◆−スレイヤーズ学園物語〜その4ー4−M(11/29-23:33)No.2520
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2520スレイヤーズ学園物語〜その4ー4E-mail URL11/29-23:33
記事番号2518へのコメント

May ill(その4)

     7

 恥ずかしいなあ、と。あたしは思った。
「良かった、本当に大した事がなくて」
 はあ……まあ、そうですけど。
 足を動かしてみるが、痛みは全くない。
 流石に王宮お抱えの医師にして、シルフィールのおじさんだけはある。グレイさん。
 昨日の時点で再会はしていたから、別にそこだけは驚かれずに済んだわけなんだけど……。
「本当に、ガウリイ殿が血相を変えていらした時には。またリナさんの身に何かあったのかと驚きましたが。この程度でしたら、ご心配はありませんよ」
「お世話様……でした」
 あたしが足をひねって。物覚えの悪いガウリイが、人の意見を聞かずにお医者さんを捜し初めて。それで覚えている所と言えば、このセイルーン最大の名所。セイルーンの王宮しかなかった。
 あたしは以前、ここの医務室で治療を受けた事があったわけだが。それ以外をまったく覚えて折らず、何を「医者に……」なんだか。
「しかし、リナさんほどの魔力をお持ちでしたら。これくらいの怪我は直せるのではありませんか?」
 放って置いたら、確実にぷくぷくに膨らみ。一ヶ月は生活に支障が出るほどの怪我だったが。魔術を使えば、腕の悪い者でも三日くらいで完治出来る程度のものだし。もちろん、あたしが自分で治療すれば。ものの小一時間で直る程度のものだ。
「いやあ……焦ってしまって」
 ガウリイは、さっきからあたしの側でじーっと治療する様子を見ている。
「痛みと腫れはすぐによくなりますが、神経そのものは多少引きつるかも知れません。しばらくは、あまりかかとの高い靴を履かない方がいいでしょう」
 人の良い笑みを浮かべるグレイさんだが、それよりもあたしの格好を見て驚いた節があったのが、気になり。
 ただ、足の治療をしてくれたんだから今すぐ問いつめる様な真似は出来ないけれど。
「ありがとうございました」
 お礼を聞いていたのかは判らないけど、グレイさんは忙しそうに部屋から出ていってしまった。まあ、王宮勤めの医師なんて暇ではないんだろうけど。
 心配してくれたんだろうけど、あたしの実力を忘れるにもほどがあるっ!
 まあ……しばらく「学校」にいたせいで、いつものあたしらしくなかったのは本当だし。否定出来ない事実だけど。
「リナ、足」
「それがどうかしたの?」
「靴。履かせてやるよ」
「いいわよ、一人で履けるから」
 確かに、足はまだ引きつるけれど。だからって動けないわけではない。
「いいから」
 でも、いつもと違った強引さで。ガウリイがあたしの足を取る。
 靴は、セイルーンに来る時に履いていた。ヒールの高さが5cmのもの。
 服屋さんが届けてくれたのだ。
「大丈夫だって……言ってるのに」
 なんでだろう。
 胸がどきどきする。
 ただ、ガウリイがあたしの足に靴を履かせているだけなのに。
「ほら出来た」
 なんでもない事の様に言って、ガウリイがほほえむ。
 まあ、実際になんでもない事だけど。
 うわぁ、やだな。
「歩けるか?」
「本当に大丈夫だってばっ! グレイさんの腕、信用しないの?」
「そう言うわけじゃないけど……」
 こういう、妙に変な所。ガウリイって子供っぽいわよね。
 ぼけているとか言う問題じゃなくて。
「リナさんっ!!」

 バーンっ!

 扉が砕けるんじゃないかと思う様な大音響で、アメリアが飛び込んできた。
 まあ……いいけど。
 どうせアメリアの家だし。怒られるのもアメリアだし。
「お店の人に、リナさんが怪我したって聞いて。それで、ガウリイさんが連れていっちゃったって聞いて……」
「ごめんごめん、大した事なかったのよ」
 とんでもなく焦ったのだろう。アメリアの顔には、うっすらと汗がにじんでいる。
 それはともかくとしてえ。
 ゼル、服が今朝と違うんじゃないの?
「ああ……。
 仮縫いを済ませた所で、話を聞いたアメリアが飛び出したからな。状況的に、追わないとまずいだろう」
 服の形そのものは、これまでの制服と変わっていない。
 神官が着るような、シンプルな白い布地。ただ、袖が短くなっていると言うくらい。
 もちろん、ゼルはその上にコートの様なものを羽織っているけれど。
「なんで教えてくれなかったんですかっ! ガウリイさんっ!!」
「いや、すっかり忘れてて……そうだよな。アメリアが側にいたんだから、アメリアに治療してもらえばよかったんだよな」
 気弱にアメリアの対応をするガウリイ。
 なんで、あたし相手とそこまで違うわけ?
「もっとあたしの事、信用してくれてもいいんじゃないですかっ!?」
「いや、そういうつもりは……」
 アメリアの追求は、まだ続いている。
「ねえ、ゼルガディス」
 ガウリイがアメリアに攻撃されている間に、あたしはあたしでこっちを攻撃する事にした。
 どうせ、あと少しは待たないと。足は完全に引きつりが取れないんだし。
「そろそろ、今回の本当の目的を教えてくれてもいいんじゃないの?」
「ぎく」
 微笑ましくじゃれあっている様に見える、アメリアとガウリイを見物しながら。あたしは、心の奥底から穏やかな声を出してみる。
 当然と言えば当然の事ながら、その意味を知っているゼルガディスは動揺する。
「な・ん・の・こ・と・だ」
 一言一句まで区切らなくてもいいと思うが、それは。あたしの言葉を肯定するものだから気にしない。
「あたし知ってるのよ?
 ミルガズィアさんが作った『年間行事予定表』は、異界黙示録を参考と言うか。それを写しただけだっての。だから、当のミルガズィアさんやゼロスにだって判っていない事が沢山あるんでしょ?
 だから、あたしで実験した」
 今月の予定表の所に、「5月病」と言うのがあった。
 別の生活を初めて、慣れた頃になると精神的に負荷がかかって参ってしまうと言うものだ。別に、だからと言うわけではないが5月には数日の休みがもうけられる。ただ、「学校」にも当てはまるか確証はない。
 それで、あたしを非献体にして観察していたと。そう言う事だろう。
 そう考えてみれば、どうしてゼルやアメリアがガウリイの教官室にあまり出入りをしなかったのかとか。あたしがディーウから逃げようとしている時に限って二人が見つからないのかとか。色々と、解明出来る要素はあるのだ。
「いや、それは俺達と関係は……あ」
 ふふん♪
 語るに落ちたわね(はあと)
「ひっかけか?」
「半分はね」
 視界の外で、ゼルが悔しがっている様子が見えた。
 そろそろアメリアも気が済んだのか、きょとんとした顔であたし達のやりとりを見ているが。当然、ガウリイには何のことだかは判っていない。
「どうか……したんですか? リナさん」
「バレたんだ」

 ぎ…………ぎぎぎいぃぃぃ。

 軋んだ音を立てて、あたしに向けられていたアメリアの首がゼルに向けられた。
 ゼルは、無言で首を縦に振る。
 無意味に笑顔のあたし。
 きょとんとした顔のガウリイ。
「え……………………と」
「謝るなら今のうちよ、アメリア(はあと)」
 と言っても、無論許すつもりはない。
 先月からずっと、この二人はあたしを影から観察していたと。そう言う事になるのだから。むしろ、もっと前から見ていたと思って間違いはないだろう。
「あ……あの、リナさん。落ち着いて」
「あらあ。何の事かしら♪ あたしは、じゅーぶん落ち着いているわよ」
 むしろ楽しそうな口調で、あたしはゼルとアメリアを交互に見渡す。
「どうかしたのか? リナ。目が笑ってないぞ」
 まさかガウリイまで関係しているとは思わないが、念のために説明してやる事にする。それだけで、ゼルとアメリアにはあたしの怒りがどれだけのものなのか。判りすぎるくらい判ると言うものだろう。
「なんだ、そんな事か」
「そんな事かって、何よ。あたしは、どっかのゼロスの『朝顔の観察日記』じゃないのよ!
 こそこそと見られるなんて、そんな事されて誰が喜ぶってのよ!」
「だって、今更だし……」
 あたしとゼル。そしてアメリアの視線が、ガウリイに集中した。
 なに、それ?
「知らなかったのか? 毎日毎日、見られてたんだぞ? リナ」
 は?
「まあ、ゼルもアメリアもだけど。生徒とか、竜族とか魔族とかが。
 最初は狙ってるのかとか、監視してるのかな? とか思ったけど、どうやら見てるだけみたいだし。他に何かするって感じもなかったから放って置いてあるんだけど……」
 生徒に、竜族に。魔族?
 なんで?
「さあ? でも、人気あるからなー、お前達」
 人気?
 ゼルとアメリアも、お互いの顔を見合わせている。
 どうやら、知らないらしい。
「ゼロスとかフィリアとか、ミルガズィアさんとかヴァルとか。他の奴らが怖くて、声もかけられないって。俺、よく言われるからなあ」
 え?
 えええええええぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!!!?????

    8

 お休み終わって「学校」に戻って。
 あたしは、関係者を集めて事情を聞いた。
 ちなみに、不特定多数の傍観者は除く。
 ミルガズィアさんとゼロスのあたりは、あたしの想像した通りだった。
 なにしろ、幾ら異界黙示録の示したものだとしても。この世界に当てはまるかどうかは別問題なのだ。それに、事情を知っていて。なおかつ優秀で余裕のある生徒なんてものは、このあたし以外にはいない。それに、何かあっても対処出来るだろうと言うのが。なぜか、おまけみたいに付け加えられていた。
「私、ガウリイさんの意見で制服を作っていたんですよ。リナさんをモデルにして」
「なんでガウリイ、アンタがあたしのサイズを知ってるのよっ!?」
 フィリアにだってアメリアにだって、あたしはサイズなんてバラした事ないのに。例え服からだって、バレない様にフリーサイズのもの使っていたと言うのに。
 フィリアがガウリイから教えられたサイズ表と言うのは、それこそ実際に計った様に正確極まりないものだった。
 これは怖いぞ、はっきり言って。
「えー? 見てれば判るぞ。長いつきあいなんだし……」
 なんて。あっさり言われても嬉しくはない。
 もうちょっと、気をつけて人生歩んだほうが。いいかもしんない……。
 ガウリイの部屋で居眠りする事もあるし。
「いやあ、こんなに早くリナさんにバレるとは思っていなかったんですけどね」
 あくまでも軽い調子で言うゼロスに、あたしは思い切り息を吸って。
「あ、怒りました?」
 にこやかに言うゼロスに。晴れ晴れしく。
「人生って、すばらしいっ!!」

 ぴし。

「り……リナさん、それはあまりにも……」
 ふっ、たわいもない。
 その程度で済んだ事に、感謝してもらいたいくらいである。
 ミルガズィアさんとフィリアと、ヴァルが驚いた目で光景を見つめているが。その辺りは完璧に無視する事にする。
「ところで……。
 あたし達の後を追いかけてくる、あの不特定多数の生徒やら魔族やら竜族って。なんとかなんないんですか?」
 竜族と魔族は、物珍しさから。事情を知らない生徒達は……。
 つまり、いわゆる追っかけと言う奴である。
 普段のあたしなら「まあ、人気者だからしょうがないわね」なんて言いつつ、呪文に巻き込んで一掃してやるわけだが。今のあたしは、いわば仮のあたし。
 本当のあたしではない。もちろん、呪文なんて簡単には使えないし。
「数が多すぎるのでな……。済まないが、もうしばらくは我慢してもらう」
 ふ………………ふざけてる。
 あたしは、堅く心に誓った。
 絶対、この「学校」が終わったら。
 皆まとめてドラグ・スレイブでぶちのめす事を。


終わり

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さて、ここまでがストックです。
これまでの間、だらだらと書きつづってきたものです。
今の所、これ以上は無い袖振っても出てこないんですが(借金かよ)
もし、見たい方がいて。メールくれたら書きます。チャットとかオフライン、電話では受け付けませんので。あしからず。
<だって、忘れちゃうんだもん

本当は、もっと沢山書こう! って思った独り言あるけど。
鯖に不可がかかると行けないんで(じゅーぶんかかってるけど)
また、別の機会にします。
一坪さん、相変わらず長くてごめんなさい(平謝り)
そして、読んでくれたあなた。
心を込めて、ありがとう。

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2541Re:スレイヤーズ学園物語〜その4ー4にらいかない 12/14-19:45
記事番号2520へのコメント

みーーーーーー(涙)
その1から読みたいぞ。
その1はいずこじゃーーー!
めそめそめそめそめそめそめそ・・・・・・。