◆−『記憶の底に眠るもの』1−おーはし(10/31-11:02)No.2398
 ┣『記憶の底に眠るもの』2−おーはし(10/31-11:04)No.2399
 ┣『記憶の底に眠るもの』3−おーはし(10/31-11:06)No.2400
 ┃┣Re:『記憶の底に眠るもの』−ももへい(10/31-21:16)No.2403
 ┃┃┗ありがとうございました−おーはし(11/3-10:23)No.2416
 ┃┣とても−鈴鳴 彩菜(11/1-01:54)No.2407
 ┃┃┗お疲れ様です(笑)−おーはし(11/3-10:24)No.2417
 ┃┣眠れる真実−わかば(11/1-22:11)No.2410
 ┃┃┗嬉しいです(喜)−おーはし(11/3-10:26)No.2418
 ┃┗Re:『記憶の底に眠るもの』3−うさびん(11/6-23:52)No.2439
 ┃ ┗ありがとうございます。−おーはし(11/7-14:34)No.2444
 ┗爆笑!(ちょっとだけお知らせを)−おーはし(11/7-14:50)No.2445
  ┣Re:爆笑!(ちょっとだけお知らせを)−魚の口(11/7-23:19)No.2447
  ┃┗はじめましてです。−おーはし(11/9-22:10)No.2453
  ┣「グOコ」ですね!?−わかば(11/9-00:27)No.2450
  ┃┗一粒三百メートルです。(!)−おーはし(11/10-22:05)No.2458
  ┗Re:メッチャぐぅ★−鈴鳴 彩菜(11/9-01:27)No.2451
   ┗よございましたか?(笑)−おーはし(11/10-22:07)No.2459


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2398『記憶の底に眠るもの』1おーはし 10/31-11:02



すみません、またお邪魔させていただきます。(ぺこり)
今回は一応、ゼルガディスのお話です。(出てくるのはいつもの通り四人組でですけど)
原作にもアニメにも無い事てんこもりで(汗)あちこちボロが出そうで怖いです(大汗)
そう言う訳で…、深く考えずぱたぱたっ…と読んで頂けたら…いいなーなんて…(…しくしく)
なにやら今までで一番長くなりましたが、お時間がありましたら、どうぞです。


===========================================



「レゾの研究所に行ってみようと思う。」
それは、とある町でとった宿の食堂で、金額の割になかなか美味だった料理をたいらげた後、
腹いっぱい夢いっぱいの食後のお茶タイムに、ゼルガディスが言った言葉だった。
「レゾの研究所って…サイラーグの、あれ?」
「いや、もっと昔に造られた、奴が放浪を始めた初期のころのものだ」
「えぇー?!まだあったの!あんたそんなこと言ってなかったじゃない」
香茶を口に運ぶ手を止めリナが言う。
もう夜は遅く、食堂に客はリナ達四人だけ、
アメリアはゼルガディスに寄りかかるような形でこっくりしかけているし、
「んごーすぴょー」
ガウリイは話が始まった時点で、すでに夢の国にいってしまっている。
「サイラーグで『あるらしい』ということは知ったんだが、確認できたのはつい最近だ。
 まぁ初期ということは魔術の研究もまだ初めの方、
 研究書やアイテムが残っていてもそこまで大したもんじゃなかろうが、
 それ以外の、手がかりってのもあるかもしれん。
 急ぐような宛は今のところ何も無いし、可能性が少しでもあれば何だってあたってやるさ」
さして期待はしてないらしい、淡々と告げると持った酒を口に運ぶ。
「ふーん。で、場所は?すんごく遠いとこじゃないでしょーね」
ゼルガディスの酒瓶を横目に、『ほんとはあたしもお酒がよかったんだけどなー』という顔でリナが聞く。
もちろん止めたのは、リナの『保護者』ガウリイ。
のほほんとしているようで、こういうことにはほんっとにうるさい。
「俺の郷里の近くの森の奥、らしい。心配するな、今回は俺一人で」
「えっ!ゼルガディスさんの生まれたとこっ?!行くっ!私一緒にいきますっ!」
恋する乙女の能力は人知をこえる。
寝かけてた筈なのに『俺の郷里』の一言で瞬時に覚醒、やる気満々でアメリアが叫んだ。
「ふーん、レゾの研究所かぁ。初期とはいえどもあの赤法師様の、だもんね。ちょっと興味あったりして。
 そ・れ・に、なーんかいいものが……落っこちてっかもしんないしっ♪んふ」
リナはリナで、あるかもしれないお宝&研究に興味ありありらしい。
「おまいら人の話を聞けちゅうのっ!俺は一人で」
「行く…なんて言わせないもんねー。ね?アメリア」
にま
「はいっ!」
にぱ
二人して顔を見合わせると、にっこり笑顔を向けてくる。
「………」
この笑顔が曲者だ、この二人が組んでごね始めたら魔族でさえ説得は不可能だろう。

何も言わずにこっそり抜け出すべきだったか

ゼルガディスは今更ながら、しても仕方の無い後悔に襲われていた。
「『一人で行く』なんて水臭いです。微力ですが、不肖アメリアお手伝いしますっ!」

気持ちは嬉しいが……ほんとに気持ちだけ、で良い、こいつの場合
連れてったら、要らない苦労が増えるのは確実と見た

「そうそう、そーよねー。ちょうど今んとこ然したる目的も無いし、手伝うわよ探すの!
 んでぇー、そんでさ、あんたの必要でないもんで良いもんあったら……
 …………もらっちゃっても…良いわよねっ!」

殊勝な事を言ってはいるが、後半の方に真意があるのは丸わかりなんだよ
物欲魔人め

今にも口から出そうな言葉を二つ、飲みこんだゼルガディス。
もう無駄だとは知りながらも、それでも最後の抵抗を試みる。
「気持ちは嬉しいが……一人で良い。ほんっっっっっとに!一人で良いんだ!」
「あああー可愛くないっ!その態度。特に最後の言い方」
「そおです!なんか迷惑そーです」

迷惑なんだよ、ほんとに

……言いたい、だが言ったらこの宿ごと吹っ飛ばされる。
緊迫した(笑)空気が広がり始めたその時、
腰から砕けるような、のぉんびりした声がかかった。
「いいじゃないか、ゼル。みんなで行けば苦労もへるぞ。」
「あらガウリイ!たまにはいいこと言うじゃない。よしよし。」
いつのまに目を覚ましたやら……無責任なガウリイの言葉にリナがにこにこと頷く。

減るのか?!ほんとに!

「そうですよっ!私たち堅い友情で結ばれた『なかよし四人組』じゃないですかっ!」
アメリアも拳を振りかざして熱弁をふるう。

アメリア…その呼び方だけは止めて欲しい

「んじゃ決まりね!明日の朝出発よっ!
 ゼル…一人で今晩こっそり行こうとしても……無駄だかんね。んふふふふ」

もう駄目だ…

ゼルガディスの願いも虚しく、目指すレゾの研究所には、
『なかよし四人組様御一行』で行く事に決定したのである。


「…胃が痛い」


そうでしょう。



******



「はぁーここかぁ。解りにくいわね、確かに。」
ゼルガディスの案内のもとやってきた森の中の奥深く、レゾの研究所はあった。
ちんまりと。
ちんまり、そう、その大きさは四畳半ほどしかなかったのだ、地上部分は。
「入り口だけってのは見たことあるけど、
 こーんなちっこくお飾りみたいに建物付きってのは、初めてだわ、あたし。」
「なんか、変わってんな。」
確かに。
建物を建てるなら住めるくらいのものを作るのが普通だし、
入り口だけならこんなおまけみたいな建物なんていらないだろう。
リナは思った。
これを作った人間は何を考えてたのだろう?
つまりレゾなのだが。
「森の中にこんなもん建ってたら、電話ボックスか公衆トイレかと思うわよ、普通。」
「思うかっ!」
「バス亭の待合所とか…。」
「この世界にバスなんぞ走っとらんわっ!」
「もう、ゼルったら、冗談が通じないんだからぁ。あはははは。」
「そですよ、あはははは。」
「……も、いい。」(涙)
「よしよし、泣くんじゃないぞ男だろ。」


ここに来るまでの道程は結構大変だった。
本当はそこまで大変というわけじゃないのに、大変だった。
主にリナとアメリア、二人のせいで。
森の中は天然の迷路。
道は解るものの迷い易いのは変わらない。
それなのに…

「ああっ!あんなとこに盗賊のアジトらしきものがっ!行くわよアメリアっ!」
「はいっ!リナさんっ!正義を我が手にっ!」
「またんかいおまえらっ!」
「聞いてないぞあいつら。」

とか、

「ん?なんか甘くて良い匂いが…果物…かな?」
「え?!ガウリイほんと!どっちどっち?!」
「こっち」
「よし!食料調達!行くわよアメリア!」
「はい!リナさんっ!食料調達は正義ですね!」
「それは違うと思うぞーって、やっぱ聞いてないな」
「……」

とか、

あっちにちょろちょろこっちにちょろちょろ、
これで道に迷わない方が不思議だろう。
結局4度、道に迷い、この建物を見つけたのはもう日も暮れようかという頃だった。
「おお、日が沈んでくわねぇ。」
「綺麗な夕日ですねぇ。」
何とかごまかそうというのがありありの台詞に、
額に怒筋を貼りつかせたゼルガディスのひくーい声が被さる。
「…誰かさんたちが散々足引っ張ってくれたからな」
「ごめぇん、てへ」
「すみませぇぇぇん」
流石に羽目を外しすぎたと反省しのだろうか、二人とも殊勝な返事を返してくる、
だが、
「まぁ過ぎた事は仕方ないさ。さっさと入って調べる…にはもう遅い…か。
 そんじゃ、野宿の準備でもしようぜ。」
「そね!」
「はいっ!」
…本当に反省してるかは疑問だな…
ゼルガディスは深々と溜め息をついた。
「ね、ゼルガディスさん、ゼルガディスさんの故郷ってここから近いんですよね?
 どんなとこです?おっきい町なんですか?」
森の彼方を見やるゼルガディスに、いつのまに来たのやら、アメリアが横から聞いてきた。
ゼルガディスさんの生まれ故郷、できたら行って見てみたいなぁ
好きな人のことは何だって知りたい、アメリアの目は純粋な興味に輝いている。
だが、
「俺の生まれた国はもう無い。
 聞いた話じゃでっかい国の戦争の煽りを食って焼けちまったらしい、跡形も無く、な」
淡々と告げるゼルガディスの表情にはなんの感慨も表れていなかった。
「……すみません、その、いけないこと…聞いちゃいました」
返ってきた言葉の悲惨さに、みるみるアメリアの表情が翳ってくる。
裏表の無い純粋さをそのままに大きくなったこの少女は、感情がすぐ表に現れる。
滅多に感情を露にしない、いや、出来ないゼルガディスには、
そんなところが好ましくもあり羨ましくもあった。
「そんな顔をするな、別になんとも思っちゃいないんだから。
 俺はその頃のことを覚えてないんだ、
 記憶がなけりゃ、悲しいとも悔しいとも、思いようが無いだろう?」
「え?」
「覚えてないんだ昔の事は、殆ど」
数年前から、
正確には合成獣に変えられてから、だが、
ゼルガディスの記憶に昔の事、特に子供のころのものは殆ど残っていない。
『記憶が無いから悲しみようも無い』
その言葉は強がりでも気を使ったのでも何でも無い、事実を告げた、ただそれだけの事。
「あの、じゃ、お父さんとかお母さんとか…」
「俺の知っている限りじゃ、その時生きていた血縁はひいじいさんであるレゾだけ、
 父親は名前さえ知らんし母親は名前しか知らん。
 さっき国は煽りを食って焼けちまったっていっただろう?そのとき死んだんだそうだ。」
産まれた家のこと。
母親の事、父親の事。
微かにでもあったかもしれないそんな記憶も、全部、消えている。
だからこれは聞いたことで、覚えていたわけではない。
レゾと暮らしていた筈の十年近くの記憶も、うっすらと霞がかかっているようだ。
はっきりと記憶に残っているのはあの日から、
合成獣に変えられて、闇に隠れて生きるしかすべが無くなったあの日から、
覚えていたくも無い日々だけが、嫌になるくらいはっきりしている。
ただ、
その中でも、リナとガウリイ、二人に会ってからの日々は違う。
魔王を前に共に戦ったあの時の記憶が、こんな状況に在ってもなお諦めない、今の自分を支えている。
そしてアメリア、彼女に逢ってから毎日は更に変わった。
自分を必要としてくれる存在が、こんなにも日々に彩りを与えてくれるなんて思いもしなかった。
くい
「…ゼルガディスさん……」
「そんな顔をするなって言ってるだろう。本当に何とも思っちゃいないんだから」
黙って考え込んでいる自分を見て、気を損ねたとでも思ったらしい。
表情を曇らせて俯いてしまったアメリアを見て少し後悔するゼルガディス。
こいつの、こんな顔の方がよっぽど堪えるんだがな
「アメリアー!そこの川に今晩の御飯取りにいくわよー!」
そこへ、ちょうど良い具合にリナの呼び声がかかった。
助かったとばかりに、ゼルガディスはアメリアに声をかける。
「ほら、リナが呼んでるぞ。あいつは気が短いからな早く行かないと…」
「え?…でも」
「アメリアったらぁ!聞こえてんの?!」
二人の会話なぞ聞こえないリナは、ぐずぐずしているアメリアにさらに声を大きくする。
「そら、もうイラついてる」
煽るゼルガディス。
「はいっ!今、行きます」
怒らせたらリナほど恐ろしいものはない、アメリアは慌てて駆け出した。
その後姿を見送りながら、ゼルガディスはぽつりと呟く。
「…我ながら、なんであんなこと喋っちまったんだろうな。
 今の今まで、思い出す事も無かったのに」


本当に、思い出しもしなかったのに



******



そして翌朝


「んー良い天気っ!」
「気持ち良いですねー、お日様もさんさんです!」
「…これから行く場所にはちっとも関係ないがな」
「あははははは、それもそうだなぁ」
「そこで、納得して朗らかに笑うんじゃないっ!!」
げし
「……ヒドイ」


入り口の近くで野宿し、何事も無く向かえた朝。
身支度を整えた四人は研究所の入り口である建物の中に立った。
「さぁって、素直に開くかなぁ?」
地下へと続く扉の前でリナが楽しげな口調で言う。
「まぁ、無理だろうな」
それに答えてゼルガディス。
「あんた、場所以外にこの研究所に関しての情報仕入れらんなかったの?」
「前と同じ。入ってみなきゃどうなってるやらさっぱりわからん」
「…役にたたないわねぇ」
「…悪かったな」
「まあまあ、とにかく入ってみようぜ」
このままだと不毛なけなし合いに発展しそうだ、そう思ったガウリイが二人の間に割って入った。

この二人は、ほっとくとすぐ喧嘩になるからなぁ、しかも低レベルの

まだ何か言いたげな顔をしている二人も、
ガウリイにこんな風に思われてると知ったら、二度とやらないと誓うだろう。絶対。
「扉に鍵は無しっと。周りにも何の仕掛けもなさそうだし、うし。とにかく開けてみるわよ」
リナが両開きの扉の取っ手をつかむと一気に引く。

がち

開かない。
「引いてもダメなら押してみる!」
そのまま今度は押してみる。

がち

やっぱり開かない。
「えぇー?!やっぱ何か仕掛けがあんのかなぁ?」
「魔力は感じないし、それらしいものも見当たらないんだがな…」
再度、じぃーっと見なおしてみても、
やっぱり、どこにも、何にも、仕掛けの無いただの扉に見える。のだけど…
はて?
首をひねるリナとゼルガディス。
それを後ろで見ていたアメリアが、ほてほてと扉に近寄った。
「あー?アメリアぁ無駄よ、開かないって」
リナがひらひらと手を振って言う、が…
「んしょ」

がらがらがら

『へ?』

開いた?

「リナさん、これ……引き戸みたいです」

『……』

べしょ

「なななななな!!!……」
「…………引き戸を開き戸の扉で造るとは……」
「なぁんか、いい性格してるんだなぁ、お前のじーさん」
「そうですね」


「何か……先が想像できそうだわ……あたし」




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2399『記憶の底に眠るもの』2おーはし 10/31-11:04
記事番号2398へのコメント


リナの想像はほぼ当たっていた。
例の引き戸(笑)を入って降りていった地下の通路には、
こういう場所にお約束のトラップや仕掛けが施されていた。
いた、のだが…
出る仕掛け出る仕掛け、吉本百連発かドリフの大爆笑かと思わんばかりのものばかり。
道を歩けば床が抜け、何処からともなく笑い声。
壁に触れれば手が引っ付き。
扉を開ければタライが落ちる。

「……あたし思うんだけど」
「……何だ」
「この道って、侵入者用にあえて造ってあるもんで、
 レゾが普通に使ってた道の入り口は別にあるのよ、どっかに」
「なんでです?」
「だって!あんただったらこんな道!解除法知ってても通りたいと思う?!毎日!
 早口言葉になってるキーワードを舌噛みそうになりながら言ったり
 放送禁止用語を絶叫したり、音の出るタイルの上を飛んでまわって演奏したり
 蝋燭の炎を揺らさずに日本の心を歌ったりっっ!!!」
「…ヤです」
「最後のが解る奴は少なかろうな」
「とにかくっ!このふざけた仕掛けの数々!ぜぇぇぇぇったいレゾが趣味で造ったのよ!
 そんで入ってきた奴が歌ったり叫んだりしてるのどっかで観察してて、
 楽しんでたのよぉぉぉぉぉぉっ!!」
ぜーはーぜーはー
「はいはい、落ちついてー」
前述の行為をぜーんぶこなしてきた結果、リナはかなりキレかけていた。
いや、もうキレちゃってるかもしんない。
その様子を横目で見ながら、ゼルガディスがぼそっと言う。
「…案外実用性もあったかもな」
「はい?」
不思議そうな顔で見上げるアメリア。
「研究施設に進入だと気合入れて入ってきた奴が、この腰砕けな仕掛けの数々に会って、
 それでも、真面目に、前向きに、挑もうという気力を持続する事ができると思うか?」
「……難しいかも、しれませんね…」
「だろう…だとしたら侵入者を阻む、という目的には結構かなってるのかもしれん」
「うきぃぃぃぃぃ!!!こんな馬鹿馬鹿しいのもういやぁぁぁぁぁっ!!」
じたばたじたばた
「…ほらな…」
「ほんとですね…」
「そっかなぁ?オレ、結構楽しかったけど」
「お前はな」

いちおう真面目な隠し扉だの迷路だのも、あるにはあったのだが、
その他の仕掛けのインパクトのせいで印象は薄い。
魔王シャブラニグドゥを、その両目に封印されていた人間であったレゾは、
リナとガウリイがゼルガディスと会ったあのころ、その精神の殆どを知らず魔王に侵されていたらしい。
残酷で、酷薄で、油断のならない、聖人の仮面を被った、悪人だった。
が、この通路を造った、多分、まだ素のままの人格であったろうレゾも、
ある意味、油断のならない性格だったのではないのだろうか、とリナは思う。
残酷とか酷薄とかいうのとは全然逆ベクトルな方向で、という意味でだが。
「サイラーグの研究所のコレクション見て、なんっか変な趣味だなぁとか思ってはいたけどっ!
 ここにきてはっきりと確信したわ!
 レゾって、天才となんとかは紙一重の、その典型だったのよっ!」
ひとしきり叫びまくってストレスが発散されたのか、いちおう落ちついたリナは、
視線を45°上方に上げると誰にとも無く宣言した。
「誰かさんと一緒ってわけだ」
びっ!
「で、あんたはその直系!」
「………」
ぐらぁ
「ゼルガディスさんしっかり!顔が真っ青ですよっ!……あ、もとからかな?」
「リナぁ、許してやれよ。ゼルの奴ショックのあまり蒼白になってるぞ。わかりにくいけど」
「いいのよ!現実は直視しなきゃね。
 ふう。
 さぁてもう結構下まできたし、もうそろそろこの悪趣味も終わりでいいと思うんだけど?」
言って見たその先には、今までとは確かに違う、強力な魔力を感じさせる扉があった。
「ヤな感じびんびんだわ、あの扉」
よく見ようと前に進もうとするリナに、ガウリイから声がかかる。
「おーいリナぁ、この横の壁、よーく見ると継ぎ目があるぞ?」
「こんなもん良く見えたわねって、……あんたの視力ならだいじょぶか」
ガウリイに指し示された壁を、撫で、叩き、じっくりと調べたリナは、
岩壁の微妙な色彩の中に隠されたスイッチを見つけた。
用心しながら押すと、壁にぽっかり穴が開く。それは闇の中、遠く先へと続いていた。
「やぁっぱりね、きっとこれがここに来るための最短通路よ、私用のね。
 帰りはぜぇぇぇぇぇったいこっち通るわよっ!!……っという訳で、
 私用の通路がここに出るということはこの扉の向こうからが研究施設、ってのはほぼ確実ってことね」
やっとで真面目な封印に出会え、内心ほっとしているリナは、
表情を引き締めると慎重に扉の前へと歩を進めた。

『我が前に立ちしもの、我に正当なる血脈の証を示せ』

一定の距離まで近づくと扉から警告の声が響く。
「正当なる血脈…レゾと、その血に連なるものだけが、この扉を開けるってわけね。ゼル?」
「そういうことらしいな」
なんとか精神的ダメージから立ち直ったらしい。
リナの呼びかけに、ゼルガディスが扉の前に進み出た。
「さて、名乗りでも上げればいいのか?それとも、血でも奉げてみるか…」
「一曲歌ってみるとか…」
「もうそれはいいっての」
「しあわっせにしあわっせにキっスしったぁら〜♪」
「エプロン姿の君がいっる〜♪……だからもういいと言うとるだろが!!!」
軽やかに歌うアメリアとゼルガディス。
どうやら二人はここまで来る間にカラオケデュエットまでさせられたらしい。
それもかなりこっ恥ずかしいやつ。
「はぁ……ったくもう…」
アメリアのボケに気力を吸い取られながらも、慎重に両手で扉に触れてみる。
「印や符丁の類は見当たらないが…」
ぽう
その瞬間、扉から光が溢れゼルガディスの身体を包み込んだ。
「なるほど、前に立つだけでおっけーな親切設計なのね」
探るような動きをした後、光は出てきた時と同じく、吸い込まれるように扉へと帰った。
そして、

『我が前に立ちしものを、正当なる血脈をもつものと認める』

その言葉とともに、最後の扉は静かに開かれた。
「ふっ!当然です!ゼルガディスさんは赤法師レゾのれっきとした曾孫なんですからっ!」
「…アメリア…今はそのことに触れないでくれ。………落ちこむから」
我が事のように得意げに言うアメリアの横で、
さっきのショックがぶり返したのか、ゼルガディスが悲しげな顔で言う。
「変人の血の証だもんね」
流石に気の毒になったのか、リナはゼルガディスに聞こえない小さな声でぼそっと言った。



******




扉を抜けたそこは、
ごく普通の研究所兼住居、そんな感じのこじんまりした造りだった。
「ふーん中は普通なのねぇ。あの扉からこっち侵入者用の警報もトラップも無いし」
「俺がいたから何事も無かったが、あれには結構剣呑な撃退魔法が施されていたようだからな、
 これで十分、そう思ったんだろう。じーさんは」
「へ?」
「正当でない、つまり侵入者だ、と判断されたら…」
「…撃退用の魔法が発動、あたしたちはこの世とおさらば…って、そゆこと?」
「まぁ油断さえしてなけりゃ、防御魔法で命くらいは助かったかもしれんがな」
「はー、くわばら、くわばら、…………って!
 そしたら尚のこと、それまでの仕掛けってお遊びだったってことじゃないっ!!」
「そのことはよーく解ってる筈だろう?」
「うきぃぃーっ!もういないと解ってても、一発殴ってやりたいぃぃぃ!!!」
諦めたように言うゼルガディスの前で、再び地団太踏んで怒りまくるリナ。
もし、レゾがまだ存命だったら、間違い無く『一発殴りに』行ってるだろう。
それが可能かどうかは別として。
「それに家の中までトラップだらけじゃ住むに不便極まりない」
「そーですね。トイレにいこうとして穴に落ちたりしたら、困りますもんね」
ゼルガディスのもっともな指摘に、アメリアがあまりにも具体的な例を上げて頷く。
「ふーっ、とにかくそうと解れば……
 家捜しよ家捜しっ!!こんだけ色々させられてっ!収穫ゼロじゃあんまりだわっ!!」
「異論は無いな、もともとその為にここまで来たんだ」
「んじゃ、手分けして探すか?」
「そですねっ!」
危険は少なそうといっても廃棄された場所。
何が起こるかわからない状況で全員バラバラは避けたいところだ。
結局、リナとガウリイ、ゼルガディスとアメリア、いつもの組合せで二手に分かれて調べることにした。
「んじゃ、あたしたちが右側、あんたたちが左側、
 一通り見てまわったら情報交換にここに戻る、それで良いわね?」
「ああ、せこい抜け駆けはするなよ」
ぎく
「ん・んなこと、このあたしがするわけないじゃないっ!!」
「………」
無言でジト目を向けるゼルガディスに、リナの隣に立つガウリイがふかぁーく頷く。
「うんうん。言いたい事はよくわかるぞ、ゼル」
「ガウリイ…覚えてなさいよ。その頭じゃ無理かもしれないけど…」
「…それも良くわかります」
今度はアメリアがしみじみと頷いた。



******



ばたん
「何も無し」
ばたん
「カラッポ」
ばたん
「はずれ」
ばたん
「ぬぅぅぅぅぅ…ないないなぁぁぁいっ!!なぁんにもないっ!!アイテムもお宝も研究資料も
 っなぁぁぁぁんにもないっ!!」
「引っ越した時に、一切合財持ってっちまったのかもなぁ」
右側の通路の部屋を受け持ったリナとガウリイは、並んだ部屋を片っ端から開けてまわったが、
その部屋の悉くが開き部屋。
つまり、何にも無いからっぽの部屋、だった。
「レゾのケチ!!なんか少しくらい置いてってくれてもいいじゃない!」
「ムチャ言うなよ」
もしかしたら、レゾはここを本当に廃棄するつもりで、中のものを全部整理して行ったのでは、
そう考えたりもしたのだが…
「ううん、それなら入り口からして残して行かなかっただろうし、
 何より最後の扉、あんな物騒なもんそのまんまにしていかないわよね」
何か、残して行ってるのだ、きっと。
リナは思う。
自分とその血を継ぐ者だけにしか開けない、そんな扉なんか造ってまで。
そこまでして守りたい、何かを。
「もうこの部屋でこっち側は終わりだぞ」
自分の考えにひたっていて気がつかなかったが、
この扉の向こうの部屋でこっち側は全部お終い。
「はぁぁ、こっちはハズレかぁ。ゼル達の方に少しでも収穫があったら良いんだけど」
溜め息混じりに最後の部屋を覗く。
かちゃ
「……………えへっ♪」
覗き見た部屋の中には簡素な机と椅子、そして本棚があった。
机の上には小さな箱があるし、本棚にはさほど多くは無いが本が並んでいる。
「やっほぉあったりぃ!本と…あ!宝珠もあるっ」
机の上の箱の中身は宝珠、どうやら記憶球らしい。
手をかざしランダムに中身を覗いてみると、どうやらレゾの日記兼研究雑記の類とみえる。
「おおっ!らっきー。
 どれくらい昔のかはわかんないけど、なんか役に立つことが、入ってるかも♪
 頭っから全部見てくひまはないから、関係のありそうなキーワードで試してみるか。
 んーと、『合成または合成獣』」
しん
反応は無し。
「関係のある記述は無し…か。
 少なくともこの時期、合成に関しての研究はまだ始めてすらいなかったみたいね
 ハズレっと。そんじゃあ、関係あるかもしんないしダメもとで…『ゼルガディス』」
ぽぅ
記憶球から光が溢れる。
「おっ?!反応ありっ!うっふふー、さぁて何が書いてあるかなぁ……………え?…」
にこにこ顔で流れ込む記録を読んでいたリナがふいに表情を堅くした。
「どした?リナ」
内容を見ても解らないのは最初からわかってるので(ややこしい)
本棚に並ぶ本の、背表紙だけを眺めていたガウリイが不審気に問いかける。
「…………」
が、一心に記憶球に向かうリナには、声すら聞こえてないのか返答は無かった。
もしかして、これもトラップ!ガウリイはリナの肩を掴み揺さぶった。
「リナっ、大丈夫か?!返事しろっ!」
「……ガウリイ…」
肩を掴まれたまま、呆けたようにガウリイの顔を見上げるリナ。
「しっかりしろ!どうした、変な術でもかけてあったのか?!」
揺さぶられて正気に返ったか、その表情が堅く引き締められた。
「ガウリイ、一つお願いきいて」
「へ?なんだ、いったい?」
「この記憶球の事、絶対に言わないで。
 ゼルにもアメリアにも、他の誰にも絶対言わないって約束して」
はぁん、こいつ、またガメこむつもりだな
そう思ったガウリイが頭を掻きながらリナに言う。
「リナぁ…抜け駆けは無しってゼルにも」
「約束して」
見つめ返したのは軽口を差し挟む隙もない真剣な瞳。
これは冗談ごとじゃないらしい
そう理解したガウリイは真顔にもどって頷いた。
「解った、約束する」
「ごめん」
「いいさ。今は言えるような感じじゃなさそうだから聞かないが
 理由話す気になったら、……話せよ」
「ん」
「一人で背負い込むんじゃないぞ」
「ん」
小さく頷くリナの頭をいつものようにぐしゃぐしゃと掻き回す大きな手。
優しい手。
何も聞かずにただ信じてくれる、その心遣いが今はとても嬉しい。
「よし、んじゃここにあるブツで持ってく価値のあるもん選んでくれよ。
 オレじゃ、なにがなんだかわかりゃしないや」
真面目な表情を、けろっといつもの笑顔に変えて、本棚を指差しながらガウリイは言った。



******



「リナさーん何か収穫ありましたかー!」
一通り部屋を見終わり、リナとガウリイがもとの場所に戻ってみると、
先に廻り終わったらしい、アメリアとゼルガディスが二人を待っていた。
「んもう、さぁっぱり!基礎研究の本がこんくらいしかないんだもん」
「……こんくらい…ですか?」
不満そうに言うリナの後ろ、でっかい荷物を背負っているガウリイを見ながら、
アメリアはぼそっと言った。
「……まるで夜逃げのような荷物だな」
「あんたのじーさんがケチで、本しか残してないからいけないのよっ!んも嵩張っちゃって!
 で、あんた達のほうは……って聞かなくても解るわね」
大荷物のリナ&ガウリイ(持ってるのはガウリイだけだが)に対してゼルガディスとアメリアは手ぶら、
少なくとも物質的な成果は無かったようだ。
「ああ、研究用の部屋はあったがもぬけの殻、綺麗さっぱり空っぽだった」
ゼルガディスは最初からそこまで期待してなかっただけあって『まぁこんなもんか』という顔。
「レゾさんって几帳面な人だったんでしょうね。
 立つ鳥跡を濁さず。
 引っ越す時はちゃんと荷物を整理して、必要なものは持って行き入らないものはゴミに出す。
 さすが伝説の聖人!」
アメリアはアメリアで妙な感心の仕方をしているし…
「…が、しかし、納得はいかんがな」
「なんでだ?」
ゼルガディスの漏らした言葉にガウリイが首をひねる。
「整理して完全に引き払ったのなら、あんな厳重な封印なんか残していかないでしょ」
「あ、そっか」
そう、さっきも引っかかったこと。
あの扉は何を封じているのか?何を守っているのか?
まさか、あの宝珠を……ってことは…ないわよね…
一人密かに考えるリナを、アメリアがつんつんと突ついた。
「あのー、もしかして…」
「もしかして…、何よ?アメリア」
「単に、めんどくさかったんじゃないんでしょうか?外して行くのが」

『………………』


…………考えられない…………事じゃない、かも…


だんっ!!
「じょおっだんじゃないわよっ!!!散々人を期待させといてっ!あんだけバカやらせといてっ!
 ……………それが事実なら……事実ならぁぁぁ………!!!」
「………マヌケだな、かなり……。ま、俺は覚悟の上だから構わんが」
「あたしはかまうのよぉぉぉぉぉ!!!………ん?」
腹の底から叫んだリナが、ふと、ある一点に目を留めた。
「どしたんだ?リナ?」
「鏡…」
「鏡?」
止まった視線の先にあったのは、全身を写すものであろう大きな鏡。
通路の先の部屋、空いた扉から僅かに覗いている。
「やだなぁリナさん。鏡なら普通どこにだって一枚くらいあるじゃないですかぁ」
リナの様子に一瞬緊張したアメリアが、ほっとしたように言った。
が、
「…そうだな……普通の人間の、住む場所ならな」
ゼルガディスはリナの言わんとする事に気付いたらしい、
笑うアメリアとは逆に表情が真剣なものに変わる。
「そ。ここはレゾしか使ってない場所だったんでしょ?多分。だったら、おかしいわよ。
 目の見えない彼には、鏡なんて必要無いんだから」
『あ』
はっとするアメリアとガウリイ、そう言えば今まで廻った部屋のどこにも鏡なんてなかった。
この部屋以外。
四人は鏡のある部屋の中に入ると辺りを見まわした。
何の変哲も無い部屋。だけど…
「さっき覗いたときは、『あ、ただの部屋だ』って以外何とも思わなかったんですけど
 ………これって鏡台ですよね」
かたん
引き出しを開けると中から微かに白粉の香りがした。
「女の人、ですよね」
「んー、ま、不思議じゃないわよ。エリスだっていたんだし、
 あれだけ長生きしてりゃ女の一人や二人や三人や四人」
「まてよ!化粧してるからって女だとは限らんぞ、実はレゾに女装の趣味が…」
どげしっ
「人の血縁を変態にするな」
「ゼルガディスさん落ちついて殺人は悪です」
座りきった目で剣を構えるゼルガディスを何とか押し止めるアメリア。
「と、とにかく鏡よ鏡、調べなきゃ。ねっ」
リナも、怒れるゼルガディスの気を静めようと、なるだけあっかるい態度で鏡の前に立った。
ガウリイは最初の蹴りですでに涙目。
人間、口に出す言葉は選んだ方がいい。
ほんと。
「でも……女の人がいたってことは、鏡のあることの理由になりませんか?」
「う・それは…」
「まぁ、そうだな…」
考え違いだったか?
思いながらも、リナに並んで鏡の前に立ったゼルガディスがついと手を伸ばす。
その手が鏡に触れた、すると…
「入り口…か」
そのまま手は何の抵抗も無く鏡を突き抜ける。
「!当たり…みたいね」
「さぁて、何が隠されているんだか」
薄く笑みを浮かべるゼルガディス。
「…行くぞ」
そして四人は鏡の中へと、足を踏み入れた。



******



「研究施設、じゃないわよね。ここ」
鏡を通って出たのは、蒼く輝く水晶のようなものに満たされた場所だった。
この場を囲む壁と床は自然の岩のまま、そして真ん中には台座のようなものが一つ。
台座の前には小さな机があって、何か置いてあるようだ。
「じゃ何の場所なんだ?」
天井を見上げてガウリイが訊く。
高い天井、蒼く清浄な空気、真ん中に台座、
…ぱっと見、近いものを挙げるのなら、
「祭壇…でしょうか?」
「う…ん。レゾも一応聖職者だったんだから、おかしいことは無いわよね」
「でも、スィーフィード神のものじゃないですよ。絶対」
巫女頭であるアメリアが言うまでもなく、そうでないのはリナにも解る。
じゃ、何だろう?
「そこに置いてあるものを見れば解るかもしれん」
ぐるりと首を巡らせて、その場にあるものが台座と机それだけだと知ると、
ゼルガディスは台座の方へと近づいて行った。
「あ!そだったっ!それお宝かもしれないわっ!ゼルっ約束だかんね!」
「…解ってる。俺の目的に関係なければやるから………大声で叫ぶな」
ゼルガディスの言葉で我に返ったリナは、唯一かもしれないお宝らしきものの所有権を主張する。
お宝命!その執念には毎度の事ながら感服する
額に一筋汗を浮かべながらゼルガディスはしみじみ思った。
こつこつこつ
堅い音を立てる岩床。
だが台座の周りだけは違う。
台座を囲むのは、それと同じく水晶のようなものでできた床、そこにゼルガディスの足が掛った。
すると、
「何っ?」
ぱあっ
突然台座の上に立ち昇る蒼い光。溢れる光の中現われたのは、
一人の女性の、幻影だった。

「……誰…この人…?」

結い上げられる事も無く、自然のまま腰まで流れ落ちる豊かな髪は夜の色。
僅かに俯けられた顔は月を思わせ、閉じられた瞼は長い睫毛に縁取られている。
身にまとった白い法衣は彼女の清らかな美しさを引き立てると共に、
その身が神に使えるものである事を他に知らしめていた。
「この人が、あの部屋の…?」
「おそらくね。でも…何か見たことあるような…。うーん?」
どこでだっけ?
首を傾げるリナにガウリイが頷いた。
「オレもそう思う」
「え!うそっ!ガウリイが覚えてるってんなら、ぜぇぇぇったい身近な人間よ!間違い無いわ!うん!」
「……リナ」(涙)
「ガウリイさんの記憶力については置いておくとしても、私もそう思います」
「……アメリアまで」(涙)
うん。確かに見覚えある。
この人本人じゃなくて、似た人を知ってる…と思う。
身近で、本当に身近で、見てるとすんごく嬉しくなって、えーっと、うーんと、…………………あ!
「!解りましたっ!」
咽もとまで出かかってる答えを求め、ぐるぐると頭の中を掻き回していたアメリアが叫ぶ。
「え?!だれだれっ!誰よアメリアっ!」
「性別とか髪の色とか違うから、すぐわかんなかったけど、間違いありません!」
「だからぁ!誰っ?!」
「ゼルガディスさんですっ!!」
『へ?!』
アメリアの答えに、思わず二つの顔を見比べるリナとガウリイ。
蒼い光の中、向かい合って立つ二人、言われてみればその顔は他人とは思えないほどに似ていた。
男と女、その違いが齎す印象の差こそあれ、確かにこれは同じ顔。
ゼルガディスの岩の肌が無ければもっとはっきり解るだろう。
だとすれば…、もしかしてこの女性は…
「アデリシア…」
「え?」
「両親の事も、郷里のことも、何も覚えていない俺にレゾがたった一つだけ教えたこと、
 俺の母親の…名前だ」
後ろの騒ぎなど聞こえていない様に、前に立つ女性に見入っていたゼルガディスが
誰にとも無く、呟くように言う。
「おい!目開いたぞ」
すると、それに答えたかのように、
台座の上、幻術で在りし日の姿を写し出された女性は顔を上げ瞳を開いた。
「わぁ………」
「大したもんだわ、さすが赤法師。まるでそこにいて、生きているみたいね」



天に光 地に恵み
今日も新しき 朝きたり



そして、静かに歌い出す。
多分生きている時に日々歌ったのであろう、祈りの歌を。



明るき光に ものみな目覚め
歌い出す 命の歌を
歌は世界に満ち溢れ 新たな命生み出さん



透き通るような歌声で幻影は歌う。
本当に生きてそこに在るかのように、高く、低く。
傷つき疲れたものに救いを与えるがごとく、優しく微笑み、手を広げ差し伸べて。



疲れしものよ その歌を聞け
孤独なものよ その声を聞け
己をとりまく闇の中 微かな光見出さん



「綺麗な、人ですね。リナさん」
「…ん」
「優しそうで、暖かそうで…
 きっと、たくさんの人に慕われてたんでしょうね」
「そーね」
「……私、こんな風になれるでしょうか?」
「なれるわよ、あんたなら。もっとずっと綺麗にね」



その光こそ我が心
その光こそ我が想い



「俺の母で、あんたの孫、そして多分、その時世界で唯一人だった、自分の家族」



深き闇に落ちるとも
汝とともに我は在る



「レゾ、あんたがここに隠し、守ってたものはこれだったのか」



汝とともに…我は…在る……



歌の、最後の響きが宙に溶けて消える。
そして、それと同時に、
歌っていた彼女の姿も、辺りを満たす蒼い光に溶けるように、消えていった。
台座と見えたのは蒼い、水晶で出来た棺。
透き通る石の中眠るように横たわるのは、幻そのままの若く美しい母の姿。
血族にのみ開かれる扉、
それが守っていたものは、彼が一度は捨てたもの。
己の目的のため、求めるもののため、捨ててきた筈の家族。
その最後の一人の為の、墓所だった。


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2400『記憶の底に眠るもの』3おーはし 10/31-11:06
記事番号2398へのコメント

「ぜーるーがーでぃーすさん。御飯お持ちしましたよー。」
町に帰ってきてから、ほぼ半日、
リナとゼルガディスは持って帰ってきた魔法書を二人で分け合うと、
それぞれの部屋に篭りっきりになっていた。
食事にも出てこないので、アメリアは夕食の盆を抱え部屋へ出前にやってきたのである。
「ああ、すまないな」
答えを待って開いた扉の向こうには、床の敷物の上に胡座をかき、
開いた本に囲まれたゼルガディスの姿があった。
が、今彼の手にあるのは、本ではない。
「あ。それ…あそこにあった箱、ですよね?」
「ああ」
リナが『お宝!』と期待したもの、棺の前の机の上そっと置かれていたものは、小さな箱だった。
箱は、小さいながらも宝石や細かい細工に彩られた美しいもので、
それだけでも高値で売れそうな品だった。
期待いっぱいで箱を手に取ったリナ、が、その目に入ったのは、
―わたしの小さなあなたへ―
と、箱に添えられたメッセージだった。
『こんなん書かれちゃってたら貰えないじゃないっ!!』
リナは半泣きで悔しがったものである。
「お母さんが亡くなる時に、おじいさんであるレゾさんに託したんですね。
 『わたしの小さなあなた』、ゼルガディスさんに渡してくださいって」
「だったらこんなとこに隠してないでさっさと渡せばいいものを、何考えてたんだあのじじい!」
「じじいって…そりゃまぁ…確かにそうですけど…」
アメリアには青年としか見えないあの姿を『じじい』と呼ぶには違和感ありすぎだった。

…でも

アメリアは思う。

…でも、ゼルガディスさん、レゾさんを『じじい』って呼ぶ時、なんだか嬉しそうに見える
リナさんがガウリイさんを「こんの『バカクラゲ』!」って呼ぶときみたいに
沢山の溜め息にほんの少しの優しさを滲ませて、「あの『じじい』!」って…


昔、己の目的のため、自分を合成獣へと変えたレゾをゼルガディスは憎悪していた。
憎悪し、肉親であることをも嫌悪して『レゾ』と、まるで他人のごとく呼び捨てていた。
しかし、リナたちと出会い共にレゾを倒すに到って、
始めて彼が赤眼の魔王シャブラニグドゥに魂を蝕まれていたことを知る。
魔王を倒す瞬間、確かに彼は正気を取り戻していた。
必死に彼に呼びかけた、ゼルガディスの声が届いていた。
そして、
世界を、自分を、目の前の曾孫を、全てを魔王の手から守るため、
リナの振り下ろす闇の刃を自ら受け入れた彼は、赤い闇と共に、滅びていったのである。
自ら意識することはないが、あの日から、
ゼルガディスのレゾに対する感情は微妙に変化していったように思える。
もちろん、全くの善人であった、などと思ったりはしないが、
今までの、
『人を思う心なぞ持ち合わせのない、エゴの塊。血の繋がりすら忌まわしい男』
から、
「あんたってほんっっとに!可愛くないわよねっ」 とリナが膨れ、
「もすこし愛想よくってもいいんじゃないか?」 とガウリイが笑い、
「頑固で自分勝手でちょっと思いこみが激しいけど、テレ屋で優しい人です」 とアメリアの言う、
自分と同じ血を持つ、
とりたてて悪という訳でなく、かといって善ともいえない、
普通の、ただの人間だったのだ、というものに。


「大方、ただ渡したんじゃ面白くないからっつー理由だろうがな。あの隠し方からして間違い無い」
「…じゃ、あの仕掛けって、ぜーんぶゼルガディスさんのために用意されてたんですね」

……………。

「やっぱり変な人ですね」


……訂正。ただの変人だったのだ、というものに。


「も・いい(涙)。どれだけ嫌がっても、あれが俺のじーさんなのは変えられん」


そう思い始めた頃からだろうか、
彼の呼び方に『レゾ』というものに混じって『じーさん』というものが混じり始めたのは。
嫌悪や憎悪でなく、そこはかとない、肉親の情を混じらせて、
「じーさん」
そう呼び始めたのは。


「で、その箱には何が入ってたんですか?」
いじけるゼルガディスはさて置き、アメリアはその手にある箱の中身に興味深々らしい。
手紙?宝飾品?それとも赤ちゃんだったゼルガディスさんのものとか…(どきどき)
「…これだ」
好奇心いっぱいに見つめるアメリアの目の前に、ゼルガディスは手を開いてみせた。
「指輪?」
掌の上、載っていたのは、宝石一つ使っていない、細工もそこまでされていない、
地味で簡素な、銀の指輪。
「自分がしていたものだそうだ。手紙と一緒に入ってた」
「手紙?何て書いてあったんですか?」
アメリアにそう問われると、ふいにゼルガディスは目を逸らした。
「…あ!すみません。聞いちゃいけないような内容なんですね…」
「……いや、その、そういうわけじゃ……」
立ち入ったことをしてしまったと、はっとした顔で言うのに、
どうしたのだろう?いやに歯切れの悪い答えが返ってくる。
その顔はびみょーに赤味を帯びているようにも見えるのだが…
「……へ?…そうなんですか……?
 んじゃあ!教えてくれても良いじゃないですかぁ!けちけちけちけちけちけちけちけちけちけち」
「だーもう!けちけちけちけちゆうな!時計じゃあるまいし!」

それはかちかちorこちこち。

「じゃ、教えてください」
何の権利を振りかざしてか、ふんぞり返るアメリアに渋々とゼルガディスは口を割った。
「……………に、……と」
ぼしょぼしょぼしょ…
「聞こえません」
ずい
「っ〜〜〜『あなたが大切に思う女性にお渡しなさい』と!書いてあったのはそれだけだ!」
真っ赤な顔をしたゼルガディスが目を逸らしたまま一声叫ぶ。
「……………………え?」
そして、同じく真っ赤な顔になったアメリアの手を取ると、
母の残した銀の指輪を乗せたのだった。ちょっと素っ気無い手つきで。


「……だから……これはお前のものだ」


さっきとは打って変わった、小さな声でそう言いながら。



******



「リナぁ晩飯もってきたぞー」
アメリアがゼルガディスの部屋へ行ったように、ガウリイも、
やっぱり部屋から出てこないリナのため、食事を持ってやってきた。
「ん……」
部屋の真ん中、先刻のゼルガディスと同じく床に座り込み、持ってきた魔法書に囲まれて、
リナはじっとあの宝珠を見つめていた。
「ん?これ、あの宝珠じゃないか?」
「…ガウリイ」
何気なく話しかけようとするガウリイに、リナがふっと問いかけた。
「レゾってさ、なんでゼルのかーちゃんと暮らしてたのかな?」
「孫だからだろ」
「今までの自分も家族もぜーんぶ捨てて、国をでてっちゃった人がさ、『あなたの孫です』
 なんて言われただけで『じゃ一緒に暮らしましょう』なんて言ったりするもんなのかな?
 あんなに大事にその想い出を……残しておくもんなのかな」
「無いとはいえないだろ……っておまえ何言ってるんだ?その宝珠、何が書いてあったんだ?」
「…………昔一人の旅の法師がいました。生まれつき目の見えなかった彼は、
 己が盲た目を開かせる方法を探す為、国を捨て家族を捨て、あてどない旅をしていたのでした」
リナはガウリイの問いかけには答えず、突然昔話のようなものを語り始めた。
何なんだ?
不審に思いながらもガウリイは黙ってそれに耳を傾けた。
「大した成果を上げることも出来ず続けていた旅、
 その途中、とある国に暫しの居を構えた彼に、一人の女性が世話役として勤めることになりました。
 優しい心と美しい声を持った神に仕える巫女、彼が彼女をかけがえの無いものと思うようになるのに
 さして時間はかかりませんでした。
 が、しかし運命は共に暮らし始めた二人に一つの宣告を与えます。
 彼が妻とした彼女は、誰一人身寄りの無かった彼女は……
 彼が国に残してきた妻との間にもうけていた娘、その娘が国を出て生んだ一人娘、
 つまり、実の孫だったのです」
「ちょっとまてリナ!!それって…」
「彼は、それを知り悩んだ末、黙ってこの国を後にします。が、すでに時遅く、
 彼女の中には新たな命が宿っていました」
「………」
「そんな事など知る由も無く、想いを残しつつ続ける旅の途中、
 彼は彼女の住む国が戦火に巻き込まれた事を知りました。
 今更戻れる筈もない、けれど……。葛藤の末、急ぎ戻る彼。
 しかしそこにあったのは、一面の焼け野原と、重傷で余命幾ばくも無い身体となった彼女。
 それと、始めて出会う、幼い息子でした。
 彼女が残した、彼女に良く似た愛しい子供、彼の名は……」
「ストップ、解った。それ以上は言うな」
「……ねえガウリイ、あたしどうすればいいんだろ?」
宝珠に残された長い昔話を語り終え、リナはぽつりと言った。
出会った二人に罪があったわけではない。
まして生まれた子供に罪なんて、あるわけが無い。
けれども、人は言うのだろう


『お前は穢れた存在』だと、『忌まわしい禁忌の証』だと。


「どうするかなんて、もう決めてるんだろう?」
苦笑を浮かべて言うガウリイにぺろりと舌を出し、明るく笑ってリナは答えた。
「やっぱ、わかっちゃうかな?」
「当たり前だ。お前の考えてることくらいわかるさ」
「言わない、絶対。こんなこと、ゼルには必要の無いことだもん」
「だな」
「レゾはじーちゃん。それで十分だと思う」


多分レゾも、そう思って記憶の定かでないゼルガディスに自分は曽祖父だとだけ言ったのだろう。
がしかし、少しだけ、ほんの少しだけ迷いは残り、
それが彼にあの宝珠を残させた。
見つけるか見つけないか、もし他人が見つけたのなら、教えるか教えないか、
それは賭けみたいなものだった。
そして、見つけたのはリナ、彼女は真実を明かさないことを選んだ。


「このことはあたしが抱えてお墓までもってくわ」
「なら、半分はオレが持ってこう。どうせ入る墓は同じなんだからな」
当たり前のような顔をして、顔から火の出るような台詞を吐くガウリイに、
文字通り顔から火を吹いたリナはぼそっと呟いた。


「この、バカクラゲ」



******



その夜、夢を見た。
遠い遠い過去の夢。
昔よく見て魘された「レゾ」に合成獣にされた時の夢ではなく
もう記憶から消えていた筈の、まだ俺がガキだった頃の
まだ世界を、「じーさん」を信じていた頃の、夢を。


「ほら見えるでしょう?」
小高い丘の上、眼下に広がる荒地を指差してレゾが言う。
「あそこがあなたの生まれた国、戦乱で焼けてしまって跡形も無い筈ですけれど」
「父さんは?」
「………あなたの生まれる前家を出て、それっきりですね」
「……母さんは?」
「国と一緒に逝ってしまいました。綺麗で優しい女性でしたよ。
 あなたがもう少し大きくなったら、お墓参りにおいきなさい。
 とっても楽しい仕掛けをしておきましたからね」
「仕掛け?」
問いかけるような目で見上げる俺に意味ありげな笑顔で楽しそうに言うレゾ。
そうだ。このころからこいつは油断のならない奴で(怒)
純真無垢な(笑)子供だった俺はことあるごとに遊ばれていたんだ。
「人も国も何もかも無くなって、今はあなただけになってしまいましたね私の家族と言えるのは。
 捨てて出ていってしまったのは私なのだから、文句は言えませんが」
そう言った奴の顔はとても悲しげで今にも泣きそうに見えて
不安になった俺は、子供心に慰めようと必死で言葉を捜したんだ。
可愛いもんだ我ながら。
「俺が、いる。すぐ大きくなって強くなって、じーさんを手伝えるようになる。だから」
「小さなあなたがそんな気を使わなくてもいいんです。
 色々学んでゆっくり大きくなって、そして幸せになってくれたら、
 あの子とそっくりだろうその顔で、いつも笑ってくれていたら、それで私は満足なんです。
 ああ……でも、あなたのその性格じゃ、にっこり笑うってのは無理かもしれませんけどね。
 母さんと違って、ほんとにムッツリ屋さんなんだから」
そう言ってレゾはおれの口の両端を持つと、うにーっと引っ張った。
見えない目で笑いながら。


優しく、笑いながら


『レゾさんは、ほんとは家族も国も捨てたくなかったんだと思います。
 だから、運命が出会わせてくれた、お母さんとゼルガディスさんを
 とっても大事に思ってたんだんですよ、きっと。私はそう思います。』


あの後、食事をする俺にアメリアが言った言葉を思い出す


「ひゃにふる!はにゃせひひい!」
「くすくすくす」
夢の中、笑うレゾと、ぐにぐにと顔を伸ばされて、ぶすくれるガキの頃の俺。


あいつの言葉は、嘘じゃなかったんだな


忘れてしまっていた、遠い記憶。
甦ったその風景をぼんやりと眺めながら、俺は、笑ってたのかもしれない。
あの日レゾが、いや、じーさんが、望んでいたように。




*****




「はぁぁぁ、ほーんとに骨折り損のくたびれ儲けだったわぁ」
研究所跡から帰ってから本の整理に二日、骨休みに一日、計三日をあの町で過ごした。
もうこの辺りには用は無い。
四人組は次の目的地を目指してまた歩み始めた。
街道を歩きながら、まだぶすぶすと文句を言っているリナに、ゼルガディスは例の小箱を取りして言う。
「だからこれをくれてやると言ってるだろうが」
大事なのは中身。それを出してしまった外側は、彼にとって大した意味はないらしい。
「いらないわよ!っていうか貰える筈ないじゃないのっ!!んったくもう……アメリアっ!
 これあんたのでしょ?!責任持って!もちょっとデリカシーってもん教えてやんなさいよ!
 ………ん?」
「あ、あんたのってそんな(赤面)………へ?…何です?」
形見の箱をどーでもいい様に扱う無粋なゼルガディスを指差し、
その責任をひっ被せようとアメリアに向き直ったリナが、ひょいとあるものに気付いた。
くい
「…なにこれ?紐?」
「うきゃ?!ヤだ、リナさん!引っ張らないでください!」
そのまま首にかかっている紐をするすると引っ張って行くと、小さな布袋が出てきた。
「んんー?大事そうに首から下げちゃったりして。なぁーにが入ってるのかなぁ♪」
「ダメです!見せてあげません!」
真っ赤になって袋を取り戻すアメリアの向こうで、ゼルガディスの顔も微妙に赤くなっている。
これは何かあったな…
そう思ったリナは、心ひそかに今夜のアメリアの尋問を計画した。
「結構山の上まで来たなぁ」
騒ぐ二人を尻目に、平和そのものといった風情のガウリイは、街道の通る崖から遠く下界を見下ろす。
「そーねーいい景色」
並んで景色を眺めながらリナは懐から一つの宝珠を取り出した。
「何だその宝珠は?」
怪訝な顔でそれを見るゼルガディスにリナは答える。
「んー?ゴミよゴミ、入らないもの。こっから捨てちゃおうかと思って」
「はぁ?」
「リナ、そのまんま捨てると危ないからちゃんと砕くとかしろよ」
「わぁってるわよ!『黒魔破動』!」
両手に挟まれた宝珠が呪文とともに粉々に砕ける。

さあっ

「…わぁ綺麗ですね」
砂粒のように細かい破片となった宝珠は、風に乗り舞い散った。
柔らかな陽射しを受け、輝きながら。
「…そうだな」



きらきらと、輝きながら。




end



===========================================


ひー。お・おわったぁぁぁぁ。
こ、これで終わりです。
こぉんなに長くなるとは思わなかったです。書き始めて何度「こりゃダメだ」と思ったことか…はぁ。
おまけに、書きあがって後、読み返してみたらば、恥ずかしいこと恥ずかしいこと(笑)
構成は拙いし(涙)、ゼルもレゾさんもみょーにウエットで、なんかその…………
………昼メロみたいだなぁって……(赤面)

「ダンジョンとか潜る話がいいなぁ、どんなダンジョンにしようか?あ、レゾさんとか、も一個くらい研究所
 持ってそうだな、んじゃそこに行くとしてー……、」
なんてところから考え始めたのが、
「レゾさんは『軽く100は生きて』いて、ゼルは『孫か曾孫』。二人の関係についてはこれだけ、だっけ?
 でも、ゼルがいるのだからレゾさん奥さんや子供がいた筈だよなー、それなのに傍に置いてるのは
 『孫or曾孫』のゼル一人だけでー、さて他のご家族って…いるのかなー?生きてるんだったら
 聖人の血縁なんだし、名家とか言われてそうだけど…」
とかなんとか、変な方向にずれてきて、(汗)
結果、こんなウソ話が出来てしまったと!(大笑)

「レゾさんは独身で天涯孤独の身。行きずりの女に子供が出来てそのまた子供がゼルガディス。
 結構出来の良かった彼を、言葉巧みにだまくらかした上で家出させ、自分の手下に仕立て上げた」
この方が真実味があるとは思うんですけど……思うんですけど、うーん(悩)…って。
それに、それでお話ってったら、すんごく難しそうですもん。書けませんです。この頭じゃ(涙)。
ほんとは、レゾさんってもっとドライでもっと捻くれた掴み所のない性格だろーなというのが本音です。

では、ここまで長々と読んで頂いて(汗)ありがとうございました。



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2403Re:『記憶の底に眠るもの』ももへい E-mail 10/31-21:16
記事番号2400へのコメント

こんにちは。

全部読みました。
いいお話でした。本当に、泣けてくるいいお話でした。

とても短いですが、以上です。それでは。

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2416ありがとうございましたおーはし 11/3-10:23
記事番号2403へのコメント

わぁお久しぶりです。
また読んで頂いてありがとうございます。
感想苦手って言われる方が、それでも書いてくださってると
そんだけ気に入って頂けたのかな?と、嬉しさもひとしおです。
ご感想ありがとうございました。

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2407とても鈴鳴 彩菜 E-mail URL11/1-01:54
記事番号2400へのコメント

・・・何とも言えないせつなげで、でも優しげで・・・、
そんなお話でした。ゼル、幸せになれよっ。親の分もね。

あ、そだ。
初版はやはりコピーになりましたが、
血と汗と涙の末、本できました。
例の住所にお送りしますね♪♪

では、また・・・。

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2417お疲れ様です(笑)おーはし 11/3-10:24
記事番号2407へのコメント

ほんとにお疲れ様でした。
お疲れなのに、投稿時間を見ると11日夜1時……だいじょぶでしたか?(汗)
こちらも、月末と月初めずーっと帰り遅くて、お休みの今日、
やっとでお返事書いてるような状態だったんですけど(笑)。

ご本送って頂いてありがとうございます。(喜)
まだ着いてないですけど、着いたらお知らせ書きにいきますです。
えへ。
では、ありがとうございました。


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2410眠れる真実わかば E-mail 11/1-22:11
記事番号2400へのコメント

おーはし様
一気に読み終えてしまいました。
いつもながら、すばらしいお話しですね。
真実は、一つしかないけれど、全てを知らなくていい。
見えるものを真実とすることは、けっしてごまかしじゃない。
そんな風に感じました。
うーん、なんだか変な感想で申し訳ありません。
すばらしいお話しを読ませて頂きありがとうございました。

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2418嬉しいです(喜)おーはし 11/3-10:26
記事番号2410へのコメント

毎度ありがとうございます。(ぺこり)
いっぱい誉めて頂いて、ありがとうございました。
書いた本人はもうてれてれです。(赤面)
毎回悩みはするんですけど、今回特に終わりが出てこなくて「どーしよー?(涙)」
と思いました。
設定が設定だけに(作ったのは自分(笑))一時は暗い方に話が行きそうになっちゃうし。
んでも、救いの無い悲しいものにだけはするまいの一念で(笑)
多少無茶でも、なんとかああいう形でまとめました。
気に入って頂けてほんとに嬉しいです。

ではご感想ありがとうございました。

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2439Re:『記憶の底に眠るもの』3うさびん 11/6-23:52
記事番号2400へのコメント

こんにちはー!久しぶりに(といっても一週間ぐらいですけど)ここにきました。
おーこんなところにゼルのお話が。

ぜるやんの出生の秘密が・・・暗い秘密が・・・。
でも、リナの判断のおかげでゼルがどん底に落ちなくてよかったです。
レゾはゼルのじーさんだけあっておちゃめだし。おもしろかったです。

それでは、この辺で・・・。次のも期待しております。

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2444ありがとうございます。おーはし 11/7-14:34
記事番号2439へのコメント

はい、お久しぶりです。(にこぱ)
お話出してはや一週間、もう書いてくださる方もいないだろな、と思ってたとこに
ひょこっと増えてたので「うあぁい♪」と大喜びしちゃいました(てれてれ)
じわじわっと下がってるのを見付けて頂いて、
ほんとにありがとうございます。(喜!)
それに…、
私の妄想で激変(!)してしまったレゾさんをおちゃめと言ってくださいますか!
えへ。嬉しいなー。
ちなみにルックス的には義仲さん版のレゾさんを思い描いておりました。
好みなんです、あの顔が。

で、次は…ですねぇ、前に書いた結婚話、あれの続き書きたいなぁとか…

!いや!忘れてください!
………書けなかった時がこわいから……(小心者)

と、とりあえず予定は未定ということで、(汗)
また何か書き上げられたら、出させて頂きますので、
どうぞ、宜しくお願い致しますです。(ぺこ)

では。



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2445爆笑!(ちょっとだけお知らせを)おーはし 11/7-14:50
記事番号2398へのコメント

この前に書いたお話、『あなたの胸で眠りたい』に
一つおまけを追加したら、その瞬間それは過去の記事へと消えてしまいました。
いやびっくり!(爆笑)
内容はなんてことのない、ほんとにおまけな話なんですけど(笑)
見たいなという方、居られましたら『過去の記事』行ってみてください。
“NEW”が付いて沈んでます。(笑)

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2447Re:爆笑!(ちょっとだけお知らせを)魚の口 11/7-23:19
記事番号2445へのコメント

初めまして、魚の口と申します。
おーはしさんのお話は過去に遡ってまで、読ませていただいていましたが、
感想を書くのは初の試みです。ふつつか者ですがどうぞ宜しくです(ぺこり)。

こちらのツリーでこのお知らせを発見して、
何事か!?と飛んでみましたところ、劇後談(?)が!?
作中のゼルやんに、後ろ寒いモノを感じてしまっていたため、
この「おまけ」を読んでいくウチに、何やらほっとした
感覚になってしまいました。
わんこも無事で何より。仲良し四人もいつものまま。
うん、やっぱり「スレイ」はこうでなくちゃ、などと
妙に感心してしまった次第です。

当のこちらのツリーのお話も、また良い物を読ませていただいた
気持ちでいっぱいです。
小説内でリナ曰く、「いつの間にお茶目になったゼルガディス」
と、評されているのですから、その血縁のレゾさんだって本来
お茶目だったのでは?と、感じてしまうくらい。
作中のダンジョンの描写には、笑わせていただきました。
本当に面白かったです。

さて、そうすると、どうしても次のおーはしさんの作品が気になるものでして、
例のお話の続きが気になってしまいます。
お忙しいという事は重々承知ですが、面白いモノの続きが読みたいのは
人の、いえいえ、ゼルアメ者のサガ・・・(笑)
気持ちを長く持ってお待ちしておりますので、どうぞ宜しくお願いいたします。

それでは、つたない感想になってしまいましたが、このへんで
失礼いたしたいと思います。
でわでわ。

魚の口

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2453はじめましてです。おーはし 11/9-22:10
記事番号2447へのコメント

わぁい♪また初めてさんです。
いえいえこちらこそよろしくお願い致します。(返しぺこり)
ちまちまこちらに伺って貯蓄も結構貯まってしまったのに
著者登録をしてない私。(汗)点々と過去のお話辿るの…面倒でしたでしょう?
ほんとにありがたいことでございます。(すりすり)

おまけ話喜んで頂けて嬉しいです。
おまけの元のお話『あなたの胸で〜』、
自分で書いたお話ではありますが、作中外道にされたゼルはもぉんのすごっく!(笑)
憤懣あったんじゃないかなぁー…なんて
読んで下さった方々から頂いた感想読んだ後、
つらつらと、ほんとにお遊びで、書いちゃったものなのです。
で、書いてみたのはいいけれど、
「こんな手前ミソなもの載っけちゃっても良いかなぁ…」
とか
「折角気に入って頂いたのに、自分で話おちょくっちゃあナニかなぁ…」
とか
性懲りも無くぐずぐずと迷っちゃって…(=小心者)
そうこうしてる内にもツリーはずんずん下へと下がって行き、
「やっぱ、載せよ」
と決心した時にはすでに最下層でした。(涙)
後はお知らせに書いた通りで……いやもう参っちゃう♪(←何言ってんだか)

お知らせは書いたものの感想まで頂けるとは思いませんでした。
嬉しいな♪えへ。

そんで、こちらの方『記憶の〜』にも感想頂いて、ありがとうございました。
変人レゾさんを容認頂けて嬉しいです。(笑)
お話読んで、笑って、喜んで頂けて何よりでした。(喜)
でも…一回どなたかに聞いて見たかったんですけど、
『蝋燭の炎を揺らさずに日本の心を歌う』人、知ってる方…いらしゃいます?
後、姫と岩男さんがデュエットしてた歌の題名、とか…
……やっぱ………いないだろうなぁ……。


で、最後に…えーと
…………………次(汗)……………次のお話(汗)……
……………………例のお話って、
やっぱ…………アレ…ですよね。(大汗)
ついポロっとお返事に書いちゃった……『続・新婚さんいらっしゃい』(爆笑)
いやその…ちょっとだけ書いてはみてるんですけど…
出来るかなぁ……とか、別の話のが先になるかも……とか、(ごにょごにょ)
………あう。(汗)

毎度毎度のことですが、
情けなくも頼りないお返事で……すみません。(泣)
と、とにかく努力致しますので!
「でるかもな…」ってな感じで……よろしくお願いします。(涙)

でわ。


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2450「グOコ」ですね!?わかば E-mail 11/9-00:27
記事番号2445へのコメント

おーはし様
 お久しぶりです。
おいしいっ、おいしすぎます!このおまけ!
これこそ、一粒で二度おいしい「グOコ」状態ですね。
怖かったですけど、ほっとしてしまいました。
むー、過去に沈んでしまうなんてもったいない。
では、次のお作も期待しております。

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2458一粒三百メートルです。(!)おーはし 11/10-22:05
記事番号2450へのコメント

って何書いてるんでしょ、私。(笑)

魚の口さんへのお礼を、やっとこ書き上げ出しに来たら
いきなりこっちに感想増えててびっくりしました。
確かに直接つなげるのは、もう無理ですもんね。(笑)
一番下の更に下まで、追っかけて頂いて有難うございます。
美味しく食べて頂いてうれしいです。(ぱくぱく)
やはり皆さん、
らぶこめ(いや、らぶギャグかな?)のが好きですか?(笑)

それでは。

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2451Re:メッチャぐぅ★鈴鳴 彩菜 E-mail URL11/9-01:27
記事番号2445へのコメント

楽屋ネタ!
そしてラブ!!!
おーはしさん、いいです。まぢ。

ああ、し・あ・わ・せ・・・♪

次も楽しみ。
あ、例の本、再版してて時間食ってます。
もすこしまっててください〜<(_ _)>

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2459よございましたか?(笑)おーはし 11/10-22:07
記事番号2451へのコメント

楽屋ネタ好きなんです。結構。(てれてれ)
まじめーな話書いたりすると、ついツッコミ妄想が…(笑)
ほんとーに『おまけ』だったんですけど、以外に喜んで頂けたみたいで、
やっぱりびっくりです。

っと、昨日掲示板書きにいきました。
そっちに書いちゃいましたけど、安心しました。ほんとに。
住所間違いとかじゃなくって良かった。ほ。
着くまでゆっくり待ってます。(にぱ)

では。