◆−禁断の宝石1−ねんねこ(8/30-18:31)No.4180
 ┣禁断の宝石2−ねんねこ(8/30-20:08)No.4181
 ┃┣楽しんでます!−笹森 明日香(8/30-23:28)No.4184
 ┃┃┗ありがとう!−ねんねこ(9/1-15:39)No.4194
 ┃┗やったあvvv−ゆっちぃ(8/30-23:56)No.4185
 ┃ ┗お久しぶりです−ねんねこ(9/1-15:40)No.4195
 ┣楽しみにしてます^^−斉藤ぐみ(8/30-20:14)No.4182
 ┃┗頑張ります−ねんねこ(9/1-15:41)No.4196
 ┣禁断の宝石3−ねんねこ(9/1-14:25)No.4193
 ┣禁断の宝石4−ねんねこ(9/1-19:27)No.4199
 ┃┗短いですι−ゆっちぃ(9/1-23:56)No.4200
 ┃ ┗感想書いて頂けるだけでありがたいです−ねんねこ(9/2-16:24)No.4202
 ┗禁断の宝石5−ねんねこ(9/5-15:31)NEWNo.4214
  ┣Re:禁断の宝石5−笹森 明日香(9/5-23:00)NEWNo.4220
  ┃┗再びこんにちは!−ねんねこ(9/6-14:34)NEWNo.4226
  ┗はじめまして〜!!!−桜華 葉月(9/7-02:52)NEWNo.4233
   ┗いつも読んで頂いてたそうで……ありがとうございます−ねんねこ(9/7-15:24)NEWNo.4235


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4180禁断の宝石1ねんねこ 8/30-18:31


こんにちは、ねんねこです。懲りずに新シリーズ突入です。クラヴィスを知らない方は過去の記事か著作別リストで『秘密の約束』『翼の設計図』『蒼き石、赤き竜』を読んでください。あと、感想などでクラヴィスが好きだ、と言って下さった方々、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。あと、いつものことですが、誤字、脱字を見つけたら『ああ、またねんねこやってるよ』と思って見逃してくれると嬉しい限りです。では、どうぞ。


『禁断の宝石』

「すっかり遅くなっちゃったなー。お義母さん、心配してるわね……って、やだっ、あたしってば『お義母さん』だなんて♪ まだあたしたち、結婚してないのに(はぁと)」
 黄昏時の街の裏道で、少女は浮かれ気分で帰路についていた。周りには人っ子一人いない――夕暮れの薄暗い中を誰も好き好んで歩かないからだ。周りの家も誰も住んではいない。まったくの無人。いかにも『襲ってください』といっているもんである。
 とはいえ、彼女の恋人とその家族が経営している宿屋までの最短の近道はここだけなので、少女はいつも通っていた。
 いつもの道、いつもの風景。
 そのはずだった。
(あれ?)
 ふとした違和感を覚え、少女が立ち止まった。
 誰も住んでいないはずの古い家々の間。いつもは誰もいないはずのこの道に、今日に限って人がいた。
 黒いフードをかぶった魔道士らしき人物。テーブルの上に黒い布をかけ、上には水晶球が一つ。
 占い師のようだった。
 何となく興味を持った少女はその人物に声をかける。
「こんばんは、占い師さんですか?」
 少女の声にその人物は静かに彼女に目を向けた。
 なんとも言えない鋭い視線に少女はふと悪寒を覚えた。
「そうだよ、お嬢さん。わしは占い師」
 しわがれた老人の声。声は続く。
「わしはおぬしの過去が見える。綺麗な思い出ばかりだ」
「ど……どうも」
 今すぐ逃げ出したい気分だったが、何故か足が動こうとはしなかった。少女は黙って占い師を見つめる。
 占い師は少女を指差し、彼女の目をしっかりと見つめ、こう言った。
「おぬしの思い出、わしにくれんかの?」
「え?」
 少女は訝り――
 そこで意識は途切れた。


「メギド・フレア。」
 彼女は一言そう呟いた。本来はちゃんとした呪文なのだが、20分間のうちにかれこれ4回以上唱えた彼女にとっては、それはもう呪文ではなく、単なる言葉でしかなかった。
 とにかく、『力ある言葉』は、開放された力を以って、その辺り一体にいたゴーストやらゾンビやらを一瞬のうちに浄化した。
 それを見届けてから彼女はため息をついた。年の頃17,8の少女。肩より少し下まで伸びた綺麗な黒髪。蒼い瞳。同じ世代の子に比べるとやや童顔ではあったが、彼女はあまり気にしてはいなかった。そして、彼女が着ている白い法衣は紛れもなく聖王都――白魔術都市と呼ばれるセイルーン・シティ一番の巫女――巫女頭を表していた。
 アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。
 彼女こそが、この世界でも指折りの巫女である。
 ――そして。
「あー、ラクラク」
「さっすがアメリアちゃん♪ セイルーンの巫女頭だけあるな。
 さあっ! 向こうにまた扉がっ! 正義とアンデッドが君を待ってるぞっ!!」
 アメリアの背中の方にあった扉が開き、2人の青年が入ってくる。
 1人は、銀の髪と藍青色の瞳、そして岩の肌を持ったキメラの青年。もう1人は、腰まである長い黒髪に翠色の瞳をした青年である。
 アメリアは無言で2人を睨みつけた。が、そんなことで怖気づくような2人ではなかった。
 彼女の冷たい視線をあっさりと交わしつつ、とりあえず苦笑いを浮かべて、ゼルガディスが言った。
「俺も浄化呪文が使えたら手伝えたのにな」
「『俺たちも』だろ」
 クラヴィスも苦笑い――というか引きつり笑いをしつつ、ゼルガディスの言葉を訂正した。
 現代の五賢者とも謳われた赤法師レゾの孫であるゼルガディス=グレイワーズ。そして彼の親友、神官の家として有名なヴァレンタイン家の三男坊クラヴィス=ヴァレンタインは、アメリアの旅の仲間である。
 そんな2人を前に、アメリアはふとこんなことを呟いた。
「一体誰のせいでこーなったのよ……?」


 ほんの些細なことがきっかけだった。
 夕食をとるために宿の二階から一階の食堂に降りてきたゼルガディスが見たのは、酔っ払いに絡まれたアメリアとクラヴィスの姿だった。
 かなり酒が入っているのか、赤い顔をした親父が、完全無視を決め込んでいたクラヴィスをやらしい笑みを浮かべながら見ていた。
「よぉ、兄ちゃん。可愛い顔してんじゃねぇか。おじさんの相手してくれよ。何ならベッドの上で可愛がってやってもいいんだぜ」
 ぴしいっ!
 耳に入ってきたおぞましい台詞にクラヴィスの顔は引きつり、身体には悪寒と嫌悪で鳥肌が立っていた。まあ、無理もないが。
 そこまではゼルガディスにとってはどうでもいいことだったのだが。
 クラヴィスの近くで『ご愁傷様です』という風に苦笑いを浮かべていたアメリアの腕を別の男が掴んだのが悪かった。
「じゃあ、お嬢ちゃんはこっちに――」
 男が言い終わる前に――
 どかっ!
 がすっ!
 そんな音が食堂に響き渡ったのはほぼ同時だった。
 クラヴィスが絡んできた親父の鳩尾に蹴りを入れたのと、階段の方から何故か飛んできたビールジョッキがアメリアの腕を掴んでいた男の顔に直撃したせいで、次の瞬間、絡んできた2人の男は床に転がった。
 ――かくして。
 宿屋創業以来の大乱闘が幕を切って落とされた。
 ……無論、全てが終わった後立っていたのは、ケンカをけしかけた二人の男ととりあえず他人のフリをしていた少女だけだったのは言うまでもないことである。

「つーわけでクラヴィスだな。原因は」
「ちっと待ていっ! ジョッキを投げつけたのはお前だろ!? ならお前にだって原因あんじゃねぇかよっ!」
 クラヴィスの切り返しにゼルガディスは誤解だ、という風に慌てて手を横に振った。今にも攻撃呪文を唱えそうな少女に向かって。
「ちょっ……だって、アメリアが変な奴に絡まれてたから助けただけだぞっ!? 俺はっ!」
「私に責任転嫁するつもりですかっ!?」
 アメリアはだんっ、と床を踏みつけると、クラヴィスとゼルガディスを交互に指差す。
「大体っ! あなたたち、一応聖職者の孫と息子でしょうっ!? なんで浄化呪文がひとっつも使えないんですかっ!? 特にクラヴィスさんっ! 変な情報ばっかり集めてないで、少しは勉強したらどーですかっ!? ゼルガディスさんもっ!」
『とは言ってもなぁ』
 まくしたてられて、ゼルガディスとクラヴィスは顔を見合わせる。
「神官が全員浄化呪文使えたら、世の中何にも楽しくないだろ?」
「まあ、いいじゃないか、アメリア。とりあえず、何はともあれ久しぶりに自分のするべき仕事が回ってきたんだ。
 ほら、この間ぼやいてただろ。
『この頃、自分が巫女だって忘れる』ってさ」
 ぱたぱたと手を振りながらできる限りのフォローをするゼルガディスにアメリアは床に座り込んだ。
「意味が違うぅぅぅぅぅ」
 涙ながらに呟く。
 あの言葉は単に『ことあるごとに魔術を使ってる気がする』という意味だった。なにせ、この2人といると何故かリナたちと一緒にいた頃より疲れる。
(リナさんよりたちが悪いわ……この人達……)
 彼らと旅をし始めてからのことを思い出すのはあまりに辛いので、アメリアは話題の転換を試みた。
「だけど、宿屋の女将さんもひどいですよね。宿代余計に請求して、更に古い塔に住み着いた魔道士を退治してくれ、だなんて」
 アメリアの言葉にゼルガディスが肩をすくめた。
「仕方ないだろ。魔道士が来たと同時に変な事件が起こりまくってるんだ。他の街にその事が伝わる前に何とかしておきたいところなんだろう」
 街で変な事件が起こっている――そんな噂が流れれば、旅人は来なくなる。
 宿屋という街の外の人間を相手に生計を立てている人間たちにしてみれば、そういう噂が流れる前に手を打っておきたいと言うところだろう。
「まー、それだけじゃないだろーけどな」
 頭の後ろで腕を組んで、クラヴィスが呟いた。
「どういうことですか?」
「変な事件の最初の被害者……女将さんの息子の婚約者らしいんだよ。
 大変だったらしいよ。
 何があったんだか知らないけどさ、裏路地に倒れてて。数日間昏睡状態だった挙句、意識が戻って第一声が『私は誰』。
 すっかりすべての記憶をなくしちゃってて、錯乱状態。結局一週間たっても治る兆しなし――どころか、同じよーな被害者が14人出ただけ。何かあったことだけは確かだったから、まぁ、最も怪しい魔道士をとっ捕まえて何とか治し方を聞き出したいって所なんだろ」
 やけに詳しいクラヴィスにゼルガディスは半眼を向けた。
「……ずいぶん詳しいんだな……」
 クラヴィスが笑った。手をぱたぱたと振る。
「別にたいしたことじゃないって。
 ただ、昨日、お茶に誘われた綺麗なお姉さんからちょーっと情報を聞き出しただけだし♪」
「……いやに帰りが遅いと思ったらそんなことしてたのか……」
 ゼルガディスが脱力する。アメリアは顔を引きつらせた。
「ま……まぁ、個人の自由な時間、何しようと本人の勝手ですけど……浄化呪文……そういう時間に覚えてくれればいーのに……」
「やめとけ。言うだけ無駄だ」
 ゼルガディスは首を振ってアメリアに手を差し出した。彼女を立ち上がらせると部屋を見渡す。
 さして広くもないただの部屋。奥にある扉。中央に敷かれた赤いじゅうたん。
「塔の構造からすると、あの扉の向こうが階段っぽいな」
「とか言ってまたアンデッドがいたら、わたし怒りますからね」
 アメリアの釘をさすような発言にゼルガディスが思わずうめく。それをフォローするがごとくにクラヴィスが言う。
「アンデッドくらいならいいんじゃない? 階を上がるごとに敵のレベルがグレード・アップするかもよ」
 等と会話をしつつ、3人はとりあえず扉に向かって歩いていき――
 床に敷かれたじゅうたんに一番初めに違和感を感じたのはゼルガディスだった。
(……綺麗過ぎる)
 今まで誰も使っていなかったらしいこの古い塔。それを証明するかのように周りには結構埃がたまっていたりする。にも関わらず、床にあるのは埃のほの字もない深紅のじゅうたん。
 怪しすぎる。
「なあ」
 立ち止まって声をかける。彼のほんの少し前を歩いていたクラヴィスとアメリアはあろうことか赤いじゅうたんの上で立ち止まった。
「あ」
 思わず指を差してゼルガディスが呟く。
 何かの罠があってそれを隠すために赤いじゅうたんが敷かれたのだと思っていたのだが、考えすぎのようだった。じゅうたんの上に二人が乗っても何も起こらない。
「どした? ゼル?」
 クラヴィスが尋ねてくる。
『いや、何でもない』
 ゼルガディスがそう答えようとしたときだった。
 がだんっ! ぱかっ!
 なにやら機械的な音がして、突如赤いじゅうたんが黒い闇に飲み込まれていく。じゅうたんの上に乗っているアメリアとクラヴィスとともに。
 落とし穴である。
「アメリアっ!」
 1人安全圏にいたゼルガディスがすばやく彼女に手を伸ばした。名前すら呼ばないところを見ると、クラヴィスはどうでもいいらしい。
 彼女との距離はそう離れていない。手を伸ばせば楽に届く距離だったが、タイミングの悪さのせいで彼が彼女の手を掴むことはなかった。慌てて、浮遊の術を唱えようとした時だった。
 誰かにマントを引っ張られ、まともにバランスを崩す。
 掴んでいたのは――クラヴィス。
「ばっ! 離せっ!」
 呪文を中断し叫ぶが、足場を失ったクラヴィスは離そうとしなかった。クラヴィスの体重を支えるだけの力が出ず、ゼルガディスもそのまま暗い闇に吸い込まれていく。
「んきゃぁぁぁぁぁっ!?」
 アメリアの叫び声。重なってクラヴィスの声が響く。
「せめて道連れぇぇぇぇぇぇぇぐふっ!?」
「なんでだぁぁぁぁぁぁっ!」
 それぞれ様々な悲鳴を残しつつ、3人はなす術もなく奈落の底に落ちていった。


 ――と。
 穴の端から一本の白い腕が伸びた。何とか床に両手を出し、這いずり出てきたのは黒髪の少女。
 アメリア。
 何とか落とし穴に落ちずに済んだ彼女は荒い息で額の汗をぬぐった。
「ふっ、何とか助かったわ。なんか踏んづけた気がしないでもないけど……気のせいね、きっと」
 きっとじゅうたんだったのだろう。
 そう思うことにして、アメリアは床にぽっかりとあいた穴を覗いてみる。
 黒い闇が広がっているばかりで底は見えない。
「きっとあのまま落ちたらただじゃすまなかったわね。
 ゼルガディスさんやクラヴィスさんはなんか殺しても死ななそーな感じがするからきっと大丈夫だろうけど……
 さて……2人とも落ちちゃったし……どうしましょう?」
 やっぱりとりあえず上に行って悪の魔道士を倒すしかないようね、と自答し、アメリアは立ち上がり――
 後ろに突然何かの気配を感じ、彼女は横に跳んだ。
                            ≪続く≫

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4181禁断の宝石2ねんねこ 8/30-20:08
記事番号4180へのコメント

 がんっ!
 アメリアがついさっきまで立っていた場所にでかい斧が突き刺さる。それも無言で引き抜いて、構えたのは、ただの鎧。
(リビング・メイル!)
 リビング・メイル――ただの鎧の低級霊を取りつかせ、動くようにした代物である。
 更にアメリアに向かって斧を振りかぶるリビング・メイル。慌てて身を翻し、その間にすばやく呪文を唱える。
 リビング・メイルに向かって右手を突き出し、一気に『力ある言葉』を唱える。
「ブラム・ブレイザーっ!」
 一直線に進んだ青い衝撃波は、とりついた低級霊を一瞬にして滅ぼす。残った鎧がすごい音を立てて崩れた。低級霊さえ取り除いてやれば、リビング・メイルなどただの鎧である。物理的攻撃がまったく効かない上に下手な精霊魔術はあっさりとはじき返すので、レベルの低い魔道士にはきつい相手だが、アメリアにとっては大した事のない相手ではある。とはいえ、後ろから襲われたことに少し腹を立て、彼女はそのまま鎧を蹴飛ばすと穴の中に落とした。


 深い闇の中、自分の体が急速に落下しているのを感じつつゼルガディスは何とか呪文を唱える。
「レビテーション!」
 風を切る音とともに少し落下速度が落ちる。とはいえ、思っていたより落ちていないのは、きっとまだしぶとくクラヴィスがマントを掴んでいるせいだろう。とりあえず、闇雲に足を振り回し、クラヴィスを蹴り落とす。
 闇に目が慣れてきた頃に底についてゼルガディスは浮遊の術のコントロールを解除した。
 一番先にしたゼルガディスの行動はもちろんアメリアを探すことだった。落ちる時に彼女の悲鳴を聞いてから、彼女の反応がまったくなくなった。あの大げさな娘のことだ。落ちている間もひたすら悲鳴を上げてそうなものなのに。
「アメリアっ! どこだっ!?」
 クラヴィスの安否さえ気遣わないところを見ると、やはりゼルガディスにとってはどうでもいいことなのだろう。
 一歩足を踏み出し――
 ぎゅむ。
「ぐぇ。」
 蛙を踏んづけた時に聞こえるような音に慌ててゼルガディスは足を引っ込めた。恐る恐る明かりを生み出してしゃがむと、目の前に倒れている男を荷物から取り出したハリセンで軽く小突いてみる。
 その男――当然のごとくクラヴィスだが――はがっばっと起き上がると、すごい形相でゼルガディスに掴みかかる。
「な・に・し・や・が・る・ん・だっ!? ゼルっ! このオレのぷりちーな顔を蹴りつけた上に問答無用で落っことしやがって! 受身取らなかったら確実に死んでたぞっ!? おいっ!」
 クラヴィスが珍しく青筋を立てている。が、それよりも特筆すべきは、ほぼ顔の中央にある――
「クラヴィス。何でお前、足形なんかつけてんだ?」
「だ・か・らっ! お前が蹴ったんだろがっ! だいたい悲鳴あげてる最中に蹴るか、普通っ!? いつも言ってるだろ!? 『ツッコミ入れるのは時と場合を考えろ』って!!
「悲鳴……?」
 ゼルガディスが訝る。
 確かに彼を蹴り落としたのは覚えているが、悲鳴をあげてはいなかった。
「多分、俺じゃないと思う。ってゆーか、この靴の大きさから言うとアメリアだと思うんだが」
「………」
「見た感じ、アメリア落ちてないみたいだから……踏み台にされたんじゃないか? お前」
 笑いながらゼルガディスは立ち上がり――
 ごすっ!
 突然上から降って来た何かが脳天に直撃して、とりあえず頭を押さえながら再びしゃがみこむ。目に涙を溜めて、ゼルガディスが尋ねる。
「……何が降って来た?」
 その言葉にクラヴィスはゼルガディスの頭に直撃したせいでへっこんでいる鎧を見せる。
「見た感じ鎧だけど。あの高さから落ちてきたんだ……そーとー痛かったと思うんだが……」
「……泣きたくなってきた……」
「状況から察するに、落としたのはアメリアちゃんだぞ」
「あいつ、絶対俺たちが浄化呪文使えるのに使えないって嘘ついたことに気付いて根に持ってるんだ……!」
 ううっ、と泣き出すゼルガディスにとりあえずクラヴィスは苦笑いするしかなかった。

「……で。どうするんだ? きっとアメリアのことだから俺たちのことなんか放っておいて悪人倒しだとか喜んで上に登ってるぞ」
 ひとしきり泣いたあと。
 ゼルガディスはとりあえずクラヴィスに意見を求めた。クラヴィスは得意そうに笑うと、二枚の丸いチップを取り出す。
 使ったことはないが、見覚えのあるマジック・アイテムにゼルガディスはその名前を呟いた。
「レグルス盤……?」
 魔法道具屋に二枚一組として売られている通信用に使われるマジック・アイテムである。
 ただし、その値段は一組金貨100枚という法外な値段であるのと、距離が離れすぎると使用不可能になる代物のためあまりポピュラーではないが。
「もう片方をね、アメリアちゃんに渡してあんだ」
「……なんでアメリアだけなんだ?」
 何となく半眼になってゼルガディスは尋ねる。クラヴィスは尋ねられるのを予想していたらしく、満足そうに頷くと、答える。
「実は諸般の事情により二組しか買えなかったんだ。お互いに会話するにゃ二組必要だから、とりあえずアメリアちゃんに渡した。お前は……行動パターンを見る限り、一日のほとんどをアメリアちゃんとともに過ごしているのであまり問題はないかな、と」
「……行動パターンのところのコメントはあえて控えるが……諸般の事情って、単に金がなかっただけだろ」
 その言葉にクラヴィスを頬を膨らませた。
「しょーがねーだろ? 家からこっそりパクって来た変な像が金貨200枚程度の価値しかなかったんだ」
「……金貨200枚の価値って結構すごいと思うんだが……金持ちの金銭感覚って、こーいうときに狂うよな」
「失敬なっ! まともだぞ、オレはっ!?」
『あのぉぉぉぉぉぉ』
 突然片方のレグルス盤から聞こえてきた声にゼルガディスとクラヴィスは思わずのけぞった。
 声はアメリアである。
『くだらない意地張って、わたしを無視されても困るんですけど』
                           ≪続く≫

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4184楽しんでます!笹森 明日香 E-mail 8/30-23:28
記事番号4181へのコメント

こんにちは。クラヴィスファンの笹森明日香です

> あと、感想などでクラヴィスが好きだ、と言って下さった方々、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
はい。どんどん活躍してください。

> 黒いフードをかぶった魔道士らしき人物。テーブルの上に黒い布をかけ、上には水晶球が一つ。
> 占い師のようだった。
> 何となく興味を持った少女はその人物に声をかける。
恐いもの知らずだな。

>「さっすがアメリアちゃん♪ セイルーンの巫女頭だけあるな。
> さあっ! 向こうにまた扉がっ! 正義とアンデッドが君を待ってるぞっ!!」
ゼルガディスと同じくらいアメリアも扱い安いですもんね。クラヴィスにしてみればお茶の子さいさい、か。

> アメリアは無言で2人を睨みつけた。が、そんなことで怖気づくような2人ではなかった。
> 彼女の冷たい視線をあっさりと交わしつつ、とりあえず苦笑いを浮かべて、ゼルガディスが言った。
お互いに拗ねたらこんなもんじゃないですもんね。

> 現代の五賢者とも謳われた赤法師レゾの孫であるゼルガディス=グレイワーズ。そして彼の親友、神官の家として有名なヴァレンタイン家の三男坊クラヴィス=ヴァレンタインは、アメリアの旅の仲間である。
ふ〜んつかえなかったのかぁ・・・と思ったのに。

> かなり酒が入っているのか、赤い顔をした親父が、完全無視を決め込んでいたクラヴィスをやらしい笑みを浮かべながら見ていた。
>「よぉ、兄ちゃん。可愛い顔してんじゃねぇか。おじさんの相手してくれよ。何ならベッドの上で可愛がってやってもいいんだぜ」
> ぴしいっ!
> 耳に入ってきたおぞましい台詞にクラヴィスの顔は引きつり、身体には悪寒と嫌悪で鳥肌が立っていた。まあ、無理もないが。
見てみたい!この3人で女装ネタを!

> そこまではゼルガディスにとってはどうでもいいことだったのだが。
・・・日常茶飯事・・・とか?

>「じゃあ、お嬢ちゃんはこっちに――」
> 男が言い終わる前に――
> どかっ!
> がすっ!
> そんな音が食堂に響き渡ったのはほぼ同時だった。
> クラヴィスが絡んできた親父の鳩尾に蹴りを入れたのと、階段の方から何故か飛んできたビールジョッキがアメリアの腕を掴んでいた男の顔に直撃したせいで、次の瞬間、絡んできた2人の男は床に転がった。
絶対に”反射”的な行動ですよ。特にゼルガディスは。

> ――かくして。
> 宿屋創業以来の大乱闘が幕を切って落とされた。
> ……無論、全てが終わった後立っていたのは、ケンカをけしかけた二人の男ととりあえず他人のフリをしていた少女だけだったのは言うまでもないことである。
男たちの悲鳴が響き渡り、一人、また一人となぶり殺しにされていく・・・。(こわひ)

> アメリアはだんっ、と床を踏みつけると、クラヴィスとゼルガディスを交互に指差す。
>「大体っ! あなたたち、一応聖職者の孫と息子でしょうっ!? なんで浄化呪文がひとっつも使えないんですかっ!? 特にクラヴィスさんっ! 変な情報ばっかり集めてないで、少しは勉強したらどーですかっ!? ゼルガディスさんもっ!」
どんな情報を披露したんですか。クラヴィス。

>「神官が全員浄化呪文使えたら、世の中何にも楽しくないだろ?」
貴方の判断基準は楽しいかどうかにある、と。

> あの言葉は単に『ことあるごとに魔術を使ってる気がする』という意味だった。なにせ、この2人といると何故かリナたちと一緒にいた頃より疲れる。
>(リナさんよりたちが悪いわ……この人達……)
そりゃそうでしょう。一人はリナと変わらないけど、パートナー(?)が、ね。片方では止めに入ってくれるがもう片方では悪のりして一緒に冷やかす。雲泥の差ですよ。

> やけに詳しいクラヴィスにゼルガディスは半眼を向けた。
>「……ずいぶん詳しいんだな……」
> クラヴィスが笑った。手をぱたぱたと振る。
>「別にたいしたことじゃないって。
> ただ、昨日、お茶に誘われた綺麗なお姉さんからちょーっと情報を聞き出しただけだし♪」
>「……いやに帰りが遅いと思ったらそんなことしてたのか……」
朝帰りですかぁ?(笑)

>「塔の構造からすると、あの扉の向こうが階段っぽいな」
>「とか言ってまたアンデッドがいたら、わたし怒りますからね」
「その怒りはアンデッドにぶつけろよ」と切り返しませんか?(クラヴィスなら言うかと思ったのに)

> 風を切る音とともに少し落下速度が落ちる。とはいえ、思っていたより落ちていないのは、きっとまだしぶとくクラヴィスがマントを掴んでいるせいだろう。とりあえず、闇雲に足を振り回し、クラヴィスを蹴り落とす。
とりあえず、したことがそれですか。ゼルガディスも案外負けてませんね。

> クラヴィスの安否さえ気遣わないところを見ると、やはりゼルガディスにとってはどうでもいいことなのだろう。
これくらいじゃぁ死なないという“信頼”故の行動ですよね!そうですよね!きっとそうですよねぇ!!

>「な・に・し・や・が・る・ん・だっ!? ゼルっ! このオレのぷりちーな顔を蹴りつけた上に問答無用で落っことしやがって! 受身取らなかったら確実に死んでたぞっ!? おいっ!」
プレイボーイの上にナルシストですか。

>「だ・か・らっ! お前が蹴ったんだろがっ! だいたい悲鳴あげてる最中に蹴るか、普通っ!? いつも言ってるだろ!? 『ツッコミ入れるのは時と場合を考えろ』って!!
ボケはいい、と。たとえ死ぬ間際“のような”状況であろうとも。(笑)

>「多分、俺じゃないと思う。ってゆーか、この靴の大きさから言うとアメリアだと思うんだが」
>「………」
>「見た感じ、アメリア落ちてないみたいだから……踏み台にされたんじゃないか? お前」
> 笑いながらゼルガディスは立ち上がり――
女の子は殴れませんよね。

>「見た感じ鎧だけど。あの高さから落ちてきたんだ……そーとー痛かったと思うんだが……」
>「……泣きたくなってきた……」
>「状況から察するに、落としたのはアメリアちゃんだぞ」
アメリアは殴れませんよね。(上との違いに注目)

>「あいつ、絶対俺たちが浄化呪文使えるのに使えないって嘘ついたことに気付いて根に持ってるんだ……!」
だったらこの程度じゃすみませんよ。彼女の後ろにはゼロスがいますから。

> ひとしきり泣いたあと。
泣いたんですか。残酷な魔法剣士さん?

>「実は諸般の事情により二組しか買えなかったんだ。お互いに会話するにゃ二組必要だから、とりあえずアメリアちゃんに渡した。お前は……行動パターンを見る限り、一日のほとんどをアメリアちゃんとともに過ごしているのであまり問題はないかな、と」
>「……行動パターンのところのコメントはあえて控えるが……諸般の事情って、単に金がなかっただけだろ」
おとなしく認めなさい。反論できない、と。

> その言葉にクラヴィスを頬を膨らませた。
こういう“子供っぽい”リアクションをするんですか?

>「しょーがねーだろ? 家からこっそりパクって来た変な像が金貨200枚程度の価値しかなかったんだ」
家を追い出されたのは窓ガラスじゃなくこれのせいだとか。

>「失敬なっ! まともだぞ、オレはっ!?」
まぁ、窓ガラスの値段気にしてたんだし。(ステンドグラスだったというオチはないですよね)

>『くだらない意地張って、わたしを無視されても困るんですけど』
見透かされてますね。

では、続きをお待ちしております。

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4194ありがとう!ねんねこ 9/1-15:39
記事番号4184へのコメント

笹森 明日香さんは No.4184「楽しんでます!」で書きました。
>
>こんにちは。クラヴィスファンの笹森明日香です
どうも。ファンと言って頂けて、クーちゃん(笑)も喜んでおります。

>> あと、感想などでクラヴィスが好きだ、と言って下さった方々、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
>はい。どんどん活躍してください。
活躍します。ゼルアメでなくなりつつあります。泣きたくなりました。が、活躍します。

>> 黒いフードをかぶった魔道士らしき人物。テーブルの上に黒い布をかけ、上には水晶球が一つ。
>> 占い師のようだった。
>> 何となく興味を持った少女はその人物に声をかける。
>恐いもの知らずだな。
怖さより好奇心の方が勝った。でもそれが運のツキ。

>>「さっすがアメリアちゃん♪ セイルーンの巫女頭だけあるな。
>> さあっ! 向こうにまた扉がっ! 正義とアンデッドが君を待ってるぞっ!!」
>ゼルガディスと同じくらいアメリアも扱い安いですもんね。クラヴィスにしてみればお茶の子さいさい、か。
ゼルガディス以上に扱いやすいでしょう。ただ、ゼルガディス以上に反撃してきますが。

>> アメリアは無言で2人を睨みつけた。が、そんなことで怖気づくような2人ではなかった。
>> 彼女の冷たい視線をあっさりと交わしつつ、とりあえず苦笑いを浮かべて、ゼルガディスが言った。
>お互いに拗ねたらこんなもんじゃないですもんね。
ははは(思い描いて……汗)

>> かなり酒が入っているのか、赤い顔をした親父が、完全無視を決め込んでいたクラヴィスをやらしい笑みを浮かべながら見ていた。
>>「よぉ、兄ちゃん。可愛い顔してんじゃねぇか。おじさんの相手してくれよ。何ならベッドの上で可愛がってやってもいいんだぜ」
>> ぴしいっ!
>> 耳に入ってきたおぞましい台詞にクラヴィスの顔は引きつり、身体には悪寒と嫌悪で鳥肌が立っていた。まあ、無理もないが。
>見てみたい!この3人で女装ネタを!
無理っ! 絶対っ! やろうとしたらクーが逃げるっ!

>> そこまではゼルガディスにとってはどうでもいいことだったのだが。
>・・・日常茶飯事・・・とか?
日常茶飯事そうですねー。

>>「じゃあ、お嬢ちゃんはこっちに――」
>> 男が言い終わる前に――
>> どかっ!
>> がすっ!
>> そんな音が食堂に響き渡ったのはほぼ同時だった。
>> クラヴィスが絡んできた親父の鳩尾に蹴りを入れたのと、階段の方から何故か飛んできたビールジョッキがアメリアの腕を掴んでいた男の顔に直撃したせいで、次の瞬間、絡んできた2人の男は床に転がった。
>絶対に”反射”的な行動ですよ。特にゼルガディスは。
気がついたら手が勝手に動いてた。『なぜっ!?』とか言って、ゼルが自分の手を見るんですね。

>> ――かくして。
>> 宿屋創業以来の大乱闘が幕を切って落とされた。
>> ……無論、全てが終わった後立っていたのは、ケンカをけしかけた二人の男ととりあえず他人のフリをしていた少女だけだったのは言うまでもないことである。
>男たちの悲鳴が響き渡り、一人、また一人となぶり殺しにされていく・・・。(こわひ)
でもなってそうです。中には全治二ヶ月とかいそうですし。

>> アメリアはだんっ、と床を踏みつけると、クラヴィスとゼルガディスを交互に指差す。
>>「大体っ! あなたたち、一応聖職者の孫と息子でしょうっ!? なんで浄化呪文がひとっつも使えないんですかっ!? 特にクラヴィスさんっ! 変な情報ばっかり集めてないで、少しは勉強したらどーですかっ!? ゼルガディスさんもっ!」
>どんな情報を披露したんですか。クラヴィス。
それは秘密です(はぁと)

>>「神官が全員浄化呪文使えたら、世の中何にも楽しくないだろ?」
>貴方の判断基準は楽しいかどうかにある、と。
そーですね。彼はシリアス嫌いです。

>> あの言葉は単に『ことあるごとに魔術を使ってる気がする』という意味だった。なにせ、この2人といると何故かリナたちと一緒にいた頃より疲れる。
>>(リナさんよりたちが悪いわ……この人達……)
>そりゃそうでしょう。一人はリナと変わらないけど、パートナー(?)が、ね。片方では止めに入ってくれるがもう片方では悪のりして一緒に冷やかす。雲泥の差ですよ。
故にアメリアはツッコミ役に回ってしまった。昔はもろにボケ役だったのに。

>> やけに詳しいクラヴィスにゼルガディスは半眼を向けた。
>>「……ずいぶん詳しいんだな……」
>> クラヴィスが笑った。手をぱたぱたと振る。
>>「別にたいしたことじゃないって。
>> ただ、昨日、お茶に誘われた綺麗なお姉さんからちょーっと情報を聞き出しただけだし♪」
>>「……いやに帰りが遅いと思ったらそんなことしてたのか……」
>朝帰りですかぁ?(笑)
一応、違います。亡くなったとはいえ、奥さん一筋ですから。

>>「塔の構造からすると、あの扉の向こうが階段っぽいな」
>>「とか言ってまたアンデッドがいたら、わたし怒りますからね」
>「その怒りはアンデッドにぶつけろよ」と切り返しませんか?(クラヴィスなら言うかと思ったのに)
人が予想もしないことをやらかすのがクラヴィスです(笑)

>> 風を切る音とともに少し落下速度が落ちる。とはいえ、思っていたより落ちていないのは、きっとまだしぶとくクラヴィスがマントを掴んでいるせいだろう。とりあえず、闇雲に足を振り回し、クラヴィスを蹴り落とす。
>とりあえず、したことがそれですか。ゼルガディスも案外負けてませんね。
いつもやられてばっかりなので、仕返しとばかりに蹴るわ蹴るわ(笑)

>> クラヴィスの安否さえ気遣わないところを見ると、やはりゼルガディスにとってはどうでもいいことなのだろう。
>これくらいじゃぁ死なないという“信頼”故の行動ですよね!そうですよね!きっとそうですよねぇ!!
……どうでしょ(笑)
でも、『クーはゴキブリ並みの生命力』くらいの認識力はあります。

>>「な・に・し・や・が・る・ん・だっ!? ゼルっ! このオレのぷりちーな顔を蹴りつけた上に問答無用で落っことしやがって! 受身取らなかったら確実に死んでたぞっ!? おいっ!」
>プレイボーイの上にナルシストですか。
て言うか、男がぷりちー言うな。

>>「だ・か・らっ! お前が蹴ったんだろがっ! だいたい悲鳴あげてる最中に蹴るか、普通っ!? いつも言ってるだろ!? 『ツッコミ入れるのは時と場合を考えろ』って!!
>ボケはいい、と。たとえ死ぬ間際“のような”状況であろうとも。(笑)
オッケーです(笑)

>>「多分、俺じゃないと思う。ってゆーか、この靴の大きさから言うとアメリアだと思うんだが」
>>「………」
>>「見た感じ、アメリア落ちてないみたいだから……踏み台にされたんじゃないか? お前」
>> 笑いながらゼルガディスは立ち上がり――
>女の子は殴れませんよね。
殴れませんね。

>>「見た感じ鎧だけど。あの高さから落ちてきたんだ……そーとー痛かったと思うんだが……」
>>「……泣きたくなってきた……」
>>「状況から察するに、落としたのはアメリアちゃんだぞ」
>アメリアは殴れませんよね。(上との違いに注目)
殴れませんね、アメリアは(笑)
即座に『大っ嫌い』と言われそう(笑)

>>「あいつ、絶対俺たちが浄化呪文使えるのに使えないって嘘ついたことに気付いて根に持ってるんだ……!」
>だったらこの程度じゃすみませんよ。彼女の後ろにはゼロスがいますから。
そうですね。彼女はそのこと知りません。

>> ひとしきり泣いたあと。
>泣いたんですか。残酷な魔法剣士さん?
泣きました。痛さで。

>>「実は諸般の事情により二組しか買えなかったんだ。お互いに会話するにゃ二組必要だから、とりあえずアメリアちゃんに渡した。お前は……行動パターンを見る限り、一日のほとんどをアメリアちゃんとともに過ごしているのであまり問題はないかな、と」
>>「……行動パターンのところのコメントはあえて控えるが……諸般の事情って、単に金がなかっただけだろ」
>おとなしく認めなさい。反論できない、と。
認めたらお終い。そこでまたからかわれます。

>> その言葉にクラヴィスを頬を膨らませた。
>こういう“子供っぽい”リアクションをするんですか?
しますね。行動は立派に子供です。真面目になるときは真面目になりますけどね。

>>「しょーがねーだろ? 家からこっそりパクって来た変な像が金貨200枚程度の価値しかなかったんだ」
>家を追い出されたのは窓ガラスじゃなくこれのせいだとか。
ははは(苦笑)

>>「失敬なっ! まともだぞ、オレはっ!?」
>まぁ、窓ガラスの値段気にしてたんだし。(ステンドグラスだったというオチはないですよね)
普通の窓ガラスです。安心してください。

>>『くだらない意地張って、わたしを無視されても困るんですけど』
>見透かされてますね。
見透かしてます。

>では、続きをお待ちしております。
ありがとうございます!

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4185やったあvvvゆっちぃ E-mail 8/30-23:56
記事番号4181へのコメント


ねんねこさん、お久し振りです♪ゆっちぃですv
宿題のほうに見切りをつけ、半ばヤケクソ気味にPCやってます(殴)テスト勉強もあるのに何やってんだ自分………
でも来て良かったです♪ねんねこさんの新シリーズ〜〜〜(きゃあ/////)
クラヴィスさんもバッチリ出演なさってて幸せですvvv
いつものことながら続き楽しみにしてます♪頑張ってくださいね!
ではでは〜。(今からテスト勉強してきますι)

追伸:以前言ってたメールのほうは、テストが終わってからの9/4以降になりそうですι遅筆でごめんなさい(><ι)



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4195お久しぶりですねんねこ 9/1-15:40
記事番号4185へのコメント

ゆっちぃさんは No.4185「やったあvvv」で書きました。
>
>
>ねんねこさん、お久し振りです♪ゆっちぃですv
お久しぶりですっ! メールありがとうございました。

>宿題のほうに見切りをつけ、半ばヤケクソ気味にPCやってます(殴)テスト勉強もあるのに何やってんだ自分………
ははは(汗) でも、勉強は頑張ってください(笑)

>でも来て良かったです♪ねんねこさんの新シリーズ〜〜〜(きゃあ/////)
>クラヴィスさんもバッチリ出演なさってて幸せですvvv
ばっちり出てます! ゼルとアメリアだけだと書けない。アメリア一方的なリアクションで終わりそーな感じで(汗)ゼル、少しは動け、ってな風に。

>いつものことながら続き楽しみにしてます♪頑張ってくださいね!
ありがとうございます♪

>ではでは〜。(今からテスト勉強してきますι)
頑張って! ねんねこも頑張るよ、受験……

>追伸:以前言ってたメールのほうは、テストが終わってからの9/4以降になりそうですι遅筆でごめんなさい(><ι)
いえいえ、楽しみに待ってます(はぁと)
では。

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4182楽しみにしてます^^斉藤ぐみ E-mail 8/30-20:14
記事番号4180へのコメント

>
>こんにちは、ねんねこです。
こんにちは^^
懲りずに新シリーズ突入です
はいっ!頑張ってください!
>あと、感想などでクラヴィスが好きだ、と言って下さった方々、ありがとうございました。
私も、クラヴィス…と言うよりゼルとの絡み(?)が好きです^^

ところで、ここのアメリアちゃんって、原作バージョンですか??
なんか、少し冷ややかな口調してるんで…
でも、ゼルは、アニメバージョンだなぁ…?
ちょっと疑問に想ったぐみでした^^《死》
それでは、続き頑張ってください^^
私も、センジ・ALL…がんばります^^;

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4196頑張りますねんねこ 9/1-15:41
記事番号4182へのコメント

斉藤ぐみさんは No.4182「楽しみにしてます^^」で書きました。
>
>>
>>こんにちは、ねんねこです。
>こんにちは^^
こ……こんにちはっ!(どきどき)

>懲りずに新シリーズ突入です
>はいっ!頑張ってください!
>>あと、感想などでクラヴィスが好きだ、と言って下さった方々、ありがとうございました。
>私も、クラヴィス…と言うよりゼルとの絡み(?)が好きです^^
読んでくださったんですね(//////)ありがとうございます。

>ところで、ここのアメリアちゃんって、原作バージョンですか??
>なんか、少し冷ややかな口調してるんで…
>でも、ゼルは、アニメバージョンだなぁ…?
>ちょっと疑問に想ったぐみでした^^《死》
えーと、基本的に設定とキャラはアニメばーじょんです。が、アニメばーじょんにするとアメリアがちょっとばかし子供になってしまうので、アメリアのみ原作ばーじょん……というかアニメと原作の中間、というところでしょうか。時間的に言うとアニメのTRYが終わったあと、小説第2部中、という感じです。

>それでは、続き頑張ってください^^
>私も、センジ・ALL…がんばります^^;
ありがとうございます。ねんねこも頑張りますのでぐみさんも頑張ってください。続き、楽しみにしています!
では。

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4193禁断の宝石3ねんねこ 9/1-14:25
記事番号4180へのコメント

 ゼルガディスとクラヴィスとはぐれた(置いて行った)アメリアは順調に塔の最上階までいった。アンデッドたちはどうも1階のみにいたらしく、途中2階から4階までの間には特にどうということもなく、通り過ぎていった。
『どこにいるんだっ!? アメリアっ!?』
 行方不明になった子供の居場所を必死に探す親のような口調のゼルガディスにアメリアは少し嬉しくて微笑んだ。
 自分のことを心配してくれている。
 出会った当初は自分が何をしても無関心だったのに。
 アメリアはニコニコ笑いながら言った。
「最上階です。悪の魔道士さん、いないみたいですけど」
『最上階っ!? 1人でっ!?』
 ゼルガディスが素っ頓狂な声をあげる。
『またなんていう無茶を……いいか? 今すぐそっちに行くからそこから動くなよ?
 おい、行くぞ、クラヴィス……おい、クー?』
 そこで急に通信が途絶えた。
 きっとクラヴィスがまた何かしでかしたのだろう。
 そう考えて、アメリアはレグルス盤をズボンのポケットに入れて部屋を見回した。
 最上階にある二つの部屋の一室。今までの何もないがらんどうな部屋とは違って、そこには生活感があった。ベッド、ソファー、机、棚、えとせとらえとせとら。
 アメリアの目に机の上に置かれた小さな宝石箱が映る。細かい細工が施された年代ものの箱。
 アメリアは近づいて箱の蓋を開けた。
「ふぇぇぇぇ」
 思わず感嘆の声をあげた。
 中に入っていたのは、赤や黄や紫やいろいろな色をした宝石。全部で15個あった。
「きれいっ!」
 様々な形をした宝石の一つを手にとって見る。それを光に透かした途端、彼女の瞳に何かの映像が流れ込んできた。

 見えたのは3人の人影だった。
 宿屋の女将と見知らぬ男女。女の方は白いウェディングドレスをまとって男と女将に見せている。男が考え込み、別のドレスを女に見せると、彼女は膨れたそぶりを見せた。慌てて男が手を振ると、女はくすくすと笑った。

「――っ!?」
 思わず宝石から手を離して、アメリアは15個の宝石を凝視した。
 クラヴィスの言葉を思い出す。
『変な事件の最初の被害者……女将さんの息子の婚約者らしいんだよ』
『すっかりすべての記憶をなくしちゃってて、結局一週間たっても治る兆しなし――どころか、同じよーな被害者が14人出ただけ』
 女将の息子の婚約者と14人の被害者。
「まさか――っ!!」
 何かを思い当たってアメリアは息を呑んだ。


「いいか? 今すぐそっちに行くからそこから動くなよ?
 おい、行くぞ、クラヴィス……おい、クー?」
 怪訝な顔をしたゼルガディスの背中にクラヴィスの背中が当たった。それが何故かはすぐにわかった。
 クラヴィスが呟く。
「……囲まれちゃってるみたいだぜ、オレたち」
「……らしいな……」
 辺りを軽く見渡せば、無数の赤く輝く瞳。餌をお預けされて苛立った獣のような唸り声も聞こえてくる。
 レグルス盤に向かってゼルガディスは言った。
「悪い、アメリア。少し遅れる……アメリア? おい、聞いてるのか?」
 何度も呼ぶが返事はない。
 距離的にはそんなに離れていないので、通信不可能になるはずはない。壊れたのだろうか? 急に?
「くそっ!」
 ゼルガディスはとりあえず懐にレグルス盤をしまい、改めて周りを囲んでいるレッサーデーモンを見渡す。
 その数ざっと20匹。
「多くないか、いくらなんでも」
「急に現れたのもなんだかミステリアスでいい感じ♪」
「こういう状況でよくそんな軽口叩けんな……お前」
「やかましい。シリアスは嫌いなんだよ」
 とりあえず、今にも消えそうな明かりの代わりにもう一つ明かりを生み出し、少し高いところに照らした。視界が悪くて後ろにいるのも気がつかず、攻撃されたなど笑い話にもならない。明かりは広い範囲を照らし出した。
 が、その行動が戦闘開始の合図になったのか、レッサ-デーモンたちが一気に吠え、数十条のフレア・アローが生み出された。
 クラヴィスは不敵な笑みを浮かべて言った。
「ゲーム・スタートっ!」
 炎の矢が彼らに向かって飛来すると同時に2人はそれぞれ反対方向に跳躍した。
 ゼルガディスはすばやく剣を引き抜き、呪文を唱えた。
「アストラル・ヴァイン!」
 自分の方に飛んでくる炎の矢を鮮やかにかわし、かわしきれないものは魔力を込めて赤く輝いた剣で叩き斬る。そのまま近くにいたレッサ-でもんを斬りつけて、『力ある言葉』を叫ぶ。
「ブラスト・アッシュっ!」
 術に巻き込まれて、2匹のレッサ-デーモンが塵と化した。
 一方、剣を持たないクラヴィスの武器は、口の早さと素早さだった。あらかじめ唱えておいた風の結界を自分の周りに張り、素早い動きで見事なまでに炎の矢を避けきると、唱えた呪文を解き放つ。
「アストラル・ブレイクっ!」
 アストラル・サイドからの衝撃波にレッサーデーモンは簡単に消滅した。次の呪文の詠唱にかかり、行く手を阻もうとするレッサ-デーモンに両手を突き出す。
「ダイナスト・ブレス!」
 レッサ-・デーモンは氷の彫像と化し、次の瞬間には粉々に砕け散った。
 その横をすり抜け、さらに唱えた呪文でデーモンを打ち倒す。
 それぞれの活躍により、だいぶデーモンの数も少なくなってきたところで、ゼルガディスが急にレッサ-デーモンがいる方とは逆に飛び退った。彼が今までいた場所を光の無知が虚しく行き過ぎる。
「ほぉ、なかなかやるなんだ」
「誰だっ!?」
 明かりの届かない闇から姿を現したのは、老人だった。黒いローブを着て、目元まで深くかぶったフードがなんとも印象的である。
 老人は自分を睨んでいるゼルガディスとこちらを気にしながらも問答無用でデーモンを張り倒しているクラヴィスを交互に見た。
「おぬしらも美しいのぅ。じゃが――」
 クックッと笑って、老人は上を見上げた。
「まずは娘のものから頂くかの」
 誰を指しているのか素早く理解した。ゼルガディスは唱えた呪文を解き放つ。
「エルメキア・ランスっ!」
 すると、老人は闇に解け、別の場所に現れる。
「魔族かっ!?」
 驚きの声をあげるクラヴィス。老人の姿をした魔族は、不気味な笑い声だけを残して、虚空に消えた。
 どこに向かったかはすぐに分かった。
「くそっ!」
 ゼルガディスは舌打ちして、叫ぶ。
「クー、後は任したっ!!」
「りょーかいっ! 任されたっ!!」
 返事を聞いて、高速浮遊で出口に向かうゼルガディスにレッサ―デーモンが吠えた。再び生まれるフレア・アローが放たれる前に、クラヴィスが唱えてあった呪文を叩き込む。
 残ったレッサ―デーモンを相手にクラヴィスは不敵に笑った。
「てめぇらの相手はこのオレだよっ!」
 そのまま呪文を詠唱し、解き放つと同時に指をぱちんっと鳴らした。
「ガルク・ルハードっ!!」
 クラヴィスの唱えた無差別広範囲型攻撃呪文は大爆発とともに、アストラルサイドから一気にすべてのデーモンを滅ぼした。

「まさか、この石……っ!」
 アメリアはうめいて、宝石箱に詰め込まれた15個の宝石を凝視した。
「綺麗じゃろ? その宝石たちは」
 後ろからかけられた声に素早く振り向けば、そこに立っていたのは一人の黒いローブを着た老人。気配すら感じさせなかったこの老人に内心多少驚きながらもアメリアは老人を睨みつけた。
「あなたですねっ!? 街で起こった変な事件の犯人は!!」
 それには答えず、老人は言った。
「綺麗じゃろ? 人間どもの思い出は」
 一歩一歩近づいてくる老人。アメリアもまた一歩一歩後ろに後退していく。
 こみ上げてくる恐怖を押さえ、アメリアは老人を指差した。
「他人の記憶を盗み、宝石にするなんて悪ですっ! このわたし、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンが天に代わって成敗しますっ!
 さあ、改心するなら今のうちですよっ! 奪った記憶をちゃんと皆に返しなさいっ!!」
 アメリアの台詞に老人は笑った。
「美しいのう」
 その言葉に一瞬アメリアは怪訝な顔をしたが、またすぐに警戒する。
 老人が一歩進み、アメリアは一歩退る。
 何度か繰り返して、アメリアの背中が壁に当たった。
「――っ!」
 何かを思いついて、アメリアは素早く呪を唱えた。
 壁に手をつき、放つ。
「ヴァン・レイル!」
 彼女が手をついたところから、蔦のような氷が壁や床を這って、すべてを凍らしていく。
 氷は老人も包んだ。
 多少手荒な方法だが、生きたまま捕獲するのなら、有効な手ではある。すぐにゼルガディスとクラヴィスもやってくる。それまで生きていてくれればそれでいい。あとは彼らが何とかしてくれるだろう。
 アメリアは口の端に笑みを浮かべた。
 が、老人もまた氷漬けにされた中で笑っていた。
 老人を包んでいた氷が粉々に砕け散る。ただの人間にできる芸当ではない。
「魔族!」
 アメリアが叫んだ。老人はアメリアの目をしっかりと見つめた。
 老人が彼女の額を指差す。
「おぬしの美しい思い出、わしにくれんかの?」
                            ≪続く≫

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4199禁断の宝石4ねんねこ 9/1-19:27
記事番号4180へのコメント

 すごい勢いで階段を駆け上り、適当に部屋のドアを蹴破ったゼルガディスの目に映ったのは、ベッドの上に寝かされたアメリアの姿だった。
 揺さぶってはみるが、反応はない。
(遅かった……)
 とりあえず呼吸はしているようだったが、意識はない。街で起こった変な事件の被害者と同じだ。この分だと、目覚めてからすぐに『わたしは誰』と騒ぎ出すのだろう。
 ゼルガディスは自分の愚かさを呪った。
 あの魔族が最上階にアメリアがいることを知っていたのと突然彼女との通信が途切れたのを考えると、彼女はあの時、魔族の結界のうちに閉じ込められたのだろう。途絶えた時点でレッサ-デーモンをすべてクラヴィスに任せ、アメリアのところに向かっていれば、彼女を助けられたかもしれないのに。
 ――とはいえ、今更過ぎたことに後悔してても始まらないのは確かだった。
 今の自分にできることはただ一つ。彼女を元に戻すこと。
 ゼルガディスは部屋を出るとそのまま向かいの部屋のドアに蹴りを入れた。
 すごい音を立て、ドアが開く。
 その部屋の中の中央に立っている老人……魔族を認めて、ゼルガディスは睨みつけた。魔族は手に宝石箱を抱えていた。
「アメリアに何をした? 魔族が」
「エムロドと読んでもらおうかの、青年」
 名を名乗ると、魔族エムロドは宝石箱を開け、石を一つ取り出した。
「人間というのは面白いものだな」
 石を光に透かしてみる。
「記憶を失い、自己を忘れただけで不安や恐怖に駆られる」
「アメリアに何をした、と聞いたんだが?」
「まあ、待て」
 いらいらとした口調のゼルガディスを制し、エムロドは取り出した石をしまい、別の石を取り出すと同じ行動を繰り返した。
「わしはその不安や恐怖が好物でな。とても美味いんじゃよ。じゃが、思わぬデザートがついてきた」
 エムロドは手を止めた。
「記憶を失った人間の身近な人間どもの悲しみ。これもまた美味じゃった。
 後は街の人間どもの恐怖じゃな。
 いつ自分がああなるか。わしがこの塔をうろついている素振りを見せたら、いっそう恐怖心が増幅されたわ。
 どちらも結構な味じゃわい」
 エムロドは再び手を動かした。蒼い宝石を手にとって透かしてみる。
「青年よ。この石はなんじゃと思うか?」
「何なんだ?」
「記憶じゃよ。人間が心に閉まった美しい思い出というやつを結晶にしたもんじゃ。
 ちょうどこれはあの嬢ちゃんのもんじゃな」
 言ってエムロドは石をもった手を少し動かした。同時に彼の瞳の中に映像が流れ込んでくる。
 栗毛の女魔道士と金髪の剣士。彼女と自分の姿も見える。
「――っ!?」
 ゼルガディスは目を見開いた。
 エムロドはその様子を見て喉を鳴らした。
「この石はわしが滅べば持ち主に返る。じゃが、その前に砕いたらどうなるんじゃろうな?」
「やめろっ!」
 知らず知らずのうちに震える身体。
 ゼルガディスは叫んだ。
 下手に動けば、エムロドは石を砕くかもしれない。
 エムロドはふむ、と考え込むと、一言呟いた。
「そうじゃな。まずはもう一人を片付けるか」
 ゼルガディスが訝しげな顔をする。
 エムロドがこちらを指差した。
 自分ではない。
 階段を駆け上る音がした。だんだんと大きくなって、止まる。同時に名を呼ぶ声。
「ゼルっ!」
 エムロドがにやりと笑った。向けた指の先には、今現れたクラヴィスの姿。
 ゼルガディスがそれに気付いた時にはもう遅かった。
 エムロドはクラヴィスの目を見据えて言った。
「おぬしの美しい思い出も頂こうかの」
「は?」
 わけも分からず言われて、クラヴィスは間の抜けた声をあげ――
 何かがすっぽりと抜け落ちるのを感じながら、彼は意識を失った。


「クーっ!」
 記憶を奪われ、意識を失って、前のめりに倒れこむクラヴィスをゼルガディスが受け止めた。
 エムロドの手には新たに翠色の石が握られていた。
「……貴様っ!」
 とりあえずクラヴィスを部屋の外――安全な場所に横たわらせて、ゼルガディスは剣を抜いた。
 魔力を込めると、剣は赤く輝いた。
 そのままエムロドに向かって突っ込んでいく。
 エムロドは蒼と翠の石だけ自分の手に収めると、残りの石を宝石箱ごとゼルガディスに放り投げた。
 ゼルガディスは迷うことなくそれを空いている方の手で叩き落とした。部屋の隅に転がった宝石箱からいくつかの石が転がったが、小さい箱に押し詰められていたおかげでそれぞれがクッションの役割を果たし、石はすべて割れなかった。
 が、さすがのエムロドもこの反応には焦った。避けるか、それを受け止めるか迷った一瞬の隙を突こうと考えていたのだ。まさか問答無用で叩き落とすとは考えもしなかった。
 斬りかかってくるゼルガディスから慌てて身を翻す。彼の剣はエムロドの黒いローブを浅く切り裂いただけだった。が、魔族にとってはあのローブも自分の身体の一部。多少のダメージは負っただろう。
 エムロドは叫んだ。
「叩き落とす、じゃと!? 正気か!? 石が砕けたらどうするつもりじゃ!?」
「やかましいっ! 悪いが俺は見知らぬ他人よりアメリアとクラヴィスが無事ならそれでいいんだよっ!」
 きっぱり言い放って、口の中で呪文を唱える。
「エルメキア・フレイム!」
 人間の胴体ほどの光の柱がエムロドに向かって放たれる。エムロドは空間を渡って難なくそれをかわした。が、それを見越したようにゼルガディスは自分の後ろに突如現れたエムロドに再度斬りかかる!
「ぐはぁっ!?」
 腕の部分をまともに斬られ、エムロドは悲鳴をあげた。
 その拍子に落ちた蒼い石を素早く拾ってゼルガディスはエムロドと少し距離を取った。
(まず、アメリア!)
 拾ったアメリアの記憶の石を懐に押し込め、再び突っ込んでいく。
「エルメキア・ランス!」
 光の槍はエムロドに向かって飛んでいく。エムロドはそれを左手ではたき落とした。無論無傷では済まないが、また空間を渡った瞬間に斬りつけられるよりかは幾分かマシだと判断したのだろう。
ゼルガディスは更にエルメキア・ランスを放つ。
本来ならば、ラ・ティルトあたりで一撃と行きたいところだったがエムロドはまだクラヴィスの記憶の石を持っている。それにどんな影響があるか分からない。とりあえず、小技で攻めていく。
 続けざまに放たれた術を避けるかはたき落とすかしていたエムロドの顔は苦渋に満ちていた。
 これだけの攻撃に耐えたのは、さすが純魔族というべきだろう。その様子はあまりにも苦しげだったが。
 一方、ゼルガディスの方は、少しずつ余裕が見え始めていた。
 取り返すべき石はあと一つ。記憶を封じ込む方法はクラヴィスのおかげで見ることが出来た。後は、指を差されず目を合わせず石を取り返し、エムロドを滅ぼしてしまえば全てが終わる。
 更に呪文を唱える。
「エルメキア――」
 大きく振りかぶった手に淡く光が灯る。
 その瞬間、エムロドは苦し紛れに翠色の石を掴んだ手をゼルガディスに向けた。思わず、ゼルガディスは動きを止める。このまま術を放てば、エムロドは迷わず石を盾にするだろう。集中が途切れ、手の内の光が消えた。
 その様子にエムロドはにやりと笑った。
 石を掴んだ手に強く力を込め――
 ぱきぃぃぃんっ!
 澄んだ音を立てて、翠色の石――クラヴィスの記憶を封じ込めた石はエムロドの手の中で砕け散った。
                       ≪続く≫

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4200短いですιゆっちぃ E-mail 9/1-23:56
記事番号4199へのコメント


ねんねこさんお久し振りです☆ゆっちぃです〜♪
タイトル通り、かなり短い感想ですι
明日もテストだってのにPCなんかしてる私がいけないんですけどね(^^;)

時間ないので、感想は一つに絞らせてくださいね(すみませぬι)
ずばりそう!クラヴィスさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっっ!!(叫)
宝石砕かれてしまって、貴方は一体どうなっちゃうのっ?!!
うぅ〜〜〜気になりますぅっ(><)

―――――てな訳で。次回も楽しみにしてますねvvv
短くってごめんなさいιゆっちぃでした〜☆


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4202感想書いて頂けるだけでありがたいですねんねこ 9/2-16:24
記事番号4200へのコメント

どーも、ねんねこです。
……クラヴィス君、どーなってしまうんでしょーねー(って他人事!?)
なんとかします。ちょっと詰まり気味です(死)
頑張って投稿するので温かく見守ってください。
うあ。短ひ。ごめんなさい、時間ありません。許してください。
それではねんねこでした。


追伸。
テスト頑張って! 応援してるよっ!
って、もう遅い……?
というか、もしかして期末テストってやつですか?
ねんねこの学校二学期制だったので夏休み後にいつもテストあったんですけど……

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4214禁断の宝石5ねんねこ 9/5-15:31
記事番号4180へのコメント

 一年にたった数回の再会の始めはいつも別れていた間の出来事を話すのが習慣になっていた。その中で聞き慣れない単語を聞いて、ゼルガディスは怪訝な顔をした。
「海?」
「そう、海」
 クラヴィスが頷く。ゼルガディスはクラヴィスの顔を見て、天井を見て――そして再びクラヴィスの顔に視線を戻す。
「……海って何?」
「あ?」
 ゼルガディスの問いにクラヴィスは間の抜けた声をあげた。数十秒の沈黙後、何かを思いついたようにぽん、と手を叩く。
「そーか。お前、海を見たことねーんだな」
 ゼルガディスは五歳のとき、『迷いの森』の中の屋敷に来てから一歩も森の外に出たことはなかった。生まれたところも内陸地だったらしいので、海というものが何なのか知らないのだ。
 クラヴィスが唸った。どう説明したら良いのか。
「そーだなー。なんつーか、こうがぁぁぁぁっと広くてばぁぁぁぁんっと一面にたくさんの水があんだよ。それでその水が塩水でしょっぱくてだな」
 手を大きく広げてクラヴィスが説明する。ゼルガディスは首をかしげた。
「池みたいな感じなのか?」
「いや、そーじゃなくて……もっとこうどぉぉぉぉんって感じで無限に続いてんだ。で、波がざぁぁぁぁっと……」
「波?」
「……………」
 疑問が説明を生み、説明が更なる疑問を生む。見事な悪循環にクラヴィスは思わず黙り込んだ。今年で七歳になるこの少年にどうしたら一発で海や波なるものがわかってもらえるだろうか。クラヴィスは部屋の窓に視線を移す。中庭の端にある池を目に留めて、あることを思いつく。
「ちょっと来い」
 クラヴィスはゼルガディスの手を引いて、中庭の池を連れ出した。池とは言ってもかなり大きく、深い。小さな湖といっても良いようなものだった。ゼルガディスがレゾに『湖って何?』との質問をしたところ、『こんなの』と言って作り出したものらしい。クラヴィスはそう聞いていた。
「いいか? 見てろよ」
 クラヴィスが水面に手をつく。水は透明で池の底まで見える。きっと、ベフィス・ブリングかなんかで開けた穴の中に少し離れたところにある小川から水を引いてきたのだろう。
「シーブラスト」
 かなり威力を落として、池の水面に波を生み出す。それを指差して言う。百聞は一見にしかず。口で説明するより実際に見せた方がはるかに手っ取り早い。
「あれが波だ。あれが何度も海を行ってたり来たりする」
「うん。知ってる」
「………………はい?」
 思わぬ返答にクラヴィスが再び間の抜けた声をあげる。ゼルガディスが再度頷いた。
「知ってる。じいちゃんから聞いた。
 それで、あれだろ? 波打ち際で数人で夕日に向かって走りながら『青春だあああっ!』とかって叫ぶんだろ?」
「違うって」
(孫にどんなことを教えてんだ? あの人は)
 沈痛な面持ちでクラヴィスは額に手を当てた。何となくめまいがする。ゼルガディスの未来を想像して。
「クー」
 呼ばれてクラヴィスはゼルガディスを見た。視線の先には呆れた表情のゼルガディスの顔。実際に呆れた口調でゼルガディスが言ってくる。
「おまえさぁ、説明下手くそだな。擬態語と擬声語多すぎ。もっとマシな説明しろよ。あれじゃあ、本当に海を知らない人間が聞いても絶対にわかんないって」
「……………………」
 ゼルガディスの言葉を何度か頭の中で繰り返して、クラヴィスは沈黙する。しばらく経って、ぽつり、と言う。
「なあ、ゼルガディス君」
「何だ?」
「ゼルガディス君は本当は海を知っているのかな?」
 クラヴィスの問いにゼルガディスがふむ、と頷く。
「一応な。行ったことはないけど、じいちゃんがイリュージョンの魔法使って見せてくれた」
 素直に答えてくるゼルガディスにクラヴィスは堅く拳を握った。ゼルガディスは気付いていなかったが。
「へーそーだったのかー。ゼルガディス君は知ってたんだなー。説明下手くそかー」
 はっはっはっと笑い、さりげなくすっと足を動かし――
「余計なお世話だっ! こぉのくそガキっ!!」
 動かした足をそのまま一気にゼルガディスの足に叩きつける!
 とっさのことで、ゼルガディスはそのままバランスを崩す。倒れそうになるゼルガディスの背中にそのまま蹴りを入れ、クラヴィスは彼を池に突き落とした。
 池の水の中、ゼルガディスが必死にもがく。
「のわっ! クー……助け……! 泳げな……」
 クラヴィスは助けを求めるゼルガディスに無情にも背を向ける。
「知らん。自力であがれ」
「人でなしぃぃぃぃぃっ!」
「聞く耳持ちませぇぇぇん」
 言って、クラヴィスは両耳に両手を当て、あさっての方を向く。
 しばらくそうしていたが、その後ぷっつりとゼルガディスの反応が途絶えたので、何となく気になってちらり、と池のほうを盗み見ると。
 ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく。
「をい待てコラ」
 本当に沈んでいくゼルガディスを見て、クラヴィスの顔が思いっきり引きつった。
「マジで泳げねぇのかっ!? お前は!?」
 クラヴィスは慌てて池に飛び込んだ。


 砕いた石を床に落とし、エムロドは哄笑した。
 目の前のゼルガディスからは実に美味しい感情が滲み出てくる。
 絶望。そして、怒り。
 受けたダメージを回復するのにちょうど良い材料だった。
「アストラル・ヴァイン」
 ゼルガディスがまだほのかに赤く輝いていたブロード・ソードに再び魔力を込める。
 そして、一気にエムロドとの間合いを詰めた。
「滅ぼしてやるっ!」
 吼えて、ゼルガディスが剣を振りかぶる。エムロドは空間を渡らず、横に回避することで、それを避けた。剣は虚しく空を薙ぎ――
「がああああああああっ!?」
 エムロドは絶叫した。何が起こったのか理解できずに、自分のわき腹を見る。目に入ったのは、自分の身体に突き刺さった短剣。辛うじて見える刃は赤く輝いていた。
 さっきの呪文、ブロード・ソードに掛けると共に隠し持っていた短剣にも掛けたのだ。そのまま、ゼルガディスは身を翻し、苦痛で隙だらけのエムロドの背中に回りこむ。そのまま、再び剣を振りかぶり、今度はまともにエムロドの腕を薙いだ。
 更に悲鳴をあげるエムロド。その右腕は、ゼルガディスに切り取られ、地面に落ちる前に灰となって虚空に消える。
 ゼルガディスは、カオス・ワーズを唱える。
 それを耳にしたエムロドが目を見開いた。
「貴……様っ! その呪文は……!!」
 同時にゼルガディスの呪文が完成した。
 精霊魔術最強の呪文。一気に解き放つ。
「ラ・ティルト!」
 こぉうっ!!
 エムロドの周りの床に弧を描いた光が、そのまま青白い炎となって、エムロドを包み込む!
 その瞬間。
 宝石箱に残された15個の宝石と、ゼルガディスの懐にあった蒼い宝石は、はじけて消えた。


「あー、死ぬ……かと思った……」
「お……お前のせいだぞ。オレは……は悪くない……からな」
 どぼどぼに濡れて、お互い荒い息をつきながらゼルガディスとクラヴィスは言い合った。クラヴィスが濡れた自分の姿とゼルガディスの姿を交互に見て、嘆息する。
「あーあ。絶対これじゃあレゾに怒られるぞ。ちょートホホなカンジ」
 ゼルガディスが顔をしかめた。
「『ちょー』はやめろ『ちょー』は。本で読んだ伝説のヤマンバを思い出す」
「んじゃ、べらぼうにトホホなカンジ」
「……『とても』とか『すごく』とかそーいうまともな単語はきっとお前の脳にはないんだな」
 ゼルガディスが呟いた。
 ――結局。
 屋敷に戻った二人は、目が見えないはずなのに素早く二人がびしょ濡れになっていることに気付いたレゾにこっぴどく叱られた。


 床に散らばった翠色の破片。
『砕いてみたらどうなるんじゃろな?』
 頭の中で、エムロドの声が響く。
 答えは簡単だった。
 元には戻らない。
 欠片を呆然と見つめる。
 クラヴィスは記憶を失った。生まれてから22年間、今まで生きてきた時間全てを失った。
 自分の事も。アメリアの事も。愛した女性の事も。クラヴィス自身のことさえも。すべて。
 傷ついた身体は治せるけれど。
 傷ついた心は癒せるけれど。
 過ぎた過去には戻れない。
 失った記憶や思い出は、もう手に入らない。
 ゼルガディスは拳を握り締めた。床は座り込む。
 2人で分かち合った大切な思い出をただ1人で抱え込むのは、あまりに寂しすぎる。
 数滴の涙が頬をつたって、床に零れ落ちた。
「要するに――」
「――っ!?」
 突然後ろからした声にゼルガディスは驚いて、仰け反りながら振り返った。涙で濡れた目をごしごしと擦る。
「ア……アメリアっ! 大丈夫だったんだな!?」
 言われて、ゼルガディスの真後ろでぽつん、としゃがんだアメリアがこくん、と頷いた。
「ええまあ一応。なんかほんの数秒前まですっかりきっぱりしっかりと忘れられてた気がしますけど」
 言って、近くに倒れて意識がないクラヴィスとゼルガディスの前で輝く石の破片を交互に見る。
 ゼルガディスの肩越しに、アメリアは石の破片を指差した。
「要するに、石の形に戻れば良いんですよね」
「多分な。確証はないが」
「欠片はこれで全部ですよね?」
「一応な」
 ゼルガディスの答えにアメリアは踏む、とあごに手をやった。
 すぐに納得したように頷くと、アメリアはにっこり微笑んだ。
「なら……大丈夫です」


 レゾの説教はひたすら長かった。
『このままじゃ絶対風邪を引く』と通りがかった屋敷に住んでいたアドニスの言葉で、二人はとりあえず着替えることになり、ゼルガディスの部屋に向かった。
 窓の外を見ると、茜色に染まっていた。屋敷に戻った時は確かにまだ太陽は上にあったはずなのに。
 無言で着替えながら、そのうちゼルガディスが口を開いた。
「なあ、クー」
 クラヴィスはゼルガディスを一瞥しただけだった。レゾの容赦ない長時間の説教に少しばかり(と言うかかなり)ご機嫌斜めのようだった。
そのまま濡れた髪の毛をタオルでごしごしと乱暴に拭きながらクラヴィスは言う。
「ケンカ売るなよ。今のオレはとってもすっごくちょーべらぼうに機嫌悪いからな。
 一言でも気に障るようなことぬかしてみろ。足に漬物石五個くらいつけて池に放り投げてやるからな」
「海に行ってみたい」
「お前、人の話を……聞いて……」
 青筋を立てて、ゼルガディスの方を見ながら言ったクラヴィスの台詞がだんだんと小さくなっていった。クラヴィスの視線の先には、ゼルガディスの真剣な眼差し。
『海に行きたい』
 純粋なゼルガディスの願いだと気付き、クラヴィスは嘆息して髪を掻いた。
 ゼルガディスにでこぴんを食らわして、軽く微笑んで見せた。
「連れてってやるよ……お前が泳げるようになったらな」
 その言葉にゼルガディスは満面の笑みを浮かべた。


「あ? ゼルの笑い話?」
 戻った街の宿屋の食堂で。
 宿屋の息子の婚約者が持ってきた食後のコーヒーを片手にクラヴィスは問い返した。
 アメリアがこくこく頷く。
「そうそう。覚えてますか?」
「もちろん。そりゃあ覚えてるよ。歩く笑い話製造機だしねー、ゼルは」
 クラヴィスが笑ってぱたぱたと手を振った。
「でも一番笑えると言うか間抜けだったのは、年下の女の子にケンカ売って仕返しされたやつだよなーゼル♪」
「言うな。思い出しただけでも腹が立つ」
 青筋を立ててゼルガディスは言った。
 忘れるもんか、あの女だけは。何度いつか見つけ出していっぺん殴り倒そうと心に誓ったか……まだ見つけてはいないが。
 思い出した嫌なことを早く忘れるように頭を振って、ゼルガディスは嘆息する。
(……にしてもしっかりきっぱり復活してやがる)
 クラヴィスの記憶を封じ込めた石は、アメリアが『ちょうど良い』と言うことで初めて使うと言うリザレクションのアレンジ呪文であっさりと直った。何の盛り上がりもなく――別に何かを期待していたわけではないが。
 とはいえ、一応一度は粉々に砕け散ったので、何か影響が出ているのではないかと思って、少し話を聞いてみたのだが――
 ちゃんとしっかり覚えていた。
 一刻も早く忘れて混沌に沈めて欲しい出来事は特に。まるで昨日のことのように話してくれる。ありがたくないが。
 ちなみにクラヴィスには彼が倒れた後のことをかいつまんで説明した。彼の石が粉砕されたことは言っていない。いらぬ不安を抱えさせることもないし、言う必要すらないと思ったから、という事もあるが、彼の大切な思い出をアメリアが新しい魔術の実験台にしたなどとはいくらなんでも言えなかった。『アメリアちゃんの教育の方法が悪いからだっ!』などと問答無用で責められ、仕返しされるのは自分だから。
 自分の事を無視して、昔話に花を咲かせるクラヴィスとアメリアを見て、ゼルガディスは深いため息をついた。


「アメリア」
 自室に戻ろうとする彼女を二階の廊下で呼び止めておきながら、ゼルガディスは何となく続きが言えずに視線を宙に泳がせた。
「何ですか?」
 近づいて、首を傾げるアメリアにゼルガディスは頬を掻いた。視線はやはりどっか遠くに行ったまま。
「あ、いや、その、何だ……さっきは……石を戻してくれて……そ……その……あ、ありがとう」
 その言葉にアメリアは面食らったような顔をする。が、すぐににっこり微笑んだ。
「初めてゼルガディスさんに『ありがとう』って言われた気がします。いつもお礼言う時は『すまん』とか『悪い』とか、素っ気無い言葉だったし」
 ぽかん、とした顔をして、ゼルガディスは昔を振り返ってみる。なんだか恥かしくて、他人に礼を言うことはあまり多くないが……
 ――そういえば確かになかったかもしれない。
 その様子にアメリアが上目遣いでゼルガディスを見た。
「わたしね、クラヴィスさんにちょっとやきもち焼いちゃいました」
「あ?」
 突然変なことを言い出したアメリアにゼルガディスは間の抜けた声をあげた。
 が、至極真面目な表情でアメリアは言ってくる。
「だって、ゼルガディスさん、クラヴィスさんのことで泣いてたんですもの」
(……見てたのか)
 何となく恥ずかしくなって、ゼルガディスはアメリアを半眼で見やる。
「あのなぁ……」
 アメリアはゼルガディスのそんな視線を無視して、言ってくる。
「わたしの時も泣いてくれますか?」
 真剣なアメリアの瞳を見て、ゼルガディスは嘆息した。
(……昔を思い出すな)
 昔、ずっと昔。『海に行きたい』と真剣にクラヴィスに言った自分。クラヴィスはそんな自分に素直に本音で応えてくれた。そんな態度が少し嬉しかった。
 ゼルガディスは素直に答える。
「絶対に泣かない」
 その答えにアメリアは少し不機嫌な顔をした。
「……なんでそう言いきるんですか……」
 むすっとした口調にゼルガディスはアメリアの瞳を見た。きっぱりと言ってやる。
「何があっても俺が守りきってみせるからだ。何もなかったら泣けないだろう。何か不満があるか?」
 鳩が豆鉄砲食らったような顔をして、アメリアははっと我に返ってぶんぶんと首を横に振った。満面の笑顔を浮かべる。
「ゼルガディスさん」
「なんだ?」
「大好きっ!」
「はいっ!?」
 突然の言葉にゼルガディスが顔を真っ赤にして慌てる。その彼を頬に軽くキスをして、アメリアは部屋の扉を開いた。身を翻して、扉の奥に入ると、扉からにゅっと顔だけ出して、ゼルガディスに言う。
「今の人間らしいゼルガディスさんのほうが昔より大好きですっ!」
「そ……そりゃどーも……」
 呆然としたゼルガディスの答えにアメリアはふふ、と笑うと、
「おやすみなさい♪」
 と言って扉を閉めた。
 一人廊下に残されて、ゼルガディスはただ立ち尽くして、真っ赤な顔を片手で隠した。
(今の『大好き』は告白か……? それとも昔との比較の言葉か……?)
 何となく考え込む。前者の方がゼルガディスにとってはありがたかったのだが。
 そんなゼルガディスの背後に、突然にゅっと顔が出た。驚くゼルガディスの方にクラヴィスは笑いながら手を回した。
「青い春だぁねぇぇ、ゼルガディス君。次の目的地は海に決まったな。波打ち際を夕日に向かって走りながら『青春だぁぁぁっ!』って叫ぶんだろ?」
 どうやら、影で先程のことを盗み見ていたらしい。
 ゼルガディスが半眼で睨んだ。
「あのなぁ……」
「あーでもダメだなー。お前、万年カナヅチだし。海に行って、アメリアちゃんを『何があっても守りきってみせる』ために、そのまま海に沈んでいったら、笑い話が増えるだけだもんなー」
 人の話を無視して笑いながら言うクラヴィス。ゼルガディスは静かに彼の名前を呼んだ。
「……クラヴィス」
「何だ?」
 問い返すクラヴィスの手を自分の方から離すと、ゼルガディスはそのままクラヴィスに蹴りを入れた。とはいえ、クラヴィスも間抜けではない。そのまま後ろに飛んで交わす。が、すぐ後ろに階段が迫っていて、彼はバランスを崩しかけた。ゼルガディスはそのままもう一度蹴りを入れる。
「ぬよっ!?」
 奇妙な声をあげて、辛うじてだがクラヴィスが避ける。が、そのままバランスをまともに崩して、頭から階段を転がっていった。途中の踊り場で頭を下にして目をまわしているクラヴィスにゼルガディスはにぃ、と笑って見せた。
「いいか? これ以上俺をからかうなよ? 
 今の俺は『とってもすっごくちょーべらぼうに』無敵状態だからな」


 余談だが。
 後日、上司に言われた仕事をこなし終わって三人のところに戻ってきたゼロスが、『ずっと守るって言ってたくせにっ!』と自分勝手に激怒するアメリアと、『肝心な時にいなくなりやがって!』とこれまた自分勝手に激怒するゼルガディスによって、たこ殴りの刑に処されたことだけは記しておく。
                           ≪終わり≫


書いてて思ったんですが、文章構成めちゃくちゃですな(汗)急に場面変わっても一瞬『どこっ!?』て感じになる部分が多々あるという(殴)しかもだんだんゼルアメじゃなくてただの話に成り下がってきていると言う(死)ううう(涙)
今回の番外編はゼルとクーの話です。ゼルが殴り倒してやると心に誓った女の子が出てきます。実は『秘密の約束』の前に書いたクラヴィスとの再会話の没ネタになったやつなんですが……とさりげなく次回予告をするのは良いが、さっさと続き書かないとなー、ねんねこ。
と言うわけで、また次回お会いしませう。今まで読んでいただきまことにありがとうございました(ぺこり)

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4220Re:禁断の宝石5笹森 明日香 E-mail 9/5-23:00
記事番号4214へのコメント


お久しぶり出す。笹森明日香です。
3と4は省略させてもらいます。おもしろいのですが、感想は書きにくいです。


>「あれが波だ。あれが何度も海を行ってたり来たりする」
>「うん。知ってる」
>「………………はい?」
> 思わぬ返答にクラヴィスが再び間の抜けた声をあげる。ゼルガディスが再度頷いた。
>「知ってる。じいちゃんから聞いた。
>それで、あれだろ? 波打ち際で数人で夕日に向かって走りながら『青春だあああっ!』とかっ叫
ぶんだろ?」
レゾもやったことがあるんでしょうね。(笑)

>(孫にどんなことを教えてんだ? あの人は)
やってみて欲しいことをいろいろと・・・。

> 沈痛な面持ちでクラヴィスは額に手を当てた。何となくめまいがする。ゼルガディスの未来を想像して。
アメリアや、ガウリィ、グレイシアに負けないギャグキャラに。

>「おまえさぁ、説明下手くそだな。擬態語と擬声語多すぎ。もっとマシな説明しろよ。あれじゃあ、本当に海を知らない人間が聞いても絶対にわかんないって」
>「……………………」
> ゼルガディスの言葉を何度か頭の中で繰り返して、クラヴィスは沈黙する。しばらく経って、ぽつり、と言う。
>「なあ、ゼルガディス君」
>「何だ?」
>「ゼルガディス君は本当は海を知っているのかな?」
> クラヴィスの問いにゼルガディスがふむ、と頷く。
>「一応な。行ったことはないけど、じいちゃんがイリュージョンの魔法使って見せてくれた」
> 素直に答えてくるゼルガディスにクラヴィスは堅く拳を握った。ゼルガディスは気付いていなかったが。
昔はゼルガディスの方が優勢だったのでしょうか。
それにしても、こんな事をする7歳の子供って・・・なんか嫌だ。

> しばらくそうしていたが、その後ぷっつりとゼルガディスの反応が途絶えたので、何となく気になってちらり、と池のほうを盗み見ると。
> ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく。
>「をい待てコラ」
> 本当に沈んでいくゼルガディスを見て、クラヴィスの顔が思いっきり引きつった。
>「マジで泳げねぇのかっ!? お前は!?」
> クラヴィスは慌てて池に飛び込んだ。
 泳いだ経験はあるのでしょうか。
 
>「『ちょー』はやめろ『ちょー』は。本で読んだ伝説のヤマンバを思い出す」
どんな本が置いてあるんですか。あなた達の家には。
まさか、レゾがゼルガディスに薦めた本じゃないですよね。

>「んじゃ、べらぼうにトホホなカンジ」
>「……『とても』とか『すごく』とかそーいうまともな単語はきっとお前の脳にはないんだな」
”カンジ”はいいんですね。
 
>「ええまあ一応。なんかほんの数秒前まですっかりきっぱりしっかりと忘れられてた気がしますけど」
貴方と同じくらい大事な人がいるんですよ。

> レゾの説教はひたすら長かった。
>『このままじゃ絶対風邪を引く』と通りがかった屋敷に住んでいたアドニスの言葉で、二人はとりあえず着替えることになり、ゼルガディスの部屋に向かった。
> 窓の外を見ると、茜色に染まっていた。屋敷に戻った時は確かにまだ太陽は上にあったはずなのに。
長生きすると、時間の感覚が変わっていく。

 
>「あ? ゼルの笑い話?」
> 戻った街の宿屋の食堂で。
> 宿屋の息子の婚約者が持ってきた食後のコーヒーを片手にクラヴィスは問い返した。
> アメリアがこくこく頷く。
>「そうそう。覚えてますか?」
他に聞くことはなかったんですか。

>「もちろん。そりゃあ覚えてるよ。歩く笑い話製造機だしねー、ゼルは」
登場人物がどんどん機械になっていく。

 
> とはいえ、一応一度は粉々に砕け散ったので、何か影響が出ているのではないかと思って、少し話を聞いてみたのだが――
> ちゃんとしっかり覚えていた。
> 一刻も早く忘れて混沌に沈めて欲しい出来事は特に。まるで昨日のことのように話してくれる。ありがたくないが。
人間なんてそんなものですよ。特に親とか、子供の頃から一緒にいた人なんて。レゾもそうだったんじゃないですか。

> ちなみにクラヴィスには彼が倒れた後のことをかいつまんで説明した。彼の石が粉砕されたことは言っていない。いらぬ不安を抱えさせることもないし、言う必要すらないと思ったから、という事もあるが、彼の大切な思い出をアメリアが新しい魔術の実験台にしたなどとはいくらなんでも言えなかった。『アメリアちゃんの教育の方法が悪いからだっ!』などと問答無用で責められ、仕返しされるのは自分だから。
よく解ってますね。勝てないと感じたんですか。

>「青い春だぁねぇぇ、ゼルガディス君。次の目的地は海に決まったな。波打ち際を夕日に向かって走りながら『青春だぁぁぁっ!』って叫ぶんだろ?」
おもしろそうですね。

> 問い返すクラヴィスの手を自分の方から離すと、ゼルガディスはそのままクラヴィスに蹴りを入れた。とはいえ、クラヴィスも間抜けではない。そのまま後ろに飛んで交わす。が、すぐ後ろに階段が迫っていて、彼はバランスを崩しかけた。ゼルガディスはそのままもう一度蹴りを入れる。
>「ぬよっ!?」
> 奇妙な声をあげて、辛うじてだがクラヴィスが避ける。が、そのままバランスをまともに崩して、頭から階段を転がっていった。途中の踊り場で頭を下にして目をまわしているクラヴィスにゼルガディスはにぃ、と笑って見せた。
>「いいか? これ以上俺をからかうなよ? 
> 今の俺は『とってもすっごくちょーべらぼうに』無敵状態だからな」
クラヴィスの”石”が砕かれたときには負けると思いますけれどね。

>余談だが。
> 後日、上司に言われた仕事をこなし終わって三人のところに戻ってきたゼロスが、『ずっと守るって言ってたくせにっ!』と自分勝手に激怒するアメリアと、『肝心な時にいなくなりやがって!』とこれまた自分勝手に激怒するゼルガディスによって、たこ殴りの刑に処されたことだけは記しておく。
八つ当たりはこの人”達”の十八番。

>今回の番外編はゼルとクーの話です。ゼルが殴り倒してやると心に誓った女の子が出てきます。
えぇ〜 ゼルガディスが海に『青春だぁぁぁっ!』って叫びに行く話じゃないんですかぁ〜・・・・ウソです。ごめんなさい。そんなゼルガディスは見たくありません。

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4226再びこんにちは!ねんねこ E-mail 9/6-14:34
記事番号4220へのコメント

笹森 明日香さんは No.4220「Re:禁断の宝石5」で書きました。

>お久しぶり出す。笹森明日香です。
>3と4は省略させてもらいます。おもしろいのですが、感想は書きにくいです。
すみません……書きにくくって(涙)いや、まあ、一応下手くそながら戦闘シーン書いたんですけど……魔法で力押しかいみたいな……(泣)

>>「あれが波だ。あれが何度も海を行ってたり来たりする」
>>「うん。知ってる」
>>「………………はい?」
>> 思わぬ返答にクラヴィスが再び間の抜けた声をあげる。ゼルガディスが再度頷いた。
>>「知ってる。じいちゃんから聞いた。
>>それで、あれだろ? 波打ち際で数人で夕日に向かって走りながら『青春だあああっ!』とかっ叫
>ぶんだろ?」
>レゾもやったことがあるんでしょうね。(笑)
さすがにレゾがやったら怖いなー(汗)

>>(孫にどんなことを教えてんだ? あの人は)
>やってみて欲しいことをいろいろと・・・。
やってみて欲しいことっ!? 波打ち際で数人で夕日に向かって走りながら『青春だあああっ!』とか叫ぶのをっ!? レゾ……あんたは一体ゼルに何を期待してたんだ(汗)

>> 沈痛な面持ちでクラヴィスは額に手を当てた。何となくめまいがする。ゼルガディスの未来を想像して。
>アメリアや、ガウリィ、グレイシアに負けないギャグキャラに。
今だって十分ギャグキャラです(断言)

>>「おまえさぁ、説明下手くそだな。擬態語と擬声語多すぎ。もっとマシな説明しろよ。あれじゃあ、本当に海を知らない人間が聞いても絶対にわかんないって」
>>「……………………」
>> ゼルガディスの言葉を何度か頭の中で繰り返して、クラヴィスは沈黙する。しばらく経って、ぽつり、と言う。
>>「なあ、ゼルガディス君」
>>「何だ?」
>>「ゼルガディス君は本当は海を知っているのかな?」
>> クラヴィスの問いにゼルガディスがふむ、と頷く。
>>「一応な。行ったことはないけど、じいちゃんがイリュージョンの魔法使って見せてくれた」
>> 素直に答えてくるゼルガディスにクラヴィスは堅く拳を握った。ゼルガディスは気付いていなかったが。
>昔はゼルガディスの方が優勢だったのでしょうか。
>それにしても、こんな事をする7歳の子供って・・・なんか嫌だ。
あーゆー祖父に育てられれば、こーゆー孫になります。嫌だな……第二のレゾかい。

>> しばらくそうしていたが、その後ぷっつりとゼルガディスの反応が途絶えたので、何となく気になってちらり、と池のほうを盗み見ると。
>> ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく。
>>「をい待てコラ」
>> 本当に沈んでいくゼルガディスを見て、クラヴィスの顔が思いっきり引きつった。
>>「マジで泳げねぇのかっ!? お前は!?」
>> クラヴィスは慌てて池に飛び込んだ。
> 泳いだ経験はあるのでしょうか。
ないと思います。あ、でも小さい池かなんかでばじゃばしゃ遊んだりしたことはあるかと…… 

>>「『ちょー』はやめろ『ちょー』は。本で読んだ伝説のヤマンバを思い出す」
>どんな本が置いてあるんですか。あなた達の家には。
異界のことが記された本(笑)でも、クレアバイブルじゃない。

>まさか、レゾがゼルガディスに薦めた本じゃないですよね。
……まあ、ゼルが表に出られない以上、本を買ってくるのはじーさんかあの屋敷の住人くらいですから……

>>「んじゃ、べらぼうにトホホなカンジ」
>>「……『とても』とか『すごく』とかそーいうまともな単語はきっとお前の脳にはないんだな」
>”カンジ”はいいんですね。
とりあえず良いらしいです。
 
>>「ええまあ一応。なんかほんの数秒前まですっかりきっぱりしっかりと忘れられてた気がしますけど」
>貴方と同じくらい大事な人がいるんですよ。
でもアメリアはやきもち焼き。自分よりクラヴィスのほうが大切なのでは、という不安もあるんでしょうね。

>> レゾの説教はひたすら長かった。
>>『このままじゃ絶対風邪を引く』と通りがかった屋敷に住んでいたアドニスの言葉で、二人はとりあえず着替えることになり、ゼルガディスの部屋に向かった。
>> 窓の外を見ると、茜色に染まっていた。屋敷に戻った時は確かにまだ太陽は上にあったはずなのに。
>長生きすると、時間の感覚が変わっていく。
年寄りになるほど時間が経つのが早く感じられるってやつですか……ねんねこもそーなんですけど……マズいな(汗)

>>「あ? ゼルの笑い話?」
>> 戻った街の宿屋の食堂で。
>> 宿屋の息子の婚約者が持ってきた食後のコーヒーを片手にクラヴィスは問い返した。
>> アメリアがこくこく頷く。
>>「そうそう。覚えてますか?」
>他に聞くことはなかったんですか。
一番アメリアが聞きたい話でしょう。

>>「もちろん。そりゃあ覚えてるよ。歩く笑い話製造機だしねー、ゼルは」
>登場人物がどんどん機械になっていく。
大いに結構です。って、他に誰か機械になりましたっけ?

>> とはいえ、一応一度は粉々に砕け散ったので、何か影響が出ているのではないかと思って、少し話を聞いてみたのだが――
>> ちゃんとしっかり覚えていた。
>> 一刻も早く忘れて混沌に沈めて欲しい出来事は特に。まるで昨日のことのように話してくれる。ありがたくないが。
>人間なんてそんなものですよ。特に親とか、子供の頃から一緒にいた人なんて。レゾもそうだったんじゃないですか。
とはいえ全く嬉しくない。さっさと忘れろ、そんなこと、というようなことがまあよくぺらぺらと出てくる、て感じなんですね。

>> ちなみにクラヴィスには彼が倒れた後のことをかいつまんで説明した。彼の石が粉砕されたことは言っていない。いらぬ不安を抱えさせることもないし、言う必要すらないと思ったから、という事もあるが、彼の大切な思い出をアメリアが新しい魔術の実験台にしたなどとはいくらなんでも言えなかった。『アメリアちゃんの教育の方法が悪いからだっ!』などと問答無用で責められ、仕返しされるのは自分だから。
>よく解ってますね。勝てないと感じたんですか。
口では負ける。絶対に。体力勝負では……互角でしょうけど、戦う気力もないんですね。きっと。

>>「青い春だぁねぇぇ、ゼルガディス君。次の目的地は海に決まったな。波打ち際を夕日に向かって走りながら『青春だぁぁぁっ!』って叫ぶんだろ?」
>おもしろそうですね。
おもしろそうです。ゼルが壊れたら、そういうこともできるでしょうが……当分は無理ですね。

>> 問い返すクラヴィスの手を自分の方から離すと、ゼルガディスはそのままクラヴィスに蹴りを入れた。とはいえ、クラヴィスも間抜けではない。そのまま後ろに飛んで交わす。が、すぐ後ろに階段が迫っていて、彼はバランスを崩しかけた。ゼルガディスはそのままもう一度蹴りを入れる。
>>「ぬよっ!?」
>> 奇妙な声をあげて、辛うじてだがクラヴィスが避ける。が、そのままバランスをまともに崩して、頭から階段を転がっていった。途中の踊り場で頭を下にして目をまわしているクラヴィスにゼルガディスはにぃ、と笑って見せた。
>>「いいか? これ以上俺をからかうなよ? 
>> 今の俺は『とってもすっごくちょーべらぼうに』無敵状態だからな」
>クラヴィスの”石”が砕かれたときには負けると思いますけれどね。
アメリアに告白まがいのことを言われたら、そりゃあゼルも無敵になります。

>>余談だが。
>> 後日、上司に言われた仕事をこなし終わって三人のところに戻ってきたゼロスが、『ずっと守るって言ってたくせにっ!』と自分勝手に激怒するアメリアと、『肝心な時にいなくなりやがって!』とこれまた自分勝手に激怒するゼルガディスによって、たこ殴りの刑に処されたことだけは記しておく。
>八つ当たりはこの人”達”の十八番。
達!? 達なんですか!? 

>>今回の番外編はゼルとクーの話です。ゼルが殴り倒してやると心に誓った女の子が出てきます。
>えぇ〜 ゼルガディスが海に『青春だぁぁぁっ!』って叫びに行く話じゃないんですかぁ〜・・・・ウソです。ごめんなさい。そんなゼルガディスは見たくありません。
色々あって海は次の次あたりの話に出てきます。『青春』うんぬんは出てこないと思いますが……
次回のシリーズは、セイルーンですね。クラヴィス君が主人公です。
というわけでねんねこでした。

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4233はじめまして〜!!!桜華 葉月 9/7-02:52
記事番号4214へのコメント

いつも感想を書こうと思いつつも、どんな感想だったか忘れる某クラゲ並の脳味噌を持つ桜華で〜す。はじめまして〜!!!
いつも楽しく読んでます。
クラヴィスが出ると、ゼルがギャグキャラとなり、アメリアとLOVEな展開がいっぱいで、すご〜く面白いです。
でも基本的な内容はシリアスだからとってもテンポよく読んでます。
クラヴィスは私の中でお気に入りキャラベスト10に入るくらい好きです。
頑張ってふざけることに命を懸けて下さい。(笑)
ところでクラヴィスが過去に愛した人ってどんな人か?そのなれそめは?
ちょっと気になります。いつか、詳しく聞いてみたいです。
ちなみにあたしもシリアスな雰囲気はぶちこわしたくなる。(笑)
では、いつも楽しませてくれてありがとうございました。

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4235いつも読んで頂いてたそうで……ありがとうございますねんねこ E-mail 9/7-15:24
記事番号4233へのコメント

桜華 葉月さんは No.4233「はじめまして〜!!!」で書きました。
>
>いつも感想を書こうと思いつつも、どんな感想だったか忘れる某クラゲ並の脳味噌を持つ桜華で〜す。はじめまして〜!!!
はじめましてっ! ねんねこですっ!

>いつも楽しく読んでます。
ありがとうございますぅぅぅっ!(嬉)

>クラヴィスが出ると、ゼルがギャグキャラとなり、アメリアとLOVEな展開がいっぱいで、すご〜く面白いです。
はい、クラヴィス出てるとゼルがギャグキャラに変化します。こっちがゼルの地だとねんねこは思っているので。

>でも基本的な内容はシリアスだからとってもテンポよく読んでます。
そう言って頂けると嬉しいです^^
だらだらとした話は読んでてあまり面白くないと思うので、なるべくテンポ良く書いてる(つもり)なのですが……
そのせいで、状況をあまり理解されないことが多いという……(汗)

>クラヴィスは私の中でお気に入りキャラベスト10に入るくらい好きです。
>頑張ってふざけることに命を懸けて下さい。(笑)
おっ、ここにもいましたね。クラヴィスがお気に入りという方。
ありがとうございます。

>ところでクラヴィスが過去に愛した人ってどんな人か?そのなれそめは?
>ちょっと気になります。いつか、詳しく聞いてみたいです。
実は次の話はクラヴィスが主人公なんですけど、ほんの少しだけ出てきます。
過去の思い返し、という奴でですが……ちょっとクラヴィスの裏設定的な話になりますが……良かったら、読んでみてください……ってなるべく早く投稿いたします(汗)

>ちなみにあたしもシリアスな雰囲気はぶちこわしたくなる。(笑)
ねんねこもです(笑)

>では、いつも楽しませてくれてありがとうございました。
かんそうありがとうございました〜! これからもよろしくお願いします(ぺこり)ねんねこでした!