◆−質問です。−海原 開花(6/24-00:35)No.3293 ┣はじめまして−一坪(6/24-01:02)No.3295 ┣では……「夢幻」1(オリジナルです)−海原 開花(6/25-00:54)No.3310 ┣「夢幻」2−海原 開花(6/25-00:56)No.3311 ┣「夢幻」3−海原 開花(6/25-00:57)No.3313 ┣「夢幻」4−海原 開花(6/25-00:59)No.3314 ┣「夢幻」5−海原 開花(6/25-01:01)No.3315 ┣「夢幻」6−海原 開花(6/25-01:03)No.3316 ┗「夢幻」7−海原 開花(6/25-01:06)No.3317 ┣おはようございます−一坪(6/25-05:21)No.3322 ┣Re:はじめまして−星月夜 葛葉(6/25-11:20)No.3323 ┃┗ありがとうございますぅっ!!−海原 開花(6/26-00:56)No.3339 ┗感想ですv−紅葉(6/28-16:32)No.3358 ┗ありがとうございますっ♪−海原 開花(6/30-01:01)NEWNo.3383
3293 | 質問です。 | 海原 開花 E-mail | 6/24-00:35 |
はじめまして、海原開花と申します。 で、タイトルの意味なんですけど…… ここって、オリジナルの小説投稿もありなんですか? 良いのなら投稿させていただきたいのですが……? どなたか答えを教えて下さい。それではっ☆ |
3295 | はじめまして | 一坪 E-mail | 6/24-01:02 |
記事番号3293へのコメント >はじめまして、海原開花と申します。 >で、タイトルの意味なんですけど…… >ここって、オリジナルの小説投稿もありなんですか? >良いのなら投稿させていただきたいのですが……? >どなたか答えを教えて下さい。それではっ☆ はい。全然OKです。 さすがにアダルトなのは困りますが。 では、楽しみにしています。 |
3310 | では……「夢幻」1(オリジナルです) | 海原 開花 E-mail | 6/25-00:54 |
記事番号3293へのコメント では、良いとのお返事をいただいたので投稿させていただきます。 ―――――――――――――――――――――――――― 「夢幻」 だん。 少々荒々しく、目覚しを止める。 木曜日の朝。一週間もそろそろ疲れてくる頃。 まだ少しまどろんでいたかったけど、そういう訳にもいかない。 今日も学校だ。 目覚しを一睨み、八つ当たり。あくびを一つ。いつもの部屋を見わたす。 大学進学のために田舎から出てきて、一年ちょっと住んでる家。 六畳二間の、東京ならば何処にでもある、ちっぽけなアパート。 いつもながら散らかってるのを見て、なんとなく肩を落として。 のそのそと起き上がる。と、左手の薬指に、何か光るものがあった……何? 白い、指輪?こんなもの、見た事無いし、して寝た覚えないんだけどなぁ…… ベッドに腰掛け、まだ半分寝たままでそれを抜こうとする。 ………………あれ?抜けない…… 再度チャレンジ。結果は同じ。 だんだん目が冴えてくる、同じように血の気が引いていくのが判る。 「何これ……」 あたし、美村 野重は、掠れた声しか出せなかった。 (はい。今回も主人公分け判りません。「みむら のえ」です。) はぁ、はぁ、はぁ……………… 指輪と格闘初めて10分。いろんな方法試してみたけど…… どーしよぉ…… 別にきつくて抜けないってのじゃない。第二関節から上に上がってくれないのだ。 無理やり上げようとしたら指が痛いし…… 「はぁ……」 しかも左手の薬指、なんて。 エンゲージ・リングはめられないじゃない! でも、この指輪だってエンゲージ・リングなのよね。 誰からもらったかも、いつつけたのかも分からないのにそれだけは分かる。 銀色っぽい白色で、真ん中に何かつけていた後のあるリング。 今彼氏がいないからばれると困るっていう心配はなくていいんだけど。 19歳、大学一年にまでなって彼氏いないっていうのも淋しいけど…… なんか余計に気落ちしてきた。思わなきゃよかった…… 何気なく壁にかかった時計を見る……9時10分!? さっき…………目覚し鳴ってすぐ起きたと思ったら、一時間経ってる!! 「うそぉっ!?」 ここからあたしの通う東京の某美大まではどうがんばっても1時間はかかる。 しかも今日は一限目から講義………… 「ち……こくぅぅっ!!」 あわてて飛び起きた。 もうダッシュで身支度をして玄関を出たあたしの目に飛び込んでくる朝の光。 いつもは大好きだけど今日は大嫌いっ!! 何で朝からこんな事やらなきゃいけないの?! ピンクのロングスカートなんかはくんじゃなかった…… 白いブラウスとよくあってて大好きなんだけど。 こんなことになるなんてっ! ……神サマ、何かあたしに恨みでもあるの!? 思いながらアパートの階段降りて、駅までダッシュ! しようとした時。 「おった!」 がしっ!! 腕をつかまれ、勢いあまって前につんのめる。危ない!! 「何すんのよ!!」 いつもは温厚なあたしだけど、今日は状況が状況、声も荒くなる。 何より、いきなり腕をつかむ方が悪いんだ!! 思いっきり食ってかかってやろうと思ってると…… ぽいっ。ばたん。 ……え? 視界がくるくるまわる。 がばっ。ごちっ! 「痛っ!!」 おでこをおさえて、周りを見る。 流れていく景色。灰色ないすのカバー。 ということは……車の中!? な……何がなんだか…… 「さすがに街の真ん中で銃撃戦するつもりはないやろ。 ふふん、ざまぁみろってんだ」 ふと前から男の声が聞こえてくる。関西系? バックミラーを見て、再び唖然とする。 「悪いけど指輪の人。ちょっと俺らに付き合ってくれ」 「ちょっと……」 「何?事情説明は出来へんで。 あんたは部外者なんやから」 「というか、何でそんなしゃべり方なの?」 こんな変な状況なのに、こんな事を気にしてしまう。 「なんかおかしいか?」 「普通は金髪の外国人が関西弁しゃべってたら違和感感じるわ!!」 「そうか?俺は普通やと思うんやけど そういうあんたやって髪茶色やんけ」 「あたしは染めてるのっ!!」 シャギーのかかった肩までの髪をいじる。 言いながらも車は信号無視しまくってかなりのスピードで飛ばしている。 道路混乱しまくりだわ…… 「それよりね、何で誘拐なんてしたのよ!? あたし今から講義あんのよ!! あの先生遅れたら単位くれないのよ!!」 後部座席から身を乗り出す。 危ない気もするけど、今は気にしてる場合じゃない。 「きびしい先生やねんなぁ…… まぁ運が悪かったと思って……」 「じゃなくて! 何で誘拐なんてしたのよ!? あたしんち、自慢じゃないけどお金なんてないんだからね!?」 そしたら男は、からから笑って、 「そりゃ自慢にならへんわなぁ」 「大きなお世話よ!! それよりも事情説明っ!!」 「だからぁ。 あんたは部外者なんやから、出来へんゆーとるやろ?」 「そんな無茶な理屈が通ると思ってるの!? 人を誘拐しといて!!」 「誘拐ちゃうって。ちょっと協力してもらうだけやって。 大丈夫、すぐ帰れるから」 「そういうのを信じて欲しかったらねぇ、 ちゃんと物事を説明しなさいっ!」 「いややなぁ、そんなに誠実に見えへんかぁ、俺」 「青い目で関西弁しゃべられて信用できますか!」 「あんたなぁ、それ偏見やで………… とまぁ、お喋りはこれくらいにしといてやなぁ。 そろそろ着く頃やと思うし……」 窓の外に流れる景色は、いつのまにかあたしの知らない物になってた。 もぉっ!どーしてくれんのよこれぇっ!! 「問題は。 あんたの持ってるはずの、指輪や。」 「指輪って、これの事言ってんの?」 今朝外そうとしてた、左手の薬指の指輪をバックミラーに映す。 「そうそう、それや。 それは本来俺らのもんやねん。返してくれるよな?」 「…………取れないのよ…………」 「返してくれへんのか?そりゃちょっとひどいと思うで」 「と・れ・な・い・の・よっ!!あたしの指からっ!!」 「な・にぃ〜〜〜〜〜っ!!?」 ぎゅぃっ!ぎゅぃっ!! 「もぉ動揺したのか何なのか知らないけど!! ちゃんと運転しなさいよぉっ!!」 「それ取れへんって……どーしよ……」 「こっちが聞きたいわよ!朝起きたらいきなりはまってて!!」 「…………それ、どこの指にはまってるんや?」 「左手の薬指。 これ、あんたのもんなんでしょ!?なんとかしてよ!! 「…………あんた、名前は?」 「そんな事よりも、指輪っ!」 「名前が分からんとこれから先困るやろ!!」 びくっ! うわ、そんな怒る事無いじゃない…… 「……美村。」 「下は?」 「そんな事聞くんだったらあんたはどうなのよ?」 「俺はスフィード。」 「下は?」 「Mimuraさんは?」 「……別に知りたくないから言わない」 「うそやぁ〜〜っ!!言うてくれなぁMimuraさんんっ!!」 「分かった!!分かったから頼むから前向いてぇっ!!」 ハンドル放して後ろ向かないでよっ!!あぶないっ!! 「野重よ、野重。」 「Noel?」 「ノエルじゃなくて、野重!」 「Noel、Noel……」 「いいよ、ノエルで……」 あまりにも苦しそうなスフィードを見るに見かねて、あたしは言った。 「俺は、ウェンクや。まぁ、長い付き合いになると思うんで、よろしくな、Noel」 「長いって、さっきはすぐ帰れるって言ってたくせに!!」 「状況が変わったんや!!しゃーないんや!」 「こんのうそつき関西人〜〜っ!!」 「あ、俺は関西人ちゃうで、アメリカ人やで」 「じゃぁその関西弁は何なのよっ!!」 「これにはやなぁ、いろいろと理由が…… とかいってる間に、ついたわ。降りてくれ、Noel」 言われるままに降りてみる。 何であたし誘拐犯と仲良くしてるんだろ? もぉ本当、何がなんだか…… ―――――――――――――――――――――――――― 2に続きます。 |
3311 | 「夢幻」2 | 海原 開花 E-mail | 6/25-00:56 |
記事番号3293へのコメント 続きです。 ―――――――――――――――――――――――――― 降りたところは、広い原っぱ。 目の前には……飛行機!? ジャンボとかじゃなくて、テレビのCMで時々見掛けたりするような。 茶色くて、機体の上下に翼がついてるやつ。 「ほなNoel、こっちきてくれっ!!」 「ウェンク早く乗れっ!!時間ないぞっ!」 「わかってる!」 ぐいっとまた手を引っ張られて、飛行機にのせられる。 えぇぇ!?またぁっ!? ブロロロロ…… 「…………飛んでるぅっ!?」 「そら飛ぶやろ、飛行機なんやもん」 いつのまにか横に座ってたウェンクがうなづいた。 こうやって横に座られると自分との身長差が良く分かるなぁ。 すごい背、高い。180はあるよね? そんなモデルみたいな人が、水色のジーンズはいて、その上からたくさんポケットのついた水色のカッターシャツ着てて、今あたしの隣にいる。不思議。 「で、ウェンク、どうなったんだ。あれは?」 知らない人の声。前で操縦してる人みたいだけど…… 飛行機の中は、三人専用のようで、今はきつくないけど、もう一人入ったらキツイだろうな、位の大きさだった。 「それがなぁ……このお嬢さんの指にはまってしもたんや。 しかも左手の薬指」 「あちゃぁ〜〜……」 頭を抱える。 この人は日本人だ、多分。 「まぁ、戦力にはなると思うんやけどな、ここまで持ってくるくらいやから」 「で、もう一つは?」 「あ、そうやそうや、忘れてた。 Noel、その指輪もっかいよく見せてくれへんか」 「いや。」 誰が状況になんて流されてやるもんですか。 「そんな事言わんとさぁ……」 「ウェンク。 お前、この人にちゃんと了解得て、説明して連れてきたか?」 「いや、してへん。 やってる時間がなかったんや」 「それだったらその人の態度も仕方ないだろう」 「でもなぁ……」 「ここまできてしまったんだ、説明しないわけにはいかないだろ…… お嬢さん、お名前は?」 「あなたは?」 「僕は上坂 敏(うえさか とし)。 上に坂に、敏感の敏です、よろしく」 「あたしは、美村野重です。 美しいに村、野っぱらの野に重なるって書いて野重。 で、何がどうなってるんですか? この飛行機、何処まで行くんですか?」 出来れば、早く降ろして欲しい。 「あぁ〜〜〜っ!! 何でNoel、Toshiには敬語やねん!! 俺とは初対面でためぐちやったのにぃ〜〜っ!!」 「いきなり関西弁でなれなれしくしゃべってきた人になんか敬語使わないわよっ!」 「だってToshiが日本語はこれやって教えてくれてんもん!」 「……何で標準語教えなかったんですか……?」 あっけにとられてきいてみる。 「ウェンクのイメージ的には関西だったし、 何より、愛敬があっていいじゃないかなって。 僕だって関西出身だし」 なんか……この人も普通の人じゃなさそう…… 「ずるいずるい、Noelの差別人〜〜っ!!」 「何よその日本語!?差別人なんて聞いた事無いわ! もぉいつまで駄々こねてんのよ!!あんたいくつよ!」 「俺は23や、少なくともNoelよりは年上やと思うで」 「確かに……そうだけど……」 ……見えないよ、ねぇ…… 「で?きっと美村さんはそーやってさっきもウェンクのペースに乗せられたんだね?」 はっ! そー言えば、またこいつのペースに乗せられた気がする…… 「ところで、何処に向かってるんや、Toshi?」 「とりあえず、さっきから相手さんが1機追ってきてるから、逃げてるだけなんだよな」 「それってめちゃめちゃやばいやんか!!」 「まぁさすがに相手さんも、町中で銃撃戦するつもりはないだろうし。 今回、こんなに厄介な事になるとは思わなかったから外国行きの許可とって無いんだよ」 「んじゃこのせまい日本でずっと逃げないかんっつー事やんけ!!」 「そういうこと。 ……あっちに逃げ込むって手もあるんだけど」 「だからぁ、何がどうなってんのよ。いいかげん、説明してよ」 「ここまで来たんだ、説明しないわけにはいかないと僕は思うんだけど。 どうする、ウェンク?」 何々?この人じゃなくて、こんな外人が主導権握ってるわけ? 「ええんちゃうか?俺は知らんぞ」 「無責任だぞ……」 「元はというとお前の責任や。 でもま、しゃーないかぁ。じゃ、俺から説明しょーか。」 「あぁぁぁ、僕がする僕がする。 お前が説明なんかしたら、余計に話、ややこしくなっちまう。 信憑性にだって欠けると思わないか、美村さん?」 「あ、それは確かに。」 話がどんどん脇道にずれていくような気もするし。 「納得せんといてぇなNoelぅ」 っていう、ウェンクの言い訳も無視する。 「と、言うわけで美村さん。 一回しか説明しないから、よく聞いといてね」 「はい。」 なんとなく、軽々しく答える。 ここまで来たら、大学の事とか、罠じゃないかとか、全然考えてなかった。 まだあって数分しか経ってない変な人の事を信頼したわけじゃない……けど。 悪い人じゃないと思う。あたしの頼りない、直感。 それに、何がどうなってるのか、判らないのは悔しかったから。 ―――――――――――――――――――――――――― 続きます。 |
3313 | 「夢幻」3 | 海原 開花 E-mail | 6/25-00:57 |
記事番号3293へのコメント 続きです。 ―――――――――――――――――――――――――― 「念のためだけど、この話は全部本当の事だから。 信じてくれるよね?」 窓を見ながら、ゆっくりうなずく。 「この世界にはね、もう一つの世界があるんだ」 それを確認して、上坂さんはゆっくりと話し出した。 「その世界は、神様が作り出したんじゃなくて、僕ら人間が作り出したものなんだ」 ウェンクは、片目だけを開け、腕組みをしてこちらを見ている。 「その世界っていうのは、夢の世界さ」 飛行機が大きく旋回して、上に上がっていく。 「夢の世界には、もちろん住人がいる」 この下に今までいたんだ、あたしは。 「本質的にはこの世界の人間と何も変わらない」 雲も何もかも追い越して、一番上に上がってく。 「だが、そこにいる人間は一種類だけじゃない。二種類の人間がいる」 雲の上。どんなにあがいても届かないとされるところ。 「ただ一つだけの違い、それは」 目を貫く太陽の光。 「この現実の世界と、夢の世界と、両方を行き来できる人間がいる事」 光り輝く雲の海。 「僕達はそんな人種の仲間。」 ヴゥン……飛行機のモーターの音。 「そして……君も」 「どうしてあたしがそれだって分かったんですか?」 「まぁ、まだ黙って聞いとき」 ウェンクが口をはさむ。 「その点は保留にしといてもらおうか。 そして、その世界……仮に夢幻、としようか?そこでは今、いろんな問題が起きてる」 「この世界みたいな?」 「そう。 そしてやっぱりその世界にも、自力で事を解決できない人がいる。 そんな人のために、僕らがいるんだ」 「要するに、お助け屋さんやな。 で、俺らはそのグループってわけや」 いつのまにか会話に参加してきたウェンクが言う。 「でも、本当は三人で行動しなきゃいけないのが、うちの会社のしくみで、そのもう一人を探そうとしてたところで」 「Noelがおったんや。たまたまな。」 「会社?他にもいるんですか?」 「まぁね。でも僕らは社長の顔でさえ知ってるけど、会う事はほとんど無いからね。 他のメンバーにいたっては顔さえ知らない。 仕事だって、社長が選んできたのを僕達が受け取るだけだからね」 「そんな人の言う事、よく信じますね?」 あたしだったら絶対信じない。 「ま、仕事だしね。給料だってちゃんと出るし。 それにその人だって、信用できる人なんだよ」 「それとな。俺ら社員の中で一番多い理由ってのがな」 いきなりまた口をはさんでくる、目をキラキラさせた外国人。 「Noelだってきっと思った事あるはずや。 誰だって一度は考える事やねん。 マンガやアニメの主人公みたいに、冒険がしてみたいって理由」 「……………………」 身に覚えがありすぎた。 憧れて、絵に描いたりしてた。 全然考えもしてなかったときに、こんなチャンスがまわってくるなんて…… 世の中って本当分かんない。 「話を元に戻そうか。 そのたまたま出会った美村さんが、何故そのリングを持っているかというと」 白いリングを見る。 「そん時、俺らはもう既に依頼受けとって、そのリングのそばに、何かあったやろ? それを護ろうとしとったんや。 でもこのあほが操縦ミスしやがってやなぁ――――」 「落としたのはお前のせいだろ!?」 上村さんの抗議も何処吹く風、ウェンクが続ける。 「Noelの頭の上に落ちてしもたんや。 俺らが見とったときはまだNoel、指にはめてなかったけど」 「どうもその後、僕らが銃撃戦やってるときにつけたらしいね。 女の子だし、ちょっと付けてみたいって好奇心がわいたんだろうね。 それにそのリング。見た瞬間「エンゲージ」って分かっただろ? だから左手の薬指にはめた」 確かに、見た瞬間エンゲージ・リングなんだなって思った。 「でもそのリング、結婚指輪ちゃうねんで」 「え?どうして? 普通はエンゲージ・リングって結婚指輪の事でしょ?」 「engageって単語にはいろんな意味あるやろ? この場合、「雇う」って意味や。 で、うちの会社の社員は、みんなこのリングはめてるねん」 「つまり。 そのリングをつけたってことは、なし崩し的に僕らの仲間になったってことになるんだよね。 でもまぁ、これはアクシデントなんだから、今関わってる事件をかたづけたら抜けれると思うよ」 「運が悪かったと思って、今回だけは付き合ってくれ、Noel」 「あ、そぉ……そーいう事なんだ……」 何だかすごく拍子抜けしてしまった。 何だ、抜けれるのか……なーんだ。 「ところでやなぁ……」 ウェンクがそこまで言ったところで。 がくんっ! 飛行機が右に左に揺れる。何? 「どーしたんやToshi!!」 ウェンクが乗り出して話し掛ける。 「ちょっとウェンク!危ないって!!」 操縦の邪魔したら落ちるっ!! 「どうも、敵さんがとうとう我慢できなくなって撃ってきたらしい。 もう太平洋に出ちゃったしね」 だんだん減速する、飛行機。 「……もしかして、落ちちゃったりするんじゃないの!?」 「いや、今のはかすっただけだから大丈夫だよ」 「どうすんねん?」 「まぁ、先に撃ってきたのは向こうなんだし。 観念して落ちてもらう事にしようか」 ゆっくりUターンする。 前の窓に映るのは、1体の飛行機。 「……なんや、一つだけかぁ。 じゃぁあっちはToshiにまかせとく事にして、こっちはこっちで話しすすめとこか」 「ややこしくだけはするなよっ!」 「わかっとるわ!えーから飛行機運転しとけ!」 ……よっぽど問題児なんだなぁ、この外人…… 「でや、Noel。 俺らが向こうで上から落としたのは、その指輪だけやない。 もう一つ、小さな袋があったと思うんやけど……」 「……知らないよ?そんなの」 だって朝起きた時にあったのは、あたしの指にはまった指輪だけで…… 「……それ……ほんまか!?」 「こんな非常事態にまであたし、悪い冗談つけないわ」 「だとしたら、まだ向こうにあるって事だな」 「なんやToshi、もう終わったんか?」 「ああ。簡単だったよ、面と向かったら」 「この飛行機、上坂さんのですか? それに攻撃したって、どうやって……」 「またさん付けやぁ〜〜!」 「……美村さん……僕の事は敏でいいよ。 そうしないとウェンクが駄々こねるからね」 「はぁ……」 ほんっとうに年上じゃないなぁ…… 「じゃ、あたしも野重でいいですよ」 いつのまにか……馴染んでる…… そんな雰囲気が在るんだ、この人たち。 「この飛行機は僕のだよ。 ウェンクも一応できるんだけどね、こいつがやると危なっかしいから。 こういう仕事してるからね、銃器みたいなのは一応ついてるし。 他に船とか車とかもあるよ」 「敏ってもしかして金持ち?」 「そういう事になるのかな? しかし向こうにあるとしたら、一度戻らなきゃいけないな」 「あの……あたしはどうしたら……」 「とりあえずは付き合ってもらう事になるよ」 「大学の先生には何とか話し付けといたるから、な」 信用できない答えに、絶句する。 「ウェンク、そんな事言ったら。野重さんが信用できなくなってるよ」 そうだそうだっ!! 「失礼なぁ。俺やってちゃんとやるときはやるで?」 「まぁそのへんの話はまたこの件が終わってからにしようか。 ウェンク、ここから一番今安定してる“扉”は何処だっけ?」 「ん〜、九州の方やったと思うけど」 「多分敵は野重さんが向こうにあれを忘れてきたっていうのが分かってるんだろうね。 だからこっちには一つしか戦力をよこしてこなかったんだ」 「じゃぁ、早く行かないとだめなんじゃないんですか!?」 「確かに、そうだね」 「そんなすんなり言わないで焦ってよぉ!」 「あかんで、Noel。 こいつはこういう奴やから……」 半ば諦めたようにウェンクが言った。 「後数分で“扉”に着くよ。今大阪のあたりだから。 西へと向かってたのが幸いしたね」 「……どうするんや?」 「それを考えるのは僕じゃない。 僕は、こっちの世界専門だからね」 「けちやなっ。ちょっとくらい手伝ってくれたっていいもんを」 「あの、今から何処に行くんですか?」 「今からなぁ、さっき言ってた“夢幻世界”に行くねん」 やたら自信満々のウェンクを見て、ちょっと不安になって、 「ちょっと、ウェンクにまかせて大丈夫なんですか?」 「ああ見えても、結構頼りになる奴だよ、ウェンクは。 少なくとも、野重さんの保証くらいはできるだろうし」 「してくれなかったら困りますよっ!」 多分、一応あたしは被害者のはずだから! 「だからウェンク、ちゃんと護らなきゃダメだよ。 もとはといえば、お前のミスなんだし」 「お前のせいやろっ!何ゆうてんねんっ! それにNoelの事くらい俺一人でじゅーぶん護れるわいっ!」 「それが自信過剰でない事を祈るよ。 そろそろかな、“扉”」 「Noel。ほんまにそのリングと一緒にあったもの、覚えてへんねんな?」 「ないない、ぜんぜん」 「じゃぁ、しゃーないな。 Noelが覚えとったら、こっちに持ってくる事も可能やと思ったんやけど。 あいつらがあれを作用させる前に、何とかして追いつかないと……」 「もう連中の手にわたってるだろうね。 くれぐれもウェンク、野重だけは護れよ。お前はどうなってもいいから。 僕はこっちで待ってる」 「……ひどい言い方やなぁ……」 泣きまねをしてみたりする。 「なんで来ないんですか?」 「僕は連絡役。 一人はこっちに残らないと、いろいろとまずいからね」 「とかいって、本当は俺にぜんぶまかせようって魂胆やろ?」 「そう、良く分かったねウェンク。」 「ほんまお前、良い性格してるわ」 本当、楽しい連中だ、この二人。 「この辺だ!」 声に反応してみてみると、青い空が見えるだけ。 「ど、何処に扉があるの!?」 「あの辺だけ、純粋な青や。 どんなものにだって、純粋なんてもんはないからな、純粋なもんはおかしいんや」 言いながら、あたしの後ろから手を回して……え? 「……このロープは何のつもり?」 「Noel、ハンググライダーなんてした事ないんちゃうか?」 「失礼な、よくやったわよ」 田舎でよくやったもんだ。すごく楽しい空の旅。 「ま、今回は一つしかないからな。 死にたくなかったらこうするしかないんやわ」 からからと気持ちよさそうに笑う。 「じゃ、行ってくるわ。Toshi、Noel」 「美村さん、くれぐれも気をつけてね」 「はぁ……」 ぐおっ! ドアを開けた事によって狂ったように風が入ってくる。 そして…… あたしたちは、宙に、飛んだ。 ―――――――――――――――――――――――――― 続きます。 |
3314 | 「夢幻」4 | 海原 開花 E-mail | 6/25-00:59 |
記事番号3293へのコメント 続きです。 ―――――――――――――――――――――――――― 幾重にも織りなす空の幕。 いつも見ている現実の世界。 だけど、今あたしにはそれを楽しむ余裕はなかった。 ……確かに、ハンググライダーした事あるけどさ。 こんなに高いのは反則じゃない!? 雲の上よ、雲の上!! あまりの高さに慌ててるうちに、体の重さが無くなって―――― 怖くて、眼を閉じた。 ふっと、体に重さを感じた。 「向こう」に、「夢幻世界」に来たんだろうか? でも、青空は眼を閉じる前と同じようにキラキラしている。 別にさっきと変わったところはないんだけどなぁ…… 「……ついたの?」 上に乗っているウェンクに問い掛ける。 「一応、夢幻には来れたけどな。 大変なのはこれからやで。 やつらが今何処に居るんかだけでも掴みたいんやけどなぁ……」 「そう言えば、あたしはやつらが誰なのかも、ウェンクが何を落としたのかも聞いてないんだけど……?」 「うん、正確に言うと、Toshiが落としたものやな」 ……しつこいなぁ。 「そんなに自分のミスを認めたくないの?」 「だからぁ、俺のミスちゃうって!」 「わかったわかった、敏が悪いのね、はいはい」 上でじたばたし始めたウェンクを止めるために納得したふりをする。 今の状況判ってんのかしら? 「それがなぁ、まぁありきたりな事件なんやけどな。 ある有名な宝物殿に泥棒が入ったんや。 その泥棒が学の無い奴でなぁ、危なくて封印されてたナイフを盗んでいきよったんや。 …………他のもん盗みゃぁいいものを」 「それ、問題発言だと思うけど……まぁいいや。 でもそれって警察の仕事なんじゃないの? さっき敏から聞いたあんた達の会社の仕組みだと、私立探偵みたいなもんだと思ってたんだけど?」 彼らによるとここもある種の「世界」なのだから、警察くらいはあるだろうと思ったのだ。 しかしかえってきた答えは意外なものだった。 「確かに警察もあることにはあるんやけどなぁ…… あいつら、めったに犯人捜査しようとせんのや。 仕事としたら、民間人が捕まえた犯人を刑務所にぶち込むくらいか」 「それが、警察?」 ぽかん、っとする。 現実世界の警察だって、そこまでひどくはない。 「ここは、現実世界の人間が作り出した世界や。 そんなおざなりな警察しか出来ないくらい、現実世界の人間、警察嫌いの人間が多いってことやな」 …………………… 「なんかここって理想郷、みたいに思ってたんだけどな……」 「ま、いくら世界は違っても、ファンタジーやないからな。 で、そのナイフやけど。封印させてなかったら、射程距離内に入ってるもんを片っ端から切ろうとすんねんなぁ、これが」 「……勝手に動くの?」 我ながら間が抜けている声だとは思ったけれど。 インパクトは、強いわ…… 何かますますファンタジーじみて来たなぁ…… 「多分」 そっけない返事。 「じゃぁ、何で護ってたはずのあんたは切られなかったの?」 「俺が持ってる頃はまだ、盗まれて間も無かったから、封印が軽くなってただけで、 完全には切れてなかったんや。 だけど、もうこれだけ経ってしまうとなぁ…… 作用してない、って思う方が難しいわな」 「うわぁ……それって、もしかして。 命の危険性っていうのも出てきたんじゃ……?」 冒険はしたいけど。命はもっともっと大切だっ!! 命あっての物事だもん! 「Noelは初めてやもんなぁ。初めてでこれはちょっときついか」 「やっぱり、帰ろうかな……?」 「あかんんんっ!!俺を一人にしていくなぁぁっ!!」 わ、また幼児モードだっ! 「わかってるってば!!冗談よ!」 ……まぁ途中で話は途切れてしまったけど、大体は分かってきた。 とにかく、そのナイフを取り戻したら良いのね。きっと。 後でこの甘い考えは、簡単に打ち砕かれることになるんだけど…… 「お、見えてきたで」 下を向く。…………高いっ!! 一度目を閉じてしまって、もう一度、恐る恐る開いてみる。 飛び込んできたのは―――― 一番に思い出したのは、いつか習った古代文明の街。 資料集でしか見た事無いけど…… 真ん中の小高い丘大きな神殿。 森で囲まれていて、何本のも石柱で支えられ、他の建物よりも一回り大きい。 周りに広がる石造りの建物。真ん中に広場。 一戸建てばっかり。 「ここは、“abandoned”の国や。 古代を夢見た奴等が作り出した国なんやと」 頭の上で、ウェンクが解説してくれた。 「なるほど、だからそんなファンタジーじみたナイフができるのね」 結局は「何でもあり」ってことなんだろう。 やがてハンググライダーは平べったい神殿の屋根に到達。 四隅に柱が立っている。 屋根に立つ。石の感触。 ざぁっと風が吹き抜けて、あたしはあたりを見回した。 神殿って言っても、あんまり高くないなぁ…… せいぜい2、3階建ての建物といい勝負。 でもこの風景……とてもきれい。 東京と比べるのが間違ってるのかもしれないけど。 ……スケッチブック持ってきとけばよかったって、そんな場合じゃないか。 下を見ると、ちらほらと人が集まってきていた。 「まずは敵さんが何処に行ったか、っていう正確な情報が必要やな」 背負ってたかばんにハンググライダーをしまったウェンクが言う。 端へすたすた歩き出す。 「どうやって? あ、あの「聞き込み」ってやつ?テレビの探偵とかがよくやってる」 後をついて行きながら問う。 「いや、そんな事せんでも向こうから情報は集まってきてくれる。ここやったら」 ふぅん、そんなもんなんだ。 …………はっ。重大なことに気がついたぞ!? 「ちょっと!!それはいいけどここからどうやって降りるの!?」 いくら二階建てだって言ったって、落ちどころが悪かったら大怪我じゃない!? 「何ゆーてんねんなーNoelー。飛び降りるに決まっとるやろ?」 ……っと…… そんなかるーく言われても!? 「無理よ無理!!絶対無理!死んじゃったらどうするのよ!? 今日あたしスニーカーじゃないしっ!!」 「ふふん。冗談や」 にやっと人の悪い笑いを浮かべて言った。 かばんをごそごそしだす。 「たちの悪い冗談は犯罪よぉぉっ!!」 「えー?そんな事まで法律に書いてあんのか? 日本は厳しい国やねんなぁ」 「そうじゃないけどっ!」 「っとまぁ、そういう事で、ずっとここで漫才してるわけにもいかへんから。 ここにな、実はロープがあったんや♪」 「……早く出してよそういう物は……」 何か…………とても疲れた。まだ何にもやってないはずなのになぁ…… ……いや、ここまででも十分今までの生活と比べたら異常かな? 「Noelがどーいう反応するかな、と思ったんや、なかなかおもろかったで?」 ほら、こういう関西人が出てきた時点で十分異常。 「人で遊ばないでよっ!」 「まぁまぁ。そんなかっかせんといてぇな」 言いながら、柱の一つにロープのわっかになったところを掛け、下に降りはじめる。 ……しまった、あたし今日スカートはいてる…… 「おーいNoelー、降りてきーやぁ」 下からウェンクが呼んでる。仕方ない。 スカート押さえながら、そろそろと降りる。 下に降りたあたしたちを迎えたのは、たくさんの人々。 「ウェイフェラーだ!!」 「今回はどんなお仕事なんです!?」 「何か協力できることはありませんか?」 え?え?何? いきなり囲まれて……あたし何にも悪い事なんかしてないぞ!? 「ちょ、ちょっとウェンク!これは何?」 「はいはい、ちょっとみんな落ち着いて下さいねー」 ウェンクの一言で、ざわめきが消えてってる…… 何?こいつは偉い人なの? 「昨日、今日で人が沢山刺されたって話聞きませんかー?」 ……これだけ人がいたら、聞き込みなんかする必要無いね、確かに。 「東のハディスの街であったって聞きましたー!!」 女の人の声。 「ハディスだったら、私今から行きますが、連れて行ってさし上げましょうかー!?」 「よっしゃわかった、ありがとうな〜っ!!なるべく急いでくれっ! 行くでNoel!」 「え?あ、はいうん!」 ……は、話が……ぽんぽん飛んで行くんだけど……? 「ということで、ちょっと通して下さいっ!」 さっきの声の人の後を追って、人ごみを掻き分けて走るウェンクの後ろについて走る。 神殿の前の通りに止めてあった真っ赤な…………馬車ぁ!? あの、シンデレラとかに出てくる、馬車。さすがにあんなに豪華じゃないけどさ。 「まさか、これで行くの!?」 「“abandoned”での交通手段は徒歩か馬か馬車やねん」 っていうか…………恥ずかしい…… 真っ赤なポルシェとかだったらともかく。真紅の馬車!! 「ウェイフェラーは後ろの座席に座って下さい」 長い黒髪のさっきの女性が言って、御車台へ乗る。 彼女の着ている麻のような白いシャツと赤のズボンは、この国の民族衣装かな? 「わかった」 「ねぇねぇ」 返事をして扉を開けるウェンクに、そっと尋ねる。 「なんや?」 「さっきから気になってたんだけど、“うぇいふぇらぁ”って何?」 「あぁ、ウェイフェラーな」 言いながら中に入る。中には、向かい合わせで4人ほどの人が座れるソファが置いてあった。 あたしは後ろに座り、ウェンクがその向かいに座る。 「では、今から飛ばしますので、15分で着くと思います」 前からさっきの女性の声。こっちを向いて、ウィンクまで向ける。 「おう、頼むで♪」 「はい♪」 ―――――――――――――――――――――――――― 続きます。 |
3315 | 「夢幻」5 | 海原 開花 E-mail | 6/25-01:01 |
記事番号3293へのコメント 続きです。 ―――――――――――――――――――――――――― ぴしっ!と鞭が唸る音。 前に繋がれてた馬が走り出したのが、周りの景色で分かる。 「ウェイフェラー……wayfarerは英語で“徒歩旅行者”って意味何やけど、 俺らみたいなここと向こうを行き来できるものがこう呼ばれてる。 でもってこの“abandoned”の国では、ウェイフェラーは神様の子どもやと崇められてる」 「子ども、ねぇ…………」 とてもそんな風には思えないけど。 「“扉”を使って行ったり来たりするんが、この人らにとってはすばらしいことに思えるんやろ」 「それで、あんなに人が集まってきたのね」 「俺もToshiもこの街には結構来たことあるしなー」 「ふーん……」 ガタゴトガタゴト。 道は想像していたよりもでこぼこじゃあないらしい。 それでも揺れるし、しゃべりにくいけど。 「さて、この15分を有効に使わせてもらおうや。作戦会議やな。 頭から突っ込んで行くのは自殺行為やし」 「そのナイフ……持った、ら、当たりをぉっ、切り出すんで……しょ? どうや、って回収す、るのよ」 上手くしゃべれない………… 「封印の仕方知ってるから、何とかなる。それは俺がやるわ。 Noelにやって欲しいんは、敵さんの武器の回収!」 「どーぉやってするの、よっ!!あた、しがぁ、攻げ……きされるでしょ!?っつっ……」 ……舌噛んだ……くっそーっ…… 「大丈夫かー?Noelー?」 「なんで……そんなひゃべりか、た普通なのっ……」 「慣れとるからな。 それに大丈夫やって。回収してもらういうても、突っ込んでもらうわけやないから。 ちょっとプライベートな話かもやけど…… Noelって美術の方で学校行ってるやろ」 断定される。あたってるけど……なんで? 「うん、まぁ……だけど、それと……何のかんけ、いがあるわけ?」 「“夢幻”の世界は何でもありや。現実では起きへん事も起きるし、起こせる。 夢幻には無限の可能性がある、ってな♪」 「ふーん、そう」 冷たく突っぱねる。 「頼むから何か反応してくれぇ〜……俺悲しいわ」 言って泣く真似をする。そんな……ねぇー…… 「それで?」 「そうや、んでも無限の可能性っつっても、限度があるやろ? ……これって結構変な理屈やけど…… いくらなんでも、突然爆弾を出現させるようなことは無理なわけや。 他には……空飛んだりとかな。 ……まぁ、そーいうの専門の国もあって、そこ出身の奴はできることもあるけど、 少なくとも今回の敵さんはちゃうから、この場合無いと考えよう」 さっきまでは石造りの家ばっかり見えていた景色は、いつのまにか緑に囲まれていた。 「それでや、「限度のある夢幻」の世界なもんやから。 人は、自分の“得意なこと”を能力にしてしまえる。 能力いうても、生まれつきの才能とかやない。 神から与えられたものやないんや。 人間が、自分の力で勝ち取った“能力”や」 ………… 「もしかして、ウェンクも持ってたりするの……?」 「おう、俺もToshiも持ってるで」 「え〜〜〜〜〜〜っ?」 「……何や不服そうやなぁ……まぁええわ。 で、Noelは、“物を手に入れる”能力を得てる」 「……手が、磁石に、なってるとか?」 「あほか。んなわけないやろ?」 うるさいなぁっ!ちょっと思って言ってみただけじゃないのっ! 「Noelみたいに絵を正確に描く人がよく得る能力でな。 手に入れたいと思う物をできるだけ正確に頭に描いて、手に入れたいと強く望む、と、手に入れれるってことらしいで」 「そんな、こと、今ま、で出来たこと無い……よ?」 「もちろん現実ではできへん、“夢幻”やから出来るんや。 だから、この能力使ってNoelには武器を回収してもらう、と」 「……できないわよ、そんなの」 いきなり言われても、信じることだって出来ない。 「いや、出来るで? 現にその指輪、“夢幻”から現実に持ってこれたもんやもん」 左手の薬指をさす。 そうか、さっきの“持ってきた”とかいうのはこれのことだったのね。 あれ? 「現実では出来ないんじゃなかったっけ?」 「ギリギリ、戻る時はOKやの。 そーいう事で、回収してな♪」 「というかさ、そんなまどろっこ、しい事しなくても、写真か……なにか、で見て、そのナイフ回収し、たらいいんじゃ……?」 「……よぉ考えてみぃや。 古代ギリシアに写真はあるか?」 「ごめんなさい……」 あるわけないわね…… 「あかんでー?ちゃんと学校で習ったことは覚えとかな。 しかもいきなり回収したら、辺り切り刻んで俺らまで危ないやんけ。 そーいうことやから。 回収してくれるよな?」 これくらいは出来るやろ、って言ってるみたいな蒼い瞳。 ……っしゃくにさわるぅっ……!! 「わかったわ。出来るわよ、それくらい!」 美大生の実力、見せてやるんだから!! 「そろそろ着く頃かな」 窓の外を見ると、また街並み。 でもさっきの街と違って、人があまり出てないみたい。 ……ガタ……ガタガタ…… 「着きましたよ」 「わかった」 今度はあたしから降りてやろっと。ドアを開ける。 御車台から降りてきた女の人と向かい合う。にっこり笑いに、同じく返す。 扉を閉めたウェンクが、 「どうもありがとうな。 ……淋しくなったなぁ、、この街」 周りを見ながら言った。 「沢山の人が、亡くなった後ですから…… あのー、ウェイフェラー?」 申し分けなさそうに、言う。 「なんや?」 彼女のおかしそうなしぐさに気づかず、問い返す。 「いつもご一緒の、黒髪で、いつも白い上下のスーツを着ていらっしゃる方は……?」 「……Toshiか?あいつは今回留守番や。 何?あいつのファンなん?」 「えぇ♪だって瞳が優しそうで、かっこいいですもの。 ……貴方もそう思いません?」 ……はっ。 「あたし……ですか?」 「はい、貴方もウェイフェラーでいらっしゃるのでしょう?」 「そうですよ」 「ですよね!かっこいいですよねー☆」 ……あたしは、“ウェイフェラーか”っていう問いに答えたんだけど……まぁいっか。 あ。 横でウェンクが怒ってる…… 敏が誉められたのが悔しいのねきっと…… 「まぁ、えーわ。 取り合えずあんたの名前、聞いとくわ。教えてくれ」 「ネミュー、です。 敏さまにも言って下さいね♪」 「わかった…………じゃ、俺らいくわ」 「そうそう、前回事件が起こったところは、ここから真っ直ぐ行ったスラム街です」 「そうか、ありがとうな。場所まで教えてもろて……」 「いえ。本当、ウェイフェラー様が来て下さって嬉しいんです。 ……どうか、解決して下さい…………」 悲しそうな目。 何か、あったんだろうな。きっと。 「まかしときっ!ほな、いこかNoel」 「うん。じゃぁ、さようならっ!」 「じゃぁなっ!」 「さようならっ!!」 ネミューさんは、大きく手を振って見送ってくれた………… ―――――――――――――――――――――――――― 続きます。 |
3316 | 「夢幻」6 | 海原 開花 E-mail | 6/25-01:03 |
記事番号3293へのコメント 続きです。 ―――――――――――――――――――――――――― 「あんたさっき言ってたわよねウェンク。 作用する前に取り戻さなきゃだめだ――って。」 「そーや。出来れば作用する前に回収したかったけど、もうそれは無理みたいやな。 だからゆーて悠長にしてるわけにもいかへんけどな」 「だったら…… 何で走らないの!?何で歩いてんの!? ネミューさんがちゃんと場所まで教えてくれたのに!!」 十っ分に悠長してるじゃない! 少なくともさっきから20分くらいは歩いてる。 走ったらきっと半分くらいしかかからなかったはず。 周りには一戸建ての壁ばかり。所々に家を建てかけてるのだろう、石材が積んであったり。 この大通りから色んな所に裏路地がのびてる。 下はやっぱり舗装されてなくて、砂地だけど。……歩きにくくて…… この世界では初夏なのか、陽射しもキツイのがさらにいらいらさせる。 「そんなつっかからんといてーなぁ。 これはこれでちゃんと作戦なんやから。 それに俺走りとーないもん、Noelだって嫌やろ〜?」 「そりゃそうなんだけどさ……」 もともと体育は苦手だし、パンプスで走りたくない。 「そんなに暇やねんやったら練習しとこか!」 言ってその場に止まる。……ぜんっぜん理解してない!! 気にせず歩く。 「暇なわけないでしょ!? 急ごうって言ってるんだから!」 状況分かってない!絶対!! 「そんな冗談ちゃうってー!! さっきゆうたNoelの能力の練習しよーゆーたんや!!」 「だからそんな事やってたらダメなんでしょー?」 気にせずに歩き続ける。後ろから追いかけてきて、隣に並ぶ。 「だってなぁ、実際、本番で失敗したら嫌やんかー」 「……確かに」 ぴた、と足を止める。 ウェンクが急なあたしの行動についてこれなくて、数歩先から戻ってくる。 「……お。やる気になってくれたんやな〜♪ じゃぁなー、まずここに取り出しますこのリンゴ!!」 言ってポケットからリンゴを取り出す…… 全然ポケット膨らんでなかったんだけど……? 「……どこに入ってたの?」 「だからポケットやんかー。 じゃNoel、少し離れて、離れて」 「はいはい……っ」 言われた通り数歩後ろに下がる―― ドンッ! 右にあった裏路地から一人の人が飛び出してウェンクに体当たり!! ウェンクはよろけて尻もちついて、ぶつかった人は前に倒れる……痛そう。 リンゴはそのままころころ転がる。……――キィッ――…… ……耳障りだなぁ……なんだろ?気にしない気にしない。 「なにすんねん!まわり確認してから飛び出さんかい! あんたは怪我しても自業自得やけど巻き込まれた方はたまらんでほんま!!」 座ったままのウェンクの怒声を聞き流しているのか、ぶつかってきた人は荒い息をついている。 ……よく見るとこの人。……――キィッ――…… 黒い服ぼろぼろで血ぃにじんでるじゃない。 しかも切り傷だから今こけて出来た傷ではなさそう…… 「……あんた……どーしたんや?」 青い顔してるのに気がついたのか、ウェンクが訝しがる。 その人ははっ!と顔を上げて、 「ウェイフェラー!!」 がし! しがみつく。 「なんやなんや!俺は男にしがみつかれても」 「助けてくれ!」 「いーやーやぁぁっ!のいてくれーっ!!」 「ちょっとウェンク!助けてっていってるじゃないの!静かにして! あなたもこいつうるさいから離れて下さい!」 どーしてあたしがこんな事……もぅ。 でもその人はすばやく離れてくれた。よしよし。 ……しかし忙しい人だなぁ…… ……――キィッ――…… 「助けてくれ!」 「それはさっきも聞いた。そん次話してくれんと分からんわ」 ……ウェンクやる気なしね。……――サクッ――…… 「そんなに悠長にしてる場合ではないんだ! 手短に話す。 俺は昨日あるところからナイフを盗んだ。仲間と一緒にだ。 そのナイフの……」 「お前か!!俺らを追っかけてた連中!! うっしゃ、警察に突き出したるから覚悟せーよ、他の連中は!?」 「全員死んだ」 早口で言う。唇が紫色になってる。 「ナイフにやられた、後残ってる仲間はあんたらに差し向けた奴だけだ。 そいつは!?」 「……すまん〜……敏が落としてもーた……」 全然ちゃんと謝ってるように見えない…… ふと目をそらす。あれ? 「それで!?ナイフは今どこにあるんや!?」 「……ウェンク。あんたの持ってきたリンゴって割れてたっけ?」 「いや?丸いものやけど……」 「じゃぁなんで今割れてるの……?」 それはきっかり半分に割れて、白い面を見せているのに。 「だから、ナイフは……」 言いかけて。 「ぐっ……!!」 いきなり苦しみ出す。何……? 「Noel、逃げるで!!」 何かに気付いたようにウェンクが叫ぶ。 「あちょっと!腕痛い!!ひっぱるな!」 もと来た道を全速力で戻りながら、あたしの腕を掴んだままのウェンクの手をたたく。 「さっきの人!置いてっていいの!?」 「死んだ人間助けよーとして自分死んだらどーしよーもないやろ!?」 「じゃ何!?さっきの人は死んじゃったってこと!? 一体何が起こったの!?」 直接の死になんてもちろんあたしは直面した事はない。 そりゃぁ、親戚でなくなった人はいるけど、お葬式くらいだもん。 いきなり死んだなんて言われて信じるなんて無理よ!! 「ナイフや。 あのナイフが持ち主の手ぇ離れて暴走しとんねん! せめて人間がもっとったら……」 そうか、耳障りな音はこれかぁっ!! 「……持ってたらどうなるの!?」 「その人間の技量にあった動きしかしなくなる。 動きがでたらめや無くなるんや!その代わり裏かいたりしよるようになるけどな!」 …………。 「そんな事より本当腕離してよ!!ただでさえ走りにくいのに!!」 「離しても、さっきの男のとこには戻らへんと約束するな?」 真剣に心配してくれてるのは分かる、けど。 「する!するから!!」 「おっしゃ」 ぱっとウェンクが手を離した隙に―――― 後ろに向かって走る!! 「あ、こら待てNoel!!」 やっぱ追いかけてくるよねぇ……えいっ! ベキッ! 「ごめんねー、でもきっと大丈夫だから!!」 顔面にあたしの投げた片方のパンプスが直撃したウェンクに言う。 もう片方もその場で脱ぐ。走る!! 「……まぁウェンクも嘘はつかないよね……」 近くにおいてあった石板をつかむ。……重たっ…… ――――さっきから色んな所切ってるけどあのナイフ、石には傷しか付けてない!! ナイフは辺りを傷つけつつも確実にこっちに向かって飛んでくる!! ……よーし、来るなら来いっ!! 胸の前に石板抱えてかまえる。 そんなに速いスピードじゃないから、どこを狙ってるかくらいは分かる!! 右の家の壁。左の家の壁。窓。道。 ……手で持つところは金の縁。その長さは刃と同じくらい。 中心にはめられてる紅い玉。 ワインレッドの――来るっ! ガッ! 右から左へと飛んできたナイフの衝撃にそのまま後ろに倒れる。 予想してたよりもずっと重いっ!!このままじゃ……!! ゴン、といい音がする。痛……頭打った……今どうなってる!? 頭以外は痛いところはないから、ナイフで切られたわけではなさそう。 そのナイフは!?――――左上――――早く起きなきゃ! ――――ッキュ――ンッ!! ナイフが何かに弾き飛ばされる。 だん!と大きい音がした。あわてて起きる。 「No〜e〜l〜〜ぅ……」 隣にいつのまにか幽霊のようにウェンクが立っている。 手には拳銃。これで弾き飛ばしたのね、ナイフを。 「あ……あはは、ごめんね、顔、痛かった?」 顔に横線入ってる…… 「痛いわ〜!!おもいっきし痛かったわ〜〜! 敏やったらナイフやなくて本人に銃向けてるで〜〜っ!」 「……本当に……?」 「もちろん嘘や♪ にしてもNoelは無茶しよるし〜〜っ!!」 「そーよ!あのナイフはどうなったの!?」 仲良くおしゃべりしてる場合じゃないんだ、だから。 この人はどーしていつもこうなんだろう? 「あれや」 とりあえず、指差された方に目を向ける。 石板が目に入った。あ、さっきまであたしが持ってたやつだ。 そしてその下にナイフ。 「Noelがいーもんもっとったから、ナイフ弾き飛ばして地面に落としたところで重しのせといてん」 確かに、ナイフはがたがた動こうとしてるけど、上の石が重くて動けないみたい。 「あれってさぁ……刃を縦にして地面にもぐったりされないの?」 「重いから無理やろ。 それにそんな知恵、こいつにはあらへん」 銃を腰にしまいながら言う。 ……なるほど、止める器具がついてたのか…… 「じゃぁ後は回収だけね」 「そこでや!Noelの能力使お!!」 にっ、とわらって言う。 「どーしてよ?ここまで来たら別にあんたが捕まえたら良いじゃない? 敵さんもいない事だし」 「いやいや、やっぱしNoelのやってもらわんと」 「どーしてもあたしに能力使って欲しいだけじゃないの?」 必要なさそうだもん、ねぇ。 「だって封印の仕方俺が知ってんねんもん」 「……どんな方法よ?」 「これや、これ。 取り出したるはナイフの鞘!」 かばんをがさごそやって取り出す。 「これをはめればいいねん」 色は緑一色、シンプルだ。けど…… ナイフ入れたら…… 「なんか、クリスマス・カラーなのね……」 「それは……作った奴の趣味やな……」 思わず漏らした言葉に、ウェンクも苦笑する。 是非お会いしてみたいわ、本当……どんな趣味してんだろう? あ、話ずれてるや。 「……それはおいといて、鞘をはめるだけだったら、別にウェンクが持ってあたしがはめたっていいじゃない」 ……はぁ…… あ!!溜め息ついてる!失礼な!! 「えーかNoel。 ナイフを俺が持ったら辺りのもんを切りはじめるんやで? それやのに確実に鞘はめられるか? Noelよりは体力自信あるで?俺。 出来る保証があるんやったら俺やるけど〜?」 完っ全に馬鹿にしてるこいつ…… でも悔しいけど確かにその通りだ…… 「分かった……やるわよ」 魚みたいにガタガタと動いてるナイフをもう一度まざまざとみる。 「……何かサンマがはねとるみたいやな……まぁ、頼むで」 ……同じ事考えてたのか……うぅ、同レベルって奴? ―――――――――――――――――――――――――― 続きます。 |
3317 | 「夢幻」7 | 海原 開花 E-mail | 6/25-01:06 |
記事番号3293へのコメント 続きです。これで終わりです。 ―――――――――――――――――――――――――― 気を取り直して。 金の縁。紅い玉。その部分以外はワインレッド。 立って眼を閉じて頭で想像する。 ――――――――――――――――――――――――……………………これ、欲しい。 思った瞬間、右腕が重たくなる。 「うわわっ!?」 目を開けると一面に入ってくる……自分の右腕!? それは振りかぶられて、斜めに降ろされる! 服っ!服切れるっ!! 一歩下がって何とかかわす。まるで踊ってるみたい! 右腕はそのまま右上に振り上げられる!! そして伸びきった右腕を後ろからウェンクがつかんで―― 右腕はそのままおとなしくなった。 しっかり握っていた右手の力をゆるめる。 汗びっしょり…… 「ほい、お疲れさん、Noel」 言ってウェンクがあたしからナイフを受けとってかばんになおした。 ………………………。何か、あっけなかった。まぁいいか。 「さてと、仕事終わりや♪ Noel、帰ろか〜♪」 上機嫌のウェンクの後を追いかけて行く。 何だかこれが当たり前みたいに。 20分の道のりを歩いてハディスの街の入り口まで戻ってきた。 ここからはまたあの神殿の街へと戻らなきゃ行けないのか…… 歩いたら何分かかることやら…… 隣を歩くウェンクはそれに気づいているのか、空を見上げてる。 「お。来た来た♪」 「何が?」 上を見上げる。…………あ!! ヴゥン………… それは羽音を残して、数メートル先の道へと降りてきた。 幸い、止まれるくらいの広さはあったみたいだ。 それに向かって走るあたしとウェンク。 「今回は遅かったんだな、ウェンク」 「お迎えご苦労やToshi」 「野重、おかえり」 「……ただいま」 飛行機から降りてきた敏が出迎えてくれる。 「とりあえず、“夢幻”から出よか。 Noel、行くで」 「……いつのまに俺の飛行機に乗ったんだ?お前。 まぁとりあえず野重も乗った乗った。どうなったのかは中で聞くよ。 ……ウェンクのくせにこんなに時間がかかった理由も」 「分かった」 ドアを開けて乗り込む。敏も操縦席につく。 「俺のくせにって何やねん〜っ!!これにはなぁ、ちゃんと理由が……」 「はいはい、きーてやるから離陸するまで黙ってろ!」 また、ヴゥン……と羽音がして、大空に飛行機がはばたいた。 窓から覗き込む。うわぁ、綺麗………… 緑の中に小さく白色が混じってる。きっとこれが街なんだ。 高度が上がるたびに少しずつ変わって行く景色を眺める。 「……とまぁ、こういう訳なんや」 「ふーん」 ……あ。ウェンクと敏の会話、終わっちゃったのかぁ。 ちゃんと聞いとけばよかった。 「で、野重としてはどうする?これでちゃんと指輪は抜けるはずだけど」 …………すっかり忘れてた………… 左手の薬指の指輪。ゆっくり上まで上げてみる。……痛くない。だけど。 「うーん…………」 「今のウェンクの話を聞いてると、仕事できるくらいの技量や度胸はあるみたいだし、俺としては新しい3人目よりもお互いもう知ってる野重の方が良いけどね。 何か、初めてあった気がしないんだよなぁ…………」 苦笑を浮かべる敏。 「…………分かったで敏。それって……」 「おっとそこまで、人のプライベートを人にべらべらしゃべるなよウェンク」 「……わかっとるわ。冗談や、冗談♪」 「そういうウェンクはどうなんだ?」 「俺は、そらここまで関わってもろてんからな〜、一蓮托生がえーわな」 「と、俺らの意見はこう。野重は?」 「あたしは……」 そりゃね、ちょっとは憧れていたんだよ。 毎日とは違う日常、突然の冒険。 絵の中でずっと描いてた、憧れの世界。 だけど、いざなってみたら、いつもと同じ日々がとてもとてもいとおしくなって…… だけどぉぉっっ!! 「あたしは、このまま……あなた達と“仕事”が出来たらいいなって思う。」 しっかり、はっきりと答えた、その瞬間。 あたしの中で、何かが変わっていく瞬間。 「やりぃっ!!3人めがNoelなんて俺嬉しいわっ!!」 「ちょ、ちょっとっっ!!いきなり抱き着いて来ないでぇっっ!!」 「アメリカ式のスキンシップや♪」 「いーかげんにしなさいっ!!」 ドンッと突き飛ばす。はぁはぁ…… 「いててて……しかしNoel、ほんまにえーんか? 今回のなんて、ほんまに序の口の序の口やで?」 「くどいっ!いいのよ、割の良いバイトだと思えば」 ……割、全然よくないけど…… その分、日常には無い「楽しさ」や「ドキドキする冒険」があるから良いんだ♪ 「割がいい?よくないで、はっきり言って」 「そうそう、時々“死ぬか生きるか”って時があるもんなぁ」 「その時は……あなたたちにまかせる♪」 「Noel酷いわぁぁっっ!!」 「じゃぁ今から、社長に報告しに行くか。ウェンクも行くか?野重も?」 「行くっ♪」 「Noel、学校はどーしてん」 はっ。忘れてたぁ! 時計を見ると……10時半過ぎ!? まだあれから一時間半しか経ってないの!?信じらんない…… 「野重は無理だな。それじゃウェンクは野重送っていってやれよ」 「せやな〜〜」 「やっぱり……学校行かなきゃだめかぁ……」 「学費勿体無いやろ!?自分ではらってんのに」 「え?全部親持ちだけど」 「ぜーたくやぁっ!俺なんか必死こいて大学卒業したのにぃ〜〜!」 「まぁどっちにしてももう時間はないよ。 ほら、もう東京」 「うそっ!?」 あわてて窓から下を見る…… そこにあるのは緑と街ではなくて、無機質な東京のビル群。 「……一体いつの間に?!」 「まぁ少しだけスピード違反はしたかもしれないね」 「……お前の“少し”は世間様一般で言う“少し”やないやろ…… いつものことやけどな」 「……いつも、あるの…………?」 「さてと、降りる用意してくれ、もうすぐ河原に着くから」 行ったが早いか、もう着陸始めてる。 ここ、ウェンクにつれてこられた河原だ。 周りの人、すごいびっくりしてる。そりゃそーだ。 「ほな、ありがとーなToshi」 「ありがとー」 飛行機から降りて礼を言う。 「いえいえ、それよりウェンク、ちゃんと野重に道聞いて送ってけよ?」 「わかっとるって!まかしとき!!」 「じゃ、また仕事の時は連絡とるから。じゃぁなっ!」 「またなぁ〜〜!」 「じゃぁねっ!」 ウェンクがドアを閉めると、助走を付けて、飛びたつ飛行機。 ……あきらかに普通のより短いけど、大丈夫なんだろうか? 「こっちも行くでNoel。道案内頼むでぇ〜。 どこ行くねん?」 来た時に使った車に乗り込んで、場所を言う。 「あぁ、そこやったら知ってるわ〜。行くでぇっ!」 「OK!行け〜〜!」 なんかハイ・テンションっ!! このまま行けぇっ!! ……数分後。 バタンっ!とかなり乱暴に車のドアを閉める。 「もぉっ!!絶対のあんたの運転する車には乗らない!!」 「あれくらいで何ゆうてんねんNoel〜〜」 「道路混乱させまくっといて何があれくらい!? もうちょっとで大事故だったのよ!?すっごく怖かったんだから! 本っ気で乗らないっ!じゃぁねっ!」 くるりと背を向けて、本堂に向かって走り出す。 「Noel〜〜っ!またなぁ〜〜っ!!」 背にぶつかる大声。恥ずかしい…… 無視してとにかく急ぐ。走る。 ――冒険と関わっちゃったら、もれなく変な連中とも関わらなきゃいけないのか…… もしかして、人生の選択間違っちゃったかなぁ…… などと思って。 おしまい。 ―――――――――――――――――――――――――― やっと終わりました。 結構中途半端に終わっていますが、今回は続き物の一話だけを投稿させていただきました。 ここまで読んで下さった方がもしいらっしゃるなら。 本っっ当に、ありがとうございました。心から。 感想、批判、頂けたらすごく嬉しいです。 それではっ☆ |
3322 | おはようございます | 一坪 E-mail | 6/25-05:21 |
記事番号3317へのコメント 投稿ありがとうございましたっ!! 冒険ファンタジーになるのかな? 私、こーゆー主人公がどんどん巻き込まれていく話、好きなんです。 というわけで、おもしろく読まさせてもらいました。 よかったら、また続きも投稿してくださいね。 |
3323 | Re:はじめまして | 星月夜 葛葉 E-mail | 6/25-11:20 |
記事番号3317へのコメント はじめまして、こんにちは。星月夜 葛葉です。「夢幻」読ませていただきました。 すごいです。おもしろかったです。どんどん、引き込まれていきました。すっごく、続きが読みたいです。 短い感想で、すみません。では、星月夜 葛葉でした。 |
3339 | ありがとうございますぅっ!! | 海原 開花 E-mail | 6/26-00:56 |
記事番号3323へのコメント こんばんわ。 一坪さま、星月夜 葛葉さま感想ありがとうございましたっ!! 楽しんでいただけたようで、心から嬉しいです♪ 続きも、書けましたら投稿させていただきます!! それではっ☆ |
3358 | 感想ですv | 紅葉 | 6/28-16:32 |
記事番号3317へのコメント 初めまして、紅葉(くれは)と申しますm(_ _)m 小説、拝読させて頂きました。とっても面白かったです。 ノエルちゃんもスフィードさんもトシさんも良いキャラクターですわね。 紅葉は特にスフィードさんが気に入りましたvv まだまだ裏がありそうで、おとボケている裏では結構強そうだと思うのですが……当たっているでしょうか? 夢の世界と現実世界の二つの世界があるというお話も、オリジナリティがあって素晴らしいと思います。 ところで結局の所ノエルちゃんの単位はどうなったのでしょうか…(^_^;) なんだか大きな事件があった裏での、細かいところが気になってしまったり…。 でもきっと何とかなった……のです…よねぇ…。 夢幻の世界では、警察がほとんどお仕事をしない、というのも笑えました。今の時代を反映した警察ですね(^_^;) ほんのちょっと触りを読むつもり〜と思っただけだったのですが、最後までぐいぐいと読ませる力があって、素晴らしかったと思いますv 続きがあるのでしたら是非読みたいですので、頑張ってくださいませm(_ _)m では…感想になっていないような感想で申し訳ありませんでした…。 失礼致しますぅ…。 紅葉 拝 |
3383 | ありがとうございますっ♪ | 海原 開花 E-mail | 6/30-01:01 |
記事番号3358へのコメント > 初めまして、紅葉(くれは)と申しますm(_ _)m 初めまして、海原と申します。 > ノエルちゃんもスフィードさんもトシさんも良いキャラクターですわね。 ……ウェンクの事をスフィードさんといった方は初めてです(笑) > 紅葉は特にスフィードさんが気に入りましたvv まだまだ裏がありそうで、おとボケている裏では結構強そうだと思うのですが……当たっているでしょうか? ウェンク気に入りましたか♪多分強いと思います(爆) お調子者なんですよね〜〜。彼は。 > ところで結局の所ノエルちゃんの単位はどうなったのでしょうか…(^_^;) なんだか大きな事件があった裏での、細かいところが気になってしまったり…。 > でもきっと何とかなった……のです…よねぇ…。 まぁ、一回くらいサボっても……何とかなったんでしょう……(汗) これからも事件のたびにサボっていただくわけですから(笑) > 夢幻の世界では、警察がほとんどお仕事をしない、というのも笑えました。今の時代を反映した警察ですね(^_^;) うぅぅ、世間様にケンカ売るつもりはなかったんですけどねぇ…… いつのまにかそうなってました(^-^;) > ほんのちょっと触りを読むつもり〜と思っただけだったのですが、最後までぐいぐいと読ませる力があって、素晴らしかったと思いますv 沢山感想、ありがとうございますv そう言っていただけるととても嬉しいです(^-^) 続きは、テストが終わったら書き始める予定です〜〜(汗) またアップさせていただきます♪ それではっ☆ |