◆−鉄鎖 (前編)−一坪(10/30-07:54)No.4819
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4819鉄鎖 (前編)一坪 E-mail 10/30-07:54

死。
私は死に恐怖する。
いや、そうだろうか?
私は死を望んでいるのかもしれない。
死とは開放ではないか?
この苦痛から逃れる確実な方法が死ではないだろうか?
いや、違う。
私はまだ死にたくはない。
生への執着。
こんな絶望的な状況でも、私はまだ生を望んでいる。
これは本能だ。
逆らう必要はない。

私は気を取り直すと冷静に現状を把握する。
今、私は暗く狭い小屋の中にいる。
小屋の外は木が茂り、その先には大きな屋敷がある。
そう。私は周囲の状況を知っている。
そして屋敷の中に入れれば助かる方法が見つかることも知っている。
小屋から屋敷までは近い。
だが、その近さが私を追いつめる。
すぐそこに私が助かる方法がある。
それは事実だ。
屋敷に入れさえすればいい。
簡単だ。
だが、それは絶対に不可能だ。
この鉄鎖のせいで。

鉄鎖。
鉄の輪を繋いだだけのもの。
単純な構造。
しかしけっして引き千切れないもの。
噛み切ることも出来ないもの。
私に絶望を与えるに充分なもの……。



……この状況で私が出来ることは分かっている。
1つしかない。
助けを求めて叫ぶこと。
これだけだ。
だから私は叫ぶ。
無駄だと知りつつも。

……………………………………。

私は自嘲する。
もう何回同じ事をくり返しただろうか?
死への恐怖。
死への羨望。
生への執着。
そして、生への足掻き。
現実は何も変わっていない。

そう思っていた。
だが、現実は変わっていた。
私にはもう叫ぶ力さえ残っていなかったのだ。
私は確実に消耗し、確実に死に近づいていたのだ。

だが、もうどうでもいいことだ。
今は終焉を待つだけだ。
それでいい。
そうだ。
それでいい。
それでいい。
それでいい。
それでいい。
それでいい。
それでいい。
それでいい。

その時、私は確かに聞いたのだ。

                   (つづく)

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4820鉄鎖 (後編)一坪 E-mail 10/30-08:06
記事番号4819へのコメント
その時、私は確かに聞いたのだ。

「シロごめーーん! 帰り遅くなっちゃった。
 お腹空いたでしょ? すぐエサ持ってくるからね。」


私は助かったのだ。
               (完)


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というわけで一坪です。
人に『著者別作品リスト』に登録しろと言っておきながら、
自分が載せないのもなんなので投稿してみました。
早く過去の記事に落ちてほしいものです。


で、これは何かというと、今年私が出した年賀状です。
どこが年賀状?と思われるでしょうが、事実なのであきらめてください。
なんでこんなのかと言うと、今年の年賀状は2枚組だったからです。
まず元旦に1枚目が届いて、数日後に2枚目が届くというやつでした。
そんなわけで、できるだけ続きが気になる内容にしようとこうなりました。
正直、文はどうでもよかったんですが。
あ、なるべく正月らしくない内容にしたかったってのはありました。
詳しく知りたい奇特な人は『イラストギャラリー』に年賀状が載ってます。



では、『著者別作品リスト』の登録の方、よろしくお願いします。