◆−楔―くさび― プロローグ−桐生あきや(10/21-04:53)No.4678 ┣はじめまして−一坪(10/21-05:33)No.4680 ┃┗Re:はじめまして−桐生あきや(10/21-05:50)No.4682 ┣楔―くさび― 1−桐生あきや(10/21-05:46)No.4681 ┣楔―くさび― 2−桐生あきや(10/21-13:45)No.4684 ┣楔―くさび― 3−桐生あきや(10/22-02:03)No.4705 ┃┗二度あることは三度あった(汗)やっとレス書けましたっ!−あんでぃ(10/22-15:33)No.4712 ┃ ┗初めまして! 読んでくださってありがとうございますぅ!−桐生あきや(10/22-23:57)No.4723 ┃ ┗こちらこそ初めまして!そしてこちらこそありがとうございます!(^▽^)−あんでぃ(10/23-01:32)No.4726 ┣楔―くさび― 4−桐生あきや(10/23-00:30)No.4724 ┣楔―くさび― 5−桐生あきや(10/23-00:44)No.4725 ┃┣お姫様だっこはだめ〜!煤i゜っ゜)♭−あんでぃ(10/23-02:02)No.4727 ┃┃┗Re:お姫様だっこはだめ〜!煤i゜っ゜)♭−桐生あきや(10/23-02:40)No.4728 ┃┃ ┗おんぶなら許すよん!d゛( ̄∧ ̄)−あんでぃ(10/24-01:35)NEWNo.4744 ┃┗ゼロリナ!?(//▽//−ぷち(10/23-22:24)No.4743 ┃ ┗ぷちさん、はじめまして−桐生あきや(10/24-01:52)NEWNo.4746 ┣楔―くさび― 6−桐生あきや(10/24-01:38)NEWNo.4745 ┃┣シチューのニンジンに一票!!−あんでぃ(10/24-02:21)NEWNo.4747 ┃┃┗レス毎回どうもです!−桐生あきや(10/24-14:56)NEWNo.4749 ┃┗あきやさん始めまして〜!!−karin(10/24-19:10)NEWNo.4750 ┃ ┗Karin始めまして−桐生あきや(10/26-03:37)NEWNo.4773 ┣楔―くさび― 7−桐生あきや(10/25-01:04)NEWNo.4755 ┃┗Re:楔―くさび― 7−あんでぃ(10/25-23:26)NEWNo.4766 ┃ ┗Re:あんでぃさんのコメント−桐生あきや(10/26-02:45)NEWNo.4770 ┣楔―くさび― 8−桐生あきや(10/26-03:10)NEWNo.4771 ┗楔―くさび― 9−桐生あきや(10/26-03:27)NEWNo.4772 ┣うふふふ(はぁと)−karin(10/26-12:25)NEWNo.4775 ┗あの人(?)がなぜここにっ!!−あんでぃ(10/26-20:52)NEWNo.4783
4678 | 楔―くさび― プロローグ | 桐生あきや | 10/21-04:53 |
どうも、初めまして、桐生あきやともうします。 このHPを知ってから、投稿したくてせこせこノートに書いておりましたが、 ようやく完結のめどがたったので、こうして投稿させていただきます。 初めてですが、どうぞよろしくお願いします。 TRY終了後、まだ四人で旅をしているという設定で、第二部が始まる前と しています。 一応ガウリナのつもりなんですけど………。 それでは、つたない文ですがどうぞお楽しみください。 ===================================== ―――どうして、あたしのせいで、いつもだれかが傷つくんだろう? 深夜、リナは宿屋のベッドの上で飛び起きた。 「………っ」 呼吸を整えて、吹き出た汗を拭うと、すぐ隣で眠るアメリアの様子をうかがう。黒髪の少女の起き出す気配がないのを確認して、少し安堵の吐息をついた。 何の夢を見ていたのかは、思い出せなかった。夢に見そうな嫌な体験はありすぎるほどあったから、どれなのかは、もはや見当もつかない。 闇に呑まれる夢。自分でないだれかが血を流す夢、死んでいく夢。恐怖。怒り。悲しみ。孤独。不安――― ナメクジの夢の一度だけ見た記憶があるが、あまりにおぞましくて夢の内容は忘れてしまった。 もちろん良い夢も見るけれど、最近は回数が少なくなってきていた。 代わりによく見るのは、あの夢。 ガウリイが冥王(ヘルマスター)に連れ去られた翌日に、初めて見た夢。 初めて見て以来、あの夢はリナの眠りを妨げるようになった。 ガウリイはちゃんと傍にいるというのに。 最近、ふと思う。 いつまで―――。 いつまでこうやって、皆と一緒にいられるのだろうかと。 アメリアもそろそろ国に帰るころだろう。ゼルガディスだっていつまでも自分たちにつきあっているわけにもいかない。 ガウリイは、一緒にいてくれるだろう。代わりの剣を探すって約束したから。 でも、ガウリイは―――。 ぼんやりと、眠るアメリアと見下ろしていたリナの顔が、不意にゆがむ。 「また………?」 アメリアが視界に入らないように、リナは横になって背を向けた。 最近、頻繁に自分の体に異常が起きる。 それがいったい何なのか、考えたくはなかった。原因の予想がつくだけに、考えたくなかった。 ―――もしかしたら、あたしはみんなと一緒にいないほうがいいのかな。 ふっ、とそんな想い脳裏をよぎって、リナは慌てて目を閉じた。 眠らなければ。 背中をぎゅっとアメリアにくっつけるようにして、リナは目を閉じた。 まるで寂しがりの子供のような仕草だった。 翌朝、いちばん起きるのが遅かったのは、やはりリナだった。 一階に降りていくと、もう三人ともテーブルについている。 「おはよ」 「リナさん、遅いですよ」 アメリアとガウリイの間の、空いた椅子に座る。差し向かいにはゼルガディスが座っていた。 「ごめんごめん。ちょっと夢見が悪くて、あんま寝てないのよ。あ、おばちゃんAセット三つね」 「リナ、平気か?」 「ん、だいじょうぶ。寝れなかったぶん、こうして起きるの遅いわけだし」 「ならいいが………」 ガウリイが不承不承うなずくと、代わってアメリアが恨みがましい口調で言った。 「ほんとに寝れなかったんですか? わたし今朝、リナさんに押しつぶされて目が覚めたんですけど………」 「んー、気にしない気にしない」 「そりゃリナさんは寝てるからいいんでしょうけど………」 ぶちぶち文句を言うアメリアに、水の入ったコップを手元に引き寄せながら、リナが尋ねる。 「なんなら部屋、別にしようか?」 アメリアはちょっと驚いた顔をして、すぐに首を横にふった。 「いいです。部屋代もったいないじゃないですか」 「それもそうね」 本当は、リナが心配で部屋を別にしたくなかったのだが、表面上アメリアはそう答えておいた。 そうこうしているうちに、リナの前に注文していた料理が運ばれてきた。 三人とも、リナがすぐに食べ始めると思ったのだが、リナはやや驚いたような表情で、ぼんやりと手元の水のコップを眺めている。 「リナさん?」 「おい、リナ?」 「リナ、どうした。食べないのか?」 「あ、ああ………」 口々に言われて、リナはハッと顔をあげた。目の前の料理を見て、ぎこちなく笑う。 「食べるわよ、もちろん」 思い出したようにフォークを手に取るリナに、三人は思わず顔を見合わせた。 「リナ、お前本当に体調が悪いんじゃないか? もう一泊するか?」 心配そうに聞いてくるガウリイに、リナは笑う。 「何言ってんの。ほんと平気だってば。ちょっと考え事してただけよ。で、どこ行くんだっけ、今日。イグルーゼだったっけ?」 ゼルガディスがうなずいた。すでに朝食を終えたゼルガディスはマスクを口元にひきあげながら答える。 「セイルーンに向かうなら、イグルーゼの街だな。ゼフィーリアならプラメアだ」 「ゼフィーリアはやめて………」 リナは思わずうめいた。 一行は現在エルメキア帝国内にいた。何とか外の世界から結界内まで戻ってきたものの、お互い別れづらくて、半年ほど過ぎた今もいまだに一緒にいる。 この街から北に行けばゼフィーリア、西に行けばセイルーンである。セイルーン近くまで行って、アメリアが抜ければ、自然とばらばらになるだとうという予想が全員の胸にある。 「昨日の話だとイグルーゼの予定だったろう。ただ、途中どうしても外で一泊することになる」 「別にいいんじゃないか?」 ガウリイがそう言うと、アメリアもうなずいた。 「一日ぐらいなら、平気ですよ」 「そうね」 リナはうなずくと、食べることに専念しだした。その様子はいつもとまったく変わらない。 ホッとした表情のアメリアの向かいで、ガウリイだけが気遣わしげな表情をしていた。 ===================================== ご、ごめんなさい。全然話が進みませんです(汗)。がんばって次を書きます。 |
4680 | はじめまして | 一坪 E-mail | 10/21-05:33 |
記事番号4678へのコメント 投稿ありがとうございましたーー! うむ。シリアスなお話のようですね。 ストーリーも時期的におもしろそうです。 というわけで、続き楽しみにしてるのでガンバって下さいね! しかしナメクジの夢が気になる……。(笑) |
4682 | Re:はじめまして | 桐生あきや | 10/21-05:50 |
記事番号4680へのコメント はじめまして、レスありがとうございます。 しかし、こんな時間まで起きててだいじょうぶですか? 私も人のことは言えませんが、打ち込んでいるうちに 何やら夜明けが………(笑)。 >うむ。シリアスなお話のようですね。 ギャグも書いてみたいんですけど、どうやらこっちのほうが 向いているみたいです。 >というわけで、続き楽しみにしてるのでガンバって下さいね! ありがとうございます! がんばります。 >しかしナメクジの夢が気になる……。(笑) 私も気になります(^^; |
4681 | 楔―くさび― 1 | 桐生あきや | 10/21-05:46 |
記事番号4678へのコメント 晴れて、とても天気の良い日だった。 イグルーゼまでの街道は、森の中を切り開いて作られていて、街道の脇には切り株と木立がぽつぽつと続く。 前を行くガウリイの背中を眺めながら、ぼんやりとリナは歩みを進めていた。 眠りが足りないせいもあって、陽射しがとても気持ちがいい。 そうやって、ぼんやりと歩いていたおかげで、リナは気配に気づくのが四人の中でいちばん最後になった。前を行くガウリイの背中に思わずぶつかりそうになる。 「ホントに調子悪そうだぞ、リナ」 ガウリイが、なかば呆れるようにそう言って、剣を抜いた。 「レッサーデーモン?」 アメリアの呟きに、リナはうなずく。 「野良ね。二、三匹しかいないし」 そう言って、ガウリイの服を思いっきり引っ張る。 「あんたね、また光の剣持ってた癖抜けてないでしょ。魔皇霊斬(アストラル・ヴァイン)をかけるまで待ちなさいよ。ゼル、アメリア、先お願い」 二人はうなずいて、呪文を唱えだした。唱え終わるまえにデーモンの炎の矢が四人に向かって放たれる。 それぞれ飛び退いてよけると、結局いつも通りの二組に分断されてしまった。 リナの呪文を受けて、ガウリイの剣が赤く輝きを帯びる。すぐさま剣閃が奔り、デーモンが一匹、切り伏せられる。 アメリアたちのほうでも、何の苦戦もせずにデーモンを片づけていた。 最後の一匹を倒すため、リナが呪文を解放しようとしたときだった。 ―――ドクンッ! ひときわ大きく鼓動がはねた。 「!?」 だが、呪文を放たないわけにはいかない。 「黒妖陣(ブラスト・アッシュ)!」 生み出された闇は、普段の倍近い大きさだった。巻き込まれそうになったガウリイが、すんでのところで飛び退く。 断末魔の叫びすらなく、デーモンは黒い塵と化した。 「おい、リナ!」 「ご、ごめん………」 しどろもどろ謝って、リナは口ごもる。ゼルガディスとアメリアが近づいてきた。 「増幅したのか?」 「う、うん。そうなの、ごめんね」 ゼルガディスの問いに、リナは慌ててうなずいた。 「たったあれだけのデーモンごときに、増幅なんていりませんよ」 「ごめんね、つい」 追及をかわすかのように、リナが荷物を担ぎなおす。 「じゃ、先に進もっか。日が沈んじゃうし」 これ以上のことをリナが言う気がないことを悟った三人は、リナに習って再び街道を歩き出した。 日が暮れてから、街道を少しそれた木立で、リナたちは野営をすることにした。 ゼルガディスとガウリイが周囲の草を刈っている間に、アメリアとリナが薪を集めて火を熾す。 ここでもやはり、リナの様子はおかしかった。 「ごめん、アメリア。火、点けてくれる?」 アメリアは戸惑った表情でリナを見返した。 「どうしてリナさんがやらないんです?」 ガウリイとゼルガディスが離れたところにいるのを確認して、リナはアメリアの耳をひっぱった。 「………そろそろ、近いのよ」 「………なるほど。それでさっきの呪文も増幅したんですね」 アメリアは納得顔でうなずいた。 その様子を怪訝な顔で男二人が眺めている。 「あたし、もっと薪集めてくるね」 「お願いします。私も火を点けたら行きますから」 リナの姿が木立の奥に消えると、ゼルガディスがアメリアに声をかけた。 「なんだっていうんだ、いったい」 「乙女同士の秘密です」 沈黙したゼルガディスを放っておいて、アメリアは呪文を唱えて薪に火を点けた。 腕の中に薪を抱えて、リナは溜め息をついた。 なんだというんだろう、いったい。 増幅なんか、もちろんしていない。普通に黒妖陣(ブラスト・アッシュ)を唱えただけだ。 なのに、あれほどの闇を生んでしまった。 おかげで薪に火を点けるのさえ怖くて、結局アメリアにやってもらった。 もちろんあの日が近いわけでもなくて、アメリアだけでもごまかしておこうと思って、嘘をついた。 木立を吹き抜けていく風に、さらわれそうな頼りない自分がいる。 自分自身が大きく広がり、収拾がつかなくなっていく感覚に、眩暈すら憶える。 無限に、融けて。広がり、溢れ出て。 融和し、還元する――――。 その感覚を追い出すように、リナは軽く頭をふった。 しばらくそのまま薪を集めはじめたが、不意に目をまたたく。 「また………?」 しゃがみこんで顔を押さえたリナを、アメリアが見つけて駆け寄ってくる。 「どうしたんです、リナさん?」 「何でもない………。ちょっと立ちくらみがしただけよ」 「貧血になりやすいですからね。あの前って」 勝手に納得しているアメリアに、リナは苦笑して、薪を抱えて立ち上がった。 ぱちぱちと闇に赤い炎が踊る。 「すっかり日も落ちちゃったわね」 リナの言葉に、三人とも空を見上げた。 「でも、きれいですよね。こういう時間の空って、私好きです」 アメリアが嬉しそうに空を見たまま言った。 鮮やかな夜の藍と、夕陽の名残の紅色と、空本来の青さが絡みあい溶けあって、その奥で、光り始めた星が瞬く。 四人とも、持ってきた携帯食で適当に夕飯をすませて、後は寝るだけだった。さっきまでは携帯食のまずさについて、リナが何やら文句を言っていたのだが、いまは揺れる炎をぼんやりと見つめている。 完全に日が落ちた時点で、木々の向こうから、満月がゆっくりと夜を照らし出した。空はもはや藍一色。 「満月だったんですね」 アメリアがそう言って、ひざを抱える。月光と炎が、それぞれ混ざり合って美しい。 「そろそろ寝るか」 ゼルガディスが剣を手元に引き寄せた。 不意にリナが立ち上がった。 「リナ?」 「ん、ちょっと風に当たってくる」 そう言って、ガウリイの表情に気づいて笑う。 「何よ、たいじょうぶだってば」 木立の奥に消えていく小柄な影を見送ったと、何やら微妙な沈黙が野営の場をおおった。 しばらくもしないうちに、ガウリイがいらいらと焚き火を木の枝でかき回し始める。 難しい顔でアメリアが、リナの消えた木立とガウリイを交互に見る。ガウリイと目のあったゼルガディスが苦笑して、視線とあごで、いいから行って来いと告げた。 ガウリイがちょっとだけ苦笑した。 「ちょっと見てくるよ」 ゼルガディスが片手をあげてそれに応じる。アメリアは何やら瞳を輝かせてガウリイを見送った。 |
4684 | 楔―くさび― 2 | 桐生あきや | 10/21-13:45 |
記事番号4678へのコメント 切り開かれた森は木々がまばらで、月光がきちんと大地まで届いている。 幾筋もの月光と、それに照らされて濃い影を作る樹木の間を縫うように、あてもなくリナは歩いていた。 なんだか地面がふわふわしているようで頼りない。実際に頼りないのは自分自身の感覚なのだろうが、木立の奥の暗がりがまるで異界への入り口のように見えた。 ちょうど、日溜まりのように月光が集まっているところで、リナは立ち止まった。 ―――日光だと日溜まりだけど、月の光だと何て言うんだろ? そんなことを考えながら、リナは木立の上まで顔を出した月に背を向けて立った。地面に落ちた黒い影を凝視する。 まるで、影におかしなところがないか確認するように。 ガウリイたちもそろそろ気づき始めている。隠すこともできなくなるはずだ。 だけど、何て言えばいい? 自分自身よくわかっていないのに。 リナは小さくかぶりとふった。 いや、何となく想像はついている。心当たりはひとつしかない。 だけど、それをどう言えばいい? あまりにも途方もなくて、怖くて、言えない。 言ったところで解決のめどが立つとも思えなかった。 いっそ、巻き込んでしまう前に迷惑がかかる前に、このままセイルーンで別れて――― リナは溜め息をついた。 自分の気持ちも、考えも、よくわからない。ごちゃごちゃだ。 いったい自分はどうしたいのだろう。 自分の望みは何なのだろう。 自分自身がわからない。 全てがわからないまま、ただ漠然とした不安だけが大きくなっていく。 そっとリナは月を見上げた。 薄い雲が出てきたようだった。月にふわりとおおいかぶさって、満月はぼやけた朧月へと姿を変える。 それを見ながら、リナはゆっくりと目を閉じて、思い出す。 たった一度きりの、理性が弾け飛んだ、あの瞬間を。 世界も、自分自身すらも、たった一人のためならいらないと、心から思えた瞬間を。 自分はとうの昔に、選んでしまっているのに、いまさら何を迷っているのだろう。 よみがえる記憶と共に、ゆるりと不安が足下から這いあがってくる。 あのときの恐怖は、自分でないだれかがいなくなる恐怖。 そしていまは、自分が自分でなくなる恐怖――― ………そばに、いられなくなるかもしれない、という予感――― 小枝を踏む乾いた音に、リナは静かに目を開いた。 切り開かれている森は、木々がまばらで、地面につもっているはずの落ち葉もあまり見当たらない。本来なら木々にさえぎられて光の届かないはずの森の中は、街道に近いおかげで伐採されて、月の光がふんだんに木々の間に入り込んでいる。 木立を少し行くと、リナの姿はすぐに見つかった。 月の光を浴びるように、ひとり立っている。 名を呼ぼうとして、ガウリイは声を失った。 うつむいていたリナが、不意に月に向かって顔をあげたからだ。雲がかかったらしく、急に弱くなった月光をその顔に受けて、そっと目を閉じる。 その表情があまりに無防備で、声をかけるのを、ためらった。 リナは嘘をついている。 昼間の戦闘で、リナは呪文を増幅などしなかった。ただ、いつも通りに呪文を唱えていただけ。 なのに、いつもの倍以上の威力があった。 それが何を意味するのかガウリイにはわからなかったが、リナの様子が最近おかしいことに、関係があることだけはわかる。 まるで何かに怯えるかのように、その真紅の瞳がときどきかげる。 一人で全部抱え込んで、立ちつくしているリナを見ていると、理不尽な怒りが湧いてくるのがわかった。 自分はそんなに頼りないんだろうか。 リナは瞑目したまま動かない。 このまま消えてしまいそうに思えて、歩み寄ろうとした足下で、小枝が乾いた音をたてた。 リナが、目を開く。 すぐにガウリイの姿を見つけると、気まずそうに笑った。 「やだ、いたの?」 ガウリイは黙って近寄ると、持ってきたリナのマントを頭からかぶせた。 「早く戻らないと、風邪をひくぞ」 子供扱いするなと怒り出すかと思ったが、マントを引きはがしたリナは、小さくうなずいただけだった。 「ん、わかってる」 ガウリイが小さく溜め息をついた。 「リナ、ほんとうに変だぞ。どうしたっていうんだ?」 リナがガウリイのをちらっと見上げて、その真剣な表情に、はぐらかすのをあきらめた。 ちょっとだけ吐息をもらして、ゆっくりと歩き出す。マントと髪が、夜風にひらひらと揺れた。 「確かにここんとこ調子がおかしいのは自分でわかってる。でも、どうしておかしいのかは、あたしにもわかんないのよ」 ―――いま言えるのは、ただそれだけ。 「昼間の呪文も関係あるのか?」 ―――やっぱりガウリイは気づいてたか。でも、どうして? あたしはあんたの何だから気づいたのよ。 「………わかんない」 ガウリイに背を向けたままリナは答える。 「リナ」 「あんなこと初めてだもの」 ふり返ってそう言うリナの声は、頼りなかった。 淡くぼやけた月の光が、リナの瞳に映りこんで、あり得ないような朱金の輝きを宿す。 それがひどく不安を誘って、ガウリイは思わずリナの腕をつかんで引き寄せていた。 「な、に………?」 リナがひどく面食らった表情で訊いてくる。その瞳は月の光から外れて、いつもの輝きを見せていた。一瞬前までの自分の不安が先走りすぎていたような気がして、ガウリイは慌ててつかんでいた手を離す。 「いや、何でもない」 「………変なの」 心持ち赤い顔で、リナがそっぽを向く。 それを見て、ガウリイは少し笑った。 「何よ」 「いや。調子悪いんなら、もう戻ったほうがいいぞ」 ちょっと可愛いな、などと思ったのだが、口が裂けても言えない。 ガウリイの言葉の、言外のニュアンスには気づかずに、リナは首をふった。 「もう少し、ここで考え事してる。先戻ってて」 「何を考えるんだ? 自分にもわかっていないんなら考えるだけ無駄だろう?」 リナがむっとした表情になる。 「それ以外にも、あたしにだって考え事することはあるわよ」 「たとえば?」 「それは―――」 ちょっと困ったようにリナが口を開きかけた。 ―――その表情がこわばる。 |
4705 | 楔―くさび― 3 | 桐生あきや | 10/22-02:03 |
記事番号4678へのコメント ガウリイの問いをはぐらかして答えようとして、リナは息を呑んだ。 ガウリイが見えない。視界が消失していた。 いや、違った。周囲全てが、様々に彩られた〈力〉で表現されていた。 目の前にいるはずのガウリイさえも、青く穏やかな光の塊。 経験がないわけではない。ガウリイたちには黙っていたが、最近こんなことが頻繁に起きるようになっていた。 隣りに眠るアメリアが、〈気〉の塊に。コップにたたえられた水が、水の精霊力に。揺らめく炎が、火の精霊力に。 通常の視界に混じって、力が視(み)えるようになっていた。 けれど、普段のものとは桁が違う―――! 視界全てが、精神世界面(アストラル・サイド)からのものになっている。 それは、言ってしまえば、魔族の視点。 指先にちりちりとふるえが走った。 「おい、リナ?」 怪訝そうなガウリイの声。 ―――ドクン。 異変を察したガウリイが、リナを引き寄せようと手を伸ばす。その手を押しのけようと、リナは身をよじった。 髪が夜風にひるがえる。金と栗色。 ガウリイの手が、リナの腕をとらえた。 ―――ド、クン………! リナは目を見張った。びくりと体がふるえる。 「リナ!?」 「ガウリイ、離れ………っ」 忠告は最後まで言うことができなかった。 瞬時にふくれあがった衝撃波がガウリイを吹き飛ばした。 音はなかった。というよりも、あまりの轟音に、ガウリイの耳が音として認識しなかったのかもしれない。 受け身もなにも取る暇もなく、後ろに生えていた何本かの木に打ちつけられる。 それは、意識を失っていたのだとしても否定する気になれないほどの、密度が濃く、脈絡のない瞬間だった。 視界が暗くなり、息が止まる。意識があるのが奇跡に近い。 リナを中心に放射状に土砂が吹きあがり、大地に亀裂がはしった。 木々が巻きこまれ、次々となぎ倒されて、わきおこる地割れに呑みこまれていく。 痛みすらない激しい衝撃のなかで、ガウリイはただ一人の名前を呼んでいた。 守る、と誓った少女の名前を。 「リナ―――!」 衝撃波はなおもガウリイに襲いかかる。 リナが何に怯えていたのかを、ガウリイははっきりと悟った。 それは、自分自身でも制御しきれない、肥大した魔力。 「リナ―――!」 名を呼ぶ声を、リナは混濁した意識の中で聞いた。 (………だれ……?) すでに視界も意識もヴェールがかかったように白く、遠い。 わずかに、頭の奥でちりちりと痛みともつかない警告がなりひびく。 すでに映るはずのない網膜に、わずかだが、それでもはっきりと焼きついたものがあった。 光の泡……違う。鮮やかな陽光……煙る空気を透かしてようやく見える光の筋のような……きれいな、髪……―――青い、瞳。 (………ガウリイ?) 粘質の液体の中でもがいているような意識の奥が、ずきんと痛んだ。 (………傷つけたく、ない……) 自分のせいでガウリイが苦しむのは、もういい。 自分の傍にいるかぎり、ガウリイはどんどん傷ついていく。 大事なものを無くしてしまう。光の剣だって。 全てに巻きこんでしまう。 その優しさにすがってしまう。 (傷つけたくない!) きれつの奔る、乾いた音をリナは聞いたと思った。 「リナ!!」 足下が崩れ、開いた奈落に呑み込まれる。 意識を失う瞬間、リナは自分が笑ったような気がした。 泣いていたような気も、した。 好奇心と心配でやきもきしていたアメリアは、ガウリイとリナが消えた木立の方から、奇妙な感覚を拾いあげた。 まるで、水がわきだす瞬間のような―――。 「え………!?」 アメリアがゼルガディスの腕の中に抱えこまれるのとほぼ同時に、破裂するような轟音が、夜の静寂をうちやぶった。 すぐに衝撃が二人を襲う。 「きゃああぁっ!」 「黙っていろ、舌を噛む!」 防御の呪文を唱える余裕もなく、二人はただ嵐が過ぎ去るのを待つしかなかった。時間がひどく遅く感じられる。(別の意味でもアメリアの心臓はばくばくしていたのだが。) ようやく、はじまりと同じように唐突に、力の奔流が止まり、あたりは微かな鳴動を残して静まり返る。 それからしばらく間があって、ゼルガディスがアメリアの上から退き、かすれた声でたずねる。 「だいじょうぶか、アメリア?」 うなずきながら身を起こして、アメリアは息を呑む。 「ゼルガディスさん、背中………っ」 「気にするな」 「む、むちゃ言わないでください! いま、治しますから!」 言いながらも、アメリアは声がふるえてくるのを止められなかった。 ゼルガディスの背中には、大きな傷ができていた。先のゼルガディスの動きから、骨や腱に異常がないことはわかるが、それすらも奇跡に思える。 岩の肌を持つゼルガディスでさえこんな傷を負うほどだ、彼が自分をかばってくれなかったら、いまごろどうなっていたかわからない。 泣きそうになるのをムリヤリこらえて、アメリアは復活(リザレクション)を唱えだした。 ……ぴたん…………ぴたん…… したたり落ちる水音だけが規則正しく響くなか。濡れた黒い岩肌が、濃い闇をあたりに作りだす。 激しい力によって、森の中央に生じた陥没は、そのまま地下水脈が流れる鍾乳洞へとつながっていた。鍾乳洞のうえに陥没ができて、外とつながったと言った方が正しいのかもしれない。 ごつごつした岩の上に横たわったまま、リナはぼんやりと虚空を見つめていた。 少しでも体を動かすと、激痛がはしる。心臓の鼓動、血の流れにあわせて、頭ががんがんと痛んだ。 背中にあたっている、尖った岩肌の感触も、肌をなでる生温い湿った空気も、そのどちらもはっきりとわかっているのにどうしてだろう、どちらもひどく遠い。 何か、液体につかっているような濡れた肌の感触もしたが、もう自分のことではないような気がした。 視界は暗い。外気の匂いがしない。 体が、ひどく熱い。 不意に、かたわらにだれから降り立った気配がした。 視界が暗いため、その姿はよくわからないが、だれかは、わかった。 「何の用……ゼロス」 空気に溶けそうな囁きだった。 「なかなか良い格好ですね」 ゼロスの皮肉に笑おうとして、リナは咳きこんだ。しゃがみこんだゼロスがじっと観察しているのがわかって、不愉快だった。 「見物し終わったなら……さっさと……どっか行きなさいよ……」 くつくつと喉を鳴らして笑ったゼロスの指が、頬に触れて、何かをぬぐいとっていった。 おそらく、血を。 「治してさしあげましょうか?」 「いい」 「そう即答しなくても………」 「いいったら……いい……」 ゼロスがこんなことを言い出すなんて、絶対にろくなことがない。 「でも、このままだと動けませんよ。だれかが治してくれるまで。それどころか放っておくと死にますよ、貴女」 「…………」 「それとも―――」 ゼロスの声が笑みを含んだ。 「だれから来るのを、待っているんですか?」 ずきん、と胸が痛む。 また、傷つけてしまった。 また、巻きこんでしまった。 会う資格なんか、自分にはない。 心中を呼んだかのように、ゼロスが囁いた。 「僕なら、だれかが来る前に、治してあげられますよ………?」 ゼロスの声がひどく聞き取りにくかった。開けても見えない目を、リナは閉じる。 「で……何を……狙ってる、わけ………?」 「やだなぁ、ただの親切心ですよ」 ゼロスの見ているなか、リナの表情がなんとも言えないものになる。不味いモノを食べて、吐き出すなと言われた子供のような表情だ。 ふ、と吐息が湿った空気を揺らした。 失血のために意識が薄れてきたリナは、苦笑したようだった。 「あんたの……親切心、なんて……ぞっとしない……わね……」 眠るように意識を失ったリナを抱きあげて、ゼロスは遙か上を見上げた。 もうすぐ彼女の仲間たちが、彼女を助けに降りてくることだろう。 「都合良く意識をなくしてくれて、助かりますよ」 空間を渡る前に、ゼロスは手早くリナの怪我を癒す。いまのリナの状態では、空間を渡ると本当に死んでしまいかねない。 ゼロスは愉快そうに笑った。 本当に、この人間の少女を見ていると、飽きるということを知らない。 「親切心というよりは、同病相哀れむというやつですよ………。なんたって、いまの貴女は、僕たちのほうに近いんですから………」 ふわりとゼロスの姿は闇に溶け消える。 二人の消えたそこには、ただ、血の匂いの残滓。 |
4712 | 二度あることは三度あった(汗)やっとレス書けましたっ! | あんでぃ | 10/22-15:33 |
記事番号4705へのコメント きゃー!!やっと書けました!これ実は四回目です。そう文字どうり二度あることは・・・(たらり)コメントを送ろうとすると必ず母に邪魔されます(汗)いや試験中だから怒られて無理ないんですけど・・・ とにかくこのお話良いっ!モロに私好みです。リナちゃんぴーんちだしゼロスは今回も悪役だ(?)ガウリイも賢くって好きです(はあと)ちょっとさりげなくゼルアメ風味も漂わせていますね(にやり) らぶらぶやシリアスは私は大好きなんですが、青の○代や若○の頃など(両方Ki○kiじゃん)重い話は見れません(汗)好きなドラマは伝説の○士(笑) この話はもしやダーク?!そしたらどうしよう!気になって今更あとに引けない(笑)最近は毎日続きが出てないかチェックする自分がいる状況です。私の勝手なワガママとしては、ハッピーエンド希望(←をい)しかし私のワガママにはまったく気にせずに先を進めてください! P,S すっごく訳のわからない文章になっているのは、母のせいです(汗) 試験のせいです。・・・きっと とにかくがんばってくださいね!期待しています |
4723 | 初めまして! 読んでくださってありがとうございますぅ! | 桐生あきや | 10/22-23:57 |
記事番号4712へのコメント 初めまして、桐生あきやともうします。 初めての投稿でどきどきです(笑)。 レスくださって本当にありがとうございます!! 自分の書いた小説に、人から反応が返ってくるってなんとも言えず嬉しいものですね。いやもう、ものすごく嬉しいです。 > きゃー!!やっと書けました!これ実は四回目です。そう文字どうり二度あることは・・・(たらり)コメントを送ろうとすると必ず母に邪魔されます(汗)いや試験中だから怒られて無理ないんですけど・・・ 試験中に読んでくれたんですか。ありがとうございます。四回もチャレンジを試みるなんて、さぞかし熾烈なバトルが展開されたんでしょうね(笑)。 > とにかくこのお話良いっ!モロに私好みです。リナちゃんぴーんちだしゼロスは今回も悪役だ(?)ガウリイも賢くって好きです(はあと)ちょっとさりげなくゼルアメ風味も漂わせていますね(にやり) そうなんですよねー、そこはかとなく主人公たち以外がラブラブだという………(笑) > この話はもしやダーク?!そしたらどうしよう!気になって今更あとに引けない(笑)最近は毎日続きが出てないかチェックする自分がいる状況です。私の勝手なワガママとしては、ハッピーエンド希望(←をい)しかし私のワガママにはまったく気にせずに先を進めてください! > >P,S すっごく訳のわからない文章になっているのは、母のせいです(汗) 試験のせいです。・・・きっと > >とにかくがんばってくださいね!期待しています ダークなのかなぁ、いまいち桐生にもよくわかっていません(^^; でも基本的に桐生はハッピーエンド志向なので、ワガママじゃないですよ、多分。 試験がんばってくださいね。 がんばってアップしたいと思います。がんばります! |
4726 | こちらこそ初めまして!そしてこちらこそありがとうございます!(^▽^) | あんでぃ | 10/23-01:32 |
記事番号4723へのコメント 桐生あきやさんは No.4723「初めまして! 読んでくださってありがとうございますぅ!」で書きました。 > > 初めまして、桐生あきやともうします。 > 初めての投稿でどきどきです(笑)。 > レスくださって本当にありがとうございます!! > 自分の書いた小説に、人から反応が返ってくるってなんとも言えず嬉しいものですね。いやもう、ものすごく嬉しいです。 はい!私もそうでした!レス返しをしてもらえるのもうれしいです(涙)あまりのうれしさにまた書いちゃったりして煤_(゜▽)〆゛←喜んでる ちょっと!!しかも気が付けば二つも続きが(にやり)筆が速いですねぇ! > >> きゃー!!やっと書けました!これ実は四回目です。そう文字どうり二度あることは・・・(たらり)コメントを送ろうとすると必ず母に邪魔されます(汗)いや試験中だから怒られて無理ないんですけど・・・ > > 試験中に読んでくれたんですか。ありがとうございます。四回もチャレンジを試みるなんて、さぞかし熾烈なバトルが展開されたんでしょうね(笑)。 > いえ、無言の圧力が・・・(汗)でも今は大丈夫!だってもう母は夢の中・・(にやり) 試験前ということで夜更かしもできます!ちなみに私の友人は一昨日夜中の五時までポケ○ン(青)をやっていたとか。上には上がいます! > >> とにかくこのお話良いっ!モロに私好みです。リナちゃんぴーんちだしゼロスは今回も悪役だ(?)ガウリイも賢くって好きです(はあと)ちょっとさりげなくゼルアメ風味も漂わせていますね(にやり) > > そうなんですよねー、そこはかとなく主人公たち以外がラブラブだという………(笑) > ちょっとうらやましい/(>o<)\ >> この話はもしやダーク?!そしたらどうしよう!気になって今更あとに引けない(笑)最近は毎日続きが出てないかチェックする自分がいる状況です。私の勝手なワガママとしては、ハッピーエンド希望(←をい)しかし私のワガママにはまったく気にせずに先を進めてください! >> >>P,S すっごく訳のわからない文章になっているのは、母のせいです(汗) 試験のせいです。・・・きっと >> >>とにかくがんばってくださいね!期待しています > > ダークなのかなぁ、いまいち桐生にもよくわかっていません(^^; > でも基本的に桐生はハッピーエンド志向なので、ワガママじゃないですよ、多分。 やたっ(はあと)はっぴーえんど!切ないまま終わるより、やっぱメシでシメだぁ!(意味不明?) > 試験がんばってくださいね。 > がんばってアップしたいと思います。がんばります! > ありがとうございます! 私もなんかお話考えよーっと。 はぅっ!その前に試験勉強しろって?それはいわないお・や・く・そ・く(はあと) またもや訳分からん・・・ごめんなさいぃ(涙)じゃっ!!(逃) |
4724 | 楔―くさび― 4 | 桐生あきや | 10/23-00:30 |
記事番号4678へのコメント 破壊の中心地までやってきたアメリアとゼルガディスは、木にもたれるようにして意識を失っているガウリイを見つけた。 「ひど………」 その怪我のひどさに、アメリアが思わず声をつまらせる。ゼルガディスは黙って眉をひそめた。 「爆発の中心地にいたんだ、無理もない。アメリア、ガウリイを頼む。オレはリナを捜す」 ゼルガディスの言葉にこくんとうなずいて、アメリアは復活(リザレクション)を唱えだした。 ゼルガディスはそれを確認して、背後をふりかえる。すり鉢状に巨大な陥没ができていて、その周囲にはいくつもの亀裂。亀裂が途切れた大地には、陥没と亀裂を囲むように放射状になぎ倒された木々。 間違いなくあの圧倒的な力が放たれたのは、陥没の中央だ。 ガウリイの状態を見る限り、あそこからここまで飛ばされてきたのは間違いないだろう。 だとしたら、一緒にいたはずのリナは? 冷たい感覚が背筋をはいあがるのをゼルガディスは自覚した。 ガウリイより体重の軽いリナが、より遠くまで飛ばされていることを考慮しながら、なぎ倒された木々の環をゼルガディスがぐるっと一週してアメリアのところに戻ってくると、すでにガウリイは体を起こしていた。 「リナは………?」 ガウリイの問いに、ゼルガディスは黙って首をふった。ふっただけでは誤解されかねないので、一言つけ足す。 「少なくとも衝撃で吹き飛ばされたわけではなさそうだ」 ガウリイは、苦い表情でゼルの背後の大地の陥没を眺めた。 「なら、多分あそこに落ちたんだろうな」 言って立ち上がろうとするガウリイをゼルガディスは鋭い視線で押しとどめる。 「何があった?」 ガウリイは黙って首をふった。 「わからん」 「わからんと言われても、あんたより遠いところにいたオレとアメリアにはもっとわからん。あんたに事の真相を説明しろとはいってない。経過をくわしく話せ。でないと三人でリナを捜すことができない」 ガウリイは体を後ろの木にもたせかけた。まだ本調子ではないらしく、その動作はひどくゆっくりとしている。 「リナが、急に驚いた顔をしたんだ」 「…………?」 アメリアとゼルガディスは顔を見合わせる。 「オレを見てひどく驚いて、すぐにが表情が険しくなった。様子がおかしいと思って、腕をとろうとした瞬間、離れろとあいつが叫んで、気が吹き出た」 「気が吹き出た!?」 「魔族かなんかの攻撃じゃないんですかっ!?」 ガウリイは首を横にふった。 「じゃあ、あの力は、衝撃波はなんなんですか」 再びガウリイが首をふる。 「わからない。だが、たしかにリナから、ただ溢れ出たんだ……魔力が……」 アメリアが蒼白な顔で唇をふるわせる。 「あれが……あの凄まじい、圧倒的な力が、リナさんの魔力なの………!?」 それは人の限界をはるかに超えている。 人間の魔力は魔族や神族にとって微々たるものでしかなく、だからこそ人間は魔法を使わねば世界の理(ことわり)に干渉できない。 魔族ならば、にじみでる瘴気だけで植物を枯らしたりできるだろう。人を毒することができるだろう。 けれど、人間には無理なのだ。 魔力だけでは人は世界と接触できない。破壊などできない。癒したりなどできない。それは、リナのキャパシティを持ってしても克服できない種の限界。 しかし、ガウリイの話が事実ならば。 「魔力の暴走………」 ゼルガディスが呟いて、無惨な破壊の跡をを見回した。放たれた力の大部分は上空に逃がされていることに、彼はアメリアをかばったときすでに気がついていた。でなければこれで済むわけがない。竜破斬(ドラグ・スレイブ)を連発できるほどの魔力の持ち主なのだ。 「リナの様子がここのところおかしかったのはこのせいだったようだな」 「そんなに落ち着いている場合じゃありませんっ。早く、何とかしないと………!」 アメリアが慌てて立ち上がる。何をどうすればいいのか具体的にはよくわかってはいないが、リナを捜さないことにはどうにもならない。 大地の陥没に向かう途中、ゼルガディスが独り言めいて呟いた。 「魔法は暴走することがある。だが、魔力が暴走するなんて有り得るのか?」 「あいつは魔法を唱えてなんかいなかった」 ガウリイの言葉に、ゼルガディスはうなずく。 「それはわかってる。あんたと話しているさいちゅうに呪文を唱える必然性はあまりないからな」 お前さんが何かしたんなら別だがな、と心の中でゼルガディスはつけ足して、続ける。 「だが、たとえ暴走だとしても、暴走するほどの魔力を人間が手に入れられるものなのか?」 さっきの力は精神世界面(アストラル・サイド)から無作為に放たれた魔力が、行き場を求めてこっちの世界に適当に具現化しただけのものにすぎないだろう。人が制御してやる魔法と違い、それにはかなり無駄が多い。大部分の力も上の方へそらされていた。 それなのに、あの威力。 確かにリナのキャパシティは尋常でない大きさだが、それでも暴走するほどではない。現に、いままでは完璧に制御していた。魔法を暴走させたことはあるが、それは後にも先にもあの呪文一回きりだろうし、あの場合、悪いのは魔力でなく呪文そのものだった。 それがなぜ急に………。 「考えたってわかりませんよ。とにかくいまは、リナ捜すほうが先です。リナさんに直接聞けばいいじゃないですか」 「いままで隠してたんだぞ。言うと思うか?」 「う゛………」 アメリアは言葉に詰まる。 「で、でも、バレちゃった以上、話してくれるんじゃないんですか。そんな、水くさいじゃないですか」 「それはオレに言うな。リナを見つけた後、直接言ってくれ」 陥没の周囲をめぐりながら、三人は降りられそうなところを探す。だが、いくらも歩かないうちに、ゼルガディスがすり鉢状に陥没した一番深いところを見て、声をあげた。 「おい……ただの陥没じゃないぞ。穴が開いている」 リナが力の中心にいたのなら、あそこに落ちた可能性が高い。 無数の岩塊と土砂にはばまれた空洞を見て、アメリアは即座に浮遊(レビテーション)を唱えだした。ゼルガディスがそれに風の結界の呪文を唱和させる。ただの浮遊では落盤の危険から身を守れない可能性がある。 焦りの表情を押し殺しているガウリイをちらりと眺めやり、ゼルガディスは結界の呪文を完成させた。 そのままふわふわと穴の中を降下していく。 「………先に明かり(ライティング)何かにかけておくべきでしたね」 忘れていた自分たちがあまりに間抜けに思えたらしく、アメリアが力の抜けた口調でそう言った。 外は、満月の月の光でかなり明るかったため、うっかり失念していたのだが、穴のそこに降りれば降りるほど、月の光などは届かなくなる。 浮遊と風の結界を、それぞれ維持している状態では、新たに明かりを唱えることなどできなかった。 それに、まさかこんなに深いとは予想もしていなかった。 「ガウリイ、見えるか?」 隣りにいるはずのガウリイをふりむくが、もはやすぐ近くの相手の顔さえわからない。 「…………あまり」 それでも見えることは見えるらしい。 しばらく闇雲に降下すると、結界に頻繁に何かにぶつかって、がっくんがっくん揺れた。おそらく岩だろう。 「おいアメリア」 「無茶言わないでください〜。何も見えないんですよ、よけられません〜」 情けない声でアメリアが答えを返す。 「ガウリイに岩をよける指示を出してもらえ」 そう言った瞬間、真下からひときわ強い衝撃が来て、これ以上降りることはできなくなった。 どうやら、一番底についたらしい。 アメリアに浮遊(レビテーション)を維持させたまま、ゼルガディスは風の結界を解き、明かり(ライティング)を唱える。 照らし出された光景に、三人は目をみはった。 重く濡れた空気。苔。つららのような鍾乳石からしたたり落ちる水滴。白くなめらかな骨がつながりあったような、圧倒的な奇観。 「地下の鍾乳洞とつながっていたのか………」 ゼルガディスが呆然と呟いた。 アメリアが平らな着地できそうなところを選んで、浮遊を解こうとするが、穴が開いた衝撃で上から崩れ落ちてきた大量の岩と土砂のせいで、なかなか思うようにいかない。 移動しながらふわふわと漂っていると、不意にガウリイが固い口調で言った。 「血の匂いがする」 「…………っ」 アメリアが、びくりと体を強張らせた。ゼルガディスが尋ねる。 「どっちだ」 「………ちょっと左行って、戻ったところ。南西の方角だ」 その方向に浮遊(レビテーション)を操作したアメリアが、首をふる。 「そっちがいちばん岩塊が多くて、魔法を解けません。別の場所で降り立ってから向かった方がいいです」 「ダメだ。あそこで解いてくれ」 ガウリイが、かたくなにそう主張する。見かねたゼルガディスが口をはさんだ。 「オレたちはなんとか着地できても、呪文を解いているアメリアは無理だ」 「じゃあ、オレだけでいい」 「んな器用な真似ができるんならとっくにしている。いいかげんにしろ!」 自分が怒鳴られたわけでもないのに、アメリアがビクッと肩をすくめた。少し口調を和らげて、ゼルガディスは続ける。 「落ち着け。オレたちだってリナのことが心配に決まってる。それに、あんただけ降りても、白魔法を使えるアメリアがいないとどうにもならないだろう?」 ガウリイが告げたように血の匂いがするのなら。 「わるかった………」 「気にするな。アメリア、さっさと着地するぞ」 結局、落盤箇所からだいぶ離れたところで、アメリアは魔法を解いた。すぐさまガウリイと、明かりを持ったゼルガディスが走る。アメリアも明かり(ライティング)を唱えて後を追った。 すぐに立ちつくしている二人を見つけるが、いくつもの岩塊が邪魔で思うように前に進まない。 ようやくたどりついて、二人の後ろから覗きこんだアメリアは、声もなく硬直した。 |
4725 | 楔―くさび― 5 | 桐生あきや | 10/23-00:44 |
記事番号4678へのコメント 楔―くさび―4を変なところで切ってしまってすいませんでした。 あの場面だけ異様にながいので、無理に切断してアップしました。 それでは、続きです。 ===================================== 三人の前には、ひときわ巨大な岩塊が横たわっていた。落石の衝撃で縦横にヒビの入ったそれの大部分が、明かり(ライティング)を受けて黒く光っている。太陽の光のもとだと赤く染まって見えるのだろう。 だが、それだけだった。 鮮やかな血の跡だけを残して、いるべきはずの姿がない。 「リナさんは!?」 「オレたちが来たとき、すでに血の跡だけだった」 ゼルガディスが屈んで、血だまりに指をひたす。 「まだ、そう時間はたっていない。流されたばかりの血だ」 ガウリイが歯を食いしばってあたりを見回す。今にも駆け出しそうな衝動を必死で押さえて。 立ち上がったゼルガディスが、アメリアにもっと強い明かりを生み出すように言う。 「おかしいと思わないか、アメリア、ガウリイ」 「何がです?」 強い明かりに照らし出された、血だまりを指差して、ゼルが続ける。 「仮にこれをリナの出血だとすると、その肝心のリナがいない」 「移動したんだろ?」 「血の跡も残さずにどうやってだ?」 アメリアとガウリイは息を呑んで、血だまりの周囲に目を走らせる。たしかに血の跡は、ひたひたと一カ所にあるのみで、他にしたたっていたり、こすれて乱れていたりするところはない。血のついた足跡もない。 「第一、これだけ失血していれば、貧血で動くことすらできないはずだ」 命にかかわる、とはさすがに口に出せなかった。出さずとも、アメリアもガウリイも直感的にそれはわかっているだろう。 「じゃ、じゃあ、どうしてリナさんはいないんですか?」 まるで懇願するような口調で尋ねるアメリアに、ゼルガディスは首をふる。 「そこまではわからん。だが、オレたちの知り合いにも一人いるだろう。何の痕跡も残さずに、あちこち出現できるやつが」 ゼルガディスがそこまで言ったところで、ガウリイが不意に小石を拾って鋭く指で弾いた。 ぱんっ! 小石が何もない空中で、粉々に弾け飛ぶ。 「やれやれ、気づかれてしまいましたか。こちらに移動してきた直後に気づくなんて、やっぱりガウリイさんは勘が鋭いですねぇ」 ここで顔を合わせるつもりはなかったんですけどね、とゼロスは内心呟いた。 「ゼロスさん!」 アメリアが声をあげる。 「ゼロス、リナはどこだ」 虚空に浮かぶゼロスに、ガウリイが押し殺した声で尋ねる。 「おや、何のことです?」 「しらばっくれるな。お前が動かさないかぎり、あそこからリナが動けるはずがない」 ゼルガディスはそう言うと、腰から剣を抜きはなった。 「おやおや、乱暴な人ですねぇ。残念ですけど、あなたがたと事を構える気はいまのところありません。そんなことをするとリナさんを怒らせてしまいますからね」 「やっぱりあなたが、リナさんをどうにかしたのねっ」 「失敬な。治療できるところまで移動させただけですよ。さすがにあのまま放っておくと死んじゃうところでしたからね」 アメリアの糾弾にも、ゼロスは笑って答える。 「じゃあ、治療がすんだなら、さっさとリナをこっちに寄こせ」 ゼルガディスの言葉に、ゼロスはあっさりと首をふった。 「それはできません」 「どうして!? あなたやっぱりリナさんに何かするつもりなのねっ」 「リナさんが、あなたたちには会いたくないとおっしゃったからです」 三人の動きが凍りつくのを見て、ゼロスはくつくつと喉で笑った。正しくは、勝手にゼロスがそう推測しただけなのだが、あながち間違ってもいないだろう。 「考えてもごらんなさい。いくら死にかけているとはいえ、僕が治療することをリナさんが快く承諾すると思いますか? あとで何を言われるかわからないのに」 「お前が自分でそれを言うな」 ゼルガディスの突っこみをさらりと受け流して、ゼロスは続ける。 「リナさんが、僕の治療を受ける気になったのはただひとつ。あなたがたに会いたくないからです」 「そんなわけがあるか!」 ガウリイが怒鳴る。 「何だって会いたくないなんて、リナさんが言う必要があるんですか!?」 「そんなことまで僕は知りませんよ。リナさんは教えてくれませんでしたから。ただ、そうおっしゃるので、ご希望に添うようにしたわけです」 「それで、リナのご希望に添うことは、お前が受けた命令にどんなプラス要素があるというんだ?」 ゼルガディスが静かな口調でゼロスを問いつめる。ゼロスは会心の笑みを浮かべた。 「これだから、リナさんの周りの人間は僕のお気に入りなんです。リナさんを含めてね」 「で?」 「どうせ、それは秘密なんですよ。ゼルガディスさん」 むくれた口調でアメリアがそう言うと、ゼロスはいささか表情をひきつらせた。 「た、確かに僕は獣王さまのご命令で動いていますけど、リナさんを助けたのは、ほんの親切心からです」 ゼルガディスがげんなりした顔で言った。 「魔族の口から、親切心などという言葉を聞くとは思わなかったぞ。貴重な経験だが、二度はいらん」 「きっと裏があるに決まってます!」 ゼロスはそれを聞きながら、ふわりと遠ざかった。ガウリイが剣を抜き放つ。するりと半身が空間に滑り込んだ。 「待て!」 「そろそろリナさんの意識が戻るので失礼しますよ。会いたいのなら、会いに来ればいいでしょう?」 ガウリイが投げた剣がゼロスを貫く寸前、ゼロスの姿はかき消えた。 遠くまで飛んでいってしまった剣を拾って戻ってくる間、ガウリイは終止無言だった。 普通の剣である以上、たとえ当たったところで何のダメージも与えられないことはわかっているが、それでも、投げずにはいられなかった。 ゼロスが空間を渡った先は、巨大な地底湖だった。 この鍾乳洞の洞窟の最深部。時の彩なす白い鍾乳石と、暗い湖面が闇の中で美しいコントラストを見せている。 ゼロスが降り立ったのは、地底湖のなかに浮かぶ、岸に近い小さな島の上だった。 やわらかな明かりが、横たわる影を照らし出す。 血の気のない頬。やわらかな栗色の髪は、いまは色素が抜け落ちて、美しい白銀に変わっている。魔力が無制限に放出されたためだろう。 普段は強い光を放つ、鮮やかな真紅の瞳はぼんやりとして、その焦点があっていない。 「リナさん」 ゼロスの呼びかけに反応して視線が動くが、ゼロスの姿をきちんと、とらえきれてはいないようだった。 「………なんだって……あんたがここにいるわけ………?」 「ひどい言いぐさですね。いわば僕はリナさんの命の恩人ですよ?」 リナは顔をしかめた。 「なら、もっときちんと治しなさいよ………。頭痛がひどいわよ………」 「おや、それは失礼しました」 ゼロスの指がリナの額に触れる。リナの表情が穏やかになる。 「起きあがれませんよ。なくした血は、体が作りだすしかないですから」 リナがわずかに体に力をこめたのを見て取って、ゼロスがそう言うと、リナはそれ笑い飛ばした。 「だからといって、しばらくあんたの為すがままってのは、冗談じゃないわよ。何されるかわかったもんじゃないわ」 「実にリナさんらしいお言葉です」 リナのかたわらに座りこんだゼロスが、錫杖を抱えたまま笑った。 「ですが、いまは何もしませんよ。どうせなら貴女の体調が元に戻ってからのほうがいいですからね」 リナは目を閉じて嘆息した。 「ま、あんたがそう言うんならそうでしょうよ。ホントのことは言わないけど、嘘もつかないしね」 「いやぁ、それほどでも」 「ガウリイたちは?」 「おや、会いたくないのではなかったのですか?」 「………いつ、そんなこと言ったのよ?」 「いや、そんなご様子でしたから」 リナは沈黙してしまう。 「別に、何もしていませんよ。三人ともお元気でした。ところで、リナさん。もうしばらく眠っていただけませんか?」 「………何よ、それは」 「いや別に、ただ街のほうに移動しようと思うんです。すぐに貴女の体調が回復するわけではないですから」 「だったらそうすればいいじゃない」 「いいんですか?」 リナが瞳を開いた。今度ははっきりとゼロスの姿をとらえる。 「だから、何が?」 「動けないでしょう? 抱きかかえますよ?」 「……………」 真っ赤になったリナの口がぱくぱくと何か言いかけて、結局閉じた。 「抱きかかえて宿屋に入って、そこのご主人にあらぬこと無いこと言ってて恥ずかしくなるようなこといろいろと」 「あんたねえええぇぇっ!」 そのまま放っておくと憤死しそうなリナの顔を眺めて、ゼロスはにっこり笑った。 「いいんですか?」 「…………………………………寝てる」 ぼそりとリナがそう言った。 「おや、そうですか。残念ですね」 「…………」 「では、おやすみなさい」 ゼロスの指が額に触れるのを見て、リナは何事か毒づいたが、すぐにその瞳は閉じられる。 ゼロスには、鍾乳洞を出るべきか否か相談していたガウリイたちが、結局こっちのほうへ向かってきていることがわかっていた。 「ガウリイさんたちが来る前に移動しましょうかね」 そう囁きかけると、リナの表情がわずかに歪んだような気がした。 またしてもガウリイたちに残されるのは、気配と、明かりのみ。 |
4727 | お姫様だっこはだめ〜!煤i゜っ゜)♭ | あんでぃ | 10/23-02:02 |
記事番号4725へのコメント はうっ!!早いですよ!(うれしいけど)いきなり二つも話が進んでるなんて! ・・・それにしてもリナちゃんは一体どうなってしまうんでしょう(涙)ゼロスだめー!!私のリナちゃんに触るな――!(゜っ゜)←爆弾発言(汗) 嗚呼どんどん話の展開についていけなくなるッ!見えない力に流されるぅッ(涙) でもハッピーエンドって言葉を信じて、ガウリイがんばれっ!負け―んなー!ちっからーの限りいっきてやれーぃ!!ゼルもアメリアもがんばれっ。(ただいまコーフンしております) 私はこういうシリアスな話がかけないんですよ・・・一応何個か考えてあるんですが・・・ 時間が無いのが原因の一つでもありますが、学校、部活しかも大会がひかえてるので休めーないー(涙)忙しいお年頃(?)ですが、がんばります! 私だけじゃなく、続き楽しみに待ってる人がたくさんいるはずっがんばりましょう!期待しています(ぺこり) |
4728 | Re:お姫様だっこはだめ〜!煤i゜っ゜)♭ | 桐生あきや | 10/23-02:40 |
記事番号4727へのコメント 早い〜〜っとのことですが、週末が稼ぎどき(?)ですので(^^; 平日になると、あまり夜更かしできないですし。 でも、あんでぃさんのレスも早いですね。こんなに早く読んでいただけて、すごい嬉しいです。 >「お姫様だっこはだめ〜!煤i゜っ゜)♭」 このタイトルに大爆笑です! ゼロスって役得が多そうだなぁ(笑)。←(だって仕事は楽しくやりたいじゃないですかぁ:ゼロス談) > はうっ!!早いですよ!(うれしいけど)いきなり二つも話が進んでるなんて! これから急に遅くなってもゆるしてください(笑)。 >でもハッピーエンドって言葉を信じて、ガウリイがんばれっ!負け―んなー!ちっからーの限りいっきてやれーぃ!! 小須田部長終わっちゃいましたからねぇ………。(いきなり話が飛ぶ) > 私はこういうシリアスな話がかけないんですよ・・・一応何個か考えてあるんですが・・・ > 時間が無いのが原因の一つでもありますが、学校、部活しかも大会がひかえてるので休めーないー(涙)忙しいお年頃(?)ですが、がんばります! がんばってください! あんでぃさん、たしか一つ載せてらっしゃいますよね? 怪談の内容のない怪談(タイトル間違ってたらごめんなさいっ)。読みましたよ。 すごく面白かったです。ゼロス本当にやりそうですよね、あんなこと。 > 私だけじゃなく、続き楽しみに待ってる人がたくさんいるはずっがんばりましょう!期待しています(ぺこり) ありがとうございますです! すごく励みになります。あんでぃさんも部活の大会がんばってくださいね。 |
4744 | おんぶなら許すよん!d゛( ̄∧ ̄) | あんでぃ | 10/24-01:35 |
記事番号4728へのコメント 桐生あきやさんは No.4728「Re:お姫様だっこはだめ〜!煤i゜っ゜)♭」で書きました。 また来ちゃいました(てへっ) いよいよ明日で試験は終わり!これでもう私に怖いものはあんまりなぁーい!というわけであんでぃです(ペコリ) なんか送りまくりですね(汗)目には目を!レスにはレスを!ってことで > > 早い〜〜っとのことですが、週末が稼ぎどき(?)ですので(^^; > 平日になると、あまり夜更かしできないですし。 > でも、あんでぃさんのレスも早いですね。こんなに早く読んでいただけて、すごい嬉しいです。 もういつもヒマな時、母にスキがあれば見てますよ(^▽^) 見守らせてくださいね(すでにおっかけ?) > >>「お姫様だっこはだめ〜!煤i゜っ゜)♭」 > このタイトルに大爆笑です! ゼロスって役得が多そうだなぁ(笑)。←(だって仕事は楽しくやりたいじゃないですかぁ:ゼロス談) ずるいやゼロス君!煤i□ ̄゜)/ リ:あたしはいい迷惑よっ! ほらほらリナちゃんもこういってるし、ここはとりあえずおんぶで・・・(おまいはお父さんか) リ:あんまし変わってないぃー!! > >> はうっ!!早いですよ!(うれしいけど)いきなり二つも話が進んでるなんて! > これから急に遅くなってもゆるしてください(笑)。 これから平日の日々も続きますしねぇ ゆっくり行きましょ。続きも見たい気がするけど、早く終わっちゃうとそれはそれで寂しいし・・・(またワガママ) > >>でもハッピーエンドって言葉を信じて、ガウリイがんばれっ!負け―んなー!ちっからーの限りいっきてやれーぃ!! > 小須田部長終わっちゃいましたからねぇ………。(いきなり話が飛ぶ) 私的にパタヤビーチとアナウンサー学校が大好きです(だれもそんなこときいてないし) > >> 私はこういうシリアスな話がかけないんですよ・・・一応何個か考えてあるんですが・・・ >> 時間が無いのが原因の一つでもありますが、学校、部活しかも大会がひかえてるので休めーないー(涙)忙しいお年頃(?)ですが、がんばります! > がんばってください! あんでぃさん、たしか一つ載せてらっしゃいますよね? >怪談の内容のない怪談(タイトル間違ってたらごめんなさいっ)。読みましたよ。 >すごく面白かったです。ゼロス本当にやりそうですよね、あんなこと。 はっはずかしぃ(滝汗) でも読んで下さったのはうれしいです(T‥T)←鼻水がっ!ズルズル・・・ 私は誰かがギャグで不幸になるのがうれしくって(極悪) あの話も幸せだったのガウリイだけだし(もしかしたらゼルもだけど・・?) >> 私だけじゃなく、続き楽しみに待ってる人がたくさんいるはずっがんばりましょう!期待しています(ぺこり) > ありがとうございますです! すごく励みになります。あんでぃさんも部活の大会がんばってくださいね。 > はい!部活がんばりますっ!!・・・ほどほどに・・・てへっ(をい) さあこの話を最後まで読むまで私は絶対に死なないッ。 だから、がんばっぞーぅ!!(おお――――ッ!!) がんばりましょう!それじゃあまたレス書きますね! あんでぃでした! |
4743 | ゼロリナ!?(//▽// | ぷち E-mail URL | 10/23-22:24 |
記事番号4725へのコメント はじめましてっ♪ぷちともうします♪ なんだか、その前のコメントすっ飛ばしていきなり5のコメント書いてるけど…。 気にしないで♪(死) 桐生あきやさん…お上手過ぎー!!! こーゆーお話大好きですー!!!げふぅんっ(>△<;; もー!ゼロスったらどさくさ(?)でお姫様だっこ!?(笑) ここを拡大して書きませんか!?(笑)←馬鹿 リナが眠った後のゼロス…みたいな(笑) もー!こーゆー文章かけちゃう人は尊敬しますよー!! あたしは文章べただからー(涙) 続き毎回楽しみにしてますよー! やっぱ読ませてもらってるのにコメントしないなんて失礼かなぁ… とか思って思い切ってコメント!! まじすっ飛ばしまくってすいません(−−;;; あんまり時間がなかったもので(汗) これからも読ませていただきますー! ではでは、敬語も何も無い奴ですいません(^^; これからもよろしくして下さいナ♪ |
4746 | ぷちさん、はじめまして | 桐生あきや | 10/24-01:52 |
記事番号4743へのコメント 初めまして。桐生あきやともうします。 楔を読んでてくださってありがとうございます! すっごく嬉しいです。ああ、あたしって幸せ者だなぁ。 >桐生あきやさん…お上手過ぎー!!! 誉めてくださって本当にありがとうございます! こんな誤字脱字ばっかりの小説をそう言っていただけると、本当に嬉しいです。 もっとここに投稿しているみなさんみたいに、上手にかけるようになりたいです。精進あるのみ! ということで(笑)。 >もー!ゼロスったらどさくさ(?)でお姫様だっこ!?(笑) >ここを拡大して書きませんか!?(笑)←馬鹿 >リナが眠った後のゼロス…みたいな(笑) 書いたら暴走して止まらなくなるのがわかっていたので自粛しました(笑)。 そうなんですよ。私のゼロスは異様にリナにからむんです!(言うこと聞かないし) ガウリイ(はぁと)リナ←ゼロスってのが個人的に良いかなぁ、と(死)。 >続き毎回楽しみにしてますよー! ありがとうございます、がんばります!! >やっぱ読ませてもらってるのにコメントしないなんて失礼かなぁ… >とか思って思い切ってコメント!! >まじすっ飛ばしまくってすいません(−−;;; レスありがとうございます。すごく嬉しいです。読んでてくれてるってだけでとっても嬉しいですよ。(いまはぷちさんが読んでくれているとわかってさらにハッピーです!) >ではでは、敬語も何も無い奴ですいません(^^; 全然そんなこと気にしなくて良いです。 こちらこそ、よろしくお願いしますね。それでは。 |
4745 | 楔―くさび― 6 | 桐生あきや | 10/24-01:38 |
記事番号4678へのコメント 驚かせてしまったひとすみません。こっちが本当の6です。 ===================================== リナが目を覚ますと、古ぼけた木の天井がまず視界に入った。 「………?」 どうして自分がこんな見知らぬところにいるのかがわからず、眉をひそめてベッドから起きあがる。 「ここ、どこ………?」 「プラメアの村です」 声とともに黒衣の神官が部屋に現れる。 「ゼロス!」 記憶がよみがえってきて、リナは顔をしかめた。ゼロスに助けられたというのは、あまりいい気持ちではない。 「なんだってプラメアなのよ。あと二つ三つ街越えればゼフィーリアじゃないの」 「いや、こっちが近かったものですから」 「嘘つき」 一言そう言うと、リナはベッドを降りて立ち上がった。まだ足下がふらつくが動けないほどではない。窓のところまで歩いていって、鎧戸を押し開ける。 きらめく星空が視界に入った。中天にかかる、少し欠けた月に首をかしげる。 「あれから何日たってるの?」 「二日です」 軽くリナは目を見開いた。 「二日も寝てたの? 呑気ね、あたしも」 自嘲気味に吐息で笑うと、リナは部屋を出ていきかけて、ドアのところでゼロスをふり返った。 「助けたついでに下でご飯おごってくんない? おなかすいちゃったし、あたし荷物なんか持ってないから文無しなのよね」 ゼロスが絶句していると、リナはつけ足した。 真紅の瞳が挑戦的に光を帯びる。 「あんたの話もついでに聞いてあげる。あたしに用があるんでしょ?」 ゆっくりと。 ゼロスの顔に笑みが浮かんだ。 「さすがです、と言いたいところですが、まああれだけ暴走すれば気づきますか」 リナの後に続いて階下に向かうゼロスにはリナの表情はわからない。 「いまはまだ普通にお腹が減るのよ。多分これからもね。あんたの思うとおりにはいかないわ」 「そうでしょうか」 リナがくるりとふり返った。 「その話は、ご飯を食べながらにしてちょうだいね」 「はいはい。おごらせて頂きますよ」 シチューしかないというので、そのシチューのお代わりを連発しているリナの真向かいで、ホットミルクを飲みながら、ゼロスは話を切りだした。 一階の食堂には夜も遅いせいもあって、リナとゼロスしかいない。宿屋の主人は厨房のほうに行ったままだ。 これから始まるリナとの会話を楽しみにしている自分がいることをゼロスは自覚する。 「じゃ、単刀直入に。リナさん、魔族になりません?」 「絶対ヤダ」 よく煮込んであるニンジンさんをスプーンで割りながらリナが即答する。 「ま、あんたのことだからそんな命令受けてて、あたしを助けたんだろうけど。お断りね、そんなこと」 「もうすでにあんなことになっているのにですか?」 リナの表情が固くなる。ゼロスはかまわず先を続けた。 「あれでは、魔族になるのもそう遠い未来ではありませんよ?」 ゼロスの言葉に、にやりとリナが笑った。 ゼロスは思いっきり面食らう。 なぜ、ここで笑う? リナは唇の端をあげたままゼロスを見つめた。 「ふふーん、じゃあどうして、このまま放っておけば魔族になりそうなあたしのところに、あんたはのこのこ姿を現したのかしら? あんたがあたしの背中押さなきゃ魔族になんないから来たんでしょ?」 「…………」 笑みが浮かぶのを止められなかった。 この人間の少女と会話をするときは、主である獣王やそれに並ぶ力を持つ存在と話をしているときと、まったく同じ感覚がする。何の力も持たぬ人間なのに。 頭の回転の速い相手と言葉を交わすのは楽しい。丁々発止のやり取りの、その緊張感が癖になるのだ。 手こずりそうな予感は見事に当たり、それを喜ぶ自分がいる。仕事のしがいがありそうだと。 「やっぱりただの人間じゃないですねぇ。その通りですよ。どうやって背中を押すのか具体的なことは教えてあげませんけどね」 「ええ〜っ、ちょっとぐらい、いいじゃない」 ゼロスは苦笑した。 「〈楔〉が邪魔だとだけ言っておきますよ。でも、それだけです」 最後のシチューをスプーンですくい取って口に運んでしまうと、リナは面白くなさそうに鼻をならした。 「あ、そ。じゃ、別のこと聞くからいいもん」 「何をお聞きになりたいので?」 「あたしが魔族化している理由」 自分の変化をはっきりとそう言い切れるのは、この人間の持つの強さなのだろう。 「知らないんですか?」 「なんとなく予想はつくけどね。あんたと答え合わせでもしようかなあ、と思って。ついでに精神世界についてお勉強もしたいし。こんくらいは教えてくれたって、あんたの仕事には差し障りないでしょう?」 早くも栗色に戻りかけている髪を背中に流して、リナは目で笑う。ゼロスには、その背後の肥大して歪んだ魔力が視(み)えた。 「いいでしょう」 譲歩している自分に気がついて、ゼロスは苦笑した。 「現在のリナさんは、世界への存在の仕方が魔族に近くなっています。具体的には、僕たち魔族が精神世界面(アストラル・サイド)から貴女に攻撃ができるくらいに、リナさんの魔力は肥大しています。 ―――御安心を。人間ごときにしませんよ、そんなこと。魔力の肥大の源は、ずばり貴女の肉体です」 リナの目元がぴくりと動いた。 「肉体が魔力に変換されているんです。だから、肥大している魔力と言うのは、最大キャパシティが大きくなったわけではなく、もとは貴女のカラダの一部が上乗せされているというわけです。そろそろ肉体の存在感が稀薄(きはく)になってきているでしょう?」 肉体を動かしているという意識があまりないはずだ。そのため、五感によって自己の存在を確認する人間であるリナは、自分自身をも稀薄に感じているだろう。 まるでこの世界に融けていってしまいそうな感覚を。 魔族である自分には慣れ親しんだ感覚だが、リナはそうもいかないだろう。 「あたしは現状を聞いてるんじゃないの。それくらい自分でわかっているわよ。理由を知りたいの」 「あの御方との接触でしょうね、おそらく」 うやうやしくゼロスの口からすべり出た言葉に、リナは顔をしかめた。 「貴女は一度そのカラダにあの御方を宿しています。何か名残のようなものがあったとしても全然不思議じゃありません。それが第一の理由」 「二つ目は?」 「多分、あの御方のミスじゃないかと」 ずるっとリナの肘がテーブルから滑った。 「ミ、ミスううううううっっ!?」 「はい」 ゼロスが涼しい顔でうなずいた。 「貴女は、あの御方を召還したときに、精神がいちど、始源の混沌に還元されているでしょう?」 「そんなの知らない。憶えているわけないでしょ」 憮然とした表情でリナがそう告げる。 「ともかくあの御方はそうおっしゃいました。まあ気まぐれで再構成してくれましたから、いまリナさんが僕の目の前にいるわけですが。その再構成が完璧じゃなかったんでしょうねぇ」 「あたしがこんな大変な目にあってるのが全部あのパツキン大魔王のミスのせいなわけっ!?」 「パ、パツキンって………」 ゼロスが絶句していると、リナはテーブルを叩いて立ち上がった。 「冗談じゃないわよ。手ぇ抜いたあげくにこの有様なんて!」 「ま、まあ、あの御方にしてみれば、海のなかに落として溶かした角砂糖を、探し当てて元に戻すようなものでしょうからね」 ゼロスの目がすがめられる。 「それに、完全に貴女のせいでないとも言い切れませんよ?」 「………どういうことよ?」 リナの表情が剣呑なものに変わる。先ほどから微量に存在していた負の感情が急激にふくれあがっていくのがわかる。 「じゃあ、どうして急に最近、魔族化の速度が早まってきていると思います? 僕が動き出すほどに。言っときますけど、あなたの変化、僕はすでに闇を撒くもの(ダークスター)との戦いのときから気づいてましたよ。獣王さまへの結果報告にそのことを付け足したら、今回の命令が下ったわけです」 ゼロスはテーブルの上に組んだ両手に顎をのせて、リナを見つめた。 「僕たち魔族はしょせん精神生命体です。貴女たちの言い方を借りるなら、心―――つまり意志の力が全てなんですよ。貴女の存在の在り方が変わろうとしているのは、自己存在に不安を抱いているからです」 「…………」 「リナさん最近何をお悩みで?」 がたりと椅子を鳴らしてリナが立ち上がった。 怒り。不安。恐怖。やわらかな霞のような美しい負の感情。 それらを発散させながら、リナは一言だけ告げた。 「寝る」 「おや、ここまで言わせておいて逃げようっていうんですか」 「あたしが悩んでたほうがあんたにとって都合がいいんでしょ。お悩み相談室なんかやってんじゃないわよ、バカ魔族」 リナの後に続いて階段を上りながら、ゼロスは薄く笑った。その酷薄な魔族の笑いをリナは見ることができない。 「僕の利益になったとしても言いたくないというわけですか。ありがたくそのお心遣いをちょうだいしておきますよ」 肉体の稀薄な感覚も、自己の揺らぎに拍車をかけ、ますます悩みは助長する。 この少女はこのまま放って置いてもいいだろう。 問題は――――。 彼女の仲間たち。 いまは自分のことで手一杯のこの人間の少女が、仲間の存在に気づく前に。 何とかしなければ。 「リナさん」 「何よ?」 めんどくさそうにふり返ったリナは、ゼロスに手首をつかまれて目を見張る。 「な………!?」 驚いたのは一瞬だけだった。すぐにくらりと視界がまわる。 「あ……っ、う――――」 つかまれている腕を押さえて、リナはその場にくずおれる。その耳元にゼロスは囁いた。 「ほら、こうやって肉体同士が触れるだけで、ダイレクトに僕の魔力が伝わってくるでしょう? カラダが精神の媒介でしかなくなっている証拠です」 「ゼ……ロス……!」 「このまま魔族になっておしまいなさい」 囁かれる言葉も、もはやリナの耳には届いていなかった。 ゼロスにつかまれている手首から、這いのぼるように伝わってくる魔族の負の力。 まるで毒のある美酒を注ぎこまれているような酩酊感がリナを支配する。闇の深淵をのぞきこむような。暗い歓びに満ちた、重い感覚。 このままでは、引きずられてしまう。 「はなして………っ!」 ゼロスがつかんでいる手首の辺りの空間が、わずかにブレた。 目を見張って、次に笑みを浮かべてゼロスは手を離す。 リナが床の上に崩れ落ちる。それを見下ろして、ゼロスは拍手をしてみせる。 「ほんとに貴女はすばらしいですね。もう精神世界側(アストラル・サイド)から攻撃ができるんですか」 びくりとリナが身を強張らせた。 「ますます貴女を魔族に引きこみたくなりましたよ」 「………魔族になんかならないわ」 「いつまでそう言ってられますかね。それではお休みなさい、リナさん」 部屋のドアを閉めると同時に、ずるずるとリナは床に座りこんだ。 心臓が早鐘のように、めちゃくちゃに鼓動を打って、止まらない。 『もう精神世界側から攻撃ができるんですか』 ゼロスの言葉が耳から離れない。 無意識だった。ただ、ゼロスの腕から逃れたくて、はなれろと願った。 それだけだったのに。 「あ………」 リナは頭を抱えこんだ。 どうすればいいのかわからない。ただ怖い。 最初に気がついたのは、闇を撒くもの(ダークスター)との戦いのさなかだった。自分の中の魔力が大きくなっていることに気が付いて、戦慄した。 あの死闘のなかで、それは利にこそなれ、驚異ではなかった。 だが、本当にいつからなのだろう? いつから、これほど急激に異変が起き始めたのだろう? リナは必死に記憶をたどる。 もう三ヶ月ほど前から視覚の異常は起きていた。三ヶ月より以前に何があった? 「あ、たしか………」 思い出した。四人で小さな仕事をひとつ片づけた。町外れの遺跡に住みついたアンデットを倒してくれと頼まれた。何の変哲もない普通の依頼。 遺跡の中には予想以上にアンデットの数が多かった。 だけど、ガウリイに光の剣はなくて。 おまけに呪文を詠唱中の自分をかばって、ガウリイは怪我をした。治癒(リカバリィ)ですぐに治る程度の軽傷だったけれど。 ―――あたしのせいでまた迷惑かけた。もう光の剣はないのに。 光の剣がなくなったからといって、ガウリイが弱くなったわけでは、もちろんない。だが、それでも心に重いしこりが残った。 ―――剣を探すって理由なんか作らずに、ガウリイの負担になる前に別れてしまえばよかったのかな。 そう、思った。 「それが……原因なの……?」 呟いてリナは首をふった。過去の記憶のなかでだけの思いが、全ての原因で、なおかつ今の悩みにつながるとは限らない。 『リナさん最近何をお悩みで?』 ―――悩みって、この魔族へと変わっていく体のことじゃないの? 『言いたくないということですか』 言いたくても、言えない。 ―――だって、魔族化への不安がその答えじゃないんなら、あたしはいったい何を悩んでいるというんだろう? 「だいたい、何に悩んでいるか自分でわかっているなら、こんなにややこしくしてないわよ………」 ぼそりとリナはそう呟いた。 漠然とした不安感を抱えているうちに、体に異変が起きて、異変のせいで悩んでいるのか、違うことで悩んでいるのかわからない。 ゼロスから伝わってきた、あの禍々しい負の気配の感覚がよみがえってきた、リナは唇を噛んだ。 あのまま、精神世界面(アストラル・サイド)からの攻撃をしなかったら、きっと今頃、引きずられて魔族になっていた。 ゼロスは、自分が魔族になることを承諾するまで揺さぶりをかけてくるだろう。 ―――どう対抗すればいい? リナはよろめきながら立ち上がった。 ぱんっ、と両手で自分の頬を叩く。 「一体何をやっているの? リナ・インバースともあろう者が」 自分が自分を喪失していることぐらいわかっている。らしくないことも。抜け出すために足掻かなければいけないことも。 だけど、自分自身と向き合う勇気が、いまは持てなかった。 逃げだということはわかっている。 だけど置かれた状況を打破することのほうを優先したかった。体を動かしていたかった。 いまは、魔族化を―――ゼロスを止めることの方を、何とかするべきだ。 ヒントはたった一言、ゼロスの洩らした言葉。 『〈楔〉が邪魔だとだけ言っておきますよ』 ………〈楔〉? 不意にリナの目が鋭くなった。何かが記憶にひっかかる。 だが、どうしても思い出せず、そのことにいらだった。 暗い怒りが自分自身を焼いていく。 リナは、テーブルの上の水差しを両手でつかむと、頭上で傾けた。暗い部屋のなか水音だけが派手に響く。 頬を、顎を、水滴がしたたり落ちていく。 彫像のようにリナは微動だにしない。 「頭を少しは冷やしなさい。見苦しいわよ、リナ」 自分自身にそう呟いて、リナは首をふった。 早鐘のような鼓動。堂々巡りの思考。 さぞかし今の自分はゼロスが喜びそうな感情を放っていることだろう。 許せないのは自分自身。 迷っている自分が。弱さを見せる自分が。 自信のない自分が。 何よりも、そのことに向き合えない自分が。 「大嫌いよ!!」 こらえかねたようなリナの叫び。 泣き声だった。 |
4747 | シチューのニンジンに一票!! | あんでぃ | 10/24-02:21 |
記事番号4745へのコメント 桐生あきやさんは No.4745「楔―くさび― 6」で書きました。 > > > 驚かせてしまったひとすみません。こっちが本当の6です。 > わいっ早―い!レスかいてる間にもうなおってる!一坪さんに感心するべきか、それとも桐生さんに感心するべきか・・・。 お二人ともすごいので、お二人に拍手(ぱちぱち) リナちゃん今回もピンチですね!これだけ大変な思いをしてるときにガウリイ君とかがかっこよく現れたら、もう全国五千万人のガウリイファンはめろめろ(死語)ですね。 私はやっぱ桐生さんの書くリナちゃんの強さに惹かれます、もうめろめろ(もうやめろ)です。 ゼロスも今回魔族っぽいですね。なんか悪役って感じがひしひしと・・・。ゼロスはギャグもいいけど、シリアスでなんか謎っぷりが現れていいですね。スキです! リナちゃんの下にガウリイ君がかっこよく現れて、全国のガウリイファンがめろめろになる日は来るのかっ!(勝手な憶測) 楽しみにしてても大丈夫でしょうか・・・? すみません突然話を変えますが、私の素朴に感動した事を聞いてください! はいっ!行きますよ! 今日っ私の家は・・・・夕食がシチューでした! わーい!\(^▽^)/シチューばんざい! 素直にうれしかったです!くだらないなんて言わないで!(^ ^;) 次回はどんな夕食なのか!それ以前に夕食のシーンがあるのか!こんなところも楽しみにしながら(をい)また次のお話のときしょうこりもなく来ると思います(ウザかったらいってくださいね) それでは!あんでぃでした。 |
4749 | レス毎回どうもです! | 桐生あきや | 10/24-14:56 |
記事番号4747へのコメント あんでぃさんは本当にレス早いですね。読んでてくれてるんだなーって、ひしひしと伝わってきて、すごく感謝感激です。ありがとうございます! >わいっ早―い!レスかいてる間にもうなおってる!一坪さんに感心するべきか、それとも桐生さんに感心するべきか・・・。 これはもうぜひ一坪さんに、感謝してください。またたくまになおったので、私もびっくりしました。 >リナちゃん今回もピンチですね!これだけ大変な思いをしてるときにガウリイ君とかがかっこよく現れたら、もう全国五千万人のガウリイファンはめろめろ(死語)ですね。 実は私、ガウリイがいちばん書くの苦手なんです。なに考えてるのかさっぱりわからなくて・・・(苦笑)。 >私はやっぱ桐生さんの書くリナちゃんの強さに惹かれます、もうめろめろ(もうやめろ)です。 そう言っていただけるとうれしいです。やっぱりリナは強いところが良いですよね。そのわりにはいじめてるけど私・・・(汗) >リナちゃんの下にガウリイ君がかっこよく現れて、全国のガウリイファンがめろめろになる日は来るのかっ!(勝手な憶測) >楽しみにしてても大丈夫でしょうか・・・? うーん、わかりません(ごめんなさいっ)。何せガウリイ、ものすごく書きづらいんで(なにをしでかすかわからない)。 >すみません突然話を変えますが、私の素朴に感動した事を聞いてください! >はいっ!行きますよ! >今日っ私の家は・・・・夕食がシチューでした! >わーい!\(^▽^)/シチューばんざい! >素直にうれしかったです!くだらないなんて言わないで!(^ ^;) くだらないなんてとんでもないです! たしか私もあの場面の下書きを書いてた日、夕飯はシチューでした(笑) 人間そんなものです(^^; >また次のお話のときしょうこりもなく来ると思います(ウザかったらいってくださいね) >それでは!あんでぃでした。 うざいなんてとんでもない! 読んでくださって本当にうれしいです。 こちらこそ、だんだんと一回のアップの量が多くなっていってます(汗)。 読みづらく感じたら、遠慮なく言ってくださいね。 |
4750 | あきやさん始めまして〜!! | karin | 10/24-19:10 |
記事番号4745へのコメント 桐生あきやさんは No.4745「楔―くさび― 6」で書きました。 始めましてkarinです。ってふつうプロローグに書くものなのに・・・ すいません。だいぶ前から見てたんですけど。書くのがめんどくさいので・・ ああ!!あきれないでくださいね(はぁと) リナ:あんたってあたしには「失礼なこというな!」って言うくせに、自分はすんごい失礼よね・・ う、うるさいわよ・・少なくともあんたよりはまっしよ!! リナ:・・・・ ひっ!!ごめんてば!あやまるから、ドラ・スレはやめて!! リナをおとなしくさせた所で 感想いっきま〜〜す!! > > > > 部屋のドアを閉めると同時に、ずるずるとリナは床に座りこんだ。 > 心臓が早鐘のように、めちゃくちゃに鼓動を打って、止まらない。 >『もう精神世界側から攻撃ができるんですか』 > ゼロスの言葉が耳から離れない。 > 無意識だった。ただ、ゼロスの腕から逃れたくて、はなれろと願った。 > それだけだったのに。 >「あ………」 > リナは頭を抱えこんだ。 > どうすればいいのかわからない。ただ怖い。 リナが怖いってめずらし〜(‘_‘) > 最初に気がついたのは、闇を撒くもの(ダークスター)との戦いのさなかだった。自分の中の魔力が大きくなっていることに気が付いて、戦慄した。 あのときからなの!! > あの死闘のなかで、それは利にこそなれ、驚異ではなかった。 > だが、本当にいつからなのだろう? いつから、これほど急激に異変が起き始めたのだろう? > リナは必死に記憶をたどる。 > もう三ヶ月ほど前から視覚の異常は起きていた。三ヶ月より以前に何があった? >「あ、たしか………」 > 思い出した。四人で小さな仕事をひとつ片づけた。町外れの遺跡に住みついたアンデットを倒してくれと頼まれた。何の変哲もない普通の依頼。 > 遺跡の中には予想以上にアンデットの数が多かった。 > だけど、ガウリイに光の剣はなくて。 > おまけに呪文を詠唱中の自分をかばって、ガウリイは怪我をした。治癒(リカバリィ)ですぐに治る程度の軽傷だったけれど。 > ―――あたしのせいでまた迷惑かけた。もう光の剣はないのに。 > 光の剣がなくなったからといって、ガウリイが弱くなったわけでは、もちろんない。だが、それでも心に重いしこりが残った。 う〜ん・・ > ―――剣を探すって理由なんか作らずに、ガウリイの負担になる前に別れてしまえばよかったのかな。 しょんな〜(T_T) > そう、思った。 ホントに? >「それが……原因なの……?」 > 呟いてリナは首をふった。過去の記憶のなかでだけの思いが、全ての原因で、なおかつ今の悩みにつながるとは限らない。 >『リナさん最近何をお悩みで?』 > ―――悩みって、この魔族へと変わっていく体のことじゃないの? >『言いたくないということですか』 > 言いたくても、言えない。 > ―――だって、魔族化への不安がその答えじゃないんなら、あたしはいったい何を悩んでいるというんだろう? >「だいたい、何に悩んでいるか自分でわかっているなら、こんなにややこしくしてないわよ………」 > ぼそりとリナはそう呟いた。 ふつうはね・・・ > 漠然とした不安感を抱えているうちに、体に異変が起きて、異変のせいで悩んでいるのか、違うことで悩んでいるのかわからない。 > ゼロスから伝わってきた、あの禍々しい負の気配の感覚がよみがえってきた、リナは唇を噛んだ。 > あのまま、精神世界面(アストラル・サイド)からの攻撃をしなかったら、きっと今頃、引きずられて魔族になっていた。 > ゼロスは、自分が魔族になることを承諾するまで揺さぶりをかけてくるだろう。 > ―――どう対抗すればいい? がんば!! アメリア:正義の心があれば、きっと大丈夫です!! > リナはよろめきながら立ち上がった。 > ぱんっ、と両手で自分の頬を叩く。 >「一体何をやっているの? リナ・インバースともあろう者が」 > 自分が自分を喪失していることぐらいわかっている。らしくないことも。抜け出すために足掻かなければいけないことも。 > だけど、自分自身と向き合う勇気が、いまは持てなかった。 > 逃げだということはわかっている。 > だけど置かれた状況を打破することのほうを優先したかった。体を動かしていたかった。 > いまは、魔族化を―――ゼロスを止めることの方を、何とかするべきだ。 > ヒントはたった一言、ゼロスの洩らした言葉。 >『〈楔〉が邪魔だとだけ言っておきますよ』 > ………〈楔〉? > 不意にリナの目が鋭くなった。何かが記憶にひっかかる。 > だが、どうしても思い出せず、そのことにいらだった。 > 暗い怒りが自分自身を焼いていく。 > リナは、テーブルの上の水差しを両手でつかむと、頭上で傾けた。暗い部屋のなか水音だけが派手に響く。 > 頬を、顎を、水滴がしたたり落ちていく。 > 彫像のようにリナは微動だにしない。 >「頭を少しは冷やしなさい。見苦しいわよ、リナ」 > 自分自身にそう呟いて、リナは首をふった。 > 早鐘のような鼓動。堂々巡りの思考。 > さぞかし今の自分はゼロスが喜びそうな感情を放っていることだろう。 ・・・・・・・ > > 許せないのは自分自身。 > 迷っている自分が。弱さを見せる自分が。 > 自信のない自分が。 > 何よりも、そのことに向き合えない自分が。 > >「大嫌いよ!!」 > こらえかねたようなリナの叫び。 > 泣き声だった。 リナらしいね。。。 感想になってない気がしますが きにしないで下さいね 今後の展開もおもしろそうなので、 ちょくちょく、レスさせてもらいますね。 わたしは、強いリナはとっても好きなので、がんばってくださいね それでは・・・ > |
4773 | Karin始めまして | 桐生あきや | 10/26-03:37 |
記事番号4750へのコメント 初めまして、karinさん レスが遅れてしまってごめんなさい。許してくれますか?(どきどき) >始めましてkarinです。ってふつうプロローグに書くものなのに・・・ >すいません。だいぶ前から見てたんですけど。書くのがめんどくさいので・・ >ああ!!あきれないでくださいね(はぁと) 見ていてくれただけでも嬉しいです。それにちょっと前まで読む側だった私には、その気持ちはよくわかります(笑)。 >わたしは、強いリナはとっても好きなので、がんばってくださいね リナは強くなくちゃって、私も思います。感想どうもありがとうございました。 とても嬉しいです。 続きをアップしたので、よろしければ見てやってください。 それでは。 |
4755 | 楔―くさび― 7 | 桐生あきや | 10/25-01:04 |
記事番号4678へのコメント プラメアの村からのびる南の街道に、ゼロスは立っていた。 リナたちが歩いていた、セイルーン方面への街道は木立のなかを通っていたが、ゼフィーリア方面のこの街道は、一変して、ただどこまでも草原が広がるなかに存在する。 さわさわと夜風が草原の上をはしり波の模様を起こす。 ゼロスはただ、待っていた。 少し精神世界面(アストラル・サイド)に意識を向けると、目立つリナの気配が、たまらない負の感情を放っているのがわかる。少し心惹かれたが、こちらに向かってくる人影を見て、ゼロスはあきらめることにした。 南からプラメアに向かってくる三人の人影は、すぐにこちらの存在に気づいた。 夜を徹して歩いてきたとはご苦労なことだ。空間が渡れない人間は不便なものだと、つくづく思う。 間合いをとって対峙する三人に、ゼロスは優雅に一礼してみせた。 「ようこそ、お早いお着きで。よくここに真っすぐ来ましたね。迷わなかったのですか?」 「迷うものか。理論的に考えればすぐにわかる。ここが最も時間を稼げて、なおかつ盲点になりやすい」 ゼルガディスがそう言って剣を抜きはなった。遅れてガウリイがそれにならう。 「それに、あんたがここにいるってことはプラメアで正解なわけだ」 「ええ、まあそうですけどね」 ゼロスはふわりと宙に舞った。 「リナさんの具合もよくなってきましたので、そろそろ僕は僕の仕事に取りかかろうかと思いまして」 ゼロスの言葉に、三人が身構える。 「お前の仕事は何だ?」 「リナさんを魔族に引き入れることです」 「そんな………っ!?」 アメリアの言葉にゼロスは薄く笑う。 「うすうす気が付いてたんじゃないんですか? リナさんの魔力が暴走を引き起こしたときから。ま、そんなわけでして―――」 ゼロスから殺気が吹き出してくる。 傲然と三人を見下ろして、ゼロスはゆっくりと告げた。 「まず初めに、あなたがたを殺します」 その視線がアメリア、ゼルガディスのうえをすべり、ガウリイでとまる。 ―――特にガウリイを殺す必要があった。 リナを魔族にするには、〈楔〉の破壊を必須とするからだ。 〈楔〉とは、人間などの精神と肉体の両方を併せ持つ存在が、自然に備えている安全弁のようなものだ。 人間が他者の力を借りて魔法を唱えても、魔族のように自己の存在が危うくならないのは、この〈楔〉があるおかげ。逆に、魔族は〈楔〉を持たないため、自己の存在をしっかりと把握しておかなければならない。 この〈楔〉のために、人間に転生した魔竜王はもはや完全な魔族に戻ることは叶わなかった。彼の場合は、封印を施した水竜王の心のかけらが〈楔〉をより強固なものにしていた。 肉体と精神がばらばらになってしまわないために存在する―――〈楔〉。 「リナさんを魔族に引き入れるのに、あなたがたの存在は非常に、邪魔なんです」 にこやかな表情のままゼロスは続ける。 肉体と精神の二つを結びつけておくための〈楔〉は、やはり二つ。 ひとつは、肉体の心臓そのもの。 これは破壊することはできない。心臓の破壊は肉体の崩壊に直結する。破壊と同時にリナは死んでしまうだろう。いくら魔族化しているといっても、半端に人間なだけ、たちが悪い。 だから、もうひとつの〈楔〉の方を破壊する必要がある。 二つ目の〈楔〉は、精神の〈楔〉。 それは、自分に肉体があるということを微塵も疑っていない確固たる意志。本来なら、こちらも強固にできている。人間は、生まれたときから肉体を持っている以上、肉体なしに生きることなど、思いもよらないからだ。 自分の存在を肉体の五感で確認する人間は、肉体があることを自覚することで自分自身をも実感する。 そして、いまのリナは肉体の感覚が稀薄になってきている。 だが、もうひとつ重大な事実があった。 自己の存在の確認を他者に依存する場合、この〈楔〉は移動するのだ。 生きていくのに相手の存在を必要としたとき、その相手の存在そのものが〈楔〉となる。 現在のリナの〈楔〉がどちらの状態にあるのかは、明白。精神状態がぼろぼろのいまもなお、彼女が人間でいるということは―――― 彼女の〈楔〉は、この目の前の青年。 彼さえ、殺してしまえばいい。 そうしてしまえば、リナの魔力の肥大は心臓の〈楔〉ひとつで抑えきれるものではない。 ゼルガディスとアメリアがすでに呪文の詠唱に入っていることには、気づいていた。 ゼロスは再び大地に降り立つ。 「リナはどうした!?」 ガウリイの言葉をゼロスは嘲笑った。 「いまはご自分の心配をしたほうがいいんじゃないですか?」 「魔皇霊斬!(アストラル・ヴァイン!)」 ゼルガディスの呪文が、ガウリイの剣に赤い光をまとわせた。すぐさまガウリイが奔る。 正面からのガウリイの剣を錫杖によって受け流すと、力の流れを巧みに変えた第二撃がゼロスを薙ぐ。 舌打ちしてゼロスはガウリイから距離をおいた。それをガウリイは追う。 「霊王結魔弾!(ヴィスファランク!)」 呪文が完成すると同時にアメリアは、ゼロスに向かって間合いをつめた。横からのガウリイの剣を再び錫杖で弾き返し、遅れてやってきたアメリアの拳をゼロスはふわりと後ろに下がってよける。 そのゼロスに追いすがるガウリイが不意に横に飛んだ。ガウリイの後ろには、力ある言葉を解き放つ寸前のゼルガディス。 「崩霊裂!(ラ・ティルト!)」 蒼い光がゼロスを包み込もうとする瞬間、ゼロスの姿は消え失せる。 ゼルガディスが舌打ちする。 精神世界面(アストラル・サイド)に入られた。 「気をつけろ、どっから来るかわからん!」 背後からの攻撃を警戒して三人は背中あわせに立つ。ゼルガディスとアメリアの唱える呪文の詠唱だけが、夜の空気に流れ――― 生まれでた気配にガウリイが真上をふり仰いで叫んだ。 「上だ!」 いち早くガウリイが逃れ、ゼルガディスがアメリアを蹴り飛ばして、自身も反動で飛びすさる。 いままでいたその場所が、降ってきた不可視の衝撃波でえぐれて、土砂を吹き上げた。 そこにゼロスが現れる。 「どうしました? 逃げてばかりじゃダメですよ」 「崩霊裂っ(ラ・ティルト)」 ゼロスの挑発にのった形で、ゼルガディスが唱えていた呪文を解き放つ。現れた蒼い光の柱をゼロスの錫杖が断ち割った。 ゼルガディスは唇を噛む。 ガウリイの光の剣が失われ、なおかつリナもいないこの状況で、魔族に対抗できる精神系の呪文は崩霊裂(ラ・ティルト)しかない。 が、それすらも軽くあしらわれている。 「ゼロス!」 ガウリイの怒号に、ゼロスがそっちをふり返る。 「なんです?」 夜風に金髪を流して立つ青年。 少女の〈楔〉。 「リナはどこだ?」 ゼロスの顔が不快げに歪む。彼の存在がいつにも増して不愉快だった。 「だから、それよりご自分の心配のほうが先じゃないんですか? あなたたちを殺す前にリナさんをどうこうしようとは思いませんよ」 「俺は死ぬ気ははない。だから訊いている。リナはどこだ?」 自分に向けられる純粋な負の感情は、なかなかのものだったが、それ以上に不愉快だった。 もはや何の表情も見せずに、ゼロスは錫杖を横にふるった。ひゅっと風を切る音が草原に響く。 「お遊びはここまでです。殺します」 そう言って、ゼロスは呪を口にした。 どれくらい、闇の中でたたずんでいたのだろう。 誰かに呼ばれたような気がして、リナはハッと顔をあげた。 「だれ………?」 呼ばれたのではなく、どちらかというと、存在を求められたような………。 リナは窓を開けて、暗い夜の街を見降ろした。夜風がふわりと涙で濡れたままのリナの頬を撫でていく。 街はしん、と静かなままで、何も変わったところは見られない。 「ガウリイ………?」 ぽつんとそう呟いて、不意にリナは目を見張った。 いちばん大事なことに気がついた。 暗い部屋を勢い良くふり返る。 「ゼロス!!」 獣神官が呼びかけに応じて現れる様子は微塵もない。 「しまった………!」 リナは自分の頭を壁に打ちつけたい衝動に駆られた。自分自身がこれほど頭が悪いと知ったのは今日が生まれて初めてだ。多分もっと悪いんだろう。 ―――本当に何をやっているの、あたしは!! 迂闊だった。自分自身にかまけて、ゼロスを自由に動けるようにしてしまうなんて! 自分のことで手一杯で、仲間のことを、ガウリイのことを例えほんのわずかな間とはいえ、失念していた自分がゆるせなかった。 すべて自分の迷いが生んだ結果。 自分のやったことはすべて自分に返ってくる。それについては依存はないが、それに大切な人たちを巻きこむのは、もう二度といやだ。 急がないと、また自分のせいでガウリイが傷ついてしまう。 ゼロスが相手だと、今度こそ、取り返しがつかない。 リナは窓から身を乗り出した。 「どこ………!?」 求めている気配はすぐに見つかった。凍るような冷たい負の気配。 もはや完全に精神世界面(アストラル・サイド)からになってしまっている自分の視覚を、これほどありがたく思ったことはなかった。 リナは呪文を唱えて、窓からひらりと飛び降りた。 結局、ゼロスの言う〈楔〉が何を指すのかはわからないままだったが、ただはっきりとわかることがある。 自分に揺さぶりをかけるなら。 ―――冥王(ヘルマスター)と、同じ事をすればいいのだ。 |
4766 | Re:楔―くさび― 7 | あんでぃ | 10/25-23:26 |
記事番号4755へのコメント 桐生あきやさんは No.4755「楔―くさび― 7」で書きました。 > こんにちはまた来ちゃいました。あんでぃです 毎日一話ずつ着々と進んでいるのがすごいです!かんどーです! レス書くのも、うかうかしてられないわ!がんばらなくっちゃ!! > > プラメアの村からのびる南の街道に、ゼロスは立っていた。 > リナたちが歩いていた、セイルーン方面への街道は木立のなかを通っていたが、ゼフィーリア方面のこの街道は、一変して、ただどこまでも草原が広がるなかに存在する。 ゼフィーリアに向かっているのですか? ゼフィーリアにはリナの姉ちゃんがいるはず・・・ゼロス返り討ちに会っちゃいますよ?(笑) > さわさわと夜風が草原の上をはしり波の模様を起こす。 > ゼロスはただ、待っていた。 > 少し精神世界面(アストラル・サイド)に意識を向けると、目立つリナの気配が、たまらない負の感情を放っているのがわかる。少し心惹かれたが、こちらに向かってくる人影を見て、ゼロスはあきらめることにした。 ま・・まさかっ!郷里の姉ちゃん(違うって?) > 南からプラメアに向かってくる三人の人影は、すぐにこちらの存在に気づいた。 > 夜を徹して歩いてきたとはご苦労なことだ。空間が渡れない人間は不便なものだと、つくづく思う。 > 間合いをとって対峙する三人に、ゼロスは優雅に一礼してみせた。 >「ようこそ、お早いお着きで。よくここに真っすぐ来ましたね。迷わなかったのですか?」 >「迷うものか。理論的に考えればすぐにわかる。ここが最も時間を稼げて、なおかつ盲点になりやすい」 > ゼルガディスがそう言って剣を抜きはなった。遅れてガウリイがそれにならう。 >「それに、あんたがここにいるってことはプラメアで正解なわけだ」 >「ええ、まあそうですけどね」 > ゼロスはふわりと宙に舞った。 >「リナさんの具合もよくなってきましたので、そろそろ僕は僕の仕事に取りかかろうかと思いまして」 > ゼロスの言葉に、三人が身構える。 >「お前の仕事は何だ?」 >「リナさんを魔族に引き入れることです」 >「そんな………っ!?」 > アメリアの言葉にゼロスは薄く笑う。 >「うすうす気が付いてたんじゃないんですか? リナさんの魔力が暴走を引き起こしたときから。ま、そんなわけでして―――」 > ゼロスから殺気が吹き出してくる。 > 傲然と三人を見下ろして、ゼロスはゆっくりと告げた。 >「まず初めに、あなたがたを殺します」 > その視線がアメリア、ゼルガディスのうえをすべり、ガウリイでとまる。 > > ―――特にガウリイを殺す必要があった。 > リナを魔族にするには、〈楔〉の破壊を必須とするからだ。 > 〈楔〉とは、人間などの精神と肉体の両方を併せ持つ存在が、自然に備えている安全弁のようなものだ。 だからこの話のタイトルが『楔』なんですね。 > 人間が他者の力を借りて魔法を唱えても、魔族のように自己の存在が危うくならないのは、この〈楔〉があるおかげ。逆に、魔族は〈楔〉を持たないため、自己の存在をしっかりと把握しておかなければならない。 > この〈楔〉のために、人間に転生した魔竜王はもはや完全な魔族に戻ることは叶わなかった。彼の場合は、封印を施した水竜王の心のかけらが〈楔〉をより強固なものにしていた。 > 肉体と精神がばらばらになってしまわないために存在する―――〈楔〉。 > >「リナさんを魔族に引き入れるのに、あなたがたの存在は非常に、邪魔なんです」 > にこやかな表情のままゼロスは続ける。 にこやかに「殺します』って言われたら、怖いかも(汗) でもゼロスになら言われたいかも(・・・やっぱヤかも) > > 肉体と精神の二つを結びつけておくための〈楔〉は、やはり二つ。 > ひとつは、肉体の心臓そのもの。 > これは破壊することはできない。心臓の破壊は肉体の崩壊に直結する。破壊と同時にリナは死んでしまうだろう。いくら魔族化しているといっても、半端に人間なだけ、たちが悪い。 > だから、もうひとつの〈楔〉の方を破壊する必要がある。 > 二つ目の〈楔〉は、精神の〈楔〉。 > それは、自分に肉体があるということを微塵も疑っていない確固たる意志。本来なら、こちらも強固にできている。人間は、生まれたときから肉体を持っている以上、肉体なしに生きることなど、思いもよらないからだ。 > 自分の存在を肉体の五感で確認する人間は、肉体があることを自覚することで自分自身をも実感する。 > そして、いまのリナは肉体の感覚が稀薄になってきている。 > だが、もうひとつ重大な事実があった。 > 自己の存在の確認を他者に依存する場合、この〈楔〉は移動するのだ。 > 生きていくのに相手の存在を必要としたとき、その相手の存在そのものが〈楔〉となる。 > 現在のリナの〈楔〉がどちらの状態にあるのかは、明白。精神状態がぼろぼろのいまもなお、彼女が人間でいるということは―――― > 彼女の〈楔〉は、この目の前の青年。 > 彼さえ、殺してしまえばいい。 > そうしてしまえば、リナの魔力の肥大は心臓の〈楔〉ひとつで抑えきれるものではない。 > > ゼルガディスとアメリアがすでに呪文の詠唱に入っていることには、気づいていた。 > ゼロスは再び大地に降り立つ。 >「リナはどうした!?」 > ガウリイの言葉をゼロスは嘲笑った。 >「いまはご自分の心配をしたほうがいいんじゃないですか?」 うっ・・・明日は生物のテストが帰ってくる!(そういう心配じゃないだろ) >「魔皇霊斬!(アストラル・ヴァイン!)」 > ゼルガディスの呪文が、ガウリイの剣に赤い光をまとわせた。すぐさまガウリイが奔る。 > 正面からのガウリイの剣を錫杖によって受け流すと、力の流れを巧みに変えた第二撃がゼロスを薙ぐ。 > 舌打ちしてゼロスはガウリイから距離をおいた。それをガウリイは追う。 >「霊王結魔弾!(ヴィスファランク!)」 > 呪文が完成すると同時にアメリアは、ゼロスに向かって間合いをつめた。横からのガウリイの剣を再び錫杖で弾き返し、遅れてやってきたアメリアの拳をゼロスはふわりと後ろに下がってよける。 > そのゼロスに追いすがるガウリイが不意に横に飛んだ。ガウリイの後ろには、力ある言葉を解き放つ寸前のゼルガディス。 目も顔も運動神経も良くて、極めつけに耳までいいのかこの人は・・・(汗) >「崩霊裂!(ラ・ティルト!)」 > 蒼い光がゼロスを包み込もうとする瞬間、ゼロスの姿は消え失せる。 > ゼルガディスが舌打ちする。 > 精神世界面(アストラル・サイド)に入られた。 >「気をつけろ、どっから来るかわからん!」 > 背後からの攻撃を警戒して三人は背中あわせに立つ。ゼルガディスとアメリアの唱える呪文の詠唱だけが、夜の空気に流れ――― > 生まれでた気配にガウリイが真上をふり仰いで叫んだ。 >「上だ!」 > いち早くガウリイが逃れ、ゼルガディスがアメリアを蹴り飛ばして、自身も反動で飛びすさる。 > いままでいたその場所が、降ってきた不可視の衝撃波でえぐれて、土砂を吹き上げた。 > そこにゼロスが現れる。 >「どうしました? 逃げてばかりじゃダメですよ」 >「崩霊裂っ(ラ・ティルト)」 > ゼロスの挑発にのった形で、ゼルガディスが唱えていた呪文を解き放つ。現れた蒼い光の柱をゼロスの錫杖が断ち割った。 > ゼルガディスは唇を噛む。 > ガウリイの光の剣が失われ、なおかつリナもいないこの状況で、魔族に対抗できる精神系の呪文は崩霊裂(ラ・ティルト)しかない。 > が、それすらも軽くあしらわれている。 >「ゼロス!」 > ガウリイの怒号に、ゼロスがそっちをふり返る。 >「なんです?」 > 夜風に金髪を流して立つ青年。 > 少女の〈楔〉。 >「リナはどこだ?」 > ゼロスの顔が不快げに歪む。彼の存在がいつにも増して不愉快だった。 ゼロスがこういう表情するのって珍しいですねぇ・・・ >「だから、それよりご自分の心配のほうが先じゃないんですか? あなたたちを殺す前にリナさんをどうこうしようとは思いませんよ」 >「俺は死ぬ気ははない。だから訊いている。リナはどこだ?」 > 自分に向けられる純粋な負の感情は、なかなかのものだったが、それ以上に不愉快だった。 > もはや何の表情も見せずに、ゼロスは錫杖を横にふるった。ひゅっと風を切る音が草原に響く。 >「お遊びはここまでです。殺します」 > そう言って、ゼロスは呪を口にした。 こ・・こわひ(汗) アニメだったらここではきっとゼロスの目は開いてますね煤iΘ Θ)φ←錫杖 > > > > どれくらい、闇の中でたたずんでいたのだろう。 > 誰かに呼ばれたような気がして、リナはハッと顔をあげた。 >「だれ………?」 > 呼ばれたのではなく、どちらかというと、存在を求められたような………。 > リナは窓を開けて、暗い夜の街を見降ろした。夜風がふわりと涙で濡れたままのリナの頬を撫でていく。 > 街はしん、と静かなままで、何も変わったところは見られない。 >「ガウリイ………?」 > ぽつんとそう呟いて、不意にリナは目を見張った。 > いちばん大事なことに気がついた。 > 暗い部屋を勢い良くふり返る。 >「ゼロス!!」 > 獣神官が呼びかけに応じて現れる様子は微塵もない。 >「しまった………!」 > リナは自分の頭を壁に打ちつけたい衝動に駆られた。自分自身がこれほど頭が悪いと知ったのは今日が生まれて初めてだ。多分もっと悪いんだろう。 > ―――本当に何をやっているの、あたしは!! > 迂闊だった。自分自身にかまけて、ゼロスを自由に動けるようにしてしまうなんて! > 自分のことで手一杯で、仲間のことを、ガウリイのことを例えほんのわずかな間とはいえ、失念していた自分がゆるせなかった。 > すべて自分の迷いが生んだ結果。 > 自分のやったことはすべて自分に返ってくる。それについては依存はないが、それに大切な人たちを巻きこむのは、もう二度といやだ。 > 急がないと、また自分のせいでガウリイが傷ついてしまう。 > ゼロスが相手だと、今度こそ、取り返しがつかない。 > リナは窓から身を乗り出した。 >「どこ………!?」 > 求めている気配はすぐに見つかった。凍るような冷たい負の気配。 > もはや完全に精神世界面(アストラル・サイド)からになってしまっている自分の視覚を、これほどありがたく思ったことはなかった。 > リナは呪文を唱えて、窓からひらりと飛び降りた。 > 結局、ゼロスの言う〈楔〉が何を指すのかはわからないままだったが、ただはっきりとわかることがある。 > 自分に揺さぶりをかけるなら。 > > ―――冥王(ヘルマスター)と、同じ事をすればいいのだ。 > 同じ事ってなんでしょう?(゜°?)次回までのお楽しみってヤツですね リ:次回も見て(読んで)くんないと暴れちゃうぞ!! はうっなぜここに! しかも何勝手に宣伝してる!自分ッ!! ガウリイ達仲間の存在は、リナちゃんにとって大きいんですね。 リナちゃんの悩みが晴れたのはきっぱりと三人のおかげですし。それにリナちゃんがこうやって目的のために一生懸命がんばってると、こっちもガンバろって気持ちになります。 そろそろ終盤にさしかかってますね!どういう結末になるのでしょうか?!(わくわく) 毎回ながらすばらしい文章にうっとりしています。 本当に感動してます!!がんばってくださいね! (毎回似たようなことを言っていて、自分の文章力の無さにちょっと涙しますが本心なので許してください。) それでは、じゃ!また来ます! あんでぃでした。だっっ(逃)へ(゛゜o)パタパタ P.S ひたすら長い感想でごめんなさい(汗)読みづらいですね。 |
4770 | Re:あんでぃさんのコメント | 桐生あきや | 10/26-02:45 |
記事番号4766へのコメント >こんにちはまた来ちゃいました。あんでぃです >毎日一話ずつ着々と進んでいるのがすごいです!かんどーです! >レス書くのも、うかうかしてられないわ!がんばらなくっちゃ!! 毎回きっちりレスを返していただいて、ホント感謝感激です。 >ゼフィーリアに向かっているのですか? >ゼフィーリアにはリナの姉ちゃんがいるはず・・・ゼロス返り討ちに会っちゃいますよ?(笑) もう七章も前の話ですが(汗)、セイルーン方面のイグルーゼとゼフィーリア方面のプラメア、どっちに行くかをリナたちが相談しています。こともあろうに前も一番前のプロローグで(^^; 普通は憶えてませんよね(^^; ネタバレ的な話ですが、ゼロスはなるべく時間を稼ぎたかったんですね。んで、イグルーゼ、話の最初にいた街、プラメアのなかなら、リナたちがいた鍾乳洞からいちばん遠いプラメアに来たというわけです。わかりづらくてすいません。 >だからこの話のタイトルが『楔』なんですね。 かなり安直なネーミングですね(苦笑)。タイトルにして読み仮名をふっておけば、わざわざ読みをカッコ書きしなくていいという、非常に安直な理由からこのタイトルです。もっと考えようよ、私。 >>「いまはご自分の心配をしたほうがいいんじゃないですか?」 > >うっ・・・明日は生物のテストが帰ってくる!(そういう心配じゃないだろ) レポートの提出が迫っている!(そういう心配でもないだろ) >目も顔も運動神経も良くて、極めつけに耳までいいのかこの人は・・・(汗) これでクラゲでさえなければ………。 >> ゼロスの顔が不快げに歪む。彼の存在がいつにも増して不愉快だった。 > >ゼロスがこういう表情するのって珍しいですねぇ・・・ 珍しいですね(←なんで他人事なんだ、私)。どうしてなのかはご想像にまかせます(笑)。 >> ―――冥王(ヘルマスター)と、同じ事をすればいいのだ。 > >同じ事ってなんでしょう?(゜°?)次回までのお楽しみってヤツですね 私の説明不足ですね。リナをどうにかするにはガウリイを盾に取ればいいっていうことを言いたかったんですが………。どうも今回は言葉が足りない傾向にあるようです(反省)。 >リ:次回も見て(読んで)くんないと暴れちゃうぞ!! >はうっなぜここに! >しかも何勝手に宣伝してる!自分ッ!! いえいえ、ありがとうございます(^^)/ >ガウリイ達仲間の存在は、リナちゃんにとって大きいんですね。 >リナちゃんの悩みが晴れたのはきっぱりと三人のおかげですし。それにリナちゃんがこうやって目的のために一生懸命がんばってると、こっちもガンバろって気持ちになります。 リナとそれを演じている林原さんの姿勢って、すごく励みになるんですよね。 >そろそろ終盤にさしかかってますね!どういう結末になるのでしょうか?!(わくわく) >毎回ながらすばらしい文章にうっとりしています。 >本当に感動してます!!がんばってくださいね! >(毎回似たようなことを言っていて、自分の文章力の無さにちょっと涙しますが本心なので許してください。) 私の文章をすばらしいといってくださって、本当に嬉しいです。 私も毎回あんでぃさんがレスくださっているというのに、嬉しいとありがとうしか連発できてないです(上の行でも言っているし)。本当はもっと感謝しているんですが。 >P.S ひたすら長い感想でごめんなさい(汗)読みづらいですね。 全然、だいじょうぶです。私も長くなってしまいました。ごめんなさい。 それでは。 |
4771 | 楔―くさび― 8 | 桐生あきや | 10/26-03:10 |
記事番号4678へのコメント 草原にゼロスの呪が流れる。 それを阻止しようと、ガウリイとアメリアがゼロスへ接近戦をいどんだ。 援護しようと呪文を唱えかけて、ゼルガディスはゼロスが唱えている呪文が何なのか気がついて、声をあげた。 「まずい、さがれ!」 慌ててアメリアとガウリイが、ゼロスから距離をとる。 だがたいして離れもしないうちに、ゼロスの周囲に十数個の光球が浮かび上がった。 「暴爆呪!(ブラスト・ボム!)」 光球が弾け、光が閃く。 轟音と衝撃波、大地が煮沸するほどの熱気。 たとえ直撃はしなくとも、至近距離にいるだけで相当のダメージを喰らう。 大地に叩きつけられ、熱にあぶられながら、ようやく起きあがったゼルガディスとアメリアの視界に、すでにゼロスはいなかった。 戦慄とともに立ち上がった二人の目に入ったのは、爆発の衝撃によって体勢の崩れたガウリイに、至近距離から魔力光を放つゼロス――――! ガウリイは避けようとして、間に合わない。 アメリアは思わず目を閉じた。 生々しい肉の焦げる音。 「―――っふっざけんじゃないわよっ!!」 だが、それと共に聞こえてきた叫びは、甲高い少女の声だった。 慌てて目を開いたアメリアの視界に飛び込んできたものは―――。 膝をつくガウリイの正面に立つ、両腕を灼いたリナの姿だった。 風だけの流れる夜の街道に、沈黙が降りる。 「ふ………くくくっ」 最初にその沈黙を破り、響き渡ったのは、ゼロスの笑い声だった。小さな笑いが次第に大きな哄笑へと変わっていく。 「く、くくくっ。あははははははっ」 体を二つに折って、ひとしきり大笑いしたあと、ゼロスはようやく顔をあげて正面に立つリナを見た。 肩で呼吸を繰り返しながら、リナがその魔族の瞳をにらみ返す。 「ははっ、リナさん。やっぱり貴女はすごいです。すばらしい。もう空間を渡れるようになったんですか?」 ゼルガディスとアメリアが息を呑んだ。ガウリイはただ呆然と目の前の背中を凝視する。 リナは小さく首をふった。 そうしなければ、間に合わなかった。ガウリイは死んでいた。 考えてやったわけではない。ただ、夢中で―――。 「ゼロス………」 口を開きかけたリナの体が揺らいだ。 その体がゆっくりと大地にくずおれる。 我に返ったのはガウリイだった。リナの体を受け止めると、後ろに飛んでゼロスから距離を取る。ゼルガディスとアメリアがそこに合流した。 ゼロスが攻撃をしかけてくる気配はもはやないが、油断はできない。 空間を渡った直後、ゼロスが放った魔力光を素手で握りつぶしたリナの両手は肘のあたりまで、ほとんど炭と化してした。 アメリアが蒼白な顔で復活(リザレクション)を唱え始める。 「リナ!」 ガウリイの呼びかけに、リナはガウリイを見上げて、尋ねた。 「ガウリイ、怪我してない?」 あまりな問いかけにガウリイは絶句する。絶句するしかなかった。 そうしていると、リナは不安げな顔でガウリイに再び訊いてくる。 「どっか怪我したの?」 慌ててガウリイが首をふると、リナはほっとしたように体の力を抜いた。 「よかった………」 その表情に、再びガウリイは言葉を失う。 その一言に、この少女の輝きすべてが詰めこまれている気がした。 他人の心配をできるような怪我ではないのに。 「お前のほうこそ、腕―――」 リナは苦く笑った。 「平気よ。それに、もうあんま痛みも感じないの。よく見えないし」 それを聞いた三人の表情がこわばる。そこに、ゼロスの笑みを含んだ声が割りこんだ。 「じゃあ、後は〈楔〉を破壊するだけですね」 ガウリイの腕の中から、リナがよろめきながら立ち上がった。アメリアの復活(リザレクション)はまだ続いている。 感覚はないが、徐々に手の組織が回復してきていることはわかった。 回復の時間を稼ぐために、リナは口を開く。言っておきたいこともあった。 「そう、その〈楔〉なんだけど、結局のところ何なのかわからなかったわ。あんまモノ考えられる精神状態じゃなくてね。でも―――」 ゆっくりとリナが笑った。心からの笑みだった。 「ありがとう」 心からの言葉だった。 ゼロスがよろめいた。その表情が目に見えて引きつる。 皮肉とかそう言うレベルをはるかに超える、真っ直ぐにゼロスに向けられた感謝の念だった。 これは、かなり痛い。 おまけにどうしてこんな話の流れで笑うのかわからず、ゼロスの混乱を助長する。 そんなゼロスを見て、リナはくすっと笑った。いまだ魔族化は進行しているにもかかわらず、晴れやかな表情を見せる。 「あんたのおかげで、あたしは気づいたの。たったいま気づいたって言うほうが正しいかもしんない。あたしの望み、あたしの願い。あたしが本当にしたいことは何なのか。あたしが何を悩んでたのか。そして、あんたの言う〈楔〉が何なのか」 自分自身と向き合う勇気がいま、持てた。 ようやく、変わっていく自分と、その想いに向き合えた。 負担になりたくないと願うこと。そのための強さを望むこと。 ガウリイのかたわらに在りたいと思うこと。 全部、ガウリイへの気持ちに向き合えなかった弱い自分が起こしたこと。彼への気持ちなんか、あの呪文を唱えた瞬間にわかりきっていたことなのに。 呆れたことに、まだ認めていなかったのだ。 そして、ガウリイがどう思っているかわからなくて、怖かっただけなのだ。 いくら悩んでても、本人に訊かなければそんなことわかるはずないのに、なんてバカなんだろう。 そして、〈楔〉―――。 途切れた会話の合間を縫うように、アメリアの呪文が静かに流れる。 リナは風に流される髪をおさえた。手は元に戻りつつある。 自分の魔力が急激にふくれあがっていくのがわかる。すでに、髪はもういつもの栗色。 「別に〈楔〉が何かわかったことにたいしては、あんま感謝してないんだけどね。いまのあんたのセリフで何となく想像はつくわ。あんたの話の流れからして、〈楔〉はあたしの肉体をつなぎ止めておくために、あたしに食いこんでいる、文字通り〈楔〉よ。それだけわかれば充分だわ。 ―――あんたはあたしの迷いに便乗してあおっておく一方で、あたしの仲間に手を出した。〈楔〉を破壊するために」 先ほどの「ありがとう」がよほど効いているのか、ゼロスは黙して答えない。 「あたしはもう迷わない。あたしの〈楔〉を見つけたもの」 リナの瞳が、強い真紅の輝きを帯びる。アメリアの声がふっつりと途切れた。ゼルガディスとガウリイがゆっくりと立ち上がる。 揺らめく炎のような、戦意。 「あたしは魔族になんかならない。ガウリイは殺させない! ゼロス、あたしはあんたを許さない!」 ゼロスの紫の瞳が、すさまじい殺気のこもった視線でリナを射抜いた。 その視線を真っすぐリナは受け止める。 退いたりなど、しない。 「それでどうするおつもりですか? リナさんがどう言おうとも、貴女が魔族となりつつあることに変わりはないでしょう?」 「それでも! 足掻く前からあきらめるなんて、あたしの流儀に反するの!!」 迷いなど微塵もない表情に、ゼロスは苦々しい思いを禁じ得ない。 「しかたありませんね。貴女の目の前でガウリイさんを殺します!」 「させないっ」 叫ぶリナの背後で、ゼルガディスが呪文を解き放った。 「覇王雷撃陣!(ダイナスト・ブラス!)」 ゼロスが空間を渡って雷撃をよけ、すぐ後ろの空間に再び現れる。 「いくわよ、ガウリイ!」 「おう!」 すでに魔光霊斬(アストラル・ヴァイン)のかかっている剣を構えて、ガウリイが奔る。それを見ながらリナは呪文を唱えはじめた。 呪符(タリスマン)の力を借りなくても、いまならこの呪文は発動する。 ―――凍れる森の奥深く 荒ぶるものを統べる王 滅びを誘う汝の牙で 我らが道を塞ぎしものに 我と汝が力持て 滅びと報いを与えんことを 「獣王牙操弾!(ゼラス・ブリッド!)」 ガウリイが斬りかかるのに合わせて、光の帯がゼロスに襲いかかる。 ゼロスが舌打ちしながら、ガウリイの剣を錫杖でうち払った。短距離転移で逃れようとするが、光の帯は軌道を変えながらゼロスに迫る。 「おおおおおっ!」 ゼロスが吠えた。それとともに獣王牙操弾(ゼラス・ブリッド)の光は消滅する。 「この僕に向かってこの呪文とは、良い度胸をしてますね」 「本人だけでなく、呪文も怖いの?」 軽口をたたきながら、アメリアとゼルガディスに目配せをする。小さく二人がうなずいた。 ゼロスとの斬撃の応酬にゼルガディスが加わった。そこに、アメリアの呪文が重なる。 「―――無限より来りて裁きを今ここに! 崩霊裂!(ラ・ティルト!)」 ゼロスの姿がブレる。 「逃がさない!」 リナが叫んだ。ガウリイとゼルガディスが飛び退いて離れる。精神世界面(アストラル・サイド)が見えているリナも、呪文が発現する瞬間を察知して、ゼロスの束縛を解いた。 再びゼロスが吠えた。 蒼い光が一瞬だけゼロスを包みこむものの、やはりすぐにかき消える。 「精神世界面から攻撃しましたね。もはや何でもありですか」 にらむゼロスにリナは不適に笑った。 「たとえなんだろうと、使えるものは使うわ」 しかし、崩霊裂(ラ・ティルト)ではゼロスにはやはり決定的なダメージを与えることができない。 ―――やっぱりあれかなぁ………。 いまの自分の存在の仕方では、滅多に暴走することはない呪文だといえ、うまく制御できるかわからない。 でも、やるしかない。 「呪文を唱える時間を稼いで」 小声で三人にそう伝える。 「平気か」 何の呪文を使うのか正しく理解したゼルガディスが尋ねてくる。リナはあっさりと答えた。 「わかんないわよ、んなこと。でも、あれじゃなきゃゼロスを滅ぼせない」 「…………」 ゼルガディスは何も言わずに、ゼロスを見すえると、剣をかまえなおした。 「お願いね」 三人が、それぞれの表情でうなずいて、散開した。リナも走り出す。 ―――天空のいましめ解き放たれし 「冥壊死!(ゴズ・ヴ・ロー!)」 大地を奔る影をゼロスが錫杖で突き殺すと、その背後からガウリイが斬りかかった。 黒衣が裂けるものの、やはり高位魔族であるゼロスにはたいしたダメージを与えられない。 反撃とばかりにゼロスが不可視の衝撃波をガウリイへと放つが、横からぶつけられたゼルガディスの氷の矢(フリーズ・アロー)によってその軌道は変えられる。 そこへ、アメリアがたたみかけるように崩霊裂(ラ・ティルト)を解き放った。 ―――凍れる黒き虚無の刃よ もう何度目かの蒼い光を錫杖で断ち割って、ゼロスが声をあげた。 「何を考えているか、バレバレですよっ」 飛んできた魔力光をリナはすんでのところでよける。 ―――我が力 我が身となりて 慌てて三人がカバーに入る。 だが、一瞬の隙をついて、ゼロスの姿はかき消える。 ガウリイの剣が空しく空を切った。 ―――共に滅びの道を歩まん リナの目の前にゼロスが出現する。手のひらには魔力光。 「ガウリイさんを殺すまで大人しくしててください」 「リナさんっ」 アメリアの悲鳴のような声。 ―――神々の魂すらも………、………? 魔力光が顔を灼く寸前、突然リナが詠唱をやめた。ゼロスが怪訝な顔をする。 とまどったような表情が、一瞬だけリナの顔に浮かんで―――。 ぱぅんっ―――!! 空間が変わった。 生まれ変わった。 リナとその周囲だけ、いらない殻を脱ぎ落とすかのように、空間そのものの気配が根本から変化する。 何の前兆もなく、唐突に現れたのは、忘れようもない力の気配。 輝かしい金色。 ―――全てを生みだし、無に帰す、金色の女神がそこに立っていた。 ===================================== ご、ごめんなさい。こんなところで切るのは、私的にかなり不本意なのですが、ここで切らないと、とんでもない長さになってしまうのです。許してください。 続けて9(もしかするとエピローグ)をアップしますので、すぐさまそっちに行っていただけると、うれしいかなあ、なんて………(滝汗)。 |
4772 | 楔―くさび― 9 | 桐生あきや | 10/26-03:27 |
記事番号4678へのコメント ―――全てを生みだし、無に帰す、金色の女神がそこに立っていた。 時間がひどく遅く感じられたが、しかし全ては一瞬の出来事。 呆然とガウリイたちが見守るなかで、金色の気配をまとったリナが、かすかだが、不快げに眉をひそめた。 次の瞬間、ゼロスが苦痛の絶叫とともにリナの前から弾き飛ばされた。もんどりうって大地に倒れ、そのままその姿が消える。 ガウリイたちがそっちに気を取られた瞬間、現れたときと同じく突然、力の気配は途切れ、リナはもう元の色彩を取り戻していた。 圧倒的な金色の気配は、もはやかけらも感じられない。 目を見張ったまま、リナはぺたんと大地に座りこんだ。 それが合図だったかのように、時間が元の速度で流れ始めた。 「リナ!」 ガウリイがリナの元に駆けよる。リナに手を貸して引き起こそうとするが、リナは呆然と首をふった。脱力して立てないのだ。 「信じらんない………」 「リナ?」 「ゼロス? ゼロス、無事?」 リナは虚空に声をかけるが、返事はない。 リナは溜め息をついた。ちょっとだけ残念そうな、安堵したような複雑な表情を見せている。 「滅んだわけじゃなさそうね。よかったわね、ゼロス。アレに攻撃されて死なずにすむなんて、奇跡のなかの奇跡よ」 何か言いたそうな気配が草原に漂ったが、それだけで、ゼロスの気配はふっつりと消える。 ガウリイとゼルガディスが大きく息をついて、剣を鞘に収めた。 「リナ、立てるか?」 触ったら消えやしないかと言った表情で、ガウリイがそっとリナの手をつかんで引き起こそうとする。 その表情を見て、笑おうとしたリナの顔が急にしかめられた。 「痛っ」 「リナ!?」 慌てて傍にしゃがみこむガウリイに、リナは痛みをこらえて笑って見せた。 「ううん、平気。魔族化がストップして、体の感覚が戻ってきたから、いままで無茶した分のツケがまわってきただけよ」 我慢してはいるが、実際のところ、体中がばらばらになりそうなくらい痛かった。空間を渡ったせいだろう。 魔力光を握りつぶした両手も何だかシクシクと痛い。 情けない声でリナはアメリアを呼んだ。 「アメリア、復活(リザレクション)かけて………」 「はい」 二度目の復活が夜の草原に流れはじめる。 痛みをこらえて、リナはそっとガウリイの頬に指をのばした。 「よかった。ガウリイの顔ちゃんと見える………」 「リナ………」 「さっきまで視界がごっちゃで、何が何だかさっぱりだったのよ」 「いまは、平気か………?」 「うん、もう魔族化も止まったわ」 それを聞いたゼルガディスが憮然とした表情で、リナの前に立った。 「事情を最初っから説明しろ。わけもわからずふりまわされて気分が悪い。もう終わったのか?」 「ええ、終わったわ」 リナはゼルガディスに座るように目で合図する。ゼルガディスがアメリアの隣りに腰を降ろしたのを確認してから、リナは口を開いた。 「すべての原因は冥王の一件のからよ。金色の魔王がね、いちど混沌に戻したあたしの精神を再構成するときに、うまくいかなかったみたいなの。それであたしの肉体はだんだんと魔力に変換されちゃって、存在の在り方が魔族に近くなってったのよ。そこにゼロスの上司が目ぇつけて、魔族に引きこめってゼロスに指示を出したの。そしたらあいつはあたしが魔力を暴走させたのをいいことに、そこにつけこんで仕事をこなそうとしたってわけ」 アメリアが何やら口をはさみたそうな表情を見せるが、おとなしく復活(リザレクション)を唱えている。 ゼルガディスがそのかたわらで眉をひそめた。 「それじゃあ、闇を撒くもの(ダークスター)と戦ったときすでに―――」 「魔力は肥大してきていたわ。まさかこんな大事になるとは思わなかったから放っておいたんだけど」 ゼルガディスの目元がぴくりと動いたが、それだけで何も言わなかった。黙っていたことを叱るのは自分の役目ではないと思ったからだ。 「それじゃあ、次の質問だ。なんで急にゼロスが吹っ飛んだ?」 リナは決まり悪げに視線を泳がせた。 「………見りゃわかるじゃない、アレがまた降りてきたのよ」 「それはわかってる。だが、すぐに元のお前に戻ったし、だいたいあの呪文を唱えてはいなかっただろうが」 リナは顔をしかめた。手が痛くなかったら、返答に困ってがしがし髪をかいていたところだろう。 「わかんないわよ。向こうの都合なんか。でも、まあ………ゼロスから聞いた話で推測できることは、また気まぐれをおこしたんだろうってところかしら」 『はあ?』 思わず呪文をやめたアメリアと、ゼルガディスの声が唱和する。ガウリイは黙ってリナの背もたれになっている。 「うまく言えないんだけど、一度あたしの体にアレが降りてきたことと、再構成のときのミスのせいで、あたしとアレの間には何らかのつながりが出来ちゃったんじゃないかと思うのよ。たぶん、他の存在なんかよりもダイレクトに、あたしの様子がわかるんじゃないかな」 「贔屓にされてるってことですか?」 「………それは果てしなくヤな感じね」 アメリアの指摘にリナは呻いた。 そして、ここからは本当に推測だと前置いて、語り出す。 「で、そのあたしがアレ自身の力を借りた呪文を唱えている。そして、いつもは知らない間に微々たる力だけが引き出されているはずなのに、今回は何だかいつもより引っ張られている気がする何だろう? みたいな感じでアレはちょっと顔を出して見ることにした」 淡々と続くリナの推測に、もはやゼルガディスとアメリアは聞くのも恐ろしいといった表情で黙りこくっている。 「そしてあたしの体に降りてきてみて、自分がやった再構成のミスに気づいた。んでもってその自分のミスを良いことに、魔族ごときが、せっかく自分がわざわざ再構成してやった、いわば自分の作品にちょっかいだしてると知って、気分を害したのよ。んで、ゼロスをばっさり。あたしのミスを修正して戻っていったと、こんなところじゃないかしら。あくまで推測だけどね」 さあっと夜風が草原を吹き過ぎていった。月はだいぶ西にかたむき、そろそろ夜明けが近い。 しばらくの沈黙の後、アメリアがようやく声をあげた。 「何だって、そんな身も蓋もない話なんですかっ」 「そんなんあたしが知るかっ。だから、推測だって言ってるでしょ! だいだい呪文を途中で止めないでよ。まだ体痛いんだから」 アメリアが情けない顔になる。 「崩霊裂(ラ・ティルト)と復活の唱えすぎで、もうダメです」 「しょうがないわね。プラメアまで行って、休もうか」 ガウリイの手を借りて、リナは立ち上がる。 栗色の髪が風に流され、地に落ちる寸前の月光を受けて金色に縁取られる。そのなかでリナが、笑(え)んだ。 「心配かけてごめんね、みんな」 三人はそれぞれの表情で、それに応えた。 |
4775 | うふふふ(はぁと) | karin | 10/26-12:25 |
記事番号4772へのコメント 桐生あきやさんは No.4772「楔―くさび― 9」で書きました。 おひさしぶりです。karinです。もうこんな所まで・・・ おわっちゃいやんv(おひ・・・) というわけで感想でーす。 > > > > ―――全てを生みだし、無に帰す、金色の女神がそこに立っていた。 L様登場!!な、なんで?? L:あたしが出てきちゃ行けないって言うのあんたは!! そういう意味でいったんぢゃあないけど・・・ > > > 時間がひどく遅く感じられたが、しかし全ては一瞬の出来事。 > 呆然とガウリイたちが見守るなかで、金色の気配をまとったリナが、かすかだが、不快げに眉をひそめた。 なにするの?! > ガウリイたちがそっちに気を取られた瞬間、現れたときと同じく突然、力の気配は途切れ、リナはもう元の色彩を取り戻していた。 早い!!こんなのカールルイスもぬけないわ!! L:あんたいったい何に感心してるのよ!! うふvそれは、ひ・み・つだよ > 圧倒的な金色の気配は、もはやかけらも感じられない。 (ぼそ)L様こわいからね。 L:なんかいった? いいえ・・・ >「信じらんない………」 >「リナ?」 >「ゼロス? ゼロス、無事?」 > リナは虚空に声をかけるが、返事はない。 > リナは溜め息をついた。ちょっとだけ残念そうな、安堵したような複雑な表情を見せている。 >「滅んだわけじゃなさそうね。よかったわね、ゼロス。アレに攻撃されて死なずにすむなんて、奇跡のなかの奇跡よ」 リナやさしいなあ。でも、奇跡の中の奇跡はホントだね。 > ガウリイとゼルガディスが大きく息をついて、剣を鞘に収めた。 >「リナ、立てるか?」 > その表情を見て、笑おうとしたリナの顔が急にしかめられた。 今度は何!! >「ううん、平気。魔族化がストップして、体の感覚が戻ってきたから、いままで無茶した分のツケがまわってきただけよ」 ツケって・・・・ >「事情を最初っから説明しろ。わけもわからずふりまわされて気分が悪い。もう終わったのか?」 >「ええ、終わったわ」 > リナはゼルガディスに座るように目で合図する。ゼルガディスがアメリアの隣りに腰を降ろしたのを確認してから、リナは口を開いた。 >「すべての原因は冥王の一件のからよ。金色の魔王がね、いちど混沌に戻したあたしの精神を再構成するときに、うまくいかなかったみたいなの。それであたしの肉体はだんだんと魔力に変換されちゃって、存在の在り方が魔族に近くなってったのよ。そこにゼロスの上司が目ぇつけて、魔族に引きこめってゼロスに指示を出したの。そしたらあいつはあたしが魔力を暴走させたのをいいことに、そこにつけこんで仕事をこなそうとしたってわけ」 リナを魔族に引き込む機会なんて1度にあるかないかぐらいだもんね。 >「それじゃあ、闇を撒くもの(ダークスター)と戦ったときすでに―――」 >「魔力は肥大してきていたわ。まさかこんな大事になるとは思わなかったから放っておいたんだけど」 あの時からなのね〜(‘‘) >「それじゃあ、次の質問だ。なんで急にゼロスが吹っ飛んだ?」 >「………見りゃわかるじゃない、アレがまた降りてきたのよ」 >「それはわかってる。だが、すぐに元のお前に戻ったし、だいたいあの呪文を唱えてはいなかっただろうが」 >「わかんないわよ。向こうの都合なんか。でも、まあ………ゼロスから聞いた話で推測できることは、また気まぐれをおこしたんだろうってところかしら」 >『はあ?』 ふつう、こんなことできるのは、リナぐらいだな。byガウリイ >「うまく言えないんだけど、一度あたしの体にアレが降りてきたことと、再構成のときのミスのせいで、あたしとアレの間には何らかのつながりが出来ちゃったんじゃないかと思うのよ。たぶん、他の存在なんかよりもダイレクトに、あたしの様子がわかるんじゃないかな」 >「贔屓にされてるってことですか?」 >「………それは果てしなくヤな感じね」 あたしもいやだなそりは・・・ >「で、そのあたしがアレ自身の力を借りた呪文を唱えている。そして、いつもは知らない間に微々たる力だけが引き出されているはずなのに、今回は何だかいつもより引っ張られている気がする何だろう? みたいな感じでアレはちょっと顔を出して見ることにした」 簡単に顔だすなよ・・・ > 淡々と続くリナの推測に、もはやゼルガディスとアメリアは聞くのも恐ろしいといった表情で黙りこくっている。 危なさすぎ!! >「そしてあたしの体に降りてきてみて、自分がやった再構成のミスに気づいた。んでもってその自分のミスを良いことに、魔族ごときが、せっかく自分がわざわざ再構成してやった、いわば自分の作品にちょっかいだしてると知って、気分を害したのよ。んで、ゼロスをばっさり。あたしのミスを修正して戻っていったと、こんなところじゃないかしら。あくまで推測だけどね」 ミスって・・おひ・・・・ >「何だって、そんな身も蓋もない話なんですかっ」 >「そんなんあたしが知るかっ。だから、推測だって言ってるでしょ! だいだい呪文を途中で止めないでよ。まだ体痛いんだから」 リナが知っていたら苦労はしないです!!byアメリア > ガウリイの手を借りて、リナは立ち上がる。 > 栗色の髪が風に流され、地に落ちる寸前の月光を受けて金色に縁取られる。そのなかでリナが、笑(え)んだ。 >「心配かけてごめんね、みんな」 > 三人はそれぞれの表情で、それに応えた。 きゃあ〜!!もうエピローグですか? 早すぎです〜!! リナ:あんたが遅いだけでしょうが!! 全員:そう(だ)(です) うっ・・・まあ暗い話はおいといて、 とっても読み応えがあり、シリアスもあってよかったですぅ!! これがおわってもほかのも書いて下さいね!(わがまま) それでわ〜 |
4783 | あの人(?)がなぜここにっ!! | あんでぃ | 10/26-20:52 |
記事番号4772へのコメント 桐生あきやさんは No.4772「楔―くさび― 9」で書きました。 > こんにちは、ほんとーにそろそろ終盤ですね。しかも今回は一気にふたつもお話が進んでるじゃあないですか!!学校行く前にちょっと見ていこうかなって時にすごくビックリでした! それでは、またまたレス書かせていただきまーす。 > > > ―――全てを生みだし、無に帰す、金色の女神がそこに立っていた。 ぎゃー!なんかすごいことになってるぅー!? L様登場!?プロローグの時にはまったく予想できない展開に!! > > > 時間がひどく遅く感じられたが、しかし全ては一瞬の出来事。 > 呆然とガウリイたちが見守るなかで、金色の気配をまとったリナが、かすかだが、不快げに眉をひそめた。 > 次の瞬間、ゼロスが苦痛の絶叫とともにリナの前から弾き飛ばされた。もんどりうって大地に倒れ、そのままその姿が消える。 ぎゃっ!痛いよ―う(泣) > ガウリイたちがそっちに気を取られた瞬間、現れたときと同じく突然、力の気配は途切れ、リナはもう元の色彩を取り戻していた。 > 圧倒的な金色の気配は、もはやかけらも感じられない。 > 目を見張ったまま、リナはぺたんと大地に座りこんだ。 リナちゃんギガ・スレ唱えてないよねぇ?どうしてでしょうか? > それが合図だったかのように、時間が元の速度で流れ始めた。 >「リナ!」 > ガウリイがリナの元に駆けよる。リナに手を貸して引き起こそうとするが、リナは呆然と首をふった。脱力して立てないのだ。 >「信じらんない………」 >「リナ?」 >「ゼロス? ゼロス、無事?」 > リナは虚空に声をかけるが、返事はない。 > リナは溜め息をついた。ちょっとだけ残念そうな、安堵したような複雑な表情を見せている。 >「滅んだわけじゃなさそうね。よかったわね、ゼロス。アレに攻撃されて死なずにすむなんて、奇跡のなかの奇跡よ」 > 何か言いたそうな気配が草原に漂ったが、それだけで、ゼロスの気配はふっつりと消える。 ゼロス君生きてて良かったね!!(魔族にこんな事言っちゃダメかも) しかし(汗)これでゼロス君はゼラスさまにお仕置き決定?(合掌) > ガウリイとゼルガディスが大きく息をついて、剣を鞘に収めた。 >「リナ、立てるか?」 > 触ったら消えやしないかと言った表情で、ガウリイがそっとリナの手をつかんで引き起こそうとする。 > その表情を見て、笑おうとしたリナの顔が急にしかめられた。 >「痛っ」 >「リナ!?」 > 慌てて傍にしゃがみこむガウリイに、リナは痛みをこらえて笑って見せた。 >「ううん、平気。魔族化がストップして、体の感覚が戻ってきたから、いままで無茶した分のツケがまわってきただけよ」 > 我慢してはいるが、実際のところ、体中がばらばらになりそうなくらい痛かった。空間を渡ったせいだろう。 空間渡るのってやっぱ痛いんか・・・私はそうでもないからもうちょっと修行すれば大丈夫だよ、きっと(←爆弾発言) リ:つーかあんた何者!? それは秘密です 狽пi^▽^) > 魔力光を握りつぶした両手も何だかシクシクと痛い。 > 情けない声でリナはアメリアを呼んだ。 >「アメリア、復活(リザレクション)かけて………」 >「はい」 > 二度目の復活が夜の草原に流れはじめる。 > 痛みをこらえて、リナはそっとガウリイの頬に指をのばした。 >「よかった。ガウリイの顔ちゃんと見える………」 >「リナ………」 >「さっきまで視界がごっちゃで、何が何だかさっぱりだったのよ」 >「いまは、平気か………?」 いえーい!らーぶらぶぅー(はあと) >「うん、もう魔族化も止まったわ」 > それを聞いたゼルガディスが憮然とした表情で、リナの前に立った。 >「事情を最初っから説明しろ。わけもわからずふりまわされて気分が悪い。もう終わったのか?」 >「ええ、終わったわ」 それじゃあ私の活躍は?! リ:そんなものは最初から用意されてないし。 ちえっ・・・(  ̄b > リナはゼルガディスに座るように目で合図する。ゼルガディスがアメリアの隣りに腰を降ろしたのを確認してから、リナは口を開いた。 さりげないらぶらぶモード? >「すべての原因は冥王の一件のからよ。金色の魔王がね、いちど混沌に戻したあたしの精神を再構成するときに、うまくいかなかったみたいなの。それであたしの肉体はだんだんと魔力に変換されちゃって、存在の在り方が魔族に近くなってったのよ。そこにゼロスの上司が目ぇつけて、魔族に引きこめってゼロスに指示を出したの。そしたらあいつはあたしが魔力を暴走させたのをいいことに、そこにつけこんで仕事をこなそうとしたってわけ」 > アメリアが何やら口をはさみたそうな表情を見せるが、おとなしく復活(リザレクション)を唱えている。 アメリアの代わりに言います!! 「そんなの悪ですっ」 > ゼルガディスがそのかたわらで眉をひそめた。 >「それじゃあ、闇を撒くもの(ダークスター)と戦ったときすでに―――」 >「魔力は肥大してきていたわ。まさかこんな大事になるとは思わなかったから放っておいたんだけど」 > ゼルガディスの目元がぴくりと動いたが、それだけで何も言わなかった。黙っていたことを叱るのは自分の役目ではないと思ったからだ。 >「それじゃあ、次の質問だ。なんで急にゼロスが吹っ飛んだ?」 > リナは決まり悪げに視線を泳がせた。 >「………見りゃわかるじゃない、アレがまた降りてきたのよ」 >「それはわかってる。だが、すぐに元のお前に戻ったし、だいたいあの呪文を唱えてはいなかっただろうが」 > リナは顔をしかめた。手が痛くなかったら、返答に困ってがしがし髪をかいていたところだろう。 >「わかんないわよ。向こうの都合なんか。でも、まあ………ゼロスから聞いた話で推測できることは、また気まぐれをおこしたんだろうってところかしら」 >『はあ?』 気まぐれな方ですからね。 でも、そんなところが王様っぽいですよね。 > 思わず呪文をやめたアメリアと、ゼルガディスの声が唱和する。ガウリイは黙ってリナの背もたれになっている。 この辺りもらぶらぶだー(はあと) >「うまく言えないんだけど、一度あたしの体にアレが降りてきたことと、再構成のときのミスのせいで、あたしとアレの間には何らかのつながりが出来ちゃったんじゃないかと思うのよ。たぶん、他の存在なんかよりもダイレクトに、あたしの様子がわかるんじゃないかな」 >「贔屓にされてるってことですか?」 >「………それは果てしなくヤな感じね」 果てしなく!?言い過ぎッ!でも気持ちはわかります・・・ > アメリアの指摘にリナは呻いた。 > そして、ここからは本当に推測だと前置いて、語り出す。 >「で、そのあたしがアレ自身の力を借りた呪文を唱えている。そして、いつもは知らない間に微々たる力だけが引き出されているはずなのに、今回は何だかいつもより引っ張られている気がする何だろう? みたいな感じでアレはちょっと顔を出して見ることにした」 > 淡々と続くリナの推測に、もはやゼルガディスとアメリアは聞くのも恐ろしいといった表情で黙りこくっている。 >「そしてあたしの体に降りてきてみて、自分がやった再構成のミスに気づいた。んでもってその自分のミスを良いことに、魔族ごときが、せっかく自分がわざわざ再構成してやった、いわば自分の作品にちょっかいだしてると知って、気分を害したのよ。んで、ゼロスをばっさり。あたしのミスを修正して戻っていったと、こんなところじゃないかしら。あくまで推測だけどね」 リナちゃんが作品!! でもそれだったら最高傑作ですよね!! リ:当然でしょ!聞くまでも無い事言わないでよ!! > さあっと夜風が草原を吹き過ぎていった。月はだいぶ西にかたむき、そろそろ夜明けが近い。 > しばらくの沈黙の後、アメリアがようやく声をあげた。 >「何だって、そんな身も蓋もない話なんですか! >「そんなんあたしが知るかっ。だから、推測だって言ってるでしょ! だいだい呪文を途中で止めないでよ。まだ体痛いんだから」 > アメリアが情けない顔になる。 >「崩霊裂(ラ・ティルト)と復活の唱えすぎで、もうダメです」 >「しょうがないわね。プラメアまで行って、休もうか」 > ガウリイの手を借りて、リナは立ち上がる。 > 栗色の髪が風に流され、地に落ちる寸前の月光を受けて金色に縁取られる。そのなかでリナが、笑(え)んだ。 すごく神秘的な感じ!! >「心配かけてごめんね、みんな」 > 三人はそれぞれの表情で、それに応えた。 この辺が三人の微妙に違う愛情表現ですね。 うまいです! > > 次はいよいよエピローグですか? リナちゃんが人間に戻ってよかったぁー(T_T) これでご飯もおいしく食べられるってもんですねっ!! あーお腹すいてきたかも・・・ 次回も楽しみにさせていただきます!! それじゃあまた来ますっ!!がんばって下さいね! それ逃げろーッ!パタパタ・・・・・ |