◆−聖戦の旋律。〜第一章−雪畑(6/1-20:22)No.3094
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3094聖戦の旋律。〜第一章雪畑 6/1-20:22


聖戦の旋律。〜第一章


大都市リッカ。リス=カラリア。世界でも有数の大都市である。
金さえあれば大抵の物は手に入る場所。
酒でも女でも武器でも麻薬でも。――人の命でも。


「街!!」
「そうだな。」
「しかも大都市っ!」
「ああ。」
前をすたすた歩く男の前に回りこみ指を突きつけて少女が言う。
「無愛想っ。」
その科白に合う適当な答えが見付からないのでとりあえず溜息をつく。
「どうしろって言うんだ。」
「『街だっ!』とか。
 『しかも大都市だっ!』とか。
なんか言う事あるでしょーがっ。」
リチェル=フィアドーレ。
金髪で真紅の瞳の少女である。
無意味にエネルギーを発散するこの少女との付き合いももう3ヶ月になる。
「とにかく宿を探すぞ。」
「そこら辺にいっぱいあるけど。」
「・・・・行くぞ。」
「了解!」
敬礼して言ってくるリチェに笑みを返して町を見渡す。
大都市の名を持つだけあって人通りは多い。
「で、どこの宿屋にするの?」
「適当に決める。」
何気ない会話。そして日常。
そう。それが幸せと言うモノかもしれない。



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「ロゼ=ストゥル殿。」
食事も終わり、リチェも部屋に帰った頃。
つまり夜。
唐突と言えば唐突に呼びかけられた。
持ち上げかけたグラスを置いて視線を向ける。
「何の用だ。」
そこにいたのは見るからに妖しげな黒装束の男。
汚らわしいような物でも見たかのように顔を顰めているのが見て取れる。
「話があるのですが・・・ご足労願えますかな?」
「行く理由がない。」
言葉遣いだけは丁寧な男に言い返す。
自分から厄介事に首を突っ込む趣味は無い。
「リチェル様の事で・・・」
「リチェル・・・『様』?」
「はい。」
馬鹿げている。
自分はあの少女の護衛をしているに過ぎない。
目的は護衛――リチェはただの依頼人。
(何故迷う必要がある?)
自問しても問いは帰ってこない。
だから。ロゼは本能に従う事にした。
「分かった。」
酒を飲み干して席を立つ。
思ったより背の低い男を見下ろして言う。
「行く。」


時間が無いのは分かっていた。
でも――
(あたしにも意地ってモノがあんのよね。)
死ぬ時に後悔だけはしたくない。
何か方法はある。きっと。
そのために旅に出たのだ。
窓を開けて独りごちる。風は思ったより冷たくなかった。
リチェル。
自分の名前を思い返すとき頭に浮かぶのは父の顔だった。
母の顔は知らない。
(父さん・・・)
尊敬する人物であり、仲の良い友であり、人生の先達であった。
(ロゼ、あいつは――)
自分の護衛。旅の共。相棒。
それなのに。どこか似ている。
(お惚け親父と無愛想男と。共通点なんて無いのにね。
 いや――)
笑みがこぼれた。
共通点。
(2人とも、綺麗な色してるのよね。)
魂。魂魄?
呼び方はいろいろある。
色んな人を見てきた。それと同じ数だけ魂の色を感じた。
自分に備わった力。神の奇跡。
魔法などただの目印に過ぎない。
「助ける。」
きっぱりと言う。
自分に。今までであった人々に。そしてどこかにいる世界の守護者へ。
「ん?」
ふと――気配を感じて窓の外に目を向ける。
「ロゼ・・・・・・・?」
そこにいたのはロゼと黒装束の男。
何となく嫌な予感がして。
リチェは細剣を手に取った。


宿の裏庭。
夜、ということもあって人影は無い。
(人を殺るには最適かもな。)
皮肉な事を考えつつ男の言葉を拾う。
「貴方はリチェル様とどのようなご関係で。」
「旅の共だ。」
護衛、と言っても良かったのだが、この男の正体が分からない以上、正直に物を言うのは危険である。
案の定、男は聞き返してきた。
「それだけですかな?」
「ああ。」
躊躇い無く即答して――
「――ならば死んで頂きましょう。」
大きく後ろに退る。
「『唸れ風』っっ!!」
「なっ!?」
ごうぉっ!!
流石にこれは予想していなかったか男が立ち往生する。
「これは・・・魔法!?」
「正、解っ!」
とんっ、と軽い音を立ててロゼの傍に降り立つリチェ。
おそらくは魔法で窓から飛び降りたのだろう。
「何時から聞いていた。」
「一部始終。」
リチェが舌を出して答える。
相変わらず気配は全く無かった。
「リチェル様・・・!貴様どうして・・・」
リチェに気付いたのか、と聞きたいのだろうが自分にも分からない。
気配は無かった。
胸中で繰り返して傍らの少女を見やる。
「以心伝心。」
「そうかもな。」
驚いたようにこちらを見上げる少女を無視して剣を構える。
が、男にはリチェと戦う気は無いらしい。
体の震えを隠そうともしない。
「あんた誰よ?」
リチェの問いに男は口を開いて――
動きが止まる。
「・・・!」
男は死んでいた。
短剣をその胸に受けて。
「あの短剣は・・・」
我知らずロゼは呟いていた。
3日ほど前、自分の肩に突き刺さったもの――
しかし。
あの時は感じた気配が今は無い。
「誰!?」
そしておそらくリチェにも知覚出来ないのか。
どこともなく呼びかける少女を庇うように前に立つ。
冷たい月の光に晒されて。
ロゼとリチェは立ち尽くしていた。

 
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3170聖戦の旋律。〜第二章(オリジナル)雪畑 6/11-23:26
記事番号3094へのコメント
聖戦の旋律。〜第2章〜


夢はあたかも陽炎のように。
目覚めれば歪んで消えていく――
「結局、音沙汰なしか。」
ロゼの呟きにリチェが答える。
「ぐーすか寝てた奴が言う科白じゃないと思うけど。」
「お前だって寝てただろ。」
会話が途切れる。
何故か居心地の悪さを感じてロゼは身じろぎした。
何時もと違う。
「・・・お前にどんな事情があろうと聞かない。」
長い沈黙の末、溜息とともに言葉を吐き出す。
少し勇気が必要だった。
「これからどうするかもお前の自由だ。」
「それでいいの?」
「ああ。」
即答したこちらに――少なからず驚いたのかリチェが弾かれたように顔を上げる。
苦笑して言う。
「飯。食いに行くぞ。」
「あ・・・あのさ。」
こちらの服の袖を握って。
こちらを見つめてくるリチェ。
この少女が初めて見せた年相応の少女の顔。
「今日の夜。あんたの部屋、行っていい?」



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20年と少し。生きてきた。
だけどそんなには賢くなれなかった。
『リチェル様とどのようなご関係で。』
頭の中をぐるぐると言葉がめぐる。はっきり言って不愉快だった。


ロゼ=ストゥル。
21歳。ハイストロカ出身。
両親は16年前の大震災で死亡。
親戚を転々としたが14の時、ある剣豪の弟子となる。
その元で並みとは言えぬ剣才を発揮。
その剣豪が死んだ後、旅に出る。


「探るほどの事じゃないわよ。」
ぶつぶつと呟きながら部屋を行ったり来たりする。
手には紙切れ。
ロゼ=ストゥルのことが書いてあるだけの。
「実はロゼがあたしの命を狙う暗殺者だ、
 なんてお約束な事あるわけ無いし。」
ぴた。
音をつけるならそのように足を止めてリチェは窓の外を眺めた。
空は薄暗かった。
要するに。昼ではないが夜と言うにはまだ早い。
「ロゼに全部話しちゃお。なんてね。」
ベットに腰掛けて足をぶらぶらさせる。
分かりきった事を考える自分に苦笑する。
父親以外では初めてだった。
自分の事を人間として扱ってくれたのは。
「・・・・全部。」
――この世界はどこから来て。
そしてどこへと流れ着くのだろう。


「『初めに在るのは光と闇――』」
「『生まれ出ずるは世界の基。』
 聖献の序章だろ?誰でも知ってる。」
聖献――要するに伝説集。
分かりやすく言うなら御伽噺、である。
少なくとも若い男女が夜、密室に2人きりでする話ではない。
皮肉な事を考えつつ、ロゼは目の前の少女に目を向けた。
「ん、とね〜」
霧の中にある道を探すような顔でリチェが考え込む。
「伝説、ってのは御伽噺なんだけど・・・
 たまには本当の事も入ってる実話というか・・・・」
「・・・簡潔に頼む。」
こちらの科白に反応したのか。
およそ少女らしからぬ仕草で窓に足をかけるリチェ。
「美人薄命。」
「簡潔すぎて分からん。」
「・・・・長くなるわよ?」
「いや・・・・」
「バランスが悪かったの。」
「は?」
唐突に真剣な目を向けてくる少女に間抜けな声で答える。
ゆっくりと。
リチェが口を開く。
「『疎き幻』よ。」
それが魔法を起こすための呪文だったのだと気付く頃には。
ロゼの意識は闇深く沈んでいた。


闇が在って光が在った。
闇の数だけ光が在った。
そして世界の基があった。

世界の基。万物の根源を成す存在。
それだけで良かった。

「世界の基はね。この世の闇と光の数を調節するの。」
流れ込んでくるイメージとリチェの声。

「別名『世界の守り神。』――守護者って奴ね。」
人に知られざる存在。

「『基』は聖門を管理する。
 闇と光。どっちにしても闇のほうが多くなる。
 闇を閉じ込めて、封印する。それが聖門の役割。」


「聖門が壊れればこの世は滅ぶ。
 闇と光。夜と昼。どっちが多すぎても生物は生きていけないわ。」
「お前は・・・何なんだ?」
ぼやける視界に舌打ちする。
微かに見えるリチェの輪郭。幻ではない。
現実。
いつの間にリチェの魔法から覚めたのか。
「壊れない玩具はないのよ。」
悲しみを湛えてリチェが言う。
「『基』もね。
 ――壊れた玩具は修理しなくてはならない。
修理するには――部品がいるわよね?」
気付いて、叫ぶ。
「生贄!」
「それ相応の、ね。ただの人間じゃ駄目。
 魂か何か知んないけど。とにかくあたしがそれって訳。」
窓の外を見るリチェの顔はこちらには見えない。
見たくない気もした。
その代わり、声が出る。
「魔法・・・・」
「そ。 魔法が使える者。神の奇跡を起こす者=生贄ってこと。
 目印見たいなもんよ。」
ただの目印。
人を容易に殺し、呪う力が。
この少女はそんなものを背負って生きてきた。
寒気がした。今更ながら。
リチェは顔をこちらに向けようとはしなかった。
夜は音なく更けていく――

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3171上のは「Re」がいりません。雪畑 6/11-23:27
記事番号3170へのコメント

けすの忘れてました。
間抜けな私を笑ってください。(笑)

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3176修正しました一坪 E-mail 6/12-12:54
記事番号3171へのコメント

笑われる前に『修正・削除 連絡伝言板』で連絡してくださいね。(笑)