◆−迷惑顧みず、またやって来ました。許してください……−紺野悠深(10/4-00:29)No.2282
 ┗哀しみの歌〜序曲:泡沫の女−紺野悠深(10/4-23:28)No.2284
  ┗哀しみの歌〜第一楽章:縛られた魂−紺野悠深(10/9-23:40)No.2303


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2282迷惑顧みず、またやって来ました。許してください……紺野悠深 E-mail 10/4-00:29


こんにちは。
しょーこりもなくまたやって来ました。紺野悠深です。
何か今とっても忙しいです。卒業に向けてのレポートとか……
何はともあれ、しばらく「ぼーっ」と、めまぐるしく過ごしていたら、
なんか、下らないものしか書けくないくせに、書きたくなってしまいまして
……
来てしまいました。
何が、というわけではないのですが、よろしくお願いします(意味不明)。

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2284哀しみの歌〜序曲:泡沫の女紺野悠深 E-mail 10/4-23:28
記事番号2282へのコメント

「女はずっとそこから動けずに哀しみの歌を歌い続ける
 彼女が望むのは解放……
 彼女を慰めるのは仲間の魂たち」

あなたはもういないのに
私はあなたの傍に行きたいのに
行けない
動けない
私を慰めてくれるのは
唯一仲間の魂たちだけ

女は言う。
語(うた)うように。
女は哀しみに暮れている。
ずっとそこから動けずにいる。
最初はもがいていた。
だが、何時しか止めてしまった。
彼女の時が止まってしまったのと同じように。
足掻く事の愚かさを知っただけ。
ずっと。
ずっと、呟き続けている。

私はずっと貴方を想っています。
貴方は今何処にいるのでしょう?

だが、その問いは返されることはなく、虚空消えていく。
答えは出ない。
出すことを許されないかのように。
彼女にできること。
それは語うことだけ。
世界の輪廻から外れてしまった彼女。
彼女は、その解放を願っている。

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2303哀しみの歌〜第一楽章:縛られた魂紺野悠深 E-mail 10/9-23:40
記事番号2284へのコメント
「無数に漂う魂の中の、独つの動けぬ魂
 無数の魂たちは、動けぬ彼女の為に涙を流す
 その悪戯を仕掛けたのは、嫉妬に狂った男……」

リナは、いつものように盗賊いぢめの為に、ある森へとその足を運んでいた。
今日は月が綺麗だ。
それは、秋がすぐそこまで足を運んでいて、空気が澄んでいるからかもしれない。
月光浴がてらに、彼女は月明かりだけの下、その森を歩いている。
月明かりがあるといっても、やはり森の中なので、足下が多少不安定ではあったものの、リナはライティングを使おうとはしなかった。
ふわっ……
柔らかい風が彼女を通り過ぎて行く。
「…………」
と、リナは足を止めた。
「声……?」
リナの耳に、何者かの声が届いたのだ。
まるで今吹き過ぎた風に乗ってきたように。
リナは無意識のうちに、声のした方へと足を向けていた。

「う……わ……」
リナは思わず絶句した。
声の音源を辿って着いたそこは、幻想的な世界のような所だった。
リナの視界いっぱいに広がる澄みきった湖。
そして、その上を、無数ともいえるようなフェアリー・ソウルは、寂しげな感のある淡い光りを放って飛び交っている。森の湖という平面なスクリーンの中から、飛び出したようなそのフェアリー・ソウルたちのは、闇の中にとても映えている。
リナは辺りを見わたす。
と、湖の中心に目が止まる。
女がいる。
よくよく見るれば、フェアリー・ソウルたちは飛び交うというより、彼女を中心に飛んでいるようにも見える。
声の主は彼女だった。
彼女は、哀し気に歌を歌ってた。
胸が不意に締めつけられる感覚に、リナは襲われた。
それは、彼女の気持ちだろうか。
リナは胸に手を当てながら、ふとそんなことを思った。
彼女はどうしてあそこにいるのだろう?
彼女が、こちらに気がついたようだ。
ゆっくりと、こちらを見つめてくる。
リナも彼女を見つめている。
リナは気づいた。
彼女が人間でないことに。
この湖のように透き通った肌、やはり透き通って曇りのない青い瞳。
そして艶やかなイエローブラウンの髪、人間のものではない少し大き目の尖った耳。
紛れもない。
「エルフ……」
りなの口から、呟きになって洩れた。
「人間の……魔道……士……」
彼女が、不意に口を開いた。
ぶあっ……!!
突如、彼女を中心として風が巻き起こる。
リナはとっさの事で、後ろに飛ばされそうになったが、なんとか足を踏み止めた。
「私を解放して!! もう……もう、気がすんだでしょう……!? あの人を殺して、私をここに閉じ込めて……!!」
さらに風が強さを増す。
リナは、一歩湖に足を踏み出す。
「ちょ、ちょっと待ってよ。あたしじゃないわ! 落ち着いて、あたしをよく見て!! あたしの話を聞いて」
身に覚えのないことを叫ばれて、リナは慌てて彼女にそう話しかける。
「あたしはリナ。見てわかるように、魔道士よ。でも、あなたの言う人間の魔道士じゃないわ」
彼女がリナの言葉に反応したのか、風が止む。
彼女は再び、リナを見つめる。
「あの、男と……ちが……う……?」
ぴくっ。
「おとこ……?」
彼女の言葉に、リナの頬が引きつる。
「あたし、女なんですけど……」
何かを押し殺すようにリナは、彼女に告げる。
と、リナの言葉を聞いた彼女は、やはりリナを見つめたまま――しかし先ほどまで漂わせていた寂しげな感は影を潜め――聞き返す。
「あの……胸が見当たらないんですけ……」
だが、リナのただならぬ雰囲気を感じ取った彼女もまた、リナとは違う意味で顔を引きつらせた。
「あ、じょ、冗談よ」
そして、慌てて取り繕う。
「冗談……?」
それが余計に彼女の神経を逆撫でする。
「覚悟はいい?」
「きゃーっ!ごめんなさぁーいっ!!」
呪文を唱え始めたリナに、彼女は泣きながら謝った。

「私、ケイトって言います。見ての通りエルフなんですけど。実は、私がここから動けなくなってしまったのは、ある呪いのせいなんです……」
「呪い……?」
あれからしばらくの後、何とか怒りをおさめたリナは、レビ・テーションで彼女――ケイトの傍で浮かびながら、彼女の話を聞き始めた。
「はい……。あれは、まだ私が生きていた頃の話です。私も、そこそこの歳になり、恋人ができました。彼と婚約をして……そんな時でした。あの男が現れたのは……」
ケイトは、怒りと哀しみに顔を歪ませる。
リナは、エルフの彼女が言う『そこそこの歳』というものに多少興味があったのだが、それを聞ける状況ではなかったので、それは胸の中にしまいこんだ。
「その男は、私に交際を迫ってきました。当たり前ですが、私はそれを断りました。私にはもう彼がいるから、と。しかし、それでもあの男はしつこくしつこく私に言い寄ってきました。彼も、そんなあの男が、私に近づけぬようにしてくれました。ですが……」
言葉に詰まるケイト。当時の事を思い出しているのだろう。
「それで?」
リナは促す。
「はい。あの男は、そんな彼に怒り、彼を殺してしまいました」
ケイトの瞳から、一筋の涙が零れ落ち、下の湖に小さな波紋を作り出す。
「その男は、どうやってあなたの恋人を殺したの?」
「いつものように、ふらっと私たちの村にやって来ました。そして、持って来たナイフで彼を刺し、魔術で……彼を……!!」
ケイトから嗚咽が洩れる。
リナは、無言でケイトの肩を抱こうとした。しかし、彼女にはすでに肉体がないため、リナの腕は虚空を滑った。
彼女はすでに存在していないのだと、リナは改めて納得した。
ケイトの話は続く。
「そして、彼を殺しても思い通りにならない私を殺しました。その後、私の魂と身体を、この湖に封印したのです」
「湖に封印……?」
リナは眉をひそめて聞き返す。
そんなことが、人間の魔道士に可能だろうか?
いや、仮にそれができたとして、遥かに高いキャパシティと知識を持つ彼女らに解けなかったのだろうか?
「その封呪は、解けなかったの?」
「はい。私自身を含め、仲間の皆が色々手を尽くしてくれました。ですが、その仲間も、そのうち人間たち皆殺されてしまいました……」
彼女が言った事は、おそらく人間によるエルフ狩りの事だろう。
過去に起こった、人間によるエルフ虐待の歴史。その一部のエルフ狩り。
リナは何も言えない。彼女に言う言葉が見つからない。
自分がしていなくとも、それは人間の犯した罪であることは、揺ぎ無い事実である。
しばし、沈黙が彼女等の間に流れる。
「その男っていうのは、まだ生きてるの……? さすがに死んじゃったら、その呪いとやらも解けるんじゃ……」
最初に口を開いたのはリナだった。
沈黙に耐えられなくなったというのもあるが、とりあえず疑問に思ったことを口にする。
「あの男も、私をこんな風にしたまま、自分だけ死んでいきました」
「術者が死んでも続く呪い……?」
リナは訝った。
ケイトはいつの間にか、伏せていた顔を上げた。
そして、彼女はリナにこう告げた。
「あの男は魔族にその身を売り、強大な魔力を得、その力で私の魂を封印したのです」
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まだ、続きます。
ケイトが最終的にはどうなるかってのは決まっているんですが、その間のお話の部分が、まだ出来上がっていません。
付き合ってくださるという奇特な方は、長い目で見てやってくださいね。
紺野悠深でした。