◆−初めに−なゆた(10/11-02:26)No.4534 ┗あなたのいない世界で1−なゆた(10/11-02:28)No.4535 ┗あなたのいない世界で2−なゆた(10/11-02:29)No.4536 ┗あなたのいない世界で3−なゆた(10/11-02:31)No.4537 ┗あなたのいない世界で4−なゆた(10/11-02:31)No.4538 ┗あなたのいない世界で5−なゆた(10/11-02:33)No.4539 ┗あなたのいない世界で6−なゆた(10/11-02:35)No.4540 ┣めちゃ切ないです〜!!−緑原実華(10/11-16:35)No.4541 ┃┗今回は珍しく、切な系−なゆた(10/12-03:05)No.4549 ┣すごいですよ。なゆたさん−桜井 ゆかり(10/11-18:10)No.4542 ┃┗ありがとうございます〜(照れ)−なゆた(10/12-03:14)No.4550 ┣Re:あなたのいない世界で6−桜華 葉月(10/11-21:59)No.4544 ┃┗はじめまして〜−なゆた(10/12-03:22)No.4551 ┣待ってました−ゆっちぃ(10/12-00:49)No.4547 ┃┗お待たせいたしまして、もう−なゆた(10/12-03:31)No.4552 ┗あなたのいない世界で7−なゆた(10/12-03:00)No.4548 ┣はじめまして!−ききょう(10/12-18:55)No.4557 ┃┣ききょうだあっvvvvv−ゆっちぃ(10/13-00:32)No.4566 ┃┗お知り合いのようで(笑)−なゆた(10/14-23:57)No.4590 ┣泣けますなー−キト(10/12-20:25)No.4561 ┃┗泣かせまっせーー−なゆた(10/15-00:10)No.4592 ┣をを………−ゆっちぃ(10/13-01:00)No.4567 ┃┗をほほほ(悪人笑い)−なゆた(10/15-00:18)No.4593 ┗あなたのいない世界で8−なゆた(10/14-23:53)No.4589 ┣姫が…………っっ−ゆっちぃ(10/15-02:44)No.4600 ┃┗早いですね−なゆた(10/15-04:03)No.4603 ┗あなたのいない世界で9−なゆた(10/15-03:46)No.4602 ┣うっきゃぁぁぁっ!!−ゆっちぃ(10/15-23:52)No.4612 ┣アメリア嬢がぁぁぁぁ(爆−早坂未森(10/17-17:40)NEWNo.4626 ┗うきゃ〜!!!ナイト登場。(喜)−桜華 葉月(10/17-23:22)NEWNo.4630
4534 | 初めに | なゆた | 10/11-02:26 |
投稿は久しぶりです。 でも「許されざる」じゃありません。期待してくださっている方々、申し訳ありません! 今回投稿するのは、某会で投稿していて結局解散までに完結できなかった作品です。あれからだいぶ(?)加筆修正してますです。 で、ちゃんと完結できなかったものですから投稿掲示板としては『超』が無限に続きそうな有名サイトさんであるこちらに投稿させていただく事にしました(んな勝手に…) 内容はゼルアメ。 現時点で、まだ完結せず。私にしては、出だし暗め。最後まで暗いかは、いまだもって謎。 ちゃんと完結できなかった自分に罵倒を浴びせつつ、某会で最後まで読めなかった会員の皆様に捧げます。 「あなたのいない世界で」 |
4535 | あなたのいない世界で1 | なゆた | 10/11-02:28 |
記事番号4534へのコメント あなたのいない世界 そんなもの、考えたこともなかった でも、それはいつか現実にやって来る こうして一緒にいる今でも、 ふと、そんな想いが突き抜ける。 大陸屈指の大国、白魔術都市セイルーン。 その都市自体が大きな魔方陣を形成している、人々の心の拠り所。そんな平和な場所にも裏通りと言うのは存在する。 薄暗く人気の無い道を歩きながら、ふとゼルガディスは後ろを振り返った。 細い隙間からのぞく、白亜の城。 穢れることの無いその外壁に,少し前に共に旅をした少女の面影が重なる。 (アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン) セイルーン王家の第二王女。 本来ならば,自分とは何の接点も見出せないような少女。 旅で別れてからも、ちょくちょく彼女に連絡していた。自分が生きている証拠。それが欲しいとだけ,彼女は言った。本当なら,そんなことするつもりはなかった。 でも、なぜか自分はそれを送りつづけている。 負けたのかもしれない。あの恐れを知らない,ひたむきで真っ直ぐな瞳に。なぜか、嫌な気はしなかった。 などとぼんやりともの思いにふけっていると、ふいに頭上に影がさした。 嫌な予感が背筋を駆けぬける。 一つ息を吐き,ばっと顔を上げる。 「っあ」 「・・・・・・・・・・」 ふわふわと、白いドレス姿で浮いている少女をみつけ、あからさまに溜息をついた。ここに来ていることは隠していたはずだが,少し長居をし過ぎたようだ。 ぺろり,と舌を出した少女が、ゆっくりとゼルガディスの前に降り立つ。 「ばれちゃいましたか」 裏通りに相応しくない、ひらひらのドレスを翻した少女が悪びれる風も無くにっこりと微笑む。そんな少女に、ゼルガディスは大きく溜息をついた。 「セイルーンのお姫様が、何をやってるんだ」 呆れまくったその声に,アメリアの頬が小さく膨らむ。 「なにって、ゼルガディスさんを御迎えにきたんです。来てることも教えてくれないような人ですから、どうせこのまま行ってしまうつもりだったんでしょう?」 図星なだけに反論できない。 黙りこんでそっぽを向いたゼルガディスに,アメリアはにっこりと微笑んだ。 「さささ、ゼルガディスさん!せっかくですからウチに泊まってって下さいよ!父さんも久しぶりに会いたいって言ってましたし!お話ししたいことも沢山あるんですから!」 「お、おい、アメリア」 ぐいぐいと自分を引っ張るアメリアに,ゼルガディスは少し抵抗の色を見せる。すると、強引に引っ張っていたアメリアがずいっとゼルガディスを見上げてきた。 「いやですか?」 大きな瞳をうるうるさせて見上げられたゼルガディスは、ぐぅっと言葉を飲んだ。本当は行きたくない。 ただでさえ世間一般では後ろ指を挿される存在なのだ。そんな人間には、王宮だのなんだのは、はっきりいって肩身が狭いを通り越して、窒息しそうな気になる。 それが表情に出ていたのか、じぃっと見つめていたアメリアの目がさらに潤んだ。 「せっかく、久しぶりに会えたのに・・・・・・・・} 駄目押しだった。 かつての二つ名などどぶの底に沈めてしまったらしい。あたふたとゼルガディスが慰めにかかる。 「そ、そんなことは言ってない!・・・・・・・・・・分かった。行く」 しかめっ面で告げられた言葉に,アメリアの顔がぱぁっと輝いた。それこそ、夕立の後の太陽のように。 「じゃ、早速帰りましょう!今日は沢山お話ししましょうね!!」 「・・・・あぁ」 苦笑いで答えて,ぽんっとアメリアの頭に手を置いた。くすぐったそうにアメリアが微笑み返す。 ほわ〜っとした空気の中、はっとゼルガディスが気がついた。 数少ない裏通りの住人達が、呆然と自分達を見つめていることに。それはそうだろう。いきなり上からドレス姿の幼い少女が降ってきたと思ったら、自分達と同じような裏の人間とほわほわ会話しているのだから。 しかも、少女の顔には見覚えがあるのだろう。しきりに首を傾げている者もいる。 「おい、アメリア」 「はい、ゼルガディスさん」 少女もその様子を察したらしい。同時に頷くと,声を揃えて呪文を唱えた。 『レイ・ウィング』 二人が空に消えたあと,その場にいた者ほとんどが呆然と空を見上げていた。 「・…うちの王女様ってのは、自分の国ながらよくわからんなぁ」 アメリアに見つかってしまったゼルガディスは、彼女に連れられてセイルーンの王城へとやってきていた。 さすがに王宮に空から入るわけにもいかず、アメリアの顔で正面から入った。あいかわらず胡散臭いものを見るような目を向けられたが、王女の客という事で最低限の礼儀は守られてる。 「ゼルガディスさん,こっちです,こっち」 広い廊下をパタパタと歩きながら,アメリア直々にゼルガディスを案内している。やがて、一つの扉に辿りついた。 「お泊まりになる間はこの部屋を使ってください。なにか足りない物があったらすぐに用意させますんで,すぐに言ってくださいね」 にこにこと、上機嫌を隠そうともしないでアメリアが扉を開いた。 小さなきしみをたてて開いた扉の先には、豪華な客室が広がっていた。ごく一般的な四人家族が暮らせそうな広さと部屋数。調度品も一流のものが揃えられている。 「お、おい,アメリア!“お泊まりの間は”って,俺は明日にでも発ちたいんだが」 相変わらずの部屋の豪勢さにやや引きながら、アメリアに顔を向ける。告げられた言葉の内容に,アメリアの上機嫌顔が一変し、瞳を潤ませ始めた。 「え〜〜。そんなこと言わずに,一週間くらい居て下さいよぉ」 「し、しかしな」 アメリアに甘いと、他人が見ていてもはっきり分かるゼルガディス。幸か不幸か彼自身は、単に押しに負けていると思っているが。 「おいしいご飯も用意してますし・・・」 「リナ達じゃあるまいし・・・」 「王家専用の古書類も検索してもかいまいませんし・・・」 「ぐ・・・・・」 「それに、また新しく古文書が手に入ったんです」 「・・・・・・わかった。しばらく居る」 「ほんとですか?!」 物で釣ることに成功したアメリアが、ぱぁっと顔を輝かせた。嬉しそうに両手を打ち合わせると,くるりと身を翻した。 「すぐに父さんに言ってきますね!」 「あ、おい、アメリア!あんまり急ぐと・・・・・・」 「きゃん!」 「・・・・・・・・・転んだな」 長いドレスの裾を踏んづけて、見事にひっくり返ったアメリア。やれやれと溜息をつくと,ゼルガディスがひょいっとそれを抱き上げた。少女の軽い身体が、ゼルガディスの腕一本に支えられる。ぶひゅっと、アメリアの顔に朱が上った。 「す、すいません!ありがとうございます」 「あまり急ぐな。見てる方が心臓に悪い」 真っ赤になって謝るアメリアに,ゼルガディスが苦笑をひらめかせた。そっと彼女の身体を解放する。パタパタと服を慌てて払うと,ぺこりと頭を下げて再び身を翻した。 飛び跳ねるようなその後ろ姿を見送って、ゼルガディスはどさっとソファに身を預けた。微笑が浮かぶ顔を片手で覆う。 「やれやれ。・・・・・・・・・まぁ、たまにはいいか」 どうせあの親子にかかってしまえば、そうやすやすと出立はできないだろう。なら、少しは羽を伸ばすのも良い機会だろう。 「・・・・・たまには、な」 呟いて,目を閉じた。 どうせ夕食までは時間がある。それまで少し眠ることにしよう。ホンの少しの休息の時間。 −−それが、あんなに長く続くとは思っていなかった。 |
4536 | あなたのいない世界で2 | なゆた | 10/11-02:29 |
記事番号4535へのコメント 街中でアメリアに見つけられて早1週間。強引な親子の強引な引き止めにより、ゼルガディスは予定よりも長く王宮に留まっていた。しかし、それもそろそろ限界だった。 ゆっくりすればするほど、心の中で何かが急かし、駆りたてる。 彼女の側に居ればいるほど、焦りが生まれる。それを自覚しているのかいないのか、ゼルガディスは溜息が多くなっていた。 アメリアも、それには気付いていた。 だから、彼がそろそろ暇を請いたいと言った時、強く引き止めることはなかった。いつもどおリの元気一杯の笑顔で、それを承諾した。 「それじゃあ、明日の朝に発たれるんですね?今度来るときは、お土産くらいもって来てくださいよ」 「ああ、拉致される前に買っとくよ」 お互いに軽口を叩きながら、その夜は別れた。心の内にある想いなぞ、欠片も見せずに二人は笑い合う.それが、お互いに負担をかけない最良の方法だと信じているから。 そして、それが、いつまで続くのかという不安を押し込めたまま。 部屋に帰ったゼルガディスは、自分の身の回りのものを無表情にまとめ始めた.とは言っても、元々荷物の少ない身なので、あっという間にそれは済んでしまう。そうして、手持ち無沙汰になってしまう。 きぃっと、小さな音を立ててテラスへの扉を開いた。下にある内庭に、春の花の蕾が見える。明日の朝には満開に花開いていることだろう。 (このまま、黙って行ってしまうか) ぼんやりとそんなことを考え、苦笑を刻んだ顔を軽く振った。 そんなことをすれば、あの王女は泣くだろう。いや、別れを言う為と称して自分を追いかけてきかねない。とにかく、普通の王女様と思ってていると、度肝を抜かれること間違いはない。 何度か一緒に旅をしてきた今でさえも、驚く事が多いのだから。 小さく笑みをこぼして、ゼルガディスはくるりと身体を回した。背中を手摺に預け、空を見上げる.濃紺の空にガラスを撒いたように星が光っている。明るい夜空だった. 「明日は晴れるな」 青空の下の、彼女の笑顔を思い出してゼルガディスはもう一度笑みをこぼした。 「土産、何がいいか聞いておくかな」 それは,再会の約束の印. ・ ・・・・・・・そうなるはずだった。 同じ頃、アメリアも空を眺めていた。 テラスから屋根へと魔術を使って昇り、一番高い塔の上に座り込んでいる。星空の光を受けて白い肌が、青白く見えた。それはあたかも、生気のない死人のような顔色にも見せる。 白い夜着に上着を羽織り、それに顔をうずめる様にして空を見上げていた。 明日にはゼルガディスは旅立ってしまう。ずっと、ここ数日彼が苛立っていたのは分かっていたから、彼が『行きたい』と言った時、なにも言わなかった。 自分のわがままに答えてくれていたことは、痛いほどよく分かっていたから。 いつもいつも、彼は自分のわがままを笑って許してくれる。それがただの友情なのか、それとも単に彼が押しに弱いだけなのか(一番可能性が高そうだが)。 どちらにしても、結局はそれだけの事なのだ。 だから、ずっとここにいて欲しいと思う自分の気持ちも、わがままに過ぎない。この小さな国に、彼の思いをつなぎとめておく事はできない。 『人の体に戻る事』 それはきっと、彼の“存在意義”。 自分と出会う前から確立していた、彼の“アイデンティティ” もし自分が『王女』でなかったら。意味のない仮定を繰り返し、その度に心が重く沈んでいく。 たとえどんなに望んでも、この身に染み込んだ祖国への愛は消えない。義務感は根強く、既にそれは自分自身の“存在意義”なのかもしれない。 肌寒くなってきた夜の空気を感じ、アメリアは羽織っていた上着をかき寄せた。 そろそろ眠らないと、明日ゼルガディスを見送る時刻に起きられないかもしれない。 アメリアはゆっくりと腰をあげた。 その瞬間、 ふら 目の前が一瞬真っ暗になる。 立っていられなくなって、アメリアはその場に座り込んだ。 「………また?」 そう。最近、体の調子がおかしい事に彼女は気づいていた。ずっと体がだるく、微熱が続いている。ただ大した熱ではないから、誰にも言ってない。 けれど、最近はよく目の前が真っ暗になる。おそらく、これが噂に聞く貧血というものなのだろう。しばらくすれば落ち着くが、まるで自分が弱くなってしまったかのようで悔しかった。 それに、自分の具合が悪いと知れれば、政務に支障をきたす。 ぎゅっと唇をかみ締めて、アメリアはゆっくりと体を起こした。 とにかく、今日はしっかり休まなければ、と考える。もし彼の前で、今と同じように倒れてしまったら。 鋭い彼には、きっと隠し切れない。 肩から落ちかけた上着を掻きあわせると、アメリアは今度はゆっくりと起きあがった。 翌日 空は雲一つない快晴だった.透き通るような青空の下、アメリアとゼルガディスは向かい合っていた.色とりどりの花が咲き乱れる中、二人だけで立っている。 フィリオネルは執務があるとかで、この場には来ていない.あるいは、娘の気持ちに気を利かせたのかもしれない。 セイルーンの内庭には、今彼と彼女二人だけだった. 「ホンとは、街の方まで送りたいんですけど・・・・・・・・・・」 アメリアが申し訳なさそうに俯いた.この後に、どうしても外せない会議が入っているらしい。どうせ、二人の姿をあまり人の目にいれたくない、セイルーンの重臣の誰かの差し金だろうが. ゼルガディスにとっては有り難かった.彼女の姿は、城下ではかなり目立つ.となると,一緒に歩く彼の姿も必然的に人の目を引いてしまうだろう. 「ここで十分だ。お姫様がそうそう外に出るもんじゃない」 「お姫様はやめてください」 ぷぅっと、アメリアが頬を膨らませた.アメリアは「お姫様」と言われる事をひどく嫌う.ゼルガディスが笑いながら、膨らんだ頬を指で突ついた。 「すまんすまん。で、土産は何がいい?」 何気なく切り出されたゼルガディスの言葉に、アメリアが大きく目を見開いた.そして、それの意味を悟った瞬間、花のように顔を綻ばせた。 「なんでもいいです!ゼルガディスさんが持って来てくださるのなら、なんでも!!」 嬉しそうなアメリアの言葉に,ゼルガディスはわざと困ったような顔を作った。 「なんでも・・・・・は、一番困るな」 「じゃ、めいっぱい困って下さい.私,待ってますから」 くすくす笑うアメリアに、ゼルがディスは苦笑を返した。ぽんぽんと、アメリアの頭を軽く叩く. 「りょーかい。またな・・・・・」 「はい、また・・・・・・・・」 会いましょう、と、アメリアが言いかけた時、その小さな体が小さく揺れた。 「アメリア?」 心配そうなゼルガディスの声に、アメリアはぐっと足を止めた。 (ここで倒れるわけにはいかない。ゼルガディスさんの前じゃ、倒れられない。また、私が…止めてしまう) 顔を顰めていたアメリアが慌てて笑顔をつくる。 「あ、なんでもないです。最近ちょくちょくあるんです.でも、すぐに治ります、から」 言っている内に、どんどん顔色が悪くなっていく。無理に作った笑顔が崩れて、その額に小さな汗の玉が浮かんでいく。 「アメリア?馬鹿な!なんでもないわけが・・・・・・・・!!」 「だい、じょうぶ、・・・・・・」 言いかけた唇が震えて、ふらりとその体が揺れた。慌ててゼルガディスがそれを支える彼の胸に倒れこんだ瞬間,アメリアは意識を手放した。 その額に手を当てると、その熱さに思わず息を飲む. むせ返るような花の芳香の中、ゼルガディスはアメリアを抱き上げた. アメリアが倒れた事をしるや、セイルーンは半狂乱的パニックに襲われた。それはそうだろう。今まで病気はおろか、怪我さえ滅多にしなかった元気印の少女が倒れたのだ。すぐさま高位の神官達が駆けつけ、アメリアを診はじめた。 倒れたアメリアを連れて駆けこんで来たゼルガディスは、そのまま手近にあった椅子に座りこんでいた。そして、彼女が診察を受けているはずの神殿の一室を睨みつづけていた。どの位の時が流れているのか,すでに知覚していない。 ただ、手の中に残った彼女の重みを確かめるかのように拳を握り占めている。一週間前と比べて、わずかに軽くなっていたような気がして。それに気づかなかった自分に腹が立って。 どれくらいの時が過ぎたころか、自分が来た方とは逆方向から獣のような叫び声がこだましてきた。 「アぁぁメぇぇリぃアぁぁああああああ!!!」 地響きが起きそうなほどの勢いで駆けつけてくるそれは、追いすがる重臣を振り切るように扉の前に駆けてきた。扉の前に座りこんでいるゼルガディスにも気付かないまま、がんがんと扉を殴りつける。 「アメリア!アメリア!!」 「殿下、どうか落ちついて。落ちついてくださいませ」 近くで宥める人の声を無視して、さらにフィリオネルが声を荒げる。溺愛している娘が倒れたのだ。いつもとは打って変わって、人の声が聞こえなくなっている。 「アメリア!!入るぞ!!」 有無を言わさず扉を開けようとした瞬間、それは向こうから開かれた。沈痛な面持ちをした神官長が、その表情だけでその場の空気を止めた。 誰もが呼吸さえ忘れて立ち尽くしたその時、一人ずっと黙っていたゼルガディスが立ち上がった。 「・・・・・・・・・アメリアは?」 押し出すようなその声に、全員の視線が神官長に注がれた。その視線を受け止めて、彼は大きく息をついた。 「殿下・・・・・・・・。こちらへおいで下さいませ」 神官長が、フィリオネルにだけ声をかけた。他のものは付いてくるな、という事らしい。フィリオネルが軽く頷いて部屋に踏みこみかけ、気が付いたように後ろを振り返った。 「ゼルガディス殿も来てくださらぬか?」 ざわり、と空気が揺れた。 部外者の、しかも何者か分からぬ男を王女の側に入れる事への不満。 が、それを無視してゼルガディスはさっさとフィリオネルと後に続いた。周囲の空気を気にかけるほど、彼もまた心に余裕はなかったのだ。 不満を隠そうともしない人々の視線の先で、神殿の扉は閉じられた。 二人が通されたのは、小さなつくりの書斎だった。当然、そこにはアメリアの姿はない。あからさまに顔を顰める二人に、神官長は椅子を勧め、自分もそこにある椅子に腰かけた。 重い沈黙が、その場に下りる。 それを破ったのは、またしても部外者たるゼルガディスだった。 「・・・・・・・・なにがあった?」 冷静とも取れるその言葉に、神官は重々しく口を開いた。 「・・・・・申し訳ありません」 深く、フィリオネルに向かって頭を下げた。ぴくり、と二人の体が緊張する。カタカタと小刻みに震える自分の体を抑えつけ、フィリオネルが声を絞りだす。 「どういうことじゃ?」 促され、神官がぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。 「・・・・・アメリア様は、・・・・・病魔に、冒されております。・・・・いつからか、断定は出来ませんが・・・・・・」 そこまで言って。言葉を詰まらせたように俯いた。まるで、じわじわと空気を抜かれているような錯覚が、その部屋を支配した。誰も言葉を発せないまま、数十秒の時が流れて行く。 「・・・・・・治る、のか?」 ホンの小さなフィリオネルの呟きは、いやに大きくその場に響いた。神官が、ゆっくりと、だがはっきりと首を振った。・・・・・・・・横に。 部屋から、音というものが消え去った。 |
4537 | あなたのいない世界で3 | なゆた | 10/11-02:31 |
記事番号4536へのコメント 何回も確認した。 抑える神官達を薙ぎ払って、検査した結果をかたっぱしから調べ直した。 血液。体温。脈拍。あらゆるものを。 憎んでいた奴から叩き込まれた医の知識が、否応なく答えを叩き出す。 何度読み返しても。 何回調べ直しても。 違う答えは見つからない。 彼女は病魔に冒されている。 決して治らない病に。 そしてそれは、すでに別の場所にも広がっていた・・・・・。 神官長が重苦しい宣告を彼ら二人に告げたあと、ゼルガディスは彼女に会っていない。調べ直したデータも、検体は他人にとらせた。会ってどんな顔をすればいいのか分からない。いや、どんな顔をしてしまうか分からなかった。 しかし、もう一人は即座に彼女に会いにいった。倒れた娘を気遣って会わねば、他国の者達が彼等の不仲を疑うかもしれない。 国のトップに立つ者のさだめ。 悲しいかな、彼らは親子である前に、大国の中央に位置する者達なのだ。部屋の中でどんな会話が行われたのか、ゼルガディスは知らない。けれど、部屋から出て来た時のフィリオネルの顔は忘れられない。 憔悴し、覇気を出し尽くしてしまったような空ろな表情。いつもの彼からは信じられないほど、その姿は小さく見えた。 恐らくは、娘の前で無理に笑っていたのだろう。彼女に病気を悟られないように。 それから、すでに3日が過ぎた。 フィリオネルは、職務の合間を見ては彼女に会いにいき、そして憔悴して出てきた。どうも彼女が、そろそろ職に戻りたい、と言いはじめているらしい。 はっきりいって、彼女の体を考えれば無理な話だ。安静にしていれば、まだ“もつ”のだから。しかし、その理由を知らない彼女は、無理にでも元の立場に戻ろうとするだろう。 けれど、誰も彼女にその事を告げられない。この国の人間達は彼女を愛しすぎている。だからこそ、残酷なその言葉を口にできないのだ。 「あなたは、不治の病に冒されているのだ」 と。 そして、彼等はそれを他人に押し付けようと考えた。旅の途中で転がりこんできた、傭兵風の男に。彼女が、『仲間』と誇らしげに言う、胡散臭そうな旅の男に。 自分勝手ななすりつけ。自分がいやだから、他人にさせる。 しかし、それは当然の事かもしれない。誰が、愛しく思う人に死を宣告できよう。まして、彼らは幼いころからの彼女を見ていたのだ。 ただひとつ、彼らは男の気持ちを考えはしなかった。あるいは、無意識に考えを閉ざしてたのかもしれない。 神殿を統率する立場にいる者達が彼に懇願に訪れた。つまりは、彼女の事を知っているごく一部の者たちだ。 最初、ゼルガディスはその全てを扉の前で追い返した。彼自身、アメリアにそんな事を伝えられるはずはないのだ。 大切な、大切な少女。 それを、この者達は傷つけろと言う。 憤慨して、怒鳴りつけて、しつこい若者達は魔法で吹き飛ばして。 ゼルガディスは一人、部屋にこもった。 酒気に逃げようとしても、その味はどれも苦く、とても飲める気がしなかった。彼女を癒す方法を求めて、セイルーンの門外不出の本まで読み漁った。けれど、なにも見つからなかった。 7日目の朝、また彼に来客が来た。追い返そうと扉を開けた彼の前には、最期に見た時よりさらに憔悴したフィリオネルの姿があった。 「フィルさん・・・・・・」 「少し、いいかの。ゼルガディス殿」 常からは考えられないような低い声で、フィリオネルはゼルガディスをうかがった。軽く頷いて、ゼルガディスが扉を開く。 肩を落としたフィリオネルが滑り込むと同時に、彼は扉をしめた。風の呪文を唱え、外に音が漏れないように結界をしく。 そうしたところで、フィリオネルに椅子を勧め、彼もその正面に腰を下ろした。 沈黙が、残酷な苦しさをはらんでその場を支配した。 そうしている間、ゼルガディスは外面に出さないでフィリオネルの姿に驚愕していた。体からは何の覇気もなく、うつろにさえ思える瞳にはかつての強い光は見て取れない。以前は山のように見えた体も、今では砂場に子供が作った小さな砂山のようだ。愛している娘の死の宣告に、彼自身が死んでしまったようだった。 やがて、フィリオネルが小さく口を開いた。 「・・・・・・・・あの娘は、自分の体の事を知らん」 絞り出すような声に、ゼルガディスは軽く頷いた。それを皮きりのように、フィリオネルの口からだくだくと言葉が溢れ出す。 「まだ16!たったの16なのに!!普通の娘らしい楽しみも知らず、わしの補佐として王宮に閉じ込められ、外に出れば命を狙われる事もあった!それでも正義に憧れ、世界を愛し、自由な心を持って育ってきたのに!それなのに、今度はその命が病気で失われるなど!」 ことん、と小さな音がして、フィリオネルの前に琥珀色の液体の入ったグラスが置かれた。ゼルガディスが目の前で、もう一つのグラスを持っている。フィリオネルは小さく感謝の言葉をもらして、それを一気に煽った。すぐにからになったグラスに、次が満たされる。 「・・・儂は、あの娘になにもしてやる事が出来ん」 苦渋に満ちた声。ゼルガディスは頷きも否定もせずに、グラスに口をつけた。苦味に満ちた熱さが、咽を転がり落ちる。 目の前で項垂れているフィリオネルに、彼はかけるべき言葉を見つけられなかった。 彼自身、彼女から逃げていたのだから。なにもできないと項垂れるフィリオネルに比べて、ゼルガディスはまだ何もしていない。会いに行ってもいないのだ。 そんな自分に、フィリオネルにかけられる言葉があるだろうか。 ゼルガディスは、強めの酒を半ば流し込むように自分に飲み干した。 フィリオネルの言葉が続く。 「・・・・・こんな事を頼むのは筋違いじゃとわかっておる。御主の気持ちも聞かずに、こんな事を頼むわしを許してくれとは言わん。しかし、そこを押してどうか頼む。・・・・・・御主は医にも通じ、あの娘と生死を分け合う旅をした仲だと聞いた。御主が傍にいれば、あの娘も心安らごう。これはセイルーンの王太子としての願いではない。自分の娘に、なに一つしてやれぬ愚かな親の願いだ。どうか、アメリアの傍にいてやってくれ」 セイルーンの事実上の為政者が深く頭を下げた。どこの誰とも知らぬ旅の傭兵風情に。しかも、世間一般で忌み嫌われている合成獣の指名手配の男に。 ゼルガディスは、空になったグラスを机に静かに置いた。ことり、という音がしても、フィリオネルは頭を下げつづけていた。 その強さが、彼の中で何かを固めた。 一度、強く瞼を閉じる。 少女の笑顔が鮮明に浮かんだ。いつも正面から自分に向かってきた、大切な少女。 「愛しい」と思う自分の想いに気付いたのは,この瞬間だったのかもしれない。いや、受け入れられただけだろう。 自分は、臆病なのだから。 「俺にも、何も出来ないかもしれない。それでも、あいつの傍に居たいと思う。許可をいただけるか?フィルさん」 ゼルガディスの言葉に、フィリオネルは無言で頭を下げた。 「うそ・・・・ですよね?ゼルガディスさん?」 自分の手を見下ろしたまま、アメリアは白いシーツを握りしめた。今聞かされた事実を、その白さで覆い隠せれば良いのに。 その思いは、ゼルガディスにとっても同じだった。しかし、表には何の感情も現さず、ゼルガディスは小さく首を振る。 「事実だ・・・・・。アメリア、お前は病に冒されている。それも、治ることは無い、と言われている病に・・・・・」 淡々と同じことを繰り返すゼルガディスに、アメリアはなぜか急に怒りがこみ上げて来た。この体に巣食う病は彼のせいではない。そんなことさえも忘れさせるような、焼き尽くすような怒りの炎。 「どうして!どうしてですか?!私、何もしてないのに!まだやることが沢山あるのに!!どうして、どうして・・・・・!!!」 納得いかない。それ以上に、くやしい。激しい怒りが、理性を上回る。 「・・・・・・・・・・・・アメリア」 取り乱すアメリアに、ゼルガディスがそっと手を伸ばした。だが、それは届く前に振り払われる。アメリア本人によって。 「アメリア」 振り払われた手を返すでもなく、また怒るでもなく、ゼルガディスはアメリアを静かに見つめた。 それが堪らなく息苦しくて、アメリアは置いてあった枕を掴んだ。 「出てって下さい!」 ゼルガディスに向かって投げつける。ぼふっという音がして、ゼルガディスの胸に叩き付けられる。羽毛で作られたものだから、痛みなどあるはずもない。そのはずなのに、ひどく痛い。 「・・・・アメリア・・・・・・・・」 「いやです!何も聞きたくありません!!でていってください!!」 拒絶の言葉を口にして、アメリアは手当たり次第に物を投げはじめた。それをまったく避けず、全て受ける。ばしゃっと、ゼルガディスの頭から水がかけられた。傍に置いてあった水受けを投げられたのだ。 針金で出来た髪から水を滴らせ、ゼルガディスは表情を押し隠したまま彼女に背を向けた。今は、一人にして置く方が良いと考えたからだ。 息を切らせるアメリアを一度だけ振り返り、ゼルガディスはそっと部屋を後にした。 一人広い部屋に残されて、アメリアは再びシーツに目を落とした。 瞼に浮かぶのは、今まで自分が生きてきた人生、そして大切な人々。咽元から、嗚咽がこみ上げてくる。 「・・・・・・っふ、・・・・・・っえ、ぅ、あぁぁあ、ああぁぁああ!!」 自分に先はない。 誰とも、生きて行くことは叶わない。 夢も、愛する家族も、誰にも会えなくなる。 理不尽にしか思えないその事実に、言いようの無い怒りがこみあげてくる。 「あぁ、う、あぁぁあああ!!」 シーツを握り占め、自分の内の激情を吐き出すかの様に、アメリアは泣きつづけていた。 扉の向こうから聞こえてくる嗚咽に、ゼルガディスは自分の唇をかみ締めていた。フィリオネルに乞われて、また自分自身の気持ちにもケリをつけて、彼女に会いに来たつもりだった。 しかし、実際には自分は彼女に向かって、残酷な宣言をしただけだった。 こんな時には特に、自分の口下手さが憎かった。 やり切れない思いをかかえて、ゼルガディスは白いマントを翻した。 胡散臭げな神官達の視線を無視して、俯きがちに自分の部屋へと向かう。途中、幾人かの高位の神官が声をかけてきたが、全て無視して突っ切った。どうせ、アメリアに事実を伝えたか気になっただけだろう。 乱暴に扉を開け、同じように乱暴に閉める。大きな音に幾人かの侍従が、驚いて手に持っていた物を落とす音が響いた。 だが、それさえも彼の耳には届いていなかった。 閉めた扉によりかかって、固く目を瞑る。 脳裏に蘇るのは、先ほどのアメリアの表情。怒りと、困惑に縁取られ、その思いのままに自分を拒絶した愛しい少女。 彼女に残酷な宣言をしたとき、出来れば泣いてしまいたかった。しかし、それを彼のどこかが許さなかった。面に現れたのは、まったくの無表情。自分の淡々とした声音が、どれほど彼女を傷つけてしまったのか。 それ以上に、感情を爆発させる彼女に、ゼルガディスは何も言う事ができなかった。 そして、これからも,何もできることはない。 「っく!」 溢れてくる激情を叩き付けるように、ゼルガディスは目の前にあった椅子に拳を叩きつけた。鈍い音を立てて、粉々に砕け散る。 「うぉぉおおお!!」 机、鏡、箪笥、窓。目に付くもの全てを引き倒し、粉々に砕いていく。カーテンを引き裂き、カーペットを切り付ける。 「あぁぁ!!!」 ほとんどの調度を破壊しても、心の波が静まらない。 悲しい咆哮を上げながら、ゼルガディスは己の体を壁に打ち付けはじめた。 手を。 頭を。 体を。 何もできない自分を、わざと傷付けるように。 少女の痛みを、少しでも感じとろうと。 何度も、何度も。 岩で出来た皮膚が裂け、傷口から血が吹き出し、崩れる壁に紅い模様を付けていく。 数時間後。 叫び声を聞き付けた侍従によって、フィリオネルが呼ばれた。あまりにも常軌を逸した物音に、誰もその扉を開けようとは思わなかったのだ。 数分前に音が止んだという部屋は、妙に空々しい空気が溢れ出していた。 フィリオネルが開けた扉の先には、吹き荒れた狂気の残骸と、その上に呆然と座りこんでいる血で汚れたの服を纏った青年の姿があった。 その表情は俯いているために見えないが、身にまとう空気だけは感じ取れた。 一切の拒絶と悲しみ。 誰も触れる事のできないその空気に、フィリオネルは重々しくため息をついた。 人は、死を乗り越えるためにさまざまな段階を迎えると言われている。それは苦しく、誰もが何度もつまづく階段。 死を受け入れるものも、そしてそれを側で見ていくものも。同じように段階を乗り越えていく。 彼はいま、アメリアと同じ段階に来ているのだろう。死を迎えるもの達がまず迎える『怒り』という、全てを焼き尽くすほどの業火の段階に。 今は誰も、なにかを言える段階ではない。ゆっくりとそれを受け入れていくのは、本人たちなのだ。 数日前、同じような激情に身を焼いた父親は、頭たれる青年に声をかける事もなく扉を閉じた。 そして、誰も部屋に近づかないように厳命を言い渡す。 ばたばたと離れていく臣下達の足音を聞きながら、フィリオネルは一度だけ扉を振り返った。 扉の向こうからは、今は何の音も気配も消えていた。 一人だけでは乗り越えられないかもしれない。しかし、二人一緒にいさせてやれば、乗り越えていける気がした。 『死』は、迎えるものと送るもの。双方が支えあわなければ乗り越えられないものだから。 |
4538 | あなたのいない世界で4 | なゆた | 10/11-02:31 |
記事番号4537へのコメント あれから数日。 セイルーンは表向き平和だった。 しかし、アメリアの病状を隠している国政中央部は、必死にそれを隠していた。長期間の彼女の不在を取り繕うため、無理を押し付けたゼルガディスを再度利用する。 すなわち『死線をともに潜り抜けた戦友を、ゆっくりともてなすため』という、苦し紛れの発表をしていた。そのおかげで、彼らは彼女を神殿から、王宮へと戻さざるを得なくなった。 王宮には、いまだ彼女の病因を知るものは少なく、それゆえ余計に神経を使う。その上、病状を知らされたばかりのアメリアは、情緒がやや不安定だった。 いつもの笑顔がない代わりに、物思いに沈んでいたり、旅装束を手にとっていたりする。そうしていれば、自然人の関心を引いてしまう。 そのため、上層部そのままアメリアを人里離れた療養地に移す事にした。一番反対したのはフィリオネルだったが、国情を知られるわけにはいかないという説得に、しぶしぶ同意した。そして、ゼルガディスに彼女の世話を頼んだ。 あの日以来、ゼルガディスは毎日アメリアの元に足を運んでいた。最初は泣いてばかりいたアメリアも、次第にゼルガディスと話すようになった。ゼルガディス自身は、アメリアと話した後も夜遅くまで、いろいろな書物を読み漁っているらしい。 何でもない風に装う彼の態度を、フィリオネルは痛々しく感じていた。しかし、自分もそう変わらないだろう事に気づいて苦笑をもらす。 今日、アメリアはセイルーンを後にする。 簡素な馬車が人目を避けるようにして山へと入っていく。 随員も少なく、荷物も少ない。というより、荷物はすべて馬の上。随員も、アメリアの馬車に乗っているメイドが二人と、荷物を運ぶ男だけだ。馬車の御者は日雇いで、今日を限りに解雇と決まっている。 (まるで、夜逃げだな) 馬に跨ったゼルガディスが、マスクの下で薄く笑った。 そして、後ろについてきている馬車を振り返った。彼女が元気なら、あんな狭い箱の中にはじっとしてはいないだろう。ここ数日で少しづつ落ち着いてきているとはいえ、いまだ以前のような明朗さは望めない。 今の彼女の疲れやだるさは、病気によるものより精神的なものの方が大きい。それは無理に消せるものではないし、消そうとも思わない。無理強いすれば、余計にひどくなる事は常識だった。 フードの隙間から空を見上げる。 こんな気分にはふさわしくないような澄み切った青い空。 こんな空の下、もう一度彼女の笑顔が見れるのなら・・・・・・・・・。 ゼルガディスは軽く目を細めた。照りつける太陽が、まぶしすぎた。 ぎーーー。 馬車の車が軋みを立てて止まった。 目の前にはこじんまりとした門。さすがに手入れが行き届いていて、山奥に自然と溶け込む造りの館だった。 「着きましたぜ」 御者の男が幌の中に声をかける。その声に反応して、幌の布が持ち上がった。 「さあ、お嬢様。着いたそうです」 「まいりましょう」 付き従っていたメイドが、中にいるアメリアに声をかける。セイルーンの姫とわからないように、二人とも彼女の事を”お嬢様”と呼ぶようにしている。 しばらく待つが、誰も降りて来ない。中で何かを言っているようだ。 「どうした?」 馬から下りたゼルガディスが、手綱をもう一人の男に預けながら馬車に声をかけた。 「それが・・・・・」 メイドのうち年配のほうが、困惑気味な顔を馬車から出した。それに続き、短い黒髪の少女も顔を出す。 「ゼルガディスさん」 「どうした?」 最近やっと落ち着いてきた少女の声に、ゼルガディスが馬車に近づく。ふわりとアメリアが両手を広げた。 「なんだ?」 「つれてってください」 唐突なアメリアの言葉に、ほぼ条件反射のようにゼルガディスの顔に朱が上る。が、それは顔を半ば以上覆い隠すフードとマスクのために、他の人間にはわからなかった。 いや、アメリアにだけはわかっているかもしれない。ほんの少しだけ、楽しそうに瞳をくるくるさせる。 「いやなら、御者さんにでもお願いしますけど・・・・・」 「・・・・・・・・・わかった」 軽くため息をついて、ゼルガディスはアメリアの体を抱き上げた。長いスカートの裾が、ふわりと風になびく。 セイルーンの王宮なら、決して二人はそうはしなかっただろう。彼の立場と彼女の立場。二つがそれを邪魔していた。 皮肉にも、彼女の病がそれを取り払った。 風さらわれる黒髪を片手で押さえて、アメリアはまぶしそうに空を見上げた。 「空・・・・・・・・、青いですねぇ」 「そうだな」 答えて、ゼルガディスは立ち止まった。 二人そろって空を見上げる。 少しだけ雲の出てきた空に、ゆっくりと円を描く鳥が見える。 「お日様・・・、久しぶりに見ました・・・・・・・・」 「・・・そうか」 アメリアが、まぶしそうに目を細めてゆっくりと口元に笑みを刻んだ。 「風がおいしい・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・ああ」 アメリアの微笑を見て、ゼルガディスは泣きたくなった。 どうしてこんな時の笑顔が、こんなにきれいなのか。これでは、まるで死を看取る気分になる。 「・・・・・また外に連れてってくださいね、ゼルガディスさん」 ふわりと微笑んだ少女に、ゼルガディスは目だけで笑い返した。このときほど、自分の格好を感謝した事はなかった。マスクとフードがなければ、泣き笑いの自分の顔が、陽光にさらされ彼女にはっきりとわかってしまっただろうから。 「そうしよう」 答えを返して、ゼルガディスは門に向かって歩き出した。 彼女を看取るための家が、そこには用意されている。 屋敷に入る二人の姿を、年配のメイドは眉をしかめながら見ていた。 たった数分しか見ていないあの光景が、瞼に焼き付いて離れない。それは、主君に不貞な男が近づいているらではない。逆なのだ。二人の思いがわかるからこそ、痛ましく見えてしまう。 「仲のいい新婚さんだぁな」 同じように二人を見ていた馬車の御者が、好々爺の笑みを浮かべて声をかけてきた。何も知らない人には、やはりそう映るだろう。 「ええ、そうでしょう」 なるべく感情を表に出さないように微笑みながら、彼女は彼に報酬の入った皮袋を手渡した。 「ご苦労様。あ、あとこれを」 そういって、懐から小銭を数枚その手に追加する。 「なにか用かい?」 「たいした事ではないわ。ここでは祈る場所がないから、私の代わりに祈っておいてほしいのよ」 「なにを・・・・・?」 受け取った報酬と小銭をしまいこみながら、男が尋ねた。 メイドが、ゆっくりと空を見上げる。 「そうね。あの二人に幸せを・・・・・・・・・」 その言葉に、男が口を緩めた。 「十分幸せそうだがねぇ。ま、これからの新婚さんの幸せをやっかみながら、祈らせてもらうよ」 大きく口をあけて笑うと、男は馬車の手綱を引き絞った。高い馬のいななきを残し、ゆっくりとそこから離れていく。 その後姿が遠く消えたころ、メイドはもう一度空を見上げた。 雲が増えてきた空に、両手を組む。 「幸せを・・・・・・・・」 誰に願っているかもわからない祈りは、誰が聞き届けるのだろうか。 |
4539 | あなたのいない世界で5 | なゆた | 10/11-02:33 |
記事番号4538へのコメント ランプの炎が頼りなく揺れた。 もうすぐ油が切れそうなのを見て取って、その灯りを頼りに本を読んでいた人物は顔を上げた。分厚い本を閉じ、それを手に取る。その量が、つけた時に比べて随分減っていることに気づき、ゼルガディスはため息をついた。 ランプの蓋を取り、ふっとそれを吹き消す。いきなり部屋が暗闇に落ち込んだ。 目がなれていないせいで、深闇に落ち込んだような錯覚を覚える。だがそれもすぐに治まるはずだ。なぜなら、すでに空が白み始めている時間だから。 もう何日こんな日が続いているだろう。 自分が寝ている間にも、彼女の命が砂時計の砂のように零れ落ちているのだと思うと眠れない。いざ目を閉じても、最近力がなくなってきた少女の姿が蘇ってくる。そして、無力な自分に苛立つ。 いくら最新の医学の本を見ても。そして、古の賢者の書を見ても彼女を救う術はみつからない。せめてできることは、彼女を襲う激痛を緩和し、そばにいてやることだけだった。 そこまで考えて、ゼルガディスはふと違和感に包まれた。 原因はすぐに気づく。 いつまでたっても、周りが漆黒のままなのだ。嫌な予感を覚え、カーテンに手をのばす。 「・・・・どうしました?闇を恐れる柄でもないでしょうに?」 声はすぐ後ろから響いた。懐かしい、とは言いたくないその声に、ゼルガディスはゆっくりと振りかえった。 目の前には、予想通りの顔と姿。黒いおかっぱ頭で、何が楽しいのかにこにこと笑顔を浮かべている。黒の神官服に身を包んだ一見ただの青年が、自分より遥かに力を持つ高位魔族が、彼は嫌いだった。 「・・・・・・・・・何の用だゼロス。」 心底嫌そうに顔を向けるが、ゼロスは全く気にせず彼が見ていた本を開いた。 「アメリアさんの病は、人の力ではどうにもなりそうにありませんね・・・・・・・・・」 さらりと言われた言葉に、ゼルガディスは拳を握り締めた。わかっていることだった。分かっていたはずだった。しかし、それをいきなり他人に言われると、簡単には受け止めきれない。 「そんなことを言いに来たのか?!」 荒くなる言葉を押さえ、険しい瞳でゼロスをにらみつける。 「まさか。そんなに暇じゃありませんよ、僕は」 困ったようにゼロスが手を振った。しかし、その顔がどこか嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか? 睨みつけるゼルガディスのことを無視して、ゼロスはさっさと手頃な椅子に腰を下ろした。そしてゆったりと足を組む。 「・・・・・・で、お話と言うのはですね、ゼルガディスさん。アメリアさんのことです」 「アメリアの?」 「はい。・・・・・彼女の命、助けたくはないですか?」 くらり、とめまいがした。 それは甘い誘惑。手に取れば蝕まれると分かっているのに、伸ばさずにいられない。 それは魅惑。 翌日 ゼルガディスは何事もなかったようにアメリアの部屋を訪れた。いつも通りに服薬のチェックをして、その効き目を聞く。痛みがひどい部分に手を置いて、とりとめもなく色々な話しをする。 一見穏やかで、実は荒れ狂うような葛藤の時間。 穏やかな笑顔を見せるようになったことが、逆に痛々しい。 ふとそのアメリアが、窓の外に目を向けた。 「・・・・・私ってどうしていつもこうなんでしょう?」 「・・・・・・・・・いつも?」 俯き加減の表情は、最近見せた事のない後悔に満ちたものだった。 「はい。私、今度ゼルガディスさんに会ったら絶対について行こうって思ってたんですよ?足手まといにならないようにいろんな勉強して・・・・・・。でも結局、ゼルガディスさんに迷惑かけちゃって・・・・・・」 「・・−−アメリア」 制止の音を含むゼルガディスの言葉を、アメリアは聞こえないふりをした。言いたい事はすべて言って、そうして死んで行きたかったのだ。 自分勝手な想いかもしれないが、アメリアにはそれが必要だった。 「今だって、ゼルガディスさんを私の都合で引きとめて・・・・・。ずるいですよね。私、こんなにわがままだからきっと罰があたっちゃったんですね、きっと」 「アメリア!」 それ以上言わせたくなくて、ゼルガディスはアメリアを抱き寄せた。固いゼルガディスの胸に指をはわせながら、アメリアは静かに瞼を閉じた。 「・・・・・だって、ゼルガディスさんに迷惑かけて、こうして抱きしめてもらって、私は幸せを感じてる」 すぅっと、そのまま力なく倒れこむ。痛み止めの効果が強く、最近眠っている時間が増えてきたのだ。その眠りに吸い込まれる寸前、アメリアはゼルガディスを見上げた。蒼い瞳が、柔らかくなる。 眠りに落ちる瞬間、人は自制の心が弱くなる。今まで決して見せなかったような穏やかな微笑で、アメリアはそっとゼルガディスの頬に触れた。 「・・・・・・・私が死んでも、忘れないでいてくださいね」 それは呪縛。 たった一言で、アメリアは彼を縛った。 本人は意図していないだろうが、それは確かにゼルガディスを絡めとった。 そのまま眠り込んだ少女の体を寝台に横たえ、ゼルガディスはそっとシーツを掛けなおす。 「・・・・・・・・・・・・・」 無言のまま、白い頬にそっと指を沿わせた。幾分弾力のなくなった肌が、目に見えて荒れてきている。 (忘れる事などできはしない・・・・・・・・・・・・・) 差し込んでくる日を避けるためにカーテンを閉め、ゼルガディスはゆっくりと部屋を後にした。 ―昨夜 「……それで?どうせお前のことだから交換条件でもあるんだろう?」 ゼルガディスの問いかけに、ゼロスはぱちぱちと両手を叩いた。 「さすがです。もちろん、条件はありますよ」 「心にもない世辞はいい。なんだ?」 その言葉に、ゼロスが薄らと瞳を開いた。紫の瞳が狡猾さを含んで怪しく光る。 「もちろん、あなたですよ。あなたの命、いただけますか?」 「俺の、命だと?」 意外な答えだった。 どうせこの魔族の事だから、どこかの大国の崩壊に手を貸せだとか、魔族の仲間になれだとか言うと考えていたのに。しかし、命を要求してくるとは。 しかし、ゼロスはニコニコと頷くだけだ。 「はい。もちろん、他の方の命まで要求しませんよ」 「………何を考えている?」 「それはもちろん、秘密です」 にっこりとお馴染みのポーズを取るゼロスに、ゼルガディスはいらいらとため息をついた。 どうせそう答える事はわかっていたが。 「アメリアには何も望まないのか?」 そこが一番疑問だった。自分の命の代わりに彼女を助けると言う。しかし、助かった彼女に何か要求するのではないか。この性悪な魔族ならやりかねない。 「ああ、それはありません。と言うより……」 「なんだ?」 「アメリアさんの病気は結構厄介でして。その原因となる病巣をすべて取り除かなければなりません。でも、そのおかげで少し副作用がありまして」 「副作用?」 「はぁ。別段命にかかわると言うのではなく、少し記憶がなくなってしまうんです。家族や自分について、それに今まで旅をしてきたこと。もちろん、あなたの事も……」 「すべて、忘れる………?」 今まで生きてきた事を。 楽しかった事。 辛かった事。 乗り越えてきた事。 すべて消えてしまうと言うのか。 自分と出会った事でさえ。 何もかもがなかった事になってしまう。それが彼女にとっていい事なのか。自分の勝手な思いで、彼女の今までの人生を奪ってしまっていいのか。 ゼルガディスは片手で顔を覆った。その様子に、ゼロスが満足げに笑みをこぼす。その苦悩でさえ、彼の目的の一つだったのかもしれない。 「今すぐに、とは言いませんよ。心が決まったら僕を呼んでください。すぐに来ますから」 意地の悪い笑みを残して、ゼロスがふわりと掻き消えた。 ただ一人残されたゼルガディスは、急速に光を取り戻す部屋の中で、ただ立ち尽くしていた。 それが昨夜。 そして今夜。 ゼルガディスは部屋の闇に向かって声を発した。 「…………ゼロス」 闇が、形をとって怖いくらいに優しく微笑んだ。 |
4540 | あなたのいない世界で6 | なゆた | 10/11-02:35 |
記事番号4539へのコメント 真っ暗な部屋の中、その部屋の持ち主がゆっくりと瞳を開いた。 薬の効果でねむりが不規則になっているのに、決まって深夜に目が覚めてしまう。心のどこかにふあんと恐れがこびり付いているためだろう。 月の光もないために天上も見えない。 力のなくなって来た腕に意識を向け、ゆっくりと両腕を目の前にかざす。すっかり細くなってしまったそれを見て、アメリアは顔を顰めた。 1人で起きるこの時間が恐ろしい。 暗闇が、いつ自分を飲み込んでしまうのだろうと、その事ばかりを考えてしまう。 暗闇の中にたった一人残されたような、絶対の孤独感。側に彼がいないだけで、泣きそうになる。 掲げているのが辛くなった腕を、アメリアはそっと瞼に押し付けた。 大きくため息を付いた。 その瞬間、きぃっと扉がきしむ音がした。 アメリアは覆っていた手を外し、扉のほうに目を向けた。 今まで、こんな時間に部屋に来たものはいない。侍女たちの夜の見回りの時間ではないはずだ。 見通しのきかない暗闇で目を凝らすと、見なれた白い巻頭衣が揺れるのが見えた。 「……ゼルガディス…さん?」 怪訝そうなアメリアの声に、びくりとその姿の主が反応した。一瞬だけ立ち止まり、そしてゆっくりとした足取りで寝台に向かってくる。 自分の寝台に彼が辿りつくまで、いつもより時間がかかっているような気がした。 ぎし、と寝台がきしむ。 近づいてきたゼルガディスが、そっと寝台に片手をついたのだ。 「…………アメリア」 掠れるような小さな声だった。静かな深夜で無ければ聞き落としていただろう。それは苦渋に満ちて、聞いているだけで泣きそうになるような声だった。 アメリアは、そっとゼルガディスの頬に手を伸ばした。 「どうか、したんですか?」 ゼルガディスは無言で、頬の手を握り返した。愛しそうにそれに口付ける。 アメリアの心拍数が跳ね上がった。体は弱っていても、心までは変わらない。 「あ、あの?!」 ここ最近では珍しくなっていた上ずった声で、ゼルガディスに問い掛ける。が、ゼルガディスは答えずにそのまま、そっとアメリアの手を戻した。 しばらく、沈黙だけがその場を支配する。 それを破ったのは、アメリアの予想しなかった第三者の声だった。 「心は決まりましたか?」 ゼルガディスの後ろから聞こえてきた声に、アメリアははっと目を見開いた。 それは、彼が毛嫌いしているモノの声。 かつて仲間だった事もある、高位魔族。 しかし、決して友好的な間柄では無い。時と場合によっては、躊躇いなく自分達を引き裂くだろう。 危うい糸の上に成り立っていた協力関係は、既に消えて等しいはずだった。 それがなぜ、この部屋で、彼と一緒にいるのだろう? 「ゼルガディスさん?これは……?」 どういうことですか?と聞こうとした瞬間、その唇がふさがれた。彼の唇によって。 いきなりの事で、アメリアの頭が真っ白になる。初めて、という訳ではなかったが、いつもより激しいそれに息が詰まる。 ようやく解放された時、初めてゼルガディスの顔が見えた。 苦しく、そして今までに見た事が無いほどに寂しそうな笑顔。泣き出しそうなそれに、アメリアは思わず体を起こしかけた。しかし、病魔に蝕まれたそれは、彼女の思った通りには動いてくれない。 ゼルガディスに軽く押しとどめられて、あえなく寝台に沈んでしまう。 動けなくなったそこに、ゼルガディスの囁きが降ってきた。小さな、掠れた声で。 「――――――生きろ」 その言葉を放った瞬間のゼルガディスの顔が、アメリアの瞼に焼きついた。 それはあまりにも悲しく、優しい笑顔だったから。 アメリアが寝台に落ちついた瞬間、ゼロスの持っていた杖が輝き出した。それと同時に、アメリアの両目が閉じられる。 規則正しい呼吸音から、深い眠りに落ちた事がわかった。 「そろそろいいでしょう?僕としては、あなたの気が変わらないうちに始めたいんですけど」 「……気は変わらん。とっとと頼む」 ゼルガディスは顔を伏せたまま、寝台から立ち上がった。そのまま、ゼロスの後ろに一歩下がる。 ゼルガディスの様子に薄い笑みを浮かべながら、ゼロスは一歩前に出た。そして、持っていた杖を目の前に掲げる。 「さて、初めましょうか………」 かぁっと杖に光が宿った。 同時に、アメリアの体もふわりと浮き上がる。 体にかかっていたシーツがずるずると滑り落ち、アメリアは薄い夜着だけでふわふわと浮いていた。 そして、その体もまた光に包まれる。 初めはうっすらと発光する程度の光だったのが、徐々に強さを増していく。 アメリアの体が、まるで光の粒子で構成されているようになった。元の輪郭も、光のために曖昧になっている。 ふわり、とゼロスが杖を横に振った。 ぽわっとした感じで、アメリアの体から光が浮かび上がった。それを皮きりに。蛍の光のような小さな光が、アメリアの体から生まれていく。 いや、それはアメリアを形作っていたモノだった。 光が生まれる度に、元あったものは小さくなっていく。 「おい、ゼロス!」 その様子にゼルガディスが声を荒げたが、ゼロスは意に介さずもう一度杖を振った。 アメリアだったものが消え、蛍の群れのような光が無数に宙をただよう。それは、元あったものの意識を象徴するように、ふわふわと無邪気に飛び、ゼルガディスの側に寄っていく。 ゼルガディスが、そっとそれに指を伸ばした。だが、光に触れる瞬間、まるで何かに引き裂かれるように光が逆流していく。 ゼロスが杖を正中に構え、じっと瞳を閉じていた。 その正面で、光が渦を形成し始める。 全ての命を形作る、螺旋の形に。 まぶしくて、目も明けられないほどに輝き始める。 それは命の輝き。 力強く暖かいその波動を、ゼルガディスはじっと見つめていた。目を離すわけにはいかなかった。 彼女の新しい生を勝手に決めてしまったのは、自分なのだから。彼女の死を受け止められなくて。それに対してなにもできない自分が、何より許せなくて。 これは、彼女の気持ちを踏みにじる行為かもしれない。自然の摂理を捻じ曲げる事かもしれない。 けれど、そうせずにいられない自分に、彼は勝てなかった。 だから、彼女から目を逸らすわけにはいかなかった。 螺旋状に輝いていた光が、ゆっくりと収束していく。足元から徐々に現われるその姿に、ゼルガディスは瞬きすら忘れて見つめていた。 翌日から、セイルーン上層部はひっくり返したような大騒ぎになった。 不治の病の第二王女に付けていた侍女から連絡があったかと思うと、いきなり彼女が元気になったというのだ。 最初は誰も信じなかったが、早馬で三回も同じ知らせが届くと、彼らの心にふつふつと楽観的な希望が湧き上がってくる。 そして、三回目の早馬に事情を知っている神官をつけて送り返した。ただ、事情が事情なだけに、この事はフィリオネル王太子とエルドラド王には内密に取りはかられた。 神官の返事を待っている間、セイルーンの上層部は気が気ではない。誰も仕事が手につかず、なにも知らない下部の者から何度も苦情を受けた。 そして帰って来た早馬によって、侍女達の訴えが真実であった事が確認された。 彼女の記憶と、側に付いていたはずの男の消失とともに……。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 一応、ここまでの加筆は終わりました。 後は努力あるのみ!! |
4541 | めちゃ切ないです〜!! | 緑原実華 | 10/11-16:35 |
記事番号4540へのコメント こんにちは〜!!はじめまして、緑原実華です! 今回のお話はほんと、じ〜〜んときました〜!! ゼルとアメリアのお互いの想いが伝わってくるようで・・・・。 続きがすごく気になります!!ゼルとアメリアはどうなっちゃうのでしょうか?! 二人はハッピーエンドになれるのか?!など、いろいろ思いを秘めながら次回を楽しみに待ってます!がんばってください! |
4549 | 今回は珍しく、切な系 | なゆた | 10/12-03:05 |
記事番号4541へのコメント こんにちは、はじめまして。なゆたと申します。 >今回のお話はほんと、じ〜〜んときました〜!! 私としては珍しく、結構しっとり系?いや痛い系?で攻めてみました。 書き始めたときに、よほど痛い思い出があったのかもしれません(笑) >二人はハッピーエンドになれるのか?! それは・・・・・・・・ ふふ、ふふふふふふ(だから怖いって) 一応秘密、ということで。 だれ?!なにも考えてないんだろう、なんて図星なことを言っているのわ?!!(自分やん) 続きもがんばります。一応、これだけはなんとかスピード上げて完結させたいなぁっと。 感想ありがとうございました。また読んでくださると嬉しいです。 なゆた |
4542 | すごいですよ。なゆたさん | 桜井 ゆかり E-mail | 10/11-18:10 |
記事番号4540へのコメント なゆたさんは No.4540「あなたのいない世界で6」で書きました。 > こんにちわー。ゆかりです。 今回は自分のホームページではなくこちらに書かれたんですね。 > > > 翌日から、セイルーン上層部はひっくり返したような大騒ぎになった。 > 不治の病の第二王女に付けていた侍女から連絡があったかと思うと、いきなり彼女が元気になったというのだ。 そりゃあ、いきなり元気になったらびっくりしますよね・・・・・・・・ > 神官の返事を待っている間、セイルーンの上層部は気が気ではない。誰も仕事が手につかず、なにも知らない下部の者から何度も苦情を受けた。 > そして帰って来た早馬によって、侍女達の訴えが真実であった事が確認された。 > 彼女の記憶と、側に付いていたはずの男の消失とともに……。 記憶消えちゃったんですね、やっぱり。 どうなちゃうんですかー!? ということが残り次が楽しみです。 >一応、ここまでの加筆は終わりました。 >後は努力あるのみ!! 頑張って下さい!応援しますから!! 次の話期待してますね。 |
4550 | ありがとうございます〜(照れ) | なゆた | 10/12-03:14 |
記事番号4542へのコメント こんにちはー、ゆかりさん。 自分のBBSにもレスつけてないなゆたです。 先日はカキコありがとうございました! 元気ないようでしたが、大丈夫でせうか? >記憶消えちゃったんですね、やっぱり。 はーい、消えちゃってます! 一応ここで恒例(?)返信レスの中で裏設定暴露!! アメリアの病気は、一応分かる人にはばれまくっていると思いますが、『悪性リンパ腫』です。んっと、そこに分類されるものには「白血病」とか「成人Tリンパ腫」とか、「骨髄腫」とかがあります。 若年の方がかかり、しかも進行がはやくて特効薬がない。(化学療法なんてスレ世界にはないでしょう) 手術で取り除けるものでもない。 で、ゼロスがやったのは普通の再生術と違って、人を細胞レベルまで一度分解し、癌化した細胞をごっそり取り除いたんです。 で、どうしても不足してしまう細胞分、記憶が無くなってしまったと(←ここら辺詳しく書くと、もはや私にも理解不能) 果たしてゼロスにそんなことができるのか?! いやでも、ガラスは一瞬で直してたし・・・・・ってことで、あまり深く突っ込まないでくださいませ(笑)。 感想ありがとうございます〜。遅筆者ですが、見捨てないで下さると嬉しいです。 なゆた |
4544 | Re:あなたのいない世界で6 | 桜華 葉月 | 10/11-21:59 |
記事番号4540へのコメント どうも〜♪♪♪ 初めまして。 ところでせつな〜い。めっちゃ涙でそう。 ぼく的には前向きなハッピ〜エンドが好きなんです。でも、この話がきれいだったし、世の中そんなに甘くないんだ〜という意識が沸々とわいてきて何となくこんなのもありかな〜と思えてきます。 あ〜、でも、せつな〜〜〜〜〜〜〜〜い。 は〜!!!これはまだ完結してないんですよね。 記憶をなくして果たして幸せになれるのか?ゼルを知る者にとっては良かったことなのか?そしてゼロスの真意は?気になりますぅ〜。 勝手なナレーションを付けつつ、それでは〜!!! 楽しみにまってま〜す。 |
4551 | はじめまして〜 | なゆた | 10/12-03:22 |
記事番号4544へのコメント 初めまして、なゆたです。 久しぶりに投稿して、早くもお初の方二人に書きこんでいただけるなんて(喜) >ところでせつな〜い。めっちゃ涙でそう。 ええ?!な、泣けますか? 自分としては、「あう、痛いなぁ」とか思いながら打ってるもんで。 あんま泣く系得意じゃないんで、いつまでその切なさが持てるかどうか・・・・・・? >ぼく的には前向きなハッピ〜エンドが好きなんです。でも、この話がきれいだったし、世の中そんなに甘くないんだ〜という意識が沸々とわいてきて何となくこんなのもありかな〜と思えてきます。 甘くないんですよね〜。とくに私の書くゼルアメは・・・・・・・・劇甘やんか!!(前科から)一応完璧バッドエンドと言うのは、双方死んでどちらも想い遂げず〜、って言うのが私的見地。どの程度のバッド度になるかは、まだ分かりませんけどね。 >記憶をなくして果たして幸せになれるのか?ゼルを知る者にとっては良かったことなのか?そしてゼロスの真意は?気になりますぅ〜。 ゼロスの真意は?下に書いてみました。 久しぶり魔族してくれました、ゼロス君。今までお笑いキャラに成り下がってたもんで(笑) ゼルを知る人と言うと、リナ達ですが今回は出ないです(きっぱり)これ以上増やすと、絶対話が収拾つけられなくなってしまうでしょうから(悪い癖) >勝手なナレーションを付けつつ、それでは〜!!! それにまた、勝手に答えつつ〜。 どうもありがとうございました! なゆた |
4547 | 待ってました | ゆっちぃ E-mail | 10/12-00:49 |
記事番号4540へのコメント なゆたさん、お久し振りです。ゆっちぃです。 挨拶もそこそこですみませんが……… 『あなたのいない世界で』、投稿開始なさったのですね! うわああああん、めっちゃ嬉しいですーーーーーーー!!(大泣き) 感想こそ出さねど(おいι)、当初からすっごく楽しみにしていた作品なので。 改めて読み直して、泣きました。やっぱり。 何度読んでもその度に………泣いちゃうんですよねぇ、私…(汗) (↑感情移入しすぎなんだよなぁ、きっとι) 本来死にネタだめだめな筈なのに、『あなたのいない世界で』は読んじゃうんです。どーしても。 切なくて儚くてどうしようもないくらい悲しくて……でも凄く素敵なお話だと思います。 続き、楽しみに待ってます。 お忙しい中の投稿、ありがとうございました。ほんとに嬉しいですvvv (で、欲を出せばゼルには戻って来て欲しいです(汗)やっぱり2人には一緒にいて欲しいのでvv(←我が儘)) |
4552 | お待たせいたしまして、もう | なゆた | 10/12-03:31 |
記事番号4547へのコメント おひさしぶりです、ゆっちぃさん!なゆたです〜。 いやもう、某会ではご迷惑をおかけしまして・・・・・。 わざわざ読んで下さって、感想までいただけて幸せでございます〜〜。 >うわああああん、めっちゃ嬉しいですーーーーーーー!!(大泣き) ひょ〜〜〜〜〜〜!!そ、そないに喜んでくださるものとわ(汗) 自分で送った後に読み返してみると、えらいぶつ切れで・・・・・。 加筆修正の量が増える増える(笑) 楽しみにしていただけてたなんて、光栄です〜〜〜〜〜。ああ、となると完結できなかった自分が・・・・・・・。 >改めて読み直して、泣きました。やっぱり。 >何度読んでもその度に………泣いちゃうんですよねぇ、私…(汗) >(↑感情移入しすぎなんだよなぁ、きっとι) うにゅ。すばらしいことです。 私のあの文章で感情移入ができるなんて!きっとゆっちぃさんてば、感受性高いのかな? 書いてる自分は、素なんすけど(冷たいのか、私?) >本来死にネタだめだめな筈なのに、『あなたのいない世界で』は読んじゃうんです。どーしても。 「死にネタ」系ですねぇ。なんか・・・・・・・。 6の段階で、まだ誰も死んでないのに。死なないで、死についてここまで引っ張るのって、私が初めてなんでしょうか?(どきどき) >切なくて儚くてどうしようもないくらい悲しくて……でも凄く素敵なお話だと思います。 きゃー!ありがとうございます〜。 素敵なんて、久しぶりにきいたような・・・・・・(お笑いに走るから・・・) >(で、欲を出せばゼルには戻って来て欲しいです(汗)やっぱり2人には一緒にいて欲しいのでvv(←我が儘)) ほほ、ほほほほほほ。 それは、まあ、神のみぞ知る、ということでしょうか…・・・・・・(逃げ!) 感想ありがとうございました!! なゆた |
4548 | あなたのいない世界で7 | なゆた | 10/12-03:00 |
記事番号4540へのコメント 天気はぽかぽかとして、いかにも散歩日和な聖王都。 その大通りを、白い服を着た少女が駆け抜けて行く。 太陽の光を受けて、肩まで揃えた漆黒の髪が深い海の色にも見える。藍色の瞳が、興味深そうに通りの店に向けられる。 セイルーン第二王女の、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンだ。最近、“不治の病だった”とか、“行きずりの旅人と駆け落ちした”とか言う噂が流れていた。 が、いまはそれは春先の溶け残りの雪のように消えてなくなっていた。その代わり、アメリアが旅行先で事故に遭い、今までの記憶を失ったという話が流れていた。そしてそれは、以前と変わらずに街に出てくる彼女によって、既に証明されてしまっていた。 住人達はその事実に落胆しながらも、変わらず明るい笑顔をふりまく王女に胸をなでおろしていた。 記憶を失った王女は、いまなお愛されていたのだ。 小高い丘まで駆けあがり、アメリアは大きく息をついた。 頭の上には青い空。眼下には白い城壁が延々と広がっている。見覚えの無い風景に、アメリアはもう一度ため息をついた。 自分がこの国の王女だと言われても、いまだに信じられない。 確かに城の者達にかしずかれているし、父と言う人は王太子だった。妙にハイテンションだったが、それも気にはなら無い。他人に言わせれば、それが親子の証拠だと言うことだが、アメリアにはいまいち実感がわかなかった。 国中、ぐるで自分の事を担いでいるんじゃないだろうか?もしかして、自分はこの国の王女ではなく、ただの記憶喪失の子娘では無いのか? 何回もそんな風に考えてしまう。 しかし、自分に初めて会った時の父(?)の反応を見る限り、それは無いと思う。 寝台から起きあがれなかった自分を、フィリオネルは泣きながら、ただ泣きながら抱きしめた。なにも言わずに、聞かずに。 それまで、他の人達に質問攻めにされていたアメリアは、その大きく温かい胸に初めて安心できた。記憶がなくなって不安だったのに、誰も彼もが『覚えてないのか?』と口にしていたのだ。 だからあの時、『ああ。この人はきっと、私のお父さんなんだ』と、はっきりと思えたのだ。それは、嬉しかった。 「はぁ〜〜〜」 アメリアは再びため息をつくと、すとんと腰を下ろした。緑の草をなでながら、瞳を閉じる。 父の話だと、自分はしばらく病床に臥せっていたらしい。その時の治療が原因で、記憶が無くなってしまったらしい、と。 しかし、その治療を施した人間は誰かわからなかった。療養していた屋敷に一緒にいたらしいのだが、病が完治していたときには既にその姿は無かったらしい。 「…お礼もして無いのになぁ」 立てた膝に顎を乗せ、アメリアは足元に咲いていた花を撫でた。体が起きあがれなくなるほどの病から自分を救ったという人に会ってみたかった。 けれど、誰に聞いてもその人の行方はわからなかった。というより、皆が皆口を揃えて 「どうかその者の事は忘れて、ゆっくりと体を休めてくださいませ」 としか言わないのだ。評判が悪かったのだろうか? 父にいたっては 「あの者がいなくなったのには、それなりの理由があるのだろう。それを差し置いて、わしの口からあの者についてお前に教える事はできん」 と苦い顔をして言われてしまった。どうも父には気に入られていたらしい。 「……どんな人だったんでしょうか……?」 青い空に輝く金色の太陽の眩しさに、アメリアは固く目を閉じた。そして、その光を遮るように腕を交差させ、目を覆う。 暖かい日差しの中忍び寄って来る睡魔に、アメリアはゆっくりと自分の身を任せた。 もう少し空を見つめていたら、太陽の中にある小さな小さな影に気づいていたかもしれない・・…。 「納得してくださいました?」 「あぁ………」 アメリアのいる丘の遥か上空。 彼女から見てちょうど太陽の中にあった二つの人影が、静かに言葉を交わした。 最初に言葉を発したのは、黒い神官服に身を包んだ高位魔族。上機嫌を隠そうともせずに、隣に浮かぶ男に笑いかける。 その表情を一瞥し、白い巻頭衣に身を包んだ男はもう一度地表に視線を戻した。 いつも見ていた白い巫女の略装が、緑の大地に横たわっている。あの時のような弱々しさはなく、大地に咲く力強い花のように見える。 「……これで彼女は今までの記憶もなく、新たな人生を生きる事になりました。これから先、平凡な大国の王女として生きるか、また波瀾に身を投じるか。れとも、寿命半ばに命果てるか。もっとも、あなたの知った事ではありませんでしたね」 茶化すようなゼロスの言葉に、ゼルガディスは小さく笑みを浮かべた。 「そうだな」 緑の中にぽつんと見える白い衣装に、ゼルガディスは目を細めた。 先の事は、これから先に出会う者達とアメリアが築いていくだろう。それが良きにしろ悪きにしろ、全てアメリアが決める事だ。それをとやかく批評する資格は、自分には無い。 細めていた瞳を固く閉じ、ゼルガディスは視線を横に向けた。そうしなければ、いつまでたっても未練を振り切れそうに無いからだ。 「もういい」 「そうですか」 ゼルガディスの言葉に頷き、ゼロスがその肩に触れた。 ひゅん、という音と共に二人の姿が掻き消える。 残された空間に、乾いた空気が一つ、揺れた。 一瞬の違和感の後、ゼルガディスはゼロスの手によって全く別の場所に移動していた。そこは薄暗く、恐らくどこかの遺跡の中と思われた。 剥き出しの石壁に刻まれた異国の文字にざっと目を走らせ、ゼルガディスは自嘲に唇を歪めた。 「……“王家の墓”か。いい趣味だな、ゼロス」 皮肉を込めた口調に、ゼロスはなにも答えない。手に持った杖を肩に預けながら、もう片方の手の平を上に向ける。 ぼうっと、その手に黒い光が宿った。 獣神官の、魔族の力だ。 「………約束は、果たしていただきますよ」 「俺の、命か?」 舌なめずりせんばかりの魔族の視線を受けながら、ゼルガディスは腰にはいていた剣を抜き放った。 灯りのない闇の中で、鈍く光って見える。 「おや?抵抗するんですか?」 攻めるような言葉とは裏腹に、ゼロスは楽しそうに頬を緩めながら杖を構えた。 『アストラル・ヴァイン』 ゼロスの問いかけに直接に答えず、態度で返答するゼルガディス。呪文を受けた刃が、赤く輝き始める。 刹那の睨み合い。 先に動いたのは、ゼルガディスだった。 『ディム・ウィン!』 呪文で発生した風がぶわっと、長年の埃とチリを舞い上げゼロスを襲う。周りが見えなくなったところに、ゼルガディスが一気に踏み込んだ。 ぎぃん!! 鈍い音が響き、魔力のこもった刃が杖にはじき返される。ゼロスの持っている杖自身、彼の意識のうちなのかもしれない。傷一つつけることかなわず、逆にはじき返される。 その時には、新しく唱えていた呪文が完成する。 『ラ・ティルト!!』 こう!きゅぁぁあ!! ゼロスの足元から青白い炎が吹き上げ、黒い神官服を完全に包み込む。半端な魔族なら塵一片残さずに消滅させる呪文。 しかし、相手は半端な魔族ではない。 「……この程度の呪文で、僕が倒せないことはご存知でしょう?」 炎の名残を払うかのように、ゼロスは汚れてもいない襟元を軽く払った。余裕に満ちたその笑顔に、ゼルガディスは鋭く舌打ちする。 「約束を破るおつもりですか、ゼルガディスさん?」 「約束?魔族のお前が?!」 嘲るように一声あげると、ゼルガディスは再び剣を構えた。一度で効かないなら、何度でも呪文を喰らわせるつもりなのだ。 「どうしても、抵抗なさるんですね?」 困ったものだ、とでもいいたげに、ゼロスは軽く首を振った。その人間くさい動作に、ゼルガディスが口元を歪める。 「……なにもせずに殺されるほど、俺は……、自分の命を安く見ているつもりはない」 ゼルガディスの台詞に、ゼロスは軽く眉を上げた。珍しいものを聞いた様に、そして嘲るように。 「あなたからそんな言葉が聞けるとは思いませんでしたよ」 言葉を返しながら、ゼルガディスの繰り出す剣戟を軽くいなす。その勢いのままゼロスから間を取り、懐から新たに取り出したナイフに魔力を込める。 「……生きるように足掻くのは、人間のサガでな!!」 ひゅん、と軽い音を立てて二本のナイフがまっすぐにゼロスの顔面に向かう。それは、目標に到達する直前に、ゼロスの力に触れて消滅してしまう。 「……それでこそ、ゼルガディスさんです」 にぃっと、ゼロスの口元に愉悦の笑みが広がった。背筋がぞくりと震えるような、魔族の笑み。 「なに?」 ゼルガディスが思わず問い返した一瞬に、ゼロスの姿が掻き消えた。 そして次の瞬間、ゼルガディスの首に後ろから手がかかる。 「……もし、あなたが抵抗もせずに殺されようとするなら、僕はあなたを八つ裂きにするつもりでした・…・…」 「っちぃ!!」 耳元で囁かれる声に、ゼルガディスは反射的に刃を後ろに付き出した。 しかし、それは掠ることもなく空を切る。別の空間に移動したゼロスが、一瞬のうちに再びゼルガディスを捕らえる。 「………あなたの命を奪うつもりはありません。約束通り、あなたの命は僕のものです」 「なんだと?!」 ゼロスの言葉に、ゼルガディスは驚愕の声をあげた。それでも、片手に隠していたナイフを横に突き立てようと、振り上げる。 しかし、それはゼロスに届く前に抑えつけられてしまった。もう片方の手も、同じように封じられる。 そのまま、勢いよく石壁に押し付けられた。 正面に、面白そうなゼロスの表情。 「……ただの人間と違う寿命と姿を持つあなたが受ける苦しみ、怒り…」 ぺろり、と舌なめずりをする。 「僕のために捧げてもらいます」 「貴様の餌になれ、とでも言いたいのか?」 嫌悪の表情もあらわに、ゼルガディスはゼロスを睨みつけた。くすくすと、悪びれるふうもなくゼロスが笑う。 「有り体に言うと、そうなりますね。………これからの一生も、あなたを束縛するつもりはありません。けれど、勝手に楽な道を選ぶことは許しません。生きて、僕を楽しませてください」 「誰が―――!!」 叫ぼうとした瞬間、ゼルガディスの首もとにゼロスが唇を押し付けた。その瞬間に、針を突き刺されるような鋭い痛みが、ゼルガディスを襲う。 「な?!くぁぁあああ!!」 さらにそこから、なにかが注ぎ込まれる。熱い、焼けるような熱さを持ったそれが、体の芯まで貫かれていく。 長いようで短い時間が過ぎ、ゼロスがゼルガディスから体を離した。立っているのが辛くて、ゼルガディスはがくり、とその場に膝をつく。 それを見下ろしていたゼロスは、ゆっくりと一歩下がった。 「儀式は終わりました。これから先、あなたは僕から逃れることはできません。その首筋に残ったのが契約の証」 ゼロスの体が闇に包まれる。 それに引きこまれながら、ゼロスは再び薄い笑みを刻んだ。 ―――簡単には死なせませんよ……… 夢の残滓のようなかすかな声を響かせて、ゼロスは完全に闇へと消えた。 ゼルガディスに首に、永遠に消えることのない烙印を残して…………。 |
4557 | はじめまして! | ききょう E-mail | 10/12-18:55 |
記事番号4548へのコメント こんにちは。私、なゆたさんの小説よく読むんですよ。イイ話が多いし。なゆたさんが開いているホームページにもちょくちょくお邪魔して小説読みあさってます。でも、掲示板に書き込んだことないんですよねι 今回の話はゆっちいさんに薦められテスト中だというのに7個一気に読ませていただきました。もう、すっごくいいです!!ゼル死んじゃうのか!?とハラハラしつつ・・・く〜ゼロスめ〜〜。 続き、すごく楽しみにしてます! |
4566 | ききょうだあっvvvvv | ゆっちぃ E-mail | 10/13-00:32 |
記事番号4557へのコメント て、何でききょうがここにいるのっっっ!!? いやもう、本気でビックリしたよ!同名の別人さんかと思ったくらいι でもでも嬉しいっっっ(喜)ネット上で会うの初めてじゃない?考えてみれば(苦笑) だってききょうなかなかカキコしないんだもんーーーー(泣)控えめすぎだよぅι まぁ、私のようにレスしまくるのも問題ありだけど………ι もちょっと表に出ておいで?お願いだからさ(だって会いたいんだもん) で、も一個お願い。後生だから私のことを『ゆっちぃさん』と呼ぶのはやめてくだされ。鳥肌たっちゃったよ(汗笑) いつも通り『ゆっちぃ』でvそう呼んでもらえるのが一番嬉しいのよ?私は んではでは・今日もテストがんばろーねっ(泣)ゆっちぃでした☆ 追記:今日は覚悟しといたほうがいいよvからかってあげるから(笑) |
4590 | お知り合いのようで(笑) | なゆた | 10/14-23:57 |
記事番号4557へのコメント 初めまして、ききょうさん。 なゆたです。 良くうちのHPに来ていただけているとか。うれしいです〜。でも、中々更新してなくてごめんなさいです。 ゆっちぃさんに勧められたんですか? ああ、ありがとうゆっちぃさん!おかげで感想までいただけてしまいました! しかも、ききょうさんてあんまりカキコしない方?光栄です! テスト中との事ですが、大丈夫でしょうか?私のせいで天数落ちてたりして・・・・・。 なんとか乗りきってください!(無責任な) 最近の私としては異例のスピードで更新してます。 続きは、またしばらくお待ちください。 なゆた |
4561 | 泣けますなー | キト E-mail | 10/12-20:25 |
記事番号4548へのコメント こんばんはー なゆたさん 感想ですけど 題名のように 泣けます もー読んでる途中でほろほろと泣けました アメリアの記憶が無くなったー!!(泣き) ゼルがゼロスの誘いに乗ってしまったー!!(泣きまくり) ぎゃー!!ゼルがやられるーー!!(滝涙・滝汗) って言う風にパソコンの前で かなりのリアクションを取っていたら 親に、「何踊ってんの!!」 ・・・踊ってないのに・・・(汗) ・・・親って子供のこと解ってない・・・(泣く) ・・・って何かどっかいってるしー!!(自爆) えーっと・・・とにかく良い話でした! がんばって続き書いてくださいー!!(急ぎ) キトでしたー!!(メチャ急ぎ) |
4592 | 泣かせまっせーー | なゆた | 10/15-00:10 |
記事番号4561へのコメント こんばんは、キトさん。なゆたです。 感想ありがとうございますー。なんか、題名が吉本芸人のようですがお気になさらずに(笑) > アメリアの記憶が無くなったー!!(泣き) なくしちゃったー!これから誰を、何を想わせよう?(作者の特権) > ゼルがゼロスの誘いに乗ってしまったー!!(泣きまくり) 久しぶりにゼロスが魔族です。贖罪〜以来かもしれません(一年以上って事ですね)でも、痛々しさだけなら、贖罪が勝ち。スプラッターは無しですから。 > ぎゃー!!ゼルがやられるーー!!(滝涙・滝汗) おーそーわーれーるーー!!(楽しんでました)ゼルがゼロスに痛い目会わされるのは、どうも好きのようです。私。ああ、ゼルってばいじめられ上手さん(違うだろ) > 親に、「何踊ってんの!!」 > ・・・踊ってないのに・・・(汗) > ・・・親って子供のこと解ってない・・・(泣く) だいじょうぶです!その程度の突っ込みですむならまだいいでしょう! うちの親は、人が小説打ってたら覗きこんできます。しかも、目に付いた文を読み上げる・・・・・・。 読んでんじゃねーよー!(怒) さすがにパロ文とはわからないでしょうが、恥ずかしい事この上ありません。 大学生で1人暮しのはずなのに、月2で遊びにくるうちの親って・・・・。過保護。 あ、私も飛んでってますね。 がんばりますので、読んでくださると嬉しいです なゆた |
4567 | をを……… | ゆっちぃ E-mail | 10/13-01:00 |
記事番号4548へのコメント 今晩わ〜、ゆっちぃです☆ 今回も感想、出させてくださいね(^^;) 姫様、案の定記憶…なくしちゃいましたねぇ。でも大丈夫です!記憶喪失なんて何のその! 2人はきっとまた元のようにらぶらぶに………(←自己中どりー夢ιとことん我が儘だなぁ…) それより何より、今回はゼロスが…………ゼロスがああっっ(叫) 姫のだいじな魔剣士さんに何すんですかぁっっ!!事によっては死より辛い、残酷な事を………っっ(泣) でも、あのまま本当に魔剣士さんの命をとるよりは良かったかも……でもでもっ、あれじゃあゼルが…………っ(←悶々と悩みつづける、バカ以外の何者でもない私) 久し振りに…本当に久し振りに、魔族っぽいゼロスをみました。 最近のほほんとしたお笑いキャラの彼ばっか拝見してたんで(^^;) うう………続きが気になってしょうがないです(汗) テストはどうした自分……………?(滝汗) 今回も駄文短文ですみませんιゆっちぃでした☆ |
4593 | をほほほ(悪人笑い) | なゆた | 10/15-00:18 |
記事番号4567へのコメント こんばんは、なゆたです。 今回も感想ありがとうございます〜。励みです!! >姫様、案の定記憶…なくしちゃいましたねぇ。でも大丈夫です!記憶喪失なんて何のその! >2人はきっとまた元のようにらぶらぶに………(←自己中どりー夢ιとことん我が儘だなぁ…) ほほほほほほほほ・・・・・・・・・・・・・((((((^▽^;; どうなるんでしょうねぇ。っていうか、私はどうするつもりなんでしょうねぇ(笑)ご期待に添えるんでしょうか?それとも、もののみごとに裏切ってしまうんでしょうか?それは、まあ、『秘密』ですね(考えてるか、なゆた?) >それより何より、今回はゼロスが…………ゼロスがああっっ(叫) >姫のだいじな魔剣士さんに何すんですかぁっっ!!事によっては死より辛い、残酷な事を………っっ(泣) をを!そこを捉えてくれましたか! そうです! ここで言いたかったのはずばり『死よりも辛い事!』それと引き換えにアメリアは生きていくということ。ポイントだったんですよぉ(密かにね) >最近のほほんとしたお笑いキャラの彼ばっか拝見してたんで(^^;) なんか、私ってばゼロスが魔族って認識薄れてきてたもんで、つい魔族ぽいのを見てみたくて。ただそれだけで、今回のゼロスの登場が決定しました。「5」くらいのときに(ぎりぎりですな) >テストはどうした自分……………?(滝汗) そうです!大丈夫ですか?一時の事とは言え、脳と神経すり切れる期間ですよね?あまり無理せずにがんばってください。 あ、あと、ききょうさんに紹介していただいたようで(笑) お二人とも大変な時期に感想いただいて、大変光栄です。ありがとうございます。 これからもがんばってきます! なゆた |
4589 | あなたのいない世界で8 | なゆた | 10/14-23:53 |
記事番号4548へのコメント 闇の中に白い布が揺れている。 とても頼りなさそうで、それでも消えることはない。 揺れる、揺らめく、小さな灯り。 ふいに、それが闇に呑まれた。 瞬間、耳朶に響く『音』 …………、…ろ! 「!!」 がばっと、寝転がっていた体を起こした。 眠気を追い払うように数度まばたきし、一度周囲を見まわす。 太陽は少し西に傾き、涼しい風が吹き始めている。ねっころがっている内に、本当に眠ってしまっていたらしい。 まわりに誰もいないことを確認し、アメリアはぽりぽりと頭をかいた。 誰かに、なにか大切なことを言われた気がしたが。どうやら夢だったらしい。耳元で囁かれたような錯覚が、あまりにリアルだった。 とても大切なことを言われた気がするのに、なんと言われたのか覚えていない。 覚えているのは、圧倒的な暗闇。そこにある小さな、闇に汚されながらも失われない、白さ。 「……何だったんだろう?」 よくわからない夢に、アメリアは首を傾げた。しかし、考えて意味の分かるものでも無く。 「ま、いっか。帰りましょ」 深く考えることも無く、ぱっと立ちあがった。 そして、沈む太陽に目を向ける。 それは紅く、赤く………。 (血のように赤い) 浮かんだ想いに、アメリアはぶるりと身震いした。今までも赤い夕日は見てきたはずなのに、なぜかそういう印象しか今日は浮かばない。 顔を顰めると、アメリアは夕日から視線を外した。 寒気をおぼえた肩を抱き、小走りに駆け出した。 中々慣れることのできない大きな家へと、足を向ける。そして、逃げ出すようにその丘を後にした。 数年後…………―――― アメリアの祖父が逝去した。 何年も寝たきりで国務の全てはフィリオネル王太子が全権を掌握していたので、政治的には大して混乱もなかった。 しかし大国の国王が無くなったため、盛大な国葬が催されることのなった。各国の代表が弔いに訪れ、セイルーンはしめやかな空気が流れるも常よりも活発になっていた。 その中心たる、セイルーンの城。 そのまた奥にある王族たちの居室の一つで、黒髪の女性が黒いドレスに身を包んでいた。 濡れるような艶やかな髪をアップにし、黒のベールを視界の邪魔にならないように頭の上に上げている。憂いを秘めた瞳は濃紺。海の深い部分を思い出させる。 セイルーンの第二王女にして、今回崩御したエルドラド国王の孫娘。アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。 彼女が死の淵から回復し、既に5年の月日が流れていた。 幼さを残していた顔立ちはすっかり女性となり、手足もすらりと伸びている。21歳と言う年齢から見ればやや幼さが感じられるものの、万人の目を引くだろうと思われる。 窓際に椅子を引き出し、それに腰掛けている。 ガラスの向こうに見える人々を見ながら、こつんと窓に額を預けた。 「………お爺様…………」 記憶が無くなって5年。祖父には何回もあったし、何度も話しをした。死に向かって突き進んでいた孫の回復を喜び、寝たきりでありながら気分のいい時は良く彼女を呼んでくれた。 しかし、アメリアの記憶は5年前に新たに始まったのである。だから、喜びを表してくれる老人に好意を持ちながらも、肉親としての愛情と言うものが中々沸かなかった。 死に顔を見ても、寂しい感情はあっても胸が張り裂けそうな悲しみは無い。肉親が死んだにしては、あまりに希薄な感情だった。 記憶が無いと言うことは、それまでの人生で培ってきた感情をも失うということである。それは、この5年で痛感している。 故郷も、家も、何もかもがしっくりこない。体が覚えていることも確かにあるのだが、感情が追いつかないのだ。全てが希薄で、不安ばかりが強くなる。 ゆっくりと、アメリアは瞳を閉じた。 ここ数日、葬儀のためにろくに睡眠をとっていなかったのだ。一気に眠気が襲ってくる。うつらうつらと、体が揺れる。 いつまでも慣れない王族としての生活にも、疲れていた………。 生きていることにも、疲れていたのかもしれない。 夢の中で夢を見る。 毎日政務の勉強をし、結婚話を持ち出される自分。 重苦しくのしかかってくる“義務”という名の拘束。 それに縛られながら、夢を見る。 愛されながら生きることを。 愛しい人の腕の中で、笑うことを。 夢の中で夢を見ている私は、生きているのだろうか? 記憶が無いことは、“私”がないということ。 今私が見ている夢は、“私”の夢なのか? それとも、5年分の『私』なのか。 わからないままに夢を見る。 その夜、遺体を墓に収めるための式典が催された。最後の別れになるその場で、アメリアは棺桶に眠る祖父に花を手向けた。 華麗な棺桶に横たわるその人は、この5年で慣れ親しんだもの。 真っ白い花に囲まれて、穏やかな顔をしている。呼吸をしていれば、ただ眠っているだけにしか見えない。 祖父の最後は、親族に見守られながらだった。醜い権力闘争で近親者の幾人かは謀殺されたり事故で死んでいたりするが、それでもそこにいるもの達は皆、祖父を静かに見守っていた。 そんな中で、祖父は静かに息を引き取った。 満足げな表情さえ浮かべて。 それは、愛するものに看取られていく満足さか。 それとも、長い病床で『死』を覚悟したゆえでの穏やかさか。 かつて自分もあのような表情をしていたのだろうか。誰かにそれを向けて。 祖父に対して、結局肉親の愛情は持てなかったのかもしれない。しかし、胸にはたとえようの無い寂寥感が漂っている。 自分の心にぽっかりと穴が開いたような、うつろな感じ。自分でさえそうなのだから、父や叔父の悲しみはいかばかりなのか。 アメリアは、手向けた花を見つめながらため息をついた。そして、次の人に場を譲るべく親族の列への帰る。 生き残った人は、これからこの悲しみを抱えていかなければならない。 (私が死にそうだった時、誰かをこうして悲しませてたのかな・・…・…) 父親は間違いなく、悲しんでいただろう。それは分かるし、祖父も心配したに違いない。 (私を助けてくれた人も・・・…・…) 5年経った今でも、自分を救ってくれた人がわから無い。一体どうやって病を治したのか、どうして黙っていってしまったのか。そして、なぜ自分の前から姿を消してしまったのか。 その人は、自分の事をどう思っていたのか。 記憶を失ってから、まず初めに興味を持ったのはその人についてだった。それは今でも変わらない。 もしかしたら、ずっと婚姻を拒んでいるのはそのせいかもしれない。 恋では無い。多分・・…・…。 ただ、気になるのだ。 時折耳に響く低い声。同時に浮かぶ、かすかな人影。 全ての記憶は失っているはずなのに、見た事も聞いた事も無いはずの人の姿が浮かぶ。 自分の考え事に熱中していたため、アメリアは気付かなかった。 目の前の花を掲げ持ってくる人の中に、不自然な動きをする者がいる事を。常ならば気づいたに違いなかった。 漆黒の礼服を身に着けた男は、どこかその服を着こなせていなかった。慣れない物を着て、動きが不自然になっている。花を持っていない片手が、ゆっくりと懐に沈む。 アメリアが気づいた時には、既にその男は目の前に迫っていた。 目の前を過ぎて、懐から手がでる。 その手に光る、鈍く輝く薄刃の刃。 その先にいる人は、じっと棺桶を見つめているので気づいていない。 とっさに、足を踏み出す。 一歩踏み出し、また一歩。 気づいた時には、その男とその人の間に体を滑り込ませていた。 とん 小さな衝撃が、体を震わせた。 「と、う……さん」 その声に、フィリオネルが振りかえった。 |
4600 | 姫が…………っっ | ゆっちぃ E-mail | 10/15-02:44 |
記事番号4589へのコメント 今晩わですにょvゆっちぃです☆ 今日で無事、テスト終了いたしましたvふふ…またネット三昧の日々が来る………(にやり) で、ではではっ。感想いきますねっ。 タイトルでも書きましたが……姫が大変なことになりましたね(泣) うゅ〜〜〜〜〜、姫様が心配ですぅぅι(って、一番最後から感想付けだすなよ自分ι) 今回のお話も特にいろいろ考えさせられる所いっぱいで、もにた前にて又もや涙腺緩めてしまいました(汗) それはゆっちぃの感受性が豊かだからではなく、「あなたのいない世界で」が素晴らしい作品だからです。間違いなく。 お話のほうで五年が経過しましたが、その間ずっとアメリアは慣れない王族の生活送っていたんでしょうか。やっぱり。 ………辛いですよ、ねぇ………記憶を失う前までのアメリアと違って、五年前から全てをやり直してきたんですから。 フィルさんや、お爺様への情愛も以前と同じようにはいかなかったでしょうし…… ああ、なんか私がまじめな事書いてるってすんごい不自然(苦笑) なゆたさん別の意味でも凄いです。ゆっちぃをこれだけ真面目にさせるなんて(笑) ゼルがとっても気になります。彼は今、どこで何をしてるんでしょーか?やっぱり元に戻る方法探してるのかなぁ。 でも今となってはあんまし意味がないような気もするけどな(←自己中心的視点ι) 『8』まできてもまだまだ先が見えない『あなたのいない世界で』。 奥が深くて、いろいろ詰まってて、とっても濃くて、素敵なお話。 続き、楽しみにしてますね。お忙しい中の投稿ありがとうございます。読み手としてはこの上なく幸せです(はぁと) 追伸? ききょうに『あなたのいない世界で』を薦めたのは他ならぬ私でございます(かぁっ///) 学校で、電話で、メールで、しつっこいくらいなゆたさんの素晴らしさを伝えてました(汗) でもまさか、ききょうがカキコするとは………薦めた手前としては凄く嬉しかったなぁvvv |
4603 | 早いですね | なゆた | 10/15-04:03 |
記事番号4600へのコメント こんばんわ、なゆたです。 やっとこさ9を書上げて投稿に来てみれば! 早くもゆっちぃさんの感想があって嬉しいです! 早いっすねぇ。いや、夜も遅いから「遅いっすねぇ」か?>どっちでもええやん、自分 >今日で無事、テスト終了いたしましたvふふ…またネット三昧の日々が来る………(にやり) おお!それはおめでとうございますー!!でいいのかな? あれは結果が怖いものだから。・・・・・・・怖いなぁ、あれは(しみじみ) >タイトルでも書きましたが……姫が大変なことになりましたね(泣) なってますねぇ。 記憶が無い=生まれ変わったって、アメリアは取ってます。 前の自分がわから無くて、けれど前の自分の影が大きくて。とても怖い。っていうことが書きたかったんですけど、文才なさすぎ? >それはゆっちぃの感受性が豊かだからではなく、「あなたのいない世界で」が素晴らしい作品だからです。間違いなく。 いえいえいえいえいえいえ(頭振りまくり) この作品の書き出しってば、絶対に人に言えない動機です。 きっと聞くと「そんなんで書き始めるな−−−−−−ー!!!」と怒鳴られる事請合いです(いばるな!) こういう話っていうのは結構好き嫌いが分かれるんじゃないかとどきどきしてます。それに、どんな話を書いても、受け手の方が真剣に考えてくれるから、泣かれたり感動できたりするんだと思います。そして、その考える事ができるっていうことが、一番大切な事だとなゆたは思います。 ああ、めずらしく真面目に話してるな。話っぷりがおばさんだぞ>自分 >ゼルがとっても気になります。彼は今、どこで何をしてるんでしょーか?やっぱり元に戻る方法探してるのかなぁ。 ほほほほほ・・・・・ぐほぐほ それは・・・・・・いきなり明らかに・・・・・・・・。 >でも今となってはあんまし意味がないような気もするけどな(←自己中心的視点ι) どうでしょう?とりあえず これより前の方に書いたと思うんですけど。2くらいかな? ゼルガディスが人間に戻る方法を探す事について。アメリア視点ですが、私としてはあれがゼルガディスの「戻る方法を探す事」についての考えです。 一応、やめれないでしょうねぇ。全てを失っても。 >『8』まできてもまだまだ先が見えない『あなたのいない世界で』。 ・・・・・・・むかし「贖罪の時」でも、全く同じ事が言われました。 まあ、あれみたいに長くはしないでしょうが。 読者の方に先を読まれない話って、書いて手楽しいです(悪人) >ききょうに『あなたのいない世界で』を薦めたのは他ならぬ私でございます(かぁっ///) >学校で、電話で、メールで、しつっこいくらいなゆたさんの素晴らしさを伝えてました(汗) おお!そんな全ての通信手段で!! いやもう、全然すばらしく無くて恐縮です!お恥ずかしい限りです(////)しかし、そこまで宣伝(?)していただけるなんて、作者冥利でございます。 ありがとうございます〜〜〜〜〜〜。 なゆた |
4602 | あなたのいない世界で9 | なゆた | 10/15-03:46 |
記事番号4589へのコメント 「アメリア!!!」 倒れ掛かる娘の体を支え、フィリオネルがその名を叫ぶ。 そのただならぬ声に、初めて回りの人間が気づいた。 アメリアを支えるフィリオネルの手に、べっとりと赤い血がつく。黒い服で目立たないが、その腹部から止めど無く血が溢れ出している。 その血を見とめて、幾人かの貴婦人が悲鳴を上げた。それを合図のように、建物の影から幾人もの黒服の男達が飛び出してくる。その手には、くすんだ光を放つ長い刀。その不気味な輝きに、悲鳴が空気を震わせた。何人もの衛兵達が人垣を掻き分けて、貴賓を守ろうと立ちまわる。 セイルーンは大国中の大国。その王位や混乱を求めて、誰かが謀ったのだろう。いま、次代の国王たるフィリオネルを討てば、まず間違いなく内部闘争が起こるのだから。彼が死ねば、次に昇るのは少し元気のよすぎる奇抜な発想が目立つ第一王女と、記憶を失い王族としては幾分力の衰えたと見られている第二王女。 他の近親者や、近隣国の影響力の増大が狙われるのだ。 しめやかな葬儀の場が、一気に修羅場へとかわった。 黒服の男達は、人ごみを掻き分けるようにしてセイルーンの実力者に迫っていく。それを守るべく、太刀を振るう衛兵達。 鮮血が飛び散り、壁や床に華開かせる。 その騒ぎの中心で、フィリオネルがアメリアを抱えたまま呆然としている。どくどくと血が溢れる傷口を抑え、必死で名を呼ぶ。 「アメリア!!なぜ、わしを庇ったりした!アメリアぁぁあ!!」 失血のために真っ青になったアメリアの頬に手を添える。 「と…さ……」 紫になった唇がわずかに震え、言葉を紡ごうとする。 「黙っておれ。すぐに治る。治るから!」 白魔術の使えない自分の身を、これほど呪ったことはなかった。アメリアを抱え、フィリオネルは必死で辺りを見渡す。 混沌とする周囲では、まだ侵入者達が我が物顔で暴れまわっている。 「誰か!神官はおらぬか!!」 雷のように轟くが、嵐の真っ只中のような部屋の騒ぎで誰も反応できない。 悔しさに歯をかみ締め、フィリオネルはアメリアを抱きしめた。 まだ5年しか経ってない。この子が命を取りとめて、まだたったの5年だ。どうやって回復したのかわからないが、あの青年がなにかしたのは間違いないと確信していた。それは、彼女の前から姿を消さなければならないほどの事だった事も。 その苦しい想いから彼女を返してもらって、まだ5年。 どうしてここで、また命を消さなければならないのか。 「アメリアぁああ!!」 やるせなさを、フィリオネルはその声量に込めて叫んだ。 父の声が遠くに響く。 周りの喧騒が遠い世界の出来事のように、アメリアには感じられていた。 指先の感覚がなくなっていく。視界がかすみ、世界が揺れている。今自分がどういう態勢でいるのかもわからない。 熱に冒されたように、体が熱い。 現実感のない頭の中で、先ほどかすかに聞こえた父の言葉を反芻する。 『アメリア!!なぜ、わしを庇ったりした!』 なぜ? それは自分でも分からなかった。 気づいたら体が動いていた。怖さとか、死の予感とか、そんなものを考える余裕はなかった。 そうする事は、昔から決めていたみたいに体が動いてしまったのだ。 もしかしたら、これが“体が覚えていた”事かもしれない。 けれど、しっかり考える時間があったとしても、きっと自分は同じ事をしていたと思う。だって、庇ったのは自分の父親だもの。 記憶をなくすということは、一つの生まれ変わりみたいなものかもしれない。昔の自分が全く分からず、不安を抱えながら新たな自分を獲得していく。 アメリアであって、違うアメリア。 けれど、父と認めた人は同じだった。だから、体が庇ったのかもしれない。 自分思いに満足して、アメリアはかすかに微笑んだ。それが面に出たかどうかは分からないけど。 彼女は初めて、生きていた事に満足していたのかもしれない。 がしゃぁぁあん!! 激しい物音が響き、採光用の天窓が粉々に砕け散った。 きらきらと光を反射する破片と一緒に降ってくるのは、その窓を破ったもの。 白いマントが重力に逆らってばたばたとなびく。両手で頭を庇いながら、騒動のど真ん中に舞い降りた。 魔術で浮遊していたらしく、着地地点にいた何人かが障壁に吹き飛ばされた。 あまりにも突然の登場に、黒服の男達も衛兵も賓客達も、誰も反応できなかった。一瞬動きを止めて、誰もが現われた人影に注視する。 フィリオネルもその1人だった。 少し離れた所からでもはっきりと見えた。白い巻頭衣で顔を隠し、全身白尽くめが目立つ剣士姿。 「ぜ、ゼルガディス殿?!!」 沈黙の名かに響いたフィリオネルの声を合図に、止まっていた時間が動き出した。 訓練を受けているもの達が、最も早く回復する。黒服の男達は、目標にゼルガディスを加え、一気に飛びかかる。 ひゅぉん 軽い音と共に、いつの間にかゼルガディスの手にブロードソードがあった。それは魔力を宿し、赤く濁っている。 一拍の間を置き、ゼルガディスは軽く剣を振るった。 と、先ほど飛びかかっていた男達の体にぴっと線が走る。 それを無視して、ゼルガディスはその横を駆け抜けた。赤い刃の死を撒き散らしながら。 真っ赤な鮮血が飛び散り、葬儀の場を汚していく。ゼルガディス本人にも返り血が降りかかり、その剣技とあいまって悪鬼のようにも見える。 再び響く悲鳴と叫び。断末魔の声が轟き、勢いづく衛兵達が気合の声を叫ぶ。 その中を無言で、静かなほどの勢いで突き進む。 彼の技量とその静けさで、前方にいるもの達が敵も味方も傍観者たちも我先にと避ける。運悪く目の前に飛び出してしまった黒服は、あえなくゼルガディスに切り伏せられる事になった。 真っ赤な、文字通りの血路を開きながら、彼はアメリアの元へと辿りついた。 それは、5年ぶりの再会。 「……アメリア」 目の前に横たわる人物を見下ろして、ゼルガディスは虚ろに呟いた。 5年前から成長した姿の、アメリア。少女らしい面影を残したまま、女性らしく柔らかな曲線をえがくその肢体。黒いドレスでさえ、彼女の純粋さを隠す事はできていない。 しかし、その黒い服は血に濡れ、表情のない顔が蒼白に歪んでいる。その口元にだけ笑みが浮かんでいるように見えるのは、彼の錯覚なのだろうか。 「すまん………」 アメリアの血で赤く染まったフィリオネルが、立ち尽くすままのゼルガディスに頭を下げた。 何に対しての謝罪か、それは言わなかった。きっと、色々とありすぎて言葉にならないのかもしれない。 ゼルガディスはその言葉にはっとし、そしてゆっくりと首を振った。 まるで壊れた機械人形のようにぎこちなくアメリアの横に膝まづくと、そっとその首に手を当てた。 「……まだ、息はある」 だが、出血量が多い。このままでは、それほど時間をかけずに意識を手放してしまうだろう。 細いアメリアの呼吸音を聞きながら、ゼルガディスは口元のマスクをひきおろした。 5年前とほとんど変わらない容姿。彼の中にある異物達が彼の寿命を引き伸ばしていると聞いていた。 けれど、明らかに5年前より変わっているところがあった。 その顔は疲労に濃く翳り、険が増しているように見える。5年前よりも確実に、彼は疲れていた。 「……悪いが、俺は“リザレクション”が使えない。だが、他に手もない。“リカバリィ”では、アメリアの体力がもたないかもしれない」 暗に、賭けるか?とフィリオネルに問いかける。その事をくみとって、フィリオネルはじっとアメリアを見つめた。そのままで、答えを返す。 「…………貴殿に救われた命じゃ。……預けよう」 フィリオネルの言葉に、ゼルガディスは頷いた。 そして傷口に、そっと手を当てる。 『リカバリィ』 柔らかな光がアメリアを照らす。 相手の自己回復能力を極限まで高める代わり、その分体力を消費する呪文。いくら体力の塊のアメリアと言えど、この状態でその呪文を使う事は大きな賭けだった。しかし、他に賭ける所がないのだから、やるしかなかった。 (アメリア………) 呪文に集中しながら、心の中で呼びかける。 俺は、お前にこんな所で死んでもらうためにアイツと取引をした訳じゃない。 ああ、お前なら『そんな事は望んでなかった』というだろう。 俺のわがままだ。 それでも俺は、お前に生きていて欲しい。 太陽のように明るく真っ直ぐで、全てをありのままに受け止める。 一度だけ、お前の話を聞いた。 俺を捕らえた、性悪魔族に。 記憶を失ってからも、お前は変わっていなかった。 けれど、ひどく苦しんでいた。 自分の知らない“過去の自分”と『今の自分』の違いに。 誰も言わなかったのか? 例え記憶があってもなくても、お前の本質は変わっていないと。 行動力も、真っ直ぐな所も、誰かを愛しいと思う事も。 俺のわがままは、お前を苦しめるだけだったのか? 過去を忘れるということは、もう一度生まれるということ言われるが。 違う。 お前は、お前。 変わらない。 だから………――――― 「…………――――――――生きろ!」 暖かな光が自分を呼んでいる。 ずっと聞いていたいと想う、優しい響き。 その声に、アメリアはゆっくりと瞳を開いた。目の前に、誰かの顔。 何度も夢で見て、結局いつも霞んでいる人の顔。 もっと良く見たいのに、やっぱり前が霞んで良く見えない。 「だ…………れ………?」 声にならない声で、唇だけが言葉を紡ぐ。 それに答えるわけではないだろうが、その人が口を開いた。 遠い意識に、その声だけははっきりと響いた。 「…………――――――――生きろ!」 その言葉は、無くしていた自分を埋める鍵だったのか。 いつも胸に感じていた空虚さが、すとんと落ちついた。胸に暖かな血潮が流れ出す。 希薄だった現実が、一気に近づく。 目に熱を感じた。それが横に流れ出す。暖かい、涙。 目の前の人が、そっとそれを指先で拭う。 唇が、言葉を紡いだ。 「あなたは……だれ?」 目の前の人の顔が、はっきりと見えた。 泣き出しそうな、苦しそうな、そんな笑顔。 切なくて、涙が溢れた。 そして再び、意識が遠くなる。 行数稼ぎすぎ、自分・・・・・・・・・・ |
4612 | うっきゃぁぁぁっ!! | ゆっちぃ E-mail | 10/15-23:52 |
記事番号4602へのコメント ご挨拶手抜きですいませんっ!ゆっちぃですっ!! ゼル!!ゼルやんついに登場ですねっっ!! めっちゃくちゃ嬉しいですーーーーーーー!!!待ってましたよこの時をっ♪ うふふ〜幸せですぅ〜〜〜(気持ち悪いι) 「生きろ」の科白のシーン、二度目ですねvすっごくスキなんですよ、この科白vvv 一度目の時にはすんごいぼろ泣きしちゃいました(照)『あなたのいない世界で』を読んでて一番泣いた場面です。 てゆうか泣きすぎ自分ιダメだなぁ 今回五年振りの再開を果たした姫様と魔剣士さん。姫はともかく、魔剣士さんはどう過ごしてたんでしょう?? 五年前とくらべて随分疲労なさってるみたいですが…………何…が、あったんでしょう(汗) ゼロス………お願いだからあんましゼル苛めないで…………(哀願) 今後の展開に注目大!ですね。 ゆっちぃでしたっ☆ |
4626 | アメリア嬢がぁぁぁぁ(爆 | 早坂未森 E-mail URL | 10/17-17:40 |
記事番号4602へのコメント どうも、はじめましてです〜 前から拝見してたんですが…ああああああアメリアちゃんがぁ、ゼル君がぁ(落ち着け なゆたさんていつも素敵☆なお話かいてますよねぇ、前感動して泣いたことあるです(事実) アメリア嬢がゼル君忘れちゃうなんて…と思っとりましたがさすがゼル君、ピンチの時には颯爽と駆けつけるんですね、かっこいいですぅ! でも…アメリア嬢、どうなるんでしょぉぉぉぉ!!!??? 生ゴミゼロス(ゼロスファンの人すみませんです)なんかと取引してやっと救われたのに、アメリアちゃん死んじゃダメだぁぁぁ〜〜〜〜(泣 って、なわけで(どーいうわけだ)続き楽しみにしてます…どきどき。 それでわぁ |
4630 | うきゃ〜!!!ナイト登場。(喜) | 桜華 葉月 | 10/17-23:22 |
記事番号4602へのコメント やっぱり姫のピンチには駆けつけて、おいしいところを持って行くんですね〜。 登場シーンも派手!!! でも、それでこそゼル。あんたはえらい。 そしてアメリア死ぬな〜!!! ゼルが来ても、あんたが死んだら意味ないでしょうが。 がんば〜!!!まけんな〜!!!力のか〜ぎり生きてゆけ〜!!! しかし、よく死にかける姫を持つと、フィルさんの心労はいかばかりか・・・。 相変わらず切ない路線突っ走ってますね。 これからもがっつです〜!!! では、楽しくよまさせていただきました。ありがとうございま〜す。 |