◆− 聖都怒涛?の5日間5 z氏の災難−小野道風(12/26-01:44)No.2586
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2586 聖都怒涛?の5日間5 z氏の災難小野道風 12/26-01:44


 こんにちは。
 女性陣に振り回されるお茶目なゼルガディスもいいけれど、戦ってるゼルガディスも好きなんです。
 よかったら、楽しんでいってください。

 この話はゼルガディスが中心です。
(これまでのおおざっぱなあらすじ)
 アメリア暗殺を狙う犯人を捕まえるため、セイルーンにやってきたリナ、ガウリイ、そしてゼルガディス。アメリアは見合いの最中で、見合い相手の色男は妙にうさんくさい。ゼルガディスはこの男が黒幕とにらむ。情報集めから戻ると、アメリアが自分を待ちくたびれて眠っていた。彼女を背負って王宮大広間に出たところで、ゼルガディスはリナたちに会う。

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「アメリアったら侍従長さんのおしおき覚悟で本日二度目の脱走ですって。おかげで夜中にたたき起こされてこの騒ぎ。誰かさんが意地悪なんかするからよ。ちゃんとお話はできたのかしら?」
 ゼルガディスはいささか憮然とし、
「俺は何もしていない」
 つい昼間の瞬間を思い返した。頬を上気させたアメリアは息を呑むほど愛らしかった。だが彼女の瞳に映っていたのは自分ではない。あの時感じた胸の奥のかすかな疼きが今も消えないでいることに自分でも驚きながら、
「話もなにも」
 そら恐ろしいことに廊下で寝くたれていたのだ。そう言いかけて、彼ははむと口をつぐんだ。背中で動く気配がする。
「・・・ゼ・・・ディスさ・・・」
「起きたか?」
 返事はない。ゼルガディスが肩越しに後ろを見やったその拍子に、アメリアの顔がリナたちのほうに向けられた。
「ちょーっといいかなー?」
 リナがこちらを睨みつけざま、にゅっと顔を寄せ、
「泣いてるわよ、アメリア」
「らしいな。痕がある」
「「痕がある」、じゃないでしょ。あんたまたきついこと言ったんじゃないの」
「だからな----」
「・・・ルガ・・・ディスさんたら・・・ひどいですう・・・」
 アメリアの声が今度ははっきり響いた。きょとんと手を止めたガウリイを挟んで、ゼルガディスとリナも互いに顔を見合わせる。
「ん?どうしたアメリア?」
「なんだと」
「ひどいって?」
「・・・そんな・・・わたし・・・もうおヨメに・・・行けな・・・」
 シクシクシクシク・・・
 ぐー・・・
 リナが顔を赤らめ、体を小刻みに震わせているのがわかった。ゼルガディスは思わず数歩後じさり、
「待て。リナ、お前なんか誤解してるだろう。これは寝言----」
「何を誤解してるですって?冷静沈着なふりしてあんたってば何考えてんのよゼルガディス!どーゆー事かきちんと説明してもらいましょーか!!」
 が、刹那三人は弾かれたように空中へ飛んでいた。
 直前まで立っていた場所が、爆音とともに黒煙をあげる。煙は三人を追って、宙を舞うその軌跡通りに火柱を吹き上げさせていく。
「ええ?!何よ何何何何?!」
「リナ!」
 ガウリイの声にとっさに向きを変えたリナの頭上を、間一髪何かがすさまじい勢いで駆け抜けた。ゼルガディスの方も同様だが、アメリアを背負っているぶん動きが鈍い。こちらに向かってくる黒煙が圧倒的に多いことに彼は気づいている。狙いはやはりアメリアなのだ。
「親爺!」
 一声かけて背中のアメリアをみごと侍従長の腕に放り込むと、ゼルガディスは軽く腰を落とし両腕を顔の前で交差させ、侍従長らをかばうように黒煙へと向き直った。
「ゼル!?何やってんのよっ!!」
 リナが慌ててそちらへ走り出す。その頭上で飛来音が轟いた。小さく悲鳴をあげる彼女の目前で、帯状に群れをなした爆弾がことごとくゼルガディスに命中、炸裂していく。
 アメリアらの避難が間に合わないとふんで半ば反射的にとった行動であったが、ゼルガディスには目算があった。この男の醒めた目は、襲撃の瞬間から発射音の位置が微妙に移動していくことも見抜いている。射撃間隔と飛来時間からすると敵は必ずこの大広間にいる。呪文などで弾き返さず一点つまり自分に攻撃を集中させて煙の蔓延をできるかぎり抑えれば、リナかガウリイが犯人を確認できると判断したのである。もっとも呪文を使わなかったのは、ごく単純に宮殿及びセイルーン市街に被害が広がるのを防ぐためでもあった。結界で弾いた破片の行く末までは、仕事に律儀なゼルガディスといえども責任など持っていられない。
 野生味あふれる探知能力をもつガウリイが、即座に位置を把握した。
「あそこだ!」
「・・・ちょっと、どういうこと?」
 リナは唖然とした。黒煙漂う乳色の視界の奥、ガウリイの指差す方向に、手が・・・
 正確には上腕から先だけが、大広間天井近くの大円柱からひょっこりと生えている。
「なんじゃありゃ」
 示した当人がぽかんと自分の指を見直したが、別に彼の指のせいではない。その気色悪い手には、一抱えほどある大きな筒が握られている。リナたちがそれに目を止めたのに気づいたか、
 どがあん
 わずかな沈黙の後、再び筒は威勢よく閃光を発し始めた。
「火の(フレア)・・・」
「場所を考えろリナ!王宮まで吹っ飛ばす気か!」
「んなこと言ったってねえ!!」
 振り向いてぎょっと目を剥くリナの横で、もうもうと白煙をあげる自分の服を軽くたたくと、ゼルガディスはすらりと剣を抜き放った。
「あれは人間だな。魔族じゃない。しかも一人だ。魔法など使う必要はあるまい」
「ってゼル、あんたケガしてっ・・・」
「構わん。いくぞガウリイ!」
「よっしゃ!まかせろ!!」
 持ち前の常軌を逸した筋力でひとっ飛びにもよりの欄干へと着地しざま、ガウリイの豪快な一撃が火花を散らした。しかし当たらない。腕は予想外の速さで壁に沈み込み、現れ出たときには片手に例の筒、片手に長剣が握られていた。
「やるのか?」
 頭の中身はヨーグルトでも傭兵を生業に選んでいた男である。不敵な笑みを浮かべ剣を構えたその正面で、
 ずがん
 筒が真っ向からガウリイを直撃した。
「どわーっ!!」
 ひるるるるる。
「ガウリイ!!」
 リナが血相を変えて駆け寄る。ガウリイの無事を目に留めながら、ゼルガディスは青眼に剣を構えじわりと歩を進めた。
「遠近両用とはまた陳腐な武器だ。壁に隠れてたんじゃ、せっかくの男前が台無しだな」
 かまをかけてみたが答えはない。二つの武器だけが音もなく照準をこちらに固定する。
 刃を打ち合わせる金属音と筒の発射音とが錯綜した。ゼルガディスは体格的にガウリイほどの攻撃力を発揮できないとはいえ、技術剣速は一流である。巧みに空中を移動しながら瞬く間に十数合斬り合って、ついに上段からの一撃が壁を伝う影を捉えた。
「そこかっ」
 手応えあり。だが相手の力量も並みではない。ゼルガディスに成果を確かめる余裕も与えず即座に剣側の腕を引っ込めるや、残った筒を猛然と撃ち放ちだした。ゼルガディスが思わずアメリアを振り返る。彼女の存在を思い出されてしまったかと背に冷や汗が流れたが、敵にはこちらしか見えていないらしい。動きを止めるためあからさまに眼を狙ってくるのをブロックで弾きつつ、ゼルガディスは風をまとって疾った。アメリアらの反対方向まではたどり着いたが、弾量がむやみに多いうえ視界も拡げられない。そのまま宙へ釘付けされた形になってしまった。
 この時である。
 流れ弾がリナたちを吹き飛ばしたのは。
 ガウリイは衝撃をもろに食らい再び目を回している。その横で、敷石の破片を肩先から散らせつつリナは恐ろしくゆっくりと立ち上がった。ゼルガディスがそれをみとめ喉奥でうめく。過去の経験によればこの次に来るものは・・・
「もーお、あったま来た!!」
「おおお落ち着けリナっ!待っっこんなとこ・・・っ」
「あたしが誰だか知っててケンカ売ってんでしょーね、この変態手首!!いーじゃない!この美少女天才魔導士リナ=インバースがバーンと買ってやろーじゃないの!!」
 それでも竜破斬をかまさなかったのは彼女なりの良心の表れであったろう。
「行くわよっっ火炎球(ファイアーボール)!!」
 浮かび上がった炎の塊は、怒りのエネルギーでも吸収したか通常の数倍に膨らんだ。最悪の事態を免れて胸を撫で下ろし、逃げるタイミングがわずかに遅れたゼルガディスごと大円柱付近を直撃すると、天蓋をぶち抜いてそのまま月の冴え渡る夜空へと飛び去っていく。
「やっりい!命中ね!!」
 火の粉の舞うなか、リナ、にこっとガッツポーズ。その足元へ、黒焦げの物体がそこここから煙の尾を引きつつ墜落してきた。
「え?!ゼル・・・ゼルガディス?」
 ポーズを決めたまま硬直し、リナが笑顔を引きつらせる。ゼルガディスはうつむけにめり込んだ上半身をよろよろと石床からひっぺがしながら、
「お前・・・な・・・!」
「だあってあの手が・・・て、ははは・・・ゼル、目、こわ・・・」

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2617Re: 聖都怒涛?の5日間5 z氏の災難UMI 1/7-15:04
記事番号2586へのコメント

あけましておめでとうございます。UMIです。
今回ゼルてば本気で哀れですね。アメリアの一言で誤解されるはいきなり襲撃食らうはとどめはリナの呪文ですか。
火炎球ですんで良かったね、ゼル(笑)でも、戦ってるゼルガディスはやっぱりドキドキします。こっちが本来の彼なのかもしれませんね。
えーと、それと私も小説(もどき)を書いてみましたのでよろしかったら、覗いてください。短いものですので時間はとりません(笑)
それでは。

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2619あけましておめでとうございます。小野道風 1/9-02:53
記事番号2617へのコメント

 あけましておめでとうございます。
 コメントをいただけるなんてとてもうれしいです。読んで下さってありがとうございました。ゼルガディスが戦っているときの鋭さや素直な男らしさが好きなので、そんなのを自分なりにもっと言いたかったのですけれど、やっぱりむずかしいです。書きながら自分で照れちゃったりもして・・・。やれやれ。
 しばらくこんなペースで続けていく予定にしています。気が向いたら、またぜひ遊びに来てやってくださいね。
 今年がUMIさまにとって良い一年でありますように!