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2677 | 哀しい獣の瞳 1 | wwr | 1/28-23:25 |
こんにちわ。wwrといいます。 TRYの後のゼルガディスさんのお話を書いてみました。 原作とTVの設定が混じってます(汗) どぞ、ご用とお急ぎのない方は、読んでみてください。 楽しんでいただけたら嬉しいです。 「哀しい獣の瞳」 夢の中では、忘れていたはずの会話がくりかえされる。それは昼下がりの静かな明るい書斎で、幾度となくかわされた会話のひとつ。 「世界は丸いのですよ、ゼルガディス」 「しってるよ。お皿みたいにまるいんだよね」 「いいえ。世界はこの地球儀のように丸いのです」 「えーっ、おかしいよそんなの。こんなふうにまるかったら、立ってられないじゃないかぁ」 「それはですね。世界はとても大きくて、私たちはとても小さいから……」 「ふぅん?」 小さな子供は首をかしげて、しげしげと地球儀を見つめる。 「ねえ、じーちゃん」 「……レゾと呼びなさい」 「レゾ…は、ここみ〜んな行ったことあるの?」 「いいえ、行ったことのあるのは、ほんの少しですよ」 「じゃあ、ぼくが大きくなったら、いっしょにいろんなとこに行こうね」 幼子の言葉に、盲目の法師はやさしい微笑みでこたえた。 「そうですね、いつか一緒に…」 それは遠い昔の無邪気な会話。思い出してしまうと胸が痛くなるほどの、優しい時代の記憶。 「くだらん夢だ」 めざめたゼルガディスは、不機嫌につぶやいた。ベッドの上にゆっくりと体ををおこすと、全身を包んでいたぬくもりが、嘘のようにひいていく。 顔をあげ、そのくだらん夢を見させた原因に目をやり、ゼルガディスはいっそう不機嫌な顔になる。 それは、この客室の壁にかけられた、古びた肖像画だった。 肩のあたりに豊かにうずまく金色の巻毛、若葉のような明るい緑の瞳の若い女性が、ゆったりと椅子に腰をおろし微笑んでいる。そのおしみない笑顔が向けられているのは、彼女が抱いているまだ生まれて間もない赤ん坊。 そしてその二人のかたわらに立つ人物は。 「あんた、こんなところで何やってたんだ?レゾ」 赤い法衣をその身にまとい、慈愛にみちた表情で母子を見守っているのは、まぎれもなく赤法師レゾだった。 「ちっ……」 舌打ちをして肖像画から目をそらし、身支度をととのえてゼルガディスは部屋を出た。古く広い館の中を歩き食堂に向かう。ゼルガディスはこの地方を治める領主の館にゆうべから泊まっているのだった。 キメラの研究で名高い魔道士でもある、この地の領主を訪れたゼルガディスなのだが、ここで思わぬ歓迎をうけていた。 いきなり訪ねてきた、身元の保証もなにもない者に領主が会う。などということは、まず普通はない。おまけに夜おそく訪ねたにもかかわらず、豪勢な夕食を出される。そのうえ、もう遅いから泊まってゆくようにすすめられ、客室に案内される。 これは、はっきりいってゼルガディスには慣れないことだった。迫害とまではいかなくとも、なんとなくうさんくさい目で見られることは当たり前で、それに慣れてもいたのだ。 大体キメラの研究をしている魔道士というのは、魔道士の中でも変人が多い。以前たずねた老人の魔道士には、あぶなくドラゴンと海蛇竜とのスーパーキメラにされそうになったほどだ。 『もっひょっひょっひょっ。さあ、これでお主も史上最強のキメラになれるのじゃぁっ!』 『これ以上まぜられてたまるかっ!』 たわごとをぬかす、じーさん魔道士もろとも研究所に蓮獄火炎陣をたたきこんで、難を逃れた時のことを思えば、今の待遇は文句のでるはずもない。 あの肖像画を見るまでは。 がちゃり。 食堂の扉をひらくと、主はすでにテーブルについていた。 「おはよう。昨夜はよくお休みになれましたかな?ゼルガディス殿」 年の頃は50ごろか。長身で、やや薄くなりかけた褐色の髪を丁寧になでつけている品のいい紳士が、この館の主クローヴだった。 「ああ」 ゼルガディスは簡単にこたえて席につく。朝食のテーブルについているのは、クローヴとゼルガディスの二人だけだった。二人の間を年若いメイドがひっそりと行き来し、給仕をする。 「それで、夕べのお話の続きですが、その体をもとに戻したいとか」 「そうだ」 出された食事にはあまり手をつけず、ゼルガディスは香茶のカップを口もとによせた。 「でしたら、きっとお力になれると思います。なにしろ私は―」 「?」 「あの赤法師レゾの息子なのですからね」 ぷひゅっ! ゼルガディスの口から、勢いよく香茶がふきだした。 「な!?まさか?」 「信じられないのも無理はありませんが」 ナプキンで顔にかかった香茶を上品にぬぐいながら、クローヴは言葉を続ける。 「あなたが泊まった部屋の肖像画をご覧になりましたか?」 ゼルガディスは、無言でこくこくとうなずく。 「あれは、私の両親の肖像画なのです」 「では、あの赤ん坊が…」 「私です」 誇らしげにうなずくと、クローヴは話しはじめた。 その昔、まだクローヴが生まれる前のこと。この地方を、たちの悪い疫病が襲った。住民達はばたばたと倒れ、当時結婚したばかりだったクローヴの母と、その夫も病に伏していた。 医師達の懸命な看病のかいもなく夫は死に、クローヴの母も高熱にうかされながら、生死の境をさまよっていたという。 「そこへ、私の父が来てくださったのです」 「レゾが?」 「はい」 赤法師レゾの尽力により、疫病はおさまり人々は救われた。が、高熱にさらされたクローヴの母の瞳は、光を失っていた。 「絶望の淵にいた母を、父は救ってくださったのです。母の瞳に再び光をあたえて」 ―練習台のひとつにすぎん…― 心のうちで、苦いつぶやきをもらすゼルガディス。 娘の命を救ってもらった当時の領主(ダーウェイの祖父)は、レゾに深く感謝し、どうかこの地にとどまってくれるように懇願した。レゾはそれに応え、数ヵ月間この領主の館に滞在し数々の奇蹟をおこした。そしてまた、いずことへもなく去っていったという。 「去り際に、父は母に言ったそうです。『私は苦しむ人々の間を歩まねばなりません』と」 ―たいした偽善者ぶりだぜ― 「そして私が生まれたのです」 「だが、それならレゾの子供とは限らんだろう。死んだ夫の子供ということも…」 「いいえ。私は赤法師レゾの息子なのです」 自信に満ちてクローヴは首を横にふった。 「幼い頃から、母に言い聞かされて育ちました。『お父様のように、立派な人になるのよ』と」 「しかしな…」 「私もそれに応え努力しました。書を読み、魔道や医学を学び……」 「あのな…」 ナプキンをにぎりしめ、視線を宙に泳がせながら、とうとうと話しつづけるクローヴの声は、際限なくボリュームアップしていく。 「領民の声に耳を傾け、つねに苦しむ者たちの助けとなろうと…そう、現代の五賢者のひとりと呼ばれた、あの父のようにっ!」 「ま、まぁ、がんばってくれ」 半ば、自分の世界に入っているクローヴに真実を告げる気力は、もはやゼルガディスには残っていなかった。 |
2678 | 哀しい獣の瞳 2 | wwr | 1/28-23:29 |
記事番号2677へのコメント 「ですから、分離するのは生体ごとの拒否反応を利用すればどうでしょう?」 「そのやり方だと融合時期から逆算して、分離にあまり時間がかかると生体への負担が大きすぎるのではないか?」 「生命の水の配合をかえて、それから『復活』をアレンジした魔法を継続しておけば大丈夫ですよ」 「だが、『異物』をとり除いたあと、オリジナルの質量はどうやって確保する?」 「やはりそれが問題ですね」 ゼルガディスがこの館を訪れてから数日が過ぎた。今日も館の地下に作られた研究室で、ゼルガディスとクローヴはキメラの研究に没頭していた。 クローヴの魔道士としての腕は確かなようで、研究室には数々のキメラが、クリスタルの容器の中でたゆたっている。 牛と竜とのキメラ(食用の竜を作りたかったらしい) 林檎の木と、ニワトリのキメラ(卵が成る木を目指したようだ) 羽根と角のあるネコは、狩猟用と番ネコとして好評だそうで、付近の村にも広まっているということだった。 だが、クローヴも「合成したものを元に戻す」という方法は考えたことが無く、研究はなかなか進まなかった。生物を部分ごとに合成したものとは違い、全身バランスよく合成されているゼルガディスの体を、人間の部分だけとりだして再構築するというのは、至難のようだということだけが判ってきた。 「どうも…こう言っては失礼ですが、見事なものですな。あなたの体は」 「……」 「一体、どんな魔道士に合成されたのです?よろしかったら…」 「少し外の風にあたってくる」 答えるのを避けて、ゼルガディスは研究室を出た。 ―見事なもの、か― 館の庭を歩くゼルガディスの口もとに皮肉な笑みがうかぶ。確かにキメラ研究者の目から見れば、価値のあるものなのだろう。だが自分には価値どころか、忌まわしさそのものの体だった。 鏡を見るたびに、自分の弱さと愚かさを見せつけられるような気がする。 いらつくゼルガディスはポケットに手を入れ、中に入れてあったものを握りしめた。ひんやりとして、でも握っているうちにぬくもりが伝わってくるような、不思議な感触がゼルガディスのささくれかけていた神経をなだめていく。 取り出して手のひらにのせ、じっと見つめる。 それは五芒星のうきでた、青い宝石の護符。 かつてそれを身につけていた少女の思い出が、彼の心をやわらかなもので満たし、ゼルガディスは大きく息をついた。 ―あいつは今ごろ…どうしているんだろうな…― ふと気づけば、いつのまにかゼルガディスは庭の奥ふかくまで足を踏みいれていた。 セージ、タイム、ローズマリー。 見なれたハーブに混じって生えているのは。 ダチュラ、ベラドンナ、マンドラゴラ。 濃くおいしげる緑のなかに、ぽつりぽつりと奇妙な色の花が咲いている。 「だぁれ?」 ふいに聞こえた声に、ゼルガディスはふりむいた。 背中をおおうほどのばした、まっすぐな銀の髪。どこか夢見るような瞳は、淡いすみれ色。一目で上等な絹と分かるドレスをまとった16、7歳の少女だった。 「あなた、だれ?」 「俺はゼルガディスという」 「ふぅん」 少女は興味なさそうに首をかしげた。 「お前は、この屋敷の者か?」 少女は無言でうなづくと、けむるような視線をゼルガディスになげ、そして宝石の護符に目をとめた。 「見せて、それ」 手をのばした少女を、そっけなくかわすゼルガディス。 「よせ」 少女は一瞬きょとんとし、そしてゼルガディスに問いかけた。 「あなた、クローヴの客?」 「そうだ」 「そう……」 少女の表情が一変した。 さげすむような視線をゼルガディスに投げつけると、薄い色の唇を開いて、かんだかい声を張りあげた。 「リフラフっ!」 がさり。 いつからそこにいたのだろうか。茂みの奥から、一人の男がうっそりと姿をあらわした。 背はゼルガディスよりも頭ふたつぶんは大きく、粗末な服の上からでも分かるほど、たくましい体をしている。無造作にのばした黒い前髪の奥からのぞく黒い目が、もの問いたげに少女をを見た。 「リフラフっ、その人つかまえてっ」 「なんだとっ!?」 身をひるがえそうとしたゼルガディスを、もっさりした見かけからは意外なほどの素早さで、リフラフは捕らえた。 「おいっ、お前らどういうつもりだっ!」 ふりほどこうと身をよじっても、リフラフの腕はびくともしない。 そんなゼルガディスに、少女は勝ちほこったような笑みをうかべながら近づくと、手を伸ばして宝石の護符をもぎとった。光にかざして、じっと見つめる。 「…きれいね…」 にっこりと笑うその瞳は、またどこか虚ろなものにもどっていた。 「きれいね……とってもきれい」 「おいっ、そいつを返せっ!」 少女は宝石の護符を大切そうに両手でつつみこみ、笑いながら庭の奥に歩みさってゆく。 「うふふ、きれいね。ふふ…」 後を追おうともがくゼルガディスだが、リフラフにがっちり押え込まれて身動きがとれない。 ―くそっ、なんて馬鹿力だ― 世話になっている相手の屋敷で、騒ぎを起こしたくはなかったが、仕方がない。 「炎の矢っ」 どんっっ。 力ある言葉に応え、背後に現われた炎の矢が、リフラフの背を直撃する。衝撃がゼルガディスの体まで伝わった。が、ゼルガディスを押えこむ腕はゆるまなかった。 「なんだとっ!?」 アレンジして矢の数を減らし、威力もおさえたが、それとてまともに食らえば平気でいられるはずがない、常人ならば。 「貴様、なにものだっ」 答えはなく、ただ羽交い締めにする腕に力がこめられただけだった。次の呪文を口の中で紡ぐゼルガディス。こんどは手加減などしない。 そのとき、いきなり捕らえていたリフラフの腕がゆるんだ。ゼルガディスは力まかせにそれをふりほどき、振りむきざまに呪文を放つ。 「氷の矢っ」 きぃぃんっ。 襲いかかる無数の氷の矢を、リフラフは素早い身のこなしでよけ、素手でたたきおとした。 「どうやら、ただの召し使いではないということだな」 ゼルガディスの言葉に、リフラフの口もとが、ふっとゆるむ。そこからちらりとのぞいたものは。 ―牙?― ゼルガディスは、すらりと抜いた剣をリフラフに向ける。 「答えろ、あの女はどこにいった」 「ぐ…う…う…」 声とも、うなりともつかない音がリフラフの喉からもれる。 「で…て…いけ」 かなり苦労した様子で、それだけ言うと、リフラフは腕を出口の方向に伸ばした。 「出て……いけ……ここ…から」 「ふざけるなっ!」 ゼルガディスは剣を構えなおした、とその時ふいにリフラフが顔を妙な方向に向けた。まるで自分にしか聞こえない声を聞き取ろうとするように。そしてゼルガディスには目もくれず、生い茂る茂みの奥に入りこみ、かききえるようにいなくなった。 「まてっ」 その場にひとり残されたゼルガディスは、しばらく考えこんでいたが、やがて剣をおさめ低くつぶやいた。 「面白くなってきたな」 昔、残酷な魔剣士と呼ばれていたころの顔をして。 深夜、館の地下の実験室では今夜も明かりがゆらめいていた。なかなか思うように成果のあがらない研究に、クローヴは深く息をついた。 「今夜はこのぐらいにして休みませんか。ゼルガディス殿」 「そうだな…。そういえばクローヴ、あんた家族はいないのか?」 クリスタル容器のなかでまどろむキメラ達を見ながら、ゼルガディスはさりげない風を装って聞いてみた。 「いえ、キャラウェイという娘が一人おります」 「そうか。だが屋敷で見たことはないな」 「体が弱いので、奥の離れに住まわせているのですが、それがなにか?」 「いや、別に」 「そう…ですか」 言いながらクローヴの表情が微妙に変ったのを、ゼルガディスは見逃さなかった。片手で実験器具をもてあそびながら、探りをいれてみる。 「庭に、リフラフと呼ばれていた男がいたが」 「ああ、亡くなった妻が嫁いできたとき、実家から連れてきた者です。身寄りもないと言うので置いてやっているのですよ」 一見まっとうな答えに、ゼルガディスはカマをかけてみた。 「変っているな、あいつは」 「そうですか?」 そう言うとクローヴは口もとに、どこか歪んだ笑みを浮べた。そしてもうこれ以上話すことはない、というように実験用の器具を片づけはじめる。 「お客様に失礼があったのなら、リフラフには罰しておきましょう。娘は少し…情緒不安定なので、あまりお気になさらずに。…研究にはまだ時間がかかりそうですしな」 ―体を元に戻す研究を続けたいなら、余計なことに首をつっこむな― 暗にそう言われ、ゼルガディスは今夜は引き下がることにした。 「では俺はこれで休むことにする」 「では、おやすみなさい」 ゼルガディスが扉を開けて出ていった扉を見つめ、クローヴは一人つぶやいた。 「さすが『白のゼルガディス』というところか。だが時期が悪い……交換を早めるとするか……」 クローヴは手を伸ばすと、実験台の上にある伝声管を引き寄せた。 「明日の夜、交換をする。準備をしておけリフラフ」 指示を与えると返事も待たずに伝声管を閉じ、クローヴは灯りを消して研究室を出ていった。 |
2679 | 哀しい獣の瞳 3 | wwr | 1/28-23:34 |
記事番号2677へのコメント 翌朝、ゼルガディスが食堂に行くとクローヴの姿はなく、いつものメイドだけがゼルガディスを迎えた。 「おはようございます、ゼルガディス様。旦那様は本日ご用でお出かけでございます。研究室もどうぞご自由にお使いください、とのことでした」 「そうか…」 ゼルガディスはカップに香茶を注ぐメイドの横顔を見た。 まだ若い、ゼルガディスより2、3才年下だろうか。濃い茶色の髪をみつ編みに結ってぐるりと巻いた頭には、ちょこんと白いレースのキャップをのせている。大きな丸い瞳は、髪と同じ濃い茶色。少し日にやけた肌にちらばるそばかすが可愛らしい。 「おまえは、この屋敷に勤めて長いのか?」 「いえ、まだ半年ほどです」 「少し教えて欲しいんだが、クローヴというのはどういう人間なんだ?」 「どうって……立派な方です」 メイドの少女は、少し戸惑ってから話しだした。どうやら領主のクローヴは、すこぷる評判がいいらしい。 『ご領主様にお願いすれば、なんでも聞き届けてくださる』 というのが、この辺りの住民の口癖だという。そして『さすが、あのレゾ様のご子息だ』の一言が、かならず付けくわえられるのも。 「ほんとうに、お優しい方なんです。私がお願いしたときも、すぐに聞いてくださって…」 心からそう思っているのだろう。少女の言葉に、偽りは感じられなかった、が。 「キャラウェイ、という娘は?」 ゼルガディスの問いに、少女の顔が急にくもる。 「お嬢様のお世話は……私たちには…」 「リフラフ、か?」 「っ……」 おびえたように言葉を詰まらせた少女の表情に、ゼルガディスはそれ以上聞くのはやめた。香茶のカップをおいて立ち上がる。 「あのっ、どちらへ?」 「そのへんを歩くだけだ」 少女の名をまだ聞いていなかったことにゼルガディスが気づいたのは、館を出てしばらくしてからのことだった。 館からほどちかいクローヴの治める村の一つを、ゼルガディスは訪れた。畑には作物が豊かに実り、行き交う人々は、みな豊かとはいえないが、こざっぱりとした服を着て、明るい表情をしている。村の中を歩いてみても、ゼルガディスが館の客だということが知らされているのだろう、奇異の目を向けるものはなく、むしろ丁寧にあいさつをしたり、笑いかけてくるものさえいる。 ゼルガディスは一休みするのと情報を集めるために、一軒の食堂に入った。 「ご領主様?立派な方だよ。ほら、こいつもご領主様にいただいたんだ」 そう言って食堂のおやじは、羽根と角のある白いネコの頭をなでた。ネコはごろごろと喉をならし、頭をおやじの手にすりつけてくる。 「こいつのおかげで、ネズミどももいなくなったしなぁ」 「ほんと、あんな偉い方いるもんじゃないわ。さすが赤法師様のご子息ね」 「そうそう。俺のとこの牛の病気も治してくださったしな」 食堂にいた村人は、口々にクローヴをほめちぎる。 「娘が一人いると聞いたが…」 「んー、いらっしゃるとは聞いているが、お体が弱いってんで、おれたちの前には、お出にはならんしなぁ…」 「お気の毒に、お嬢様が生まれてすぐに奥様が亡くなられたんですってよ」 「ワシは一度だけ見たことがあるぞ」 そう言ったのは、一人の老人だった。 「もう10年ぐらい前に見ただけじゃが、奥様にそっくりの、そりゃ奇麗なお嬢さんじゃった。銀色の髪にすみれ色の目で…」 「?」 なにか引っかかるものを感じて、ゼルガディスは老人に尋ねた。 「死んだ妻というのは、何歳だったんだ?」 「たしかクローヴ様より3つ下の17才だったと思うが」 「それで、死んだのは何年前だ?」 「もう30年以上になるかのぉ……お気の毒に、ご結婚されてまだ2年にもならんころじゃった」 ―妙だな……― 昨日ゼルガディスが見た少女は、どう見ても16、7ぐらいだった。 ―まあ女の年は見た目では分からんか― 大したことも分からないまま、ゼルガディスは食堂を出た。そろそろ館に戻ろうかと思いかけたとき、ゼルガディスを呼びとめる声がした。 「おい…ちょっと、そこの人」 ゼルガディスが声のする方を見ると、物蔭から一人の青年が手招きしている。 「俺のことか」 ゼルガディスがつかつかと歩み寄ると、青年はあたりをうかがうようにして話しかけてきた。 「あんただろ、ご領主様のお客って」 「そうだが」 「なら、アニスって娘をしらないか?お屋敷で働いてるんだ」 「アニス?」 「ああ、茶色の髪で、そばかすがあって、可愛い娘なんだ」 ―あのメイドか― 思い当たって、ゼルガディスはうなづいた。 「知っている。今朝も話したばかりだ」 「本当かっ!じゃあまだ生きているんだな?」 「どういうことだ」 ゼルガディスの問いに、青年はせきを切ったように話しはじめた。 「おかしいんだよ、ご領主様は。おれ、グエンって言うんだが…」 この青年グエンは、この村の出身だが数年前から、少しはなれた街にでて働いていたのだという。ある日、ささいなことから仕事仲間と口論になり、相手を傷付けてしまった。悪いことに相手の親戚に、街の有力者がいたせいでろくに取り調べも無いまま牢につながれ、明日にも死刑になるかというところだった。 それが突然釈放されたのだ。訳を聞いても役人たちは答えず、ただ「クローヴ様に感謝するんだな」とだけ言った。やがて村に帰ったグエンは、恋人のアニスがクローヴの屋敷に勤め出したという話を聞いて、会いに行ったのだが、門前払いを食らわされるばかり。そしてグエンは、さまざまな噂を聞くようになったのだ。 「ご領主様は、なんでも望みを聞いてくれる。だけど、タダじゃないんだ…」 家畜の病気を治してもらった者は、同じ数だけの家畜を差し出すように言われた。羽根のあるネコをもらった者は、長年飼っていた愛犬を手放すように言われた。 「代償を要求するのは、別におかしくはないだろう」 「それだけじゃないんだよ」 病気で死にかけていた子供を救ってもらった家では、その子供の母親がいなくなったという。大怪我をした父親を治してもらった家では、息子が姿を消したというのだ。 そして行方が知れなくなった人々は、二度と戻ってこないし、村人たちがその事を口にすることもない。 「アニスは、きっとおれのことを、ご領主様に頼んだんだ」 「お前の考えすぎではないのか?」 ゼルガディスは今朝話したアニスの事を思い出してみた、が、別にひどい目にあっているというようには見えなかった。 「なぁ、頼むよ。この手紙をアニスに渡してくれないか」 「いいだろう」 ゼルガディスは差し出されたグェンの手紙を受け取った。 館に戻ったゼルガディスは、自分の泊まっている部屋でアニスに手紙を渡すことにした。リフラフなどに見つかってはアニスにまずいことになるだろうし、これを機会に、いろいろ聞き出せるかもしれない。 「やだ、グェンがそんなことを?」 ゼルガディスの部屋に呼ばれたアニスは、頬を染めながら手紙を受け取った。よほど嬉しかったのだろう、今朝よりずっと打ち解けた様子だ。 無邪気に喜ぶ姿が、ゼルガディスにだれかを思い出させる。 「グェンが会いに来ていることは、知らなかったのか?」 「ええ…誰も教えてくれなかったし…」 「そうか…。で、やはりグェンのことをクローヴに?」 「はい…」 グェンが牢につながれたことを知ったアニスは、クローヴに懇願したのだという。 『お願いです。グェンを助けてください。私、なんでもしますから』 『なんでも?…』 『はい』 そしてクローヴはグェンを助けることを約束し、アニスはこの屋敷に住みこみで勤めることになったのだった。 「それで、なにか妙なことはないのか?」 「妙なことなんて…別に…」 「村人で戻ってこない者がいる、と聞いたが」 「私…知りません…」 言葉をにごすと、アニスは首をふってうつむいた。 「そうか、ならもういい」 ゼルガディスがそう言うと、アニスはほっとしたように息をつき、ぺこんと頭を下げて部屋の扉から出ていった。閉めかけた扉の間からちょこんと顔だけのぞかせると、アニスはゼルガディスに笑いかけた。 「あのっ、手紙ありがとうございました」 ぱたん。 扉が閉まるとゼルガディスは内側から鍵をかけた。 ―なにか妙だな、この屋敷は…― 奇妙な召し使い。 年齢不祥の少女。 行方不明の村人。 ソファに身をもたせて考えを巡らせる。クローヴが自分の領地で何をしようが興味はない。クローヴのキメラクリエイターとしての腕は確かなようだし、このまま留まって研究を続けたいとも思う。 だが、あの宝石の護符は……失うわけにはいかない。 ゼルガディスは行動を起こすことに決めた。 夜、館が寝静まるころをみはからって、ゼルガディスは窓から部屋を抜け出した。中庭を通り抜け、キャラウェイに出会った薬草園をさらに奥にすすむと、やがて月明かりに白く瀟洒な建物がうかびあがった。 建物の周りをぐるりと回ってみるが、いくつかある窓に灯りのついているものはなかった。 「浮遊」 ゼルガディスは呪文を唱えて空中に舞い上がると、見当をつけて窓の一つにしのびよった。 窓から中をうかがっても、人の気配はない。鍵のかかった窓を七つ道具であっさり開けると、ゼルガディスは部屋の中に忍びこんだ。見まわせば、そこはどうやら若い女性の部屋のようだ。 部屋中をうめつくすように飾られた花。 深い光沢のある薔薇色のシルクのベッド。 あちこちに投げ出された数々のドレス。 家具や調度は、みな贅沢で華やかなものだった。おそらくキャラウェイの寝室なのだろう。 部屋の中を調べ始めたゼルガディスは、部屋の片隅におちている物に目をとめ拾い上げた。それは手にのるくらいの大きさの細密画だった。ただ、描かれた絵はずたずたに切り裂かれ、かろうじて二人の男女が描かれているとだけ分かる。裏を返すと、細い字で何か書いてあるようだ。 ゼルガディスは月明かりにかざして、それを読んだ。 「クローヴ&キャラウェイ 永遠の愛をここに…」 ―………― ゼルガディスは無言でそれを元の場所に戻した。 再び部屋を見渡すと壁にかけられた絵が、かすかに曲っているのに気づく。近寄って絵を取り外すと、思った通りその下には取っ手があった。 ―お約束だな…― 内心、苦笑しながらもゼルガディスは取っ手を引いた。 きしむような音を立てて、ベッドの横の壁にぽっかりと通路が開く。ゼルガディスはその中に足をふみいれた。 「明かり」 呪文を唱えて、光量をおさえた魔力の灯りをともす。 通路は初めのうちは下り坂だったが、やがて真っ直ぐになった。両側の岩の壁からは、じわじわと水がしみだしている。だがカビ臭さや、空気のよどみは感じられない。 ―よく使われている、ということか…― どれくらい歩いたのだろうか、やがてゼルガディスは一枚の頑丈そうな扉の前にたどりついた。明かりを消し、扉をわずかに開いて様子をうかがう。薄暗い扉の向うには人の気配はなく、不思議な静けさが満ちている。 扉を開けて一歩なかに入ったゼルガディスは、目の前にひろがる光景に立ちつくした。 |
2680 | 哀しい獣の瞳 4 | wwr | 1/28-23:39 |
記事番号2677へのコメント 「これ…は…」 そこは天井の高い奥行のある、広い倉庫のような部屋だった。 その中に数えきれないほどのクリスタル容器が整然と並んでいる。部屋のすみに、ぽつりぽつりと灯るおぼろな魔法の明かりを反射して、にぶく光るクリスタル容器。その中に満たされた、オパール色の生命の水に包まれてまどろむものたち。 生まれる前のあかんぼう。 よちよち歩きのこども。 手足のすらりと伸びた少女。 みな同じ顔をしていた。 「キャラウェイ?…」 「…の、コピー達ですよ」 背後から響いたクローヴの声に、ゼルガディスは驚かなかった。油断なく振りむくと、そこにはリフラフを従えたクローヴが穏やかな笑みを浮べて佇んでいた。 「よくここがお分かりになりましたね。ようこそ、私のもう一つの実験室に」 客の無作法をとがめる風もなく、礼儀正しくクローヴはゼルガディスに一礼してみせる。 「なんだ、これは…」 「キャラウェイの生命の素材です」 「生命の素材?」 「ええ…」 まるで興味深い研究の過程を説明するように、クローヴは話しだした。 「キャラウェイは、とても体が弱いのです。ほんの少しの怪我や病気にも耐えられない…」 だからキャラウェイのなめらかな肌が傷ついたら皮膚をはりかえ、か弱い心臓が疲れたら交換し、そして。 「全身の血液を交換するのです、月に一度」 キャラウェイの体から古くなった血を抜き、コピーから新鮮な血をそそぎ込む。細胞の新陳代謝にあわせて、血液を入れ替えることにより、肉体はその老化をかぎりなく遅くすることができるのだ、とクローヴは淡々とした口調で説明した。 「私はキャラウェイに、永遠の命と美しさを与えているのです」 『愛しているよ、キャラウェイ。 華もドレスも宝石も あふれるほどに、ふりそそごう』 「そのために、これだけのコピーを使って、か?」 「いけませんか?」 とげを含んだゼルガディスの問いに、クローヴは事もなげにこたえた。 「別にかまわんさ、本人がそれを本当にのぞんでいるなら、な」 「私はキャラウェイの望むもの全てを与えている」 クローヴはゼルガディスを睨みつけ、またはりついたような笑みを浮べた。 「あなたに良いものをお見せしましょう。こちらへどうぞ…」 くるりと踵を返して、クローヴは歩き出した。その後ろにゼルガディス、そしてリフラフが続く。 薄暗い地下の実験室に三人の足音が響く。ゼルガディスに背を向けたままクローヴは話しだした。 「なぜ父上が…レゾ氏が旅を続けていたと思いますか?」 「自分の目を治す練習台が欲しかったからだ」 ゼルガディスの答えに、クローヴの肩が笑いをこらえてふるえた。 「面白い考えですね。でも私は思うのです、父は一ヶ所にとどまればどうなるかを知っていたからではないのか、と」 「?」 「人の欲望には限りなどないのですから…」 一度家畜の病気を治せば、つぎにまた病気をした時も当然のように治してもらえると思っている。 新種の家畜や農作物をあたえても、ありがたがるのは最初だけ。次に来るのは「もっといいものを」の要求の声。 そしてうすっぺらな感謝の言葉の後には、必ずあの一言がつけたされるのだ。 『さすがレゾ様のご子息だ』と。 「放浪の旅を続けていれば、自分の行きたいところに行き、まずいことになれば、立ち去ればいいでしょう?」 限りない要求に応え続けることも、応えきれずに失望されることもない。 「レゾは自分のやりたいことをやっていただけだ。人に感謝されようなどと思ってはいなかったさ」 吐き捨てるようにゼルガディスは言った。 白魔法・黒魔法・精霊魔法。レゾがあらゆる魔法を習得したのは、すべて自分の目を開くため。各地を放浪して人々の目を治したのも、自分の目を治す練習台にすぎない。 その結果、人びとが自分のことを聖者とあがめようが、現代の五賢者の一人に数えようが、それはたぶん、どうでもいいことだったのだろう。 たとえ誰にどれだけ感謝されようとも、恨まれようとも、気になどしていなかったように思う。 彼の望みは、世界をその目で見ること。ただそれだけだったのだから。 「レゾは聖者などではない、ただの……身勝手な人間だ」 ゼルガディスの言葉に答えることなく、クローヴは黙ったまま歩きつづけた。 「これです……」 やがてクローヴは、一段高い場所におかれた二つの実験台の間で立ちどまった。 片方の台にはキャラウェイが、もう一方の台にはアニスが横たえられていた。二人の体は白くゆったりとした貫頭衣をまとい、全身に透明なチューブが取り付けられていた。アニスの体からはチューブをつたってうす赤い液体のようなものが流れだし、一旦二人の頭の位置にある装置の一方の口に吸い込まれてゆく。そして装置のもう一方の口からは真っ赤などろりとしたものがはきだされ、血管のようにからまりあったチューブを伝ってこんどはキャラウェイの体に流れ込んでいく。 どぉぉん、どぉぉん。 装置が心臓の鼓動にもにたリズムをきざむたびに、アニスの顔から血の気が無くなっていく。それに反比例するように、キャラウェイの頬に赤味がさしてゆく。眉間にしわを寄せながらその様子を観察していたゼルガディスの目が、キャラウェイの手首でとまった。薄青く血管が透き通ってみえる白い手首には、あの宝石の護符が輝いていた。 ―っ!……― 叫びだしたい衝動をおさえて、ゼルガディスは平静をよそおう。 「この装置は…」 「生命力を抽出しているのです」 皮膚や臓器といった、いわば部品をとりかえても、キャラウェイのもつ生命力自体の衰えは補えない。だからそれを他の個体から抽出し、補給しているのだ、とクローヴは説明した。 「これが恋人の命の代償、というわけか」 「この娘は言ったのですよ。なんでもする、と」 憑かれたような目でキャラウェイだけを見つめるクローヴに、ゼルガディスは問いかけた。 「なぜ、そうまでする?こいつは妻なんだろう、あんたの」 「どうして…そう思うのですか」 「キャラウェイの部屋で、肖像画を見た」 「ああ、それで…」 クローヴはうなずくと、少し悲しげに言葉を続けた。 「親同士が決めた、家の為の結婚でしたがね」 ―それでも、私は…― 「私は彼女を大切に扱いましたよ」 ―なのに、彼女は…― おぼろな魔法の光に照らされて、クローヴの顔が奇妙にゆがむ。 「キャラウェイが言ったのか?こんなふうに生きたい、と」 「あなたに何が分かるっ!」 クローヴはゼルガディスを火のつくような視線で睨みつけ、やがて嘲るような口調で言った。 「そういうあなたこそ、力を得た代りになにを支払ったというのです。レゾの狂戦士殿」 「知って…いたのか」 とうに捨てたはずの名を呼ばれ、ゼルガディスは拳をにぎりしめた。 「あなたは私の父が作り上げたキメラ。ならばこれからは息子の私の命令に従って…ぐぅっ…」 「…………」 ゼルガディスは無言で両腕を伸ばすと、クローヴの胸ぐらをつかみあげた。感情を抑えた低い声で、もうひとつの名をなのる。 「俺の名は、ゼルガディス=グレイワーズという」 クローヴは信じられないものを見る目で、ゼルガディスを見た。 「では…あなたは…父上の?」 「そんなことは関係ない。俺は…俺だ」 ゼルガディスの答えに、クローヴの顔から温厚な表情がはがれおちた。 「リフラフっ!こいつを殺せっ!!」 ―許さん…父上の…赤法師レゾの血を引きながら自由に生きるなどと…― 『お父様のように、立派な人になるのよ…』 『レゾ様のご子息なら…』 幼い頃から言われつづけた言葉。 どんなに私が努力したか、どんなに多くのものをあきらめてきたか。 すべては「赤法師レゾ」の血筋にふさわしい者であるように、と。 それを軽々と捨てて「俺には関係ない」だと? では、私は?これまで私のしてきたことは? ―…許さん…― 「殺してしまえっ!こんなキメラなどっ!!」 「ちっ」 ゼルガディスはクローヴから手を放し、剣をぬいて身構える。だが今にも飛び掛かってくるかと思ったリフラフは、その場から動かない。 ―?― いぶかるゼルガディスの目の前で、変化はおこった。 たくましいリフラフの体が、みるみる黒く艶のある獣毛におおわれてゆく。かっと開いた口には、鋭い牙。瞳の色は金に変わり、黒い虹彩が縦にはしる。 リフラフと呼ばれていたものは黒い獣人となり、背負った大ぶりの剣を軽々と抜いて床を蹴った。 「ぐるらぁぁぁっっ!」 「豹人間かっ!」 驚きの声をあげるゼルガディスに、クローヴの哄笑が浴びせられる。 「そいつは私が作ったキメラだ。倒せるものなら倒してみるがいい」 ぎんっ。 重みのある一撃が、野獣のスピードでくりだされる。 その下をかいくぐり、リフラフの右を駆け抜けざま、相手の右肩から左腹にかけてゼルガディスの剣が閃いた。 どがっ! が、リフラフの体には、傷一つつかなかった。 「なんだとっ!?」 相手から距離を取りつつ、手に残る妙な手応えに戸惑うゼルガディス。 「ふん、そいつには黒豹のほかに、下級魔族も合成してある。下手な剣や魔法など効くものかっ!」 ざんっ! リフラフの体重の乗った一撃が、ゼルガディスに向かって振りおろされる。 それを横に飛んでよけるゼルガディス。 じゃぎぎぎぎぃぃっ! 床の石畳と剣とがぶつかり火花を散らす。 「なぜ、あんな奴の命令をきくんだっ!」 「ぐぅぅぅぅぅぅぅ」 獣の喉では人の声は出せないのか、リフラフから返ってくるのはうなり声のみ。代りにクローヴの嘲るような声が答える。 「命令をきくのは当たり前だ、キメラにしてくれと頼んできたのは、そいつなんだからな」 「なんだとっ!」 ゼルガディスに振りむく暇も与えず、リフラフはしなやかな身のこなしで剣をふるう。 ざんっ、ざんっ! 「氷窟…」 リフラフのすばやい動きを止めようと、ゼルガディスは横にあったものに手をついて呪文を唱えかけた。が、手に触れた物に目をやれば、それはコピーの眠るクリスタル容器。このまま術をかければどうなるか。 一瞬の迷いが隙を生んだ。 音もなく駈け寄ったリフラフの剣が、ゼルガディスめがけて閃く。 とっさにクリスタル容器の間に体をすべりこませて、紙一重でよけるゼルガディス。剣の柄がクリスタル容器にあたって、耳障りな音を立てる。 リフラフの力なら容器ごとゼルガディスを叩き斬るのは簡単だろうに、なぜか追ってはこなかった。クリスタル容器を見るリフラフの戸惑うような表情。 ―お前?…― ゼルガディスには、リフラフがキメラになった理由が分かったような気がした。 ―だが、俺も譲るわけにはいかん…― クリスタル容器の列の裏を駆け抜け、リフラフの背後にまわりこむ。 「爆炎舞っ!」 ゼルガディスの呪文が、リフラフのまわりに無数の光球を生み出し、火花をまきちらす。 「ぐおっ!?」 視界をふさがれたリフラフに向かってゼルガディスは呪文を放った。 「烈閃槍」 精神にダメージを与える光の槍が、リフラフを直撃する。 「があぁぁ…」 魔族と合成されても、さすがにこれは効いたのかリフラフはその場に膝をついた。そこにクローヴの罵声がとぶ。 「なにをしているリフラフっ!キャラウェイの側にいさせてくれという、お前の願いを聞いてやった恩を忘れたのかっ!」 「ぐぅぅぅぅ」 うめくような声を漏らすと、リフラフは剣を杖のようにして立ち上がった。その身の支えとなったのは、主の命令ではなく、遠い日の約束。 『ずぅっとそばにいてね。リフラフ』 『はい、キャラウェイお嬢様。どんなことがあっても…』 旧家の令嬢と使用人という壁ができる前に、幼かった二人がかわした約束。 ―キャラウェイ様…― 心も体も弱くて、温室の中でしか生きられない、花のような方。 自分には、ここから連れ出して差し上げることはできません。 だから…この温室を守ります。そのために、どれだけの命が費やされようと、この身が人でなくなろうと…自分は構いません。 体勢を立て直し剣を構えようとするリフラフ。 その間をあたえまいと正面からつっこむゼルガディス。 ―こんなところで殺られてたまるか…― まだ元の体に戻る手掛かりもつかめていない。調べていない遺跡や魔道書もある。なにより、あの宝石の護符をこのまま失うわけにはいかん…。 ―アメリアっ!― ―キャラウェイ様…― 白い影と黒い影が、床を蹴って交差する。 きんっ!きんっ! 譲れないものをかけて、剣と剣とが火花をちらす部屋の中。命をすりかえる装置は無表情に動きつづける。 どぉぉん、どおおん。 装置の音と心臓の鼓動が重なり合い、キャラウェイはゆるやかにまどろみから目覚めた。 ―ここは…どこ…― ―わたし…は…― ゆっくりと身を起こし、ぼんやりとした視線をあたりになげる。 自分とチューブでつながれた、濃い茶色の髪の少女の青ざめた顔。 薄暗い部屋にずらりと並ぶクリスタル容器、そしてその中でたゆたうものたち。 ―あ?…― かすむ頭の奥から、よみがえる記憶。 『このコピー達を使えば、お前はずっと今の美しい姿のままでいられるんだよ』 そう言って優しく微笑んだ夫の足元には、切り刻まれた体がむぞうさに転がされていた。自分と同じ顔をした体が、いくつも、いくつも。 ―あれは…わたしの体?じゃあ…これは?この体はなに?― キャラウェイは腕をひろげ、傷ひとつない自分の体を見た。小さい頃に転んでついたはずの傷もなにも残っていない、なめらかな白い肌。。 混乱し、ふたたび狂気の中に逃げ込もうとしたキャラウェイの手が、手首につけた青い宝石の護符にふれた。無意識にそれをにぎりしめると、混乱はゆるやかにおさまり、そしてどうしようもない感情がこみあげてきた。 継ぎたされた体。 繋がれている命。 ―いや…こんなのは…いや…― 自分で自分の体を抱きしめ、うずくまって震えるキャラウェイに心配そうな声がかけられた。 「もう起きたのかキャラウェイ。気分はどうだね?」 予定よりもいくぶん早い目覚めに少しおどろきながら、クローヴはキャラウェイに手をさしのべた。 『愛しているよ、キャラウェイ。 華もドレスも宝石も あふれるほどに、ふりそそごう。 お前がそれを望むなら どんなことでも叶えてやろう』 キャラウェイは、びくりとして顔をあげた。涙をためた瞳にうつるクローヴの手は、なぜか紅くそまって見えた。 「キャラウェイ?」 「さわらないでっ!」 せいいっぱい優しくさしのべた腕に応えるのは、嫌悪と拒絶。 「きらい、きらい。だいっきらい!!」 時を止められた少女は、ありったけの力で現実を拒絶する。そうしなければ自分が壊れてしまう、とでもいうように。 「わたしを無理に結婚させたお父様も、止めてくださらなかったお母様も、こんな機械でわたしを縛りつけるあなたも、みんな、みんな、だいっきらいっ!!」 少女は台からすべり降り、横にあった燭台をにぎりしめると、複雑にからまりあった装置にむかって振りあげた。 「やめるんだっ!そんなことをしたらっ!」 「いらないっ!こんな命なんてっ!」 細い腕のどこにそんな力があるのだろう。キャラウェイは次々に装置を打ち砕いていった。床にはクリスタルの破片が飛び散り、薬品や生命の水が流れだす。 不老不死を与える装置。 だれも幸せにしなかった装置。 キャラウェイの叫びと装置の砕ける音が、ゼルガディスにいちばん思い出したくない奴の言葉を思い出させる。 『分にすぎた技術を持つのは不幸ですよ』 ―誰が決めた、そんな分…― 胸のうちで言い返し、ゼルガディスは緑がかった青い瞳に決意をひめて呪文を唱える。 「魔皇霊斬っ!」 ヴンッ! 一閃した剣が赤くかがやき、魔力がこもる。 「うぉぉぉっ!」 ゼルガディスに対峙するのは、リフラフの金の瞳。。 人であることを自らやめた、強くて、少し哀しい獣の瞳。 振りおろされるリフラフの剣を下から撥ねあげ、後ろに飛びのきながらゼルガディスは横一文字に剣をふるう。 ざんっ。 赤くかがやくゼルガディスの剣が、リフラフの腹を大きく薙いだ。 黒い獣毛にみるみる赤黒い染みがひろがり、したたりおちてリフラフの足元に血溜りをつくる。 「ぐ…がぁぁ…」 リフラフの動きがとまった。だが次の瞬間、傷口を押さえもせずに、剣をゼルガディスに向かって上段に振りかぶる。 そこに再び光の柱が放たれた。 「烈閃砲っ」 「ごがっ…」 リフラフは短くうめいてその場に倒れた。 |
2681 | 哀しい獣の瞳 5 | wwr | 1/28-23:44 |
記事番号2677へのコメント 動かなくなったリフラフに一瞬だけ目をやり、ゼルガディスは剣を納めると実験台にかけよった。青白い顔をしたアニスを抱き起こして口もとに耳をよせる。 ―まだ息はあるな― ゼルガディスはアニスを抱きあげると、クローヴ達の動きに注意しながら隙をうかがう。 「キャラウェイっ!よすんだっ!!」 クローヴはキャラウェイから燭台を取り上げると、細い腕をつかんで取り押さえた。 「リフラフっ!どこにいるのっ、 リフラフーっ!!」 「呼ぶんじゃないっ、あんなキメラ」 キャラウェイの肩をつかんで揺さぶり、嫉妬まじりの声で怒鳴りつけるクローヴ。 「いやーーっ!はなしてっ」 そのとき、力強い腕が二人を引きはがした。 「リフラフッ」 「ぐ…うぅぅぅ」 床に赤い血の跡を点々とつけながら、リフラフは二人の間に割り込むとキャラウェイをかばうように抱きよせた。 「ぐ・る・る・る・」 「どけっ、リフラフっ」 クローヴは手近にあったメスをつかんで振りあげた。リフラフはその手首をつかむと、ぎりりっとねじりあげる。 「つっ…リフラフ……この恩知らずが…」 後ろにねじりあげられた手からメスが落ち、クローヴはその場に膝をつく。 「きらいよ…わたしの言うことにさからわない…お前も…きらい…」 リフラフの腕の中で、キャラウェイは泣きじゃくりながらうったえる。リフラフはその耳元でなだめるように、静かに喉の奥をならした。 キャラウェイは、しゃくりあげながらうなづくと、涙にぬれた顔をリフラフの胸にうずめた。リフラフの手が、少女の乱れた銀の髪をそっとなでる。 ―そんなに、お辛かったのですか…キャラウェイ様― 申しわけありません。お守りすると約束しましたのに。キャラウェイ様は小さかったから、憶えてらっしゃらないかもしれませんけれど。自分は約束は守ります。もう辛い思いはさせませんから…。 黒い獣人は、その胸で泣くかぼそい少女を優しく抱きしめた。 クローヴは、そんな二人の姿をギラつく目で睨みつけた。くいしばった口もとから、すがるような声がもれる。 「…ちがう…キャラウェイ…お前は私の…」 壁に寄りかかるようにして立ち上がり、クローヴは呪文を唱えはじめる。 「全ての力の源よ。輝き燃える赤き炎よ…」 ―まずいな― ゼルガディスはアニスを片腕にかかえたまま、タイミングを合せるようにして呪文を唱える。 「火炎球!」 「氷結弾」 キィィィィン。 シュパァァン。 クローヴが二人に放った赤い光球に、ゼルガディスが出現させた青い光球がぶつかった。二つの呪文は相殺され、たちまち実験室は濃い水蒸気に包まれていく。ゼルガディスはアニスを抱えなおすと、必死に目をこらしてリフラフ達の姿を探した。 「ゼル…ガ…ディス」 たどたどしいリフラフの声とともに、たちこめる水蒸気の向うからきらりと光るものが飛んできた。ゼルガディスが片手でそれを受けとめると、それは青く輝く宝石の護符。 水蒸気の中でちらりと見えたリフラフの顔は、深手を負っているはずなのに微笑んでいるように見えた。どこか安らいだ表情のキャラウェイをその腕に抱いて、リフラフは離れへと続く通路に向かって歩き出す。 後を追って実験室を出ようとしたゼルガディスの耳に、クローヴの唱える呪文が飛びこんできた。 ―この呪文は!?― 「逃げろっ、崩れるぞっ!」 ゼルガディスは先を歩くはずの2人に叫び、自分も幾重にも風の結界をまとう。その時、床にすわりこんだクローヴから、呪文が放たれた。 「礫波動破」 力ある言葉に応え、クローヴが床につけた両腕から生まれた波動が、大地を揺り動かした。本来なら大地を通して、一定の地点に地震に似た振動をおこす魔術なのだが、クローヴは自分を中心に、ただ波動を放ちつづける。 館がきしみ、壁がゆがむ。 天井は音を立ててくずれ落ち、長い年月をかけて作り上げてきた数々の設備が、瓦礫の下敷きとなって押しつぶされてゆく。ずらりと並んだクリスタルの容器はつぎつぎと砕け、生命の水の中でまどろむコピー達は、一度も目覚めることなく冷たくなっていった。 ―なにが…いけなかったのだろう…― 誰もが望む永遠の美しさを与えたのに、ひとかけらの微笑みも私の手には入らなかった。 『愛しているよ、キャラウェイ。 華もドレスも宝石も あふれるほどに、ふりそそごう。 お前がそれを望むなら どんなことでも叶えてやろう。 だから……どうか…… 私を愛しておくれ』 ―心を求めては…いけませんか?…― 愛され方を知らず愛し方を間違えた魔道士は、崩れ落ちる館の中で、そんなことを思ったのかもしれない。 土煙のあげてくずれゆく館から、白い人影が宙に舞い上がる。気を失ったままのアニスを抱えて飛ぶゼルガディスだった。 崩壊する館を無言で見おろす。 ―あいつらは…― 自分と同じくキメラの体を持つリフラフは、あの傷でも助かるかもしれない。だが、歪んだ愛で少女の時を止めていた者はもういない。押し止められていた時間は奔流となって彼女を飲み込み、そして…。 みずから望んでキメラとなった男は、その長すぎる生を悔いることもなく墓を守って過ごすというのだろうか。 「そういう生き方も、あるんだろうな」 ゼルガディスは一人つぶやいた。 「だが、俺にはできん……」 欲しいものは、いつも手の届かないところにある。力も、人の体に戻る術も、共に旅した大国の姫も。 身の程知らずだといわれても、あきらめることなどできはしない。悪あがきと言いたければ言えばいい。 ふと視界の隅に動くものを見つけ、ゼルガディスは目をこらした。それはこちらを見上げて必死に手をふるグェンだった。なにか叫んでいるようだが、風の結界にはばまれて聞こえない。 近くの地面に降り立つと、ゼルガディスは結界をといた。 「アニスっ、大丈夫かっ!」 駈け寄ってアニスの体を抱きしめるグェンに、ゼルガディスはそっけなく言う。 「気を失っているだけだ。しばらく静養すれば元に戻る」 「あんたが助けてくれたのか?」 「そういうことになるようだな」 「あ、ありがとう。あんた、いい人なんだな。見かけによらず」 「大きなお世話だ。それよりなぜ、お前がここにいる」 「おれ手紙に書いたんだよ。あの木の下で待ってるって」 そう言ってグェンは一本の大木をゆびさした。それはグェンが村にいた頃から、アニスとの待ちあわせに使っていた場所なのだという。ゼルガディスに手紙を託してから、グェンはあの木の下で待ち続け、そして轟音とともに館が崩れる光景を目にした、ということだった。 「一体なにがあったんだい?」 グェンになんと答えようか、ゼルガディスが迷っていると、大勢の人間の近づいてくる気配がした。異変に気づいた村人達がやってきたのだろう。やっかいなことになる前に、ゼルガディスはその場を離れることにした。 「魔法実験の事故だ」 簡単に言って、気配と逆の方向に歩きだす。 「それで、クローヴ様は?」 「……俺は……知らん」 嘘ではない。最期を見届けたわけではないのだから。 まだなにか聞きたそうなグェンをその場に残し、ゼルガディスは足早にその場を立ち去った。 「おーーい…ほんとうに…ありが…と…う…」 グェンの声は風にのって、かすかにゼルガディスの耳にも届いただろう。 夜明け前、星が最も輝くころ、ゼルガディスはこの辺りの地理を頭にうかべながら、うっそうと茂る森の中を歩いていた。 ―確か東の方角に、大きな都市があったな。なにか情報がつかめるかもしれん…― ゼルガディスは浮遊の呪文で舞い上がると、一本の高い木の上に降りたった。方角を求めて星空を見上げる。 『道に迷った時は、あの星を探しなさい。ゼルガディス』 かつて盲目の法師は、その見えない瞳を北の空に向け、明るく輝く星を指差した。 『あの星は「水竜王の玉座」一年中その位置を変えることなく北をさししめす星です』 ―星の見方を教えてくれたのは……あんただったな。レゾ…― まだ全てを許すことはできない。だけど以前のように憎む気持ちもおきなかった。 それはたぶん……。 『ゼルっ、たのんだわよっ』 誰かに信頼されること。 『こっちは任せとけっ、ゼルガディス』 自分の背中を預けて戦えること。 『だめですっ!ちゃんと治癒くらい覚えてください…ゼルガディスさん』 誰かを大切に想うこと。 想われること 数えきれないくらいの大切なことをうけとって、今の自分があるからなんだろう。 「……アメリア……」 ゼルガディスは宝石の護符をとりだすと、両の手のひらにのせ月明かりにかざした。聖なる五芒星をやどした青い宝石の護符は、月光をあびてその透き通るような輝きを増してゆく。やがて、したたるほどに月光をふくんだ宝石の護符は、かすかに震え、そして光がほとばしった。 宝石の護符からあふれ出た光はゆるやかな弧をえがき、夜空に銀の橋をかける。ゼルガディスが立つこの地から、いまは遥かなセイルーンへと。 待っていてくれ、とは言えなかった。 縛りつけることはしたくなかった。 それでもアメリアは、旅立つゼルガディスにこの宝石の護符を渡して見送った。ただ一言。 「いってらっしゃい。ゼルガディスさん」 いつもの笑顔でそう言って。でも黒い大きな瞳は、今にも涙がこぼれおちそうで。思わず抱きしめたアメリアの小さくてやわらかな体。 あの笑顔とぬくもりが胸によみがえるたびに、ゼルガディスは思う。 まだ前に進める。世界中を旅して、たとえどんなに失望を重ねても、俺は前に進める、と。 いつしか銀に輝く橋は夜風にさらわれ、星屑のようにきらめきながら、その姿を散らしていった。星たちが瞬く夜空に白くマントをひるがえし、ゼルガディスはその身を宙におどらせる。 「浮遊」 ふわりと地面に降り立つと、ゼルガディスは確かな足取りで東に向かって歩きはじめた。 その胸に消えることない灯りを抱いて。 また、旅がはじまる。 ―終り― |
2684 | ゼルの旅路 | 小野道風 | 1/30-01:17 |
記事番号2681へのコメント wwrさま。 こんばんは。 はじめまして。小野道風というものです。お話、読ませていただきました! 私もよく、ゼルの旅はあの後(TRYの後)どうなるのかなと考えることがあります。 >「だが、俺にはできん……」 過去のしがらみを自分なりに受け止め、今の生き方を確かに自分の手で択んで歩いているゼル。 >誰かを大切に想うこと。 >想われること >また、旅がはじまる。 アメリアと別れるときも、彼は振り返らなかっただろうと私はなんとなく思っています。 東へ向かって前だけを見つめ、歩き出すゼル。 次はどんな物語が彼を待ち受けているのでしょう? それがどんなものであったとしても、旅の行く末が暖かいものであることを、強く願ってやみません・・・ 素敵なお話を、ありがとうございました。 |
2687 | ありがとうございます。 | wwr | 1/31-10:44 |
記事番号2684へのコメント > はじめまして。小野道風というものです。お話、読ませていただきました! ありがとうございます。 > 私もよく、ゼルの旅はあの後(TRYの後)どうなるのかなと考えることがあります。 やっぱり気になりますよね。 荒野でもどこでも、元気でいてくれればいいのですけど。 > 過去のしがらみを自分なりに受け止め、今の生き方を確かに自分の手で択んで歩いているゼル。 TRYで「俺が俺でなくなるのはゴメンだな」 と言えたゼルですから、きっと自分で自分の生き方を選んで、 それを後悔はしない、と思うのです。 > アメリアと別れるときも、彼は振り返らなかっただろうと私はなんとなく思っています。 う・う〜ん。私としては、アメリアちゃんの姿が見えるうちは、カッコつけて振りむかずに歩いていって、アメリア ちゃんの姿が姿が見えなくなった地点で、「くぅぅっっ」と一瞬だけ悩んで欲しいかなーと(汗) ゼルって結構カッコつけだと思いますので(笑) でもそこが好きだったりします。 > 東へ向かって前だけを見つめ、歩き出すゼル。 >次はどんな物語が彼を待ち受けているのでしょう? > それがどんなものであったとしても、旅の行く末が暖かいものであることを、強く願ってやみません・・・ はい。どんなに苦労したり、悩んだりしてもいいですから・・・・・・本当に最後には幸せになって欲しいですよね。 > 素敵なお話を、ありがとうございました。 いえ、こちらこそ感想ありがとうございました。 |