◆−翼の舞姫(テイク・レボリューション)5−桐生あきや(4/20-22:40)No.6366 ┣負けずに一番乗り(笑)−あごん(4/21-00:49)No.6367 ┃┗オンライン、オンライン(笑)−桐生あきや(4/21-01:41)No.6368 ┣翼の舞姫(テイク・レボリューション)6−桐生あきや(4/23-14:52)No.6377 ┃┣うわああああ!!燃えろ!いい女!−あごん(4/25-00:12)No.6384 ┃┃┗何気に熱血少女なイルニーフェちゃん(笑)−桐生あきや(4/25-21:09)No.6388 ┃┗気づかなかった・・・・(汗)−雫石彼方(4/25-12:52)No.6385 ┃ ┗よっしゃああああっ(笑)−桐生あきや(4/25-21:30)No.6390 ┣翼の舞姫(テイク・レボリューション)7−桐生あきや(4/26-22:49)No.6395 ┃┣ついにユズハ発動だっ!−ゆえ(4/27-08:11)No.6400 ┃┃┗活動限界時間まで後∞秒(おいっ)−桐生あきや(4/29-00:19)No.6407 ┃┣たいみんぐぅ♪(意味不明)−あんでぃ(4/27-17:20)No.6404 ┃┃┗き〜みのこ〜ころまどわすぅ♪(さらに意味不明)−桐生あきや(4/29-00:45)No.6410 ┃┗桐生さん、お恨み申します(笑)−あごん(4/29-00:12)No.6406 ┃ ┗うお、恨まれてしまった(副題:狙ったようにオンライン)−桐生あきや(4/29-00:31)No.6409 ┣翼の舞姫(テイク・レボリューション)8−桐生あきや(4/30-05:36)No.6413 ┃┣お子様ウォーズ。−みてい(4/30-11:16)No.6416 ┃┃┗軍配はどちらに(笑)−桐生あきや(4/30-12:34)No.6419 ┃┗なんだかすごいモノが登場している!!−あんでぃ(4/30-12:03)No.6417 ┃ ┗ふろしき広げすぎです、私(爆)−桐生あきや(4/30-12:13)No.6418 ┣翼の舞姫(テイク・レボリューション)9−桐生あきや(5/4-06:45)No.6433 ┃┣キャンペーンにあっさり引っかかった私(笑)−あんでぃ(5/4-12:22)No.6434 ┃┃┗ただいまサービスで賢者の石がついてまいりまあす(オイ)−桐生あきや(5/6-01:41)No.6439 ┃┣投稿時間が気になりますが(笑)。−あごん(5/5-00:04)No.6435 ┃┃┗一応、夜は明けたかと(笑)。−桐生あきや(5/6-01:49)No.6440 ┃┗↑その原因1です・・・・・・(汗)−ゆえ(5/5-21:53)No.6436 ┃ ┗生活リズムを元に戻そうキャンペーンも合わせて開催しております(笑)−桐生あきや(5/6-01:59)No.6441 ┗翼の舞姫(テイク・レボリューション)10−桐生あきや(5/7-03:04)No.6445 ┣地下帰りvv−あごん(5/7-03:57)No.6446 ┃┗お返事遅れちゃいました(汗)−桐生あきや(5/9-10:37)No.6450 ┗はじめまして♪−ひずみ(5/7-23:28)No.6449 ┗はじめましてです♪−桐生あきや(5/9-10:47)No.6451
6366 | 翼の舞姫(テイク・レボリューション)5 | 桐生あきや URL | 4/20-22:40 |
おかしな話です。普通は起承転結のはずなのに、起転結結結という感じになりそうです(笑) いえ、そんなことはどうでもいいですね。前回までの話は著者別リストのほうに登録しましたので、読み返すのも一興かと。すっかり忘れ去っていたキャラが出てくるかもしれません。いいのかこんなこと言って……(^^; ************************************* その夜、門扉を守る衛兵は近づいてくる人影に表情を険しくした。 まだ夜はそれほど更けていないものの、月がでていないためライティングのない場所はひどく暗い。 やがて、ライティングの光の中に姿を現したのは黒髪のしとやかな女性だった。 衛兵はその顔には見覚えがあった。無条件で王宮内に通すように言われている女性だ。しかし、時間が時間である。 「王宮の門はもう閉めた。明日、出直してきてほしい」 しかし彼女はひるまなかった。 「アメリア王女に頼まれて、火急の用件をフィリオネル殿下にお伝えに参りました。書状はここに」 目の前に差し出された羊皮紙には、その旨とアメリア王女の署名が記されていた。 羊皮紙自体にもセイルーンの紋章が浮き出しにされていて、間違いなく正式の書状である。 アメリア王女が父親の命を受けてセイルーンを外出中であることはこの衛兵も知っていたので、これを見て慌てて女性を通用門から中に入れる。 「ありがとうございます」 微笑まれて、衛兵は少し陶然としてしまった。 「さて、と」 門から完全に遠ざかったところで、シルフィールは書状を懐にしまった。マラードでの調査用にアメリアが持っていた公用の羊皮紙に、これまたアメリアが勝手に署名をした表向きは間違いなく『本物』の書状である。 シルフィールは普通に王宮内を歩いていてもそう怪しまれることのない人物だ。神官の資格を取得するために神殿に赴くし、グレイの助手として参内することもある。そして、アメリアを彼女の知人として頻繁に訪問するため、ある程度は顔が利く。 「アメリアさん、アセルスさん………」 シルフィールは暗い空を見上げた。 彼女は別働隊。もしものときのための伏兵だった。 本隊はいま、空にいる。 *** 翼の舞姫(テイク・レボリューション)第5話 *** 「うちの王宮って結構しっかり警備してたんですね」 「あたりまえじゃない。仮にも大国セイルーンなんだから………」 感心しているアメリアに、呆れた声でアセルスが答えた。 「賊は入るし魔族も入ったことがあるしで、結構いいかげんなんだと思ってました」 「…………賊に入られたばかりで警備がいいかげんな王宮って、もはやダメだと思うな」 「それもそうですね」 もはや何も言わず、アセルスは眼下に広がるセイルーン王宮に目をやった。 あちこちにライティングの明かりが点り、時折その光の輪のなかに見回りの衛兵の影がうつる。 これでもし見つかったりしたら笑い話にもならない。自分の王宮に潜入する王女がいったいどこにいるというのだ。 「どうするの?」 「行くとしたら私の部屋、父さんの部屋、父さんの執務室のどちらかです」 「隔幻話室は?」 「いま行っても無意味だと思います」 「とりあえず、直接フィルおじさまのところに行ったほうがいいかもね」 魔法が使えないアセルスはアメリアにしがみつくような格好で宙に浮いている。以前からそうだったのだが、逢っていない間に覚えたりはしなかったらしい。 「アセルス姉さん。どうして魔法覚えないんです?」 「小難しいことは嫌い。混沌の言語(カオス・ワーズ)だなんて、名前からしてややこしそうな言葉覚えられるわけがないでしょう?」 「旦那さんのほうは?」 「ばっちり使えるよ。だから別に不自由していない」 「………なるほど、補完ってこーいうことを言うんですね」 軽口を叩きあいながら、二人はフィリオネルの私室が見える位置までやってきた。 「………暗いね」 人の気配はない。 「まだ寝るには少し早い時間ですし………執務室の方を覗いてみま―――」 「待って!」 突然アセルスが押し殺した鋭い声を放った。 「いま、あそこ人が通った。小さい子。あの子がユズハじゃないの?」 「!?」 アセルスが指差す方を見ても何も見えない。 「どこです?」 「もう建物の中に入った。白っぽい髪の色をしてた」 「ユズハです」 アメリアは断言した。 あのクリームブロンドは遠目からだと白く見えるだろう。 「私をどこかに降ろして」 「アセルス姉さん?」 「私があの子を追う。アメリアは予定通りフィルおじさまのところに行って。ユズハでも人違いでも、後から追いつく。絶対だ」 逡巡したものの、アメリアは結局アセルスの言葉に従った。 この年上の女性が絶対と口に出したことは、本当に『絶対』だった。 「気をつけてください」 「わかってる。そっちこそ」 うなずいて、アメリアはレグルス盤をアセルスに手渡した。簡単な呪文で起動し双方向で通話ができる二枚一組のマジック・アイテムで、今はもう片方をシルフィールが持っていた。同じ地上にいる者同士が持っていたほうがいいだろう。いざとなったらアメリアは立場を利用して何とでもなる。 「いくら小難しいことが嫌いでも起動呪文ぐらいはだいじょうぶですよね」 「アメリアも言うようになったね」 軽口を叩いて、二人は別れた。 警備の重点は外におかれているようで、王宮の中は人気がなかった。いくらなんでもこれは人がいなさすぎるが、アセルスにとっては多いよりはよほど良い。 「どこいったのかな………」 アセルスはひとり首を傾げると、おもむろにレグルス盤を起動させた。 (シルフィールさん。聞こえる?) (聞こえてます。どうしました?) レグルス盤を口元にあてて囁きながら、アセルスは無人の廊下を歩きだした。 (いまどこに向かっているの?) (言われた通り、アメリアさんの私室です) 当初の打ち合わせでは、シルフィールは人が来るはずのないそこで待機。そこでユズハに逢えればそれでよし。逢えなくともアメリアたちが連絡をいれれば合流する予定だった。 (ユズハらしい子が王宮内を出歩いているんだ。見つけたらすぐに連絡を入れて) (わかりました) 会話はそこでうち切られた。 闇のわだかまる王宮内をいちべつして、アセルスはこき、と首を鳴らした。 「………なんか泥棒とか怪盗が癖になる理由がわかった気がするな」 そう呟いて、アセルスは不意に表情を険しくした。 廊下の角を曲がったところから話し声が聞こえる。何やら押し問答をしているようだ。 会話が聞き取れるところまで注意深く近づいたアセルスは、聞き覚えのある男性の声と初めて聞く幼い声にためらいなく飛び出した。 突然現れたアセルスに、声の主二人がふり返った。 その間をすり抜けるようにして奥に立つ神官衣の男に迫る。 その男の驚愕は一瞬だった。 鋭い先端が空気を切る音。 アセルスは後ろに飛んでそれをかわした。ライティングの光が黒い刀身を浮かび上がらせる。 「ユズハ! おじさまを護りなさい!」 アセルスは相手が空振りの体勢を立て直す前に踏みこむと、相手の右肩に拳を撲ちこんだ。次いで、その右手を離れた短剣が石の床に落ちきるよりも速く、体全体の旋回をのせて左足を男の首筋にたたききこむ。 乾いた音をたてて、床に剣が落下した。 苦痛の声と共に床に倒れこんだ男を冷ややかに見おろして、アセルスは蹴り足を静かに戻した。 「侵入者に対して王宮の人間のフリするのは悪くない考えかもね。パッと見じゃ素人にはわからないし」 床の上で悶絶している男に聞こえているかどうかは怪しかったが、アセルスは続ける。 「でも、ダメだよ。あなた、筋肉の動きと気配が綺麗に制御されているんだもの。普通に話しかけられても多分すぐに気づいたはず。そんな神官いるわけないよね」 アセルスは男の首を折らない程度に踏みつけると、にっこり笑って言った。 「ごめんなさい。私、アメリアほど優しくないんだ」 一方その頃アメリアは、執務室の窓から椅子に座っている父親の姿を発見して、安堵の溜め息をついていた。 慎重に上空から近づいていくと、父親の他にも執務室のなかに複数の人影が確認できる。 クロフェル侯がいるのはいつものことだ。しかし他にも宮廷大臣や他の要職にある者たちの姿もあるのが解せない。 普段ならもうとっくに王宮内から退出している時間のはずだ。 横の壁にはりついて伺うと、皆その表情に緊張の色を浮かべている。 ただごとではない雰囲気に、アメリアは窓から直接合図をするのをためらった。執務室の隣りの窓から別の部屋に入りこむと、夜目に紛れるために着ていた黒い服を脱ぐ。 その下にはマラードでアセルスから借りた服を着ていた。愛用している旅用の巫女服よりも、上着の裾がかなり長くて膝下までスカートのようになっており、蹴り足として使用する左足側には腰の辺りから下まで一気にスリットが入っている。もちろんその下はズボンにブーツである。 扉から回廊にライティングをともしながら出てくると、歩哨に立っていた衛兵が目と口をまん丸く開いてアメリアを凝視した。 アメリアが指先を唇にあてて口止めをすると、無言でかくかくとうなずく。 父親の執務室の扉のノブに指をかけたとき、中から声がした。 「―――早くそこに名前を書いてくれないかしら。いったい何を迷っているの?」 「!?」 アメリアは一気に扉を引き開けた。鍵はかかっていなかった。 部屋の全員の視線がアメリアに集中する。 執務机の正面。部屋の中央に立っていた人物がふりむいて、アメリアの姿を認めるとにっこりと微笑んだ。 「―――こんばんわ。アメリア姫さま。あたしが簒奪者よ」 それは、いつか回廊で出会った女官見習いの少女だった。 |
6367 | 負けずに一番乗り(笑) | あごん E-mail | 4/21-00:49 |
記事番号6366へのコメント こんばんは、そんなワケでまたしても対抗心を刺激された(笑)あごんですv う〜〜みゅ。 緊迫した事態ですね! 金箔した字体ではないので勘違いしないで下さい(しねぇよ)。 とにかく、第一声はこうでした。 アセルス姉さんかっこええええええええええvvv 魔法使わないから、これからずっとこーゆー肉弾戦があるんですね! 私、戦闘シーン大好きなのですよぅぅぅ(><) 血が沸いて肉が踊ってしまうタイプなのですvv 最後のセリフも格好良いですしっ! あああああああ、素敵すぎますvv ヒロインがアメリアならば、ヒーローはアセルスですね! ・・・・・・・・・・。 そりゃゼルに出番は無いはずです(笑)。 ではでは、私も数日とは5〜6日だと思っていたあごんでした(笑)! って、ゆーか。 5〜6でしょう。 だってサザエさんで言ってましたから(爆)! |
6368 | オンライン、オンライン(笑) | 桐生あきや URL | 4/21-01:41 |
記事番号6367へのコメント >こんばんは、そんなワケでまたしても対抗心を刺激された(笑)あごんですv お互い偉いスムーズにレスとレス返しが返ってきてますね(苦笑) パソコンの熱で低温やけどを起こしたお馬鹿な人間桐生です。 >う〜〜みゅ。 >緊迫した事態ですね! 伏線を張るのが下手なので、読んでる人はあの女官見習いの女の子、絶対マークされているんだろうなぁと一人で冷や汗をかいておりました。 >とにかく、第一声はこうでした。 >アセルス姉さんかっこええええええええええvvv >魔法使わないから、これからずっとこーゆー肉弾戦があるんですね! >最後のセリフも格好良いですしっ! あのセリフだけは戦闘シーンを書かないうちからできあがってました(爆) 実は戦闘シーン苦手なのです(汗) 読むのは好きなあたり、オイって感じですが。 ずっと肉弾戦……その前にユズハが燃してしまいそうで怖いです(^^; >ヒロインがアメリアならば、ヒーローはアセルスですね! >・・・・・・・・・・。 >そりゃゼルに出番は無いはずです(笑)。 ああああっゼルっ(笑) 早く帰ってこないとアセルス姉さんにアメリアとられるわよっ(取られんって) どっちにしろ出番をこの姉弟にとられているのは、紛れもない事実ですが(笑) >ではでは、私も数日とは5〜6日だと思っていたあごんでした(笑)! >って、ゆーか。 >5〜6でしょう。 >だってサザエさんで言ってましたから(爆)! おおおう、ここでまさか答えが返ってくるとは思いませんでした(笑) サザエさんでそう言ってるのなら、そうですね(爆)! 数日は5〜6日ですよね、やっぱり。 さすがにこれはカルチャーショックでした。他には『うざったい』は実は多摩地方の方言が一般化したものであるとか、かなりどーでもいいことがこの授業でわかります(笑) ……って、今気がついたのですが、数日を2〜3日と判断する人はもしかして数時間も2〜3時間なのでしょうかね。 ではでは。 追伸:リーデット………彼、暴走してますから(笑) |
6377 | 翼の舞姫(テイク・レボリューション)6 | 桐生あきや URL | 4/23-14:52 |
記事番号6366へのコメント 呆然として声がでなかった。 以前見たときはきっちり結い上げられていた髪が、いまは簡単に結われ、残りがゆるいウエーヴとなって左右の肩に流れている。 濡れたような黒い瞳がきらきらと輝いていた。 周囲を大人たちに囲まれていても何ら怯む様子も見せない。 この輝きをどこかで見たことがあるような気がして、アメリアは首を傾げて、すぐに答えを見つけだした。 リナの目に、似ている――― 挑戦的で、自信に満ちた内面を映して、強く輝く瞳。 呆然としながらも、無意識のうちにアメリアは扉を後ろ手に閉じていた。こんな一幕を外の歩哨に見せるわけにはいかない。 扉を背にして声もないアメリアを見て、少女が意地悪く笑った。 「思ったより来るのが早かったわね。やっぱり、あなたが王宮(ここ)ではいちばんまともな頭をしているみたい」 「あなた、いったい………」 「あたしはイルニーフェ。フィリオネル殿下にはもう言ったけど、三ヶ月前に取り潰しをくらったロード・シージェの腐るほどいる庶子の一人よ。もっとも認知されてないからただの平民だけど」 漁色が過ぎてすさまじいお家騒動を引き起こし、地位剥奪を受けたロードがいたことをアメリアは思い出した。 機先を制するようにイルニーフェが首を傾げる。 「勘違いしないでね。別に取り潰しなんかどうでもいいの。あたしが許せないのはもっと早く取り潰しを行わなかったことよ。だから玉座をもらいにきたの」 「今回の騒ぎを引き起こしたのは、あなたなんですか!?」 「そうよ」 あっさりとそういうと、イルニーフェは首にかけた革紐をひっぱりだして、その先にある玉璽をアメリアに向かって軽くふってみせた。 「あたしがやったのよ。ねえ、アメリア姫さま。あたしに玉座をちょうだい」 唖然としてアメリアは目の前の少女を見た。周りの父親や重臣たちがアメリアと同じ表情をしていないのは、多分同じ事を言われて、もうとっくにその表情をした後なのだろう。 「譲位宣言書に署名をするのは別にあなたでもいいわ。こっちには玉璽があるんだもの。継承者が第一位だろうと第三位だろうと別にかまやしない」 それでは、執務机の上にのっている羊皮紙は譲位宣言書か。 アメリアが何かを言おうとする前に、イルニーフェの漆黒の瞳が苛烈な光を放った。 「言っとくけど、子供だからとか、何考えてるとかなんて聞いたらあたし、あなたのこと見損なうから。自分の年齢だって自分がやってることだって全部承知の上よ」 「あなた、いくつなんですか?」 「十二」 「十二―――!?」 絶句したアメリアを見て、イルニーフェの顔が不愉快そうに歪んだ。 「あなたも年齢でものを見る人間だったのかしら? 年を食っているからって偉いとは限らないでしょ。ロード・シージェとかそこの宮廷大臣とかが良い例よ」 ひどくその言葉は大人びている。 下手な会話はできないと直感した。間違いなくこの少女は頭がいい。迂闊にものを言えば、侮られる。 いまここで侮られたら、最後だ。 「あなたが隔幻話(ヴィジョン)を?」 「そうよ。迂闊に外と連絡をとられては困るもの。幾らなんでも少数で王宮全部を乗っ取れるわけないじゃない」 グレイが言った、上の空気がおかしいというのはこういうことか。王宮の下の機構には何も気取られることなく、上のみが少女の支配下におかれている。 だが、なぜ―――? どうやって父親やクロフェルの動きを牽制しているのだろう。 思い当たる節に、アメリアは表情を厳しくした。 「まさか、お祖父様は人質?」 「あなたはやっぱり頭がいいわ。あなたみたいな人って嫌いじゃないわよ」 「卑怯です」 くすくす笑っていたイルニーフェがスッと表情を改めた。 「こうしないと誰も十二の子供の言い分なんかに耳を傾けてくれるわけないでしょ。手段なんか選ばないわ。どんな方法を使おうと、その後で何をしたのかが全てよ―――あたしは玉座が欲しいのよ!」 気圧されていることをアメリアは自覚した。この少女の言い分と覇気に、間違いなく圧倒されてしまっている。 しかし、これほど怒りをかうような失策をセイルーンは犯しただろうか。 「どうして、セイルーンの国王になりたいんです?」 イルニーフェは小さく肩をすくめた。 「フィリオネル殿下にはもう言ったわ」 「私には言ってません」 黒い瞳がアメリアを睨んだ。 「じゃ、言ってあげる。あなたたちにセイルーンを治める器がないからよ。あたしならもっと上手くやれるわ。それが理由」 「あの布告を出させたのはあなたなんですか?」 「そうよ。ロードの手綱を取るのはあなたたちの仕事でしょう。なのにどうしてこの国のロードに対する制限はあんなにゆるいの。あんなんだからロード・シージェみたいに一般人に人死にが出るまで放っておくのよ!」 そんなこと知らないとアメリアは言いたかったが、言えば間違いなくイルニーフェの激昂と侮蔑をかうだろう。 「あたしの母親は普通の商家の娘だったところを、たまたま領内を行幸していたロードに目を付けられてあたしを産んだのよ。愛妾(めかけ)になれればまだしもマシだったんでしょうけど、単なる行幸の暇つぶしよ。この間のデーモン騒ぎのときにデーモンに襲われて死んだわ。その後あたしは異母姉に引き取られてあのロードの城で暮らしてた。認知されたんじゃなくて、同じ庶子のローゼ姉さまがロードに黙って引き取ってくれたのよ。認知されれば殺されることがわかっていたから!」 イルニーフェは大きく息をついた。 「あなたたちの定期的な監査が形骸化してなけば、すぐにあなたたちにもわかったはずよ。あの領内の異常な税率も、正妻が妾の子を謀殺しまくっていることも、収穫高を偽って国に治める税をかすめ取っていたこともね! 存続に値しない、いますぐロードの地位を剥奪すべきだってわかったはずよ。あなたたちがあと三日早く気づけば、ローゼ姉さまは殺されたりなんかしなかったわ!」 最後の言葉で、すべてが明白だった。 復讐。 小さな手が服の上から玉璽をつかんだ。 「神殿に引き取られてセイルーンに来てみてわかったわ。デーモン騒ぎ以来、国の大事といえば政(まつりごと)じゃなくて人智を越えたものの襲来で、王宮は表面上何事もないのを良いことに国内のことをほったらかして、王家の血の存続ばかりにやっきになっているんだってね。ローゼ姉さまが死んだのは、あなたたちのせいだってことがね! あなたたちにセイルーンを治める資格なんかない。あたしならもっと上手くやれる。少なくとも報告書の裏を読もうとしない馬鹿よりはマシなはずよ。あんなロードがきっとまだ他にもいるわ。ローゼ姉さまみたいに殺されるかもしれない人がね。冗談じゃないわ。だから、あたしが何とかするの。もうあなたたちには期待しない。あたしがやる。 ―――だからあたしに玉座を、ちょうだい」 イルニーフェは言葉を切って、アメリアを真っ正面から見つめた。 返答できなかった。 きっとフィリオネルも重臣たちも返答できなかっただろう。 正当な怒りを抱いた少女がここにいる。そして、この少女は自分の自信通り、きっと上手くやるだろう。 あの布告、そしてこの王宮乗っ取りの手際よさがその証明。 不意に、イルニーフェが意地の悪い笑みを浮かべた。 「ねえ、アメリア姫さま。別にあたし、あなたが結婚しないことをなじっているワケじゃないの。あなたがいつかあたしに言ったことと同じ事を考えただけ。あなた噂通り、誰かを待ってるいるんでしょう? だったら、あたしに王位を譲って、その人のところにお行きなさいな」 アメリアは目の前の少女を凝視した。 「こんなところで、頭の固いジジイどもを相手にしている必要なんかないわ。あたしに面倒くさいことは押しつけて、さっさと好きな人のところに行ったほうが得だと思わない?」 つい最近アメリアがどこかで聞いたようなことをイルニーフェは口にした。 「あなたのお姉さまは帰ってくる気配がない。できるなら王位は継ぎたくないんでしょう? 嫌な物を無理に背負う必要はないわ。欲しがっているあたしがいるのよ。あげてしまう気にならない? フィリオネル殿下は頑固なの。代わりにあなたが署名してくれないかしら?」 イルニーフェは、アメリアが笑いだしたのを見て、眉をつりあげた。 「あなた、何笑ってるの? 馬鹿にしているの?」 「いいえ」 ひっそりと笑いながら、アメリアは首をふる。 耳元で、瑠璃の飾りが微かに音をたてた。 「独りなんですか?」 「?」 アメリアの問いを理解できず、イルニーフェが眉をひそめる。 いっそ優しいとすら形容できる表情で、アメリアはイルニーフェに訊ねなおした。 「あなたは、独りでこの計画を立てたんですか?」 アセルスの尋問はあっけなく終了した。 期待してはいなかったのだが、意外なことに返答があったのだ。 その答えを聞いたアセルスの眉がひそめられる。 「クリストファおじさま。それは本当なんですか?」 男を昏倒させたのち縛りあげ、衛兵を呼んで後を任せると、アセルスはクリストファに向き直った。 「本当に、十二の子どもがこんなことを?」 「信じがたいが本当だ」 アメリアが王宮を発ってから事を起こしたということは、すなわち自分が玉璽をすり替えればリーデットに疑いがかかること、第二王女の性格を把握していて彼女が幼なじみのために公国に向かうことまで計算していたことになる。 そしてあの布告。 万が一簒奪に失敗したとしても、布告は残る。民衆は正直だ。あの布告が間違っていると、何人たりとも言うことはできない。いわばあれは最後の保険だ。 ここまでくると、もはや頭が切れる、まわるという次元ではない。 すさまじい思考回路を持った子供だ。 「すごい子。いいね、妹に欲しいな。でもそれが本当なら―――」 アセルスは男が連れて行かれた回廊の先に視線を注いだ。 「おかしいな」 呟いたそのとき、くいくいと服の裾を引っ張られて、アセルスは視線を落とした。 ユズハが朱橙の瞳でジッと彼女を凝視している。 「りーで?」 「違う違う。私はアセルス。リーデの姉だよ」 「りーで、じゃナイ?」 「似てるけど違うよ」 「………じゃ、あす」 「………ま、なんでもいいけど」 肩をすくめたアセルスに、クリストファが訊ねた。 「アセルス殿下がこちらに来たということは、アメリアも―――」 「一緒です。いまは別行動中ですが。おじさまたちこそ、どうしてこんなところに? アメリアから話を聞く限り、非常に珍しい取り合わせだと思うんですが」 クリストファは苦笑したようだった。 「この子がいると、いささか監視の目をごまかせるものでね。兄上に言われて宮廷内の様子を伺っていたところだよ。ところで何がおかしい?」 アセルスの表情が厳しくなった。 「おそらく、二重に雇われているんじゃないかと」 「どういうことだ?」 「依頼主の情報はああいった裏稼業の人間にとっては重要機密です。信用問題にかかわりますから。腕が良ければ良いほど、そのあたりのモラルは高い。見たところ、一流とはいかないまでもそんなに悪い腕じゃない。聞いた話じゃ、他にも七、八人ほど雇われているという。集団行動ができるくらいの裏稼業の人間が、いくら十二の小娘だといえ、そう簡単に雇い主のことをしゃべるとは思いにくいんです」 クリストファはうなずいた。 「ならば、その子の他に別の人間にも彼らは雇われていて、そっちのほうが優先事項だということだな」 アセルスは頷いた。 「ええ。だからあんなに簡単に玉璽の場所と、その子の現在の居場所を白状したと思うんです。単に命が惜しいだけとは思えない。 ―――そういえば、何を揉めていたんです?」 「兄上の執務室に来るようにと言われてね。兄上の命でうろついているのだから、兄上が私を呼び戻すはずがない」 「その子は執務室にいると言っていましたね」 アセルスはレグルス盤を起動させ、シルフィールにフィリオネルの執務室へと行くよう指示を出した。アメリアの話を聞いた限りでは、黙って行かせたら卒倒されそうな予感がしたので、フィリオネル本人もいることに関しては充分注意を喚起しておく。 「私たちも行きましょう。あっさり私に白状したことから考えて、その子が用済みになった可能性が高い。執務室にはアメリアが行ってるはずだけど………急がないと」 アセルスは中庭に目をやった。枯れかかった薔薇園がライティングの明かりに照らされている。 「もう、薔薇は過ぎたんだね………」 残暑は去り、風は涼しさを増している。 アセルスはユズハとクリストファをふり返った。 「急ぎましょう」 ************************************* 自分で書いててなんですが、どうしてユズハと彼の組み合わせになったのかいまだに謎(^^;)恐らくこのシリーズ最大の謎です(笑) クロフェルさんあたりにしておけばよかったかしら。 |
6384 | うわああああ!!燃えろ!いい女! | あごん E-mail | 4/25-00:12 |
記事番号6377へのコメント こんばんわ〜〜ストーカーとスカートは違うんですね、のあごんですv あんまりレスがしつこいと嫌われるかな、とビクビクしてる今日この頃。 でもっ! あまりにも燃えるこの設定に!! レスせずにはおれぬわぁぁぁっ!! 目指すは天!!(ラオウ!?) なんか無駄に熱いですが(笑)。 イルニーフェちゃんったらvv お家乗っ取りだなんてvv 好きだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!! 乗っ取っておあげなさい!! 私が許す(許すな)!! いえいえ、ホンマに好きなんですよ、こーゆーの。 いいですねぇぇぇぇ(惚)。 私も一回書いてみたいのですが、いかんせんそんな頭脳がありゃしませんので。 ○○○卿とか使ってみたいですぅぅ!! って、ゆーか!使って下さい〜〜〜〜!! ああああああ、続きが気になりますvv 果たしてイルニーフェの野望は阻止できるのか!? 黒幕とは一体!!?? アメリアはどう動くのか!! アセルスは何人を血祭(笑)にするのか!! ユズハはちゃんとご飯を食べさせてもらっているのか!! シルフィールは見せ場が来るのか!! 何より!! リーデに出番は回ってくるのか!! 桐生様も忘れている(かもしれない・笑)ゼルは!! あああああ! お待ちしております!! そろそろパソ子を買おうかどーか検討中のあごんでした!! |
6388 | 何気に熱血少女なイルニーフェちゃん(笑) | 桐生あきや URL | 4/25-21:09 |
記事番号6384へのコメント こんばんわぁ。バイト帰りに王と麒麟が出てくる話の最新刊を買ってほくほく顔の桐生です……ってなんだよ、この挨拶(汗) >こんばんわ〜〜ストーカーとスカートは違うんですね、のあごんですv >あんまりレスがしつこいと嫌われるかな、とビクビクしてる今日この頃。 そんなことないですっっ!! 投稿ってホントにレスが読んでくれている人との接点ですから、ものすごく嬉しいんです(><)………って、レス無精の私がとても言えた台詞ではないですが、ほんと嬉しいです。 >イルニーフェちゃんったらvv >お家乗っ取りだなんてvv >好きだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!! >乗っ取っておあげなさい!! >私が許す(許すな)!! 書いてる生みの親も、ときどき「むちゃくちゃだ、この子………」と呟きたくなりますが、可愛くてしょうがないです(親ばか)。基本路線は、「スレキャラのなかではわりかし普通な女の子v」………どこが普通だ、お家乗っ取りのどこが(笑) >いえいえ、ホンマに好きなんですよ、こーゆーの。 >いいですねぇぇぇぇ(惚)。 >私も一回書いてみたいのですが、いかんせんそんな頭脳がありゃしませんので。 えええっ、あごんさんなら書けますよぅ。 桐生は、書きながらひたすらボロを繕うのに必死です。まだ書き上がってないので(爆) >ああああああ、続きが気になりますvv >果たしてイルニーフェの野望は阻止できるのか!? >黒幕とは一体!!?? >アメリアはどう動くのか!! >アセルスは何人を血祭(笑)にするのか!! >ユズハはちゃんとご飯を食べさせてもらっているのか!! >シルフィールは見せ場が来るのか!! >何より!! >リーデに出番は回ってくるのか!! >桐生様も忘れている(かもしれない・笑)ゼルは!! オリキャラ大暴走な今回の話です(^^; 実は主人公はイルニーフェ………アメリアの影が薄くならないように、何やら苦労しております。ああ、本末転倒………。 シルフィールとリーデは………ああ、彼らも出張りますなあ、ホントに何なんだこの話(苦笑) そろそろ書いている桐生本人にも、ゼルアメ・ガウリナの禁断症状がでかかっております。禁断症状で書きたくなくなる。話が進まなければこの先ゼルが登場するわけがない。ますます禁断症状。という悪循環………。 >そろそろパソ子を買おうかどーか検討中のあごんでした!! パソってデジタルのよーでアナログな機械ですよねぇ(なんこっちゃ) ではでは、生誕祭のほうも、もうすぐセントラルですよねっ。楽しみにしております♪ |
6385 | 気づかなかった・・・・(汗) | 雫石彼方 E-mail | 4/25-12:52 |
記事番号6377へのコメント 平日のこの時間・・・・・ええ、言わずもがなというやつです(笑) というか仕事があらかた片付いちゃって暇になった時とか、こっそり小説書いてる私は 一体どうよ、って感じ・・・・(‐‐;) まあ、それはさておき。 あの子が犯人だったとは、全っ然気づかなかったよ私ι 単純に『ああ、この子は頭のいい子で、将来アメリア付きの侍女になるんだなー』、と しか思わなかったもの〜; ・・・・・考えなさすぎ? それにしても内容がすごいよねー。よくこんな難しいこと考えられるなー、と感心する ことしきり。 私にはとても書けません; ではでは、気になることいっぱいで続きが楽しみだす。 頑張ってねん♪ |
6390 | よっしゃああああっ(笑) | 桐生あきや URL | 4/25-21:30 |
記事番号6385へのコメント わーい、彼方ちゃんだ(><) メールどうもありがとね。 >平日のこの時間・・・・・ええ、言わずもがなというやつです(笑) >というか仕事があらかた片付いちゃって暇になった時とか、こっそり小説書いてる私は >一体どうよ、って感じ・・・・(‐‐;) 内職、内職。いえそれが人としての正しい道でしょう(爆) バイト中に、私もやってるから(核爆) >まあ、それはさておき。 >あの子が犯人だったとは、全っ然気づかなかったよ私ι >単純に『ああ、この子は頭のいい子で、将来アメリア付きの侍女になるんだなー』、と >しか思わなかったもの〜; >・・・・・考えなさすぎ? よしっ。気づかれなかったっ(笑) ひとえに彼方ちゃんが気づくかどうかだったの。だって彼方ちゃん、ホントにとっても勘がいいんですもの(笑) 最初に書いた序章だと絶対気づかれる!と思って、三回くらい書き直しした。最初だとイルニーフェがくすくす笑って本性だしてたから(汗) 書き直したら書き直したで、こんどは何も怪しいところなさすぎて、つくづく伏線張りの下手さ加減を実感したけどね(^^; そういうわけで、考えなさすぎではないですのん♪ >それにしても内容がすごいよねー。よくこんな難しいこと考えられるなー、と感心することしきり。 私も寄せ集めの知識で書いてます(^^; いまごろになってボロボロあらが出てきて、必死で繕ってる。 >ではでは、気になることいっぱいで続きが楽しみだす。 >頑張ってねん♪ ありがとう(><) ホント早くこの話終わらせないと、ゼルがいつまでたってもアメリアに会えないわ(笑) ではでは。まただす。 |
6395 | 翼の舞姫(テイク・レボリューション)7 | 桐生あきや URL | 4/26-22:49 |
記事番号6366へのコメント ―――あなたは独りでこの計画を立てたんですか? *** 翼の舞姫(テイク・レボリューション)第7話 *** アメリアの問いに、イルニーフェは怒りに満ちた表情で答えた。 「どういうこと。あたしが傀儡(かいらい)だって言いたいのかしら?」 王女は静かに首を横にふった。 「いいえ。あなたに共犯者はいないのかと聞いてるんです」 「十二の子どもに?」 イルニーフェは鼻で笑った。 「だれが十二の子どもが玉座をほしがるのを本気にして協力してくれるというの。あたしはだれの力も借りていないわ。そんなことどうだっていいでしょう? 署名してくれないの?」 向けられたアメリアの笑みに、イルニーフェはたじろいだ。 透き通るような切ない微笑。なにもかもわかっていると言いたげなその表情に苛立ちを覚える。まるで自分を引き取ってくれた異母姉のような、その笑い方。 この笑みを自分に向けることを許されるのは、世界でただひとりその異母姉だけなのに。 紡がれる、言葉。 「―――独りじゃ、何もできないんです」 イルニーフェは絶句した。 言葉自体の持つ意味にではない。それが伴っていた、すさまじい実感と重さに反論を封じられる。 その間に、アメリアはイルニーフェの脇をすり抜けて、執務机の譲位宣言書を手に取っていた。 弾かれたようにイルニーフェがふり返る。 周囲の重臣たちから口々に非難の声があがった。 アメリアは黙って父親を見つめた。フィリオネルも娘の目を真っ直ぐに見返して、何も言わなかった。 「イルニーフェさん」 初めて名前を呼ばれて、イルニーフェは驚いた表情でアメリアを見上げた。 「何よ?」 アメリアは再びふわりと笑って、言った。 「この紙にサインして彼のところに行ったら―――」 アメリアの指が、羊皮紙の縁にかかった。 「私はきっと、心から笑えなくなります」 譲位宣言書が真ん中から二つに分けられる。アメリアの指が、さらにそれを細かい切片へと破いていった。 「出ていくときは自分で出ていきますから、心配にはおよびません」 舞い散る紙片に、無言で目を見張っていたイルニーフェの頬が徐々に怒気で紅潮していく。 「そう。ならいいわ! あなたには頼まない。書類なんかいくらでも作り直せるもの。それともあなた、自分のお祖父様の命なんか惜しくないというわけ?」 「そういうわけじゃないです」 「だったら―――」 その時、イルニーフェの背後で執務室の扉が音高く開かれた。 思わずふり返った視線の先に、クリストファ王子と、アメリア王女の庇護下にある異種族の少女の姿があった。 呼びつけたのは自分だ。フィリオネルがダメならクリストファに書かせようと思ったのだが、いまはそんなことはどうでもいい。 「なんなの―――」 声を荒げかけたとき、涼しい風がイルニーフェの首筋をなでていった。 わずかに湿り気を含んだ夜風。草木の匂いが鼻孔をつく。 窓は閉まっていたはずだ―――― 背後をふり返るより早く、中性的な声が降ってきた。 「とりあえず、ハンコは返してもらうね」 革紐のちぎれる音とそれが首筋をすり抜けていく感触。 ふり仰いだ先には、赤茶の髪と琥珀の目をした青年が国璽を手にして立っていた。 「返しなさい!」 「返せって、もとはあなたのじゃないでしょう?」 青年かと思ったが、よく観察すると女性だった。 「これからあたしのものになるわ!」 きっぱりと言い切ったイルニーフェに、国璽をハンコ呼ばわりしたアセルスは一瞬目を丸くして、次に笑い出した。 「アメリア。私、この子好きだなぁ」 「返してったら! エルドラン王がどうなってもいいっていうの!?」 イルニーフェがレグルス盤を取り出した。 重臣たちが息を呑んだ。場に緊張が奔る。 それを打ち破り、次に叫んだのは、王位などまったく関係ないはずのユズハだった。 「りあ、結界!」 「ユズハ!?」 「張って。早ク!」 声の様子が反駁するのを許さなかった。 吹きこむ夜風に、その白金の髪が舞い上がる。 すぐさま言う通りにしたアメリアの呪文が完成した、直後。 開いた窓から火炎球(ファイアー・ボール)の朱い光が部屋の中に射しこんだ。火球は結界に当たって炸裂し、紅蓮の炎が周囲を舐めた。 アメリアとユズハ以外の人間がその顔色を失う。風の結界内の温度が急激に上昇していく。 「ユズハ、消してください!」 その言葉を受けたユズハが無言で炎を凝視した。精霊自体に干渉して炎を吹き散らす。焼け焦げた室内だけがそこには残された。 「なんなのよ!?」 苛立たしげにイルニーフェが叫んだ。 炎が完全に消えたのを確認してからアメリアが結界を解く。この場の全員の注意が火球の飛来した窓へと向けられていた、その瞬間。 出現した気配に、窓に駆け寄っていたアセルスが焦りの表情で背後をふり返った。 判断を誤ったことを彼女は悟った。 窓ではなく、全くその逆。堂々と、正面の扉から。 もはや自分ではどうにもならない、ただ託すことしか――― 「アメリア、その子を護って―――!!」 扉の方を見たイルニーフェの黒い瞳が驚愕に見開かれた。扉が開くと同時に飛びこんできたのは、神官服の上から顔に布を巻きつけて表情を隠した男。 抜き身の剣と少女の間を遮るものは何もなかった。 「くっ―――!」 アメリアが伸ばした手は、間に合わなかった。 肩から斜めに鮮血がしぶき、その体を引き寄せようと差し伸べたアメリアの腕をも斬り裂いていく。 イルニーフェが座りこんだ。泣き出さんばかりに苦痛に歪められた顔を隠すように、その体が床の上にうずくまる。石床の上に敷かれた絨毯がみるみるうちに赤い色を吸いこんだ。 扉の向こうに、また人影が現れた。 「物は運んだ。―――退くぞ」 その低い声に、アメリアの思考が白く染まって―――弾けた。 「許可します、ユズハッッ!!」 朱橙の瞳が強く輝いた。 その手が勢いよくふり抜かれる。 「炎・よ―――!!」 アセルスが男を追うよりも早く、ユズハが数年ぶりにその精霊の力を解放する。 身をひるがえした男の体が一瞬のうちに炎に包まれる。赤でも青でもない白色の炎。 次の瞬間、そこにいたはずの男は一塊りの白い灰と化していた。剣すらもない。鉄は熔解して蒸発しはてていた。 扉の外の覆面の男がそれを見て素早く身をひるがえす。 「待ちなさい!」 今度こそアセルスが男を追って飛び出していく。間をおかずに、廊下にシルフィールの声が響き渡った。 「霊縛符!(ラファス・シード)」 次いで、柔らかく重いものが床に叩きつけられる音。 アセルスの凛とした声が部屋まで届いた。 「捕らえたよ!」 その声に、弾かれたように執務室の時間が動き出す。 一気に騒然とした空気に包まれる部屋のなか、アメリアはイルニーフェの体を起こして仰向けにした。 長い髪が赤黒い艶を放って、べたりとその頬に張りついている。袈裟懸けに切り裂かれた傷は深いが、途中でアメリアの腕が太刀筋を阻んだため最後まで斬られずにすんでいた。代わりに、アメリアの腕の傷も浅くはない。 血が溢れ出す傷口の奥に白い骨が見えて、アメリアは思わず眩暈を起こしそうになった。 「シルフィールさん、来てください! 早く!!」 駆けこんできたシルフィールが、血塗れのイルニーフェを見て短く息を呑む。 服が汚れるのもかまわず血溜まりのなかに膝をつくと、すぐに復活を唱え始めた。 執務室に戻ってきたアセルスがアメリアの腕に止血を施す。そのアメリアはといえば、父親の方をふり返っていた。 「父さん! 箝口令をしいてください!」 この少女を罪には問わせない。 絶対に。 アセルスが声をあげた。 「アメリア! あなたも早く呪文を唱えて。血管が切れてる!―――誰でもいい。魔法医を呼んで、早く!」 急かされて、アメリアは復活を唱えはじめた。同じ呪文を唱えるシルフィールに視線で問うと、難しい表情をする。 アメリアたちのいる場所だけ、周囲の喧噪から取り残されたかのように、静かに呪文の韻律が流れていく。 その傍らでは、フィリオネルとクリストファがほとんど秒単位で指示を出していた。 二人の指示のもと、重臣たちは固く口止めをされて、今夜だけは王宮内に留め置かれた。衛兵隊長たちが駆けつけ、焼け焦げた室内に顔面蒼白になった後で、賊の侵入を告げられ慌てて各所への指示をたずさえて散っていく。エルドラン王の病室と隔幻話室の状態の確認に別の衛兵が飛んでいく。 眠りについていた王宮が叩き起こされていく。 腕の傷が塞がり、血が止まったのを確認したアメリアは、自分のための復活を中止して、シルフィールに唱和するためイルニーフェの傍らに膝をついた。 そこで信じられない言葉を聞いて顔をあげる。 「………もう一度言ってごらんなさい」 フィリオネルに反逆罪は死刑、慈悲あるのならば、どうせ死ぬイルニーフェをいま助ける必要はないと進言していた大臣が、アメリアを見て息を呑んだ。 瑠璃の飾りが激しく音をたてて鳴った。 「もう一度その言葉を口にしてごらんなさい! 今度こそ私はこの子に継承権を譲って王宮(ここ)を出ていってあげますからッッ!!」 「慈悲の意味をもう一度、辞書で引き直すことをお薦めするよ」 大臣は何かを言おうと二、三度口を開きかけたが、結局顔色を失ったまま執務室を出ていった。 クビ。誰が何と言おうとあの大臣は絶対クビにしてやるとアメリアは固く決心する。 ここまで来て、アメリアの肚(はら)も据わった。 どうせいらないと言っても押しつけられるのだ。ならば徹底的にワガママを貫いてやる。 私の王宮に、こんな大臣はいらない。 必要だというのなら、それはそう、いま目の前に倒れている少女やアセルス、リーデットのような人物たちだ。 絶対に必要なのは、そう、隣りに在ると誓ってくれた、あの声、あの目。 「アメリア」 アセルスの声に、イルニーフェの方に視線を戻したアメリアは、少女が薄く目を開いているのを見て驚いた。 「イルニーフェさん」 その唇が微かに動く。 「しゃべらないでください」 そう言ったものの、何かを訴えかける黒い瞳にアメリアは唇に耳元を寄せた。 「………ド……の、……下………」 「………?」 アメリアが聞き返そうとしたとき、魔法医が部屋に入ってきて、イルニーフェは目を閉じて黙ってしまった。 「神殿の治療所に運びます。アメリア様、あなたもですよ!」 魔法医たちに、なかば引っ立てられるようにして立ち上がったアメリアは、アセルスを見た。 傍らにはユズハが立っている。 「あめりあ、ブジ?」 いつか聞いた、しかしその時よりもずっと滑らかなその言葉に、笑ってアメリアはうなずいた。 「お留守番ごくろうさまです」 「ン、留守番してタ。えらい?」 「えらい、えらい」 アセルスがくすくす笑いながらそのクリームブロンドを撫でて、くしゃくしゃにする。 「おじさまたちに事情を説明しておくから」 アメリアはうなずいて、シルフィールと共にその場を離れた。 ************************************* 問題です。現在第7話ですが、手元には第13話までしか完成しておりません。このままいくとどうなるでしょう? ………がんばります、ごめんなさい(汗) |
6400 | ついにユズハ発動だっ! | ゆえ E-mail URL | 4/27-08:11 |
記事番号6395へのコメント こんにちは、ゆえです♪ 事件もかなり深部に進んできましたね〜。 12にしてのあの行動力、イルファーニちゃん、凄いです。 そして、ついにユズハが本領を発揮しました!! 前々からお聞きしていた通り、敵さん跡形もなく灰となって燃えつきました。すごいぞユズハっ!がんがん燃やして行こう♪(これこれ・・・・) アルセスさんも相変わらずかっこいいですぅ♪ あんなえらく大事な国璽を「ハンコ」といっちゃう当たりがまた♪(そこかっ?!) けど、怪我人多数で痛そうです。 血管を切って骨までみえちゃってるアメリア、出血すごかったでしょうねぇ・・・・ 筋まで切ってないようなのでよかったですが。うう、痛そう・・・・・ 事件はまだまだ全貌が見えてこないです。ああっ、どうなるんでしょっ?! 次回ユズハは何を燃やすんでしょうっ(それは違うって) 楽しみにしてます♪ |
6407 | 活動限界時間まで後∞秒(おいっ) | 桐生あきや URL | 4/29-00:19 |
記事番号6400へのコメント 昨日はどうもお世話になりました。桐生です♪ >事件もかなり深部に進んできましたね〜。 そのはずなんですけどね……(苦笑) やっぱり構成を誤ったとしか思えません。ここまで進んで、話がまだ半分ほどしか来てないって、やっぱりおかしいです(滝汗) >そして、ついにユズハが本領を発揮しました!! >前々からお聞きしていた通り、敵さん跡形もなく灰となって燃えつきました。すごいぞユズハっ!がんがん燃やして行こう♪(これこれ・・・・) やっとセフィル嬢からいただいた魔力を発揮することができました。そのせつはどうもお世話になりました♪ 発火対象物を自由にコントロールできますからね。まさに最終兵器です(おいおい) >アルセスさんも相変わらずかっこいいですぅ♪ >あんなえらく大事な国璽を「ハンコ」といっちゃう当たりがまた♪(そこかっ?!) ここらへんがアセルス姉さんの本性ですね。他にも王冠とかも「重い帽子」、王様とかも「難儀な商売」とか………(笑) >けど、怪我人多数で痛そうです。 >血管を切って骨までみえちゃってるアメリア、出血すごかったでしょうねぇ・・・・ >筋まで切ってないようなのでよかったですが。うう、痛そう・・・・・ あの部屋はもう使えません。焦げるわ血塗れだわ。 フィルさんの執務室はきっと別に用意されることでしょう(笑) リザレクションは、ほんと便利です。アメリアって体術主体なせいか、アニメとかでも結構生傷絶えなかったりしてますよね。 >事件はまだまだ全貌が見えてこないです。ああっ、どうなるんでしょっ?! >次回ユズハは何を燃やすんでしょうっ(それは違うって) 「いいですか、ユズハ。私がいいって言わない限り、ものを燃やしちゃダメですよ。特に人」(←オイ・汗) 「どして?」 「謎の人体発火現象って、とってもミステリーじゃないですか。ミステリ好きの人の注目を集めちゃダメなんです」(←わけがわからん) 上記の会話はきっと気のせいです(笑)ダッシュで逃げます。 ではでは。招集日に。 |
6404 | たいみんぐぅ♪(意味不明) | あんでぃ E-mail | 4/27-17:20 |
記事番号6395へのコメント こんにちは♪できもしないのに選択で音楽を取ってしまった愚かな女、あんでぃです(爆) イルフィーネちゃんなんだか昔のリナちゃんを見ているようでなんか好きですv でも、なんか大臣はきらいです(爆) さすがに封建制度(なのでしょうか?セイルーンは)だけあってえらそうです(爆)“聖”王国なんですから、もちょっといい感じの人がいてもいいかと思いますけど・・・・ でも、相変わらずフィルさんもクリストファさんもいい人で(^ ^) ところで、ふと思ったのですがここではアルフレッド生きているのでしょうか?原作では死んでますし(爆弾発言)アニメでは確か生きていたような・・・・ あ、でも登場しないみたいですのでどっちでもいいのかもしれませんね(毒舌・・・) アセルス姉さん(姉さん呼ばわりだし)いい感じですvさばさばしていて一緒にいたら楽しそうで!!しかし、生傷は絶えなさそうですが(笑) よくよく読んでみれば、イルフィーちゃん(訳してしまいました)かなりピンチですし!!死んじゃやだよー!!(°>o) 一体どうなっちゃうのでしょうか!! あああああ、次回を楽しみに待っています!! それでは、あんでぃでした。 |
6410 | き〜みのこ〜ころまどわすぅ♪(さらに意味不明) | 桐生あきや URL | 4/29-00:45 |
記事番号6404へのコメント こんばんわ♪ レスありがとうございます。桐生です。 >こんにちは♪できもしないのに選択で音楽を取ってしまった愚かな女、あんでぃです(爆) うちの弟は、美術も音楽もやりたくなさに、習字を選択した愚か者……。習字のほうが苦痛だと思うのですが、姉的に(笑) >イルフィーネちゃんなんだか昔のリナちゃんを見ているようでなんか好きですv >でも、なんか大臣はきらいです(爆) >さすがに封建制度(なのでしょうか?セイルーンは)だけあってえらそうです(爆)“聖”王国なんですから、もちょっといい感じの人がいてもいいかと思いますけど・・・・ >でも、相変わらずフィルさんもクリストファさんもいい人で(^ ^) ちっちゃい頃のリナって、あんな感じだったんでしょうかね。 最初、セイルーンなんだから、けっこういい感じの国だろうと思って書いていたのですが、なぜかどんどんこうマズイほうに………(オイ) 焦って、一人勝手に頭のなかでできているフォローには、エルドラン国王の代から仕えてきた古参の大臣たちが頭の固い一派なのだろうと。フィルさんサイドには結構いい人多いんじゃなかろうかと………とってつけたような理屈だ(汗) その最たる者がクリストファさん。アニメ版の彼って、原作に輪をかけてイイ人ですからね(笑) >ところで、ふと思ったのですがここではアルフレッド生きているのでしょうか?原作では死んでますし(爆弾発言)アニメでは確か生きていたような・・・・ >あ、でも登場しないみたいですのでどっちでもいいのかもしれませんね(毒舌・・・) アニメ版でも亡くなっておられます(笑) カンヅェルだったかマゼンダに胸貫かれて。生きていたら、まただいぶ違う話になったでしょうね。特にゼルはおちおち旅していられない状況になるわ(笑) >アセルス姉さん(姉さん呼ばわりだし)いい感じですvさばさばしていて一緒にいたら楽しそうで!!しかし、生傷は絶えなさそうですが(笑) いえ、皆さんからそう呼ばれております。私は『姐』さんと呼ぶことが(笑) あんでぃさん、実に鋭いところ突いています(笑) 彼女にひっついていたら、生傷絶えません、おそらく。 >よくよく読んでみれば、イルフィーちゃん(訳してしまいました)かなりピンチですし!!死んじゃやだよー!!(°>o) >一体どうなっちゃうのでしょうか!! >あああああ、次回を楽しみに待っています!! >それでは、あんでぃでした。 ジ・アルフィーみたいですね(笑) ところで、突っ込もうかどうしようか迷ったのですが、イル・ニーフェちゃんです(笑)。他の皆さんもことごとく間違えましたので、これは変な名前をつけた私が悪いですね(^^; ではでは。桐生でした☆ |
6406 | 桐生さん、お恨み申します(笑) | あごん E-mail | 4/29-00:12 |
記事番号6395へのコメント こんばんわ〜〜あごんですv 昨日はお疲れ様でしたvv また遊んでやってほしいですv で、タイトルのことですが(笑)。 今日、実は「生誕祭」の続きを投稿そようと思ってたんですよね。 しかし!! 十二国記買っちゃったんです〜〜! そんでおもいっきり読んでますvv で、気付けばもーこんな時間と(笑)。 もー。続き書けなかったじゃないですか(笑)。 ↑それは桐生さんのせいなのか(爆)? いや、でも面白いですvv まだ魔性の子は読んでないんですよね、私。 読まねば(笑)。 ア、感想言ってないし(核爆)! 舞姫7!! もー最高ですっっ!! なにがって何もかもですよ!! 本当に、続きが気になります〜〜!! イルニーフェちゃん、無事でしょうか? と、ゆーか。 ユズハが結構流暢に喋れるようになったんですね。 父親(ゼル)がいなくても子は育つ(笑)! 私の中のユズハはまだまだ片言ですので。 訂正しないとな〜〜(笑)。 政治改革も話の中に盛り込まれるんですね。 う〜〜〜〜ん、奥が深いです!! 小泉内閣、小泉内閣っと(笑)。 ではでは!続きを楽しみにしてりますvv あごんでしたvv |
6409 | うお、恨まれてしまった(副題:狙ったようにオンライン) | 桐生あきや URL | 4/29-00:31 |
記事番号6406へのコメント ども、何やら計ったようなオンラインでレスする桐生です(笑) >こんばんわ〜〜あごんですv >昨日はお疲れ様でしたvv >また遊んでやってほしいですv こちらこそありがとうございました。 すんごく楽しかったです〜〜vv >で、タイトルのことですが(笑)。 >今日、実は「生誕祭」の続きを投稿そようと思ってたんですよね。 >しかし!! >十二国記買っちゃったんです〜〜! >そんでおもいっきり読んでますvv >で、気付けばもーこんな時間と(笑)。 >もー。続き書けなかったじゃないですか(笑)。 >↑それは桐生さんのせいなのか(爆)? >いや、でも面白いですvv >まだ魔性の子は読んでないんですよね、私。 >読まねば(笑)。 ああああっ、何てことでしょうっ。 泰麒のかあいらしさがっ、「生誕祭」の続きを妨げるなんてっ(違う) いかん、泰麒くんのせいにしたら、全国のファンから殺されてしまいます。 今回は、各国の王と麒麟が勢揃いで、さぞかしファンサイトは盛り上がっているんでしょうねー。 ディトとアリーンもかわゆいのに。 >ア、感想言ってないし(核爆)! >舞姫7!! >もー最高ですっっ!! >なにがって何もかもですよ!! >本当に、続きが気になります〜〜!! >ユズハが結構流暢に喋れるようになったんですね。 >父親(ゼル)がいなくても子は育つ(笑)! >私の中のユズハはまだまだ片言ですので。 >訂正しないとな〜〜(笑)。 あんまり流暢にするとユズハらしさが薄れるので、加減がむずかしいところです。いつまでも片言のほうがらしいんですけどね、それはそれで、ユズハに話の焦点をあてたときに何も語ってくれなくなるんで(笑) >政治改革も話の中に盛り込まれるんですね。 >う〜〜〜〜ん、奥が深いです!! >小泉内閣、小泉内閣っと(笑)。 うあ、昨日のネタが(笑) 果たして誰が外相まきこさんになるのかっ!?(違う!) アメリアがゼルの帰りを待っている間に、やってるかもなと思われることはおいおい書いていこうかと思っています。 >ではでは!続きを楽しみにしてりますvv >あごんでしたvv がんばりますv もう実でも何でもないんですが、もう一人の主役はイルニーフェ嬢ですので(笑) あごんさんのほうこそ、十二国記から復活したら、そのうちでいいので「生誕祭」をぜひ(笑) 楽しみにしております。 ではでは。 追伸:例の絵のほう、縮小したんですが、どうしますか? 差し替えます? |
6413 | 翼の舞姫(テイク・レボリューション)8 | 桐生あきや URL | 4/30-05:36 |
記事番号6366へのコメント ある意味、前半の終わり、後半の始まりの回です。 今回の最大の目玉はやはりアセルス姐さんの爆弾発言ですね。この姉弟はホントあなどれません(笑) ************************************* 「―――それで、あたしはいつ死刑になるのかしら?」 意識が戻って開口一番、少女が発したセリフはそれだった。 つくづく可愛げのない子供である。 アメリアとシルフィール、そしてアセルスは互いに顔を見合わせる。ユズハだけが首を傾げていた。 人払いされていて、他の魔法医の姿はない。そもそも王宮専用の神殿の治療所はずっと寝ていられるほど広くない。容態が落ち着いたら王宮内の客室に移すのが普通だった。 「どうしてそう思うんです?」 アメリアの問いに、イルニーフェはまだ血の気の戻らない顔のままアメリアを睨みつけた。 「馬鹿にしないで。どんな国だって反逆罪は死刑よ。あたしはわかってて国璽を盗ったんだから」 「命が惜しくなかったんですか?」 「惜しかったわよ」 イルニーフェは言った。言った後で、わずかに顔を歪める。 「惜しかったけど、惜しくなかった。姉さまはもうどこにもいないもの。あたしは国とあたしが赦せなかっただけ。それにあたしなら、王になれると思ったから。あたしは自分が王に値すると思ったからやったのよ」 くすくすと笑う声にイルニーフェが視線を巡らせると、アセルスが笑いをこらえきれずに小さく肩を揺らしていた。 「やっぱりいいなぁ。ますます気に入った」 「あなたは死刑にはなりません」 シルフィールがそう言うと、イルニーフェは眉をつり上げた。 「馬鹿にしないでってば。どうしてそんなことがありえるの。あたしは国に刃を向けたのよ。いつのまに法が改正されたっていうのかしら」 シルフィールが控えめに微笑んだ。 「あなたは、国璽を護ってアメリア王女を庇った女官の鏡―――ということになっています」 イルニーフェは沈黙した。 与えられた情報が真実にたどり着いたとき、少女は思わず起きあがろうとして体に力をこめる。 「ふざけないで! どうして罪人を庇うのよ!? あたしが子どもだから!?」 「騒がないで。傷に障ります」 「ちゃんと説明しなさいよ!」 アメリアは困ったようにイルニーフェを見降ろした。そのアメリアの顔も貧血気味でいささか頬が青白い。 「あなたを罰する理由が見つからなかったからです」 「どこが? あなたちゃんと目と耳はついてるでしょう? あの場にいてあなた何を見聞きしていたの?」 「だって事実セイルーンの怠慢ですから。過激な直訴に来られてもしかたないじゃないですか」 アメリアは静かな口調で続けた。 「それに、あなたを死なせたくなかったんです」 イルニーフェが怒鳴り声を発する前に、ベッドによじ登ったユズハがその口をぺたんと塞ぐ。 「あのまま王になってたら、あなた間違いなく死んでましたよ」 「?」 イルニーフェが怪訝な顔をする。 アメリアはユズハの手を持ち上げて、少女の口を解放してやった。 同じセリフを再び繰り返す。 「独りじゃ何もできないんですよ。この世界は」 この王宮という権力機構の檻のなかでは。 口を開きかけたイルニーフェはアメリアの表情を見て、言葉をなくす。 「あなたはきっと、王宮にいることを嫌がってる私なんかよりもずっと良い国王になるでしょう。だから謀殺されるのは嫌だったんです。侮られて殺されるなんて絶対に嫌だと思ったんです。惜しいと思ったんです。それが理由です」 「どうして王になったら殺されるのよ」 アメリアとアセルスが苦笑する。 どう足掻いても、人は年齢のくびきからは逃れられない。 まだこの少女は幼い。どれほど賢くて、どれほど希有な存在であっても。 「色々騒がしい国だって知ってるでしょう? 重臣たちが十二の少女の言うことに従うはずがありません。あなたはそれを見越して、わざわざ彼らを集めて、その前で譲位宣言書に署名させようとしたんでしょうけど、きっと、あなたはすぐに謀殺されて、傀儡の王がこのセイルーンに立ったでしょう。哀しいことですけど、ここはそういうところです」 そういうところではないようにする努力はいま自分がしているところだ。 アメリアは肩をすくめてイルニーフェの黒い瞳を覗きこんだ。 「それにあなた、私の知ってる人に目がそっくりなんです。簡単に言っちゃえば、ここにいるみんな、あなたのことが気に入ったんですよ。誰だって自分が好意を持った人を死なせたくありません。ただ、それだけです。まだ理由が要りますか? なんならもっとひねり出しますけど」 イルニーフェはしばらくの間、無言だった。 ぽつん、と言葉が落とされる。 「………出ていって」 「イルニーフェさん」 「いますぐここから出ていって」 自由にならない腕で布団を引き上げると、イルニーフェは頭からそれをかぶった。 「出ていってよ!」 シルフィールが軽く溜め息をついて、真っ先にその言葉に従った。 アセルス、ユズハと続いて、最後にアメリアが出ていこうとしたとき、布団の中からくぐもったイルニーフェの声がした。 「………あなたの寝室のベッドの下に剣が隠してあるわ。やつらが持っていったのはすり替えられた偽物よ」 アメリアはベッドの方をふり返った。 「………ありがとうございます」 足音が遠ざかっていくのを聞きながら、イルニーフェは声を殺して泣き出した。 アセルスやシルフィールと別れ、ユズハと自室に戻ったアメリアはドアに鍵をかけ、さっそく自分のベッドの下を覗きこんだ。 夜が明けようとしているが、王宮が眠りにつく気配はない。しばらく騒がしい日が続くだろう。 旅の強行軍でたまった疲労と腕の傷の失血に、半ば吐き気すら覚えながら、アメリアはベッドの下の布包みを引っぱり出した。 さっさと確認してから寝るつもりだった。いくらなんでも限界だ。 ユズハが好奇心に満ちた表情でアメリアの手元を覗きこんだ。 布の中から現れたのは四ふりの剣。短剣。小剣。普通の剣。そして刀身の細いレイピア。 どれも柄には目録の記述通り、赤い宝玉が留められている。奇妙なことに、それぞれの剣の大きさに関係なく宝玉の大きさはどれも一緒だった。 ユズハが後ずさる。 「ユズハ?」 「これ、ぎゅってしてあル」 「ぎゅ?」 アメリアは首を傾げて剣を眺めたが、特にかわったところは見つからない。 再び布で包み直そうとしたそのとき、アメリアの手は不意に止まった。 「これ、まさか………」 アメリアの顔色は変わっていた。 「ユズハ」 アメリアの声に、ベッドの上に座りこんだユズハが顔をあげた。 彼女に関して重臣たちには、炎を操れるのはハーフエルフゆえの特殊能力だとか何とか、向こうの無知を良いことに訳の分からない理屈を強引に押し通してしまった。 どっちにしろ火炎球からあの場にいたものを救ったのはユズハの一言だから、強い反論がでるはずもない。 「何、りあ」 「ごめんなさい。おみやげ忘れました」 神妙な顔で謝るアメリアに、ユズハがむう、と唸った。 「代わりに、外に行きませんか?」 「そと?」 「ずっと王宮からでていないでしょう? 外に行ってきませんか?」 アメリアは包み直した剣を再びベッドの下に押しこむと、そのすぐ脇に立った。ベッドの上で立ち上がったユズハの視線が、かろうじてアメリアと同じ高さになる。 炎の色をした瞳を覗きこんで、アメリアは言った。 「いいえ、そうじゃないですね。私がユズハに行ってきてほしいんです。お願いを聞いてくれませんか?」 「ン、わかった。聞く。ナニ?」 「そう簡単に即答するもんじゃありませんよ」 苦笑して、アメリアはベッドに腰掛けるとユズハに後ろを向かせて座らせた。 その伸びたフリを装っているクリームブロンドをくくってやりながら、王宮と連絡がつかなかった間の様子を訪ねる。 「何してたんですか?」 「普通にしてタ。ずっと、書庫で、本読んでタ」 「外出禁止令に疑問くらいもってください」 「だって、りあ、おとなしくしててっテ、言っタ」 「………むぅ」 「マネっこ」 冷静な指摘に、こらえきれずアメリアは吹き出した。 しばらく笑い転げてから、涙を拭って座り直し、クリームブロンドをくくり直す。 長さの足りない横の髪がさらさらと落ちていった。 「また伸びてきちゃいましたね」 アメリアは微かに微笑んで、告げた。 「ユズハに届けものをしてほしいんです」 「じゃ、私は帰るから」 そう言いながらアセルスが、イルニーフェに割り当てられた客室に顔を出した。 部屋の中にいたアメリアが驚いてふり返る。ユズハも驚いたかどうかはわからないが、とにかくふり向いた。 仏頂面で二人に応対していたイルニーフェも、アセルスのほうを見た。 あの夜から数日が経過して、王宮内もどうにか落ち着きを取り戻しつつある。マラードに留め置かれていた文官たちもセイルーンへの帰路についた。あと二、三日もすれば帰ってくるだろう。 そんななかでのアセルスの帰国宣言だった。 「リーデがさっさと帰ってきて顛末を報告しろってうるさいから。もう、私がいなくても平気でしょう?」 「ええ、まあ―――」 アメリアはイタズラっぽく片眉をあげてアセルスを見た。 「理由はそれだけじゃあないですよね?」 「まあね」 アセルスは苦笑した。 滞在中、アセルスはセイルーン王宮内ということを考慮して、男装に変わりはなくともきちんとした礼服を身につけていたのだが、そうしたら王宮内の女官や侍女たちの間で、ちょっとした騒ぎになったのである。 侍女や女官というものは、スラリとした青年貴族も、男装の麗人のどちらも得てして大好きなものだ。 「おもしろいよねぇ。三十に足突っこんじゃった、男の恰好した女の人のどこがカッコいいんだと思う?」 しみじみ呟かれて、アメリアは困ったように首を傾げた。 「だって、普通にカッコいいですよ。とてもそんな歳には見えませんし」 「わからないなぁ。それに何気に動きづらいんだよね、きちんとした男装って」 「それはそうですよ。男性でも女性でも、きちんとした恰好で体術使う人がいるわけないじゃないですか」 アセルスは唇の端を持ち上げて妹弟子を見た。 「でもいざとなったら、どんな恰好でも蹴っ飛ばすでしょう?」 「ええ、それはもちろん。たとえドレスでも」 「……………………あなたたちって変な王族よ」 ぼそっとイルニーフェが呟いた。 アセルスは仏頂面のイルニーフェを見て、軽く笑った。 「よければまた会いましょう。私、あなたのことを気に入っているんだ。ものすごく」 「あたしは特に会いたくないわ」 とりつくしまもなくイルニーフェが言うと、アセルスはさらに笑った。 「それは残念。ねえ、あなたは玉座がほしいの?」 十二の少女は、ますます苦い顔になった。 「別に玉座がほしいんじゃないわ。目的の結果、たまたまほしかったのが国王の座だっただけよ。通過点だわ。最終目的じゃない」 「なるほどね」 アセルスの琥珀の目が不意にイタズラっぽい光を宿した。 「ところで、うちの弟の嫁にでもこない? ちなみに私とほぼ同じ顔で、一応、第一公位継承者なんだけど」 イルニーフェが目をむいた。 「アセルス姉さん、いったい何言い出すんです」 呆れてアメリアが言うと、アセルスはけらけら笑いだした。 「だってイルニーフェみたいな子、妹にほしいよ。かなり本気で―――まあ、それはそれとして、それじゃあ、またね」 「そのうち遊びに来てくださいね。体なまってるんで、手合わせしてください」 「今度は足の骨?」 「勘弁してくださいよう」 笑いながら、アセルスは手をふって部屋から出ていった。 それを見送って、アメリアはイルニーフェに向き直った。 「それで、どうして私を呼びだしたんです?」 「聞きたいことがあったからよ」 アセルスのタチの悪い冗談から立ち直ると、イルニーフェは表情を険しくした。 「どうして剣は賊に盗まれたままという公式発表になってるのよ。あたしはあなたに剣の隠し場所を教えたはずよ」 「だれもあの剣の真価を知らないからです。あれを狙った犯人以外、だれも―――」 「あなたは知ってるという口調ね」 「ええ。知っています。だから国庫に戻すわけにはいきません」 「どういうこと?」 それには答えず、アメリアは別のことを口にした。 「明日、あなたをシルフィールさんのお家のほうに預かってもらいますから。表向きは罪に問われないとはいえ、大臣たちは仏頂面ですし。まあ口も手も出させませんけど」 「質問に答えてないわ!」 「早く体を治してください」 アメリアはにっこり笑って答えをはぐらかした。 「そのときに、教えますから」 それから十日。イルニーフェの体調が回復するのを待って、アメリアはシルフィールとイルニーフェの二人を呼び出した。 表向きはシルフィールがアメリアを訊ねてきたことになっている。 それはよくあることで、だれも何の疑問も抱かなかった。わずかに首を傾げた者もいたが、それは彼女の他にもう一人、小柄な人物が一緒だったからだ。 「はい、アメリアさん」 部屋に通されたシルフィールがさっそく預かっていた手紙をアメリアに渡す。 「ありがとうございます」 アメリアの表情が華のように綻ぶのを見た少女―――イルニーフェがしばし無言で目を見張った。 手紙を机の引き出しに丁寧にしまうと、アメリアはテーブルへは戻らず、私室のさらに奥のドアへと二人を手招いた。 戸惑った二人の表情をよそに、書斎を抜けるとさらにその奥の小さな書庫へとアメリアは歩いていく。 「埃っぽいわ」 書庫に案内された途端に、イルニーフェが鼻の頭にしわを寄せた。 「ごめんなさい。あまり掃除してないんです」 アメリアが笑って謝った。 「ユズハ。人は?」 「いナイ」 換気用の窓から外を見おろしていたユズハが、カーテンを閉めて戻ってきた。 「アメリアさん?」 シルフィールの呼びかけにアメリアは苦笑した。 「ごめんなさい。ちょっとだけ秘密のお話がしたくて。ここの入り口は私の書斎のドアだけですから」 イルニーフェが人目を避ける目的でかぶっていたフードを後ろに落とした。相変わらずきっちりまとめられた黒髪に、きつい黒の瞳。 「どうしてあたしが呼ばれるの、なんて愚問はしないわ。あの剣は何?」 アメリアは書棚の奥から白い布包みを取り出した。 包みを抱えて、アメリアは二人に相対する。 濃紺の瞳が薄暗い書庫のなか、暗いかげりを帯びて二人を見つめた。 「あなたたちにお願いがあります。この剣をあるところに届けてほしいんです」 アメリアの持つ雰囲気に一瞬気圧されたイルニーフェが反撃に転じた。もともと頭を抑えつけられることが彼女は大嫌いだった。 「あたしの質問に答える方が先よ。あたし、自慢じゃないけど気はあまり長い方じゃないの。どうして国庫に戻せないの。どうして持ち出す必要があるの。この剣はいったい何だから、どうしてそういうことになるの」 「庫に戻しても、また賊が入るだけです。持ち出すのは、これを必要としている人がいるから。その人なら、きちんとこれを管理してくれるからです」 不意にアメリアの瞳が光を放った。 「こう言い直すこともできます。これをセイルーンに置いておくにはあまりに危険すぎるんです」 「だから、この剣は何なの!?」 イルニーフェがいらいらした口調で叫んだ。 アメリアが布包みをとく。全部はほどかず柄部分のみをむき出しにすると、そこに留められた赤い宝玉を二人に見せた。 ちょうど、親指と人差し指で作った丸ほどの大きさ。柄飾りにしてはいささか大きすぎるそれを見せて、アメリアはシルフィールを呼んだ。 「見覚えありませんか、シルフィールさん」 問われて、シルフィールは面食らった。 しばらくその赤い玉を見つめて考えこむ。突然、幾つかの光景がシルフィールの脳裏に閃くようによみがえり、彼女はわずかに目を見張った。 「そんな………だってまさか」 「おそらくは、そうです」 アメリアは小さくうなずいた。 ないがしろにされて怒りに頬を紅潮させているイルニーフェに向き直り、アメリアは静かに告げた。 「剣はただの剣です。問題は柄の玉。あなたも名前くらいは知っていると思います。 ―――これが、賢者の石です」 |
6416 | お子様ウォーズ。 | みてい | 4/30-11:16 |
記事番号6413へのコメント みていでございますっ! > ある意味、前半の終わり、後半の始まりの回です。 おおっ(ぱちぱちぱち) > 今回の最大の目玉はやはりアセルス姐さんの爆弾発言ですね。この姉弟はホントあなどれません(笑) 爆弾発言?嫁にでも…??? > つくづく可愛げのない子供である。 たしかに可愛げがない。 > イルニーフェが怒鳴り声を発する前に、ベッドによじ登ったユズハがその口をぺたんと塞ぐ。 かわええのぉユズハちゃんは…v >「それにあなた、私の知ってる人に目がそっくりなんです。簡単に言っちゃえば、ここにいるみんな、あなたのことが気に入ったんですよ。誰だって自分が好意を持った人を死なせたくありません。ただ、それだけです。まだ理由が要りますか? なんならもっとひねり出しますけど」 誰に似てるんでしょう。…彼か? アメリア様、理由を100でもひねり出しそうです、本気で。 >「ユズハ?」 >「これ、ぎゅってしてあル」 >「ぎゅ?」 ぎゅ? >「外出禁止令に疑問くらいもってください」 >「だって、りあ、おとなしくしててっテ、言っタ」 うあ、素直。 >「………むぅ」 ちょっと反論できませんv >「マネっこ」 きっと無表情にアメリアの口を指でむぎゅっと差して(刺して?)言ったんでしょうっ! >「ユズハに届けものをしてほしいんです」 はじめてのおつかい…? > 滞在中、アセルスはセイルーン王宮内ということを考慮して、男装に変わりはなくともきちんとした礼服を身につけていたのだが、そうしたら王宮内の女官や侍女たちの間で、ちょっとした騒ぎになったのである。 > 侍女や女官というものは、スラリとした青年貴族も、男装の麗人のどちらも得てして大好きなものだ。 >「おもしろいよねぇ。三十に足突っこんじゃった、男の恰好した女の人のどこがカッコいいんだと思う?」 宝○状態…??? > しみじみ呟かれて、アメリアは困ったように首を傾げた。 >「だって、普通にカッコいいですよ。とてもそんな歳には見えませんし」 >「わからないなぁ。それに何気に動きづらいんだよね、きちんとした男装って」 きちんとした男装?それは詰襟とか…?? >「それはそうですよ。男性でも女性でも、きちんとした恰好で体術使う人がいるわけないじゃないですか」 >「でもいざとなったら、どんな恰好でも蹴っ飛ばすでしょう?」 >「ええ、それはもちろん。たとえドレスでも」 をう(汗)らしいって言ったらすっごくらしいんですが。 >「……………………あなたたちって変な王族よ」 個性的と言いましょうっ! >「よければまた会いましょう。私、あなたのことを気に入っているんだ。ものすごく」 >「あたしは特に会いたくないわ」 >「それは残念。ねえ、あなたは玉座がほしいの?」 > 十二の少女は、ますます苦い顔になった。 >「別に玉座がほしいんじゃないわ。目的の結果、たまたまほしかったのが国王の座だっただけよ。通過点だわ。最終目的じゃない」 >「なるほどね」 >「ところで、うちの弟の嫁にでもこない? ちなみに私とほぼ同じ顔で、一応、第一公位継承者なんだけど」 ひええええええっ!爆弾発言だぁっ! >「だから、この剣は何なの!?」 >「剣はただの剣です。問題は柄の玉。あなたも名前くらいは知っていると思います。 > ―――これが、賢者の石です」 賢者の石っ! ものすっごいものが出てきましたねっ! イルニーフェとユズハが一緒に「はじめてのおつかい」…?(←まだ言ってる) 桐生さんは王宮内部のこととかしっかり設定されててすごいですね。 みていはちょっとそこまで組み立てられません。ややこしさの権化という気がしてしまって…。 それにしてもアセルスさん、カッコいいぞっ!!! 最後に一叫びしたところで去ります。 続き楽しみにしております。 ではでは、みていでございました。 |
6419 | 軍配はどちらに(笑) | 桐生あきや URL | 4/30-12:34 |
記事番号6416へのコメント >みていでございますっ! 桐生でございます。徹夜明けですが、眠る前にみていさんになんとしてもレス返しをしなければ寝られませんっ。あと食糧買いに行かないと飢え死にですっ(核爆) >>「マネっこ」 >きっと無表情にアメリアの口を指でむぎゅっと差して(刺して?)言ったんでしょうっ! 情景が容易に想像できますね(^^; そのうち、人を指さしてはいけません、とかいわれるようになる気がひしひしとします(笑) >>「ユズハに届けものをしてほしいんです」 >はじめてのおつかい…? はじめてのおつかいです(笑) ビデオにでもなればタイトルは『ユズハちゃん、はじめておつかい』とでもなるのでしょうか(悪ノリすな) >>「おもしろいよねぇ。三十に足突っこんじゃった、男の恰好した女の人のどこがカッコいいんだと思う?」 >宝○状態…??? ヅカっすねぇ(笑) さぞかしモテていることでしょう。目をきらきらさせながら「お姉さま(はぁと)」とか呼ばれていたり(笑) >>「わからないなぁ。それに何気に動きづらいんだよね、きちんとした男装って」 >きちんとした男装?それは詰襟とか…?? 詰襟です。何やら堅そうな布地の、丈の短い上着にズボン。ちなみに色は白、もしくはオペラピンクだと勝手に決めております(爆) これではホントに宝○だわ………。 >>「ところで、うちの弟の嫁にでもこない? ちなみに私とほぼ同じ顔で、一応、第一公位継承者なんだけど」 >ひええええええっ!爆弾発言だぁっ! このお姐さまは、もはやこのセリフに尽きます。何を考えているんでしょうね(^^; よっぽどリーデがモテないのか……いや、そんなはずはあるまい。歳の差は12………うーん微妙。 >>「剣はただの剣です。問題は柄の玉。あなたも名前くらいは知っていると思います。 >> ―――これが、賢者の石です」 >賢者の石っ! >ものすっごいものが出てきましたねっ! >イルニーフェとユズハが一緒に「はじめてのおつかい」…?(←まだ言ってる) ものすっごいものを出してしまいました(^^; いまから設定抱きかかえて倒れないか心配です。 このお話の副タイトルは「はじめてのおつかい」で決定ということで(笑) >桐生さんは王宮内部のこととかしっかり設定されててすごいですね。 >みていはちょっとそこまで組み立てられません。ややこしさの権化という気がしてしまって…。 >それにしてもアセルスさん、カッコいいぞっ!!! 桐生もややこしくてダメです。そう見えているだけです(笑) みていさんのほうが、きっちり書けていると思います。「Messenger」での、アメリアの心の動きとか、読んでいてひたすら感心してました(><) >最後に一叫びしたところで去ります。 >続き楽しみにしております。 >ではでは、みていでございました。 一叫び、しかと心に刻みました(笑) みていさんの「PresentBox」も続き楽しみにしております。 ではでは。桐生でした。 |
6417 | なんだかすごいモノが登場している!! | あんでぃ E-mail | 4/30-12:03 |
記事番号6413へのコメント どうも!!昨夜はお世話になりました!!もしかして徹夜ですか(汗)?のあんでぃです。 このお話読んでぶっ飛びました。剣の正体なんだろ?とか思いながら読んでいたら賢者の石・・・・魔血玉(デモン・ブラッド)が登場!? そう言われてみれば四振りの剣だし、なるほどぉ・・・と思うのですが(^ ^; そうすると届け先は、リナちゃんのところでしょうか?ちゃんと使い道も管理の仕方もわかっている人ですし。 ユズハちゃんとイルニーフェちゃん(今度は間違えないぞ!!)はいいコンビになりそうです(笑) ユズハちゃんとリナちゃんは相性が合ったみたいですから、まずこの二人に問題はないかと。イルちゃんが馴染めばですが(笑) アセルス姐さんの爆弾発言。私賛成です(笑) あの二人がコンビを組めばあの公国はもう健在でしょう(笑) というか、本当にこの切りかた気になりますよう!! 早く続きが見たいです!のあんでぃでした。 |
6418 | ふろしき広げすぎです、私(爆) | 桐生あきや URL | 4/30-12:13 |
記事番号6417へのコメント >どうも!!昨夜はお世話になりました!!もしかして徹夜ですか(汗)?のあんでぃです。 はい、もしかしなくても徹夜の桐生です。いえ、今夜にそなえて寝ますが(何か間違っとる) 昨日はとっても楽しかったです(><) >このお話読んでぶっ飛びました。剣の正体なんだろ?とか思いながら読んでいたら賢者の石・・・・魔血玉(デモン・ブラッド)が登場!? ですよねぇ。普通はぶっ飛びます(笑)。なぜここに賢者の石!?って感じですから。本当はこの賢者の石ネタはこれの一コ後のお話でする予定だったのですが、合流させてしまいました。だから話の構成がおかしいのですが。 >そう言われてみれば四振りの剣だし、なるほどぉ・・・と思うのですが(^ ^; >そうすると届け先は、リナちゃんのところでしょうか?ちゃんと使い道も管理の仕方もわかっている人ですし。 ご明察の通りです。あんでぃさんの文章と同じ意味合いのことをアメリアが次で言っております。 >ユズハちゃんとイルニーフェちゃん(今度は間違えないぞ!!)はいいコンビになりそうです(笑) >ユズハちゃんとリナちゃんは相性が合ったみたいですから、まずこの二人に問題はないかと。イルちゃんが馴染めばですが(笑) これもまた鋭いです。馴染みますかねぇ、この娘は(笑) >アセルス姐さんの爆弾発言。私賛成です(笑) >あの二人がコンビを組めばあの公国はもう健在でしょう(笑) 怖いコンビです。非常に(笑) そうなると、もはや属国でいる必要もないでしょう。分離独立しても立派に立ちゆきます(笑) >というか、本当にこの切りかた気になりますよう!! >早く続きが見たいです!のあんでぃでした。 極悪な切り方してすいません。これが王道というものかと(ニヤリ) やっと続きの方が書く軌道に乗ってきましたので、ペースが速くなるといいのですが。 ではでは。オンライン、な桐生でした。 |
6433 | 翼の舞姫(テイク・レボリューション)9 | 桐生あきや URL | 5/4-06:45 |
記事番号6366へのコメント 皆さんおはようございます(笑)キャラクター出演比率異常キャンペーンの開催です(キャンペーン化すな・死) ええい、断言してしまえ。この舞姫前半の主人公はアメリアで、後半の主人公はイルニーフェです(爆) ************************************* 時間はあの夜の翌日まで遡る。 イルニーフェに部屋を追い出されて、私室に戻ったアメリアが次に目を覚ますと、もう夕方に近かった。 病人扱いする女官を追い出してドアに鍵をかけ、アメリアはベッドの下の包みを再び引っぱり出す。 そして慎重に、指先を赤い宝玉に触れさせて、呪文を紡いだ。 「―――ライティング」 予測して目を閉じていたにも関わらず、まぶたの裏を皓い光が灼いた。 持続時間と明るさは反比例するはずなのに、なかなか消えようとしないそれに、まぶしさを物ともしないユズハがシーツをかぶせて枕ごとその上にダイビングする。何やら人魂とじゃれあっているネコのようだった。もっともそんなネコがいるのかは疑問だが。 ライティングの皓い光にかき消されるなか、一瞬だけ宝玉がその色を変えたのをアメリアは見て取った。 淡い、蒼。 次々に試した他の三つも、それぞれの色に輝いた。白。黒。そして、赤。 アメリアはその色を知っていた。 その輝きに彩られて力をふるっていた女性を知っていた。 完璧に同じ物だとは言えないだろう。あれは魔族から直接、丁重に譲り受けたものだ。同じはずがない。 けれど、間違いなくこれは。 この柄飾りの宝玉は――――― 「賢者の石………」 リナから事の顛末は聞いた。 どうして魔血玉(デモンブラッド)を身につけていないのか。魔血玉のその正体も。 新しい仲間の死を語るリナの口から聞いた。 ―――アメリアは剣を隠匿することを心に決めた。 *** 翼の舞姫(テイク・レボリューション)第9話 *** 「………賢者の石?」 薄暗い書庫のなか、イルニーフェが眉をはねあげた。 「馬鹿言わないで。なんでそんな伝説上の物がこんなところにあるのよ」 「あったんですからしかたありません」 あっさり言われて、イルニーフェのほうが返す言葉に困る。 「―――でも、もしそれが本当に賢者の石なら、即刻庫に戻して厳重に保管すべきだわ。なんだってわざわざそれを一個人のもとに届けるっていうの。あなた実はやっぱり頭悪いの?」 「保管を誤って、セイルーンが壊滅するのはいただけません。それに、届け先の人は以前にも賢者の石を持ってた人ですから。ね、シルフィールさん」 イルニーフェが今度は眉間にしわを寄せた。 「………賢者の石を持っていた人間がいるなんて話、急に言われても信じられるものじゃないわ。あなたたち、いったいどんな世界に住んでいたというの」 「魔王と五人の腹心に目をつけられて、異界の魔王と火竜王の神族に喧嘩を売った世界です」 「…………」 言葉の意味をはかりかねた少女が沈黙する。普通の一般人の反応としては至極妥当なものだろう。 「これをリナさんのところに届けてほしいんです」 アメリアがシルフィールに布に包まれた剣を渡した。 うっすらと埃のつもった書棚の本を眺めて、不意に苦く笑う。 「私が行きたいんですけど、私は王宮を出られませんから。だからお願いするしかないんです。頼めませんか?」 「いえ、そんなことはありません。むしろ頼んでくれて嬉しいです」 包みをしっかり抱えこんだシルフィールが、晴れやかに笑った。 イルニーフェがフードをかぶり直した。 「話は終わり?」 「あなたもシルフィールさんと一緒に行ってください。剣の正体を教える約束のためだけに呼んだんじゃありません」 「どうしてあたしがそんなことをしなくちゃいけないの?」 「このあと、行くあてもないでしょう?」 挑発したアメリアの言葉に、きらきらと漆黒の瞳が輝いた。 「そうよ、行くところなんかないわ。でも心配されるにはおよばない。あたしの行くあてがあろうがなかろうが、あなたには関係ないわ」 「世の中ギブアンドテイクなんだそうです。これは、剣の届け先のリナさんの言葉なんですけど」 アメリアがぴっと指先を立てて、告げた。 「行く代わりに、うちに養子にきませんか? 継承権ついてきますけど」 「ア、アメリアさんッ!?」 シルフィールが包みを取り落としそうになった。イルニーフェは絶句している。 「まあそれは冗談としても」 「本当に冗談なの?」 「まあ一応。だって幾ら何でもできるわけないじゃないですか。それでつまり、私、非常にあなたを高くかってるんです。あなたの能力、気質ともに正当に評価してるつもりなんですけど。あと三年も経てば、あなたも十五です。年齢なんか問題じゃなくなります」 「あなた、何考えてるの………」 イルニーフェが呆然と呟いた。そうした表情は、年相応の子供に見える。 「あたしは、玉座を簒奪しようとしたのよ。それを阻んでおいて、どうしてまた近づけるの?」 「やり方がまずかったからです」 そう言ったあと、我に返った表情でアメリアは額に手を当てた。 「やり方って………もう。なんか自分も王族って感じで、いまちょっとヤな気分です………」 他の三人には何ともコメントしようがない。 「何と言えばいいのかわかりませんけど………とにかく私、あなたが気に入ったんです。そうとしか言えません。そして、多分あなたのほうが私なんかより良い王になるでしょう。できればあなたに玉座をあげたい。その方が私も楽ですし。でも、それはできるだけ波風の立たない方法でやるべきだと思いませんか?」 考えこんでいたイルニーフェが顔をあげてアメリアを直視した。 「それは何? あたしの簒奪にこれからあなたが協力するということなの?」 「言い方を変えればそんな感じですかね」 「あなたそれでも王女なの!? 上に立つ者にはそれにともなった義務と責任があるでしょう!?」 逆に簒奪を狙う少女のほうから怒られて、アメリアは笑い出した。たしかにアセルスが妹にしたがるだけのことはある。 面白い、と言っては失礼にあたるだろうが、逸材なのは間違いなかった。 「私にそれが欠けているから、あなたが玉座を目指したんじゃないですか」 「違うわよ!」 癇癪を起こしたようにイルニーフェが床を踏みならした。 「それが欠けているのは王に仕える大臣たちのほうよ! あなたはここではいちばんまともだわ! たしかにあたしよりは王に向いていないかもしれないけど!」 「あんまり暴れると貧血を起こしますよ。なくした血が多すぎましたから」 「余計なお世話よ」 案の定、立ちくらみを起こして床にしゃがみこんだイルニーフェが、それでも減らず口をたたく。 「どこにも行くあてがないんなら、いっそ私のところに来ませんかって言ってるだけなんですけど」 アメリアはユズハを手招いた。とことこと近づいてきたその頭に手をおいて、ふわりと唇に笑みを刷く。 「簒奪うんぬんはいまは横に置いといて、あなたがセイルーンに対して訴えたことは正しいんです。私はそのお礼がしたいだけ。訴え出たことであなたが居場所をなくすのは嫌です。養子の件は今はともかく、私のところに、来ませんか? ユズハのように」 しゃがみこんでいた少女は、不意に顔をあげると苦虫を噛み潰したような表情で答えた。 「御礼される筋合いはないわ。あたしはやりたくてやっただけ。セイルーンのためじゃなくて、自分のためにやったのよ………けれど、くれるっていうんならもらっておくわ。 ―――それで? それと剣を届けるのと何の関係があるの?」 「一応、事の発端はあなたでしょう? 自分で始末をつけたいんじゃありませんか?」 イルニーフェの目がまん丸くなった。次いで、思わず吹き出す。 その後で、真剣な表情でアメリアを見つめた。 「どうして、あなたみたいな人がいたのに、姉さまは死んだのかしら」 アメリアには答えられなかった。イルニーフェも答えを求めて言ったわけではなかった。 あきらめたようにイルニーフェは溜め息をついた。 「わかったわ。いいわよ。あたしの身柄、とりあえずあなたに預けるわ」 アメリアはうなずいた。 「ありがとうございます。イルニーフェさん」 「呼び捨てでけっこうよ、アメリア王女。ところで、これだけはひとつ言わせてもらうけど―――」 「何です?」 「あたしをそこのマイペースな尖り耳と一緒にしないでちょうだい」 頭痛をこらえるような表情で少女が言うと、指摘された耳をぴこぴこ上下に動かして、指を差されたユズハがきょとんと首を傾げた。 「馬に乗れますか?」 シルフィールの問いに、イルニーフェは罰が悪そうな表情で首をふった。 「馬は好きだけど乗れないわ。ごめんなさい」 「気にすることはありません。さすがにユズハちゃんとイルニーフェさん、一度に二人も一緒に相乗りはできませんからね。行けるところまでは馬車で行きましょう」 その言葉にイルニーフェは顔をしかめて、その頭髪と同じ色のローブに身を包んだ少女を見おろした。その尖った耳を隠す目的でか、同色の帽子も一緒にかぶっている。 なんでわざわざ旅をするにあたってローブに着替えるのか、理解に苦しむ。もっと動きやすい服装があるだろうに。 「なんだってこの子どもも一緒に連れていかなくちゃいけないのかしら」 ユズハが無表情にイルニーフェに指をつきつけた。 「コドモ」 「あたしは少なくともあなたよりは年上よ」 睨みあう二人をなだめるように、シルフィールが間に割ってはいる。 「ユズハちゃんは気配に聡いですから」 それを言われるとイルニーフェも黙るしかない。あの執務室での一件で、ユズハが平凡なハーフエルフでないことはわかっている。 あのとき、床が近づく視界の端で、この少女が自分を斬った刺客を一瞬で白い灰となさしめたのをとらえた。混沌の言語すら操ることなく。 剣は賊に奪われたまま、というのがセイルーンの発表。正確には国璽など盗まれていないことになっているのだから、王宮中枢部はともかく表向きはイルニーフェが事を起こす前と何も変わっていない。 モノが賢者の石である以上、手に入れた者はすぐに偽物と感づくだろう。そしてセイルーンにも剣が戻っていないことを怪しんで、血眼になって探すだろう。 道中、危険をともなう可能性は充分にあった。ユズハを同伴させたのは、アメリアなりに旅程を心配してのことだろう。 アメリアはシルフィールにまずは宝石を加工する工房に向かうように指示を出した。そこで柄の賢者の石を偽物とすり替え、剣はセイルーンに戻し、取り出した魔血玉だけをリナのもとに届ける――― 「宝石工房? まさか王室御用達じゃないでしょうね」 行き先の指示を出されたとき、イルニーフェがうろんな表情でアメリアにそう問いただすと、セイルーンの第二王女はにっこり笑って答えた。 「違います。私の知り合いの方の工房です。あえて言うなら私個人の御用達ですけど」 いたずらっぽく笑うその顔の横で、銀細工の耳飾りが微かに揺れて音をたてていた。 曲線と花びらを描く繊細なかごのなかに、瑠璃の玉。公的な行事のときも外すことはないと伝え聞く、その瑠璃の飾り。 「そういえば、どうして剣をすり替えたりしたんです?」 代わりにとばかりに、そう問うてきたアメリアに、イルニーフェは苦い表情で言った。 「あたしだって馬鹿じゃないもの。十二の子どもに素直に雇われる裏稼業の人間がいったい何人いると思ってるの。二重に雇われていることぐらい最初っから知っていたわ。奴らがあたしに言ったんだもの。国璽を盗ってくるときに、ついでに剣を盗ってきてほしい、自分たちはそれを報酬の一部とするってね。これで奴らが何か別の目的で動いていることに気づかなかったらただの馬鹿よ。だからさっさとすり替えておいたの」 「すり替えた剣はいったいどこから?」 「何人かの衛兵の人たちに眠り(スリーピング)をかけて、ちょっと借りたり、城下に行ったときに、貯めていた給金で短剣を買ったりしたわ」 アメリアが感心したように言った。 「本当に頭がよくまわりますねぇ」 「あたし、昔から近所でも賢いことで有名だったの」 臆面もなくぬけぬけとイルニーフェが言うと、アメリアは笑ってうなずいた。 「期待していますから」 それはこの旅にか、それとも彼女が約してくれた遠い未来でのことにか、それともその両方か。 イルニーフェはそれを問う機会を逸した。 この旅が終わったら、聞いてみようと思う。 もうすでに残暑は駆け去り、葉が鮮やかな黄や紅に色づき始め、空は一段と高くなってその色を薄くしている。 少し離れたところではシルフィールがセイルーンを出る乗合馬車に料金を支払っていた。一本の三つ編みにまとめた黒髪を揺らして、イルニーフェは空を見上げる。 「悪くないかもね………」 アメリアを気に入り始めていることに、彼女は気がついていた。 |
6434 | キャンペーンにあっさり引っかかった私(笑) | あんでぃ E-mail | 5/4-12:22 |
記事番号6433へのコメント こんにちは♪買い物へ行こうとして足止めくらっている(笑)あんでぃです。 キャンペーンを見てうきうきワクワクです(笑) イルちゃんが主人公にまで出世した事にも感動しております。 魔血玉、デモン・ブラッドの色が白、黒、蒼、赤に変わったという時、リナちゃんの増幅の呪文、(四界の王の〜ってヤツです)が使えるわっ!ってな感じで感動していました(笑) この石は持ってるとドキドキしてしょうがないでしょうね(汗)少なくとも私は怖くて持っていられません(小心者) その点シルフィールやイルちゃんはやっぱり根性据わってます(> <)見習わねば・・・・・ なにげにやっぱりイルちゃんとユズハ嬢は仲良くできなそうな勢いですね(汗) ユズハちゃんはきっとイルちゃんの事気に入っていると思うのですが・・・・ イルちゃんとリナちゃんが会ったときに二人がどんな反応をするのかも楽しみです(笑)でも、なにげにリナちゃん達が登場するのはまだ先ですね(汗) よくわからんレスをしてしまいました(汗) とにかく続きを楽しみにしています! それでは、未だに買い物に行けなさそうな(汗)あんでぃでした!! |
6439 | ただいまサービスで賢者の石がついてまいりまあす(オイ) | 桐生あきや URL | 5/6-01:41 |
記事番号6434へのコメント ども。連日お世話になりっぱなしの桐生です。 >こんにちは♪買い物へ行こうとして足止めくらっている(笑)あんでぃです。 >キャンペーンを見てうきうきワクワクです(笑) >イルちゃんが主人公にまで出世した事にも感動しております。 をう、足を止めさせてしまいましたか。私は買い物から帰ってきたら、あんでぃさんのレスがついておりました。なのにどうしてこんなの返事が遅いかな、私(死) >魔血玉、デモン・ブラッドの色が白、黒、蒼、赤に変わったという時、リナちゃんの増幅の呪文、(四界の王の〜ってヤツです)が使えるわっ!ってな感じで感動していました(笑) レゾが1巻でもってた石炭の親戚は、きっと黒いやつだったんでしょう(オイ) 実は、最終巻でようやくリナのタリスマンが4色だということに気がついた私……(爆)。あれは仰天しました。 >この石は持ってるとドキドキしてしょうがないでしょうね(汗)少なくとも私は怖くて持っていられません(小心者) >その点シルフィールやイルちゃんはやっぱり根性据わってます(> <)見習わねば・・・・・ ですね。私もどきどきします。やっぱりスレイヤーズ世界にでてくるキャラって強心臓……。 >なにげにやっぱりイルちゃんとユズハ嬢は仲良くできなそうな勢いですね(汗) >ユズハちゃんはきっとイルちゃんの事気に入っていると思うのですが・・・・ >イルちゃんとリナちゃんが会ったときに二人がどんな反応をするのかも楽しみです(笑)でも、なにげにリナちゃん達が登場するのはまだ先ですね(汗) 気に入ってはいると思います。ただ、ユズハの場合気に入り度合いがある程度だとおちょくりにかかりますからねぇ(笑)。オルハやゼルのように。 リナ……ほんとに登場は先です(^^; シルフィール以外はオリキャラで進んでいく話♪(死) >よくわからんレスをしてしまいました(汗) >とにかく続きを楽しみにしています! >それでは、未だに買い物に行けなさそうな(汗)あんでぃでした!! こちらこそわけのわからんレス返しをしておりますが(汗) なるべく早めにお買い物にいけることを祈っております。ええと……ゆえさんとこのティルさまあたりにでも(爆) ではでは。桐生でした。 |
6435 | 投稿時間が気になりますが(笑)。 | あごん E-mail | 5/5-00:04 |
記事番号6433へのコメント こんばんわvvあごんですvv あのぉ、この投稿時間が気になってしょーがないんですが(笑)。 まさか、これまで地下に(笑)? とぉとぉ旅が始まってしまいましたね! ユズハ初めてのお使い! 副題は「シルフィール心労と頭痛の日々」で決定ですね(笑)! ユズハの食欲(食速)にイルニーフェちゃんとシルはついていけるんでしょうか? 「ちょっと!ユズハ!それは私の分だと言っているでしょう!!」 「りな、言っテた。早いモノ勝ちだって」 「ユズハさん・・・。焦らなくても食事は逃げませんから、ね?」 「逃げない、ケド冷める」 「!聞いているの!?それは私が食べるのよ!」 「喋るヒマあったら食べるガいいぞ」 そして頭を抱えるシルフィール(笑)。 なんてっ素敵な会話が繰り広げられているんでしょうねぇ(笑)。 ではではvあごんでした! ってゆーか、これ感想か? と疑問を抱きつつ(笑)! 続きをお待ちしておりますvv |
6440 | 一応、夜は明けたかと(笑)。 | 桐生あきや URL | 5/6-01:49 |
記事番号6435へのコメント ども、連日連日すいません。桐生です。 >あのぉ、この投稿時間が気になってしょーがないんですが(笑)。 >まさか、これまで地下に(笑)? いえ、わりかし早めに地上に帰還しました(あれは早めか?・汗) 一応、夜は明けたわん、と投稿を………わはははは(乾いた笑い) 今日はさらに早く帰還して参りました♪ >とぉとぉ旅が始まってしまいましたね! >ユズハ初めてのお使い! >副題は「シルフィール心労と頭痛の日々」で決定ですね(笑)! 舞姫のサブタイトルもはや色々(笑) 『ユズハ初めてのお使い』、『シルフィール心労と頭痛の日々』、『キャラクター出演比率異常キャンペーン開催』(←副題か?) >ユズハの食欲(食速)にイルニーフェちゃんとシルはついていけるんでしょうか? >「ちょっと!ユズハ!それは私の分だと言っているでしょう!!」 >「りな、言っテた。早いモノ勝ちだって」 >「ユズハさん・・・。焦らなくても食事は逃げませんから、ね?」 >「逃げない、ケド冷める」 >「!聞いているの!?それは私が食べるのよ!」 >「喋るヒマあったら食べるガいいぞ」 この↑のセリフにノックアウトです。「食べるガいいぞ」………ユズハ、あなた最高だわ。天然に偉そうなあたりがまた(笑) イルニーフェも無駄に偉そうですが(笑) ……ああ、ホントにシルフィール苦労しそうです。 >ではではvあごんでした! >ってゆーか、これ感想か? 感想です(笑) 15まで書き進めたんで、ちょっぴりペースが速くなったりするんじゃないかと……ひそかに思っている桐生でした。 ではでは。 |
6436 | ↑その原因1です・・・・・・(汗) | ゆえ E-mail URL | 5/5-21:53 |
記事番号6433へのコメント 毎日の出勤、お互いお疲れさまです(笑) ゆえです♪ このままじゃ、本格的にやばいと、ひしひしと思いつつも。 今日も来ました、やって来た。ゆ〜えはいましぃぃぃぃたぁぁぁ♪今日も、居る〜♪(古すぎて、誰もしらないって) はっ。話がそれまして。 騒動も一旦は収まったに見えましたが、おぅ。賢者の石<魔血玉>ですか〜〜。 そんなめちゃくちゃ大変なものを、正体不明で直し混んじゃってた、セイルーンの底力を感じました(違う) イルニーフェとユズハ。なんか、ゼルVSユズハを彷彿とするのは私の勘違いでしょうか? でも、その二人の間に入るのが、アメリアではなくて、今度はシルフィールと言うのがまた・・・・・vv 彼女はいろいろと気苦労の耐えない旅になりそうですねぇ(笑) それでは、私は例の「アメリア連呼しまくり」のあの曲を聞きつつ、再び地下に潜ります(笑) |
6441 | 生活リズムを元に戻そうキャンペーンも合わせて開催しております(笑) | 桐生あきや URL | 5/6-01:59 |
記事番号6436へのコメント 地下帰りの桐生です(笑) >毎日の出勤、お互いお疲れさまです(笑) ゆえです♪ いえいえ。ゆえさんのほうこそお疲れさまです♪ 毎日、遅くまで無駄話におつきあいくださってありがとうございます(><) >このままじゃ、本格的にやばいと、ひしひしと思いつつも。 >今日も来ました、やって来た。ゆ〜えはいましぃぃぃぃたぁぁぁ♪今日も、居る〜♪(古すぎて、誰もしらないって) うっ……わかりませんです(汗)。すいません。代わりにアラレちゃんの歌をっ(やめい) >騒動も一旦は収まったに見えましたが、おぅ。賢者の石<魔血玉>ですか〜〜。 >そんなめちゃくちゃ大変なものを、正体不明で直しこんじゃってた、セイルーンの底力を感じました(違う) なんでこんなものがセイルーンにあったんでしょうねぇ(オイ)。灯台もと暗しとはまさにこのことで(さらに待て) 本当はリナの増幅器問題は、ゼルサイドに絡める話でしたが、ゼルを圧迫し始めたんでアメリアサイドになりました。……結局どう転んでも出番は減るんか、ゼル………。 >イルニーフェとユズハ。なんか、ゼルVSユズハを彷彿とするのは私の勘違いでしょうか? >でも、その二人の間に入るのが、アメリアではなくて、今度はシルフィールと言うのがまた・・・・・vv >彼女はいろいろと気苦労の耐えない旅になりそうですねぇ(笑) はい。皆々様からシルフィールはご心配を頂いてます(笑) このあと、イルニーフェは実に色んな呼び名でユズハを呼びますので。絶対名前を呼ばない(笑) >それでは、私は例の「アメリア連呼しまくり」のあの曲を聞きつつ、再び地下に潜ります(笑) ぶっ(撃沈) あれ聞きながら地下作業ですかっ。……あれ聞くたびに私は撃沈されそうです(笑) もはやどう転んでも「アメリア」としか聞こえない(^^; ……なんか聞きたくなってきたな(爆) ではでは。またですv |
6445 | 翼の舞姫(テイク・レボリューション)10 | 桐生あきや URL | 5/7-03:04 |
記事番号6366へのコメント 再登場の方がお二人。 とりあえず著者別リストの『瑠璃飾り』を読まれることをお薦めいたします……って、これじゃあ誰がでてくるかバレバレか(笑) ************************************* その工房のある村までは十日ほどの行程だった。 とりあえずその工房までは何事もなく無事にたどりつき、シルフィールたちはアメリアからの親書を、工房の主だという老人に渡した。 親書を読み終えた老人が無言で眉を動かした。 「お願いします」 シルフィールの言葉に、羊皮紙から顔をあげた老人はにやりと笑った。 「何と書いてあるか知りたいかね」 「あたしたちがここに来た理由でしょ」 とりつくしまもなくイルニーフェが言うと、親書の宛先―――グードと名乗る老人はさらに笑った。 「そりゃそうじゃがな。王宮の物を知り合いに横流ししたいのでよろしくたのむと書いてあるわい」 大笑いするグードにイルニーフェがこめかみに指をあてて唸った。 「あたし、身柄を預けた自分の判断が正しかったのか、いまいち自信が持てなくなってきたわ………」 「正式に依頼を受けたことだしの。さっさと取りかかったほうが無難じゃろう。その剣とやらはどこかね」 「これです」 シルフィールが布をほどいてグードに差し出した。どれも、何の変哲もない剣に宝玉を留め付けたような細工で、宝物庫にあまりふさわしい剣だとは言えない。 それを手にとって検分しながら、何気ない口調でグードが三人に訊ねる。 「ところでお前さんがたはアメリア嬢ちゃんの近侍か何かかね」 「わたくしは友人です。こちらのユズハちゃんはアメリアさんに引き取られて王宮で暮らしているハーフエルフです」 「………あたしはいまその提案を見当している最中よ」 「あくまでも私的にわしのところに来るか。そういうあたりがわしがアメリア姫様を好きな理由でな。わしが役人が嫌いなことをちゃーんと知っておる」 一通り宝玉が留められている部分を見終わったグードは、テーブルから立ち上がると、片足をひきずりながら奥の棚のところまで歩いていき、そして何やら工具の入った箱を持ってまた戻ってきた。 「はずすだけならすぐにできる」 宝玉を留めている爪をひとつひとつ丁寧にはずすその作業を、三人はしばらく見守っていたが、不意にグードがシルフィールに訊ねた。 「アメリア嬢ちゃんの友達と言ったね。別嬪さん」 「はあ………」 別嬪呼ばわりされて、曖昧な表情でシルフィールがうなずく。 「嬢ちゃんはまだわしのやった耳飾りを持っとるのかね。銀と瑠璃の細工のやつじゃが」 「持ってル」 答えたのはシルフィールではなく、先ほどから興味津々でグードの手つきを見守っていたユズハだった。 「持ってル。ずっとしてル」 爪をはずす手を休めて、グードが顔をあげてユズハを見た。 「嬢ちゃんはアメリア姫様と暮らしておるのか?」 「ン、一緒いる」 「そんなに大事にしてくれとるのか」 「それどころか公式行事にも見合いにもつけていくって、もっぱらの噂よ」 イルニーフェが呆れた口調で口をはさんだ。 グードがおもしろそうに頷く。 「ほう、ほう。それはまたどうして」 「理由がわかっていればこんなに噂になって、詮索されるもんですか」 イルニーフェの容赦のない物言いに、グードは質問する相手を変えた。 「ユズハ嬢ちゃんは知っとるのかね」 訊ねられたユズハが上目遣いにグードを見た。 「もう片方を、待っテるの」 それを聞いたイルニーフェが舌打ちの音をたてた。 「いちばん女官たちが喜びそうな展開になってきたわ」 「イルニーフェさん?」 シルフィールに呼ばれて、イルニーフェは苦い表情で応える。 「あたしは女官見習いだったもの。ずっと王宮と神殿内の噂話は耳にしてきているの。真実が謎のままだから、見える範囲の事実にどれだけ女官たちが想像をたくましくしているか厭と言うほど知ってるわ。色々な憶測が飛び交っているけれど、いちばん人気があるのはアメリア王女が王宮を出て身分を隠していたときに知り合った男性との片恋に殉じて、その人からもらった瑠璃の飾りを形見に一生を独身で過ごす気でいるってやつかしら」 聞いた途端に肩をふるわせて笑いをこらえはじめたシルフィールに、イルニーフェはその小さな肩を軽くすくめた。 「ほんと、女官ってこういう話が好きよね。他にも色々あるわよ。相手が死んでいるパターンとか生きているパターンとか、実は隣国の王子だとか実はエルフだとか実は有名な神官の家系の人間だとか」 「あまり笑わせんでくれんか。手元が狂う」 「あら、ごめんなさい」 イルニーフェはすました顔でグードに謝った。 不意に奥のドアが開いて、息子だという男性がお茶のカップを三人の前に置いて、またどこかに行ってしまった。 さっそくユズハとイルニーフェがそのお茶に手を伸ばす。 ふうふういいながらイルニーフェがお茶を冷ましていると、ひとつ目の魔血玉を台座から取りはずしたグードが妙にしみじみと呟いた。 「そうか、待っとるのか。わしゃ絶対駆け落ちすると思って楽しみにしておったんじゃが………」 シルフィールが、危うく香茶を吹き出しそうになった。 「おじいさん、アメリア王女の相手を知ってるの?」 ひたすらむせているシルフィールの隣りで、イルニーフェが唖然としてグードに訊ねた。 飄々とグードが答える。 「知っとるも何も。数年前のアメリア姫様の出奔を手伝ったのはこのわしじゃ」 「………それで『私個人の御用達』なわけね。よおくわかったわ………」 「訊かんのか?」 「あいにくと」 イルニーフェは泰然とした面もちで冷ました香茶をすすった。 「あたしは他人様の恋愛なんかどうでもいいの。そういうことは王宮の女官たちに話してあげることね。きっとものすごく喜ばれるわ」 「子どもじゃの」 少女はにっこり笑って言い返した。 「ええ、子どもなの。前途有望な青少年に、害毒を吹きこんじゃだめよ。おじいさん」 「年寄りならではの楽しみなんじゃがの」 「こっちにしてあげたら? 刷りこみやすいと思うわ」 話をふられたユズハがきょとんとイルニーフェを見返した。 「その嬢ちゃんはわしが知ってることなぞ、とっくに知ってそうじゃよ。 ―――さて、とりあえず二つははずれたぞ。とりあえずこれを持って宿に帰るとよかろう。夕方までには残りも全部取りはずせるだろうよ」 凝った肩をまわしながらグードがそう言って、まわすついでに首を傾げた。 「しかし何の石じゃ、これは? 長年色んな石を見てきたが、こんな妙な石は初めて見るぞ」 シルフィールとイルニーフェは、無言で視線を交わしあった。 その夜、シルフィールがグードから受け取った賢者の石をひとつひとつ布で包んで皮の袋に入れていると、寝る支度をしたイルニーフェがベッドに腰掛けながら、訊ねてきた。 「シルフィール?」 「何です?」 「訊いてもいいかしら」 革袋の口をしっかりと閉じると、シルフィールはそれをイルニーフェの首にペンダントのようにかけた。 「何を訊きたいんです?」 何事もなかったかのようにシルフィールは訊ね返したが、突然革ひもをかけられたイルニーフェの方は驚いて別のことを口にした。 「どうしてあたしに持たせるの」 「これはあなたの旅でもありますから。まさかあなたが持ってるとは思わないでしょうし。 ―――それで? 何を訊きたいんです?」 「これを届けるリナ=インバースってどんな人物なの?」 シルフィールの表情を見て、慌ててイルニーフェは手をふった。 「勘違いしないで。『魔を滅する者』の二つ名を冠する魔道士だってことぐらい知ってるわ。ただ、あなたとアメリア王女はリナ=インバースの知り合いなのでしょう? 竜破斬で山を消し飛ばすってほんと?」 「ええ」 「………あっさり肯定しないでくれる? ほんの冗談のつもりだったんだけど」 シルフィールは苦笑した。 「でも事実ですし。それだけじゃないですけどね」 『石』を預けにいくんだもの。知ってたほうがいいと思わない?」 慎重に賢者の石のことを伏せたイルニーフェの問いに応えた声は、シルフィールのものではなかった。 「りな。きれい。キラキラしてるの」 「………そういう理解に苦しむ抽象的表現で答えないでくれるかしら」 三人分の枕をうずたかく積み上げてはタックルして崩すという行為を繰り返していたユズハが、枕にうもれながらイルニーフェを見上げた。 「だっテ、そう、なんだモン」 「もう少し具体的な言葉を使ってちょうだい。で、シルフィールの方はどうなのかしら」 「すごい人です」 「…………あなたもこの半エルフと同レベルなの?」 うんざりした表情でイルニーフェが呟くと、シルフィールは首を傾げた。 「だって他にどう表現していいか………」 「すごい人だってのはわかるわよ。全然たいしたことのないごく普通のただの八百屋さんが『魔を滅する者』なんて呼ばれるような世界に、あたし、生を受けたと思いたくないわ」 鼻の頭にしわを寄せてイルニーフェがそう言うと、考えこんでいたシルフィールは得心がいったかのように、ああ、と声をあげた。 「以前アメリアさんに、知っている人に目が似ていると言われたでしょう?」 「そんなこともあったかしら」 「それがリナさんです」 「………は?」 眉をひそめる少女にシルフィールは微笑む。 「あなたの目はリナさんによく似ています。目元がっていう話じゃないですよ。目の光が、輝きが似ているんです」 イルニーフェは急に深々と溜め息をついた。 「きっとあたしリナ=インバースと仲良くなれないわ」 「イルニーフェさん?」 「あたし、自分がどれだけ度し難い性格か自分でよぉーく知ってるの。あたしに似てるんなら、あたしは多分リナ=インバースのことは好きになれないでしょうね。近親憎悪ってやつかしら」 「似てナイもん」 ユズハのセリフに、イルニーフェはもはや怒る気にもなれず、ひらひらと手をふった。 「ああ、そう。それなら多分なんとかなるでしょうよ」 「強い女性(ひと)ですよ」 シルフィールのほうを見ると、長く柔らかな黒髪を背に流して、彼女はイルニーフェに向かって笑ってみせた。 その目に宿っているのは、微かな憧憬。 落ち着いた穏やかな目の光だった。 「何て言うんでしょうね………。そうですね……、鮮やかな人です。きっとイルニーフェさんも逢ってみればわかります」 「そう………」 イルニーフェはうなずいた。 彼女に目が似ていたということが、アメリアが自分を気に入った要因のひとつならば、これから逢う彼女も自分の命の恩人ということになるのだろう。 何にせよ、すべては偽の玉を取りつけてからだ。 香茶を片手に、アメリアは何度目かの溜め息をついていた。 「慰問だろうが何だろうが、結局ご機嫌伺いにきてるだけじゃないですか」 あの後、事件を知った各地の領主から「この度はとんだ御災難でしたなあ、つきましてはこの間の布告のことなのですが云々」的な使者がひっきりなしに訪れるので、アメリアの機嫌は沈没したまま浮上してくる気配がなかった。 ユズハがいればまだ自制できるのだろうが、自分から手放してしまった以上、これに関してはだれにも文句の言いようがない。 「………うまくやってくれるといいんですけど………」 ふと空に視線を投げて、アメリアは顔を曇らせた。 シルフィールたちがセイルーンを発ってから今日で十日になる。そろそろグードの工房に着いている頃だろう。グード老人にはあれから逢っていないが、元気だろうか。 リナたちには急使を飛ばした。公的な書状で召喚をうながしておいて、『裏』にはひそかにユズハたちのことを記してある。リナがアメリアの意図に気づくことを祈るしかない。 あれこれ思案していると、入り口のところで聞きたくもない声が聞きたくもないことを告げた。 「アメリア様。慰問の使者が目通りを願っておりますが」 「またですか!?」 思わずアメリアが悲鳴のような声をあげると、告げにきた侍従が首をすくめた。 「こんどはどこです」 「マラード公国です」 「はっ?」 椅子から立ち上がりかけていたアメリアは、それを聞いて思わず再び座り直した。 マラードにはアセルスが帰国した際に慰問は無用との言伝を託してある。だいたいマラードの王女が事が起きた真っ最中に王宮に滞在していたのだから、慰問も何もない。 アメリアはふと思い当たることがあって、思わず眉間にその指をあてた。 「………使者の方はどなたです」 「―――僕だよ」 「………やっぱり」 アメリアが出向くのを待たずに自分から部屋に赴いたマラードの公子が、彼女の視線の先でひらひらと手をふっていた。 ************************************* 一部の人に待たれていたとかいないとか、不肖の弟君の再登場です。 彼が出てきたということは、書いている話に投稿している話が追いついてきた証拠♪(爆) 一応15までは書いたんですがねぇ………。 |
6446 | 地下帰りvv | あごん E-mail | 5/7-03:57 |
記事番号6445へのコメント こんばんわ〜〜vvあごんです(笑)。 オンラインじゃないとは思いますが、オンラインな気もします(笑)。 心はいつも近くにってカンジですかね(激しく違う)v 連日、本当にお世話になっておりますv びびらなくてもいい桐生さんに(笑)一番乗りでレスです♪ いやぁぁぁぁぁぁっ!! ユズハが可愛いですっっ!! 枕を積み上げてタックルって(笑)。 しかも繰り返しって・・・(笑)。 まだまだ好奇心旺盛なままですねv シルフィールのリナ論が印象に残りましたね。 鮮やか、ですか。 なるほど、と唸りました。 たしかにリナって鮮やかですよね。 しかし、なかなかこの言葉じゃ出ませんよ。 さすがさすがv私の王だけありますvv グードさんも再登場で嬉しいですしv このお爺さま、好きなんですよ。 息子さんとの喧嘩は無くて寂しい気もしましたが。 それは次回ですねvv(おいっ) そして、イルニーフェ。 大人であろうとする子供かな、と思ってましたが、それだけじゃないですね。 子供は子供なんですが、どう言えばいいでしょうかね。 ・・・・・・・・・・・・・・・・。 私の乾いたのーみそにはそんな語彙ないので表現できません(泣)。 コナマイキな小娘ではないイルニーフェの未来に乾杯ですv そしてそしてvvvv 待ってましたぁ!リーデ君の登場ですねっ! でもこの人、なんか騒乱の種も持ってきてそうですが(笑)。 あああああ、続きが楽しみですっvv ではでは、あごんでした! おやすみなさいませ(笑)v |
6450 | お返事遅れちゃいました(汗) | 桐生あきや URL | 5/9-10:37 |
記事番号6446へのコメント ども。連休明け以来音信不通の桐生です(笑) レスが遅くなってしまってすいません〜〜! >オンラインじゃないとは思いますが、オンラインな気もします(笑)。 >心はいつも近くにってカンジですかね(激しく違う)v たんにゃぱ♪なのですねvv 私もあごんさんにたんにゃぱ♪です(これまた激しく違う) >連日、本当にお世話になっておりますv >びびらなくてもいい桐生さんに(笑)一番乗りでレスです♪ オンラインじゃないのにオンライン。世の中って不思議です(笑) >いやぁぁぁぁぁぁっ!! >ユズハが可愛いですっっ!! >枕を積み上げてタックルって(笑)。 >しかも繰り返しって・・・(笑)。 >まだまだ好奇心旺盛なままですねv ユズハと枕は切っても切れない関係にあるようです(笑) タックルしすぎてへたれた枕。そういえばホテルや旅館の枕ってかなりへろへろですよね。 「何このへたれた枕は」 「ほこほこ」 「そういう表現ですまされるへたれ具合じゃないわよ、この馬鹿エルフッ。これじゃ首が沈むわ!」 「ふわふわ」 「…………」 ………私自身が枕とかクッションとか毛布のたぐいが大好きなんで(爆) >シルフィールのリナ論が印象に残りましたね。 >鮮やか、ですか。 >なるほど、と唸りました。 >たしかにリナって鮮やかですよね。 >しかし、なかなかこの言葉じゃ出ませんよ。 >さすがさすがv私の王だけありますvv やっぱり麒麟なんですかあごんさん。ただの麒麟じゃありませんね。実は赤い麒麟とか(笑)。 鮮やかってものすごく好きな言葉です。風景にも人にも衣装にも何にでも使用します(笑)。 リナとか、陽子とかの印象は私にとって鮮やかの一語に尽きます。 >グードさんも再登場で嬉しいですしv >このお爺さま、好きなんですよ。 わりとこの方も人気があるようで。偏屈じいさまなので、書いてて楽しいです。 >そして、イルニーフェ。 >大人であろうとする子供かな、と思ってましたが、それだけじゃないですね。 >子供は子供なんですが、どう言えばいいでしょうかね。 >・・・・・・・・・・・・・・・・。 >私の乾いたのーみそにはそんな語彙ないので表現できません(泣)。 >コナマイキな小娘ではないイルニーフェの未来に乾杯ですv この娘の性格は一言では表しにくいですね。私もうまく表現できません。こっちの方の頭は水に浸かりすぎて発酵しかかってますので(笑) ただ、書いている途中で、あんまり大人びた子どもを書くのはイヤだなと思いました。私的に可愛いです、ものすごく(爆) >そしてそしてvvvv >待ってましたぁ!リーデ君の登場ですねっ! >でもこの人、なんか騒乱の種も持ってきてそうですが(笑)。 (爆笑)。 そうか。そういう目で見られてたんですね、リーデット(笑) ある意味ものすごく正しい見方かもしれません。 >あああああ、続きが楽しみですっvv 授業と受けているとですね。ふっ……と無性に手元にワープロが欲しくなるのですよ(笑)。ああ、いまここにあったら書けるのにと(オイ) そんなこんなで、がんばります(笑) ではでは。桐生でした。 |
6449 | はじめまして♪ | ひずみ E-mail | 5/7-23:28 |
記事番号6445へのコメント 桐生あきや様はじめまして、ひずみと申すものです。 今まで長らく読み逃げ専門でしたが、この度遂に自首することにしました(笑) だって・・・ユズハがめんこいんですもの♪♪(何弁だ) 夜はいつも枕に埋もれてぱふぱふしてる所なんかもう、うちにも一人欲しいです♪ こう、抱いてこねくってぎゅ―――っと♪(やめい) にしても「舞姫」。いきなりエライ物が出てきてちょっとびっくりしてます。 今の心配事は15巻の最終決戦でリナが噛み砕いたように、うっかりユズハが 賢者の石噛み砕いてしまったらどうするんだろうとか…んな訳ないか(苦笑) では、イルさんシルさん同伴の「ユズハちゃん はじめてのおつかい」 続き楽しみに待ってます♪ ひずみでした。 |
6451 | はじめましてです♪ | 桐生あきや URL | 5/9-10:47 |
記事番号6449へのコメント >桐生あきや様はじめまして、ひずみと申すものです。 こちらこそ初めましてです♪ >今まで長らく読み逃げ専門でしたが、この度遂に自首することにしました(笑) ご出頭ありがとうございます(笑) ありがとうございますv こうして読んでくれてるかたがいてくれるから書いていけます。 >だって・・・ユズハがめんこいんですもの♪♪(何弁だ) >夜はいつも枕に埋もれてぱふぱふしてる所なんかもう、うちにも一人欲しいです♪ >こう、抱いてこねくってぎゅ―――っと♪(やめい) 夜、手触りがいいぬいぐるみや枕と大量の食べ物を用意して、そして柚子のお香を人形の前で焚きますと、ひずみさんのところにもそのうちユズハが来たり………。すいません。嘘です(死)ゆるしてください。 >にしても「舞姫」。いきなりエライ物が出てきてちょっとびっくりしてます。 >今の心配事は15巻の最終決戦でリナが噛み砕いたように、うっかりユズハが >賢者の石噛み砕いてしまったらどうするんだろうとか…んな訳ないか(苦笑) どえらいことになりますねぇ、それは(笑)。魔族ほっとかない代物になりますね、ユズハ。そうしでゼロスが話に出てくるのか………(笑) 私的にこの柚葉のシリーズは、『スレイヤーズその後』(アメリアサイド)だと勝手に思って書いているので、リナの増幅器問題が絡むことも予定しておりました。まさかここまで派手に絡むとは思ってませんでしたが(笑) >では、イルさんシルさん同伴の「ユズハちゃん はじめてのおつかい」 >続き楽しみに待ってます♪ ありがとうございますぅvv やはりというか何というか、イルニーフェ嬢の呼び名はイルかニーフェかで2つに分かれてきましたね(笑)。ユズハにはどう呼ばせようか迷うところです。 なるたけ学校の課題を早く片づけて、続きを書きたいと思います。 ではでは。桐生でした。 |