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3449 | 聖戦の旋律。〜第5章 | 雪畑 | 7/7-17:03 |
聖戦の旋律。〜第5章 「あれ?セインは?」 夜、ノックの音と同時に部屋に入ってきた少女にロゼは眉を顰めた。 軽鎧をはずしただけの姿。短剣すら持っていない。 男の部屋に来るには無防備な格好である。 この少女をどうこうする気は毛頭ないが少しは女として自覚を持って欲しい。 「風呂だ。」 簡単に答えて剣の手入れを再開する。 「ね。ロゼ。」 ロゼの言葉を聞いていたのか、いないのか。 ふと顔を上げるとリチェの顔が驚くほど間近にあった。 「父さんに会ったんでしょ?」 「・・・・・ああ。」 かきんっ、と剣を鞘にしまい、言う。 「それよりも、少し無防備だ。」 「はっ?」 いきなりすりかえられた話題についていけなかったのか。 間抜けな声をあげたリチェに顔を向ける。 「そんな格好で・・・」 何故か言いよどむロゼ。 それに構わずリチェが手を打つ。 「ああ。・・・心配ないわよ。魔法があるし。」 「お前な、・・・」 「その為にあんたがいるんじゃない。」 「・・・・何の話だ?」 言っている事が微妙に食い違っている。 「だから、並みの襲撃者ならあんたがあっさりやっつけるでしょ?」 「・・・・・」 この少女は昔から命を狙われて続けてきた為か、 女としての危険にはめっぽう疎い。 一つ、溜息をついて、ロゼは窓の外を見上げた。 不穏な気配はない。 今日はゆっくり寝られるだろう。 -------------------------------------------------------------------------------- 嫌われて嫉まれて崇められて奉られた。 世界の守護者。 それが自分。信じて疑う事はなかった。 あの少女に会うまでは。 リチェルと名乗ったあの少女。 世界の生贄となる存在。 今までの者とは違い、泣きも叫びもしなかった。 「あたしがあんたを――世界を助ける。」 まっすぐと、紅い瞳でこちらを見つめて。 きっぱりと、迷いなくそう言った。 人間。弱き者。 その人間であるはずの少女に自分は全て託した。 ふと、目を開く。 見えたものは闇。はじめもなく終わりもない闇。 『今のは君の記憶か?』 問い掛けてくる声。 カヴァンと名乗り自ら私に喰われた男。 『リチェルは・・・君を助ける。そういう子だ・・・・』 今はまだ。自我が残っているが、もうもたないだろう。 『仲間が、いる・・・・』 消えかけていく意識に感慨すら抱かず耳を傾ける。 『ロゼくん・・・だったか。謝らなければ・・・・ 最初・・・敵かと思って攻撃してしまった・・・・』 空間が揺らぐ。 『ふふ・・・私も消えるか・・・・』 闇が脈動する。 『最期に・・・成長したリチェルを見たかった・・・・な・・・・』 それきり。 声は聞こえなくなった。 暑くもなく寒くもない。 雨も降っておらず、さりとて日差しは強くない。 そんな季節のそんな日に。 いきなり道を塞いだのは黒ずくめの自称政府の使いだった。 となればやることは一つ。 「『唸れ風』っっ!!」 ごおぉっ!! 削れる大地。吹き飛ぶ木々。 「問答無用っ!!」 「まじで無用だし。」 胸を張って言うリチェに突っ込むセイン。 ロゼはこういうことに慣れているのか眉一つ動かさない。 「あんたみたいな暗殺者送り込んでくる政府に手加減は必要ないわ。」 「正論だけどなぁ・・・・」 苦笑して言うセインを無視してロゼが一歩前に進んだ。 「どうした?」 セインが怪訝な顔で声を掛けてくる。 その疑問に答えたのはリチェだった。 「まだ・・・・いるみたいね。」 剣を抜いて、砂埃の舞う街道の先に目を向ける。 ゆっくりと浮かび上がる黒い影。 「魔法が直撃したんだぞ!?」 発動した魔法を食らって生きている場合。 リチェが手加減したか。 相手が悪かったか。 この場合は言わずもがな後者である。 「ロゼはあたしの魔法避けた事あるわよ。」 「死ぬかと思ったが。」 「そういう問題かよ。」 呟くリチェに答えるロゼ。突っ込むセイン。 そのやりとりを聞いていなかったのか聞いていたのか男が口を開く。 「カヴァン=フィアドーレが消滅した。」 「・・・・え?」 理解できなかったのか、呆けた声をあげるリチェ。 「終わらせたくば、我ら政府に従え。」 「――動くな。」 威嚇の為か、それとも本気か。 相手の額に銃口を合わせるセインに男はゆっくりと告げた。 「新たな命令だ。リチェル=フィアドーレを我々の元まで案内しろ。」 どぅんっ。 小さな爆発。 また舞い上がった砂煙が消えるころには。 男は姿を消していた。 ――そういえば。 彼女の部屋を訪れるのは初めてかもしれない。 自分はいつも受身だった。 こんこんっ。 ノックの音が響いてしばし。 内側から扉が開いた。 「何?こんな夜中に。」 見た目には何ら変わらない少女の顔を見て告げる。 「話がある。」 迷うような仕草を見せつつも部屋に入るよう視線で示す。 その視線に導かれるようにロゼは部屋へと入っていった。 「奴らに従うのか?」 「・・・・ま、ね。しゃくに障るけど・・・このままじゃ何も変わんないし。」 その点についてはロゼも同意見だった。 しかし。 「生贄として、か?」 「・・・そうかもね・・・」 疲れた声で言うリチェに更に言葉を返す。 「何でだ?今まで生き延びる方法を探してきたんだろ?」 「このままだとっ。世界が死んじゃうのよ!? そこに住んでるロゼもセインも・・・・みんな死んじゃうのよ!?」 声を荒げてかぶりを振るリチェ。 耐え切れなくなったのか。堰から溢れたように言葉を紡ぐ。 「知ってたんでしょ?父さんがあたしの代わりに・・・・・ もうそんなの耐えられない!人が死ぬのを見るのは嫌!」 「リチェ!」 「あたしは・・・あたしは死ぬ為に生まれてきたんだからっ・・・」 「違う!」 どうしてこの少女がこんなに重いものを背負わなければならないのか。 背負って歩きつづけるだけの強さを持ってしまったのか。 「違う・・・お前は何も悪くない。 この世界が狂ってるだけなんだ!」 壊れた玩具。 それが世界。 世界が滅ぶまで、あと僅か。 ∇第6章へ |
3459 | 聖戦の旋律。〜第6章 | 雪畑 | 7/8-13:52 |
記事番号3449へのコメント 聖戦の旋律。〜第6章 世界がまだ若かった頃。 闇と光の間に境界はなく。 それを管理する者もいなかった。 ――人はそれを混沌と呼ぶ。 「話は終わったかい?お二方。」 「ああ。真夜中に出る。」 ノックもなしに――といっても気配を消していたわけではない。 部屋に入ってくるセインにロゼはいつもと同じ、短い答えを返した。 「行くのは政府公邸。敵さんがうじゃうじゃいるとこだ。」 ロゼにどこか苦笑を含んだ笑みを見せてセインが言う。 「戦闘準備。」 「そーゆーこと。」 リチェの科白を肯定するセイン。 どさっ。 もってきた鞄の中には。 古今東西の、いわゆる『暗殺道具』が詰まっていた。 「あ〜重かった。」 「短剣に鋼線に手裏剣に――拳銃まで・・・・・」 「知り合いに武器屋がいてな。好きなの使えよ。」 言葉の後半はロゼに向けられたものだった。 リチェには細剣――ロゼに斬られたがリチェが魔法で修復した――や魔法がある。 余計な武器は身を重くするだけである。 「気をつけろよ。毒塗ってあるからな。」 「そうか。」 無関心な声とは裏腹に手際よく武器を選んでいくロゼ。 中にはリチェの知らない武器もあった。 「使えんのか?」 「大抵の武器なら扱える。」 「頼もしいねぇ。」 言うセインの腰にも剣が一振り。 しっかりとした造りの細身の剣である。 「使えるのか?剣。」 「ああ。お前ほどじゃねーけどよ。」 セインが拳銃に弾を込めながら答える。 ――真夜中まで、あと数時間。 ある日。 混沌は混沌としていられなくなった。 突然変異か。偶然か。 強き光と強き闇が生まれた。 光は闇に呑まれまいと。 闇は光に滅せられんと。 互いの間に境界を引き近づこうとはしなかった。 私有地と記された山奥にその邸宅はあった。 政府公邸。 「この奥に政府のお偉方が待ってる。」 セインの言葉に頷いてリチェが手を天へ差し伸べる。 迷いはない。 仲間がいる。 「『神の槌』っっ!!」 夜のしじまに響く爆音。 ――聖戦の旋律は奏でられる。 光もなく闇もない境界の上に人は生まれた。 やがて国ができ、戦争がおこる。 闇の量は光にも増して増えていった。 闇が闇でいるためには光に触れてはいけない。 光が光でいるためには闇に触れてはいけない。 境界を越えてはいけない。 闇と光は互いを護ろうと一つの門を造った。 「どういうつもりだ。」 その場に聞こえたのは―― 「命令どおりリチェル=フィアドーレを連れて来たぜ。」 いつかの黒ずくめの男。 怒りと殺気を湛えて森の中に溶け込んでいる。 「貴様、裏切ったか。」 「うっせえよっ!」 ぱんっ。 軽い音を立てて拳銃が跳ねる。 飛び行く銃弾は狙いたがわず黒ずくめの額に打ち込まれた。 が。 「死んでもらうぞ・・・」 倒れもせず黒ずくめはそこにいる。 セインが叫んだ。 「行けっっ!!」 「『包め空』っ!!」 リチェの魔法が発動する。 「逃すとでも・・・」 「てめえの相手はこの俺だ!」 セインに阻まれこちらによって来れない黒ずくめ。 その時はすでに、リチェはロゼと共に空高く舞っていた。 門は管理者そのもの。 必要ならば闇を放ち、闇を封じる。 そんな事が幾度繰り返されたのか。 管理者いや――聖門は。 自分の力に衰えを感じた。 「大丈夫かなぁ・・・セイン。」 「心配ない。」 闇夜。 襲撃にはもってこいの夜である。 「・・・その無謀な自信はどこからくるのよ。」 「無謀さではお前に負ける。」 「落とすわよ。」 「・・・やめろ。」 不毛な争いを続けつつ空を漂うロゼとリチェ。 もちろん魔法で飛んでいるのだが。 この高さから落ちれば無事では済まない。と言うか絶対死ヌ。 「どこがいいと思う?」 「選んでも仕方ない。」 「んじゃ、そこら辺の屋根ぶち破って・・・」 「陽動した意味がないだろ。」 ロゼの突っ込みにリチェが喉を唸らせる。 一瞬後。 「決めた。」 「何を?」 顔を上げて言ってくるリチェに嫌な予感が走る。 「後の事は後で考える。 つーことでもう一発『神の槌』っっ!!!」 どおぉおん・・・・ 吹っ飛ぶ森を横目で見ながらロゼは深い溜息をついた。 ――どこか楽しげに。 闇に蝕まれた体を治すには。 強い光を持った者が必要だった。 ――人の中には光の力を受け不思議な力を使うものがいる。 ならそいつを喰えばいい。 事情を知った当時の政府は迷わず生贄を差し出した。 一人の命と世界の命。 天秤にかければどちらが重いか。 迷いなどあるはずがなかった。 政府公邸内に潜入。 お偉いさんを一人か二人捕まえて聖門の場所を聞き出す。 場所が分かれば。 あるいは何か手があるかもしれない。 それがリチェの立てた計画だった。 計画、ともいえないような思いつきだったがロゼもセインも迷う事なくその案に乗った。 「『雷の星』っっ!!」 ばりばりばりばりっっ!! 威力をかなり抑えた魔法が警備兵を直撃する。 あっさりばたばた倒れる兵士。 「はっ!」 きぃんっ! 気合と共に繰り出された剣が兵士を襲う。 兵士達は剣を抜く間もなくなぎ倒される。 「強すぎる・・・・」 呆然とした兵士の言葉は駆け出す二人には届かなかった。 そして―― 生贄制度は世の中の奥深くで確立した。 ∇第7章へ |
3478 | Re:おおっ!第5章と第6章だ〜♪ | 蜂巻 E-mail | 7/8-21:27 |
記事番号3459へのコメント 今晩は! 蜂巻で〜っス! なんと一気に第5章と第6章が読めてしまいました〜♪ どうもありがとうございますー! 番外編も読んできちゃいました〜♪ とおっっても 楽しかったです。 日常の貧乏な一コマが!!!(笑) お金がなくっちゃご飯食べられませんものねぇ。 第5章 おとおさ〜ん死んじゃイヤだぁー!! 娘の結婚式で花婿を殴る前に死んじゃうなんて〜(泣) おとーさんの無念は察するにあまりあります。 それはそうと、お父さんが話していた人って一体誰なんでしょう? そして、ロゼはリチェにどんな話をしたんでしょうか♪ 第5章と第6章の間でどんなやり取りがあったのか・・・・う〜ん妄想してしまいます。 第6章 >世界がまだ若かった頃。 ・・・ということは、第5章のお父さんと話してた人はそのまま世界さんだった、ということでしょうか。 若かった頃って・・・人間で言うと今いくつくらいなんでしょう? >セインが叫んだ。 >「行けっっ!!」 >「『包め空』っ!!」 >リチェの魔法が発動する。 >「逃すとでも・・・」 >「てめえの相手はこの俺だ!」 おおっ!!! セイン!さすがです。オトコマエじゃないですかぁ〜♪ >管理者いや――聖門は。 この聖門さんがお父さんと話していた世界さんなのでしょうか? >自分の力に衰えを感じた。 ・・・ということは、人間で言うと40代から50代かな〜? >「大丈夫かなぁ・・・セイン。」 >「心配ない。」 即答ですかぁ! >吹っ飛ぶ森を横目で見ながらロゼは深い溜息をついた。 >――どこか楽しげに。 いいコンビですねー。 こういうのってニヤリとしてしまいます! とっても♪とっても♪面白かったです〜! 今度は世界さんが出るのでしょうか? 続き楽しみにしております。 では!失礼しました〜♪ |
3485 | どうもっ。 | 雪畑 | 7/9-10:34 |
記事番号3478へのコメント > 今晩は! 蜂巻で〜っス! こんばんわっ!明日が期末最終日!の雪畑です。 > なんと一気に第5章と第6章が読めてしまいました〜♪ > どうもありがとうございますー! こちらこそ読んでくださって・・・・(照) > 番外編も読んできちゃいました〜♪ > とおっっても 楽しかったです。 > 日常の貧乏な一コマが!!!(笑) > お金がなくっちゃご飯食べられませんものねぇ。 ええ。私的にリチェに仕事頼む奴はいないだろう。と。(笑) ロゼに苦労してもらいましょう。 > 第5章 > おとおさ〜ん死んじゃイヤだぁー!! > 娘の結婚式で花婿を殴る前に死んじゃうなんて〜(泣) > おとーさんの無念は察するにあまりあります。 いい人ですねぇ。お父さん。(作者が言っても・・・・) > それはそうと、お父さんが話していた人って一体誰なんでしょう? > そして、ロゼはリチェにどんな話をしたんでしょうか♪ > 第5章と第6章の間でどんなやり取りがあったのか・・・・う〜ん妄想してしまいます。 それはこれから、ということで。 楽しみにしててください♪ > 第6章 >>世界がまだ若かった頃。 > ・・・ということは、第5章のお父さんと話してた人はそのまま世界さんだった、ということでしょうか。 はい。というか管理者さんです。 > 若かった頃って・・・人間で言うと今いくつくらいなんでしょう? ん・・・んむ。考えてなかった・・・(汗) >おおっ!!! セイン!さすがです。オトコマエじゃないですかぁ〜♪ ロゼとセインを対照的にしてるつもりなんです。 ・・・・失敗してるかな?(笑) >>管理者いや――聖門は。 >この聖門さんがお父さんと話していた世界さんなのでしょうか? さっきも書きましたけどそのとうりです。 >>自分の力に衰えを感じた。 >・・・ということは、人間で言うと40代から50代かな〜? そうですね。 でもウチの父さん(41歳)まだ元気だし・・・50半ばくらいじゃないですか? >>「大丈夫かなぁ・・・セイン。」 >>「心配ない。」 >即答ですかぁ! 即答です。(笑) なんたってロゼですから♪ >>吹っ飛ぶ森を横目で見ながらロゼは深い溜息をついた。 >>――どこか楽しげに。 >いいコンビですねー。 >こういうのってニヤリとしてしまいます! 自分でもけっこう気に入ってる場面なんですよ〜♪ > とっても♪とっても♪面白かったです〜! > 今度は世界さんが出るのでしょうか? > 続き楽しみにしております。 > では!失礼しました〜♪ 次はセイン大活躍(?)でしょうか。 感想ありがとうございましたっ!! であであ〜♪ |