◆−聖都怒涛?の5日間6 コーヒーブレイク−小野道風(1/18-13:19)No.2637
 ┣Re:聖都怒涛?の5日間7 悪夢−小野道風(1/18-13:48)No.2638
 ┃┗Re:聖都怒涛?の5日間7 悪夢−UMI(1/18-14:08)No.2641
 ┃ ┗Re:聖都怒涛?の5日間7 悪夢−小野道風(1/18-23:53)No.2646
 ┣Re:聖都怒涛?の5日間6 コーヒーブレイク−UMI(1/18-14:00)No.2639
 ┃┗ありがとうございました。びっくりです。−小野道風(1/18-14:16)No.2642
 ┗聖都怒涛?の5日間8 アメリア斃れる(?)−小野道風(1/18-14:02)No.2640
  ┗Re:聖都怒涛?の5日間8 アメリア斃れる(?)−UMI(1/18-14:24)No.2643
   ┗ ほんとうにびっくりでした。−小野道風(1/19-00:18)No.2647


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2637聖都怒涛?の5日間6 コーヒーブレイク小野道風 1/18-13:19


 このページを開いて下さったみなさま。
 ちょっと遅すぎなんですけれど、あけましておめでとうございます。
 今年もお互いがんばって過ごせるとよいですね。
 良かったら、楽しんでいって下さい。
======================================================================
 周囲をくまなく探したが、手がかりらしいものは何一つとして見つからなかった。
「まんまと逃げられた、か」
 空が白々と明けてゆく。襲撃から数時間が経過していた。赤く染まった彼方の山際を眺めながら、配られたコーヒーを片手に、ゼルガディスはもはや残骸と成り果てた大広間の壁に背をもたせかけた。とたんに上部が崩れ落ち、慌てて位置をスライドさせる。
「なに悠長なこと言ってんのよ。たかが腕ごときにさんざんぶち込まれた挙句トンズラこかれるなんてバカにされたも同然じゃない!次会ったときはぶちのめすーっ!!」
「でもなかなか強かったぜあいつ。なあゼル」
「俺は宙に足場を拡げられたからな。ガウリイの一撃をかわすとは相当の手だれとみた」
「いいじゃないかリナ、アメリアだって無事だったんだろ。そういやアメリアは?」
「侍従長が寝かしつけた。あの爆撃の最中も眠りこくっていたらしい。世間知らずは平和なものだ」
 のんきにカップを傾けている男二人を尻目に、リナは一人いきまいている。
「平和なのはあんたたちっ。だいたい何?二人とも自慢の剣でこけにされて、悔しいとか思わないわけ??うちの男どもときたらなんでこうのんびり屋なのよっ。あっおかわりちょうだい!」
 通りすがりの侍女に持って来させたコーヒーを、リナは傲然と一息であおった。目が据っているのは眠いせいでもあるのだが、その辺りをわかっているのかいないのか、ガウリイがひとしきり首をひねった後でおもむろに、
「だって普通の手だったぞ」
「柱から生えてたのが普通って?何見てたのよこのクラゲ!」
「いや、だからこう、普通の男の手がにょきっとだな・・・」
 リナがその襟首をつかみ上げる。ぐいぐいと振り回し、
「言ってる事が矛盾してんのよあんたはー!!」
「夫婦漫才はそのくらいにしろ、リナ」
 火炎球が飛んで来た。ゼルガディスは再び体をスライドさせてこれを避けると、澄んだ空気にたゆたうコーヒーの薫りを楽しみつつ、言いそびれていた例のジョルジの一件を話して聞かせた。火炎球の命中した壁が背後でがらがらと崩れていく。
「トラップに詳しい、ねえ。ふーん」
 小さく唸りリナもようやく手を止めた。ジョルジと言えば、彼はゼルガディスの経歴を知っているようだった。目を回したガウリイを放り出すと、そう告げてからおもむろにこめかみへ指をやり、
「引っかかるとまでは言わないけど、なーんか納得いかないのよね」
「別に不思議じゃないだろう。かつての俺が何かと物騒だったのは事実だからな。どこかで耳にしていたとしてもおかしくはない」
「ゼルがそう言うんならそうなんでしょうけど・・・」
 そのくせあからさまに口を尖らせている。
「協会の方はどうだったんだ」
「なーんにも」
 その表情のまま、リナは両手ですっからかんといったオーバーアクションをしてみせた。
「のんびり穏やかにやってるみたいよ。アメリアのことは本当に驚いてた。記録で見る限りじゃおかしな連中の出入りもなし。ただね、南のほうで三人魔導士が行方不明になってるらしいのよ」
「魔族か」
「違うと思う。ゼロスが動いてないもの。あの獣神官が魔族のごたごたに首を突っ込んでないはずないし、自分は突っ込まないにしても他人を利用しないわけないわ。魔族側で何か起きたなら、絶対あたしたちのところへ顔出しに来てる」
 それはアメリアの件にも言えることだった。今回に限って魔族の影はなく、身内の王族が白なのも調べがついている。昨夜の襲撃でも得られるものはなかった。事件の取っ掛かりとなるようなものが皆目見当たらないのだ。リナのいらいらの主因は実のところこれであった。
「ジョルジさんのと一緒でなーんかこう納得いかないのよねー。場所も全然違うし、時期が重なるだけって言われればそれまでの話なんだけどさ」
「でもリナの勘って当たるよな、実際」
 復活したガウリイがコーヒーをすすりながら一人うなずく横で、リナは燃え立つ明けの空を見上げた。確かに勘はいいと自負している方だが、今回はその中身が下手に手出しのできない人間であることも、リナはよく承知していた。なんといってもアメリアの婿候補、すなわちセイルーンの国賓なのだ。しかし調べてみる価値はある。指を折って記憶をたどりながら、
「フィルさんが帰って来るのが四日後、ジョルジさんたちが国に帰るのも確か四日後よね。この間が勝負ってとこかしら。ゼルはどう思う?」
 ゼルガディスは一瞬瞳を鈍く光らせたが、つとまぶたを閉じ、
「吐かないなら吐かせるまでだ。アメリアに手出しはさせん」
 見た目こそ平静だが気配の鋭さはただごとではない。リナは思わず生つばをのみ、笑顔を引きつらせた。
「・・・お、落ち着いてゼル。クールが売りのあんたがなに言ってんのよ。まったくもう、アメリアの事となるとすぐ目の色変えるんだから」
「仕事だからだ」
「でもジョルジさんのこと気に入らないんでしょ」
「ああ、気に入らんな」
 リナも周囲もクールというが、ゼルガディスはそれだけで言いくるめられるタイプの男ではない。こういう不穏なことをあっさり認めるところからしてそうである。さらにリナがぞっとしたことに、
「いずれはっきりさせてやる。あの男に関してはな」
 などと素の口調で言い出したものだから、リナはコーヒーのおかわりをゼルガディスに突きつけて、
「まああれよ、そーゆーのはまた追々ってことで、ね。あたしセイルーンまで敵に回すつもりないし・・・ほら、一杯ぐっと空けちゃいなさいって。まずは調査よ調査。ゼルだって壁抜けがジョルジさんの十八番には見えないでしょ。怪しい奴がほかにいるかもしれないしっ」
 ぽかぽかと岩石質の背中をたたいた。
「安心しろ、早まった真似をするつもりはない」
「わかってるわかってますよ。わかってますけどね」
 ジョルジとゼルガディスを接触させるのは危ない。だがそこをうまくつけば思わぬ効果が出そうだ。女の第六感がリナにはっきりそう告げている。

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2638Re:聖都怒涛?の5日間7 悪夢小野道風 1/18-13:48
記事番号2637へのコメント

 本文中に、考えようによってはたいそうほんとに気色の悪い表現が使われていますが、単にアメリアの夢の中の出来事です。適当に読み飛ばしてください。気になったらごめんなさい。
 良かったら、楽しんでいって下さい。

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アメリアは夢を見た。

 鳥たちのさえずりが聞こえる。
 アメリアは目をこするとゆっくり瞼を開いた。見慣れた自室の寝台の上に、彼女はいた。
 朝だ。窓からの風がぼんやりした頭を心地よく吹きすぎる。見上げた視線の先に、リナの顔があった。
「あれ、おはようございます」
 朝の光景にはおよそ不釣り合いの派手なお洒落着でめかしこんだリナが、にこにこと笑顔を浮かべて立っている。
「どうしたんですか、こんな朝早くにそんな格好で。早いもの勝ちの大食いパーティーでもあるんですか?」
「やあねアメリア、あんたの結婚式に決まってるじゃないの。ほら、そろそろ時間よ」
「けっこんしき?」
 不意にスポットライトが当たった。まぶしさに目を細めるアメリアの足元からヴァージンロードがするすると延びてゆく。傍らになんの前触れもなくフィリオネルが立ち、アメリアもいつのまにか寝間着から純白のウェディングドレス姿になっていた。そう、リナが言っていたではないか。今日は自分の結婚式なのだ。
「行くぞ、娘よ!」
 差し伸べられたフィリオネルの腕をとると、アメリアはその真紅の道をゆっくりと進んでいった。さっきと寸分変わらぬ笑顔を浮かべたままのリナ、上下前後左右と三次元的にちびっ子をぶらさげて葡萄の房のようになったガウリイ・・・子供たちは揃いも揃ってガウリイ顔リナ顔をしていた・・・、フィリア、シルフィールがいるのが見える。なぜかゼロスやヴァルガーヴの姿まであった。だが、彼がいない。
 彼だけが。
 この先に待っているのがその男であることを、アメリアはなんのためらいもなく確信していた。正面から差し込む光の中に人影が浮かぶ。逆光で顔はわからないが、その細いシルエットを彼女は良く知っている。
「ゼルガディスさん!」
 喜びに顔を輝かせ、アメリアは走り出した。その足がほどなく不自然に停止したのは男の姿がはっきりわかったからだ。アメリアの手から、ブーケが乾いた音をたてて床に転がる。そのブーケを拾い上げた目の前の人物は紛れもなくゼルガディスであった。ただしタイトなデザインのウェディングドレスを色っぽく着こなしている。
 アメリアはおずおずと、
「どっ・・・どうしたんですかゼルガディスさん・・・その格好・・・」
「花嫁衣装に決まってるだろう」
「それはわかりますけど・・・て、ええっ?!」
 はたと自分を見直し、アメリアは今度こそ目眩に足元をふらつかせた。なんと知らぬ間に白いタキシード姿になっている。
「まっまっ待って下さいっ。なんで私がタキシードでゼルガディスさんがドレスなんですかっ?!」
「お前の願いだったじゃないかアメリア。ヒーローになりたい、正義を愛するお前のそんな心が、俺を新婦にお前を新郎にさせたんだ。似合ってるぞアメリア。タキシードがな。俺の見立てだ」
「わたし何も知らないのに・・・うううっ、ゼルガディスさんたら・・・ひどいですう・・・」
 囚われの姫を救うヒーローになることは夢見ていたが、自分の結婚式に新郎になることまで望んだ覚えはない。アメリアは泣きそうになった。
「ヒーローは救い出した姫と結婚すると決まってる。願いが叶ってよかったな、アメリア」
「そんな、わたし、わたしもうおヨメに行けないんですか・・・?おムコさんになっちゃったから・・・?せっかくゼルガディスさんとの結婚式なのにー!!」
「些細なことを気にするな。俺のことは以後ルルと呼んでくれ。あなた、できちゃったみたいなの」
「ああああなたぁ?でで、ででできちゃったって何がてすかっ?!」
「見て!この子ったらあなた似よ!」
 ゼルガディスの腕にはいつの間にやら子供が一人抱かれている。顔立ちは確かにアメリアそのものだが、髪は紛れもない針金様だ。
「結構似合いますねこの髪型!・・・そうじゃありませんてばゼルガディスさん!」
「ルルですったら。このアップルパイ自信作なのよ。食べてみて。はい、あーん」
「ほんとだ、とってもおいしいです!・・・いや、だからその、ル、ルルさーん・・・」
「あら、次の子は私似ね!今度はまたあなた似よ。ウフフ、愛って、人生ってなんて素晴しいのかしら!!」
 あまりの展開に腰を抜かしてへたり込むアメリアの周囲で、ゼルガディスアメリアミックスの子供はわさわさと絶え間なく増殖し、さらにその周りでは、絵に描いたような笑顔を貼りつけたリナ、子供を鈴なりにしたガウリイ、そして片手にアップルパイを載せたゼルガディスがひらひら幸せそうに踊り続けている。
 彼らのウフフウフフという妙に甲高い笑い声だけが、アメリアの頭の中でいつまでもこだました・・・。

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2641Re:聖都怒涛?の5日間7 悪夢UMI 1/18-14:08
記事番号2638へのコメント

あれえ。6話のコメントを投稿したらなんと7話が!?
うひゃあああ!!どっぎゃああ!すごい夢・・・・・・
なんだってこんな夢をアメリアあああああ(エコー)!
こ、これほどの悪夢があるでしょうか、いや、ない(反語)
今夜、こんな夢を見ちゃったらどうしましょう(冷や冷や)

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2646Re:聖都怒涛?の5日間7 悪夢小野道風 1/18-23:53
記事番号2641へのコメント

 UMIさま。
 ほとんど同じ時刻に送ったものなのに、ひとつにひとつ丁寧にコメントをいれていただいてしまって、なんだか申し訳ないです。
 そうなんですこの話は。考えてて自分で不気味でした。ええ・・・。 
 この夢にもそれなりの理由はあるので、また気が向いたらお話のなかで触れていくつもりでいます。良かったらまた読んでやってくださいね。
 こんなコワイお話を読んで下さって、本当にありがとうごさいました。そしてごめんなさい(涙)。

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2639Re:聖都怒涛?の5日間6 コーヒーブレイクUMI 1/18-14:00
記事番号2637へのコメント

こんにちは。またまた、お邪魔いたします。UMIです。
馬鹿話が一本あがったのでやって来ましたら、小野さんがいらしてて
びっくりしました。ほんのちょっと前ですね。
では、感想です。

>「・・・お、落ち着いてゼル。クールが売りのあんたがなに言ってんのよ。まったくもう、アメリアの事となるとすぐ目の色変えるんだから」
まったくですねえ。うふふ(不気味だ・・・)
>「仕事だからだ」
本当? がこっ!(突っ込みを入れてゼルにどつかれた音)
>「安心しろ、早まった真似をするつもりはない」
確かに「つもりはない」んでしょうけど・・・その時になったら解りませんよね。
>「わかってるわかってますよ。わかってますけどね」
リナも同じことを考えているんでしょうか?
> ジョルジとゼルガディスを接触させるのは危ない。だがそこをうまくつけば思わぬ効果が出そうだ。女の第六感がリナにはっきりそう告げている。
リナのいつもの悪巧み どげしっ!(リナからアッパーくらった音)いや、もとい常人には思いもつかないすんばらしい綿密な計画が始まるのですね!
う〜〜ん盛り上がって来ましたね。
あの「手」は何者か。ジョルジは何を企んでいるのか!何故アメリアは狙われるのか!
セイルーンにかつて無い危機が迫る!
リナ達はアメリアを、セイルーンを守りきれるのだろうか?
そして、ゼルガディスとアメリアのすれ違う想いは・・・
謎が謎を呼ぶ「聖都怒涛?の5日間」
次回こうご期待!

あああ!!すみませ〜〜ん。一度こうゆうのやってみたくて・・・
でも、調子に乗り過ぎですね。ごめんなさい。
それにしてもゼルの不幸はまだまだ続きそうですねえ。
アメリアとの誤解も解けてませんし。今は襲撃騒ぎでうやむやになってるからいいけど・・・
とうわけで(何が?)次回も楽しみにしていますので頑張ってください。

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2642ありがとうございました。びっくりです。小野道風 1/18-14:16
記事番号2639へのコメント

 こんにちは。
ほけほけとキーを打ち込んでいましたら、UMIさまから感想をいただいていたので、とてもびっくりしてしまいました。ほとんどリアルタイムですね。もしかしたら今この瞬間もUMI様は画面を見てらっしゃるのかな、なんて想像してしまいます。
 読んで下さってありがとうございました。アメリアの夢の話は、7(Reをつけちゃったんですけれど「悪夢」というやつです)と8で一応一段落・・のはずです(笑)。UMIさまの「こう御期待」フレーズ、最高でした!
 UMIさまもお話をアップされたとか。とても楽しみです。そちらにもまた遊びにいかせていただきますね。
 では、また。
 ほんとうにありがとうございました!
 

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2640聖都怒涛?の5日間8 アメリア斃れる(?)小野道風 1/18-14:02
記事番号2637へのコメント

 鳥たちのさえずりが聞こえる。
 アメリアは目をこするとゆっくり瞼を開いた。見慣れた自室の寝台の上に、彼女はいた。
 朝だ。窓からの風がぼんやりした頭を心地よく吹きすぎる。見上げた視線の先に、ゼルガディスの顔があった。
「起きたか」
「っきゃああぁぁぁああ!!」
 アメリアは慌てふためいて頭をシーツの中につっこんだ。
「ああぁぁぁああもうアップルパイはいいですううぅぅう!お願いですからもう歌って踊らないでくださいルルさんー!!」
「ルル?」
 腕を組んで寝台の支柱に背をもたせた姿勢のまま、ゼルガディスは醒めた視線をシーツの塊に投げかけた。その名には覚えがある。某男子禁制国に侵入した折、女装時に自分が使ったものである。が、思い返して懐かしみたい類の記憶ではなかったし、パイだの歌だの踊るだのに心当たりはない。
「なんの夢を見たのか知らんが、朝っぱらからわけのわからんことを言うんじゃない」
「・・・夢・・・?」
 シーツにくるまり、枕で頭から両耳をすっぽり塞いだまま、アメリアはようやくこちらを向いた。
「え・・・ゼ・・・ゼルガディスさん・・・ですか・・・?」
 初動捜査を終え、昼まで体を休めるため自室に戻ろうとしていたゼルガディスが、様子を見にアメリアの寝室へ立ち寄っていたのである。アメリアの叫び声が徹夜作業で疲労した頭に響く。額に手をやってしみじみと肩を落とすその横顔をアメリアは息を詰めて見つめていたが、
「ゼルガディスさんなんですね・・・!」
「他の何に見えるんだ、こんな体が」 
 彼の一言は自嘲であったが、アメリアには生への賛歌そのものに聞こえた。シーツをぱっと手放すや、正面から勢い良くゼルガディスに飛びつくと、男にしては華奢な体を力一杯抱きしめる。
「おっおいっ」
「うわーんっもう会えないかと思いましたー!!人生って素晴しいなんて歌ったりしない、パイをもって踊ったりしない、赤ちゃんを生んだりしない、いつもの無口で無愛想で無関心なかっこいいゼルガディスさんなんですねー!!」
「はっ放せアメリアっ」
「わたしのことアメリアって呼んでるー!やっぱり本物のゼルガディスさんだー!!」
「なんだ、何の話を」
「お願い!お願いですからゼルガディスさん、結婚式の時はわたしを花嫁にしてくださいね!約束ですよ!!」
「?!なっ・・・」
「花嫁はわたしがなるんです!ウェディングドレス、わたしだって着たいですー!!」
 部屋には二人の他に部屋付の侍女が数人ばかり待機している。彼女らの興味津々な視線とささやき声を背中一面に感じつつ、ゼルガディスは思わず軽く咽せながら、
「・・・と、とにかく、無事だったんだな。それならいいんだ」
「ぶじ?」
 はたと顔をあげたアメリアは、ここで初めてゼルガディスの異変に気付いた。

「どうしたんですかゼルガディスさん!!何があったんですかっ?!」
 無地でシンプルなデザインが特徴だったゼルガディスの着衣には獣皮のように一面黒いまだら模様が走っていた。黒いのは焼け焦げた痕である。手にとるとかすかに硝煙の匂いがした。
「本当に覚えてないのか」
 ゼルガディスが手短に説明してやると、アメリアは寝台の上でしばし呆然としていたが、
「はっ。まさか・・・」
 よろよろと窓際に近づいた。身を乗り出して大広間の方を見、その姿勢のままぺたんと尻餅をついて動かなくなる。ゼルガディスが横に立って外を覗くと、なるほど目の前にぱっくりと天蓋の半分を吹き飛ばした穴が大きく口を開けていた。
「父さんに叱られます・・・」
「まあ・・・あれを開けたのは確かにリナだが、中を瓦礫の山にしたのはお前を襲ってきた腕だ。あの一撃でそいつも退散した。止むを得ない状況ではあったんだ。フィルさんもわかってくれるさ」
「そんなあ・・・」
「それよりアメリア、俺の部屋の前にいただろう。何か用があったんじゃないのか」
 アメリアは一瞬不思議そうにゼルガディスを見上げたが、何事か思い当たったらしくすぐに小さくうなずいた。
「大丈夫です。ゼルガディスさんが帰ってきてくれたから」
 意味をはかりかねているらしい。ゼルガディスの変化に乏しい顔を珍しく訝しげな表情がよぎった。アメリアは立ち上がって向き直ると、もじもじと寝間着の裾を弄びながら、
「その・・・もしかしたらゼルガディスさん、もう帰って来ないのかなって心配になっちゃって・・・。リナさんはそんなことない、ただのやきもちだから、とかなんとか言ってくれたんですけど、どうしてもゼルガディスさんの顔が見たくなっちゃったんです。それで・・・」
 ゼルガディスにもようやく様子が把握できた。アメリアはジョルジとの初顔合わせの一件を気にするあまり、自分の責任のように感じてしまっていたらしい。それにしても、
「リナのやつ余計なことを」
「え?」
「何でもない。・・・済まん、お前のせいじゃない。ただちょっと・・・俺も虫の居所が悪くてな」
 あの男が気に入らないのだと素直に言えないのはリナの言い分が引っかかっているからだ。ふいと顔を背けたゼルガディスの態度をどうとったか、アメリアは顔を大きく振って、
「そんな、ゼルガディスさんのせいなんかじゃ全然ありません。わたしもちゃんとお話しできなかったし、ジョルジさんも何だかちょっと変でしたし・・・。でもよかった!ゼルガディスさんの顔を見たら、安心してお腹空いてきちゃいました!そう言えばお夕飯も食べてなかったし!」
「そうなのか?」
「だって、待ってたら急に眠くなっちゃって・・・」
 もともと自分のことを案じるあまり強行した脱走のせいだとはゼルガディスはつゆ気付いていない。リナの話では結構な人数がアメリア捜索に動き回っていたらしいが、あの回廊は突き当たりに書庫があるきりである。うっかり捜索範囲から洩れてしまっていたのだろう。窓枠に腰掛けたり壁にもたれたりしてしょんぼりしているアメリアの様子がありありと想像でき、ゼルガディスもかすかに笑みを浮かべたが、
(・・・壁にもたれて・・・)
 ふと何かが脳裏で閃光を発した。
「待てアメリア。急にと言ったな。確かか?」
「はい、まあ。・・・それがどうかしたんですか?」
「そのままあの爆音にも起きなかったというんだな。・・・おい、どこか体がおかしくはないか?」
「おかしいって?」
「後ろを向け!」
 言うより先に両肩をつかんで回れ右させると、見当をつけてアメリアの豊かな後ろ髪をかきあげる。
「へっ!?ゼ、ゼルガディスさんっっ?!」
「動くな!」
「はっ・・・はいっ」
 うなじを伝うゼルガディスの冷たい指の感触にアメリアが思わず顔を赤らめたが、お構いなしにゼルガディスは首筋の表面をなぞるように指をすべらせ、その先を凝視していく。
 その指がつと止まった。
「・・・あった」
「何がですか?」
 それには答えず、ゼルガディスは鋭く後ろを振り向いた。
「医者を呼べ!解毒剤だ!」

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2643Re:聖都怒涛?の5日間8 アメリア斃れる(?)UMI 1/18-14:24
記事番号2640へのコメント

うわあ、今度は8話が!?
う〜〜ん、こういうことってあるんですねえ。
いやあ、それにしてもあれはほんっとうに夢で良かったです(笑)
ゼルガディスとアメリア・・・
再会してようやく語り合うことができましたねえ(うっとり、ほのぼの)
が、しかし!!
やはり、アメリアには魔の手が迫っていた!
今、二人にそんあささやかな時すらも許されない
二人が真に語り合えるのはいつだろうか・・・

あああ!また、やってしましました。つい・・・
申し訳ないです。
でも、これから本当にどうなるんでしょう。
本気でわくわくしています。では、これで。

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2647 ほんとうにびっくりでした。小野道風 1/19-00:18
記事番号2643へのコメント

UMIさま。
 昨日(1/18)のお昼は、偶然ながらまるで実際にお話しできたみたいな体験をさせていただいてびっくり!でした。あんなこともあるんですね(笑)。2時から用事があったため(なのにあの時間までぎりぎり粘ってパソコンの前に座っていた私・・・)やむなくお返事もできず去ってしまいました。ちょっとの間のリアルタイム感覚でしたけど、とても楽しかったです。
 こちらにも感想をいれていただいてしまって、本当にありがとうございました。
>やはり、アメリアには魔の手が迫っていた!
>今、二人にそんあささやかな時すらも許されない
>二人が真に語り合えるのはいつだろうか・・・ 
 それは私小野にも謎です(笑)。がんばれゼル!・・・愛ゆえなんですけれど。ほんとに・・・。
 この先もしばらくのんびりと続けていく予定でいます。気が向いたら、また遊びに来てやってくださいね。お待ちしています。
 これからそちらへおじゃまするつもりです。楽しみです!
 では、また。