◆−Sugar Snow−穂波(2/26-00:13)No.5802
 ┣お久し振りですっ!−ゆっちぃ(2/26-00:37)No.5803
 ┃┗ありがとうございます〜!−穂波(2/27-00:33)No.5811
 ┣はじめまして−みてい(2/26-07:25)No.5808
 ┃┗どうぞよろしくです−穂波(2/27-00:33)No.5812
 ┗情景がきれいですう。−toto(3/2-15:54)No.5841
  ┗冬のうちに読んでいただけてよかったです(笑)−穂波(3/2-23:50)No.5848


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5802Sugar Snow穂波 E-mail 2/26-00:13


冬のお話なので、とりあえず雪の降るシーズン中に、と思って投稿させていただきました。
ゼルアメです、よろしければ読んでください。
--------------------------------------------------------------------- 大好きな人の、大好きな笑顔。
 それがもっと見たくて、ただそれだけで。
 わがままなのも、困らせてるのも、わかってるんです。
 だけど、後少しだけ、もう少しだけ。
 一緒にいてくれるって、思っていてもいいですか?


 紺色の空から、零れ落ちるわたぼうし。
 ちいさくて、とてもちいさくて、指のすき間を簡単にすり抜けてしまうそれを捕らえようと、ひとりの女の子が真っ白い息を吐きながら立っています。女の子の名前は、アメリア。いつでも元気いっぱいで、少々暴走ぎみなほど明るいセイルーンのお姫様です。
 アメリア姫はせいいっぱい爪先立ちをして、空に手を伸ばします。 ふっくらした頬も、貝がらのような耳も、寒さで赤くなっていましたけれど、アメリアは姫はそれにも気付かずまっすぐに空を見上げています。
 しずしずと舞う雪で月も見えない夜空の下、きらきらと地上の星のように瞳を輝かせて、アメリア姫は手を伸ばしつづけます。
「何がそんなに楽しいんだ?」
 口の中でつぶやいたのは、アメリア姫の少し後ろ、降りしきる雪と同じ色をまとったゼルガディスさんです。
「願い事、ね……」
 しばらくの間、雪をとらえようとするアメリア姫を見ているだけで、ゼルガディスさんは特に何もせず立っていましたが、やがてそれにもあきたのかもしれません。小さく肩をすくめると、さくりと足音をたてました。


 旅の途中に立ち寄ったちいさな村の、ささやかな言い伝え。
 それは、この冬最後の雪をこの村にある丘の上で手にした人は、何でもひとつだけ、願いが叶うというものでした。
 春が近いこの季節、宿のおばさんが「今夜あたり、最後かもねぇ」とつぶやいたのが、アメリア姫のハートに火をつけました。
 最初はもちろん皆を誘ったのですが、
「願い事が叶うってのは魅力だけど、寒いからパス」
 きっぱりと言い切って、シチューのお代わりを食べていたリナさんと、
「んーオレも、雪より食いもんのほうがいいなぁ」
 スプーンを振ったガウリイさんに、がっくりとなったアメリア姫は、すがりつくような瞳を最後の一人に向けました。
「……思いっきり、眉唾だとおもうぞ」
 ゼルガディスさんのせいいっぱいの抵抗の台詞は、アメリア姫の捨てられた子犬のような表情の前に、ぐずぐずと溶けてしまいます。
「ゼルガディスさんも、行きたくないですか?」
 甘えるようにうるんだまなざしに、ゼルガディスさんは一度も勝てたためしがありませんでした。そして、それは今回も当然同じことだったのです。
「そ、そんなことは、言ってないだろうが!」
 ぶっきらぼうな調子で否定して、ゼルガディスさんは壁から外したマントをアメリア姫に手渡しました。
「外は、冷えるからな」
 アメリア姫から視線を外して、ぼそりとつぶやいたゼルガディスさんの耳に届いたのは、音だけで満面の笑顔を容易に想像できてしまうような、嬉しそうな声でした。
「はいっ! ありがとうございます!!」


 きし、きし、きし。
 踏みしめる大地は灰色がかった白で、ともすれば膝あたりまで簡単にうもれてしまほどやわらかくて、ゼルガディスさんは少しだけ頼りないような気持ちになりました。
 ゼルガディスさんの視線の先には、髪や肩にうっすらと白いヴェールを被ったようになっているアメリア姫の姿があります。
 ……何を、願っているんだか。
 空を見上げるアメリア姫は、迷いのない信じきった横顔で、ゼルガディスさんはこれから自分の言おうとしている台詞に、胸がちくりと痛みました。
「アメリア……」
「あ、ゼルガディスさん。もうちょっと待っててもらえますか?」
 その言葉には答えずに、ゼルガディスさんはアメリア姫の頭につもった雪を払いました。くすっぐたそうな表情で、アメリア姫はされるがままになっています。
「そろそろ、帰るぞ」
「え! でも、まだ……雪、降ってますし!」
 アメリア姫は、弾かれたように顔をあげました。
 それに気付かないように、ゼルガディスさんはアメリア姫の頭から最後の雪の欠片を、そっと落としました。
「このぶんだと、朝まで降りつづけるかもしれない……そんなに待っているわけにもいかないだろうが」
「だけど、せっかくのチャンスなのに。お願い、いっこだけ叶うって」
「ただの言い伝えだ、本当に叶うかどうかもわからないだろう」
 ため息と共に吐き出したゼルガディスさんの言葉に、アメリア姫の眉がぎゅっと寄せられました。
「叶います! 絶対、叶います!!」
 身体ぜんぶで叫ぶようにして詰め寄ってきたアメリア姫に、ゼルガディスさんはおどろいて一歩後ずさりました。
「どんな願い事だって、いっしょうけんめい願ったら、叶います! 絶対の絶対にです!!」
 顔を真っ赤にして、言い切ったアメリアの瞳がゆらめきます。
「叶うって、信じてれば、叶うんですよ……だから、叶うかわからないなんて、そんな哀しいこと、言っちゃダメなんです!」
 ゼルガディスさんの前で、ぽろぽろと涙が零れ落ちました。
 手放しの泣き顔で、アメリア姫はゼルガディスさんを見上げます。
「……悪かった」
 アメリア姫の言うことが真実とは思えませんでしたけれど、言いたい事は何となくわかって、ゼルガディスさんは大きな瞳の下に指をあてがいました。雪よりずっと熱い雫を、指先でそっと拭います。
「わかったよ、今日はとことんお前さんに付き合うさ」
 そのかわり、とゼルガディスさんはアメリア姫を引き寄せ、自分のマントの中に抱きいれました。アメリア姫の瞳が大きく見開かれ、それからさっきとはおそらく別の理由で、真っ赤になります。アメリア姫の頭を抱えたままのゼルガディスさんの頬も、同じ色がさしていました。
「雪が、もう少し止みそうになるまで、こうしてろ」
「……はい」
 きよらかな返事。そして、アメリア姫のちいさな手が、きゅっとゼルガディスさんの服をつかみました。


 空の向こうが、かすかに明るくなってきました。
 音もなく降りしきる雪を、どれほど眺めていたのでしょう。
 お互いの鼓動と、ぬくもりと、あたたかな沈黙。手放すのが惜しいような時間でしたけれど、最初に口を開いたのはアメリア姫でした。
「そろそろ戻らなくちゃ、ダメですね」
 ゼルガディスさんは無言でしたが、その身体がぴくりと震えるのがアメリア姫にも伝わりました。
「ごめんなさい、結局最後の雪、手に入れられませんでした」
「……何を、願おうとしていたんだ?」
 ゼルガディスさんの声に答えようとしたアメリア姫は、はっと空を見上げました。徐々に広がる薄い青が、雲を追いはらい、空一面に広がろうとしています。
「雪、止んで……!?」
 ゼルガディスさんの腕から抜け出たアメリア姫は、真っ直ぐに手を伸ばしました。
 ふわり……。
 ちいさな白い結晶が、そのてのひらに収まりました。
 最初ぽかんとそれを見つめていたアメリア姫ですが、それ以上雪がこの場所には降る気配がなく、その意味がわかった途端アメリア姫はぴょんぴょん飛び跳ねながら後ろを振り返りました。
「うわぁぁぁぁっ!!! やりましたっ、ゼルガディスさんッ!!」
 ゼルガディスさんは目を細めると、アメリア姫を真っ直ぐに見詰めました。
「良かったな」
「はいっ!」
 大きく首を振って頷いたアメリア姫に微笑を深くしたゼルガディスさんは、てのひらのちいさな結晶を指差しました。
「溶ける前に、願い事した方がいいんじゃないか?」
「そ、そうですねっ!」
 アメリア姫は大きく息を吸って、それをゆっくりと吐き出しました。ドキドキする心臓をなだめるように震えるてのひらを持ち上げて、そして姫はゼルガディスさんを見上げました。
「ゼルガディスさん、願い事言ってください」
「……え?」
「やっぱり「元の身体に戻りたい」ですか? いっこだけ、何でもこの雪がかなえてくれますよ!」
「何を、言ってるんだ? お前が手に入れた雪だろう、お前が願えばいい」
「わたしは、いいんです。わたしのお願いは、もう叶っちゃってますから。リナさんやガウリイさん、それにゼルガディスさんと一緒に楽しく旅が出来て、それだけでもう充分すぎるくらいなんです」
 だから、とアメリア姫は微笑んで「最後の雪」をゼルガディスさんに差し出しました。
「ゼルガディスさんの願いが叶って、ゼルガディスさんがもっと幸せになってくれれば、わたしも本当に嬉しいんです」
 アメリア姫の前、ゼルガディスさんはひどく微妙な表情を浮かべました。笑っているような、何かを堪えているような、激しい感情の一歩手前の顔。
「溶けちゃう前に、ね?」
「……わかった」
 ゼルガディスさんの手が、アメリア姫のてのひらに重ねられます。雪の結晶を包み込むようにして、ゼルガディスさんは唇を開きました。
「この時を、忘れずにいるように」
 ゼルガディスさんの言葉がおわると同時に、繋がった手の中で結晶は溶けて、互いのてのひらにわずかな水滴を残して消えました。
「え? それでいいんですか?」
 きょとんとしたアメリア姫に、ゼルガディスさんは穏やかに頷きます。
「いいんだ」
 アメリア姫はなんだか不思議な気持ちでしたけれど、頷いたゼルガディスさんの表情がとても晴れ晴れとしたものだったので、自分も嬉しくなってしまいました。
「それならよかったです!!」
「帰るか。リナが気付いたらうるさいぞ」
「は! そうですね! 急がないと……うきゃ!?」
 慌てて走り出そうとし、雪に足をとられたアメリア姫を、ゼルガディスさんが後ろで抱きとめます。
「ったく、危なっかしい奴だな」
「あははは」
「ほら、つかまれ」
 そう言ってゼルガディスさんの差し出したてのひらに、アメリア姫はまぶしいほどの笑顔で答えました。


 ずっと一緒にいられるなんて思っていない。
 変わらないものは何一つして存在しない。
 祭のようなバカ騒ぎで構成された、この日常も。
 あいつの寄せてくれるあたたかな笑顔も。
 この胸に宿る想いすらも、雪のように儚く消えてしまうかもしれない。
 だから、せめて願う。
 今この瞬間の感情を、忘れることがないように。忘れられることが、ないように。
---------------------------------------------------------------------
 では、ここまでよんでくださりありがとうございました。
 

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5803お久し振りですっ!ゆっちぃ E-mail URL2/26-00:37
記事番号5802へのコメント

穂波さんお久し振りですっ!覚えてらっしゃいますでしょうか、ゆっちぃです♪
お話読ませて頂きました。んもぅ最高ですぅぅ〜〜〜〜〜〜〜!!!!
冬の雰囲気漂いまくりですごい素敵です!!姫さまのお願いにとことん付き合うゼルも、
待って、待って、やっとで手に入れた雪をゼルに渡すアメリアも、すんごくイイです〜〜〜〜〜〜♪
ゼルのお願い、かなりツボにきました。ええそれはもぅジャストミート!

やはし穂波さんの書かれるお話、ゆっちぃはすきです♪


就寝前、ひょっこり覗いてみて正解でした。
素敵なお話ありがとうございますvいい夢見れそうです(笑)


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5811ありがとうございます〜!穂波 E-mail 2/27-00:33
記事番号5803へのコメント

こんばんは、御久しぶりです、ゆっちぃさん。

>穂波さんお久し振りですっ!覚えてらっしゃいますでしょうか、ゆっちぃです♪
勿論です! またもや読んでくださりありがとうございます、嬉しいです〜。

>冬の雰囲気漂いまくりですごい素敵です!!姫さまのお願いにとことん付き合うゼルも、
>待って、待って、やっとで手に入れた雪をゼルに渡すアメリアも、すんごくイイです〜〜〜〜〜〜♪

姫に結局甘いゼルは基本ですので(笑)。
そして、ゼルのためにいっしょうけんめいなアメリアを気に入ってくださったのならしあわせです!

>ゼルのお願い、かなりツボにきました。ええそれはもぅジャストミート!

そう言って頂けると、ない知恵振り絞った甲斐があります(笑)。
彼の望みというと人の身体を取り戻すことなんでしょうけれど、流石に村の言い伝えで戻ってしまうのもあんまりだしなぁとか色々考えました(笑)。

>やはし穂波さんの書かれるお話、ゆっちぃはすきです♪

ありがとうございます! なんか投稿させてもらってよかったよぅ、としみじみ思いますです。

>就寝前、ひょっこり覗いてみて正解でした。
>素敵なお話ありがとうございますvいい夢見れそうです(笑)

では、いい夢みられるよう、こっそり祈らせてもらいますね(笑)。

感想、本当にありがとうございました。おかげで帰り道溝にはまった(<バカ・笑)傷も忘れて眠れます。

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5808はじめましてみてい 2/26-07:25
記事番号5802へのコメント

おはようございます。そして、はじめまして。
投稿小説1の方でうろちょろしているみていと申します。
今現在みていが書いている話がちょっと詰まりかけてたのですが、ここに光を見ましたっ☆
「最後の雪」ですかぁ。いーですね。一生懸命なアメリアも、巻き込まれてやるゼルガディスも。

>「この時を、忘れずにいるように」

この一言につきますっ!

穂波さんの描写はとても綺麗で勉強になりますっ。そんな表現が出来るようになりたいぞっ。

ではでは、また読ませてください。
みていでございました。

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5812どうぞよろしくです穂波 E-mail 2/27-00:33
記事番号5808へのコメント

はじめまして、みていさん。

主にゼルアメ投稿させて頂いている穂波です。こちらこそ、どうぞ宜しくお願い致します。

>投稿小説1の方でうろちょろしているみていと申します。
>今現在みていが書いている話がちょっと詰まりかけてたのですが、ここに光を見ましたっ☆

先ほど拝読しました〜。シャボン玉とたわむれる姫が可愛いです!(泣いている時は胸が痛んで仕方なかったですが…元気になってくれて、ホッとしました)
倒れているゼルは…愛ですね(笑)。
ガウリナゼルアメ四人組のピクニックも、楽しみにしております。

>「最後の雪」ですかぁ。いーですね。一生懸命なアメリアも、巻き込まれてやるゼルガディスも。

なんだかんだいっても、アメリアのお願いにゼルは弱いと思っているのです(笑)。

>
>>「この時を、忘れずにいるように」
>
>この一言につきますっ!

願い、というか、ゼルにとっては祈りのような言葉かもしれません。

>穂波さんの描写はとても綺麗で勉強になりますっ。そんな表現が出来るようになりたいぞっ。

あ、ありがとうございます。マダマダ未熟ですが(汗)、そう言って頂けると励みになります。

>ではでは、また読ませてください。
何か思いつきましたら、投稿させていただきたいと思っております。

では、感想下さり本当にありがとうございました〜。

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5841情景がきれいですう。toto 3/2-15:54
記事番号5802へのコメント

初めましてtotoと申します。
感想など書かせていただきます。宜しくお願いします。
凄く綺麗な情景ですね。仲良し四人組が寒い冬のある日小さな村に立ち寄ってという雰囲気がとてもよく伝わってきました。アメリアが健気さにほろりと来ました。本当に可愛いですね。しかし何より雰囲気が素敵で良かったです。
                            では、失礼します。

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5848冬のうちに読んでいただけてよかったです(笑)穂波 E-mail 3/2-23:50
記事番号5841へのコメント

はじめまして、totoさん。

SugarSnow読んでくださりありがとうです。
穂波と申します、こちらこそどうぞよろしくお願い致します〜。

>凄く綺麗な情景ですね。仲良し四人組が寒い冬のある日小さな村に立ち寄ってという雰囲気がとてもよく伝わってきました。アメリアが健気さにほろりと来ました。本当に可愛いですね。しかし何より雰囲気が素敵で良かったです。

とりあえず雪の降る時期に寒いよぅ、と思いながら考えた話でしたので、その雰囲気を読み取っていただけたようで、嬉しいです。

なんとなく、夏よりも冬の方がゼルアメという気がするのです、私(笑)。

ではでは、感想下さり本当にありがとうございました。