◆−新たに伝える為に−ミーナ(9/23-03:17)No.2228
 ┗Re:新たに伝える為に−うさびん(9/26-00:10)No.2249
  ┗ありがとうございました−ミーナ(9/28-00:07)No.2260


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2228新たに伝える為にミーナ E-mail 9/23-03:17


新たに伝える為に

そろそろかな
あたしは今まで寝ていた宿屋のベットから起き上がった。
ホーホーと鳴くフクロウさんの声が聞こえてくる。
きっともういい時間なんだろう。
仮眠しててたんでよくわかんないけど・・・・
部屋は月明かりで何とか物が見えるくらいの明るさがある。
本当は『明り(ライティング)』を唱えたいところだが、気づかれるとまずいので月明かりを頼りに手早くマントとショートソードをつけて、外に出れる格好に着替えた。

そして、あたしの部屋と隣の部屋とを仕切っている壁に耳をつける。
・・・・・・・?
何にも音がしない?
隣の部屋にはガウリイが寝てるはずなんで、本当ならすぴょすぴょと寝息が聞こえてきてもいいはずなんだけど。
トイレでも行ってるのかな?
あたしは少し待って見ることにした。
5分くらい過ぎたがいっこうに部屋から音はしない。
トイレじゃなくて、どっか行ってるのかもしれない。
それともあたしが気づいてないだけで、本当はガウリイはすぴょすぴょ寝てるのかもしれない。
ともかくこれ以上は待ってもむだになりそう。
念のためガウリイの部屋に向かって『眠り(スリーピング)』を唱えて、あたしは自分の部屋の窓から飛び立った。

一路目指すは森の中!
というわけで、あたしは宿屋の裏にある森を目指している。
森の中に何があるかって?
そんなの言わずと知れた『盗賊さんたちのアジト(はあと)』である。
宿屋のおばちゃんの話ではかなりあくどい事をやってた連中らしい。
その分きっと蓄えもいっぱいあるんだろう。
町の人のためにもなって、私のためにもなる。
うん いい趣味。

あれ?
あたしが夜空をふよふよと飛んでいると、下の方――宿屋の裏庭と森の境目あたり―――によく見知ったのがいた。
木に背中を預け、上を見上げている長身の男。
いわずと知れた、あたしの『自称保護者』のガウリイである。
保護者って言ってるくせにあたしが盗賊いぢめ行くのを止めれる場所にいないなんて保護者失格だぞ。
まぁ 止められたれ止められたで怒るけど・・・・
それにしても、いったいなにしてるんだろ?

あたしはガウリイにわからないように少し離れたところで翔封界(レイ・ウイング)を解いた。
ガウリイに見つからないように、音を立てないようゆっくりと進んでいく。
ちょうどいい木を見つけて、そこの陰に隠れた。
そこから顔だけのぞかせてガウリイをみる。
右手に斬妖剣(ブラスト・ソード)を持ち・・・・・・・・躍っている・・・・
もちろんガウリイは躍ってる気などさらさらないだろうし、あたしも普段ならそんなこと思いもつかなかっただろう。
でも、仮想の敵相手に剣を繰り出していくその姿はあまりにも美しかったし、刃先が空気を切る音がまるでBGMのように聞こえていたから。
月の光で輝いた金色の髪。
均整のとれた体つき。
獲物を狙うしなやかな動き。
月明かりに浮かび上がるガウリイはあたしの知っているくらげとは大違いで・・・・
どくっ どくっ どくっ
あたしの心臓の音が早くなる。
やだ、これじゃまるであたしがガウリイのこと好きみたいじゃない。
自分の考えに今度は顔が赤くなった。

どかっ
いきなりの大きな音に体がぴくりとなる。
音がしたほうを見るとガウリイが左手で太い木の幹を殴っていた。
つらそうな顔をして・・・・
どかっ どかっ
あんなに強くたたいたら、怪我しちゃう。
あたしは思わず木の陰からでて、ガウリイのほうに2,3歩進んでいた。
「・・・・リナ・・・・・?」
ガウリイがあたしを見つけ、驚いた表情をする。
きっと見られてるとは思ってなかったんだろう。
「変なとこ見られちゃったな・・・・・・」
照れたような、辛そうななんともいえない顔。
「がうりい。左手・・・・」
あたしはガウリイと目を合せないまま、ガウリイの左手をつかんだ。
手の甲には何かぬめっとしたものがある。
暗くてよくはわからないけど多分・・・・血・・・・
「治癒(リカバリィ)」
呪文のあと暖かい光が傷にそそがれる。
傷が治ってもあたしはガウリイの方を見れなかった。
どうしてあんなことをしたの?
なんで自分を傷つけたの?
何がガウリイを苦しめてるの?
聞きたいことはあったけど、それは聞いちゃいけないような気がして。
でも、言葉を出せば聞かないでいる自信はなくて。
目を合せれば問い詰めそうになる自分がいて。
「リナ。こっちを向け」
いまだ下を向いてたあたしにガウリイが声をかける。
あたしはふるふると首を横に降った。
「ふぅー 気になるんだろ。どうして俺が木の幹なんか殴ってたか」
やさしい声でガウリイが聞いてくる。
あたしは今度はこくりと頷いた。
「全部話してやる。そろそろリナにも考えてほしいころだから」

あたしはガウリイに手を引かれるようにして宿屋まで帰ってきた。
その間、あたしもガウリイも一言も話さなかった。
『全ては宿屋についてから』
そうガウリイが言ってる気がしたから。
あたしはガウリイの部屋で、ベットに座ていた。
ガウリイはあたしと向かい合うように置かれた椅子に座ってコップにお酒をそそいでいる。
「リナ」
差し出されたコップを受け取って、一口くちをつける。
・・・中身は軽めの白ワインだった。
ガウリイのコップに注がれているのも色は似ているが、きっともっときついお酒だろう。
あのガウリイがあたしと同じ種類のお酒を飲んでるとは思えない。
「で、全部話してくれるんでしょ」
会話の口火を切ったのはあたしだった。
やっぱり気になってたし、本人が話すといったものを止めるほど好奇心がないわけでもない。
「そうだったな。一つ目はそいつの事を考えてたんだ」
言ってガウリイはベットの脇に置かれた斬妖剣(ブラスト・ソード)の方に目をやった。
「そいつがすごい剣だってのはわかるし、そいつを手放す気なんてないが、やっぱりまだうまく扱えてなくてな」
・・・・うまく扱えてない?
この間の覇王グラウシェラーとの戦いだって、しっかり斬り合いやってたし、さっきの稽古だって十分に剣を扱えてたように思えるんですけど・・・・・・・
「やっぱりなぁ 光の剣との時間が長かったから、それに合せて筋肉ができてるんだよな。だからそいつだと、微妙にずれるんだよ」
・・・・・はっきし言ってガウリイにしかわからないレベルの話なんだと思う。
なれない剣を使うと違和感があるってのはわからないでもない。
あたしだって、『魔道師にて剣士』だし、新卒兵だったら、1ダースくらい相手にできるくらいの腕は持っている。
なれない剣を使ってる人の持つ違和感だって、感じられる。
でもガウリイがそんな違和感を持ってるなんてあたしには感じられなかった。
・・・・・悔しいけど。
「今はこいつとうまくやってく方法を探してるところだから。うまくかみ合わないとついムキになっちまうんだよな。うまく合せらんないのが悔しくてさ」
やさしい目でガウリイが斬妖剣(ブラスト・ソード)を見つめている。
・・・この剣が見つかるまでガウリイはどんなに辛かったんだろう。
あたしはガウリイをずっと誤解してたのかもしれない。
あんまりにも剣にこだわってなかったから…・
ううん・・・こだわってないように見せていてくれたから。
「ガウリイ。光の剣・・・・ごめん・・・・あたしの・・・せいで・・・・・」
「リナ それはもう言わないって約束しただろ。俺はリナと一緒にいたこと後悔なんてしてない。もう一度人生やり直せたとしてもリナと一緒にいるって」
それは光の剣をなくしてすぐ、謝りに行ったときにガウリイが言ってくれた言葉。
ガウリイはいつでもあたしのほしい言葉をくれる。
・・・それにしてもくらげなガウリイが覚えているとは珍しい。
「うん そうだったね」
あたしはにっこりと微笑んで見せた。
後悔したって帰ってこないんだし、持ち主がそう言ってくれてるんだから。
あたしがここで後悔してたら、かえってガウリイの負担になちゃうもの。
それに後悔なんてあたしに似合わないもんね!
「まぁ そういうわけだ。俺が木の幹をなぐってたのは」
これでお終いといわんばかりのガウリイの言葉。
でも本当の理由ははまだ聞いてない気がする。
「二つ目は?さっき斬妖剣(ブラスト・ソード)のことは一つ目って言たでしょ。それに、この事をあたしに考えて欲しい訳でも無いみたいだし。ほら、ちゃんと全部話してよ」
あたしはガウリイの顔を正面からみつめた。
どくっ どくっ 
心なしかあたしの心臓が早く打ってるような気がする。

「うーん 俺そんなこと言ったけ?」
いつもののほほんとした口調で返されてあたしは言葉に詰まった。
そういえば、ガウリイがそんなに長いこと物を覚えているなんてできるはずがない。
でも、今回はそんな簡単に忘れたままでいいことにはしてあげない。
「ガウリイ〜 思い出せないなら思い出さしてあげようかぁ〜」
言ってあたしは呪文を唱えた。
「おい リナ! こんなところでファイヤーボールなんて唱えるな」
 みごとにガウリイはあたしの出した光の玉を『火炎球(ファイヤー・ボール)』だと思ってくれたらしい。――――本当はただの『明り(ライティング)』である。
いくらあたしだって宿屋の中で炎の呪文を唱えたりはしない。そんなことしたら間違いなく宿屋おいだされる。
「ガウリイ 思い出したかな〜」
「だぁぁぁ こっちに近寄るなぁ 思い出したから ちゃんとはなすから」
それを聞いてあたしは光を消した。

ガウリイは椅子に座りなおし、ぐっとコップに入ってたお酒を飲み下す。
よく見ると、ガウリイの椅子の横に空になった酒瓶が数本転がってる。
い、いつの間に飲んだんだ…おまひは・・・・・
「で、二つ目だが・・・・俺んちは代々光の剣を継承してただろ。 あっ、リナもう謝るなよ」
ガウリイは慌ててあたしの方を見た。
あたしはただ頷く。
それを見てほっとしたのかガウリイはまた話し出した。
「でだ、光の剣はなくなっちまったが、代わりにこいつが見つかった。だから、こいつを光の剣みたいに子どもに伝えてやりたいなと思ってさ」
少し照れたようにガウリイが笑う。
「光の剣の継承はいろいろあったけど、結局あれはリナといるきっかけになったし、リナを守るのに役立った」
そう。ガウリイが光の剣を持ってなかったらあたし達はあっさりシャブラニグドゥウに殺されてただろうし、その後もガウリイと一緒に旅したりはしなかっただろう。
そして、その後に出会った魔族たちとの戦いでも光の剣は大いに役立ってくれた。
「だからこの剣もきっと俺の子どもにとって役立つ日が来ると思うんだ。そういう相手にも巡り会えたしな」
………ガウリイが何を言いたいかわからなかった。
ううん。わかりたくないだけかもしれない。
「だからリナに言っときたかったんだ」
ガウリイがまっすぐにあたしを見つめる。
いつにもない真剣な表情で。
「それって、子どもを作りたいくらい好きな人ができたってこと?」
我ながら冷たい声をしていたと思う。
でも今のあたしには泣かないために必要なことで。
なんであたしは素直に喜んであげれないんだろう。ガウリイにいい人ができたことを。
「んん まぁ そういうことかな」
ガウリイがやさしい目であたしを見る。
その視線が今は辛い。
なんであたしはこんなに苦しいんだろう。
なんであたしは泣きそうなんだろう。
こんなときになって自分の気持ちに気づくなんて。
・・・・・最後まで気づかなければよかったのに。
「・・・そうなんだ・・・・ わかった。今までありがとね!」
投げ捨てるように言ってあたしはベットから立ち上がった。
はやくこの部屋から出て行きたい。

残念ながらあたしは部屋から出て行けなかった。
右腕をガウリイがしっかりつかんでいたから。
「リナ お前なんか誤解してるだろ」
ガウリイの楽しそうな口調に腹が立つ
「誤解なんかしてないでしょ!!あんたはいい人ができたからあたしとの旅を終わりにしたい。で、あたしはわかったって言った。それのどこに誤解があるのよ」
ガウリイをにらみつける。
くやしいこんな奴相手に・・・
「そこが誤解なんだってば」
ガウリイは両腕をつかんだまま、あたしをベットに座らせ、自分もその隣に腰をおろした。
「俺がいつお前との旅をやめたいって言った?」
「だって、好きな人ができたって言った」
いつのまにかガウリイはあたしの頭をなでている。
文句の一つも言いたかったけど、今は大人しくされるがままになっておく。
「相手はお前だよ リナ」
!!!!!
「俺はリナ以外と一緒にいる気も子どもを作る気もない。でも、リナはそんな俺の気持ちなんて気づいてなかったろ。だから苛立ってた」
「どうして言ってくれなかったのよ」
「言ったら困っただろ」
即座に切りかえされてあたしは言葉に詰まった。
今日のことがなければ、あたしはガウリイを意識したりしてなかったし、もっと前に言われてたら、きっと困っていた。
ガウリイはわかってたんだ…・わかってくれてたんだ。
「だから、言わなかった。 本当はまだ隠しておくつもりだったんだけどな」
頬を掻きながらガウリイが言う。
心なしかその顔が赤くなってるような気がする。
「で、リナは?」
・・・・・・・・
「俺のこと嫌いか?」
・・・・・・・・・
「嫌いじゃない・・・・でも、子どもとかっていうのは・・・・まだ早いかなって」
あたしはまだまだやりたいことがたくさんある。
もっと旅もしたいし、美味しいものも食べたい。魔道の研究だってしたい。
それに、やっと気持ちに気づいたのにいきなり子どもとか言われてもねぇ。
なのに、あたしの返事にガウリイはうれしそうな顔をした。
「それは見込みはあるってことだろ。いきなり大人になんなくていいさ。まだ俺達はずっと一緒にいるんだからな」
ガウリイはあたしをぎゅっと抱きしめた。
・・・・暖かい・・・・・
・・・・そして、とっても眠い・・・・・
でも、ちゃんとガウリイに言わなくちゃ・・・
「ガウリイ。ありがとね・・・・・・・・だい・・・すき・・だ・・・よ・・・…」
なんとか囁いたあたしの声はガウリイに届いたんだろうか。
その確認もできないままあたしはガウリイの腕の中で眠りに落ちていった。



お付き合いありがとうございました。ミーナです。
これはイメージとして13巻と14巻の間のつもりです。
当初の予定と大幅に狂ってしまいまして、何のためにこれを書いたのかわからない部分ができてしまいました。当初予定は2ページくらいのつもりだったんですよ。(しかもギャグ)
どうして、こんなにうだうだ悩むリナちゃんのお話になってしまったんでしょう。
最初ガウリイが悩んでたはずなのに。
うーーーん 書いた本人が不思議がっています。
しかも、題名が話とあってない…・・・・・題名つけるのって苦手。
皆さんはどうやってつけてるんでしょうか、よろしければお聞かせください。
それでは、こんな駄文を最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
感想などいただけるとうれしいです。よろしくお願いします。



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2249Re:新たに伝える為にうさびん 9/26-00:10
記事番号2228へのコメント

こんばんは〜。読んだ感想です。

リナが初めて自分の気持ちに気づいて、素直に女の子らしい部分を出して大人になった
って感じですね。嫉妬とか。
なんかガウリイも思い詰めてますね。ガウリイってやっぱり普段は何も考えてなさそうなのに、
リナの事にだけは真剣になる、というか感情的になるみたいな気がします。ってあたりまえか、ははは。

一歩進んだ(いや三歩ぐらい進んだとも言えますけど)リナとガウリイ、しっとりした雰囲気でいいですね。


あああ、うまく言えません、よく分からないことを書いてしまいました。
感想下手でごめんなさい。がんばってくださいね。では。

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2260ありがとうございましたミーナ E-mail 9/28-00:07
記事番号2249へのコメント

うさびんさまへ

感想ありがとうございました。

>リナが初めて自分の気持ちに気づいて、素直に女の子らしい部分を出して大人になった
って感じですね。嫉妬とか。
そうですね。でも、基本的にリナは女の子らしいと思うんですよ。特にガウリイがらみのときは。

>なんかガウリイも思い詰めてますね。ガウリイってやっぱり普段は何も考えてなさそうなのに、
リナの事にだけは真剣になる、というか感情的になるみたいな気がします。ってあたりまえか、ははは。
ガウリイがリナのこと考えなかったらスライムの並みののーみそすら維持できなくなちゃうじゃないですか。

>一歩進んだ(いや三歩ぐらい進んだとも言えますけど)リナとガウリイ、しっとりした雰囲気でいいですね。
進みすぎましたかね?
一応、恋愛に関してはかなり奥手だと思うんで、当初予考えてたラブラブなシーンをやめました。
気持ちに気づいて、そくキスやXXX(伏字)をするようには思えなかったんで。

>あああ、うまく言えません、よく分からないことを書いてしまいました。
感想下手でごめんなさい。がんばってくださいね。では。
いえいえ。そんなご謙遜を…・
感想をいただけるのひそかに楽しみにしてるんですよ。
次回もよろしくお願いします。