◆−聖都怒涛?の5日間9 標的固定−小野道風(1/28-10:48)No.2675
 ┗聖都怒涛?の5日間10  姫、午後の気がかり− 小野道風(1/28-16:35)No.2676
  ┗ファイトだ四人組!−UMI(2/3-14:53)No.2695
   ┗ アメリアに名前を・・・(笑)− 小野道風(2/9-14:07)No.2715


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2675聖都怒涛?の5日間9 標的固定小野道風 1/28-10:48


 こんにちは。
 妹(彼女はゼロスファン)が、今となっては見つけるのが難しいNEXTのゼロス下敷きを入手してました。いいなあ。
 良かったら、楽しんでいって下さい。

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 セイルーンシティの魔導士協会。
 怪しげな薬品や機械装置が並ぶその一室の片隅に、リナとガウリイ、そしてゼルガディスの三人が額を突き合わせて立っていた。その中央にはゼルガディスが持つ一本の試験管がある。
「つまりあれね」
 リナは真剣そのものの声音で、
「内臓も超合金製だったってこと。でしょ?」
「そうなのか?」
 ガウリイがゼルガディスを見る。ゼルガディスは試験管をどこか気怠げに見つめたまま、
「毒物に耐性をつける方法がないわけじゃない。特異体質ってこともある。が、あいつのあの体だったからこそ眠気程度で済んだのは確かだろうな。かなりの量だ」
「ゼルを待って壁にもたれかかってるアメリアに近づく。壁の中からね。もちろんアメリアは気付かない。そのまま首筋に毒液をプスリ!腕や背中だと針の痕が何かの拍子に見つけられないとも限らないけど、あの子いっつも髪を下ろしてるもの、首筋ならまず心配はない・・・はずだった。ゼルもよくわかったわね」
 試験管を手にとって、リナはチャポチャポと中の分析液を揺らしてみせた。ゼルガディスが徹夜明けの休憩時間を犠牲にして調べあげた結果、アメリアの体から毒物が検出されたのである。きっかけは彼がアメリアの首筋に見つけたかすかな針の痕であった。駆けつけた典医は異常なしと診断したが、アメリアは大事をとって、てんこもりの解毒剤服用と白魔法処置のうえ、目下自室にてきっちり寝かしつけられている。
「敵の誤算はあいつが超合金娘なのを知らなかったってことぐらいだ。まんまと裏をかかれるところだったな」
「ゼルがあの場に居合わせたってこともね」
 リナは相づち代わりに片眉を大きく上下させて、
「今ごろ地団駄踏んで悔しがってるんじゃない?偶然でしょうけど現場はゼルの部屋の前。万が一殺されたとわかったところで、疑われるのはまずゼルだったはずだもの」
 ゼルガディスは否定しなかった。機会や動機に問題こそあれ、穏やかならぬ知識や技術を持った流れの合成獣など存在からしてあやしいのは自分でも重々承知していたし、何より気になることがある。無意識に顎へ手をかけ、半ば独り言のように、
「だがな・・・あの腕の目的はアメリアを殺すことじゃなく別のものだった、とは考えられないか?」
 リナがひょいと手を止めた横で、ガウリイも不思議そうに、
「どういうことだ?」
「いや、もう少し詳しく分析してからにしよう。その方がいい」
 この男にしては曖昧なことを言っている。ゼルガディスは考え深げに視線をさまよわせたまま、リナから試験管を受け取ると傍らの分析器の中に戻した。
「なに、まだ何かやるの?」
「あたりまえだ。毒が入ってるのは確かめたが、それが何かはわかっていない。それを特定する」
「どうして?」
「成分がわかれば大きな手がかりになる。おそらく、な」
「てことは、見当はついてるのね」
 リナが瞳を光らせたが、
「まだ俺が勝手に想像してるだけだ。気にするな」
 ゼルガディスがこういう言い方をしたら何を聞いても無駄である。
「しょーがないわねー」
 リナはぶつくさ愚痴りながら、
「どのくらいかかるわけ、それは?」
「早くて今日いっぱいといったところだな」
「そんなにかかるの?!この時間も人手もないときに!!」
「サンプルを濃縮するところから始めて成分の特定までしようというんだ。当然だろう」
「へええ。大変だなリナ」
「あたしが知るわけないでしょーがっ」
「結果が出たらすぐに報せる。遅くても明朝にはわかるはずだ」
 装置をいじりながらこちらも見ずにあっさりと答えるその後ろ姿を、リナは恨めしげに眺めやった。人手が足りなくなるのはまだいい。さっきまで彼の分析を少しばかり手伝っていたのだが、その緻密さといったら、あんな操作を夜まで続けるなぞ考えただけで怖気が走る。なにせひもじい眠い寒いに加えてめんどくさいのも嫌いと普段から宣言している人間である。しぶしぶうなずくと顎で分析機器を示し、
「わかったわ。こっちの細かい作業は理系のあんたに任せる。差し入れぐらいは持ってきてあげるわよ。ガウリイは・・・ゼル、ここで肉体派の労働力は役に立つかしら?」
「いや、俺一人で十分だ。リナと他を当たってみてくれ」
 ゼルガディスは分析機器の載った台に軽く腰をかけ、王宮の方角へ目をやった。時間や人手のことでリナが渋い顔をするのは彼にもよくわかる。しかし自身の膨大な関連知識と経験から、敵の残したこのわずかな痕跡にはそれだけの時間を費やすだけの価値があるとゼルガディスは感じていた。その一方で、間違いなく何か危険なことがアメリアの身に迫っているときにこんな部屋を出られないでいる自分への苛立ちが、疲労や寝不足とともに彼から普段の落ち着きを奪ってしまっている。だが今は待つしかない。
 戸口に向かいかけたリナが一呼吸置いてくるりと振り返った。ねえゼル、と呼びかけて、
「やっぱりこれだけは教えて。色々考えてみたんだけどさ、気になるのはジョルジさんしかいないと思うの、なんであの人がそんなことをしなくちゃいけないのかは全然わからないけど。ゼルが出そうとしてる答えもそうなのね?」
「状況は概ね奴にたどり着く。俺は確証が欲しい」
「あんたのライバル心とかそういうのは置いといても?」
 ゼルガディスはじろりと肩越しにリナを睨みつけた。
「・・・お前、あいつに何か吹き込んだろう」
 あいつとはこの語感の場合アメリアを指している。リナもすぐに呑み込むやぶんぶんと大げさに首を振って、
「なに人聞きの悪いこと言い出すのよ。まあ、あの子の疑問をわかりやすく解説ぐらいはしてあげたかな。誰かさんの大人げないふるまいを気にしてたみたいだったから」
「・・・」
「そういやまだ聞かせてもらってないわよねー。何をやっちゃったのかしらゼルくん。いたいけな女の子におヨメに行けないなんて叫ばせときながら、だんまり決め込むってのはあんたらしくないんじゃない?あやしいなー。ほれ、正直に白状するっ!」
「・・・っっ」
 鉄面皮ならぬ岩面皮なこの常識派のどこに隠されているのか知らないが、こういう話題をふられるとゼルガディスは面白いように狼狽するところがある。案の定この時もいつになくむきになって、 
「だ、だから俺は何も知らんと言ってるだろう。本人に聞いたらどうだ。とにかく邪魔だっ行けよお前らっ」
「そうしましょっかガウリイ」
 リナは笑いをかみ殺しながらガウリイの背中を押した。
「何が可笑しいっ」
「がんばれよー」
「こっちも何かわかったら連絡する。分析結果っての、期待してるわよ」

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2676聖都怒涛?の5日間10  姫、午後の気がかり 小野道風 1/28-16:35
記事番号2675へのコメント

 ついに10回になってしまいました。まだまだしばらく続きそうです・・・。
 これからもよろしくお願いします。
 良かったら、楽しんでいって下さいね。
 このお話は一応ゼルアメで、ゼルガディスが中心です。この回には出てこないんですけれど・・・なんでなんでしょう。うーん。

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 午後をずいぶん回っても、謁見の間はなお人波で溢れていた。
 大国セイルーンの王宮には、各国・都市からの使者が日々絶え間なく訪れてくる。セイルーンの代表として彼らの話を聞き、もてなして帰すのが、フィリオネルが国を空けている間留守を任されたアメリアの一番の仕事だった。
 玉座へと中央を一直線に走る深紅の絨毯の上には、数人ごとに群れをなした使者団がずらりと並び、その先端ではいかにもお姫さま然とした清楚な衣装のアメリアが、玉座の傍らにたってしかつめらしくうなずきながら彼らの話を聞いている。旅の道中こそお子さま扱いされていたが、彼女も国に帰れば皆に愛される良き指導者の卵なのだ。使者たちがどことなく騒がしいのは大広間の惨状を目にしたからであろう。さざめく気配にまじって、ときおり、
「そんなのぜったいまちがってますっ」
 だの、
「愛!正義!!友情!!!勝利!!!!」
 だの、
「正義は勝ーつ!このアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンが、必ずや悪をうち滅ぼしてみせましょうっ」
 だの、いつもと変わらぬアメリア節が響いている。
「なあんだ、元気そうじゃない。心配して損しちゃった」
 謁見の間の側壁を飾る巨大列柱の狭間に立ち、リナは背伸びしながら遥か前方のアメリアを眺めやった。寝室はもぬけの殻で、侍女たちから普段のように政務についていると聞き、ここまでやってきたのである。
「でも調子悪そうだぜ、やっぱり」
 ガウリイは心配そうに言うが、常識範囲の視力しか持たない目には判別がつかない。リナはそのまま首を巡らせた。
「えー、ジョルジさん、ジョルジさんは・・・と」
 いた。
 玉座の壇下、リナたちから向かって右手の壁沿いに、王宮つきの文官武官とならんで見覚えのある役者顔が立っている。
「あれがジョルジさんか。へえ」
 リナの視線を追ってガウリイが声をあげた。初対面のようなことを言っているが顔はもちろん合わせ済みである。毎度のことなのでリナも横っ腹に肘鉄を入れるだけに止め、
「悪い人には見えないんだけどなあ。いまいちなじめないのよね、確かに」
「なんでだ?お前よりきれいな顔してるからか?」
 公の場で魔法をぶっ放すわけにはいかない。リナは拳を握りしめ、
「・・・意味わかって言ってんでしょうね、ガウリイ。後で覚えときなさいよっ。そうじゃなくてすごく冷たい雰囲気がするの。うまく言えないんだけど・・・」
 ゼルガディスもいわゆる冷たいタイプの人間だが、リナが思うにあの冷たさは、自分に目指す、しかもたどり着けるかどうかもわからない目的があるがゆえの意志の鋭さからきているのであって、彼の人間性とはさほど関係がない。
だがジョルジには、高慢だとか冷徹だとかいう人間臭い感情や印象の冷たさなどとは異質の、心自体の温度の低さのようなものを感じてしまうのである。
「リナさーん!ガウリイさーん!こんにちはー!!」
 会談を一通り終えたアメリアが、ドレスの裾を勢いよく宙に舞わせながら走ってきた。
「見ろ。な」
 ガウリイがしたり顔でうなずく横で、リナもまじまじとアメリアの顔を見つめ、
「ほんと。アメリア、ちょっとあんた大丈夫?」
「なんですか?」
「顔色悪いわよ。寝てたほうがいいんじゃない?」
「いいえ、そういうわけにはいきません!」
 ひねりを入れて宙返りし、珍しく足からみごとに降り立つと、アメリアは羽織っていたショールごとぴたりと天を指差した。にっこりとリナを見上げて、
「ね、リナさん、着地うまくなりましたよねわたし!」
「はいはい。まあね」
「今のわたしはセイルーンを預かる身、毒ごときに負けてなどいられませんっ。父さんの代理として公務を果たし、悪の魔の手からセイルーンと世界を守る、これこそこのアメリアの信じる愛と正義の道なのです!」
「それはいいけどさ」
 リナは両手を腰に当ててアメリアの顔を覗き込んだ。
「毒のせいであんたに万が一のことがあったらどうするつもりなのよ。フィルさんは悲しむは侍従長や大臣は揃って責任取らされるはあたしたちは報酬もらえないは、セイルーンが大混乱よ。そうなっちゃってもいいの?」
「それは、よく・・・ないです」
 アメリアはしゅんとうつむいて、
「でも元気なのは本当なんですよ。ゼルガディスさんにも叱られましたけど、おかしいところなんかないし。顔色が悪いんだったら多分・・・」
「何よ」
「あれのせいかと」
 こわごわアメリアが視線で示した窓の先、繁る木立の彼方には、昨日まで大広間と呼ばれていた廃墟が見えていた。
「なるほど、あれね。あれ・・・ああ・・・」
 仕事に入る前、アメリアは復旧工事の見積りを見たのである。延々とならぶ費用の桁の多さを思いだしてふらりと倒れ込むアメリアを、リナは慌てて抱きとめた。
「は・・ははは。まあ形あるものはいつか壊れるってあんたもどこかで言ってたでしょ。成り行きだったんだってば。いきなりあっちが襲ってきたもんで、その・・・つい力が入っちゃってさー」
「ゼルガディスさんから聞きました。わたしを守るために戦ったんだ、って。ありがとうございます。リナさん、ガウリイさん」
「水臭いこと言わないのっ。仲間でしょっ」
「父さんにこれを報告するときももちろん一緒に来てくれますよねっ!」
「えええー!??」
 いかにもめんどくさそうな奇声をあげつつそっぽを向いたリナが、つと動きを止めた。
 体に緊張が走る。
 いつのまにか、真後ろにジョルジが立っていた。
 ジョルジはリナには目もくれず、
「姫、そろそろ。せっかくのお茶が冷めてしまいますよ」
 ガウリイも剣に手をかけていない。アメリアだって何も言わなかった。たまたまそこにいただけなのかもしれない。しかしリナにまったく気配が感じられなかったのは気のせいだろうか。
「そうでした!」
 アメリアは思わず警戒の色を浮かべたリナの様子に気付かない。のんきにぽんと手を打って、
「おやつ、リナさんたちも一緒にいかがですか。今日は特製のフルーツタルトなんですよ!」
「なに、おやつ!?」
「特製ですって?」
 アメリアの言葉にリナとガウリイが同時にそちらへ向き直った。
 ゼルガディスの実験に付き合わされたおかげで昼飯のエネルギーがほとんど底をつきかけていたところである。通常の思考回路は遮断され、二人の目に食への情熱が炎となって燃え上がった。
「話がわかるじゃないアメリアっ。さすが国王代理!」
「あれ、ゼルガディスさんは?一緒じゃないんですか?」
 アメリアが周囲を見渡しながら尋ねた。人目を嫌う彼のこと、どこかその辺で使者団の人ごみを避けているのだろうと思っていたが、どうやら違うようである。リナが走り出しながら、
「手が離せないのよ今。液体をぽたぽたして楽しんでるわっ」
「ぽ、ぽたぽた?」
 なんのことやらわからない。アメリアはぽかんとテラスへ駆け去る二人の後ろ姿を見送った。その傍らで、ジョルジはなお静かにアメリアの横顔を見つめている。


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2695ファイトだ四人組!UMI 2/3-14:53
記事番号2676へのコメント

こんにちはUMIです。
とうとう10話ですね。おめでとうございます。
そういう訳で今回のコメントは・・・ちょっと遊んでみました(またかい)

10話記念:仲良し四人組対談

(リナ) 「で、この後どうなるのかしら?」
(アメリア) 「それは小野さんに聞いて頂かないと・・・」
(リナ) 「にしてもジョルジって奴あやしいわねえ」
(ゼル) 「・・・しかし証拠がないからな」
(リナ) 「『怪しさ』が服着て歩いてるってのに!!」
(ガウリイ) 「よくわからん」
(アメリア) 「でも、何故私が狙われるんでしょうか?」
(リナ) 「問題はそこよねえ・・・」
(ゼル) 「動機が解れば事件はほとんど解決したようなもの、とはよく言うがな」
(リナ) 「狙いはアメリアの命だけじゃないらしいってことは違いなさそうだけど・・・」
(アメリア) 「なんにせよ、次回をお楽しみにってことですね」
(ゼル) 「そういうことらしいな・・・」
(リナ) 「てことは・・・ゼル、あんたの不幸はまだまだ当分の間続くってことね」
(ゼル) 「 なに!?」
(ガウリイ)「おお!それなら俺にも解るぞ」
(アメリア) 「でも、ゼルガディスさんよく似合ってますよ。ご不幸・・・」
(ゼル) 「んなことで褒められても嬉しかないわい!」
(リナ) 「あんたの不幸っぷりは年期はいっているもんねー」
(ゼル) 「・・・一刻も早く解決せんと身が持たんな・・・」
(アメリア) 「でも、ゼルガディスさんが不幸じゃない時って・・・」
(リナ) 「そんな時あったけ?」
(ガウリイ)「だよな」
(ゼル) 「いいかげんしろ!お前ら!」 おしまい

すいません・・・どうしていつもこんな馬鹿な事をするんでしょうか私は。
対談ですら不幸なゼルガディス(笑)
それにしても後の引かせ方がお上手で、いつも続きが楽しみです。
ジョルジ怪しさ大爆発ですね。
頑張れ四人組!負けるなゼルガディス!(笑)
>悪の魔の手からセイルーンと世界を守る、これこそこのアメリアの信じる愛と正義の道なのです!
そのとうりだ!アメリア!世界が君を待っている!
・・・UMIは今回も果てしなく勘違いしています。
でも本当に楽しみにしていますので、頑張って下さい。
では、失礼しました。

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2715 アメリアに名前を・・・(笑) 小野道風 2/9-14:07
記事番号2695へのコメント

UMIさま

 こんにちは。
  お祝いの言葉、ありがとうございました。10回まで遊びに来ていただいて、感想までいただいてしまって、小野はほんとに幸せものです。
 しかもアメリアに名前まで呼んでもらってしまいました(笑)。
 ふはははは。これ、一つのお話になってますよ。なんか感想にいただいてるのが勿体ないくらいですー。UMIさま作、小野原案ということでいかがでしょう?(なんじゃそりゃ)
 試験のため(涙)、次のお話は三月半ば以降になる予定です。気が向いたら、またぜひ遊びに来てやってくださいね。実はUMIさまの「禁句」を読んで思いついた話があって、なんかほんとに愛ゆえのお話なんですけれど、できたらそれも投稿させていただこうかなと思ってるのですけれど・・・いいでしょうか?もし良かったら、ぜひみてやってください。
 読んで下さって本当にありがとうございました!
 そしてお返事が遅くなってしまってごめんなさい・・・。
 では、また。