◆−蒼い瞳の半魔族 9−夏青龍(5/29-21:59)No.6618 ┣蒼い瞳の半魔族 10 −夏青龍(5/31-21:36)No.6637 ┣蒼い瞳の半魔族 11−夏青龍(6/3-19:05)No.6672 ┣蒼い瞳の半魔族 12−夏青龍(6/4-23:07)NEWNo.6692 ┃┗おちゃめなあの人v−みてい(6/5-19:05)NEWNo.6696 ┃ ┗感想ありがとうございます☆−夏青龍(6/6-07:34)NEWNo.6702 ┣蒼い瞳の半魔族 13−夏青龍(6/6-23:36)NEWNo.6709 ┗蒼い瞳の半魔族 14−夏青龍(6/7-21:32)NEWNo.6714
6618 | 蒼い瞳の半魔族 9 | 夏青龍 E-mail | 5/29-21:59 |
こんばんは。中間テストは明日で終わりなのですが・・・よりに よって国語と数学と英語です・・・辛いとこです・・・(涙)。 ついにツリーが落ちちゃったので(当たり前)、新しいのを つくります。これからはゼロスが結構でてくると思います。 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 蒼い瞳の半魔族 9 「う〜ん・・・」 「どうした?」 リナの唸り声に、リザーが反応した。リナたちの一行は、湖の 近くの村まで来たのだが、リザーは村に入る直前で村に入る ことを拒否した。説得ですんなりは入れたのだが、リナが気に しているのはそんなことではない。 「湖・・・って奴がいってたけど・・・シャトリア、だっけ? 湖に一番近いこの村には変わったところはなし。湖にも島が あるわけでもないでしょ?どこに隠れてるのよ・・・」 「・・・湖の・・・中とか」 リザーが、なんとなく口にした言葉に対し、リナは間の抜けた声 を出した。 「は?」 「い、いや、なんとなくそう思ったんだ。でもありえないよな。 人間が水の中で生きられるわけがない・・・」 「・・・ありえるかもね」 リナが呟く。アメリアが続いた。 「水中に洞窟か何かがあれば、結界を張ることで水の侵入は 防げますよね」 「だが、結界を張りつづけるには結界を張る者が必要だ。奴らが 仲間の中で交替していたとしても、長く続くことか?」 ゼルの言うことはもっともである。結界を張ることで魔力を使う のは分かりきっていることである。人がやっているのであれば 間違いなく長続きはしない。 「ま、今日は遅いし、寝ましょう。ガウリイ・・・ってあら?」 「ぐ〜〜〜・・・」 既に夢の世界へ行ってしまっている・・・。リナはため息をつくと、 それぞれの部屋にもどるように行った。そのときに、ガウリイを 起こすためにスリッパ(どこから出した)を使ったのは言うまでも ない・・・。 部屋は一部屋2人分。部屋割りは男女別々、ということで よかったのだが・・・ここで問題が発生した。いつのまにやら 帰ってきていたゼロスを含め、男が3人女が3人。 つまり、男1人と女1人が一緒の部屋、ということになって しまうのである。まあ、ゼロスをふつ〜に男として数えた場合、 だが。 「ど、どうします・・・?」 アメリアが言った。誰も言葉を発したりしない。当たり前である。 「リナ殿」 「何?」 その場にいるゼロスとリザーを除く4名がびくっと反応した。 「私は別にかまわないんだが・・・だれと一緒になろうが」 「じゃ・・・じゃあ・・・」 リナはちらり、と皆に目配せし、 「ゼロスと一緒でいいかなぁ?」 「リナさんっ!!?」 ゼロスが声をあげた。翌日何を言われるか分かったものではない。 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、何で僕なんですか!?」 かなり慌てて、ゼロス。 「あんた、魔族でしょ?だったら別に『人間の男』みたいな思考は ないってことで、安全じゃない。幾分か」 後方でゼルがなにやら表情を険しくしているようだったが、リナは 気にしなかった。要するに『あんたらは危険人物』と言われたような 気がしたのだろう。ガウリイはあくびをしていただけだが。 「し、しかし・・・」 それでもゼロスは何とかその場をしのごうとしていた。そこへアメリア が割り込む。 「生の賛歌歌ってあげましょうか、ゼロスさん♪」 びくぅっ!! まともにゼロスの表情が引きつる。しかぁし!ゼロスはその脅し(?) にも負けず、 「と・・・とにかく僕は嫌ですからね・・・」 「生きてるってすばらしいことね♪」 ぴしぃっ・・・ リナも一緒に攻撃準備を整えていた。このまま否定しつづけるなら、 間違いなく集中砲火である。 「う・・・」 「ゼロス」 リザーに呼ばれ、ゼロスはなんとか振り向いた。リナの言葉で かなりのダメージを受けたのだ。 「な、何ですか?」 「安心しろ、何かしでかすようならアストラル・ヴァインのかかった 剣で斬り倒してやるから♪」 むしろ楽しそうに、リザー。もうだめだ、とゼロスは思っただろう。 「じゃ、部屋に行ってるな、ゼロス」 すたすたと歩くリザーの背を見送り、4人はほっと一安心した。 しかしゼロスだけは未だ絶望の表情をかすかに浮かべていた。 夜。濃い青に空が染められ、あたりから光が消えたころ。 「ん〜〜〜〜・・・」 部屋の中で、人の唸り声がひとつ。 「眠れない」 ぽつん、と言ってむくっと起き上がったのはリザー。ゼロスの 分のベッドは空である。まあ、ゼロスは魔族だから寝ることなど 必要ないのだろうが。 服を着替えて下の階へ、なんとなく、ゼロスがいるような気が したのだ。 食堂は静まり返り、誰もいなかった。 (当たり前か) 心の中で、独りごちる。 (外に・・・出るか) 足音をほとんど立てずに、外へ出た。涼しいを少し通り過ぎた 風が吹いた。上着を持ってくればよかったと、ちょっと後悔 した。 三日月が暗い色の布に隠れて、あたりも少しずつ暗くなる。 「影・・・シャドウ・・・」 リザーの眼が、ふっと暗くなり、虚ろになった。 「魔族・・・竜・・・人間・・・宝玉・・・」 意味不明な、でもどこか関係がありそうな言葉をつむぐ。ただ 風に流れる。 「心の・・・影・・・裏・・・傷・・・赤・・・紅・・・」 リザーのもう片方の、仮面に隠れた瞳から、徐々に紅い光が 見え出した。髪の毛も、少しずつ紅く染まる。 「魔道士・・・剣士・・・魔剣士・・・姫巫女・・・神官・・・」 三日月が、顔をだした。雲は風ではらわれ、ずっと遠くへ行って しまう。 「宝玉・・・3つ・・・湖・・・」 ふぅっと倒れこむリザーを、だれかが受け止めた。黒い神官だった。 「リザーさん?」 「・・・ゼロス?・・・っ・・・!!」 がばっとゼロスから離れ、リザーは数メートルの距離をとった。 「何もそこまで怯えなくても・・・」 顔を真っ赤にして、リザーは言った。 「な、なんでゼロスがここにいる・・・?」 「月を眺めてたんですよ」 にこにこ顔で、ゼロス。リザーは冷静さを瞬時に取り戻し、落ち 着いて深呼吸をした。 「すまなかったな」 「は?」 「いや、受け止めてくれただろう?」 「ああ」 くすっとリザーが笑った。ゼロスの隣まで行く。 「本当に、似てる」 「誰に、ですか?」 「『あの人』に・・・似てる・・・」 『あの人』が誰をさすのか、ゼロスは分かった。哀しそうな表情 で、リザーが言うところを見れば、一目瞭然だった。 「ゼロス」 「なんですか?」 「私のことは・・・嫌いか?」 「・・・・・・は?」 結構間をおき、ゼロスは間の抜けた声をだす。リザーはきょとんと してゼロスを見上げた。年齢的にゼロスのほうがはるかに上だが、 外見上でもそれは言える。14歳の少女と20歳前後の青年である。 「あ、えっと・・・すまない、変なことを訊いた・・・」 「いえ、別にいいですよ。あなたのことは嫌いじゃあありません。 でも、魔族には好きっていう感情すらありませんし。少なくとも、 好きではありませんね」 「そうか」 ふっきれたような顔で、リザーは夜の空を見上げた。 「私は・・・好きだな。ゼロス」 「・・・・・・」 唖然とするゼロスに、リザーは微笑を送った。ゼロスは返答でき なかった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 苦情の嵐です・・・うううう・・・。ゼロスファンの方は これ以降は読まないほうがいいかもしれませんです・・・。 では。これからもよろしくお願いします。 by 夏青龍 |
6637 | 蒼い瞳の半魔族 10 | 夏青龍 E-mail | 5/31-21:36 |
記事番号6618へのコメント こんばんは。夏青龍です。中間テストも終わり、4教科分は テストが返ってきました。英語は100点だったし、90点 以下はなかったので満足でした。 そして今回は10話目です〜!突破〜♪今まで感想くれた 方、ありがとうございました!! 今回は長めになるかな〜なんて思っているのですが、まず 注意&忠告で、ゼロスファンの方、ゼロスの絡むカップリング が好きな方は読まないほうがいいかもしれません。 てなわけでレッツスタート!!(汗?) ――――――――――――――――――――――――――――――――― 蒼い瞳の半魔族 10 「レイ・ウィング!」 リナが水の中へ飛び込む。風の結界をまとい、底までの深さがかなり あるディーヴァの湖へと。 ざぶんっ 水しぶきを少しあげ、リナの小柄な体は見えなくなった。まだ太陽 が南中には昇っていない。その数時間前といったところだ。 「大丈夫なのか?」 「あいつは前にも潜ったことあったから大丈夫だと思うぞ」 ガウリイが、リザーの呟きに応えた。リザーは隣にいるガウリイを 見上げた。金髪碧眼、おまけに剣の腕は一級品。ガウリイ=ガブリエフ。 ここまでは問題なし、とリナはいう。そこから先の説明と言えば、 頭にはゼリーが詰まってるやらなにやらというものである。 「でもどうしてあんな潜り方知ってたんでしょうね、リナさん」 さん付けでアメリア。リナ自身が『制御に失敗して海に突っ込ん だから偶然見つけた』などというわけがない。黒髪でまだ少し 童顔だが、すさまじい正義感に満ち溢れるセイルーンの王女。 アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。体術にも結構長けている らしい。 「どうせ『偶然』見つけたんだろうな」 リナが聞いていたらどういう顔をしたのやら、ゼルが言う。もと もと、リナが使ったのは高速移動用の術。水に潜るための術では ないのだ。 金属の髪、岩の肌、白い服。魔剣士のゼルガディス=グレイワース。 リザーもゼルには貸しというか、申し訳ないことをして しまったと思っていた。敵に襲われていたとき、リナと一緒に いた彼は、とばっちりを食って怪我をしたのである。それほど 深い傷でもなかったのだが、リザー自身はそれを悔いていた。 「レイ・ウィングで水中へ潜るとは私も全く思わなかった」 リザーが言った。と、再び水しぶきがあがって、リナが でてきた。 「どうだった?」 「なんか水中で変な光が見えたわ。行ってみる?」 あのドラまた、ロバーズ・キラーのリナ=インバース。栗色の 髪に、朱の瞳。小柄だが、旅をしていて分かったことで、かなり の大食い・・・というか・・・。どちらかと言えば普通の村娘 と比べて綺麗な方だとリザーは思っていた。魔力の容量もまったく 申し分なし。この一行の主戦力だ。 そして、後ろの方でいつもののほほん顔でいるゼロス。彼は純魔族 で、かなりの高位魔族でもある。錫嬢を愛用しているが、普段は 普通の謎の神官みたいな感じで人間社会に溶け込んでいる。 「行こう」 それぞれレイ・ウィングの術を唱え、結界をはり、リナはガウリイ と一緒に湖に突っ込んだ。ゼロスだけは、やはり呪文は一言だった。 湖には、水草が生えていた。とても綺麗な花を咲かせ、水中に 漂う水草が。白い花が底に生えていて、とても綺麗だったため、 リザーは見とれそうになった。 だが、その水草は、あるところからぷっつりと途絶え、そこから 先には一本も咲いていない。そしてその先に見えたのが、神殿だった。 (水中に・・・神殿?なぜこんなところに・・・) 水の浸入があるのかどうかは遠くていまいちわからなかったが、 一行はその神殿へと近づいていった。 神殿の入り口には罠の類はないようだったので、そのまま神殿の 入り口をくぐった。ゼルとアメリアとゼロスとリザーは入り口を 抜けた直後に術を解いた。が・・・ べちゃっ 変な音を立て、リナとガウリイが柱に激突した。 「ひ、ひはい(痛い)・・・」 リナが顔をさすりながら言った。ちょっとだけ読みが甘かった ようだ。エアカーテンのようなもので、神殿内部は空気が あった。水はすぐそこにあると言うのに見えない壁で遮られる のか、それとも水自体を押し込めているのか、これ以上は はいってこない。すなわち、地上で使ったのと同じ速度で 突き抜けてしまったのだ。 「誰も・・・いない・・・?」 リザーの呟き。見張りの1人も見当たらず、おまけに人の気配 が感じられない。 「奥へ行ってみますか」 ゼロスが言う。皆は頷いて、歩き出した。 神殿は、思ったより広かった。大きな祭壇、高い天井のホール、 祭壇の両脇に部屋が4つずつ並び、それぞれに神官だか巫女だか の絵とか神殿のマークが書かれた絵があった。 調べても、奴らは何処にも居ない。 「いませんね・・・」 アメリアが言う。リザーは歩きながら、考えていた。 (シャトリアとか言う奴はディーヴァの湖に来いと言った・・・ アジトはここではないと言うことなのか・・・?) 後ろに、ふっと気配が迫ったのを、リザーは察知した。 「アメリア!」 振り返ると、後ろにいたアメリアのさらに背後に黒い影が いた。殺気をまとわりつかせ、アメリアの背中にダガーを 突きたてようと振り上げていた・・・! 「え?」 アメリアが振り返ったとき、『そいつ』はためらいもなく ダガーを振り下ろした。リザーは動こうとしたのだが、 首筋に『何か』がつきつけられていると知った。 「きゃああっ!」 アメリアの叫びが神殿内にこだました。 リザーの目の前で、アメリアが肩から血を流して座り込む。相手 は人間ではなかった。魔族だったのだ。おそらくは、魔族自身の 一部をダガーの形にしたのだろう。 リザーは目の前の光景に呆然とした。動けない。動けば――死ぬ。 そう分かっていたから。 「ア・・・メ・・・リア・・・」 突きつけられているのが針(フレシット)だと分かるまで、数秒 しかかからなかった。 「くっ・・・」 うめきながらも、アメリアは立ち上がった。 魔族は中の下くらいだろうが、人の『形』はとっていた。 全身真っ黒で、眼も口もなにもない顔の額に、おなじく黒い宝玉 が半分埋まっていたが。 かまわず、アメリアは呪文を唱えた。リザーは未だ動けない。 そこへ・・・ 「うぁっ!」 「アメリアっ!!」 アメリアの右腕に、針が深々と刺さっていた。 魔族はまたダガーを振り上げる! 「やめろぉっ!!」 リザーが叫んだ。今にも泣き出しそうな顔で。魔族は、止まった。 「あら、このお嬢さんがどうしても邪魔だから消そうとしたのだけど?」 リザーの背後にいる女――シャトリアが言った。リザーは冷静さ を取り戻していった。 「アメリアは関係ないだろう!」 「でもね、ここへ来た以上、生きては帰れないわよ。地上には」 「罠か・・・」 「そうね。ここがアジトだと思ってきたのかそうでないのか知ら ないけど、来てくれて助かったわ。全員消せるんですもの」 シャトリアは余裕だった。なぜこんな女に魔族がついているのか 謎だが、リザーはアメリアのことの方が心配だった。 最初の傷はともかく、針はかなり深く、数十本刺さっている。 こんな状態で呪文や体術が使えるわけがない。 「じゃあ、邪魔な人には眠ってもらいましょう」 びくっとリザーが反応した。シャトリアは深い緑の髪をかきあげ、 アメリアに近づく。さっきとは変わって、今度は魔族がリザー の動きを封じている。 シャトリアが一本の針を取り出した。黒く輝く針は、恐怖を 与えるのには十分だった。 「くぅっ・・・」 立ってはいるが、アメリアもこの深手のせいで動けない。シャトリア は悠然とアメリアの前に立ち、針を投げた。 アメリアの肩めがけて。 針が刺さったとき、アメリアは小さくうめき声をあげたが、すぐに どさっと倒れた。リザーは駆け寄ろうとしたが、魔族がダガーを 構えているせいで行けなかった。 「安心しなさい。毒を塗ってあるだけなんだから」 「毒・・・だと・・・?」 「速効性じゃないわ。そのうち体のあちこちが不調になって動けなく なるでしょうね。日に日に効力は上がるのよ。一度打ったら数時間内 に毒を解毒しないと助からないわよ。遅くても3日で死ぬわ」 「な・・・」 リザーはシャトリアの言葉に絶句した。誰かを早く呼ばなくては。 呼んでアメリアを医者に見せてもらわなくては。 「そして貴女には宝玉をもらうわ」 すっとリザーが手を伸ばしたのは剣だった。剣の柄のあたりにある 蒼い宝玉がカランと落ちる。それを拾ってシャトリアは満足そうに 笑った。 「あとひとつ、どうしようかしら。どちらを貰おうかしらね・・・」 「ラ・ティルト!!」 反対側から、ゼルが魔族に向けて攻撃呪文をはなった。火柱に包まれ、 魔族は消滅した。 「あら」 シャトリアはいまだ余裕である。 「アメリア!」 リナがアメリアを抱き起こす。ガウリイがシャトリアに斬りかかろう と準備する。 「やめておきなさい。動けばこの子も死ぬの」 「誰が・・・殺されるかっ!」 どぅっ!! 「くっ!?」 リザーが後ろにいたシャトリアの腹部にものすごい勢いで肘鉄を くらわせた。倒れ掛かるシャトリアに、リザーは蹴りをいれ、 距離をとる。 「だれがおまえなんかに殺されるか!!」 「・・・・・・」 痛みをこらえているのか、シャトリアはリザーをにらみつけ、 『消えた』。唐突にいなくなったのだ。その場から。 「え・・・?」 リザーの呟きは、空気に解け消えた。 「早くここを出て、アメリアを医者に見せましょう!」 リナがアメリアを助け起こしているが、アメリアの顔色は悪い。 蒼白で、息も荒い。 リザーはアメリアをばっと担ぐと、入り口に向かってはしった。 「お、おい!!」 ガウリイとゼルとゼロスが追いかけるが、リザーは腕輪を外して 魔力を開放し、とんでもない速さで湖の上をめがけて上って行った。 レイ・ウィングの比ではない。とんでもない速さだ。 ちなみに、リナも手を掴まれて一緒に地上へ連れ戻されていた。 毎度のことながら、驚かされる力をもった娘である。リザーは。 取り残された3人のことは考えずに、リザーは魔法医のところへ 急いだ。 ――――――――――――――――――――――――――――――――― ゼロスくんが活躍しませんね〜あはははは。次回は活躍する・・・ ハズ。 では。 by 夏青龍 |
6672 | 蒼い瞳の半魔族 11 | 夏青龍 E-mail | 6/3-19:05 |
記事番号6618へのコメント こんにちは。夏青龍です。続編遅れかけてすいません。 今回こそゼロスを活躍させる!!と燃えているのですが・・・。 どうなることやら・・・(汗)。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 蒼い瞳の半魔族 11 雨が降っていた。黒雲の下、地面には水溜りがいくつもできて いた。彼女は上を向いて、目を閉じた。頬を伝う雨の滴が涙 のようにも見えた。彼女は1人だった。 ざあぁぁぁぁぁ・・・ 雨音はずっと続いていた。あれから半日たったが、雨は全く やむ気配を見せない。ベッドにはアメリアが寝ている。毒は 単純なもので、解毒するのに苦労はしなかった。怪我も魔法医 のリザレクションで治してもらってある。 リナはアメリアのベッドの隣で、椅子(いす)に座っていた。 アメリアは静かに息をしている。危ない状況ではないから いい事だろう。 ガウリイは部屋のもう一つの椅子に座っている。ゼルは 窓際で壁によりかかって、外を見ていたが、時折、アメリア の様子をちらちらと見ていた。 無言。長い沈黙。誰もしゃべらない。 リザーはいなかった。少なくとも、部屋の中には。 コン コン ドアをノックする音が聞こえた。その少し後に、ドアを開けて 入ってくる黒い神官服の青年。 「いませんでした。彼女」 「そう・・・」 ため息混じりに、リナが言った。ゼロスはアメリアの様子を見、 そのあとベッドから離れて立っていた。 「どこへ行ったんだか・・・あの子」 リナより1つ2つ年下の彼女を、ゼロスに探してくるように 頼んだのだが、やはり彼女は見つからなかった。 リザーである。アメリアを魔法医のところへ運び込み、治療 をしてもらっている間に、いつのまにかいなくなっていたの である。以前言っていた、報酬の宝の場所の地図と、書置き を残して。――もう一緒にはいられない、と。 結局、アメリアは治療のあと疲れていたのか眠ってしまった。 それからずっと眠りつづけているのである。起こす気になれば 起きるのだろうが、そうするのは気が引けた。 「アメリアが攻撃されたとき、あいつは何をやってたんだ? あいつならそれなりに助けることはできたはず・・・」 ゼルが呟く。視線は俯き加減なためか、下に向いている。 「魔族がいたでしょう。たぶん武器か何かで動くなと脅されて いたんでしょうね」 ゼロスが言う。さすがにここでは笑みはなかった。アメリアは 眠ってしまっているし、リザーはいない。事情が聞けないのは 辛いところだろう。 「あの子さぁ」 「ん?」 「1人で何するつもりなんだろ」 リナが呟く。 「1人で何とかするつもりなんだろ」 ガウリイが言った。 「相手になぜ魔族がついているのかも謎よね。あのシャトリアって 女がそれなりに強いってこと・・・か」 結局、その日の夕方になっても雨は止まず、アメリアも目を覚まさ なかった。 ――独りだったら孤独はいらない 独りだったら孤独は知らない 孤独以外を知ったから 孤独が辛くなったんだ 辛くなるならずっと独りでいたかった 悲しくなるならずっと独りでいたかった 誰かが傷つくのを見ることも 誰かが悲しむのも知らずにすむ 独りだったら孤独はいらない 独りだったら孤独は知らない 独りだったら悲しみも知らない 悲しみなんかいらなかったのに 独りだったらよかったのに ずっと独りだったのに 誰かの優しさを知ったから 誰かの悲しみを知ったから 誰かの痛みを知ったから 自分も辛くなっていく 誰も私に関わらなければ 傷つかなくてすんだのに こんなに悲しくなかったのに 誰も来ないで 関わらないで 私を独りにしておいて―― 夜になっても雨は降り続く。その雨の中で、少女が歌っていた。 ライティングの燐光の中で、冷たい雨に打たれながら。 それでも歌っていた。 誰も聞いてはいないのに。 誰もここにはいないのに。 唐突に足音がした。真夜中に雨の中外に出る人は少ないだろう。 だがその足音は間違いなく彼女に近づいていた。 彼女は振り向いた。燐光に照らされて立っていたのは、少しも 濡れていない青年。無論雨で濡れないように何かをしているわけで もない。 「ゼロス・・・?」 「こんなところにいたんですか」 「・・・・・・」 無言で、ふいと顔をそらす。 「どうしてこんなところまで来たんですか」 「・・・もう一緒にはいられないから」 リザーは静かな声で言った。ゼロスは言った。 「何故」 「私のせいでアメリアは怪我をしたんだ!私のせいでみんな に迷惑がかかったんだ!なのに一緒にいられるわけがない だろう・・・!」 「僕は迷惑なんて思ってませんよ。それにリナさんたちもある意味 『仕事』ですし」 「『仕事』以外の理由も・・・ないだろう」 「まあ・・・そうですが」 「ゼロスだって何の関係もない私に何故そこまで関わってくる? 意味がないのに力を使うのは・・・無意味以外のなにものでも ないだろう」 リザーは言った。どことなく辛そうだったが、ゼロスはその 負の感情を『食べて』いた。別に追い詰めるつもりなどないの だが、そうなってしまうのだからしかたがないし、補給はそれなり に必要なのだからいいと思っていた。 「私に関われば無意味に力をつかって消耗するだけだ・・・。 私を放っておけばいいだけだろう。魔族は・・・同族でも 見捨てるんだろう?・・・簡単なことでは・・・ないか」 そんなことを言いながら、リザーは手を握り締めていた。 「泣いているんですか?」 「・・・泣いてなどいない・・・それに・・・ゼロスに心配して もらうような・・・義理はな・・・」 ふっとリザーが倒れかかったのをみて、ゼロスは受け止めた。 息が上がっている。熱もあるようだった。 「馬鹿な人ですね。あなたは」 それがリザーに聞こえていたのかどうか、それはわからない。 ゼロスがリザーを連れて帰ったのは朝方だった。リナは起き だすと、リザーを寝かせた。それからゼロスに何とかしろ、 と言った。 「なんで僕がなんとかしなくちゃならないんですか・・・」 「魔法医に治療してもらうより、あんたに任せた方がいい でしょ。風邪くらいなら」 「・・・・・・」 「じゃ、よろしく。アメリアの方を見てるから♪」 リナはそういうと、出て行った。 ゼロスはため息をつくと、リザーの青銀色の髪をなでた。髪は、 さらさらと指の間をすり抜けた。 「人間の何かを綺麗と思うなんて堕落したものですね・・・僕も」 リナにしろ、困ったところもあったが惹かれるところもあった。 結局、ゼロスに敵う者は一行にいないと見たのだが、やはりリナ には油断できない。だが、リナを特別に見たことはない。 あくまでも仕事に関わっている人間の少女なのだ。 「もう少しだけ負の感情をもらっても悪いことはないでしょう? わざわざ迎えに行ってあげたんですから」 寝ているリザーにゼロスは言った。長い髪を手に絡めて、温かみ など全くない唇に当てて――。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― うっきゃ〜〜〜!!ゼロスがぁぁあぁあ!!性格が変わって しまいましたぁぁぁぁ!!(いつものことだろうが。汗) アメリアはしゃべらないしガウリイとゼルもほとんどセリフない し実質リナとゼロスとリザーだけで話がすすんでしまいました・・・。 まぁいいか(ォィ)。呼んでくださった方、ありがとうございました。 では。 by 夏青龍 |
6692 | 蒼い瞳の半魔族 12 | 夏青龍 E-mail | 6/4-23:07 |
記事番号6618へのコメント こんばんは。夜遅くです。明日も早く起きねばならんという のに・・・。私の言ってる学校は中間テストが終わったらまた すぐに期末テストになっちゃいます・・・。連続だから辛い です(涙)。 注!!今回もぶっちぎってゼロスの性格変わってます!そこの ところは考慮にいれて読んでくださりますようお願いします。 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 蒼い瞳の半魔族 12 「ん・・・?」 リザーがぼ〜っとしながらも目を覚ましたとき、視界に入ったのは ゼロスだった。が、髪をなでていたせいか、少々(リザーにとっては 多々)接近していた。 「おや?お目覚めですか」 リザーはがばっと起き上がってぶつぶつと呪文を唱え・・・。 「え・・・まさか・・・それは・・・」 ゼロスが言う間もなく、彼女は近くに置いてあった自分の剣を取り、 鞘から抜き放って、 「アストラル・ヴァイン!!」 「ちょっ、ちょちょちょ・・・リザーさんっ!!」 ゼロスはあわてて後ろにさがる。が、結局リザーは剣を振り下ろす ことなく、横へ置いた。鞘へ収めると、倒れこむようにベッドに 横になった。 さすがにゼロスも焦ったようである。 「大丈夫なんですか?」 「大丈夫だと・・・思ってるのか?これで」 手を顔の上にのせて、荒い息をする。ゼロスはまだ辺りに『苦しみ』 の感情が漂っているのを知っていた。 「いやぁ、人間て病気になったときもこういう『負の感情』って持つ んですね〜。下級魔族に教えたりしたりしたらとんでもないことに なりますね」 のほほん顔で、ゼロス。リザーは疲れたように視線だけゼロスに 移した。 「・・・ところで、ここは?」 「リナさんたちの泊まってる宿ですよ。連れてきたんです」 「・・・怒っていたか?」 リザーは心配そうに訊いた。ゼロスは表情を変えることなく、 「傷ついたから、ではなくおいていかれたから、ですね」 「・・・・・・」 大きくふぅと息をつくと、リザーはゼロスの腕を引っ張った。 「?」 ゼロスは少々警戒しながら近づく。アストラル・ヴァインのかかった 剣で斬りかかられようものなら逃げねばならない。 リザーはゼロスの肩に手を置いて、自分で起き上がった。ただそれだけで、 かなり体力をつかっているように見える。 「アメリアは?」 「寝てます。毒や怪我は治ってますよ」 「そうか・・・」 安心したように目を閉じる。 「どうして迎えに来た?」 「あなたを探してくるようにリナさんに言われたからです」 「なら何故あんなに遠くまで?」 「・・・・・・」 「問い詰めるつもりは・・・ない」 単調な会話である。ゼロスの顔から微笑が不意に消えていた。 「ありがとう。すまなかった」 リザーは自分が心を許した相手にしかお礼と謝罪を一緒に言ったりは しない。ゼロスをそれなりに信用しているのだ。 とん、とゼロスの方に寄り掛かる。 「まだ・・・ちょっと・・・眠らせてくれ・・・」 それから、また寝息を立てて、リザーは眠ってしまった。ゼロスは ため息を一つついた。朝の光は窓からさんさんと降り注いでいた。 そして翌日・・・ リザーの治療を、ゼロスは全くしなかった。故にリザーはアメリアが 目覚めた同一の日に、完治して部屋から出てきたのだった。 廊下で会ったアメリアに、謝罪の言葉を言ってから、一緒に下の 食堂へ下りた。 「おはようございます!」 「おはよう」 元気いっぱいになったアメリアと、戸惑いつつ言うリザー。 『おはよう』 みんながいっせいに返事をした。 「・・・すまなかった・・・」 「や〜ね、そりゃあたしはお宝の地図もらえて嬉しかったけど、あんた がいなくなったら心配になっちゃうわよ。仮にも一度は助けられたし」 「そうそう。リナみたいにドラグ・スレイブぶっ放しまくるような 度胸はなさそうだし、まだ子供なんだから一緒に行けばいいだろ?」 「あたしはどうなのよガウリイ・・・」 恨みがましい視線を受けて、ガウリイは冗談と言う風なしぐさをとった。 リザーはくすくすと笑って、ゼルの方へ行った。 「・・・アメリアの看病はしてやったのか?」 ぼそっとゼルの耳元で言う。ゼルはびくっと硬直した。 「・・・してないんだな。かまわないが」 「だからどうした・・・」 「いや。うかうかしてるとゼロスとかその辺の男にとられるぞと 言っているんだよ。アメリアが」 その辺の男はともかくとして、ゼロスの名にはゼルは完璧に顔を強張らせた。 「ゼロスは一応魔族だがな、その辺でどう転ぶかはわからないしな」 わざとらしく、リザー。アメリアがひょこんと顔をだす。 「どうしたの?」 「いや、別になんでもない。さて、何を頼もうか・・・」 言って、リザーはメニューに目を走らせた。むしろ、その顔は楽しそう だった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 短い・・・とことん短い・・・(汗)すみませんっ!!(コメント これだけか!?)では。 by 夏青龍 |
6696 | おちゃめなあの人v | みてい | 6/5-19:05 |
記事番号6692へのコメント > こんばんは。夜遅くです。明日も早く起きねばならんという >のに・・・。私の言ってる学校は中間テストが終わったらまた >すぐに期末テストになっちゃいます・・・。連続だから辛い >です(涙)。 こんばんは、もうすぐ晩ゴハンのはずですのみていでございます(何だそれは) レスが遅れましてすいません。 話が進むたびに読んでいたのですが、自分のところ(ツリー)で腐ってました(爆)。 アメリア、元気になりましたね〜vあぁよかった。 めでたく全員そろったところでまた出発ですねっ! …にしてもリザー、少しずつ性格というか接し方が柔らかくなってきたような…。 おちゃめになってきたような…(苦笑) これからリザーはどう変わっていくのでしょう?何を得ていくのでしょう? 楽しみ楽しみ。 …ゼロスが負の反対の感情で溶けてしまわないよに(こっそり)祈りつつ。 極短ですが、みていでございました。 また寄りますね。 |
6702 | 感想ありがとうございます☆ | 夏青龍 E-mail | 6/6-07:34 |
記事番号6696へのコメント おはようございます。夏青龍です。今日も朝っぱらからパソコン やっております。 > >こんばんは、もうすぐ晩ゴハンのはずですのみていでございます(何だそれは) > >レスが遅れましてすいません。 >話が進むたびに読んでいたのですが、自分のところ(ツリー)で腐ってました(爆)。 > >アメリア、元気になりましたね〜vあぁよかった。 どうやったら立ち直るか考えてたんですが、自然治癒ってことにしちゃいま した。(笑?) >めでたく全員そろったところでまた出発ですねっ! >…にしてもリザー、少しずつ性格というか接し方が柔らかくなってきたような…。 >おちゃめになってきたような…(苦笑) リザーは確かに変わってきましたが、特に仲がいいアメリアを応援するって ことでからかったりしてるんですよ。本人(リザー)が面白がってるのは ゼルの反応ですが(笑)。 >これからリザーはどう変わっていくのでしょう?何を得ていくのでしょう? >楽しみ楽しみ。 これから微妙〜に話の方向が変わってくかもしれません。最後にはリザー を××←(何か考えてみてください♪)させるつもりですが、ラストで リザーが生き残ってるかどうかは考え中(んな不吉な)。 >…ゼロスが負の反対の感情で溶けてしまわないよに(こっそり)祈りつつ。 そのうちゼロスをリザーが好きになってしまうかもしれません。実際のところ 現状でもそうなのですが。ゼロスファンの方々には申し訳ありませんが、ど こかでゼロス&リザーの場面つくってやる〜!とか思っております。 > >極短ですが、みていでございました。 >また寄りますね。 私の駄文を読んでいただきまして、ありがとうございます。これからも、 よろしくお願いします。では。 by 夏青龍 |
6709 | 蒼い瞳の半魔族 13 | 夏青龍 E-mail | 6/6-23:36 |
記事番号6618へのコメント こんばんは。夏青龍です。ツリーが落ちるぅぅぅぅ!!!まずい! さっさかさっさか続編を・・・! まあそれはおいといて、これから先、短くぽんぽんと続く可能性 もありますので、そこのところはよろしくお願いします。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 蒼い瞳の半魔族 13 「青の宝玉が2つ・・・あと一つ。もうひとつ宝玉が手に 入れば・・・」 シャトリアは、自分の目の高さ辺りまで宝玉を浮遊させていた。しかし、 どうにも様子がおかしい。宝玉は、自ら淡く輝いて浮いているのである。 ブルーの光が辺りを照らしていた。薄暗くてよくはわからないが、 どうやら地下のようだった。祭壇のようなものもあった。 「私は完全体に戻れる」 シャトリアは不適に笑うと、部屋を後にした。宝玉は高度を下げ、祭壇の 上に下りた。 朝食をすませ、リナ達はもう一度湖に潜ることにした。まだ連中の捜索は 終わってはいない。隠し通路か何かもあるかもしれないのだ。 「レイ・ウィング!」 水しぶきをあげて、湖に潜った。リザーはリナのすぐあとに続いた。 水中は、以前潜ったときとたいして変わっていなかった。神殿からの異様 な波動以外は。 水中で、波動を感じるのは少々難しいことだが、その波動に当たった水草 は枯れ、水中はだんだんと荒野のようになっていく。 神殿に入るのはそれほど難しくはなかったのだが、神殿の入り口付近に 立ったとき、突然アメリアがふらついた。 「どうした!?」 急いでゼルが助け起こす。 「居ます・・・何か・・・すごく悪い・・・何か・・・怖い・・・」 とぎれとぎれに、呟く。蒼白になった顔は、恐怖で染まっていた。 アメリアが『怖い』というほどのものだ。一体何が起こっているのかと、 リナが正面を向いたとき、リナも片膝をつく。 「リナ殿!?」 周りをみれば、立っているのはリザーとゼロスだけ。ゼルは壁に寄り 掛かっているし、ガウリイも同じだった。何がなんだかわからず、 リザーは慌てるばかりだった。もっとも、表面にはほとんど見せ なかったが。 「リザー」 リナが呼んだ。リザーはばっとリナの隣にかがみこむ。 「波動・・・断ち切れない?これとよく似た攻撃・・・くらった ことがあるから・・・」 「やってみる」 腕輪を外し、ブラック・ドラゴンの翼を召喚した。リザーは一度目を 閉じて、それから翼を空うちさせた。 それとともにふっと体が自由になったのを、リナたちは知った。 「大丈夫か?」 「大丈夫よ。それより、この波動ってどこから来てるのかしら・・・?」 怪訝そうな顔で、リナ。正面には祭壇があるのだが、そこには何もない。 リザーは翼を使って高速で飛ぶと、祭壇の上の紋章のようなものを叩いた。 紋章がいきなり輝いて、祭壇の前に階段が現れた。 「地下室?湖の底につくるなんてかなり非常識な・・・」 「この下から嫌な感じがする」 「嫌な感じ?」 ガウリイが問う。しかし、本人もなんとなくわかっているようだった。 アメリアはふらつきながらも階段を下りようとした。リザーが先頭に なり、アメリアは真ん中に位置するようにした。 「何があるんだか・・・」 リザーは、どこか呆れたような口調で言った。 階段は、途中で2つにわかれていた。右か、左か。どちらかである。 もしくはその両方か。 リザーはその場で立ち止まり、振り向いた。表情は決意がこもっていた。 「みんなに・・・話しておくことがある」 「何ですか?」 ゼロスの問い。リザーは自分の左肩を指差して、言った。 「私の中にも『宝玉』がある。あとはこの腕輪だ。もしどちらかが 奪われたら、即逃げてくれ。何をするかわからないから」 「どういう意味?」 「私の制御装置みたいなものだ」 リザーは話し始めた。以前、村を壊滅させ、『彼』に止めてもらったことを。 そのときにもらったのが4つの『宝玉』だと。 1つは、彼女が持ち物としてもち、1つは彼女の剣に、1つは彼女の腕輪 に、そしてもう1つは・・・ 「ここ」 もう一度、彼女が自分の左肩を示した。 「ここに、あるんだ。『宝玉』。体の中に入ってしまってるから」 大きさは、ビー玉程度。剣や腕輪の飾りとして埋め込んであったのだ。 彼女の力は思ったより大きかったため、最低2つは『宝玉』がないと、 魔族のほうにのっとられる。・・・要するに暴走するのだ。だから、逃げて くれと言った。きっとここに居る人は自分を殺せないだろうから。 「だから・・・もし、そうなったときは、ためらわずに逃げてくれ」 「逃げる必要もないわよ」 はっと振り向く。そこに、シャトリアが居た。緑の目と髪はいつもどおり。 しかし服装はどこか違っていた。城でのアメリアのような、巫女風の 服。もちろん、動きやすくはなっていた。 「宝珠、もらうわよ」 「嫌だといっても実力行使なんでしょ?」 リナの言葉。シャトリアはさして気にもせず、針を構えた。 「行くわよ。本気で」 針が雨のように降ってくる。それをぎりぎりでかわして、リザーは攻撃の 隙を見計らった。 シャトリアの体の内側から、奇妙な波動が流れてくる。さっきの波動の 微弱版である。 (こいつ・・・まさか・・・) 嫌な予感を覚え、リザーはさがった。足場が悪かった。段差のある階段だ。 戻るには少し時間がいる。ゼルに目配せし、アメリアを階段から外へ 出すように促す。 「宝珠をもらって、私は完全体になる」 シャトリアの目は、だんだんと邪悪になってきていた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 次回あたりから急展開になるかもしれません。ゼロスも活躍させる ぞっ! by 夏青龍 |
6714 | 蒼い瞳の半魔族 14 | 夏青龍 E-mail | 6/7-21:32 |
記事番号6618へのコメント こんばんは。夏青龍です。久しぶりにゆっくりすごせそうな夜です。 なんかシャトリアがどんどん悪女化していってますが敵キャラだから いっか☆(ォィ)今回は長めに行きたいなあと思ってます。 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 蒼い瞳の半魔族 14 しゃっ! 空気を裂いて、針が飛んで来る。それぞれ鈍く輝き、相手を戦慄させ そうなものだった。だがリザーは臆することなくそれをかわしていた。 広い階段だが、翼は出せない。天井がそれほど高くないのだ。 「防御壁(シールド)!」 リザーが前方に手を突き出す。それと共に障壁がつくられた。針は ことごとく床へ落ちる。 どうやら、リザーは自分の特性を活かした魔術を使うらしい。人間の もの、竜のもの、魔族のもの。それぞれを少しずつ混ぜてつかっている ようだ。 剣を抜き放ち、シャトリアへ飛びかかる。シャトリアは不敵な笑みを 浮かべた。背後に気配を感じたとき、リザーは後退不可能だった。 後ろから、さっき落とした針が飛んできたのだ。 「ファイアー・ボール!」 リナのファイアー・ボールがシャトリアに炸裂した!リザーはすぐさま 後ろに跳び、受け身をとった。近くに着地したリザーを見て、リナは 安堵した。火傷はしていないようだった。 針は溶け、曲がり、もはや針として使いようもなかった。シャトリアの 姿は、煙でよく見えない。と、ガウリイがブラスト・ソードを構えた。 あの直撃を受けて、まだ生きている!? その嫌な予感が脳裏をよぎったとき、リザーの目の前に、シャトリアが 現れた。煙をまとってきたのだ。 「なっ!?」 足ばらいをうけ、倒れるリザー。リナが呪文を詠唱しているが、2人の 距離は近すぎる。間違ってリザーにあてたりしようものなら大変なことに なる。ガウリイも飛び掛れなかった。シャトリアがどこに持っていたのか、 針を投げつけたのだ。 倒れこんだリザーは起き上がろうとしたが、シャトリアがダガーを構えた 方が先だった。 「宝玉、もらうわよ」 一言言って、ダガーを振り下ろした。ダガーはリザーの肩のあたりに刺さる はずだった。が・・・ ぎぃんっ! 「ゼロス!」 錫嬢で、ゼロスがダガーを弾き飛ばしていた。リザーは目の前に居る シャトリアに思いっきりパンチを食らわせ、飛びのいた。 「祭壇のあるホールまで走って!」 リザーの指示に、リナも頷いた。走り出したが、シャトリアが攻撃をして くるかと思うと背を向けるのすらためらう。とにかく逃げようと、ダッシュ で階段を駆け上る。そこには驚いた様子のゼルとアメリア。 「離れろ!」 ガウリイの声。 ごぉぅんっ!! 階段が吹き飛ぶ。床の石板も少し砕け、飛んだ。 ぎりぎりで、ゼルはアメリアを抱えて逃げていた。アメリア自身も何かの 呪文で、結界を張ったようだった。 「惜しかったわね」 シャトリアが歩いてくる。あれだけの攻撃を受けても、無傷だった。 「おまえ・・・まさか・・・」 「何?」 リザーは決意したように言った。 「まさか、宝玉をとり込んだのか!?」 「そうよ」 リザーが呆然とする。リナたちは何がなんだか判らないらしく、少し おろおろしていた。 「その子の持ってた宝玉はね、賢者の石の3分の2位の魔力増幅が できる魔力増幅器なの。それはもう私の中に溶け込んだわ。つまり、 私の力は強まってるのよ」 「賢者の石の3分の2だと・・・!?」 信じられないという口調のゼル。無理もない。彼は『賢者の石』を見た ことがあるし、その完全版のデモン・ブラッドもリナが持っていた。 その3分の2だというのだ。それなら、シャトリアの部下だかその他の 盗賊だか組織だかが狙っても仕方が無い。 「私はね、『倒された』冥神官だか何からしいの。でもね、記憶と 魔力があいまいで完全体じゃないらしいのよ。だから必死でその 宝珠を捜してたって訳。ついでに言えば、後ひとつ。あと1つで 私は完全体になれるの」 シャトリアはダガーを構えていた。緑色の目は黒ずんでいた。 リザーは無言で腕輪を外した。触手と翼の2つが現れる。 「・・・まあいいわ。とにかく、こっちだって渡す気はないんだし」 リナの言葉。リザーはそれを聞くと。頷いた。 「自分の利得の為に人を殺めるなんて正義じゃありません!」 アメリアがやっと復活したらしく、立ち上がって言った。 ゼルはブロード・ソードを抜いた。 「何人でかかってきても構わないわ。でも、貴方たちに私は殺せない」 自身満々、余裕綽々で言うシャトリア。しかしリナは隙を見せずに言った。 「もし、貴女の力が絶大でも、殺されてやるほど私たちは愚かじゃないわ。 貴女が私たちを殺そうとするなら、私たちも貴女を倒すわ」 きっぱり言い切る。リザーはアストラル・ヴァインを剣にかけた。 「行くぞ!」 真正面から、切りかかる。翼を使っているためか、高速である。 シャトリアの頬に傷ができた。だが、それはあっさり回復した。 そこへガウリイが切り込み、ダガーを斬る。これで相手は武器を持たない ことになる。アメリアがディス・ファランクをかけてシャトリアを殴る。 もんどりうって倒れるが、すぐさまシャトリアは起き上がった。 リナは、1人攻撃せずに、呪文を淡々とつむいでいた。 ―闇よりもなお昏きもの 血の流れより赤きもの― ゼルの剣がシャトリアを斬った。明らかに、それはダメージを与えた ようだった。再び、ガウリイが斬りかかった。シャトリアはすでに 片膝をついていたが、それでも何か、呪文を唱えようとした。 そこへリザーが蹴りを食らわせる。ガウリイの剣がシャトリアの 胸部を斬ったが、それも少しずつ回復する。そこへ・・・ 「ドラグ・スレイブ!!」 紅い光がシャトリアを包んだ!今度こそ、シャトリアは倒れた。だが、 霞となる訳でもなければ無傷でもない。傷はうけているのだ。 リザーがみんなより一歩シャトリアに近づいた。そのとき・・・ ドゥッ! 鈍い音が響いた。神殿の床に紅いスポットができる。 「うくっ・・・!」 リザーが片膝をつく。 急いでリナが駆け寄った。左肩を貫かれていた。血が流れる。 リナはリカバリィをかけようとして、近くに蒼い宝玉が落ちていること を知った。ころころと転がりながら、倒れたシャトリアの手のあと少し 届かないところまで来て、止まった。シャトリアは、やっと砂になって 消えた。最期の最期でリザーの宝玉をとろうとしたのだ。 「リカバリ・・・」 リナが呪文を唱えようとしたとき、目の前で、光弾が弾けた・・・。 ずざざざざざざざぁっ!! 「リナ!」 ガウリイが駆け寄る。かなりの距離を吹き飛ばされた。アメリアが回復 呪文をかけようとする。 「くっ・・・」 リナは腕を押さえていた。怪我をしたのかもしれない。血は出ていないが、 見た目でダメージはわからない。 「リザー!?」 アメリアが振り返ったとき、そこに居たのはまぎれもなくリザーだった。 だが・・・ 「まさか・・・あんた・・・」 リナの脳裏に、魔王の名がよぎる。しかしそれはあっけなく否定された。 魔王なら、制御などできるものではないのだ。 だが、明らかに彼女は変わっていた。青銀色だった髪は黒く、瞳は真紅 になっている。翼と触手はいつもどおり黒いが、全体的に見ればまるで 赤と黒の死神だった。 びゅぅっ! 翼を使い、急降下してくる。最初に狙われたのはアメリア。光弾が床で 爆散し、その衝撃で吹き飛ばされる。柱にぶつかるところを、ゼルが受け 止めたが、次に狙われたのはガウリイ。もちろん、リザーが彼に勝てる わけがない。 「はっ!」 多分、剣を斬ろうとしたのだろう。が、それはリザーの『触手』に妨害 された。彼女の触手はあっさり斬られたが、すぐさま復活した。 リザーは向きを変えると、リナを狙った。 「エルメキア・ランス!!」 リナの一撃を避けるためか、はたまたフェイントだったのか、再び向きを かえる。ゼルの方へ跳び、呟く。 「火炎領域(フレア・レイヤー)」 そのとたん、ゼルの周りに炎がつく。彼の行動範囲が狭められた。 「アイシクル・ランス!」 リナの氷で火は弱まった。そのときにゼルも飛び出したのだが、そこを 狙われた。 「雷槍(サンダー・ランス)」 雷の槍が彼に向かって突き進んでいった。その進行方向へ、アメリアが 飛び込んでくる。 バチィッ! 電流の流れる音が、響いた。 「きゃあっ!」 叫び声をあげて、倒れる。 「アメリア!」 倒れた彼女へ近づこうとして、リザーに背を向けてしまったのがゼルの 失敗だった。 ざしゅっ・・・ リザーの剣が、彼を後ろから切り裂いた。普通の剣なら傷ひとつつけ られない彼の体でも、リザーはあっけなく斬った。 再び、標的はリナへ変わる。 必ず仕留めるという視線で見られ、リナは立ち上がった。 「フリーズ・アロー!」 ふっとリザーは笑い、わざとそれを受けた。彼女の腕や足は氷付けに なった。が・・・ ぱきぃぃ・・・ぃん・・・ 澄んだ音をたて、氷はぱらぱらと落ちた。リザーにダメージはない。 「氷針(フリーズ・ニードル)」 彼女の上から、前後左右から氷の針が落ちてきた。逃げる間もなく、 リナは針に打たれた。そのまま倒れこむ。 リザーが静かに振り向いたとき、ガウリイは怒りの表情をして、ゼロスは 微笑をなくして立っていた。 「はぁっ!」 気合いがのどをついて出、ガウリイが疾った。リザーは肩のあたりを 斬られた。だが、やはり彼女の血はながれなかった。 「風妖斬(ウィン・ブラスト)」 風で吹き飛ばされた挙句、柱にぶつかり、さらにカマイタチに襲われた。 残るは、ゼロスだけ。 「おまえが最後か」 リザーの声は、あからさまに虚ろで、冷たかった。何の感情もこもってい ない、声。 「行く」 ゼロスの方へ飛ぶ。ゼロスは何とかそれを受け止めた。リザーの剣には アストラル・ヴァインがかかっている。彼女の力量なら、ゼロスにダメージ を与えるくらいはできるはずだった。 ゼロスは、左手に宝玉を持っていた。リザーの持っていた宝玉だ。 (なんとか止めないと皆殺しですね・・・) わずかな焦りを感じた瞬間、彼は胴を貫かれた。そしてそのまま衝撃で柱 にはりつけにされたような状況になる。なんとか意識を保っていたリナは 息をのんだ。ゼロスは魔族だから失血死などはないだろうが、なにせ あの剣にはアストラル・ヴァインがかかっているのだ。ダメージが無いはず がない。 「ぐっ・・・」 うめき声をあげて、何とか動こうとするが、剣が抜けない。ゼロスは一瞬で 決断した。 どんっ! 「!?」 何と、自らの力で柱自体を砕いたのだ。粉々になった柱から離れ、剣を抜く。 だが、ダメージは結構大きかった。顔色が悪くなっているような気がする。 驚いた表情でリザーは後退した。そこへゼロスが飛び掛ったのだ。 宝玉をさっきガウリイに斬られた傷の辺りに当てて、封印する。それで 彼女は止まるはず・・・。 「アストラル・ヴァイン」 突然、リザーが呟く。ゼロスは気にせずに準備を整えた。何に呪文をかけた のか謎だ。が・・・ 「くっ!?」 リザーが『自分自身で』噛み付いたのだ。ゼロスの首辺り。かなり異様な 光景だが、そんなことを言っていられる場合ではない。今のでさらに ダメージは増した。 「リザー・・・さん・・・」 苦しそうに、ゼロスが呟く。びくっとリザーが反応した。 最後のチャンスだった。 ゼロスは魔術で彼女に宝珠を埋め込んだ。ざあっと髪がもとに戻り、瞳の 色も青く澄んでいく。翼もゼロスが腕輪をさせたおかげで消え、リザーは 眠り込んでしまった。 ―二度と目覚めたくない― 意識の『何処か』でそう呟きながら。 泣きながら、 意識が沈むのを感じていた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― リザーが暴走しちゃった♪(おいおいおいおいっ!)さてさてこのあと リザーはどうなっちゃうのでしょうか(宣伝するなよ)。 ダーク版(仮にそう呼んでおきますが)リザーは怖いです。完璧魔族で す。原作の4巻を読んだ方ならわかるかもしれませんが、カンヅェルより ちょっとマシ、程度になっちゃってるかもです(汗)。 では。 by 夏青龍 |