◆−薔薇の気持ち・・・フィリアバージョン−アガサ(9/24-00:41)No.4421
 ┗薔薇の気持ち・・・ゼロスバージョン−アガサ(9/24-00:52)No.4422
  ┣Re:初めまして−久賀(9/24-22:25)No.4428
  ┃┗Re:初めまして−アガサ(9/24-23:10)No.4429
  ┣薔薇に秘めた想い。−葵 芹香(9/25-00:55)No.4435
  ┗おまけ1・・・彼女が紅茶を飲む理由(ギャクです)−アガサ(9/27-22:11)No.4466


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4421薔薇の気持ち・・・フィリアバージョンアガサ E-mail 9/24-00:41


NOVEL1の方に送らせてもらった話がツリー落ちかけてるのに、突発的に別の話が書きたくなり、これを書きました。時間的には小説完結直後のゼロスとフィリアの他愛ないお話。(少しフィリア可愛そうかな)。内容的には、「茶会は踊る、されど二人の恋はまだまだ進みそうにない」といった感じです。一応、フィリアバージョンとゼロスバージョンに分かれてます。

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フィリアバージョン:

 永遠に続くかと思われた夏が、いつの間にか秋の涼しさに代わる頃、暑さに弱っていた草花も元気を取り戻し、秋特有の落ち着いた色合いの花を咲かせていた。ここ、骨董品と武器を扱うフィリアの店でもそれは同じであった。
麦藁帽子の下で、豊かな黄金の髪が風に揺れる。食卓に飾る一枝を玄関脇に植えている薔薇から切っていたフィリアは、風の声に耳を傾け、何処までも青い高い空に目をやる。それは予感なのか、少し早いが彼女はアフタヌーンティーの準備をするため、帽子を取ると店の中に戻った。今日のお茶には久しぶりのお客さんが来そうだ。

「フィリアさん、お久しぶりです」
「何しにきたんですか、生ゴミ魔族」
 予感は的中、ポットに熱湯を注いだのを見計らったように、テーブル席に現れる獣神官。まるでそこが自分の指定席だと言わんばかりの笑顔。その笑顔にドキッとする自分がいる。そしてそれを責める声もまたフィリアの胸の中で木霊している。
「もちろん、ヴァル君の監視ですよ」
「ヴァルは渡さないと言ってるでしょう!」
 あなたの目的はそれだから、私は何時も同じことを言ってしまう。
「嘘ですよ。フィリアさんのお茶を飲ませに貰いに来たんですよ。仕事仕事で,過労死寸前なんですから。慰めてくださいよ」
 いつもの笑いを浮かべ気弱に言う彼に、気遣う言葉一つ掛けたいのに、口から出てくるのは怒った声。
「何処で悪事を働いてきたんですか!!」
 いや〜、それは内緒です。飄々と柳に風という言葉がぴったりくる態度でティーカップを傾ける彼、自分の入れるお茶を飲む彼の口許を見ていると、頬が紅くなる時がある。でもこれは許されぬ想い。だから私はこのお茶を入れる。
「紅茶の葉っぱ、変えました?」
香りを嗅ぎ、舌の上で転がしながら味わい、ゼロスは小首を傾げる。少し甘い優雅な香。
「ローズティーですわ」
 茶葉と一緒にバラの花びらも一緒に入れて飲む、フレバーティーである。ゼロスは香気を吸い込むと、テーブルの上に置かれた水差しの薔薇の枝に顔を近づけ納得する。
「この薔薇と同じ香ですね」
「ええ、玄関脇にある薔薇から取ったものですわ」
胸の内で別の言葉が囁かれる
・・・アナタノタメニソダテタ薔薇デス。
 知っていますか、薔薇の花言葉は『愛』、でももう一つの意味があることを。
under the Rose、それは『秘密』を表す言葉。世界中の誰にも知られてはいけない想い。あなたは魔族で私は竜族。あなたにとって、私は仕事(ヴァル)の傍にいるだけの存在。あなたがその気になれば、私を殺しヴァルを連れていくなんて花を手折るより容易いこと。そうしないのは、まだその時が来ていないだけ。
そんな私があなたに愛を告白してどうなるでしょうか?あなたは笑いますか、それとも怒りますか。それでも良いです。例え軽蔑でも、蔑みでもあなたが私を刹那見てくれるなら。でも路傍の石にそれだけの価値なんかありません。
 今日、あなたが訪れてくれるような気がした。でもそれは予感なんかじゃない。
それは私の願い、あなたが来ぬ日々私が願っていたこと。
こんな気持ちをあなたが知れば、二度とここには来ないでしょう。だから私は薔薇を育てます。全てを秘密に隠すため。今日も私はこのお茶飲みます。弱虫な私の口許からこの想いが溢れ出すのを塞ぐ為。


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4422薔薇の気持ち・・・ゼロスバージョンアガサ E-mail 9/24-00:52
記事番号4421へのコメント

 この話を書くに当たって、薔薇の花言葉や伝説を調べなおしたんですが。薔薇って本当に色々な花言葉がありますね。色だけじゃなく、時代や咲き具合によっても違うし。また別の機会に書いてみたいです。
 ではゼロスバージョンです。

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ゼロスバージョン

 フィリアの店に行くのは本当に久しぶりだった。魔族の人手(?)不足は深刻なものがある。使い勝手が良いと言う理由で、使い走りをさせられてる彼は見事な超過勤務。たまには残業拒否もしてみたいが、今回は上司じきじきに現場に出てきたので、やもえない。それでもこんなに長い間、彼女を訪れなかったのは初めてなので、柄にもなく気恥ずかしくって、アストラルサイドから様子を覗ってしまった。
 澄み渡った秋空の下、店先の僅かなスペースを利用した小さな花壇で、お目当ての彼女は薔薇の手入れに余念がなかった。あんな花はこないだ来た時はなかった筈、そう思うと彼女との間の時間の流れを感じてしまう。
黙々と薔薇の世話をする彼女の後姿を見ていたものなので、急に立ちあがりちょうど自分の隠れている辺りに投げかけてきた視線と目があった気がして。その美しさに気を取られてしまう。フィリアの瞳はそれはそれは深い蒼で、ゼロスがもっとも気にいっているものの一つだ。見えているはずないのに、時々妙に勘の鋭い所があり、ゼロスを焦らすのだ。
 立ちあがったフィリアは薔薇を一枝切り取り、店に入っていく。ゼロスもそれにつれて意識を店内に移していく。
 フィリアは手際良く午後のお茶の準備をしていく。ポットとティーカップはもう暖められており、今は薔薇の棘を抜いている。後は水差しをテ−ブルに置けばセッティング完了である。
 白い指先が器用に棘を折っていく。ゼロスはその指先を見つめながら、薔薇に嫉妬するする自分を自覚する。薔薇は彼女の手によって切りとられた。彼女によって滅びを与えられる自分を夢想してしまう。破滅的な想いだが、振り切り難い誘惑である。
 そんな思惑などフィリアは知ることなく、水差しをテーブル中央に置いた。ポットの蓋を開け、スプーンでお茶葉を掬い取る。ここで、ゼロスは自分の妄想から覚め、フィリアの前の現実空間に身を躍らせる。いつもの仮面を被り。
「フィリアさん、お久しぶりです」

 いつもの台詞、いつもの返答、まるで舞台の上の役者。それでもあなたの表情はいつも生き生きしていて、輝いていて僕を魅了する。特に頬を紅く染め怒った顔が殊の外チャーミングで。だから僕もつい言葉を滑らしてしまいます。
「仕事仕事で,過労死寸前なんですから」
「何処で悪事を働いてきたんですか!!」
 ほら怒った。ここで、ルビーアイ様復活と滅亡の話をしたら、あなたはどんな顔をするでしょう。権力欲に塗れた愚かな神官達に怒り、嘆きますか。それともリナさん達の活躍でこの世が救われたことに安堵しますか。そんな顔なら見てみたいですね。でも・・・
 それは内緒です。だって、あなたは泣くでしょうから、あのやるせない魔王様の為に。僕以外の誰かの為に泣くあなたの涙を見たくありませんから。だから、口を噤んで紅茶を飲みます。・・・っん?紅茶はいつもと同じですが、別の香がします。なんとも言えない魅力的な香。それは彼女が世話をしている薔薇の香。
 愛、期待、戒め、諦め。正負入り混じった想いが香には満ちている。全て彼女の自分への想い。僕はそっとフィリアさんを盗み見る。その顔は怒り以外のものでうっすらと染まっている。僕は今まで気づかなかった自分の鈍感さに笑い出したくなりました。もちろん魔族にあるまじき喜びを含んだ笑いです。でも僕が気づいたことはもうしばらくフィリアさんには内緒にしておきましょう。だって今僕の気持ちを言っても、悲しいけど信じてもらえないかもしれませんし、彼女を困惑させるだけかもしれません。それにこの想い一度告げたなら、僕は彼女の全てを奪い取りますから。
 ああだけど一つだけ彼女に教えたほうが良いかもしれない。under the Rose、それは『秘密』を表す言葉。でも地中にどんなに秘密を隠しても、地上の花はお喋りだと言うことを。薔薇に香を与えたのは古の愛の神、薔薇の香はどんな言葉よりも雄弁に愛を語ることを。
 それを教えた時の彼女の顔を想像して、ちょっと意地悪な笑いをながら、僕はもう一杯お茶を頼みます。あなたの想いを味わうために。


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4428Re:初めまして久賀 9/24-22:25
記事番号4422へのコメント

初めまして。久賀と申します。
すごく綺麗なお話ですね。

> この話を書くに当たって、薔薇の花言葉や伝説を調べなおしたんですが。薔薇って本当に色々な花言葉がありますね。色だけじゃなく、時代や咲き具合によっても違うし。また別の機会に書いてみたいです。
私も時々、セロフィリのイマジネーションを高めるため(笑)、花言葉の本などに目を通しますが、薔薇って本当に花言葉の宝庫ですよね。でも、言葉を変えればそれだけ幾通りもお話の作り甲斐があると言うことでしょうか?別の機会を楽しみにしておりますv
> フィリアの店に行くのは本当に久しぶりだった。魔族の人手(?)不足は深刻なものがある。使い勝手が良いと言う理由で、使い走りをさせられてる彼は見事な超過勤務。たまには残業拒否もしてみたいが、今回は上司じきじきに現場に出てきたので、やもえない。
私もやってみたいです、残業拒否(涙)。
> 白い指先が器用に棘を折っていく。ゼロスはその指先を見つめながら、薔薇に嫉妬するする自分を自覚する。薔薇は彼女の手によって切りとられた。彼女によって滅びを与えられる自分を夢想してしまう。破滅的な想いだが、振り切り難い誘惑である。
セロフィリの恋の結末を考える上で、かなり高確率でヒットする選択肢ですよね。
おそらくゼロスにとっては死(=滅び)より甘美な誘惑。ラブラブが好みな私ですが、2人とも幸せならそれでもいいかも、と時々思ってしまいます。
> 愛、期待、戒め、諦め。正負入り混じった想いが香には満ちている。全て彼女の自分への想い。僕はそっとフィリアさんを盗み見る。その顔は怒り以外のものでうっすらと染まっている。僕は今まで気づかなかった自分の鈍感さに笑い出したくなりました。もちろん魔族にあるまじき喜びを含んだ笑いです。でも僕が気づいたことはもうしばらくフィリアさんには内緒にしておきましょう。だって今僕の気持ちを言っても、悲しいけど信じてもらえないかもしれませんし、彼女を困惑させるだけかもしれません。それにこの想い一度告げたなら、僕は彼女の全てを奪い取りますから。
フィリアさんは一生懸命隠してるのに、やっぱりゼロスにはばれてしまうんですね。ちょっと不公平というか、可哀相かな。やっぱり人生経験(2人とも人じゃないけど)の違いってヤツでしょうか?年の功とか…。
う〜ん、でも最大の要因はもって生まれた性質のような気がします。
> ああだけど一つだけ彼女に教えたほうが良いかもしれない。under the Rose、それは『秘密』を表す言葉。でも地中にどんなに秘密を隠しても、地上の花はお喋りだと言うことを。薔薇に香を与えたのは古の愛の神、薔薇の香はどんな言葉よりも雄弁に愛を語ることを。
> それを教えた時の彼女の顔を想像して、ちょっと意地悪な笑いをながら、僕はもう一杯お茶を頼みます。あなたの想いを味わうために。
すっごくいい感じで、ゼロスらしい表現だと思います。

小説1の方の続きも楽しみにしています。全然想像がつかなくて、ドキドキですけど。


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4429Re:初めましてアガサ E-mail 9/24-23:10
記事番号4428へのコメント


ご感想ありがとうございます。

>薔薇って本当に花言葉の宝庫ですよね。でも、言葉を変えればそれだけ幾通りもお話の作り甲斐があると言うことでしょうか?別の機会を楽しみにしておりますv


ええ、ゼロスに薔薇の花束持たせて、プロポーズでもさせたいですけど、彼の場合
持った途端花が枯れそうで。ドライフラワーじゃ様にならないし。
 

>フィリアさんは一生懸命隠してるのに、やっぱりゼロスにはばれてしまうんですね。ちょっと不公平というか、可哀相かな。やっぱり人生経験(2人とも人じゃないけど)の違いってヤツでしょうか?年の功とか…。
>う〜ん、でも最大の要因はもって生まれた性質のような気がします。

 確かに、でも武道の心得に『無心の妙』(だったと思う)という言葉があります。同時に『策士、策に溺れる』という諺も。フィリアは前者で(別名天然ボケ)、ゼロスは典型的後者ですから、この先は分かりませんよ。

>小説1の方の続きも楽しみにしています。全然想像がつかなくて、ドキドキですけど。

 遅筆ですが、がんばります。 
                      アガサ

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4435薔薇に秘めた想い。葵 芹香 E-mail URL9/25-00:55
記事番号4422へのコメント

アガサさんは No.4422「薔薇の気持ち・・・ゼロスバージョン」で書きました。

どうもこんばんわ、葵芹香です。
今回はフィリアとゼロス、それぞれの想いが読めてよかったですv
自分の想いを隠すために薔薇に秘めたつもりが、ゼロスにはしっかり伝わってたみたいですね。うん、やっぱりゼロスちょっとずるいかも…。
お互いの想いを相手に告げたなら、何かが壊れてしまうと思っている、そんな関係のような気がします。でも私的には幸せになって欲しいですけどね(笑)。

ああ、短いんですが今回はこの辺で失礼させていただきます。それでは☆

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4466おまけ1・・・彼女が紅茶を飲む理由(ギャクです)アガサ E-mail 9/27-22:11
記事番号4422へのコメント

こんばんわアガサです。
ギャグです。軽く流し読んでいただければ結構です。

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彼女が紅茶を飲む理由

 美味しい紅茶にお菓子、楽しい会話。ゼロスは魔族で彼女を怒らすことをよく言うが、その気になれば豊富な知識と巧みな話術の持ち主で、幾らでも面白い話題を提供してくれるのだ。この日のアフタヌーンティーもまた心地よいものだった。
「う〜ん、このローズティーというお茶はフィリアさんにぴったりですね」
「えっ!?」
 紅茶と薔薇の香りが甘やかに漂う中で、急にこんなことを言われてしまい、フィリアは頬どころか尻尾の先まで真っ赤になってしまった。
(尻尾がスカートの中で良かった)
「ど、どうしたんですか突然そんなこと言い出して」
 心の中でドキドキしているのを悟られないように、わざと口調を強まっていく。
「だって、こういう風に薔薇の香りがすれば、紅茶の葉が安くても美味しく飲めるじゃありませんか」
「なっ・・」
「いや〜、家計を助ける為とはいえ、自給自足とはなかなかできることじゃありません」
 さも感心したかのように一人で納得して、ゼロスはカップを傾ける。
「ゼ〜ロ〜ス〜、あなたは私が薔薇を紅茶に入れているのは、安物の紅茶を誤魔化すためだと」
 今フィリアの顔が紅いのは嬉しいからでも照れているからでもありません。
「あなたは私を見栄ばかり張っている安っぽい女だと言うんですね」
フィリアの声が段々と低く呟く様になっていく。
「僕はそんなことは一言も、ただやりくり上手だと」
ゼロスの声も耳に入ってないようです。
フィリアの声はますます低く、地を這う様に・・・。
「ローズティーには精神を安定させる効用がありますの。でもやっぱり・・・
 いつのまにか彼女の手には常備携帯用のモーニングスターが、
「それだけじゃ足りませんわね」
「フィ、フィリアさん」
 流石にこれにはゼロスも焦ります。ニコ目笑顔のこめかみにタラリと汗が一筋。
「問答無用、この生ゴミ魔族、天誅です!!」
「アーレー」
 旋風と伴にモーニングスターがうなり、憐れゼロスは夜空の星(ナイトスター)に。


「やっぱりフィリアさんはこうでなくっちゃ」
 ゼロスは空を飛ばされながらニッコリ笑って、カップに残った最後の一口を飲み干した。
 フィリアがお気に入りのティーカップが一客足らないのに気づくのは、もうしばらく後のこと。


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このネタ、最初は本編の中に入れようと思ってたんですが、入れた途端、話がギャグ路線になってしまうので削ったんです。でもやっぱり書きたくって、おまけにさせていただきました。