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5792 | 黄金の羅針盤0話 | 桜井 ゆかり E-mail URL | 2/24-01:31 |
この題名を見れば一目瞭然の方も居るでしょう。 ある本から内容を借りています。ですが、殆ど自分で考えたものが支流になっています。 只、あまりに長いため更新は遅くなるとは思いますが、そこは気にしないで付き合ってくれると嬉しいです。 全3部作。1部目は私達が住んでいる世界を元にした話です。 国の名前が色々出てきますが全部存在する国です。でも、北極圏あたりの話なので北の国ばかりですがご了承下さい。 ではでは、黄金の羅針盤0話スタート! この世界にはダイモン(守護精霊)が居るという。普通の人には見えないが、特別な人には見えた。 黒髪の少女とそのダイモンは薄暗い食堂の端っこを息を殺しながら歩いていた。 テーブルには綺麗で高級そうな食器が1人分だけあった。 「・・・・寮長も何を考えているんだか・・・・」 黒髪の少女のダイモン・・・クリュースモンがため息を吐きながら食器を弾いた。 ダイモンといっても人間の姿をしているわけではない。今は小さなリスの姿をしている。だけど、言葉は普通の人間にはキュイキュイとしか聞こえない。 時に応じていろんな姿を形どることもできる。 「ちょっと何してるんですか。誰かに気付かれたらどうするんですか?」 「大丈夫。この時間帯は調理場は忙しいから」 少女が言うとクリュースモンは奥の方に入って人がいないことを確かめる。そして、「誰もいない」と言う報告を聞くと少女は奥の方へ入っていった。 奥は生徒は誰一人として入ったことのない秘密を感じる部屋だ。しかも、メイドも入れてもらえない。入れるのは男性の教官とお客のみ。 「・・・・普通の部屋ですね・・・」 見渡してみても別に自分の部屋とあまり変わらない。テーブルにイス、部屋を暖かくする為の暖炉があるのみ。 「もう満足?」 と聞いてくるクリュースモンに「もう少し見ておきます」と言った。こんな普通の部屋に入れないというのはおかしいだろう。少女はそれが気になってしょうがなかった。 ここ最近子供が連れさらわれるという事件が続出しているが、教官達はなにも捜査に乗り出さない。おかしいと思いながらここに忍び込んだのだから、そう簡単にこの部屋を出ようと思わない。 「一体何の話を────!!ヤバイ誰か来る!」 クリュースモンは扉の方から聞こえた声に反応して少女に声を掛けた。少女はテーブルの下に潜り込んだ。 カチャリと音がして入ってきたのはこの寮の寮長レゾだった。 「ナイトメア様はまだなのですか?」 「まだ連絡などはありません」 その横で秘書を務めるエリスが報告をする。だけど、このレゾには優秀な生徒が2人付いている。一人は寮長の孫でゼルガディスという。もう一人は謎に包まれ名字がマティリナスということ以外分かっていない。この学寮にはマティリナスという名字はいない。 「レゾ様、ゼルガディスの奴にでも確認させますか?」 レゾのダイモンはディルギアという。オオカミなのだが犬のように扱われ犬として定着してしまっている。親戚にスポットというオオカミがいる。 「いや。いいでしょう。ディルギア。ワインの確認でもしておいて下さい」 レゾは目が見えないようでいつも目を瞑っている。そんなレゾの言った言葉を聞いてディルギアはオオカミの姿からももんがの姿に変わり飛んでいく。そして、エリスもディルギアの後を追うようにその場から立ち去った。 レゾは2人がいなくなったことを確認するとポケットから一枚の折りたたんだ紙を取り出し、デカンターの栓を抜き、紙を広げ中に入っている白い粉をワインの中に入れた。白い粉が入っていた紙は暖炉の火の中に投げ込んでしまう。そして、ワインの栓をしてかき混ぜる。入れた粉がすべて溶けるように・・・・ 「・・・今の粉は一体なんでしょうか・・・・」 「今は喋らない方がいい。後にしよう」 凄く小さい声で喋っていると遠くから鐘の音が聞こえた。 その音を聞いてレゾは立ち上がり廊下に繋がっているドアの方から出ていった。 少女とクリュースモンはレゾがいなくなって緊張が解けたようにベターっと床に伸びた。だけど、こんなところでぐずぐずしていられなくなった。 「家令の鐘が鳴ったということは・・・・出られない」 「確かにそうですね・・・」 家令の犬は鼻が良く利きこの少女のことを一発で何処にいるか分かってしまうだろう。そして、怒られるというのは嫌なものだ。 「クリュー、あれって毒ですよね・・・?もしかして寮長はナイトメア様を殺すつもりじゃ───」 「毒とは限らない。そうと決めるのにはまだ早い」 「いいえ。あれは毒に決まってます!だって、私の中の正義の心がそういっているのですから!」 少女はダンっと足をイスの上に乗っけて叫んだ。これさえなければ可愛い子供だと思われるのにこの性格で誰もが一歩退いている。 ダイモンをやっているクリュースモンですらついていけなくなるときもある。だけど、ほとんどは冷静な判断で少女を抑えている。 「家令がいなくなったら早くここから出よう」 クリュースモンは少女の肩から飛び降り外の様子を調べようとしたが、少女の一言で足を止めた。 「嫌です。寮長の企みが分かるまで私はここにいます!」 「あたし達に関係ないことで時間を潰そうとは思わない。さっさとここから出よう」 「でも、ここには正装用の衣装も置いてありますよ。ワインに混ぜたのが毒ではないという可能性の方が低いと思いますよ。それに、もしも毒なら毒殺されるのを黙ってみてろって言うんですか!?」 ナイトメアというのは権力も持っている。戦争にも負けたことがないらしく、この人を倒せば結果的には世界をとることだって可能だろう。 「じゃあ、場所を移して見守る?」 「腰抜けじゃないんですからここが一番いい場所ですよ」 「なにの?」 「なにって、毒殺を止める為の場所には最適だって言っているんです」 「出ていってワインでも取り上げる気?そんなことしたら退学にもなり兼ねない」 「承知の上です。だから、文句を言うのは止めて下さい」 ここの寮長もナイトメアも国策委員会のメンバーでもあるが仲が良いとは思わない。 それに、ここの所使用人の噂が絶えない。その噂というのは北極圏地域でなにかをやっているという噂だ。 「ねぇ、クリュー。戦争起こると思いますか?」 「いきなりなにを言い出す」 「確かナイトメア様の領地はソ連。北極圏って言ったら一応はソ連の上の方も入ってるじゃないですか」 「まだ起こるわけがない。起こるのならこんな時に食事に誘ったりしない」 「それもそうですね・・・・・」 少女は納得したように言う。そして、何かの物音に気付き、近くにあった衣装ダンスに隠れた。 ドアが開いて人が入ってくる。その人はエリス。薪を何本か持っていることころからするとこの部屋の温度を下げないように新しい薪を持ってきたのだろう。 少女はタンスの扉の隙間から一部始終眺めていた。 そして扉が開く気配がしてエリスはビクッと震えた。扉が開いたのは少女が入ってきた方だった。だが、隙間からでは見ることが出来ない。 「ナイトメア様!」 「こんばんわ。エリスさん」 ナイトメアは金髪の髪をしていて瞳も金。物静かな雰囲気を持っているが何処か恐ろしい雰囲気も持っている。そして、ダイモンも連れている。大型の犬の姿を取っているようで、名前はシャブラニグドゥと言う。 「ごめんなさい。着くのが遅くなったようで・・・・レゾにあたしが来たことを伝えて。あと、コーヒーをちょうだい。ブラックでね」 「今お持ちします」 イスに座ってコーヒーを頼んだ。エリスがいなくなった後、シャブラニグドゥに話し掛けた。 「少し休んでていいわよ?それとも2リットル入りペットボトルを食らって寝ていたい?」 「大人しく休んでいますからペットボトルは止めて下さい・・・・」 そういってシャブラニグドゥは床に丸まった。少女もその会話を聞いて笑いそうになったが堪えて耐えていた。普通の人なら話しているのなど聞こえない筈だがダイモンを連れている人なら誰だって聞こえてしまう。 コンコン・・・・・ 扉が開いてコーヒーを持ったエリスが姿を現わした。 「ねぇ、このワインって飲んでいいの?」 コトンとテーブルにコーヒーを置いているエリスに尋ねた。そのワインは先ほどレゾが入れた毒入りワイン。 「ええ。その為に用意したものですから」 「そう。じゃあ、貰うわ。それと、映写機を持ってきて。あたしの命令なんだから口出しはなしよ」 「・・・・わかりました」 ナイトメアに逆らうとどんなことになるか分からないからエリスは少し考えてから言った。 そして、エリスがこの部屋からいなくなってからナイトメアは嬉しそうにワインをグラスに移して飲もうとしていた。だが、タンスからとっさに出てきた少女によってグラスは床に落ちて割れる。 「ちょっと、なにするのよ!折角の美味しそうなワイン───」 「毒が入っているんです!」 ナイトメアの言葉を遮り少女は叫んだ。その言葉にナイトメアの関心も少女に向けられる。 グラスが割れた音にビックリして目が覚めたシャブラニグドゥが少女のことを警戒していたがナイトメアが手で制し、落ち着かせた。 「どういうこと?」 「私見たんです!寮長様がこのワインに毒を入れるところを。 この頃子供が攫われる事件がいっぱい起こっているのになにも出してくれない寮長になにかあるのではないかと睨んで私は確かめにここに忍び込んだのです。ですが、実際に見たものは毒を入れる場面の目撃だったんです」 「ふーん・・・・まぁ、アイツならばありそうなことね。貴方名前は?」 「アメリア・・・アメリア=セイルーンです」 「セイルーン?結構いいところのお嬢様じゃない。 じゃあ、アメリアさん。ここに隠れてていいわ。だけど、ずっとレゾの事を見てて。途中で寝たって構わないから」 「・・・・わかりました」 少女、アメリアは外には家令がいて見つかるのも時間の問題と思いあえてお仕置きを避けるようにナイトメアの考えに乗った。 そして、ナイトメアがなにかを言おうと思ったときに足音が聞こえてきていてアメリアを押し込むようにタンスの扉を閉めた。 「ナイトメア様。映写機をお持ちしました」 「ん。じゃあ、その辺に置いといて。あと、コーヒーは片付けていいわ」 言った言葉に「かしこまりました」とエリスが言うとコーヒーを片付ける為にお盆をテーブルの上に置いた。 その時ナイトメアはエリスのお盆がワインのデカンターに当たったかのように見せかけ落としてしまう。 「ちょ、ちょっとなにやってるの!?まだ飲んでなかったのに! でも、それよりこのガラスを取るものと、雑巾でワインを拭かないと染み込んじゃうわ!」 慌てた口調で言うナイトメアにあてられたかのように「い、急いで持ってきます」と慌てて走っていくエリス。これは、ワインを飲まないようにすぐに考えた作戦なのだろう。 そして、ナイトメアはワインを拭き取ろうとしないで映写機をタンスの方につけて置き、スクリーンを直線状においた。アメリアにも見えるように配備をしたのだろう。 急いで戻ってきてワインを拭いているエリスには見る余裕などなかっただろう。全然配置が変わっていることに気がつかなかった。 「こんばんわ。ナイトメア様」 「やっと来たわね。レゾ。早速始めましょうか?」 「ええ。そうしましょう」 レゾはゆっくりとイスに座りナイトメアは映写機のライトをオンにしてこの2人の小さな会議は始められた。 会議が行われている部屋と同じ通路にあるこの学寮の大きな図書室で2人の青年と一人の女性が調べものに没頭していた。青年はここの寮長レゾの孫でゼルガディス=グレイワーズという。大学科の方に通っており頭は良くいつもテストの点数は1位ばかり。短い黒髪に蒼の瞳。ルックスも良く女性生徒からモテモテだが、ゼルガディスはすべて軽くあしらっているという。 対して緋色の髪と同色の瞳をもつ女性は中等科に通っている。12歳という年齢で大学に入れるまでの頭脳を持っているという天才的存在の女性。口調も12歳とは思えないほど知的で、年齢よりも高く見られることが多い。名前はシャーリック=マティリナス。 レゾの横につく優秀な2人というのはこの2人のことである。 そして、アメリアが一生懸命マティリナスという名字を探してもあるわけがなかった。彼女が調べていたのは大学生の名簿なのだから・・・・まさか、自分より年下の生徒が有名なレゾの横についているとは思っても見なかったのだろう。 それに、ここまで天才的なのにマティリナスに関する噂などは一切ない。マティリナスはレゾが自ら教育をしており、一般の教室に行くことはなかったからだ。 「にしても、極秘の会議・・・か・・・」 上の本を取る為にあるはしごの上で読んでいた本から目を離し、誰に聞くわけでもないのにぽつりと言葉を漏らした。この2人でさえ奥の部屋だけは入れてもらえないのだ。 その言葉が聞こえたのだろう。マティリナスは顔を上げて「じゃあ、行ってみますか?」と聞いてみるが、やはりレゾが恐ろしいのか首を振った・・・・ それを見てマティリナスはすぐに本に目を戻した。 この2人にもダイモンはいる。だけど、今は連れてきてはいない。奥の部屋にいるように言っておいてある。話が終ったら報告の為にここに戻ってくるだろう。 「・・・そう言えばこんな噂を知ってますか?使用人達が口を揃えて噂をしているのですが、レゾ様が今日来るナイトメア様を殺そうとしているらしいという噂です」 「そんな噂があるのか?」 「ええ。ですが、使用人達に会うときはそんなにありませんから知っている人は少数な筈です」 使用人は大体の部屋の掃除をやっているわけではなく料理を作ったり先生方の部屋を掃除する程度しかやっていない。そんな人達が休憩中に言っている噂が一部の人達に流れ込んできているらしい。 「そして、その噂を徹底的に分析しました結果、戦争勃発するかもしれません。 ナイトメア様が持っているのはソビエト社会主義共和国連邦。そして、北極圏地域でなにかが行われているという噂もあります。それに、ここ最近の子供が消えていくという不可解な事件」 「繋がっていると言いたいのか?」 「それも一つの説ですね・・・・でも、北極圏でなにかをやっているということは、カナダ、ソビエト社会主義共和国連邦、ノルウェー、グリーンランドを植民地にしているデンマーク、その他多くの国を敵にまわす事になります」 「という事は巨大な運営資金と武力がないと成立しないわけか・・・・」 「そして、殺そうとしている噂。それらを重ねると、レゾ様がナイトメア様を殺せばソビエトの武力はレゾ様の想いのままです。北極圏でなにかをやったとしてもソビエトくらいの武力があれば凌げるでしょう」 「まさか、あのじじいが絡んでるのか?」 「あくまで予想です。分析したといっても全部が分かったわけではありませんから・・・・」 「そうか・・・・・」 普通の2人の年齢から考えればこんな話が出てくる訳がない。それどころか途中でこんがらがって止めるのが普通だろう。だが、流石はレゾの孫と勉強を教えて貰っている者。恐ろしく頭が良い。 「真実はどうなっているんだか・・・・」 「じゃあ、探してみますか?《黄金の羅針盤》を・・・・・」 「黄金の羅針盤だと?聞いた事がないんだが、それはなんだ?」 「不思議な力を持つ羅針盤。本当は方向を指す為にあるものなのですが、黄金の羅針盤は思い描くことがある地域へと案内をしてくれるという真理計(アレシオメーター)です」 「どこにあるんだ?」 少し興味を持ったらしく聞いてくるゼルガディスにマティリナスは呆れながら「知りません」と一言だけ言った。 「しらないだと?そこまで詳しく知っているのなら保管されている場所も知っているだろう?」 「知りませんったら知りません!私は伝承には詳しいですけど、そんな保管場所までいちいち覚えてられませんよ! それに運良くここは図書館です。自分で調べたらいかがですか!?」 少し怒った口調のように荒々しく叫んだ。そして、ちょうどこの時に2人のダイモンが戻ってきた。 暗闇に紛れるように2人のダイモンの今の形は黒アゲハ蝶。「ガの方がいい」とゼルガディスは主張したのだが、マティリナスが「絶対に嫌です!!」と叫んで黒アゲハ蝶になった。 「お帰りなさい。で、どうでしたか?エリー」 マティリナスのダイモンの名前はエリシャールモン。いろんな姿に変えられるが犬になったことだけは一度もない。主人が大の犬嫌いだからである。 「やっぱりあのレゾって悪人だわ」 エリシャールモンは甲高い声でマティリナスにそう告げた。 「どういうことだ?」 「どうもこうもないぜ!レゾがナイトメアの飲むワインに毒を入れやがった」 聞くゼルガディスの問いに答えたのは自分のダイモン、レイカーリモン。 「嘘・・・・。で、ナイトメア様はどうなったのですか?」 「生きてるわ。一人の女の子によって助けられたわ」 「あの奥の部屋に忍び込んだ奴がいるわけか・・・。俺達よりも行動力のある奴だな・・・・」 「しかもずっと衣装ダンスに隠れて2人の話を最初から最後まで聞いてやがった。俺等達に主人より凄い奴だぜ!」 「悪かったですね。私は基本的に体力があまりないのですからしょうがないでしょう?」 身を乗り出して言ってきたマティリナスにレイカーリモンはビックリして「そ、そうだよな・・・・」と言ってしまう。 基本的にはダイモンは主人には勝てないのだ。2匹のダイモンはそれを思い出していつもの姿に戻る。 エリシャールモンは猫。レイカーリモンは小さなサルになる。 「にしても、どうする?これからじじい派になるか金髪の奴の方に付くか。それとも自分で調べるか」 指を一本一本折り曲げて言っていくゼルガディスに「そんなの決定してますよ」とマティリナスは言う。 『“自分達で調べる”でしょう!!』 自分のダイモンと声が合わさり図書館に響いた。 ゼルガディスは目を丸くしながらも「そうだな」と一言呟いた。 「・・・・・・リアさん、アメリアさん。起きて」 アメリアは誰かに揺さぶられて意識が徐々に戻っていく。 「ナ・・イトメ・・・ア・・・様・・・・・」 アメリアは途中で寝てしまい丸まって寝ていた。やはり会議が夜だったのが悪かったのだろう。アメリアは夜にはめっきり弱い。クリュースモンは夢の中で起きる気配など微塵も見せない。 「アイツはどんな行動をしてた?」 ナイトメアがアメリアにそう聞くと「ワインを探してました」と正直に答えた。 この場所にエリスがいなかったので落としたということには気付いていなかったのだろう。ずっと探すように手を動かし続けていた。 「そう。やっぱり毒入りだったわけね。眠いでしょ?早く自分の部屋に行っておやすみなさい」 「・・北極に行くんですよね?私も連れていって貰えませんか?」 「それは無理よ。貴方は北極に嫌な思いがあるでしょう?自分の父親が死んでしまったという」 アメリアの父親は北極探検家をやっていたのだが、何かの動物に殺されたという事をアメリアも聞いていた。 「・・・・わかりました。行きません。ナイトメア様おやすみなさい」 やっと誰もいなくなった通路側のドアを開けてアメリアはその部屋から出ていった。 「エリス。あのワインはどうしたのですか?」 自分の書斎に座りながらレゾはエリスに聞いた。すると「落としました」と答える。その一言でレゾはナイトメアが落としたとすぐに予想出来た。 「分かっていたのでしょうか・・・?」 「さぁ、どうでしょう。分かっていたのかもしれませんね・・・」 そして、一呼吸おいて「あの子も関わってしまったのでしょう」と呟いた。 「あの子というのは?」 「アメリア=セイルーンですよ。分かりませんでしたか?あの場にいたことを」 「知りませんでした。でも、その子供がどんな関わりが出来てしまったのですか?」 「真理計が言っているのですよ。大きな役割を担う一人になるだろうと・・・・」 「では、話すのですか?会議で話された事を・・・・」 「いえ。じぶんで知ってもらった方が良いでしょうし、聞く耳をもたないでしょう」 ふと顔を外に向け「それに裏切り者になってしまうのですから・・・」そっと言葉を付け加えた。 そして次の日、レゾの下で働く優秀な生徒が2人揃って姿を消した。 でも、書き置きは残されており、こう書かれていた。『ダストについて調べに行ってくる』『レゾ様の元を離れるのは心苦しいですが、ナイトメア様にしようとした事を見れば貴方のもとで働く事はできません!』 レゾはその書き置きを見て、この2人も会議の会話を聞いていた事が分かる。そして、優しい笑みを浮かべながら「この2人もそうなのかもしれませんね・・・」と呟いて書き置きを机の引き出しにしまい込んだ。 「・・・・・ダスト・・・・」 アメリアは部屋に閉じこもりっぱなしで昨日の会議の会話を思い浮かべていた。そして、今日の噂。自分以外にもあの会話を聞いていたものがいたと考えて同時に「いいな・・・」という想いが心の中に渦巻いていた。 「行く?あたし達も・・・」 クリュースモンにそう言われてアメリアはハッとなった。 別に行ったって誰に迷惑を掛けるわけではない。それに、思い付いたら即実行。これが自分の良いところでもある。 「相談してから考えてみても遅くない筈です」 「リナのところに行くの?」 リナ、リナ=インバースという。彼女はアメリアの親友的存在でいつも話を聞いてくれたり相談に乗ってくれたりするアメリアの信頼する人である。 すぐに頷いて部屋を出て、リナが何処にいるかを探したのだが誰一人として姿を見ているものはいなかった。まるで、この学園内にいないように・・・ その考えに嫌な予感が全身を駆け回った。今、子供が連れさらわれるという事件が起こっている。巻き込まれる・・・彼女には絶対にありえなそうな事だったが、いないとなるとそう考える事以外出来なかった。 部屋にも行ってみたが荒らされた形跡はなく、人がいたような気配もない。 「リナさん!リナさん!!」 叫んでみるが返事は返ってこない。こうなっては寮長に相談するしかないだろう。 コンコン・・・ 「寮長様、入ります」 寮長の部屋に入りドンッと机を叩いて叫んだ。 「リナさんが・・・リナ=インバースさんがさらわれました! 寮長、学寮から出る許可を下さい!」 「貴方も・・・・あの2人と同じようですね・・・・ わかりました。許可をしましょう。そして、この真理計を持っていくとよいでしょう」 「真理計・・・・?」 「真実を教えてくれるものです。只、読み方は自分自身で覚えるしかありません。これは、この学寮の者には見られたらいけません。早く部屋に帰り支度をしなさい」 ゆっくりと言っていくレゾだが明らかに声を低くしている。 どうしてだかアメリアには分からなかったが、とりあえずポケットに仕舞い込み、寮長室を後にした。 自分の部屋に戻り、これから寒いところに行く為、荷物はなるべく少なくでも、暖かいものを積め込んだ。そして、一番上に先ほど貰った真理計を乗せて閉める。 「ふぅ・・・・」 「疲れた?」 「少しだけですけどね。クリューは?」 「ずっと君の肩にのかっていたんだ。全然平気」 肩の上のリスは左右に忙しなく駆け回る。元気だと言っているかのように・・・ 「じゃあ、行きましょうか!?」 「お──!」 バックを肩から掛けて浮かれるように部屋を出て、 ボスッ・・・・ 誰かにぶつかった。 金髪の髪に蒼の瞳・・・・カッコ良く学校でも注目の的。 アメリアは誰だか分からず「・・・・どなたですか?」と質問した。 だけど、返ってきた答えは質問の答えではなかった。 「リナがさらわれたそうだな」 「・・・・・まさか、ガウリイ=ガブリエフさん!?」 ふと思い出して名前を言うと「そうだ」という答えが返ってきた。 「でも、どうしてリナさんがさらわれたのを知っているんですか?」 「寮長に聞いた。お前さんがアメリアだろう?リナからよく話は聞いている」 「で、この私になにかご用ですか?」 「俺も連れていってくれ!」 いきなり頼み込んでくるガウリイにアメリアは混乱した。会ってまもない相手に頭を下げているのだ。驚かないわけにはいかないだろう。 「アメリア、別に連れていっても大丈夫だよ。本気でリナの事を心配してるんだよ」 「お、ダイモンを連れてるのか。可愛いな。なんて言う名前だ?」 「わぁ!止めろ!この馬鹿!!」 グシャグシャと撫でられるがクリュースモンは嫌がって声を上げるがダイモンを持っていないガウリイには声が聞こえない。 そんな2人(?)を見ながら小声で「・・・・・・馬鹿って・・・・」と言ったが聞いていなかったようでガウリイがもう一回聞いてきて答えを告げる。 「クリュースモン。クリューです。でも、ガウリイさんは嫌われているみたいですね・・・・」 「なんでだよ!?」 「決まっているよ。コイツあたしの毛並みをグチャグチャにするんだ!」 「・・・・毛並みをグチャグチャにされるのが嫌だそうです・・・・」 言葉が分からないガウリイにアメリアが説明してあげる。 「まぁ、よろしくなクリュー」 ニコニコとしながらクリュースモンの背中を撫でると、ガブッと噛る。手を抑えながら「イテェェェ!!」と叫んでいたがクリュースモンは面白そうに笑っていた。 そして、こんな2人と一匹のリナ救出大作戦が開始された。 成功するかどうかは謎だが・・・・・ ☆ちょっとした説明書き。 私のHPに来たことのある人なら分かると思いますが、オリジナルキャラクターの性格が多少違います。 これは、間違いではありません。まぁ、どっかの死神さんが悪役になっていますが、2部目がスレイヤーズの世界に行くという設定になっています。そこで、自分と全然違う人生を歩んでいる自分を見つけるわけです。そこで性格を違くして面白さをだそうと考えた為です。 ですので、「そーなのか」と納得して読んで頂けると嬉しいです。 では、桜井 ゆかりでした。 |
5828 | 黄金の羅針盤1話 | 桜井 ゆかり E-mail URL | 3/1-16:37 |
記事番号5792へのコメント 1です。前書き無しで。 「ティス、なにかあったか?」 「羅針盤、進路を測定する用具。 羅針盤、磁石の針が北南をさす性質を利用して、方角をしる器械。船や航空機の進路をはかるのに用いる」 パラパラとページを繰りながらマティリナスは暗記しているように言いはじめる。いや、ほとんどは頭の中に入っているのだろう。 ここは、モスクワにある大きな図書館の中。ほとんどが自分達の国とは違う言葉で書かれていて読めないが単語くらいなら読める。 「ダストについては分かるか?それか、この辞典読めるか?」 マティリナスは持っていた辞典をパラパラと捲っていく。そして、ある一点で捲るのを止めた。 「ダストという言葉は知っての通りホコリという意味だけしか載っていません。それに面白い言葉にもダストが付いているのです。例えば『ダイヤモンド・ダスト』」 バッとページを開いてゼルガディスに見せるものの・・・「地上・・・降りる・・・?氷?」と単語しか読む事が出来ず悪戦苦闘していた。 「お兄ちゃんレゾ様の孫でしょう?ロシア語ぐらい読めないでどうするの・・・ いい?ダイヤモンドダスト、青空をバックに小さな氷晶が太陽光線でキラキラと輝きながら無数の小さなダイヤモンドのかけらが降ってくるように見える現象」 「へぇ〜・・・・・見てみたいな〜。そのダイヤモンドダストって」 「でも、北極ならオーロラの方が見物だぞ。空に掛かったカーテンみたいなんだぜ?」 「お前、知らないくせになにをほざいてやがる」 ゼルガディスはアヒルの姿をしているレイカーリモンの頭を叩き、黙らせた。 「まぁまぁ。北緯90度の地点。私達はその場所に向かうのです。出来るだけ厚着をしていった方がいいですよ。向こうは寒いですから」 「しっかしナイトメアの奴も大きな国を作ったもんだ。財政は大変だろうな」 「でもよ、いろんな物を作ってるんだろ?だったら全然余裕じゃねーか?」 「そんなのナイトメア様に聞いてみればいいでしょうに。ねぇ、御主人様」 「まぁ、それもそうですね。じゃあ、食料の買い出しでも行きます?真相を究明するのですから1週間分ぐらいは在った方がよさそうですね」 ニッコリと笑いながらダイモン達を見る。この2匹は異常というほどに食欲がある。ダイモンならば犬ぐらいの食料でOKな筈なのだがこの2匹は人間が食べるぶんぐらい食べる。 ダラダラと汗を流しながら、返す言葉を捜していたが浮かんでは消え浮かんでは消え言葉にならない。 「言うのは諦める事だな。コイツには何を言っても簡単に反論されてしまうからな」 そんな2匹にゼルガディスも救いの言葉はなく逆に静かに後ろの方で暗くなってしまった。 「ほら、お前等早くリスかなにかにでもなれ。行くぞ」 蹲っていた2匹は素早く姿を変えて2人の肩に乗っかりやっぱり沈む。 そんな2匹を気にしないかのように2人はモスクワの雪の街を歩いて人込みの中に消えた。 「ここから約6時間の飛行機の旅だそうですよ」 ニコニコと笑いながら空港のロビーでガウリイにチケットを渡しながら言うアメリア。 ここ、ブルガリアからモスクワまで行って船かなにかで北極に向かうつもりだった。 「途中で寝るな」 「大丈夫ですよ」 「・・・・大丈夫じゃない。気持ちいいとすぐに寝るくせに」 「う゛っ・・・・」 そう。アメリアは横になるとすぐに寝てしまうという特技(?)を持っている。時にはお風呂の中でも寝てしまう。 そして、クリュースモンの言葉が分からないガウリイは「?」という感じになりながらもアメリアに尋ねた。 「なんの話をしてるんだ?」 「飛行機の中で寝るなと言われました・・・」 「おお。多分俺も寝るからな。起してくれよ」 ぽんぽんっとリスの頭を叩くとガブリと噛まれる。 クリュースモンは「ケッ」と言ってガウリイから離れて反対の肩に移った。 「ねぇ、あたしガウリイ嫌い」 「我慢して下さい!」 ロビーで突っ立っているアメリアはずっとクリュースモンと喋っていてガウリイはぼーぜんとしているのみ。そんなガウリイが口を開いた。 「なぁ、時間まだあるんならどっかで飯くわないか?」 「残念ながら飛行機が出る時間までは10分ぐらいしかないんです。ですから、ちょっと無理がありますね」 「はぁ・・・・そうか・・・」 「食べる事しか頭にないんだ」 「そんな風に指摘しなくてもいいと・・・」 「・・・・食べる事しか頭にないとか思っただろ!?」 「な、なんで・・・!?」 キュィキュイとしか聞こえない筈のクリュースモンの言葉が分かるなんてと驚く。 「いやな、俺昔、人の100倍の勘があるって言われたんだよなぁ〜。しかも、天はニ物を与えずって大評判だったんだぞ!」 その言葉にアメリアとクリュースモンは一瞬止まり、顔を見合わせた。 「それって・・・・」 「なにかが100分の一ってことだよ・・・・・」 少し暗くなった雰囲気の中にちょうどよくアナウンスが流れた。 『モスクワ行きJAL102便が到着いたしました。お乗りになるお客様は───』 「あ、来たみたいですよ!早くいきましょ。ガウリイさん」 ぴょんっと飛び跳ねながら乗る飛行機が止まっている場所に向かう。 「おおぃ、待ってくれ───!」 「早く来ないと置いてくぞ──だ」 「クリュー、貴方性格悪くなってますよ」 「いいのいいの」 そう聞いてから後ろを見て、「ガウリイさ〜ん!こっちですよ〜!」と金髪が見える方に叫んだ。 この地方では金髪は珍しいから簡単にガウリイは見つかるからはぐれる事はそうはない。 でも、本当にはぐれたらいやなのだろう。少し止まって待ってやっていた。 「ちゃんと付いて来て下さいよ」 「あ、ああ。わかった」 そしてこの後ははぐれたりしなく飛行機の席に座った。 それから6時間飛行機の旅は続いた。が、2人と1匹は心地よい夢の中にいた。 あれだけ寝るなと言っていたが耐えられなく全員がお休みになった。そして、モスクワについて一斉に目を覚ました。 「えええ────!?船が出ない!?」 「あらら。大変ですね」 エリシャールモンは慌てて大声で叫んだ。それを後ろでのほほんと言ったのはマティリナス。 実は今の時期は流氷で覆われてそう簡単には船を出してもらえないそうなのだ。スノーモービルで行けば済むことなのだろうが、割れているところが幾つもありそれも無理らしい。 「どうする?気球でも使っていくのか?」 「寒くて凍り付いちゃうわよ!」 「ここではなくて、ロンドン辺りから行った方が得策だったかもな・・・」 「今更言ってももう遅いです」 ここから行けないのでは先に進む事すらできない。 諦める、そんな言葉は何処にもなく必死に他の方法を探している2人。 「やっぱり《黄金の羅針盤》あればよかったですね」 「何処にあるか知らないんだろう?そんな物がその辺りに転がっているのなら大変な問題だからな」 「いえ、黄金ではないですけど、レゾ様が羅針盤を持っていらっしゃったような気がするのですが・・・・」 「アイツがか?・・・・アイツならば持っている可能性は高かったかもな」 と、2人が羅針盤の話をしているとダイモンを持っていない、船の船長が話し掛けてきた。 「レゾ?お前達はレゾ様のところの生徒かい?」 「そうだが。それがどうした?」 「実はロード・ナイトメア様が掴まったそうだ。 北極の探索に行かれたきり戻ってこないのだ」 『ナイトメア様が掴まった!!?』 口を開いて言ったのは2人とダイモンだけではなかった。何時の間にか後ろに来ていた小さな女の子までが声を上げた。 黒髪の少女、アメリアは一斉に振り向いた2人に驚きながらも「あ・・・・えっと・・・は、はじめまして・・・・」と、答える。 「誰だ?」 「・・・・アメリア=セイルーンと申します・・・・」 「アメリア・・・セイルーン!?私達と同じ学寮の生徒です!」 いきなりアメリアの顔を見ながら叫んだマティリナスを見ながら「え?」と少々間抜けな声を上げた。 「私はシャーリック=マティリナス。12歳。こっちのダイモンがエリシャールモン。通称エリー」 「・・・・12歳?マティリナス・・・さん・・・・? もしかして、レゾ様の元で働いている優秀な生徒の一人ですか!?」 「ええ。よく知ってますね・・・・」 「じゃあ、こちらがゼルガディス=グレイワーズさんですか!?」 元気さがいきなり増し、近寄ってくるアメリアにゼルガディスは押されながらも「あ、ああ」と答えた。 「わぁ・・・・優秀な生徒がここに2人も揃っているなんて・・・・感激です!」 「・・・・え、っと・・・・アメリア様。後ろにいらっしゃる方は・・・?」 「ガウリイ=ガブリエフさんです!」 「あの馬鹿な生徒で有名な奴か・・・」 実はガウリイもある意味では有名な生徒の一人なのだ。 有名といってもいい方ではなく悪い方なのだが・・・・本人は自覚していないのか、あまり気にしている様子はない。それどころか「照れるなぁ〜」と、褒め称えられているのと勘違いしているかのように照れていたりする。 馬鹿だと言っているが“超”が手前に付くだろう。 「・・・・3+1=?」 「それくらい俺だって分かるぜ。4だろ?」 「じゃあ、12×3=?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・わからん・・・・」 『・・・・・・・ι』 一生懸命考えて出た言葉に一同(ダイモンも)返す言葉がなく静まってしまった。 そして、次の瞬間その場から離れて話しはじめる。 「そういえば、お前この前奥の部屋にいた奴じゃねぇか」 「な、なんで知ってるんですか!?」 「俺とエリーもあの部屋にいたんだよ。会議のある日にな」 「っておい!どうして俺抜きで話を進めるんだよ〜!」 遠くで置き去りにされたガウリイの声など無視して話を続ける。 「俺が言ったんだ。あのじじいがあの部屋で話す事にはずっと前から気になっていたからな」 「とか言ってレゾ様のところから逃げる事だけを考えていただけでしょう?」 「悪かったな」 「まぁまぁ。それより、ここで何をしていたんですか?」 これが2人の日常と知らないアメリアは間に割り込んで話を変えた。 少し怪訝な顔をしたものの、『こうやって見えているのか・・・・』と考えて口を開いた。 「ここから北極に行く船を捜してたんだよ。だが、この流氷で出れないんだとよ」 先にレイカーリモンに言われてしまったゼルガディスは睨むんで威嚇しているようにも見える。 「・・・・ヘリコプターなんてどうですか?」 「・・・・船以外にそんな手があったな・・・・」 「気が付かなかったですね・・・・」 ダイモンがゼルガディスとマティリナスの肩から飛び降りて猫とももんがの姿になる。そして、小声で喋りはじめた。 「おれ等の主人って頭が良いんだけど、小さな事に頭が回らないんだよな・・・・」 「確かにそうだよね。あたし達の主人って頭が良いのか悪いのか・・・わっかんないよね」 『どういう意味だ(じゃ)!!』 下でコソコソと会話をしているダイモン2匹に主人2人は声をはもらせながら叫んだ。 「流石は自分自身。よく分かってる」 「ダイモンは主人の魂の一部ですからね」 そんな2人と2匹を見ながらアメリアとクリュースモンは笑いながら優しく見ていた。 カタカタカタカタ・・・・・・ この時初めてアメリアは羅針盤が動いている事に気が付いた。この羅針盤がなにかを意味していることも同時に・・・・ 《ここより東のグリーンランドに・・・・・・・》 「・・・グリーンランド?」 「羅針盤!もしかして、レゾ様の羅針盤では・・・!?」 「知っているんですか!? って、レゾ様の側に付いていたんですから知ってますよね・・・・」 ・・・別にそんなんじゃ・・・と、マティリナスは思ったが口には出さなかった。 確かに勉強するときだけレゾの部屋に入れるがそれ以外のときは入った事もないしなにがあるかなどは教えてもらった事すらない。 ゼルガディスがすぐに気付いたのだろう。話を進める。 「黄金ではないか・・・・」 「黄金?そんな羅針盤があるの?」 クリュースモンはポンッと姿をネズミに変えてゼルガディスの肩の上に乗っかる。アメリアが「な、なにやってるんですか!?」と叫んでクリュースモンを取ろうとするがちょこまかと逃げて捕まえられない。 「ガウリイ。アンタ早く話に参加しなよ」 「ん?なんて言ってるんだ?」 「話に参加しろだとよ」 言葉が分からないガウリイに説明をつけるゼルガディス。なかなかボケの対応に慣れてきたようだ。 「まぁ、話はもう良いですよ!早くヘリコプターでグリーンランドにいきましょ」 走ろうとするとクリュースモンが肩の上に乗っかってくる。その後ろにガウリイがゆっくりと追いかける。 「よかったですね。お兄ちゃん」 「・・・・・なにがだ?」 「お兄ちゃん好みの女の子が居て」 「お前はどうなんだ?」 「私ですか?私は捻くれた兄を持つ悲しい妹ですよ」 クスクスっと笑いながらマティリナスはすぐに走り出した。全速力で。 「をぃ、捻くれたって俺の事か!」 「主人以外にいるわけないぞ」 ゲン・・・・ 一発五月蝿いダイモンにも鉄拳を食らわし、しばし考える。 俺ってそんなに捻くれものに見えるのか・・・・? と。 それと同じ時刻に山を見上げながら殆どを黒で統一した服を着た女性がぽつりと言葉を漏らした。 「誰かがこの村に来る・・・」 この世界で魔女と呼ばれし者である。 「そのようです。どうしますか?」 「もちろんささやかな歓迎をして、献上するに決まってるじゃんか」 ダイモンは次の瞬間その場から飛び降りコウモリに姿を変えて北の方に飛んでいく。 魔女のダイモンは何処までも離れる事が可能なのだ。その為に魔女同士の連絡用にも用いられ、いろんなところに飛んでいく。 「さてと、歓迎の準備をしますか。ねぇ、君達」 魔女は悪逆的な笑みを浮かべ下を見下ろした。そこには数多くのダイモンが主人と離され檻の中に捕まっていた。 ダイモンは主人の一部。だけど、離されれば一瞬にして主人もダイモンも死んでしまう。それなのにこのダイモン達は生きていた。けれど、その横には人間の死体が幾つも重なっていた。 ここはグリーンランドの中部に位置する村。フィリプ。 そして、人間を売る村───── なんだか自分でも設定がおかしくなっていくのが分かる・・・・ こんな奴の小説を読んでくれてありがとう〜 |
5829 | こんばんは。 | みてい | 3/1-18:32 |
記事番号5828へのコメント ども、こんばんは桜井さん。はじめまして。 小説1をうろついてるみていと申します。 『黄金の羅針盤』、読ませていただきましたv 話が読めない。どうなるんだろう、この先。どきどき。 しかもレゾいますか?なんだか一癖以上三癖未満って感じの方でしょうか(謎) 明らかにな〜んか企んでる某少年がこの先何をしでかすのかも気になりますし、リナがどっかに出てくるのかというのも期待してます。(まだ出てない…ですよね?) 極短の感想ですみません。 それでは、また続き拝読させてくださいね。 以上みていでした。 |
5835 | 確かに謎かも・・・・ | 桜井 ゆかり E-mail URL | 3/2-00:03 |
記事番号5829へのコメント みていさんは No.5829「こんばんは。」で書きました。 > >ども、こんばんは桜井さん。はじめまして。 >小説1をうろついてるみていと申します。 知ってます〜。2のほうにもよく来てレスを書いている人ですよね? はじめまして〜。 >『黄金の羅針盤』、読ませていただきましたv >話が読めない。どうなるんだろう、この先。どきどき。 そうですね・・・・・一つ言える事は『黄金の羅針盤』ではパッピーで終らないと言ったところでしょうか? >しかもレゾいますか?なんだか一癖以上三癖未満って感じの方でしょうか(謎) 今のところは謎の人物(笑) >明らかにな〜んか企んでる某少年がこの先何をしでかすのかも気になりますし、リナがどっかに出てくるのかというのも期待してます。(まだ出てない…ですよね?) リナはもうすぐ出ます。たしか、4だったかな・・・? 結構前に考えたものだからどの辺だったか忘れて・・・・なんだかガウリイみたい・・・・ >極短の感想ですみません。 >それでは、また続き拝読させてくださいね。 >以上みていでした。 感想ありがとうございました〜! なんとか頑張っていきますのでよろしくお願いします。 |
5849 | 黄金の羅針盤2話 | 桜井 ゆかり E-mail URL | 3/2-23:50 |
記事番号5828へのコメント なんだか、どんどん暗くなってきている気がするなぁ〜・・・・黄金の羅針盤・・・ まぁ、しょうがないかな?黄金の羅針盤は暗いまま終るから。 では、2です。 ブブブブブブ・・・・・ 小さなヘリコプターに乗り込んだアメリア達はグリーンランドに向かって飛んでいく。 「羅針盤の言葉を読めますか?アメリア様」 そんなヘリコプターを運転しているのはマティリナス。芸の多い人物である。 「まだちょっと無理ですぅ〜・・・・」 「それよりお前ちゃんと前見てろよ・・・・・」 ゼルガディスに突っ込まれてマティリナスはぶーたれながら前を向き操縦に集中する。 「あたしがそばに居てあげるからそんな顔をしないでよ」 エリシャールモンはハムスターに姿を変えてマティリナスの肩に乗って話し相手になっている。 「アメリアさん・・・・」 「アメリアで結構です。グレイワーズさん」 「そうか。じゃあ、アメリア。その羅針盤もう一度見せてもらえないか?」 「いいですけど」 ニコニコとしながらアメリアは羅針盤をゼルガディスに渡した。 ゼルガディスは受け取り針を回し、12時の方向に合わせる。 すると、グルグルといろんな方向に回っていく。なにかを伝えようとしているのだろう。だけど、ゼルガディスには全然分からなかった。 アメリアは試しに羅針盤に触れる。すると、言葉が響いてきた。 《動物・・・・離れ・・・・・死・・・・・》 「・・・・動物?死・・・・?」 「はぁ?どういう意味だ?」 顔に似合わない間抜けな声を上げアメリアに問う。 「もしかしたら動物はダイモンの事ではありませんか?」 「前見てろよ・・・お前・・・」 「落とすんじゃねぇーぞ」 いきなり後ろを向きながら運転するマティリナスに叱りの声を上げるゼルガディスとレイカーリモン。 「御主人様はなんでも出来る偉いお方なんだよ!だからそんなヘマするわけがないでしょ」 「い、いや・・・・私も人間ですし・・・・出来ない事も嫌いなものもありますからヘマすることもあると・・・・・」 エリシャールモンがきっぱりと言った言葉に主人は恐る恐るゆっくりと言う。自分の一部にあまり発言出来ないという不可思議な弱点を持っている。 「あ、でも、ダイモンっていうのは当たりかもしれませんよ!」 「どういう意味?」 「動物が離れて死ぬ。単語だけを付けるとこうなります。普通は動物は離れたら死ぬ動物がいないでしょ?ダイモンしかいないじゃないですか。離れて死ぬ動物。持っていない人間なら分からないと思いますが、ダイモンは大切な自分の一部ですから!」 気合を入れたかのように熱弁をするアメリアに彼女のダイモンは「そ、そうだね・・・」と押されながらもちゃんと言葉を返す。 「なぁ・・・」 と、徐に口を開いたのは存在感が薄れはじめていたガウリイ。ずっと話についていけず後ろの方で寝ていた筈のガウリイが何時の間にか起きて話に参加していると知らなかったアメリア達はビックリして、ちょっとその場所から退いた。 「ダイモンって人から切り離したら死ぬんだよな?」 「分かりきった事を聞いてどうする?」 「いやな、あそこに宙に浮いた人間がいるからダイモンを持っている奴かと思ったらダイモンを連れていなかったから、一体何者なんだろうなぁ〜って思ったからよ」 その言葉に一同は目を丸くした。一斉に外を向いてその宙に浮いている人物を確認しようとしたけど、何処にいるか分からない。 「ちょっと、本当にそんな人物が居るわけ!?」 エリシャールモンはマティリナスの肩から離れてガウリイの肩に乗り、顔をガブッと齧った。本当にガウリイはダイモンから好かれない人物だととことん思う。 「な、なんて言ってるんだ?このネズミ」 「ネズミじゃない!ハムスターよ!」 ネズミと言われたのが気に食わないらしくガブガブとガウリイの顔をあちこち噛む。ガウリイは「いってぇ───!」と叫んでジタバタとその場で暴れる。 「ちょ、危ないから暴れないで!ヘリコプターが落ちますよ!」 ガタガタと揺れる機体を持ち直そうとしてマティリナスは強く操縦桿を握って「エリー、そいつを離しないさい!」と叱り付けるように強い口調で言った。 すると、エリシャールモンは一瞬震えてガウリイを威嚇した後にマティリナスの肩に戻ってくる。 「エリーはガウリイさんにネズミ扱いされたのが嫌だったんですよ」 「別にネズミの一種だろ?ネズミ扱いされたってかまやしないだろ?」 「ハムスターだって言ってんでしょ!」 今にも2匹は飛び掛かりそうな様子で相手を探る。だけど『いい加減にしなさい(しろ)!』という2匹の主人の声でぴたりと止まる。 「で、ガウリイさん。その宙に浮いている人って何処にいるんですか?」 やっと落ち着いた空気になった途端アメリアが口を開いた。 「う〜んとな、あっちの方だ」 的確とはいかないが指をさしてくれているだけでも、ガウリイにしては的確なのだろう。 「あっちって・・・全然見えないじゃないですか!」 大きな声で叫んだアメリアの声でガウリイの耳の鼓膜が敗れるのではないかというぐらいに大きな叫びだった。 「なんなら、近付けてみますか?」 と言ったのが先だったか、機体は斜めに傾き急速にガウリイが指でさした方向に近付いていく。中はビックリして悲鳴が上がったり驚いたりしているがマティリナスは全然気には止めない。 「見えた!あの人ね。ガウリイ様!」 「おっと・・・・ああ。そうだ」 急に声をかけられたガウリイは慌てて外を見て姿を確認した。そして、その人物を見た隣のアメリアが「死神みたい・・・」とぽつりと言葉を漏らした。 「確かに死神そのものだな・・・」 茶色の髪に殆どを黒で統一させた服。そんな服を着ている人を見たとき普通は西洋の死神を思い浮かべるのが普通だが「只の葬儀屋じゃないのか?」とボケか本音か分からないがガウリイが言った言葉に一同イスから滑り落ちた。 「何処の世界に飛ぶ葬儀屋がいるんだ!?ガウリイ」 ゼルガディスの呆れを通り越して怒りが上乗せされた言葉に「ここ」とガウリイは真面目な顔で答える。真面目な顔で言っているガウリイが恐ろしい・・・・・ そんな会話が終った後、アメリアが「死神さんいなくなってしまいました・・・」と外を見て呟いた。 ハッと気付いて全員が揃って外を見つめるが何処にもいない。ガウリイでさえも分からなかった。 「それにしてもよくあんな遠いところからあの人が見えましたね」 「いや〜。昔から視力と勘だけはよくてなぁ〜」 「只、頭がおかしいからじゃない?」 ゆっくりと言っていくガウリイにクリュースモンはガウリイには言葉は通じないからといって酷い事を連呼する。 「ばーか、バーカ」 「クリュー!」 上から叱り付けるような声に完全に黙り込むクリュースモン。 「とりあえずは降りる?すぐそこがグリーンランドだけど・・・・」 「さっきの方が居るとすればこの国───」 「国じゃないぞ、アメリア。デンマークの植民地だ」(本当の事だよ。覚えておいて損はないかも?) スッと横から言われ「あ・・・・・」と漏らしつつ、顔を下に向けた。 「行ってみるか。ティス。高度を下げろ」 「人に命令をするように言わないでよ!たくっ・・・・・」 ちゃんと突っ込みつつも操縦桿を前に倒しながら降下をしていくのに集中した。 ガガン!! 機体が揺れ、大きな音が響いた。そして、全員が座っている場所から大幅にずれ「木の上に引っかかったようです・・・・・」というマティリナスの小さな声が聞こえた。 「あー?なんだって?」 「ですから、木に引っかかったようですって言っているでしょう!?」 凄く嫌みな言葉にマティリナスは怒りをとことん表し、ゼルガディスに食い掛かった。 「でも、すぐに降りられますよ。ほら。5メートルぐらいしかありませんから」 フォローのつもりなのだろうか・・・・・・・でも、普通5メートルもの高さをなにも無しに降りたら骨折だけではすまないだろう。 「“しか”ってそんな高いところから降りたら骨折する」 「心に正義の炎を燃やしていれば大丈夫です!」 「恐ろしい空想理論じゃねぇか?」 レイカーリモンの言葉にコクリとガウリイと空想理論を言ったアメリア以外は深く頷いた。 結局はマティリナスがヘリコプターの中にロープを見つけそれを下まで垂らし降りた。 そんな頃フィリプでは、魔女が集ってきていた。 アメリア達が見た魔女はその真ん中に陣取っていた。 足を組み、肩に人形みたいな姿をしたテレビを乗っからせ、まさにリーダーを気取っているように座っているだけでも威圧感がある。 彼女はアリア=フリード。今一番若い魔女で、この地域のリーダーを務めている。 もっと年齢の高い魔女が黙っているわけもなく座っているアリアに突っかかってくる。 「アンタさぁ、生意気なんだよね」 「とっとっと降りたら?リーダーを」 ザクッ! 「はい?何か言ったかな?この肉片」 アリアが自分で斬った魔女を見ながら面白そうに呟くと「さぁ」と彼女の肩に乗っているテレビの人形のダイモン、フリーモンがあまり気にしていないように言った。 魔女というと魔法が使えるといったイメージを持ちやすいが今の魔女は魔法などは使えない。 何故かというと魔女としての能力が後退していき空を飛べる以外の能力はなくなってしまった。だけど、アリアにはダイモンが居て大きな鎌も使える。まるで死神のように・・・ 「ふふ・・・あたしに嫌な気分を抱いてる者はかかって来れば?」 挑発して自分に不快感を抱いている者を倒そうとしたが誰もかかってくる者はいなかった。 「つまんない。面白くもなんともない」 「まぁ、しょうがないでしょう?アリア様の力は並みの魔女では得られない力ですから」 「あ、フー。ロード=ナイトメア様に連絡は取ったの?」 「ええ。いつでも準備はOKだそうですよ」 その言葉を聞いてアリアは立ち上がって「準備にかかる」と指示を出していく。 「リリンはその小屋で仕事をして!ラリュータ、すぐそこの家で御飯でも作って。それと、服は黒じゃ駄目よ」 ふふふ・・・・と笑いながら言って腰を左手に当て、右手に鎌を持った。もちろん刃の方が地面を向いている。 「フー、動物に化けて。小さい動物が適任よ」 ポンッと音がしてスズメになった。アリアは満足そうに見ると村に背を向けて歩き出した。 すると、そこに居た魔女が「何処に行くの!?」と聞いたのでアリアは振り向き鎌を手から消した。 「もちろん。お迎えに決まってるでしょ」 言いながらまた歩きはじめる。「ダイモンと人間を・・・ね」と付け加えて。 「でも、どうして人間を集めているんでしょうか・・・・。しかも“子供にダイモンが付いている”と限定までしていて・・・・」 「さぁね。人間を集めて何をしているかは知らない。だけど、良い事ではないだろうけどね」 そして、ふと気付いたようにアリアは自分のダイモンをしげしげと見つめ、ポンッと手を打った。フリーモンは驚いたように「なにか分かったんですか!?」と聞いてみた。すると、全く意外な答えが返ってくる。 「いや、あたしもダイモンを持っている子供にあたるんだなぁ〜って思ってね」 「子供ではないような・・・気がするのですが・・・・」 「なーに言ってんの?あたしはまだ18だよ。魔女の年齢で考えたら十分子供の方に入るよ」 考えてみればまだまだ子供にあたるだろう。魔女の寿命から考えると・・・・ 魔女は大体400年は生きると言われている。その為に子供扱いされる事が多い。 「そういえば、服は変えないのですか?」 「別に変えても意味はないから。顔と服装は見られているから変えてもしょうがないでしょ?」 「何時の間に会っていたのですか!」 「もちろんフーがいなくなった後」 「・・・・・僕がいない間に会わないで下さい!アリア様は分かっていないのですか!?魔女は人間の天敵と───」 「それはもう何百年も昔の話。今は違うでしょ」 耳元で叫ぶ声が五月蝿かったのだろう。手の方に乗っけて涼やかに反論した。それに、フリーモンが心配する理由も分かっていた。昔の人間と魔女の戦争があったせいで仲があまり良くなかった。 そのせいではないが、アリアは人間があまり好きではない。だから、人間に対する悪戯や嫌がらせが大好きなのだ。 それに、迎えに行く理由は「まぁ、面白そうだから」だそうだ。 「大丈夫。いざとなったら人間の首を飛ばして逃げるから」 ニッコニコとしながら歩いていくアリアの姿を見て「本当に・・・大丈夫なんでしょうか・・・」と少し不安になるが、普通の魔女とは違うと思い浮かべると少しは不安が消えた。 「ほら。そこに居る。 ・・・・・あーあ。あんなところにヘリコプターを着陸させて・・・・人間って面白い」 「・・・・あれは着陸ではないような気がするのですが・・・・・」 「ん?何か言った?」 かなり声が小さかったようでアリアに聞こえなかったらしい。フリーモンはそう考えて「なんでもありません」と答えた。 「あっそう?じゃあ、行こうか?人間を捕まえ作戦決行!」 アリアはスキップするような軽い足取りでヘリコプターがあるところまで駆け寄った。 「大丈夫ですか?」 小さな森になっているところ、ここにヘリコプターは降りようとして気に引っかかった。ずいぶんとお間抜けな話である。 心配顔で出てきたアリアを疑おうとせずにアメリアは近寄っていった。 「ええ。貴方はさっき空に浮かんでた死神さんですよね?」 ニコニコと笑顔を付けながら言ってくる台詞に「はぁ?死神?」と間抜けな声を上げアメリアを見た。 「えええーーー!死神さんじゃないんですか!?」 「あたしは魔女アリア=フリード。貴方は?」 「アメリア=セイルーンです。んで、こっちの無口な人がゼルガディスさん。この陽気な方がガウリイさん。それから───」 「リリスよ」 アメリアの言葉を遮ってマティリナスが口を挟んだ。どっからどう聞いても自分の名前を言っていない為に「偽名を使ってどうするの?」とエリシャールモンが耳元で小声で聞いてきた。 「もちろん、魔女なんか信用出来ないからに決まっています」 小さな声で返ってくるが何処か怒りが含まれているような感じがして「怒ってる?」と聞いてみる。だけど、返事は一向に返ってこなかった。 「・・・こんなところまで来て、木に引っかかるのも凄いね・・・・でも、この島に何のご用?」 「燃料切れ。不時着しようとしたらこんなところに引っかかったの」 「それは大変!この近くに私の村があります。そこで燃料を補給して下さい!」 「ありがとうございます。じゃあ、行こうか?」 ずっとマティリナスは嘘ばっかりを並べていく。 アリアも信じてはいないがこう易々と自分の村に運べてラッキーと思っている。 「では、こちらです」 と言って歩いていくアリアの後ろを歩きながら小声で話をし始めた。 「マティリナスさん。あの嘘はちょっと・・・・」 「魔女は敵よ。私にとってはね」 「どうして?魔女との戦争はずっと前に終った」 「レゾ様が言ってた。私の義親は魔女に殺されたと」 悲しい顔をしながら言うマティリナスを見てクリュースモンは聞いてはいけないものだったと深く反省するようにアメリアのポケットに入り込んだ。 そんなクリュースモンを見て「別にそんなに気にしているものじゃないわ」と慰めるように言った。 「まぁ、なんにしてもこのままティスの嘘を続けるぞ。俺も魔女なんか信用できん」 「分かりました。私も・・・嘘を言います。気が進まないけど・・・」 確かにアメリアには嘘は難しい課題になるだろう。そんな事をゼルガディスが思っていると「なぁ、おれは・・・・」とガウリイがおずおずと声を出してきた。 「黙っていて。何も言わないで、じっとしてるだけでいいから」 こんな単細胞に嘘が言える筈がない。いや、それどころかなにも分かっていない筈だ。全員そう考えてしまう。 そんな話をしている最中にアリアも自分のダイモンと話をしていた。 「面白い・・・・面白い事が始まりそうな予感がする」 「面白い事?どんなことですか?」 「分からないけど、ものすごく面白い事。 まぁ、例えば誰かが死ぬことかな?」 クスクスと笑いながら言う台詞とは思えない。フリーモンもゾクッとしながらも「人間ですか?それとも、魔女?」と一応は尋ねてみた。すると「どっちも」という簡単な答えしか返ってこなかった。 「さぁ、ここが、私の村。フィリプ!」 ちょっと高いところから見えるフィリプの村。これからここで起こる事を予想させないような長閑な村のように見えた。 ・・・・・どんどん短くなってきているような・・・・ まぁ、いっか。 では、3をお楽しみに。(誰も楽しみにしてないって?気分だけ、ね) |
5900 | 黄金の羅針盤3話 | 桜井 ゆかり E-mail URL | 3/7-17:41 |
記事番号5849へのコメント 第3話目です。とりあえずは6話で終るので半分までやって来ました。 それにしても眼鏡がないとなにも見えないや・・・・・ 壊してしまって掛けられない状態・・・・(泣)画面がぼやけて見づらい〜〜〜!! 「ここの村長は誰?」 「魔女だからって疑ってるの?」 村を見てマティリナスの一言にアリアは顔を顰めながら聞いてみた。すると「只ね、気になって」と誤魔化してまた村を見た。 「あたしだよ。ここの村長は・・・」 アリアは自分の村を見ながら本当の事を言った。すると、全員が驚いたようにアリアの事を見た。信じられないのだろう。こんなに若い魔女が村長をしている事が。 「信じられない?魔女は実力で村長が決められるの。私が一番の能力を持っているものだから仕方ないのよ」 「アリア様のようにダイモンを持っている魔女というのは少なくなってきているのです。それに、殆どが空を飛ぶ事以外出来なくなってきているのです」 と、フリーモンがアリアの言葉の後を続けた。 「魔女の世界も案外大変なんだなぁ〜」 のほほんっとした声が上がる。何処からどう聞いてもガウリイの声だ。「黙って立っていろ」という言葉を忘れているのだろうか・・・・ガウリイはそのまま言葉を続けた。 「まるで、子供の喧嘩で強者を決めるようなもんだな」 「・・・・ねぇ、いつもこういう性格なの?彼・・・」 ガウリイの言葉になにも返さないで近くに居たアメリアに質問を投げかけるアリア。返ってきた答えは「ええ。いつもこんな性格です」とこれだけ。少し恥ずかしい気持ちもあったのかもしれない。 アリアは少し呆れ顔をして「あっ、そう・・・」と投げやりに言葉を吐いた。 「質問があるんだがいいか?」 ゼルガディスが一段落した会話に新たな疑問を持ち込む。アリアは頷き、ゼルガディスは疑問を言った。 「なんでこんな辺境の地に魔女達は居るんだ?俺達の街のように賑やかなところに住まないのか?」 「決まってます。元々人間とは仲良くなれる種族じゃない。しょうがないんだよね・・・・。ここまで来ないと人間の手が伸びるからあたし達は辺境の地にしか居る事が出来ないの」 昔は戦争をやっていたほどの犬猿の仲。いきなり仲良く暮らせと言われる方が難しい。そう考えて人間ではなく魔女の方が後退した。こういう人の住んでいなさそうなところに住み始めて生活をはじめたのだろう。 「人間が悪い・・・・みたいに聞こえるけど?」 「誰もそうだと言ってないよ!只、人間の中にも良い人が居るのも知ってる。だけど、私が見たのは醜い心を持った人間ばっかりだったの!!」 蟠っていたものが破裂するかのようにアリアは声の限り叫び、息を切らせた。 本当の事だった。自分でもどうしてこんなことを言っているか分からなかった。だけど、信じていいかもしれないと直感したからだ。 ハッと気付いて下を向き「ごめん・・・・怒鳴ったりして・・・」と誤った。 すると、マティリナスの心の中に罪悪感が生まれた。だが、すぐに払い除けてしまった。 「・・・・暗い気分になるのはもう止め。さぁ、あったかい料理でも出します。食べていったらどう?」 「お!料理を出してくれんなら食べてこうぜ」 料理。その言葉を聞いてガウリイは目を輝かせながら意見を出した。 「そうですね。少しご馳走になりましょう。ね、いいですよね。ゼルガディスさん。マティリナスさん」 「・・・・そうだな」 ゼルガディスが答えると全員の目がマティリナスに向いた。驚きギョッとしながらも頷いた。 「んじゃあ、あの家。あの家があたしの家」 心成し弾んだ声で言った。アメリアはその声に少しさっきとは違うものを感じながら「楽しそうですね」と言ってみた。 「まぁね。人が来るのは久し振りだから・・・・」 こう言った後に「1週間ぶりに人が来たからね。今度はナイトメア様のお客じゃないから・・・・」と凄く小さな声で言った。 誰も気付かなかったようでアリアの言葉の後を続けて話をした。 「まぁ、魔女の村に来る人間はそうそういないでしょう?」 「・・・・・確かに言える」 マティリナスが言った言葉にハッとなって答えを返した。 「どうかしました?アリア様」 「・・・・・・・・なんでもない・・・・・」 一瞬フリーモンに自分の考えが読まれたのではないかと脅えたが平然を装って歩くスピードを早めて自分の家の前に立って振り返った。 「さ。入っていいよ」 ドアを開けて中に入るように手で薦める。 それぞれゆっくりと中には行っていく。マティリナスなどはゆっくりと最後に入っていった。 「全員確保ってところですね・・・アリア様・・・・」 「ええ・・・」 にやりと不敵に笑いアリアは扉を閉めて家の中に入った。 アリアが中に入るとまず目に止まったのはアメリアが回りを物珍しそうにキョロキョロと見ている姿だった。 「・・・・なにをやってるの?」 気になって声をかけてみるものの熱中しすぎてアメリアが答えずそのダイモンが答えた。。 「魔女の道具や薬が珍しく見ているだけ」 「ああ・・・・そう・・・」 やっぱり少し気になるのだろう。ちょっとその場に留まってからキッチンに向かった。 「おい、アリア。お前はこの家に一人で住んでいるのか?家族とかはいないのか?」 「もちろんあたし一人だけ。魔女はね物心ついた頃には親から引き離されるものなの」 一人暮らし。そういっても家はかなり広く、キッチンにリビング。もう一つ部屋まで付いている。 キッチンにはガスに水道。冷蔵庫まで置いてあり、食料はいろいろと置いてある。食べ物だけは街まで買いに行っているのだろう。実際、街とかにしか売っていない食べ物や調味料がたくさん置いてある。 「魔女も結構大変なのですね」 「俺等も物心ついた時には親はいなかった」 「ちょっと、私にはまだ親はいますよ!只、縁は切ってマティリナスになっていますけど!」 縁を切ったと言っても妹を護るために自分が橋の上から落ち、マティリナスという姓の人に拾われ、その人が死んだときにレゾに拾われて今に至る。実は本名はシャーリック=ブレイナルド。大企業ブレイナルド会社社長の長女である。とにかく複雑な人生を持っている人だ。 「おれも親はいないぜ。兄貴がいるけどな」 「えー!じゃあ、私だけですか!?親がいるのは!」 「だーから、私も一応自分の本当の親はいるってば!ついでに妹も!」 少し怒りをはらんだ声で言ってみるがアメリアには効果は薄かった。回りを見渡しながら「そうなんですか」と一言返したのみ。 「今お茶でも用意するね」 ニコッと笑いながらその場所から離れてキッチンの方に入っていく。だけど、すぐに顔だけ覗かせて「棚に乗っている物には触らない事!」と指をさしながら注意をして顔をキッチンに戻した。 「劇薬とかが置いてあるとか?」 「まさか・・・・」 肩から聞こえたエリシャールモンの声に少し血の気が失せながら答えを返したが・・・・『有り得るかも・・・』とダイモンと声がはもり、笑うしかなくなった。 「そんなもんあるわけねぇーだろ!」 「いや・・・・・・あるのかもしれん・・・・・」 「まっさか・・・」 『・・・・・・・・』 返す言葉はなく黙り込む。そんな時キッチンからお茶を持って出てきて「あるわけないでしょ!」という怒鳴り声が飛んできた。 「あ、でも、上の方に液体窒素が置いてあるから注意してね」 ズズッと棚の側から離れる一同。そんな中のほほんっとしながら「えいた窒素ってなんだ?」と聞いてくるお間抜けな人が一人。無論ガウリイ。 「液体窒素!空気の五分の四を占める気体。それを液体状にしたもの。無論液体にするには温度を下げなければならない。その温度は約273度になる。 まぁ、迂闊に触ると凍結して死にますよ。ガウリイ様」 「どぇぇぇぇぇぇ!!んな危険なものをここに置いとくなよ!」 「そんな事を言われても・・・・・・冷凍をするときには丁度いいものだから・・・・・特に金属を凍らせるのにはもってこいだから・・・・・」 確かにこれだけ低い温度ならなんでも凍らせることが可能でしょう・・・・。だけど、何の為に・・・・? マティリナスは疑問が頭を駆け巡り口に出していた。 「何の為に使うのですか?その液体窒素」 「簡単でしょ。凍らせるのが。だから、人間が金属を持ってここに来たときに上から降り掛けるの。すると、全部が凍るから退却してくでしょ?」 「一応は平和的に、事を荒立てたくないって思っているのですか?」 「まぁね」 木で作られたテーブルの上にお茶を置き終わりアリアも空いているイスに座った。 そして、一番最初にお茶に手を伸ばし毒など入っていないと自ら証明する。 それを見て安心したようにマティリナスがお茶を口に含んで「あ、おいしい・・」と本音がぽろっと漏れた。 「普通の街で売ってるお茶なんだけど入れるのにコツがあるんだ」 ふふんっと得意げに言って「コツは教えないよ」と付け加えた。「教えてもらわなくて結構です」とマティリナスが返した。家庭全般は不器用なマティリナスが意地を張って断ったのだ。 それを見て「なにをやっているんだか・・・・」とい感じにため息を吐いたゼルガディスであった。 グツグツグツ・・・・・・・・ お湯が沸騰する音がキッチンに広まる。 「もう夜になりましたよ。アリア様!」 パキン・・・・・・アリアはフリーモンの言葉など気にしていないようにパキンっとシチューのルーを折って鍋の中に入れてかき混ぜる。 あの後燃料を渡したアリアは台所に入りシチューを作り始めた。 最後に「みんなで一緒に御飯を食べよう」と約束をした為全員イスに座ってお喋りをしていた。 「アリア様!」 「耳元で人の名前を連呼しない!」 ずっと呼んでくるフリーモンに耐えられなかったようにアリアがフリーモンに向かって叫んだ。 「いーい?計画はこれからよ。さっきのお茶は信用を得る為にやった事。このシチューが本番なのよ」 にやりと不敵な笑みをし、右手にあるものを見せる。それは青い色をしている木の実。そしてその木の実をコロコロと転がしてシチューの中に入れる。 「それはなんです?」 「─────の木の実」 そう言った瞬間フリーモンにも邪悪な笑みが浮かび上がっていつもの人形の姿に戻った。 綺麗な淡いピンクのお皿にシチューを注ぎ込み、お盆の上に乗っけて運んでいく。 「魔女アリアの特製シチュー出来上がり☆ミ」 トン・・・・っと順々に一人一人の前に置いていく。それが完了したらアリアは自分の席に座った。 「おぉ──!美味そうだなぁ〜」 ガウリイはシチューを見ながら目をキラキラさせている。とても心情はよく分かる。早く食べたい・・・・・・ 「コイツ食い意地しか頭にねぇーんじゃねぇか?」 「有り得る・・・・・」 「でも、それじゃあどうやってあの寮の大学・・・・・・・ってまって。大学生?あれ・・・・」 「いや。もう成人している筈だ」 「じゃあ、只の清掃員?」 「でも、寮の中に住んでいる筈ないでしょ?アイツは寮の中に住んでるよ」 『・・・・・・・・・』 「只の大馬鹿者じゃないのですか?」 『そうかもしれない・・・・・』 ダイモン同士の会話に人間はなにも口を挟めず終るまで待っていた。そして、終った途端自分のダイモンを引っ張って肩の上に乗っける。 「フー。少しは落ち着きを持って。 じゃあ、食べようか?」 『いったっだきま〜〜す!』 ガウリイとアメリアが元気良くて言ってからアリア以外はスプーンでシチューをすくって口元に持っていく。 「どぉ?美味しい?」 にやりと笑いながらアリアはアメリア達に問い掛けた。 「ええ!美味しい・・・・・です・・・。あれ?なんだか・・・・眠くなって・・・・」 バタ・・・・・アメリアが倒れたと同時にマティリナスも倒れる。 「貴様・・・なにを入れた・・・・!?」 ───ブルーリノネムリノキノミ・・・・ダヨ 意識が薄れゼルガディスにはハッキリとは聞こえなかった。だけど、言っている事は分かった。そして、すぐに眠ってしまう。 主人が眠るという事はその者の一部であるダイモンも深い眠りに落ちる。 ブルーリの実はすぐに効果を表す木の実で、眠り薬を作るのに用いられる。 「あ。そうそう。ガウリイだっけ?アンタはいらないんだ。ダイモンを持っていないしね。でも、一応はお連れさんみたいだし一緒に献上してあげる」 「ナイトメア様に怒られません?『こんな奴はいらないわよ!』とか・・・・」 「あー・・・・・考えてなかった・・・・・・」 すごくだらけた顔になり「ま、いっか」と言って家の外に出た。 そしてすぐに鎌を出現させ地面に突き刺し声を張り上げた。 「終ったわ!早く出てきてこいつらを運ぶのを手伝って!」 し〜〜〜〜ん・・・・・・・ 「はよう出てこい!!!」 何にも声がしなかったのに対して怒りが爆発したのだろう。これ以上ない大声と共に関西弁が飛び出す。これが、アリアの癖の一つだ。 その関西弁を聞きつけすぐに飛んでくる魔女達。この関西弁がそれほど恐いのだろう。 「作戦、成功したからあの人達をロード=ナイトメア様のところまで運ぶ。異存はないわね?」 コクコク・・・・・全員が同時に頷いた。 さて、リナ=インバースさんは次ぎの話で出ます。確実に。 そして、裏で手を引いている人物も分かったでしょう。あのお方です(笑) グサッ・・・・・(作者死亡) 「ふん!このあたしを悪役にするからこうなるのよ!部・・・じゃないダイモンS、コイツ片付けておきなさいよ!」 「はっ!」 「さてさて、ここであたしの小劇場♪ 人間の体をこの前借りて人間界に遊びに行ってきた。新しい服をゲット!だけど、精神体であるあたしは着れなかった(悲) 終り」 「L様・・・・それは小劇場ではなくにっ・・・・・」 グサリ・・・・・ 「さて、五月蝿い輩は深い眠りに落ちたので病院にでも運んでくるわね♪ え?あたしが治せば良いって?それじゃあつまらないじゃない♪もっと苦しめてやらなきゃ☆」 |