◆−お久しぶりですvv−ねんねこ(2/13-01:01)No.5648
 ┣THE DAY OF JUDGMENT   prologue−ねんねこ(2/13-01:03)No.5649
 ┃┣復活おめでとう〜♪−雫石彼方(2/13-03:51)No.5650
 ┃┃┗ゼルガディス復活の兆し……か?−ねんねこ(2/13-11:54)No.5654
 ┃┗祝・投稿再開−桐生あきや(2/13-07:07)No.5652
 ┃ ┗情け容赦ない彼女も好きVv−ねんねこ(2/13-12:04)No.5655
 ┣THE DAY OF JUDGMENT 1−ねんねこ(2/13-11:49)No.5653
 ┃┗で、出遅れた(汗)。−水晶さな(2/14-00:06)No.5663
 ┃ ┗全然オッケーですよん(><)−ねんねこ(2/14-14:49)No.5673
 ┣THE DAY OF JUDGMENT 2−ねんねこ(2/14-01:06)No.5665
 ┃┗ヴァレンタイン家万歳!!(><)−雫石彼方(2/14-02:29)No.5669
 ┃ ┗お笑い一家か!?(爆)−ねんねこ(2/14-14:59)No.5674
 ┣THE DAY OF JUDGMENT 3−ねんねこ(2/16-00:57)No.5702
 ┃┗アイムソーリー、アイムレイト。−せりあ(2/16-16:02)No.5703
 ┃ ┗ドントマインド、センキューフォーメッセージ。−ねんねこ(2/17-00:52)No.5708
 ┣THE DAY OF JUDGMENT 4−ねんねこ(2/17-00:43)No.5706
 ┃┣ああんここにもうさリュックがVv−雫石彼方(2/17-02:20)No.5709
 ┃┃┗クーちゃんが夜なべをして〜♪−ねんねこ(2/18-03:12)No.5716
 ┃┗姫の家出用リュック♪−桐生あきや(2/17-18:14)No.5713
 ┃ ┗そしてゼルがまた慌てて探すという(笑)−ねんねこ(2/18-03:20)No.5717
 ┣THE DAY OF JUDGMENT 5−ねんねこ(2/18-03:04)No.5715
 ┃┣とーとーレスの勇気がっ!−あごん(2/18-19:47)No.5719
 ┃┃┗さあようこそねんねこわーるどへ(爆)−ねんねこ(2/19-10:39)No.5730
 ┃┗親戚再び(笑)−雫石彼方(2/19-14:06)No.5732
 ┃ ┗実は生き別れの姉妹だったり(爆)−ねんねこ(2/19-14:58)No.5734
 ┣THE DAY OF JUDGMENT 6−ねんねこ(2/19-14:46)No.5733
 ┃┗お久し振りっす〜−ゆっちぃ(2/21-00:33)NEWNo.5754
 ┃ ┗今メール送りました(汗)−ねんねこ(2/21-00:44)NEWNo.5756
 ┃  ┗をを、来てる来てる(笑)−ゆっちぃ(2/21-00:58)NEWNo.5758
 ┃   ┗でしょでしょ?(笑)−ねんねこ(2/21-09:57)NEWNo.5760
 ┣THE DAY OF JUDGMENT 7−ねんねこ(2/21-10:41)NEWNo.5761
 ┃┗ねんねこさぁぁぁぁぁん!−九条みすず(2/21-17:49)NEWNo.5762
 ┃ ┗みすずさぁぁぁぁぁん!(笑)−ねんねこ(2/21-20:03)NEWNo.5763
 ┗THE DAY OF JUDGMENT 8−ねんねこ(2/22-03:02)NEWNo.5779
  ┗重い想い。−あごん(2/22-05:12)NEWNo.5780
   ┗上手い!座布団1枚!(爆)−ねんねこ(2/22-13:31)NEWNo.5783


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5648お久しぶりですvvねんねこ E-mail URL2/13-01:01


ふっかぁぁぁぁぁつっ!
というわけでねんねこです。
HPの更新もとりあえず軌道に乗ってきたので、投稿再開しようと思います。
ねんねこを知らない方は、とりあえず、著作別の方でひょろっとツリー作っているので、そちらの方を読んでからの方がいいと思います。オリキャラが堂々と行動している部分が多々ある(というかほとんど)ので。
とりあえず、初っ端からくそ長い長編なんですが。長編を書くのが久しぶりなので、最初は書き直したいほどの駄文なのですが(でも書き直すほどの余裕なし)。
しかも、本来はオリジナルの方で書くはずだったのに、書き始めようとした直前に発売された某有名ゲームソフトとかなり似た部分があって、書くのを断念したといういわくつきの話です(笑)
何のゲームか、読み進めていくうちにわかると思いますので、「ああ、ねんねこも大変だったんだなー」と笑い飛ばしてあげて下さい。
とりあえず、できうる限りの努力は尽くしたつもりなので、少しでもお楽しみいただけたら幸いです。
また、新年早々、皆様にご迷惑・ご心配かけるような投稿をしてしまって申し訳ありませんでした。レスをつけて下さった皆様、本当にありがとうございました。本当はレスをつけたかったのですが、感慨にふける暇もなく受験シーズン到来で、気がついたらツリー自体が落ちていたという状態でして……この場をお借りしてお礼申し上げます。
さて、長くなりましたが、この辺で。

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5649THE DAY OF JUDGMENT prologueねんねこ E-mail URL2/13-01:03
記事番号5648へのコメント


  THE DAY OF JUDGMENT  -SENTENCE 0-


「ねえゼルガディスさん……本当にこっちで良いんですか?」
 真っ暗な洞窟の中、疲れた表情で言ってきたアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンに先頭を歩いていたゼルガディス=グレイワーズはきっぱりと言ってきた。
「俺の経験と勘を信じろ!」
「……お前の腐った勘じゃ余計信じられないじゃんか……」
「なんか言ったか? クー」
「いえ、なんにも」
 半眼で睨まれてクラヴィス=ヴァレンタインは肩をすくめてぽつりと呟いた。
「オレってばなにやってんだか……」


 始まりは、くその役にも立たない獣神官のこんな言葉からだった。
「実はこの先に魔道書が眠る遺跡洞窟があるんですよね」
 その言葉に真っ先に飛びついたのは、言うまでもなくゼルガディスだった。
 ロックゴーレムとブロウデーモンとのキメラにされた己の身体を戻すため、日々旅を続ける彼にとって、魔道書、とか異世界黙示録の写本、なんぞという言葉は見逃してはならない言葉なのだ。
 だが、すぐさまゼロスの話に飛びつくゼルガディスとは反対に彼と共に旅をするアメリアとクラヴィスの反応は実に冷たいものだった。
「……またですか、クラヴィスさん」
「またなんですよ、アメリアちゃん」
『……はあ』
 うんざりとした顔で呟きあって、アメリアとクラヴィスは同時に重い息を吐いた。
 その様子にゼルガディスが顔をしかめる。
「やる気なさそうだなおい」
「……まあ、ねえ」
 ゼルガディスの言葉にアメリアが視線を外して言ってくる。隣にいたクラヴィスもこくこく頷いた。
「ゼロスに紹介された魔道書で役に立つのがいったい何個あった―――というか、解読までいたったのが何回あった?」
 腰まである長い黒髪を後ろで束ねるようなしぐさをしながらクラヴィスはその宝石のような翠色の瞳をいつものように微笑んでいるゼロスへと向ける。
「お前もいい加減ゼルガディスを餌にするのやめたらどうだ?
 こぉぉぉぉんないかにも見た目マズそーなクソガキの負の感情食べたって面白くともなんともないだろ?」
「ええまあそれはそうなんですけれど―――」
 困ったような顔をしてみせながら、ゼロスは頬を掻いた。
「……僕が知る限り、一番小さなことで怒り易いんですよね、ゼルガディスさん」
「要するに短気ってことですね」
 好き勝手なことを言う三人にゼルガディスがこめかみを引きつらせながら立ち上った。
「お前らなぁっ!」
『ほら怒った』
 同時に言われ、しかも同時に指を差されて、彼は小さくうめいてゆっくりと席に戻った。無言で足を床にだんだんと打ちつける。
 その様子を見て、アメリアがぽつりと呟く。
「……またゼロスさん喜ばせるようなことして……」
「まあ、今回はゼルガディスさんにいつもお食事ごちそうになっているお礼としての情報提供ですよ。
 僕としても、仕事とはいえあんな変な魔術しか載っていないような魔道書、燃やすのは面倒くさいですしねぇ」
 肩をすくめて言ってくるゼロスにゼルガディスが目を輝かせる。
「だから行こう! 今すぐ行こう!」
「……お前な」
 さっきの怒りも収まったのか、扉の方を指差しながら言ってくる。その姿を半眼で睨みつけながらクラヴィスがうめく。
「その魔道書がお前に役立つかどうかもわかんないんだぞ? 骨折り損、ってこともありえるし」
「いいや、そんなことは絶対無い」
「やけに自信あるんだな?」
「ああ。俺の直感が絶対役に立つって言ってるからな」
「………………」
 無意味に拳を握り締めて言ってくるゼルガディスに唖然とした表情をしながらクラヴィスは何も言えずに口を半開きにした。
「……すみません。ちょっとこの頃ゼルガディスさん疲れているらしいんです……」
 額に浮かびまくった汗をハンカチで拭きながらアメリアはぽつりと呟いた。



 まあ、魔道書が洞窟内にあるということは、その洞窟が以前魔道士に研究所として使われていた、ということで。
 研究所として使われていたことは、防犯対策もしっかりとしてあったことで。
 防犯対策といって想像するありきたりなものの中にアンデッドというものがいたりするわけで。
『にょをををををををををををををっ!?』
 突然、奥から奥から沸いてきたアンデッドの大軍にとりあえず、ゼルガディスとクラヴィスは仰け反った。人間、モンスター相手ならともかく、死んで腐りまくった人間など戦う相手としては反則である。
「邪魔ですっ!」
 大量のゾンビを前に逃げ腰になりかけている情けない男どもの背中を蹴り倒し、アメリアが前に出る。唱えておいた呪文を一気に解き放つ。
「メギド・フレアっ!」
 突き出した両手から光があふれ、その光に触れたゾンビが次々と消滅していく。腐りかけの死体を操っていた亡霊たちが浄化され、残ったのは、その器――ただの死体に成り果てたものだけ。
 ゼルガディスの背中に片足を乗せて――先程彼女に蹴り倒されたのはどうやらゼルガディスの方だったらしい――アメリアがふう、と息を吐いてくる。
「……アメリア、足、退けてくれ……」
「あ、ごめんなさい」
 謝りながらアメリアは足を退かした。起き上がろうとしたゼルガディスの背中に今度はそのまま両膝立ちする―――ご丁寧に軽く飛び跳ねて。
 ぼぎ。
「うにょわろぉぉぉぉぉっ!?」
 間違いなく何かが折れたようなそんな鈍い音が響き渡る。両手と両膝を突いた状態でいきなり不意打ちで無防備な背中に全体重をかけられたのだ。背骨が変な音を立てるのは当然のことで、ゼルガディスはそのまま背中にアメリアを乗っけたままへろへろぽてりとうつ伏せに倒れ込む。
 にっこりと微笑みながらアメリアが言ってくる。
「さっき逃げようとしましたよね♪ 駄目じゃないですか。ゼルガディスさんのためにこんなところまで来てるのに(はぁと)」
「…………」
 ほとんど魂が抜けた状態で、伸びているゼルガディスとその様子の一部始終を見ていたクラヴィスが思ったことはまったく一緒だった。
『アメリアを怒らせない方が良い』



「ご苦労さまです。大変だったでしょう」
 何とか辿り着いた最奥部の広間の中央、佇んでいたのは、年がら年中にこやか笑顔の黒い神官だった。
 彼の姿を認めた途端、ゼルガディスの後ろに立っていたアメリアとクラヴィスが深いため息を吐いた。
 この後、いったいどういう展開になるのか、彼らは知っている。
 何度繰り返されたかわからないほど――もはや数える気にもなれないほど――やっているのだ。
 ゼロスは必ず右手に目当ての魔道書を持っていて―――
『お探しの魔道書、これですよね』
 ゼロスの声と、なぜか響き渡るゼルガディスを除いた2人の声。
 とりあえず、その場に深い沈黙がおりる。
「……お前ら……」
 少しばかり驚いた口調でゼルガディスが呟いてくる。
「なんでゼロスの言葉がわかったんだ?」
「なんでって……いつもあの台詞じゃないですか。ユーモアの欠片も何もない魔族らしー短絡的な台詞」
「いえあのそこまで言われるとさすがに僕でも傷ついちゃったりするんですけれど……」
 呆れ返ったアメリアの言葉が聞こえたのか、ゼロスが言ってくるが無論無視。
 ゼルガディスは困ったようにあごに手をやり、首を傾げる。
「……そうだったか? いや、最近辛いことはすっぱり忘れてしまおうと言う意識が働いてか俺の中でゼロスの存在消滅しかけてるんだが。というかそのまま存在消滅してくれっくらい」
 ゼルガディスの台詞も聞こえたのか、ゼロスは半眼で睨みつけるが、やはり無視。
「まあまあお前ら。少しはゼロスの気持ちも察してやれよ」
 黙っていたクラヴィスが年長者らしい台詞を言ってくる。
「ヘルマスターとカオスドラゴンが滅んでとりあえず5本の指に入る高位魔族になったとは言えしょせん中間管理職。ただのしがない雑務処理係。
 そぉぉんな奴に気のきいた台詞を期待しようというのは酷なこったろ?」
「ううう……フォローどころか突き刺さる言葉ばっかり……」
 ついに泣き始めるゼロスにすかさずゼルガディスが根性悪魔族との距離を縮める。
「隙ありっ!」
 素直に真正面から攻めていっても、上手くかわされるだけである。手慣らしのジャブ程度の精神攻撃をしておいて隙を見せたところで一気に奪い返そうと考えていたのだ。
 近づいてくるゼルガディスにゼロスはきょとん、とした顔で魔道書を見て、無造作にそれを手から離す。それから小さく指を鳴らし―――
 ぼっ。
 ゼロスの手から落ちたいかにも古そうな魔道書は、無機質な音を立てて水蒸気と二酸化炭素を生成する―――要するに一瞬にして灰になったわけだが。
 それを見て、ゼルガディスが絶叫した。
「にょわぁぁぁぁぁぁぁっ!? てめ何しやがるっ!? ていうか今回は燃やさないって言ってたろーにっ!」
「自然発火」
「んなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 ゼルガディスの絶叫と同時に発動する大爆発にゼロスの姿が掻き消える。魔族に精霊魔術が効かないことはゼルガディス自身もわかっているので、それでも毎回同じ風に派手な火炎系の魔術を放つのはおそらくうっぷん晴らしなのだろう―――同伴者としてはひたすら迷惑な話だが。
 肩で荒い息を吐くゼルガディスを遠くから眺めて――術に巻き込まれないように避難したのだ――虚ろな瞳でクラヴィスが呟いてくる。
「学習能力ゼロ。再起不能じょーたい。のーみそにカビ生えたんじゃないか……?」
「……この際、頭かち割って中身見てみます?」
 やはり、避難していたアメリアもぽつりと呟き、2人は同時に嘆息した。



「あれ?」
 いじけて地面に『の』の字を書くゼルガディスを無視して、とりあえずアメリアとクラヴィスは、まるでごみ置き場に山積みされたごみのように放置されていた財宝を漁っていた。そんな中、声をあげたアメリアにクラヴィスが近くに寄っていく。
「どした? アメリアちゃん」
「いえ、なんか地図みたいのがあって……何の地図ですかね?」
「地図? どれどれ見せて……んー、これは……なんかの魔道書の場―――」
「ちょっと貸せ」
 クラヴィスの言葉が中途半端なうちにいつのまにか完全復活を果たしていたゼルガディスが横らその地図を奪う。
 半眼で睨みつけてくるクラヴィスをあっさり無視して、その場に腰掛けると、ふうむ、とうめきながら地図を見る。
 だいぶ古い地図。300年――いや500年ほど昔のものか。ところどころのインクがかすれて解読不能だが、おおかたの部分は読み取れる。
「なんて書いてあるんですか?」
 興味深そうに尋ねてくるアメリアに彼は、その地図の端に書かれた文字を指でなぞりながら読み上げていく。
「……最初の方が読めないんだが……『解き放つ時、汝の願いを叶えたまう』て書いてある」
「お願いごと叶えてくれるんですか」
「まあ、そうらしい」
 ゼルガディスの言葉にアメリアがにっこり笑って、ぱん、と胸の辺りで手を叩く。
「じゃあ、お願いすれば、ゼルガディスさんの身体を元に戻せるかもしれないですね」
「なんか胡散臭そうだけどなぁ……なあ、ゼル―――ゼル?」
『人の願いを叶える』という変なキャッチセールスのチラシによく書いてありそうな言葉ほど信用できないものはない。それに『解き放つ時』という言葉の意味もわからない。
 横からぽつりと呟いて、クラヴィスがゼルガディスに同意を求めた。が、2人に背を向けるゼルガディスから返事はなかった。
 代わりに聞こえてきたのは、不気味なほどの含み笑い。
「………ふ、ふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「ぜ、ゼルガディスさん?」
 そのあまりの恐ろしさに思わず数歩後退りながらアメリアが恐る恐る声をかける。ゼルガディスはゆっくりと振り返ると、さらに不気味なほどにこやかな笑みを浮かべる。
「この地図に書いてある場所……この少し先にあるらしいんだ」
「……そ、そうか……」
 付き合いが長いとはいえ、滅多に見ないゼルガディスのこれ以上ないと言うほど不気味な笑顔にクラヴィスも引きつり笑いを浮かべて答える。
「行ってくれるよな。も・ち・ろ・ん」
 疑問形のはずなのに、疑問形に聞こえないゼルガディスの言葉にとりあえず、額にびっしり冷や汗を浮かべながらクラヴィスはあさっての方向を向いた。
「えぇぇぇと……」
「い・っ・て・く・れ・る・よ・な!?」
 すごい形相で詰め寄られて、アメリアとクラヴィスは言葉もなくただこくこくと頷いた。今ここで『嫌だ』といった日にゃ、まず間違いなく地獄を見ると判断したからである。
 素直に頷いてくれた――いや厳密には、問答無用で頷かせたのだが――2人に満足そうに頷くと、ゼルガディスはいつになく気合十分で踵を返した。
 無意味にびし、と虚空を指差すとまるでどこぞの正義かぶれのお姫さまのごとく、目を輝かせて声をあげた。
「さあ諸君。元の身体に戻しに行こうではないかっ!」
「……いや、向かう方向そっちじゃないから……」
「……わたし、もしかしたら一番やっちゃいけないことしたのかも……」
 自分の不用意な発言で――無論、地図を見つけたことだが――一人盛り上がるゼルガディスに密かに頭を抱える。
 彼らを無視して、ステップすら踏みながら出口に向かっていくゼルガディスを見送って、それぞれ沈痛な面持ちでクラヴィスとアメリアは同時に呟いた。
『またやっかい事に巻き込まれるわけね』
 ―――過去の経験から言って、彼が張り切ったことで上手くいった試しなどまったくないのだ。
 これから降りかかるであろう災難を想像して、やはり2人は同時にため息を吐いた。



   細かいことはどうでもいいんだ 探してるんだ
   無気力で無関心な訳じゃ 決してないんだ

   雲の上を歩くように不安定だから
   焦ってもキズが増えていくだけさ

   ぼく達は全員違う夢を見て わりとジタバタしてるんだ
   そりゃ メチャクチャ恐いけど 戦ってんだ
   見ためより案外はりきってるんだ 実は密かに燃えてんだ

   ぼく達はどんどん強くなっていく そんなモロくはないんだ
   震えるほどのピンチに立ち向かうたび
   こう見えて結構頑張ってるんだ 顔に出さないだけなんだ
   歯を食いしばって耐えた痛みよいつか
   見ためより案外はりきってるんだ 実は密かに燃えてんだ
   胸の奥で育ててた野望のカケラ 翼になれ OH YEAH!


  song by V6『翼になれ』


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5650復活おめでとう〜♪雫石彼方 E-mail 2/13-03:51
記事番号5649へのコメント


ついに投稿復活だすな、おめでとう!
久々の長編ってことで、頑張ってねん♪

ところで、最近のねんジーのゼルとアメリアは、性格が入れ替わってるんじゃないかってほどにゼルが猪突猛進でアメリアが鬼畜さんな気がするのは気のせいでしょうか・・・?(笑)
御一行様は地図を見つけて、謎の魔道書げっとに向かうわけだすな。でもきっと一筋縄じゃいかないんだろうね・・・(^^;)まあとりあえず、皆が無事に洞窟から出てきて、ゼルが早く精神の安定を取り戻すことを祈るのみです(笑)

ではでは。

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5654ゼルガディス復活の兆し……か?ねんねこ E-mail URL2/13-11:54
記事番号5650へのコメント


ねんジーだすVv

>ついに投稿復活だすな、おめでとう!
>久々の長編ってことで、頑張ってねん♪

うーみゅ……平気で15とかその辺りまで行きそうなよ・か・ん(死)
本気で長いので、みんな読んでくれるかちょっぴし不安……(汗)

>ところで、最近のねんジーのゼルとアメリアは、性格が入れ替わってるんじゃないかってほどにゼルが猪突猛進でアメリアが鬼畜さんな気がするのは気のせいでしょうか・・・?(笑)

えっと……今回ゼルガディスは大変なので、真面目さんに戻ってもらいます。というわけで、最後のボケですね。
もしかしたら、悪ノリでそのままって可能性もあるけれど……
まあ、今回の主役じゃなし。いいかなーなんて。(ひど)

>御一行様は地図を見つけて、謎の魔道書げっとに向かうわけだすな。でもきっと一筋縄じゃいかないんだろうね・・・(^^;)まあとりあえず、皆が無事に洞窟から出てきて、ゼルが早く精神の安定を取り戻すことを祈るのみです(笑)

多分、無事には行かないでしょうねん……(笑)
とりあえず、彼にはさくさく物語を進めてもらいましょう。
いろいろあることですし。ねえ、いろいろと。
うふふふふふふふふふふふふふふふ(ねんねこの精神も崩壊中)
というわけでねんジーでした。

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5652祝・投稿再開桐生あきや 2/13-07:07
記事番号5649へのコメント


 投稿再開おめでとうございます。桐生だす。
 こーんな朝っぱらから何してるって感じもするけど、いいや。来てみたらねこちゃんの投稿があって喜声あげたし。

 ………なんか姫、情け容赦なくなってきてない?(笑)
 そんな姫も 無意味に自分の勘を信じているゼルも、可愛くて大好きなんだけどさ(爆)
 ゼルの異様なテンションの高さがちょっぴし心配な桐生でした。たぶん、一緒にいる二人の方がもっと心配してるんだろうけど。
 どうかこれ以上ひどいことがおきませんように(笑)

 結局、桐生には何のゲームかさっぱりでした。
 何か今回短くてごめん。実はまだちょっと眠いのです(死)
 ではでは。また〜。

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5655情け容赦ない彼女も好きVvねんねこ E-mail URL2/13-12:04
記事番号5652へのコメント


> 投稿再開おめでとうございます。桐生だす。
> こーんな朝っぱらから何してるって感じもするけど、いいや。来てみたらねこちゃんの投稿があって喜声あげたし。

ありがとうございます、というわけでねんねこだす。
ネットに朝も夜も関係ないのでオッケーです(笑)
夜中にこそこそ真っ暗闇で投稿しているねんねこもじゅーぶん『なにやってんだか』という状態だから……

> ………なんか姫、情け容赦なくなってきてない?(笑)
> そんな姫も 無意味に自分の勘を信じているゼルも、可愛くて大好きなんだけどさ(爆)

個人的にはドライな彼女も好きなんですが(笑)
原作のアメリアさんは正義のこと以外だとかなりのドライな性格ですからのう。
どうせ元に戻るんだから今のうちかな、と。

> ゼルの異様なテンションの高さがちょっぴし心配な桐生でした。たぶん、一緒にいる二人の方がもっと心配してるんだろうけど。
> どうかこれ以上ひどいことがおきませんように(笑)

アメリアはアメリアで『根暗な性格矯正方法に間違いがあったのかしらっ!?』とか慌ててるし、クラヴィスはクラヴィスで『レゾ二号……!?』とか言ってるんだろう、多分。
でも、クーちゃんのほうは心配してなさそうだよなー。
人生またそれでよし、とか納得してそう(笑)
でも、ゼルガディスの両親のことを考えれば『あの親にしてこの子あり』と納得できてしまうのだから世の中不思議よのう。
どっちにしてもねんねこの頭の中でしか通用しないことだらけ。

> 結局、桐生には何のゲームかさっぱりでした。
> 何か今回短くてごめん。実はまだちょっと眠いのです(死)

現時点でゲーム名がわかったら天才だよ(笑)
わかるとしたら、多分2辺りだと思う。
とある人のぽろりとした台詞に『ををを?』て感じ(意味不明)
とりあえず、読み進めてあげて下さいな(笑)
んでは〜♪

追伸→睡眠はしっかりとろうね〜☆


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5653THE DAY OF JUDGMENT 1ねんねこ E-mail URL2/13-11:49
記事番号5648へのコメント


 かつん。
 静かな洞窟に一人の足音が響き渡る。
 長年暗い闇の中、時間の流れを止めてきた古い洞窟に光が照らされる。
 妙な色を仄かに輝かせているコケのついた壁に手を掛けて、ゼルガディスは嘆息した。
「……ったく、ろくなもんがねぇな……」
 ぽつりと愚痴る。
「なんだか妙に空気も悪いし……これじゃああんな噂がたつのも当然って事か」
 頭の隅でこの洞窟の『忌まわしき過去』などという安易なタイトルのついた昔話を思い出す。半世紀以上は軽く生きている近くの村の婆さんから聞いた話で、その内容はいたってシンプル。近くに得体の知れない洞窟がある村でよく流れているようなごくごく普通の昔話だった。
 だが、その昔話のせいで、こんなところに一人で来る羽目にもなったのである。
 ゼルガディスは今度は深くため息を吐いて、洞窟の奥へと足を進めた。


 THE DAY OF JUDGMENT  SENTENCE 1


「おぬしら、あの洞窟へ行かれるおつもりか?」
 村にたった一つの宿の一階の食堂。
 夕食を取りつつ、明日の予定などを話しているところに突然そう声を掛けてきたのは、杖をついた老婆だった。あまり高くはない身長が、猫背になっているせいで余計に小さく見える。テーブルに隠れて見えないその老婆に少しばかり頭の位置をずらしながらクラヴィスが尋ねる。
「なんか不都合でもあるのかい?」
 クラヴィスの問いに老婆は重々しく首を横に振った。
「不都合、などというものでもないんじゃが、あの洞窟には嫌な噂がたっておってな」
「嫌な噂?」
 怪訝な顔でアメリア。今度は首を縦に振ると、老婆は先を続けた。
「実は百年ほど前にこの辺りで妙な熱病が村の者たちを襲ってな。その病にかかったほぼ全員が苦しんだ挙げ句死んでいったという」
 老婆の言葉に、食堂中が静まり返る――誰かが息を呑む音が聞こえるほどに。
 しばしの沈黙を最初に破ったのは、老婆に最も近い席に腰を掛けていた人間だった。
「……噂だろう? 単なる」
 食後のコーヒーをすすりながらゼルガディスはつまらなそうに答えた。そのそっけない言葉に微かに老婆の顔が引きつったのを見逃さなかったのはクラヴィスだけだったか。
 とりあえず、平然を装いつつ老婆は続けてくる。
「こんな老いぼれでも人生経験は豊富でな。おぬしのような若い者が経験していないことも数多く経験してきた。年寄りの言うことは聞いておくもんじゃよ、ひよっこ」
「ひ……!?」
『ぷ』
「笑うな馬鹿たれっ!」
 老婆に『ひよっこ』呼ばわりされて真っ赤になったゼルガディスが吹き出して笑ったアメリアとクラヴィスにさらに真っ赤になって怒鳴る。
 彼が老婆を睨みつけると、老婆は『してやったり』とにんまりと笑っており、それがさらにゼルガディスの神経を逆撫でした。とはいっても、年寄り相手に本気になって怒るのもなんだか大人げない。懸命に怒り出す自分を押さえながら――そのために額に青筋を立ててみたり、折れるんではないかと言うくらい力を込めて歯ぎしりするのは致し方ないことだろう――ゼルガディスは立ち上って、無理矢理笑みを作った。
「あいにくだがね、婆さまや―――
 俺はそんな熱病にかかるほどヤワな身体じゃないんだよ。見ての通りな」
 年の功と言うべきか、老婆はゼルガディスの異様な身体を見ても悲鳴をあげるどころか別段、驚きもしなかった。
 実の祖父によって変えられた自分の身体―――ロック・ゴーレムとブロウ・デーモンとのキメラである自分の身体を元に戻す旅を彼は続けていた。それに『暇なので世界を見てくる―――というか疲れるので父親と一緒にいたくない』というクラヴィスと『姉を探して一度張り倒しに』というアメリアがくっついて来ているわけだが。
 ゼルガディスの言葉に、だが、老婆は首を横に振った。
「身体なんぞ関係ない。この世に生ある者が必ず死というものを迎えるのと同じようにな、病は人を選ばんのだよ。
 おぬしも元は人間だったのじゃろう? ならば、必ず病はおぬしにも手を伸ばす―――まあ、老いぼれの戯言ととるかありがたい言葉ととるかはおぬしの心次第じゃがな」
 言うだけ言って去っていく老婆を無言で見送りながらクラヴィスは立ったまま呆然としているゼルガディスに訊ねる。
「……で、どうするんだ? ゼル」
「どうするったって……」
 困った顔で呟くゼルガディスにアメリアが言ってくる。
「やっぱりあのお婆さんの言う通り、行かない方が良いんじゃありませんか?」
 何の気なしにアメリアの顔を見ると、彼女の顔には思いっきり『行かないでください』とかかれてあった―――本人はまったく気づいていないようだったが。
 はう、とため息ついて、ゼルガディスは天井を見上げながらゆううつな声を出した。
「……参ったな……」



「―――で、結局行くのか?」
「頼むからアメリアには内緒にしておいてくれよ」
「そりゃまあ良いけど……あんまりオレも賛成しないぞ?」
「少し行って見てくるだけだから大丈夫だよ。変な感じだったらすぐに戻ってくる」
 それぞれ自分の部屋に戻って。
 同室のゼルガディスとクラヴィスはそんな会話をかわしていた。
 いまいち納得していない顔のクラヴィスとは反対にベッドの上でもう既に洞窟に良く準備をしているゼルガディスの姿は何がなんでも行くという意思表示にも見える。
(まったく……頑固なんだから……)
 ゼルガディスが一度言ったことを『やっぱ止めた』といって放り出したことなどクラヴィスが知る限り一度もなかった。それが彼の長所でもあるのだが、同時に短所でもある。臨機応変に対処しているようで実は猪突猛進なのだ。ゼルガディス=グレイワーズという男は。
 彼がこれほどまでに洞窟に行くと言ってきかないのは、数週間前に偶然手に入れた地図が原因だった。
 その地図というのがまたえらく信憑性の欠片もないもので、この村の先にある洞窟までの道とたった一文が書かれてあるものなのだ。その文も500年ほど経ってインクがかすれてしまったせいで『解き放つ時、汝の願いを叶えたまう』としか読み取れないのだが―――もとより自分の身体を元に戻すことしか頭にないゼルガディスがわけのわからない文章ごときでこんな話を蹴るはずもなく、ただ『汝の願いを叶えたまう』の一言で、ここまで来てしまったのだ。
「まあ、気をつけていってこい。さっさと帰ってくんだぞ?」
 つい最近―――1ヶ月ほど前までただ単なる親友だと思っていた実の弟にたまには兄貴らしい言葉をかけながら、クラヴィスは、隣の部屋にいるはずのアメリアに気づかれないように静かに出て行くゼルガディスを見送った。


 ――――そして、現在に至る。


 この洞窟までの道が書いてあった地図も、洞窟内部のことまでは書かれていなかったので、もはやなんの役にも立たないただの紙切れと化しているし、もともとあった洞窟に手を加えたらしいので、内部は自然の迷路となっていた。
 とりあえず、以前アメリアに教えてもらった落書きの魔法―――落書きというと彼女は怒り出すのだが―――で、道標をつけて、迷わないようにはしているのだが―――
「なんだかめちゃくちゃ道に迷ったって感じ」
 誰に言うわけでもなくぽつりと呟きながらゼルガディスは構わず歩みを進める。
 しばらく闇雲に突き進んでいくと、少しばかり広い場所に辿り着いた。
「ふぅん……」
 ゼルガディスは鼻を鳴らして、周りを見回す。
 洞窟には珍しい―――というよりありえないほどの広さ。もしかしなくても、軽く家一軒はすっぽり収まってしまうだろう。なにより、周りが先程までの岩むき出しとは違い、何かで塗り固めたような跡が見られ、どう考えても人の手が加えられていた。
「ベフィス・ブリングかなんかで穴広げて、神殿風に仕立て上げたってところか?」
 洞窟に入ってかなりの時間が経過したらしい。消え入りそうな明かりを再び魔術で生み出して、ゼルガディスは広間へとゆっくり足を踏み入れた。
 広間は彼の言う通り、神殿のように作られていた。前述した通り、周りは何かで塗り固められて、壁画まで――もっとも何百年も経ったおかげで色あせて何が描いてあったのかなど判別不能に近かったが――描かれているし、中央奥には、祭壇まで作ってあった。そこには、やはり壁画が描かれてあって―――
 ゼルガディスはその壁画を見つめながら怪訝な顔をした。
「……悪魔崇拝……?」
 いやに鮮明に残っていたその壁画には、なんとも形容しがたいものが描かれていた。敢えて何かに例えるならば―――古い伝承で見た悪魔と呼ばれる伝説上の存在か。
 魔族ではない―――いや、魔族に入るのかもしれないが。とりあえず『悪魔』という存在はほんの一部の伝承に申し訳なさそうに書いてあるか、子供が読むようなおとぎ話に人間を脅かすものとして登場しているだけなのだ。自分でもその壁画に書かれてあるものが『悪魔』だと思ったことに内心驚いているくらいである。
 まあ、その壁画に書かれてあるのが『悪魔』であろうがなかろうが、広間の中央に恭しく描かれてあるということはここを作った人間はこのへんちくりんを崇拝していたということになる―――それはつまり、ろくな物がないということなのだが。いくら元の姿に戻りたいとは言っても、『悪魔』だの『魔族』だのの力を借りてまで元に戻りたいとは思わない。そういう連中は必ず何かを犠牲にさせるのだ―――『神』が何の制約なしに願いを叶えてくれるかといえば……またそれはそれで疑問が湧いてくるところではあるが。
「骨折り損かよ……まったく」
 自分の目的のものではないのはいつものことだったが、なまじ、アメリアとついでにあの老婆の言葉を無視してここまで来たのだから、そのショックもまた大きい。
「なんかないのか? もっとこー『男のロマン』ってぇもんを引き出すようなアイテムは……」
 別に『男のロマン』うんぬんのシロモノは要らないのだが、ここまで来て、なんにもありませんでした、とのこのこ帰るのもなんとなく腹立たしい。
 広い広間をてこてこ歩き回り―――ふと視線を向けた先にあったのは、床に突き刺さっていた長剣だった。
 なんとなく興味をそそられて、近づいてみる。
「……ほう」
 思わず感嘆の声をあげる。
 美術品の類にはあまり興味はなかったが、その剣にはなにか惹かれるものを感じたのだ。何の変哲もないただの長剣なのだが、柄の部分はかなりの装飾が施されてあって、宝石などが埋め込まれていたりするのだが、かといって、持つのも嫌になるような成金趣味の剣ではない。
 長剣が突き刺さってある石の方を見やれば、砂と埃にまみれて、小さく文字が刻まれているのがわかった。息を吹きかけ、手で砂を払いながら、その文字を解読する。
「―――『忘却の彼方より闇、現われる時、混沌の淵を駆けよ一閃』……?
 ……意味不明だなコリャまた……」
 しばし考え込んでみるが、当然答えが出るはずもなく。
「ま、こんな所で考え込んでもしゃーないし……」
 ぽつりと呟き、長剣の柄に手をかける。
「とりあえず引っこ抜いちゃえ」
 てい、と呟きつつ、ゼルガディスは長剣を岩から抜いた。
 剣は案外すんなりと岩から外れた。



「…………………お前さぁ」
 得体の知れない剣をとりあえず持って帰って来てみたとあっさり言ってきたゼルガディスに思いきり頭を抱えつつ、クラヴィスはうめいた。
「別にオレたちゃトレジャー・ハンターじゃないんだぜ?」
「ンなことわかってる」
 剣士の運命(さだめ)か、単なるきれい好きなのか、長剣をすみずみまで磨きつつ、ゼルガディスはあっさりと答えた。
「なんか気に入ったんだよ」
「悪魔崇拝者が大事に保管していた剣をか!?」
「剣は悪魔崇拝と関係ないだろ―――見たところ、魔力剣ってわけでもないし」
 真っ直ぐ天井に向かって掲げた剣の刃が窓から差し込んでくる朝日を反射する。その光が眩しくて、目を細めながらクラヴィスが深く嘆息した。
「……これだから剣士って奴は……もういいや。こっちはてめぇの帰り待ってたおかげで一睡もしてねぇんだ。もー寝る」
「そろそろ朝だけど」
 ゼルガディスの言葉にクラヴィスはごそごそとベッドの中に入りながら言ってくる。
「どうせその件について調べるためにあのちっこい図書館に今日1日こもるんだろ? 今日出発しないんだったら寝るに限る」
 婆さま爺さまばかりで若い女の子もいないしな、と付け加えてくるクラヴィスに嘆息しながらゼルガディスもベッドに寝っ転がった。
 さすがに徹夜はつらい。せめて、アメリアが起きて騒ぎ出すまでの間くらいは睡眠をとっておくべきだろう。
「おやすみ、クー」
 彼がそう言った時には、もう隣のベッドからは小さな寝息が聞こえていた。


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5663で、出遅れた(汗)。水晶さな E-mail 2/14-00:06
記事番号5653へのコメント


 お久しぶりです、水晶さなですv
 きゃあ最近又ツリーが文豪揃いになってて読み応えありすぎてネット代が(泣)。
 すみません戯言です(爆)。
 
 やはしクラヴィスさんの御活躍はねんねこ嬢の執筆でないと見られませんし・・・・・・ああ、ツッコミがレベルアップしてませんか?(爆)
 姫も随分たくましくなって・・・(ホロリ←謎)。
 ああ全然感想になってない(爆)。
 とと、とりあえず続き楽しみにしておりますv
 
 水晶さな.

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5673全然オッケーですよん(><)ねんねこ E-mail URL2/14-14:49
記事番号5663へのコメント


> お久しぶりです、水晶さなですv
> きゃあ最近又ツリーが文豪揃いになってて読み応えありすぎてネット代が(泣)。
> すみません戯言です(爆)。

お久しぶりです〜(><)
この間は、HPの投票にご協力いただいちゃってありがとうございます♪
たしかに、またツリーがたくさん出来上がりつつありますね……(笑)
もうねんねこは『書き殴り』対策のためだけにフレッツに変更しましたよ(笑)
電話代がお得♪

> やはしクラヴィスさんの御活躍はねんねこ嬢の執筆でないと見られませんし・・・・・・ああ、ツッコミがレベルアップしてませんか?(爆)
> 姫も随分たくましくなって・・・(ホロリ←謎)。
> ああ全然感想になってない(爆)。
> とと、とりあえず続き楽しみにしておりますv

クラヴィスさん、この頃でしゃばりすぎている気がしないでもないんですが(爆)
ツッコミレベルアップです。この話から個人的に新章なので(なんのだ・笑)
とりあえずすべてにおいてグレードアップ!
というわけでゼルアメ度グレードダウンにくだらなさがさらにパワーアップVv(←をい)
とりあえず、まだまだ続きそうなので、ひょろっと文章を眺めてあげてください。
それではねんねこでした☆


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5665THE DAY OF JUDGMENT 2ねんねこ E-mail URL2/14-01:06
記事番号5648へのコメント


 はぁぁぁぁぁぁ。
 深いため息が部屋に響き渡る。
 テラスになっている窓の外を見やれば、どこまでも蒼い空が広がっている。
 はぁぁぁぁぁぁ。
 再びため息。
 椅子に腰掛けながら、今はなく愛しき人が作ったクマのぬいぐるみ――ちなみに本来の持ち主は“クマさぶろうくん”と名付けたが――を抱きかかえながら、机の上においてあった上の息子からの絵葉書を眺める。
「あああ、きっと今頃君たちは楽しい毎日を過ごしているんだろうね」
 ぽつりと呟く。
「なぜだろう―――最後に君たちの顔を見てからまだ一ヶ月半も経っていないのに、もう一年くらい会っていないように感じてしまうよ―――」
 すぅぅぅぅぅぅ。
 今度はため息ではなかった。大きく深呼吸するように息を吸い始める。とりあえず肺に空気が満たされるまで吸い続け、ぴたりとそのまま動きを止める。
 その状態で30秒―――
「父上、入りますよ」
 扉がノックされ、人が入ってきた瞬間。
「クぅぅぅぅぅぅラヴィぃぃぃぃぃぃスくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!
 パパりんすっごく寂しいにょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「ぃやかましいわっ!」
 自分を出迎えるように大音量で吐き出された声に入ってきた男―――エドワード=ヴァレンタインは手近なところに大切に置かれていた石を掴んで、絶叫していた義理の父親に向かって投げつけた。
 叫ぶことに全身全霊をかけて、まったく無防備だった父親はその石を見事に顔面で受け止め、そのまま椅子ごとひっくり返った。
「あいたたたたたたた」
 腰を打ちつけたのか、押さえながら起き上がる。彼―――ウィルフレッド=ヴァレンタインはぶう、と頬を膨らませてエドワードを睨みつけた。
「もうっ! 何するのさ、エド!」
「まったく……思い出したようにいきなり絶叫するのは止めてくれと何度も言ったでしょう!」
「だってだって! パパりん寂しいんだもんっ!」
 自分の歳も考えず、まるで駄々をこねる子供のように首をぶんぶん振る義理の父親にとりあえずエドワードはため息を吐くことくらいしか出来なかった。
 セイルーン・シティに屋敷を構えるヴァレンタイン家。今日び5歳でもその名前を知っているという世界でも名の知れた神官貴族であり、このウィルフレッドがその神官貴族の当主だったりもする。
 先代のくだらない目論見のために、一時期家中に不穏な空気が漂っていたのだが、それも今はすっかり解決し、ウィルフレッドは自分の子供と偽った先代の息子ハージェス、エドワードと共にごくごく普通の生活をしていた。
 昔はいきなり叫び出すという発作はなかったのだが、彼の2人の息子が自分をおいて旅に出てからしばしば――というか2日に1回――時刻不定期に叫んでいた。
「だいたい見てよっ! クラヴィスくんから僕宛てに来たこの絵葉書っ!」
 机においてあった絵葉書をエドワードに向かって突き出す。怪訝な顔でそれを受け取ってエドワードはとりあえずその葉書を眺めた。
 葉書に描かれてあった絵はどこかの風景のようだった。クラヴィスが描いたものではないだろう。以前、偶然にも彼の描いた絵を見る機会があったのだが、あれはなんとも言えない絵だった。タイトルには、『大きな木』と描かれてあったのだが―――どう見てもでっかいかぼちゃが一つ描かれているようにしか見えなかった。王立学院にいた頃も、全ての科目において優秀をもらっていたにもかかわらず、美術だけは努力しかもらったことがないという噂もある。
 まあ、彼のデッサン力の無さはこの際横においておくとして。葉書を裏返すと、一般的な絵葉書の形式で、上半分がこの家の住所、下半分がメッセージ欄になっていた。
「……えーと……」
 とりあえず、そのメッセージ欄に書いてある言葉を見てエドワードは声を上げた。しばし考え込んで真面目な顔して訊ねてくる。
「……なんて書いてあるんですか?」
「そんな真面目な顔で僕に聞かないでよっ!」
 目に涙を溜めながらウィルフレッドが反論してくる。エドワードは困ったように絵葉書に視線を戻した。
 かなりスペースがあるメッセージ欄には、ただ一言『うにょろ〜ん♪』とだけ書いてあった。もしかしたら、ウィルフレッドとクラヴィスにしか理解できない言葉があって、その言葉だとちゃんとした文章になっているのか、と本気で考えたりもしたのだが―――ウィルフレッドの様子だとそれはなさそうである。
「クラヴィスくんったらひどいにょっ! やっと手紙よこしたと思ったらわけわかんない言葉しか書いてないしっ!
 ゼルガディスくんに至っては手紙もよこさないんだにょっ! そぉぉぉぉぉんなにアメリアちゃんとラブラブしてる時間が欲しいのかええいこんちくしょう!?」
「………………あほくさ」
「あ、今僕のこと『あほ』って言ったね!? 『あほ』って言った方が『あほ』なんだよっ!
 うわぁぁぁぁん、みんなで僕のこといじめるにょぉぉぉぉぉっ!
 のあっ!? エド、君が投げたの『聖石』じゃないかっ!? にょわわわわなんてことをっ! 悪魔様のたたりがあるにょっ!?」
 床に座り込みながら、ばたばた騒ぐ義理の父親にエドワードは絵葉書と持ってきた書類を手近なところにおいて、そのまま部屋を出ていた。
「あ、エド――――」
 自分を無視して出て行く息子に慌てて声をかけるが、馬鹿はほっとくべし、と振り返りもしないエドは、そのまま扉を閉めた。
「……………………………」
 部屋に沈黙が降りる。異様な静けさが部屋に広まり、ウィルフレッドは小さくうな垂れた。
「……つまんないよぅ……」
『そろそろ50代に突入する歳でいまさら人生謳歌したいのか? ウィル』
 どこからともなく聞こえてくる声に、彼は小さく嘆息した。
「それすごくひどいにょ、≪パイシーズ≫」


THE DAY OF JUDGMENT   SENTENCE 2


『へぐしっ!』
 同時にくしゃみをしたゼルとクラヴィスにアメリアは僅かに顔をしかめた。
「やだなぁ、お2人揃って風邪ですか?」
「ううみゅ……そんなことないと思うんだけどなぁ……」
「誰かに噂されてんじゃないか?」
 ゼルガディスの言葉にとりあえず三人は沈黙する。三人それぞれ思い思いの人物を思い浮かべたのだが、全員思い浮かべた人物は同じだったりする。
「いまさらなんだが……」
 こほん、と一つ咳払いしてゼルガディスが言ってくる。
「あの親父に出した絵葉書、書くことないからって『うにょろ〜ん♪』はマズかったんじゃないか?」
「まだ出した方がエライと思うぞ? 『筆無精』とか言ってそのまま出さないでおくとあのくそ親父絶対何か勘違いして『アメリアちゃんとらぶらぶさんなのね』とか勝手に解釈しだすぞ、絶対」
『……………』
 やはり息子というかさすが息子というか、セイルーンの自宅で繰り広げられた自分たちの父親の言葉そのまま言い合う2人はとりあえず沈黙して、そのまま食後のコーヒーを口に含む。
「ま、なんだ」
 ぽつりとゼルガディスが呟いてくる。
「放っておくのが一番良い対処法なのかも知れんな」
「同感」
 ただ一言そう答えて、クラヴィスはひたすら首振り人形のごとくこくこくと頷いた。
「―――で、聞きたいんですけど」
「なんだ?」
 ゼルガディスが問い返すと、アメリアは半眼で、彼の後ろに立てかけてある二本の剣を指差す。
「なんですか? それ」
 ゼルガディスは彼女の指が示すものを視線で追って、とりあえず黙り込む。しばしの沈黙の後、ぽつりと言ってくる。
「アメリア、忘れたのか? 俺の剣だろ?」
「馬鹿にしないでくださいっ! そんなことはわかってます! わたしが聞いているのは、そっち! その悪趣味な細工が施してある剣の方!」
「悪趣味とはなんだ悪趣味とは! ちょっと気に入ってるのに!」
「……美的感覚の違い、って奴だな」
 クラヴィスがぽつりと呟く。実は自分もさりげなくあの細工は気に入っていたのだが―――それは言わないでおいた。静かにアメリアとゼルガディスの様子を見守る。
 じっと見てくるアメリアとなんとか言い訳を探そうとするゼルガディス。
 折れたのは、クラヴィスの予想通りゼルガディスの方だった。
「……拾ってきたんだよ」
「拾ってきたってそんなへんちくりんな剣いったいどこで……まさか……『行くな』って言ったのに約束やぶったんですか!?」
「別に何ともなかったんだからいいだろ……」
「よくありませんっ!」
 だん、とテーブルを思いきり叩いてアメリアはゼルガディスを睨んだ。
「何かあってからじゃあ遅いんですよ!? 病気がすべてリザレクションで治るとは限らないんです! 自分の身体を元に戻す前に病気になって死んじゃったら元も子もないじゃないですかっ!」
「だぁぁぁぁぁらっ! 俺はそんな病気にかかるほどヤワな身体じゃないんだって昨日から何度も言ってるだろ!?
 それに! お前に心配されなくても自分の健康管理くらい自分でできるわっ!」
 言い返されて、アメリアは少し驚いたようだった。何かを言いかけようとして小さく口を開けたが、何を言って良いのかわからなかったらしく、そのまま口を閉じる。
「……悪い。言い過ぎた」
 彼女のその様子にばつが悪そうにゼルガディスは視線を背けた。アメリアはもはや何も言えずに彼の言葉に首を横に振るだけだった。



「お隣、よろし?」
 宿屋の屋根の上。星を見るわけでもなく、ぼーっと前を見ながら屋根にちょこんと腰をかけているアメリアに後ろから声をかけると彼女はこくんと無言で頷いて、少し横にずれた。
「ゼルガディスさんは?」
「眠いからもう寝るって現在爆睡中。決して他人には見せられない無様な寝顔をさらしてるよ」
「……そうですか……」
「そうなのよ」
 アメリアが少しずれてくれたところにやはりちょこんと腰をかけて、クラヴィスは空を見上げた。
「星がきれいだぁね」
「……クラヴィスさんっていつも空を見てますよね」
「あれ? そーかな?」
「そうですよ」
「そーかぁぁぁ」
 クラヴィスは苦笑しながら夜空に広がる満天の星を見つめる。
「……なんか悩み事あるんだろう?」
 クラヴィスのその言葉にアメリアは一瞬驚いた顔をしたが、そのままこくんと頷いて、視線を彼から前に移す。
「不安なんです……」
「……不安?」
 怪訝な顔してクラヴィスが訊ねるとアメリアは小さく俯いてぽつりと呟く。
「……ゼルガディスさん。最近なんだか妙に明るくて……まるで昔のわたしみたい。
 辛いこと隠してるって知られたくなくて、一生懸命明るく振る舞ってたわたしみたいに……」
「うにゅ……」
 困ったような声をあげながら、俯くアメリアの頭を撫でてやる。
 確かに最近のゼルガディスの明るさは異常だった。
「もしかしたら……わたしのせいなんじゃないかって……」
「は?」
 突然の台詞に間の抜けた声をあげると、アメリアは真っ直ぐこちらを見上げてきた。
「わたしがいるからゼルガディスさん、自分のペースで生活できなくて……それで無理してるんじゃないかって……」
「それはないよ」
 肩をすくめ、小さく息を吐きながらクラヴィスが言ってくる。
 ゼルガディスがアメリアのことで無理しているとは考えられなかった。何しろ彼は自分の生活サークルにこれ以上となく無頓着なのだ。
 自分かアメリアが一緒に居なかったら、平気で昼過ぎまで寝ている生活を送るだろう、というほどに。
 もはや、生活サークルを保つためには、アメリアと自分が必要不可欠になっている節がある―――それはあまり感心できることではないが。
「最近近くに居過ぎなのかもしれないな」
「え?」
 クラヴィスの言葉にアメリアは怪訝な顔をする。
「いつも隣に自分が一番安心できる人が居るってことは良いことさ。だけどね、いつでも隣に誰か居る、って思っちゃだめなんだ。
 確かに共に行動することで、お互いに自己を高められるということが出来るかもしれない。でもそれは理想論さ。実際はそう上手くは行かないんだ。
 隣に誰かが居ることに安心しきってしまって、自己を高めるどころか、逆に自分の能力を下げてしまうことの方が実際には多いんだよ。
 ―――最近ずっと毎日そばに居たからね。もしかしたら、あの馬鹿、安心しきってるのかもしれない」
「……どうすればいいんですか?」
 アメリアの問いにクラヴィスはしばし考えた。
「ふむ……」
 呟きながら、アメリアの顔を見る。じっとこちらを見てくるアメリアに彼はぴ、っと指を立てた。
「しばらく別れてみようか?」



「……なんだかなぁ」
 後ろ頭をぽりぽり掻きながら、小さく嘆息する。サイドテーブルにおいてあった一枚の置き手紙を見つめる。
『アメリアちゃんとしばらく別行動するからちゃんと後からくるんだぞ』
 相も変わらずきれいなクラヴィスの字。その下には、落ち合う場所が書かれてあり、ゼルガディスはため息を吐いた。
「まるで3日連続で朝帰りした夫に愛想尽かした女房の『実家に帰らせていただきます』の置き手紙読んだ気分だ」
 ―――たった一言、『寂しい』と言えない所が彼らしいといえば彼らしいが。
 とりあえず、たった一人残されてゼルガディスは途方に暮れた。


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5669ヴァレンタイン家万歳!!(><)雫石彼方 E-mail 2/14-02:29
記事番号5665へのコメント

もう、パパりんもクーちゃんもエドワードくんも最高!!しょっぱなから大爆笑させてもらいましたよ(笑)
絵葉書に書くことないからって「うにょろ〜ん♪」と一言(?)だけ書いて送るクーちゃんも素敵だし、いきなり絶叫するパパりんも素敵だし、遂にはエドワードくんまでがツッコみの才能に目覚め始めてるみたいで(笑)パパりんとクーちゃんにしか理解できない言葉が云々〜なんて考えが浮かんじゃうあたり、立派にお笑いの素質を持ってるわ!!一気にお気に入りキャラに格上げされそうなよ・か・んVv(笑)
それにしてもクーちゃん、絵下手だったのね・・・・かぼちゃ・・・・・(笑)

ゼルとアメリア、別行動っすかー。ゼルと一緒に私も寂しくなっちゃったよ。
なんだか病気は大丈夫なのかなーとか、パパりんに話し掛けてたの誰なのさとか、ゼルが拾ってきた剣は何なんだーとか、わかんないことだらけでとっても不安。でも「15くらいまでいくかも」ってことは、それが解明されるのはまだまだ先なんだよねー。

先は長いが、まあ何はともあれ頑張ってください!!ってことで。


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5674お笑い一家か!?(爆)ねんねこ E-mail URL2/14-14:59
記事番号5669へのコメント

雫ちゃんのツリーで『読むのに徹する』と言ったら雫ちゃんとあっきーに同時攻撃(笑)されたねんねこです。
……というか、わたしにゼル方面書かせたらゼルアメ書かずに一気にクーちゃんとのどつき漫才繰り広げていくんだってば……(汗)

>もう、パパりんもクーちゃんもエドワードくんも最高!!しょっぱなから大爆笑させてもらいましたよ(笑)

ありがとう。ウケを狙っていきました。
というか書いてて楽しかった……Vvああ、パパりん……Vv

>絵葉書に書くことないからって「うにょろ〜ん♪」と一言(?)だけ書いて送るクーちゃんも素敵だし、いきなり絶叫するパパりんも素敵だし、遂にはエドワードくんまでがツッコみの才能に目覚め始めてるみたいで(笑)パパりんとクーちゃんにしか理解できない言葉が云々〜なんて考えが浮かんじゃうあたり、立派にお笑いの素質を持ってるわ!!一気にお気に入りキャラに格上げされそうなよ・か・んVv(笑)

Wow!と何ゆえ英語……まあそれはともかく。
エドまでこんなになったら、もう神官一家じゃなくてお笑い一家ですな(笑)
それでも『あんな当主だし』と言われれば納得できてしまうのがいと悲し。

>それにしてもクーちゃん、絵下手だったのね・・・・かぼちゃ・・・・・(笑)

やっぱり人間何か1つ欠点はないと……(笑)
かぼちゃはかぼちゃでもドテカボチャがおすすめ……(意味不明)
って、言っててなんだけどドテカボチャって何なんだろうね……(爆)

>ゼルとアメリア、別行動っすかー。ゼルと一緒に私も寂しくなっちゃったよ。
>なんだか病気は大丈夫なのかなーとか、パパりんに話し掛けてたの誰なのさとか、ゼルが拾ってきた剣は何なんだーとか、わかんないことだらけでとっても不安。でも「15くらいまでいくかも」ってことは、それが解明されるのはまだまだ先なんだよねー。

うーんとね、一話だけ(笑)
とりあえず一度合流してもらわねば話がすすまねぇ(爆)
一応、伏線になってないような伏線があっちこっちにばら撒かれているので、ひょろひょろ探してあげてください(^^;)

>先は長いが、まあ何はともあれ頑張ってください!!ってことで。

おうともよっ!
例のぷろじぇくともあるこったし!
頑張ろうね!
ではでは♪


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5702THE DAY OF JUDGMENT 3ねんねこ E-mail URL2/16-00:57
記事番号5648へのコメント


 1人で旅するのは久しぶりだった。
 ゆっくり裏街道を歩きながらゼルガディスはこの辺りの地図を眺めていた―――安全な街道があるにも関わらず、アメリアとクラヴィスの落ち合う場所である少し大きな街への近道で盗賊たちが待ち構える裏街道を選んだ辺り、彼の心情がうかがえるが。
 この辺りは、500年ほど前に栄華を極めたレティディウス公国の領地だった―――今は当時の建物が遺跡としていくつか残るだけで、その面影はどこにも残ってはいないが。
 レティディウスという名前は、魔道士―――特に研究を主とする魔道士なら誰でも知っている名前だった。それだけ魔術に縁がある、ということである―――決していい意味ではないが。
 栄華を極めていた頃、時の公王は魔術に精通し、あらゆる魔術の習得を試みた。彼は次々に魔術を習得し、一番最後に目をつけたのは、『不死』だった。
 彼は、『公王』という立場を最大限に利用して、国中に『不死の研究』をするように命じた。当然ながら、国中の魔道士はその研究内容に興味を持ち、誰もが『不死』の研究に没頭したらしい。
 だが、『不死』に興味を持ったのは、魔道士だけではなかった。上手い話を見つけて、一角千金を狙うトレジャー・ハンターや傭兵たちも公王が『不死の研究』にかけた莫大な報奨金に目が眩み、無我夢中で『不死』になれる方法を探しまわった。
 その結果、国の内外で実験という名の殺人が繰り返され、混乱した世の中で虐殺、略奪が平然と横行し、世界はまさに地獄絵図と化した。
 その状態に頭を抱えたレティディウス公国の周りの国は国王を責め立て、公国は滅び、王は断首となった。
 これが魔道士の間で『暗黒時代』と呼ばれた時期で、これ以後、彼らの間では『不死』の研究は禁忌(タブー)とされた。
 まあ、数百年前の昔話である。
 ゼルガディスは自分の位置を確認して、地図を懐にしまった。


  THE DAY OF JUDGMENT SENTENCE 3


「すいか」
「かたつむり」
「りす」
「す……? すずめ」
「めかぶ」
「ぶた」
「たぬき」
「きくらげ」
「…………………」
 言葉が思いつかず、アメリアは無言で歩いた。
「元気にやってますかねゼルガディスさんは」
「……『は』って『わ』でいいのかな?」
 クラヴィスの問いにアメリアはしばし考え、こくんと首を縦に振る。
「わかんないけど元気なんじゃないかな、たぶ―――」
 言いかけて、最後が『ん』で終わることに気づき、慌てて彼は付け加えた。
「――ん絶対上手くやってるよ、あいつ」
「……つらいですね、今のは」
「……ストップ。止めようきりがない」
「じゃあクラヴィスさんの負けですね」
 にっこり笑いながら言ってくるアメリアにクラヴィスは引きつり笑いを浮かべた。
「でも本当に元気かしら?」
 心配そうに後ろを振り返るアメリアにクラヴィスはぱたぱた手を振ってみせた。
「ああもう大丈夫だって。心配性だなぁ、アメリアちゃんは」
「だってゼルガディスさん、起こされるまで起きないでしょ?
 もしかして、チェックアウトの時間までに起きられなくて、もう1日泊り、なんて事もあるかもしれないじゃないですか」
「うく……」
 ありそうなことを言われてクラヴィスは思わずうめいた。
「い、いやそれはまあその……で、でも根はオレと似てしっかりした奴だから初日はどーかわかんないけど2日目からはちゃんとしっかり起きたと思うぞ……………多分」
「なんだか最後に『多分』がついちゃうのがすごく悲しいですね」
「ううううううう」
 自分でもそう思っていただけにアメリアの言葉が突き刺さる。
 ゼルガディスと別れて早3日。
 クラヴィスとアメリアは順調に旅を続けていた。上手く行けば今日の夕食前には目的地である街に辿り着けるだろう。後はのんびりゆっくりゼルガディスと落ち合う宿屋で過ごせば良いだけである。
「ま、大丈夫だろ」
 ぽつりとクラヴィスが言ってくる。
「あいつのことだ。アメリアちゃん取り返すためにちゃんと来てるんじゃないかな」



 無論ちゃんと来ていた。
 確かに初日はチェックアウトぎりぎりの時間に目が覚めて、慌てて出ていったというなんとも情けないことはあったが。
 げふげふごほん。
「……うー……風邪かな?」
 鼻の下をごしごしこすりながらゼルガディスはぽつりと言った。1人なので誰も返事を返してくれないのがなんだか妙に寂しいが。
(考えてみりゃあ、ずっと1人で旅してたんだよな、俺)
 やかましいあのリナとガウリイのコンビとアメリアと。出会っては別れてを繰り返し、気がつけば最近ほとんど1人でいることがなくなった。
「まあ、そのせいでちょっと歩けばすぐにトラブルに巻き込まれ―――」
 言いかけて。
 耳に入ってきた悲鳴にゼルガディスは深く嘆息した。
「どーしてすぐにトラブルに巻き込まれるんだよっ!」
 やけくそ気味に叫んで、彼は悲鳴がした方向―――ちょうど向かっている方向なのだが―――へ駆け出した。



「フレア・アロー!」
 ほとんど不意打ちで飛来した数条の炎の矢に2人の少女を取り囲んでいた黒ずくめたちは実に素早い動きで避けきった。
「何者だ!?」
 三人ほどいる黒ずくめの一人――ゼルガディスはそれを黒ずくめAと命名――が、怒声をあげながらこっちを見てくる。
 状況は良く把握できなかったが、少なくとも彼にはこの黒ずくめたちが人様に顔向けできるようなことをしていないと即座に判断した。しかも見た目は盗賊ではない。平気でこちらに声をかけてくる所を見ると、暗殺者でもないようだが。とすれば、顔が知られたくなくて、とりあえずありきたりな黒ずくめで自分の身分を隠そうとしているクチか。
 まあ、どちらにしても自分には関係のないことだし、知ろうとも思わないが。
「ただの通りすがりのもんさ。こんな道の真ん中で物騒な場面見せつけられちゃあ関わらないわけいかんだろ?」
 ゼルガディスは剣を抜き―――無論、あの拾ってきた長剣ではなく自分の方の――隙なく構える。
「なにがあんだか知らないが、たかが小娘2人に大の大人が3人がかりはちょっとばかし卑怯なんじゃあないか?」
「部外者は引っ込んでろ!」
 言いながら、自分と一番近くにいた黒ずくめB(やはり勝手に命名)が、一気に間合いを詰めてくる。ゼルガディスはそのまま少しだけ後ろに後退して、黒ずくめBの攻撃を剣で軽く流す。素早く反撃に移した。
「うをわっ!?」
 なんとも情けない声をあげながら、黒ずくめBは何とかその攻撃を自分の手にしたロングソードで受け止めるが、ゼルガディスの予想以上の力の強さに、剣は乾いた音を立てて途中で折れた。
「なっ!?」
 さすがに剣が折れるとは思わなかったのだろう。驚愕の声をあげるBの鳩尾に蹴りを入れる。『最近足癖悪過ぎ』とのクラヴィスの批評通り、ゼルガディスの蹴りは見事に決まり、そのままBは近くの木に激突し、動かなくなる。
 死んだわけではないだろう。きっと気を失っているだけである―――と信じたいが。なにしろまだこの黒ずくめたちがアメリアで言うところの『悪』とは決まってないのだ。いや多分お決まり通り『悪』なのだろうが、世の中何が起こるかわからないのが厄介なところで、もしかしたら万が一多分絶対無いだろうけどこの男たちの方が正しいことをしているのかもしれない。
 とにかく状況理解がまだのまま死亡者なんぞ出そうもんなら下手すればまたお尋ね者である。そうしたらもう前の指名手配をすべて帳消しにしてくれたアメリアに顔向けできない。
「くそ! ここはいったん引くぞ!」
 こいつがリーダー格なのだろう。ゼルガディスの力量を悟った黒ずくめC(やはり勝手に以下略)が声をあげると、Aは無言で森に帰っていこうとする。その様子を眺めながら、ゼルガディスが倒れたBを指差す。
「回収くらいしてってやれよ、仲間だったら」
 その言葉に一瞬Aは迷いの色を見せた。おそらく助けに行ったところを狙ってゼルガディスが攻撃してくると思ったのだろう―――ゼルガディス当人にしてはそんな気さらさらなかったのだが。
 その意思表示にと剣を鞘にしまうと、Aは警戒の色を示しながらそれでもBを回収して森の中に消えていった。Cといえばさっさと森の中に姿を消していたが。
 小さく嘆息して、ゼルガディスは自分をこのやっかい事に引き込んだ張本人たちに目をやった。
 同じ顔の少女が2人。双子なのだろう。年は―――アメリアより少し下か。もしかしたら彼女以上に童顔ということがあるかもしれないが。自分の姿―――とてもじゃないが人間に見えない姿に少しばかり脅えていたが、とりあえず悪い人ではないのだろうと解釈したらしく、小さく礼を言ってくる。
「あの……ありがとうございます」
「いや、別に礼を言われることしてないんだが」
 困ったように頬を掻きながら言う。
 確かに別に何もしてない。黒ずくめにいったように、道のど真ん中で物騒なことが繰り広げられてこちらも邪魔だったし、助けたといっても黒ずくめに軽く蹴りを入れただけで向こうが勝手に退散してくれただけで何の苦労もしなかった。
 双子の少女たちはその場に立ち上って、言ってくる。
「わたしたち、カストルとポルックスって言います」
「私がポルックスです」
 とりあえず紹介を受けたが、同じ容姿、髪の毛の長さも同じ着ている服まで同じとなると区別のしようがない。とりあえず、名前だけ覚えて、呼ぶ時は2人一緒、という方がいいだろう。
「ゼルガディスだ」
 簡易な挨拶をして、彼はふと怪訝な顔をしてみせた。
「―――にしても、珍しい名前だな。カストルとポルックスって、双子座の星の名前だろ?」
 しかも双子は双子でも男の兄弟だったはずだ―――口には出さず心中で付け加える。
 ゼルガディスの言葉にカストルだかポルックスだかは少しばかり驚いた顔をした。
「星のこと、よくご存知なんですか?」
「いや、昔、屋根に登って星を見ていたから」
 クラヴィスと一緒にのぼっては、星を眺めて、いつのまにか2人して眠りこけて仲良く屋根から転げ落ちていたのはきっといい思い出になるのだろう。
「そうですか―――ならば不思議に思うでしょうね。私たちの名前のことを」
「あ、いや、まあ……一応は」
「私たちの名前の由来を話すのには、まず私たちの家の話を聞いたもらわねば―――」
 えんえんと続くカストルだかポルックスだかの話にとりあえず、旅が順調にいかなくなりつつあることを悟ってゼルガディスは小さく頭を抱えた。



 2人の少女のくそ長い話を要約すれば―――
「つまり、あんたらの家は代々、男の双子が生まれてて、『カストル』と『ポルックス』という名前をつけられていたが、あんたらに限って女の双子が生まれちまった。
 で、最近男の双子が生まれたのであんたらが邪魔になったからとりあえず家の奴等が殺そうとしている、とそーいうわけか」
「はい」
 とりあえず裏街道を歩きながら、三人は話を進めていた。
 ポルックスが頷くと、ゼルガディスは深くため息を吐いた。
「……で、お前らはそんな話をして、俺にどーしろってぇんだ?
 ―――どうせ、『物はついで。なんとなく人が良さそうだから護衛とか頼んじゃおう』とか思っているんだろうが」
 言うと、カストルの方が胸の辺りでぱんと手を打ってくる。
「すごいですね! 『人の良さそうな』を抜きにすると完璧です、ゼルガディスさん」
「あ・の・な・あ!」
 きゃっきゃっとまるで子猿のごとく声をあげる双子娘にゼルガディスが立ち止まって険悪な視線を向けた。
「悪いが、俺は成り行きであんたらを助けただけであって、『物はついで』でそんなくそめんどくさい事を引き受けるほどお人好しでも物好きでもないんだ。
 護衛がほしけりゃ近くの町でそーいうのを専門に飯食ってる奴に頼めよ」
「実はもう一つわたしたちが狙われている理由がありまして」
「―――て、をい」
 半眼で睨みつけるゼルガディスの前にカストルの方が懐から妙な石を出してくる。
 手のひらサイズの蒼色の石。中央に刻まれているのは、黄道帯を十二に分けた十二宮図(ゾディアック)の一つである『双子宮』を示す紋章が刻まれている。
 その石を掲げながらカストルは言ってくる。
「この石は我が家に代々伝わる聖石≪ジェミニ≫です。わたしたちのことを殺そうとしている家の者たちは、わたしたちを殺すと同時にこの石を狙っています。
 ―――ちなみにこの石のことは、我が家でも秘密のこととして伝わってますから、それを知ったゼルガディスさんはもうわたしたちの依頼を受けざるを得ません」
「よろしくお願いしますね、ゼルガディスさん」
 勝手に話を進めて、にこにこ笑みを浮かべるカストルとポルックスになんとなく脱力感を覚えながらゼルガディスは心の中で呟いた。
(どうして俺の前に現れる女は人の話を無視して問答無用に話を進めていくんだ!?
 アメリアといいリナといいこの女どもといい!)
 ―――その疑問に似合う答えは見つかりそうもなかった。



「へぇぇぇぇ、結構大きな街ですね!」
 アメリアの言葉にクラヴィスは微笑みながら頷いた。彼は何度か仕事でここを訪れたことがあった―――もう数年も前の話になるが。それゆえにゼルガディスに宿屋の場所の指定までも出来たわけだが。
 興味津々で周りをきょろきょろ見渡すアメリアに苦笑しながらクラヴィスが言ってくる。
「少し散歩がてら見てみる? 街」
「いいんですか!?」
 嬉しそうに声をあげてくるアメリアにこくんと頷くと、彼女は喜んで飛び上がった。すぐに目をつけた一軒の露店を指差してとことこと走っていく。
 その露店屋の主人の横顔を見るなり、クラヴィスはにんまりと笑い、ゆっくりと彼女を追いかけた。
「よう嬢ちゃん。なにかお探しかい?」
 露店屋の前にしゃがみこんで並べられたものを見るアメリアに主人は声をかけた。アメリアは微笑みながら答える。
「いえ。でもきれいなものばかりですね!」
 並べられていたのは、どれも高そうなものばかりだった。
 赤く輝くルビーが埋め込まれたネックレス。艶やかな色を放つパールのイヤリング。透き通ったエメラルドのプローチ―――露店で売るにしては少しばかり異色な物の気もしないでもないが。
「お嬢ちゃんの目に適うものはあるかい?」
「―――ちなみにこの仕入先はどっかの貴族の宝物倉かい? アイルツ」
 突然した声に主人が驚いて周りを見回した。視線を止めた先にいたのは、自分の知っている顔。最後に会ったのはだいぶ前だが、その顔はなんとなく忘れようとしても忘れられない顔だった。
「クラヴィス!?」
「―――へ?」
 突然クラヴィスの名前を呼んだ露店の主人に怪訝な顔をしたのは、夢中になって商品を見ていたアメリアだった。笑みを浮かべて後ろに立っているクラヴィスと驚いた表情を浮かべている主人の顔を交互に見て、首を傾げる。
「お知り合い、ですか?」
「昔、何度か仕事を一緒にやってね」
 クラヴィスの言葉に露店の主人―――クラヴィスはアイルツと呼んでいたか―――は、懐かしそうに声をあげた。
「久しぶりだなぁ! 何年ぶりだ? 変わってないなぁぁ」
「あんたも一目見てすぐにわかったよ。いつのまに露店屋になったのかと思えば、まぁたこんなことしてやがって。
 どっから拾ってきたんだ? そんな高価なもん」
 クラヴィスの言葉にアイルツは降参というように両手を挙げた。
「あんまりいじめないでくれよ。別に盗んできたわけじゃねぇって。ただちょっとばかし盗賊どものねぐらからいただいてきただけでさ」
 言い訳のような言葉を吐くと、そのままにんまりと笑みを作る。
「それにしても旦那もまだまだ若いねぇ。こんなかわいい嬢ちゃんたらし込めたのか?」
「あほ。オレは女房一筋なの」
 言いながらアメリアの頭に手を置く。
「こいつは弟の方の女―――アメリアちゃんだ。
 紹介するよ。この見た目スケベー親父っぽいこいつがアイルツだ」
「見た目スケベー親父はひどいぞ」
「ああ悪いな。中身も立派なスケベー親父だ。あんまり近づくと危ないぞ」
「お前なぁ……」
 相変わらず口が達者なクラヴィスにアイルツが顔をしかめる。それをあっさり無視してクラヴィスはしゃがみこんでアメリアに訊ねる。
「なんか欲しいものあったかい?」
「うーん……」
 口元に手を当て、アメリアが視線を巡らせる。一瞬、彼女の目が紅い石のところで止まり、彼女はそのままその石を指差した。
「あの石……すごくきれい」
「よし、わかった―――アイルツ」
 名前を呼ぶとアイルツは商人の顔になった。
「買ってくれるのか? 優しい兄ちゃんだな」
「いくらで売ってくれるかな?」
 にっこり笑ってクラヴィスが訊ねる。するとアイルツは右手を広げた。その手にクラヴィスは顔をしかめると、首を横に振った。
「おいおい知り合いなんだぜ? もう少しまけろよ」
「しゃーねぇな。じゃあこれでどうだ?」
「もう一声」
「これ以上は下げられないなぁ。一応これで飯食ってるんでな」
「そんな事言ってもいいのか? そーだな。確かあれは仕事が一段落ついた日の夜。酔ったお前が街の時計台ですっ―――」
「にょあ!? 待て、待て待て待て待てクラヴィス!」
 昔の思い出したくない出来事をいきなり喋り出すクラヴィスにアイルツは慌てて止めた。その様子ににっこり笑う。
「まけてくれるよな?」
「ううううう」
 金か、自分のプライドか。アイルツは後者をとって、指を一本だけ突きたてた。
 その金額にクラヴィスは満足そうに頷いて、金貨1枚を彼に渡して、そのまま石を取る。アメリアにその石を手渡すと彼女は嬉しそうに笑った。
「ありがとうございてます!」
「いやいやどーいたしまして」
 にっこり微笑み返してくるクラヴィスから手に乗っかった石を見つめる。
 手のひらに収まる程度のいびつな形の紅い石。中央に刻まれた『処女宮』の紋章。
 満足そうに微笑みながら、アメリアはいつまでもその石を見つめていた。

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5703アイムソーリー、アイムレイト。せりあ E-mail URL2/16-16:02
記事番号5702へのコメント

こ、こんにちは。せりあです。
遅くなりまして・・・。
動作がとろいと自他(含む宇宙人)ともに認めています。


・・・やっぱりすごいです〜!!
クラヴィスかっこいいし、アメリア無邪気だし、ゼルまた巻き込まれてるし!
ああ、クラヴィスがお兄ちゃんだったらよかったのに・・・。
うちの弟と一日交換留学しないですか?(笑


今回のお話は星座がキーポイントなんでしょーか?
私獅子座と蟹座の両方なんですが。
3人は何座なのか気になる気になる。
アメリアは乙女座で、ゼルが水瓶座で、クラヴィスは牡羊座っぽい気が・・・。
何だか雰囲気的にそんな感じねぇ、と。
うみゅ〜・・・ほんとは何座なのかなぁ・・・??


ねんねこさんの書くキャラ大好きなので、双子ちゃんがどうなるのか気になります!
でも、やっぱり相も変わらずクラヴィスのファンですっ(><)
続き楽しみにしてます♪

それでわ。

・せりあ・




2人ともチョコの数で競ってそうな気が・・・?





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5708ドントマインド、センキューフォーメッセージ。ねんねこ E-mail URL2/17-00:52
記事番号5703へのコメント

>こ、こんにちは。せりあです。
>遅くなりまして・・・。
>動作がとろいと自他(含む宇宙人)ともに認めています。

宇宙人まで含まれてるなんて素敵っ!(><)
遅くなんかありませんよ。くそ長くなる予定ですのでまだまだ序盤です(笑)

>・・・やっぱりすごいです〜!!
>クラヴィスかっこいいし、アメリア無邪気だし、ゼルまた巻き込まれてるし!
>ああ、クラヴィスがお兄ちゃんだったらよかったのに・・・。
>うちの弟と一日交換留学しないですか?(笑

交換留学……なにを勘違いしたのか駅前留学と勘違いしました。
クーちゃんがお兄ちゃんだといろんな意味で大変です。
せりりんかわゆいのできっと彼はシスコンに走ります(^^)

>今回のお話は星座がキーポイントなんでしょーか?
>私獅子座と蟹座の両方なんですが。
>3人は何座なのか気になる気になる。
>アメリアは乙女座で、ゼルが水瓶座で、クラヴィスは牡羊座っぽい気が・・・。
>何だか雰囲気的にそんな感じねぇ、と。
>うみゅ〜・・・ほんとは何座なのかなぁ・・・??

星座がキーポイントです。というか、星座を題材に書いてみました。
って獅子座とかに座の両方とはどーいう意味?(笑)
とりあえず、ねんねこ的には、アメリアは3月生まれで、ゼルが秋頃に生まれて。クーちゃんはつい先日23歳になりました(爆)
2月14日と設定してあるので彼は水瓶座ですね。ちなみに聞かれてないけれど、パパりんは3月3日のうお座です(^^)
オリキャラなので勝手に誕生日が設定できる(笑)

>ねんねこさんの書くキャラ大好きなので、双子ちゃんがどうなるのか気になります!
>でも、やっぱり相も変わらずクラヴィスのファンですっ(><)
>続き楽しみにしてます♪

ありがとう!(><)
クーちゃんも喜んでいるわっ!

>2人ともチョコの数で競ってそうな気が・・・?

うーみゅ……どうなんでしょう。
バレンタインネタは実は自分のHPであげているので、クーちゃんの誕生日話もあるので、よかったらひょろっとのぞいてやってくださいまし。(宣伝・笑)

それではでは〜♪



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5706THE DAY OF JUDGMENT 4ねんねこ E-mail URL2/17-00:43
記事番号5648へのコメント


ねんねこです。
一言だけ言わせてください。
なんなんですかぁぁぁぁぁあのV6の新曲はっ!?
なんだかもうねんねこのゼルアメ像ぴったりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!(絶叫)
……はあ、すっきり(←馬鹿)

=======================================

『……なにをやっているのだ? ウィル』
「監獄脱出計画」
『……監獄ってここのことか?』
「他にどこがあるのさ」
『……まあいいが』
「もうこんな生活やだにょ。絶対クラヴィスくんたちのところに行くにょ」
『お前の愛息はともかくとして―――どちらにしても近いうちにここから出てもらわねばならんだろうからな、反対はせんよ』
 その言葉にウィルフレッドは、怪訝な顔で机の端っこにおいた石を見つめる。
 その石はヴァレンタイン家が神官として名を馳せる前から代々大切に守られてきた聖石と言う石で、伝説では全部で12個あると言われている。その中の一つ。碧色の手のひらに収まるほどのその石の中央には、『双魚(そうぎょ)』の紋章が刻まれ、それゆえにその聖石は≪双魚宮(パイシーズ)≫と名づけられていた。
 ≪パイシーズ≫の存在は、代々ヴァレンタイン家の当主になるものしか知らされず、ウィルフレッドは母親がなくなる数日前、彼女から密かにこの石を大切に守るよう譲り受けていた。
「どういうこと? ≪パイシーズ≫」
 彼の言葉に≪パイシーズ≫は答えた。頭の中の≪聖石≫の声が直接響き渡る。
『≪ヴァルゴ≫が目覚めたのさ』



 アメリアとクラヴィスがこの街に着いてから2日が経過していた。
 そろそろゼルガディスがきてもいい頃のはずだ―――というか、遅すぎる。いくら彼より早く出たとはいえ、たった数時間程度早く出ただけなのだ―――もし、彼が寝坊してその日1日のんびり過ごしていたりなどしなければ。
 いつまで経っても宿に来ないゼルガディスを心配して、アメリアはてこてこと宿屋を抜け出しては街の入口に行って彼を待ってみたり、入れ違いになったのではないかと宿屋に戻って来て待ってみたりを繰り返していた。
 その様子にクラヴィスが嘆息する。
(……隣に誰かいないとそわそわしだすのはゼルガディスだけじゃないって事だな)
 心中でぽつりと呟き、香茶片手に読みかけていた雑誌のページをめくる。
 のんびりゆっくり時間をつぶすクラヴィスにアメリアが頬を膨らませて言ってくる。
「もう! クラヴィスさんは心配じゃないんですか!?」
「野郎に心配されても嬉しくないだろ、あいつも」
「一応あんなんでも弟さんでしょう!?」
「……あんなんでも一応弟だよ」
「だったら心配してください!」
 アメリアの言葉にクラヴィスは嘆息した。雑誌をテーブルの上にのせて、胸の辺りで手を組んだ。
「もうっ! ゼルガディスくんったら遅すぎなんだからっ! クーちゃん心配しちゃうぞ☆」
「……………………………………」
 突然気が狂ったように言ってきたクラヴィスにとりあえずアメリアは顔を蒼白にして固まった。クラヴィスは真っ赤な顔して咳払い一つすると、
「―――以上、体を張った一発芸。ゼルの心配くそ親父ばーじょんをやってみた」
「……もう二度とやらないでください」
「わかってもらえて嬉しいぞ」
 頼まれても二度とやるもんか、などと心に誓いながらクラヴィスは冷めきった香茶を一気に飲み干した。


   THE DAY OF JUDGMENT SENTENCE 4


「ところで――――」
 街の中心にある時計台の下。何かが書かれたメモ帳とにらめっこを続けるゼルガディスに不思議な顔をしたのはどちらだったか。とりあえず口々に訊ねてくる。
「いつまでここにいるんですか?」
「なにしてらっしゃるんですか?」
「っだぁぁぁぁぁぁぁ! じゃかぁしい黙ってろ子猿娘ども!」
「妙な呼び方つけないでいただきたいんですけど……」
 さすがに『子猿娘』は嫌だったのか、ポルックスが顔をしかめて言ってくる。が、ゼルガディスはその非難を無視したらしい。なんにも言い返さず(謝りもせず)、頭を掻いて、唸った。
「―――ったく。なんなんだよこの芸術的な地図は!?」
 彼の言葉に双子の姉妹は顔を見合わせて、ゼルガディスが手にしているものを覗き込んだ。
『う……』
 同時にうめく。
 書かれてあったのは、二、三行の簡易な文章と、地図らしきものだった―――『らしき』というのは、地図とは断定できなかったのだが、とりあえず書いてる本人は地図のつもりだったのだろうということである。
「あぁの馬鹿たれが。たかが地図に芸術的なもん入れんでもいいからもっと簡潔に書けってぇんだ。しかも画才ゼロだし」
「本当にへたくそですね」
「これで自分は『絵が上手い』とか思い込んでるんだから始末におえないんだよ。
 くそ、こりゃ誰かに宿の場所を聞いて片っ端から当たってった方が早い―――」
 言いかけて。
 ふと向けた視線の先に見知った少女の姿が映ったのをゼルガディスは見逃さなかった。声をかけようとして口を開けると、少女―――アメリアもこちらに気づいて、満面の笑みを浮かべてぶんぶか手を振ってきた。
「ゼルガディスさ―――」
 元気な声だった彼女の声がだんだん小さくなっていく。
 ゼルガディスの後ろに誰かいることに気づいたのだろう。しかも、雰囲気からして彼にくっついてきた、ということも分かったのだろう。
(……女友達が遊びに来ている自分の家に彼女が入って来て鉢合わせした時の男の気持ちってこーいうもんなんだろうな……)
 自分の数メートル先でぴたりと止まって無言で睨みつけてくるアメリアにゼルガディスは引きつり笑いを浮かべてごまかすことくらいしか思いつかなかった。



 げふげふごほん。
「……風邪ひいたっぽい……」
「誰でしたっけ? 『俺の身体は病気にかかるほどやわな身体じゃない』って言ってた人は?」
 そっぽを向いて言ってくるアメリアにゼルガディスは呆れた顔をした。
「お前……まだ機嫌悪いのか?」
「悪くないですよ」
「じゃあ何で視線が違う方向に行ってるんだよ?」
「いいじゃないですか別に」
「やっぱり機嫌悪い。なんだか口調が刺々しい」
 やけに突っ込んでくるゼルガディスについにアメリアが観念して、ゆっくりとゼルガディスに顔を向けた。が、その顔はいつもの笑顔でなく、ふくれっつらだった。
 その顔を見てゼルガディスが言ってくる。
「ほらやっぱり怒ってる」
「怒ってますよ怒っちゃいけないですかそりゃあ怒りたくもなりますよっ!
 なんなんですかあの双子の女の子は。昔は女の人どころかまったく誰も助けなかったあなたがどうして珍しく人なんか助けたんですか!? ああもしかして変な欲出して助けて恩を売ろうなんて考えてたんですかっ!?」
 一気に言葉を吐くだけ吐いて、アメリアは肩を上下に動かしながらゼルガディスを睨みつけた。
 ゼルガディスは黙ってそれを聞いて、彼女が完全に黙ったのを見計らって静かに訊ねた。
「……すっきりしたか?」
 その言葉にアメリアはこくんと頷いた。
 相手が怒っている場合、しばらく好きなように言わせるだけ言わせた方が早く機嫌が直るとどこかの本で読んだことがあった―――本当に効果があるのかどうかは分からなかったが。だが、どうやら本当に効果があったようで、アメリアは上がった息を落ち着けるとけろっとした顔でゼルガディスを見てきた。
 機嫌は直っても自分が訊ねた質問には答えろ、という意味なのだろう。
 ゼルガディスは再び何度か咳をして、視線だけを天井に向けた。
「……別になんとなく気まぐれだよ、助けたのは」
「そんな言葉で納得すると思います?」
 アメリアの言葉にゼルガディスは付け加えた。
「街道は狭い一本道。そのど真ん中で襲われている人間。しかもその相手がただの盗賊じゃなかったら助けないわけにもいかんだろ。
 だいたい『困っている人を助けるのが正義ってもんです』って、夜中俺の耳元で囁き続けて問答無用に洗脳(インプット)したのはお前だろ?」
 ゼルガディスは嘆息した。天井から少し離れた席でクラヴィスと談話しているカストルとポルックスに視線を移す。出来るだけ声を潜めて――アメリアにしか聞こえないほどの声で――呟く。
「あの2人……聞いた話の断片じゃあなんかやっかい事に巻き込まれているらしい。
 そうすると、あいつらを助けた俺は仲間だと思われている可能性が高い」
「また襲ってくる可能性があるということですか?」
「多分な。それよりクーから聞いたんだが……面白い石買ってもらったんだって?」
 突然の話題変換にアメリアは一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐににっこり笑う。
 自分の咳の隣においてあったうさぎの顔をしたリュックサック(クラヴィスお手製)から手のひらサイズの紅い石を取り出す。
「これです。きれいでしょ?」
 中心に『処女』の紋章が刻まれた石。その石を見て、ゼルガディスが少しばかり驚いた顔をする。身を捩らせて振り返り、2人の少女を見た。
「……あいつらも似たような石持ってるぞ?」
「え?」
 その言葉にアメリアも怪訝な顔をした。


「確かに似てますね」
 アメリアの石を見ながらポルックスは言った。自分の聖石を取り出して、アメリアに見せる。
「これがわたしたちの家に伝わっている石です」
「確かにそっくりですね。形とかは違うけれど、中央に十二宮(ゾディアック)の紋章が刻まれている辺り」
「私たちの家出は代々この石を『双子宮』が刻まれていることから≪双子宮(ジェミニ)≫と呼んでいます」
 ポルックスの言葉にアメリアは自分の石を見つめた。
「じゃあわたしの石はさしずめ≪処女宮(ヴァルゴ)≫てところかしら?」
 女たちの話を聞きながらゼルガディスは視線をクラヴィスに向けた。
 クラヴィスは彼女たちの話も聞かずに隣のテーブルでひじをついて頭を抱えながら何かをぶつぶつ呟いていた。
 何度か咳をしながらゼルガディスは彼に声をかける。
「なにやってんだ? クー」
「―――ちょっと待て……」
 ゼルガディスを右手で制しながらクラヴィスが言ってくる。
「待て待て待て、ヴァレンタイン家(うち)にもそんなような石があったような気がするぞ……」
 その言葉にアメリアたちも反応して彼の方を見る。ゼルガディスが呆れた声をあげた。
「『気がする』って自分の家のことだろ?」
「家のこと全て知ってる奴がこの世界のどこにいるってんだ―――確かくそ親父が妙に大事に雑巾で磨いていた気がする……何の石だったか……」
 頭を抱えるクラヴィスにアメリアは首を傾げた。
「……魔道士協会でセイルーンのおじさまのところに繋いでもらえばいいじゃないですか」
 魔道士協会が有料で一般市民に提供しているサービスの一つにヴィジョンという魔法を使った伝言サービスがある。それを使えば、どんなに遠く離れた場所でも連絡が取り合えるということで、結構世界では重宝されているサービスである―――もっとも、魔道士協会がある大きな街でしか使えないのと、利用するのに少しばかり値が張るのが欠点としてあるのだが。
 アメリアの提案にクラヴィスはすぐさま首を横に振った。
「あの親父と連絡取るなんてまっぴらゴメンだ」
「まあ別に調べなくても構わんだろ。二つの石がここにあるのも単なる偶然のような気がするし」
 ゼルガディスの言葉にアメリアは自分の石を見つめた。
(……偶然なのかな……?)
 なんとなくそんな思いが脳裏を過ぎる。
 彼女の『勘』はあまり外れたことはなかった。



「クー、ちょっと……」
 夕食前、のんびり時間を過ごしていたクラヴィスにゼルガディスが手招きをした。怪訝な顔をして近づいてくるクラヴィスと共に外に出ると、ゼルガディスは辺りを気にしながら呟いてくる。
「子猿娘どもが狙われてるのは聞いたな?」
「子猿……? ああ、カっちとポーちゃんのことね」
「……またみょーな呼び方つけやがって……まあいい。聞いたな?」
 ゼルガディスの問いにクラヴィスは肩をすくめた。
「聞いたよ。身内から命を狙われてんだって? 他人のこと言えないが大変だよな」
 彼もまた権力争いに巻き込まれて、身内から命を狙われかけていた男だった。すぐにやられるほど神経か細くないので、何度か返り討ちにしたりしたが、今はもう全て解決済みなので襲われることはなくなったが。
 クラヴィスの言葉にゼルガディスが頷く。
「あいつらを襲っていた三人組―――そのまま森に逃げていったから追いかけはしなかったんだが……」
「再び襲ってくるとなると、一番近くのこの街にいるとまずいってことか……こりゃ明日一番に出てった方が良さそうだな。一応夜も交代で起きていた方が良さそうだし」
「ああ、そうだな」
 ゼルガディスが頷くと、クラヴィスは彼の顔を覗き込んだ。
「……見張ってる最中に爆睡とかすんなよ?」
 その言葉にゼルガディスは小さくため息を吐いた。
「……そこまで落ちぶれちゃいないよ。
 にしても―――どうしてこう俺たちの周りにゃやっかい事を運んでくる女が多いのか……」
「ああ、そりゃあれだろ」
 思いついたようにクラヴィスが言ってくる。
「うちの家系異性運ゼロだからな。ばーさんにしろ親父にしろオレにしろ。
 お前もせいぜい気をつけるこった」
 ケタケタと笑って宿に入るクラヴィスを見送りながら、ゼルガディスはゆううつな顔をした。
「……それって笑えることなのか? おい……」
 その呟きは風に流れて消えた。


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5709ああんここにもうさリュックがVv雫石彼方 E-mail 2/17-02:20
記事番号5706へのコメント


うぃーっす、雫石でーっす。
ディズニーランド帰りで恐ろしく眠いでーす。

なんだかいろんな石が出てきて面白いことに(?)なってきただすな♪
にしても、≪双子宮(ジェミニ)≫とか≪処女宮(ヴァルゴ)≫とか、おいらにはさっぱり意味不明っす。ねんジーいろんなこと知ってるのね〜。
あとは、ゼルの風邪がすごく心配。おばあさんが言ってたように、変な病気もらってきちゃったのかしら・・・・?ハラハラですよ全く。

ではでは、短いけどこれにて〜。

P.S クーちゃん、自分で絵が上手いと思ってたのか・・・・木がどてかぼちゃなのに?(笑)





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5716クーちゃんが夜なべをして〜♪ねんねこ E-mail URL2/18-03:12
記事番号5709へのコメント


>うぃーっす、雫石でーっす。
>ディズニーランド帰りで恐ろしく眠いでーす。

ディズニーランドか……片道45分。しかも一本で行けるのにここ4年ほど行ってない気が……(汗)
雫ちゃんの家からは恐ろしく遠いものね。お疲れ様っす。

>なんだかいろんな石が出てきて面白いことに(?)なってきただすな♪
>にしても、≪双子宮(ジェミニ)≫とか≪処女宮(ヴァルゴ)≫とか、おいらにはさっぱり意味不明っす。ねんジーいろんなこと知ってるのね〜。

あのね、英和辞典にのってたのVV
zodiacを調べるとたいていの辞書は載ってるみたいです。絵とかもついてる親切な辞書もあるにょ。
星座を調べると結構出てくるよ。英和辞書はネタの宝庫(笑)

>あとは、ゼルの風邪がすごく心配。おばあさんが言ってたように、変な病気もらってきちゃったのかしら・・・・?ハラハラですよ全く。

うーみゅ。それは秘密です(爆)

>ではでは、短いけどこれにて〜。

うにょろ〜ん♪レスありガとーvv

>P.S クーちゃん、自分で絵が上手いと思ってたのか・・・・木がどてかぼちゃなのに?(笑)

そこが彼の唯一のかわいいとこなのでは(笑)

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5713姫の家出用リュック♪桐生あきや 2/17-18:14
記事番号5706へのコメント


 ………これか、一坪さんが付けてくださったというコメントクリアの確認は………。何か一気に力抜けたっす(笑)

 どもども、桐生です。メールありがとう。遠慮なくもらってってくださいな(^^)
 放っておくと埋もれるばかりだし(笑)

 いかん、メールではないのだ。感想をかかねば。
 色々な伏線がでてきて、もういまからすごく楽しみだす。
 ご機嫌斜めの姫が可愛かった♪
 ウィルパパりん(笑)のところの魚さんが喋るってことは、そのうちアメリアのところのヴァルゴも喋ったりするのかなぁ。魚さんのほうはなかなか良さげな性格のようだし(笑)、どうなんだろう。
 他の星座級も登場したりするの? サジタリアスとかレオとか。
 ゼルはやっぱり変な病気拾ってきたんじゃ……、あの剣も謎のままだし。
 うわーん、続きが気になるよう(><)
 ……って、身も蓋もない感想だなオイ(汗)
 ごめん。ではでは、桐生でした。

 追伸:重くて分厚いのに、わざわざもってこなくってもいいよ。
    それは大変だよ。(^^;
    多分そのうちお金できたら図書館じゃなくて自分で手に入れると思うし。

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5717そしてゼルがまた慌てて探すという(笑)ねんねこ E-mail URL2/18-03:20
記事番号5713へのコメント


> ………これか、一坪さんが付けてくださったというコメントクリアの確認は………。何か一気に力抜けたっす(笑)

でも出来てありがたい人間のひとり。
やったからねーわたしも。

> どもども、桐生です。メールありがとう。遠慮なくもらってってくださいな(^^)
> 放っておくと埋もれるばかりだし(笑)

というわけで遠慮なしにいただくだす(笑)
月曜日辺りに出るかと……土・日は更新できないっぽいです。

> いかん、メールではないのだ。感想をかかねば。
> 色々な伏線がでてきて、もういまからすごく楽しみだす。
> ご機嫌斜めの姫が可愛かった♪
> ウィルパパりん(笑)のところの魚さんが喋るってことは、そのうちアメリアのところのヴァルゴも喋ったりするのかなぁ。魚さんのほうはなかなか良さげな性格のようだし(笑)、どうなんだろう。

それはまた後程ということで。
なんか魚さんって呼び方いいなぁ(笑)
ご機嫌斜めの姫。機嫌直す魔剣士殿が何とも情けないようで。
まあ姫に弱い彼もまたよろし(1人で納得)

> 他の星座級も登場したりするの? サジタリアスとかレオとか。
> ゼルはやっぱり変な病気拾ってきたんじゃ……、あの剣も謎のままだし。
> うわーん、続きが気になるよう(><)
> ……って、身も蓋もない感想だなオイ(汗)

とりあえず、全ての星座が出てくる予定です。
FF某には蛇使い座まで隠しイベントに出てきましたがそれはないです(笑)
あの剣は……5でちょろっと出てくるのん。
続き……さっさと出そうよねんねこさん(笑)

> 追伸:重くて分厚いのに、わざわざもってこなくってもいいよ。
>    それは大変だよ。(^^;
>    多分そのうちお金できたら図書館じゃなくて自分で手に入れると思うし。

そうかにょ。じゃあ持ってこないね(死)
いや別にそんなにめちゃ重っ!てわけじゃないからよかったのに(^^)
とりあえずまあねんねこのお勧めはその本だす、ということで。
頑張ってね!
というわけでねんねこでした。

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5715THE DAY OF JUDGMENT 5ねんねこ E-mail URL2/18-03:04
記事番号5648へのコメント


『アメリアさん』
「な、なんですか?」
(ふ、双子ってやっぱりぴったり息が合うもんなのかしら……?)
 カストルとポルックス、両方に同時に名前を呼ばれて、アメリアは少しばかり圧倒されて答えた。
 宿屋の一室。もともとツインルームのため、ベッドが一つ足りないのだが、そこはアメリアがソファーで寝ることで解決した。彼女がソファーで寝ると言い出したとき、当然というかやはりというかゼルガディスがさりげなく反対意見を申し立てたのだが、『狙われている人たちで寝かせる気なのか』というクラヴィスの意見と『じゃあ立って寝た方が?』と眠ければ立ったままでも寝れるという特技を持つアメリアの反論によってあえなく棄却された。
「あの……わたしたちどうすればいいんでしょうか?」
「どうすればって?」
 ソファーに枕と掛け布団をおいてアメリアが聞き返した。カストルは戸惑いながら問い直してくる。
「えっとだから、今日一晩寝たふりをするとか……こういう場合ってたいてい夜中の牛三つ時に襲ってくるのが定石じゃないですか。そういう時のための対処法とかやっぱりあるんでしょう?」
「いや特にそーいう対処法は聞いたことないんですけど……」
 沈痛な面持ちでアメリアがうめいた。
 何度か『人に狙われる』という経験はあるものの彼女はこういう状況下のエキスパートではない。どんな対処法があるか、と聞かれても困るし、いつ襲ってくるかわからない人間相手に対処のしようもない。眠ることが出来る状況がある時は素直に寝ておくべきだと思うのだが。
 しばし考え込んでアメリアが壁を見る。その壁の向こうには、彼女に掛け布団と枕を提供してくれたゼルガディスとクラヴィスが待機していて、彼らの話だと、今日一晩交代で見張ってくれるらしい。
「まあ、大丈夫ですよ。隣に番犬もいることだし」
「……ゼルガディスさんとクーちゃんさんのことですか?」
 ポルックスの言葉にアメリアはにっこりと微笑んだ。
「ゼルガディスさんもクラヴィスさんもそこら辺の兵士なんかよりはるかに強いですし、なにかあっても二人が何とかしてくれます。
 わたしたちが今出来ることは、ちゃんと睡眠をとって、ゆっくり体を休めることです。
 明日は朝早いですからね。ちゃんと休んでおかないと体力持ちませんよ」
「アメリアさん、お2人のこととっても信頼してらっしゃるんですね」
 カストルの言葉にアメリアは自信たっぷりに笑ってみせた。
「当然です! カストルさんだってポルックスさんだって、互いのことを信頼してらっしゃるでしょう?」
 アメリアの言葉に双子の姉妹は顔を見合わせ、同時に大きく頷いた。
 その様子に満足そうに微笑んで、アメリアは二人にもう寝るように促した。


   THE DAY OF JUDGMENT   SENTENCE 5


「一つ聞いてもいいか?」
 毎晩かかさずやっている剣の手入れを今日もしているゼルガディスをぼんやりと眺めながらクラヴィスが訊ねた。
「お前、剣二つ抱えてどうやって旅してたんだ?」
「え? いや普通に二本とも腰にさしてだけど?」
 何度か咳を繰り返して答えてくるゼルガディス。その答えに疲れたような返事を返してクラヴィスはベッドに横になる。
 その様子にゼルガディスが剣から視線を外さずに訊ね返す。
「何で俺をおいていった?」
「……怒ってるのか?」
 クラヴィスの問いにゼルガディスはしばし黙った。
 別に怒っているわけではない。彼は首を横に振って否定する。
「―――いや、怒ってない。ただ、そんなことした理由が思いつかないだけだ」
 自分の言葉に彼が小さく息を吐くのがわかった。
「お前、最近悩み事あるのか?」
「は?」
 突然の話題転換にさすがに怪訝な顔をしてゼルガディスはクラヴィスの方を見る。クラヴィスは彼の方を見ずに天井を見つめたままそのまま続けてくる。
「アメリアちゃんが言ってたんだ。『お前が最近妙に明るく振る舞ってるのは、悩み事を隠してるせいじゃないか。昔の自分みたいに悩みをひた隠ししているんじゃないか』ってな。
 彼女は、自分といるせいでお前が窮屈な思いをしているんじゃないかって変な勘違いしてたみたいだけど」
「そんなわけないだろ……」
 呆れたように言ってくるゼルガディスにクラヴィスは寝たまま器用に肩をすくめた。
「わかってるよ。実際彼女にもそれはないと言った。
 だけど、オレにはお前に何にも悩みがないとは言いきれないからな。とりあえず、1人にさせてゆっくりと考えさせる時間を与えてみたんだが―――」
 そこでゆっくり上半身を起こす。後ろ頭を掻きながら呆れ顔をしてみせた。
「アメリアちゃんはお前が近くにいなくて始終そわそわしてるし、お前はお前で途中で見知らぬ双子娘を拾ってくるし―――」
「子猿娘どもは不慮の事故だ」
 顔を顰めてゼルガディスが言う。
「―――にしても、アメリアがそんなことを……」
 呟くゼルガディスにクラヴィスが訊ねてくる。
「で? 実際のところどーなわけ? お前、オレらすら話さないことあるからな。あんまり溜め込むとパンクするぞ?」
「別に悩みという悩みはないさ。ただ―――」
「ただ?」
「……焦ってることは確かだな。
 あんな子供みたいな顔してても、あと2年も経ちゃあ二十歳だろ? 王族ってぇのは普通十代でもう結婚して幸せに暮らしてるのにあいつは―――」
「……『王族』とか出すと彼女怒ると思うぞ? 彼女は『王族』よりもまず先に1人の『女の子』なんだからさ」
 クラヴィスの言葉にゼルガディスは剣を手入れする手を止めた。長剣のきれいな刃を眺めながらぽつりと呟く。
「そんなことわかってるさ。だけど、あいつが『フィリオネル=エル=ディ=セイルーン』の娘である限り―――『セイルーン』の名を持つ限り、あいつがどんなにあがいても、『セイルーン王家』というのは消えやしない。王族であることには変わりないんだ。
 二十歳過ぎても結婚してない王族なんて、まるで『残り物』みたいで体裁悪いだろ?」
「いいんでないの?」
 クラヴィスが微笑んで言ってくる。
「お前が思っているほど彼女は弱くないさ。
 たかがそんなことで笑われたって彼女はお前さえいればそれで十分なんだと思うよ?」
「……そうなのかな?」
「そうなんだよ、多分な。
 ま、オレたち男にゃ女心はいつまで経っても理解できんさ」
 肩をすくめて言ってくるクラヴィスにゼルガディスは長剣を鞘にしまいながら言った。
「同感」



「……気づいてるか?」
 明かりが消えた真っ暗闇の中。聞き逃してしまいそうなほど微かなクラヴィスの声をゼルガディスは聞き逃さなかった。窓の近くに寄って、外を確認する。
 静かな静寂に包まれた中、聞こえてくるのは夜行性の鳥たちの鳴き声と、虫たちの声だけ。ゼルガディスもまた小さな声で呟く。
「……気配はないが、5,6人ってところだな」
 気配がない―――気配を隠すことが出来るということはそれなりに技量は持ちあわせているのだろう。5,6人というのはきついが、それでも勝ち目がないというわけではない。
 ゼルガディスはクラヴィスがいると思われる方に目をやる。
「クラヴィス、お前剣使えるな?」
「……申し訳程度になら」
「じゃあ、あの長剣使え。使ったことないが、多分使えるはずだ」
「……わかった」
 極力気配を殺しながらクラヴィスがゆっくり移動する。ベッドサイドにおいてあった長剣の鞘を掴んで、そのまま部屋の扉の方へ移動する。
 目を閉じることで聴覚を敏感にさせる。
 廊下の階段がぎしりと微かに軋んだ音を立てた気がした。
「……ゼル!」
 小さく叫びながら、クラヴィスは一気に扉を開いた。廊下をゆっくり進んでいたらしい黒ずくめとばったり鉢合わせして、お互い少しばかり慌てた。
 その様子にゼルガディスは壁を思いきり蹴りつけた。奇襲だとアメリアたちに知らせるためである。そのまま呪文を唱えながらクラヴィスに加勢しようとして、ふと視界の端の窓の外で人が動いたのを捉えた。
 予定変更。窓を乱暴に開け、レビテーションで空を飛んでいた黒ずくめに向かって、呪文を解き放った。
「ヴァ・ル・フレア!」
 生み出された炎は完全無防備だった黒ずくめの断末魔と共に暗闇を一瞬だけ明るくさせた。


 先に平常心を取り戻したのは、クラヴィスだった。抜き身の剣を持っている目の前の黒ずくめに対して、ゼルガディスに借りた長剣を鞘から出そうとして―――
「あれ?」
 状況的に不似合いな間の抜けた声をあげる。その声を聞いたのか、外に魔術を炸裂させたゼルガディスが叫んでくる。
「どうした!?」
「いやどーしたもこーしたも―――」
 クラヴィスが攻撃してこないのをチャンスととって黒ずくめが剣を振りかぶってきた。それを何とかかわしながら、彼は声をあげる。
「剣が鞘から抜けないんだよっ! 接着剤でくっつけたのか!?」
 その言葉にゼルガディスの返事はなかった。代わりに再び黒ずくめが突っ込んでくる。狭い廊下。何度も逃げられるわけはない。とっさの判断でクラヴィスは迷わずその長剣を放り出した。
 そのまま黒ずくめの剣を両手で挟み込むようにして受け止める。
「即席技、真剣白刃取りっ!」
 妙なことを叫びつつ、そのまま黒ずくめの鳩尾に蹴りを入れる。
 クラヴィスから黒ずくめが離れた瞬間、ゼルガディスが放ったのだろう、二度目の爆音が響き渡る。同時にゼルガディスの声が耳に入ってくる。
「クラヴィス、これ使え!」
 自分に向かって放り投げられたものを受け取ってみれば、それはゼルガディスの愛用の方の剣だった。ふらつきながらも立ち上って剣を構える黒ずくめにクラヴィスはブロードソードを抜き放って、床に転がった役立たずの長剣をゼルガディスに向かって蹴りつけた。
「自分で言うのもなんだが包丁さばきは得意だからな」
 隙なく剣を構えてクラヴィスはにやりと笑った。
「きれいに三枚におろしてやるぜ!? イワシくんっ!」
 だん!
 一気に踏み込んでクラヴィスは黒ずくめとの間合いを一気に詰めた。


「剣が鞘から抜けないんだよっ! 接着剤でくっつけたのか!?」
(ンなわけないだろ!)
 クラヴィスの素っ頓狂な台詞に心中でツッコミを入れながらゼルガディスは次の呪文を唱える。腰につけてあった愛用のブロードソードを鞘ごと外して、再び外に呪文を解き放つ―――今度は相手も慎重になって当たりはしなかったが。
 そのままクラヴィスに向かって剣を放り投げた。同時に叫ぶ。
「クラヴィス、これ使え!」
 外で待機していたらしき黒ずくめの動きを視線を追って把握しながら、ちらりとクラヴィスの方に視線を動かせば、彼は何とか剣を受け取ったようだった。
 イワシだの三枚おろしだの意味不明なことを叫んでいる彼が鞘から抜けなかったという剣を返品して来たことに気づいて、そのままそれを取りに走ると踵を返して、窓から身を投げ出す。二階からの遠距離攻撃が通じないのなら、近距離での白兵戦しかない。
 器用に地面に着地して、ゼルガディスは長剣を鞘から抜こうと試みた。が、剣はあっさりと鞘から抜け、銀色の刃を見せる。
「あの馬鹿……! ちゃんと抜けるじゃねぇか!」
 言いながら、自分に生まれた隙を見つけて一気に間合いを詰めてきた黒ずくめに慌てて剣を構える。軽く黒ずくめの剣を流したつもりだったのだが。
 ぱきん。
「へ?」
「なっ!?」
 乾いた音を立てて、折れた剣に間の抜けたゼルガディスの声と驚愕の黒ずくめの声が見事に唱和する。何が起こったのか理解できなかったのだが、とりあえず黒ずくめを斬りつけてゼルガディスは長剣を掲げる。
「……妙に切れ味いいんだが……」
 普通の剣ではありえないような切れ味の良さである。斬った黒ずくめもすでに事切れていてぴくりとも動かない―――いろいろと聞き出すために即死させるつもりは毛頭なかったのだが。
 なにはともあれ、疑問に感じている暇はない。背後から襲ってくる黒ずくめを剣を向けて、やはり即死させた。
 ゼルガディスの頭の上で、窓ガラスの割れる音が盛大に響き渡ったのはその時だった。



 悠長に寝ていられる時間はそう長くもなかった。
 ふと、人の気配を感じてアメリアは目を覚ました。すぐ後に響くゼルガディスの合図にその人の気配が自分の気のせいではないことを確信させた。
 アメリアはすぐさま起き上がって、ゼルガディスの合図で目が覚めたのだろう、寝惚け眼の双子の姉妹に素早く指示を出した。
「今すぐベッドの下に入って! 早く!」
 そこら辺の兵士よりは腕が立つと自負しているアメリアもいくらなんでも戦闘経験が皆無な自分の身も満足に守れないような人間を二人もかばいながら敵と向き合うような真似は出来ない。ならば、彼女たちを隠れさせて自分は黒ずくめ撃退に専念するのが今の状況下で最善の案である。
 外で何度か爆音が響き、廊下で剣が重なり合う音が聞こえる。
 ゼルガディスとクラヴィスがそれぞれ戦っているのだろう。今すぐ加勢して悪人を張り倒したいところだが、そうもいかない。自分には自分の役目がある。
 口の中で明かりの呪文を唱えたまま、アメリアは微動だにしなかった。今ここで、明かりをつければ自分たちがここにいるというこれ以上とない目印となってしまうし、かといって黒ずくめたちが入ってきた後で呪文を唱えているようでは遅すぎる。
 緊張気味に窓に視線を向けた瞬間。
 窓の向こうに映ったシルエットは、ゼルガディスのものでもクラヴィスのものでもなかった。
 窓ガラスが音を立てて割れる。ガラスの破片を避けるようにアメリアは少し後退して、唱え終わっていた呪文を放つ。
「ライティング!」
 部屋全体が明るく照らし出される。部屋の中央でアメリアと対峙していた黒ずくめが口を開いた。
「石と小娘どもはどこだ?」
「素直に答えると思いますかっ!?」
 言いながら一気に間合いを詰める。態勢を低くして、拳を振るうが黒ずくめはそれをなんとかかわした。続けざまに回し蹴りを放つがそれも結果は同じだった。
(強い!)
 焦る心を落ち着けてアメリアは心中で叫んだ。
 短期決戦でいかねばならない。黒ずくめがカストルとポルックスがどこに隠れているか気づいてしまう恐れもあったし、二人が恐怖に耐え切れず声をあげるかもしれないからだ。もしそうなれば、この男の能力を見る限り、自分では対処できない。
 と、最悪な状況はすぐに訪れた。
「あっ!」
 部屋にカストルの声が響く。ベッドから蒼色の石が転がってくる。次いで顔を出すカストル。
「そこにいたのか」
 低いその黒ずくめの声に石に手を伸ばしかけたカストルの顔が引きつった。彼女はそのままゆっくりと顔を上げた。その視線が黒ずくめの視線とぶつかる。
「……あ……」
 恐怖に震える声。黒ずくめはカストルの姿を確認すると素早く床を蹴った。まず先に≪ジェミニ≫を回収し、抜いた剣をそのままベッドに突き刺そうとする。
「させませんっ!」
 アメリアが後ろから再度殴り掛かる。その場ではかわしきれないと判断したのか、黒ずくめは少し跳躍をして、壁の方に寄る。
 その隙にアメリアは動けない様子のカストルをベッドから引きずり出した。その瞬間、もう一つのベッドからポルックスが飛び出してくる。
「石、返してっ!」
 叫ぶポルックス。そのまま黒ずくめに向かって無我夢中で突っ込んでいき―――
 少女を横から抱え込んで制したのは、割られた窓から入ってきたゼルガディスだった。
 ポルックスが声をあげる。
「離して! 石、取り返すの!」
「やめろ、お前が行っても殺されるのがオチだ!」
 言うことを聞かないポルックスにゼルガディスが叫ぶ。
 部屋にクラヴィスが飛び込んでくる。
「ゼル! アメリアちゃん!」
 部屋に入った瞬間、黒ずくめの姿を認めて、クラヴィスが素早く呪文を唱える。
 部屋に入ってきた新手に戦況不利を悟ったのか、黒ずくめも同時に呪文を唱え、完成したのは、黒ずくめの方が早かった。
 壁に手をつき、解き放つ。
「ブラスト・ウェイブ」
 ごがぁっ!
 壁がすごい音を立てて外が軽く通れるほど崩れる。その奥は、夜の闇が広がっている。
「待ちなさ―――」
「アメリア!」
 カストルを床において、声をあげて追撃しようとするアメリアをゼルガディスが制す。その隙に黒ずくめは壁をくぐり、夜の闇へと溶け込んでいった。
 静かにクラヴィスが穴に駆け寄る。黒ずくめが隠れていないことを確認して振り返る。
「みんな、無事か?」
 その言葉にアメリアとゼルガディスが小さく頷く。
 まだポルックスを抱えたままだということに気づいたゼルガディスが彼女を解放する。彼女はゼルガディスをすごい剣幕で睨みつけた。
「どうして石を取り返しに行っちゃだめなんですか!?」
 その言葉にゼルガディスは肩をすくめて静かに答える。
「自分の身も満足に守れないお前があの男相手に戦えると思ってるのか?
 ―――石は奪われても取り返せる。だけど、お前の命は奪われたら取り返せないんだ。わかるな? ポルックス」
 ゼルガディスの言葉に彼女は小さく俯いただけだった。



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5719とーとーレスの勇気がっ!あごん E-mail 2/18-19:47
記事番号5715へのコメント

こんばんは〜(オドオド)。
あごんとゆー者です(ビクビク)。
とーとー調子に乗ってレスりに来ました(ふるふる)。

盛り上がって参りましたねっ!
戦闘場面好きな私にとってはたまらないお話でした!

実は私も双子ちゃん(爆)なのです。
ですのでカストルとボルックスが他人には思えません(笑)。
冒頭の部分ですが。
結構本気で双子はしょっちゅうハモって喋ります。
何気ない鼻歌とかも、突然同じ歌の同じ部分から同時に歌う時もあります。
いやいや本当です。

それにしても・・・。
「ヴァルゴ」とか「ジェミニ」とか聞くと。
某聖闘士が頭に浮かぶ20代半ばのあごんです(笑)。
昔はこれで燃えたものです(笑)。
って知りませんよねぇ?

石も奪われ、いよいよ大きく動き出した審判の日!!
目が話せません!
口で話すものですから、人間は!

どかばきぐちゃりめちゃっっ

目が離せません!!
続きをお待ちしております!!
あごんでした!!

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5730さあようこそねんねこわーるどへ(爆)ねんねこ E-mail URL2/19-10:39
記事番号5719へのコメント


>こんばんは〜(オドオド)。
>あごんとゆー者です(ビクビク)。
>とーとー調子に乗ってレスりに来ました(ふるふる)。

調子に乗るだなんて(><)
ようこそねんねこわーるどへ!
殴り倒したくなる失礼な奴以外誰でも入国大歓迎なところです(笑)
もうあごんさんなら大歓迎ですよぅ(><)

>盛り上がって参りましたねっ!
>戦闘場面好きな私にとってはたまらないお話でした!

戦闘場面……へなちょこ戦闘場面ですが(汗)
とりあえず今回は戦闘場面多いですから、頑張って書こうと思います!
序盤最初の盛り上がりというところでしょうか……

>実は私も双子ちゃん(爆)なのです。
>ですのでカストルとボルックスが他人には思えません(笑)。
>冒頭の部分ですが。
>結構本気で双子はしょっちゅうハモって喋ります。
>何気ない鼻歌とかも、突然同じ歌の同じ部分から同時に歌う時もあります。
>いやいや本当です。

をををををを双子ちゃん(><)
実は、高校の時にも双子ちゃん(しかも一卵性)がいたのですが、同じ制服、同じ顔、同じ髪型だったので、冗談抜きでわかりませんでした(笑)
一番初めに名前を呼ぶ時、たいていみんな最後の発音があがって疑問形になる(笑)
その子達も結構はもってたから、双子ってのはそうなのかなぁ?と思ってたんですが……ひょぇええ、そうなんだぁぁぁ(^^)

>それにしても・・・。
>「ヴァルゴ」とか「ジェミニ」とか聞くと。
>某聖闘士が頭に浮かぶ20代半ばのあごんです(笑)。
>昔はこれで燃えたものです(笑)。
>って知りませんよねぇ?

……もしかして、聖○ですか?(爆)
すみません。なんか見てた記憶が……
そんな私は見た目19、精神年齢35歳の立派なおばさん(爆)
何度やってもどうしても精神年齢が実年齢よりはるかに上回ります。
何ででしょうか……やはし、ヤマトのポスターを見ただけで、『うっちゅうの彼方〜イスカンダルへ♪』と口ずさむ辺りがいけないんでしょうか……(汗)
というか、今の若い子達はこの歌知ってるのかしら……(爆)

>石も奪われ、いよいよ大きく動き出した審判の日!!
>目が話せません!
>口で話すものですから、人間は!

すみません。真夜中ここの部分で部屋に私の馬鹿笑いが響き渡りました(汗)
ええ、そうですとも!人間ってぇのは口で話すものです。目では話せません!(笑)

>どかばきぐちゃりめちゃっっ

……間違えたんですね(笑)

>目が離せません!!
>続きをお待ちしております!!
>あごんでした!!

いえっさ!(><)
何とか続きをださせていただきます!
最後までひょろっと読んであげてくださいね!
それでは!


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5732親戚再び(笑)雫石彼方 E-mail 2/19-14:06
記事番号5715へのコメント


どこまで悪足掻きしてネットしてられるか!?ってな雫石っす(笑)
とりあえず今日は頑張るぞ!!

んで、ゼルが拾ってきた剣。クーちゃんには使えなかったってことは、持ち主を選ぶ剣なのかしら?そしたら私・・・・似たようなマンガ描いてる(^^;)まあ私の場合は、誰にでも使えるけど力の足りない人が使うと暴走しちゃうってやつだから、ちょっと違うんだけど。

まあそれはさておき、展開がめまぐるしく動いていって、まったく予測できないだす。帰ってきた時には更に進んでるんだろうなぁ・・・・(遠い目)

ではではっ!!

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5734実は生き別れの姉妹だったり(爆)ねんねこ E-mail URL2/19-14:58
記事番号5732へのコメント


>どこまで悪足掻きしてネットしてられるか!?ってな雫石っす(笑)
>とりあえず今日は頑張るぞ!!

がんばって!
というか、投稿する前にひょろっとのぞいた時はなかったのに、文修正して、投稿する時にレスがあった時はちょっと驚いたよ(笑)
なんだか今メールしたら、すぐ帰ってきそうな勢いだね(笑)

>んで、ゼルが拾ってきた剣。クーちゃんには使えなかったってことは、持ち主を選ぶ剣なのかしら?そしたら私・・・・似たようなマンガ描いてる(^^;)まあ私の場合は、誰にでも使えるけど力の足りない人が使うと暴走しちゃうってやつだから、ちょっと違うんだけど。

やあ、遠い親戚(笑)何度目だおい(笑)
やっぱりわたしってば雫ちゃんと意見が合うのねVv
とりあえず、持ち主を選ぶ方なので、問題なし……だと思う。
近いうちにお手紙送ります。メールじゃなくて、切手で出す奴。

>まあそれはさておき、展開がめまぐるしく動いていって、まったく予測できないだす。帰ってきた時には更に進んでるんだろうなぁ・・・・(遠い目)

どうだろう……(爆)
行き当たりばったりに書いてるのでどうかわからないんだけど(死)
しーかーもー、また変な話を思いついてそっちの方書き始めてるし(爆)
いい加減新しいの書かずに中途半端な続きを書こうよねんねこさん。

では!
合宿、頑張って来てね!

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5733THE DAY OF JUDGMENT 6ねんねこ E-mail URL2/19-14:46
記事番号5648へのコメント

「……またあの人は寝坊か……」
 半分苛立ち、半分呆れの声をあげながらエドワードはウィルフレッドの寝室に向かっていた。
 どうもどうしても10時間は睡眠がとりたいらしく、夜ふかしすればするほど、それに比例して、起きる時間も遅くなる習性が彼にはあった。
 とは言っても、朝食をとるのに起こさないわけもいかない。彼が寝坊するたびエドワードは叩き起こしに行っていた。
 ウィルフレッドの寝室の前に立つと、彼は扉をノックした。
「父上、入りますよ」
 返事はない。いつものことだ。今頃まだ夢の中で元気に羊と格闘してるんだろう―――あの義父ならそんな夢を見た、と言ってきても大して驚かない。
 返事がないまま扉を開ける。ふと、彼の髪が風になびいた。
「……風?」
 怪訝な顔で呟いた。
 こんなくそ寒い冬に窓を開けて寝る馬鹿はいない―――いくらウィルフレッドが馬鹿に見えても、そこまで馬鹿ではないはずだ。メリハリをつけてボケをかます人間だと知っているから、余計に疑問を感じる。
「―――まさかっ!」
 嫌なことを思いついて、エドワードは部屋の奥のベッドに駆け寄る。いかにも人が寝ているような膨らみがあるが―――
 ばっ!
 掛け布団を一気に剥ぎ取って、エドワードは自分の予想通りの展開に思わず痛む頭を抱えた。
「……やられた……」
 剥ぎ取った掛け布団の下にあったのは、ひもで丸められた布団と、『ちょっと遊びに行ってくるね(はぁと)後はよろしく♪』と書かれた紙一枚だけだった。


  THE DAY OF JUDGMENT   SENTENCE 6


 奇襲をかけられてから3日。とりあえず、方向転換してゼフィーリア方面からセイルーン方面へ逆戻りしていた。単なる時間稼ぎのつもりだったが、3日の間、まったく襲撃されなかったところを見ると上手く誤魔化しきれたのかもしれない。
 が、道中は決して楽しいものとはいえなかった。
 それは当然のことだった。命を狙われ、しかも大事な聖石も奪われたのだ。これで笑ってのんびり遠足気分で、などとはとてもいかない。
 殺されるかもしれないという恐怖とストレスが溜まる一方のカストルとポルックスの気を紛らわそうとしたのは、クラヴィスだった。
「ほぉぉぉぉぉら、カっち、ポーちゃん、見ててごらん」
 いきなり声をあげたクラヴィスにカストルとポルックスだけでなく、アメリアとゼルガディスも怪訝な顔で彼の方を見やった。
 クラヴィスはウインクしながら、言ってくる。
「ハトが出るよハトが出るよ―――」
 小さく指を鳴らす。
「ほぉぉぉら出たぁぁぁっ!」
 クラヴィスが叫んだ途端、7、8羽のハトが突然ゼルガディスの身体からわいて出た。呆然と目を見開くゼルガディスをよそにアメリアと双子姉妹はおもわず声をあげる。
『にょをををををっ!?』
 空に舞い上がっていくハトたちからゼルガディスに視線を移して、アメリアが至極真面目に訊ねてくきた。
「ゼルガディスさんってば、わたしに内緒でハト飼ってたんですかっ!?
 いいなぁ! どうして言ってくれなかったんですかっ!」
「ンなわけあるかっ!」
 突拍子もない事を言い出すアメリアに何故か飛ばなかったハトを頭の上にのせたゼルガディスが即座にツッコミを入れる。
 今のハトは間違いなくクラヴィスの仕業だった。言葉で人の注意をそらしておいて密かにハトの召喚魔法を唱えていたのは気づいた―――なぜ自分を標的にしたのかはわからないが。少しでも二人の気を紛らわせようとしたのだろう。彼は細かな心配りが――特に異性に対しては――出来る人間だった。
 ゼルガディスの頭から離れないハトにクラヴィスが手を近づけると、ハトはすんなりと彼の手の方に移動した。ハトがいる方の指をぱちんと鳴らすと、ハトは消え、代わりにトランプが一枚現れる。それをクラヴィスは無造作に二枚に破った。
 それを手から離すと、たちまち二枚のトランプの残骸は二羽のハトに姿を変えて、大空に舞い上がった。
「どう? すごいでしょ?」
 クラヴィスがにっこり微笑むと、すっかりその鮮やかな手つきに魅了されたのか、二人は目を輝かせてこくこくと頷いた。
「どうやってやったんですか!?」
 訊ねてくるカストルに彼は指を横に振った。
「ちっちっちっ、手品師(マジシャン)は自分の手の内を明かさないものなのだよ、カストルくん」
 いつの間に手品師になったのか、クラヴィスのその言葉に彼女は少しばかりがっかりしたような顔をした。クラヴィスは苦笑して、再びハトを一羽召喚すると、彼女の腕に乗せてやった。きゃっきゃっと喜ぶカストルとポルックスを眺めながら、クラヴィスは微笑んだ。
「さすがだな」
「何が?」
 ぽつりと言ってくるゼルガディスにクラヴィスが怪訝な顔をした。
「……俺はこーいう場合の対処の方法をよく知らないんだ」
「ああ、そのことか」
 クラヴィスは言いながらもう一羽だけハトを召喚した。自分の腕に乗せて、あいた方の手でハトをからかう。しばらくその手を相手にしていたハトだったが、飽きたのか、それともうっとうしくなったのか、クラヴィスの腕から離れる。
「ま、オレもお家騒動に巻き込まれて神経きりきりさせた人間の一人だからね。二人の気持ちがよくわかるんだよ。
 少しだけ気を紛らわせればいいんだ。そうしたら目の前のことに夢中になって一時的でも辛いことは忘れられるから―――特にあの娘たちみたいなまだ小さな年頃はな」
「……15歳か……」
 ぽつりと呟く。自分が両親の死を偶然知って、いじけて心を閉ざしたのもその年だった。子供と大人の境目の気難しい年頃ではある。
「もう一つ聞いてもいいか?」
「何だ?」
 クラヴィスの言葉にゼルガディスは真っ直ぐ自分の頭を指差した。
「……どうして俺の頭にのっかって来るんだ?」
 先程クラヴィスの手から離れたハトは迷わず彼の頭の上にちょこんとのった。そのまま動こうとしないハトに、クラヴィスは苦笑いを浮かべながら答えた。
「さあ……巣っぽくて、卵が生み易いんじゃないかな?」
 その言葉にゼルガディスは慌てて頭を振ってハトを振り落とそうとした―――ハトの方も強情でなかなか飛び立とうとはしなかったが。



 裏道と言う裏道をアイルツは死にもの狂いで走り抜けていた。
 いつものように盗賊のねぐらからこっそりいただいた宝石類を詰めたバッグを抱え、いつもの場所に露店を開こうとした矢先、変な男に声をかけられ、そのまま逃げてきたのだ。
 盗賊の追手―――と言うわけではなさそうだった。ただ、客でもなさそうだった。殺気すらにじませて自分の目の前に立ったその男にアイルツは戦慄した。なんとなく自分の身の危険を感じて、そのまま有無を言わさず逃げてきたわけだが。
「訊きたいことがある」
 突然声が響いて、アイルツは目を見開いた。慌てて振り返る。そこに立っていたのは、先程の男だった。抑揚のない声で再び言ってくる。
「≪ヴァルゴ≫はどこだ?」
「し、知らねぇよ!」
 慌ててアイルツは首を横に振る。本当に≪ヴァルゴ≫なんて言う石など知らない。
 すると、男は言葉を変えて訊ねてきた。
「紅い宝石(いし)で中央に紋章が刻まれていたはずだ」
「……紋章……?」
 怪訝な顔でうめく。確かにそんな石なら持っていたはずだ。今はない。知り合いに売ってしまった―――厳密に言えば知り合いの連れの少女に、だが。
「わ、悪いな。もう売っちまったよ。おれのところにはない……な、なあ。もういいだろ?」
「その相手がどこに行ったか知っているか?」
「知らねぇよ……もうこの街にはいないこたぁ確かだが。な、もういいだろう?」
 アイルツの言葉に男は小さく頷いた。
「ああ」
 そのまま、彼に手のひらを見せる。アイルツは怪訝な顔をした。
「お前は用なしだ。役立たずめ」
「な―――」
 ようやくその男の行動の真意を理解する。悲鳴をあげかけ―――
 ごがぅんっ!
 街の裏道でとてつもない爆発音がして、火が燃え上がった。
 燃え上がる火の中、男は懐から石を取り出す。手の中に収まる紫色のその石の中央には、≪天秤宮(リーブラ)≫の紋章が刻まれていた。



「カストルちゃんとポルックスちゃんだね」
 そう声をかけられたのは、二人だけで一階の食堂に降りてきた時だった。
 裏街道沿いの小さな宿。追手も来ないし、いい加減野宿では完全に疲れが取れないので、今日ばかりはちゃんとしたベッドで寝ようということになったのだ。
 声をかけてきた宿屋の女主人は、二人の少女に一通の手紙を渡す。
「あんたたちの親戚って人から手紙を預かってるんだよ」
「……親戚?」
 怪訝な顔でカストルが訊ねた。親戚と言えば、自分たちの命を狙っている張本人たちである。カストルの言葉に女主人は頷いたきた。
「ああ、『必ず今日辺りここらへんを通るから渡してくれ』と言われてねぇ」
 その言葉にポルックスがぽつりと呟く。
「……なんだか、私たちの行動がばれてるみたい」
「みたいね」
 言いながらカストルは緊張の面持ちで手紙を開く。
 そこにはたった一文が記されてあった。
『≪ジェミニ≫を返して欲しければ、二人だけで来い』
 そう書かれた下の方には、場所と時間が記されている。場所はこの近くの森の中、そろそろ書いてある時間になる頃である。
「どうするの?」
 ポルックスの言葉にカストルはしばし考え込んだ。
 明らかに罠なのは、戦いになれていないカストルにも容易に想像がついた。だが、≪ジェミニ≫は大切な石なのだ。いつ取り返せるかわからない状況の中、少しのチャンスでも逃したくはない。
 ―――もし、命を狙われてきたら、死にもの狂いで戻ってくればいいだけのこと。ここには、ゼルガディスもクラヴィスもアメリアもいる。それに自分たちは一度命を狙われて奇襲されたにもかかわらずまだ生きているのだ。今度も絶対生きていられるような気がした。
 カストルはポルックスの顔を見る。カストルの瞳から彼女の言いたいことを察したのか、ポルックスは静かに頷いた。
「おばさん、ありがとう!」
 礼を言いながら、二人は準備をするために二階に上がった。



「ゼルガディスさんしか使えない?」
 アメリアの声が部屋に響く。
 ゼルガディスは静かに頷きながら、彼女に例の奇妙な長剣を手渡した。その長剣を怪訝な顔で受け取って、アメリアはゼルガディスの顔を見た。
 肩をすくめてゼルガディスは言う。
「抜いてみろ」
 その言葉にアメリアは普通に剣を抜こうとして―――抜けないことに気づき、そのまま力を込める。何がなんでも抜こうと顔を真っ赤にするアメリアの頭を荷物から取り出したハリセンで軽く小突いて、ゼルガディスは彼女から剣を取り上げた。
 腰をかけていたベッドから立ち上って、ゆっくりと剣を抜く。
 あっさりと銀色の刃を見せる長剣にアメリアが頭に疑問符を浮かべる。
「なんなんですか? その剣」
「よくわからないが……どうやら俺にしか使えないらしい―――厳密に言えば、あの妙な遺跡からこの剣を引っこ抜いた人間にしか使えない、と言った方が正しいか。
 おそらく何かの魔術が施されてたんだろ。俺が抜いたことでその魔術が発動した、ってところじゃないか?」
 ゼルガディスの言葉にクラヴィスがため息を吐いた。
「人を選ぶ妙な剣に妙な紋章が刻まれた紅い石。だんだん不可思議なものが増えていくなぁ、おい」
「しかもわからないことだらけです」
 付け加えるアメリアにゼルガディスが嘆息した。
「こりゃ一度本格的に調べた方が良さそうだな―――あの遺跡と崇め奉られていたあの妙な存在。アメリアや子猿娘どもが持っていた十二宮の紋章が刻まれた石」
「なんだか全然関係ないようには思えないんですよね」
 アメリアの言葉にゼルガディスは視線を彼女に向けた。
「根拠は?」
「勘です」
「そうか」
 即答してくるアメリアにゼルガディスは頷いた。正義うんぬんを持ち出してくるアメリアの『勘』はあまり信用ならないが、巫女としての彼女の『勘』はかなり信用性があった。彼女が『関係ありそうだ』と言うのなら実際に関係あるのだろう。そんな気がする。
「ま、何にしても平行線だな。わからないことだらけ。
 オレたちに今出来ることと言えば、カっちとポーちゃんの護衛程度だ。もしかしたら、上手いことあの娘たちの身内とやらに会ってあの石についてなにか聞けるかもしれないし」
 あの石を取り返すことも目的の一つに入っていたのなら、少なくとも、あの石の存在理由くらいは知っているはずだ。クラヴィスの言葉にゼルガディスとアメリアはそれぞれ頷いた。


 いったん自室に戻ろうと、アメリアがゼルガディスたちの部屋を出た時、彼女はふと怪訝な顔をした。
「カストルさん? どうしたんですか?」
 その声に忍び足で歩いていたカストルは慌てふためいた。
「ア、アメリアさん!? ゼルガディスさんとクーちゃんさんとお話し中じゃなかったんですか?」
 しどろもどろに訊ねてくるカストルにアメリアは怪訝な顔をしながら答えてくる。
「はあ。一応、話に区切りもついたんで戻ろうとしたんですけれど……それよりなんなんですか? その荷物は」
 外は真っ暗。しかも、街などない裏街道にぽつんと一軒建てられた宿屋。部屋以外に行くところとしたら一階の食堂だけのはずなのに、リュックサックを背負っているのだ。その姿を見たらアメリアじゃなくても怪訝な顔をする。
「あ、いや、これはその……」
 カストルが返答に見舞った様子で目をきょろきょろさせた。
 怪訝な顔をしながらアメリアはその様子を見つめ―――
 がんっ!
 突然後ろから鈍器のようなもので殴られ、不意をつかれたアメリアはそのまま廊下に倒れ込む。部屋に飾ってあったガラス製の大きな花瓶を抱えたポルックスが意識がないアメリアに小さく謝る。
 実に見事なコンビネーションだった。カストルの視線を瞬時に理解して、まだ部屋に残っていたポルックスがアメリアの頭を花瓶で殴り倒したのだ。
「アメリアさんには悪いけれど……≪ジェミニ≫を取り返すためよ」
「うん」
「アメリアさんを部屋に運びましょ」
「そうね」
 双子娘はそういいながら、アメリアを部屋に押し込んだ。
 ゼルガディスとクラヴィスには気づかれていないことを確かめて、二人はそのまま宿を出ると深く暗い森の中を入っていった。



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5754お久し振りっす〜ゆっちぃ E-mail URL2/21-00:33
記事番号5733へのコメント

ねーやんお久し振りっ☆記憶の片隅にでもあれば光栄な、ゆっちぃでございますっ!(汗笑)
時間に余裕があったので来て見れば。夢のよーなゼルアメ作品の嵐にちょっと驚きです。んでもってそれ以上に嬉しかったりして(笑)
こーなればしゃあないので、明日のテストは全部捨てよう、うん!(おいおいおいおい)

冒頭のパパりん♪が素敵でしたわ。相変わらずのお茶目さんですねぇ。エドワード、かわいそうに(笑)
しっかし双子ちゃん…………結構すきなんだけど、アメリアに手を出しちゃあいけませんわ。むぅぅ。

てな訳で、続き楽しみにしてるね〜〜〜♪
今度はテスト終わってから来るよ〜〜〜(汗笑)

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5756今メール送りました(汗)ねんねこ E-mail URL2/21-00:44
記事番号5754へのコメント


>ねーやんお久し振りっ☆記憶の片隅にでもあれば光栄な、ゆっちぃでございますっ!(汗笑)

やぁね!覚えてるにきまっとるじゃないの!
実は今あなたにメールを送ったところ(笑)
よかったらチェックチェックしてねん♪

>時間に余裕があったので来て見れば。夢のよーなゼルアメ作品の嵐にちょっと驚きです。んでもってそれ以上に嬉しかったりして(笑)
>こーなればしゃあないので、明日のテストは全部捨てよう、うん!(おいおいおいおい)

捨てるな(笑)
やっぱりテストは一夜漬けで(爆)
それが無理ならテスト直前、怒涛のような暗記力を発揮する、と。

>冒頭のパパりん♪が素敵でしたわ。相変わらずのお茶目さんですねぇ。エドワード、かわいそうに(笑)

ねんねこ的にこの話は第2部(えきせんとりっくの)なので、果てしなく暴走しますぜ、パパりん(笑)
エドは……雫ちゃんのお気に入りキャラ昇格寸前らしいです(笑)

>しっかし双子ちゃん…………結構すきなんだけど、アメリアに手を出しちゃあいけませんわ。むぅぅ。

まあ、彼女達には色々あって……(汗)
こ、これしか言えない(大汗)

>てな訳で、続き楽しみにしてるね〜〜〜♪
>今度はテスト終わってから来るよ〜〜〜(汗笑)

待ってるよ〜(><)
というわけでレスもらって10分後(約)にレスがえしするねんねこでした(笑)

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5758をを、来てる来てる(笑)ゆっちぃ E-mail URL2/21-00:58
記事番号5756へのコメント

マジでメール来てたよ、ねーやん(笑)
お返事遅くなりそうなんで、ここでいったん言うね。
結論。『使ってやって。』
私そうゆうのぜんっぜん気にしないよぅ〜。むしろ何か嬉しい感じ♪


>捨てるな(笑)
……………やっぱり?(汗)
んー……じゃあ、取り合えず頑張ってみますわ。
ゼルアメの素敵作品もいっぱい読んだ事だし、今ちょっとハイなのよね、私♪

>というわけでレスもらって10分後(約)にレスがえしするねんねこでした(笑)
んでもってその(約)10分後に再びお返事。何やってんだわたしゃ(ふふ…ι)

ではでは、パパりんのハッスルぶりを期待しつつこの辺で♪

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5760でしょでしょ?(笑)ねんねこ E-mail URL2/21-09:57
記事番号5758へのコメント

おはようございます。
今私がこれを書いてるときにはあなたはもう既にテスト中でしょうね。
いやはや頑張ってください。はい。
というわけでねんねこです。

>マジでメール来てたよ、ねーやん(笑)

だって、偶然あなたがあっきーにレスしているのを発見して、しかもつい1分前だったから、をを、これはリアルタイムでは?とか思ったんだもん(><)
マジ即座にメール機能作動させてがしがし打ったさ。おかげで文章が変(死)

>お返事遅くなりそうなんで、ここでいったん言うね。
>結論。『使ってやって。』
>私そうゆうのぜんっぜん気にしないよぅ〜。むしろ何か嬉しい感じ♪

きゃーvvありがとーVv
というわけで内部連絡。あっきー、雫ちゃん、本人様から許可いただきました<例の件(笑)
……て雫ちゃんいないし。
とりあえず、数日中に問答無用で例の話を送りつけちゃいますねん♪

>>捨てるな(笑)
>……………やっぱり?(汗)
>んー……じゃあ、取り合えず頑張ってみますわ。
>ゼルアメの素敵作品もいっぱい読んだ事だし、今ちょっとハイなのよね、私♪

多くなってるからねぇぇ、最近。
無論、ねんねこのは除いてあげてね。最近ゼルアメが真面目にかけないことを自覚しました(死)

>>というわけでレスもらって10分後(約)にレスがえしするねんねこでした(笑)
>んでもってその(約)10分後に再びお返事。何やってんだわたしゃ(ふふ…ι)

さすがにその10分後にレスのレス返しはできなかった……(涙)
9時間後の正直。(意味不明)

>ではでは、パパりんのハッスルぶりを期待しつつこの辺で♪

ハッスル……(笑)
とりあえず、結構長くなってるので、ひょろりとのぞきに来てね(笑)
……受験生に言う言葉ではないってば……(汗)
であであ、当面はテスト頑張ってね!!
ねんねこでした。


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5761THE DAY OF JUDGMENT 7ねんねこ E-mail URL2/21-10:41
記事番号5648へのコメント


「まったく、むちゃくちゃだよな。そう思わないか!?」
 金髪碧眼の青年の言葉に側にいた男は何も言っては来なかった。が、それはいつものことなので、金髪碧眼の青年は先を続けてくる。
「ちょぉぉぉぉっと見張りの兵士に催眠術かけて城の外に遊びに行っただけでなんでこんなに仕事を押し付けられなくちゃならないんだよ!?」
 そう叫ぶ彼の目の前にある机には、山積みにされた書類が三つほどあった。単純計算で、この仕事がすべてやり終えるまで、4ヵ月程度はかかる。
 先程から文句しか言わない青年に彼の側にいた男はぽつりと呟いてくる。
「……また仕事さぼって遊びに行くつもりですか? アリータ様?」
「ふっ、甘いね、リオン」
 鼻で笑って、アリータ―――沿岸諸国連合の小国の一つピースランド第一王子アリータ=ラル=エスト=ピースランドは無意味に胸を張った。
「やる気のない仕事を放り出すのは『サボる』とは言わないのだよっ!」
「無茶苦茶な理屈ですね」
「うるさいうるさいうるさぁぁぁぁぁいっ!
 だいたい仕事サボって諸国漫遊してるのはアメリアだって一緒じゃないかっ! しかもあっちは二人の下僕つきっ!」
「……それ聞いたらゼルガディスさんとクラヴィスさん怒ると思いますが」
「別に構わないさ」
 アリータは肩をすくめて言ってきた。
「ボク(ひと)の婚約者(アメリア)かっさらっていった奴なんか下僕でじゅーぶんさ」
「……アメリア様が婚約破棄されたのは、確か彼女がゼルガディスさんと出会う前だった気がするんですが……」
 正確に言うならば、アメリアがゼルガディスと出会う1年と4ヶ月前である。幼なじみの上、他人に自慢できるような美形という点では申し分なかったのだが、結婚して王宮に閉じ込められるのが嫌だったアメリアが『あなたを幼なじみ以上には思えない』と常套台詞であっさり捨てたのだ。
 ―――その際にアメリアが彼ととある約束をしたためにゼルガディスとクラヴィス、ついでにゼロスがこの上もない迷惑を被ったのだが、それはまた別の話である。
「たまには仕事をして欲しいのですが」
 諦めきった表情でアリータの横に立っていた男―――リオン=イクシードは呟いた。黒髪にダークブラウンの瞳。肩まで伸びた黒髪を後ろでひとつに結んだ二十歳半ばのやはり美形である―――かなりの不愛想で、あまり表情を変えないのがたまにキズなのだが。
 なにはともあれ、アリータに仕えてから約5年。その5年の間にアリータがまじめに働いた姿を彼はあまり見たことがなかった。姿を見ていた最高期間は3時間。それ以上はまったく一度も見たことがない。これは自信を持って断言できる―――あまり喜ばしいことではないが。
 リオンの予想通り、アリータはやはり城を再び脱出する気なのか、身の回りのものを整頓していた。いつでも抜け出せるように常備してある生活用品を入れたバックにその他の必要なものを詰めていく。
 机の上においてあった城を出る時には必ず持ち歩いている宝石を手にした時、突然城内に爆音が響き渡る。
 その音にアリータしリオンは慌てるわけでもなくそのまま顔を見合わせた―――慣れているわけではない。あまりにも慣れていないので、何が起こったのかさっぱりでパニックにすら陥らないのだ。
 その後も何度か爆音が響く。最後にはすぐ近くで響いたような気がした―――『気がした』のではなく、響いた。そう頭が理解したのは、自分たちの部屋に物凄い煙が入り込んできた時だった。
 煙と舞った埃に咳き込みつつ、アリータが自分の部屋と廊下に直通通路を作ってくれた大柄な男を睨み付ける。
「あのさ……もうちょっとだけ礼儀わきまえよえよ。ね?
 うちの親父はくそめんどくさいことは全部ボクに任せるんだ―――つまり、あんたの処分を任されるのはこのボクなわけ。その単細胞な頭で言ってる意味わかるかな? 要するにこれ以上仕事増やすな馬鹿野郎、って言ってるわけなんだけどね」
「アリータ様。鳥頭に何を言っても無駄だと思いますが」
 かなり失礼なことをどきっぱりと言ってくるリオンにアリータは困ったような顔をした。
「……やっぱり?」
 そんなどこかずれた漫才をしてくる二人に大柄の単細胞な鳥頭の男(推定)は、何の反論もせず言ってくる。
「アリータ=ラル=エスト=ピースランド、だな」
「内容によっては違う人になるけど」
「≪アリエス≫を渡してもらおう」
「じゃあ違う。別人だ」
 バックに入れようと手にしていた中央に≪白羊宮(アリエス)≫の紋章が刻まれた黄色の手のひらサイズの石をズボンのポケットに押し込んだ。
「だいたい人の名前を聞く前に自分の名前を名乗るのが礼儀ってぇもんじゃないの!?」
 アリータの言葉に男は懐から橙色の石を取り出す。やはり手のひらサイズで中心に≪天蠍(てんかつ)宮(スコーピオ)≫の紋章が刻まれている。
 顔をしかめてくるアリータとリオンに男はにやりと笑ってみせた。
「おれのことは≪スコーピオ≫と呼んでもらおうか? ≪アリエス≫」
「うかつに近づくと刺されるサソリってわけか……」
 アリータはうめきながら小さく呪文を唱え始めた。


 沿岸諸国連合内ピースランド首都。
 その名の通り、『平和』を掲げるこの国の城から十数回の爆発音が鳴り響くのはこの直後だった。



   THE DAY OF JUDGMENT  SENTENCE 7



 カストルとポルックスがいないことにゼルガディスたちが気づいたのは、彼女たちが森の奥に消えてから少し経ってからのことだった。
 いつもは怒鳴りこみたいくらいにやかましいあの子猿姉妹がいつになく静かなことに疑問を感じたのだ。
 嫌な予感を感じて、ゼルガディスは部屋を出るとまっすぐに女性陣の部屋に向かう。何度かノックをしても返事がないので、そのまま扉を開けて―――
 彼は息を呑んだ。
「アメリア!」
 床に倒れ込んでいるアメリアをゼルガディスは顔を真っ青にしながら抱き上げた。何度も彼女の名前を呼ぶ。
「……ん……」
 小さく声をあげながらアメリアがうっすらと目を開ける。視界に広がる普通の人ならざる顔にぽつりと呟く。
「……ゼルガディス……さん?」
 意識を取り戻した彼女にゼルガディスは安堵の息を吐いた。
 扉の前に突っ立ってたクラヴィスが訊ねてくる。
「なにがあったんだ?」
 未だ意識がはっきりしないのか、殴られたところを手で押さえながらアメリアが小さく答えてくる。
「わたしもよくわかりませんけれど……いきなり後ろから殴られて……」
 いいながら自分の胸に顔を埋めてくるアメリアの頭を撫でながら―――なんだかどでかいたんこぶがある気がしたが―――ゼルガディスが近くに転がっているガラス製の花瓶を見つける。
「……これで殴られたみたいだな……」
「痛かったですぅ……」
「あーよしよし泣くな……これで殴られて『痛い』で済んだんならめっけもんだ。
 誰に殴られたかわからないか?」
 ゼルガディスの問いにアメリアは目に涙を溜めながら、顔を上げた。
「わからないですけど……カストルさんがなんでかリュック背負ってました」
『リュック?』
 怪訝な顔をしてゼルガディスとクラヴィスが同時に言う。顔を見合わせ、クラヴィスが部屋に入って、ベッド側を確かめる。
 何もないことを確かめて、クラヴィスは首を横に振った。
「まずいぞ、ゼル」
「ああ、さっさと見つけ出さないと……」
 いつ敵に見つかるかわかったもんじゃない。見つかれば、おそらく彼女たちの命はないだろう。一刻も早く彼女たちを見つけなければならない。
「……ごめんなさい。わたしがもうちょっと気をつけてれば……」
 謝ってくるアメリアの頭をぽんぽんと軽く叩いてゼルガディスは小さく微笑んだ。
「お前のせいじゃないさ。さ、早いところ探しにいくぞ」
「はい!」
 ゼルガディスの言葉にアメリアは小さく微笑みながら返事をした。



「……さすがにちょっと恐いわね」
 カストルのその呟きに彼女にぴったりくっついていたポルックスがさらにぎゅっと彼女に強くしがみついてきた。
 森は彼女たちの予想以上に深かった。栄養豊富なのか、それとも長い間ほっとかれたのか、とにかくすくすく育ちまくった木々は、空すら覆い隠すほど枝を広げていた。
 生い茂った葉に月の光を遮断され、真っ暗闇の中を目的の場所に向かって歩いていく。待ち合わせ場所として指定されたのは、森の奥―――森を抜けたところにある崖だった。どこを見回しても木しかない単調な風景の中、方向感覚が狂いそうになりながら二人は必死で前に進んだ。
 と―――
 不意に。
 ポルックスの身体が前に倒れ込んだ。
「……ポル―――」
 怪訝な顔でカストルは名前を呼びかけ―――
 本当に微かに枝の隙間から漏れてくる月明かりに照らされた短剣を発見した。
 ―――ポルックスの背中で。
「……ポルックス……?」
 呆然としながら彼女は倒れた妹の背中を触る。ぬるり、とした気持ち悪い感触が手を襲い、彼女は恐る恐る自分の手を見た。色白のはずの自分の手がいやにどす黒く見える。
 それが血だと頭が判別したと同時に。
 カストルは悲鳴をあげた。



「―――っ!」
 暗い森の中、生み出した明かりを頼りにゼルガディス・アメリアとは別行動で双子娘たちを探していたクラヴィスが顔を上げた。
 微かに聞こえた誰かの悲鳴。状況が状況なだけに聞き間違いかもなどとは言っていられない。自分の直感を頼りに凄いスピードで森を駆け抜ける。
 少しばかり走ると、誰かがしゃがみこんでいることに気づいた。二人かどうかもわからないのに、思わず名前を叫ぶ。
「カっち! ポーちゃん!」
 返事はなかった。が、もう一度名前を呼ぶ前に彼はその場所に辿り着いた。小さく明かりの呪文を唱え、辺りがぼんやりとだが明るくなった瞬間、クラヴィスは小さく息を呑んで視線をずらした。込み上げてくる吐き気を押さえるように口元を手で覆う。
 小さな少女の背中につきたてられた短剣(ダガー)。
 その部分から流れるおびただしい血の量と、ぴくりとも動かない身体。
 瞳孔が開いた瞳。
 それらが彼女が既に死んでいることを生々しく物語っていた―――しかも、即死だろう。間違いなく。
 その横で、少女にしがみついて鳴咽を繰り返している少女の双子の姉に視線を移す。
「……カっち……」
 名前を呟く。こういう時はあまり声をかけてもらいたくないものだと自覚していても、無意識のうちに彼は呟いていた。
「……残念だけどもう……」
 絶望的な言葉。だが言わなければならない。『死』というものを認めさせ、理解させなければならない。そうしなければいつまでも現実から逃げようとするから―――いつか自分がしたように。
 何より時間がない。ポルックスの背中に短剣を投げつけた人間がまだカストルを狙ってる可能性は極めて大きい。
 自分の言葉に反応の素振りを見せないカストルにクラヴィスは珍しく強い口調で再度呼びかける。
「カっち―――カストル!」
 クラヴィスの怒鳴るような声にも反応せず、カストルはポルックスについて離れなかった。だが、彼女の身にも危険は音を立てて迫っていた。こんなところで悠長に悲しんでもいられない―――自分の分身のような妹を失った彼女には悪いが。
 クラヴィスは力ずくで彼女を立たせようとした。が、カストルの方も強情でなかなか立ち上ろうとしない。
 そして、その場に乾いた音が響いた。
「……クラヴィスさん……」
 ひっぱたかれた頬を手で押さえながらカストルは呆然と声をあげた。クラヴィスは彼女の目を見つめながら静かに言ってくる。
「いい加減にしろ―――ポルックスが死んであんたがすごく悲しいのはよくわかる。
 だけどな、いくら泣いたっていくら悲しんだって死んじまったら最後なんだ。なにをやったって生き返ってはくれない。生き返っちゃくれないんだよ―――!」
「…………」
 彼の言葉にカストルは俯いた。クラヴィスは言葉を付け加える。
「狙われてんのはポーだけじゃない。あんたも狙われてんだ。
 残酷なようだが彼女の弔いは後だ。今は自分の身を守ることに専念しろ」
 その言葉にカストルの返事はなかった。だが、ただ一回だけこくんと首を縦に振ったのを確かにクラヴィスは見ていた。それを返事と判断して、彼はカストルを立たせた。
 その瞬間。
「クラヴィス! 上だ!」
 突然辺りにゼルガディスの声が響いた。クラヴィスは自分の視界が赤く染まるのを感じながらカストルを抱え、前に倒れ込んだ。


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5762ねんねこさぁぁぁぁぁん!九条みすず 2/21-17:49
記事番号5761へのコメント

こんにちは。九条です。
こちらでははじめましてでしょうか。メールではいつもお世話になってます(^^)

ねんねこさぁぁぁぁん!アリータ君とリオンさんでてきましたね!
もう彼らにはじめてあってから一目ぼれの私には(もちろん一番はクラヴィスvですけど)もうたまらない展開です。
ポルックスもお亡くなりになられて(泣)カストルがどうなってしまうのかもう続きが気になります。

楽しみに待ってますから頑張ってくださいね。
では短いですがこの辺で。

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5763みすずさぁぁぁぁぁん!(笑)ねんねこ E-mail URL2/21-20:03
記事番号5762へのコメント

ねんねこです。すみません、メールの返事が滞っておりまして〜(汗)
今日中に書きます。書かせてください。

>こんにちは。九条です。
>こちらでははじめましてでしょうか。メールではいつもお世話になってます(^^)

…………
はじめまして、みすずさん。ねんねこというものです。
などと言ってみたり。
とりあえず『はじめまして』ですね。問答無用でメールのやり取りしてますけど。

>ねんねこさぁぁぁぁん!アリータ君とリオンさんでてきましたね!
>もう彼らにはじめてあってから一目ぼれの私には(もちろん一番はクラヴィスvですけど)もうたまらない展開です。

あなたのおかげでアリータ君たちでてきました(笑)
やっと何個か他にも石が出てきました。密かな伏線、張って張って張りまくって〜♪
もうクラヴィスくんなぜか人気者です。よかったなー、クーちゃん。

>ポルックスもお亡くなりになられて(泣)カストルがどうなってしまうのかもう続きが気になります。

ううう、皆さん気に入っていただけたキャラたちだったのに……子猿娘(妹)
ちょっとびくびくしながら投稿しました(汗)

>楽しみに待ってますから頑張ってくださいね。
>では短いですがこの辺で。

それではまた〜♪
追伸→またチャットでお話しましょうね〜(^^)

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5779THE DAY OF JUDGMENT 8ねんねこ E-mail URL2/22-03:02
記事番号5648へのコメント


 深く暗い森の中、ゼルガディスとアメリアはその途方もなく広い森をあてもなくさまよい続けていた。途中何度かカストルとポルックスの名前を呼んでみるが、返事はなかった。
「まったく世話焼かせやがって……」
 顔を顰めていってくるゼルガディスにアメリアが心配そうな顔をした。
「問題はなんで森なんかに行ったか、ですよね」
 アメリアの言葉にゼルガディスは一瞬立ち止まって、しばし沈黙する。隣を歩いていたアメリアが数歩進んだところで立ち止まり、振り返ってくる。
「ゼルガディスさん?」
「……こりゃあ……」
 ぽつりと呟く。
 アメリアの言う通り、なぜ彼女を後ろから殴り倒してまで、森になんか行ったのか。
 ポルックスのあの異常なまでの石への執着心を思い出す。奇襲をかけられた日、恐怖もあっただろうに自分の力も省みず黒ずくめから石を取り返そうと飛び出したポルックス。あの双子たちの石への執着心は常識を外れたものがある―――ただの家宝の石、というだけではない何かがあるような気がした。
 なにはともあれ、なぜ宿を飛び出したか。
 自分たちの命が狙われているのにも関わらず、それを無視して出て行く理由と言ったら―――
「……最悪の場合を考えておいた方が良さそうだな……」
「え?」
 よく聞こえなかったのだろう。アメリアが問い返してくるとゼルガディスはゆっくり頭を振った。
「あ、いや。何でもないんだ。それよりさっさと探しに行った方が良さそ―――」
 ゼルガディスの言葉を遮って。
 聞こえてきたのは紛れもなく数日間共に過ごしてきた双子の少女の声だった。


  THE DAY OF JUDGMENT  SENTENCE 8


 自分たちが駆けつけた時、そこにはもうクラヴィスが着いていて、カストルの頬をひっぱたいているところだった。その近くには少女が倒れている。それを見たのだろう、アメリアが息を呑むのがわかった。
 予想しうることだった。
 どうやって接触したのかは知らないが、おそらく双子娘たちは黒ずくめに呼び出されたのだろう―――石に釣られて。
 相手にとって見れば自分たちと双子娘を引き離せればされでよかったのだ。石はもう既に自分たちの手の中。後は邪魔な二人の娘を殺してしまえば、残りの人間なんてどうでもよかったのだ。
 とすれば、カストルがまだ生きている今、まだどこかで彼女の命を狙っている黒ずくめがいるはず―――
 自慢じゃないが夜目は利く。黒い視界の中必死に視線を巡らして―――
 ふとクラヴィスの真上を見てみれば、闇と同色の、だが闇ではない存在に気づく。
 無意識に口が動いていた。
「クラヴィス! 上だ!」
 その言葉に反応したのは、呼ばれたクラヴィスだけではなかった。クラヴィスの上でカストルを殺す機会をうかがっていた黒ずくめの手の中で炎が生まれ、同時にアメリアが素早く動く。
 カストル保護を最優先、呪文も今から唱えたのでは遅いと即座に判断したクラヴィスがそのままカストルを抱えたまま前に倒れ込むようにその場から飛び退いた。
 黒ずくめの手から炎が放たれる。
 アメリアの呪文が完成したのもそのすぐ後だった。
「ウインディ・シールド!」
 生み出された風の結界はクラヴィスたちと自分たちを守るように張られる。同時にポルックスの亡骸に着弾した炎が凄い勢いで風の結界を圧倒する。
「―――くっ!」
 必死に術の制御をするアメリアを風の結界が間にあるとはいえ襲いかかってくる炎から守るために自分のマントに包むように抱きしめる。
 クラヴィスもまたカストルの頭を押さえて態勢を低くしながら炎が収まるのを待った。
 炎が収まり、辺り一帯風の結界が張られていなかったところはほとんど灰と化していた。むせ返りそうな煙の匂いに混じって、肉が焼けたような匂いが周辺に漂う。
 自分の胸の中でアメリアは僅かに顔をしかめたのに気づいた。その原因がなんなのか視線を巡らせようとした彼女にゼルガディスがそっと呟く。
「……見ない方が……良い」
 うめくような呟き。彼のその様子でその匂いがいったいなんなのか彼女は察したようだった。口を開きかけるが声にならなかったらしい。そのまま服をぎゅっと掴んで肩を震わせる。
 軽い動作で降りてくる黒ずくめを立ち上がってカストルをかばっていたクラヴィスが睨みつけた。
「てめぇ……」
「火葬する手間が省けたな」
 ただの黒い塊と化した少女から短剣を無造作に引き抜く。いけしゃあしゃあと言ってくる黒ずくめにクラヴィスが一歩前を踏み出すと、それを制すようにゼルガディスが声をかけた。
「クラヴィス」
「邪魔すんな。こいつはオレがはっ倒す」
「カストル放り出してか?」
 冷静なゼルガディスの指摘にクラヴィスは言い返せずに黙り込んだ。ゼルガディスもまた黒ずくめを睨んだまま、言ってくる。
「カストル連れてここから離れろ。こいつは―――俺が倒す」
「言ってくれるじゃないか」
 きっぱりと宣言したゼルガディスに黒ずくめが嘲笑する。が、その態度を意に介さず、ゼルガディスはアメリアを離すと、彼女にクラヴィスについていくよう指示した。
 反論しようとした彼女だったが、何も言わずそのまま離れた。
 何か言いたそうだったクラヴィスを手を振って追い払うと、彼は肩をすくめてカストルの手を引いて森の奥に姿を消す。
 その様子を黒ずくめを牽制しつつ見届けて、ゼルガディスは剣を抜いた―――自分のではなく、長剣の方を。
「以前(まえ)にも会ったな」
 黒ずくめの言葉にゼルガディスは記憶を巡らす。奇襲の時ではない。この声は―――
「裏街道の黒ずくめCか……」
「名は?」
「ゼルガディス=グレイワーズ」
 素直に答えると、黒ずくめは感嘆の声をあげる。
「赤法師の狂戦士―――あのゼルガディスか」
「だったらどうする?」
 間合いを取りつつ、挑発的に言ってみると、黒ずくめCは一気に間合いを詰めた。
 どこか嬉しそうに声をあげる。
「貴様を倒す!」
「――――っ!」
 黒ずくめが手にした短剣は赤く輝いていた―――さすがのゼルガディスも魔力を込めた剣で斬られてことはないが、わざわざ試すようなチャレンジャーでもない。いったん飛び退いて少しばかり距離を取ってから剣を構えてそのまま今度は突っ込んでいく。
 嘲り笑いを浮かべながらゼルガディスは言った。
「死ぬほど不機嫌な俺にケンカ売って勝った奴は1人もいないんだよっ!」



「……まったく。機嫌が悪いボクにケンカ売るなんて馬鹿じゃないの!?」
 部屋を半壊状態にしながらアリータは呆れたように言ってきた。床に転がる≪スコーピオ≫と名乗った男をげしげしと蹴りつける。
 その様子を眺めながらリオンがぽつりと言ってくる。
「そんなことより―――なんでこの鳥頭さんは聖石を狙ってきたかが問題です」
 リオンの言葉にアリータはきょとんとした顔をした。
 ぽん、と手を打って言ってくる。
「ああ、聖石に宿る力とか言うのをリオンは知らないんだな」
「……聖石に宿る力……?」
 怪訝な顔をしてくるリオンにアリータはにっこりと笑った。
「ま、詳しい話は旅の途中で話すよ。いまさら聖石を狙ってきたって言うことはどうもみんな、動き出してるみたいだから」
 言いながら、アリータは鳥頭から橙色の宝石を取り上げた。
 黄道十二宮(ゾディアック)第九宮―――『拷問・苦難』の象徴≪天蠍宮(スコーピオ)≫――――



「あの石には……不思議な力があると言われてます」
 ぽつりぽつりとカストルが言ってくる。だいぶ落ち着いたようで、今はもう泣いてはいない。『どうしてあの石なんかにこだわるんだ?』と言うクラヴィスの問いに彼女はゆっくりと答えた。
「……一つだけ願い事を叶えてくれるんだって、私は聞きました」
「願い事、ですか?」
 アメリアの言葉にカストルは頷いた。
「私も詳しいことは知らないんです。ただ、本当に心からの願いじゃない限り、この石の力は使うな、とだけ言われました」
 彼女の言葉にクラヴィスは何も言えずに前を向いた。
 なんとなく彼女が石に執着する理由がわかったような気がした。
 幸せになりたかったのだ。ポルックスと共に。身内から疎まれる生活から逃れたかったのだ。
 クラヴィスはふと後ろを振り返る。
「……あの馬鹿。完全に切れてなきゃ良いけど」



「―――さすがだな……」
 とめどなく血が流れる左腕を押さえながら黒ずくめがうめいた。
 その様子を無表情で見つめながら、ゼルガディスが言ってくる。
「お前の力はこんなもんなのか? 大したことないな。あの威勢の良さはハッタリだったわけか」
 辺りには血の匂いが漂っていた。気持ち悪いことこの上ないが―――それでもどこか懐かしさを感じてしまう鉄の匂い。
 ふと昔のことを思い出して自嘲する。
 世界全てに絶望して、人々を惨殺していった過去の自分。
 自分の子供のように愛してくれていたと思っていた祖父のあまりにも酷い裏切り行為。
 自分の前にあったはずの道が全て崩れ去って、絶望のさなか見つけたのは、他人を傷つけることで自分の方が強い人間であることを誇示するというたった一瞬の快楽のみ。
 そのために彼は人を傷つけた。後で後悔することを分かっていても。
 だけど彼は止めなかった。刹那でも自分が救われるのならそれでいいと思ったから。
「……久しぶりだよ。人をなぶり殺してやりたいと思ったのは」
 小さく笑みを浮かべてゼルガディスが言ってくる。
「一思いに殺したりはしないさ―――じっくり後悔させてやるよ」
 そして彼は再びもう既に血にまみれた長剣を振り下ろした。



「旦那の奴、上手くやってるかな?」
「たかが小娘二人が相手だ。しかも相手は―――」
 言いながら男は懐から石を取り出した―――聖石≪ジェミニ≫を。
「こいつの名前を出せば一目散に飛んでくる馬鹿娘たちだ」
 その言葉に笑い声をあげながら男二人は裏街道を歩いていた。
「―――にしても、お前は情けなかったな。この辺りだろ。剣を折られて蹴り食らって気絶したのは」
「もう言わないでくれ。思い出しただけでも―――」
 苦笑しながら言いかけて、二人はふと向かいから人が歩いてくる気配を感じた。
 別に珍しいことではない。裏街道とはいっても普通の道なのだ。通行人がいるのは普通のことである。だが、思わず立ち止まって怪訝な顔をするのに十分な理由があった。
 向かいから歩いていた男は立ち止まり、静かに言ってくる。
「―――≪ジェミニ≫を持っているな?」
 その言葉に一気に二人から殺気があふれる。
「貴様……何者だ?」
 その問いに男は懐から石を取り出しただけだった。それは間違いなく聖石の一つ―――≪リーブラ≫。
「もう一度尋ねる。≪ジェミニ≫を持っているな?」
 聖石を見て驚いていた顔をしていた二人だったが、その言葉に我に返り、≪リーブラ≫を手にした男を睨みつけた。
 茶髪にブラウンの瞳。黒いコートを着込んだその男は、数日前、街の裏道で爆発を起こした張本人だった。
「おれたちが『はい、そーです』と言って渡すと思っているのか?」
「渡す気はないと言うのか?」
「無論だ!」
「ならば奪うのみだ」
 あっさりそう宣言すると、男は小さく呪文を唱えた。その呪文に片割れの男が怪訝な顔をした。
「貴様なぜその呪文を―――」
 みなまで言うこともなく。
「ブラスト・ボム」
 悲鳴もあげずに二人の男は炎に包まれた。
 地面が溶解するほどの火力で邪魔なものを焼き払った後、何故か無傷で落ちていた聖石を拾い上げ、男はにやりと笑った。



「石は持ってなかったよ」
 合流したゼルガディスの開口一番の台詞がその言葉だった。
「……そうですか……」
 ぽつりと答えてくるカストルにゼルガディスは視線をちらりと走らせて言った。
「おそらくもう別の人間によって運ばれてるんじゃないかと思う。そうなれば回収不可能だ」
 その言葉に返事はなかった。ただ俯いているだけのカストルにゼルガディスは小さく嘆息した。
 その横で沈黙を保っていたクラヴィスがぽつりと聞いてくる。
「……黒ずくめはどうした?」
 その問いにゼルガディスは肩をすくめて平然と答えた。
「ゾンビになって出てこないように手と足と頭と胴体全部斬り裂いた上で灰にしてやったよ。それで化けて出てくるんだったら俺は拍手を送るよ」
「……そうか」
(……切れてたわけだ。要するに)
 口には出さず、心の中で呟く。
 げふげふと咳き込むゼルガディスの横でクラヴィスが急に射し込んできた光に思わず目を閉じる。
 目の辺りを手で隠しながらゆっくりと目を開ければ、ちょうど太陽が顔を出すのが見えた。
 切り立った崖の上。どうやら土砂崩れが起こったらしく、森の先には何もなかった。崖っぷちでゼルガディスのことを待っているうちに朝を迎えてしまったのだろう。
 と、ふとカストルはふらふらと歩き出した。その歩き出した方角にゼルガディスは少し顔をしかめた。
「カストル……あぶないからこっちに……」
 嫌な予感を胸に抱えてゼルガディスは言いながら一歩足を踏み出した―――その途端。
「来ないでっ!」
 カストルの鋭い声が辺りに響いて、ゼルガディスは思わず足を止めた。その代わり彼女が一歩後ろに下がる。後一歩でも後ろに下がれば崖下に落ちる。小さな砂利が音を立てながら崖に落ちていった。
「ポルックスは死んだ。石もなくなった。私にはもう生きていく理由もないわ」
 ぽつりと呟いて、彼女はクラヴィスの方を見た。
「ごめんなさい。やっぱり私は、ポルックスが一緒じゃないと生きていけないんです。
 あの娘がいなきゃあ、私……」
 崖の縁で泣きながら微笑むカストルにクラヴィスは小さく頭を振った。
「違う。そんなことない。そんなことしてポーが喜ぶとでも思ってるのか?」
「いいえ、怒ると思います」
「だったら―――!」
「でも!」
 アメリアの言葉を遮って、カストルは続けた。
「私が耐えられないんです」
 真っ直ぐアメリアを見つめ、言ってくる。
「アメリアさん。もしゼルガディスさんやクラヴィスさんが誰かに殺されたとしたら―――あなたは平然と1人で未来を歩けますか?
 全てを忘れて。新しい気持ちで」
 言われてアメリアは言葉を失った。言いたいことはたくさんある。だが、その言葉がうまく繋がってくれない。浮かんでは消えていってしまう単語の羅列にアメリアはただ俯くことしか出来なかった。
「……私はそんな器用なこと出来ない。生まれてからずっとずっと一緒に生きてきた自分の分身を忘れて生きていくなんて私には出来ません!」
「忘れなくても良いんだ!」
 首を横に振りながらクラヴィスが叫ぶ。
「忘れるなんてできっこない。わかってるさ! 忘れなくても良いんだ。自分の中でずっと生きてるんだから」
「……それは強い人の言葉だわ」
 首を横に振ってカストルは言ってきた。
「自分の中に生きているからそれを支えにして生きていけ?
 思い出せば出すほど辛くなるのに、それを支えにしてなんて生きてなんかいけない」
 そこでいったん言葉を切って、カストルはゼルガディスを見た。
「護衛の仕事―――ここまでで結構です。ありがとうございます。お金はそこにおいてある荷物の中に入ってますから好きなだけ持っていってください」
「……要らないよ、ンな物」
「……言うと思いました」
 苦笑してからカストルはにっこり笑った。それはあまりにも場違いな安らかな笑顔。
 一言だけ、呟く。
「さよなら」
「カストル!」
 慌ててクラヴィスが駆け出して、彼女に手を伸ばした。目を閉じて、後ろに倒れていくカストルにその手は無情にも届かず―――
 彼女の姿は彼らの前から消えた。


「―――どうして……」
 クラヴィスが呆然と呟く。
 風が音を立てた。
 近寄ってきたアメリアがぽふんとゼルガディスの胸に顔を埋める。
 小さな鳴咽を繰り返す彼女の頭でゼルガディスは撫でてやった。
 伸ばし手も届かなかった手を地面に打ちつけて、クラヴィスは歯を食いしばってうめくように呟いた。
「どうしてそんなに簡単に死ねるんだよ……!?」
 ―――その問いに答えられるものは誰ひとりいなかった。


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5780重い想い。あごん E-mail 2/22-05:12
記事番号5779へのコメント

こんばんは、あごんとゆー者です(涙目)。
ざ・でい・おぶ・じゃっぢめんとハチ(涙声)。
読みまし・・た・・・(絶命)。

って、死ぬなーーーーーーーっ!!
とゆー突っ込みと共に登場のあごんです!

カストルとボルックスが・・・(絶句)。
なんだかルークとミリーナに共通しているよーで切ないです。
カストルとボルックスが死ぬとは思わなかったので、ちょっと衝撃を受けております。
うぅん。悲しいというよりもひたすらショックですねぇ。

新キャラも登場ですねぇ。
う〜みゅ。あごんはリオンとゆー名前は悪役、とゆーイメージの持ち主なんですよね(笑)。
何故かと聞かれてもわかりません。
わからないとゆー事は本能なのでしょう(笑)。

結構重い内容で、うまくこの感動を表現できませんが。
続きを大変楽しみにしております。

ではでは、あごんでした!!

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5783上手い!座布団1枚!(爆)ねんねこ E-mail URL2/22-13:31
記事番号5780へのコメント

(注)タイトルにあまり深い意味はございません。
   ……その場をね。和ませようとしたんですぅ(汗)

>こんばんは、あごんとゆー者です(涙目)。
>ざ・でい・おぶ・じゃっぢめんとハチ(涙声)。
>読みまし・・た・・・(絶命)。

絶命しないでぇぇぇぇぇぇっ!(大汗)
あごんさんがいなくなったらみんなが困るぢゃないのっ!
さあ帰ってこぉぉぉぉぉぉぉい!!(絶叫)

>って、死ぬなーーーーーーーっ!!
>とゆー突っ込みと共に登場のあごんです!

よかったよかった。戻ってきてくれたわ(ふう)
こんにちは、ねんねこです。

>カストルとボルックスが・・・(絶句)。
>なんだかルークとミリーナに共通しているよーで切ないです。
>カストルとボルックスが死ぬとは思わなかったので、ちょっと衝撃を受けております。
>うぅん。悲しいというよりもひたすらショックですねぇ。

もうひたすら前のレスつけてて大変でしたよ(汗)
皆さんから『双子ちゃん可愛いです。好きです』とか言われてたのにねんねこ心の中で遠い目しながら『ごめん。死んじゃうんですけど……』とか呟きまくってました。
ルークとミリーナ……確かにそうですね。言われてはじめて気がつきました。
ど、鈍感さんだねんねこ。
まあこういうと反対意見がぞろぞろ出てくるかもしれないですけど、人って生きてるから幸せとは限らない場合もあると思うんです。クラヴィスくんは生きてて幸せになれてますけれど。彼との対比も含めて、この双子を出したのですが。

>新キャラも登場ですねぇ。
>う〜みゅ。あごんはリオンとゆー名前は悪役、とゆーイメージの持ち主なんですよね(笑)。
>何故かと聞かれてもわかりません。
>わからないとゆー事は本能なのでしょう(笑)。

本能なんですか?(笑)
ねんねこはてっきりテイルズ・オブ・デス○ィニーのリ○ン・マグナス(隠されてないし)を思い出したのかと。
あれ、彼が死んでから必死に海岸線探したのにゲーム終盤でゾンビになってでてくるわ、後で後輩から『私の父さん、あれの製作に関わってたからあの子が死ぬの知ってたんですよ』とか笑いながら言われた時はとりあえず首を絞めかけましたね(^^)

>結構重い内容で、うまくこの感動を表現できませんが。
>続きを大変楽しみにしております。

ラブラブな部分が無い上に最後まで読まないと意味不明なことで有名なねんねこの長編です。レス下さっただけで嬉しいです(><)
それではまた!
ねんねこでした。