◆−蒼き石、赤き竜 1−ねんねこ(8/20-16:43)No.4008
 ┗蒼き石、赤き竜 2−ねんねこ(8/20-16:49)No.4010
  ┣続き物?珍しいですね−由理&ゆかり(8/20-18:13)No.4013
  ┃┗初めてです。続き物−ねんねこ(8/22-14:10)NEWNo.4052
  ┣Re:蒼き石、赤き竜 1 and 2−笹森 明日香(8/20-22:40)No.4017
  ┃┗いつもいつもありがとうございます。−ねんねこ(8/22-14:18)NEWNo.4053
  ┗蒼き石、赤き竜 3−ねんねこ(8/21-15:35)NEWNo.4032
   ┗蒼き石、赤き竜 4−ねんねこ(8/21-15:37)NEWNo.4033
    ┣Re:蒼き石、赤き竜 3 and 4−笹森 明日香(8/21-21:42)NEWNo.4036
    ┃┗メルアドあるとついつい書きたくなるんですよね、メール−ねんねこ(8/22-14:27)NEWNo.4054
    ┣感想(?)−由理&ゆかり(8/21-23:01)NEWNo.4039
    ┃┗立派な感想ですよ。−ねんねこ(8/22-14:32)NEWNo.4055
    ┗蒼き石、赤き竜 5−ねんねこ(8/22-14:35)NEWNo.4056
     ┣Re:蒼き石、赤き竜 5−笹森 明日香(8/22-20:43)NEWNo.4064
     ┗蒼き石、赤き竜 6−ねんねこ(8/23-20:31)NEWNo.4088
      ┗蒼き石、赤き竜 7−ねんねこ(8/23-20:32)NEWNo.4089
       ┗蒼き石、赤き竜 8−ねんねこ(8/23-20:34)NEWNo.4090
        ┗わくわく−雫石彼方(8/24-05:55)NEWNo.4102


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4008蒼き石、赤き竜 1ねんねこ 8/20-16:43


こんにちは、ねんねこです。ゼルアメです。次はゼロアメ書くって言ったねんねこは偽者です。ゼロアメの話が思いつきません(涙)許してください。
ところで今回はリナとガウリイ出てきません。なんか、ゼルとアメリア偽者です。話し長くなります。俗に言う連載物です。クラヴィスが何気に出てきます。クラヴィスって誰じゃいといわれる方はねんねこの下手くそな過去の記事『秘密の約束』及び『翼の設計図』を読んでみてください。そろそろツリーから落ちていると思われます。話の時間としてはTRY終了後ということにしておいてください。これくらいか?なんか突っ込まれそうな苦情は……あ、あと相変わらずの駄文です。ゼルアメ、といって良いのかという文章になりました。それぞれの言動からゼルアメ(ないしはゼロアメ)を読み取ってください。よし、ほとんど苦情を網羅した気がする。
では、どうぞ。


『蒼き石、赤き竜』

『アメリア、大丈夫?』
 優しかった母さん。
『怪我ないわね?』
 最期まで笑ってた。
『大丈夫。父さんのところに行ってなさい』
 ……わたしが殺したも同然なのに、わたしに微笑まないで……母さん。

 三日月が空にぶら下がっている。
 壁に寄りかかり、ゼルガディスはぼーっとその三日月を見つめた。
 隣では、正装した知り合いが、なにやらしゃがみこんで荷物をごそごそと引っ掻き回している。
 遠くから楽しげな音楽が聞こえる。
 聖王都セイルーン首都セイルーン・シティ。
 王宮の周りを囲む壁に寄りかかりながら、ゼルガディス=グレイワーズはぽつり、と呟いた。
「何してんだ……俺?」

 時は十数時間前にさかのぼる。

 とある事件というか問答無用で巻き込まれた戦いが終わって、ゼルガディスはそのまま結界の外で旅をし続けた。とはいえ、結界の外の大陸は、魔術が発達していない。キメラの研究もないとは言わないが、あまり進んではいない。家畜のクローンを作って喜んでいる程度のものだった。このままこの大陸にいても仕方がない、と見切りをつけて結界内の半島に戻ってきて、世界情勢が分からぬままやってきたのは、セイルーンだった。
 とりあえず向かうは旧友の家。
 本当は三ヶ月前別れたきりの仲間のところへ行きたかったのだが、なんとなく会い辛かった。
 自分の身体を元に戻すまで会わないと心に決めていたから。
 心の中で大切に想うだけではもの足りなかったが、彼女を気遣いかつ自分の身体を元に戻すということの両立は不器用な自分では出来ない。けれど、会ってしまえばどうしても連れ去ってしまいたくなるに違いない、そう判断したから。
 心の葛藤の末、彼は結局十数年来の親友のところに居座ることにした。
 なにせ、数年顔を見せずにほったらかしにしておくと拗ねる。拗ねるだけなら無視できるが、さすがに多額の賞金と共に手配をかけられたときは慌てて会いに行った。
 ……クラヴィス=ヴァレンタイン。

「とまあ、こういうことになってる」
 カーテンが風になびくクラヴィスの私室で、ゼルガディスが何故か頭に氷を乗せて彼から最近のことを聞いていた。レゾの元で情報収集の仕事をしていた彼は、その仕事をやめてからも何故か情報収集をしていた。親友であるゼルガディスの身体を元に戻すための方法を探しているのにも理由はあるが、関係ないところまで細かな情報をもっているというところを見ると大方趣味になっているのだろう。
「……いなかった一年でそんなに変わるとはな」
 嘆息して、ゼルガディスは氷を頭からおろした。鍵をかけてしまっている窓枠を見て、呟く。
「……お前の性格の悪さにも磨きがかかったようだし」
「自業自得だ」
「何度声かけても気がつかなかったのはそっちだろ!? それとも何か!? この姿で俺に玄関から入って来いって言うのか!?」
「だからって、思いっきりでかい石投げて窓を割るこたぁねぇだろっ!? 知ってんのか!? ガラスが一枚いくらするか!!」
 言い合うだけ言い合って、二人は静かにベッドに腰をかけた。
「……でお前の方はどうだったんだ? ゼル」
「はっ、たいしたもんだよ。魔術は発達していない。クローンだって、羊や牛くらいなもんで人間は作れない。法律とやらで製造禁止になってるらしいし。キメラなんざ、伝説上の生き物だってよ」
「よかったじゃん。伝説上の生き物で」
 可笑しそうに笑うクラヴィスにゼルガディスは持っていた氷をクラヴィスの顔に投げつけた。クラヴィスは涼しい顔をしてそれを受け止めたが。
「……まあ、それも聞きたかったけど、オレが言ったのはアメリアちゃんとのこと。何で一緒に来ないんだよ」
「……まだ覚えてたのか……」
 げんなりとゼルガディスは呟いた。
 数年前、偶然彼と再会した時に一緒にいたアメリアとのことでからかわれまくったことを思い出す。その時、彼と交わした約束のことも。
「覚えてたのかはないだろ。オレとの約束、女の子連れて旅しよう、ってあれ、お前の相手はアメリアちゃんだと確信してたぞ、オレ」
「……どーでもいいが『ちゃん』は止めろ『ちゃん』は」
 何故かクラヴィスは彼女に会った時から彼女のことを『様』ではなく『ちゃん』と呼んでいた。実は『アメリア様』と呼ばなかったのは、クラヴィスの小さな心配りであった。世の中には堂々と自分の家柄を自慢する奴もたくさんいるが、あまり、家柄のことを言われるのが好きではない人間も確かにいる。例えば自分のような。他人は自分の家名を聞くと、『ヴァレンタイン家の神官様』とまるで神様を見ているような目で自分を見てくる。自分は自分。ヴァレンタインの家の名前をつけた人形じゃない。
 敬称を『様』で呼ばれなかった時のアメリアの顔は安堵と喜びでいっぱいだったことをクラヴィスは覚えている。彼女も自分と同じ。家柄のためにその身をささげることを拒む人間。自分は自分。他人には家柄も関係なく見て欲しい。
 クラヴィスはため息をついた。
「分かってないね、お前は」
「なにが?」
「オレが女の子を呼び捨てにしたことがあったか?」 
 言われてゼルガディスは沈黙する。そう言えば、確かになかった気がする。
「そんなことより」
 自分の話題を横にずらして、クラヴィスはゼルガディスに詰め寄った。
「どーなんだよ、アメリアちゃんとは。お前、大事なものは掴んだら何したって離さなかったくせに何で手放したんだよ」
「待っててくれ、って約束した」
「相手は王女だ。いつかはどっかの王子様が迎えに来るって事くらい、お前だって分かってんだろ。
 やけに余裕あるんだなぁ?お前」
「悪いか?」
 ゼルの言葉に、球にクラヴィスの顔がにやけた。ゼルガディスの腕を引っ張って自分の下に引き寄せると、あまり動じてないゼルガディスの耳元で一言囁いた。
「寝たのか?」
 ただその一言にゼルガディスの顔が真っ赤になった。慌てて腕を振りほどくと、その場を飛び退いて立ち上がる。
「ば……な……寝ただなんてっ……!!」
 言葉にならない言葉を発するゼルガディスの様子にクラヴィスはため息をついた。
「そんなに真っ赤になって否定しなくてもいいだろうよ。二十歳にしちゃあ新鮮な反応だし」
「歳は関係ないだろっ!?」
 声が裏返っている。
 クラヴィスはぱたぱたと手を振った。『分かってるよ』という風に。
「キス止まりだろ。知ってるよ。聞いたから、アメリアちゃんに」
 はた、とゼルガディスが硬直する。
「会ったのか!?」
「同じ街に住んでんだ。知り合いだし、会うだろーよ」
「アメリアは王族だぞっ!? 『会いにきました♪』とか言って簡単に会わせてもらえるわけないだろっ!!」
 ゼルの言葉にクラヴィスははっはっはっと笑う。
「彼女が満月の夜は自分の部屋のテラスで、一人でお茶会してるのはもうすでに調査済みだからな♪」
「お・ま・え・はぁぁぁっ!!」
 ゼルガディスはクラヴィスの首を問答無用で絞めた。

満月に照らされて、一人の少女がテラスに出た。身分相応の薄い蒼色のドレス。胸元を飾る母の形見のペンダント。手にはポットとカップをのせたトレイを持っている。
備え付けのテーブルにそれを置き、二つある椅子の片方に腰をかけた。
カップにポットから紅茶をなみなみ注いで、ため息をつく。
「今宵は、月が一段と綺麗ですね。お嬢さん」
 突然した声にアメリアは慌ててそちらを見やった。
 黒い腰までの髪。痩せた身体。綺麗な翠色の瞳。
 見知った顔だった。何年も前に、たった一度、しかも短い時間しか一緒にいなかったけれど。
 彼女が心の中で想っている男が唯一心を許せる相手。
「クラヴィスさんっ!?」
「とはいえ、君の美しさには敵わない、ってか。お久しぶり。元気にしてた?」
 軽く手を上げて、クラヴィスは寄りかかっていた手すりから身体を離してアメリアに近づいた。

「ゼルガディスさんは外の世界にいますよ」
 クラヴィスが持参したカップに紅茶を注ぎ、同じく彼が持ってきた手作りらしきケーキを頬張りながらアメリアは言った。
「君はついていかなかったの?」
「……わたしにはわたしの、ゼルガディスさんはゼルガディスさんのするべきことがある。それぞれ自分のなすべき事をし終わってから迎えに来るって……そう言われました。
 でも……いいんです」
 唇に手を触れる。軽く触れた程度だったが、彼の唇は、とても温かかった。
「また旅をしよう……そう言ってくれましたから」
「キスして? それとも指きりげんまんの方?」
 クラヴィスの微笑んだ顔を見て、アメリアは思わず顔を赤らめた。
 うつむいて、小さく呟くように言う。
「……両方」
(あの馬鹿……約束する時は絶対指きりげんまんしなきゃならないとか思ってるんじゃないだろうな……)
 まあ、ゼルガディスらしいといえばらしいが。
「オレの時もいつもそーだった」
 アメリアがギョッとする。
「いつもキスしてるんですかっ!?」
「……指きりげんまんの方」
 素っ頓狂な返事にクラヴィスはこめかみを引きつらせた。
「オレは種族的思考として男なんぞと断じてキスなんぞせん。たとえ親友だとしてもな」

「で、どうだったんだ? 初めてだったんだろ、アメリアちゃんとのキ・ス♪」
「う……」
 言えない。それよりも前に自分の目の前で無防備に寝てた彼女の唇を奪っていたことなど。しかも二度。
「……なんか隠してるだろ、お前」
「べ……別に……」
「いーや、絶対隠してんなっ! お前昔から分かりやすいんだよっ! 吐けっ! 吐かないと今夜一緒に連れて行ってやんないぞ」
「だぁぁぁぁっ! 何もないって………って、今夜?」
 きょとん、とした顔で言うゼルガディスにクラヴィスはぽん、と手を打った。
「言ってなかったっけ? 今日お城でパーティーがあるんだよ」

「なあ、クラヴィス。やっぱ、俺帰る」
 王宮の壁から身を離し、すたすたと立ち去っていこうとするゼルガディスの足に慌てたクラヴィスが思いっきり抱きついた。危うくバランスを崩し倒れこむのを堪えて、ゼルガディスは絡まるクラヴィスを片足で蹴った。
「離せよ。帰る」
「なぁにここまで来て言ってんだよ。どーせお前のこったから『アメリアには会わないって心に決めた』とか変な強がり張るんだろ。
よせよせ、そーいうくだらない意地は」
「くだらない意地って……」
 反論しかけて、ゼルガディスは口を閉じた。視線の先には真剣な瞳をしたクラヴィスの姿。
「十回」
「あ?」
 何を言われたのか分からずにゼルガディスが間の抜けた声をあげる。
 クラヴィスはゼルガディスの足から身体を離し立ち上がった。
「十回。アメリアちゃんが自分の部屋にお茶持って入ってきてからオレに気付くまでについたため息の数。そーとー疲れてるぞ。王宮暮らしに。
 お前だったら分かるんじゃないのか。自分が『自分』として見られるんじゃなくて、『誰かの人形』として見られることがどんなに辛いことか」
 ゼルガディスは思わず視線をそらして黙り込んだ。
『レゾの後継者』として見られていた自分。自分に優しく接していてくれた人達はほとんどが『ゼルガディス』ではなくて『レゾの後継者』としか見てはくれなかった。
 クラヴィスは、すぐいつもののへら、とした笑顔に戻る。
「つーわけで、お前はここで待ってろ、ゼル。オレがアメリアちゃん連れ出してくるから」
「……はっ!?」
 いきなりの言葉にゼルガディスが頭を抱えた。クラヴィスが呆れた顔をする。
「……まさかお前自分で連れ出そうと考えてたのか? いくらなんでも目立つぞ、それは」
「い、いや。そーじゃなくって。今、連れ出してくる、って言わなかったか?」
「言ったけど」
「ダメに決まってんだろーがっ!? 何考えてんだ!? お前は!?」
 思わず大声で叫んで、ゼルガディスは辺りを見回した。フードもかぶっていない自分の姿を誰かに見られて『化け物だ』と言われるのは慣れてしまったがやはり少しばかり辛い。
 幸い周りには誰もいなかった。でかい帽子をかぶった女の子が走り去っていくだけだった。ゼルガディスは安堵のため息をつく。
「じゃあどうするんだよ。もしかして放っとけって言うのか?」
 ぶーと頬を膨らませて言うクラヴィスにがっくり肩を落としながらゼルガディスは言う。
「……分かった。連れてくるだけ連れてこい。無茶すんなよ。お前が無茶するとこっちまで迷惑がかかる」
「分かった分かった」
 軽い返事をして、クラヴィスはひょい、と壁を乗り越えようとした。
 ゼルガディスは、なんとなく声をかける。
「なあ、クラヴィス」
「なんだよ、今度は」
「招待状持ってるんだったら、別に正面から堂々と入ってもいいと思うのは、俺の気のせいか?」
 クラヴィスは静かに壁から飛び降りた。
                          ≪続く≫

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4010蒼き石、赤き竜 2ねんねこ 8/20-16:49
記事番号4008へのコメント

(ま、パーティーなんてこんなもんですよね)
 アメリアは憂鬱な顔をしてテラスに立っていた。空には満天の星と三日月がある。
 セイルーン主催のパーティーは中庭で行われていた。滞りなく進んで、今は各自自由に歩き回っている。
 ダンスのために曲が演奏され始めてから何人か彼女にダンスの申し込みに来た人間がいるが、彼女は全て断った。何も考えず、踊ったら後で『あの人』になんて言われるか。きっと絶交だ、とか顔も見たくない、とか言われてしまうだろう。ただでさえ、あんな手紙が来てから『あの人』の機嫌は不機嫌だったから。
 一人の男がやってくる。知らない男だった。黒い髪を後ろで束ねたかなりの美形。翠色の瞳を持ったその男はにっこりと笑ってウインクした。
「ちょっとついてきてくれるかい? アメリアちゃん」
 ……知り合いにいたっけ。
 いなかった気がする、と自問自答してから、アメリアはきっぱり言った。
「嫌です。お断りします」
 その答えに脱力しきっている男。断った人間にも何人か肩を落とした人間はいたが、彼のようなオーバーリアクションをしたのは初めてだ。
 男は彼女に近づいて、ぼそっと呟いた。
「ゼルが来てんだ。会ってやってくれ」
 その言葉に彼女は硬直した。
 ゼルガディス。
(……彼が来ているのならちょうどいいかもしれないですね)
 アメリアはにっこり笑った。
「ちょっと皆さんにお話がありますの」

 アメリアは父親の方にゆっくりと歩いていった。どこかのお偉いさんと話していたフィリオネルが振り返る。
「おお、アメリア、ちょうどいいところに」
「残念ですが……」
 彼女の発した声を聞いて、周りにいた人間が驚愕した。
 いつものかわいらしい声ではない。どこか冷たい声。その声はだんだん低くなっていく。
 彼女の姿が闇に飲まれた。見ていたクラヴィスも思わずテラスから身を乗り出した。
 次に現れたのは黒い神官。フィリオネルには何度かその神官と面識がある。
「ゼロス殿っ!?」
(ゼロス!?)
 クラヴィスはテラスから飛び降りて、ゼルガディスが待っている方面へ走る。
 ゼロス。名前はゼルガディスから聞いたことがある。
 獣神官ゼロス。全ての闇を統べる赤眼の魔王が生み出した五つの腹心の一人、獣王ゼラス=メタリオムが創った神官魔族。
 ゼロスはいつもの笑みを浮かべてフィリオネルに何かを渡した。手紙だった。
「アメリアさんからの預かり物です。『ごめんなさい』と伝えてくれ、との事ですので」
 言うだけ言って、さっさと立ち去っていく。自分の用事が済んだのだろう。
 ゼロスはクラヴィスの姿を見つけて、近づいていった。思わず立ち止まるクラヴィスにゼロスはにっこりと笑った。
「ゼルガディスさんに会わして頂けますか?」

 パーティー会場がざわつきだしたことにゼルガディスが気がついたのは、ゼロスが会場に姿を見せてからまもなくだった。ゼルガディスには何が起こったのかわからなかったが、とりあえず、騒ぎになるようなことは起こっているのだろう。
 思いつくのは――クラヴィスの失敗。
「あの馬鹿……一体何したんだ?」
「なんもしてねーよ」
 上からした声に見上げれば、クラヴィスがどこか遠くを見つめて壁に腰をかけていた。
 ゼルガディスが尋ねる。
「何かあったのか? アメリアは?」
「んーとりあえず連れてきたよ」
 曖昧な返事をしてクラヴィスはゼルガディスに向かってぱん、と手を合わせた。
「すまん。ゼル」
「あ?」
 間の抜けた声。クラヴィスの謝罪の意味はすぐに分かった。クラヴィスの横からひょっと顔を出した男の顔を見て。
「お久しぶりです♪ゼルガディスさん」
「ゼロスっ!?」
「いやぁ、お前のところに案内しないと、会場の人間一人ずつ殺す、って脅すんだもんだから」
 クラヴィスが壁から飛び降りて、ゼルガディスの隣に降り立つ。
「何しに来た。ゴキブリ」
 ゼルガディスはゼロスを睨みつけた。ゼロスも軽く跳んで二人の近くに降り立つ。
「今回はアメリアさんに協力しただけです。他意はありません」
「アメリアは?」
「さぁ。身代わりを頼まれただけですから。多分王宮を抜け出したと思いますけど」
 ゼロスは首をひねった。
 ゼルガディスは嘆息しながら、
「アメリアと最後に会ったのは?」
「さっきです。パーティーの始まる少し前」
「ゼル、お前彼女らしき人物見なかったか? 王宮の見取りを考えると、一番ここに隙があるんだ」
 クラヴィスの問いにゼルガディスは額に手をやった。
「そんなこといっても、あいつらしき人どころか通行人だって……」
 通らない。
 そう言いかけて、彼は動きを止めた。
 でかい帽子をかぶった女の子。
 顔は見なかったが、背の高さは似ていた気がする。
 髪は肩より少し伸びてた。でもアメリアと同じ黒髪だった気がする。
「……彼女宛に予告状が届きましてね」
 ぽつり、とゼロスが言った。
「彼女のお母様の形見を盗む、っていう」
「形見……?」
 ゼルガディスの問いにゼロスがこくん、と頷いた。
「ええ。見してもらいましたよ。結構綺麗な蒼いペンダントでした」
 クラヴィスの眉が上がった。
「蒼? 紅じゃなくて?」
「いえ、蒼です。彼女の瞳と同じ色で、綺麗でしたよ」
「知ってんのか? クラヴィス」
 ゼルガディスの問いにクラヴィスは戸惑いながら、
「んー、オレが会った時は紅色だった気が……あれだろ? まるっきり石、って感じのいびつな形した」
「ええ。少し形がいびつですよ。何時お会いになったんですか?」
「満月の夜」
 クラヴィスの答えにゼロスがしばし眉をひそめた。
「何か知ってるのか? ゼロス」
 ゼルガディスの言葉にゼロスは首を振った。
「いいえ……それよりアメリアさんの方ですよ。いいんですか? 放っておいて」
「行き先がわからないんだ。無意味に探し回って無駄に時間を浪費するつもりはない。
 フィルさんに心当たりがあるか聞いてみる。お前はどうする?」
「僕は、一旦獣王様のところへ戻ります。なんか仕事があるかもしれませんから。なかったら、僕は僕でアメリアさんを探してみます」
 ゼロスの言葉にゼルガディスは肩をすくめた。
「安心してずっと精神世界面にでもいろ。アメリアはが見つけるから、おまえはお前はもうくんな。生ごみ魔族」
 その言葉にゼロスが引きつった笑みをした。
 しばし両者沈黙で睨みあっている間、クラヴィスはつまらなそうに空を見上げた。
                                              ≪続く≫

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4013続き物?珍しいですね由理&ゆかり 8/20-18:13
記事番号4010へのコメント


> いつものかわいらしい声ではない。どこか冷たい声。その声はだんだん低くなっていく。
> 彼女の姿が闇に飲まれた。見ていたクラヴィスも思わずテラスから身を乗り出した。
> 次に現れたのは黒い神官。フィリオネルには何度かその神官と面識がある。
>「ゼロス殿っ!?」
>(ゼロス!?)
「は?・・・・身代わり?」
ゼロスが?


>「お久しぶりです♪ゼルガディスさん」
>「ゼロスっ!?」
>「いやぁ、お前のところに案内しないと、会場の人間一人ずつ殺す、って脅すんだもんだから」
・・・・・・そんな、脅しかたって・・・・
「でも、ゼロスさんなら言うかもしれませんね」


>「……彼女宛に予告状が届きましてね」
> ぽつり、とゼロスが言った。
>「彼女のお母様の形見を盗む、っていう」
怪盗でもでるのか?
「それも、形見!?怪盗さん。そんなもの盗んでどーするんですか!!
と、言いつつがんばれ怪盗さん。」
応援してるのか?怒ってるのか?一体どっちなんだ?
「両方」


>                                              ≪続く≫
「ねんねこさん。続きものですね。
頑張って下さいな。ぜーたいに読みますから。」
あ!質問にレスつけてくれて、ありがと!
「では、ゆかりと由理でした。」

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4052初めてです。続き物ねんねこ 8/22-14:10
記事番号4013へのコメント

由理&ゆかりさんは No.4013「続き物?珍しいですね」で書きました。

>> いつものかわいらしい声ではない。どこか冷たい声。その声はだんだん低くなっていく。
>> 彼女の姿が闇に飲まれた。見ていたクラヴィスも思わずテラスから身を乗り出した。
>> 次に現れたのは黒い神官。フィリオネルには何度かその神官と面識がある。
>>「ゼロス殿っ!?」
>>(ゼロス!?)
>「は?・・・・身代わり?」
>ゼロスが?
身代わりですね♪
何気にアメリア、ゼロスのこと利用してますねぇ。きっとゼロスも仕事がなくて暇だったのでしょう。

>>「お久しぶりです♪ゼルガディスさん」
>>「ゼロスっ!?」
>>「いやぁ、お前のところに案内しないと、会場の人間一人ずつ殺す、って脅すんだもんだから」
>・・・・・・そんな、脅しかたって・・・・
>「でも、ゼロスさんなら言うかもしれませんね」
一応魔族なんで(一応っ!?)

>>「……彼女宛に予告状が届きましてね」
>> ぽつり、とゼロスが言った。
>>「彼女のお母様の形見を盗む、っていう」
>怪盗でもでるのか?
>「それも、形見!?怪盗さん。そんなもの盗んでどーするんですか!!
>と、言いつつがんばれ怪盗さん。」
>応援してるのか?怒ってるのか?一体どっちなんだ?
>「両方」
うむ。それはとりあえずノーコメント、ということで。

>>                                              ≪続く≫
>「ねんねこさん。続きものですね。
>頑張って下さいな。ぜーたいに読みますから。」
>あ!質問にレスつけてくれて、ありがと!
>「では、ゆかりと由理でした。」
続き物です。初めてですね。話を詰め込みすぎて長くなるねんねこの悪癖がもろに出ました。最後まで頑張りますんで、見捨てないで読んでくださいね(はぁと)
ねんねこでした。

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4017Re:蒼き石、赤き竜 1 and 2笹森 明日香 E-mail 8/20-22:40
記事番号4010へのコメント
こんにちは。笹森 明日香です。
小説を書かれるペースが速くてうれしいです。

>クラヴィスが何気に出てきます。
好きです。クラヴィス君。あの性格が・・・。

>『アメリア、大丈夫?』
> 優しかった母さん。
>『怪我ないわね?』
> 最期まで笑ってた。
>『大丈夫。父さんのところに行ってなさい』
> ……わたしが殺したも同然なのに、わたしに微笑まないで……母さん。
前回も同じようなことを書きましたが、「アメリアのお母さんは彼女をかばって死んだ」とか「姉グレイシア=ナーガ」だとか言う話は原作の小説の方で出てきているのですか?(すいません あまり小説は読んでいないのです。)

> 隣では、正装した知り合いが、なにやらしゃがみこんで荷物をごそごそと引っ掻き回している。
似合うんでしょうね。クラヴィスは。

> とりあえず向かうは旧友の家。
おそらく、その前に自分の家に”ハリセン”を取りに戻ったんでしょうね。(笑)

> なにせ、数年顔を見せずにほったらかしにしておくと拗ねる。拗ねるだけなら無視できるが、さすがに多額の賞金と共に手配をかけられたときは慌てて会いに行った。
> ……クラヴィス=ヴァレンタイン。
手段を選びませんね(こういう性格ってリナに似てませんか?)。彼は。手配をかけるという手段が、「エリシエルと同じだ」といったらどういう反応をするでしょうね。
>「……エリシエルが死んだそうだな。残念だ」
>「意外だな。あんなのがタイプか?」
>「いや。お前の仕返しにオレが殺そうと思ってたのに、ってえ意味」
(By『秘密の約束』)

>「だからって、思いっきりでかい石投げて窓を割るこたぁねぇだろっ!? 知ってんのか!? ガラスが一枚いくらするか!!」
知ってても気にしないでしょうね・・・。リナとつきあい長いから。(?)

>「はっ、たいしたもんだよ。魔術は発達していない。クローンだって、羊や牛くらいなもんで人間は作れない。法律とやらで製造禁止になってるらしいし。キメラなんざ、伝説上の生き物だってよ」
>「よかったじゃん。伝説上の生き物で」
いいですね!親友って。こういう口がきけるから・・・。

> 可笑しそうに笑うクラヴィスにゼルガディスは持っていた氷をクラヴィスの顔に投げつけた。クラヴィスは涼しい顔をしてそれを受け止めたが。
ハリセンは〜?

> 数年前、偶然彼と再会した時に一緒にいたアメリアとのことでからかわれまくったことを思い出す。
>
>「寝たのか?」
> ただその一言にゼルガディスの顔が真っ赤になった。慌てて腕を振りほどくと、その場を飛び退いて立ち上がる。
>「ば……な……寝ただなんてっ……!!」
> 言葉にならない言葉を発するゼルガディスの様子にクラヴィスはため息をついた。
>「そんなに真っ赤になって否定しなくてもいいだろうよ。二十歳にしちゃあ新鮮な反応だし」
>「歳は関係ないだろっ!?」
> 声が裏返っている。
> クラヴィスはぱたぱたと手を振った。『分かってるよ』という風に。
>「キス止まりだろ。知ってるよ。聞いたから、アメリアちゃんに」
> はた、とゼルガディスが硬直する。
ゼルガディスは絶対にクラヴィスに勝てませんね。

>「アメリアは王族だぞっ!? 『会いにきました♪』とか言って簡単に会わせてもらえるわけないだろっ!!」
それではまるでゼロスじゃないのか?

>「彼女が満月の夜は自分の部屋のテラスで、一人でお茶会してるのはもうすでに調査済みだからな♪」
さすが趣味で情報収集をしているだけありますね。

>満月に照らされて、一人の少女がテラスに出た。身分相応の薄い蒼色のドレス。胸元を飾る母の形見のペンダント。手にはポットとカップをのせたトレイを持っている。
>備え付けのテーブルにそれを置き、二つある椅子の片方に腰をかけた。
>カップにポットから紅茶をなみなみ注いで、ため息をつく。
>「今宵は、月が一段と綺麗ですね。お嬢さん」
> 突然した声にアメリアは慌ててそちらを見やった。
> 黒い腰までの髪。痩せた身体。綺麗な翠色の瞳。
> 見知った顔だった。何年も前に、たった一度、しかも短い時間しか一緒にいなかったけれど。
> 彼女が心の中で想っている男が唯一心を許せる相手。
>「クラヴィスさんっ!?」
>「とはいえ、君の美しさには敵わない、ってか。お久しぶり。元気にしてた?」
> 軽く手を上げて、クラヴィスは寄りかかっていた手すりから身体を離してアメリアに近づいた。
この手で何人口説いたんだ?

> クラヴィスが持参したカップに紅茶を注ぎ、同じく彼が持ってきた手作りらしきケーキを頬張りながらアメリアは言った。
本当にプレイ・ボーイですね。

>「キスして? それとも指きりげんまんの方?」
> クラヴィスの微笑んだ顔を見て、アメリアは思わず顔を赤らめた。
> うつむいて、小さく呟くように言う。
>「……両方」
>(あの馬鹿……約束する時は絶対指きりげんまんしなきゃならないとか思ってるんじゃないだろうな……)
子供の頃の癖ってぬけないものですよ。

> アメリアがギョッとする。
>「いつもキスしてるんですかっ!?」
本当に凄い想像力ですね。

>「……なんか隠してるだろ、お前」
>「べ……別に……」
>「いーや、絶対隠してんなっ! お前昔から分かりやすいんだよっ! 吐けっ! 吐かないと今夜一緒に連れて行ってやんないぞ」
さっすが!よく解ってらっしゃる。

>「なあ、クラヴィス。やっぱ、俺帰る」
> 王宮の壁から身を離し、すたすたと立ち去っていこうとするゼルガディスの足に慌てたクラヴィスが思いっきり抱きついた。
キスはダメでもこれはいいんですか?(ってわたしもアメリアと変わんないかも・・・。)

>「招待状持ってるんだったら、別に正面から堂々と入ってもいいと思うのは、俺の気のせいか?」
自分が神官だと思ってないような人なんでしょ?(By『秘密の約束』)

> 一人の男がやってくる。知らない男だった。黒い髪を後ろで束ねたかなりの美形。翠色の瞳を持ったその男はにっこりと笑ってウインクした。
>「ちょっとついてきてくれるかい? アメリアちゃん」
本っ当にプレイボーイだ〜

> 思いつくのは――クラヴィスの失敗。
>「あの馬鹿……一体何したんだ?」
・・・信じてやれよ。

>「安心してずっと精神世界面にでもいろ。アメリアはが見つけるから、おまえはお前はもうくんな。生ごみ魔族」
> その言葉にゼロスが引きつった笑みをした。
・・・すっごく気にしてるんですね。そのこと。


それでは、続きを期待してます。

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4053いつもいつもありがとうございます。ねんねこ 8/22-14:18
記事番号4017へのコメント

笹森 明日香さんは No.4017「Re:蒼き石、赤き竜 1 and 2」で書きました。
>こんにちは。笹森 明日香です。
>小説を書かれるペースが速くてうれしいです。
こんにちは。小説書くペースが早いのは……話を思いついたら即書いていかないと随時忘れていくからです。ガウリイ並みの知能だなー。

>>クラヴィスが何気に出てきます。
>好きです。クラヴィス君。あの性格が・・・。
ああっ、こんなところにはクラヴィスが好きって言ってくださる方がっ! ねんねこのレギュラーオリキャラとなりそうな勢いの彼です。あの性格はねんねこ自身も気に入ってます。扱いやすいキャラです。

>>『アメリア、大丈夫?』
>> 優しかった母さん。
>>『怪我ないわね?』
>> 最期まで笑ってた。
>>『大丈夫。父さんのところに行ってなさい』
>> ……わたしが殺したも同然なのに、わたしに微笑まないで……母さん。
>前回も同じようなことを書きましたが、「アメリアのお母さんは彼女をかばって死んだ」とか「姉グレイシア=ナーガ」だとか言う話は原作の小説の方で出てきているのですか?(すいません あまり小説は読んでいないのです。)
ううむ。アメリアのお母さんがアメリアをかばって……っと言うくだりはありませんが、某雑誌でそんなような事が書かれていたことがあって『はー、そーなのかー』と。ナーガがぢつはグレイシア、というのは、神坂先生自身がファンクラブの会長さんと会談した時にはっきりおっしゃったそーです。それに、本編4巻にアメリアがちらりと言ったグレイシアの特徴とナーガの特徴がぴったり一致してます。

>> 隣では、正装した知り合いが、なにやらしゃがみこんで荷物をごそごそと引っ掻き回している。
>似合うんでしょうね。クラヴィスは。
似合うでしょうね。タキシード着て(笑)

>> とりあえず向かうは旧友の家。
>おそらく、その前に自分の家に”ハリセン”を取りに戻ったんでしょうね。(笑)
……うう、とりあえずノーコメントで。

>> なにせ、数年顔を見せずにほったらかしにしておくと拗ねる。拗ねるだけなら無視できるが、さすがに多額の賞金と共に手配をかけられたときは慌てて会いに行った。
>> ……クラヴィス=ヴァレンタイン。
>手段を選びませんね(こういう性格ってリナに似てませんか?)。彼は。手配をかけるという手段が、「エリシエルと同じだ」といったらどういう反応をするでしょうね。
>>「……エリシエルが死んだそうだな。残念だ」
>>「意外だな。あんなのがタイプか?」
>>「いや。お前の仕返しにオレが殺そうと思ってたのに、ってえ意味」
>(By『秘密の約束』)
『オレはいいんだっ!』とか、意味なく断言しそうです。しかも、手配かけられて息を荒立てて『何すんだ!?馬鹿タレ』とか、ほとんど殴りこみでやってきたゼルに、にっこりと笑って、『やー、ゼルー、久しぶりだなー』と何事もなかったように振舞う……彼ならやりそう。
性格は……リナに似ていてリナに似ていない。確かに問答無用なのはリナにそっくりだけど、こっちは頭を使って、じわりじわりと嫌がらせするタイプですね。どっちかと言えば。ゼロスに近い感じでしょーか。とはいえ、それほど冷たいわけではない。うー、難しいところですのぅ。

>>「だからって、思いっきりでかい石投げて窓を割るこたぁねぇだろっ!? 知ってんのか!? ガラスが一枚いくらするか!!」
>知ってても気にしないでしょうね・・・。リナとつきあい長いから。(?)
完全無視を決め込みました、ゼル。後で、クラヴィスは兄貴どもにこっぴどく叱られるでしょう。

>>「はっ、たいしたもんだよ。魔術は発達していない。クローンだって、羊や牛くらいなもんで人間は作れない。法律とやらで製造禁止になってるらしいし。キメラなんざ、伝説上の生き物だってよ」
>>「よかったじゃん。伝説上の生き物で」
>いいですね!親友って。こういう口がきけるから・・・。
もともとゼルはお茶目だったと思うんですよ。真面目で一本気。だから、身体を変えられちゃって、落ち込んじゃって。とりあえず、無愛想になって、自ら人を遠ざける態度をとった。でも、自分の昔を知っているクラヴィスにそんな態度をとってもどつき倒されるだけだと分かっているので、あえて砕けた物言いをしている。ゼルのクラヴィスやアメリアに対する口調と他人に対する口調の変化にとりあえず気をつけている今日この頃です。

>> 可笑しそうに笑うクラヴィスにゼルガディスは持っていた氷をクラヴィスの顔に投げつけた。クラヴィスは涼しい顔をしてそれを受け止めたが。
>ハリセンは〜?
ううっ、更にノーコメント。

>> 数年前、偶然彼と再会した時に一緒にいたアメリアとのことでからかわれまくったことを思い出す。
>>
>>「寝たのか?」
>> ただその一言にゼルガディスの顔が真っ赤になった。慌てて腕を振りほどくと、その場を飛び退いて立ち上がる。
>>「ば……な……寝ただなんてっ……!!」
>> 言葉にならない言葉を発するゼルガディスの様子にクラヴィスはため息をついた。
>>「そんなに真っ赤になって否定しなくてもいいだろうよ。二十歳にしちゃあ新鮮な反応だし」
>>「歳は関係ないだろっ!?」
>> 声が裏返っている。
>> クラヴィスはぱたぱたと手を振った。『分かってるよ』という風に。
>>「キス止まりだろ。知ってるよ。聞いたから、アメリアちゃんに」
>> はた、とゼルガディスが硬直する。
>ゼルガディスは絶対にクラヴィスに勝てませんね。
女性関係のみならず、人生経験としてクラヴィスの方が圧倒的に上ですからねー。なにせ、ゼル箱入り坊ちゃん(笑)

>>「アメリアは王族だぞっ!? 『会いにきました♪』とか言って簡単に会わせてもらえるわけないだろっ!!」
>それではまるでゼロスじゃないのか?
ゼロスみたいですねー。でもクラヴィスならやりそうです。

>>「彼女が満月の夜は自分の部屋のテラスで、一人でお茶会してるのはもうすでに調査済みだからな♪」
>さすが趣味で情報収集をしているだけありますね。
情報収集が趣味……色々な意味でヤな感じ。色々秘密握ってそうですね。

>>満月に照らされて、一人の少女がテラスに出た。身分相応の薄い蒼色のドレス。胸元を飾る母の形見のペンダント。手にはポットとカップをのせたトレイを持っている。
>>備え付けのテーブルにそれを置き、二つある椅子の片方に腰をかけた。
>>カップにポットから紅茶をなみなみ注いで、ため息をつく。
>>「今宵は、月が一段と綺麗ですね。お嬢さん」
>> 突然した声にアメリアは慌ててそちらを見やった。
>> 黒い腰までの髪。痩せた身体。綺麗な翠色の瞳。
>> 見知った顔だった。何年も前に、たった一度、しかも短い時間しか一緒にいなかったけれど。
>> 彼女が心の中で想っている男が唯一心を許せる相手。
>>「クラヴィスさんっ!?」
>>「とはいえ、君の美しさには敵わない、ってか。お久しぶり。元気にしてた?」
>> 軽く手を上げて、クラヴィスは寄りかかっていた手すりから身体を離してアメリアに近づいた。
>この手で何人口説いたんだ?
うーむ。何人でしょう?

>> クラヴィスが持参したカップに紅茶を注ぎ、同じく彼が持ってきた手作りらしきケーキを頬張りながらアメリアは言った。
>本当にプレイ・ボーイですね。
やっぱり容姿がいいから。自分の容姿を最大限に生かさないと(笑)ちなみのこのケーキはクラヴィスの手作りです。

>>「キスして? それとも指きりげんまんの方?」
>> クラヴィスの微笑んだ顔を見て、アメリアは思わず顔を赤らめた。
>> うつむいて、小さく呟くように言う。
>>「……両方」
>>(あの馬鹿……約束する時は絶対指きりげんまんしなきゃならないとか思ってるんじゃないだろうな……)
>子供の頃の癖ってぬけないものですよ。
ええ。なかなかぬけませんね。でも、約束する時は指きりげんまん、最初にゼルに教えたのはお前だ。クラヴィス(笑)

>> アメリアがギョッとする。
>>「いつもキスしてるんですかっ!?」
>本当に凄い想像力ですね。
素直なアメリアらしい言葉です。

>>「……なんか隠してるだろ、お前」
>>「べ……別に……」
>>「いーや、絶対隠してんなっ! お前昔から分かりやすいんだよっ! 吐けっ! 吐かないと今夜一緒に連れて行ってやんないぞ」
>さっすが!よく解ってらっしゃる。
『口で言わなくてもよく分かる』そんな関係の二人にしたいですね。

>>「なあ、クラヴィス。やっぱ、俺帰る」
>> 王宮の壁から身を離し、すたすたと立ち去っていこうとするゼルガディスの足に慌てたクラヴィスが思いっきり抱きついた。
>キスはダメでもこれはいいんですか?(ってわたしもアメリアと変わんないかも・・・。)
しゃがみこんでたクラヴィスができることといえば、足にしがみつくことくらいかと。長い付き合いですから、今更こんなことで、という気持ちも含んでます。

>>「招待状持ってるんだったら、別に正面から堂々と入ってもいいと思うのは、俺の気のせいか?」
>自分が神官だと思ってないような人なんでしょ?(By『秘密の約束』)
単に招待状を忘れていただけです。いつも、どこかに潜入するときはこうやって入り込んでたんですね。

>> 一人の男がやってくる。知らない男だった。黒い髪を後ろで束ねたかなりの美形。翠色の瞳を持ったその男はにっこりと笑ってウインクした。
>>「ちょっとついてきてくれるかい? アメリアちゃん」
>本っ当にプレイボーイだ〜
嫌味のないプレイボーイ。

>> 思いつくのは――クラヴィスの失敗。
>>「あの馬鹿……一体何したんだ?」
>・・・信じてやれよ。
信じてそうで信じてない。過去の経験から言って、彼が張り切ってまともなことはなかったんでしょうね。

>>「安心してずっと精神世界面にでもいろ。アメリアはが見つけるから、おまえはお前はもうくんな。生ごみ魔族」
>> その言葉にゼロスが引きつった笑みをした。
>・・・すっごく気にしてるんですね。そのこと。
ゼルの言葉の裏の意味も取ったんですね。『てめぇなんかいらねぇよ。とっとと消えろ』と言う(笑)

>それでは、続きを期待してます。
ありがとうございます。ねんねこでした。

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4032蒼き石、赤き竜 3ねんねこ 8/21-15:35
記事番号4010へのコメント

こんにちは、ねんねこです。感想ありがとうございます。本日はちょっと急いでいるので、明日必ずお返事書きます。では、どうぞ。


『面白い形のペンダントだな。色もいい感じの色だし』
 クラヴィスの言葉にアメリアが笑った。
『死んだ母さんのものなんです。それにちょっと変わってるんですよ。これ』
『へー、そうなんだ』
 興味深げに聞いてクラヴィスは彼女の胸元で輝く紅色の石を見つめた。

「おお、ゼルガディス殿。よく来てくださった!」
 パーティーから一夜明けて。
 王宮を訪れたゼルガディスとクラヴィスはすんなりとフィリオネルのところに通された。
 クラヴィスが自分の名前を明かしたのと、声をかけた兵士がたまたまゼルガディスの顔を知っていたからだ。数年前のお家騒動の際、活躍した数名の旅人の中に彼は含まれていた。そのため、その事件の時あの場所にいた者たちはゼルガディスの容姿に関わらず、彼を信頼していた。
 フィリオネル=エル=ディ=セイルーン。
 彼もゼルガディスの容姿を無視して彼を信頼してくれる人間の一人だった。
「久しぶりだな、フィルさん」
「数年ぶりだな。いつかは娘ともども世話になった。ところで、そちらは……」
 フィリオネルがクラヴィスをちらり、と見た。クラヴィスが、礼儀正しく一礼する。
「お初にお目にかかります。クラヴィス=ヴァレンタインです」
 フィリオネルの顔が何か思いついたような表情に変化する。
「おお、お主があのヴァレ――」
「ああっと」
 クラヴィスが慌ててフィリオネルの言葉を手を出して遮った。
「今は単独行動している身ゆえ、家は関係ありません。クラヴィス、で結構です」
(こいつ、本気で家のこと言われるの嫌いだな……)
 ゼルガディスがふと思う。
 フィリオネルが二人に向き直った。
「折角来て頂いたのになんだが、アメリアは今城を出ていてなぁ……」
「知っている。そのことで来たんだ。フィルさん、あいつがどこに行ったか心当たりがないか?」
 ゼルガディスの言葉にフィリオネルは首を横に振った。
「あいつの行くところに見当など……」
 横からクラヴィスが尋ねる。
「昨日、魔……いや、ゼロスから受け取られた手紙は?」
「一言、ちょっと出かけてきます、のみじゃった」
「では、アメリアさんのお母様の形見について教えていただけませんか」
「形見……ああ、あのペンダントのことか」
 フィリオネルは思いついて、部屋の入り口まで歩いていく。
「あのペンダントに関しては、いろいろあってな。まあ、ここではなんだから少し場所を変えようではないか」
 フィリオネルの言葉にゼルガディスとクラヴィスは顔を見合わせた。

「形見というほどのものでもないんじゃよ。あれは」
 長い廊下を歩きながら、フィリオネルはぽつりぽつりと話していく。
 最初は人通りがあった廊下もここまで奥に進むと人っ子一人通らない。今向かっているのがどこなのか、ゼルガディスもクラヴィスも分かりかねたが、王宮の入り口からどんどん遠ざかっている事と廊下の入り口がやけに厳重だったのをみると、それなりに重要な場所に向かっているのだろう。いくら見知った顔とはいえ、自分を重要区域に簡単に入れるとはあまり考えられないとゼルガディスは心の隅っこで思っていたが。
「あいつが死んでから、アメリアが遺品を欲しいと騒ぎ出してな。グレイシア――アメリアの姉が形見としてあいつが昔着ていた服を貰ったのを見たんじゃろう。部屋に入って色々物色してたわい」
「それであのペンダントを?」
 クラヴィスの問いにフィリオネルは頷いた。
「もっといいものはあったんだろうが……アメリアがあれがいい、と」
「あれも結構な代物だと思いましたが」
 クラヴィスの言葉にフィリオネルは肩をすくめて見せた。
「確かに良い出来ではある。が所詮レプリカはレプリカじゃよ」
『レプリカ?』
 ゼルガディスとクラヴィスが同時に声をあげた。
 フィリオネルはちょうど一つの扉の前で立ち止まり、一言呟いた。
「あれは、セイルーンに伝わる秘宝『女神の涙』のレプリカなんじゃよ」

 たどり着いた場所は広い空間になっていた。神殿のようなつくり。だが、置いてあるのは神殿とは異なっていた。
 一番奥に祭壇のようなものがあった。フィリオネルと続く二人はゆっくりとそこに近づいていく。
「『女神の涙』は大昔に竜族から賜ったものらしい。魔道書とともにな」
「魔道書?」
「竜族の文字ゆえ、解読はさっぱりだったが」
「竜族の文字ぐらいだったら解読できるぞ」
 ゼルガディスの言葉にフィリオネルは頷いた。
「お主なら確かに出来るじゃろう。ここは一つ解読してはくれまいか」
(そのために連れてきたんじゃないだろうな……)
 ゼルガディスは喉まで出かけたその言葉を飲み込んだ。
 祭壇の上には、小さな箱と魔道書が置いてあった。
 フィリオネルはゼルガディスに魔道書を渡し、小さな箱の方の蓋を開けた。
 入っていたのは、アメリアが首から下げていたものと同じ、蒼い色をしたいびつな形の石。さすがにペンダントにはなっていなかったが。
 クラヴィスがまじまじと覗き込んだ。
「…………………」
「どした? クラヴィス」
 無言で見ているクラヴィスを不審に思いゼルガディスが声をかけた。
 が、クラヴィスはこれに答えず、フィリオネルを見る。
「お聞きしますが、奥方様もこれをご覧になりましたよね」
「レプリカを作ったのがあやつだったからの」
「……何度も足を運んでたんですね、きっと」
「まあ、ほとんど毎日ここに来てたな。レプリカが出来てからさすがに来なくなったが」
 不思議そうなフィリオネルの顔。クラヴィスは微笑んだ。
「見違えるほどそっくりです。とはいえさすがに本物は言葉では表せないほど綺麗ですが」
「そうか」
 フィリオネルは納得したようだ。大きく頷いた。
 クラヴィスはゼルガディスにこ声で尋ねる。
「そっちはどうだ? ゼル」
「ぼちぼちってとこだな」
 ゼルガディスは魔道書に視線を落としたまま答える。
「書いてあるのは、たった一文。
『月の鏡に汚れなき者涙を捧げ、誓いの言葉紡ぐ時、赤き竜、混沌より現れ、神聖なるその力を持って楽園へと誘うであろう』」
 淡々と言って、ぱたん、と魔道書を閉じる。
「後はその誓いの言葉、というやつだ」
「そっちは読めんのか?」
 フィリオネルの問いにゼルガディスは首を横に振った。
「今すぐには無理だ。少し時間を貰わないと」
「じゃあ、それをお主に預けるからアメリアと一緒に返しに来てくれ」
『…………は?』
 クラヴィスとゼルガディスが二人して間抜けな声をあげる。
「聞こえなかったか?」
「い、いや。今『これを預ける』って聞こえたんだが」
 恐る恐る尋ねるゼルガディスにフィリオネルはこくんと頷く。
「言ったが」
「セイルーンに伝わる秘宝だろっ!?」
「そうだが」
「だったら他人に預けんなっ! 自分で管理しろ、自分でっ!」
「とは言ってもなぁ……」
 フィリオネルは困ったような顔をする。
「竜族の言葉を解読できる人間はそうそうおらん。解読できる人間がおるんだったら、少々時間がかかろうが、解読してもらうのが筋ってものじゃろ」
「う……」
 うめいてゼルガディスはクラヴィスを見る。クラヴィスは首を横に振った。
(何を言っても無駄って事か……)
 ゼルガディスは肩を下ろした。
「……分かった。出来るだけ早くこれは返しに来る」
「そう言って貰えると嬉しいわい」
 言ってフィリオネルは豪快に笑う。
(……一見正論らしいわがまま吐いて、厄介事を頼むアメリアのあの性格は親父譲りかよ……)
 ゼルガディスは静かに毒づいた。

 フィリオネルと別れ、ゼルガディスとクラヴィスは王宮の廊下を歩いていた。
 フィリオネルに許可をとったためか、歩いてても誰にも咎められない。
『アメリアの部屋に行きたいんだが……もしかして何か残っているかもしれないし』
『ああ、構わんが……無駄だと思うぞ』
『調べたのですか?』
『いや、アメリアは出かける時は必ず部屋の扉を閉めていくからの。開かんと思うぞ。ドア』
 そんな問答の後、フィリオネルは一人の兵士に呼ばれて行った。急な客が来たらしい。
「で、本当は解読できんのか?」
 クラヴィスの問いにゼルガディスは肩をすくめた。
「文字的には前の一文と同じだから、簡単に訳せることは訳せるんだが……理解しろ、といわれるとな」
「そっちにも問題ありか」
「にも?」
 ゼルガディスは眉をひそめた。
「こっちも問題大有りだよ。って、ここだな。アメリアちゃんの部屋」
「ああ、確かここだったと思う」
 ゼルガディスの言葉にクラヴィスは懐から針金を取り出した。先端が変な形に折り曲がっている。
「こーゆー鍵はクラヴィス様の手にかかれば……」
 鍵穴に針金を突っ込み、幾度か回す。
 かちん。
 何かの外れる音。
「楽勝だな」
「お前、自分が一応聖職者だって忘れてるだろ」
「はっはっはっ、聖職者の家に生まれたからってそいつが聖職者とは限らないぞ、ゼルガディスくん」
 笑ってクラヴィスは扉を開けたが、ゼルガディスは彼の額に一筋の汗が流れていることを見逃さなかった。

「質素な部屋だねー。もうちょっと派手な装飾とかしてあると思った」
 クラヴィスの言葉通り、アメリアの部屋にはあまり飾りつけがなかった。とはいっても、使っているベッドや机は一級品だったが。
「ベッドの上にぬいぐるみ発見♪ お前と一緒だな」
「……何年前の話してんだ。くだらないこと言ってないで、なんか手がかりになるもん探せ」
「へいへい」
 クラヴィスがまっすぐ机に向かう。
 ゼルガディスは嘆息して、近くの椅子に腰をかける。
 情報収集を得意とするクラヴィスは、探し物を探すのも得意だ。プロに任せておこう、とそう判断したのだ。
 ゼルガディスがあの魔道書を取り出した。
『我は汝の力を求める者
 我は汝、汝は我。
 今、ここに我すべてを捧げ汝を導かん』
 書いてある誓いの言葉はそんな言葉だった。
(召喚呪文と似ていなくもないが……なんか、こー違和感があるんだよな)
『月の鏡に汚れなき者涙を捧げ、誓いの言葉紡ぐ時、赤き竜、混沌より現れ、神聖なるその力を持って楽園へと誘うであろう』
(月の鏡……? 何かの魔法道具とか。赤き竜……スィーフィードか? とか言って、魔竜王ガーヴとかだったらなんかヤだし)
 色々と考える。とはいえ、分からない言葉が多すぎる。
「あの秘宝、って一種のマジック・アイテムだよなー」
 クラヴィスがぽつりと呟く。
「だろうな」
 ゼルガディスも同意する。
「さっきの言葉、『楽園へ誘う』。どういう意味だと思う?」
「さあ、楽園に連れて行ってくれるんじゃないか? どこだかは分からないが。楽園って言うくらいなんだから良い所なんだろよ」
「フィル殿下、誰も竜族の文字は読めなかった、って言ってたよな」
 クラヴィスは、探し終わった机に寄りかかって言った。
「ああ」
 ゼルガディスの言葉にクラヴィスは、手にした封筒をゼルガディスに見えるように掲げた。
「きっとフィル殿下はオレたちの前にも、信用できる人間をあそこに連れて行った。でも誰も竜族の文字を読めなかった。
 本当に読めなかったと思うか? 
 確かに竜族が人間に残した魔道書なんて多くは存在しない。でも、読める人間が今までまったくいなかった、っていうのは不自然すぎやしないか?」
 クラヴィスの言葉にゼルガディスは腕を組んだ。
「……本当は読める人物がいた、って言いたいのか? でもなんで隠す必要がある?」
「……『女神の涙』がどこにあるか分からなかったからだ。あそこにあったのは、紛れもなくニセモノだよ」
 静かな口調でクラヴィスは言った。
                       ≪続く≫

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4033蒼き石、赤き竜 4ねんねこ 8/21-15:37
記事番号4032へのコメント

「まさか、あのお姫さんに魔族の知り合いがいたとはな」
 正装した男は嘆息した。
「姫君の居場所は?」
 尋ねる別の男に正装した男が肩をすくめる。
「さあ。フィリオネル殿下も知らないらしい。だが、面白いことにはなりそうだ」
「おもしろいこと?」
「お前も覚えているだろう? クラヴィス。クラヴィス=ヴァレンタイン。
 姫君になりすましてた魔族のそばにいたんだよ」
「……なるほど。五年ぶりの感動の再会ということか」
 二人の男は口元に笑みを浮かべた。

「あそこにあったのは、紛れもなくニセモノだよ」
 何を言われたのか、ゼルガディスは理解できずにただ呆然とクラヴィスを見つめている。
「ニセ……モノ?」
「そう。多分、本物はアメリアちゃんのペンダントなんだろうよ」
「……お前、よくあれがレプリカだと気付いたな」
「まあ、確かにあれも良い出来だったけどね。でもやっぱり違うんだよ。本物見りゃ一目瞭然さ」
 クラヴィスがゼルガディスに近づいた。手紙を渡す。
「きっと、フィル殿下に連れられて見に行ったどこかの誰かさんもそれに気付いたんだろうな。
フィル殿下には魔道書は読めなかった、と言って、本物を探してたんだ。『楽園』とやらを独り占めするために」
ゼルガディスはクラヴィスの言葉を聞きながら、手紙を開ける。
手紙には一言。
『本物の『女神の涙』いただきに参ります』
「きっとアメリアちゃんも気付いてたんじゃないのかな? その文を読んだら、普通は本物だって言われてる箱の中の方を守んだろ」
「それで逃げたのか。あいつ」
「多分ね」
 ゼルガディスはため息をついた。
「で、どうする? 行方に手がかりはない状態だぜ」
 クラヴィスの言葉にゼルガディスが静かに首を振った。
「お前、『探査』の魔法が使えたな」
「あ? まあ、一応は」
 クラヴィスの答えにゼルガディスは荷物をかき回し、水筒を取り出した。ついていたアクセサリーを取り出すと、クラヴィスに渡す。
「なんだ、これ?」
「アメリアの持ちもんだ。なんかのマジック・アイテムで二つ一緒で何かに使うらしい。なんかその説明も聞いたことあるような気がしたが、忘れた」
「あのなぁ、アメリアちゃんが持ってなくて、反応探したらこの部屋だった、とか言う落ちだったら泣くぞ。オレ」
 クラヴィスの言葉にゼルガディスが口元に笑みを浮かべた。
「それは絶対無い。あいつは絶対につけてるよ」

 ゼルガディスの言う通り、アメリアはもう片方のアミュレットをつけていた。
 ラルティーグの方に向かって移動しているらしいことが分かると、ゼルガディスたちは魔道書をフィルさんに返して、すぐに後を追った。何せ、彼女はペンダントを奪おうとしている奴に狙われている。あらゆる危機に対処できる能力が彼女にあることは知っていたが、それでも一刻も早く彼女を回収して、彼女を守ろうと二人は急いだ。
 追いかけて三日目の夜のことである。空には半月が浮かんでいた。
「月の鏡?」
「そう、月の鏡」
 宿の食堂で、夕食を食べながら、クラヴィスが切り出したのは、やはりあの魔道書のことだった。ちなみに、魔道書の言葉はゼルガディスがすばやく書き写しておいた。
「月の鏡。昔何かの仕事でそんな名前のアイテムがあったなぁぁと」
「なんかのアイテムなのか?」
 尋ねるゼルガディスの付け合せのフライドポテトにクラヴィスは手を伸ばした。むっ、とした顔をゼルガディスはクラヴィスに向けたが、いつものことらしい。クラヴィスはあっさりと無視した。
「竜族の作ったものらしいよ。月の鏡≪ルナティック・ミラー≫。どっかの洞窟に放置されていたのを誰かが見つけて拾ってきたんだ。見た目は普通の鏡なんだけど、月光に当てて自分の姿を映すと本来の汚れなき姿に戻れるらしい」
「本来の……姿!?」
 ゼルガディスが瞳を輝かせた。もしかしたら元の身体に戻れるかもしれない。そんな思いがひしひしと伝わってくる。
 が、クラヴィスは冷めた表情で、再びゼルガディスの皿にフォークを伸ばす。
「ルナテック・ミラー。別名『狂気の鏡』」
「は……?」
「月光に当てて、自分の姿に映すと本来の汚れなき姿……つまり『原罪』を持った身体を捨てて魂のみの存在になれるらしい。で、残された身体にうろついてた霊が入り込む。当たり前だけど、意識は入り込んだ人間のものだから、性格はその入り込んだ奴に反映される。結果、人が変わったように見えるから、『狂気の鏡』。
 詳しい原理は知らない。知りたいとも思わないし、確かめたくもない」
「捨てろ。そんな鏡」
 ゼルガディスが脱力して、即答した。
「なんか、共に見つかった魔道書にもう一つのマジックアイテムと組み合わせて使うと、その効果が発揮される、とか書いてあったらしくて、しょうがなく保管してるらしい」
「もう一つの……マジック・アイテム……?」
 ゼルガディスの言葉にクラヴィスは頷いた。
「ちなみにそのアイテム、まだ見つかってなかったと思った」
「じゃあ、その鏡のもう一つのアイテムが『女神の涙』だって言いたいのか?」
 クラヴィスが肩をすくめた。
「ただの推測だよ。確たる証拠がない以上、否定も肯定も出来ないけどね」
 ゼルガディスはその答えに嘆息すると、何度目か忘れたが自分の皿に伸びてきたクラヴィスの腕を思いっきりはたいた。

 二人の旅はおおむね順調だった。アメリアと出会わない限り、安心は出来なかったが。それでもクラヴィスの探査魔法で捕らえたアメリアの居場所に彼らはどんどん近づいていくことが出来た。出発したのが早かったとはいえ、所詮アメリアは女であり、男であるゼルガディスとクラヴィスの歩きより遅かったためだ。このまま行くと、今日か明日には追いつきそうな感じだった。
 もう彼らはセイルーン王国を離れ、ラルティーグ王国へと足を踏み込んでいた。今歩いている道をずっとまっすぐ三日ほど歩いていけば、彼らにとって懐かしい森が見えてくる。
 と。
 ずがうんっ!
 意味のない彼らの小話を遮って、街道沿いの林から爆音が鳴り響いた。続いて、小さな爆発音。
 ゼルガディスとクラヴィスは顔を見合わせると、一つ頷き爆発のあったほうへと駆け出す。
「アメリアちゃんかっ!?」
「さぁなっ! だが、昼間から魔術をぶっ放すなんて、あいつかリナくらいなもんだろ」
「ああ、ゼルガディス。お前はどんな生活をしてきたんだい? おにーさんはかなしーぞ!」
「くだらないこと言ってるヒマがあるんだったらさっさと走れっ!」
 まだ鳴り響いてる爆音を追って二人は疾走する。
 しばらくして見えてくる、土埃と煙と数人の人影。
「いたっ!!」
 クラヴィスが言い、ゼルガディスは呪文を唱える。
「フレア・アロー!」
 彼の目の前に生まれる炎を纏う矢は一気に彼のもとを離れ、数人の人影に向かって飛んでいく。
「無茶するなぁ……アメリアちゃんいたらどーすんだ?」
「あいつなら避けれる!」
 意味なく断言して、ゼルガディスはクラヴィスと共に立ち止まる。
 殴り倒されたらしい数人の黒ずくめ。
 ぷすぷすと音を立てて倒れこんでるやはり数人の黒ずくめ。
 残った三人の黒ずくめと大きな帽子をかぶった少女がビックリしたのか呆然と彼らを見つめている。
 大きな帽子をかぶった少女。薄ピンク色のワンピース。半そでのワンピースから見えるのは白い腕ではなくワンピースの下に着た黒いタートルネックのシャツ。蒼い瞳がかけた眼鏡の奥で揺れている。肩より少し下の黒いつややかな髪。 
 間違いなかった。
 アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。
「アメリアっ!」
 ゼルガディスが叫んだ。アメリアがはっ、と我に返り、前で同じく我に返った黒ずくめの懐にすばやく入り込む。
「くっ!」
 慌てて身を引く黒ずくめ。だが、アメリアは一気に拳を鳩尾に食い込ます。
 小さくうめいて倒れこむ仲間を見て、残りの黒ずくめが後ろに後退る。
 そこに響く場にそぐわない明るい声。
「どこにいくのかな、お二人さん♪」
 へらっと笑って、クラヴィスは黒ずくめの首筋に手刀を入れる。続けざまにもう一人の黒ずくめに回し蹴りを見舞う。
 ふう、と息を吐いてクラヴィスは倒れた黒ずくめ二人を見下ろした。
「まったく、仲間見捨てて逃げちゃダメだろ?」
 呆れたような口調。
 アメリアは眼鏡(無論伊達眼鏡だが)をはずし、いきなり現れた二人の男を交互に見る。
 ゼルガディスが彼女の方に近寄ってくる。心配そうな顔で。
「大丈夫か……? どっか怪我は……」
 アメリアの顔が一気にゆがんだ。泣き出しそうな気配に、思わずゼルガディスは後退った。
「ふえ……ゼルガディスさん……」
「ななななななななんだ?」
 同様していると自覚しながらも、ゼルガディスは答える。なにせ彼はアメリアの涙に弱い。というか、彼女の泣き方は異常というべき代物だった。何しろ、泣き始めたら少なくとも一時間は問答無用で泣き倒す。いくら、なだめても。ちなみにゼルガディスが経験した中での最長記録は二時間半だった。半分以上は泣きまくって、残りは泣きながらの愚痴になったが。
 アメリアがてこてこと寄って来る。
 彼の前まで来ると、思いっきり拳をゼルガディスの腹に叩き込んだ!
 思わずゼルガディスがよろける。倒れはしなかったが。
「ゼルガディスさんの馬鹿っ! ゼルガディスさんのせいでこんな目にあったんですよっ!? あの時一緒に連れてってくれれば、こんな目にあわなくて済んだのにっ!!」
「俺のせいかっ!? ていうか、お前、今ヴィスファランクかけてただろっ!?」
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ! ゼルガディスさんがいじめるぅぅぅぅぅぅっ!」
「なっ……!? おまっ……!! いらんとこだけ性格悪くなったぞ!? リナの真似だけはするなと散々言っただろうがっ!!」
「ふびぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「泣きまねをすんなっ!」
 どげしっ!
 後ろから蹴られて、ゼルガディスは地面に転がった。そちらを睨めば、そこには半眼のクラヴィスの姿。
「お前なぁ。そーいう言葉を女の子に言うなんて最低だぞ」
「……お前みたいな女にだけ優しい奴も人間として最低だと思うぞ」
「はっはっはっ。年上に対しての言葉使いも知らん奴のよーだな」
 あっけらかんと言い放ち、クラヴィスはアメリアに目を向けた。ウインク一つ、彼女に送る。
「というわけで、お助けに参りました。可愛い姫君」
「うわ、さぶっ」
 呟いたゼルガディスの頭をクラヴィスは静かに蹴った。

 アメリアの要望もあって、黒ずくめの男たちは殺さず縄でふんじばっておいておくことにした。とはいえ、ナイフなどは全て回収して、林の中に捨ててきたので、逃げられないだろう。餓死するのが早いか、あの林の奥まで行く物好きに見つけてもらうのが早いかというところだろう。
 もといた街道沿いに戻って三人はとりあえず途方にくれた。
「で、どうするんだ? アメリアちゃんと合流した後のこと、考えてなかった気がするぞ」
「そうだな……このまま逃げ回ってても仕方ないし。おおもとの原因を絶つしかあるまい。アメリア、お前、何か心当たりはないか?」
 ゼルガディスの問いにアメリアは首を横に振った。
「ありませんよ。大体、何で母さんの形見が狙われているのかだって知らないんですから。ただのセイルーンの秘宝でしょう。確かに価値はありますが、こんなに襲撃してまで奪うようなものじゃないでしょう?」
 ゼルガディスとクラヴィスは顔を見合わせた。
「じゃあ、お前もあの魔道書のことは知らないんだな?」
「魔道書…? ああ、一緒になってた奴ですか? 読めませんよ、あんな竜族の文字。わたしが読めるのはある程度の古代文字のみです」
「じゃあ、あれの解読をしなきゃなんないってことか」
 クラヴィスが憂鬱そうに呟いた。
「じゃあ、一時的に姿を隠す必要があるな。いくらなんでも目立つぞ、このパーティーは」
「ふむ……」
 クラヴィスの提案にゼルガディスは腕を組んだ。
 クラヴィスに視線だけを向けて、一言言う。
「……久しぶりに家にでも帰ってみるか……」
                           ≪続く≫

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4036Re:蒼き石、赤き竜 3 and 4笹森 明日香 E-mail 8/21-21:42
記事番号4033へのコメント

こんにちは。笹森明日香です。
とってもおもしろいです。
クラヴィス君、最高!

>そのため、その事件の時あの場所にいた者たちはゼルガディスの容姿に関わらず、彼を信頼していた。
きっと、アメリア達のお母さんという”前例”があったからみんな解ってくれたんですよ。人は見かけによらないとね。

>「今は単独行動している身ゆえ、家は関係ありません。クラヴィス、で結構です」
>(こいつ、本気で家のこと言われるの嫌いだな……)
こういうところはみんな同じなんですね。

>「あいつが死んでから、アメリアが遺品を欲しいと騒ぎ出してな。グレイシア――アメリアの姉が形見としてあいつが昔着ていた服を貰ったのを見たんじゃろう。部屋に入って色々物色してたわい」
そいえばあの服はお母様の形見でしたね。あれを着て王宮の中をうろついていたのでしょうか?

>「竜族の文字ゆえ、解読はさっぱりだったが」
>「竜族の文字ぐらいだったら解読できるぞ」
「ぐらい」ってあなた・・・。

>(……一見正論らしいわがまま吐いて、厄介事を頼むアメリアのあの性格は親父譲りかよ……)
> ゼルガディスは静かに毒づいた。
外見が似てない分他の所は思いっきり似てるのですね。

> ゼルガディスの言葉にクラヴィスは懐から針金を取り出した。先端が変な形に折り曲がっている。
>「こーゆー鍵はクラヴィス様の手にかかれば……」
> 鍵穴に針金を突っ込み、幾度か回す。
> かちん。
> 何かの外れる音。
>「楽勝だな」
>「お前、自分が一応聖職者だって忘れてるだろ」
>「はっはっはっ、聖職者の家に生まれたからってそいつが聖職者とは限らないぞ、ゼルガディスくん」
> 笑ってクラヴィスは扉を開けたが、ゼルガディスは彼の額に一筋の汗が流れていることを見逃さなかった。
やはり色々出来るのですね。この技術を使って何をしていたのでしょうね。情報収集?それとも女性の部屋にでも忍び込んだんでしょうか?

>「ベッドの上にぬいぐるみ発見♪ お前と一緒だな」
>「……何年前の話してんだ。くだらないこと言ってないで、なんか手がかりになるもん探せ」
か、かわいい。

>(召喚呪文と似ていなくもないが……なんか、こー違和感があるんだよな)
やっぱり、彼も魔導に関してはプロですね。

>(月の鏡……? 何かの魔法道具とか。赤き竜……スィーフィードか? とか言って、魔竜王ガーヴとかだったらなんかヤだし)
もう死んでるから大丈夫なのでは・・・?

>「あそこにあったのは、紛れもなくニセモノだよ」
> 何を言われたのか、ゼルガディスは理解できずにただ呆然とクラヴィスを見つめている。
>「ニセ……モノ?」
>「そう。多分、本物はアメリアちゃんのペンダントなんだろうよ」
>「……お前、よくあれがレプリカだと気付いたな」
>「まあ、確かにあれも良い出来だったけどね。でもやっぱり違うんだよ。本物見りゃ一目瞭然さ」
すっごぉい!

>「あのなぁ、アメリアちゃんが持ってなくて、反応探したらこの部屋だった、とか言う落ちだったら泣くぞ。オレ」
その時、ゼルガディスはどういう反応をするのでしょうね。

> 尋ねるゼルガディスの付け合せのフライドポテトにクラヴィスは手を伸ばした。むっ、とした顔をゼルガディスはクラヴィスに向けたが、いつものことらしい。クラヴィスはあっさりと無視した。
仲のよろしいことで・・・。

>「月光に当てて、自分の姿に映すと本来の汚れなき姿……つまり『原罪』を持った身体を捨てて魂のみの存在になれるらしい。で、残された身体にうろついてた霊が入り込む。当たり前だけど、意識は入り込んだ人間のものだから、性格はその入り込んだ奴に反映される。結果、人が変わったように見えるから、『狂気の鏡』。
> 詳しい原理は知らない。知りたいとも思わないし、確かめたくもない」
>「捨てろ。そんな鏡」
そうだよね。おもしろ半分にいたずらしそうだものね。クラヴィスって。

> ゼルガディスはその答えに嘆息すると、何度目か忘れたが自分の皿に伸びてきたクラヴィスの腕を思いっきりはたいた。
いいじゃない、一人ぐらいそういう友達がいても・・・いやかなぁ20歳ぐらいの男には・・・。

> 意味のない彼らの小話を遮って、街道沿いの林から爆音が鳴り響いた。続いて、小さな爆発音。
つっこみに呪文を交えたどつき漫才のようなものなんじゃぁ・・・(それじゃ、リナとガウリイか)

>「さぁなっ! だが、昼間から魔術をぶっ放すなんて、あいつかリナくらいなもんだろ」
それもそうだ。

>「ああ、ゼルガディス。お前はどんな生活をしてきたんだい? おにーさんはかなしーぞ!」
>「くだらないこと言ってるヒマがあるんだったらさっさと走れっ!」
アメリアがピンチの時にからかったら冷たくあしらわれるでしょう。

>「無茶するなぁ……アメリアちゃんいたらどーすんだ?」
>「あいつなら避けれる!」
やっぱり一緒にいた人の情報にはかないませんね。

> そこに響く場にそぐわない明るい声。
>「どこにいくのかな、お二人さん♪」
> へらっと笑って、クラヴィスは黒ずくめの首筋に手刀を入れる。続けざまにもう一人の黒ずくめに回し蹴りを見舞う。
ゼロスと同じですね。たち悪そう。

> 同様していると自覚しながらも、ゼルガディスは答える。なにせ彼はアメリアの涙に弱い。というか、彼女の泣き方は異常というべき代物だった。何しろ、泣き始めたら少なくとも一時間は問答無用で泣き倒す。いくら、なだめても。ちなみにゼルガディスが経験した中での最長記録は二時間半だった。半分以上は泣きまくって、残りは泣きながらの愚痴になったが。
そこまで泣くアメリアもアメリアですけど付き合うゼルガディスもゼルガディスなんじゃ・・・。

> アメリアがてこてこと寄って来る。
> 彼の前まで来ると、思いっきり拳をゼルガディスの腹に叩き込んだ!
> 思わずゼルガディスがよろける。倒れはしなかったが。
>「ゼルガディスさんの馬鹿っ! ゼルガディスさんのせいでこんな目にあったんですよっ!? あの時一緒に連れてってくれれば、こんな目にあわなくて済んだのにっ!!」
>「俺のせいかっ!? ていうか、お前、今ヴィスファランクかけてただろっ!?」
>「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ! ゼルガディスさんがいじめるぅぅぅぅぅぅっ!」
>「なっ……!? おまっ……!! いらんとこだけ性格悪くなったぞ!? リナの真似だけはするなと散々言っただろうがっ!!」
あの人の生き方ってゼルガディスには有効ですよね。

> どげしっ!
> 後ろから蹴られて、ゼルガディスは地面に転がった。そちらを睨めば、そこには半眼のクラヴィスの姿。
>「お前なぁ。そーいう言葉を女の子に言うなんて最低だぞ」
彼は「涙は女の武器だ」と思っているようですね。

>「……お前みたいな女にだけ優しい奴も人間として最低だと思うぞ」
男として「女に優しい」のは基本なのでは・・・。(でも・・・”だけ”ってのはつらいかも・・・。)

> あっけらかんと言い放ち、クラヴィスはアメリアに目を向けた。ウインク一つ、彼女に送る。
>「というわけで、お助けに参りました。可愛い姫君」
>「うわ、さぶっ」
> 呟いたゼルガディスの頭をクラヴィスは静かに蹴った。
やっぱり、こういうセリフには突っ込みがないとね。

>「じゃあ、一時的に姿を隠す必要があるな。いくらなんでも目立つぞ、このパーティーは」
それは確かに・・・。外見も、会話の内容も・・・。

>「……久しぶりに家にでも帰ってみるか……」
わぁ、ゼルガディスさん(グレイワーズさん)のお宅訪問ですね。(Byアメリア)

それでは続きをお待ちしております。

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4054メルアドあるとついつい書きたくなるんですよね、メールねんねこ 8/22-14:27
記事番号4036へのコメント

笹森 明日香さんは No.4036「Re:蒼き石、赤き竜 3 and 4」で書きました。

>こんにちは。笹森明日香です。
ねんねこです。いきなりとーとつですが、メルアド書いてあるとついついメール書きたくなるんですよね、ねんねこ(にやり)

>とってもおもしろいです。
>クラヴィス君、最高!
1と2のお返事を書いて来ました。いつもありがとうございます(ぺこり)
クラヴィス君……なんかゼルツッコミ装置ですね。(なんじゃそら)

>>そのため、その事件の時あの場所にいた者たちはゼルガディスの容姿に関わらず、彼を信頼していた。
>きっと、アメリア達のお母さんという”前例”があったからみんな解ってくれたんですよ。人は見かけによらないとね。
なにせ、フィルさんとアメリアの命の恩人ですからね、ゼルたちは。それに、フィルさんがいたからというのもあるでしょう。『あんな姿でも立派な腕を持った王位継承者。人は見かけにやらんもんだ』と(笑)。

>>「今は単独行動している身ゆえ、家は関係ありません。クラヴィス、で結構です」
>>(こいつ、本気で家のこと言われるの嫌いだな……)
>こういうところはみんな同じなんですね。
アメリアも含めて、みんな家のことを言われるのが嫌いです。一番嫌っているのは、クラヴィスでしょうが。

>>「あいつが死んでから、アメリアが遺品を欲しいと騒ぎ出してな。グレイシア――アメリアの姉が形見としてあいつが昔着ていた服を貰ったのを見たんじゃろう。部屋に入って色々物色してたわい」
>そいえばあの服はお母様の形見でしたね。あれを着て王宮の中をうろついていたのでしょうか?
さすがにうろついてなかったでしょう(笑)ナーガは最初内気だったらしいですから。何かのきっかけで、ああなってしまったと。

>>「竜族の文字ゆえ、解読はさっぱりだったが」
>>「竜族の文字ぐらいだったら解読できるぞ」
>「ぐらい」ってあなた・・・。
さすがゼル(笑)
でも、彼はすごい人です。アニメスタッフの方から現代のレオナルド・ダ・ヴィンチと呼ばれたくらいですから。

>>(……一見正論らしいわがまま吐いて、厄介事を頼むアメリアのあの性格は親父譲りかよ……)
>> ゼルガディスは静かに毒づいた。
>外見が似てない分他の所は思いっきり似てるのですね。
素晴らしい性格なんでしょうね。アメリア(笑)。

>> ゼルガディスの言葉にクラヴィスは懐から針金を取り出した。先端が変な形に折り曲がっている。
>>「こーゆー鍵はクラヴィス様の手にかかれば……」
>> 鍵穴に針金を突っ込み、幾度か回す。
>> かちん。
>> 何かの外れる音。
>>「楽勝だな」
>>「お前、自分が一応聖職者だって忘れてるだろ」
>>「はっはっはっ、聖職者の家に生まれたからってそいつが聖職者とは限らないぞ、ゼルガディスくん」
>> 笑ってクラヴィスは扉を開けたが、ゼルガディスは彼の額に一筋の汗が流れていることを見逃さなかった。
>やはり色々出来るのですね。この技術を使って何をしていたのでしょうね。情報収集?それとも女性の部屋にでも忍び込んだんでしょうか?
さすがに女性の部屋に、というのはないでしょう。と言うか、そのくらいの分別はわきまえてると考えています。

>>「ベッドの上にぬいぐるみ発見♪ お前と一緒だな」
>>「……何年前の話してんだ。くだらないこと言ってないで、なんか手がかりになるもん探せ」
>か、かわいい。
ぬいぐるみ抱えた子供ゼル。見てみたいなぁ。

>>(召喚呪文と似ていなくもないが……なんか、こー違和感があるんだよな)
>やっぱり、彼も魔導に関してはプロですね。
プロです。プロ中のプロ。さすがにリナには敵いませんが。

>>(月の鏡……? 何かの魔法道具とか。赤き竜……スィーフィードか? とか言って、魔竜王ガーヴとかだったらなんかヤだし)
>もう死んでるから大丈夫なのでは・・・?
何かの拍子にひょろっ、と出てくるとか。今までろくな生活をしていなかったんで、そのくらいのことがあってもいいとか考えてるんでしょう。

>>「あそこにあったのは、紛れもなくニセモノだよ」
>> 何を言われたのか、ゼルガディスは理解できずにただ呆然とクラヴィスを見つめている。
>>「ニセ……モノ?」
>>「そう。多分、本物はアメリアちゃんのペンダントなんだろうよ」
>>「……お前、よくあれがレプリカだと気付いたな」
>>「まあ、確かにあれも良い出来だったけどね。でもやっぱり違うんだよ。本物見りゃ一目瞭然さ」
>すっごぉい!
フィルさんでも分からなかったことを見抜くクラヴィス。かっこいい(笑)何かをみる目は確かです、彼は。

>>「あのなぁ、アメリアちゃんが持ってなくて、反応探したらこの部屋だった、とか言う落ちだったら泣くぞ。オレ」
>その時、ゼルガディスはどういう反応をするのでしょうね。
笑って誤魔化す。『ははは、持ってなかったか』とか言って。

>> 尋ねるゼルガディスの付け合せのフライドポテトにクラヴィスは手を伸ばした。むっ、とした顔をゼルガディスはクラヴィスに向けたが、いつものことらしい。クラヴィスはあっさりと無視した。
>仲のよろしいことで・・・。
どっちが年下かわかんないですねー。

>>「月光に当てて、自分の姿に映すと本来の汚れなき姿……つまり『原罪』を持った身体を捨てて魂のみの存在になれるらしい。で、残された身体にうろついてた霊が入り込む。当たり前だけど、意識は入り込んだ人間のものだから、性格はその入り込んだ奴に反映される。結果、人が変わったように見えるから、『狂気の鏡』。
>> 詳しい原理は知らない。知りたいとも思わないし、確かめたくもない」
>>「捨てろ。そんな鏡」
>そうだよね。おもしろ半分にいたずらしそうだものね。クラヴィスって。
冷めた口調のクラヴィス。彼も好きです。

>> ゼルガディスはその答えに嘆息すると、何度目か忘れたが自分の皿に伸びてきたクラヴィスの腕を思いっきりはたいた。
>いいじゃない、一人ぐらいそういう友達がいても・・・いやかなぁ20歳ぐらいの男には・・・。
歳は関係ないでしょう。むしろ大人になってもそういう友達がいた方が素敵だとねんねこは思います。

>> 意味のない彼らの小話を遮って、街道沿いの林から爆音が鳴り響いた。続いて、小さな爆発音。
>つっこみに呪文を交えたどつき漫才のようなものなんじゃぁ・・・(それじゃ、リナとガウリイか)
>>「さぁなっ! だが、昼間から魔術をぶっ放すなんて、あいつかリナくらいなもんだろ」
>それもそうだ。
>>「ああ、ゼルガディス。お前はどんな生活をしてきたんだい? おにーさんはかなしーぞ!」
>>「くだらないこと言ってるヒマがあるんだったらさっさと走れっ!」
>アメリアがピンチの時にからかったら冷たくあしらわれるでしょう。
友情より愛を選ぶゼル(笑)

>>「無茶するなぁ……アメリアちゃんいたらどーすんだ?」
>>「あいつなら避けれる!」
>やっぱり一緒にいた人の情報にはかないませんね。
相当自信があったんでしょうね。

>> そこに響く場にそぐわない明るい声。
>>「どこにいくのかな、お二人さん♪」
>> へらっと笑って、クラヴィスは黒ずくめの首筋に手刀を入れる。続けざまにもう一人の黒ずくめに回し蹴りを見舞う。
>ゼロスと同じですね。たち悪そう。
たち悪いです。自分が敵と思った相手には、徹底的に容赦はしない。俗に言う『敵にまわすと厄介』と言う人ですね。

>> 同様していると自覚しながらも、ゼルガディスは答える。なにせ彼はアメリアの涙に弱い。というか、彼女の泣き方は異常というべき代物だった。何しろ、泣き始めたら少なくとも一時間は問答無用で泣き倒す。いくら、なだめても。ちなみにゼルガディスが経験した中での最長記録は二時間半だった。半分以上は泣きまくって、残りは泣きながらの愚痴になったが。
>そこまで泣くアメリアもアメリアですけど付き合うゼルガディスもゼルガディスなんじゃ・・・。
逃げたくても逃げられなかった。しっかりと掴まれて(笑)変なところで力ありますからね、アメリア。

>> アメリアがてこてこと寄って来る。
>> 彼の前まで来ると、思いっきり拳をゼルガディスの腹に叩き込んだ!
>> 思わずゼルガディスがよろける。倒れはしなかったが。
>>「ゼルガディスさんの馬鹿っ! ゼルガディスさんのせいでこんな目にあったんですよっ!? あの時一緒に連れてってくれれば、こんな目にあわなくて済んだのにっ!!」
>>「俺のせいかっ!? ていうか、お前、今ヴィスファランクかけてただろっ!?」
>>「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ! ゼルガディスさんがいじめるぅぅぅぅぅぅっ!」
>>「なっ……!? おまっ……!! いらんとこだけ性格悪くなったぞ!? リナの真似だけはするなと散々言っただろうがっ!!」
>あの人の生き方ってゼルガディスには有効ですよね。
って言うか、散々って言葉が出てくるくらい『リナみたいにはなるな』って言ってたんかい、ゼル。て感じです。

>> どげしっ!
>> 後ろから蹴られて、ゼルガディスは地面に転がった。そちらを睨めば、そこには半眼のクラヴィスの姿。
>>「お前なぁ。そーいう言葉を女の子に言うなんて最低だぞ」
>彼は「涙は女の武器だ」と思っているようですね。
思ってますね。

>>「……お前みたいな女にだけ優しい奴も人間として最低だと思うぞ」
>男として「女に優しい」のは基本なのでは・・・。(でも・・・”だけ”ってのはつらいかも・・・。)
典型的な男卑女尊男、クラヴィス=ヴァレンタイン。

>> あっけらかんと言い放ち、クラヴィスはアメリアに目を向けた。ウインク一つ、彼女に送る。
>>「というわけで、お助けに参りました。可愛い姫君」
>>「うわ、さぶっ」
>> 呟いたゼルガディスの頭をクラヴィスは静かに蹴った。
>やっぱり、こういうセリフには突っ込みがないとね。
ゼルの頭を問答無用で蹴りつけられるのは、彼かアメリアくらいでは……(汗)

>>「じゃあ、一時的に姿を隠す必要があるな。いくらなんでも目立つぞ、このパーティーは」
>それは確かに・・・。外見も、会話の内容も・・・。
常にどつき漫才状態。嫌でも目立つって。

>>「……久しぶりに家にでも帰ってみるか……」
>わぁ、ゼルガディスさん(グレイワーズさん)のお宅訪問ですね。(Byアメリア)
……なんか小学生の時やった自宅訪問みたい……(笑)

>それでは続きをお待ちしております。
はいっ! はいっ! あらかじめ書いておいた分、全部出し切りますっ! 次はいつになるんだろふ。ツリー落ちてないといいけど……(汗)一応、ノートに全部書いてはあるんですけどね。打つのが……
ねんねこでした。

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4039感想(?)由理&ゆかり 8/21-23:01
記事番号4033へのコメント


>
>「あそこにあったのは、紛れもなくニセモノだよ」
> 何を言われたのか、ゼルガディスは理解できずにただ呆然とクラヴィスを見つめている。
>「ニセ……モノ?」
>「そう。多分、本物はアメリアちゃんのペンダントなんだろうよ」
>「……お前、よくあれがレプリカだと気付いたな」
>「まあ、確かにあれも良い出来だったけどね。でもやっぱり違うんだよ。本物見りゃ一目瞭然さ」
「あなた方、宝石商できますよ」
良い意味なのか?悪い意味なのか?
「もちろん、両方ですよ」


>「なんだ、これ?」
>「アメリアの持ちもんだ。なんかのマジック・アイテムで二つ一緒で何かに使うらしい。なんかその説明も聞いたことあるような気がしたが、忘れた」
忘れるか?普通・・・・・
「聞いてなかったとか・・・・」


>「あのなぁ、アメリアちゃんが持ってなくて、反応探したらこの部屋だった、とか言う落ちだったら泣くぞ。オレ」
確かに・・・・・それが、一番悲しいな・・・・



>「月光に当てて、自分の姿に映すと本来の汚れなき姿……つまり『原罪』を持った身体を捨てて魂のみの存在になれるらしい。で、残された身体にうろついてた霊が入り込む。当たり前だけど、意識は入り込んだ人間のものだから、性格はその入り込んだ奴に反映される。結果、人が変わったように見えるから、『狂気の鏡』。
> 詳しい原理は知らない。知りたいとも思わないし、確かめたくもない」
>「捨てろ。そんな鏡」
> ゼルガディスが脱力して、即答した。
さっき期待してた奴が言うなよ・・・・・
「たしかに、 ゼルガディスさんの言うこと分かりますよ。
自分に霊が入ったら嫌ですから。」


>「さぁなっ! だが、昼間から魔術をぶっ放すなんて、あいつかリナくらいなもんだろ」
>「ああ、ゼルガディス。お前はどんな生活をしてきたんだい? おにーさんはかなしーぞ!」
クラヴィス!ナイスなツッコミ!


>「無茶するなぁ……アメリアちゃんいたらどーすんだ?」
>「あいつなら避けれる!」
「避けれなかったらどうするんですか?」
・・・・直撃・・・・。


> アメリアは眼鏡(無論伊達眼鏡だが)をはずし、いきなり現れた二人の男を交互に見る。
「私も、眼鏡かけてます。」
だから、よけーにかしこそーに見える。


>「俺のせいかっ!? ていうか、お前、今ヴィスファランクかけてただろっ!?」
>「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ! ゼルガディスさんがいじめるぅぅぅぅぅぅっ!」
>「なっ……!? おまっ……!! いらんとこだけ性格悪くなったぞ!? リナの真似だけはするなと散々言っただろうがっ!!」
>「ふびぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
>「泣きまねをすんなっ!」
「あらら。いきなり和やかな感じになりましたね」
本気で言ってるのか?
「言ってます!」



>「……久しぶりに家にでも帰ってみるか……」
「家!?ゼルガディスさんの!?」
ゆかり・・・あんた、アメリアの叫びになってるぞ・・・・
「伊達に、アメリアってあだ名がついてません!!」
威張って言うな・・・
「まあ、気にしないで。半魚人の島聞いてるから・・・
そんなことは、どうでも、いいです。
では、続きがんばってください!」

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4055立派な感想ですよ。ねんねこ 8/22-14:32
記事番号4039へのコメント

由理&ゆかりさんは No.4039「感想(?)」で書きました。

>>
>>「あそこにあったのは、紛れもなくニセモノだよ」
>> 何を言われたのか、ゼルガディスは理解できずにただ呆然とクラヴィスを見つめている。
>>「ニセ……モノ?」
>>「そう。多分、本物はアメリアちゃんのペンダントなんだろうよ」
>>「……お前、よくあれがレプリカだと気付いたな」
>>「まあ、確かにあれも良い出来だったけどね。でもやっぱり違うんだよ。本物見りゃ一目瞭然さ」
>「あなた方、宝石商できますよ」
>良い意味なのか?悪い意味なのか?
>「もちろん、両方ですよ」
宝石商……間違いなる闇ルートと見た。

>>「なんだ、これ?」
>>「アメリアの持ちもんだ。なんかのマジック・アイテムで二つ一緒で何かに使うらしい。なんかその説明も聞いたことあるような気がしたが、忘れた」
>忘れるか?普通・・・・・
>「聞いてなかったとか・・・・」
聞いてなかったんだと……きっといつものパターンでいい雰囲気だったのを彼女の説明でぶち壊されたんでしょう。分かってやれ。アメリア。

>>「あのなぁ、アメリアちゃんが持ってなくて、反応探したらこの部屋だった、とか言う落ちだったら泣くぞ。オレ」
>確かに・・・・・それが、一番悲しいな・・・・
無駄な努力ほどぬくわれない……

>>「月光に当てて、自分の姿に映すと本来の汚れなき姿……つまり『原罪』を持った身体を捨てて魂のみの存在になれるらしい。で、残された身体にうろついてた霊が入り込む。当たり前だけど、意識は入り込んだ人間のものだから、性格はその入り込んだ奴に反映される。結果、人が変わったように見えるから、『狂気の鏡』。
>> 詳しい原理は知らない。知りたいとも思わないし、確かめたくもない」
>>「捨てろ。そんな鏡」
>> ゼルガディスが脱力して、即答した。
>さっき期待してた奴が言うなよ・・・・・
>「たしかに、 ゼルガディスさんの言うこと分かりますよ。
>自分に霊が入ったら嫌ですから。」
と言うか、『元の姿』に戻る意味ないし。『普通に戻せ、普通にっ!』とか思ってるんでしょーね、ゼル。

>>「さぁなっ! だが、昼間から魔術をぶっ放すなんて、あいつかリナくらいなもんだろ」
>>「ああ、ゼルガディス。お前はどんな生活をしてきたんだい? おにーさんはかなしーぞ!」
>クラヴィス!ナイスなツッコミ!
ナイスなツッコミだけど、思い出すとブルーな感じ。

>>「無茶するなぁ……アメリアちゃんいたらどーすんだ?」
>>「あいつなら避けれる!」
>「避けれなかったらどうするんですか?」
>・・・・直撃・・・・。
きっと直撃しても大丈夫っ! アメリアだしっ!

>> アメリアは眼鏡(無論伊達眼鏡だが)をはずし、いきなり現れた二人の男を交互に見る。
>「私も、眼鏡かけてます。」
>だから、よけーにかしこそーに見える。
自分で書いててなんですが、何故アメリアが眼鏡をかけていたかねんねこも分からないんですけど……うむ、謎だ。

>>「俺のせいかっ!? ていうか、お前、今ヴィスファランクかけてただろっ!?」
>>「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ! ゼルガディスさんがいじめるぅぅぅぅぅぅっ!」
>>「なっ……!? おまっ……!! いらんとこだけ性格悪くなったぞ!? リナの真似だけはするなと散々言っただろうがっ!!」
>>「ふびぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
>>「泣きまねをすんなっ!」
>「あらら。いきなり和やかな感じになりましたね」
>本気で言ってるのか?
>「言ってます!」
せめて再会は和やかに。いきなり抱きあって、ていう再会の仕方はあまり考えたくないし……怖くて。回りのことを忘れて自分たちの世界にひたすら没頭する。リナたちといた時二人が学んだ技です。

>>「……久しぶりに家にでも帰ってみるか……」
>「家!?ゼルガディスさんの!?」
>ゆかり・・・あんた、アメリアの叫びになってるぞ・・・・
>「伊達に、アメリアってあだ名がついてません!!」
>威張って言うな・・・
なんか、ゼルって家なさそーな感じですからね。

>「まあ、気にしないで。半魚人の島聞いてるから・・・
>そんなことは、どうでも、いいです。
半魚人の島……懐かしい。いいですよね。あのさりげないゼルアメが(はぁと)絶対アメリアからかってゼル面白がってますね、あれは。

>では、続きがんばってください!」
はいっ! ありがとうございますっ!

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4056蒼き石、赤き竜 5ねんねこ 8/22-14:35
記事番号4033へのコメント

ねんねこです。ついに5です。今回は1話のみです。根性入れて書きました。ふと投稿した後読んでて気づいたんですが……誤字脱字多すぎっ!(殴)
誤字脱字見つけたら『ああ、ねんねこも苦労してるんだな』と読み流してくださいっ!
では、どーぞっ!

 ラルティーグ王国の南に広がる小さな森。
 付近の住民が近づこうとしないこの森は、入れば二度と出てこれない迷いの森だという。
 そんな森の中をある手順を踏んでゼルガディス、クラヴィス、そしてアメリアの三人は進んでいく。
「ふぇぇぇぇ」
 見た目はただの普通の森と変わらないのだが、『迷いの森』という名前からか、アメリアがものめずらしそうに声をあげ、走り回った。
 ゼルガディスが呆れて嘆息した。
「ったく。アメリア、うろちょろするんじゃない。迷っても知らんぞ」
 まったく、いつまでたっても子供だな、と呆れ返るゼルガディスの隣で、クラヴィスが言う。
「とか言いつつ、顔緩んでるぞ、ゼル」
「う、うるさいっ!」
 顔を真っ赤にしてゼルガディスは片手で顔を押さえた。
 すぐに、未だ走り回るアメリアを見かねて、大またで歩いていくと、ゼルガディスはすばやく彼女の首根っこを掴んだ。そのまま彼女を引きずっていく。
「俺だって、行き方と帰り方しか知らないんだ。迷ったら一生出られないぞ」
「にょぇぇぇぇぇぇっ!?」
 ずるずると引きずられていくアメリアとさくさく進むゼルガディスを見送りながら、クラヴィスは苦笑した。
「いいねぇ。初々しい奴らは」
 呟くと、近くの村で買った食料を抱えなおし、足早に先に言った二人を追いかけた。

「うわぁぁ、すごいお屋敷ですねぇぇぇ」
 森の中に現れた屋敷にアメリアは感嘆した。ツタの絡まった門を開けてゼルガディスが敷地に入っていく。アメリアとクラヴィスも続く。
 あらかじめ荷物の奥底から引っ張り出しておいた鍵を懐から取り出し、鍵穴に突っ込む。さびているかもしれないという心配があったが、どうやら問題ないようだった。かち、という音と共に鍵が外れる。三人は屋敷に入った。
 屋敷には不思議と埃一つなかった。五年もの間ほったらかしにして、誰も足を踏み入れなかったはずなのに。おそらくレゾのせいだろう。どういう魔法かは分からないが。いちいち旅から帰る度、掃除するのがめんどくさいと常日頃彼はぼやいていたから。
 後ろにいたクラヴィスがすたすたと奥に向かう。
「そろそろ夕食の時間だしね。作ってくる」
 とだけ言い残して。
 彼を見送って、アメリアは尋ねた。
「クラヴィスさんってお料理できるんですか?」
 ゼルガディスはぼやくように答える。
「あいつの趣味の一つだよ。人には言えないような趣味ばかりあるあいつにとっちゃ唯一まともな趣味なんじゃないかな」
 アメリアは『人には言えないような趣味』にも興味があったが、とりあえず聞かないことにした。
「……多才な人なんですね」
「誕生日にはいつもケーキを焼いてくれたよ」
 小さいやつだったけどな、と付け加えてゼルガディスは近くのソファーに腰をかける。立っているアメリアを見て、自分の隣をぽんぽん、と叩く。
「座れよ。疲れてるだろう」
 彼の言葉にアメリアははにゃっ、と笑った。彼の横にちょこん、と座ると、彼の腕に自分の腕を絡ませる。
「結局三ヶ月しかもたなかったな。いや、三ヶ月もっただけいいか」
「長かったです。三ヶ月でも」
「確かに長かったよ」
 彼女といなかった時間。あんなに一人でいることが寂しいと思ったのは本当に久しぶりだった。キメラの身体にされてから、寂しさなんて忘れたと思っていたのに。
 アメリアがいたずらっぽく笑う。
「でもね。ゼロスさんがほとんど毎日遊びに来てくれてたからあんまり寂しくなかったです。ゼロスさん、なんかわたしのこと心配してくれてたみたいなんですよね。わたしが寂しがってるんじゃないかって」
「……そうか」
 ゼルガディスはアメリアの頭を軽く叩いた。
(あの野郎……次に会ったら絶対ラ・ティルトぶちかましてやる)
 会いたくはないが、とゼルガディスは性悪魔族を呪った。
 二階を眺めていたアメリアが、急に立ち上がった。
「どうした?」
 ゼルガディスは尋ねた。アメリアは二階を指差す。今いる一階中央広間は、吹き抜けになっていて、二階の扉と廊下が見えるようになっている。
「二階を探検してきて良いですか?」
「良いが……案内してやろうか? 結構広いぞ、ここ」
 アメリアは首を横に振る。
「ゼルガディスさん、自分の都合の良い所にしか案内してくれなさそうだから、一人で行きます」
(ちっ、バレたか)
「そうか」
 図星を突かれて、うめきそうになる自分を抑え、極力平静に答える。
「じゃいってきます」
 階段のある廊下に向かって歩いていくアメリアを呼び止める。
「アメリア」
「何ですか?」
 彼女が振り返る。ゼルガディスは意地悪く言ってやった。
「ここら辺は浮かばれない霊がたくさんいるからな」
 せいぜい気をつけろよ、というゼルガディスの台詞に、アメリアはベーと舌を出してゼルガディスを睨んだ。
「怖くないですよーだ」
 言ってたったと走っていく。 
 見送って、ゼルガディスはごろんとソファに寝転んで、目を閉じた。
(俺が殺した仲間たちの霊がうろついているんだ……)
 と。
「フラれてやんの」
 頭の方から声がする。目を開けると、クラヴィスが笑って顔を覗き込んでいた。邪魔だという風に手を振り払って頭をどかせる。
「やかましい」
「まったく……この朴念仁が」
 クラヴィスは腰に手を当てて、呆れた表情をして見せた。
「久しぶりの再会で、オレが気を使って二人っきりにさせてやったんだ。抱きしめたり、押し倒すくらいの甲斐性見せてみろ。仲良し兄妹の楽しい会話じゃないんだぞ?」
「余計なお世話だ」
 ゼルガディスは身体を起こした。
「大体、人の心配するくらいなら、自分の心配しろ。新しい女、そろそろ作ってもバチは当たらんだろ。人生先は長いぞ。
 お前だったら、もてるだろ?」
 冗談、とクラヴィスは肩をすくめた。彼の首にかかる鎖に通した結婚指輪が光る。
「オレに二度も結婚しろってーのか? オレは結婚は生涯一度っきりと心に誓ってんだよ。
 それに中途半端にしか愛せないと分かってんのに、抱くなんざ、相手にとってひどく失礼なことだろ。そのくらい知っとけ」
「……お前、見た目は女好きに見えるのに、結構変なところで堅いよな」
「馬鹿野郎。生涯一人の女を幸せにするのが男としての唯一の義務だ」
 ……しかも妙なところで説教癖出るし……
 ゼルガディスは声に出さずに呟いた。
「というわけで」
 クラヴィスがびっ、と二階を指差した。
「夕飯だ。アメリアちゃん呼んでこい」
「ひとりでかっ!? めちゃくちゃ広いんだぞ、ここっ!!」
「ああ、それなら……」
 指差していた人差し指をゆっくり移動させる。彼の指の先は、一番奥の部屋を指していた。
「奥から見ていこうとしたんだな。しっかりきっぱりさっさと入っていったぞ。お前の部屋に」
「あああっ! 一番入って欲しくないところにっ!!」
 ゼルガディスはそそくさと彼女の元へ向かった。

 一番最初に入った部屋は子供部屋のようだった。
 いくつものぬいぐるみが乗ったベッド。
 いろいろなジャンル――主におとぎ話が多い。さすがにヒロイック・サーガはなかったが――の本が置いてある本棚。
 大事そうに飾ってある蒼い模型飛行機。
 壁には、クレヨンで絵が描かれた画用紙が貼ってある。二人の人物画。子供の字でこう書いてある。
『ぼくとクラヴィス』
 誰の部屋か一目瞭然だった。
 アメリアは微笑んで、机に向かった。
 日記や何かがあるかもしれない。いつも不機嫌そうな顔をしているあの男がどんな幼少時代を送ったか興味があった。
 と。
「アメリア」
 声をかけられ、机に伸ばしていた腕を慌てて引っ込める。恐る恐る振り返ってみれば、そこにいたのはこの部屋の主。何故か少し息を切らしていたが。
 白々しくアメリアは尋ねた。
「この部屋、ゼルガディスさんの部屋ですか?」
 ゼルガディスはしぶしぶ頷いた。
 少しくらい部屋をゆっくり見渡す。飛び出した五年前とちっとも変わっていない。
「一応五歳の時から十年間ほどいた」
 全てが懐かしく感じる。
 ゼルガディスは少し目を細めた。
 アメリアは視線をベッドの上のぬいぐるみに向けた。
 大小さまざまな大きさのぬいぐるみ。
 その中に手作りらしいクマのぬいぐるみを見つけて、アメリアは昔の自分を思い出す。
「……クマさん、きっと毎日ゼルガディスさんに抱きしめられてたんですね」
「……悪かったな」
 なんとなく恥ずかしくなってゼルガディスは苦い笑いを張り付かせた。が、アメリアは笑わなかった。憂いを込めた瞳を静かにぬいぐるみに向けていた。
「わたしと同じ」
「……ぬいぐるみに抱きついて寝るのが?」
「寂しさを紛らわせるためにぬいぐるみを利用するのが」
 即答したアメリアに思わずゼルガディスは黙り込んだ。
「……あれ、お母様のお手製でしょう?」
「……多分な。母さんが死ぬ前の日に母さんから貰ったから」
 ゼルガディスの答えにアメリアはため息をついて口元を緩めた。視線を今度は床に落とす。
「わたしも母さんが作ってくれたぬいぐるみだった」
「……アメリア」
 きっと病死した母親を思い出したのだろう。ゼルガディスは彼女の名前を呼んだ。
 が、彼女は無視して、ぽつり、と呟いた。
「……母さん、病気で死んだんじゃないんです。本当は母さん、わたしをかばって死んだの」
「――っ!?」
 ゼルガディスは息を呑んだ。
 自分の両親を思い出す。
 自分を『レゾの後継者』にしようとした人間たちから自分を守って死んだ両親。
 アメリアは吐露するように言葉を続けた。
「昔、起こった王宮内のトラブルに巻き込まれて。
 わたしはまだその時小さくて、王宮で何が起こっているのか分からなかった。
 近くにいる人達が心の中で何を考えているのかまったく知らなかった……!」
 震える彼女の小さな身体。泣いてはいないようだが。
「わたしをかばって母さん倒れた時、母さん笑ってた……
 自分は死ぬのに、わたしを見て優しく笑ったの……!
 わたし、母さんに笑ってもらえる資格なんてないのに……!!」
 ゼルガディスはアメリアに近づいて、震えつづける彼女の体をそっと抱きしめる。
「子供を愛さない親はいないよ」
 彼女の髪を優しくなでてやる。
 昔、自分が祖父にそうしてもらったように。
「親は子供が元気に育ってくれればそれでいいんだ。
 親は子供を守れればそれで幸せなんだ。結果、自分が犠牲になっても。
 だからアメリアが無事でお袋さん、笑ったんだ。最後まで幸せだったんだ。アメリアには、笑ってもらう資格はちゃんとあるんだよ」
「……ゼルガディスさん……」
「……って、レゾの……いや、じーさんの受け売りだけどな。最期の言葉さ」
 魔王に意識をのっとられ、正気を失う前の。
 腕の中でアメリアがくすり、と笑った。
「オリジナルのレゾさんにわたしも会いたかったです」
 アメリアはコピーのレゾとしか面識はなかった。
 彼はぼやいた。
「……冗談しか言わないじーさんだったよ」
「ゼルがディスさん、今はそーでもないけど、小さい頃は可愛かった、ってクラヴィスさん言ってました」
「あいつは……今も昔も可愛くなかった。口が悪いわ、人のこと玩具にするわ」
 アメリアがゼルガディスの胸に頭を当てる。
「……わたしも子供のゼルガディスさんに会いたかったです」
「会わなくて良い。良いんだ……小さい頃の事は。いくら言ってもそこには戻れないから」
「…………」
 アメリアが黙って、ゼルガディスの顔を見上げた。
 ゼルガディスは微笑んだ。アメリアですら見たことがなかったとても優しくて心が温まるような笑み。
「お前が俺の今を知っててくれれば……それで十分さ」
 ゼルガディスが身体を少し離した。
 彼女の頬に手を伸ばし、少し顔を上に上げた。彼女はゆっくりと目を閉じる。
 自分の唇を近づけようとして、ゼルガディスは視線を入り口に向けた。
 少し開いたドアの隙間。興味津々で見つめるクラヴィスの姿。
『向こう行ってろ』と目で合図すると、彼は肩をすくめ、手にしたフライパンを見せて立ち去っていく。
『さっさと降りてこい。飯が冷める』
 そういう意味だろう。
 邪魔者がいなくなると、ゼルガディスは目を閉じてゆっくりと彼女に口付けした。

 ずっと違うと思っていた。
 何事もなく幸せに育てられてきたと思っていた。
 でも違ったんだ。
 今日初めて、自分の過去を話してくれた君。
 同じだったんだ。
 俺たちは一緒だったんだ。
 さあ、共に歩いていこう。
 お互いの心の傷を癒しあって、未来に向かって歩いていこう。
 自分の幸せを手に入れるために。

                        ≪続く≫

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4064Re:蒼き石、赤き竜 5笹森 明日香 E-mail 8/22-20:43
記事番号4056へのコメント

こんにちは、笹森明日香です。
回を重ねるごとに感想が短くなっているような。(ツッコミのネタがかぶるんです。)
いい加減シリアスな部分にも感想を書けるようにがんばりますのでこれからもよろしくお願いします。

>ふと投稿した後読んでて気づいたんですが……誤字脱字多すぎっ!(殴)
まだましですよ。ひどい方になるとキャラの名前打ち間違ってますから。(比べたら失礼ですね)

> 付近の住民が近づこうとしないこの森は、入れば二度と出てこれない迷いの森だという。
> そんな森の中をある手順を踏んでゼルガディス、クラヴィス、そしてアメリアの三人は進んでいく。
さすがはレゾの屋敷。

>「いいねぇ。初々しい奴らは」
いったいいくつ離れてるのですか?(まぁ、わたしの部活でも似たような会話があるのだけれど・・・。)

> 森の中に現れた屋敷にアメリアは感嘆した。ツタの絡まった門を開けてゼルガディスが敷地に入っていく。アメリアとクラヴィスも続く。
> あらかじめ荷物の奥底から引っ張り出しておいた鍵を懐から取り出し、鍵穴に突っ込む。さびているかもしれないという心配があったが、どうやら問題ないようだった。
クラヴィス君の家にばかり”帰って”ちゃダメですよ。(笑)

> 屋敷には不思議と埃一つなかった。五年もの間ほったらかしにして、誰も足を踏み入れなかったはずなのに。おそらくレゾのせいだろう。どういう魔法かは分からないが。いちいち旅から帰る度、掃除するのがめんどくさいと常日頃彼はぼやいていたから。
なぁ〜んかこういうのって人間味があっていいですね。

>「あいつの趣味の一つだよ。人には言えないような趣味ばかりあるあいつにとっちゃ唯一まともな趣味なんじゃないかな」
でもあなたには言ってるんでしょう?何かする度に「趣味だ」って。(というかゼルガディスが口止めしなけりゃ平気で他人にしゃべりそうですよね。クラヴィスって。)

> アメリアは『人には言えないような趣味』にも興味があったが、とりあえず聞かないことにした。
>「……多才な人なんですね」
同感です。

>「誕生日にはいつもケーキを焼いてくれたよ」
アメリアもその味を知っているとは夢にも思ってないでしょうね。

> 彼の言葉にアメリアははにゃっ、と笑った。彼の横にちょこん、と座ると、彼の腕に自分の腕を絡ませる。
ゼルガディスなりに努力してるんですよ。

>「でもね。ゼロスさんがほとんど毎日遊びに来てくれてたからあんまり寂しくなかったです。ゼロスさん、なんかわたしのこと心配してくれてたみたいなんですよね。わたしが寂しがってるんじゃないかって」
少しぐらい「もしかしてわたしに気があるのかも」とか疑わないんですか?

>「良いが……案内してやろうか? 結構広いぞ、ここ」
> アメリアは首を横に振る。
>「ゼルガディスさん、自分の都合の良い所にしか案内してくれなさそうだから、一人で行きます」
>(ちっ、バレたか)
ダメですよ、好きな人の前でくらいは本当の自分をさらけ出さないと。

>「ここら辺は浮かばれない霊がたくさんいるからな」
> せいぜい気をつけろよ、というゼルガディスの台詞に、アメリアはベーと舌を出してゼルガディスを睨んだ。
>「怖くないですよーだ」
> 言ってたったと走っていく。 
> 見送って、ゼルガディスはごろんとソファに寝転んで、目を閉じた。
>(俺が殺した仲間たちの霊がうろついているんだ……)
見えるんですか?あなた達は。

>「大体、人の心配するくらいなら、自分の心配しろ。新しい女、そろそろ作ってもバチは当たらんだろ。人生先は長いぞ。
> お前だったら、もてるだろ?」
> 冗談、とクラヴィスは肩をすくめた。彼の首にかかる鎖に通した結婚指輪が光る。
>「オレに二度も結婚しろってーのか? オレは結婚は生涯一度っきりと心に誓ってんだよ。
> それに中途半端にしか愛せないと分かってんのに、抱くなんざ、相手にとってひどく失礼なことだろ。そのくらい知っとけ」
>「……お前、見た目は女好きに見えるのに、結構変なところで堅いよな」
>「馬鹿野郎。生涯一人の女を幸せにするのが男としての唯一の義務だ」
本当に隙のない人ですよね。ゼルガディスがイヤミの一つも言えないなんて。

> ……しかも妙なところで説教癖出るし……
じーさん(レゾ)の姿とかぶりますか?

>「ひとりでかっ!? めちゃくちゃ広いんだぞ、ここっ!!」
昔、何度か迷っているのでしょうね。

>「奥から見ていこうとしたんだな。しっかりきっぱりさっさと入っていったぞ。お前の部屋に」
>「あああっ! 一番入って欲しくないところにっ!!」
アメリアと読者が一番見たい部屋ですよ。

> いろいろなジャンル――主におとぎ話が多い。さすがにヒロイック・サーガはなかったが――の本が置いてある本棚。
何を期待してたんですか?

> 大事そうに飾ってある蒼い模型飛行機。
> 壁には、クレヨンで絵が描かれた画用紙が貼ってある。二人の人物画。子供の字でこう書いてある。
>『ぼくとクラヴィス』
本当にかわいかったんですね。子供の頃は。(それ故にクラヴィスに目を付けられ(笑)現在に至ると・・・。)

> 誰の部屋か一目瞭然だった。
> アメリアは微笑んで、机に向かった。

> 日記や何かがあるかもしれない。いつも不機嫌そうな顔をしているあの男がどんな幼少時代を送ったか興味があった。
見た〜い

> 白々しくアメリアは尋ねた。
>「この部屋、ゼルガディスさんの部屋ですか?」
ゼルガディスのからかい方が身に付いてきましたね。

> ゼルガディスはしぶしぶ頷いた。
> 少しくらい部屋をゆっくり見渡す。飛び出した五年前とちっとも変わっていない。
>「一応五歳の時から十年間ほどいた」
こんなところで他人の話を持ち出すのは失礼なような気がしますが、
『なゆたさん』の所のゼルガディスは「両親が死んでからは部屋の中のものを一切入れ替えていない(つまり、寝てただけ)」だそうですが、ねんねこさんの所のゼルガディスはどうですか?
(このあたりの話は『許されざる9』に載っています。まだなら「著者別リスト」にありますので読んでみてください。
ただし、この物語は「贖罪の時」の続編です。またオリキャラも「贖罪の時」と同じ方が出ていますのでそちらから読まれると理解しやすいと思います。長いですけれどもね。)

>「……あれ、お母様のお手製でしょう?」
さすが女の子。よく解ってますね。

>「子供を愛さない親はいないよ」
> 彼女の髪を優しくなでてやる。
> 昔、自分が祖父にそうしてもらったように。
>「親は子供が元気に育ってくれればそれでいいんだ。
> 親は子供を守れればそれで幸せなんだ。結果、自分が犠牲になっても。
> だからアメリアが無事でお袋さん、笑ったんだ。最後まで幸せだったんだ。アメリアには、笑ってもらう資格はちゃんとあるんだよ」
両親のことを知ったときにレゾから聞いたんでしょうね。レゾもいい人だったんですね。昔は・・・。
> 彼はぼやいた。
>「……冗談しか言わないじーさんだったよ」
そういえば、TRYの時に某雑誌が「ゼルガディスがレゾに似てきた」と書いていましたが。こういうところ(素直じゃないところ)のことでしょうか?

>「ゼルがディスさん、今はそーでもないけど、小さい頃は可愛かった、ってクラヴィスさん言ってました」
>「あいつは……今も昔も可愛くなかった。口が悪いわ、人のこと玩具にするわ」
みんなの玩具だったんですね。(クラヴィスとレゾと・・・。)

> ゼルガディスは微笑んだ。アメリアですら見たことがなかったとても優しくて心が温まるような笑み。
いいですね。そんなゼルガディスが見られるなんて。


> 自分の唇を近づけようとして、ゼルガディスは視線を入り口に向けた。
> 少し開いたドアの隙間。興味津々で見つめるクラヴィスの姿。
行動は読まれてますね。

>『向こう行ってろ』と目で合図すると、彼は肩をすくめ、手にしたフライパンを見せて立ち去っていく。
>『さっさと降りてこい。飯が冷める』
やっぱり気になりますよ。料理人は。

それでは続きを楽しみにしています。

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4088蒼き石、赤き竜 6ねんねこ 8/23-20:31
記事番号4056へのコメント

ねんねこです。続きを書きます。ちょっと死にかけです。タイトルと内容がかみ合わなくなっていることに今更ながらに気付きました。乾燥かいてくださった方、ありがというございます。お返事はまた今度、必ず書くので少しばかり待ってやってください。では、どうぞ。


「姫君を取り逃がしたそうだ。とんだ邪魔が入ったらしい。無様だったぞ。呆れを通り越して笑いがこみ上げてきた。全員始末してやったが」
「邪魔? クラヴィスか?」
「ああ。それに懐かしい顔がもう一人増えた」
「誰だ?」
「出来そこないの『後継者』。ゼルガディス=グレイワーズさ」
「……なるほど。この場所なら潜伏先は確実だな」
「ああ。時間もない。感動の再会といこうじゃないか? アドニス」
 言われて、アドニスはにやりと笑った。

『月の鏡に汚れなき者涙を捧げ、誓いの言葉紡ぐ時、赤き竜、混沌より現れ、神聖なるその力を持って楽園へと誘うであろう』
 ゼルガディスは、庭の芝生の上に寝転がって、月を眺めた。ほとんど満月に近い月。
(月の鏡……本当にマジック・アイテムが関わっているのか?)
 自問する。
(赤き竜……神聖な力をもってという言葉から……竜神スィーフィードかもしれない)
 赤き竜神スィーフィード。
 はるか五千年の昔、赤眼の魔王シャブラニグドゥと戦い、魔王を七つに封印し、四つの分身を生み出した後、混沌に沈んでいったというこの世界の神。
 一人で考え込むゼルガディスを窓から眺め、アメリアはぽつりと呟いた。
「……ゼルガディスさん、何してるんでしょう……月とにらめっこなんかして」
「あ? ああ、あれ? ほっとけほっとけ。いつも何か悩むとそこでそーやって寝っ転がって、月眺めんだ。で、次の日風邪をひく」
「はぁ……」
 アメリアは曖昧な返事をして、クラヴィスから受け取った皿を拭く。
 アメリアとクラヴィスは屋敷の中の台所で夕食で使った食器の片づけをしていた。クラヴィスは一人でも平気だと言ったのだが、アメリアが『一応わたしも女の子ですから』と押し切ったのだ。
「何悩んでるんですか?」
 尋ねる彼女にクラヴィスは窓の外を見る。一人であの魔道書について考え込む親友の姿を見て、嘆息する。
「一つ意見を聞きたいんだけどさ」
 クラヴィスはアメリアに魔道書に書かれたあの一文を言う。
 アメリアが不思議そうに首をかしげた。
「どう思う?」
「どう思うって……何がわからないんですか?」
 アメリアの言葉に外にいたゼルガディスが言う。壁一枚はさんだだけであまり距離は離れていない。ゼルガディスの声はよく聞こえた。
「全部なんだよ。月の鏡って何だと思う?」
 アメリアは、窓の外、空を見上げて即答する。
「満月でしょう」
『…………は?』
 あっけらかんとした答えにクラヴィスとゼルガディスは間の抜けた声をあげた。

「昔、母さんから聞きましたよ。満月の形を鏡とみなして昔の人は月の鏡と言ったって。ライゼールに同じ名前に鏡があるって話も聞いたことありますけれど、ろくな物じゃないって王族の間じゃ結構有名な笑い話ですよ」
 広間で香茶をすすりながらアメリアは言った。
 隣ではやはり紅茶をすすり、苦い顔をしているゼルガディスの姿。てには書き写したメモがある。
「……とすれば、この文章は満月の日にその石に向かって、誓いの言葉とやらを唱えれば何かが起こるってことを言ってるってことか?」
 アメリアが頷いた。
「多分そうでしょうね。この石、普段は蒼いですけど、満月の晩だけ紅くなりますから」
「オレとゼロスの食い違いも納得したな」
 クラヴィスの言葉にゼルガディスが頷いた。
「問題は何が起こるか、だな」
「何が起こるか分からないのに使う気しませんからね」
 アメリアが憂鬱そうに呟く。
「やっぱりあの黒ずくめたちに聞いてくればよかったな。指一本ずつ切り落としてったら、なんか教えてくれたかもしんないし」
『……………』
 ぱたぱたと手を振りにこやかに笑いつつ平気で恐ろしいことを言う相変わらずのクラヴィスをゼルガディスとアメリアは唖然として見つめた。

「どけ、クラヴィス」
 この屋敷で過ごした数年の間、自分のものとして与えられたベッドの上でその言葉を聞いたクラヴィスは、目の前に立っているゼルガディスをただ呆然と見た。
「……はい?」
「聞こえなかったか? どけって言ったんだ。ここで寝る」
「ち……ちょっと待てよ。悪いけどオレ、そーいう趣味は……」
 うろたえまくりながらクラヴィスがしどろもどろに答える。彼が何を考えているのかなんとなく察したゼルガディスは、そのままクラヴィスをベッドの上から蹴り落とした。床に転がったクラヴィスが、鼻を押さえて立ち上がった。きっと、顔から落ちて、鼻を打ったのだろう。
「ってえ! 何しやがる!?」
「変な勘違いしたお前が悪い。悪いが違うところで寝てくれ。ほら向こうのベッドなんかいい感じだぞ」
「なんで!?」
「アメリアが俺の部屋で思いっきり爆睡してやがんだ! 俺に自分で殺した仲間が使ってたベッドで寝ろってのか!? そんなことして夜中に悪霊に殺されたら、真っ先にお前のこと呪い殺すぞ!?」
「うわ、お前すっげーわがまま」
「わがままで結構。今更何を言われても開き直るぞ、俺」
 言うだけ言って、ゼルガディスはさっさとクラヴィスが使うはずだったベッドにもぐりこんだ。
「ったく。お前、レゾに似てきたぞ」
 ぶちぶち言いながら、クラヴィスはしぶしぶ近くのベッドに移る。
 ゼルガディスはクラヴィスの台詞に顔を枕に鎮めた。
「どーせ、根はお茶目だとか言いたいんだろ。そんなの何度リナたちに言われたことか……いーんだ、どーせ……」
(あ、拗ねてるし……)
 ぐちぐちと拗ね続けるゼルガディスをしばらく眺めてみた。相当リナたちと旅した間に色々と言われたらしい。
 一通り黙って聞いてやって、クラヴィスは話を切り出した。
「なあ、ゼル」
「何だ? あんまりくだらないことだったら、殴り倒してそのまま外に放り出すからな」
(……お前の愚痴はくだらなくないのかなー……)
 ふとそんなことを思いつつ、クラヴィスは頭を振って言った。
「セイルーンで、あの魔道書を解読したのは誰だと思う?」
 ゼルガディスは頭を上げて、顔をクラヴィスに向ける。クラヴィスは肩をすくめてからベッドに寝転がった。
「ただの好奇心さ。見事な奴だと思わないか? 数年前のお家騒動で慎重に構えたセイルーンで、堂々と行動起こすなんて相当な人物だぜ。プロと見たぞ、オレは」
「……お前にそこまで言わせる奴なんて、この世界に数えるしかいないだろ」
「へー。俺の腕を信用してくれてるんだ? ゼルガディス君は?」
「聖職者としてのお前はともかく、情報処理の腕と暗殺術を使いこなすお前の戦闘力はとりあえず信頼してるよ。とりあえずな」
その言葉にクラヴィスは微笑んだ。
「それはどーも」
 ゼルガディスは近くの窓から月を見る。
「最初の満月は明日、ってところだな」

「おはようございます。ゼルガディスさん、クラヴィスさん」
「ラ・ティルト」
 突然現れた黒い神官にゼルガディスは迷わず呪文を発動させた。黒い神官は慌てて空間を渡り、難を逃れる。
 香茶が入ったカップ片手にちっ、と舌打ちするゼルガディスにゼロスは非難の目を向けた。
「朝から物騒な方ですね……何するんですか、いきなり」
「ほとんど毎日アメリアに会ってたそうだな。そのお礼だ。少し足りないが」
(お礼じゃなくて意趣返しの間違いだろ……)
 近くのテーブルの席について、クラヴィスがツッコミを入れる。決して口には出さない。寝起きで不機嫌な彼にその場にそぐわないツッコミを入れることは自分の寿命を縮めるだけだと分かっているからだ。
 代わりにゼロスに尋ねる。
「何のようなんだ?」
 クラヴィスの問いにゼロスは思いついたようにぽん、と手を打つ。
「アメリアさんにお会いしに来たんですけど……森で迷っちゃいましてねぇ。はっはっはっ」
 本当は笑い事で済む状態ではなかったのだが、とりあえずいつもの笑みを浮かべてみる。
 ゼロスの真意を知ってか知らずか、ゼルガディスは少し驚いた感じで言った。
「……レゾは人間はもちろん、竜族や魔族、全てにおいて遮断するために『迷いの森』にしたんだ。よく出てこられたな」
「い……いやぁ、はっはっはっはっはっ」
 ゼロスは笑う。が、額に浮かぶ一筋の汗をゼルガディスもクラヴィスも見逃さなかった。
「ところで、アメリアさんは?」
「……爆睡中だ。もう少し起こさないでおいてやれ。疲れているようだから」
 ゼルガディスの言葉にゼロスは安堵のため息をついた。
「よかった。寝てもらってなきゃいけない用事なんですよ」
「何の用事だっ!?」
「それは秘密です♪」
 言ってすたすたと歩いていく獣神官。
 広間の奥に向かって進み、身体を宙に浮かせる。
 座って傍観していたゼルガディスとクラヴィスは慌てて席を立った。
 ゼロスを見習い、浮遊の術で二階にあがり、まっすぐアメリアのいる部屋に入ろうとするゼロスの首根っこをかろうじて掴むとゼルガディスはできる限りの小声で尋ねた。アメリアが起きないように。
「何でお前アメリアの場所が分かったんだ!?」
「嫌だなぁ、そんなの決まってるじゃないですか。石の魔道波動を追ったら分かるでしょう?」
「なんで波動なんか知ってんだよ!?」
「色々ありましてねぇ。あの、放してもらえませんか?」
『ダメ』
 ゼルガディスとクラヴィス、同時に言われてゼロスは沈黙した。嘆息して、ぴっ、と人差し指を立てた。
「じゃあ、ゼルガディスさんもクラヴィスさんも一緒に同伴ってことでは?」
 言われて二人は顔を見合わせた。意見が同じことを察するとゼロスに向かって一つ頷いて見せた。

「ほぉぉ、可愛い寝顔しちゃって。お前みたいだな、クマごろうのぬいぐるみ」
「……クマごろうはよせ……」
 ゼルガディスは引きつったこめかみを押さえて呟く。さすがに母親の形見に『クマごろう』の名前はお気に召さなかったらしい。
 そんな二人の間にいたゼロスがあごに手を当て、感嘆の声をあげる。
「ほお、アメリアさんなかなかやりますねぇ」
「何が?」
 クラヴィスの問いにゼロスは寝息を立てているアメリアを指差した。
「ぬいぐるみとはいえ、クマの首を絞めるなんてなかなか残酷でしょう。彼女、結構魔族にむいてますよ」
 ゼルとクラヴィスはため息をつき、首を横に振ると片方ずつゼロスの方に手を置いて、同時に、
『抱きしめている』
 と、訂正した。
「……で、何のようなんだ? さっさと済ませよ」
 ゼルガディスの疲れた声にゼロスは思い出したように言う。
「あ、そうでしたそうでした」
 ゼロスは辺りを見渡し、目的のものを見つけると、静かに近寄っていった。
                             ≪続く≫

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4089蒼き石、赤き竜 7ねんねこ 8/23-20:32
記事番号4088へのコメント


「おはよーございます」
 未だ眠い目をこすりつつ、アメリアが部屋から出てきたのは、三人が出てからしばらく立ってのことだった。
 やけに神妙な顔つきのゼルガディスとクラヴィス、そして昨晩までいなかったはずのゼロスにアメリアは少し首をかしげた。
「……どうしたんですか?」
 彼女の問いに答えたのはクラヴィスだった。ぱたぱたと手を振り、笑う。
「いやいや、なんでもないんだよ。
 ただ、ほらちょーっとこの二人仲悪いだろ? ちょっちぎすぎすした空気が漂っててさぁ。
 それよりお腹すいてるだろ? サンドイッチ作ったから、少しそこまでピクニックに行かないかい? こんな馬鹿どもは放っておいてさ」
 言って、クラヴィスは意味ありげな視線をゼルガディスに送る。彼の意図することを理解して、ゼルガディスは嘆息した。こういう演技は苦手ではない。
「行ってこいよ、アメリア。帰ってくるまでにこの陰険魔族と決着つけておくから」
「おやおやゼルガディスさん。僕に勝てるとお思いで?」
 仰々しくてを広げ、ゼロスは言った。どうやらこちらも納得してくれたらしい。
 困惑した表情のアメリアのところまでゼロスは空間を渡ると、肩からかける鞄から袋を取り出す。
「セイルーンに行ったらフィリオネルさんに見つかってしまいましてね。アメリアさんを見つけたら、これを渡してくれ、と頼まれちゃいました」
「とうさんが?」
 言われて、受け取る。中身を見れば、いつもの法衣が入っていた。
 ゼロスが微笑んだ。
「着替えてきてはいかがですか? いつまでもその格好というわけにもいかないでしょう」
 ゼロスの言葉にアメリアは同意した。クラヴィスも彼女に言う。
「じゃあ、着替えている間に用意しておくね」
「分かりました」
 アメリアは返事をして部屋の中に戻っていく。
 扉の閉まる音を確認して、三人の口からため息が漏れる。
 二階の廊下から戻ってきたゼロスとソファーに座るゼルガディスに目を向けて、クラヴィスは言った。
「じゃ、後は頼んだぞ」

 用意の出来たクラヴィスとアメリアが屋敷を出たのを近くの窓から確認して、ゼルガディスはゼロスに目を向けた。
「……で、どういう細工なんだ?」

「あ、そうでしたそうでした」
 ゼロスは辺りを見回し、ベッドサイドのテーブルにおいてあるペンダントを見つけて静かに近寄った。ペンダントを手に取ると、懐からまったくよく似たペンダントを取り出し、それをテーブルの上に置く。
「何するんだ!?」
 あくまで小声のゼルガディスの言葉にゼロスは部屋の扉を指差した。
「用事は終わりましたから、話は外でしましょう」
「何の目的でそんなことするのかしっかり話せよ」
 クラヴィスが念を押すとゼロスはもちろん、というように頷いた。
「ええ。今回はあなたがたにも協力してもらいますからね」

「で?」
 広間に戻り、ソファーに腰をかけてゼルガディスは話を促した。
 ゼロスはソファーに座る二人の前に立ち、いつも笑って閉じている目を開けた。ゼロスが真面目になる証拠だ。
「僕はお二人と別れてから獣王様にアメリアさんのペンダントについて報告しました。
 そして、命令を下されました」
「命令?」
「ええ。命令は二つ。一つは、ペンダント……というよりこの石のことを知り、手に入れようとしている人間の抹殺。そしてもう一つが」
 ゼロスはちらり、とアメリアのいる部屋を見る。
 人が出てくる気配がないことを確認すると、静かに続けた。
「石の消去です」
「消去? 何で魔族がそんなことをするんだ?」
 ゼルガディスの問いにゼロスは肩をすくめた。
「この石は、ある意味クレアバイブルの写本と一緒です。この石……人間や竜族は『女神の涙』といっていましたか。これは本来存在してはいけないものなんですよ」
「存在してはいけないもの……?」
 クラヴィスの言葉にゼロスは静かに頷いた。

 すべての話は五千年前にさかのぼった。
 魔王を七つに分け封印したとはいえ、四つの分身を残して混沌に帰っていった竜神スィーフィード。
 残された四つの分身と竜族たちはあせった。七つに分けられたとはいえ、所詮封印という形で眠った魔王。その魔王の欠片が何かの拍子で目覚めてしまうかもしれない。一つ復活してしまえば、互いに共鳴し合い、七つ全てが復活してしまうかもしれないという恐れがあった。
 そして、完全体の魔王と互角に渡り合える竜神は混沌へ沈んでしまった。
 焦りを感じた四つの分身たちと竜族は長い時間をかけ、一つのマジック・アイテムを作り出した。
「それがこの石です。一応、千年前まではちゃんとした手順を踏めば発動したみたいですよ。発動したことはありませんでしたが」
 ゼロスは肩をすくめた。
 作ったこの石『女神の涙』は、四つの分身を一つにまとめる、という働きをするらしい。
 魔族がそれを知ったのは、冥王が一人の魔道士に魔王が眠っていると気付いた時だった。
 魔族は四つの分身がまとまり、スィーフィードと同等の力をもつ存在が再び現れることを恐れ、カタートで魔族を監視していた水竜王ラグラディアに一気に攻め込んだ。
 結局、魔族の結界に阻まれ、助けにいけなかった三つの分身と竜族は石を使わずして水竜王を失い、魔族たちも、魔王の一つをカタートに氷漬けにされた。
 これが、人間たちに降魔戦争といわれる戦いである。
「石は、存在する意味をなくしました。水竜王は滅び、分身は三体になってしまいましたからね。まとめて一つにしようとしても本来のスィーフィードの四分の三の力しか持ってませんから。下手にまとめて魔王様に滅ぼされては向こうとしては泣くに泣けないでしょうし」
 そこで、竜族たちが考えたのが石の魔力増幅だった。
「リナさんに差し上げたデモン・ブラッドみたいな立派なものではありませんが、まあそこそこ魔力増幅は可能みたいですね。
 竜族は更にもう一つ細工を施して、セイルーンに預けました」
「細工?」
 クラヴィスの問いにゼロスは呆れた顔をして見せた。
「はい。竜族らしい考えですよ。つまり――」
 言いかけてふとゼロスは上を見た。
 ちょうど部屋から目をこすりつつアメリアが出てくるところだった。

「依り代!?」
 ゼルガディスの言葉にゼロスは頷いた。
「魔力が特に高まる満月の晩、石の魔力増幅機能を使うと人間でも魔力は飛躍的にアップします。その間に混沌に沈んだ竜神を引っ張り込むんです」
「可能なのか!? そんなこと!?」
「理論的には。
 ただ、当たり前のことですけれど、これは一種の召喚魔法です。魔力をそれなりに使います。魔力は元をたどれば精神力、生命力ですから、まぁ使えばかなり生命力の消耗をするでしょう。
 ちなみに竜族でも危ういくらいですから、人間ならまず間違いなく死にますね」
 さらりと言うゼロス。ゼルガディスは何とか声を出す。
「……意味、なくないか……? それ」
「『我は汝の力を求める者
 我は汝、汝は我。
 今、ここに我すべてを捧げ汝を導かん』
 必要なのは、竜神の魂を受け入れる身体<うつわ>ですよ」
 故に汚れのない身体が不可欠だった。
「魔道書にあったでしょう。『楽園へ誘う』。あれは、あっさり言えば死ぬ、ということです。
 竜族らしい考えだとは思いませんか?
『魔族に勝つためには多少の犠牲はやむを得ない』なんて」
 言われてゼルガディスは黙る。
 数ヶ月前巻き込まれた死闘。
 元をたどれば協力を拒んだ古代竜族を黄金竜族が『多少の犠牲』で滅ぼしたのが原因だった。
「竜族も、さすがにこんなに大きいリスクを背負うつもりはなかったんですね。
 理論的に可能とは言っても実践で可能ということと同値にはなりませんからね」
「……もういい」
 ゼルガディスが首を横に振った。ゼロスは無視して続ける。
「だから被害の少ない……もちろん自分たちにとってですが……人間に預けた。
 いつか……そうアメリアさんのように魔力が普通の人間よりも大きい……」
「もういいっ!」
 ゼルガディスはゼロスの胸倉を掴み上げた。
「もういい、わかった! それ以上言うなっ!!」
 それ以上言われたら不安で押しつぶされそうだった。
 もしアメリアが何も知らずに使っていたら。
 もし自分たちの間違いで彼女に使わせていたら。
 彼女は死んでいたかもしれない。
 もう一つのあるかもしれない未来。
 胸倉をつかまれたゼロスが不安の渦から彼を呼び戻す。
「ゼルガディスさん」
「……なんだ?」
「ご馳走様でした。結構美味しかったです」
 ゼルガディスは無言で自分の負の感情を食った魔族を床に叩きつけた。
 ゼロスが泣きまねをして見せた。
「ひどいっ! ゼルガディスさんっ!」
「やかましいっ!」
 言って床に転がるゼロスを蹴りつける。それをひょい、とかわし、ゼロスは立ち上がった。
「まぁ、竜神召喚の予防策はしておきましたし、ひとまずは安心、というところですかね」
 言って懐から石を取り出した。
 蒼い光を放つ本物の『女神の涙』を。

 外は暖かな日差しが気持ちよかった。
 いつか、ゼルガディスと共に夢中で模型飛行機を飛ばしたあの野原に寝転がって、クラヴィスは空を見上げた。
 こうのんびり過ごすのは嫌いではない。状況が状況なだけに、そうのんびりもしていられない気もするが。
 身を起こして、連れの少女を見る。
 アメリアはサンドイッチを頬張っていたが、クラヴィスと目があうとにっこり笑った。
「おいしいです」
クラヴィスは微笑んだ。
(まるで妹が出来たみたいだな……少々手のかかる妹になりそーだけど)
 まぁ、弟のような親友ほど手はかからないだろうが。
「そういえば……クラヴィスさんって結構すごいんですね」
「なにが?」
「体術ですよ。結構かっこよかったですよ」
 カップに注がれた紅茶を飲み干してアメリアは言った。
「ああ、一応腐っても自覚がなくても神官だからね。剣は持ち歩けないだろ?」
 神に使える神官や巫女は普通、無益な殺傷はしてはならない。
 ……思いっきり問答無用で悪人を張り倒したり、花嫁修業と称して黒魔術を使ったり、鈍器を振り回す常識はずれな者たちも中にいるが……それはおいておくとしよう。
「でも一応ほとんどの武器は扱えるんだよ。とりあえず、レゾの元にいた時はあらゆる戦闘方法を学んだから。とはいってもさすがに剣はゼルに負けるけどね」
 ゼルガディスがクラヴィスの暗殺術を用いた戦闘力に信頼を寄せているのと同様に、クラヴィスもまたゼルガディスの戦闘力を信頼していた。口には決して出さないが。
 クラヴィスの答えにアメリアが感嘆の声をあげる。
「オレからも一つ聞いてもいい?」
「何ですか?」
「アメリアちゃんがその形見をつけ始めたのはいつ頃?」
 少し考えてアメリアは答えた。
「なんだかんだ言って王宮にはあまりいなかったですから……本格的につけ始めたのはつい最近ですよ」
「……そうか……」
(ってことは敵さんが本物だと気付いたのもつい最近ってことか)
「何でですか?」
 尋ねてくるアメリアに、とりあえず微笑んで、クラヴィスは視線をまっすぐ前に向けた。
「いやね。何でアメリアちゃんのつけていたほうが本物だと分かったのかな、って思って。普通の一般人や城の人間じゃ、秘宝の事は知らないだろ? 何で知らないのに、君がつけたのが『本物』だって分かったのか、それが不思議でね」
「そういえば……そうですね。手紙も直接わたしの部屋においてあったし。普通なら侍女が持ってくるのに……」
 アメリアも考え込む。
 数分たって彼女は思い出したように言った。
「そういえば、前の満月の夜、偶然あった大臣に『レプリカなのに凝ったつくりですね』って言われたことありました。
 今思えば、何であの人レプリカだって知っていたのかしら……?」
「大臣……? それって、フィル殿下が魔道書を解読させようとしてあの部屋に連れて行ったんじゃないのか?」
「でも、魔道の心得はないって言ってましたし、セイルーンに来たばかりだったから父さんが入れるわけないですよ」
 クラヴィスの言葉にアメリアが反論した。彼女の言葉に彼は少し目を見開く。
(まさかあの部屋に忍び込んだ……? あの厳重な見張りをかいくぐって!?)
 セイルーンの秘宝が置いてある部屋へと続く廊下。厳重に見張りがつけられていた。もし、少しでも見つかれば、城中大騒ぎになって彼女の耳にも届くだろう。彼女の口からその言葉が出ないということは、なかったのだ。そういうことは。
 だが、現にその大臣は部屋に入らなかったのに秘宝のことを知っていた。
「アメリアちゃん。その大臣の名前は!?」
「え……えと、バロック。バロック大臣です」
 聞いたことのある名前だった。
 かつて仲間だった男がよく使っていた偽名。
(くそっ。マジでプロだぞ!?)
 クラヴィスは慌てて荷物をまとめだした。怪訝な顔をしているアメリアに一言告げる。
「ゼルのところに戻る。一刻も早くここから出るんだ!」
                         ≪続く≫

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4090蒼き石、赤き竜 8ねんねこ 8/23-20:34
記事番号4089へのコメント


「いいか、お前ら。裏の世界で仕事する時は必ず偽名を使えよ。本名なんぞ使ったら一発で手配されるからな」
 クラヴィスの仲間であり、戦闘術の師匠でもあるアドニスがまだ幼さが抜けない少年二人に向かって言った。クラヴィスとゼルガディスは顔を見合わせる。
「偽名だってさ。どうするの? クー」
「他人事のよーに……なぁ、ノヴァ。あんたはどんなの使ってんだ?」
 言われてノヴァが鋭い視線をこちらに向けてきた。アドニスを一方的に嫌っている彼としては、口も利きたくないというところなのだろう。が、視線を読んでいた本に戻し、ぽつり、と呟く。
「……色々あるが、よく使うのは『バロック』だ」

 全てが一致していた。
 セイルーンで大臣をしていたバロックの特徴と、彼が知っているレゾの下で働いていたノヴァの特徴が。
 野原から屋敷に戻る道を走りながらクラヴィスはかつての仲間を思い出した。
 死んだと思っていた。ゼルガディスを化け物扱いして自業自得で殺されたのだと思ってた。
(生きてたなんて……)
 すべてを聞いたアメリアが尋いてくる。
「でも、バロック……ノヴァって人がどうしてここにくるなんて断言できるんですか?」
「オレがいるからだよ。オレがパーティーで思いっきり目立ったんだっ! あいつが大臣やってたなら絶対オレを見てるはずだ!」
「……何したんですか……?」
「何にもしてないっ! 君の代わりをしていたゼロスが俺のところに来たんだよっ! 嫌でも目立つぞ、あれは……」
 言いかけて、突然クラヴィスは上を見上げた。
 突如生まれるいくつもの光の球。
 悲鳴を上げようとする自分を押し込めて、早口で呪文を唱える。親友から預かった大事な想い人の手を掴み、自分に極力近づけて、力ある言葉を放つ。
「グームエオンっ!」
 ぎゅういんっ!
 風を切る音と共に魔力障壁が彼らを包む。その一瞬後、すさまじい爆音と衝撃に二人は思わず目をつぶった。
 最初に異変に気付いたのはアメリアだった。
 上を振り仰ぎ、声をあげる。
「クラヴィスさんっ!」
 慌てて上を見上げる。
 相変わらずの爆音と衝撃。光にまぎれて、だんだんと大きくなる黒い影。
(陽動かっ!?)
 舌打ちして構わずアメリアを突き飛ばして自分から離す。自分がいると知られている以上、厄介な自分から始末するだろうと考えたからである。
 アメリアがクラヴィスを見やれば、上から降りてきた人間が彼の両腕を掴み、巧みに拘束しているところだった。
 身動きが取れない状態でクラヴィスは苦虫を噛み潰したような表情でうめく。
「アドニス、てめぇもか」
「久しぶりだなぁ、クラヴィス」
 どこか楽しげにアドニスは言った。クラヴィスの両腕を掴む手に少し力を加える。
 細い腕の骨が軋む音がして、クラヴィスは小さくうめいた。
「クラヴィスさんっ!」
 叫ぶアメリアの前にもう一人、別の男が立ちはばかる。見たことのある顔だった。
「バロック大臣……」
 偽名を呼ばれて、バロック――ノヴァは優雅に一礼した。
「いやあ、探しましたぞ、姫君。さぁ、私と一緒に参りましょう」
 同時に差し出されたノヴァの手横から勢いよく払いのけ、アメリアはびしぃ、と指差した。
「セイルーンに入り込み、秘法を我が物としようとした悪人バロック、いえノヴァ。セイルーンの名において、このアメリアが成敗します。覚悟なさいっ!」
 その言葉にノヴァが嘲笑した。後ろでアドニスの笑い声を聞こえる。
「はっ! たかが一国の王女が、わたしを成敗とはな」
「たかがですって!?」
 アメリアが青筋を立てた。
 確かに自分は一国の王女だ。だが、体術、魔術共に並みの人間より使えると自負している。高位の魔族と張り合って、生き延びてもいる。
 そして『たかが』といわれて黙ってられるほど、彼女は人間が出来ていなかった。
「その無意味な自信、この手で打ち砕いて見せるっ!」
 彼女の言葉にクラヴィスが叫んだ。
「無理だっ! 逃げろっ!!」
 アドニスが顔をしかめた。更に手に力を入れる。
「さすがだな、クラヴィス。こんな短時間でもう姫君をたらしこめるとは」
 嫌味たらたらのノヴァの台詞に、クラヴィスは鼻で笑った。
「はっ! 他人の女に手を出す趣味なんざ俺は持ってねぇ。
 それよかあんたもよくやるな、ノヴァ。
 レゾが死んで、何してんのかと思えば、あんだけ毛嫌いしていたアドニスの馬鹿と組んで宮仕えか? ご苦労なこったよ!」
「口先だけは立派だな、クラヴィス。こっちには人質がいるんだぞ」
 ノヴァが視線を動かす。その先にはアメリアの姿。
 状況は最悪だった。
 身動きの取れない自分。今にもノヴァを張り倒しそうな勢いのアメリア。ゼルガディスとは連絡が取れないので、援軍も期待できない。
 それに対するノヴァとアドニス。
 レゾの下で働いていた男たち。
 確かにアメリアは一般人より、並みの兵士、魔道士、剣士より数段強いだろう。だが、それはあくまで堂々と正攻法で戦った場合だ。暗殺術を得意とする二人を相手に戦えるかといえば、答えはわかりきっていた。
 無理である。
 石を使うには、汚れなき者が必要のはずだが、それだけの理由で彼らが彼女を助けるとは考えにくかった。むしろ、彼女を消して(もちろん自分も含めてだが)この事件に彼らが関わったことを闇に葬ってしまった方がはるかに都合がいい。汚れのない者など、世界にたくさんいるのだから。自分たちの目的のために人一人誘拐することなど、彼ら――特にノヴァには造作もないことだろう。
(くそっ! ダメもとだっ!)
「アメリアっ!」
 彼女を呼び捨てにし、クラヴィスは必要なことだけ叫んだ。
「ゼルのところにもどれっ!」
 彼女の顔に浮かぶ戸惑いの色。
 他人を犠牲にしてまで、自分が逃げてもいいのか。
 迷っている。
「でも……」
「いいからっ! 早くっ!」
 彼女の反論を問答無用で押し込める。未だ戸惑いの色を隠せない表情を浮かべていたが、彼女は駆け出した。
 背中を向けるアメリアに向かってノヴァは懐からナイフを取り出し――
「させるかっ! フリーズ・アローっ!」
 身振りのいらない呪文を唱えて、ノヴァの注意を一瞬アメリアからそらした。難なく避けられて、アメリアを方を見やれば、彼女は少しはなれて全力疾走していた。
 舌打ちして、ノヴァが追いかける。
 それを阻止しようとして、クラヴィスは再び呪文を唱えようとして――
 ぼぎんっ!
 鈍い音と共にクラヴィスの断末魔のような悲鳴が響き渡った。

「――――っ!?」
 ぱきぃんっ!
 紅茶を入れたポットが手から落ちて、床で派手な音を立てた。床に流れる紅茶を気にもとめずにゼルガディスは広間へと向かう。と、途中で慌てて彼のもとにやってきたゼロスと鉢合わせした。
「ゼルガディスさんっ!」
「ああ、間違いない」
 頷いて、二人は玄関に向かう。
「クラヴィスの声だ」
「お二人とも、どこへいったんでしょうか……」
 ゼロスが珍しく途方にくれた声を上げた。無理もない。辺り一面魔族でさえ迷う『迷いの森』。無理にでも探しにいこうとすれば二人にあえないどころか自分も迷う。
 が、ゼルガディスは迷うことなく歩き出した。
「ゼルガディスさん?」
「こっちだ」
 肩越しに振り返る。声と藍青の瞳には自信があふれている。
「ピクニックにちょうどいい野原があるんだ」

 止まれない。
 アメリアは森の中を駆け抜けた。どういったらいいのか分からないので、ただ闇雲に走った。そろそろ屋敷についてもいい頃合なのだが、何も見えてこない。視界には、果てしなく続く木々のみ。
(迷ったのね。迷っちゃったのね、アメリア)
 何故か他人事のように思う。
 でも、止まれない。
 止まればきっと――
 彼女は不意に横に跳んだ。今まで走っていたところに数条の光の矢が通り過ぎる。
(絶対、殺す気だわ……)
 考えるだけでもぞっとして、アメリアは少し方向を変えて、前に向かって走っていく。
 彼女は走りつづける。
 止まることは出来ない。

 ゼルガディスとゼロスが走り始めて数分が経過したころ、彼らは地面に転がる二つの人影を見つけた。
 そのうちの一人。
 長い黒髪。白い服。
「クラヴィスっ!」
 慌てて駆け寄る。名前を呼ばれたのが聞こえたのか、クラヴィスは青ざめた顔をして、頭だけ動かした。
 近くに転がったもう一人はゼルガディスも知った顔だった。が、今は無視してクラヴィスを起こした。
 息が荒い。顔も青ざめている。
 弱々しい笑みを浮かべて、クラヴィスが呟いた。
「……悪ィ……ゼル……」
「何がだよっ!?」
「お前との約束……このままじゃ果たせそうにない……」
「何言って……!」
 ゼルガディスは自分の身体が冷えていくのを感じた。死に対する恐怖だと、ゼルガディスは自覚していた。
 思わず涙が込み上げる。
「なぁ……約束してくれ……」
「……何を言って……」
「アメリアちゃんと……幸せに……」
「なるっ! なるからっ……」
 死ぬな。
 そう言おうとして、ゼルガディスは止まる。目の前のクラヴィスの顔が変化していたからだ。血の気のひいたような青白い顔は変わらないが、顔に浮かぶのはしてやったり、というような笑み。
「……クー?」
 思わず一時期使っていた呼び名で呼ぶ。
 クラヴィスは確認するように言った。
「言ったな。『アメリアちゃんと幸せになる』って言ったな」
「………………クラヴィス。お前、どこを怪我したんだ? 出血が無いようなんだが」
 冷静になってぽつりと呟く。
 クラヴィスはうむ、と頷くと、
「左腕を骨折だ……ゼル、お前に多くは望まないがリカバリイくらいは使えないか? こうも痛いとなかなか精神集中が出来なくてな」
「……そうか」
 答えになっていないような返事をすると、ゼルガディスはクラヴィスを地面に下ろした。変な方向に折れ曲がった腕を静かに引き寄せ――
 おもむろに立ち上がり、その腕の真上に片足を上げる。さすがにクラヴィスが慌てた。
「お…おいちょっとま……」
 ふみ。
「てうんにょわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 冗談ではなく本気で涙をぼろぼろと流しつつ、クラヴィスはあらん限りの声で意味不明な声を発した。
 それを無視し、何度かゼルガディスは腕を踏みつける。
 思いっきり。
「お・の・れ・はぁぁぁぁぁっ! しょーこりもなく人をからかいやがって! いっぺん死んでみるかっ!? 殺したじーさんが三途の川で手招きしてっぞっ!」
「ひにゅにょえぇぇぇぇぇぇっ!」
 呆然として二人の茶番を見ていたゼロスが我に返った。げしげしとクラヴィスの腕を踏みつけるゼルガディスをどかし、彼はクラヴィスの胸倉を掴んでかっくんかっくん振り回す。最後のとどめとばかりにクラヴィスは本気で朦朧とした意識の中にお花畑を見たような気がした。
 ゼロスはそんなクラヴィスに叫ぶ。
「アメリアさんはっ!? アメリアさんはどうしたんですかっ!?」
 その言葉にクラヴィスはかろうじて意識を取り戻し、無事な右腕でゼロスを振り払った。
「……アメリアちゃんは敵さんと追いかけっこ中だ。やっぱりダメだったか。都合よくはいかないもんだな」
 静かに言うクラヴィスにゼルガディスは無視していたもう一人に目をやる。
 身体のあちこちから血を流し、こと切れているアドニス。
 クラヴィスはゼルガディスを無言で見上げた。
 ゼルガディスは嘆息する。
 クラヴィスの悪癖だ。
 怒りが頂点に達すると場にそぐわないおちゃらけをする。
 ゼルガディスはクラヴィスの近くにしゃがみこむと静かにリカバリイを唱え始めた。そして釘をさす。
「キレるなよ。おまえがキレるとシャレにならないからな」
「もう遅い」
 きっぱりとクラヴィスは断言した。
「絶対あいつを殺してやる」

 森の中で爆音が響く。
 派手な魔法の応酬。
 屋敷にたどり着けないと判断したアメリアが一定距離を保ちつつ、応戦しだしたのだ。
 距離があいていれば、暗殺術なんぞ関係なかった。
 一進一退の攻防戦。
 さすがのアメリアもかなり疲労していた。
 残りの力を振り絞りながら、彼女は駆ける。何度目かの光の矢攻撃を避け、さっきから同じように少しだけ方向を変えて走る。
 気付いていただろうか?
 彼女は知らず知らずのうちにノヴァに誘導されていたことに。
 突如視界が開けた。
 目の前にある人影を見て、思わず足を止める。
 見覚えのある顔。
 アドニスだった。
 周りを見るがクラヴィスはいない。
 どうやら彼の方は死んではいないようだった。
 そのことに少し安堵する。
「クラヴィスがおらんな。ちっ、失敗したか、役立たずめ」
 後ろからした冷徹な声にアメリアは振り向こうとして、髪を掴まれた。暴れる彼女の首からペンダントを奪うと、ノヴァはアメリアを突き放した。
 なす術もなく地面にしりもちをついたアメリアにノヴァは静かに手のひらを向けた。
「姫君。申し訳ありませんが、あなたにはここで眠ってもらいますよ。
 なぁに、後から知り合いが二人ほど追いかけますから」
 手のひらに光が生まれる。
 アメリアの脳裏にあの場面が蘇る。
 幼い自分に向けられた手のひら。生まれる光。
「嫌……」
 光が放たれる瞬間、自分の前に立つ母親。
 動くことが出来なかった自分。
「さよなら姫君」
 あの時の魔道士の台詞とノヴァの台詞が頭の中で重なる。
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 アメリアは絶叫して目をつぶった。まぶたを閉じても眩しく感じられる死を灯す光。
 自分に直撃する、と直感的に思った瞬間、その光は掻き消えた。
 現れる黒と白の影。
 黒き神官が手にした杖で光をはじき、続けざまに白い魔剣士が両手を突き出す。
「ボム・ディ・ウィンっ!」
 突風が至近距離で吹き荒れた。ノヴァはなす術もなく飛ばされ、後ろにあった木に叩きつけられる。
「アメリアさんっ!」
「大丈夫かっ!? アメリアっ!」
 両手で頭を覆いつつ、呆然と見ていたアメリアにゼロスとゼルガディスが近づいた。とりあえず無事らしいことが分かって、二人は安心して微笑んだ。
 死ななかった。
 アメリアは、膝をつき自分を気遣う二人の男を呆然と見つめた。
 死ななかった。自分の前に立ったのに。母さんと同じように助けてくれたのに。
 死なずに笑ってくれた。
 自分のために犠牲にならなかった。
 そのことがすごく嬉しかった。
 アメリアは無意識に彼らの腕にしがみつく。そのまま肩を震わしてむせび泣くアメリアをみて、ゼルガディスとゼロスは顔を見合わせ、やっとアメリアが何らかの反応を示したことに安堵のため息をつく。
「貴様ら……!」
 ノヴァがよろめきながらも立ち上がり、低い声でうめいた。
 憎悪を込めた声。
「よくも……」
「『よくも邪魔してくれたな。すべては計画どおりだったのに』」
「なっ!?」
 すべてを見透かしたように言う声にノヴァは慌てて後ろを振り向く。
 近くの木に背中を預け、冷たい視線で自分を睨んでいるクラヴィス。
 ゼルガディスもアメリアをゼロスに任せ、立ち上がる。
「あんたの計算じゃあ、アドニスとクラヴィスを共倒れさせるつもりだったんだろ」
「あんたがあんなに嫌ってたあの馬鹿となんで手を組んでいたのかよく分かったよ。嫌、手を組んだフリ、と言ったほうが正しいか」
 クラヴィスが言う。
「あんたは利用したんだ。アドニスの純粋なたった一つの願いを」
                          ≪続く≫

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4102わくわく雫石彼方 E-mail 8/24-05:55
記事番号4090へのコメント

こんにちは、雫石です。
ねんねこさんの連載物、ということで楽しみにしてましたが、期待通り面白いです!しかも設定とか呪文とかすごいですね!私の頭はそういった複雑なことを考えることができないので、こういう話が書けて羨ましいです。

――で、私、クラヴィス君がかなり好きですv一見女好きで、でも実は一本芯が通った男の人はよかです。
そしてアメリアが皆に愛されてるのがおいしいですね。クラヴィスはお兄ちゃんだしv(兄と妹ってツボです)ゼルはアメリア心配しまくりだしvゼロスもなにげにいい奴だし(笑)クラヴィスとゼルの友情もいい感じですね。とにかく全部ひっくるめてとても楽しみにしてるので、頑張ってください!