ、お前さんも寝な。睡眠不足はお肌の大敵なんだろ?」
「うん、おやすみ、ガウリイ。」
「ああ、お休み、リナ。いい夢をな。」

微笑みさえ浮かべた眼差しが、佇む影に向けられた途端、蒼く凍て付く。
「まだ居たのか?」
器用に肩を竦めた魔族は、にったりと笑みを浮かべる。
「ええ、もう消えますよ。久しぶりにたっぷりと御馳走していただきましたから。
 これ以上長居して、貴方に『本気』になられても困りますしね。」
ふわり、一陣の風に消えるゼロス。
ガウリイは大きく息をつくと窓に歩み寄り月を仰ぐ。

口にださないつぶやきは、愛しい少女の名だったのか。

おわり

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2161Re:月華の対客(ガウリイVSゼロス)中田 珂南 E-mail 9/3-19:17
記事番号2158へのコメント

ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいますか?
(・・・って、ここに書くなよお前・・・・・・・・・・)

>ガウリイとゼロスのイメージを伝えたくて書いてみました。
>私の中であくまでもガウリイは男でゼロスは魔族です。

「男」なガウリイ、しっかり堪能させて頂きました(はあと)
ああ、幸せですう。←只今崩壊中(^_^;
そうですよね。
残酷な一面と強大な力、そして・・・決して逃れられぬしがらみ
(より高位の存在には逆らえないetc.)を持つからこそ、
ゼロスは「ゼロス」なんでしょうね。
「人間」なガウリイと「魔族」なゼロスの対比に引き込まれて、
一気に読んでしまいました。

何だか日本語まで崩壊してしまい(殴)本当に申し訳ありません。
次に書かれる作品を、心待ちにしております。