◆−聖戦の旋律 序章(オリジナル)−雪畑(5/29-19:56)No.3082


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3082聖戦の旋律 序章(オリジナル)雪畑 5/29-19:56



雪畑です。
何時もはガウリナ書いてますが気が向いたのでオリジナル。(笑)
思いっきり続き物ですがいつ続き書くかは不明。(待て)
こんなものでよければお付き合いください♪


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聖戦の旋律。〜序章



「何人だ?」
「20と3人。」
青年の声に少女が答える。
青白い月光に照らされて金色の髪が艶やかに輝く。
その真紅の瞳は闇を見ていた。
「甘く見られてるみたい。」
肩を竦める少女。
腰にある剣に手を触れる。
「たかが16の小娘に本気になる奴はいないだろ。」
「油断大敵。」
「そう言うことだ。」
そして青年も剣に手を掛けた。
慣れた手つき。
戦いを生き抜いてきた戦士。
彼の雰囲気がそれを物語っていた。
「どう思う?」
「後5分もすれば矢を射ってくるだろう。」
 確実とは言いがたいが安全だ。」
少女の問いに澱みなく答える。
「先手必勝っ☆」
「そう言うことだな。」
その言葉と同時に。
少女と青年は剣を抜いた。



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冷たい風が廃墟と化した街に吹く。
どうと言う事もないが趣味が悪い。
人影は見当たらない。
つまり。
自分以外に人間はいない。
「怪物はいるみたいだが。」
目の前を蠢く巨大な蛇(のようなもの)を前にロゼ=ストゥルは一人呟いた。
黒い髪と黒い瞳。
容姿は間違いなく美男子の部類に入る。
「さっきから4匹目。妙だな。」
怪物と呼ばれる存在は普通、傭兵が一生で一度お目にかかれるか程度である。
いかに廃墟とはいえ一日に4匹も見れるものではない。
そして普通の傭兵が一日に4匹も倒せるほど弱い相手でもない。
(考えても仕方が無いか。)
剣を抜いて巨大な蛇(のようなもの)に向き合う。
彼にとっては大した相手ではない。
問題は無かった。
――はずだった。
「でっかい蛇ね。」
聞こえてきた女の声に慄然とする。
気配は無かった。全く。
「・・・『猛き炎』」
ごうっ。
女の声と同時に巨大な蛇(のようなもの)が炎に包まれ、倒れる。
あっさりと。
並みの戦士なら命をも賭ける相手をたった一言で。
魔法。
一つの言葉が脳裏を掠める。
そんな筈は無い。魔法など、存在するわけが無い。
御伽噺の中の出来事――
が、これは現実。
――背筋が凍る。
「何者だ?」
「そっちこそ。こんなとこで何やってんのよ。」
何をしているのか。
――何時から俺はこうなった?
頭に浮かんだ問いに苦笑する。
「次の街への道だ。仕方ない。」
「綺麗ね。」
「?何が・・・・」
「綺麗な色してる。」
彼女――だろう多分。の言っている事は何一つ理解できなかった。
理解できないまま声は続ける。
「でも寂しそう・・・・」
声は後ろから聞こえてきた。
さっきまで無かった気配が生まれ出る。
「っ・・・・」
慌てて振り向く。
そして驚愕する。
彼女はただ其処にいた。
宙に座ってこちらを見ていた。
肩に届くほどの金の髪。炎のような真紅の瞳。
こちらが何も言えないでいるうちに少女は言葉を紡いできた。
「リチェよ。リチェル=フィアドーレ。
 あんたは?」
こんな事は有り得ない。
それなのに彼の口は動いていた。
「・・・・ロゼ=ストゥル」
「じゃあ、ロゼ。」
明らかに年上の男に物怖じせず話し掛ける。
肩を竦めて少女――リチェが言った。
「お願いがあるの。あたしを護衛してくれない?
 命、狙われてるみたいでさ。」



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「護衛の必要は無いと思うが。」
倒れ伏す男たちを見て心底そう思う。
剣を抜いて――1分も経たない内にこの有様。
「あんただって倒してたじゃない。」
「6人ほどな。」
剣を鞘にしまい、言う。
「理由については言ったでしょ。
 街中で魔法を使うわけにはいかないって。」
「この前酒場で男をぶっ飛ばしかけ・・・・・」
「さあ、行くわよロゼっ。」
話を無理矢理終わらせてリチェが走り出す。
溜息を一つついて――ロゼもその後を追った。
「どこに行くんだ?次の街まであと3日はかかるぞ。」
「・・・野宿?」
――そうなるな。
言葉を返そうとして凍りつく。
鋭い殺気。
「リチェっ!!」
我知らずロゼは叫んでいた。
狙われているのは彼女。
が、
飛び来る短剣はロゼの肩に刺さっていた。
「くっ・・・」
「ロゼ!?」
肩の痛みは無視して神経を研ぎ澄ませて辺りを探る。
気配はあった。
位置までは探れなかったが。
「『弾け・・・・・」
リチェの五感の鋭さはロゼを軽く超えている。
標的に放とうとしたのだろう魔法が途切れる。
「消えた・・・・?」
リチェの科白に力を抜いて問う。
「お前の知り合いか?」
「違う・・・・と思う。」
珍しく自信なさげにリチェが答える。
「・・・かなりの手練だな」
「うん。なんせあんたに・・・ってケガ!
 大丈夫なの!?」
「大したケガじゃない。」
防げたはずだ。あの程度の攻撃ならば。
何故防げなかった?
剣を抜くと今更ながら痛みが走った。
「毒は塗ってないようだ。」
「『癒せ泉』。」
呟く少女の手に光が溢れる。
一瞬後、ケガは跡形も無く消えうせていた。
「こんな事まで出来るのか。」
「まね。」
得意げに言う少女。
こちらの視線には気付いていないのか後を続ける。
「ここを離れたほうがよさそうね。」
「ああ。
 夜の山道は危険だ。急ごう。」
「一刻千金。」
「そう言うことだ。」
濃紺の空に月は佇む。
ロゼはリチェの横に寄り添い歩き出した。
 
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