◆−光に見た夢 ―5―−雫石彼方(8/21-02:36)No.4022
 ┣でましたね。−由理&ゆかり(8/21-10:23)No.4024
 ┃┗でました。−雫石彼方(8/24-05:23)No.4100
 ┗今更ですけど感想ありがとうございました。−ねんねこ(8/22-14:40)No.4057
  ┗気付いてもらえて良かったです−雫石彼方(8/24-05:37)No.4101


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4022光に見た夢 ―5―雫石彼方 8/21-02:36



 コポポポ、という音を立てて、ティーカップに
温かい紅茶が注がれる。部屋中にいい香りが広がった。
「さあ、どうぞ。これで少し落ち着くと思うわ」
 何やら混乱しているアメリアをどうにかするために、
三人はソファに向かい合って座っていた。
「ああ、すまん・・・・ところで、なぜ俺達はここに・・・?」
「あら、覚えてないの?あなた達は、城の庭で倒れていたのよ」
「で、あんたがここに運んでくれたのか?」
「ええ。あなた達を誰にも見つからないようにここまで運び
込むの、大変だったんだから」
「・・・・よく、素性もわからないような俺達を助ける気に
なったな」
 ゼルガディスの問いに、女性はふむ、と考え込む。
「そうね・・・勘・・かしらね」
「勘?」
「そう。なんとなく助けなきゃいけない気がしたの。
それに、そんなに悪い人たちには見えなかったし」
 それを聞いて、ゼルガディスが訝しげな表情になる。
「自分で言うのもなんだが、こいつはともかく、俺の方は
ずいぶん怪しいと思うが」
「そう?――もしかして、その姿のことを気にしてるの?
そんなに気にする必要ないのに。私は素敵だと思うけど?」
 あっけらかんとして言う女性。
 “嬉しかない”、と言いかけて、ふと思い当たる。
 ―――前にもあったような・・・?
 視線が、隣に座るアメリアに行き着く。
 ―――そうか、こいつだ・・・ん?
・・・ちょっと待て。ここはセイルーンで、こんな上等な
私室を持てる人物で、あの黒髪、あの顔立ち・・・まさか!?
 ゼルガディスはアメリアの腕を引っ張ると、向かいに座る
女性には聞こえないように耳打ちした。
「おい、まさかあの女、お前の姉か!?」
「いえ、姉さんじゃありません。あの、それが・・・どう見ても、
母さんにしか見えないんですけど・・・」
 アメリアも戸惑ったように答える。それはそうだろう。
彼女の母親は、何年も前に亡くなっているのだから・・・。
 当のその女性は、急に密談を始めた二人を不思議そうに眺めている。
「・・・あんたは一体・・・?」
「私?私の名前はセリシア。一応、これでも皇太子妃なのよ」
 その女性――セリシアは、そう言ってにっこり微笑んだ。
「!!――間違いありません・・・!」
 アメリアがこそっとゼルガディスに囁く。それを受けて、
ゼルガディスはセリシアに向かい合った。
「ちょっと確認したいんだが、今、何年の何月何日だ?」
「え?――**年*月*日だけど・・・。そんなことを聞くなんて、
おかしな人ね」
『なっ・・・!?』
「ど、どうしたの・・・!?」
 何をそんなに驚いているのかわからないセリシアが、二人に
話し掛ける。だが、二人は全く耳にはいっていない様子で、
愕然としていた。
 なぜならそこは12年も前の世界――つまり、二人は過去の
セイルーンに飛ばされていたのだから。
「セリシア様、そろそろお時間ですが」
 ドアの外で、侍女らしき声がした。
「あ、いけない。今行くわ!」
 返事をすると、彼女は二人のほうに振り返って聞いた。
「ちょっと用があってもう行かなきゃならないんだけど・・・
あなた達はこれからどうするの?」
「あ?ああ、とりあえずここを出て、そこらで宿を取るさ。
悪かったな、迷惑をかけて」
 そう言って、窓から出て行こうとする。アメリアは何も言わず、
ぺこりとおじぎをしてゼルガディスの後に続いた。いつもの彼女から
するとずいぶん無口だが、幼いころに亡くした母親を前にして、
どう対応していいのかわからないのだろう。
「待って!」
 セリシアが二人を呼び止めた。
「もし私が助けなかったら、あなた達は今ごろ牢屋の中だった
かもしれないのよ。何のお礼もせずに行く気?」
「・・・どうしろっていうんだ?」
 すうっと眼を細めて睨み付けるゼルガディス。だがそれに全く
怯むことなく、彼女は不敵に笑った。
「お願いがあるの」
「お願い?」
「ええ。それは――」
 緊迫した雰囲気に、アメリアはおろおろするばかりである。
それにかまうことなく、セリシアは続けた。
「それは、私の話し相手になること」
「・・・・・は?」
 まさかそんなことを言われるとは思っていなかったので、
間の抜けた返事をする。
 一方セリシアは、くすくすと悪戯っぽく笑っている。こういう
仕草は、アメリアと良く似ていた。
「ふふ、驚いた?――だってね、退屈なのよ。昔は良く旅してた
んだけど、今はそういうわけにはいかないもの。あなた達、旅の
途中か何かなんでしょう?旅の話とか、色々聞かせてほしいのよ。
もちろん、急いでいるなら無理には引き止めないけど」
「話し相手・・・ねえ」
 ゼルガディスはどうしたもんか、と考え込む。――と、
「わかりました!私、やります!」
アメリアが、張り切って返事をしてしまった。
「お、おい!?」
「お願いです、私ももう少し、かあ・・・セリシアさんとお話して
みたいんです!」
「・・・・」
 ゼルガディスは迷っていた。
 亡くなった筈の、母親との再会。自分を娘だと知らなくても、
話がしたいというアメリアの気持ちはよくわかる。しかし・・・・
「うっ・・・!」
 アメリアがゼルガディスを見上げていた。その大きな瞳は、
うるうると潤んでいたりする。
 こうなるともう駄目だ。
「――わかった、好きにしろ・・・」
 それを聞くとアメリアはぱあっと顔を輝かせて、ゼルガディスに
抱き付いた。
「こ、こらっ・・・!」
「ありがとうございます、ゼルガディスさん!!」
「――ただし、俺は遠慮する。お前一人でやれよ」
「はい!」
 セリシアは、そんな二人を微笑ましげに見ている。
「――というわけで、私がお相手することになりました!」
「そう、それじゃあ、明日からよろしくね、ええと・・・?」
「私は、ア・・・あ、ええと、リスティです!」
「リスティね、で、そちらがゼルガディス、と。私のことは、
セリスって呼んで。――さてと。そろそろ行かないと本当に
まずいわね。じゃあ。あ、そこの壁が抜け道になってるから、
そこから行くといいわ。明日も、そこから来てちょうだい」
「わかりました。じゃあ、また明日」
 こうして、セリシアの話し相手として、アメリアが城に通うことに
なったのであった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

なんか前回ので既に過去の世界に飛ばされたってことは
ばれまくってましたが、本当は今回のでそれが明らかになる
予定だったんです・・・。やっぱり私の話って先が読みやすいのかも
しれない・・・(しくしく)
 


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4024でましたね。由理&ゆかり 8/21-10:23
記事番号4022へのコメント

「こんにちわ。雫石さん。」
こんちわー


>「ちょっと確認したいんだが、今、何年の何月何日だ?」
>「え?――**年*月*日だけど・・・。そんなことを聞くなんて、
>おかしな人ね」
>『なっ・・・!?』
>「ど、どうしたの・・・!?」
> 何をそんなに驚いているのかわからないセリシアが、二人に
>話し掛ける。だが、二人は全く耳にはいっていない様子で、
>愕然としていた。
> なぜならそこは12年も前の世界――つまり、二人は過去の
>セイルーンに飛ばされていたのだから。
「過去ですか。うーん・・・・これから、どうなるか見物ですね」


>「待って!」
> セリシアが二人を呼び止めた。
>「もし私が助けなかったら、あなた達は今ごろ牢屋の中だった
>かもしれないのよ。何のお礼もせずに行く気?」
たしかに、助けなかったら牢屋決定だな。
「そうですね。いきなりお城の庭ですもんね。」



>―――――――――――――――――――――――――――――――――
>
>なんか前回ので既に過去の世界に飛ばされたってことは
>ばれまくってましたが、本当は今回のでそれが明らかになる
>予定だったんです・・・。やっぱり私の話って先が読みやすいのかも
>しれない・・・(しくしく)
「ああー、泣かないで下さい(おろおろ)」
簡単にいえば、時計が反対に周り出す=過去へさかのぼると思っている人が多いんだろう。
「私も、その一人ですから。
でも、雫石さんのは、すごいですよ。Z&Aガーデンズのほうも読ませてもらいました。こっちも、頑張ってください!」
では、感想でした。

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4100でました。雫石彼方 E-mail 8/24-05:23
記事番号4024へのコメント


こんにちは。いつも感想ありがとうございます!

>
>>「ちょっと確認したいんだが、今、何年の何月何日だ?」
>>「え?――**年*月*日だけど・・・。そんなことを聞くなんて、
>>おかしな人ね」
>>『なっ・・・!?』
>>「ど、どうしたの・・・!?」
>> 何をそんなに驚いているのかわからないセリシアが、二人に
>>話し掛ける。だが、二人は全く耳にはいっていない様子で、
>>愕然としていた。
>> なぜならそこは12年も前の世界――つまり、二人は過去の
>>セイルーンに飛ばされていたのだから。
>「過去ですか。うーん・・・・これから、どうなるか見物ですね」

この話、動きはあんまりないんですけど、その分ゼルやアメリアの心理的な動きを見てやって下さい。(そんなに大したもんでもないですが/汗)


>>「待って!」
>> セリシアが二人を呼び止めた。
>>「もし私が助けなかったら、あなた達は今ごろ牢屋の中だった
>>かもしれないのよ。何のお礼もせずに行く気?」
>たしかに、助けなかったら牢屋決定だな。
>「そうですね。いきなりお城の庭ですもんね。」

過去に飛ばされて、二人は不審者として牢屋に入れられて一生出られませんでした、ちゃんちゃん♪・・・じゃシャレにならないですからね(^^;)ママさんに助けてもらいました。

>>なんか前回ので既に過去の世界に飛ばされたってことは
>>ばれまくってましたが、本当は今回のでそれが明らかになる
>>予定だったんです・・・。やっぱり私の話って先が読みやすいのかも
>>しれない・・・(しくしく)
>「ああー、泣かないで下さい(おろおろ)」
>簡単にいえば、時計が反対に周り出す=過去へさかのぼると思っている人が多いんだろう。
>「私も、その一人ですから。
>でも、雫石さんのは、すごいですよ。Z&Aガーデンズのほうも読ませてもらいました。こっちも、頑張ってください!」
>では、感想でした。

慰めのお言葉、ありがとうございますv
ゼルアメサイトさんの方の作品も読んで下さったんですね!「桜の精の恋」は完結しましたー。あちらのページは9月15日いっぱいで閉鎖されてしまうので、それまでには「桜の〜」の番外編を書きたいとは思ってるんですけど・・・あくまで「希望」。断言すると書けなかった時気まずいので・・・(^^;)
――なんか余計なことばっかり書いちゃいましたね;とりあえず、この「光に〜」の方を早く書き終われるように頑張ります!

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4057今更ですけど感想ありがとうございました。ねんねこ 8/22-14:40
記事番号4022へのコメント

こんにちは、ねんねこです。今更ながら、『秘密の約束』のレスのレス、ありがとうございました(ぺこり)。やっぱり雫石さんだったんですね。よかった、間違ってなくて^^;
と、独り言はこのくらいにして……
よかったです。アメリアのお母さん、いい性格してます(笑)想像どおりです。ゼル、親子に振り回されっぱなしだし。相変わらずアメリアに弱いし(そこがいいんだけどね)。
12年前、というとアメリアは生まれてますね。いるんでしょうか。
うーみゅ。色々想像してしまう(笑)
短いですが、これにて失礼させていただきます。
続き、頑張ってください。
ねんねこでした。

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4101気付いてもらえて良かったです雫石彼方 E-mail 8/24-05:37
記事番号4057へのコメント


>こんにちは、ねんねこです。今更ながら、『秘密の約束』のレスのレス、ありがとうございました(ぺこり)。

レスのレス、投稿したと思ったらあっという間に過去の記事へと沈んでしまったので、気付いてもらえなかったかな・・・と心配していたので、読んで頂けて良かったです。

>と、独り言はこのくらいにして……
>よかったです。アメリアのお母さん、いい性格してます(笑)想像どおりです。ゼル、親子に振り回されっぱなしだし。相変わらずアメリアに弱いし(そこがいいんだけどね)。

あのフィルさんの妻にして、アメリアとあの方のお母様ですからね。一筋縄ではいかないでしょう(笑)ゼルは、アメリア一家には誰一人としてかなわないんじゃないでしょうか。皆すごいからなあ(^^)でも、特にかなわないのはやっぱりアメリアでしょう。惚れた弱みってやつですねv

>12年前、というとアメリアは生まれてますね。いるんでしょうか。

アメリアとちびアメリアのご対面はありませんが、会話の中にはちびアメの話題が出てくる予定はあります。

>うーみゅ。色々想像してしまう(笑)
>短いですが、これにて失礼させていただきます。
>続き、頑張ってください。
>ねんねこでした。

いろいろ想像していただけるとこちらとしても嬉しいです。
感想、どうもありがとうございましたー。