◆−翼の舞姫(テイク・レボリューション)−桐生あきや(3/31-20:23)No.6224 ┣きゃv−水晶さな(4/1-02:09)No.6228 ┃┗まv−桐生あきや(4/1-21:00)No.6241 ┣何気にかわいそうな彼(笑)−雫石彼方(4/1-05:37)No.6233 ┃┗言われてみれば確かに(笑)−桐生あきや(4/1-21:11)No.6242 ┃ ┗肝心なこと聞き忘れた(汗)−桐生あきや(4/1-21:33)No.6243 ┣翼の舞姫(テイク・レボリューション)1−桐生あきや(4/2-22:29)No.6255 ┣翼の舞姫(テイク・レボリューション)2−桐生あきや(4/4-10:19)No.6272 ┃┣背筋がぞくぞく致しますゥv−あごん(4/5-05:21)No.6275 ┃┃┗ああああ、光栄ですぅ………−桐生あきや(4/5-07:29)No.6276 ┃┗ねぇさんかっくいい・・・・・(ぽっ)−ゆえ(4/5-22:36)No.6285 ┃ ┗ねぇさん人妻ですが(笑)−桐生あきや(4/6-07:16)No.6287 ┣翼の舞姫(テイク・レボリューション)3−桐生あきや(4/9-04:09)No.6311 ┃┗うえぇぇ〜ん、アセルスおねいさ〜〜〜んっ(T−T)−雫石彼方(4/9-23:34)No.6314 ┃ ┗泣かないで(汗々)−桐生あきや(4/11-07:07)No.6319 ┗翼の舞姫(テイク・レボリューション)4−桐生あきや(4/13-20:07)No.6331 ┣はじめまして−こずえ(4/13-22:54)No.6333 ┃┗はじめましてです(><)−桐生あきや(4/15-17:27)No.6344 ┗きっと確信犯(笑)−ゆえ(4/15-10:25)No.6336 ┗うーみゅ(笑)−桐生あきや(4/15-17:42)No.6345
6224 | 翼の舞姫(テイク・レボリューション) | 桐生あきや | 3/31-20:23 |
今日窓を開けてみて絶句。8階の私の部屋からは川沿いに植えられた桜がだーっと見えるのですが、その上から一面雪! 雪も降らず、ソメイヨシノもない所から来た私にとって両方一度に見られる日がこようとは♪ 桜に雪とはなんとも風情がありますなぁ。 というわけで、記念についに連載始めます(笑)。こんなんばっかだ。初雪降っては投稿し、バレンタインだといっては以下同文。非常に天候に左右される桐生でした。 というわけで、祝・桜雪♪のアメリア王宮編・長編です! ************************************** ―――世界を変える力が欲しい。 それは、二人の少女の願い。 *** 翼の舞姫(テイク・レボリューション)第0話 *** 破談させた見合いの相手だった幼なじみを見送りに外に出たアメリアは、白く強い陽光に目を細めて空を見上げた。 「もう夏も終わりだっていうのに、暑いですねえ」 「暑イ?」 ユズハが首を傾げた。 「ユズハにはあんまりわからないかもしれませんけどね」 本来、物質界(こっち)の存在ではないユズハには、暑いだの寒いだのといった気温の変化はあまり実感をともなわない。 「ま、でもこれからどんどん涼しくなりますよ。きっと」 呑気に呟いて、アメリアはユズハをともなって自室へ帰ることにした。見送った相手の馬車はすでに遙か遠くへ行ってしまったので、ここにいる意味はあまりない。 アメリアとユズハの引き返す気配を感じ取ったネコのオルハが、無造作にアメリアの肩に飛び乗った。 「………オルハ。暑いうえに重いです」 降りる気配はない。 「ユズハに引き渡しますよ」 素早く地面に降り立つと、白ネコはどこかに消えてしまった。 思わず笑ってから、アメリアはユズハの手をひいて歩き出した。 黒髪の王女と彼女に手をひかれた幼い少女が連れだって歩くのは、ここ三、四年のうちに王宮では当たり前となった、心なごむ一枚の絵画だった。 結婚を拒むという謎を残しつつも、それ以外においてアメリアはまず満点に近い王女だったし、幼い頃から、王宮で働く者たちの間で絶大な人気を誇っている。 下の階級の者からすれば、王女の結婚など自分たちとは関係のない話である。(たとえ嘘でも)人身売買されかかったハーフエルフの少女を助けて引き取ったと言えば、その優しい性根に心酔するし、結婚しないのは誰か心に決めた人がいて、その男を待っているのだという噂を聞けば、無邪気に応援する。そういった題材の話は何百年も前から存在する、結構な娯楽なのだから。 秩序と風紀と慣例に与えられている打撃と、血の存続に頭を悩ませているのは目下、国のトップにいる重臣たちだけの話で、下の者たちはアメリアとユズハに好意的だった。 特にユズハは単独でも人気があるが、アメリアとセットだと相乗効果で可愛がられまくる。 こうして二人が歩いているときなどは、必ず遠くから衛兵やら神官やら庭師やらがそれを見て、何やらなごんだ気分に浸っているのである。 「ねえ、ユズハ。最近暇ですねぇ」 何の大禍も災害も起きていないので、アメリアの執務の量も通常に戻り、休みが多くなっていた。 横を行くユズハが、うなずく。 「ン、いいコト」 「そうですね」 返事をしながら、アメリアは近場から自分を見つめる視線に気がついた。 王女である以上、王宮内で出歩けば視線が集まるのは当然のことなので、普通の視線であればアメリアも特に気にもとめたりはしない。 だが、それは無視することのできない視線だった。睨みつけているというよりは、どちらかというと好奇心のこもったもの。 最近やたらと増えてきた視線だ。 視線の主を探して、顔をめぐらせたアメリアは回廊の柱の横に立っている十二、三歳ほどの少女の姿を見つけた。 来ている服は女官のもの。見習いだろうかと、アメリアは首を傾げる。 アメリアの髪と良く似た感じの黒い艶やかな髪をきっちりと左右で団子にし、そこからそれぞれ二、三本の三つ編みが左右の肩に流れていた。 頭の形がはっきりわかるほどに、きっちりまとめられた髪の下、瞳もやはり濡れたような黒。ユズハが珍しいらしく、ジッとそっちのほうを注視している。 洗い物らしい布を両手で抱えた少女は、アメリアに見返されて首を傾げてみせる。 「どうかしましたか?」 アメリアが尋ねると、少女は首を横にふる。 「いえ。姫さまのお話が、たまたま耳に届いたものですから。暇なのは良いことなのですか?」 「良いことじゃないんですか? 何も大変なことが起きてない証拠でしょう?」 今度はアメリアの方が首を傾げた。 「そうでしょうか」 あまりにさらりと言われたので、アメリアはうっかり聞き流すところだった。 「良いことじゃないんですか?」 「わかりません。良いことと悪いことはひとつの物事の裏表だってお話をこの間、神官の方から聞きました。良いこともあれば悪いこともあるものじゃないでしょうか」 思わぬ反論に、アメリアは虚をつかれて少女を見返した。 「それも、そうですね。たしかにいまのところ危機感が足りませんね、みんな」 その言葉に、昨日の見合いの席での幼なじみ―――リーデットとの会話を思い出してアメリアは、つい本音が出た。 「平和ぼけもいいところですね。私が結婚さえできれば、セイルーンはこの先永遠に繁栄するとでも思ってるんでしょうか、宮廷大臣たちは。いいかげん、自分の視野が狭まってきていることに気づけばいいんですけど」 少女が、きょとんとアメリアを見つめる。 女官相手にぽろっと本音を洩らしてしまったアメリアは、慌てて少女に口止めをしてその場を離れた。 すれ違う際に、ユズハの視線が少女と一瞬からみあい、離れていく。 回廊の向こうから別の女官に呼ばれ、少女は洗い布を抱え直して歩き始めた。 アメリアは軽く頭をふった。 相変わらず短い黒髪が右に左に舞い上がる。 立ち回りを演ずることがほとんどなくなった現在、なおも髪が短いのはささやかなる嫌がらせだった。姫君は結えるほどに髪が長いもの、と決めてかかっている周囲の空気が気に入らない。 髪を伸ばしはじめるとしたら、それはきっと、彼が戻ってきたとき。 それまではたとえ体を動かしていなくても、ここは戦場だ。 さっきの見習い女官の少女を思いだして、アメリアは口元に笑みを浮かべた。 頭の良さそうな子だった。正式に女官になったら、女官長に頼みこんで自分付きにしてもらおう。きっと、いまは王宮では話せないことも話し合えるような仲になれる。 味方になってくれる。 ―――味方。 いまいちばんアメリアが欲しいものだった。 いまの自分に実権はないに等しい。ただの執務を処理するだけ。 父親のフィリオネルが実質的な権力を握ってはいるが、フィリオネルがアメリアのことを理解してくれても、下についている重臣たちがアメリアのことを理解してくれない以上、父親の権力は役に立たない。 王宮内を変えていく力が欲しいが、それを手に入れるには、できることならなりたくない王にならねばならない。矛盾の塊だ。 この馬鹿馬鹿しい、見合いが原因の諍いをなくしたい。結婚を迫られなくてもいいようにしたい。 無理を押し通して母親を迎えた自分の父親のように、自分も同じことがしたい。 そして、政変に巻きこまれて死んでしまった母親のようなことが二度とないようにしたい。 彼にちゃんとお帰りなさいと言う、そのための力がほしい。 だいそれた願いだろうか。自分はそうは思わない。 ここに居続けるためのささやかな望みだ。 彼のほうだって頑張っているのに、自分が頑張らなくてどうするのか。 リーデットではなく、彼の姉姫のアセルスが傍にいてくれるならば、どれほど助かるか。彼女なら、きっと自分を助けてくれる。 奇しくも、昨夜のリーデットと同じ事をアメリアは考えていた。 それから数日後の深夜に、事件は起こった。 |
6228 | きゃv | 水晶さな E-mail | 4/1-02:09 |
記事番号6224へのコメント 毎回タイトルが凝っててタイトル見るだけでも楽しい水晶です(長い)。 長編連載との事で小躍りしてます(せんでいい)。 しかし思うんですが私とあきやサンて小説UPするタイミングが似てますねぇ・・・(笑)。 王宮情勢が細かくて、いつも脱帽させられます。 ユズハ嬢もすっかり王宮生活に慣れたみたいで。 でもやっぱりオルハの行動が気になる私は猫好きみたいです(聞いてないって)。 いやだって行動がとにかく可愛いから・・・。 見合い話を撃破し続ける姫、ファイト(笑)。 個人的にはアセルス姫様の登場を心待ちにしてみたり。 アメリアの師匠になるくらいだから、相当強いんでしょうねー。 でもすいません。アセルス姫の名前見るとどーしても某サ●フロの半妖の姫様の絵が浮かんできて・・・(爆)。 戯言は置いといて。お話もこれからのようですし、続き心待ちにしておりますv 私も休みの内にあとどれだけネタを消化できるかカウントダウンの毎日です(笑)。 ではお邪魔しました〜。 水晶さな拝 |
6241 | まv | 桐生あきや URL | 4/1-21:00 |
記事番号6228へのコメント わーい。さなさんだ。いつもありがとうございますv > 毎回タイトルが凝っててタイトル見るだけでも楽しい水晶です(長い)。 日本語タイトル+(カタナカ)という死ぬほどめんどくさい法則を決めてしまったがため、後半になるほどのたうち回ってひねり出しています(笑) これも結局二転三転………。 > 長編連載との事で小躍りしてます(せんでいい)。 > しかし思うんですが私とあきやサンて小説UPするタイミングが似てますねぇ・・・(笑)。 似てますね(苦笑) というか、書き上がっていないので途中で連載ストップする可能性が大です(汗) > 王宮情勢が細かくて、いつも脱帽させられます。 > ユズハ嬢もすっかり王宮生活に慣れたみたいで。 > でもやっぱりオルハの行動が気になる私は猫好きみたいです(聞いてないって)。 > いやだって行動がとにかく可愛いから・・・。 全然細かくないっス。適当です(爆) ただ、アメリアのお家なのであんまりイヤなところにはしないでおこうとは思ってます。 オルハ、こっちが気を付けてあげないと(ユズハに負けて)すぐに影が薄くなる哀愁のオリキャラなので秘かに気にかけています(笑) ところでオスだと思います、メスだと思います? > 見合い話を撃破し続ける姫、ファイト(笑)。 > 個人的にはアセルス姫様の登場を心待ちにしてみたり。 > アメリアの師匠になるくらいだから、相当強いんでしょうねー。 > でもすいません。アセルス姫の名前見るとどーしても某サ●フロの半妖の姫様の絵が浮かんできて・・・(爆)。 いえ、さなさんは正しいです(笑) 彼女からお名前いただきました。桐生も彼女がちらつきます(爆) 彼女のシナリオ大好きなんですよ。 > 戯言は置いといて。お話もこれからのようですし、続き心待ちにしておりますv > 私も休みの内にあとどれだけネタを消化できるかカウントダウンの毎日です(笑)。 > ではお邪魔しました〜。 もう明日から学校なのでカウントダウン終了です。終了前にHP開けたのが唯一の救い………よろしかったら見に来てやってくださいませ。 ではでは、桐生でした。 |
6233 | 何気にかわいそうな彼(笑) | 雫石彼方 | 4/1-05:37 |
記事番号6224へのコメント わーい、連載開始っすね! 待ってましたよ大統領!!ってな感じの雫石でーす(^^) > 今日窓を開けてみて絶句。8階の私の部屋からは川沿いに植えられた桜がだーっと見えるのですが、その上から一面雪! > 雪も降らず、ソメイヨシノもない所から来た私にとって両方一度に見られる日がこようとは♪ 桜に雪とはなんとも風情がありますなぁ。 いいなー!!なんでそんなに綺麗で珍しい現象、私が東京去ってから起こるのよぅっ!!自然の馬鹿野郎ーーーーーっ!!!こっちはひたすら寒いっす。雪は降れども桜なんぞ咲きゃしねえ。春が恋しいわ・・・・・。 って、そんなことはともかく。 これから何が起こるのかな?わくわくだす。 それにしてもリーデットくん、アメリアの中で相当どうでもいい存在なんすね(^^;)『リーデットではなくアセルスがいてくれたら』って・・・・・。ああ、かわいそうな彼・・・・・(笑)でもそれがきっと彼の役回りなのね・・・。なむー。 女官見習いの子は、これから話に絡んでくる重要キャラなんでしょうか?それも要チェックっすね!! 続き楽しみにしてるだす。 それでは。 |
6242 | 言われてみれば確かに(笑) | 桐生あきや URL | 4/1-21:11 |
記事番号6233へのコメント 彼方ちゃんへ。 やっとHP開きました。連絡が遅れてごめんね。メール送ろうとして送れないことに気がついたの(爆) >わーい、連載開始っすね! >待ってましたよ大統領!!ってな感じの雫石でーす(^^) だ、大統領(笑) これが待ったましたよ首相、じゃイマイチ様にならないあたり、日本ってちょっぴり可哀想(笑) >> 今日窓を開けてみて絶句。8階の私の部屋からは川沿いに植えられた桜がだーっと見えるのですが、その上から一面雪! >> 雪も降らず、ソメイヨシノもない所から来た私にとって両方一度に見られる日がこようとは♪ 桜に雪とはなんとも風情がありますなぁ。 >いいなー!!なんでそんなに綺麗で珍しい現象、私が東京去ってから起こるのよぅっ!!自然の馬鹿野郎ーーーーーっ!!!こっちはひたすら寒いっす。雪は降れども桜なんぞ咲きゃしねえ。春が恋しいわ・・・・・。 そっか、新潟だもんねぇ………。でもこれから咲くよね。私この頃一年中桜が咲かないかと思ってたりする(爆) でも、たしかに珍しかったけど、雪なんか降ったりして桜はだいじょうぶなのかしらん。急に散っちゃったりとかすると哀しいなぁ。 >って、そんなことはともかく。 >これから何が起こるのかな?わくわくだす。 >それにしてもリーデットくん、アメリアの中で相当どうでもいい存在なんすね(^^;)『リーデットではなくアセルスがいてくれたら』って・・・・・。ああ、かわいそうな彼・・・・・(笑)でもそれがきっと彼の役回りなのね・・・。なむー。 >女官見習いの子は、これから話に絡んでくる重要キャラなんでしょうか?それも要チェックっすね!! >続き楽しみにしてるだす。 彼方ちゃんに言われて、ハタと気がついた。これ前回の『薔薇の姫君』のめっちゃ続きだから、リーデットだと王宮に噂がたつからアセルスだといいのになって意味だったんだけど………たしかに哀れ(笑) でも、これの対のつもりで書いた薔薇の姫君にほうにも「いまいち印象が薄い」だのなんだの書いちゃったよ、桐生(^^; というか、アメリアとリーデット、本当にただの幼なじみでそれ以上でもそれ以下でもないあたりが我ながらすごい。変な関係だよなあ(笑)。でも愛称で呼ばれている時点でゼルの嫉妬の対象になりそうだわ(笑) ではでは。桐生でした♪ |
6243 | 肝心なこと聞き忘れた(汗) | 桐生あきや URL | 4/1-21:33 |
記事番号6242へのコメント 聞こうと思ってたこと聞き忘れたよ(爆) 例のイラスト、ゼルはどっち? シグルドバージョン? それともゼル? それによって岩肌か人間か決まるのですが(笑) |
6255 | 翼の舞姫(テイク・レボリューション)1 | 桐生あきや URL | 4/2-22:29 |
記事番号6224へのコメント 桜雪に舞い上がってうっかり書き忘れておりました(笑) この話、前作『薔薇の姫君(ローズ・エボリューション)』のもろ続きです。タイトルもそんな感じだったり(^^; 読んでない方はそちらのほうからどうぞ。 ちなみに、アニメベースの話にも関わらず、クロフェルさん、めっちゃ出ばってます(笑) ************************************* 廊下をこちらに向かってくる忙(せわ)しない足音に、アメリアは目を覚ました。 アメリアの覚醒を受けて、傍らのユズハのまぶたもぱちりと開かれる。 昼過ぎから雲が出てきたため月は隠れて見えないが、それでもまだ夜明け前の時間帯であることはわかる。 アメリアは無言でベッドを滑り出た。 闇の中、立ち上がったところで、ほとほとと扉が叩かれ、静かに名前を呼ぶ声がした。 「アメリア様。お起きください」 その声にわずかに目を見張って、アメリアは扉に駆け寄って引き開けた。 「じい―――」 クロフェル候がライティングの明かりと共に、そこには立っている。もうすでに七十近い年齢にもかかわらず、元気に父親の侍従長を務めている老人だ。 「こんな時間にどうしたんです?」 クロフェルは、昼間と何ら変わらぬ服装をしている。 「殿下が、至急執務室まで来ていただきたいとおっしゃっております」 「父さんが?」 固いその表情に、何かあったのだと知れる。 いったんドアを閉めて着替えたアメリアは、ユズハに寝るように言い置いて、クロフェルの後に続いた。 残暑が続いていると思っていたが、夜の回廊はひんやりしていて、アメリアはぶるりと肩をふるわせる。 父親の執務室で、さらにアメリアは目を見張った。 父親のフィリオネル以外にも、叔父のクリストファ、そして普段父親の政務を補佐している、クロフェルの部下の侍従たち二、三人がアメリアを出迎えたのだ。 その様子から、この場に大臣たちがいないのは単に夜中で自宅に戻っている、ただそれだけの理由なのだと理解する。昼間なら、恐らく大臣たちもここにいるのだろうということも。 これは、いったい――― 「夜遅くに起こしてすまぬ、アメリア。だが、大事が起きた」 「どういうことです、父さん」 クリストファが、執務机の上にたったひとつ置かれていた天鵞絨(びろうど)張りの小箱を目で示す。指輪などを収めておく宝石箱によく似ていた。 アメリアはそれを手にとって、中を開いて絶句する。 「これ国璽(こくじ)じゃないですか!」 普段、執務は王族の署名―――すなわちアメリアやフィリオネルのサインだけで書類を決裁する。 だが、法の発布や軍を発起させるなどの最重要事項の裁可にかんしては、王もしくは王の代行者の署名と国璽の二つが揃わねばならない。逆を言うなら、この国璽さえ押さえれば、大抵ことはできてしまう。 アメリアはこれまで国璽を目にしたことがなかった。国璽を使用するほどの重要な決定は、たいてい祖父が直接行うか、父親のほうにまわされてしまう。 セイルーンの国璽は、金貨ほどの大きさの立方体だった。鈍い、銀とも金ともつかぬ淡い光を放っている―――オリハルコンだ。彫られている印影は、当然セイルーンの紋章。 「国璽がどうしたっていうんです」 箱の中から、周囲の人々の方に顔をあげたアメリアに、執務机に両肘をついた父親が苦い声で告げた。 「それは偽物だ。すり替えられた」 「――――!!」 アメリアは思わず、手の中の輝きに視線を落とした。 *** 翼の舞姫(テイク・レボリューション)第1話 *** 事が発覚したのは、些細な偶然がきっかけだった。 夜、執務を終えようとする寸前、不意にフィリオネルが国璽はどこだと訊いたのである。単にずっと目にしていないので久しぶりに目で確認しておきたいと思っただけだったのだが、保管されている庫から持ってこられた国璽を見て、クロフェルが異変に気づいた。 オリハルコンにしては輝きが強すぎる。色合いもわずかながらおかしい。 念のため、その国璽をいらない紙に捺(お)し、過去の書類と重ねてみて、その場にいたものは愕然とした。 あまりにも捺された紋章がズレていた。 クリストファが呼ばれ、箝口令がしかれ、そうしてアメリアが呼び出された。 アメリアの眠気は一気に吹っ飛んでいた。 「いったい、いつすり替えられたって言うんですか」 何せ滅多に使用されないものだけに、いつのまにすり替わったやら見当もつかない。 「最後に玉璽が使われたのは、あの時だ」 父親の言葉に、アメリアは遠く離れたところにいるリナたちを思い出した。ここにいる叔父のクリストファが王位継承権を放棄し、従兄のアルフレッドが死んだ、あの時。 あの時、王位継承権に劇的な変動が生じたため、あらたな継承順位がアメリアと姉のグレイシアに下された。その時の勅命に使用されたのが、最後。 いまのアメリアの継承権は、第三位。 「国璽のある庫には常に歩哨が立っておる。最後に庫が開かれたのは、数日前。書類を取りに宮廷大臣が庫に入っている」 「宮廷大臣が? まさか―――」 庫に入るには、常に歩哨がそれに立ち会っていなければならない。 真夜中のため、ただちにその歩哨に確認をとることができないのが、非常にもどかしい。 「リーデット殿が帰られたのも、その頃ですな」 クリストファの言葉に、アメリアの表情が青ざめた。 「叔父さんは、リーデがやったって言うんですか!?」 「可能性は否定できない。兄上、宮廷大臣だろうとリーデット殿下であろうと、どんな人物でも疑ってかかるべきです」 「リーデはそんなことしません!」 食ってかかるアメリアを、クロフェルがなだめにかかる。 「アメリア様、このクロフェルもそんなことを信じてはおりません。しかし、すり替えられている以上、王宮から持ち出されているのは必至。ここ数日で王宮を出ていったのはリーデット殿下のみです。リーデット殿下が犯人でなくとも、その供の者に賊が紛れておるやもしれませぬ」 アメリアは唇を噛んで俯いた。 「でも、最後に使用されたのがそんな前では、いつ誰がすり替えたのかなんてわからないじゃないですか」 「玉璽は、わしが時々思い出してはこうやって確認する。今夜のようにな」 「最後に確認したのは、いつなんです」 「一ヶ月ほど前だ」 「クロフェル候。その一ヶ月の間に、庫に出入りした者は?」 クリストファの問いに、クロフェルが表情をひきしめた。 「宮廷大臣が二度。庫の埃払いの女官が一人。魔道書の閲覧をゆるされた宮廷魔道士殿。そして、宮廷大臣が案内したリーデット殿下の四人です。全員が歩哨の立ち会いの元、庫に入っております」 アメリアは愕然と目を見開いた。 「どうしてリーデが庫に入っているんです!?」 部屋にいた全員が、気まずそうにアメリアを見た。 フィリオネルが口を開く。 「おぬしも、リーデット殿の口から直接聞いたのではないか? 公国の世継ぎにもかかわらず、主国の王女であるおぬしとの見合いに赴いた理由を」 「………泣きつかれた………うちの国が泣いて喜ぶほどの好条件を、出されて………」 呆然とアメリアはリーデットが言ったセリフを呟いた。 まさか、その好条件のうちのひとつに。 「宝物の下賜(かし)―――?」 国璽のある庫は、無数にある宝物庫のうちのひとつでもある。 その言葉を口に出した瞬間、アメリアの頭にカッと血がのぼった。 「宮廷大臣は何を考えているんです!? いくら意地の張り合いになってきてるからって、そんな………宝物を下賜までして、私と結婚させてどうするんですかっ。視野が狭すぎます! 私が結婚さえすれば、セイルーンは永遠に繁栄して、病人も怪我人も死人も出なくなるって言うんですか!? 宮廷内のことだけしか考えてないから、頭も思考も固いんですッ」 激昂したアメリアのセリフに、クロフェルやクリストファがぎょっとした表情をする。 「アメリア、アメリア」 父親であるフィリオネルがなだめるような口調で、名前を呼んだ。 「いまは、おぬしの婚姻を問題としておるわけではないから、だいじょうぶだ」 「…………」 アメリアは大きく息を吐き出した。 「………ごめんなさい。とりあえず今は国璽ですね」 「疑わしいのは、歩哨の兵を除くと四人。最有力なのは、宮廷大臣とリーデット殿下ではないかと思われます」 リーデットの名前を聞いて、握りしめた拳がふるえた。 宮廷魔道士や女官は、権力から遠い。玉璽を手に入れても意味がない。裏に何者かがいるとしたら話は別だが。 宮廷大臣は、国璽を簡単に利用できる立場にある。しかも庫に立ち入っている回数が多い。 そして、リーデットには国璽を入手するだけの理由がある。 正確には、リーデットの公国には。 リーデットが継ぐであろうマラード公国は、三十年程前に沿岸諸国連合から分離して国境の接しているセイルーンの属国となった、若い国だ。 沿岸諸国連合との間には分離の際の軋轢がいまも存在するし、まだ属してから日が浅いため、出方を見極めると称する重臣たちのせいで主国セイルーンからも満足な庇護を受けていない。 国璽を手に入れれば、公国に有利な命を発布できる。 だが、そこまでする必要があるだろうか。そんな危険を冒す必要はないはずだ。 せっかく主国が頭を下げて、好条件を出して、うちの王女と結婚してくれと言っているのに、わざわざその見合いに来たセイルーン王宮で国璽を奪うことなどするだろうか。 確かに、見合いの失敗は昨日の早い時間に確定していたから、リーデットはともかくその供の者が煮詰まって暴挙に出たということは考えられる。 しかし、庫にはリーデットしか入っていない。 「夜が明け次第、宮廷大臣を召喚する。他の、宮廷魔道士と女官とこの一ヶ月歩哨に立った者は内密に監視下におき、それとなく事を質すように。リーデット殿下は、まだ公国に帰り着いておらぬはずじゃ、各地の魔道士協会にメッセージを飛ばして、至急戻るよう―――」 「待って、父さん」 指示を遮ったアメリアに、この場の全員の視線が集中する。 「呼び戻さないで、こちらから調査団を派遣しましょう」 その言葉に、フィリオネルの目が見開かれた。 愕然とした表情のクロフェルやクリストファを見ながら、アメリアは言葉を続ける。 「私はリーデを信じています」 腕いっぱいに琥珀の薔薇を抱えて、馬車に乗って行った。 味方が要るかい、と訪ねてくれた。 疑うなんて―――無理だ。 「だけど、じいや叔父さんが言うことも、もっともだと思いますから、ですから調査団を編成して派遣するんです。もし戻るよう指示を出した場合、事の発覚に気づいた者が国璽だけ持って先に公国に帰るかもしれません。だから、向こうには何も知らせずに後を追うんです。もし、国璽を持っているなら、そのまま公国に持ち帰るはずです」 いつの間にか、父親の背後にある窓から見える空は、淡い菫色に染まり始めていた。 夜が、明ける。 「お願い、父さん」 アメリアはまっすぐにフィリオネルを見つめた。 「調査団に、私を加わらせて」 |
6272 | 翼の舞姫(テイク・レボリューション)2 | 桐生あきや URL | 4/4-10:19 |
記事番号6224へのコメント あううう、ちょっとスランプです(−−;) この「舞姫」(こう書くと森鴎外みたいだわ・笑)キャラクターの出演比率が、後々かなり異常なことになります。もしかしたら好き嫌いの別れる話になるかもしれません。 この回から、あの姉弟がご登場です。一人は再登場、もう一人は初登場(笑) ようやく登場してくれたので、大辞典に登録してきました♪ ===================================== 夜明け頃になってようやく寝室に戻ってきたアメリアは、起きて帰りを待っていたユズハを見て、微笑んだ。 「寝てなさいって言ったじゃないですか」 叩きすぎてくたくたになっている枕を抱えて、ユズハが頬を膨らませた。 「りあ寝てない。寝る必要、ナイ」 「そうですね………」 アメリアは苦笑した。 精神世界面から具現化してここにいるユズハには、確かに睡眠など必要ないだろう。 ドレスを脱ぎ捨てて夜着に着替え直したアメリアは、ベッドに潜りこむと、ユズハの艶々したクリームブロンドを撫でた。 人形は髪が伸びるものだというわけのわからない思いこみのもと、勝手に伸び続けているその髪は、四年の間、常に肩口で切りそろえられている。以前、伸ばさないのかと訊ねてみたのだが、食べ物を食べるときに一緒に髪の毛も食べてしまうのがイヤだというような答えを返された。 「ごめんなさい、ユズハ。ちょっとの間だけ、王宮を留守にします。あんまり騒ぎを起こさないようにしててくださいね」 ユズハがアメリアを見た。 「どして。どこ行くノ」 「ちょっと困ったことが起きちゃったんです」 「お仕事?」 「………そうですね。お仕事になります。執務の延長線上です」 「大変」 「ですね」 「つまんナイ」 「ごめんなさい。おみやげ買ってきますね」 そう言って、アメリアは以前にも同じセリフを言ったことがあるのを思い出した。 ユズハと出逢った直後。まだ、ユズハの精神体が人形の器に封じられていた頃だ。 人形の服を買ったところで襲撃を受け、ユズハの人形自体が壊れてしまったため、結局渡すことのできなかった、おみやげ。 あれからすでに五年の歳月がたとうとしている。 「今度はちゃんとおみやげ買ってきまから。何がいいですか?」 「んとね………」 ユズハは考えこんだ。 『りあ』のお家に来てからというもの、全てのものに不自由はしなくなっている。いま興味があるのは本だったが、それも『りあ』の書庫にあるものを好きなだけ読ませてもらえる。 じっくり考えこんでいるユズハの隣りで、アメリアは根気よく待っていた。 「おもしろいモノ、がイイ」 「…………えらくアバウトな注文つけてきましたね………」 なかば呆れながらそう答えて、アメリアは枕の位置を変えて寝る体勢を整えた。 「ごめんなさい、ユズハ。私ちょっとだけ眠ります。明日じゃなくて、今日の朝に起こしてくれると助かります」 「ン。おやすみ、なサイ」 「おやすみなさい」 窓の外はもうすっかり明るくなっていた。 そして目が覚めたアメリアは、王宮から消えた物が国璽(こくじ)だけではなかったことを知らされたのだ――― *** 翼の舞姫(テイク・レボリューション)第2話 *** 四ふりの魔法剣。 時代と共に増えはするものの減りはしないセイルーン王家の宝物庫には、出所や詳細が不明な物も多い。 この魔法剣もそんな得体の知れない物のひとつだった。 宝物庫に収められたのは三百年程前。しかし、魔法剣であること以外、詳しいことは何もわかっていない。 ただの魔法剣ならば、そこらの魔法道具の店でも買うことができる。宝物庫に収められるほどなのだから、なんらかの特別な効果が付与されていて当然なのだが、そのあたりはいっさい不明のままだった。 書庫に保管されている宝物録にも、簡単な特徴が記されているのみだった。どの剣の柄飾りにも赤い宝玉がはめこまれ、ゆえに四ふりを一組とする、と。 国璽の他、庫から消え失せていたのはその謎の魔法剣だった。 夜が明けて、念のためということで庫内の点検を行ったところ発覚したのである。 最初、事態を知る少数の者は首を傾げた。得体の知れない魔法剣以外にも、幻といわれる魔道書や即位式の際に使用する王冠や王杖などが庫には多数眠っている。だが、それらはどれも欠けておらず、無くなっていたのは国璽とその四ふりの魔法剣だけだった。 しかし、幾ら考えても剣の盗られた理由などわかるはずもなく、フィリオネルは逆にこれを利用することにした。 いつまでの玉璽が無いことを隠してはおけない。当面、玉璽の必要な事柄の決定は予定していないとしても、いつかは発覚するだろうし、隠していると調査もやりづらい。そこで庫に賊が入り、剣を盗まれたことを大臣や王宮の者に公表し、その捜査の影で堂々と国璽の捜査を行うことにしたのだ。 今現在、王宮はぴりぴりした空気に包まれている。 悪くない、とアメリアは思った。 平和なのは良いことだが、緊張感がなさすぎるのも困る。それに、この状態だと当分は自分の縁談どころではないだろう。緊張感うんぬんより、そっちの方が嬉しかった。 リーデットのいるマラード公国までは歩いて十日ほど。馬車を使えば七日ほどで着くだろう。馬でもそれくらいだ。ただし、乗り潰せば五日ほどで着くことができる。 今回は緊急を要するので馬だ。恐らく乗り潰して各街で馬を変えることになるだろう。馬車のリーデットは今日、もしくは明日には公国へと帰還しているはずだ。 見送りに来てくれたユズハを見おろして、アメリアは笑った。 「いってきますね。お願いですからいいコにしててくださいよ」 「ン。まかされタ」 「………そこはかとなく不安ですね。シルフィールさんが来たら、しばらく留守だから手紙は預かっておいてくださいって、伝えてくださいね」 「ン。いってらっしゃい」 その頭を軽く撫でると、アメリアは向こうで彼女を待っている調査団の方へと歩き出した。 急ぎに急いで、五日後。王都セイルーンから南々西、沿岸諸国連合とセイルーン国境にはさまれるようにして存在するマラード公国にたどり着いたアメリアたちを、血相を変えたリーデットとその父親の公王が出迎えた。 どういうわけか、その背後には城を出奔したはずの姉姫アセルスの姿もある。 鏡に映したかのように容貌の似通った姉弟だが、表情の固いリーデットとは違ってアセルスはアメリアと目があうと、にっこりと笑って手をふってきた。 乗ってきた馬がアメリアたちの手を放れて馬小屋に連れて行かれた後、アメリアや調査団の文官たちが口を開くより早く、公主が質した。 「何事が起きたのか」と。 ただ困惑した表情を互いに見合わせるアメリアたちに、リーデットが告げた。 ――――四日ほど前からセイルーン王宮と連絡がとれない、と。 背後の調査団の官たちが絶句するのがわかった。 アメリアも驚きのあまり一瞬言葉が出てこなかった。 「どういうことですか?」 「こっちが訊きたいよ、アメリア。君たちは、何か王宮に変事が起きたためここに来たんじゃないのかい?」 「たしかに変事は起きています。だけど、そんな、王宮と連絡が取れなくなるような事じゃありません」 困惑しきったアメリアの答えにも、リーデットは固い表情を崩さない。 すると、それまで後ろに控えていた彼の姉姫が口を開いた。 「リーデ、向こうも混乱してる。ここに馬で来たなら、セイルーンを発ったのは五日ほど前になる。きっとアメリアたちがセイルーンを出てすぐに何かが起きたんだ。まずは互いの情報を整理しないとダメだよ」 背後の調査団の官たちがまじまじとアセルスを観察するのが、アメリアにはわかった。 背丈はリーデット公子よりも若干低く、簡素な男物の服が描いている曲線から女性だと知れるものの、短く切られたその頭髪の色も顔立ちも、双子と言っていいほど弟と似通っている。言葉遣いもリーデットは男性にしては柔らかく、アセルスは女性にしては固いので、さほど彼らと親しくない者のなかにはうっかり二人を間違える者が多い。 アセルスの言葉に、リーデットがうなずいた。 「そうだね。立ち話もなんだしね」 それからしばらく経って、マラード城の一室にアメリアと調査団の文官たち、公主とリーデットとアセルスが顔をそろえた。 「レイフィメさんは?」 リーデットとアセルスの母親にあたる人物の姿を探してアメリアが尋ねると、その場の全員が驚いた顔をした。 アセルスがちらりと咎めの視線をリーデットに寄越した。 「リーデ、あなた言わなかったの?」 「あ、忘れてた。ごめん、アメリア。母さんは六年前に亡くなったよ」 「嘘………ごめんなさい」 「アメリアはセイルーンを出ていたから知らなくても仕方ないよ。全っ然、気にする必要はないから。お祭りの日にはしゃいでお酒飲みすぎてぽっくり逝くっていう、何だかとっても幸せそうな死に方だったしね」 アセルスが身も蓋もなくそう言った。 城を出たはずの公女が当たり前のように同席している事実に気づいて、アメリアは首を傾げた。 「そういえば、アセルス姉さんはどうしてここにいるんです?」 「たまたま居合わせただけ。セイルーンと連絡がとれないことが発覚したとき、城に―――」 「そ、そのことだが、リーデットがここに帰ってきたのが四日前だ」 公主が口を開いた。以前からわかっていたことだが、この公主は気が小さい。口を開いているいまも顔が青く、卒倒しそうだった。沿岸諸国連合から分離するという英断をやってのけたは彼の父親、アセルスたちの祖父であり、彼がいままで国政を支えてきたのは公妃のレイフィメに尻を叩かれてきたからである。彼女が亡くなってからは、リーデットがなだめすかして国政を取り仕切っているのだろう。 そのリーデットが父親の後を引き継いだ。 「すぐに無事帰国し終えた旨をセイルーンに伝達しようと思って、魔道士協会に行ったんだ」 アメリアはうなずいた。いくら小国でも首都の魔道士協会ぐらいは、隔幻話(ヴィジョン)の設備をととのえている。 セイルーンの場合は王宮に直接その設備が付属していた。 「ところが、何度やってもセイルーンにつながらないんだ」 「そんな馬鹿な。隔幻話室(ヴィジョンルーム)には常に魔道士が待機しているはずだ」 調査団の一人が声をあげた。 「一度は通じたよ。でも、すぐに向こう側から切られた。おかしいんだ。こんなこと有り得るはずがない。またセイルーンに行こうかと思っているときに、ちょうど君たちが来たんだ」 「アメリア殿下は、何ゆえ先触れもなしに、我が公国に足を運ばれたか」 公主の問いに答えようとする調査団の官を手で制して、アメリアは彼らをふりかえった。 「真実を話します。彼らは犯人ではありえません」 「姫様。そんな何も詮議せずにお決めにならないでください」 「考えて。王宮と連絡がとれなくなったということは、賊が王宮を占拠したに違いありません。マラードが犯人ではあり得ない」 アメリアの言葉に部屋の空気が凍りついた。公主の顔色が青を通り越して白くなる。 「アメリア、賊って何なの?」 アセルスの問いにアメリアは大きく息を吸ってから、答えた。 「先日セイルーン王宮に賊が侵入し、国璽(こくじ)をすり替え、魔法剣四ふりを盗んでいきました。犯人は特定できず、ここひと月の間に庫に立ち入った者の一人である、マラード公国公子リーデット=アルス=セラ=マラード殿下、ひいてはマラード公国自体が犯人の候補にあがっています。私、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンはその調査に訪れました」 リーデットが目をみはった。公主が卒倒しかけて、アセルスにその足のすねを蹴っ飛ばされてどうにか踏みとどまる。 アメリアは無意識のうちに片耳の瑠璃飾りに手をやっていた。軽く瞑目してから、告げる。 「だけど、リーデはそんなことしないでしょう?」 リーデットが憮然とした表情でうなずいた。 「当たり前じゃないか。なんでそんなことしなくちゃいけないんだい。ただでさえ東と南の沿岸諸国連合から爪弾きにされているのに、このうえ西と北のセイルーンにまで嫌われたら、この国はいったいどうなるのさ。昔話のコウモリの末路だけは見習いたくないよ」 リーデットが爪を噛んだ。苛立っているときのクセはアセルスもリーデットも同じだった。 「アメリア、それにしても国璽なんて、なんでそんなものが―――!?」 わからない、とアメリアは首をふった。 何かセイルーンの存続にかかわる大事が起きている、間違いなく。 そのとき不意にアセルスの呆れた声がした。 見れば、公女は父親の公主の肩を部屋の扉の方へ押しやっている。 「父さん、部屋戻ってていいよ。アメリアはもうこの国疑ってないし、セイルーンは傾かないし、この国も滅んだりしないから。とりあえずそんな幽霊みたいな顔されたら対策立てようがないから、部屋戻って可愛い孫のために刺繍でもしててくれないかな?」 一国の主、しかも自分の父親を平気で罵倒する姫君に、セイルーンから訪れた官たちが呆気にとられて口を開ける。 アメリアは別のことで口を開けた。 「アセルス姉さん、孫って―――」 「いるよ。結婚したって言ったじゃない。いま三歳。可愛いよ」 事も無げに言うアセルスの背後で、ふらふらと公主が出ていくのが見えた。ストレスが頂点に達するとおもむろに生卵を十個割って厨房で卵焼きを作りだすと教えてくれたのは、アセルスだったかリーデットだったか。 「話を本題に戻すよ。どうする、アメリア?」 リーデットが問うた。アメリアの答えは早かった。 「セイルーンに戻ります。馬を貸してください。そして、事が落ち着くまで彼らのことをお願いします」 「アメリア様!?」 調査団として派遣された文官たちが、反論の声をあげた。 彼らの中には、昨夜フィリオネルの執務室にいた侍従二人も混じっている。 「あなたたちは文官でしょう? もし戦闘になったらどうするんです」 「しかし、黙って事を見守るなど―――!」 「我らもセイルーンへ戻ります」 口々にあがる反論に、アメリアはちょっと苦笑してアセルスを見た。アセルスがくすくす笑って、うなずき返す。 「あのですねぇ、もし王宮が何者かに占拠されていたとしますよ?」 あまりに軽い口調に、気勢をそがれた文官たちが黙る。 「そしたら、うちの父さんやお祖父さまたちは無事だとしても、直接お仕事をする人たちが殺されていることだってあるかもしれません」 あがりかけた反論を押さえるように、アメリアはぴっと指を立てた。 「そんな状態はいつまでも許すつもりはないですし、さっさと行って解決してきますけど、もしお仕事する人たちが減っていたら、あなたたちが頑張らなくちゃいけないんですよ?」 あなたたちは貴重な人材で戦力で、最悪セイルーンの王宮機構となることを、暗に告げている。 リーデットとアセルスが目配せをして、互いに表情を交わしあった。 「だから、あなたたちをマラードに残していくんです。わかりましたか?」 反論はなかった。 話がついたと判断したアセルスが、アメリアに声をかける。 「私も一緒に行くよ」 「アセルス姉さん?」 「城に居合わせちゃったのも何かの縁だしね。妹弟子が困ってるのをほっといたら、墓の下の師匠に怒られるから」 「よく言うよ、たまたまお土産の薔薇を取りに来ただけなのに………」 ぼそっと呟かれた弟公子のセリフを、アセルスは聞き逃さなかった。にっこり笑って、弟の両のこめかみをぐりぐりやり始める。 「リーデ、いつの間にか偉くなったんだね。お姉さんとっても嬉しい♪」 「ぞ、属国マラードどして、主国の大事は存続にかがわるから、マラード代表として行ってぐださいお姉ざま、あ痛たたたっ痛い痛いよッ」 「よろしい」 アセルスが弟を解放する。 「………相変わらずなんですね、リーデ」 こめかみを押さえながら、リーデットが恨めしげにアメリアを見た。 「………逆らえるわけないだろう? そんな怖いこと」 「無駄口叩いてないで、さっさと準備して。馬やら物資やらの手配はあなたの役目でしょう?」 ついてもいない手の埃を払いながらそう言うと、アセルスはアメリアに笑いかけた。以前から女性の雰囲気の薄い人物だったが、子供を産んで三十になろうとしているいまでも、まだ少年のように見えてしまう。 「前みたいに、派手に暴れようか」 十二年前に、この城が簒奪を狙う者たちによって占拠されたとき、たまたま居合わせていたアメリアとアセルスは、首謀者をこてんぱんに叩きのめしていた。 その時と同じアセルスの笑みに、ふわりと胸が軽くなってアメリアは微笑む。 「はい。王宮にはユズハもいますからだいじょうぶです。後で紹介しますね」 「リーデから聞いた。君のナイトなんでしょう?」 「はあ?」 「あれ、じゃリーデが勝手にそう言っているんだ。ま、いいか。道すがら話そうか。最低でも五日はかかることだしね。リーデ、客人たちは三階の部屋でいいの?」 姉そっくりの容貌をしたリーデットが嘆息混じりに答えた。 「いきなり話題と話者を転換するのやめてくれよ………。いいよ、それで」 アセルスが、困惑した表情を見せる文官たちに向きなおった。 「部屋に案内します。後についてきてくれますか?」 あの夜に執務室にいた侍従が、アメリアをふり返った。 「どうか、ご無事で」 それにうなずいて、アメリアは応えた。 「だいじょうぶです。もしかしたら隔幻話(ヴィジョン)が故障しただけかもしれないですよ。すぐに何とかしますから。だから、ここで待っててくださいね」 侍従が深く叩頭した。 ===================================== 実はアセルスお姐さま、子持ちでございました(笑) |
6275 | 背筋がぞくぞく致しますゥv | あごん E-mail | 4/5-05:21 |
記事番号6272へのコメント こんばんは(おはよございます?)あごんですv 翼の舞姫vvあああああ。すっごい好きな話ですぅv 権謀術とかすごい好きなんですよ〜〜。 しかも国レベルのが(笑)。 お家乗っ取りとかも好きなんですが・・・。今回の話には関係なさそーですね。 王女の威厳に満ちたアメリアにどきりんこですv 髪が伸びるユズハにも(笑)。 アセルス姉さん、男言葉っぽいですねぇ。 う〜ん、格好いいですvv 惚れました! ってゆーか桐生様のオリキャラってみんなツボな私って・・・(笑)。 ああ、でも男言葉な女はマジで好きなんです。 十二国記の陽子とか(笑)。 魔法剣も気になりますし。 はて、これと国爾の関係はいかに!? 続きを楽しみにしてます あごんでした! |
6276 | ああああ、光栄ですぅ……… | 桐生あきや URL | 4/5-07:29 |
記事番号6275へのコメント >こんばんは(おはよございます?)あごんですv おはよございますです♪ 本を読んでいたら夜が明けていて、ひたすらビビりまくっている桐生です(汗) 大学あるのにどうするよ………(−−; >翼の舞姫vvあああああ。すっごい好きな話ですぅv >権謀術とかすごい好きなんですよ〜〜。 >しかも国レベルのが(笑)。 >お家乗っ取りとかも好きなんですが・・・。今回の話には関係なさそーですね。 >王女の威厳に満ちたアメリアにどきりんこですv >髪が伸びるユズハにも(笑)。 あごんさんには敵わないです。だって、あんなに見事な推理物とか書いてるじゃないですか(『春花』のことですvv) こっちは自分で書いてて何がどう動くのかさっぱりで、白髪義眼のあの参謀殿がご光臨しないかとちょっぴり思います。いえ、紅茶好きのあの御方でもいいんですけど(笑) >アセルス姉さん、男言葉っぽいですねぇ。 >う〜ん、格好いいですvv >惚れました! >ってゆーか桐生様のオリキャラってみんなツボな私って・・・(笑)。 >ああ、でも男言葉な女はマジで好きなんです。 >十二国記の陽子とか(笑)。 あああああっ!? 私も大好きです(><)読み始めたときは本気でもっと早く読めば良かったと思いました。私、食わず嫌いするんで(笑) アセルス姉さんは、かなり言葉遣い悩みました。男言葉はリーデットとかぶる。かといって、女言葉はアメリアへのポジション的にもリナとかぶるよなあ、とか思いまして。手元にはオネエ言葉の彼女もいます(笑) >魔法剣も気になりますし。 >はて、これと国爾の関係はいかに!? >続きを楽しみにしてます >あごんでした! ありがとうございます(><) 本当に励みになります。とりあえず詰まっている続きをなんとします。がんばりますっ。 ではでは、桐生でした。 追伸:偽物がいるという話はついぞ聞いておりません(笑) 自分でも何考えてああ表現したのかさっぱりです(^^; とりあえず、みんな揃っている素晴らしさを言いたかっただけなのですが。 |
6285 | ねぇさんかっくいい・・・・・(ぽっ) | ゆえ E-mail URL | 4/5-22:36 |
記事番号6272へのコメント こんにちは、ゆえです♪ あああ、待ちにお待ちしてました長編スタート♪ のっけからセイルーン王宮はてんやわんやの大事ですが(いいのか、表現がそれで)私としては、何より嬉しいアルセスさんの登場です♪ むちゃかっこいいです。もう宝○バリかも(それはちょっと違うか・・・・・・) この二人に対して父親の公主さんの、情けなさがまたいいですねぇ(国としては大変ですが) 国璽と魔法剣の紛失だけかとおもったら、セイルーン自体がえらいこっちゃです。 まさかユズハVSオルハの戦いが・・・・・はナイですね。失礼しました(爆) アメリアとアルセスさんとユズハ。この3人の組み合わせが今後の楽しみです♪ どっかんどっかん敵さんなぎ倒してくれそうですが・・・・・話は一筋縄ではいかないのでしょうね。 次回楽しみにしています♪ |
6287 | ねぇさん人妻ですが(笑) | 桐生あきや URL | 4/6-07:16 |
記事番号6285へのコメント ども、桐生です♪ >あああ、待ちにお待ちしてました長編スタート♪ >のっけからセイルーン王宮はてんやわんやの大事ですが(いいのか、表現がそれで)私としては、何より嬉しいアルセスさんの登場です♪ てんやわんや……いいですね、その表現(メモメモ・笑) それにしても大人気ですなぁ、姐さま。ポジション的にグレイシアさんとリナにかぶらないように、桐生としてはかなり気をつけて書いているキャラです。リナもアメリアの姉貴分ですし。 >むちゃかっこいいです。もう宝○バリかも(それはちょっと違うか・・・・・・) >この二人に対して父親の公主さんの、情けなさがまたいいですねぇ(国としては大変ですが) 公主さんのイメージはNEXTのゾアナ国王です(笑) アセルスお姉さん、最初の設定では虫も殺せぬ大人しやかな顔でにっこり笑って人張り倒すお嬢様でした。信じがたいですが(笑) >国璽と魔法剣の紛失だけかとおもったら、セイルーン自体がえらいこっちゃです。 >まさかユズハVSオルハの戦いが・・・・・はナイですね。失礼しました(爆) アメリアが帰って見たものは、ユズハVSオルハの戦いでヴィジョンルームが大破。瓦礫を兵たちが片付けている光景………(爆笑) その場合、原因の9割はユズハですね(笑) >アメリアとアルセスさんとユズハ。この3人の組み合わせが今後の楽しみです♪ >どっかんどっかん敵さんなぎ倒してくれそうですが・・・・・話は一筋縄ではいかないのでしょうね。 >次回楽しみにしています♪ 続きを出せば出すほど、ストップしている箇所に追いついてくる……(当たり前だ) がんばって書き終えて、いいかげんゼルをどうにかしたいんですが(笑) ではでは、桐生でした。 |
6311 | 翼の舞姫(テイク・レボリューション)3 | 桐生あきや URL | 4/9-04:09 |
記事番号6224へのコメント 結論:やっぱりリーデは得体が知れないです(笑) ************************************* 「―――ねえ、アメリア」 マラードに到着したその夜、アメリアが眠れずに露台に出て夜景を眺めていると、上からリーデットの声が降ってきた。 思わず呆れて、手すりの上に身を乗り出して頭上を仰ぐと、ひらひらとリーデットが手をふり返す。 「上がリーデの私室なんですか?」 「そうだよ。話しづらいんならそっちに行こうか?」 アメリアは軽く眉をひそめた。 「夜に淑女の寝室をおとなう礼儀ぐらいわきまえてください。それで、どうかしました?」 「いや、ただね―――」 アメリアは上を見上げるのをやめて、城下に広がる街の灯りに視線を戻した。 明日の早朝、アセルスと共にセイルーンに戻る。本当に、ただの幻話の故障だといいのだが、そうではないとアメリアの勘が告げている。 いまの状況では不安を煽るだけだが、アメリアの勘はよく当たった。 リーデットの静かな声が闇に流れる。 「もしいまの事態が反乱で、王宮が占拠されてて、玉座が君たちの血統じゃなくなったらどうする?」 「………降りてきますか?」 アメリアは手すりに頬杖をついて、声だけを上に放った。 「淑女の寝室をおとなう礼儀ぐらいわきまえてるから、遠慮しとく。殴られたくないし」 「わかってるじゃないですか」 「ためしに聞いただけだよ。未来は無限で何が起きるかわからない」 「…………」 アメリアは答えなかった。黙って夜景に視線を注ぐ。涼しい風が首筋をすりぬけていった。 まだまだ残暑が厳しいといっても、やはり秋だ。 「単に僕の興味本位なんだけど。君が枷から解放されたとき、どう行動するのか気になって」 上から降ってくるリーデットの言葉に、アメリアはイライラと指で石造りの欄干を叩いた。 「王女じゃなければ、君は君が待っている人のところにいけるだろう? だから、もし王宮が―――」 「言わないでください」 アメリアは遮った。リーデットがそれに従ってぴたりと口をつぐむ。 「聞きたくないです。そんなこと有り得るはずがない」 「―――アメリア」 アメリアは上をふり仰いだ。片時も離さない瑠璃の耳飾りが、ちりちりと音をたてる。 「リーデは私に何を言いたいんです? これ幸いと勝手に好きなことをしろって私を唆してるんですか」 「いや」 リーデットは短く答えた。 見おろしてくるその表情が、アメリアの癇に障る。 どうして、そんな――― 降ってくる声は淡々としている。 「聞きたくないっていうのは、自分から思考を停止させることだよ。アメリア」 呆然とアメリアが見上げていると、リーデットは露台のなかに引っこんでしまった。 「おやすみ、アメリア。明日から気をつけて」 *** 翼の舞姫(テイク・レボリューション)第3話 *** アメリアとアセルスはセイルーンへとって返した。 「アメリア、本当に大人っぽくなったよね」 馬上でアセルスが不意に、感心したようにそう言った。 「はあ?」 「だって、最後に逢ったのはアメリアが十四のときでしょう? 十四の姿からいきなり二十四になられたら、誰だってびっくりするよ」 「私、どこか変わりましたか?」 アメリアは首を傾げた。 確かに変わってはいるだろう。いつまでも十四の子どものままじゃない。 でも髪もあのときと変わらない長さを保っているし、身長もあまり変化していない。 アセルスは笑った。 「すごく変わった。そんなもんだよ。本人にはどこが変わったかなんてわからない。でも、確実に変わったことだけはわかってるでしょう?」 「ええ、まあ………」 「でも、アメリアはアメリアだよね。そういうあたりは何も変わってない」 「意味がよくわからないんですけど………」 軽く眉をひそめたアメリアに、六つ年上の王族の女性はクスクス笑って答えなかった。 事が起きたのは、セイルーンまであと二日を残す距離まで来たときだった。 「布告?」 暮れゆく街に入ったアメリアが首を傾げた。 傍らのアセルスも怪訝な顔をする。 「布告が出されたって言うの? 王宮から」 連絡の取れないはずの王宮から。 アメリアが馬から飛び降りた。アセルスがその手綱を押さえる。 人混みをかきわけてその布告板の正面まで来ると、アメリアは内容を呼んで絶句した。 なかなか帰ってこないアメリアに業を煮やしたアセルスは、布告を読み終えて馬の脇を通り過ぎていく女性を捕まえて訪ねる。 「いったいどうしたの?」 「どうしたもこうしたも」 うきうきと女性が答える。 「税を軽くなさるんですって」 「税? 税は各領主が決めることでしょう? 王宮の権限違反ではないの?」 アセルスは首を傾げた。アセルスの生まれた公国は小国のうえ属国なので、そのあたりの詳しいことはよく知らない。 「そんな難しいこと私は知らないよ。ただ、王様が各領がかける税の上限をうんと低くしてくださった。違反だろうと何だろうと嬉しいことに変わりはないね」 「そうだね」 適当に相づちをうったアセルスは、アメリアが戻ってくるのを見て自分も馬から降りた。 「アメリア」 「宿に行きましょう。話は、そこで」 アセルスから手綱を受け取りながら、アメリアは短くそう告げた。 「国に納める税も、領主が自分のものとして徴収する税の上限も均等に減っています。それから、関税も軽くなってる。それに―――」 「何?」 「自分のところの領主に不満があるなら、直接うちにチクるようにと。魔道士協会のメッセージサービスはそれに限り無料。他にも細々としたものが出されてます。どれも開始は年明けからです」 手短に告げられた布告の内容を聞いて、アセルスが片眉をはねあげた。 「それはすごいね。布告もすごいけど、手並みが」 監査のための官を派遣しても癒着が起こる場合がある。直接王宮に伝えられるなら、そんな心配もない。もちろん無料というのは、セイルーン自体が魔道士協会に料金を支払うからだろう。 「フィルおじさまがやっているの?」 「そんな話出てませんでしたけど。こんな決定が四日の間に提出・裁可されるはずないですし」 困惑ぎみにアメリアが答える。 人々は喜んでいる。純粋に。国王の目の届かないところでロードが悪政をしくことはよくあることだから、間違ってはいない。たしかに正しい布告だ。 だが、いったい誰が出したものなのだろう? しかも一度に三つも。性急すぎる。こんなに急に大きな変化を起こすと、反発が相当なものになる。 「誰が執務を執り行っているんでしょう」 アメリアは、テーブルの上のカップを手のひらで包みこんだ。 王宮と連絡がとれない。それは事実だ。現にここに来る途中の街ごとに魔道士協会からセイルーンに連絡を取ろうとしたが、やはり王宮の隔幻話室は応えなかった。 ベッドに腰掛けたアセルスが、飲み終えたカップを手に立ち上がった。 「どっちにしろ着かなきゃわからないし、どうにもならないことだよ。誰が出した布告にしろ、いったん出した以上撤回はできないから、当分はそのままにしておいたら? 悪い布告じゃないし」 「そこらへんが、よけい謎なんですけど」 考えこんだアメリアの後ろ頭を、軽くアセルスが小突いた。 宿の女将に頼んで持ってきてもらった香茶が、ゆるやかな湯気と共に芳香を立ちのぼらせている。 「だから、考えても今はわからないんだってば。とりあえず、晩御飯を食べに行かない? 何も考えてないフリして、実は色々考えこむのがアメリアの悪い癖だよ」 「何ですか、ソレ」 琥珀の目が笑んだ。 「いいから、いいから。それより、リーデの話聞いたときからずっと気になっていたんだ、アメリアの好きになった人のこと。聞かせてもらうから、今夜ゆっくり」 「ア、アセルス姉さん?」 慌てるアメリアに、アセルスは意地悪く笑った。本当に、こういうところは姉弟ともにそっくり同じである。 「ダメ。いままでうまく避けてきてたでしょう? 今夜は逃がさない。代わりにうちの旦那の話もしてあげるから」 「いえ、そっちの方はもういいです………」 「うちのオルの話が聞けないの?」 「ここ数日で充分、拝聴しましたから」 アセルスは、その少年のような顔でにっこり笑った。 「だから、次はアメリアの番だよね」 ―――結局、なれそめから現在に至るまで洗いざらい白状させられた。 その夜、半分は眠りに落ちた柔らかな声で、アメリアがアセルスを呼んだ。 「ねえ、アセルス姉さん………」 その声に、隣りのベッドに横になっていたアセルスは起きあがる。 「寝てなかったの?」 「きっと姉さんは、帰ってきませんね………」 すぐにアセルスはそれが、自分のことではなくアメリアの実姉グレイシアのことだと気がついた。年が近いものの、王宮で何度か会話を交わしたことがあるだけで、あまり親しくはない。 「アメリア?」 「だって………姉さんは王宮が嫌いだから………母さんが死んだところにいたくないって言ってたから、きっともう戻ってこないんでしょうね………」 「…………」 アメリアの小さな囁きが聞こえた。 「きっと私が玉座を継ぐんだわ………」 「アメリア………」 「………おやすみなさい………」 寝付きのいいアメリアの規則正しい呼吸が聞こえだしてから、アセルスは呟いた。 「グレイシア。あなたと同じように出ていった私が言える立場じゃないけど、私はアメリアが可愛いから言うよ」 本来ならば、王族の中で一番年少のアメリアに継承権がまわってくることなどなかったはずなのに、今現在、気がついてみれば、彼女の父親の次に玉座を継ぐのは彼女しかいない。グレイシアが帰ってきさえすれば、そんなことにはならないが、アメリアはきっと帰ってこないと言う。 負荷に耐え続けるアメリアの、せめてもの望みを叶えてやれないほど王宮は狭いのだろうか。 あんまりにも口を割らないので酒を飲ませて聞き出したアメリアの、穏やかな強さに満ちた声が耳の奥で繰り返される。 『ゼルガディスさん、帰ってきてくれるって約束してくれたんです。セイルーンでもいいって言ってくれたんです。私、それが、すごく、嬉しくて―――』 「グレイシア。私、あなたのことが嫌い」 アセルスは布団を引っ被った。 セイルーンはごくごく普通の雰囲気だった。 以前のリナたちが関わった宮廷騒動のときよりもよほど穏やかで、普段の状態と何も変わっているところはない。 王宮の門扉も閉ざされることなく、普段通り歩哨が両脇に立っていた。 「ええっと………やっぱりただの故障なのかな?」 「ですかねぇ」 遠目に解放されている正門を見ながら、アメリアとアセルスはやや呆然としながら呟いた。 「どうするの?」 アセルスが首を傾げて訪ねた。 「とりあえず、父さんに会って事情を聞いてそれから―――」 「アメリアさん!」 背後から駆けられた切羽詰まった声に、アセルスとアメリアは同時にふり向いた。 長く綺麗な黒髪の女性が、通りの向こうからこっちに向かって駆けてくる。 「シルフィールさん!?」 「知り合いなの?」 アセルスの問いに黙ってうなずくと、アメリアは心配そうな表情をしたシルフィールに向き直った。 「どうしたんです?」 「それはこっちがお聞きしたいです。帰ってきているのなら教えてくれてもいいじゃありませんか。ユズハちゃんと、どこに行ってたんです?」 「は?」 アメリアがぽかんと口を開けた。 アセルスの反応は早かった。二人を門の歩哨の視線から外れた路地へと引っ張りこむとシルフィールの肩をつかまえて問いただした。 「ちょっと待って。アメリアは王宮に賊が入った一件で、十日前からセイルーンを離れていたのよ」 今度はシルフィールが声をあげた。 「そうなんですか? そんな話はお聞きしていません」 「ユズハはシルフィールさんに会わなかったんですか? 伝言を頼んだはずですけど」 シルフィールはますます眉をひそめた。 「これは、ちょっと変ですね………」 「シルフィールさん?」 アメリアが問うと、シルフィールはうなずいた。 「ちょっと王宮に帰る前に、おじさんの家に寄っていきませんか。すぐ近くですし、お話したいこともありますから―――あの、こちらの方は?」 遠慮がちなシルフィールの視線に、アセルスは特に気分を害したふうもなく答えた。 「私はアセルス。この子の体術の姉弟子だったの」 「彼女はだいじょうぶです」 「わかりました。お二人とも来てください」 先頭に立って歩きながら、シルフィールが言った。 「何だか、王宮が変なんです」 |
6314 | うえぇぇ〜ん、アセルスおねいさ〜〜〜んっ(T−T) | 雫石彼方 E-mail | 4/9-23:34 |
記事番号6311へのコメント 時間がないので手短にいきますっ!! もっと時間に余裕のある時にレスすればいいんだろうけど、どうしてもレスつけずにはいられなかったのさっ! 寝る前にアメリアとアセルスおねーさんが交わした会話がとっても印象深いです。 アメリア〜〜〜っ!! 何だか胸がきゅーーーーっと締め付けられる思いですよ。もうぎゅーーーーって抱き締めてあげたいっ!!(><) グレイシアおねーさんは帰ってこないんだろうか・・・・。むう、早く帰って来いっ!!て感じね。 こういう風に改めて指摘されると、グレイシアおねーさんがちょっと憎い〜;アメリアがこんなにも苦しんでいるのにぃ!! だから、アセルスおねーさんがずばっと言ってくれて、ちょっとすっきりしました。リナとはまた違った感じの『姉』で、アセルスおねーさんとっても好きだすVv少年のような言葉遣いも可愛いし。 ユズハも行方不明で、一体どうなることやらだすね!! 影ながら応援しているわ(笑) ではでは〜。 |
6319 | 泣かないで(汗々) | 桐生あきや URL | 4/11-07:07 |
記事番号6314へのコメント 時間がないときにわざわざありがとう彼方ちゃん!(><) 私もいまから大学で時間がないです(爆) 帰ってからでは倒れるように寝ること決定なので、いまレスしてるけど。 >グレイシアおねーさんは帰ってこないんだろうか・・・・。むう、早く帰って来いっ!!て感じね。 グレイシアお姉さんはね……、帰ってきたり来てなかったり色々な話があるけど彼女の正体が某姐さんでは私の手に負えないので、できれば帰ってきてほしくないです。ああ、そんなこといったらゼルと彼方ちゃんに殺されるかも(笑) >だから、アセルスおねーさんがずばっと言ってくれて、ちょっとすっきりしました。リナとはまた違った感じの『姉』で、アセルスおねーさんとっても好きだすVv少年のような言葉遣いも可愛いし。 少年のような言葉遣いでますます年齢不詳に陥らせてしまったわ、この人(笑) 実はジャスト30歳………(核爆) >ユズハも行方不明で、一体どうなることやらだすね!! >影ながら応援しているわ(笑) 私も彼方ちゃんの社会人生活を影ではなくもう日なたから、がすがす応援してますので。 がんばってね。 ではでは。大学行ってきます。 |
6331 | 翼の舞姫(テイク・レボリューション)4 | 桐生あきや URL | 4/13-20:07 |
記事番号6224へのコメント パソコンに叛乱を起こされて初期化。メールが全部吹っ飛んで、ちょっぴりブルーな桐生です。 スランプ気味でしたが、授業中の内職でなんとか復活できそうです(オイ) ではでは、続きです。 ************************************* 帰宅したシルフィールを出迎えたグレイは、背後に続くアメリアとアセルスを見て目を見張った。 「アメリアさま、お帰りになられていたのですか? しかもアセルス殿下まで」 その言葉に、三人とも驚く。 代表して本人であるアセルスがグレイに訊ねた。 「ええと、どうして私を知ってるの?」 聞かれたグレイは苦笑した。 「もう十数年前になりますか。殿下が体術の訓練中にアメリアさまの腕を折ったことがおありでしょう。そのとき治療した魔法医の助手をしておりました」 「ああ、あのときか。あのとき私、手加減が下手だったんだよねぇ」 しみじみとアセルスが呟いた。うんうんとアメリアがうなずく。 「あれは痛かったですねぇ」 シルフィールがわずかに顔をひきつらせて二人を眺めやった。 「それでシルフィール。どうしたんだ」 「王宮のことで。おじさんも変だっておっしゃってましたでしょう」 グレイの顔がくもった。 「たしかに。アメリアさま、アセルス殿下お入りください。いまお茶でも出させましょう」 ***翼の舞姫(テイク・レボリューション)第4話 *** シルフィールが香茶のカップを乗せたトレイをテーブルに置いたところで、アメリアの方が話を切りだした。 国璽(こくじ)と魔法剣の盗難。それによってマラードへの調査団として赴いたこと。セイルーンと連絡がとれないため、急いで戻ってきたこと。 それを聞いたシルフィールとグレイは絶句して顔を見合わせた。 「国璽が………なんということだ」 「それで、戻ってきてみたら街はごく普通です。特におかしなところも見当たりません。シルフィールさん、王宮はどうなっているんですか?」 シルフィールが姿勢を正した。黒髪がさらりと肩から流れ落ちる。彼女がもうすぐ新刊の資格を取得できるだろうとの話をアメリアは聞いていた。 「わたくしが王宮を訪れたのは七日前です。いつも通りにアメリアさんに目通りをお願いしたのですけれど、普段顔を合わせている方とは違う女官の方が応対に出て、いまはちょっとセイルーンから出ているとおっしゃったんです。それなら、ユズハちゃんだけでもと思ってそう伝えたら、彼女も同行しているので王宮にはいないと」 「そんな。ユズハは王宮にいるはずです」 アメリアの顔が強張った。 周囲にはハーフエルフと偽っているものの、その実体はエルフなどではなく魔族に近い精神生命体だから大抵の事態は平気だ。そう知っているものの、シルフィールの話を聞いたあとでは平静ではいられない。 「いつ帰ってくるのかと訊ねると、まだだいぶかかるとのことだったので、わたくしはそれから王宮には行ってません。これだけなら別に変ではないんですけれど、おじさまのほうが―――」 グレイは持ち回りで王宮の魔法医を勤めているはずだった。 アメリアとアセルスが彼のほうに視線を向けると、彼はひとつ頷いて話し始めた。 「何がどう変だとは上手く言えないのですが、何かこう、空気のようなものが変なのです」 「それは?」 「王宮は普通です。普通に兵や神官たちが詰めております。彼らは至って普通に役目をこなしております。何というか………その、上に行くほど違和感が強くなるのです」 グレイの言葉が、王宮の権力機構の上位を指していることはすぐにわかった。 「私は、ときどき仕事でエルドラン陛下や殿下のご様子を伺いに参内することがあります」 「知ってます」 宮廷の魔法医の最も重要な仕事は王族の健康管理だ。現在は国王エルドランの病状が思わしくないこともあって、王宮には常に数人の魔法医が待機しているはずである。 「ここ十日の間に二度ほど殿下と顔を合わせる機会がありましたが、ずっと表情が固く、無言のままでして………。最初は賊が入ったゆえに表情が厳しいのかとも思いましたが、どこか違うのです。何か言いたそうな表情を時折なさるのですが、結局何もおっしゃられませんし。陛下のときもです」 「お祖父さまが?」 グレイは首をふった。 「陛下はごく普通の御様子です。陛下には一度しかお会いしていないのですが、どうもそのときずっと誰かに見られているような気がして………」 アメリアとアセルスは顔を見合わせた。 「隔幻話(ヴィジョン)が故障したという話は」 「聞いておりません」 「クロフェル公はどうしてる」 「一度遠くから見ましたが、やはりこちらも顔色がすぐれないようでした」 「クリストファ叔父さんとユズハは」 「お見かけしておりません」 「アメリア」 アセルスが短く妹弟子を呼んだ。アメリアはそれにうなずく。 「わかってます。王宮は、おかしい。正面から帰るわけにはいきません」 シルフィールに対してつかれた嘘。違和感を感じるという王宮の雰囲気。固い表情の父親とクロフェル。グレイが感じた視線。 間違いなく、アメリアがセイルーンを発ったあとで何かが起きた。 「ありがとうございます。王宮に帰る前にシルフィールさんに出逢えて本当によかったです」 礼を述べるアメリアに、シルフィールはわずかに首を傾げた。 「あの、手紙はどうします? わたくし、それを届けに行ったんですけど」 「事が落ち着くまで預かっててくれますか?」 シルフィールの瞳が、不意にイタズラっぽい光を宿した。 「リナさんからじゃありませんけど………」 がっちゃん。 アメリアが戻したカップがソーサーとぶつかって派手な音をたてた。 「ください。いますぐ」 アセルスとグレイが怪訝な表情で、アメリアを見た。 ―――純白の一枚の羽根。そして乾燥してくすんだ花びら。 何の花だろう。 「………ホントに道で拾ったものを入れてるんじゃないかしら」 アメリアは顔をしかめて呟いた。 内容を考えるだに、あながち間違ってもいなさそうだ。以前、どうでもよさげな小石が入ってたときはさすがに泣きたくなったが。まあ、ユズハがリナにあてる意味不明の手紙よりはマシかもしれない。 封筒の中味はそれだけだった。やはり言葉は何もない。 よっぽど手紙を書く―――離れた相手に自分の言いたいことを伝えるという行為が苦手らしい。 それでもいい。 きっと自分たちには『送る』ことと『それを受け取る』こと自体が大切なのだ。 互いに忘れていないということ。二人の願いがまだ重なったままであるということ。 それを確認するための行為だ。 「そう………私は、ここで待ってるんですよね………」 アメリアがそう呟いて目を閉じた。 自分は何を迷っていたのだろう。 王女じゃなければ? そんなことは言い訳にしかすぎない。自分は王女で、間違いなくアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンだ。枷すらも自分自身の一部。 彼が好きでいてくれる、私自身。 あの夜のリーデットの問いに、答えを返さなければ――― (今はココで すべき事をして) (平気になったら 笑えばいい) (どうかあのヒトに伝えて下さい) (”遠くても近くても いつも隣にいる”と) 「それ、舞姫の羽根?」 「うっきゃああああぁっ!?」 背後から突然に聞こえた姉弟子の声に、アメリアは飛び上がった。 「ア、アセルス姉さんッ。下で待っててって言ったじゃないですか!」 気を利かせたシルフィールが二階にある自分の私室を貸してくれたのである。 勝手に上がってきたアセルスは悪びれなかった。 「だってアメリアなかなか降りてこないんだもの。これを送ってきたの? なかなかやるじゃない。それとも知らずに送ったのかな」 アセルスの指が、白い羽根をつまみあげた。 「アセルス姉さん?」 『翼持ちて空を舞う姫』って意味の名前の鳥の羽根。白鷺の一種だったっけ。名前の由来なんてあまり知られてないことだし、鳥自体すごくレアだから多分知らずに送ったのかな。たしかエルメキアのごく一部の地域にしか棲んでないはずだよ」 アメリアはそっと目を伏せて笑った。 「そっか………そこにいたんですね。ゼルガディスさん」 アメリアは羽根と花びらを封筒にしまうと、再びきっちりと封をしてシルフィールの机の上に置いた。 階下に降りて、シルフィールに告げる。 「後で取りに来ます。預かっててくれますか?」 「もちろんです」 「お二人はこれからどうなさるおつもりですか?」 グレイの問いに、アメリアは笑ってアセルスを見た。アセルスもそれに笑い返す。 「とりあえず、黒装束でも手に入れにいきましょうか」 意味がわからず怪訝な顔をするグレイに、王女二人は顔を見合わせて笑いあう。 「一度忍びこんでみたかったんです。自分の住んでる王宮」 「滅多にできない体験だよね」 ぽかんと口を開けたグレイの隣りで、シルフィールがすました顔で言った。 「なら、夜までこちらで休んでいきますか?」 彼女も、だてにリナたちとつきあっているわけではないようだった。 |
6333 | はじめまして | こずえ | 4/13-22:54 |
記事番号6331へのコメント はじめまして。コメントつけるの初めてですが、柚葉シリーズ楽しく読ませてもらってます。 柚葉シリーズ、ユズハかわいくてとってもラブリ〜〜vですね。あのつたない口調があいくるしい・・・ 最近ユズハ出てこなくてちょっぴり寂びしーですが、シルフィールも好きなんで楽しんでます。(まあ、アメリアさえ出てくれば満足なんですが) >「ここ十日の間に二度ほど殿下と顔を合わせる機会がありましたが、ずっと表情が固く、無言のままでして………。最初は賊が入ったゆえに表情が厳しいのかとも思いましたが、どこか違うのです。何か言いたそうな表情を時折なさるのですが、結局何もおっしゃられませんし。陛下のときもです」 >「お祖父さまが?」 > グレイは首をふった。 >「陛下はごく普通の御様子です。陛下には一度しかお会いしていないのですが、どうもそのときずっと誰かに見られているような気がして………」 > アメリアとアセルスは顔を見合わせた。 >「隔幻話(ヴィジョン)が故障したという話は」 >「聞いておりません」 >「クロフェル公はどうしてる」 >「一度遠くから見ましたが、やはりこちらも顔色がすぐれないようでした」 >「クリストファ叔父さんとユズハは」 >「お見かけしておりません」 な、何が起こったのでしょう・・・でもとりあえず、お城の機能はきちんと動いてるようで安心・・・ っていうか、ユズハはっ、ってかんじです。 >「あの、手紙はどうします? わたくし、それを届けに行ったんですけど」 >「事が落ち着くまで預かっててくれますか?」 > シルフィールの瞳が、不意にイタズラっぽい光を宿した。 >「リナさんからじゃありませんけど………」 > がっちゃん。 > アメリアが戻したカップがソーサーとぶつかって派手な音をたてた。 >「ください。いますぐ」 > アセルスとグレイが怪訝な表情で、アメリアを見た。 ここのアメリア文句無しにかあいいv。 >『翼持ちて空を舞う姫』って意味の名前の鳥の羽根。白鷺の一種だったっけ。名前の由来なんてあまり知られてないことだし、鳥自体すごくレアだから多分知らずに送ったのかな。たしかエルメキアのごく一部の地域にしか棲んでないはずだよ」 タイトルとリンクしてますね。なんか、後に意味を持つのでしょうか? なんか・・・初めましてのわりに細かい&不遜なコメントでした。失礼します。 |
6344 | はじめましてです(><) | 桐生あきや URL | 4/15-17:27 |
記事番号6333へのコメント >はじめまして。コメントつけるの初めてですが、柚葉シリーズ楽しく読ませてもらってます。 はじめまして。ずっと読んでくださってありがとうございます。 すごくうれしいです。みなさんが読んでくれるから桐生は書いていけてます。 >柚葉シリーズ、ユズハかわいくてとってもラブリ〜〜vですね。あのつたない口調があいくるしい・・・ おかげであまり喋らせることができなくて、ちょっぴり苦労してます(笑) でもぺらぺら喋るユズハは、私もイヤです(^^; >最近ユズハ出てこなくてちょっぴり寂びしーですが、シルフィールも好きなんで楽しんでます。(まあ、アメリアさえ出てくれば満足なんですが) 出演比率がこのあたりから狂ってきているのがひしひしと………(汗) アメリアとシルフィール以外はオリキャラなこのお話。 >な、何が起こったのでしょう・・・でもとりあえず、お城の機能はきちんと動いてるようで安心・・・ >っていうか、ユズハはっ、ってかんじです。 ケーキバイキングを食べに……は行ってません(笑) >>『翼持ちて空を舞う姫』って意味の名前の鳥の羽根。白鷺の一種だったっけ。名前の由来なんてあまり知られてないことだし、鳥自体すごくレアだから多分知らずに送ったのかな。たしかエルメキアのごく一部の地域にしか棲んでないはずだよ」 >タイトルとリンクしてますね。なんか、後に意味を持つのでしょうか? いえ、どこかでリンクさせなきゃまずいかな、と………ごめんなさい(汗) ゼルは確信犯なのか、それとも全然知らなかったのか………たぶん知らなかったんじゃないかしら(笑) >なんか・・・初めましてのわりに細かい&不遜なコメントでした。失礼します。 全然そんなことないです。レスくださってホントありがとうございます。 今回は投稿ペースが遅いですが、どうかおつきあいしてやってくださいませ。 桐生あきや 拝 |
6336 | きっと確信犯(笑) | ゆえ E-mail URL | 4/15-10:25 |
記事番号6331へのコメント こんにちは、ゆえです♪ > パソコンに叛乱を起こされて初期化。メールが全部吹っ飛んで、ちょっぴりブルーな桐生です。 うわっ☆大変でしたね〜。でも私のバソも調子悪。買ったばかりなのにぃ・・・・ どうもインストールしたソフトとの相性が悪いみたいですぅ。 うう、前回の二の舞にならないうちに、パックアップとっとこっと。 > スランプ気味でしたが、授業中の内職でなんとか復活できそうです(オイ) > ではでは、続きです。 仕事中に内職・・・・・・は無理か(すんなっ) >「ああ、あのときか。あのとき私、手加減が下手だったんだよねぇ」 > しみじみとアセルスが呟いた。うんうんとアメリアがうなずく。 >「あれは痛かったですねぇ」 痛い。絶対痛いって、アルセスさん(笑) > アセルスが短く妹弟子を呼んだ。アメリアはそれにうなずく。 >「わかってます。王宮は、おかしい。正面から帰るわけにはいきません」 > シルフィールに対してつかれた嘘。違和感を感じるという王宮の雰囲気。固い表情の父親とクロフェル。グレイが感じた視線。 > 間違いなく、アメリアがセイルーンを発ったあとで何かが起きた。 王宮、えらいこっちゃ☆ですね(←あんたね・・・・・) あのフィルさんも巻き込まれてる用ですし。うう、気になるぅぅぅぅぅ >「あの、手紙はどうします? わたくし、それを届けに行ったんですけど」 >「事が落ち着くまで預かっててくれますか?」 > シルフィールの瞳が、不意にイタズラっぽい光を宿した。 >「リナさんからじゃありませんけど………」 > がっちゃん。 > アメリアが戻したカップがソーサーとぶつかって派手な音をたてた。 >「ください。いますぐ」 > アセルスとグレイが怪訝な表情で、アメリアを見た。 シルフィール。やはり彼女も一筋縄では行かない性格してますね(笑) そしてアメリアの反応♪恋する乙女♪ > (どうかあのヒトに伝えて下さい) > (”遠くても近くても いつも隣にいる”と) おおっ『たんにゃぱ♪』の最上級ですっ!(←どんなや) >『翼持ちて空を舞う姫』って意味の名前の鳥の羽根。白鷺の一種だったっけ。名前の由来なんてあまり知られてないことだし、鳥自体すごくレアだから多分知らずに送ったのかな。たしかエルメキアのごく一部の地域にしか棲んでないはずだよ」 > アメリアはそっと目を伏せて笑った。 私はこれ。ゼルの確信犯だと思ってます。 さりげにきざっぽいですし、彼。素直に言えない変わりに、手を変え品を変えで自分の気持ちをだしてるんじゃないかと。 でも「知らなかった」とあっさりと言いそうな気もひしひしと・・・・・(笑) >「とりあえず、黒装束でも手に入れにいきましょうか」 > 意味がわからず怪訝な顔をするグレイに、王女二人は顔を見合わせて笑いあう。 >「一度忍びこんでみたかったんです。自分の住んでる王宮」 >「滅多にできない体験だよね」 > ぽかんと口を開けたグレイの隣りで、シルフィールがすました顔で言った。 >「なら、夜までこちらで休んでいきますか?」 > > 彼女も、だてにリナたちとつきあっているわけではないようだった。 やはり侮りが足し、シルフィール☆ 黒装束で王宮に忍び込む王族なんか、たしかに滅多に出来ない経験といいますか、まずおらんでしょうし(爆) アルセスさんも、さすがアメリアの兄弟子ですし。 なんかこの3人って、在る意味リナより凄いことしでかしそうです(笑) ユズハがどっかにいっちゃいましたっ!みゅぅぅぅ・・・・ まさか、うちのお嬢のトコに遊びにきてました☆てへっ♪−−−なんつーことは無いでしょうが・・・・・・ ユズハファンは心配ですっ!!どっかで、仲良くオルハと戦ってるといいんですが・・・・・(それもそれだが) いよいよ王宮に乗り込むんですねっ。一体何が起こってるのでしょうか? 謎が謎呼ぶセイルーン王宮。 ユズハがきてたら、一緒にケーキバイキングに連れていこうか。などと思いつつ。 次回、黒装束の3人さん、楽しみにしてます♪(まて、期待するものが違わないか?) |
6345 | うーみゅ(笑) | 桐生あきや URL | 4/15-17:42 |
記事番号6336へのコメント レスつけたらツリーが落ちるかも………な桐生です(オイ) >> パソコンに叛乱を起こされて初期化。メールが全部吹っ飛んで、ちょっぴりブルーな桐生です。 >うわっ☆大変でしたね〜。でも私のバソも調子悪。買ったばかりなのにぃ・・・・ >どうもインストールしたソフトとの相性が悪いみたいですぅ。 >うう、前回の二の舞にならないうちに、パックアップとっとこっと。 うちはどうやらネスケと相性が悪いみたいで……インストールに6回失敗しました(−−; ホント、バックアップは大切です(しみじみ) >>「ああ、あのときか。あのとき私、手加減が下手だったんだよねぇ」 >> しみじみとアセルスが呟いた。うんうんとアメリアがうなずく。 >>「あれは痛かったですねぇ」 >痛い。絶対痛いって、アルセスさん(笑) ちなみにリーデットのほうは、練習台にされているのを見かねたアセルスの師匠が除け技だけを伝授したそうで、彼は骨折その他は免れています(笑) >シルフィール。やはり彼女も一筋縄では行かない性格してますね(笑) >そしてアメリアの反応♪恋する乙女♪ 何気に彼女は食わせ者♪というのが桐生の見解です(笑) というかスレキャラって煮ても焼いても食えないのばっかですな。 >> (どうかあのヒトに伝えて下さい) >> (”遠くても近くても いつも隣にいる”と) > >おおっ『たんにゃぱ♪』の最上級ですっ!(←どんなや) おおっ、そうなのですかっ(笑) 実はこれとある歌なんです。雫石彼方さんが柚葉シリーズのアメリア王宮編にぴったりだと教えてくれました♪ >>『翼持ちて空を舞う姫』 >私はこれ。ゼルの確信犯だと思ってます。 >さりげにきざっぽいですし、彼。素直に言えない変わりに、手を変え品を変えで自分の気持ちをだしてるんじゃないかと。 >でも「知らなかった」とあっさりと言いそうな気もひしひしと・・・・・(笑) 言いそうです、ものすごく(笑) 手紙書くのに、結局何も書かないくせに必ず三日ほどウンウン唸って頭抱えてそうです、彼。 >やはり侮りが足し、シルフィール☆ >黒装束で王宮に忍び込む王族なんか、たしかに滅多に出来ない経験といいますか、まずおらんでしょうし(爆) >アルセスさんも、さすがアメリアの兄弟子ですし。 >なんかこの3人って、在る意味リナより凄いことしでかしそうです(笑) 開き直ると怖いアメリア。けっこうしたたかなシルフィール。何事も即決即行動のアセルス姉さん………うーん、敵に回したくないですねぇ(笑) >ユズハがどっかにいっちゃいましたっ!みゅぅぅぅ・・・・ >まさか、うちのお嬢のトコに遊びにきてました☆てへっ♪−−−なんつーことは無いでしょうが・・・・・・ >ユズハファンは心配ですっ!!どっかで、仲良くオルハと戦ってるといいんですが・・・・・(それもそれだが) >いよいよ王宮に乗り込むんですねっ。一体何が起こってるのでしょうか? >謎が謎呼ぶセイルーン王宮。 >ユズハがきてたら、一緒にケーキバイキングに連れていこうか。などと思いつつ。 うあ、ケーキバイキングなんてそんな。そんなこといったらあの娘は本編ほっといてそっち行っちゃいますがな(笑) というか私も行きます(核爆) 案外グレイさんが見かけてないだけで、のんびり暮らしてたりして(笑) >次回、黒装束の3人さん、楽しみにしてます♪(まて、期待するものが違わないか?) アセルス姉さんは似合いそうです(笑) 次は確実に新ツリーだと思われます。 ではでは♪ |