◆−そして海の四人組(下)−小野道風(5/1-05:17)No.2953 ┗再登場してしまうとは・・・−UMI(5/6-14:40)No.2963 ┗ あぁぁ・・・もう・・・(汗)− 小野道風(5/15-12:34)No.2995
2953 | そして海の四人組(下) | 小野道風 | 5/1-05:17 |
こんにちは。 このお話は、UMIさまの楽しいゼルガディス受難のお話「禁句」を元に、UMIさまの許可をいただいて小野が妄想したゼルアメものです。 良かったら、楽しんでいって下さい。 UMIさま、お約束しておきながら投稿させていただくのが滅茶苦茶遅れてしまいました。本当にすみませんでした(汗)。 このお話を、いつも素敵なゼルアメものを読ませて下さるUMIさまに心を込めてささげます。 ======================================================================================= 「なんでこうなるんだ・・・」 ゼルガディスはつぶやいた。船の舳先で蓑虫の蓑のごとくロープにぐるぐる巻きにされた彼の目の前では、夕陽が鮮やかに赤光を滴らせながら自らも海中へ溶け沈んでいこうとしている。彼のかたわらでその夕陽にぴたりと人差し指を突きつけ、片手を腰に当てた姿勢でアメリアは大きくうなずいた。 「正義のためですっ。悪の手先が海の中にいるとわかった以上、放っておくわけにはいきません。今こそ私とゼルガディスさんの愛の特訓の成果を彼らに教えてあげましょう。ねっゼルガディスさん!」 「俺に同意を求めるな」 ゼルガディスは渋い顔で周囲を見渡した。相変わらず猛烈に不機嫌でそっぽを向いたままのリナ、そんなリナをあやし顔で眺めているガウリイ、そして瞳に南十字星を宿らせたアメリア以外、甲板に人影は見当たらない。 「他に聴衆がいないのがせめてもの慰めか」 「ほら、見て下さい。燃える夕陽もゼルガディスさんを応援していますよ!」 「沈みかけてるぞ」 「あの先に待っているのは愛と希望に輝く明日じゃありませんか!」 「・・・まったく、なんでこうなるんだ・・・」 ゼルガディスはもう一度ため息まじりにつぶやいた。こんな事が前にもあったとしみじみ回想に耽りつつ。 時間は少し戻る。 べちんっ 海からの飛来物はゼルガディスの前頭部をいやというほどしたたかに直撃した。衝撃のあまり思わず膝をついたゼルガディスへそのままするすると巻ついたそれに、リナは見覚えがあった。一抱えはあるとてつもなくでかい海生軟体動物の足、うにょうにょとうごめく大人の手のひらサイズの吸盤つき。以前このメンバーで宝探しに出た時に遭遇したやつではないか。アメリアが小さく悲鳴をあげて船舷に駆け寄る。 「ゼルガディスさん!大丈夫ですかっ!?」 「ねえアメリア、前も思ったんだけどさ、あれってタコだと思う?それともイカかな?焼いて食べたらおいしそうだと思わない?」 「リナさんっ!!」 アメリアの鋭い声が飛んだ。足がゼルガディスを海に引きずり込もうとしている。 「あっひとの便利アイテムその3を持ち逃げしようったってそうはいかないわよっ!」 「その3って・・・その1とかあるんですか・・・?」 「「あれ」に決まってるでしょ、「あれ」に」 リナは少し離れたところでなお幸せそうにゆらゆら船を漕いでいる金髪美貌の青年剣士を目で指した。 「じゃその2って・・・もしかしなくてもわたしなんですね、リナさん・・・」 「わかってればよろしい。おりゃっ」 軽い掛け声と共に止める間もなく放たれた竜破斬は、顔に巻きつかれた部分をひきはがしようやく戦闘体制に入ろうとしていたゼルガディス込みで、みごとイカタコ足を轟沈した。沸き上がった水飛沫が船上をヴェールのように覆いつくし、陽光を反射してきらめく。 「みてアメリア!虹だわ!」 「リナさん・・・ゼルガディスさん真っ黒焦げになって沈んじゃいましたよ・・・」 「ねえ、これってつまりあれよね。若い女の子ばかり消えるとかいう例のものすごくうさん臭い話の正体」 さらに数回イカタコ足の襲撃が繰り返された時点で、リナはそう結論づけた。 竜破斬こそ一度きりだったものの、火炎球やら氷の矢やらのとばっちりをさんざん食らっていいかげんくたびれたゼルガディスが、さらにくたびれたように肩を落とす。 「なんでタコが若い娘を襲うんだ?」 「んなこた知らないわよ。タコに聞いたら?」 「でも一番狙われてたのゼルガディスさんでしたよ。どうしてわたしやリナさんじゃなかったんでしょうか」 アメリアはあどけない仕草で小首をかしげた。リナもきょとんとアメリアを見返す。初めてその疑問に行き当たったらしい。顎に手をかけ、眉をひそめて、 「そういえばそうよね。攻撃しやすくてありがたかったけどさ、タコ足に巻きつかれるなんて絶対にいやだし。でもほんと。なんでだろ?」 リナたちは過去の被害者の情報を調べてきている。行方がわからなくなっている娘たちは下は14から上は18までの十数名、ちなみに怪談話の影響でこの年齢層に引っかかりそうな女の船客がリナとアメリア以外にいないのは言うまでもない。その二人を差し置いてゼルガディスが襲われたのはどう言うわけか、会話の行きがかり上その二人の「若い娘」の焦点はゼルガディスに結ばれた。ゼルガディスがさりげなく視線を逸らせる。二人が襲われなかった理由はおおむね推測出来る・・・だが口を閉ざす以外にどうしろというのだ。 が、それまでのんびり三人の顔を見比べていたガウリイが、至って朗らかにかつあっさりと、ゼルガディスのこの密かな緊張を破った。 「そりゃあリナはムネがないからだろ」 「なっ・・・」 リナがガウリイに詰め寄る。顔を真っ赤にし、わなわなと唇を震わせながら、 「どーゆー意味よそれ!ゼルだってないでしょ!男なんだから!!」 「落ち着け、リナ」 ゼルガディスは慌てて間に入った。船上で竜破斬などかまされてはたまらない。 「しょせんイカタコだ。「剣をもってるのは男」とかいうしょうもない類の選択をしているのかもしれん。お前さんはダガーを持ってる。あれだって立派な剣だろう」 ガウリイが明言するほどにリナが「ない」とはゼルガディスは思わないが、例えば遠目から、あるいは水中からこっそり見ているような場合には、そのように映ることもあるかもしれない。だからと言ってなぜ自分が襲われたのかという疑問が消えるわけではないが。 「でもわたしは武器なんて持ってませんけど・・・どうしてなんですか?ゼルガディスさん」 正義を広めるためにアメリアはなんとしてでも敵に遭わねばならず、自分が襲われなかったことが素直に不思議でもあった。アメリアにとって、こういうときのゼルガディスは彼女には解けない現実的な謎になにかしらの答えを示してくれる良き理解者である。 が、「良き理解者」ゆえに一瞬返答に詰まったゼルガディスの隙をついて、高らかに言い放ったのはリナだった。妙にとげがあるのは彼女の乙女心というものであろう。 「そんなの決まってんじゃない。あんたがお子ちゃまだからよ!いくらムネがおっきくてもお子ちゃまじゃお話になんないんですよーだっ」 いささか子供子供していることをアメリア自身気にしているのはゼルガディスも知っていた。アメリアのひるんだ、傷ついたような視線が真っ向からゼルガディスのそれとぶつかる。 「ひどいですリナさんっ。わたしそんな・・・そんなに、女の子らしくないですか・・・?」 最後はゼルガディスへの問いかけだった。彼を映した瞳がしっとりと潤んで見える。ゼルガディスはうろたえた。 「いや、俺は、決してお前が女らしくないとはだな・・・おい泣くな・・・頼むから」 「とにかくこれで決まりねっ。釣餌はゼル、あんたよ!」 憤然と腕を組み、リナはそっぽを向いて言い捨てた。 「ガウリイは年食い過ぎ、あたしは女じゃなくてアメリアはお子ちゃまらしいから、ここはあたしやアメリアなんかよりずーっと女らしーいゼルちゃんじゃなきゃねえ」 「なんだと」 「ふんだ。じゃあアメリアにばっちり化粧でもさせて代りに沈んでもらうっての?」 ゼルガディスは軽く目を閉じ、おもむろにため息をついた。 「・・・俺が行こう」 そして現在。 「真実と正義と特訓の成果を今ここに!行きますよゼルガディスさんっ」 「気ぃつけていけよー」 「女装させられないだけありがたく思いなさい。しっかり沈んでとっ捕まえてくんのよっ」 ざっぱーん。 (俺が受けたのは浮く特訓だったんだがな・・・あれが特訓だったとすれば) などという些細な反論を胸に秘め、息つぎホースと共にゼルガディスが細いが高い水柱となって消えて程なく。 「烈火球!」 「烈閃槍!」 「氷結弾!!」 沿岸の町々では沖合いに舞い飛ぶ怪光が長時間に渡って観測されたという・・・。 数日後、澄み渡る晴天の下、船は無事目的港に着岸した。 「なあリナ、なんだか何も解決してない気がするんだが・・・これでよかったのか?」 「イカタコをローストにしたじゃない。船会社だって満足して報酬くれたんだし、これでいいのよ、これで」 そんな会話を交すリナとガウリイの後ろで、アメリアは元気良く歩を進めながら傍らのゼルガディスを見上げた。 「悪も一つ滅びたし、ゼルガディスさんも特訓が成功したし。ほんとによかったですね!」 ゼルガディスは前方を見つめたまま、 「俺はお前とリナの攻撃呪文に巻き込まれていただけだ」 「でも苦手な海に自分から入っていけたなんてすごいじゃないですか」 この娘、相変わらず何もわかっちゃいない。これだからリナにお子ちゃまなどといわれるのだ。ゼルガディスはごくかすかに一人顔を赤らめた。しかしアメリアのそういう所もゼルガディスは嫌いではない。何事にも前向き過ぎるその瞳と同じく。つい、微笑が漏れた。 「・・・そうだな、お前が正しいのかもしれんな」 「その意気です!」 言葉の強さにゼルガディスはおそるおそる傍らを見やった。アメリアが笑顔をきらめかせている。彼の上空いっぱいに広がるこの晴天と同じくらい、不吉なほどに底抜けな笑顔。アメリアが片手を差し出すと、その手のひらには紙が一枚載っていた。 「・・・なんだそれは」 「じゃーん。特訓メニュー第二弾でーす!」 「・・・」 「一生懸命考えたんですよ。どうしたらゼルガディスさんの力になってあげられるのかなあって。わたしも及ばずながらできるかぎり協力しますね。さあ行きましょうゼルガディスさん!今日もこんなにいい天気ですよ!!」 「・・・なんでこうなるんだ・・・」 溌剌と駆け出すアメリアの後ろ姿を見送りながら、ゼルガディスは一人喉奥でつぶやいた。 かくて再び陸路に入った四人組。そんな彼らにとって、「イカタコは魚人さんのペットで、一連の事件は慢性嫁不足に悩む魚人さんが起こしたものだった」とか「その魚人さんを倒さなかった以上事件は繰り返され、娘さんたちも還って来なかった・・・うまく魚人さんと恋仲になった人もいたけど」とか「リナたちの魔法の影響で津波発生、付近の港町十数個壊滅」とか、ゼルガディスにとって一番恐ろしいことに「彼がしつこく狙われたのはあまりにタイプだったために本当に彼を女と見間違えていた魚人さんがいたからだった」とかいうことはもはや何の意味もない話である。 ということにしておこう・・・。 おしまい。 |
2963 | 再登場してしまうとは・・・ | UMI | 5/6-14:40 |
記事番号2953へのコメント 小野さん、遊びに来ました。 う〜〜ん、楽し過ぎるお約束のオンパレードでもう、笑いました。 それにしても、まさかあのイカタコが再登場するとは・・・リナのドラスレを二発食らってなお生きているとはゴキブリ並みの生命力ですね。それともこのお話のイカタコは別物なのでしょうか?親戚か何かだったのかも・・・ >「なんでこうなるんだ・・・」 といわれましても、ゼルガディス・アメリア・水、とくればこうなるしか無いというか・・・期待を破らないゼルガディス、偉いぞ(違うって) >「・・・そうだな、お前が正しいのかもしれんな」 ゼルガディスは 何だかんだいってもやっぱりアメリアに甘いんですよね。結局最後は自分のほうから折れてしまう(笑)同じ目に会うことをしりつつも・・・ >「じゃーん。特訓メニュー第二弾でーす!」 おおお!やっぱりありましたか!きっと内容は前回のものよりグレードアップしているのでしょう(断言)2、5倍くらい(当社比) >「一生懸命考えたんですよ。どうしたらゼルガディスさんの力になってあげられるのかなあって。わたしも及ばずながらできるかぎり協力しますね。さあ行きましょうゼルガディスさん!今日もこんなにいい天気ですよ!!」 本当にアメリアはゼルガディスのためを思って、おそらく苦手な徹夜をして作ったんだと思います。ゼルガディスにとっては「気持ちだけでいい」というところなのでしょうが・・・ゼルガディスの受難はまだまだ続きそうですね。それにしても魚人さんの嫁不足は深刻な模様ですね。でもゼルガディスを連れてったからって解消されないぞ(笑) 楽しいお話ありがとうございました。お言葉に甘えて、上下とも遠慮なくいただきますね。もう、返しませ〜ん(笑)それと連載のお話も頑張ってください。私のほうは来週中に11話が投稿できそうです。遅れているので、ちょっとあせっています。よろしかったら遊びにきてください。 それでは、これで。本当にありがとうございました。 |
2995 | あぁぁ・・・もう・・・(汗) | 小野道風 | 5/15-12:34 |
記事番号2963へのコメント UMIさま こんにちは。読んでいただけたなんてとてもうれしいです。でも、あああ、もううう、なんだかほんとにはずかしいかぎりです・・・。 > それにしても、まさかあのイカタコが再登場するとは・・・ ひそかにお気に入りだったんです、イカタコ。なんだか想像するだけで楽しい(そしてちょっと不気味)なところが。 >>「なんでこうなるんだ・・・」 きっとゼルガディスは不本意でしょうが、「禁句」の中で、ある意味私にとって一番印象的に残ったセリフだったので(笑)、もう一回言ってもらってしまいました。アメリアに甘い自分に対する自嘲もほのかに含まれてたりしてる気も・・・そこがまた微笑ましいような、哀しいような(笑)。 > 本当にアメリアはゼルガディスのためを思って、おそらく苦手な徹夜をして作ったんだと思います。ゼルガディスにとっては「気持ちだけでいい」というところなのでしょうが・・・ゼルガディスの受難はまだまだ続きそうですね。 そして仲良し四人組と共にがんばって克服して・・・もとい、耐えてもらえたら楽しいんだけどな、なんて思ってるちょっと魔族な小野だったりします。フフフ。 > 楽しいお話ありがとうございました。お言葉に甘えて、上下とも遠慮なくいただきますね。もう、返しませ〜ん(笑)それと連載のお話も頑張ってください。私のほうは来週中に11話が投稿できそうです。遅れているので、ちょっとあせっています。よろしかったら遊びにきてください。 もう、ほんとにほんとに、押し付け逃げの気分です。受け取って下さってありがとうございました。UMIさま、いつも素敵なお話を読ませていただけて、とてもうれしいです。私はUMIさまの描かれるアメリアがとても好きです。思い入れが深くて書きにくいとおっしゃっておられましたけれど、UMIさまのアメリアはほんとに素敵な女の子で、読む度に明るい気分になれる気がするんですよ。またよかったらぜひ、アメリアのお話なども(UMIさまが作られたという年表にまつわるエピソードとか・・・)読ませてください。UMIさまのご迷惑にならない範囲で、楽しみにお待ちしていますね。私の方も、相変わらずのマイペースながら「聖都・・・」の続きを投稿させていただこうと思っているところです。気が向いたら、またぜひ遊びに来てやってくださいね。 今から11話の方におじゃまするつもりです。楽しみです! では、また。 |